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特許7568724ミクソウイルス抵抗性タンパク質1用の定量キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ミクソウイルス抵抗性タンパク質1用の定量キット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/545 20060101AFI20241008BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G01N33/545 B
G01N33/53 D
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022540739
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 CN2020126382
(87)【国際公開番号】W WO2021147453
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】202010063962.7
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522259016
【氏名又は名称】北京九▲強▼生物技▲術▼股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼ 俊
(72)【発明者】
【氏名】祁 金祥
(72)【発明者】
【氏名】肖 ▲蘭▼萍
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲貴▼利
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 希
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-503205(JP,A)
【文献】国際公開第2011/052620(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109725152(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108548926(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105223356(CN,A)
【文献】国際公開第2018/206737(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/011795(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の試薬と、
第2の試薬と、
較正物質と
を含む、ミクソウイルス抵抗性タンパク質1を定量測定するためのキットであって、
前記第1の試薬が、
0.9% w/vの塩化ナトリウム、
5% w/vのPEG-6000、
2% w/vのBSA、
0.1% w/vのアジ化ナトリウム、及び
50mMのトリス-HCl緩衝液、pH7.2
を含み、
前記第2の試薬が、
0.25% w/vの、ミクソウイルス抵抗性タンパク質1に対する抗体でコーティングされたポリスチレンラテックス粒子、
50mMのグリシン緩衝液、pH8.0、
0.9% w/vの塩化ナトリウム、
2% w/vのBSA、
0.1% w/vのTween20、及び
0.1% w/vのアジ化ナトリウム
を含み、
前記較正物質が、
0、25、50、100、200、400ng/mlのミクソウイルス抵抗性タンパク質1、
1% w/vのBSA、
150mMの塩化ナトリウム、
0.1% w/vのアジ化ナトリウム、及び
50mMのトリス-HCl緩衝液、pH7.20
を含み、
前記ラテックス粒子の表面が、カルボキシル基で修飾されており、
前記ラテックス粒子の平均粒径が、350nmである、
キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、インビトロ医用免疫診断の分野に属し、ラテックス増強比濁イムノアッセイを使用することによって、サンプル中のミクソウイルス抵抗性タンパク質1の含有量を測定するためのキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
ミクソウイルス抵抗性タンパク質1は、組織及び細胞に広く存在する天然タンパク質であり、662個のアミノ酸からなり、分子量は約78kDである(Sun Shaomei等、Research and Application of Mx1 Antiviral Protein、Chinese Journal of Zoological Diseases、2011年、27(4)、351~354頁)。
【0003】
