IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニーの特許一覧

特許7568698難治性ホジキンリンパ腫におけるニボルマブでのPD-1遮断
<>
  • 特許-難治性ホジキンリンパ腫におけるニボルマブでのPD-1遮断 図1
  • 特許-難治性ホジキンリンパ腫におけるニボルマブでのPD-1遮断 図2A
  • 特許-難治性ホジキンリンパ腫におけるニボルマブでのPD-1遮断 図2B
  • 特許-難治性ホジキンリンパ腫におけるニボルマブでのPD-1遮断 図2C
  • 特許-難治性ホジキンリンパ腫におけるニボルマブでのPD-1遮断 図3
  • 特許-難治性ホジキンリンパ腫におけるニボルマブでのPD-1遮断 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】難治性ホジキンリンパ腫におけるニボルマブでのPD-1遮断
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241008BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/655 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241008BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61P43/00 121
A61K31/704
A61K31/655
A61K31/475
A61P35/02
C07K16/28
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022178836
(22)【出願日】2022-11-08
(62)【分割の表示】P 2018563008の分割
【原出願日】2017-06-01
(65)【公開番号】P2023025012
(43)【公開日】2023-02-21
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】62/344,880
(32)【優先日】2016-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ベネデット・ファルサチ
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-518826(JP,A)
【文献】N. Engl.J. Med.,2015年,Vol.371, No.4,pp.311-319
【文献】J. Clin. Oncol. ,Vol.34, No.15_suppl,7535,Published online 2016.05.20
【文献】Blood,2014年,Vol.121, No.21,290
【文献】Lancet Oncol. ,2013年,Vol.14,pp.1348-1356
【文献】日薬理誌,2015年,Vol.146,pp.106-114
【文献】Eur. J. Heamatol.,Vol.97,pp.219-227,Published online 2016.05.30
【文献】Curr. Opin. Pharmacol.,2015年,Vol.23,pp.32-38
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホジキンリンパ腫に由来する腫瘍を有する対象を処置するための、ニボルマブを含む医薬組成物であって、ここで、対象は(i)自己幹細胞治療、(ii)ブレンツキシマブ ベドチンまたは(i)と(ii)の両方から選択される先の処置に応答性ではなかったものであり、ニボルマブは240mgの均一用量で投与されるものである、医薬組成物
【請求項2】
(i)対象が先の処置後部分奏効の達成に不成功であった、(ii)対象が先の処置後の完全奏功後に再発した、および/または(iii)対象が先の処置後の部分奏効または疾患安定後、疾患進行したものである、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
対象がさらにドキソルビシン、ビンブラスチンおよびダカルバジンを投与されるものである、請求項1または2に記載の医薬組成物
【請求項4】
対象がブレオマイシンを投与されないものである、請求項1~3の何れか一項に記載の医薬組成物
【請求項5】
約2週に1回、ドキソルビシンが25mg/mの用量で投与され、ビンブラスチンが6mg/mの用量で投与され、ダカルバジンが375mg/mの用量で投与されるものである、請求項3または4に記載の医薬組成物
【請求項6】
240mgの均一用量が、2間ごとに投与されるものである、請求項1~の何れか一項に記載の医薬組成物
【請求項7】
ホジキンリンパ腫が9p24.1に遺伝子変化を有するものである、請求項1~の何れか一項に記載の医薬組成物
【請求項8】
ホジキンリンパ腫がPD-L1および/またはPD-L2を発現するものである、請求項1~の何れか一項に記載の医薬組成物
【請求項9】
PD-L1および/またはPD-L2発現がPD-L1および/またはPD-L2を発現するホジキンリンパ腫の腫瘍細胞の少なくとも1%である、請求項に記載の医薬組成物
【請求項10】
対象が投与開始後少なくとも1月無進行生存を示すものである、請求項1~の何れか一項に記載の医薬組成物
【請求項11】
対象が初期投与後少なくとも1月の全生存期間を示すものである、請求項1~10の何れか一項に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、対象に抗プログラム死-1(PD-1)抗体またはその抗原部分を投与することを含む、対象におけるホジキンリンパ腫を処置する方法に関し、ここで、対象は、自己幹細胞治療、ブレンツキシマブ ベドチンおよび両者からなる群から選択されるホジキンリンパ腫の少なくとも1つの先の処置を受けている。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒト癌は多数の遺伝的および後成的改変を抱え、免疫系により認識可能である可能性のあるネオ抗原を産生する(Sjoblom et al., (2006) Science 366:268-74)。TおよびBリンパ球からなる適応免疫系は、多様な腫瘍抗原に応答する広い能力および精巧な特異性を備え、強力な抗癌能を有する。さらに、免疫系は、相当な柔軟性および記憶成分を示す。適応免疫系の全てのこれらの特質の利用の成功は、免疫療法を全癌処置モダリティの中で特別のものとする。
【0003】
最近まで、癌免疫療法は、実質的な努力を活性化エフェクター細胞の養子移植、関連抗原に対する免疫化またはサイトカインなどの非特異的免疫刺激剤の提供により、抗腫瘍免疫応答を増強するアプローチに対して向けてきた。また一方、過去10年、特異的免疫チェックポイント経路阻害剤の開発に対する集中的な努力が癌処置のための新規免疫療法的アプローチを提供し始めている。
【0004】
ニボルマブ(以前は5C4、BMS-936558、MDX-1106またはONO-4538と命名)は、PD-1リガンド(PD-L1およびPD-L2)との相互作用を選択的に阻害し、それにより、抗腫瘍T細胞機能の下方制御を遮断する、完全ヒトIgG4(S228P)PD-1免疫チェックポイント阻害抗体である(米国特許8,008,449;Wang et al., (2014) Cancer Immunol Res 2:846-56)。ニボルマブは、腎細胞癌(腎腺癌または副腎腫)、黒色腫および非小細胞性肺癌(NSCLC)を含む種々の進行固形腫瘍において活性が示されている(Topalian et al., (2012) N Engl J Med 366:2443-54; Topalian et al., (2014) J Clin Oncol 32:1020-30; Drake et al., (2013) BJU Int 112:1-17; Ansell et al., (2015) Blood 126:583 [Abstract];PCT公開WO2013/173223)。
【0005】
免疫適格性宿主で生存するために、多くのヒト癌は、腫瘍ネオ抗原に対する免疫応答を無効とする機構を進化させている。例えば、一般に若年成人に影響するB細胞悪性腫瘍である古典的ホジキンリンパ腫(cHL)は、広範な炎症性/免疫細胞浸潤内の少数の新生物リード・シュテルンベルク(RS)細胞により特徴付けられる(Green et al., (2010) Blood 116:3268-77)。しかしながら、有効な抗腫瘍免疫応答についてほとんど証拠がなく、免疫回避経路が宿主における腫瘍生存に役割を有し得ることを示唆する。実際、ホジキンRS(HRS)細胞は、T細胞応答の有効性を制限する分子を発現する(Juszczynski et al., (2007) Proc Natl Acad Sci USA 104:13134-9; and Kuppers, (2009) Nat Rev Cancer 9:15-27)。
【0006】
古典的ホジキンリンパ腫は、少数の悪性リード・シュテルンベルク細胞を、広範なしかし、効果のない炎症および免疫細胞浸潤内に含む(Taube et al., (2014) Clin Cancer Res 20:5064-74; Topalian et al., (2014) J Clin Oncol 32:1020-30)。PD-1リガンド、PD-L1およびPD-L2(別名それぞれCD274およびPDCD1LG2)をコードする遺伝子は、ホジキンリンパ腫における再発性遺伝子異常である染色体9p24.1増幅の重要な標的である(Taube et al., (2014) Clin Cancer Res 20:5064-74)。9p24.1アンプリコンはJAK2も含み、遺伝子用量依存的JAK-STAT活性がさらにPD-1リガンド転写を誘発する(Green et al., (2010) Blood 116:3268-77)。PD-1リガンド、PD-L1およびPD-L2(別名それぞれCD274およびPDCD1LG2)をコードする遺伝子は、結節硬化型のホジキンリンパ腫の再発性遺伝子異常である染色体9p24.1増幅の重要な標的であり(Taube et al., (2014) Clin Cancer Res 20:5064-74)、高解像度コピー数データおよび転写プロファイルを統合する最近の解析は、PD-L1およびPD-L2を染色体9p24.1増幅の重要な標的と同定した(Green et al., (2010) Blood 116:3268-77)。これらのコピー数依存性機構、ならびに他の低頻回の再配列がHRS細胞表面のPD-1リガンドの遺伝的に決定された過発現に至る(Steidl et al., (2011) Nature 471:377-81; Andorsky et al., (2011) Clin Cancer Res 17:4232-44)。
【0007】
cHLにおいて一般的であるエプスタイン・バーウイルス(EBV)感染は、宿主におけるウイルス残留性を可能とするためにPD-1経路を侵害する該ウイルスの既知能力と一致して、PD-L1過発現のさらなる機序である(Green et al., (2012) Clin Cancer Res 18:1611-8)。それ故に、エプスタイン・バーウイルス(EBV)感染はまたEBV陽性陽性ホジキンリンパ腫におけるPD-1リガンドの発現も増加させる(Armand et al., (2013) J Clin Oncology 31:4199-206)。9p24.1変更およびEBV感染の2つの相補性経路の結果、80%を超えるcHL症例が、PD-L1の表面発現が増加しており、この疾患におけるPD-1経路の中心的役割を示唆する(Chen et al., (2013) Clin Cancer Res 19:3462-73)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
cHLの現在の処置は、主に化学療法剤、放射線照射治療および幹細胞/骨髄移植を含む。このような処置選択肢にかかわらず、多くのcHL患者は完全寛解の達成に至らないかまたは処置後に再発する(Kuruvilla et al., (2011) Blood 117:4208-17)。それ故に、cHLおよび他のヒト癌のためのさらに有効な処置選択肢選択肢が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明は、対象に治療有効量のプログラム死-1受容体(PD-1)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分(“抗PD-1抗体”)を投与すること含む、ホジキンリンパ腫に由来する腫瘍を有する対象を処置する方法であってここで、対象は(i)自己幹細胞治療、(ii)ブレンツキシマブ ベドチンおよび(i)と(ii)の両方から選択される先の処置に応答しなかった、方法を提供する。
【0010】
ある実施態様において、対象が先の処置後部分奏効をしなかった。ある実施態様において、対象は、先の処置での完全奏功後に再発した。ある実施態様において、対象は、先の処置後の部分奏効または疾患安定後、疾患が進行した。ある実施態様において、対象は、さらにドキソルビシン、ビンブラスチンおよびダカルバジンを投与される。
【0011】
本発明は、対象に治療有効量の抗PD-1抗体をドキソルビシン、ビンブラスチンおよびダカルバジンと組み合わせて投与することを含む、ホジキンリンパ腫に由来する腫瘍を有する対象を処置する方法に関する。
【0012】
さらなる実施態様において、対象は、ブレオマイシンを投与されない。ある実施態様において、ドキソルビシン、ビンブラスチンおよびダカルバジンは、約1週、2週、3週または4週に1回投与される。ある実施態様において、ドキソルビシンは、約10mg/m~約40mg/m、約10mg/m~約30mg/mまたは約20mg/m~約30mg/mの用量で投与され、ビンブラスチンは約10mg/m~約40mg/m、約10mg/m~約30mg/mまたは約20mg/m~約30mg/mの用量で投与されおよび/またはダカルバジンは約200mg/m~約500mg/m、約250mg/m~約500mg/mまたは約300mg/m~約400mg/mの用量で投与される。特定の実施態様において、約2週に1回、ドキソルビシンは25mg/mの用量で投与され、ビンブラスチンは6mg/mの用量で投与され、ダカルバジンは375mg/mの用量で投与される。
【0013】
ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒトPD-1への結合についてニボルマブと交差競合する。他の実施態様において、抗PD-1抗体は、ニボルマブと同じエピトープに結合する。さらなる実施態様において、抗PD-1抗体は、キメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体またはその一部(例えば、抗原結合部分)である。なおさらなる実施態様において、抗PD-1抗体がヒトIgG1またはIgG4アイソタイプのものである重鎖定常領域を含む。ある実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブである。他の実施態様において、抗PD-1抗体はペンブロリズマブである。
【0014】
特定の実施態様において、抗PD-1抗体を、約1週、2週または3週に1回、少なくとも約0.1mg/kg~少なくとも約10.0mg/kg体重の範囲の用量で投与する。さらなる実施態様において、抗PD-1抗体(例えば、ニボルマブ)は、少なくとも約3mg/kg体重の用量で、約2週に1回投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体(例えば、ペンブロリズマブ)は、少なくとも約200mg3週毎または2mg/kg(最大200mg)3週毎の用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体(例えば、アベルマブ)は、2週毎に10mg/kgの用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体は均一用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体は少なくとも約200mg、少なくとも約220mg、少なくとも約240mg、少なくとも約260mg、少なくとも約280mg、少なくとも約300mg、少なくとも約320mg、少なくとも約340mg、少なくとも約360mg、少なくとも約380mg、少なくとも約400mg、少なくとも約420mg、少なくとも約440mg、少なくとも約460mg、少なくとも約480mg、少なくとも約500mg、少なくとも約550mg、少なくとも約600mg、少なくとも約650mg、少なくとも700mg、少なくとも750mgまたは少なくとも800mgの均一用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体は約1週、2週、3週または4週に1回均一用量で投与される。特定の実施態様において、抗PD-1抗体は治療量以下の用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、臨床的有用性が観察される限りまたは管理不可能な毒性もしくは疾患進行が生じるまで投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、静脈内投与用に製剤化される。
