(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】積層造形を用いた結合部材
(51)【国際特許分類】
C03C 27/10 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
C03C27/10 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022199893
(22)【出願日】2022-12-15
(62)【分割の表示】P 2017216170の分割
【原出願日】2017-11-09
【審査請求日】2023-01-13
(32)【優先日】2016-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501348092
【氏名又は名称】グッドリッチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ジェイ・イースト
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・イー・ダン
(72)【発明者】
【氏名】クラマー・ハリソン
(72)【発明者】
【氏名】バリ・エム・サウサード
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-511527(JP,A)
【文献】国際公開第2016/154190(WO,A1)
【文献】特開平04-182322(JP,A)
【文献】特表平10-505538(JP,A)
【文献】特開2003-335584(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0128053(US,A1)
【文献】特開2013-101310(JP,A)
【文献】特開2008-182220(JP,A)
【文献】国際公開第2014/016970(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/10 - 29/00
C03B 23/00 - 35/26
C03B 40/00 - 40/04
B33Y 10/00 - 99/00
B23K 26/00 - 26/70
C04B 37/00 - 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の
ガラス部分の近くに第1の
ガラス部分を配置することと、
前記第1の
ガラス部分と前記第2の
ガラス部分の両方に接触するように焼結材料
の連続した層を配置することと、
エネルギーを前記焼結材料
の前記連続した層に
連続的に印加
し、前記焼結材料の複数の層を用いて前記第1の
ガラス部分と前記第2の
ガラス部分を結合することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記焼結材料は、チタニアシリカ粉末を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記焼結材料は、チタニアシリカ懸濁液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の
ガラス部分と前記第2の
ガラス部分は、チタニアシリカガラス製である、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記焼結材料にエネルギーを印加することは、前記焼結材料をレーザ焼結することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1の
ガラス部分と、
第2の
ガラス部分と、
前記第1の
ガラス部分と前記第2の
ガラス部分を結合する焼結材料
の複数の層を含む積層造形された結合部と、
を含
み、
前記焼結材料の前記複数の層は連続的に積層される、装置。
【請求項7】
前記焼結材料は、チタニアシリカを含む、請求項
6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の
ガラス部分と前記第2の
ガラス部分は、チタニアシリカガラス製である、請求項
6に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の
ガラス部分及び/または前記第2の
ガラス部分のうちの少なくとも1つは、光学構成要素である、請求項
6に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の
ガラス部分と前記第2の
ガラス部分は、元は単一の構成要素から分かれた、請求項
6に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、(例えば、光学システム及び構成要素のための)、例えば、低膨張ガラスを用いた積層造形に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス部材を結合する従来の方法は、接着、フリット接合、及び、光学的接触接合を含む。フリット接合及び接着は、経時的な、温度変化、吸湿挙動の変化、及び、化学変化という点で、光学系を不安定にすることが観察されてきた。光学的接触接合は、ガラス構造の強度を必ずしも完全に高めない場合がある。