ひとたび身体がウイルスに感染すると、IFNが著しく増加し、インターフェロン-α(IFN-α)が受容体タンパク質であるIFNAR1及びIFNAR2と結合して、遺伝子MX1の発現が開始されて、MX1が形成される。インビボでのMX1タンパク質のレベルは、IFNの効能を評価するために役立つ。Mx1タンパク質は、ウイルス感染と密接に関係しており、ウイルスに対して非常に感受性の高い反応を示す。ごく少量のウイルスであっても、細胞を誘導してMx1タンパク質を発現させることができるため、初期のウイルス感染の診断に使用することができる、また、臨床的にもウイルス感染及び細菌感染の識別診断に使用することができる(Mao Guoqiang等、Foreign Medical Virology Volume 2005、12巻、107~109頁)。そのため、ミクソウイルス抵抗性タンパク質は、2015年の第68回世界保健会議において、細菌感染とウイルス感染を区別するためのバイオマーカー候補となることが初めて明らかにされた(Clin Chem、2019年6月、65(6)、739~750頁、doi:10.1373/clinchem.2018.292391.、2018年12月28日に電子公開)。
【0004】
中国公開番号第106442984号は、細菌(又は混合)感染とウイルス感染を区別するために、MX1の発現レベルを検出する抗体と、CRPの発現レベルを検出する抗体とを組み合わせて使用することを開示している。
【0005】
現在、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)が、MX1の主要な臨床診断技術である。しかしながら、MX1の臨床検査における普及は、煩雑な操作、時間がかかること、外的要因や人の操作に影響されやすいこと、自動化の度合いが低いことに起因して、大きく制限されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国公開番号第106442984号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Sun Shaomei等、Research and Application of Mx1 Antiviral Protein、Chinese Journal of Zoological Diseases、2011年、27(4)、351~354頁
【文献】Mao Guoqiang等、Foreign Medical Virology Volume 2005、12巻、107~109頁
【文献】Clin Chem、2019年6月、65(6)、739~750頁、doi:10.1373/clinchem.2018.292391.、2018年12月28日に電子公開
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願の一部の実施形態によれば、ヒトサンプル中のミクソウイルス抵抗性タンパク質1の含有量を測定するためのキットが提供される。
【0009】
特定の実施形態においては、
第1の試薬と、
第2の試薬と、
任意選択で、較正物質及び/又は品質対照と
を含む、ヒトサンプル中のミクソウイルス抵抗性タンパク質1の含有量を測定するためのキットであって、
第1の試薬が、
10mMから200mMの緩衝液、
0.1%から15% w/vの安定化剤、
1%から6% w/vの凝固剤、及び
0.02%から0.1% w/vの保存剤
を含み、
第2の試薬が、
0.05%から0.5% w/vの、ミクソウイルス抵抗性タンパク質1に対する抗体でコーティングされたラテックス粒子、
10mMから200mMの緩衝液、
0.1%から15% w/vの安定化剤、及び
0.02%から0.1% w/vの保存剤
を含み、
較正物質が、
既知の濃度を有するミクソウイルス抵抗性タンパク質1、
10mMから200mMの緩衝液、
0.1%から15% w/vの安定化剤、及び
0.02%から0.1% w/vの保存剤
を含む、キットが提供される。
【0010】
一部の実施形態においては、ミクソウイルス抵抗性タンパク質1に対する抗体は、マウス、サル、ヤギ、ウサギ、ウシ、ブタ、家禽、ラクダ、又は組換え抗体に由来する。
【0011】
一部の実施形態においては、ミクソウイルス抵抗性タンパク質1に対する抗体は、ラテックス粒子の表面にコーティングされており、好ましくは、ミクソウイルス抵抗性タンパク質1に対する抗体は、ラテックス粒子の表面に共有結合している。
【0012】
一部の実施形態においては、ラテックス粒子は、50nmから350nm(50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350nm)の平均粒径を有する。
【0013】
一部の実施形態においては、ラテックス粒子の表面は、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、ヒドラジド基、及びクロロメチル基からなる群から選択される化学基のうちの1つ又はそれらの組み合わせを有する。
【0014】
一部の実施形態においては、緩衝液は、トロメタミン緩衝液、リン酸緩衝液、トリス-HCl緩衝液、クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、バルビツール酸緩衝液、グリシン緩衝液、ホウ酸緩衝液、及びトリヒドロキシメチルメタン緩衝液のうちの1つ又はそれらの組み合わせから選択される。
