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特許7568707DC/DCコンバータの制御回路および電源回路
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】DC/DCコンバータの制御回路および電源回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022503119
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2020048465
(87)【国際公開番号】W WO2021171769
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2020029410
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020034055
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020038135
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】河野 明大
(72)【発明者】
【氏名】安藤 弘明
【審査官】武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-153585(JP,A)
【文献】特開2015-2625(JP,A)
【文献】特開2018-157704(JP,A)
【文献】特開2017-93159(JP,A)
【文献】特開2015-216712(JP,A)
【文献】特開2007-252185(JP,A)
【文献】特開2012-80685(JP,A)
【文献】特開2008-206376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチングトランジスタを含むDC/DCコンバータの制御回路であって、
前記DC/DCコンバータの出力電圧を分圧し、第1フィードバック電圧を生成する第1分圧回路と、
前記DC/DCコンバータの出力電圧を分圧し、第2フィードバック電圧を生成する第2分圧回路と、
ウェイクアップ信号がアサートされる期間、イネーブルとなり、前記第1フィードバック電圧と第1しきい値電圧の比較結果に応じて、第1検出信号をアサートする第1コンパレータと、
常時イネーブルであり、前記第2フィードバック電圧と第2しきい値電圧の比較結果に応じて、第2検出信号をアサートする第2コンパレータと、
前記第1検出信号または前記第2検出信号がアサートされるとレベルが遷移する第1パルス信号を生成するとともに、非軽負荷状態において前記ウェイクアップ信号をアサートし、軽負荷状態において前記ウェイクアップ信号をネゲートするロジック回路と、
前記第1パルス信号に応じてスイッチングトランジスタを駆動する第1ドライバと、
前記DC/DCコンバータのインダクタの電流ゼロクロスを検出する電流ゼロクロス検出回路と、
を備え
前記ロジック回路は、前記電流ゼロクロスの検出から所定時間経過後に前記ウェイクアップ信号をアサートし、次の前記第2検出信号のアサートに応答して前記ウェイクアップ信号をネゲートすることを特徴とする制御回路。
【請求項2】
前記電流ゼロクロス検出回路は、前記ウェイクアップ信号がネゲートされる期間、ディセーブルとなるゼロクロスコンパレータを含むことを特徴とする請求項に記載の制御回路。
【請求項3】
前記DC/DCコンバータは同期整流トランジスタを含む同期整流型であり、
前記ロジック回路は、前記第1パルス信号がオフレベルに遷移するとオンレベルに遷移し、前記電流ゼロクロスが発生するとオフレベルに遷移する第2パルス信号を生成し、
前記制御回路は、前記第2パルス信号にもとづいて、前記同期整流トランジスタを駆動する第2ドライバをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の制御回路。
【請求項4】
前記第1分圧回路は、前記ウェイクアップ信号がアサートされる期間、オンとなるスイッチを含むことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の制御回路。
【請求項5】
前記スイッチは、前記第1分圧回路の接地側に挿入されていることを特徴とする請求項に記載の制御回路。
【請求項6】
前記第2分圧回路を構成する抵抗は、前記第1分圧回路を構成する抵抗よりも大きいことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の制御回路。
【請求項7】
前記第2コンパレータは、
エンハンスメント型の第1NMOSトランジスタと、
ゲートが接地されるデプレッション型の第2NMOSトランジスタと、
前記第1NMOSトランジスタのソースおよび前記第2NMOSトランジスタのソースと接地の間に設けられる抵抗と、
前記第1NMOSトランジスタのドレインおよび前記第2NMOSトランジスタのドレインと接続される負荷回路と、
を含むことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の制御回路。
【請求項8】
スイッチングトランジスタを含むDC/DCコンバータの制御回路であって、
前記DC/DCコンバータの出力電圧を分圧し、第1フィードバック電圧を生成する第1分圧回路と、
前記DC/DCコンバータの出力電圧を分圧し、第2フィードバック電圧を生成する第2分圧回路と、
ウェイクアップ信号がアサートされる期間、イネーブルとなり、前記第1フィードバック電圧と第1しきい値電圧の比較結果に応じて、第1検出信号をアサートする第1コンパレータと、
常時イネーブルであり、前記第2フィードバック電圧と第2しきい値電圧の比較結果に応じて、第2検出信号をアサートする第2コンパレータと、
前記第1検出信号または前記第2検出信号がアサートされるとレベルが遷移する第1パルス信号を生成するとともに、非軽負荷状態において前記ウェイクアップ信号をアサートし、軽負荷状態において前記ウェイクアップ信号をネゲートするロジック回路と、
前記第1パルス信号に応じてスイッチングトランジスタを駆動する第1ドライバと、
を備え、
前記第2コンパレータは、
エンハンスメント型の第1NMOSトランジスタと、
ゲートが接地されるデプレッション型の第2NMOSトランジスタと、
前記第1NMOSトランジスタのソースおよび前記第2NMOSトランジスタのソースと接地の間に設けられる抵抗と、
前記第1NMOSトランジスタのドレインおよび前記第2NMOSトランジスタのドレインと接続される負荷回路と、
を含むことを特徴とする制御回路。
【請求項9】
前記負荷回路はカレントミラー負荷であることを特徴とする請求項7または8に記載の制御回路。
【請求項10】
ひとつの半導体基板に一体集積化されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の制御回路。
【請求項11】
前記DC/DCコンバータは昇圧コンバータであることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の制御回路。
【請求項12】
DC/DCコンバータの出力回路と、
請求項1から11のいずれかに記載の制御回路と、
を備えることを特徴とする電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、DC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
ある電圧値の直流電圧を別の電圧値の直流電圧に変換する際に、DC/DCコンバータが利用される。DC/DCコンバータの制御方式として、リップル制御方式が知られている。リップル制御方式では、DC/DCコンバータの出力電圧をしきい値電圧と比較し、出力電圧がしきい値電圧を超えると(あるいは下回ると)、それをトリガーとしてスイッチングトランジスタのオン、オフを切り替える方式である。リップル制御方式は、エラーアンプを用いた電圧モード制御方式や電流モード制御方式に比べて、応答速度が高く、また消費電力を削減できるという利点を有する。
【0003】
IoT(Internet of Things)デバイスにおいて、その内部の電子回路には、消費電力を極限まで削減することが要求され、DC/DCコンバータも例外ではない。図1は、本発明者らが検討したDC/DCコンバータ100Rの回路図である。DC/DCコンバータ100Rは、バッテリからの入力電圧VINを昇圧し、所定の目標レベルに安定化された出力電圧VOUTを、負荷4に供給する昇圧コンバータである。
【0004】
DC/DCコンバータ100Rは、出力回路110と、リップル制御方式の制御回路200Rを備える。DC/DCコンバータ100Rの出力電圧VOUTは、制御回路200Rにフィードバックされ、抵抗分圧回路202によって分圧される。分圧後の出力電圧(フィードバック電圧)VOUT’は、メインコンパレータ204に入力される。
【0005】
メインコンパレータ204は、非軽負荷状態においてイネーブルであり、フィードバック電圧VOUT’をしきい値電圧VTHと比較する。たとえばボトム検出方式の場合、しきい値電圧VTHは、出力電圧VOUTのボトムレベルを規定する。ロジック回路206は、メインコンパレータ204の出力を受け、フィードバック電圧VOUT’がしきい値電圧VTHを下回ると、パルス信号S1をオンレベルに遷移させる。そして、ある適切なオン時間の経過後に、パルス信号S1をオフレベルに遷移させる。ドライバ208は、パルス信号S1に応じてスイッチングトランジスタM1を駆動する。またロジック回路206は、パルス信号S1と相補的なパルス信号S2を生成する。ドライバ210は、パルス信号S2に応じて、同期整流トランジスタM2を駆動する。
【0006】
メインコンパレータ204の応答遅延が大きいと、出力電圧VOUTが目標電圧を下回る幅が大きくなる。そこでメインコンパレータ204には、高速応答性が要求され、したがってその消費電力は大きくなる。
【0007】
軽負荷状態では、出力電圧VOUTの低下速度は遅くなるため、コンパレータに要求される応答速度は遅くてよい。そこでメインコンパレータ204とは別に、応答速度は遅いが、消費電力が小さいサブコンパレータ212を設ける。軽負荷状態では、メインコンパレータ204をオフし、サブコンパレータ212によって、出力電圧VOUTがしきい値電圧を下回ったことを検出する。これにより、メインコンパレータ204を常時動作させる必要がないため、制御回路200Rの消費電力を大きく削減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-296306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、図1の制御回路200Rについて検討した結果、以下の問題を認識するに至った。なおこの問題を当業者の一般的な認識として把握してはならない。