【0015】
ある実施態様において、方法は、さらに、1以上のさらなる抗癌剤の投与を含む。
【0016】
ある実施態様において、ホジキンリンパ腫は、9p24.1に遺伝子変化を有する。特定の実施態様において、ホジキンリンパ腫はPD-L1および/またはPD-L2を発現する。
【0017】
ある実施態様において、PD-L1および/またはPD-L2発現は、少なくとも約1%である。他の実施態様において、腫瘍のPD-L1および/またはPD-L2発現は、少なくとも約5%である。さらなる実施態様において、腫瘍のPD-L1および/またはPD-L2発現は、少なくとも約10%である。ある実施態様において、PD-L1および/またはPD-L2発現は、自動化免疫組織化学(IHC)または蛍光インサイチュハイブリダイゼーションにより測定する。
【0018】
特定の実施態様において、対象は投与開始後少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約7か月、少なくとも約8か月、少なくとも約9か月、少なくとも約10か月、少なくとも約11か月、少なくとも約1年、少なくとも約18か月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年無進行生存を示す。他の実施態様において、対象は、初期投与後少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約7か月、少なくとも約8か月、少なくとも約9か月、少なくとも約10か月、少なくとも約11か月、少なくとも約1年、少なくとも約18か月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年の全生存期間を示す。
【0019】
本発明は、ホジキンリンパ腫に対する少なくとも1つの先の処置を受けているホジキンリンパ腫に由来する腫瘍を有する対象を処置するためのキットに関し、キットは(a)抗PD-1抗体;および(b)ここに記載する任意の方法で対象に抗PD-1抗体を投与するための指示を含む。
【0020】
ある実施態様において、キットは、所望により(a)と(b)のステップの間に:腫瘍のPD-L1および/またはPD-L2発現を決定するための指示を含む。ある実施態様において、キットは、腫瘍のPD-L1および/またはPD-L2発現を決定するための試薬を含む。ある実施態様において、PD-L1および/またはPD-L2発現は、抗PD-L1および/またはPD-L2抗体により測定される。
【0021】
本発明の他の特性および利点は、次の詳細な記載および実施例から明らかであり、これは、限定的と解釈してはならない。本明細書において引用した科学論文、新聞報告、GenBankエントリー、特許および特許出願を含む全ての引用した引用文献の全ての内容を、明示的に引用により本明細書に包含させる。
【0022】
実施態様
E1. 対象に治療有効量のプログラム死-1受容体(PD-1)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分(“抗PD-1抗体”)を投与すること含む、ホジキンリンパ腫に由来する腫瘍を有する対象を処置する方法であって、ここで、対象は(i)自己幹細胞治療、(ii)ブレンツキシマブ ベドチンおよび(i)と(ii)の両方から選択される先の処置に応答しなかった、方法。
【0023】
E2. 対象が先の処置後部分奏効をしなかった、実施態様E1の方法。
【0024】
E3. 対象が先の処置後の完全奏功後に再発した、実施態様E1またはE2の方法。
【0025】
E4. 対象が先の処置後の部分奏効または疾患安定後に疾患進行した、実施態様E1~E3の何れかの方法。
【0026】
E5. 対象にドキソルビシン、ビンブラスチンおよびダカルバジンをさらに投与する、実施態様E1~E4の何れかの方法。
【0027】
E6. 対象に治療有効量の抗PD-1抗体をドキソルビシン、ビンブラスチンおよびダカルバジンと組み合わせて投与することを含む、ホジキンリンパ腫に由来する腫瘍を有する対象を処置する方法。
【0028】
E7. 対象にブレオマイシンを投与しない、実施態様E1-E6の何れかの方法。
【0029】
E8. ドキソルビシン、ビンブラスチンおよびダカルバジンが約1週、2週、3週または4週に1回投与される、実施態様E5~E7の何れかの方法。
【0030】
E9. ドキソルビシンが約10mg/m~約40mg/m、約10mg/m~約30mg/mまたは約20mg/m~約30mg/mの用量で投与され、ビンブラスチンが約10mg/m~約40mg/m、約10mg/m~約30mg/mまたは約20mg/m~約30mg/mの用量で投与されおよび/またはダカルバジンが約200mg/m~約500mg/m、約250mg/m~約500mg/mまたは約300mg/m~約400mg/mの用量で投与される、実施態様E5~E8の何れかの方法。
【0031】
E10. 約2週に1回、ドキソルビシンが25mg/mの用量で投与され、ビンブラスチンが6mg/mの用量で投与され、ダカルバジンが375mg/mの用量で投与される、実施態様E5~E9の何れかの方法。
【0032】
E11. 抗PD-1抗体がヒトPD-1への結合についてニボルマブと交差競合する、実施態様E1~E10の何れかの方法。
【0033】
E12. 抗PD-1抗体がニボルマブと同じエピトープに結合する、実施態様E1~E11の何れかの方法。
【0034】
E13. 抗PD-1抗体がキメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体またはその一部である、実施態様E1~E12の何れかの方法。
【0035】
E14. 抗PD-1抗体がヒトIgG1またはIgG4アイソタイプのものである重鎖定常領域を含む、実施態様E1~E13の何れかの方法。
【0036】
E15. 抗PD-1抗体がニボルマブである、実施態様E1~E14の何れかの方法。
【0037】
E16. 抗PD-1抗体がペンブロリズマブである、実施態様E1~E14の何れかの方法。
【0038】
E17. 抗PD-1抗体が少なくとも約0.1mg/kg~少なくとも約10.0mg/kg体重の範囲の用量で、約1週、2週または3週に1回投与される、実施態様E1~E16の何れかの方法。
【0039】
E18. 抗PD-1抗体が少なくとも約3mg/kg体重の用量で、約2週に1回投与される、実施態様E1~E17の何れかの方法。
【0040】
E19. 抗PD-1抗体が均一用量で投与される、実施態様E1~E16の何れかの方法。
【0041】
E20. 抗PD-1抗体が少なくとも約200mg、少なくとも約220mg、少なくとも約240mg、少なくとも約260mg、少なくとも約280mg、少なくとも約300mg、少なくとも約320mg、少なくとも約340mg、少なくとも約360mg、少なくとも約380mg、少なくとも約400mg、少なくとも約420mg、少なくとも約440mg、少なくとも約460mg、少なくとも約480mg、少なくとも約500mgまたは少なくとも約550mgの均一用量で投与される、実施態様E19の方法。
【0042】
E21. 抗PD-1抗体が約1週、2週、3週または4週に1回均一用量で投与される、実施態様E19またはE20の方法。
【0043】
E22. 抗PD-1抗体が治療量以下の用量で投与される、実施態様E1~E16の何れかの方法。
【0044】
E23. 抗PD-1抗体が、臨床的利益が観察される限りまたは管理不可能な毒性または疾患進行が生じるまで投与される、実施態様E1~E22の何れかの方法。
【0045】
E24. 抗PD-1抗体が静脈内投与用に製剤化されている、実施態様E1~E23の何れかの方法。
【0046】
E25. さらに1以上のさらなる抗癌剤の投与を含む、実施態様E1~E24の何れかの方法。
【0047】
E26. ホジキンリンパ腫が9p24.1に遺伝子変化を有する、実施態様E1~E25の何れかの方法。
【0048】
E27. ホジキンリンパ腫がPD-L1および/またはPD-L2を発現する、実施態様E1~E26の何れかの方法。
【0049】
E28. PD-L1および/またはPD-L2発現が少なくとも約1%である、実施態様E1~E27の何れかの方法。
【0050】
E29. 腫瘍のPD-L1および/またはPD-L2発現が少なくとも約5%である、実施態様E1~E28の何れかの方法。
【0051】
E30. 腫瘍のPD-L1および/またはPD-L2発現が少なくとも約10%である、実施態様E1~E29の何れかの方法。
【0052】
E31. PD-L1および/またはPD-L2発現は、自動化免疫組織化学(IHC)または蛍光インサイチュハイブリダイゼーションにより測定する、実施態様E1~E30の何れかの方法。
【0053】
E32. 対象が投与開始後少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約7か月、少なくとも約8か月、少なくとも約9か月、少なくとも約10か月、少なくとも約11か月、少なくとも約1年、少なくとも約18か月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年無進行生存を示す、実施態様E1~E31の何れかの方法。
【0054】
E33. 対象は、初期投与後少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約7か月、少なくとも約8か月、少なくとも約9か月、少なくとも約10か月、少なくとも約11か月、少なくとも約1年、少なくとも約18か月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年の全生存期間を示す、実施態様E1~E32の何れかの方法。
【0055】
E34. ホジキンリンパ腫に対する少なくとも1つの先の処置を受けているホジキンリンパ腫に由来する腫瘍を有する対象を処置するためのキットであって、(a)抗PD-1抗体および(b)実施態様E1~E33の方法において対象に抗PD-1抗体を投与するための指示を含む、キット。
【0056】
E35. 所望により(a)と(b)の間に、腫瘍のPD-L1および/またはPD-L2発現を決定するための指示の段階を含む、実施態様E34のキット。
【0057】
E36. さらに腫瘍のPD-L1および/またはPD-L2発現を決定するための試薬を含む、実施態様E35のキット。
【0058】
E37. PD-L1および/またはPD-L2発現が抗PD-L1および/またはPD-L2抗体により測定される、実施態様E35またはE36のキット。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1図1は、自己幹細胞移植およびブレンツキシマブ ベドチンでの処置に不成功後の古典的ホジキンリンパ腫(cHL)患者におけるニボルマブ単剤療法の有効性および安全性を評価する多施設、非比較フェーズ2登録治験のための治験設計概念図を示す。
【0060】
図2A図2A~2Cは、ニボルマブ単剤療法後のcHL患者の応答および腫瘍負荷変化の概要を示す。図2Aは、IRRC評価あたりの全応答者(n=53)における応答特性を示す。応答者中、62%は解析時に応答し続けていた(黒色矢印により示す)。応答までの期間中央値は2.1か月(1.6~5.7か月)であり、応答の期間中央値は7.8か月(6.6か月 - 推定不可能)であった。図2Bは、全応答評価可能患者からの腫瘍負荷のベースラインからの最良の変化の独立放射線審査委員会(IRRC)評価を示す。1名以外の全応答者は、腫瘍負荷のベースラインから50%を超える減少をしており、陰性CDG-PET走査をしなかった患者。図2Cは、増悪後ニボルマブで処置した患者における腫瘍負荷の変化を示す。解析した9患者中6患者は、治験医評価で腫瘍減少を維持した。
図2B】同上
図2C】同上
【0061】
図3図3は、ニボルマブでのcHL患者の12か月処置の間の無進行生存(PFS)の確率を示す。PFS中央値は10か月(95%CI8.41か月~NA)であった。6か月でのPFSは76.9%(95%CI64.9%~85.3%)であり、6か月での全生存率は99%であった。
【0062】
図4図4は、新たに診断された進行期cHLにおける、ニボルマブ単剤療法後、ドキソルビシン(25mg/m)、ビンブラスチン(6mg/m)、ダカルバジン(375mg/m)(“AVD”)と組み合わせたニボルマブのシングルアーム、安全性および忍容性オープンラベル、フェーズ2治験の評価のための治験設計概略を示す。Cは、治療の28日毎のサイクル(1日目および15日目投与)を意味する。FU/OBSはフォローアップおよび観察相を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0063】
発明の詳細な記載
本発明は、少なくとも1つの先の処置を受けている、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)を有する患者の処置における、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の優れた効果に関する。古典的ホジキンリンパ腫(cHL)患者を処置する方法は、患者に抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を投与することを含む。
【0064】
用語
本発明がより容易に理解され得るために、いくつかの用語をまず定義する。本明細書で使用する限り、本明細書において他に明示的に示されていない限り、次の用語の各々は下記の意味を有する。さらなる定義は本明細書を通して示される。
【0065】
“投与”は、当業者に知られる種々の方法および送達系の何れかを使用して、対象に治療剤を含む組成物を物理的に導入することをいう。抗PD-1抗体の投与経路は、例えば注射または点滴による、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄または他の非経腸投与経路を含む。ここで使用する用語“非経腸投与”は、通常、注射による、経腸および局所投与以外の投与方式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および点滴、ならびにインビボエレクトロポレーションを含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、組成物は、非経腸ではない経路で、ある実施態様において、経口で投与される。他の非経腸ではない経路は、局所、上皮または粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、膣、直腸、舌下または局所を含む。投与はまた、例えば、一回、複数回および/または長期にわたり1回以上実施し得る。
【0066】
ここで使用する“有害事象”(AE)は、医学的処置の使用と関連する、何らかの好ましくない、一般に意図しないまたは望ましくない徴候(以上検査所見を含む)、症状または疾患である。例えば、有害事象は、処置に応答した免疫系活性化または免疫系細胞(例えば、T細胞)増大に関係し得る。医学的処置は1以上の関連AEを有し得て、各AEの重症度レベルは同一または異なり得る。“有害事象を変える”ことができる方法の記載は、異なる処置レジメの使用に関連する1以上のAEの発生率および/または重症度を低減する処置レジメを意味する。
【0067】
“抗体”(Ab)は、抗原に特異的に結合し、ジスルフィド結合により相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む、糖タンパク質免疫グロブリンまたはその抗原結合部分を含むべきであるが、これに限定されない。各H鎖は、重鎖可変領域(ここではVと略す)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、少なくとも3定常ドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(ここではVと略す)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1定常ドメイン、Cを含む。VおよびV領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存的な領域が点在する、超可変性の領域にさらに細分され得る。各VおよびVは3CDRおよび4FRを含み、アミノ末端からカルボキシ末端に次の順番で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体経路の第一成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を介在し得る。
