(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ポリアミド工業用糸、並びに、その製造方法及び応用
(51)【国際特許分類】
D01F 6/60 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
D01F6/60 351Z
D01F6/60 301C
(21)【出願番号】P 2022548717
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(86)【国際出願番号】 CN2020082600
(87)【国際公開番号】W WO2021196032
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】517272909
【氏名又は名称】上海凱賽生物技術股分有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】519322820
【氏名又は名称】シーアイビーティー アメリカ インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】522318302
【氏名又は名称】▲凱▼▲賽▼(▲烏▼▲蘇▼)生物材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 朝▲續▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 万▲鐘▼
(72)【発明者】
【氏名】高 祥
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 修才
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/119302(WO,A1)
【文献】特開2005-029933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F1/00- 6/96
9/00- 9/04
D01D1/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造原料が、少なくとも、ポリアミド5X樹脂を含む、ポリアミド工業用糸であって
、
前記ポリアミド5X樹脂は、ポリアミド510、ポリアミド511、ポリアミド512
、ポリアミド513、及びポリアミド516から選ばれる1種又は複数種であり、
前記ポリアミド工業用糸の水分率≦2.2%であり、前記ポリアミド工業用糸の調湿処理後の破断強度の保持率≧94%である、ポリアミド工業用糸。
【請求項2】
前記ポリアミド5X樹脂は、1,5-ペンタンジアミン及び直鎖脂肪族二塩基酸
からなり、
前記直鎖脂肪族二塩基酸は、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、及びヘキサデカン二酸から選ばれる1種又は複数種である、請求項1に記載のポリアミド工業用糸。
【請求項3】
前記ポリアミド工業用糸の破断強度は、7.5~9.5cN/dtexであり、前記ポリアミド工業用糸の耐熱強力の保持率は、85~95%であり、請求項1に記載のポリアミド工業用糸。
【請求項4】
破断伸度は、16~24%である、請求項1に記載のポリアミド工業用糸。
【請求項5】
モジュラス≧35cN/dtexである、請求項1に記載のポリアミド工業用糸。
【請求項6】
乾熱収縮率≦10.0%である、請求項1に記載のポリアミド工業用糸。
【請求項7】
沸水収縮率≦9.0%であり、沸水処理後の伸度≦25.0%である、請求項1に記載のポリアミド工業用糸。
【請求項8】
前記ポリアミド5X樹脂は、熱安定剤及び/又は第2の添加剤を含み、前記熱安定剤は、酢酸銅、ヨウ化カリウム、塩化銅、ヨウ化第一銅、酸化銅、酸化第一銅のうちの1種又は複数種を含み、前記第2の添加剤は、艶消し剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤及び帯電防止剤のうちの1種又は複数種を含む、請求項1に記載のポリアミド工業用糸。
【請求項9】
(1)ポリアミド5X樹脂を含む紡糸原料を溶融状態になるまで加熱し、融体を形成するステップと、
(2)前記融体から糸を引き、低配向糸を形成するステップと、
(3)前記低配向糸を、保温処理、冷却処理、オイリング処理、プレインターレーシング処理、多段延伸処理、メインインターレーシング処理及び巻き取り処理に供して、前記ポリアミド工業用糸を製造し、前記多段延伸処理のいずれか1つの延伸段階においてテンションヒートセット処理及び/又はリラクゼーションヒートセット処理を行うステップと、を含む、請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載のポリアミド工業用糸の製造方法。
【請求項10】
前記ポリアミド5X樹脂の製造方法は、
96%硫酸に対する相対粘度が2.2~2.7のポリアミド5X樹脂を高温乾燥処理に供して、増粘されたポリアミド5X樹脂を得るステップと、
前記増粘されたポリアミド5X樹脂を樹脂調湿処理に供して、相対粘度が3.3~4.0の前記ポリアミド5X樹脂を得るステップと、を含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記高温乾燥処理は、負圧状態又は不活性ガス雰囲気で行われ、前記負圧状態での真空度が-0.06~-0.1MPaであり、
前記高温乾燥処理における温度は、130~160℃であり、処理の時間は、10~25hである、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記樹脂調湿処理における温度は、85~110℃であり、窒素ガスと水蒸気とを混合して前記樹脂調湿処理を行い、窒素ガスの露点を-15~15℃に制御する、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップ(1)における加熱は、スクリュー押出機で行われ、前記スクリュー押出機は、5つの領域に分けて加熱し、第1の領域の温度は、220~250℃であり、第2の領域の温度は、230~260℃であり、第3の領域の温度は、240~270℃であり、第4の領域の温度は、250~280℃であり、第5の領域の温度は、260~290℃である、請求項
9に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップ(2)は、前記融体を紡糸ボックスの紡糸口金から吐出して、低配向糸を得るステップを含み、前記紡糸ボックスの温度は、260~290℃であり、前記紡糸ボックスの紡糸パックの圧力は、10~22MPaである、請求項
9に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップ(3)において、徐冷装置により保温を行い、徐冷高さは、100~300mmであり、徐冷温度は、200~300℃であり、
前記冷却処理は、サイドエアブロー又はリングエアブローにより風冷を行うものであり、
前記オイリング処理において、オイリングリップの紡糸口金からの高さ≧2.5mであり、オイリング率は、0.7~1.2%であり、
前記プレインターレーシング処理における圧力は、1~2.5barであり、
前記多段延伸処理の総延伸倍率は、4.5~6.0であり、
前記テンションヒートセット処理における温度は、150~200℃であり、