【0010】
上述のようにメインコンパレータ204は、軽負荷状態と非軽負荷状態とでディセーブル、イネーブルが切り替えられる。メインコンパレータ204のイネーブル/ディセーブルを切り替える際に、その入力端子に、ノイズ120が発生する。メインコンパレータ204の入力と、サブコンパレータ212の入力は、共通に接続されているため、メインコンパレータ204において発生したノイズ120は、サブコンパレータ212の入力に影響を与える。サブコンパレータ212がノイズ120の影響を受けると、その出力が変化し、スイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2が誤動作する。
【0011】
DC/DCコンバータ100Rの出力からのリーク電流を小さくするために、分圧回路202の抵抗値は十分に大きく設計される(たとえば数十MΩ~数百MΩ)。そのため、メインコンパレータ204とサブコンパレータ212は、ハイインピーダンスな経路で結合されており、ノイズ120の影響は大きくなってしまう。
【0012】
本開示は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、ノイズの影響を低減したDC/DCコンバータの制御回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1. 本開示のある態様は、スイッチングトランジスタを含むDC/DCコンバータの制御回路に関する。制御回路は、DC/DCコンバータの出力電圧を分圧し、第1フィードバック電圧を生成する第1分圧回路と、DC/DCコンバータの出力電圧を分圧し、第2フィードバック電圧を生成する第2分圧回路と、ウェイクアップ信号がアサートされる期間、イネーブルとなり、第1フィードバック電圧と第1しきい値電圧の比較結果に応じて、第1検出信号をアサートする第1コンパレータと、常時イネーブルであり、第2フィードバック電圧と第2しきい値電圧の比較結果に応じて、第2検出信号をアサートする第2コンパレータと、第1検出信号または第2検出信号のアサートに応答してレベルが遷移する第1パルス信号を生成するとともに、非軽負荷状態においてウェイクアップ信号をアサートし、軽負荷状態においてウェイクアップ信号をネゲートするロジック回路と、を備える。
【0014】
2. 本開示のある態様は、差動アンプに関する。差動アンプは、ゲートに入力電圧を受けるエンハンスメント型の第1NMOSトランジスタと、ゲートが接地されるデプレッション型の第2NMOSトランジスタと、第1NMOSトランジスタのソースおよび第2NMOSトランジスタのソースと接地の間に設けられる電流源と、第1NMOSトランジスタのドレインおよび第2NMOSトランジスタのドレインと接続される負荷回路と、を備える。
【0015】
3. 本開示のある態様は、スイッチングトランジスタを有するDC/DCコンバータの制御回路に関する。制御回路は、DC/DCコンバータに流れる電流を示す第1電流検出信号を生成する電流検出回路と、第1電流検出信号に、DC/DCコンバータの出力電圧に応じたフィードバック電圧と基準電圧との比較結果にもとづくオフセット信号を重畳し、第2電流検出信号を生成するオフセット回路と、フィードバック電圧および第2電流検出信号の和と、基準電圧との比較結果に応じたターンオン信号を生成するメインコンパレータと、を備える。
【0016】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のある態様によれば、ノイズの影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明者らが検討したDC/DCコンバータの回路図である。
図2】実施形態1に係るDC/DCコンバータの回路図である。
図3】制御回路の具体的な構成例を示す回路図である。
図4】DC/DCコンバータの電流連続モード(非軽負荷状態)の動作波形図である。
図5】電流不連続モード(軽負荷状態)の動作波形図である。
図6図6(a)、(b)は、ウェイクアップ信号WAKE_UPがネゲートからアサートに変化したときの波形図である。
図7図7(a)、(b)は、電圧比較を行う半導体集積回路の回路図である。
図8】実施形態2に係る差動アンプの回路図である。
図9】変形例1に係る差動アンプの回路図である。
図10】変形例2に係る差動アンプの回路図である。
図11】変形例3に係る差動アンプの回路図である。
図12】変形例に係るDC/DCコンバータの回路図である。
図13】変形例に係るDC/DCコンバータの回路図である。
図14】差動アンプを備えるリニアレギュレータの回路図である。
図15】従来のリップル制御方式の降圧DC/DCコンバータの回路図である。
図16】実施形態3に係るDC/DCコンバータの回路図である。
図17図16のDC/DCコンバータの動作波形図である。
図18図18(a)は、比較技術の電流-電圧特性を示す図であり、図18(b)は、実施形態3に係るDC/DCコンバータの電流-電圧特性を示す図である。
図19】一実施例に係るターンオン信号生成回路を示す回路図である。
図20】一実施例に係るターンオン信号生成回路の回路図である。
図21】一実施例に係るターンオン信号生成回路の回路図である。
図22】一実施例に係るメインコンパレータの回路図である。
図23】一実施例に係るターンオン信号生成回路の回路図である。
図24】DC/DCコンバータの主回路の等価回路図である。
図25】オン時間生成回路の基本構成を示す回路図である。
図26図25のオン時間生成回路の動作波形図である。
図27】実施例1に係るオン時間生成回路の回路図である。
図28図27のオン時間生成回路の動作波形図である。
図29】実施例2に係るオン時間生成回路の回路図である。
図30図29のオン時間生成回路の動作波形図である。
図31】実施例3に係るオン時間生成回路の回路図である。
図32】実施例4に係るオン時間生成回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0020】
1. 本明細書に開示される一実施形態は、スイッチングトランジスタを含むDC/DCコンバータの制御回路に関する。制御回路は、DC/DCコンバータの出力電圧を分圧し、第1フィードバック電圧を生成する第1分圧回路と、DC/DCコンバータの出力電圧を分圧し、第2フィードバック電圧を生成する第2分圧回路と、ウェイクアップ信号がアサートされる期間、イネーブルとなり、第1フィードバック電圧と第1しきい値電圧の比較結果に応じて、第1検出信号をアサートする第1コンパレータと、常時イネーブルであり、第2フィードバック電圧と第2しきい値電圧の比較結果に応じて、第2検出信号をアサートする第2コンパレータと、第1検出信号または第2検出信号のアサートに応答してレベルが遷移する第1パルス信号を生成するとともに、非軽負荷状態においてウェイクアップ信号をアサートし、軽負荷状態においてウェイクアップ信号をネゲートするロジック回路と、を備える。
【0021】
この構成によると、第1コンパレータおよび第2コンパレータに対応して、独立した第1分圧回路および第2分圧回路を設けることにより、第1コンパレータのイネーブル/ディセーブルの切り替えに際して発生するノイズが、第2コンパレータに入力されるのを防止でき、DC/DCコンバータの誤動作を防止できる。
【0022】
制御回路は、DC/DCコンバータのインダクタの電流ゼロクロスを検出する電流ゼロクロス検出回路をさらに備えてもよい。ロジック回路は、電流ゼロクロスの検出から所定時間経過後にウェイクアップ信号をアサートし、次の第2検出信号のアサートに応答してウェイクアップ信号をネゲートしてもよい。負荷電流が減少するほど、電流ゼロクロスの発生から、第1検出信号あるいは第2検出信号のアサートまでの時間が長くなり、やがて所定時間τを超える。したがって、時間を測定することにより、軽負荷状態を検出できる。
【0023】
電流ゼロクロス検出回路は、ウェイクアップ信号がネゲートされる期間、ディセーブルとなるコンパレータを含んでもよい。これにより消費電力をさらに削減できる。
【0024】
DC/DCコンバータは同期整流型であり、同期整流トランジスタをさらに含んでもよい。ロジック回路は、第1パルス信号がオフレベルに遷移するとオンレベルに遷移し、ゼロクロスが発生するとオフレベルに遷移する第2パルス信号を生成し、制御回路は、第2パルス信号にもとづいて、同期整流トランジスタを駆動する第2ドライバをさらに備えてもよい。これにより、軽負荷状態においてDC/DCコンバータを電流不連続モードで動作させることができる。
【0025】
第1分圧回路は、ウェイクアップ信号がアサートされる期間、オンとなるスイッチを含んでもよい。これにより軽負荷状態において、第1分圧回路によるリーク電流を遮断できる。
【0026】
スイッチは、第1分圧回路の接地側に挿入されていてもよい。これにより軽負荷状態から非軽負荷状態に遷移した後に、第1しきい値電圧は、接地から上昇するのに対して、第1フィードバック電圧は高電位側から低下していくため、言い換えると、2つの入力電圧が離れた状態から近づいていくため、第1コンパレータのチャタリングを防止できる。
【0027】
第1分圧回路を構成する抵抗は、第2分圧回路を構成する抵抗よりも大きくてもよい。
【0028】
第1コンパレータは、エンハンスメント型の第1NMOSトランジスタと、ゲートが接地されるデプレッション型の第2NMOSトランジスタと、第1NMOSトランジスタのソースおよび第2NMOSトランジスタのソースと接地の間に設けられる抵抗と、第1NMOSトランジスタのドレインおよび第2NMOSトランジスタのドレインと接続される負荷回路と、を含んでもよい。この第1コンパレータでは、第1NMOSトランジスタと第2NMOSトランジスタのゲートソース間しきい値電圧Vgs(th)の差分が、第2しきい値電圧となるため、第2しきい値電圧を生成する基準電圧源が不要となり、消費電力をさらに削減できる。
【0029】
負荷回路はカレントミラー負荷であってもよい。
【0030】
制御回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。
【0031】
2. 一実施形態は、差動アンプに関する。差動アンプは、ゲートに入力電圧を受けるエンハンスメント型の第1NMOSトランジスタと、ゲートが接地されるデプレッション型の第2NMOSトランジスタと、第1NMOSトランジスタのソースおよび第2NMOSトランジスタのソースと接地の間に設けられる電流源と、第1NMOSトランジスタのドレインおよび第2NMOSトランジスタのドレインと接続される負荷回路と、を備える。
【0032】
この差動アンプでは、入力電圧を、第1NMOSトランジスタのゲートソース間しきい値電圧Vth(enh)と第2NMOSトランジスタのゲートソース間しきい値電圧Vth(dep)とにもとづいて定まるしきい値電圧と比較することができる。しきい値電圧を生成する基準電圧源は不要となり、消費電力をさらに削減できる。