【0068】
免疫グロブリンは、IgA、分泌型IgA、IgGおよびIgMを含むが、これらに限定されない一般的に知られるアイソタイプの何れかに由来し得る。IgGサブクラスは当業者に周知であり、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むが、これらに限定されない。“アイソタイプ”は、重鎖定常領域遺伝子によりコードされる抗体クラスまたはサブクラス(例えば、IgMまたはIgG1)をいう。用語“抗体”は、例として、天然に存在するおよび天然に存在しない両方の抗体;モノクローナルおよびポリクローナル抗体;キメラおよびヒト化抗体;ヒトまたは非ヒト抗体;完全合成抗体;および一本鎖抗体を含む。非ヒト抗体は、ヒトでの免疫原性を低減するために組み換え方法によりヒト化し得る。明示しない限りかつ文脈から他のことが示されない限り、用語“抗体”は前記免疫グロブリンの何れかの抗原結合フラグメントまたは抗原結合部分も含み、一価および二価フラグメントまたは部分および一本鎖抗体を含む。
【0069】
“単離抗体”は、異なる抗原特異性を有する他の抗体が実質的にない抗体をいう(例えば、PD-1に特異的に結合する単離抗体は、PD-1以外の抗原に特異的に結合する抗体が実質的にない)。PD-1に特異的に結合する単離抗体は、しかしながら、異なる種からのPD-1分子などの他の抗原と交差反応性を有し得る。さらに、単離抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含み得ない。
【0070】
用語“モノクローナル抗体”(mAb)は、天然に存在しない単一分子組成の抗体分子、すなわち、一次配列が本質的に同一であり、特定のエピトープに対して単独結合特異性および親和性を示す抗体分子の調製物をいう。モノクローナル抗体は単離抗体の一例であって、ハイブリドーマ、組み換え、トランスジェニックまたは当業者に知られる他の技法により産生され得る。
【0071】
“ヒト抗体”(HuMAb)は、フレームワークおよびCDRの両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体をいう。さらに、抗体が定常領域を含むならば、定常領域もヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、変異は、インビトロで無作為または部位特異的変異誘発によりまたはインビボで体細胞変異により導入される)。しかしながら、ここで使用する用語“ヒト抗体”は、マウスなどの他の哺乳動物種由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含むことは意図しない。用語“ヒト抗体”および“完全ヒト抗体”は、同義的に使用される。
【0072】
“ヒト化抗体”は、非ヒト抗体のCDR外のアミノ酸の一部、大部分または全てがヒト免疫グロブリンに由来する対応するアミノ酸に置き換えられている抗体をいう。抗体のヒト化形態のある実施態様において、CDR外のアミノ酸の一部、大部分または全てはヒト免疫グロブリンで置き換えられており、一方1以上のCDR内のアミノ酸の一部、大部分または全ては変わらない。アミノ酸の小さな付加、欠失、挿入、置換または修飾は、抗体が特定の抗原に結合する能力を無効にしない限り、許容される。“ヒト化抗体”は、元の抗体に類似する抗原特異性を維持する。ある実施態様において、ヒト化抗体のCDRは、非ヒト哺乳動物抗体のCDRを含む。他の実施態様において、ヒト化抗体のCDRは、操作された合成抗体からのCDRを含む。
【0073】
“キメラ抗体”は、可変領域がマウス抗体由来であり、定常領域がヒト抗体由来であるような、可変領域がある種由来であり、定常領域が他の種由来である抗体をいう。
【0074】
“抗抗原”抗体は、抗原に特異的に結合する抗体をいう。例えば、抗PD-1抗体はPD-1に特異的に結合し、抗CTLA-4抗体はCTLA-4に特異的に結合する。
【0075】
抗体の“抗原結合部分”(“抗原結合フラグメント”とも称する)は、抗体全体により結合される抗原に特異的に結合する能力を保持した、抗体の1以上のフラグメントをいう。
【0076】
“癌”は、体内の異常細胞の制御されない増殖により特徴付けられる、種々の疾患の広い群をいう。“癌”または“癌組織”は腫瘍を含み得る。無制御の細胞分裂および増殖は、近隣組織を侵襲し、リンパ系または血流を介して遠位部位に転移もできる悪性腫瘍の形成をもたらす。転移後、遠位腫瘍を元の転移前腫瘍に“由来する”ということができる。例えば、非ホジキンリンパ腫に“由来する腫瘍”は、非ホジキンリンパ腫の転移に起因する腫瘍をいう。遠位腫瘍が転移腫瘍に由来するため、腫瘍に“由来する”は転移前腫瘍も含み得て、例えば、非ホジキンリンパ腫に由来する腫瘍は非ホジキンリンパ腫を含み得る。ある実施態様において、癌はホジキンリンパ腫(ホジキンリンパ腫、古典的ホジキンリンパ腫およびCHLとも称する)である。
【0077】
“細胞毒性Tリンパ球抗原-4”(CTLA-4)は、CD28ファミリーに属する免疫阻害性受容体をいう。CTLA-4は、インビボで排他的にT細胞に発現され、2リガンド、CD80およびCD86(別名それぞれB7-1およびB7-2)に結合する。ここで使用する用語“CTLA-4”は、ヒトCTLA-4(hCTLA-4)、hCTLA-4のバリアント、アイソフォームおよび種ホモログおよびhCTLA-4と少なくとも1つの共通エピトープを有するアナログを含む。完全hCTLA-4配列は、GenBank Accession No. AAB59385下に見ることができる。
【0078】
用語“免疫療法”は、免疫応答の誘発、増強、抑制または他の修飾を含む方法による、疾患を有する、再発するリスクにあるまたは再発を有する対象の処置をいう。
【0079】
対象の“処置”または“治療”は対象に、疾患と関連する症状、合併症、状態または生化学的兆候の発症、進行、発生、重症度または再発の回復、軽減、寛解、阻止、遅延または防止を目的として実施するあらゆるタイプの介入または手順または活性剤の投与をいう。
【0080】
ここで使用する“PD-L1陽性”または“PD-L2陽性”は、“少なくとも約1%のPD-L1および/またはPD-L2発現”と相互交換可能に使用され得る。ある実施態様において、PD-L1および/またはPD-L2発現は、当分野で知られるあらゆる方法により使用できる。他の実施態様において、PD-L1および/またはPD-L2発現は、自動化インサイチュハイブリダイゼーション(IHC)により測定される。PD-L1および/またはPD-L2陽性腫瘍は、すなわち、自動化IHCにより測定して、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%または少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または約100%のPD-L1および/またはPD-L2を発現する腫瘍細胞を有し得る。ある実施態様において、“PD-L1陽性”は、細胞表面にPD-L1を発現する少なくとも100細胞があることを意味する。他の実施態様において、“PD-L2陽性”は、細胞表面にPD-L2を発現する少なくとも100細胞があることを意味する。
【0081】
“プログラム死-1”(PD-1)は、CD28ファミリーに属する免疫阻害性受容体をいう。PD-1は、インビボで主に活性化T細胞に存在し、2つのリガンド、PD-L1およびPD-L2に結合する。ここで使用する用語“PD-1”は、ヒトPD-1(hPD-1)、hPD-1のバリアント、アイソフォームおよび種ホモログおよびhPD-1と少なくとも1つの共通エピトープを有するアナログを含む。完全hPD-1配列は、GenBank Accession No. U64863に見ることができる。
【0082】
“プログラム死リガンド-1”(PD-L1)は、PD-1への結合によりT細胞活性化およびサイトカイン分泌を下方制御する、PD-1に対する2つの細胞表面糖タンパク質リガンドの一方である(他方はPD-L2)。ここで使用する用語“PD-L1”は、ヒトPD-L1(hPD-L1)、hPD-L1のバリアント、アイソフォームおよび種ホモログおよびhPD-L1と少なくとも1つの共通エピトープを有するアナログを含む。完全hPD-L1配列は、GenBank Accession No. Q9NZQ7下に見ることができる。
【0083】
“対象”はあらゆるヒトまたは非ヒト動物を含む。用語“非ヒト動物”は、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌおよびマウス、ラットおよびモルモットなどの齧歯類などの脊椎動物を含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、対象はヒトである。用語、“対象”および“患者”は、ここでは相互交換可能に使用される。
【0084】
薬物または治療剤の“治療有効量”または“治療有効投与量”は、単独でまたは他の治療剤と組み合わせで使用したとき、疾患症状の重症度の低減、無疾患症状期の頻度および期間の増大または疾患罹患による機能障害または能力障害の予防により証明される、疾患発症に対して対象を保護するまたは疾患退縮を促進する、薬物の任意の量である。治療剤が疾患退縮を促進する能力は、治験中ヒト対象において、ヒトにおける有効性を予測する動物モデル系においてまたはインビトロアッセイにおける薬剤の活性のアッセイによるなど、当業者に知られる多様な方法を使用して評価できる。
【0085】
ここで使用する“治療量以下の用量”は、治療化合物(例えば、抗体)の、過増殖性疾患(例えば、癌)の処置に単独で使用したときの該治療化合物の通常のまたは典型的用量より低い用量を意味する。
【0086】
例として、“抗癌剤”は、対象における癌退縮を促進するまたはさらなる腫瘍増殖を阻止する。ある実施態様において、治療有効量の薬物は、癌退縮を、癌を排除する点まで促進する。“癌退縮を促進”は、単独でまたは抗新生物剤と組み合わせて、有効量の薬物の投与が、腫瘍増殖またはサイズの減少、腫瘍壊死、少なくとも1つの疾患症状の重症度低減、無疾患症状期の頻度および期間の増大または疾患罹患による機能障害または能力障害の予防をもたらすことを意味する。さらに、処置に関連する用語“有効”および“有効性”は、薬理学的有効性および生理学的安全性の両方を含む。薬理学的有効性は、薬物が患者における癌退縮を促進する能力をいう。生理学的安全性は、薬物投与に由来する、細胞、臓器および/または生物レベルでの毒性または他の有害生理学的作用(有害作用)のレベルをいう。
【0087】
腫瘍処置の例として、治療有効量の抗癌剤は、細胞増殖または腫瘍増殖を未処置対象と比較して、または、ある実施態様において、標準治療治療剤処置患者と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または約100%阻害し得る。本発明の他の実施態様において、腫瘍退縮は、少なくとも約20日、少なくとも約30日、少なくとも約40日、少なくとも約50日または少なくとも約60日の期間観察され、かつ継続し得る。治療有効性のこれらの最終的評価があっても、免疫治療剤の評価は、“免疫関連応答パターン”も参酌しなければならない。
【0088】
“免疫関連応答パターン”は、癌特異的免疫応答誘発または自然免疫過程の修飾により、抗腫瘍効果を生ずる免疫療法剤で処置された癌患者でしばしば観察される臨床的応答パターンをいう。この応答パターンは、従来の化学療法剤の評価では、疾患進行として分類され、薬物無効と同義であって、当初の腫瘍負荷増加または新規病変出現後の有益な治療効果により特徴付けられる。従って、免疫療法剤の適切な評価は、標的疾患に対するこれら薬剤の効果の長期モニタリングを必要とし得る。
【0089】
治療有効量の薬物は、癌を発症するリスクにある(例えば、前悪性状態を有する対象)または癌の再発を有する対象に単独でまたは抗新生物剤と組み合わせて投与したとき、癌の発症または再発を阻止する薬物のあらゆる量、すなわち“予防有効量”を含む。ある実施態様において、予防有効量は癌の発症または再発を完全に阻止する。癌の発症または再発の“阻止”は、癌発症もしくは再発の可能性の低減または癌の発症もしくは再発の完全な阻止を意味する。
【0090】
ここで使用する用語“体重に基づく用量”は、患者に投与される用量が患者の体重に基づき計算されることを意味する。例えば、体重60kgの患者が3mg/kgの抗PD-1抗体を必要とするとき、投与のための抗PD-1抗体の適切な量(すなわち、180mg)を計算し、使用できる。
【0091】
本発明の方法に関する用語“固定用量”の使用は、単一組成物中の2種以上の異なる抗体(例えば、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体)が、互いに組成物に特定の(固定)比で存在することを意味する。ある実施態様において、固定用量は、抗体の重量(例えば、mg)に基づく。ある実施態様において、固定用量は抗体の濃度(例えば、mg/ml)に基づく。ある実施態様において、比は、少なくとも約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:15、約1:20、約1:30、約1:40、約1:50、約1:60、約1:70、約1:80、約1:90、約1:100、約1:120、約1:140、約1:160、約1:180、約1:200、約200:1、約180:1、約160:1、約140:1、約120:1、約100:1、約90:1、約80:1、約70:1、約60:1、約50:1、約40:1、約30:1、約20:1、約15:1、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1または約2:1mg第一抗体(例えば、抗PD-1抗体)対mg第二抗体(例えば、抗CTLA-4抗体)である。例えば、3:1比の抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体は、バイアルに約240mgの抗PD-1抗体および80mgの抗CTLA-4抗体または約3mg/mlの抗PD-1抗体および1mg/mlの抗CTLA-4抗体が含まれ得ることを意味し得る。
【0092】
本発明の方法および投与量に関する用語“均一用量”の使用は、患者の体重または体表面積(BSA)と無関係に患者に投与される用量を意味する。従って、均一用量はmg/kg用量としてではなく、薬剤の絶対量として提供される(例えば、抗PD-1抗体)。例えば、60kgのヒトと100kgのヒトは同じ用量の抗体を受ける(例えば、240mgの抗PD-1抗体)。
【0093】
選択肢(例えば、“または”)の使用は、該選択肢の一方、両方またはこれらの任意の組み合わせを意味すると解釈すべきである。ここで使用する単数表現は、任意の言及されるまたは列挙される成分の“1以上”をいうと解釈されるべきである。
【0094】
用語“約”または“本質的に含む”は、当業者により決定される、特定の値または組成の許容される誤差範囲内の値または組成をいい、これは、一部どのように値または組成が測定または決定されたか、すなわち、測定系の限界に依存する。例えば、“約”または“本質的に含む”は、当分野の実務による1または1を超える標準偏差内を意味する。あるいは、“約”または“本質的に含む”は10%または20%までの範囲を意味し得る(すなわち、±10%または±20%)。例えば、約3mgは、2.7mg~3.3mgの間の任意の数(10%について)または2.4mg~3.6mgの間の任意の数(20%について)を含み得る。さらに、特に生物学的系または過程に関し、本用語は値の1桁までまたは5倍までを意味し得る。特定の値または組成が本明細書および特許請求の範囲に提供されるとき、特に断らない限り、“約”または“本質的に含む”の意味は、その特定の値または組成について許容される誤差範囲内であると仮定すべきである。
【0095】
ここで使用する用語“約1週に1回”、“約2週に1回”または任意の他の類似の投与間隔は、大凡の数を意味する。“約1週に1回”は、7日±1日毎、すなわち、6日毎~8日毎を含み得る。“約2週に1回”は、14日±3日毎、すなわち、11日毎~17日毎を含み得る。同様の近似が、例えば、約3週に1回、約4週に1回、約5週に1回、約6週に1回および約12週に1回に適用される。ある実施態様において、約6週に1回または約12週に1回の投与間隔は、最初の投与を、第一週目の任意の曜日にしてよく、次いでの次の投与を、それぞれ第6週目または第12週目の任意の曜日に投与してよいことを意味する。他の実施態様において、約6週に1回または約12週に1回の投与間隔は、最初の用量を第一週目の特定の曜日(例えば、月曜日)に投与し、次いで、次の用量をそれぞれ第6週目または第12週目の特定の曜日(すなわち、月曜日)に投与することを意味する。