前記リラクゼーションヒートセット処理における温度は、100~160℃である、請求項
9に記載の方法。
【請求項16】
縫糸、タイヤコード、エアバッグ糸、離型布、水布、帆布、シートベルト、ロープ、漁網、工業用濾過布、コンベアベルト、パラシュート、テント又は箱・バッグにおける、請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載のポリアミド工業用糸の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工業用糸に関し、特に、吸水性が低く、寸法安定性に優れたポリアミド工業用糸を提供する。
【背景技術】
【0002】
テトロンやナイロンの高強度糸は、高強度、低伸度、優れた寸法安定性、耐疲労及び耐老化などの特徴を有するので、タイヤコード、帆布、コンベアベルト、エアバッグ、パラシュート、ロープ、シートベルト、工業用濾布又はテントなどの分野に広く応用されている。
【0003】
高強度糸の製造プロセスは2種類あり、1つは、融体を増粘させて直接的に紡糸するという方法を使用し、もう1つは、切片を固相増粘させて間接的に紡糸するという方法を使用する。
【0004】
現在、高強度の工業用糸は、ポリエステル、ポリアミド6及びポリアミド66をはじめとするが、ポリエステル工業用糸は、耐摩耗性が悪く、ゴムとの粘着性が悪い。ポリアミド6及びポリアミド66は、吸水性が高く、それにより製造されたポリアミド工業用糸の水分率が高く、後続の応用において吸水して変形しやすく、その寸法安定性のばらつきが大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、製造原料が、少なくとも、1,5-ペンタンジアミン及び直鎖脂肪族二塩基酸、又は、1,5-ペンタンジアミン及び直鎖脂肪族二塩基酸をモノマーとして重合して得られたポリアミド5Xを含む、吸水性が低く寸法安定性に優れ、耐熱性が良い高強度ポリアミド工業用糸を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態は、ポリアミド工業用糸の製造方法をさらに提供し、前記製造方法は、
(1)ポリアミド5X樹脂を含む原料を溶融状態になるまで加熱し、融体を形成するステップと、
(2)前記融体から糸を引き、低配向糸(Undrawn Yarn)を形成するステップと、
(3)前記低配向糸を、保温処理、冷却処理、オイリング処理、プレインターレーシング(pre-interlacing)処理、多段延伸処理、メインインターレーシング(main-interlacing)処理及び巻き取り処理に供して、前記ポリアミド工業用糸を製造し、前記多段延伸処理のいずれか1つの延伸段階においてテンションヒートセット(tension heat-setting)処理又はリラクゼーションヒートセット(relaxation heat-setting)処理を行うステップと、を含む。
【0007】
本開示の一実施形態は、縫糸、タイヤコード、エアバッグ糸、離型布、水布、帆布、シートベルト、ロープ、漁網、工業用濾過布、コンベアベルト、パラシュート、テント又は箱・バッグにおける、上記のポリアミド工業用糸の使用をさらに提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態に係るポリアミド工業用糸は、吸水性が低く、寸法安定性に優れ、破断強度が高く、耐熱性が良いという特徴を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の特徴及び利点を体現するための代表的な実施例については、以下の説明で詳述する。なお、本開示は、異なる実施例において様々な変更を行うことができ、それらは、いずれも本開示の範囲から逸脱するものではない。その説明は、本質的に説明するためのものであり、本開示を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0010】
本開示の一実施形態は、製造原料が、少なくとも、1,5-ペンタンジアミン及び直鎖脂肪族二塩基酸、又は、1,5-ペンタンジアミン及び直鎖脂肪族二塩基酸をモノマーとして重合して得られたポリアミド5Xを含む、工業用糸を提供する。
【0011】
一実施形態において、直鎖脂肪族二塩基酸は、6~18個、例えば7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個の炭素原子を含む。
一実施形態において、直鎖脂肪族二塩基酸は、飽和二塩基酸であってもよい。
一実施形態において、直鎖脂肪族二塩基酸は、1個の炭素-炭素二重結合を含んでもよい。
【0012】
一実施形態において、直鎖脂肪族二塩基酸は、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、Δ9-1,18オクタデセン二酸のうちの1種又は複数種であってもよい。
【0013】
一実施形態において、直鎖脂肪族二塩基酸は、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸のうちの1種又は複数種であってもよい。
【0014】
一実施形態において、1,5-ペンタンジアミン及び/又は直鎖脂肪族二塩基酸は、発酵法又は酵素変換法により製造することができる。
【0015】
本開示の一実施形態に係る工業用糸は、ポリアミド5Xを含むものであり、ポリアミド5X工業用糸とも呼ばれる。
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸は、ポリアミド56、ポリアミド510、ポリアミド511、ポリアミド512、ポリアミド513、ポリアミド514、ポリアミド515、ポリアミド516、ポリアミド517及びポリアミド518のうちの1種又は複数種を含む。
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸は、ポリアミド510、ポリアミド511、ポリアミド512のうちの1種又は複数種を含む。
【0016】
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸の水分率は、≦2.2%であり、さらに≦2.1%であってもよく、よりさらに≦1.9%であってもよく、例えば0.9%、1.5%、1.8%、2.0%などであってもよい。
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸の水分率は、0.9~2.2%であってもよい。
【0017】
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸の破断強度は、7.5~9.5cN/dtexであり、さらに7.8~9.0cN/dtexであってもよく、よりさらに8.0~8.5cN/dtexであってもよく、例えば7.9cN/dtex、8.1cN/dtex、8.2cN/dtex、8.3cN/dtex、8.4cN/dtexなどであってもよい。
【0018】
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸は、160℃で4h加熱処理された後、耐熱強力の保持率が≧85%であり、さらに≧88%であってもよく、よりさらに≧92%であってもよく、例えば90%、91%、92%、93%、94%、95%などであってもよい。