【0033】
電流源は、抵抗を含んでもよい。これにより、差動アンプは、外部からのバイアス信号の供給を受けずに、スタンドアロンで動作できる。つまりバイアス信号を生成するバイアス回路を省略し、あるいはバイアス回路のオン、オフ状態を差動アンプとは独立して制御することが可能となり、消費電力をさらに削減できる。
【0034】
電流源は、トランジスタを含んでもよい。この場合、トランジスタに外部からバイアス信号を供給する必要があるが、テイル電流の調整が可能となる。
【0035】
負荷回路はカレントミラー負荷であってもよい。
【0036】
負荷回路は抵抗負荷であってもよい。
【0037】
3. 一実施形態は、スイッチングトランジスタを有するDC/DCコンバータの制御回路に関する。制御回路は、DC/DCコンバータに流れる電流を示す第1電流検出信号を生成する電流検出回路と、第1電流検出信号に、DC/DCコンバータの出力電圧に応じたフィードバック電圧と基準電圧との比較結果にもとづくオフセット信号を重畳し、第2電流検出信号を生成するオフセット回路と、フィードバック電圧および第2電流検出信号の和と、基準電圧との比較結果にもとづいて、スイッチングトランジスタのターンオンのトリガとなるターンオン信号を生成するメインコンパレータと、を備える。
【0038】
この構成によると、エラーアンプが不要となるため、消費電流を削減できる。
【0039】
オフセット回路は、フィードバック電圧を基準電圧と比較するエラー検出コンパレータを含んでもよい。オフセット信号は、エラー検出コンパレータの出力に応じて増減してもよい。
【0040】
オフセット回路は、エラー検出コンパレータの出力に応じてカウント値が増減するオフセット信号を生成するカウンタと、をさらに含んでもよい。オフセット信号はカウント値に応じていてもよい。
【0041】
電流検出回路は、電流の経路上に設けられた電流検出素子の両端の電圧を増幅するgmアンプと、gmアンプの出力電流を電圧信号に変換するインピーダンス回路と、を含んでもよい。オフセット回路は、カウント値に応じた電流信号を、インピーダンス回路に供給する電流源を含んでもよい。
【0042】
電流検出回路は、電流の経路上に設けられた電流検出素子の両端の電圧を増幅するgmアンプと、gmアンプの出力電流を電圧信号に変換するインピーダンス回路と、を含んでもよい。オフセット回路は、インピーダンス回路と接続され、フィードバック電圧を基準電圧と比較結果にもとづいて電流量が増減する可変電流源を含んでもよい。
【0043】
DC/DCコンバータは入力電圧VINを昇圧し、出力電圧VOUTを生成する昇圧型であってもよい。
【0044】
制御回路は、スイッチングトランジスタのターンオンから、オン時間の経過後にターンオフ信号をアサートするオン時間生成回路と、ターンオン信号がアサートされるとオンレベルに遷移し、ターンオフ信号がアサートされると、オフレベルに遷移するパルス信号を生成するロジック回路と、パルス信号に応じてスイッチングトランジスタを駆動するドライバと、を備える。
【0045】
オン時間は(VOUT-VIN)/VOUTに比例してもよい。入力電圧および出力電圧に応じて、オン時間を適応的に変化させることにより、スイッチング周波数を安定化できる。
【0046】
オン時間生成回路は、第1キャパシタと、第1キャパシタと接続され、VOUTに比例する電流を生成する電流源と、第1キャパシタに、(VOUT-VIN)に比例した電圧変化が生じたことを検出するコンパレータと、を含んでもよい。
電流源が生成する電流をI=α×VOUTとする。第1キャパシタに、(VOUT-VIN)に比例した電圧変化ΔV=β×(VOUT-VIN)が発生するのに要する時間TONは、
ON=ΔV/I=β×(VOUT-VIN)/(α×VOUT
=(β/α)×(VOUT-VIN)/VOUT
となり、(VOUT-VIN)/VOUTに比例するオン時間を生成できる。
【0047】
第1キャパシタの一端は接地されてもよい。オン時間生成回路は、(VOUT-VIN)に応じたしきい値電圧を生成するしきい値電圧生成回路をさらに含んでもよい。コンパレータは、第1キャパシタの他端の電圧を、しきい値電圧と比較してもよい。
【0048】
しきい値電圧生成回路は、第2キャパシタを含んでもよい。しきい値電圧生成回路は、スイッチングトランジスタのオフ状態において、第2キャパシタを(VOUT-VIN)で充電し、スイッチングトランジスタのオン期間において、第2キャパシタの一端に、インダクタとスイッチングトランジスタの接続ノードのスイッチング電圧を印加し、第2キャパシタの他端の電圧をしきい値電圧としてもよい。オン期間におけるスイッチング電圧は、I×RON1となる。Iはスイッチングトランジスタに流れる電流、RON1はスイッチングトランジスタのオン抵抗である。したがって、この構成によれば、スイッチングトランジスタのオン抵抗を考慮したオン時間を生成できる。
【0049】
しきい値電圧生成回路は、第2キャパシタと、スイッチングトランジスタのオフ状態において第2キャパシタの一端に入力電圧VINを印加し、スイッチングトランジスタのオン期間において第2キャパシタの一端を、DC/DCコンバータのインダクタとスイッチングトランジスタの接続ノードと接続する第1セレクタと、スイッチングトランジスタのオフ状態において、第2キャパシタの他端に出力電圧VOUTを印加し、スイッチングトランジスタのオン期間において、第2キャパシタの他端を、コンパレータと接続する第2セレクタと、を含んでもよい。この構成によれば、スイッチングトランジスタのオン抵抗を考慮したオン時間を生成できる。
【0050】
しきい値電圧生成回路は、DC/DCコンバータのインダクタとスイッチングトランジスタの接続ノードに生ずるスイッチング電圧を反転するインバータと、インバータの出力を平滑化し、しきい値電圧を生成するフィルタと、を含んでもよい。この構成によれば、スイッチングトランジスタおよび同期整流トランジスタのオン抵抗ならびに、インダクタの等価直列抵抗の影響を考慮したオン時間を生成できる。
【0051】
フィルタは、RCフィルタであってもよい。しきい値電圧生成回路は、電流不連続モードで動作する間、RCフィルタのキャパシタを、VOUT-VINで充電してもよい。この構成によれば、電流不連続モードから電流連続モードに復帰したときに、適切なオン時間から、動作を再開できる。
【0052】
フィルタは、抵抗およびキャパシタを含むRCフィルタであってもよい。しきい値電圧生成回路は、電流連続モードの間、抵抗の一端にインバータの出力電圧を印加し、電流不連続モードの間、抵抗の一端に、出力電圧VOUTを印加する第3セレクタと、電流連続モードの間、キャパシタの他端に接地電圧を印加し、電流不連続モードの間、キャパシタの他端に入力電圧VINを印加する第4セレクタと、をさらに含んでもよい。この構成によれば、電流不連続モードから電流連続モードに復帰したときに、適切なオン時間から、動作を再開できる。
【0053】
第1キャパシタの一端には、入力電圧VINが印加されてもよい。コンパレータは、第1キャパシタの他端の電圧を、出力電圧VOUTと比較してもよい。トランジスタのオン抵抗やインダクタの等価直列抵抗を無視しているため、重負荷での周波数は速くなるものの、簡易な構成で、オン時間を生成できる。
【0054】
制御回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0055】
(実施形態)
以下、本発明を好適な実施形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0056】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0057】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0058】
また、「信号A(電圧、電流)が信号B(電圧、電流)に応じている」とは、信号Aが信号Bと相関を有することを意味し、具体的には、(i)信号Aが信号Bである場合、(ii)信号Aが信号Bに比例する場合、(iii)信号Aが信号Bをレベルシフトして得られる場合、(iv)信号Aが信号Bを増幅して得られる場合、(v)信号Aが信号Bを反転して得られる場合、(vi)あるいはそれらの任意の組み合わせ、等を意味する。「応じて」の範囲は、信号A、Bの種類、用途に応じて定まることが当業者には理解される。
【0059】
本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0060】
(実施形態1)
図2は、実施形態1に係るDC/DCコンバータ100の回路図である。DC/DCコンバータ100は、昇圧コンバータであり、入力端子(入力ライン)102の入力電圧VINを昇圧し、所定の電圧レベルに安定化して、出力端子(出力ライン)104に接続される負荷4に供給する。
【0061】
DC/DCコンバータ100は、出力回路110と、制御回路300を備える。
出力回路110は、インダクタL1、スイッチングトランジスタ(ローサイドトランジスタ)M1、同期整流トランジスタ(ハイサイドトランジスタ)M2、出力キャパシタC1を含む。
【0062】
制御回路300は、リップル制御方式、より具体的にはボトム検出方式のコントローラであり、2個の出力ピンOUT1,OUT2と、フィードバックピンFBを備える。フィードバックピンFBには、DC/DCコンバータ100の出力電圧VOUTに応じたフィードバック電圧が入力される。出力ピンOUT1は、スイッチングトランジスタM1のゲートと接続され、出力ピンOUT2は、同期整流トランジスタM2のゲートと接続される。
【0063】
制御回路300は、第1分圧回路302、第2分圧回路304、第1コンパレータ308、第2コンパレータ310、ロジック回路312、第1ドライバ314、第2ドライバ316を備え、ひとつの半導体基板に集積化されたIC(Integrated Circuit)である。
【0064】
第1分圧回路302は、抵抗R11,R12を含み、フィードバックピンFBにフィードバックされた出力電圧VOUTを分圧し、第1フィードバック電圧VFB1を生成する。好ましくは第1分圧回路302は、抵抗R11,R12と直列に設けられたスイッチSW1を含む。
【0065】
第2分圧回路304は、抵抗R21,R22を含み、DC/DCコンバータ100の出力電圧VOUTを分圧し、第2フィードバック電圧VFB2を生成する。
【0066】
第2分圧回路304を構成する抵抗R21,R22は、第1分圧回路302を構成する抵抗R11,R12よりも大きくすることができる。これにより、第2分圧回路304のリーク電流を削減できる。
【0067】
ロジック回路312は、DC/DCコンバータ100の非軽負荷状態においてウェイクアップ信号WAKE_UPをアサート(たとえばハイ)し、軽負荷状態においてウェイクアップ信号WAKE_UPをネゲート(たとえばロー)する。