【0096】
特に断らない限り、ここに記載するあらゆる濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲または整数範囲は、記載範囲内のあらゆる整数の値および適切であるならばその分数(例えば、整数の1/10および1/100)を含むと解釈すべきである。
【0097】
本発明の種々の態様を、次のサブセクションでさらに詳述する。
【表1】
【0098】
本発明の方法
本発明は、ホジキンリンパ腫に由来する腫瘍を有する対象を処置する方法を提供し、ここで、対象は、(i)自己幹細胞治療、(ii)ブレンツキシマブ ベドチンおよび(i)と(ii)の両方からなる群から選択されるホジキンリンパ腫に対する少なくとも1つの先の処置を受けており(例えば、それに応答しない)、方法は、対象に治療有効量のPD-1受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(“抗PD-1抗体”)またはPD-L1受容体に結合し、PD-L1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(“抗PD-L1抗体”)を投与することを含む。
【0099】
ある実施態様において、本発明は、対象に、治療有効量の抗PD-1抗体もしくはその抗原結合部分または抗PD-L1抗体もしくはその抗原部分を投与することを含む、ホジキンリンパ腫に由来する腫瘍を有する対象を処置する方法に関し、ここで、対象は、(i)自己幹細胞治療、(ii)抗CD30抗体(例えば、ブレンツキシマブ ベドチン)および(i)と(ii)の両方からなる群から選択されるホジキンリンパ腫に対する少なくとも1つの先の処置を受けている。
【0100】
ある実施態様において、対象は、ホジキンリンパ腫に対する少なくとも2つの先の処置を受けている。ある実施態様において、患者が受けた先の処置は自己幹細胞移植であった。他の実施態様において、患者が受けた先の処置は抗CD30抗体、例えば、ブレンツキシマブ ベドチンであった。さらに他の実施態様において、患者は、先の処置として、自己幹細胞移植および抗CD30抗体、例えば、ブレンツキシマブ ベドチンの両方を受けた。さらなる実施態様において、抗CD30抗体、例えば、ブレンツキシマブ ベドチンは、自己幹細胞移植と同時に投与された。ある実施態様において、患者はまず自己幹細胞移植により処置され、次いで、抗CD30抗体、例えば、ブレンツキシマブ ベドチンにより処置された。他の実施態様において、患者はまず抗CD30抗体、例えば、ブレンツキシマブ ベドチンにより処置され、次いで、自己幹細胞移植により処置された。ブレンツキシマブ ベドチンはアドセトリス(登録商標)としても知られる。
【0101】
特定の実施態様において、少なくとも1つの先の処置は不成功であった。ある実施態様において、対象は、少なくとも1つの先の処置後部分奏効を達成しなかった。他の実施態様において、対象は、少なくとも1つの先の処置後の完全奏功後再発した。さらに他の実施態様において、患者は、少なくとも1つの先の処置後の部分奏効または疾患安定後疾患進行した。
【0102】
他の実施態様において、本発明は、(i)腫瘍におけるPD-L1発現レベルを測定し、ここで、腫瘍は少なくとも1%のPD-L1またはPD-L2発現レベルを有し、そして(ii)対象に治療有効量の抗PD-1抗体もしくはその抗原結合部分または抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合部分を投与することを含む、ホジキンリンパ腫に由来する腫瘍を有する対象を処置する方法を含み、ここで、対象は、(i)自己幹細胞治療、(ii)抗CD30抗体、例えば、ブレンツキシマブ ベドチンおよび(i)と(ii)の両方からなる群から選択されるホジキンリンパ腫に対する少なくとも1つの先の処置を受けている。
【0103】
さらなる実施態様において、本発明は、対象に治療有効量の抗PD-1抗体もしくはその抗原結合部分または抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合部分をドキソルビシン、ビンブラスチンおよびダカルバジンと組み合わせて投与することを含む、ホジキンリンパ腫に由来する腫瘍を有する対象を処置する方法を含む。ある実施態様において、本発明は、対象に治療有効量の抗PD-1抗体もしくはその抗原結合部分または抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合部分を、ブレオマイシンではなく、ドキソルビシン、ビンブラスチンおよびダカルバジンと組み合わせて投与することを含む、ホジキンリンパ腫に由来する腫瘍を有する対象を処置する方法を含む。
【0104】
ある実施態様において、本発明の治療(例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体および、所望により、他の抗癌剤の投与)は、対象の生存期間を効果的に延長させる。ある実施態様において、本発明の抗PD-1抗体治療または抗PD-L1抗体治療は、標準治療治療剤(すなわち、ブレンツキシマブ ベドチンまたはAVD化学療法剤)と比較して対象の生存期間を延長させる。抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体治療投与後、ホジキンリンパ腫腫瘍を有する対象は、投与後、少なくとも約10か月、少なくとも約11か月、少なくとも約12か月、少なくとも約13か月、少なくとも約14か月少なくとも約15か月、少なくとも約16か月、少なくとも約17か月、少なくとも約18か月、少なくとも約19か月、少なくとも約20か月、少なくとも約21か月、少なくとも約22か月、少なくとも約23か月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年の全生存期間を示し得る。
【0105】
他の実施態様において、対象の生存期間または全生存期間は、標準治療治療剤(例えば、ブレンツキシマブ ベドチンまたはAVD化学療法剤)でしか処置されていない他の対象と比較して、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約7か月、少なくとも約8か月、少なくとも約9か月または少なくとも約1年延長する。ある実施態様において、全生存期間は、腫瘍がPD-L1陽性であるとき、標準治療治療剤(例えば、ブレンツキシマブ ベドチンまたはAVD化学療法剤)でしか処置されていない他の対象と比較して、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約7か月、少なくとも約8か月、少なくとも約9か月、少なくとも約10か月、少なくとも約11か月、少なくとも約1年、少なくとも約18か月または少なくとも約2年延長する。例えば、対象の生存期間または全生存期間は、標準治療治療剤(例えば、ブレンツキシマブ ベドチンまたはAVD化学療法剤)でしか処置されていない他の対象と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%または少なくとも約75%延長する。
【0106】
ある実施態様において、本発明の治療は、対象の無進行生存の期間を効果的に延長する。例えば、本発明の方法により処置された対象の無進行生存は、少なくとも約1か月、2か月、3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約7か月、少なくとも約8か月、少なくとも約9か月、少なくとも約10か月、少なくとも約11か月、少なくとも約12か月、少なくとも約1年、少なくとも約18か月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年である。
【0107】
他の実施態様において、対象はヒト患者である。ある実施態様において、対象は他の癌治療(例えば、ブレンツキシマブ ベドチンまたは化学療法剤)を受けているが、このような他の癌治療に対して抵抗性であるかまたは難治性である。ある実施態様において、対象は、PD-1リガンド座位に遺伝子変化を有する。ある実施態様において、対象は9p24.1増幅を有する。他の実施態様において、対象はPD-L1陽性である。ある実施態様において、対象はPD-L2陽性である。
【0108】
対象における腫瘍(例えば、HL由来腫瘍)のPD-L1またはPD-L2状態は、ここに開示する何らかの組成物の投与前または何らかの方法の使用前に測定され得る。PD-L1またはPD-L2発現は、当分野で知られる任意の方法により決定され得る。
【0109】
PD-L1および/またはPD-L2発現を評価するために、ある実施態様において、試験組織サンプルを治療を必要とする患者から得ることができる。他の実施態様において、PD-L1および/またはPD-L2発現の評価は、試験組織サンプルを得ることなく達成され得る。ある実施態様において、適当な患者の選択は、(i)所望により癌を有する患者の組織から得た試験組織サンプルを用意し、該試験組織サンプルは腫瘍細胞および/または腫瘍浸潤性炎症性細胞を含み;そして(ii)試験組織サンプルにおける、細胞表面にPD-L1および/またはPD-L2を発現する細胞の割合を、試験組織サンプルにおける細胞表面にPD-L1および/またはPD-L2を発現する細胞の割合が、予定された閾値レベルより高いとの評価に基づき、評価することを含む。
【0110】
しかしながら、測定を含む方法の何れにおいても、患者から得た試験組織サンプルの供給を含む段階が、任意段階であることが理解されるべきである。ある実施態様において、試験組織サンプルにおける細胞表面にPD-L1を発現する細胞の数または比率を同定または決定するためのの“測定”または“評価”段階は、例えば、逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)アッセイまたはIHCアッセイの実施により、PD-L1発現をアッセイする変革方法により実施されることは理解されるべきである。ある他の実施態様において、変革方法段階は含まれず、PD-L1発現は、例えば、研究所からの試験結果報告のレビューにより、評価される。ある実施態様において、PD-L1発現の評価までのおよびそれを含む方法の段階は、医師または他の医療従事者に抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体治療の適当な候補の選択に使用するために提供され得る、中間結果を提供する。ある実施態様において、中間報告を提供する段階は、医師または医師の指示の下にある作業者により実施される。他の実施態様において、これらの段階は、独立した研究所でまたは検査技師などの独立した機関により実施される。
【0111】
本方法の何れかのある実施態様において、PD-L1を発現する細胞の割合は、PD-L1 RNAの存在を決定するアッセイの実施により評価される。さらなる実施態様において、PD-L1 RNAの存在は、RT-PCR、インサイチュハイブリダイゼーションまたはRNase保護により決定される。他の実施態様において、PD-L1を発現する細胞の比率は、PD-L1ポリペプチドの存在を決定するアッセイの実施により評価される。さらなる実施態様において、PD-L1ポリペプチドの存在は、免疫組織化学(IHC)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、インビボ造影またはフローサイトメトリーにより決定される。ある実施態様において、PD-L1発現は、IHCによりアッセイされる。これらの全方法の他の実施態様において、PD-L1の細胞表面発現は、例えば、IHCまたはインビボ造影を使用してアッセイされる。Chen et al., (2013) Clin Cancer Res 19(13): 3462-3473。
【0112】
造影技法は、癌研究および処置における重要なツールを提供している。陽電子放出断層撮影(PET)、単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、蛍光イメージング(FRI)、蛍光介在トモグラフィー(FMT)、生物発光造影(BLI)、共焦点レーザー走査型顕微鏡(LSCM)および多光子顕微鏡(MPM)を含む分子造影系の最近の発展は、癌研究におけるこれら技法のさらに広い使用の到来を告げる可能性がある。これら分子造影系の一部は、医師が体のどこに腫瘍があるかを見るだけでなく、腫瘍行動および/または治療剤の応答に影響する特定の分子、細胞および生物学的過程の発現および活性も可視化することを可能とする(Condeelis and Weissleder, "In vivo imaging in cancer," Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 2(12):a003848 (2010))。PETの感受性および解像度と結びついた抗体特異性は、組織サンプルにおける抗原の発現のモニタリングおよびアッセイに特に魅力的な、免疫PET造影となる(McCabe and Wu, "Positive progress in immunoPET-not just a coincidence," Cancer Biother. Radiopharm. 25(3):253-61 (2010); Olafsen et al., "ImmunoPET imaging of B-cell lymphoma using 124I-anti-CD20 scFv dimers (diabodies)," Protein Eng. Des. Sel. 23(4):243-9 (2010))。本方法の何れかのある実施態様において、PD-L1発現は免疫PET造影によりアッセイされる。本方法の何れかのある実施態様において、試験組織サンプルにおけるPD-L1を発現する細胞の割合を、試験組織サンプルにおける細胞表面のPD-L1ポリペプチドの存在を決定するためのアッセイの実施により評価する。ある実施態様において、試験組織サンプルはFFPE組織サンプルである。他の実施態様において、PD-L1ポリペプチドの存在を、IHCアッセイにより決定する。さらなる実施態様において、IHCアッセイは、自動化工程により実施される。ある実施態様において、IHCアッセイは、PD-L1ポリペプチドに結合する抗PD-L1モノクローナル抗体を使用して、実施される。
【0113】
本方法のある実施態様において、自動化IHC方法を、FFPE組織検体における細胞表面のPD-L1の発現のアッセイに使用する。本発明は、試験組織サンプルにおけるヒトPD-L1抗原の存在を検出するまたはヒトPD-L1抗原のレベルもしくは抗原を発現するサンプルにおける細胞の割合を定量する方法を提供し、この方法は、試験サンプルおよび陰性対照サンプルと、ヒトPD-L1に特異的に結合するモノクローナル抗体を、抗体またはその一部とヒトPD-L1の複合体の形成を可能とする条件下で接触させることを含む。ある実施態様において、試験および対照組織サンプルはFFPEサンプルである。次いで、複合体形成を検出し、ここで、試験サンプルと陰性対照サンプルの間の複合体形成の差異が、サンプルにおけるヒトPD-L1抗原の存在の指標である。種々の方法を、PD-L1発現の定量に使用する。
【0114】
特定の実施態様において、自動化IHC方法は、(a)自動染色装置にマウントした組織切片を脱パラフィン処理および再水和し、(b)デクローキングチャンバーおよびpH6緩衝液を使用して、110℃で10分加熱して、抗原を回収し、(c)自動染色装置に試薬を設定し、そして(d)自動染色装置を、組織検体内在性ペルオキシダーゼ中和;スライド上の非特異的タンパク質結合部位遮断;スライドと一次抗体のインキュベート;自動染色装置を、組織検体内在性ペルオキシダーゼ中和;スライド上の非特異的タンパク質結合部位遮断;スライドと一次抗体のインキュベート;一次後遮断剤とのインキュベート;NovoLinkポリマーとのインキュベート;色素原基質添加および展開;およびヘマトキシリンでの対比染色の段階を含むように、起動させることを含む;NovoLinkポリマーとのインキュベート;色素原基質添加および展開;およびヘマトキシリンでの対比染色の段階を含むように、起動させることを含む。
【0115】
腫瘍組織サンプルでPD-L1発現を評価するために、病理学者は、顕微鏡各視野における膜PD-L1腫瘍細胞数を試験し、思考的に陽性である細胞のパーセンテージを推定し、次いで最終パーセンテージを得るために標準化する。種々の染色高度を、0/陰性、1+/弱、2+/中および3+/強と規定する。一般に、パーセンテージ値はまず0および3+バケットに割り当てられ、次いで、中間の1+および2+強度が考慮される。高度に不均一な組織について、検体をゾーンに分け、各ゾーンを別々に点数化し、次いで、パーセンテージ値の1つのセットに合わせる。種々の染色強度の陰性および陽性細胞のパーセンテージを各領域から決定し、中央値を各ゾーンに与える。最終パーセンテージ値を、陰性、1+、2+および3+の各染色強度カテゴリーについて、組織に付与する。全染色強度の合成は100%である必要がある。ある実施態様において、PD-L1陽性とするのに必要な細胞数の閾値は少なくとも約100、少なくとも約125、少なくとも約150、少なくとも約175または少なくとも約200細胞である。ある実施態様において、PD-L1陽性とするのに必要な細胞数の閾値は少なくとも約100細胞である。