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸の耐熱強力の保持率は、85~95%である。
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸は、160℃で4h加熱処理された後、耐熱強力の保持率が85~95%である。
【0019】
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸は、調湿処理後の破断強度の保持率が≧92%であり、さらに≧94%であってもよく、よりさらに≧96%であってもよく、ポリアミド5X工業用糸の吸水性が低く、破断強度の保持率が高いことが示される。
【0020】
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸の破断伸度は、16~24%であり、さらに18~22%であってもよく、よりさらに19~21%であってもよく、例えば19.5%、20%、20.5%などであってもよい。
【0021】
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸のモジュラスは、≧35cN/dtexであり、さらに≧38cN/dtexであってもよく、よりさらに≧42cN/dtexであってもよく、例えば42.5cN/dtex、43cN/dtex、43.5cN/dtex、44cN/dtex、44.5cN/dtex、45cN/dtex、45.5cN/dtex、46cN/dtex、46.5cN/dtex、47cN/dtex、47.5cN/dtex、48cN/dtexなどであってもよい。
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸のモジュラスは、35~50cN/dtexである。
【0022】
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸の乾熱収縮率は、≦10.0%であり、さらに≦8.0%であってもよく、よりさらに≦6.0%であってもよく、例えば6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%などであってもよい。
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸の乾熱収縮率は、6.0~10.0%である。
【0023】
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸の沸水収縮率は、≦9.0%であり、さらに≦8.0%であってもよく、よりさらに≦7.0%であってもよく、例えば6.0%、6.2%、6.5%、6.8%、7.0%、7.5%、7.9%などであってもよい。
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸の沸水収縮率は、6.0~9.0%である。
【0024】
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸は、沸水処理後の伸度≦25.0%であり、例えば20%、20.5%、21%、21.5%、22%、22.5%、23%、23.5%、24%、24.5%などである。
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸は、沸水処理後の伸度が20~25%である。
【0025】
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸の単糸破断回数は、≦5個/24hであり、さらに≦3個/24hであってもよく、よりさらに≦2個/24hであってもよく、例えば4個/24hであってもよい。
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸の単糸破断回数は、2~5個/24hである。
【0026】
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸のフィラメント切れ(broken filament)は、≦10個/1個のボビン(10kg巻き)であり、さらに≦8個/1個のボビンであってもよく、よりさらに≦5個/1個のボビンであってもよく、例えば2個/1個のボビン、3個/1個のボビン、4個/1個のボビン、5個/1個のボビン、7個/1個のボビンなどであってもよい。
【0027】
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸のフィラメント切れは、2~10個/1個のボビンである。
【0028】
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸の歩留まりは、≧90%であり、さらに≧93%であってもよく、よりさらに≧95%であってもよく、例えば96%、97%、98%などであってもよい。
【0029】
一実施形態において、ポリアミド5X工業用糸は、ポリアミド5X樹脂を含む紡糸原料から紡糸プロセスにより製造される。
【0030】
一実施形態において、ポリアミド5X樹脂の96%硫酸に対する相対粘度は、2.8~4.0であり、さらに3.0~3.7であってもよく、よりさらに3.3~3.6であってもよく、例えば2.9、3.1、3.2、3.4、3.5、3.8、3.9などであってもよい。
一実施形態において、ポリアミド5X樹脂は、添加剤を含む。
【0031】
一実施形態において、1,5-ペンタンジアミン及び直鎖脂肪族二塩基酸を原料としてポリアミド5X樹脂を製造する。使用されるプロセスは、従来技術であってもよい。
【0032】
一実施形態において、ポリアミド5X樹脂の製造方法は、先ず、1,5-ペンタンジアミン、直鎖脂肪族二塩基酸及び水を混合してポリアミド5Xの塩溶液を製造するステップと、その後、得られたポリアミド5X塩溶液を重縮合及び脱水に供してポリアミド5X樹脂を得るステップと、を含む。
【0033】
一実施形態において、ポリアミド5X樹脂の製造方法は、
S1:1,5-ペンタンジアミン、直鎖脂肪族二塩基酸及び水を均一に混合して、ポリアミド5Xの塩溶液を製造し、ここで、1,5-ペンタンジアミンと直鎖脂肪族二塩基酸とのモル比が(1~1.05):1であるステップと、
S2:ポリアミド5Xの塩溶液を加熱して重合反応を行って、ポリアミド5Xを得るステップと、を含む。
【0034】
一実施形態において、ステップS2は、ポリアミド5Xの塩溶液を加熱し、反応系内の圧力を0.3~2.5MPaまで上昇させ、排気し、保圧し、保圧終了時の反応系の温度を232~265℃とし、さらに、反応系内の圧力を0~0.2MPa(ゲージ圧)まで低減させ、5~30min保持し、減圧終了後の反応系の温度を245~280℃とし、真空引きをする、ステップを含む。
【0035】
一実施形態において、上記のステップS1、S2のいずれか1つ又は複数の段階では、添加剤を加えてもよい。さらに、ステップS1において加えてもよく、又はステップS2において加熱して重合反応を行う前に加えてもよい。
【0036】
一実施形態において、添加剤は、熱安定剤及び/又は第2の添加剤を含み、熱安定剤は、酢酸銅、ヨウ化カリウム、塩化銅、ヨウ化第一銅、酸化銅、酸化第一銅のうちの1種又は複数種を含む。
【0037】
一実施形態において、熱安定剤の添加量は、1,5-ペンタンジアミンと直鎖脂肪族二塩基酸との反応により生成されたポリアミド5X塩の総重量の20~3000ppmであり、さらに80~2500ppmであってもよく、よりさらに200~2200ppmであってもよい。