【0068】
第1コンパレータ308は、ウェイクアップ信号WAKE_UPがアサートされる期間、イネーブルとなる。第1コンパレータ308は、イネーブル状態において、第1フィードバック電圧VFB1と第1しきい値電圧VTH1の比較結果に応じて、第1検出信号S1をアサート(たとえばハイ)する。第1検出信号S1は、VFB1がVTH1を下回るとアサートされる。第1コンパレータ308は、イネーブル状態において高速な電圧比較が可能に構成されており、引き換えて消費電力が大きい。第1コンパレータ308はディセーブル状態では、動作が停止し、消費電力が実質的にゼロに近づくように構成される。
【0069】
第1分圧回路302のスイッチSW1も、ウェイクアップ信号WAKE_UPに応じて制御され、第1コンパレータ308がディセーブル状態の間、スイッチSW1がオフとなり、第1分圧回路302を介したリーク電流が削減される。
【0070】
第2コンパレータ310は、DC/DCコンバータ100の負荷4の状態に依存せずに、常時イネーブルである。第2コンパレータ310は、第2フィードバック電圧VFB2と第2しきい値電圧VTH2の比較結果に応じて、第2検出信号S2をアサートする。第2検出信号S2は、VFB2がVTH2を下回るとアサート(たとえばハイ)される。
【0071】
第2コンパレータ310は、応答速度が第1コンパレータ308に比べて遅い代わりに、消費電力が非常に小さく構成される。
【0072】
ロジック回路312は、第1検出信号S1または第2検出信号S2がアサートされるとレベルが遷移する第1パルス信号Sp1を生成する。第1パルス信号Sp1は、スイッチングトランジスタM1の駆動に使用される信号であり、第1検出信号S1または第2検出信号S2がアサートされると、オンレベルに遷移する。第1パルス信号Sp1は、オンレベルに遷移した後、所定のオン時間TON(あるいは入力電圧VINや出力電圧VOUTにもとづいて適応的に変化するオン時間)の経過後に、オフレベルに遷移する。
【0073】
第1ドライバ314は、第1パルス信号Sp1に応じてスイッチングトランジスタM1を駆動する。
【0074】
ロジック回路312は、同期整流トランジスタM2のオン、オフを指示する第2パルス信号Sp2を生成する。第2パルス信号Sp2は、第1パルス信号Sp1がオフレベルに遷移すると、オンレベルに遷移する。また第2パルス信号Sp2は、DC/DCコンバータ100が電流連続モードで動作する期間は、第1検出信号S1あるいは第2検出信号S2がアサートされるとオフレベルに遷移する。DC/DCコンバータ100が電流不連続モードで動作する期間、第2パルス信号Sp2は、インダクタL1に流れる電流がゼロになると、オフレベルに遷移する。
【0075】
以上が制御回路300の構成である。この制御回路300では、第1コンパレータ308および第2コンパレータ310に対応して、独立した第1分圧回路302および第2分圧回路304を設けられている。そのため、第1コンパレータ308のイネーブル/ディセーブルの切り替えに際して発生するノイズが、第2コンパレータ310に入力されるのを防止でき、DC/DCコンバータ100の誤動作を防止できる。
【0076】
図3は、制御回路300の具体的な構成例(300A)を示す回路図である。制御回路300Aには、スイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2が集積化されており、図2のOUT1ピン,OUT2ピンおよびFBピンに代えて、出力ピンOUT、スイッチングピンSWが設けられる。スイッチングピンSWは、インダクタL1と接続され、出力ピンOUTは、出力キャパシタC1と接続される。
【0077】
電流連続モードと電流不連続モードの遷移を検出するために、電流ゼロクロス検出回路306が設けられる。電流ゼロクロス検出回路306は、DC/DCコンバータ100のインダクタL1に流れる電流Iのゼロクロスを検出する。たとえば電流ゼロクロス検出回路306は、同期整流トランジスタM2に流れる電流を監視し、電流がゼロ近傍のしきい値と交差すると、ゼロクロス検出信号IZCをアサートするゼロクロスコンパレータを含んでもよい。その限りでないが、ゼロクロスコンパレータは、同期整流トランジスタM2の電圧降下を、ゼロ近傍のしきい値電圧と比較し、電流ゼロクロス点を検出してもよい。
【0078】
ゼロクロス検出信号IZCは、第1検出信号S1、第2検出信号S2とともに、ロジック回路312に入力される。
【0079】
制御回路300は、オン時間タイマー320、軽負荷検出タイマー322を備える。ロジック回路312は、オン時間タイマー320、軽負荷検出タイマー322を利用して、第1パルス信号Sp1、第2パルス信号Sp2およびウェイクアップ信号WAKE_UPを生成する。
【0080】
続いてロジック回路312の動作を、電流連続モード(CCM)、電流不連続モード(DCM)それぞれについて説明する。
【0081】
(電流連続モード)
ロジック回路312は、第1検出信号S1がアサートされると、第1パルス信号Sp1をオンレベルに遷移させる。またオン時間タイマー320をアクティブとして、オン時間TONを測定し、オン時間TONの経過後に、第1パルス信号Sp1をオフレベルに遷移させ、第2パルス信号Sp2をオンレベルに遷移させる。
【0082】
次に第1検出信号S1がアサートされると、ロジック回路312は、第2パルス信号Sp2をオフレベルに遷移させ、第1パルス信号Sp1をオンレベルに遷移させる。
【0083】
(電流不連続モード)
ロジック回路312は、第1検出信号S1がアサートされると、第1パルス信号Sp1をオンレベルに遷移させる。またオン時間タイマー320をアクティブとして、オン時間TONを測定し、オン時間TONの経過後に、第1パルス信号Sp1をオフレベルに遷移させ、第2パルス信号Sp2をオンレベルに遷移させる。
【0084】
ロジック回路312は、続いて電流ゼロクロス信号IZCがアサートされると、第2パルス信号Sp2をオフレベルに遷移させる。それ以降、スイッチングトランジスタM1、同期整流トランジスタM2が両方オフとなり、スイッチングが停止する。
【0085】
軽負荷状態では、出力電圧VOUTがゆっくりと低下していく。軽負荷状態では、第1コンパレータ308はディセーブル状態であり、第2コンパレータ310のみがアクティブである。したがって、フィードバック電圧VFB2がしきい値電圧VTH2まで低下すると、第2コンパレータ310の出力S2がアサートされる。ロジック回路312は、第2検出信号S2のアサートに応答して、第1パルス信号Sp1をオンレベルに切り替える。
【0086】
続いて、ロジック回路312によるウェイクアップ信号WAKE_UPの生成について説明する。
【0087】
ロジック回路312は、電流ゼロクロス信号IZCのアサート(電流ゼロクロスの発生)をトリガーとして、所定時間τ経過後にウェイクアップ信号WAKE_UPをネゲートする。そして次の第2検出信号S2のアサートに応答してウェイクアップ信号WAKE_UPをアサートする。
【0088】
なお、ウェイクアップ信号WAKE_UPにもとづいて、第1コンパレータ308以外の回路ブロックを停止することが好ましい。具体的な、ウェイクアップ信号WAKE_UPがネゲートされる期間、電流ゼロクロス検出回路306をディセーブルとしてもよい。これによりさらに消費電力を削減できる。
【0089】
続いて制御回路300Aの動作を説明する。図4は、DC/DCコンバータ100Aの電流連続モード(非軽負荷状態)の動作波形図である。I,IM1,IM2は、インダクタ、スイッチングトランジスタM1、同期整流トランジスタM2それぞれに流れる電流を示す。
【0090】
図5は、電流不連続モード(軽負荷状態)の動作波形図である。軽負荷状態となると、出力電圧VOUTの低下速度が速くなり、電流ゼロクロスのタイミングから、次の第2検出信号S2のアサートまでの時間が長くなる。この時間が、所定のしきい値時間τを超えると、ウェイクアップ信号WAKE_UPがネゲートされ、第1コンパレータ308がディセーブル状態となり、消費電力が削減される。
【0091】
図6(a)、(b)は、ウェイクアップ信号WAKE_UPがネゲートからアサートに変化したときの波形図である。図6(a)は、図2図3に示すように、第1分圧回路302のスイッチSW1を低電位側に挿入したときの波形である。比較のために、図6(b)に、スイッチSW1を、第1分圧回路302の高電位側に挿入したときの波形である。
【0092】
図6(b)に示すようにスイッチSW1を高電位側に挿入すると、スイッチSW1がオフの期間、フィードバック電圧VFB1が0Vとなる。そして、ウェイクアップ信号WAKE_UPがアサートされ、スイッチSW1がオンすると、フィードバック電圧VFB1が0Vから上昇し、しきい値電圧VTH1も0Vから上昇する。したがって、2つの電圧VFB1としきい値電圧VTH1が図中、丸を付した部分において不要にクロスし、第1検出信号S1が誤ってアサート(ハッチングを付す)されるおそれがある。
【0093】
これに対して、スイッチSW1を低電位側に挿入すると、スイッチSW1がオフの期間、フィードバック電圧VFB1は、出力電圧VOUTとなる。そして、ウェイクアップ信号WAKE_UPがアサートされ、スイッチSW1がオンすると、フィードバック電圧VFB1が、VOUTから、VOUT×R12/(R11+R12)に遷移し、その後、出力電圧VOUTに追従して低下していく。つまり、ウェイクアップ信号WAKE_UPのアサート直後、フィードバック電圧VFB1は低下し、しきい値電圧VTH1は上昇し、それらは逆向きに変化するため、それらが不要にクロスして、第1検出信号S1が誤ってアサートされるのを防止できる。
【0094】
これまでに説明した技術は、同期整流型のDC/DCコンバータに限定されず、ダイオード整流型のDC/DCコンバータにも適用可能である。またDC/DCコンバータは、降圧型や昇降圧型であってもよい。
【0095】
続く実施形態2では、差動アンプについて説明する。上述のように、第2コンパレータ310には応答速度は要求されないが、常時、動作し続けるため、消費電力を極力小さくすることが求められる。以下では、第2コンパレータ310として好適に利用可能な差動アンプ400について説明する。
【0096】
(実施形態2)
(差動アンプ)
半導体集積回路において、ある電圧を基準電圧と比較する電圧比較処理が頻繁に行われる。高精度が要求される電圧比較には、電圧コンパレータが用いられる。図7(a)、(b)は、電圧比較を行う半導体集積回路の回路図である。半導体集積回路1は、抵抗分圧回路2、基準電圧源4、電圧コンパレータ6を備える。抵抗分圧回路2は、監視対象の電圧Vを分圧する。基準電圧源4は、バンドギャップリファレンス回路などを含み、温度や電源電圧に依存しない基準電圧VREF(あるいはしきい値電圧)を生成する。電圧コンパレータ6は、分圧後の電圧Vを、基準電圧VREFと比較し、比較結果に応じた信号を出力する。抵抗分圧回路2の分圧比(利得)をαとすると、V=α×Vとなる。したがって、電圧コンパレータの出力は、VをVREF’=VREF/αと比較した結果を示す。