【0003】
このような従来の方法及びシステムは、一般的に、本来の目的のためには十分であると考えられてきた。しかしながら、当技術分野において、ガラス部材を結合するシステム及び方法を改良するニーズが依然としてある。本開示は、このニーズに対する解決法を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
方法は、第2の部分の近くに第1の部分を配置することと、第1の部分と第2の部分の両方に接触するように焼結材料を配置することと、焼結材料にエネルギーを印加して、第1の部分と第2の部分を結合することとを含む。焼結材料の配置とエネルギーの印加とを繰り返して、焼結された材料の連続層を作成できる。
【0005】
焼結材料は、チタニアシリカ粉末を含む。焼結材料は、チタニアシリカ懸濁液を含み得る。
【0006】
第1の部分と第2の部分は、ガラス製であってよい。第1の部分と第2の部分は、チタニアシリカガラス製であってよい。
【0007】
焼結材料へのエネルギー印加は、焼結材料のレーザ焼結を含む。任意の他の適切なエネルギー印加(例えば、電子ビーム溶接)が、本明細書では企図される。
【0008】
装置は、第1の部分と、第2の部分と、第1の部分と第2の部分を結合する焼結材料を含む積層造形された結合部とを含む。積層造形された結合部は、連続して焼結された焼結材料層を含み得る。
【0009】
焼結材料は、(例えば、粉末または懸濁液から形成された)チタニアシリカを含み得る。第1の部分及び第2の部分は、ガラス(例えば、チタニアシリカガラス)製であってよい。第1の部分及び/または第2の部分のうちの少なくとも1つは、光学構成要素であってよい。第1の部分及び第2の部分は、元は1つの構成要素から分かれたものであってよい。
【0010】
開示の主題のシステム及び方法のこれら及び他の特徴は、以下の詳細な記載を図面と共に読むと当業者にはより容易に明らかとなろう。
【0011】
開示の主題が属する分野の当業者が、開示の主題の装置及び方法の製造法及び使用法を、過度な実験を行うことなしに、容易に理解するように、装置及び方法の実施形態を、図面を参照して以下に詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】焼結材料の堆積を示す、本開示による方法の実施形態の一部を示す線図である。
【
図2】堆積された焼結材料へのエネルギー印加を示す、本開示による、方法の実施形態の一部を示す線図である。
【
図3】本開示による、装置の実施形態を示す概略断面図である。
【
図4】本開示による、装置の実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照する。図面において、類似の参照番号は、開示の主題の類似の構造的特徴または態様を特定する。制限ではなく、説明及び図示のために、開示の方法の実施形態の説明的な図を
図1及び
図2に示し、参照番号100によって一般的に指定する。本開示の他の実施形態及び/または態様を
図3及び
図4に示す。本明細書に記載のシステム及び方法を使用して、2つの部材(例えば、チタニウムシリカガラスからなる、例えば、光学構成要素のガラス部材)を結合できる。
【0014】
図1及び
図2を参照すると、本開示による方法が線図で示されている。方法は、第2の部分103の近くに第1の部分101を配置することを含む。第1の部分101及び第2の部分は、任意の適切な方法で、第1の部分と第2の部分の間の相対的な動きを防止するように互いに対して位置が固定されてよい。
【0015】
ある実施形態においては、第1の部分101及び/または第2の部分103は、ガラス(例えば、チタニアシリカガラス)製であってよい。例えば、第1の部分101及び/または第2の部分103は、チタニアシリカガラス製であってよい。
【0016】
図1を参照すると、方法は、第1の部分101と第2の部分103の両方に接触するように焼結材料105を配置することを含む。焼結材料105は、例えば、ノズル107を介して、加圧して、または、加圧せずに、任意の適切な方法で配置できる。
【0017】
ある実施形態においては、(例えば、第1の部分101及び/または第2の部分103がチタニアシリカガラス製の場合)、焼結材料105は、チタニアシリカ粉末を含み得る。ある実施形態においては、(例えば、第1の部分101及び/または第2の部分103がチタニアシリカガラス製の場合)、焼結材料105は、チタニアシリカ懸濁液を含み得る。例えば、ガラス構成要素を結合する任意の他の適切な材料が、本明細書では企図されている。
【0018】