【0038】
一実施形態において、熱安定剤に酢酸銅とヨウ化カリウムが含まれ、酢酸銅とヨウ化カリウムのモル比は、1:(1~15)であり、さらに1:(5~13)であってもよく、例えば1:6、1:8、1:10、1:12などであってもよい。
【0039】
一実施形態において、第2の添加剤は、艶消し剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤及び帯電防止剤のうちの1種又は複数種を含んでもよい。
一実施形態において、第2の添加剤は、酸化防止剤及び/又は結晶核剤を含む。
【0040】
一実施形態において、酸化防止剤は、酸化防止剤1010、酸化防止剤1076、酸化防止剤TPP、酸化防止剤TNP、酸化防止剤164、酸化防止剤DNP、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウムのうちの1種、2種又はそれ以上を含んでもよい。
【0041】
一実施形態において、結晶核剤は、ナノモンモリロナイト、ナノタルク、ナノSiO2、ナノAl2O3、ナノZrO2、ナノTiO2、ナノP200のうちの1種又は複数種を含んでもよい。
【0042】
一実施形態において、第2の添加剤の添加量は、1,5-ペンタンジアミンと直鎖脂肪族二塩基酸との反応により生成されたポリアミド5X塩の総重量の0~1000ppm、例えば1ppm、5ppm、10ppm、50ppm、100ppm、200ppm、500ppm、800ppmなどである。
【0043】
本開示の一実施形態は、上記のポリアミド5X工業用糸の製造方法を提供し、前記方法は、
(1)ポリアミド5X樹脂を含む紡糸原料を溶融状態になるまで加熱し、融体を形成するステップと、
(2)融体管路を介して融体を紡糸ボックスに搬送して糸を引き、低配向糸を形成するステップと、
(3)低配向糸に対して、保温、冷却、オイリング、プレインターレーシング、多段延伸、メインインターレーシング、巻き取りを行って、ポリアミド5X工業用糸が得られ、多段延伸のいずれか1つの延伸段階においてテンションヒートセット処理又はリラクゼーションヒートセット処理を行うステップと、を含む。
【0044】
一実施形態において、ステップ(1)のポリアミド5X樹脂は、高粘度ポリアミド5X樹脂であり、高粘度ポリアミド5X樹脂の96%硫酸に対する相対粘度が、2.8~4.0であり、さらに3.0~3.7であってもよく、よりさらに3.3~3.6であってもよく、例えば2.9、3.1、3.2、3.4、3.5、3.8、3.9などであってもよい。
【0045】
一実施形態において、ポリアミド5X樹脂に添加剤を加えることにより、紡糸原料に銅イオンが含まれ、銅イオンの含有量は、0~300ppmであり、さらに30~200ppmであってもよく、よりさらに50~100ppmであってもよく、上記の含有量は、高粘度ポリアミド5X樹脂の総重量を基準とするものである。
【0046】
一実施形態において、高粘度ポリアミド5X樹脂の含水率は、100~1000ppmであり、さらに200~800ppmであってもよく、よりさらに400~600ppmであってもよく、例えば150ppm、300ppm、350ppm、500ppm、550ppm、700ppm、900ppmなどであってもよい。高粘度ポリアミド5X樹脂の含水率が、上記の範囲内に保持されることで、工業用糸の製造過程において融体が分解されることを回避することができ、これにより、製造された工業用糸の破断強度が高く、モジュラスが高く、単糸破断回数及びフィラメント切れの本数が少なく、歩留まりが高い。
【0047】
一実施形態において、高粘度ポリアミド5X樹脂の製造方法は、先ず、相対粘度が2.2~2.7の低粘度ポリアミド5X樹脂を高温乾燥処理に供して、増粘されたポリアミド5X樹脂を得るステップと、その後、得られた増粘されたポリアミド5X樹脂を樹脂調湿処理に供して、高粘度ポリアミド5X樹脂を得るステップと、を含む。
【0048】
一実施形態において、低粘度ポリアミド5X樹脂の96%硫酸に対する相対粘度は、2.2~2.7であってもよく、さらに2.4~2.6であってもよく、例えば2.3、2.5などであってもよい。
一実施形態において、高温乾燥処理において、真空引きをするか(負圧状態)又は不活性ガス雰囲気で行われ、真空引き時の真空度が-0.06~-0.1MPaであり、例えば-0.07MPa、-0.08MPa、-0.09MPaなどである。
一実施形態において、高温乾燥処理における温度は、130~160℃であり、さらに140~150℃であってもよく、例えば135℃、145℃、155℃などであってもよい。
【0049】
一実施形態において、高温乾燥処理の時間は、10~25hであり、さらに15~20hであってもよく、例えば12h、16h、18h、22h、24hであってもよい。
一実施形態において、高温乾燥処理を行う装置は、真空式ドラムドライヤー又は連続除湿式サーマル窒素ガスドライヤーである。
【0050】
一実施形態において、樹脂調湿処理における温度は、85~110℃であり、例えば90℃、95℃、100℃、105℃などである。
【0051】
一実施形態において、窒素ガスと水蒸気とを混合して樹脂調湿処理を行い、窒素ガスの露点を-15~15℃の範囲、例えば-12℃、-10℃、-8℃、-5℃、0℃、2℃、5℃、8℃、10℃、12℃などに制御する。
【0052】
一実施形態において、ステップ(1)において、スクリュー押出機で加熱を行い、スクリュー押出機は、5つの領域に分けて加熱し、第1の領域の温度は、220~250℃、例えば225℃、230℃、235℃、240℃、245℃などであり、第2の領域の温度は、230~260℃、例えば235℃、240℃、245℃、250℃、255℃などであり、第3の領域の温度は、240~270℃、例えば245℃、250℃、255℃、260℃、265℃などであり、第4の領域の温度は、250~280℃、例えば255℃、260℃、265℃、270℃、275℃などであり、第5の領域の温度は、260~290℃、例えば265℃、270℃、275℃、280℃、285℃などである。
【0053】
一実施形態において、ステップ(2)における糸引きは、ステップ(1)で得られた融体を紡糸ボックスの紡糸口金から吐出して、低配向糸を得るステップを含む。
一実施形態において、紡糸ボックスの温度は、260~290℃であり、さらに270~285℃であってもよく、よりさらに275~280℃であってもよい。
一実施形態において、紡糸ボックスの紡糸パックの圧力は、10~22MPaであり、さらに14~20MPaであってもよく、よりさらに17~18MPaであってもよい。
【0054】
一実施形態において、ステップ(3)において、徐冷装置により保温処理を行い、徐冷高さは、100~300mmであってもよく、さらに200~250mmであってもよく、例えば120mm、150mm、220mm、230mm、240mmなどであってもよい。徐冷温度は、200~300℃であってもよく、さらに230~280℃であってもよく、例えば210℃、240℃、250℃、260℃、270℃などであってもよい。
【0055】