【0097】
図7(b)には、電圧コンパレータ6の構成例が示される。電圧コンパレータ6は、差動アンプ10を含む。差動アンプ10は、入力差動対12、テイル電流源14、負荷回路16を含む。
【0098】
図7(a)の半導体集積回路1では、基準電圧源4と電圧コンパレータ6の両方において電流が消費される。IoT(Internet of Things)デバイスのように、電池の交換や充電が難しいデバイスでは、回路の消費電力は極限まで削減することが望まれる。
【0099】
図8は、実施形態2に係る差動アンプ400の回路図である。差動アンプ400は、第1NMOSトランジスタMN1、第2NMOSトランジスタMN2、電流源404、負荷回路402を備える。
【0100】
第1NMOSトランジスタMN1はエンハンスメント型であり、そのゲートには、入力電圧VINが入力される。第1NMOSトランジスタMN1のしきい値電圧Vth(enh)は正である。第2NMOSトランジスタMN2は、デプレッション型であり、そのゲートは接地される。第2NMOSトランジスタMN2のしきい値電圧Vth(dep)は負である。トランジスタMN1,MN2は、差動対を形成する。
【0101】
電流源404は抵抗R31を含む。抵抗R31は、第1NMOSトランジスタのソースおよび第2NMOSトランジスタのソースと、接地の間に設けられる。この抵抗R31は、テイル電流源のように振る舞う。
【0102】
負荷回路402は、第1NMOSトランジスタのドレインおよび第2NMOSトランジスタのドレインと接続される。負荷回路402はカレントミラー負荷であり、PMOSトランジスタMP3,MP4を含む。
【0103】
以上が差動アンプ400の構成である。続いてその動作を説明する。
【0104】
デプレッション型の第2NMOSトランジスタMN2のゲートは接地されているため、そのソース電圧は、-(Vth(dep))=+|Vth(dep)|となる。この電圧が、抵抗Rに印加され、抵抗Rには、I=|Vth(dep)|/R31が流れ、テイル電流源として振る舞う。
【0105】
第1NMOSトランジスタMN1に着目すると、VIN>|Vth(dep)|+Vth(enh)のとき、第1NMOSトランジスタMN1はオフであり、VIN<|Vth(dep)|+Vth(enh)のとき、第1NMOSトランジスタMN1はオンとなる。
【0106】
つまり、差動アンプ400の実効的なしきい値電圧VTH2は、VTH2=Vth(enh)+|Vth(dep)|=Vth(enh)-Vth(dep)となり、差動アンプ400の出力は、入力電圧VINと、しきい値電圧VTH2の大小関係に応じた信号となる。
【0107】
この差動アンプ400によれば、消費電力を極めて小さくすることができる。また、しきい値電圧VTH2を生成する手段が、差動アンプ400に内在することとなり、外付けの電圧源が不要となるため、さらに消費電力を削減できる。
【0108】
さらに、テイル電流源として抵抗R31を利用するため、外部からバイアス信号を与える必要がなくなり、スタンドアロンで動作できる。つまりバイアス信号を生成するバイアス回路を省略でき、あるいはバイアス回路のオン、オフ状態を電圧コンパレータとは独立して制御することが可能となり、消費電力をさらに削減できる。
【0109】
続いて差動アンプ400に関する変形例を説明する。
【0110】
図9は、変形例1に係る差動アンプ400Aの回路図である。この変形例1においてテイル電流源404は、トランジスタMN5を含む。トランジスタMN5のゲートは、定電流源422を含むバイアス回路420と接続されている。具体的には、バイアス回路420は、定電流源422の経路上に設けられたトランジスタMN6を含み、トランジスタMN6とMN5がカレントミラー回路を形成している。
【0111】
この変形例1では、差動アンプ400Aのバイアス状態を、バイアス回路420によって調節することが可能となる。ただし、常にバイアス回路420を、差動アンプ400Aが動作する間、常に動作させる必要があるため、消費電力の観点では、図8の差動アンプ400の方が優れている。
【0112】
(変形例2)
図10は、変形例2に係る差動アンプ400Bの回路図である。この変形例2において、負荷回路402は、抵抗負荷であり抵抗R41,R42を含む。
【0113】
(変形例3)
図11は、変形例3に係る差動アンプ400Cの回路図である。差動アンプ400Cは、電流源CS31を含む。電流源CS31は、第1NMOSトランジスタMN1のドレインおよび第2NMOSトランジスタMN2のドレインの少なくとも一方に、オフセット電流IOFSをソースする。このオフセット電流IOFSによって差動アンプ400Cの実効的なしきい値電圧VTH2を微調節することができる。
【0114】
図8図11を参照して説明した差動アンプの用途は、上述のDC/DCコンバータに限定されず、消費電力を削減したい半導体集積回路に広く用いることができる。
【0115】
図12は、変形例に係るDC/DCコンバータの回路図である。制御回路300Bでは、図3の第2分圧回路304が省略され、第1分圧回路302のみが設けられ、スイッチSW1は省略される。そして第1コンパレータ308および第2コンパレータ310には、共通のフィードバック信号VFBが入力される。この構成においても、第2コンパレータ310として、上述の差動アンプ400(400A~400C)を用いることで消費電力を削減できる。
【0116】
また、差動アンプ400の用途はコンパレータに限定されず、エラーアンプとして用いることもできる。図13は、変形例に係るDC/DCコンバータ100Cの回路図である。DC/DCコンバータ100Cは、コンパレータおよびロジック回路に代えて、エラーアンプ330およびパルス変調器332を備える。エラーアンプ330は、上述の差動アンプ400(400A~400C)を含んでおり、フィードバック信号VFBと基準電圧VREFの誤差を増幅し、誤差信号VERRを生成する。この基準電圧VREFは、差動アンプ400をコンパレータとして用いたときの実効的なしきい値電圧VTH2と等しく、したがって、VREF=Vth(enh)+|Vth(dep)|=Vth(enh)-Vth(dep)となる。
【0117】
パルス変調器332は、誤差信号VERRに応じて、デューティ比、周波数、オン時間、あるいはオフ時間が変化するパルス信号Sp1およびSp2を生成する。パルス変調器332は、誤差信号VERRを三角波あるいはのこぎり波と比較する電圧コンパレータを含んでもよい(電圧モード)。さらにこの電圧コンパレータを、差動アンプ400で構成してもよい。
【0118】
あるいは、パルス変調器332は、ピーク電流モードあるいは平均電流モードの変調器であってもよい。この場合、主回路に流れるコイル電流の平均値あるいはピーク値が、誤差信号VERRに近づくように、パルス信号Sp1,Sp2が生成される。
【0119】
図14は、差動アンプ400を備えるリニアレギュレータ500の回路図である。リニアレギュレータ500(LDO:Low Drop Output)は、入力ライン102の電圧VINを降圧した出力電圧VOUTを、所定の電圧レベルに安定化して出力ライン104に接続される負荷101に供給する。リニアレギュレータ500は、トランジスタM3、エラーアンプ502および抵抗分圧回路504を備える。エラーアンプ502は、上述の差動アンプ400を含む。エラーアンプ502は、抵抗分圧回路504により生成されるフィードバック信号VFBと基準電圧VREFの誤差を増幅し、トランジスタM3のゲートに供給する。この基準電圧VREFは、差動アンプ400をコンパレータとして用いたときの実効的なしきい値電圧VTH2と等しく、したがって、VREF=Vth(enh)+|Vth(dep)|=Vth(enh)-Vth(dep)となる。エラーアンプとして差動アンプ400を用いることにより、リニアレギュレータの消費電力を削減できる。
【0120】
(実施形態3)
図15は、従来のリップル制御方式の降圧DC/DCコンバータの回路図である。このDC/DCコンバータ1は、DC/DCコンバータの主回路2と、電流モードの一定オン時間(COT:Constant On Time)方式のコントローラ4を備える。
【0121】
主回路2は、スイッチングトランジスタM1(ハイサイドトランジスタ)、同期整流トランジスタ(ローサイドトランジスタ)M2、インダクタL1およびキャパシタC1を含む。
【0122】
エラーアンプ10は、DC/DCコンバータ2の出力電圧VOUTに応じたフィードバック電圧VFBと、その目標値を規定する基準電圧VREFとの誤差を増幅し、誤差信号VERRを生成する。電流検出回路12は、同期整流トランジスタM2に流れる電流を示す電流検出信号Iを生成する。メインコンパレータ14は、電流検出信号Iを誤差信号VERRを比較し、電流検出信号Iが誤差信号VERRまで低下すると、ターンオン信号TURN_ONをアサートする。
【0123】
ロジック回路16は、ターンオン信号TURN_ONに応答して、スイッチングトランジスタM1をオン、同期整流トランジスタM2をオフする。そして、オン時間発生器18をスタートさせ、一定のオン時間(Constant On-Tim)TONを測定する。オン時間TONの経過後にターンオフ信号TURN_OFFがアサートされると、ロジック回路16は、スイッチングトランジスタM1をオフ、同期整流トランジスタM2をオンする。ドライバ20,22は、ロジック回路16が生成するパルス信号に応じて、スイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2を駆動する。


【0124】
図16は、実施形態3に係るDC/DCコンバータ100の回路図である。DC/DCコンバータ100は、昇圧コンバータであり、入力ライン(入力端子)102の入力電圧VINを昇圧し、所定の電圧レベルに安定化して、出力ライン(出力端子)104に接続される負荷に供給する。
【0125】
DC/DCコンバータ100は、主回路110と、制御回路300を備える。主回路110は、インダクタL1、スイッチングトランジスタ(ローサイドトランジスタ)M1、同期整流トランジスタ(ハイサイドトランジスタ)M2、出力キャパシタC1を含む。
【0126】
制御回路300は、リップル制御方式のコントローラであり、スイッチングピンSWおよび出力ピンOUTを備える。スイッチングピンSWには、外付けのインダクタL1が接続され、出力ピンOUTには、外付けの出力キャパシタC1および出力ライン104が接続される。
【0127】
制御回路300は、分圧回路302、ターンオン信号生成回路370、オン時間生成回路320、ロジック回路312、第1ドライバ314、第2ドライバ316、スイッチングトランジスタM1、同期整流トランジスタM2を備え、ひとつの半導体基板に集積化されたIC(Integrated Circuit)である。