【0015】
一部の実施形態においては、安定化剤は、0.1%から5% w/vのウシ血清アルブミン、5%から10% w/vのトレハロース、10%から20% w/vのグリセロール、5%から10% w/vのスクロース、5%から10% w/vのマンニトール、5%から15% w/vのグリシン、及び5%から15% w/vのアルギニンのうちの1つ又はそれらの組み合わせから選択される。
【0016】
一部の実施形態においては、保存剤は、アジ化ナトリウム、チメロサール、フェノール、エチル水銀、及びチオ硫酸ナトリウムのうちの1つ又はそれらの組み合わせから選択される。
【0017】
一部の実施形態においては、凝固剤は、PEG-4000、PEG-6000、PEG-8000、及びグルカンのうちの1つ又はそれらの組み合わせから選択される。
【0018】
本出願においては、抗体はまた、抗原結合性フラグメントのカテゴリーも含む。
【0019】
一部の実施形態においては、本出願の検出試薬は、ヒトサンプル(血清、血漿、尿、脳脊髄液、分泌物、組織液、唾液、生検サンプル、涙、排泄物、汗、嚢胞液)中のミクソウイルス抵抗性タンパク質1の量、その有無、及びその発現レベルの定量又は定性測定にとって有用である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0020】
キットの調製
1.第1の試薬の調製:
50mMのトリス-HCl緩衝液、pH7.2に、0.9%の塩化ナトリウム、5%のPEG-6000、2%のBSA、及び0.1%のアジ化ナトリウムを添加し、よく混合して第1の試薬を得た。
【0021】
2.第2の試薬の調製
4.5mLの、0.05MのMES緩衝液、pH6.0に、335nmの平均粒子径を有し、表面がカルボキシル基で修飾されている、0.5mLのポリスチレンラテックス溶液(濃度10%、JSRより購入)を添加し、更に5mgのEDACを添加して、37℃で1時間反応させた。
【0022】
未反応のEDACを、15,000rpmでの遠心分離によって除去し、5mlのカップリング緩衝液(グリシン緩衝液、pH8.0)を添加して再懸濁させた。
【0023】
次いで、上記ラテックス溶液に、0.5mgのミクソウイルス抵抗性タンパク質1に対する抗体(市販の抗体)を直ちに添加して、37℃で1時間反応させた。
【0024】
遊離抗体を、15,000rpmでの遠心分離によって除去し、最後に2%のBSAブロッキング溶液5mLを添加して、ペレットを再懸濁させた。
【0025】
15,000rpmでの遠心分離によって上清を除去し、20mLの、50mMのグリシン緩衝液、pH8.0(0.9%の塩化ナトリウム、2%のBSA、0.1%のTween20、0.1%のアジ化ナトリウムを含む)でペレットを3回洗浄した後、同じグリシン緩衝液20mL中に分散させて、乳白色のラテックス懸濁液を得て、結果として第2の試薬(ラテックス粒子の濃度は0.25%)を得た。
【0026】
3.較正物質
50mMのトリス-HCl緩衝液、pH7.2に、ミクソウイルス抵抗性タンパク質1を、0、25、50、100、200、400ng/Lの濃度で添加した後、2%のBSA、150mMの塩化ナトリウム、及び0.1%のアジ化ナトリウムを添加し、よく混合して、ミクソウイルス抵抗性タンパク質1用の較正物質を得た。
【0027】
上記試薬をキットへと組み立てた。
【実施例2】
【0028】
対照キットの調製
抗体エピトープ、各成分の濃度、又はラテックス粒子の粒径を変更した以外は、実施例1と同様である。
【実施例3】
【0029】
MX1キットの性能試験
1.試験方法
Hitachi 7180生化学分析装置を例として使用した。測定波長は570nmであった。まず、180μlの第1の試薬及び3.0μlの較正物質を添加し、37℃で5分間反応させた後、60μlの第2の試薬を添加した。
【0030】
反応開始から353秒後と600秒後の吸光度の値A1及びA2を測定し、吸光度差ΔA=A2-A1を計算した。各チューブについて測定を2回繰り返し、各較正チューブについて2回測定した吸光度差ΔAを縦座標、対応する濃度を横座標として、濃度-吸光度差の較正曲線をプロットした。同様に、試験するサンプルについても吸光度差を測定し、較正曲線に対してフィッティングすることによって、試験するサンプル中のMX1の量を計算することができる。
【0031】
2.再現性
MX1を生理食塩水で希釈して、30、60、120、180、及び360ng/mlの5段階の濃度勾配をそれぞれ得た。Hitachiでの較正の後、MX1サンプルの5段階の濃度勾配を、それぞれ21回検出し、平均及び変動係数をそれぞれ計算した。
【0032】
【表1】
【0033】
3.直線性
MX1を添加することによって、約400ng/mlの濃度を有する高濃度サンプルを調製し、生理食塩水を用いて10回の算術的希釈を行って、11段階の直線サンプルを調製し、各サンプルについて3回、各段階での濃度を測定した。平均と理論値との間の偏差を計算した。
【0034】
【表2】
【0035】
表1及び表2から、本出願の検出キットは、検出の再現性及び直線性において良好な性能を示し、MX1の臨床的検出にとって良好な選択肢を提供できることが分かる。