一実施形態において、ステップ(3)における冷却処理は、サイドエアブロー又はリングエアブローにより風冷を行い、風冷における風速は、0.5~0.9m/sであってもよく、さらに0.6~0.8m/sであってもよく、風冷における風温は、16~23℃であってもよく、さらに18~20℃であってもよく、風冷における湿度は、60~90%であってもよく、さらに75~85%であってもよい。
【0056】
一実施形態において、ステップ(3)のオイリング時に使用される油剤の濃度は、8~100wt%である。
一実施形態において、油剤は、濃度が100wt%であり、希釈されていないものである。
【0057】
一実施形態において、油剤は、N-350(松本油脂製薬株式会社から提供)、N-353(松本油脂製薬株式会社から提供)、NEOTEX-903(A)(Shanghai Become chemical co.,ltd)、D-3088(南通恒潤化学工業から提供)、TCP-60ナイロン工業用糸/タイヤコード油剤(天津工大紡績助剤有限会社から提供)、TCP-80ナイロン工業用糸/タイヤコード油剤(天津工大紡績助剤有限会社から提供)、TC1152(Zschimmer&Schwarzから提供)、TC1355(Zschimmer&Schwarzから提供)、TC-14686(GOULSTON TECHNOLOGIES,Inc.,700North Johnson St.,Monroe,NC28110から提供)から選ばれる1種又は複数種であり、さらにTC1355、TC-14686、TCP-60、TCP-80から選ばれる1種又は複数種であってもよい。
【0058】
一実施形態において、油剤の濃度は、8~25wt%であり、さらに9~15wt%であってもよく、よりさらに10~12wt%であってもよい。
【0059】
一実施形態において、オイリングは、オイリングノズル、オイリングリング、オイリングリップなどのオイリング方式のうちの1種又は2種を使用してもよい。
一実施形態において、オイリングは、2本のオイリングリップと1本のオイリングリングと1本のオイリングリップとの組み合わせのオイリング方式を使用する。
【0060】
一実施形態において、オイリングリップの紡糸口金からの高さは、≧2.5mであり、さらに≧3.0mであってもよく、よりさらに≧4.0mであってもよい。
一実施形態において、オイリング率は、0.7~1.2%であってもよく、さらに0.8~1.1%であってもよく、よりさらに0.9~1.0%であってもよい。
【0061】
一実施形態において、ステップ(3)におけるプレインターレーシング圧力は、1~2.5barであってもよく、さらに1.5~2.0barであってもよい。
【0062】
一実施形態において、ステップ(3)における延伸過程は、以下の通りである。4対及びそれ以上の熱ロールで延伸し、例えば5対の熱ロールで、4段階に分けて延伸してもよい。延伸過程では、まず、オイリング後の低配向糸を第1対の熱ロールに入れ、第1対の熱ロールと第2対の熱ロールとの間で1段目の予備延伸を行い、その後、第2対の熱ロールと第3対の熱ロールとの間で2段目の主延伸を行い、第3対の熱ロールと第4対の熱ロールとの間で3段目の主延伸及びテンションヒートセットを行い、その後、第4対の熱ロールと第5対の熱ロールとの間で4段目の副延伸及びリラクゼーションヒートセットを行う。
【0063】
一実施形態において、第4対の熱ロールと第5対の熱ロールとの速度収縮の大きさは、30~100m/minであってもよく、さらに50~80m/minであってもよく、ここで、「収縮の大きさ」とは、異なる熱ロール間の回転速度の差を指す。
【0064】
一実施形態において、ステップ(3)における延伸の総延伸倍率は、4.5~6.0であってもよく、さらに4.8~5.3であってもよい。
【0065】
一実施形態において、テンションヒートセットにおける温度は、150~200℃であってもよく、さらに160~180℃であってもよく、例えば155℃、165℃、170℃、175℃、178℃、190℃などであってもよい。
一実施形態において、リラクゼーションヒートセットにおける温度は、100~160℃であってもよく、さらに120~140℃であってもよく、例えば110℃、125℃、130℃、135℃、138℃、150℃などであってもよい。
【0066】
一実施形態において、メインインターレーシング圧力は、2.5~4.0barであってもよく、さらに3.0~3.5barであってもよい。
【0067】
一実施形態において、巻き取り速度は、2000~3500m/minであってもよく、さらに2300~3200m/minであってもよく、よりさらに2600~2800m/minであってもよく、例えば2500m/min、2700m/min、3000m/minなどであってもよい。
【0068】
本開示の一実施形態は、縫糸、タイヤコード、エアバッグ糸、離型布、水布、帆布、シートベルト、ロープ、漁網、工業用濾過布、コンベアベルト、パラシュート、テント又は箱・バッグ分野における、上記のポリアミド5X工業用糸の使用を提供する。
【0069】
本開示の一実施形態で使用される高粘度ポリアミド5X樹脂を製造するための原料は、生物学的方法により製造されたものであり、バイオベース成分の含有量が100%であり、グリーン材料であるので、石油資源に依存せず、深刻な汚染を引き起こさないばかりでなく、二酸化炭素の排出量を低減して温室効果を低減することができるものである。
【0070】
本開示の一実施形態に係るポリアミド5X工業用糸は、製造過程において単糸破断回数及びフィラメント切れの本数が少なく、製造効率が高く、製造コストが低い。
【0071】
本開示の一実施形態に係るポリアミド5X工業用糸は、通常のポリアミド6及びポリアミド66工業用糸装置により製造され得るものであり、紡糸装置を改良する必要がなく、高粘度ポリアミド5X樹脂の質量及び紡糸プロセスを最適化することで、歩留まりを向上させ、製造コストを低減し、紡糸企業に巨大な利益をもたらすことができる。
【0072】
以下、具体的な実施例を併せて本開示の一実施形態に係るポリアミド5X工業用糸及びその製造方法をさらに説明する。ここで、特に説明しない限り、使用された原料は、いずれも市販で入手してもよい。関連する性能パラメータ及び測定方法は、以下の通りである。
【0073】
(1)破断強度:
GB/T14344-2008に従って測定した。
(2)モジュラス:
GB/T14344-2008に従って測定した。
(3)耐熱強力の保持率:
耐熱強力の保持率=(熱処理後の破断強力/熱処理前の破断強力)×100%、破断強力が、GB/T14344-2008に従って測定されたものである。熱処理装置は、オーブンであり、オーブン温度が、160℃であり、処理時間が、4hである。
【0074】
(4)調湿処理後の破断強度の保持率=(調湿処理後の破断強度/調湿処理前の破断強度)×100%。
調湿処理:ポリアミド工業用糸を恒温恒湿室に入れ、温度を20℃とし、相対湿度を65%とし、GB/T6529-2008に従って実施し、平衡になるまで調湿した。
(5)破断伸度:
GB/T14344-2008に従って測定した。
【0075】
(6)乾熱収縮率:
FZ/T50004の規定に従って実施し、熱処理温度を160℃とし、時間を2minとした。
(7)水分率:
水分率の測定方法は、洗浄後のポリアミド繊維をほぐした状態でオーブンに入れて乾燥させ、さらに、乾燥後のポリアミド繊維サンプルをGB/T6529に規定された標準大気中に置いて平衡になるまで調湿し、調湿後の試料に対して水分率の測定を行う。水分率の測定方法は、GB/T6503に従って実施し、ここで、オーブンの乾燥温度が105℃で、恒量になるまで乾燥した。