【0128】
分圧回路302は、抵抗R11,R12を含み、出力電圧VOUTを分圧し、フィードバック電圧VFBを生成する。
【0129】
ターンオン信号生成回路370は、DC/DCコンバータ100の出力電圧VOUTに応じたフィードバック電圧VFBを基準電圧VREFと比較し、フィードバック電圧VFBが基準電圧VREFを下回ると、ターンオン信号TURN_ONをアサートする。
【0130】
ターンオン信号生成回路370は、電流検出回路372、オフセット回路374、メインコンパレータ376を含む。
【0131】
電流検出回路372は、DC/DCコンバータ100の主回路110に流れる電流を示す第1電流検出信号Iを生成する。電流検出回路372が検出する電流は、同期整流トランジスタM2に流れる電流IM2であり、スイッチングトランジスタM1のオフ期間において流れる電流である。電流IM2の平均電流が、出力電流IOUTとなる。
【0132】
電流検出回路372の構成は特に限定されないが、たとえば同期整流トランジスタM2の両端間電圧(ドレインソース間電圧)を増幅して、第1電流検出信号Iを生成してもよい。あるいは同期整流トランジスタM2と直列に電流センス抵抗を挿入し、電流センス抵抗の電圧降下を増幅して、第1電流検出信号Iを生成してもよい。
【0133】
オフセット回路374には、第1電流検出信号I、基準電圧VREF、フィードバック電圧VFBが入力される。オフセット回路374は、フィードバック電圧VFBを基準電圧VREFと比較し、比較結果に応じたオフセット信号IOFSを、第1電流検出信号Iに重畳し、第2電流検出信号IS_OFSを生成する。
S_OFS=I-IOFS
【0134】
オフセット回路374における二つの電圧VFB、VREFの比較のタイミングは、同期整流トランジスタM2のオン期間(スイッチングトランジスタM1のオフ期間)に設けられる。たとえば、比較タイミングは、スイッチングトランジスタM1が実際にターンオンする直前であってもよい。
【0135】
メインコンパレータ376は、フィードバック電圧VFBおよび第2電流検出信号IS__OFSを第1極性(+)の入力として受け、基準電圧VREFを第2極性の入力(-)として受け、スイッチングトランジスタM1のターンオンのトリガとなるターンオン信号TURN_ONを生成する。ターンオン信号TURN_ONは、フィードバック電圧VFBと第2電流検出信号IS__OFSの和を、基準電圧VREFと比較した結果にもとづいている。別の観点からみると、ターンオン信号TURN_ONは、フィードバック電圧VFBを、基準電圧VREFと第2電流検出信号IS__OFSの差と比較した結果にもとづいている。これらは表現上の差異に過ぎず等価である。
【0136】
図16の構成例では、VFB+IS_OFS>VREFのとき、ターンオン信号TURN_ONはハイとなり、VFB+IS_OFS<VREFのとき、ターンオン信号TURN_ONはローとなり、ターンオン信号TURN_ONのローが、アサート、ハイがネゲートとなる。補正された基準電圧をVREF’=VREF-IS_OFSと置くと、VFB>VREF’のとき、ターンオン信号TURN_ONはハイとなり、VFB<VREF’のとき、ターンオン信号TURN_ONはローとなる。
【0137】
オン時間生成回路320は、スイッチングトランジスタM1のターンオンからオン時間TONの経過後にアサートされるターンオフ信号TURN_OFFを生成する。オン時間TONは、予めさだめて一定時間であってもよいし、DC/DCコンバータ100の状態に応じて適応的に制御されてもよい。ターンオフ信号TURN_OFFは、スイッチングトランジスタM1のターンオフのトリガである。
【0138】
オン時間生成回路320はタイマー回路で構成することができる。ロジック回路312は、オン時間生成回路320に対して、動作スタートのトリガーとなるスタート信号STARTを供給する。スタート信号STARTは、スイッチングトランジスタM1のターンオンを示す信号である。スタート信号STARTは、第1パルス信号Sp1であってもよい。
【0139】
ロジック回路312は、ターンオン信号TURN_ONおよびターンオフ信号TURN_OFFにもとづいて、スイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2のオン、オフを指示するパルス信号Sp1,Sp2を生成する。
【0140】
ロジック回路312は、ターンオン信号TURN_ONがアサートされると、第1パルス信号Sp1をオンレベル(ハイ)に遷移させる。
【0141】
ロジック回路312は、ターンオフ信号TURN_OFFがアサートされると、第1パルス信号Sp1をオフレベル(ロー)に遷移させる。
【0142】
電流連続モード(CCM)において、ロジック回路312は、第2パルス信号Sp2を、第1パルス信号Sp1と相補的に変化させる。電流不連続モード(DCM)では、同期整流トランジスタM2に流れる電流のゼロクロスを検出し、電流ゼロクロスから次のターンオン信号TURN_ONのアサートまでの間、第1パルス信号Sp1、第2パルス信号Sp2の両方のオフレベルを維持する。
【0143】
以上が制御回路300の構成である。続いてその動作を説明する。図17は、図16のDC/DCコンバータ100の動作波形図である。I,IM1,IM2は、インダクタ、スイッチングトランジスタM1、同期整流トランジスタM2それぞれに流れる電流を示す。VREF’=VREF-IS_OFS=VREF-I+IOFSあり、基準電圧VREF’は、負荷電流IOUTに応じて決まる第1電流検出信号Iと、VFBとVREFの比較結果に応じて調節されるオフセット信号IOFSにもとづいて上下する。フィードバック電圧VFBが、基準電圧VREF’を下回ると、スイッチングトランジスタM1がターンオンし、それからオン時間TONの経過後に、スイッチングトランジスタM1がターンオフする。
【0144】
以上が制御回路300の動作である。図18(a)は、比較技術の電流-電圧特性を示す図であり、図18(b)は、実施形態3に係るDC/DCコンバータ100の電流-電圧特性を示す図である。
【0145】
はじめに図18(a)を参照して比較技術を説明する。比較技術は、図16のDC/DCコンバータ100から、オフセット回路374を省略した構成であり、フィードバック電圧VFBと、基準電圧VREF”=VREF-Iの比較結果にもとづいて、ターンオン信号TURN_ONが生成される。基準電圧VREF”には、第1電流検出信号Iのリップル成分(スロープ成分)が重畳されるため、回路動作を安定化できる。
【0146】
ところが、負荷電流IOUTが増加すると第1電流検出信号Iが大きくなり、したがって基準電圧VREF”が低下する。そのため、負荷電流IOUTの増加にしたがって、フィードバック電圧VFBの平均レベル、すなわち出力電圧VOUTが低下する。つまり比較技術では、ロードレギュレーションが悪くなるという問題がある。
【0147】
図18(b)を参照する。本実施形態では、基準電圧VREF’=VREF-(I-IOFS)で表される。オフセット信号IOFSは、元の基準電圧VREFとフィードバック電圧VFBの比較結果に応じて、それらの誤差が小さくなるように、言い換えるとVREFとVFBが近づくように調整される。その結果、負荷電流IOUTが変動した直後は、VREF’は基準電圧VREFから逸脱するが、その後、オフセット回路374によってオフセット信号IOFSが最適化されることにより、基準電圧VREF’は、元の基準電圧VREFにもとづく一定値に近づいていく。
【0148】
その結果、定常状態では、出力電圧VOUTは負荷電流IOUTに依存しない一定電圧に安定化されることとなり、ロードレギュレーションを改善できる。なお、本実施形態においても、第1電流検出信号Iのリップル成分(スロープ成分)はフィードバックループに注入されているため、回路の安定性は、比較技術と同様に改善される。
【0149】
制御回路300は、エラーアンプを含んでいないため、エラーアンプを含む構成に比べて、消費電流を減らすことができる。
【0150】
図19は、一実施例に係るターンオン信号生成回路370を示す回路図である。オフセット回路374は、エラー検出コンパレータ378、カウンタ380、D/Aコンバータ382を含む。エラー検出コンパレータ378は、フィードバック電圧VFBを基準電圧VREFと比較する。オフセット信号IOFSは、エラー検出コンパレータ378の出力に応じて増減する。
【0151】
カウンタ380は、アップダウンカウンタであり、そのカウント値が、エラー検出コンパレータ378の出力UP/DNに応じて増減する。D/Aコンバータ382は、カウンタ380のカウント値をアナログのオフセット信号IOFSに変換する。
【0152】
第1電流検出信号Iとオフセット信号IOFSは、加算手段384において減算され、IS_OFS=I-IOFSが生成される。
【0153】
毎スイッチングサイクルの判定タイミングにおいて、VFB>VREFのとき、カウンタ380はダウン動作を行い、オフセット信号IOFSは減少する。第2電流検出信号IS_OFSは増加し、VREF’は低下する。したがって、フィードバック電圧VFBが低下する方向に帰還がかかり、基準電圧VREFに近づく。
【0154】
反対に判定タイミングにおいて、VFB<VREFのとき、カウンタ380はアップ動作を行い、オフセット信号IOFSは増加する。補正後の第2電流検出信号IS_OFSは減少し、VREF’は上昇する。したがって、フィードバック電圧VFBが上昇する方向に帰還がかかり、基準電圧VREFに近づく。
【0155】
このように、本実施形態によれば、フィードバック電圧VFBを基準電圧VREFに近づけることができる。
【0156】
オフセット回路374の動作に着目すると、補正後の第2電流検出信号IS_OFSは、第1電流検出信号Iのリップル成分(スロープ成分)を含み、その直流成分が、フィードバック電圧VFBと基準電圧VREFの誤差がゼロに近づくように調節されている。
【0157】
図20は、一実施例に係るターンオン信号生成回路370の回路図である。電流検出回路372は、gmアンプ386および抵抗388を含む。電流検出回路372は、ISENSE+端子とISENSE-端子の電圧を受ける。ISENSE+端子は、たとえば図16における同期整流トランジスタM2の一端(スイッチング端子SW)であり、ISENSE-端子は、同期整流トランジスタM2の他端(出力端子OUT)である。電流センス抵抗を設ける場合、ISENSE+,ISENSE-は、電流センス抵抗の両端と接続される。
【0158】
gmアンプ386は、同期整流トランジスタM2の電圧降下を増幅し、電流信号Iを出力する。この電流信号Iが抵抗388によって第1電流検出信号Iに変換される。
【0159】