【0116】
染色を、マクロファージおよびリンパ球などの腫瘍浸潤性炎症性細胞でも評価する。ほとんどの場合、マクロファージは、染色が大部分のマクロファージで観察されるため、内部陽性対照として働く。3+強度で染色される必要はないが、マクロファージが染色されないのは、何らかの技術的不成功を除外するために考慮すべきである。マクロファージおよびリンパ球は、原形質膜染色について評価され、各細胞カテゴリーについて陽性または陰性であるとしてのみ全サンプルについて記録される。染色はまた外側/内側腫瘍免疫細胞指定によっても特徴付けされる。“内側”は、免疫細胞が腫瘍組織内および/または腫瘍細胞間で物理的に介入されることなく腫瘍領域境界上にあることを意味する。“外側”は、腫瘍と物理的結合がなく、免疫細胞は接続組織または何らかの関連隣接組織に付随する末梢に見られることを意味する。
【0117】
これらの点数化方法のある実施態様において、サンプルは、独立して操作する2名の病理学者により点数化され、点数がその後固定される。ある他の実施態様において、陽性および陰性細胞の同定を、適切なソフトウェアを使用して点数化する。
【0118】
ヒストスコアは、IHCデータのより定量的手段として使用される。ヒストスコアは、次のとおり計算される。
ヒストスコア=[(%腫瘍×1(低強度))+(%腫瘍×2(中強度))+(%腫瘍×3(高強度)]
【0119】
ヒストスコア決定のために、病理学者は検体内の各強度カテゴリーの染色細胞のパーセンテージを推定する。大部分のバイオマーカーの発現が不均一であるため、ヒストスコアは発現全体の真の表現である。最終ヒストスコア範囲は0(無発現)~300(最大発現)である。
【0120】
試験組織サンプルIHCにおけるPD-L1発現を定量する別の手段は、腫瘍浸潤性炎症性細胞によるPD-L1発現パーセントで乗算した炎症の密度として規定されるスコアである、適合炎症スコア(AIS)の決定である(Taube et al., "Colocalization of inflammatory response with B7-h1 expression in human melanocytic lesions supports an adaptive resistance mechanism of immune escape," Sci. Transl. Med. 4(127):127ra37 (2012))。
【0121】
ある実施態様において、腫瘍(例えば、HL由来腫瘍)のPD-L1発現レベルは、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または約100%である。他の実施態様において、腫瘍のPD-L1状態は、少なくとも約1%である。他の実施態様において、対象のPD-L1状態は、少なくとも約5%である。ある実施態様において、腫瘍のPD-L1状態は、少なくとも約10%である。ある実施態様において、腫瘍のPD-L1状態は、少なくとも約25%である。特定の実施態様において、腫瘍のPD-L1状態は、少なくとも約50%である。
【0122】
本方法は、あらゆるタイプのホジキンリンパ腫(古典的ホジキンリンパ腫とも称する)を処置し得る。ある実施態様において、ホジキンリンパ腫はcHLまたは結節性リンパ球優勢型ホジキンリンパ腫である。ある実施態様において、ホジキンリンパ腫は、結節性硬化性、混合細胞型、リンパ球富、リンパ球枯渇またはリンパ球優勢からなる群から選択されるホジキンリンパ腫である。ある実施態様において、対象は、病気を有しているかまたはエプスタイン・バーウイルス(EBV)に感染している。
【0123】
本方法は、あらゆるステージのホジキンリンパ腫を処置し得る。ホジキンリンパ腫についてステージI、ステージII、ステージIIIおよびステージIVの少なくとも4ステージが使用される。ステージIにおいて、癌は1リンパ節領域または1臓器に限られる。ステージIIにおいて、癌は2リンパ節領域にあるかまたは癌は1臓器と隣接リンパ節に侵入しているが、癌はなお横隔膜の上または下の体の一部に限定されている。ステージIIIにおいて、癌は横隔膜の上および下の両方のリンパ節に移動しており、癌はまたリンパ節群近くの組織または臓器の一部または脾臓にも存在し得る。ステージIVにおいて、癌細胞1以上の組織の数部分にある。ステージIVホジキンリンパ腫はリンパ節だけでなく、または肝臓、肺または骨などの体の他の部分にも影響する。ホジキンリンパ腫はまたカテゴリー“A”および“Bにも分類される”。Aは、患者が癌の結果として何ら顕著な症状を有さないことを意味する。Bは、対象が、持続性発熱、意図しない体重減少または重度寝汗などの顕著な徴候および症状を有し得ることを示す。
【0124】
抗PD-1抗体および抗PD-L1抗体
本発明の方法に使用するのに適する抗PD-1抗体は、PD-1に高特異性および親和性で結合し、PD-L1の結合を遮断し、PD-1シグナル伝達経路の免疫抑制作用を阻止する、抗体である。ここに記載する治療方法の何れにおいても、抗PD-1または抗PD-L1“抗体”は、それぞれ、PD-1またはPD-L1受容体に結合し、リガンド結合阻止および免疫系上方制御において抗体全体に類する機能的性質を示す、抗原結合部分を含む。ある実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、ヒトPD-1への結合についてニボルマブと交差競合する。他の実施態様において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒトPD-L1への結合についてBMS-936559、MPDL3280A、MEDI4736またはMSB0010718Cと結合を競合する。
【0125】
他の実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分は、キメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体またはその一部である。ヒト対象処置のためのある実施態様において、抗体はヒト化抗体である。ヒト対象処置のための他の実施態様において、抗体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプの抗体が使用され得る。
【0126】
ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分がヒトIgG1またはIgG4アイソタイプのものである重鎖定常領域を含む。ある他の実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分のIgG4重鎖定常領域の配列は、ヒンジ領域におけるセリン残基をIgG1アイソタイプ抗体における対応する位置で通常見られるプロリン残基に置き換える、S228P変異を含む。ニボルマブに存在するこの変異は、野生型IgG4抗体に付随するFc受容体活性化について低親和性を維持しながら、内因性IgG4抗体とのFabアーム交換を阻止する(Wang et al., In vitro characterization of the anti-PD-1 antibody nivolumab, BMS-936558, and in vivo toxicology in non-human primates, Cancer Imm Res, 2(9):846-56 (2014))。さらに他の実施態様において、抗体は、ヒトカッパまたはラムダ定常領域である軽鎖定常領域を含む。他の実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分はモノクローナル抗体またはその抗原結合部分である。
【0127】
高親和性でPD-1に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体は、米国特許8,008,449に開示されている。その他抗PD-1モノクローナル抗体は、例えば、米国特許6,808,710、7,488,802、8,168,757および8,354,509およびPCT公開WO2012/145493に開示されている。米国特許8,008,449に開示の抗PD-1ヒトモノクローナル抗体の各々は、次の特徴の1以上を示すことが示されている:(a)Biacoreバイオセンサーシステムを使用する表面プラズモン共鳴により決定して、ヒトPD-1に1×10-7M以下のKで結合する、(bヒトCD28、CTLA-4および/またはICOSに実質的に結合しない;(c)混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてT細胞増殖を増加させる;(d)MLRアッセイにおいてインターフェロン-γ産生を増加させる;(e)MLRアッセイにおいてIL-2分泌を増加させる;(f)ヒトPD-1およびカニクイザルPD-1に結合する;(g)PD-L1および/またはPD-L2のPD-1への結合を阻害する;(h)抗原特異的記憶応答を刺激する;(i)抗体応答を刺激する;および(j)インビボで腫瘍細胞増殖を阻害する。本発明において使用可能な抗PD-1抗体は、ヒトPD-1に特異的に結合し、前記特性の少なくとも1つ、ある実施態様において、少なくとも5つを示す、モノクローナル抗体を含む。ある実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブである。ある実施態様において、抗PD-1抗体はペンブロリズマブである。
【0128】
ある実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブである。ニボルマブ(“オプジーボ(登録商標)”としても知られる;以前は5C4、BMS-936558、MDX-1106またはONO-4538と命名)は、PD-1リガンド(PD-L1およびPD-L2)との相互作用を選択的に阻害し、それにより、抗腫瘍T細胞機能の下方制御を遮断する、完全ヒトIgG4(S228P)PD-1免疫チェックポイント阻害剤抗体である(米国特許8,008,449;Wang et al., In vitro characterization of the anti-PD-1 antibody nivolumab, BMS-936558, and in vivo toxicology in non-human primates, Cancer Imm Res, 2(9):846-56 (2014))。他の実施態様において、抗PD-1抗体またはそのフラグメントは、ニボルマブと交差競合する。他の実施態様において、抗PD-1抗体またはそのフラグメントは、ニボルマブと同じエピトープに結合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ニボルマブと同じCDRを有する。
【0129】
他の実施態様において、抗PD-1抗体(またはその抗原結合部分)は、ペンブロリズマブと交差競合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ペンブロリズマブと同じエピトープに結合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ペンブロリズマブと同じCDRを有する。他の実施態様において、抗PD-1抗体はペンブロリズマブである。ペンブロリズマブ(“キイトルーダ(登録商標)”、ランブロリズマブおよびMK-3475としても知られる)は、ヒト細胞表面受容体PD-1(プログラム死-1またはプログラム細胞死-1)に対するヒト化モノクローナルIgG4抗体である。ペンブロリズマブは、例えば、米国特許8,354,509および8,900,587に記載されているhttp://www.cancer.gov/drugdictionary?cdrid=69578もまた参照のこと(最終アクセス:2014年12月14日)。ペンブロリズマブは、再発性または難治性黒色腫の処置について、FDAにより承認されている。
【0130】
他の実施態様において、抗PD-1抗体(またはその抗原結合部分)は、MEDI0680と交差競合する。さらに他の実施態様において、抗PD-1抗体は、MEDI0680と同じエピトープに結合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、MEDI0680と同じCDRを有する。他の実施態様において、抗PD-1抗体は、モノクローナル抗体であるMEDI0680(以前はAMP-514)である。MEDI0680は、例えば、米国特許8,609,089B2またはhttp://www.cancer.gov/drugdictionary?cdrid=756047(最終アクセス:2014年12月14日)に記載されている。
【0131】
ある実施態様において、第一抗体は抗PD-1アンタゴニストである。抗PD-1アンタゴニストの一例はB7-DC Fc融合タンパク質であるAMP-224である。AMP-224は、米国公開2013/0017199またはhttp://www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-drug?cdrid=700595(最終アクセス:2015年7月8日)に記載されている。
【0132】
他の実施態様において、抗PD-1抗体(またはその抗原結合部分)は、BGB-A317と交差競合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、BGB-A317と同じエピトープに結合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、BGB-A317と同じCDRを有する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒト化モノクローナル抗体であるBGB-A317である。BGB-A317は米国公開2015/0079109に記載される。
【0133】
他の実施態様において、抗PD-1抗体(またはその抗原結合部分)は、INCSHR1210(SHR-1210)と交差競合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、INCSHR1210(SHR-1210)と同じエピトープに結合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、INCSHR1210(SHR-1210)と同じCDRを有する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒトモノクローナル抗体であるINCSHR1210(SHR-1210)である。INCSHR1210(SHR-1210)は、WO2015/085847に記載される。
【0134】
他の実施態様において、抗PD-1抗体(またはその抗原結合部分)は、REGN-2810と交差競合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、REGN-2810と同じエピトープに結合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、REGN-2810と同じCDRを有する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒトモノクローナル抗体であるREGN-2810である。REGN-2810はWO2015/112800に記載される。
【0135】
他の実施態様において、抗PD-1抗体(またはその抗原結合部分)は、PDR001と交差競合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、PDR001と同じエピトープに結合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、PDR001と同じCDRを有する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒト化モノクローナル抗体であるPDR001である。PDR001は、WO2015/112900に記載される。
【0136】
他の実施態様において、抗PD-1抗体(またはその抗原結合部分)は、TSR-042(ANB011)と交差競合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、TSR-042(ANB011)と同じエピトープに結合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、TSR-042(ANB011)と同じCDRを有する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒト化モノクローナル抗体であるTSR-042(ANB011)である。TSR-042(ANB011)は、WO2014/179664に記載される。