【0076】
(8)沸水収縮率:
ここで、沸水収縮率は、GB/6505-2008に従って測定した。具体的に、1切れの工業用糸試料を取り、予め張力0.05±0.005cN/dtexをかけた後、工業用糸の真ん中から50.00cm離れた両端をマーキングした後、ガーゼで包んで、沸水に入れて30min煮沸し、その後、試料を乾燥した後、2つのマーク点間の長さを測量し、以下の式によって沸水収縮率を計算した。
沸水収縮率=((初期長さ-収縮後の長さ)/初期長さ)×100%。
【0077】
(9)沸水処理後の破断伸度:
工業用糸を沸水で30min処理した後、試料を乾燥し、その後、(5)破断伸度に従ってその破断伸度を測定し、GB/T14344-2008に従って測定した。
(10)含水率:
カールフィッシャー滴定装置により測定した。
【0078】
(11)相対粘度:
ウベローデ粘度計を用いた濃硫酸法を用いて測定し、そのステップは、以下の通りである。乾燥後のポリアミド樹脂サンプル0.25±0.0002gを正確に秤量し、50mLの濃硫酸(96%)を加えて溶解させ、25℃の恒温水槽において濃硫酸が流れる時間t0及びポリアミド樹脂溶液が流れる時間tを測定及び記録した。
相対粘度の計算式は、相対粘度VN=t/t0である。
t-溶液が流れる時間;
t0-溶媒が流れる時間。
【0079】
(12)糸切れ(回数/24h):低配向糸に対して、保温、冷却、オイリング、プレインターレーシング、多段延伸、メインインターレーシング、巻き取りを行ってポリアミド5X工業用糸を得る過程において、糸切れ回数を人工的にカウントした。
(13)フィラメント切れの本数:10kgの工業用糸を巻き取る過程において毛羽検出器によりフィラメント切れの本数を測定した。
【0080】
(14)歩留まり:歩留まり=(製造された繊維製品の重量/投入された樹脂の合計重量)×100%。
(15)染色の均一度の測定:FZ/T50008に従って測定し、染色温度を110~120℃とする。
【0081】
実施例1
ポリアミド510工業用糸の製造
相対粘度が2.5の低粘度ポリアミド510樹脂を高温乾燥処理に供して、増粘されたポリアミド510樹脂を得た。ここで、高温乾燥は、真空引きをし、真空引き時の真空度を-0.1MPaとし、処理温度を140℃とし、処理時間を15hとし、処理装置を真空式ドラムドライヤーとした。
【0082】
得られた増粘されたポリアミド510樹脂を樹脂調湿処理に供して、高粘度ポリアミド510樹脂を得た。高粘度ポリアミド510樹脂の96%硫酸に対する相対粘度が3.3であり、含水率が500ppmである。ここで、樹脂調湿処理は、窒素ガスと水蒸気とを混合して前記調湿処理を行い、窒素ガスの露点を10℃に制御し、樹脂調湿処理における温度を100℃とした。
【0083】
上記の高粘度ポリアミド510樹脂に対して紡糸を行い、紡糸過程は、以下の通りである。
(1)高粘度ポリアミド510樹脂を溶融状態になるまで加熱して、ポリアミド510融体を形成した。加熱は、スクリュー押出機にて行われた。スクリュー押出機は、5つの領域に分けて加熱した。ここで、第1の領域の温度は、235℃であり、第2の領域の温度は、245℃であり、第3の領域の温度は、255℃であり、第4の領域の温度は、265℃であり、第5の領域の温度は、275℃である。
【0084】
(2)融体管路を介してステップ(1)で得られたポリアミド510融体を紡糸ボックスに搬送して糸を引き、低配向糸を形成した。ここで、紡糸ボックスの温度は、280℃であり、ボックスの紡糸パックの圧力は、16MPaである。
【0085】
(3)ステップ(2)で得られた低配向糸に対して、保温、冷却、オイリング、プレインターレーシング、多段延伸、メインインターレーシング、巻き取りを行って、ポリアミド510工業用糸を得た。
【0086】
保温は、徐冷装置を使用し、徐冷高さが、250mmであり、徐冷温度が、260℃である。冷却は、サイドエアブローにより風冷を行い、風冷における風速は、0.8m/sであり、風冷における風温は、20℃であり、風冷における湿度は、80%である。オイリングは、型番がTCP-80の油剤を使用し、油剤の濃度が100wt%であり、希釈されていないものである。2本のオイリングノズルによるオイリング方式を使用した。オイリングリップの紡糸口金からの高さは、4.0mであり、オイリング率は、1.1%であり、プレインターレーシング圧力は、2.0barである。
【0087】
延伸過程は、5対の熱ロールで、4段階に分けて延伸した。具体的には、まず、オイリング後の低配向糸を第1対の熱ロールに入れ、第1対の熱ロールと第2の対熱ロールとの間で1段目の予備延伸を行い、その後、第2対の熱ロールと第3対の熱ロールとの間で2段目の主延伸を行い、第3対の熱ロールと第4対の熱ロールとの間で3段目の主延伸及びテンションヒートセットを行い、その後、第4対の熱ロールと第5対の熱ロールとの間で4段目の副延伸及びリラクゼーションヒートセットを行った。延伸の総延伸倍率は、5.0であり、第4対の熱ロールと第5対の熱ロールとの速度収縮の大きさは、80m/minである。
【0088】
テンションヒートセットにおける温度は、180℃であり、リラクゼーションヒートセットにおける温度は、120℃であり、メインインターレーシング圧力は、3.0barであり、巻き取り速度は、2500m/minである。
得られたポリアミド510工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0089】
実施例2
ポリアミド510工業用糸の製造
相対粘度が2.5の低粘度ポリアミド510樹脂を高温乾燥処理に供して、増粘されたポリアミド510樹脂を得た。ここで、高温乾燥は、真空引きをし、真空引き時の真空度を-0.1MPaとし、処理温度を140℃とし、処理時間を15hとし、処理装置を真空式ドラムドライヤーとした。
【0090】
得られた増粘されたポリアミド510樹脂を樹脂調湿処理に供して、高粘度ポリアミド510樹脂を得た。高粘度ポリアミド510樹脂の96%硫酸に対する相対粘度が3.3であり、含水率が1000ppmである。ここで、樹脂調湿処理は、窒素ガスと水蒸気とを混合して前記調湿処理を行い、窒素ガスの露点を13℃に制御し、樹脂調湿処理における温度を100℃とした。
【0091】
高粘度ポリアミド510樹脂に対して紡糸を行い、紡糸過程のステップ、プロセス条件などは、実施例1と同じである。
得られたポリアミド510工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0092】
実施例3
ポリアミド510工業用糸の製造
相対粘度が2.5の低粘度ポリアミド510樹脂を高温乾燥処理に供して、増粘されたポリアミド510樹脂を得た。ここで、高温乾燥は、真空引きをし、真空引き時の真空度を-0.1MPaとし、処理温度を130℃とし、処理時間を15hとし、処理装置を真空式ドラムドライヤーとした。
【0093】
得られた増粘されたポリアミド510樹脂を樹脂調湿処理に供して、高粘度ポリアミド510樹脂を得た。高粘度ポリアミド510樹脂の96%硫酸に対する相対粘度が2.9であり、含水率が500ppmである。ここで、樹脂調湿処理は、窒素ガスと水蒸気とを混合して前記調湿処理を行い、窒素ガスの露点を10℃に制御し、樹脂調湿処理における温度を100℃とした。
【0094】
高粘度ポリアミド510樹脂に対して紡糸を行い、紡糸過程のステップ、プロセス条件などは、実施例1と同じである。