D/Aコンバータ382は電流DACであり、カウンタ380のカウント値を電流信号Iに変換する。D/Aコンバータ382は、可変電流源であってもよい。電流信号Iは、抵抗388に流れる。抵抗388は、図19における加算手段384として機能する。電流信号Iと電流信号Iは抵抗388において加算される。第2電流検出信号IS_OFSは、以下の式で表される。
S_OFS=(I+I)×R=I+IOFS
【0160】
したがって、VFB>VREFのとき、オフセット信号IOFSが増加し、VFB<VREFのとき、オフセット信号IOFSが減少するように構成すればよい。
【0161】
図21は、一実施例に係るターンオン信号生成回路370の回路図である。図21のターンオン信号生成回路370は、図20のターンオン信号生成回路370を差動回路に変更したものである。
【0162】
電流検出回路372は、差動gmアンプ386および抵抗ペア388p,388nを含む。電流検出回路372は、ISENSE+端子とISENSE-端子の電圧を受け、差動電流Ix_P,Ix_Nを出力する。差動電流Ix_P,Ix_Nは抵抗ペア388p,388nにより電圧信号IS_P,IS_Nに変換される。IS_P-IS_Nが、図20のIに相当する。
【0163】
D/Aコンバータ382は、差動電流DACであり、カウンタ380のカウント値に応じた差動電流Iy_P,Iy_Nを出力する。Iy_P-Iy_Nが、図20のIに相当する。差動電流Iy_P,Iy_Nは抵抗ペア388p,388nに供給され、差動電流Ix_P,Ix_Nと合成され、電圧信号である第2差動電流検出信号IS_OFS_P,IS_OFS_Nに変換される。第2差動電流検出信号IS_OFS_P,IS_OFS_Nの差分が、図21のIS_OFSに相当する。
【0164】
メインコンパレータ376は四入力で構成され、2個の+入力端子の信号の和と、2個の-入力端子の信号の和を比較可能に構成される。VFBおよびIS_OFS_Pが+入力端子に、VREFおよびIS_OFS_Nが-入力端子に入力される。したがって、メインコンパレータ376において、二つの電圧VFB+IS_OFS_PとVREF+IS_OFS_Nの大小関係が比較される。
【0165】
図21において、D/Aコンバータ382を差動出力の構成に変更してもよい。
【0166】
図22は、一実施例に係るメインコンパレータ376の回路図である。メインコンパレータ376は、前段の差動アンプ376Aと後段のコンパレータ376Bを含む。前段の差動アンプ376Aにおいて、2つの+入力端子の信号同士が加算され、2つの-入力端子の信号同士が加算される。したがって、前段の差動アンプ376Aは、加算器と把握することができる。
【0167】
差動アンプ376Aは、負荷回路R21,R22を共通とする第1入力差動対M21,M22および第2入力差動対M23,M24を含む。テイル電流源CS21,CS22は、対応する入力差動対にテイル電流を供給する。負荷回路R21,R22は、カレントミラーであってもよい。
【0168】
後段のコンパレータ376bは、前段の差動アンプ376aの出力信号を比較する。コンパレータ376bは、テイル電流源CS23、差動対M25,M26、カレントミラー負荷M27,M28を含む。
【0169】
なお、図22の4入力のコンパレータのひとつの入力の電圧を固定することにより、図16図19図20等の3入力のコンパレータとして用いてもよい。
【0170】
図23は、一実施例に係るターンオン信号生成回路370の回路図である。オフセット回路374において、D/Aコンバータ382が生成する電流は、抵抗383において電圧信号IOFSに変換される。この実施例では、第1電流検出信号Iとオフセット信号IOFSの合成が、メインコンパレータ376の内部で行われる。メインコンパレータ376が図22の構成を有する場合、前段の差動アンプ376aが、加算手段384に相当する。
【0171】
図24は、DC/DCコンバータ100の主回路110の等価回路図である。RDCは、インダクタL1および配線等の等価直列抵抗である。RON1はスイッチングトランジスタM1のオン抵抗、RON2は同期整流トランジスタM2のオン抵抗を表す。
【0172】
スイッチング周期をTとする。スイッチングトランジスタM1のオン状態φONにおいて、I=IM1であり、インダクタL1の両端間電圧は、{VIN-(RON1+RDC)×I}となる。したがって、オン状態φONにおけるインダクタ電流Iの増加幅ΔIONは、式(1)で表される。TONは、オン状態の長さであり、オン時間という。
ΔION=TON/L×{VIN-(RON1+RDC)×I} …(1)
【0173】
スイッチングトランジスタM1のオフ状態φOFFにおいて、I=IM2であり、インダクタL1の両端間電圧は、{VOUT+(RON1+RDC)×I-VIN}となる。したがって、オフ状態φOFFにおけるインダクタ電流Iの減少幅ΔIOFFは、式(2)で表される。
ΔIOFF=(T-TON)/L×{VOUT+(RON2+RDC)×I-VIN} …(2)
【0174】
電流連続モードにおいて出力電圧VOUTが安定化されているとき、ΔION=ΔIOFFが成り立つ。したがって、デューティサイクルdは、式(3)で表される。
d=TON/T
={VOUT-VIN+(RON2+RDC)×I}/{VOUT-(RON1-RON2)×I
…(3)
【0175】
ON1=RON2=RDC=0と仮定した場合、式(4)を得る。
d=TON/T
={VOUT-VIN}/VOUT …(4)
【0176】
そこで、制御回路300のオン時間生成回路320は、非過電流状態における目標周期をTp(REF)とするとき、
ON={VOUT-VIN}/VOUT×TREF
を満たすオン時間TONを生成する。これによりDC/DCコンバータ100のスイッチング周波数を一定に保つことが可能となる。
【0177】
続いて、オン時間生成回路320の構成について、いくつかの実施例にもとづいて説明する。
【0178】
図25は、オン時間生成回路320の基本構成を示す回路図である。オン時間生成回路320は、第1キャパシタC11、電流源CS12、コンパレータ322、しきい値電圧生成回路330を備える。
【0179】
電流源CS12は、第1キャパシタC11と接続され、VOUTに比例する電流I(∝VOUT)を生成する。たとえば電流源CS12は、V/I変換回路であってもよい。コンパレータ322は、第1キャパシタC11の両端間電圧VC11を監視し、(VOUT-VIN)に比例した電圧変化が生じたことを検出する。
【0180】
図25において、第1キャパシタC11の一端は接地される。しきい値電圧生成回路330は、(VOUT-VIN)に比例したしきい値電圧VTH∝(VOUT-VIN)生成する。コンパレータ322は、第1キャパシタC11の他端の電圧VC11を、しきい値電圧VTHと比較する。スイッチSW1は、第1キャパシタC11と並列に接続され、スタート信号START_Bに応じて制御される。
【0181】
図26は、図25のオン時間生成回路320の動作波形図である。時刻tより前においてスタート信号START_Bはハイであり、第1キャパシタC11の電圧VC11は0Vである。時刻tにスタート信号START_Bがハイからローに遷移すると、電流源CS12が生成する電流Iによって、第1キャパシタC11が充電され、第1キャパシタC11の電圧VC11は、電流Iに比例した傾きで増大する。
I=αVOUT
【0182】
時刻tから、時間t経過後におけるキャパシタの電圧VC11は、式(5)で表される。
C11=αVOUT×t/C11 …(5)
【0183】
しきい値電圧VTHが、VTH=β×(VOUT-VIN)であるとする。キャパシタ電圧VC11が、しきい値電圧VTHに到達するまでの時間をτとすると、式(6)が成り立つ。
αVOUT×τ/C11=β×(VOUT-VIN) …(6)
これをτについて解くと、式(7)を得る。
τ=α/β×C11×(VOUT-VIN)/VOUT …(7)
【0184】
したがって、図25のオン時間生成回路320によれば、スタート信号START_Bが変化してから、(VOUT-VIN)/VOUTに比例する時間τの経過後に変化するターンオフ信号TURN_OFFを生成することができる。この時間τを、オン時間TONとしてDC/DCコンバータ100を駆動することで、スイッチング周波数を安定化できる。
【0185】
(実施例1)
図27は、実施例1に係るオン時間生成回路320Aの回路図である。しきい値電圧生成回路330Aは、第2キャパシタC12を含む。
【0186】
しきい値電圧生成回路330Aは、スイッチングトランジスタM1のオフ状態φOFFにおいて、第2キャパシタC12を(VOUT-VIN)で充電する。またしきい値電圧生成回路330Aは、スイッチングトランジスタM1のオン状態φONにおいて、第2キャパシタC12の一端に、インダクタL1とスイッチングトランジスタM1の接続ノードであるスイッチングピンSWの電圧(スイッチング電圧)VSWを印加し、第2キャパシタC12の他端の電圧を、しきい値電圧VTHとしてコンパレータ322に供給する。
【0187】
たとえばしきい値電圧生成回路330は。第2キャパシタC12に加えて、第1セレクタ332、第2セレクタ334を含む。第1セレクタ332は、スイッチングトランジスタM1のオフ状態φOFFにおいて、第2キャパシタC12の一端に入力電圧VINを印加し、スイッチングトランジスタM1のオン状態φONにおいて第2キャパシタC12の一端を、DC/DCコンバータ100のスイッチングピンSWと接続する。
【0188】
第2セレクタ334は、スイッチングトランジスタM1のオフ状態において、第2キャパシタC12の他端に出力電圧VOUTを印加し、スイッチングトランジスタM1のオン状態φONにおいて、第2キャパシタC12の他端を、コンパレータ322と接続する。
【0189】
以上がオン時間生成回路320Aの構成である。図28は、図27のオン時間生成回路320Aの動作波形図である。時刻tより前はオフ状態φOFFであり、第2キャパシタC12が(VOUT-VIN)で充電される。
【0190】
時刻tにオン状態φONに変化する。スタート信号START_Bに応じてスイッチSW1がオフすると、第1キャパシタC11の充電が開始し、キャパシタ電圧VC11が出力電圧VOUTに比例した傾きで上昇する。
【0191】
オン状態φONの間、第2キャパシタC12の電位差は維持されるから、しきい値電圧VTHは、
TH=(VOUT-VIN)+VSW
=(VOUT-VIN)+RON1・I …(8)
となる。
【0192】
したがって、オン時間生成回路320Aが生成するオン時間TONは、
ON=C11/α×{(VOUT-VIN)+RON1・I}/VOUT …(9)
となる。
【0193】
このように、図27のオン時間生成回路320Aによれば、コイル電流I(すなわち負荷電流)およびスイッチングトランジスタM1のオン抵抗RON1を考慮したオン時間TONを生成できる。
【0194】
また、後述する実施例2、実施例3のようにローパスフィルタが不要であるため、小さい回路面積で実装することができる。