【0137】
他の実施態様において、抗PD-1抗体(またはその抗原結合部分)は、STI-1110と交差競合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、STI-1110と同じエピトープに結合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、STI-1110と同じCDRを有する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒトモノクローナル抗体であるSTI-1110である。STI-1110はWO2014/194302に記載される。
【0138】
本発明の方法において使用可能な抗PD-1抗体は、ヒトPD-1に特異的に結合し、ヒトPD-1への結合についてニボルマブと交差競合する単離抗体も含む(例えば、米国特許8,008,449および8,779,105;WO2013/173223参照)。抗原への結合について抗体が交差競合する能力は、これらの抗体が抗原の同じエピトープ領域に結合し、その特定のエピトープ領域への他方の交差競合抗体の結合を立体的に妨害することを示す。これらの交差競合抗体は、PD-1の同じエピトープ領域への結合により、ニボルマブと極めて類似する機能的性質を有すると予測される。交差競合抗体は、Biacore解析、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーなどの標準PD-1結合アッセイにおいて、ニボルマブと交差競合する能力に基づき、容易に同定され得る(例えば、WO2013/173223参照)。
【0139】
ある実施態様において、ニボルマブとヒトPD-1の結合について交差競合するかまたはヒトPD-1の同じエピトープ領域に結合する抗体は、モノクローナル抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合抗体は、キメラ抗体またはヒト化またはヒト抗体である。このようなキメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体は、当分野で周知の方法により製造および単離し得る。
【0140】
本発明の方法において使用可能な抗PD-1抗体はまた上記抗体の抗原結合部分も含む。抗体の抗原結合機能が、完全長抗体のフラグメントにより発揮され得ることは、十分に証明されている。抗体の“抗原結合部分”なる用語に包含される結合フラグメントの例は、(i)V、V、CおよびCH1ドメインからなる単価フラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域のジスルフィド架橋により連結された2Fabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)フラグメント;(iii)VおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単アームのVおよびVドメインからなるFvフラグメント;またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0141】
本発明の組成物における使用に適する抗PD-1抗体は、高特異性および親和性でPD-1に結合し、PD-L1およびまたはPD-L2の結合を遮断し、PD-1シグナル伝達経路の免疫抑制効果を阻止する抗体である。ここに記載する組成物または方法の何れにおいても、抗PD-1“抗体”は、PD-1受容体に結合し、リガンド結合阻止および免疫系上方制御について抗体全体に類似する機能的性質を示す、抗原結合部分またはフラグメントを含む。ある実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、ヒトPD-1への結合についてニボルマブと交差競合する。他の実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、キメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体またはその一部である。ある実施態様において、抗体はヒト化抗体である。他の実施態様において、抗体はヒト抗体である。IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプの抗体が使用され得る。
【0142】
抗PD-1抗体の投与を含む、ここに記載する治療方法の何れかのある実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブである。他の実施態様において、抗PD-1抗体はペンブロリズマブである。他の実施態様において、抗PD-1抗体は、米国特許8,008,449に記載されるヒト抗体17D8、2D3、4H1、4A11、7D3および5F4から選択される。さらに他の実施態様において、抗PD-1抗体はMEDI0608(以前はAMP-514)またはAMP-224である。
【0143】
ある実施態様において、本方法において使用される抗PD-1抗体を他のPD-1または抗PD-L1アンタゴニストと置き換え得る。例えば、抗PD-L1抗体がPD-1とPD-L1の相互作用を阻止し、それによりPD-1のシグナル伝達経路に類似の効果を発揮するため、抗PD-L1抗体をここに開示する方法における抗PD-1抗体の使用に置き換え得る。それ故に、ある実施態様において、本発明は、対象に治療有効量の抗PD-L1抗体を投与することを含む、ホジキンリンパ腫を有する対象を処置する方法に関する。ある実施態様において、抗PD-L1抗体はBMS-936559(以前は12A4またはMDX-1105)である(例えば、米国特許7,943,743;WO2013/173223参照)。他の実施態様において、抗PD-L1抗体はMPDL3280A(別名RG7446またはアテゾリズマブ)(例えば、Herbst et al. (2013) J Clin Oncol 31(suppl):3000. Abstract;米国特許8,217,149参照)、MEDI4736(別名デュルバルマブ;In: Proceedings from the European Cancer Congress 2013; September 27-October 1, 2013; Amsterdam, The Netherlands. Abstract 802、米国特許8,779,108または2014年5月6日出願のUS2014/0356353参照)またはMSB0010718C(別名アベルマブ;US2014/0341917参照)である。他の実施態様において、抗PD-L1抗体はCX-072(別名CytomX;WO2016/149201参照)である。ある実施態様において、上記PD-L1抗体とヒトPD-L1への結合について交差競合するか、またはヒトPD-L1の同じエピトープに結合する抗体はモノクローナル抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合抗体はキメラ抗体でも、ヒト化またはヒト抗体でもあり得る。このようなキメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体は、当分野で周知の方法により製造および単離し得る。
【0144】
抗PD-1および抗PD-L1が同じシグナル伝達経路を標的とし、治験において多様な癌において同等レベルの類似性を示しているため(Brahmer et al., (2012) N Engl J Med 366:2455-65; Topalian et al., (2012a) N Engl J Med 366:2443-54;WO2013/173223参照)、抗PD-L1抗体は、ここに記載する治療方法の何れにおいても抗PD-1抗体にの置換され得る。ある実施態様において、抗PD-L1抗体はBMS-936559(以前は12A4またはMDX-1105)である(例えば、米国特許7,943,743;WO2013/173223参照)。他の実施態様において、抗PD-L1抗体はMPDL3280A(別名RG7446またはアテゾリズマブ)(例えば、Herbst et al., (2013) J Clin Oncol 31(suppl):3000. Abstract;米国特許8,217,149参照)またはMEDI4736(Khleif (2013) In: Proceedings from the European Cancer Congress 2013; September 27-October 1, 2013; Amsterdam, The Netherlands. Abstract 802)である。ある実施態様において、上記PD-L1抗体とヒトPD-L1への結合について交差競合するか、またはヒトPD-L1の同じエピトープに結合する抗体はモノクローナル抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合抗体はキメラ抗体でも、ヒト化またはヒト抗体でもあり得る。このようなキメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体は、当分野で周知の方法により製造および単離し得る。
【0145】
抗PD-1または抗PD-L1抗体との組み合わせ治療
ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は、1以上の他の抗癌剤と組み合わせで投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を、単剤療法として1回以上まず投与し、次いで、さらなる抗癌剤との組み合わせで投与する。ある実施態様において、他の抗癌剤は、ここに記載するまたは当分野で知られるあらゆる抗癌剤である。ある実施態様において、他の抗癌剤は抗CTLA-4抗体である。ある実施態様において、さらなる抗癌剤は、ドキソルビシン、ビンブラスチンおよびダカルバジンの組み合わせである。ある実施態様において、他の抗癌剤は、化学療法剤または白金ベースダブレット化学療法剤(PT-DC)である。他の実施態様において、抗癌剤は、白金剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、有糸分裂阻害剤(例えば、パクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、ドセタキセル、タキソテール、docecad)、フッ素化ビンカアルカロイド(例えば、ビンフルニン、javlor)、ビノレルビン、ビンブラスチン、エトポシドまたはペメトレキセドゲムシタビンである。
【0146】
ある実施態様において、他の抗癌剤は、アドセトリス(ブレンツキシマブ ベドチン)、Ambochlorin(クロラムブシル)、アンボクロリン(クロラムブシル)、Becenum(カルムスチン)、BiCNU(カルムスチン)、ブレノキサン(ブレオマイシン)、ブレオマイシン、ブレンツキシマブ ベドチン、Carmubris(カルムスチン)、カルムスチン、クロラムブシル、Clafen(シクロホスファミド)、シクロホスファミド、シトキサン(シクロホスファミド)、ダカルバジン、塩酸ドキソルビシン、DTIC-Dome(ダカルバジン)、リューケラン(クロラムブシル)、Linfolizin(クロラムブシル)、ロムスチン、マチュレーン(塩酸プロカルバジン)、塩酸メクロレタミン、Mustargen(塩酸メクロレタミン)、Neosar(シクロホスファミド)、プレドニゾン、塩酸プロカルバジン、Velban(硫酸ビンブラスチン)、Velsar(硫酸ビンブラスチン)、硫酸ビンブラスチン、Vincasar PFS(硫酸ビンクリスチン)および/または硫酸ビンクリスチンである。他の実施態様において、他の抗癌剤は、ABVD、ABVE、ABVE-PC、BEACOPP、COPDAC、COPP、COPP-ABV、ICE、MOPP、OEPA、OPPA、スタンフォードVおよび/またはVAMPからの薬物の任意の組み合わせである(http://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/drugs/hodgkin-lymphoma、最終アクセス2016年5月27日参照)。
【0147】
特定の実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と組み合わせて投与される抗癌剤はドキソルビシン、ビンブラスチンおよびダカルバジンである。他の実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と組み合わせて投与される抗癌剤はドキソルビシン、ビンブラスチンおよびダカルバジンであるが、ブレオマイシンを含まない。
【0148】
ある実施態様において、他の抗癌剤は、当分野で知られる任意の他の抗癌剤である。ある実施態様において、2以上のさらなる抗癌剤が抗PD-1または抗PD-L1抗体と組み合わせて投与される。ある実施態様において、PD-1またはPD-L1抗体を外科的切除、放射線照射治療および/または幹細胞移植と組み合わせる。
【0149】
ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を他の免疫療法と組み合わせ得る。ある実施態様において、免疫チェックポイントの遮断が関与する免疫療法が単剤療法として投与される。他の実施態様において、免疫チェックポイントの遮断が関与する免疫療法が他の治療と組み合わせて投与される。ある実施態様において、ホジキンリンパ腫患者は、種々の免疫治療剤の組み合わせにより利益を得られ得る。
【0150】
抗CTLA-4抗体
ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は抗CTLA-4抗体と組み合わされる。本組み合わせに有用な抗CTLA-4抗体は、CTLA-4とヒトB7受容体の相互作用を妨害するようにヒトCTLA-4に結合し得る。CTLA-4とヒトB7の相互作用がCTLA-4受容体担持T細胞の不活性化をもたらすシグナルを伝達するため、該相互作用の妨害は、このようなT細胞の活性化を効果的に誘発、増強または延長し、それにより、免疫応答を誘発、増強または延長する。
【0151】
高親和性でCTLA-4に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体は米国特許6,984,720および7,605,238に開示されている。他の抗CTLA-4モノクローナル抗体は、例えば、米国特許5,977,318、6,051,227、6,682,736および7,034,121に記載されている。米国特許6,984,720および7,605,238に開示の抗CTLA-4ヒトモノクローナル抗体は、次の1以上の特性を示すことが示されている。(a)Biacore解析により決定して、少なくとも約10-1または約10-1または約1010-1~1011-1またはそれ以上の平衡結合定数(K)により反映される結合親和性でヒトCTLA-4に特異的に結合する、(b)少なくとも約10、約10または約10-1-1の動態結合定数(k);(c)少なくとも約10、約10または約10-1-1の動態解離定数(k);および(d)CTLA-4のB7-1(CD80)およびB7-2(CD86)への結合を阻害する。本発明において有用な抗CTLA-4抗体は、ヒトCTLA-4に特異的に結合し、前記特性の少なくとも1つ、少なくとも2つ、またはある実施態様において、少なくとも3つを示す、モノクローナル抗体を含む。臨床的抗CTLA-4抗体の例は、米国特許6,984,720に開示のヒトモノクローナル抗体10D1(現在イピリムマブとして知られ、ヤーボイ(登録商標)として市販)である。イピリムマブは、ここに記載する方法において使用するための抗CTLA-4抗体である。本方法において有用な他の抗CTLA-4抗体はトレメリムマブである。
【0152】
組み合わせのために有用な臨床的抗CTLA-4抗体の例は、米国特許6,984,720に開示のヒトモノクローナル抗体10D1(現在イピリムマブとして知られ、ヤーボイ(登録商標)として市販)である。イピリムマブは、ここに記載する方法において使用するための抗CTLA-4抗体である。イピリムマブは、CTLA-4のそのB7リガンドへの結合を遮断し、それによりT細胞活性化を刺激し、進行型黒色腫を有する患者における全生存期間(OS)を改善する完全ヒト、IgG1モノクローナル抗体である。
【0153】
本方法のために有用な他の抗CTLA-4抗体はトレメリムマブ(別名CP-675,206)である。トレメリムマブはヒトIgG2モノクローナル抗CTLA-4抗体である。トレメリムマブはWO/2012/122444、米国公開2012/263677またはWO公開2007/113648A2に記載される。
【0154】