得られたポリアミド510工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0095】
実施例4
ポリアミド510工業用糸の製造
本実施例で使用された原料、ステップ、プロセス条件などは、実施例1とほぼ同じであり、その相違点は、ステップ(3)において、TCP-80油剤の濃度が10wt%になるように水で希釈し、オイリングを行うことのみにある。
得られたポリアミド510工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0096】
実施例5
ポリアミド510工業用糸の製造
本実施例で使用された原料、ステップ、プロセス条件などは、実施例1とほぼ同じであり、その相違点は、ステップ(3)における油剤の型番がTC1355であることのみにある。
得られたポリアミド510工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0097】
実施例6
ポリアミド510工業用糸の製造
本実施例で使用された原料、ステップ、プロセス条件などは、実施例5とほぼ同じであり、その相違点は、ステップ(3)において、TC1355油剤の濃度が10wt%になるように水で希釈し、オイリングを行うことのみにある。
得られたポリアミド510工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0098】
実施例7-1
ポリアミド510工業用糸の製造
相対粘度が2.5の低粘度ポリアミド510樹脂を高温乾燥処理に供して、増粘されたポリアミド510樹脂を得た。ここで、高温乾燥は、真空引きをし、真空引き時の真空度を-0.1MPaとし、処理温度を140℃とし、処理時間を15hとし、処理装置を真空式ドラムドライヤーとした。
【0099】
得られた増粘されたポリアミド510樹脂を樹脂調湿処理に供して、高粘度ポリアミド510樹脂を得た。高粘度ポリアミド510樹脂の96%硫酸に対する相対粘度が3.3であり、含水率が500ppmである。ここで、樹脂調湿処理は、窒素ガスと水蒸気とを混合して前記調湿処理を行い、窒素ガスの露点を10℃に制御し、樹脂調湿処理における温度を100℃とした。
【0100】
ここで、得られた高粘度ポリアミド510樹脂は、酢酸銅とヨウ化カリウムとを配合したものである熱安定剤を含み、酢酸銅の重量は、ポリアミド510塩(ポリアミド510樹脂を製造する過程において原料である1,5-ペンタンジアミン及びセバシン酸により形成された塩)の総重量の250ppmであり、ヨウ化カリウムの重量は、ポリアミド510塩の総重量の1800ppmである。
【0101】
上記の高粘度ポリアミド510樹脂に対して紡糸を行い、紡糸過程のステップ、プロセス条件などは、実施例1と同じである。
得られたポリアミド510工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0102】
実施例7-2
ポリアミド510工業用糸の製造
本実施例で使用された原料、ステップ、プロセス条件などは、実施例7-1とほぼ同じであり、その相違点は、使用された高粘度ポリアミド510樹脂に含まれる熱安定剤が酢酸銅とヨウ化カリウムとを配合したものであり、酢酸銅の添加量がポリアミド510塩の総重量の200ppmであり、ヨウ化カリウムの添加量がポリアミド510塩の総重量の1400ppmであることのみにある。
【0103】
実施例7-3
ポリアミド510工業用糸の製造
本実施例で使用された原料、ステップ、プロセス条件などは、実施例7-1とほぼ同じであり、その相違点は、使用された高粘度ポリアミド510樹脂に含まれる熱安定剤が酢酸銅とヨウ化カリウムとを配合したものであり、酢酸銅の添加量がポリアミド510塩の総重量の150ppmであり、ヨウ化カリウムの添加量がポリアミド510塩の総重量の1000ppmであることのみにある。
【0104】
実施例7-4
ポリアミド510工業用糸の製造
本実施例で使用された原料、ステップ、プロセス条件などは、実施例7-1とほぼ同じであり、その相違点は、使用された高粘度ポリアミド510樹脂に含まれる熱安定剤が酢酸銅とヨウ化カリウムとを配合したものであり、酢酸銅の添加量がポリアミド510塩の総重量の200ppmであり、ヨウ化カリウムの添加量がポリアミド510塩の総重量の800ppmであることのみにある。
【0105】
実施例8
ポリアミド510工業用糸の製造
相対粘度が2.5の低粘度ポリアミド510樹脂を高温乾燥処理に供して、増粘されたポリアミド510樹脂を得た。ここで、高温乾燥は、真空引きをし、真空引き時の真空度を-0.1MPaとし、処理温度を140℃とし、処理時間を15hとし、処理装置を真空式ドラムドライヤーとした。
【0106】
得られた増粘されたポリアミド510樹脂を樹脂調湿処理に供して、高粘度ポリアミド510樹脂を得た。高粘度ポリアミド510樹脂の96%硫酸に対する相対粘度が3.3であり、含水率が500ppmである。ここで、樹脂調湿処理は、窒素ガスと水蒸気とを混合して前記調湿処理を行い、窒素ガスの露点を10℃に制御し、樹脂調湿処理における温度を100℃とした。
【0107】
ここで、得られた高粘度ポリアミド510樹脂は、成核剤としてナノモンモリロナイトを含み、その重量がポリアミド510塩(ポリアミド510樹脂を製造する過程において原料である1,5-ペンタンジアミン及びセバシン酸により形成された塩)の総重量の50ppmである。
【0108】
上記の高粘度ポリアミド510樹脂に対して紡糸を行い、紡糸過程のステップ、プロセス条件などは、実施例1と同じである。
得られたポリアミド510工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0109】
実施例9
ポリアミド511工業用糸の製造
本実施例で使用された原料、ステップ、プロセス条件などは、実施例1とほぼ同じであり、その相違点は、使用された高粘度樹脂がポリアミド511であり、ポリアミド511の96%硫酸に対する相対粘度が3.3であり、含水率が500ppmであることのみにある。
得られたポリアミド511工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0110】
実施例10
ポリアミド512工業用糸の製造
本実施例で使用された原料、ステップ、プロセス条件などは、実施例1とほぼ同じであり、その相違点は、使用された高粘度樹脂がポリアミド512であり、ポリアミド512の96%硫酸に対する相対粘度が3.3であり、含水率が500ppmであることのみにある。
得られたポリアミド512工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0111】
実施例11
ポリアミド513工業用糸の製造
本実施例で使用された原料、ステップ、プロセス条件などは、実施例1とほぼ同じであり、その相違点は、使用された高粘度樹脂がポリアミド513であり、ポリアミド513の96%硫酸に対する相対粘度が3.3であり、含水率が500ppmであることのみにある。
得られたポリアミド513工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0112】
実施例12
ポリアミド516工業用糸の製造