図2を参照すると、方法は、エネルギーを焼結材料105に印加して第1の部分101と第2の部分103を結合することを含む。エネルギーの焼結材料への印加は、図に示すように、焼結材料105をレーザ焼結することを含み得る。任意の他の適切なエネルギー印加(例えば、電子ビーム溶接)が、本明細書では企図されている。
【0019】
(例えば、
図1にように示すように)焼結材料105を配置すること、及び、(例えば、
図2に示すように)エネルギーを印加することを繰り返して、所望の機能に合わせて適切な強度の結合部に必要なように、焼結された材料の連続した層を作成できる。連続的に形成された層は、本開示に照らして当業者が理解するような任意の適切な厚さ及び/または形を形成し得る。
【0020】
図3を参照すると、上記方法によって形成された装置100は、上記第1の部分101と、上記第2の部分103と、第1の部分101と第2の部分103を結合する焼結材料105を含む積層造形された結合部309とを含む。
【0021】
積層造形された結合部309は、焼結材料105の連続して焼結された層105aを含み得る。
図3に示すように、層105aは、均一でなくてもよく、各層105aが各部分101、103に接触しなくてもよい。積層造形された結合部309の任意の適切な積層及び/または形が、本明細書では企図されている。
【0022】
ある実施形態においては、第1の部分101及び/または第2の部分103のうちの少なくとも1つは、任意の適切な使用のための光学構成要素(例えば、ミラー基板、レンズ等)であってよい。例えば、部分101、103は、破損によって分かれたガラスミラー基板の一部であってよい。部分101、103は、組み合わされて、低膨張のチタニアシリカガラスミラー光学素子を構成する構造部材であってよい。例えば、剛性のミラーのコア構造のセグメントを結合して、大きい構造を作成してよい、または、光学表面板を剛性のコア構造に結合できる。
【0023】
第1の部分101及び/または第2の部分103を任意の他の適切な目的に使用できる。この点で、第1の部分101及び第2の部分103は、任意の適切な方法で互いに対して配置できる。例えば、
図3に示すように、第1の部分101は、第2の部分103から垂直に伸びてよく、例えば、焼結を介して結合を強化するために、先細の端部を含み得る。
【0024】
図4を参照すると、例えば、装置400は、上記と同様の第1の部分401と、上記と同様の第2の部分403とを含むことができ、第1の部分401と第2の部分403は、(例えば、部分401、403の両側に形成され得る)積層造形された結合部409を介して横並びに結合される。図に示すように、結合部409は、最上部の層に向かって層毎に先細になる形状であってよい。上記のように、層の任意の他の適切な形及び/または数が、本明細書では企図されている。
【0025】
上記のように、チタニアシリカガラス部材は、例えば、充填剤/焼結材料として、低膨張のチタニアシリカガラスの粉末、懸濁液、または、延伸繊維を用いて溶接できる。部分101、103は、緩く合わされた表面を有してよく、その表面同士は、まず、当接される。低膨張のチタニアシリカガラス材料を、接合面間の隙間を埋めるのに使用し、例えば、レーザ照射にあてて溶かしてよい。低膨張のチタニアシリカガラス材料は、急速に冷えると、ガラス内に融合し、例えば、低膨張のチタニアシリカガラスの母材を結合する。上記のように、低膨張のチタニアシリカガラス粉末、懸濁液、または、延伸繊維は、接合面の周りに薄い層で積層堆積させてよく、それらは、層毎に融合できて結合部の周りにガラスを構築し、溶接された結合部を強化する。
【0026】
接合面の焼結材料は、低膨張のチタニアシリカガラス部材の1つまたは複数を通過するように選択できる高強度のレーザに照射されてよい。レーザ源の波長は、低膨張のチタニアシリカガラスを最小限の損失で透過するが、接合面で粉末または懸濁液に吸収されるように、選択できる。
【0027】
上記の実施形態は、ガラス部材を結合、及び/または、ガラス光学素子を構築する従来の方法と比較して、強度、熱安定性、化学安定性、及び、吸湿安定性を向上させる。また、本開示の方法は、例えば、高い熱安定性を保ち、修理された結合部の強度を完全に回復しながら、割れた光学構成要素の修理(例えば、ガラスミラー基板の修理)を可能にし得る。また、割れた光学要素を元の構成要素と同じまたは類似の光学特性を有するように修理できる。
【0028】
本開示の方法及びシステムは、上記のように、また、図に示したように、より優れた特性を有する方法及び装置を提供する。実施形態を参照して、開示の主題の装置及び方法を示し、記載したが、本開示の主題の精神及び範囲を逸脱することなく、開示の主題の装置及び方法への変更及び/または修正を行ってよいことを当業者は容易に理解されよう。
【符号の説明】
【0029】
100 装置
101 第1の部分
103 第2の部分
105 焼結材料
105a 連続して焼結された層
107 ノズル
309 積層造形された結合部
400 装置
401 第1の部分
403 第2の部分
409 積層造形された結合部