本発明の方法において有用な抗CTLA-4抗体はまた、ヒトCTLA-4に特異的に結合し、ヒトCTLA-4への結合についてイピリムマブまたはトレメリムマブと交差競合するかまたはヒトCTLA-4のイピリムマブまたはトレメリムマブと同じエピトープ領域に結合する、単離抗体も含む。ある実施態様において、イピリムマブまたはトレメリムマブとヒトCTLA-4の結合について交差競合するまたはイピリムマブまたはトレメリムマブとCTLA-4の同じエピトープ領域に結合する抗体は、ヒトIgG1アイソタイプの重鎖を含む抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合抗体は、キメラ抗体またはヒト化またはヒト抗体である。有用な抗CTLA-4抗体はまたFab、F(ab’)、FdまたはFvフラグメントなどの上記抗体の抗原結合部分も含む。
【0155】
イピリムマブ(ヤーボイ(登録商標))は、CTLA-4のそのB7リガンドへの結合を遮断し、それによりT細胞活性化を刺激し、進行型黒色腫を有する患者における全生存期間(OS)を改善する完全ヒト、IgG1モノクローナル抗体である(Hodi et al., (2010) N Engl J Med 363:711-23)。フェーズ1治験におけるニボルマブとイピリムマブの同時治療は、進行型黒色腫を有する患者の相当な割合で迅速かつ深い腫瘍退縮を生じ、何れか抗体単独より有意に有効であった(Wolchok et al., (2013) N Engl J Med 369(2):122-33;WO2013/173223)。
【0156】
化学療法剤
ある実施態様において、抗PD-1抗体を、当分野で知られる任意の化学療法剤と組み合わせて投与する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ドキソルビシン、ビンブラスチンおよびダカルバジンと組み合わせて投与される。ある実施態様において、ドキソルビシン、ビンブラスチンおよびダカルバジンの組み合わせは、約1週、2週、3週または4週に1回投与される。ある実施態様において、ドキソルビシンは、約10mg/m~40mg/m、約10mg/m~30mg/mまたは約20mg/m~30mg/mの用量で投与される。他の実施態様において、ビンブラスチンは、約0.1mg/m~約10mg/m、約1mg/m~約10mg/mまたは約5mg/m~約10mg/mの用量で投与される。ある実施態様において、ダカルバジンは、約200mg/m~500mg/m、約250mg/m~約500mg/mまたは約300mg/m~400mg/mの用量で投与される。ある実施態様において、ドキソルビシンは、約10mg/m、約15mg/m、約20mg/m、約25mg/m、約30mg/m、約35mg/m、約40mg/m、約45mg/mまたは約50mg/mの用量で投与される。ある実施態様において、ビンブラスチンは、約0.1mg/m、約1mg/m、約2mg/m、約3mg/m、約4mg/m、約5mg/m、約6mg/m、約7mg/m、約8mg/m、約9mg/m、約10mg/m、約11mg/m、約12mg/m、約13mg/m、約14mg/m、約15mg/mまたは約20mg/mの用量で投与される。ある実施態様において、ダカルバジンは、約200mg/m、約225mg/m、約250mg/m、約275mg/m、約300mg/m、約325mg/m、約350mg/m、約375mg/m、約400mg/m、約425mg/m、約450mg/m、約475mg/mまたは約500mg/mの用量で投与される。さらなる実施態様において、約2週に1回、ドキソルビシンは25mg/mの用量で投与され、ビンブラスチンは6mg/mの用量で投与され、ダカルバジンは375mg/mの用量で投与される。なおさらなる実施態様において、対象は、ブレオマイシンを投与されない。
【0157】
ある実施態様において、化学療法剤は白金ベースの化学療法剤である。白金ベースの化学療法剤は、白金の配位錯体である。ある実施態様において、白金ベースの化学療法剤は白金ダブレット化学療法剤である。ある実施態様において、化学療法剤は、特定の適応症について承認された用量で投与される。他の実施態様において、化学療法剤は、ここに開示する任意の用量で投与される。ある実施態様において、白金ベースの化学療法剤は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、ネダプラチン、トリプラチン、リポプラチンまたはこれらの組み合わせである。ある実施態様において、白金ベースの化学療法剤は、当分野で知られる任意の他の白金ベースの化学療法剤である。ある実施態様において、化学療法剤はヌクレオチドアナログゲムシタビンである。ある実施態様において、化学療法剤は葉酸代謝拮抗剤である。ある実施態様において、葉酸代謝拮抗剤はペメトレキセドである。ある実施態様において、化学療法剤はタキサンである。他の実施態様において、タキサンはパクリタキセルである。他の実施態様において、化学療法剤はヌクレオシドアナログである。ある実施態様において、ヌクレオシドアナログはゲムシタビンである。ある実施態様において、化学療法剤は当分野で知られる任意の他の化学療法剤である。ある実施態様において、少なくとも1、少なくとも2またはそれ以上の化学療法剤が抗PD-1抗体と組み合わせて投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体はゲムシタビンおよびシスプラチンと組み合わせて投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体はペメトレキセドおよびシスプラチンと組み合わせて投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体はゲムシタビンおよびペメトレキセドと組み合わせて投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体はパクリタキセルおよびカルボプラチンと組み合わせて投与される。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体がさらに投与される。
【0158】
医薬組成物および投与量
本発明の治療剤は、抗体および薬学的に許容される担体を含む組成物、例えば、医薬組成物を構成し得る。ここで使用する“薬学的に許容される担体”は、生理学的に適合性である、任意かつ全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含む。ある実施態様において、抗体含有組成物のための担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経腸、脊髄または上皮投与(例えば、注射または点滴による)に適しており、ある組成物のための担体は、非経腸ではない投与、例えば、経口投与に適する。本発明の医薬組成物は、1以上の薬学的に許容される塩、抗酸化剤、水性および非水性担体および/または防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含み得る。
【0159】
投与量レジメンは、最適な所望の応答、例えば、最大治療応答および/または最小有害作用を提供するように調節される。ある実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原部分は、体重に基づく用量で投与される。単剤療法または他の抗癌剤との組み合わせで、体重に基づく用量での抗PD-1抗体投与のために、投与量は、約0.01mg/kg~約20mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約5mg/kg、約1mg/kg~約5mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約7.5mg/kg~約12.5mg/kgまたは約0.1mg/kg~約30mg/患者体重kgの範囲であり得る。例えば、投与量は、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kgまたは約10mg/kg体重または約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kgまたは約5mg/kg体重であり得る。投与スケジュールは、一般に、抗体の典型的薬物動態性質に基づき、持続する受容体占有(RO)をもたらす暴露を達成するために設計される。処置レジメの例は、約週に1回、約2週に1回、約3週に1回、約4週に1回、約1か月に1回、約3~6か月に1回またはそれより長い間隔での投与を伴う。ある実施態様において、などの抗PD-1抗体は、対象に約2週に1回投与される。他の実施態様において、抗体は、約3週に1回投与される。投与量およびスケジュールを、処置の経過中に変えてよい。例えば、抗PD-1単剤療法の投与スケジュールは、抗体の(i)約2週毎を約6週サイクル;(ii)約3週毎を約6回、次いで、約3か月毎;(iii)約3週毎;(iv)約3mg/kg~約10mg/kgを1回、続いて約1mg/kgを約2~3週毎の投与を含み得る。IgG4抗体が一般に2~3週の半減期を有することを考慮して、本発明の抗PD-1抗体の投与量レジメンは静脈内投与による少なくとも約0.3mg/kg~少なくとも約10mg/kg体重、少なくとも約1mg/kg~少なくとも約5mg/kg体重または少なくとも約1mg/kg~少なくとも約3mg/kg体重を含み、抗体は、約6週までまたは約12週サイクルで完全奏功または疾患進行が確認されるまで、約14~21日毎に投与される。ある実施態様において、抗PD-1単剤療法は、疾患進行または許容されない毒性まで、3mg/kgを2週毎で投与される。ある実施態様において、ここに開示する抗体処置または任意の組み合わせ処置を、少なくとも約1か月、少なくとも約3か月、少なくとも約6か月、少なくとも約9か月、少なくとも約1年、少なくとも約18か月、少なくとも約24か月、少なくとも約3年、少なくとも約5年または少なくとも約10年続ける。
【0160】
他の抗癌剤と組み合わせて使用するとき、抗PD-1抗体の投与量は、単剤療法用量と比較して低減され得る。典型的3mg/kgより低いが、0.001mg/kgを下回らないニボルマブの投与量は、治療量以下の投与量である。ここでの方法において使用される抗PD-1抗体の治療量以下の用量は、0.001mg/kgを超え、3mg/kgより低い。ある実施態様において、治療量以下の用量は、約0.001mg/kg~約1mg/kg、約0.01mg/kg~約1mg/kg、約0.1mg/kg~約1mg/kgまたは約0.001mg/kg~約0.1mg/kg体重である。ある実施態様において、治療量以下の用量は、少なくとも約0.001mg/kg、少なくとも約0.005mg/kg、少なくとも約0.01mg/kg、少なくとも約0.05mg/kg、少なくとも約0.1mg/kg、少なくとも約0.5mg/kgまたは少なくとも約1.0mg/kg体重である。ニボルマブ0.3mg/kg~10mg/kg投与を受けた15対象からの受容体占有データは、PD-1占有率がこの投与範囲で用量無関係であると考えられることを示す。全投与量にわたり、平均占有率は85%(範囲、70%~97%)であり、平均プラトー占有率は72%(範囲、59%~81%)であった。ある実施態様において、0.3mg/kg投与は、最大生物活性に至るのに十分な暴露を可能とし得る。ニボルマブ0.3mg/kg~10mg/kg投与を受けた15対象からの受容体占有データは、PD-1占有率がこの投与範囲で用量無関係であると考えられることを示す。全投与量にわたり、平均占有率は85%(範囲、70%~97%)であり、平均プラトー占有率は72%(範囲、59%~81%)であった(Brahmer et al., (2010) J Clin Oncol 28:3167-75)。それ故に、0.3mg/kg投与は、最大生物活性に至るのに十分な暴露を可能とし得る。
【0161】
2週毎、約10mg/kgまで投与される高ニボルマブ単剤療法が最大耐用量(MTD)に達することなく達成されるが、相当な毒性が、チェックポイント阻害剤と抗血管形成治療の他の治験で報告されており(例えば、Johnson et al. (2013) Cancer Immunol Res 1:373-77; Rini et al. (2011) Cancer 117:758-67参照)、10mg/kgより低いニボルマブ用量の選択を支持する。
【0162】
ある実施態様において、抗PD-1抗体(または抗PD-L1抗体)の用量は、医薬組成物で固定用量である。他の実施態様において、本発明の方法は、均一用量(患者の体重と関係なく患者に与えられる用量)を用いて使用され得る。ある実施態様において、抗PD-1抗体の均一用量またはその抗原部分は少なくとも約100mg、120mg、140mg、160mg、180mg、200mg、220mg、240mg、260mg、280mg、300mg、400mg、420mg、440mg、460mg、480mg、500mg、520mg、540mg、560mgまたは600mgである。例えば、ニボルマブの均一用量は約240mgであり得る。例えば、ペンブロリズマブの均一用量は約200mgであり得る。ある実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、約240mgの用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、約360mgの用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、約480mgの用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体の均一用量またはその抗原部分は、約1週、2週、3週、4週、5週または6週に1回に投与される。ある実施態様において、360mgの抗PD-1抗体または抗原結合フラグメントを、対象に3週に1回投与する。他の実施態様において、480mgの抗PD-1抗体または抗原結合フラグメントを、対象に4週に1回投与する。
【0163】
イピリムマブ(ヤーボイ(登録商標))は、黒色腫の処置について、4回、3mg/kgを静脈内に3週に1回投与で承認されている。それ故に、ある実施態様において、約3mg/kgは、抗PD-1抗体との組み合わせで使用されるイピリムマブの最高投与量であるが、ある実施態様において、イピリムマブなどの抗CTLA-4抗体を、ニボルマブと組み合わせたとき、約2週または3週に1回、約0.3mg/kg~約10mg/kg、約0.5mg/kg~約10mg/kg、約0.5mg/kg~約5mg/kgまたは約1mg/kg~約5mg/kg体重の範囲内の用量であり得る。他の実施態様において、イピリムマブは、ニボルマブと異なる投与量スケジュールで投与される。ある実施態様において、イピリムマブは、約毎週、約2週毎、約3週毎、約4週毎、約5週毎、約6週毎、約7週毎、約8週毎、約9週毎、約10週毎、約11週毎、約12週毎または約15週毎に投与される。典型的な3週毎3mg/kgより低いが、0.001mg/kgを下回らないイピリムマブの投与量が、治療量以下の投与量である。ここでの方法において使用する抗CTLA-4抗体の用量は、0.001mg/kgを超え、3mg/kgより低い。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体の用量は、約0.001mg/kg-約1mg/kg、約0.01mg/kg~約1mg/kg、約0.1mg/kg~約1mg/kgまたは約0.001mg/kg~約0.1mg/kg体重である。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体の用量は、少なくとも約0.001mg/kg、少なくとも約0.005mg/kg、少なくとも約0.01mg/kg、少なくとも約0.05mg/kg、少なくとも約0.1mg/kg、少なくとも約0.5mg/kgまたは少なくとも約1.0mg/kg体重である。ある実施態様において、ニボルマブは2週毎に10mg/kgまでの静脈内投与に忍容性であるが、イピリムマブと組み合わせたとき、抗PD-1抗体の用量は約3mg/kgを超えない。ある実施態様において、リスク-ベネフィットおよびPK-PD評価に基づき、本発明の方法に有用な投与量は、約1mg/kgのニボルマブ+約3mg/kgのイピリムマブ、約3mg/kgのニボルマブ+約1mg/kgのイピリムマブまたは約3mg/kgのニボルマブ+約3mg/kgのイピリムマブの組み合わせを含み、各々約2~4週に1回、ある実施態様において、約2週に1回または約3週に1回の投与頻度で投与される。ある他の実施態様において、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kgまたは約5mg/kg、約2週に1回、約3週に1回または約4週に1回の投与量で投与されるイピリムマブと組み合わせて、ニボルマブは約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kgまたは約5mg/kgの投与量で投与される。