【0195】
(実施例2)
図29は、実施例2に係るオン時間生成回路320Bの回路図である。このオン時間生成回路320Bは、しきい値電圧生成回路330Bの構成が、図27のしきい値電圧生成回路330Aと異なっている。
【0196】
しきい値電圧生成回路330Bは、インバータ336およびローパスフィルタ338を含む。インバータ336は、スイッチングピンSWに生ずるスイッチング電圧VSWを反転する。インバータ336の電源端子には、出力電圧VOUTが供給されており、したがってインバータ336の出力信号の振幅は、出力電圧VOUTと等しい。
【0197】
ローパスフィルタ338は、インバータ336の出力を平滑化し、しきい値電圧VTHを生成する。たとえばローパスフィルタ338は、RCフィルタで構成することができる。
【0198】
図30は、図29のオン時間生成回路320Bの動作波形図である。ローパスフィルタ338の出力は、式(10)となる。
TH=VOUT×d …(10)
dは、第1パルス信号Sp1のデューティサイクルである。電流連続モードの定常状態において、式(4)が成り立っているから、式(4)と式(10)から、式(11)を得る。
TH=VOUT×{VOUT-VIN}/VOUT=VOUT-VIN
つまり、VOUT-VINに比例したしきい値電圧VTHを生成できる。
【0199】
(実施例3)
実施例2では、電流連続モードの間は、式(4)が成り立つが、式(4)が成立しない電流不連続モードにおいて、しきい値電圧VTHが、適切な電圧レベルから逸脱する。したがって、電流不連続モードから電流連続モードに移行した直後に、周波数変動が大きくなる。実施例3では、この問題を解決する構成を説明する。
【0200】
図31は、実施例3に係るオン時間生成回路320Cの回路図である。しきい値電圧生成回路330Cは、電流不連続モードで動作する間、RCフィルタ338のキャパシタCを、VOUT-VINで充電するように構成される。具体的には、電流不連続モードの間、キャパシタCの一端にVOUTを、その他端に入力電圧VINを印加する。たとえばしきい値電圧生成回路330Cは、インバータ336、ローパスフィルタ338に加えて、第3セレクタ340、第4セレクタ342を含む。
【0201】
第3セレクタ340は、電流連続モードφCCMの間、抵抗Rの一端にインバータ336の出力電圧を印加し、電流不連続モードφDCMの間、抵抗Rの一端に、出力電圧VOUTを印加する。また第4セレクタ342は、電流連続モードφCCMの間、キャパシタCの他端に接地電圧0Vを印加し、電流不連続モードφDCMの間、キャパシタCの他端に入力電圧VINを印加する。
【0202】
これにより電流不連続モードφDCMの間に、キャパシタCの両端間電圧が、VOUT-VINに維持されるため、その次に電流連続モードφCCMに移行した際に、適切なしきい値電圧VTHから動作を再開することができる。
【0203】
(実施例4)
図32は、実施例4に係るオン時間生成回路320Dの回路図である。オン時間生成回路320Dは、コンパレータ322、電流源CS12、キャパシタC11、スイッチSW1を含む。キャパシタC11の一端には入力電圧VINが印加される。
【0204】
スイッチSW1がオンの状態では、キャパシタ電圧VC11は、入力電圧VINと等しい。スイッチSW1がオフとなると、キャパシタ電圧VC11は、入力電圧VINを初期値として、出力電圧VOUTに比例する傾きで増大する。コンパレータ322は、キャパシタ電圧VC11を出力電圧VOUTと比較する。コンパレータ322の出力TURN_OFFは、キャパシタ電圧VC11が、VOUT-VINだけ変化すると、レベル遷移する。
【0205】
この構成では、RONおよびRDCを無視しているため、Iが大きい重負荷状態において、スイッチング周波数が速くなるが、簡易な構成で、スイッチング周波数を安定化できる。
【0206】
実施形態3に関する変形例を説明する。
【0207】
(変形例1)
実施形態3では、スイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2が制御回路300に集積化されたがその限りでなく、スイッチングトランジスタM1、同期整流トランジスタM2は外付けのディスクリート素子であってもよい。また同期整流トランジスタM2はNチャンネルMOSFETであってもよく、その場合、第2ドライバ316にブートストラップ回路を追加すればよい。
【0208】
(変形例2)
実施形態3では昇圧コンバータを説明したが、降圧コンバータや昇降圧コンバータにも本発明は適用可能である。
【0209】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【0210】
(付記)
本明細書には、主として実施形態3に、以下の技術が開示される。
(項目1)
スイッチングトランジスタを有するDC/DCコンバータの制御回路であって、
前記DC/DCコンバータに流れる電流を示す第1電流検出信号を生成する電流検出回路と、
前記DC/DCコンバータの出力電圧に応じたフィードバック電圧を基準電圧と比較し、比較結果に応じたオフセット信号を、前記第1電流検出信号に重畳し、第2電流検出信号を生成するオフセット回路と、
前記フィードバック電圧および前記第2電流検出信号の合計と、前記基準電圧との比較結果に応じた、前記スイッチングトランジスタのターンオンのトリガとなるターンオン信号を生成するメインコンパレータと、
を備えることを特徴とする制御回路。
(項目2)
前記メインコンパレータは、前記フィードバック電圧および前記第2電流検出信号を第1極性の入力として受け、前記基準電圧を第2極性の入力として受けることを特徴とする項目1に記載の制御回路。
(項目3)
前記オフセット回路は、前記フィードバック電圧を前記基準電圧と比較するエラー検出コンパレータを含み、前記オフセット信号は、前記エラー検出コンパレータの出力に応じて増減することを特徴とする項目1または2に記載の制御回路。
(項目4)
前記オフセット回路は、前記エラー検出コンパレータの出力に応じてカウント値が増減するオフセット信号を生成するカウンタをさらに含み、前記オフセット信号は前記カウント値に応じていることを特徴とする項目3に記載の制御回路。
(項目5)
前記電流検出回路は、
前記電流の経路上に設けられた電流検出素子の両端の電圧を増幅するgmアンプと、
前記gmアンプの出力電流を電圧信号に変換するインピーダンス回路と、
を含むことを特徴とする項目1から4のいずれかに記載の制御回路。
(項目6)
前記オフセット回路は、前記オフセット信号に相当する電流信号を、前記インピーダンス回路に供給する電流源を含むことを特徴とする項目5に記載の制御回路。
(項目7)
前記第1電流検出信号および前記第2電流検出信号は差動信号であることを特徴とする項目1から6のいずれかに記載の制御回路。
(項目8)
前記第1電流検出信号は差動信号であり、前記第2電流検出信号はシングルエンド信号であることを特徴とする項目1から6のいずれかに記載の制御回路。
(項目9)
前記第1電流検出信号および前記第2電流検出信号はシングルエンド信号であることを特徴とする項目1から6のいずれかに記載の制御回路。
(項目10)
前記オフセット回路は、前記インピーダンス回路と接続され、前記フィードバック電圧を前記基準電圧と比較結果にもとづいて電流量が増減する可変電流源を含むことを特徴とする項目5または6に記載の制御回路。
(項目11)
前記DC/DCコンバータは入力電圧VINを昇圧し、出力電圧VOUTを生成する昇圧型であることを特徴とする項目1から10のいずれかに記載の制御回路。
(項目12)
前記スイッチングトランジスタのターンオンから、オン時間の経過後にターンオフ信号をアサートするオン時間生成回路と、
前記ターンオン信号がアサートされるとオンレベルに遷移し、前記ターンオフ信号がアサートされると、オフレベルに遷移するパルス信号を生成するロジック回路と、
をさらに備え、
前記オン時間は(VOUT-VIN)/VOUTに比例することを特徴とする項目11に記載の制御回路。
(項目13)
ひとつの半導体基板に一体集積化されることを特徴とする項目1から12のいずれかに記載の制御回路。
(項目14)
DC/DCコンバータの主回路と、
項目1から13のいずれかに記載の制御回路と、
を備えることを特徴とする電源回路。
(項目15)
スイッチングトランジスタを有するDC/DCコンバータの制御方法であって、
前記DC/DCコンバータに流れる電流を示す第1電流検出信号を生成するステップと、
前記第1電流検出信号に、前記DC/DCコンバータの出力電圧に応じたフィードバック電圧と基準電圧との比較結果にもとづくオフセット信号を重畳するステップと、
前記フィードバック電圧と、前記基準電圧と、前記オフセット信号が重畳された後の第2電流検出信号と、を比較し、比較結果を示すターンオン信号を生成するステップと、
前記スイッチングトランジスタのターンオンから、オン時間の経過後にターンオフ信号をアサートするステップと、
前記ターンオン信号がアサートされるとオンレベルに遷移し、前記ターンオフ信号がアサートされると、オフレベルに遷移するパルス信号を生成するステップと、
前記パルス信号に応じて前記スイッチングトランジスタを駆動するステップと、
を備えることを特徴とする制御方法。
【産業上の利用可能性】
【0211】
本開示は、DC/DCコンバータあるいは差動アンプに関する。
【符号の説明】
【0212】
100 DC/DCコンバータ
102 入力端子、入力ライン
104 出力端子、出力ライン
110 出力回路、主回路
M1 スイッチングトランジスタ
M2 同期整流トランジスタ
300 制御回路
302 第1分圧回路
304 第2分圧回路
306 電流ゼロクロス検出回路
308 第1コンパレータ
310 第2コンパレータ
312 ロジック回路
314 第1ドライバ
316 第2ドライバ
320 オン時間生成回路
322 コンパレータ
330 しきい値電圧生成回路
370 ターンオン信号生成回路
372 電流検出回路
374 オフセット回路
376 メインコンパレータ
378 エラー検出コンパレータ
380 カウンタ
382 D/Aコンバータ
384 加算手段
386 gmアンプ
388 抵抗
C11 第1キャパシタ
C12 第2キャパシタ
332 第1セレクタ
334 第2セレクタ
336 インバータ
338 ローパスフィルタ
340 第3セレクタ
342 第4セレクタ
Sp1 第1パルス信号
Sp2 第2パルス信号
S1 第1検出信号
S2 第2検出信号
400 コンパレータ
MN1 第1NMOSトランジスタ
MN2 第2NMOSトランジスタ
402 負荷回路
404 電流源
R31 抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
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図32