【0164】
ある実施態様において、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の組み合わせを、誘導期の対象に、1回、2回、3回または4回、約2週または3週に1回静脈内投与する。ある実施態様において、ニボルマブとイピリムマブの組み合わせを、誘導期に、約2週毎または約3週毎に約4回、静脈内投与する。誘導期の後に維持期があり、その間、抗PD-1抗体のみを処置が効果を示す限りまたは管理不可能な毒性もしくは疾患進行が生じるまで、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kgまたは約10mg/kgの投与量を約2週または3週毎に対象に投与する。ある実施態様において、ニボルマブを、維持期間中、約2週毎に約3mg/kg体重の用量で投与する。
【0165】
ある実施態様において、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体は単一組成物として製剤化され、ここで、抗PD-1抗体の用量および抗CTLA-4抗体の用量は、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:5、1:3、1:1、3:1、5:1、10:1、20:1、30:1、40:1または50:1比の固定用量で組み合わされる。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体の用量は、体重に係わらず患者に与えられる均一用量である。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体の均一用量は少なくとも約40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、120mg、140mg、160mg、180mgまたは200mgである。具体的実施態様において、抗CTLA-4抗体の均一用量は約80mgである。
【0166】
ニボルマブと他の抗癌剤の組み合わせについて、これらの薬剤は、それらの承認された投与量で投与される。処置は、臨床的有用性が観察される限りまたは許容されない毒性または疾患進行が生じるまで継続する。その場合でも、ある実施態様において、投与されるこれらの抗癌剤の投与量は、承認投与量より顕著に低く、すなわち、薬剤の治療量以下の投与量が抗PD-1抗体と組み合わせて投与される。抗PD-1抗体は、治験において単剤療法として最高有効性を生じることが示されている投与量で投与でき、例えば、約3mg/kgのニボルマブが約3週に1回(Topalian et al., (2012a) N Engl J Med 366:2443-54; Topalian et al., (2012b) Curr Opin Immunol 24:207-12)または顕著に低い用量、すなわち治療量以下の用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、約2週に1回、約3mg/kgで投与される。
【0167】
投与量および頻度は、対象における抗体の半減期により変わる。一般に、ヒト抗体が最長半減期を示し、ヒト化抗体、キメラ抗体および非ヒト抗体が続く。投与量および投与頻度は、処置が予防的か治療的かにより変わり得る。予防適用において、比較的低用量が、一般に、比較的少ない頻度で、長期間にわたり投与される。一部患者は、処置を生涯受け続ける。治療適用において、比較的短い間隔での比較的高用量が、疾患進行が低減または停止するまで、および患者が疾患症状の部分的または完全な改善を示すまで、必要とされることがある。その後、患者に予防レジメで投与し得る。
【0168】
本発明の医薬組成物における1以上の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に過度の毒性とならずに、特定の患者、組成物および投与方式について所望の治療効果を達成するのに有効である活性成分の量を得るために、変わり得る。選択投与量は、用いる本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、用いる特定の化合物の排泄速度、処置の期間、用いる特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または物質、処置する患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康状態および先の病歴および医薬分野で周知の同様の因子を含む多様な薬物動態因子による。本発明の組成物を、当分野で周知の多様な方法の1以上を使用する、1以上の投与経路により投与し得る。当業者には周知のとおり、投与経路および/または方式は、所望の結果により変わる。
【0169】
キット
また本発明の範囲内であるのは、治療使用のための抗PD-1抗体および、所望により、他の抗癌剤を含むキットである。キットは、一般に、キットの内容の意図される使用および使用指示を示すラベルを含む。用語ラベルは、キットに関しまたはキットと共にまたは他の方法でキットに付随するあらゆる書面または記録媒体を含む。従って、本発明は、ホジキンリンパ腫を有する対象を処置するためのキットを提供し、該キットは(a)ここに記載する任意の投与量のPD-1受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である抗癌剤;および、所望により、(b)ここに記載する何れかの治療方法において抗PD-1抗体を使用する指示を含む。ある実施態様において、キットは、所望により、他の抗癌剤(例えば、ドキソルビシン、ビンブラスチンおよびダカルバジン)およびその薬剤の使用の指示を含む。ある実施態様において、キットは、(a)と(b)の間に、腫瘍のPD-L1および/またはPD-L2発現を測定する段階の指示をさらに含む。ある実施態様において、キットは、腫瘍のPD-L1および/またはPD-L2発現を測定するための試薬を含む。ある実施態様において、PD-L1および/またはPD-L2発現は、抗PD-L1および/またはPD-L2抗体またはその抗原結合部分により測定される。
【0170】
本発明を、さらに次の実施例により説明し、これは、さらに限定するものと解釈してはならない。本明細書を通して引用した全ての引用文献の内容は、その内容を明示的に本明細書に包含させる
【0171】
先に出願した出願との相互引用:本発明は、2017年6月2日出願の米国仮出願62/344,880の利益を請求し、これは、その全体を引用により本明細書に包含させる。
【実施例
【0172】
実施例1
自己幹細胞移植(ASCT)および続くブレンツキシマブ ベドチンの不成功後のニボルマブ単剤療法でのcHLの処置
フェーズ2治験において、ASCTおよび続くブレンツキシマブ ベドチン不成功後のcHLを有する患者におけるニボルマブ単剤療法の有効性および安全性を決定した。本治験のプライマリーエンドポイントは、独立放射線審査委員会(IRRC)により評価される客観的奏効率(ORR)を含む。セカンダリーエンドポイントは、1)IRRC評価完全寛解(CR)、部分寛解(PR)および応答の期間(DOR);2)治験医評価ORRおよびDOR;3)安全性;および4)クオリティ・オブ・ライフ(QoL)を含む。
【0173】
方法
治験設計
本治験は、欧州、カナダおよび米国の34治験施設からのcHLを有する患者における進行中の、多施設-非比較、多コホート、フェーズ2登録治験の一部であった。
【0174】
図1に示すとおり、重要な編入基準は、1)ASCT、続いてブレンツキシマブ ベドチンでの先の処置;および2)(i)直近の処置後のPRを超える達成の不成功、(ii)CR後の再発または(iii)PRまたは疾患安定(SD)後の疾患進行(PD)を含む。
【0175】
上記編入基準に合う患者に、ニボルマブを2週毎に3mg/kgの投与量で投与した。処置を、疾患進行または許容されない毒性が生じるまで続けた。患者は、いつでもニボルマブ処置を中止し、造血幹細胞移植(SCT)に進むことを選択する選択肢を有した(図1参照)。
【0176】
評価
患者は、ニボルマブ処置に関連する有効性、安全性およびクオリティ・オブ・ライフ(QoL)について評価された。
【0177】
有効性を、2007 IWG基準に従い腫瘍応答を評価することにより、決定した。最初の1年間、腫瘍応答を、ベースラインおよび9週、17週、25週、37週および49週目にCTまたはMRIを使用して測定した。その後、腫瘍応答を97週目まで16週毎に測定した。97週後、応答を26週毎に測定した。FDG-PET走査をベースラインおよび17週および25週にまた行った。
【0178】
安全性を、処置の結果生じた全有害事象(AE)の評価により決定した。AEは、重症度に基づき分類し、疲労、点滴関連反応、発疹、発熱、関節痛、悪心、下痢、掻痒および間質性肺炎を含んだ(表4参照)。
【0179】
クオリティ・オブ・ライフを、EQ-5DおよびEuropean Organization for Research and Treatment of Cancer-Quality of Life Questionnaire-Core 30(EORTC QLQ-C30)を使用して決定した。
【0180】
統計解析
最初に計画された治験のサンプルサイズは、40%のORRを仮定し、5%の2側アルファを考慮して、ORRが≦20%であるヌル仮説を排除するための約93%検出力を提供するであろう60患者であった。しかしながら、80患者が治験医からの高度の要請および高率のスクリーニング不成功の可能性を考慮して、登録された。
【0181】
奏効までの期間評価を、カプラン・マイヤー法を使用して要約した。
【0182】
結果
患者
計80のcHLを有する患者が登録され、ニボルマブ処置を受けた。登録患者のベースライン特性は、表2に提供される。データベースロック時、80患者中51患者(64%)がニボルマブ処置のままであった。受けた回数の中央値は17(範囲3~25)であった。ニボルマブ処置を中止した29患者のうち、中止の主理由は、疾患進行(n=13)およびSCT(同種SCT、n=5;自己SCT、n=1)を含んだ。移植時、最良応答はCR(n=1)、PR(n=3)およびSD(n=2)であった。データカットオフ時、全患者が生存していた。
【表2】

データは、特に断らない限りn(%)として示す
ASCT前の高用量予備レジメンを除く
【0183】
有効性
客観的奏効率(ORR)
IRRCおよび治験医により評価されたORRは、表3に提供される。最初の客観的応答までの期間中央値は2.1か月(範囲1.6~5.7か月)であった。IRRCにより評価して、80患者中53患者(66%)は腫瘍負荷が減少し、7患者は完全寛解を示した。治験医評価下、58患者(73%)は腫瘍負荷減少を示し、これらの患者中、22患者が完全寛解を有した。完全寛解におけるこの不一致は大部分FDG-PET走査解釈に基づき、3/19治験医評価完全寛解がIRRCにより少なくとも部分寛解として評価されたため、臨床活性解釈に意味があるように影響するとは考えなかった。IRRC ORRは、直近のブレンツキシマブ ベドチンに先に応答しなかった患者の72%(n=43)であった。
【表3】

データは、特に断らない限りn(%)として示す
ベースライン後腫瘍評価は、その後の治療(あるならば)の前または当日に入手可能ではないかまたは評価が利用可能ではなかった
最初の投与後放射線評価なし
【0184】
応答の期間(DOR)
8.9か月の中央値フォローアップ後、DOR中央値は7.8か月(95%CI6.6~推定不可能(NE))であった。
【0185】
応答概要および標的病変変化
解析時、IRRCにより、62%の応答者がニボルマブ処置に応答し続けたと評価された(図2A参照)。1名を除き全員腫瘍負荷のベースラインからの≧50%の減少を有した(図2B参照)。この患者はFDG-PET走査陰性を示した。
【0186】
計9患者が増悪後ニボルマブを続けた。図2Cに示すとおり、9患者中6患者が、治験医評価により,標的病変の腫瘍減少を維持した。
【0187】
無進行生存(PFS)および全生存期間(OS)
図3に示すとおり、ニボルマブ処置患者のPFS中央値は10か月であった。6か月で、PFSは77%(95%CI65%~85%)であり、OS率は99%(95%CI91%~100%)であった。
【0188】
安全性
原因を問わない有害事象(AE)が80患者中79患者(99%)で報告され、重度AE(グレード3~4)が20患者(25%)で報告された。治験薬関連AEは72患者で報告された(表4参照)。間質性肺炎が、最初の投与から最後の投与の35日後に2患者(3%;グレード1/2およびグレード3)で見られ、これは、治験薬関連と考えられた。
【0189】
ニボルマブ処置中止を必要とする原因を問わないAEは、自己免疫性肝炎(n=1)、アラニンアミノトランスフェラーゼおよびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼレベル上昇(n=1)および多臓器不全(n=1)を含んだ。3死亡が、疾患進行(n=1)、フォローアップ消失後の未決定の原因(n=1)およびエプスタイン・バーウイルス陽性T細胞リンパ腫による多臓器不全(n=1)で報告された。
【0190】
1. 因果関係と無関係の特に興味深い最も頻繁に報告されたAEは、皮膚(41%);消化器(26%);過敏性/点滴関連反応(21%);および内分泌(18%)、肝臓(10%)、腎臓(5%)および肺(1%)事象を含んだ。
【表4】

データはn(%)として示す
最後の投与30日以内の生じたAE
【0191】
クオリティ・オブ・ライフ
ニボルマブでの処置の時間と共に、平均EQ-5D可視アナログスコアは増加した。EORTC QLQ-C30はまた機能的スコア、症状スコアおよび全体的健康スコアにわたるベースラインからの改善の傾向を示した。
【0192】
結論
ASCTおよびブレンツキシマブ ベドチンに不成功のcHLを有する患者におけるこの登録治験において、ニボルマブ単剤療法は、次の観察をもたらした。1)66.3%の患者がIRRC評価により客観的奏効率(ORR)を示した;2)応答の予備的持続性は励みになり、62%の患者がデータカットオフ時に応答したままであり(応答期間の中央値は7.8か月)、PFS中央値は10.0か月であった;および3)大部分グレード1または2 AEであり、固形腫瘍に対する新規安全性懸念なく、許容される安全性プロファイルであった。
【0193】
実施例2
新たに診断された古典的ホジキンリンパ腫を有する患者におけるニボルマブ含有レジメンのフェーズ2治験
目標
この治験の主目標は、新たに診断された進行期cHLを有する患者における、ニボルマブ単剤療法、続くAVD(ドキソルビシン、ビンブラスチンおよびダカルバジン)と組み合わせたニボルマブの全体的安全性および忍容性の評価である。これは、最初の投与と、最後の投与後30日の間における≧グレード3~5処置関連AEを経験した患者として評価した。
【0194】
この治験の副次目標は、1)ニボルマブ単剤療法およびAVDとの組み合わせの安全性および忍容性;2)単剤療法、AVDとの組み合わせおよび全体の処置中止率;および3)2007 International Working Group criteriaを使用して、独立放射線審査委員会により評価された完全奏功(CR)率に基づく臨床活性。
【0195】
この治験の目標は、1)客観的奏効率および2)無進行生存(PFS)を含む。
【0196】
治験設計
これは、新たに診断された進行期cHLを有する患者における、ニボルマブ単剤療法、続くニボルマブとAVDとの組み合わせの安全性および忍容性を評価するための、シングルアーム、オープンラベル、フェーズ2治験である。治験は、北米およびEUの8カ国で、予定された登録は、50名の新たに診断された進行期cHLを有する患者で実施される。
【0197】
表5に記載のとおり、この治験に登録するための重要な編入基準は、1)新たに診断された、先に未処置のcHL(コルチコステロイド使用を除く);2)≧18歳の成人;3)進行期(IIB、IIIおよびIV)疾患;4)>15mm直径の≧1病変の存在;および5)ECOG活動指標≦1を含む。除外基準は、1)既知CNSリンパ腫;2)既知結節性リンパ球優勢HL;3)活動性間質性間質性肺炎;4)活動性自己免疫性疾患またはその疑い;および5)HIVまたはB/C型肝炎。
【表5】

CNS=中枢神経系
【0198】
図4に示すとおり、上記編入基準に合う患者は、まずニボルマブ単独(240mg)を、2週毎に4回受ける(“単剤療法相”)。次いで、患者は、AVDと組み合わせたニボルマブ(240mg)を、2週毎に6コンボ・サイクル(“組み合わせ相”)を受ける。患者は、最初に、最後の処置後最長2年観察される(“観察相”)。観察相中に再発が生じなかったら、患者はさらに5年まで生存解析のために追跡される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4