本実施例で使用された原料、ステップ、プロセス条件などは、実施例1とほぼ同じであり、その相違点は、使用された高粘度樹脂がポリアミド516であり、ポリアミド516の96%硫酸に対する相対粘度が3.3であり、含水率が500ppmであることのみにある。
得られたポリアミド516工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0113】
実施例13
ポリアミド510工業用糸の製造
相対粘度が2.5の低粘度ポリアミド510樹脂を高温乾燥処理に供して、増粘されたポリアミド510樹脂を得た。ここで、高温乾燥は、真空引きをし、真空引き時の真空度を-0.1MPaとし、処理温度を100℃とし、処理時間を8hとし、処理装置を真空式ドラムドライヤーとした。
【0114】
得られた増粘されたポリアミド510樹脂を樹脂調湿処理に供して、高粘度ポリアミド510樹脂を得た。高粘度ポリアミド510樹脂の96%硫酸に対する相対粘度が3.3であり、含水率が500ppmである。ここで、樹脂調湿処理は、窒素ガスと水蒸気とを混合して前記調湿処理を行い、窒素ガスの露点を10℃に制御し、樹脂調湿処理における温度を100℃とした。
紡糸過程のステップ、プロセス条件などは、実施例1と同じである。
得られたポリアミド510工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0115】
実施例14
ポリアミド510工業用糸の製造
相対粘度が2.6であり且つ含水率が500ppmであるポリアミド510樹脂を溶融状態になるまで加熱し、融体を形成した後、紡糸を行った。紡糸過程のステップ、プロセス条件などは、実施例1と同じである。
得られたポリアミド510工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0116】
実施例15
ポリアミド510工業用糸の製造
本実施例で使用された原料、ステップ、プロセス条件などは、実施例1とほぼ同じであり、その相違点は、ステップ(3)における保温で使用された徐冷装置の徐冷高さが30mmであり、徐冷温度が30℃であることのみにある。
得られたポリアミド510工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0117】
実施例16
ポリアミド510工業用糸の製造
本実施例で使用された原料、ステップ、プロセス条件などは、実施例1とほぼ同じであり、その相違点は、ステップ(3)におけるオイリングリップの紡糸口金からの高さが1.2mであることのみにある。
得られたポリアミド510工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0118】
実施例17
ポリアミド510工業用糸の製造
本実施例で使用された原料、ステップ、プロセス条件などは、実施例1とほぼ同じであり、その相違点は、ステップ(3)における第4対の熱ロールと第5対の熱ロールとの速度収縮の大きさが0m/minであることのみにある。
得られたポリアミド510工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0119】
実施例18
ポリアミド510工業用糸の製造
本実施例で使用された原料、ステップ、プロセス条件などは、実施例1とほぼ同じであり、その相違点は、ステップ(3)におけるプレインターレーシング圧力が0.5barであることのみにある。
得られたポリアミド510工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0120】
実施例19
ポリアミド56工業用糸の製造
本実施例で使用された原料、ステップ、プロセス条件などは、実施例1とほぼ同じであり、その相違点は、使用された高粘度樹脂がポリアミド56であり、ポリアミド56樹脂の相対粘度が3.3であり、含水率が500ppmであることのみにある。
得られたポリアミド56工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0121】
実施例20
ポリアミド56工業用糸の製造
本実施例で使用された原料、ステップ、プロセス条件などは、実施例1とほぼ同じであり、その相違点は、使用された高粘度樹脂がポリアミド56であり、ポリアミド56樹脂の相対粘度が3.3であり、含水率が500ppmであり、ステップ(3)のテンションヒートセットにおける温度が215℃であることのみにある。
得られたポリアミド56工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0122】
実施例21
ポリアミド56工業用糸の製造
本実施例で使用された原料、ステップ、プロセス条件などは、実施例20とほぼ同じであり、その相違点は、使用されたポリアミド56樹脂の含水率が1000ppmであることのみにある。
得られたポリアミド56工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0123】
比較例1
ポリアミド6工業用糸の製造
比較例1で使用された原料、ステップ、プロセス条件などは、実施例1とほぼ同じであり、その相違点は、使用された高粘度樹脂がポリアミド6であり、ポリアミド6樹脂の相対粘度が3.3であり、含水率が500ppmであることのみにある。
得られたポリアミド6工業用糸の性能の結果を表1に示す。
【0124】
【0125】
以上の実施例及び表1の結果から分かるように、広い範囲の含水率を有するポリアミド5X樹脂を紡糸原料として使用することにより、より優れた総合性能を有する工業用糸を製造することができる。特に、ポリアミド510樹脂の含水率の範囲は、ポリアミド56よりも広くなってもよい。具体的に、実施例1及び実施例2のポリアミド510の含水率は、それぞれ500ppm及び1000ppmであり、製造されたポリアミド510工業用糸は、破断強度≧7.8cN/dtexであり、モジュラス≧44.3cN/dtexであり、沸水収縮率≦7.2%であり、乾熱収縮率≦7.8%であり、強度及び寸法安定性において優れた。また、実施例及び表1の結果から十分に明らかなように、使用されたポリアミド樹脂の含水率が高すぎると、高温溶融過程において分解反応が生じて、製造された工業用糸の破断強度が低減され、モジュラスが低減され、使用されたポリアミド樹脂の粘度が小さすぎる(分子量が比較的低い)と、後続の多段高倍率延伸後に得られた糸の性能が悪い。
【0126】
実施例及び表1の結果からさらに明らかなように、ポリアミド510工業用糸は、ヒートセット処理時に、工業用糸の性能に影響を与えることなく、ポリアミド56よりも低い温度を使用することができる。例えば、ポリアミド510を原料とするテンションヒートセットにおける温度が180℃である場合、得られたポリアミド工業用糸の総合性能に優れた。これに対して、ポリアミド56を原料としてテンションヒートセットにおける温度を180℃とした実施例19で得られた工業用糸の総合性能は、実施例20(ヒートセットにおける温度が215℃である)で得られた工業用糸よりも低下した。
【0127】
一方、ステップ(3)のプロセス条件は、工業用糸の性能に大きな影響を与える。例えば、低い徐冷高さ及び温度を使用する場合、後続の多段高倍率延伸に不利となる。オイリングリップの紡糸口金からの高さが低いと、フィラメント切れ及び破断した単糸が増えやすくなる。延伸過程において収縮工程がなく、即ち、収縮の大きさが0m/minである場合、得られたポリアミド工業用糸の寸法安定性が悪化する。使用されたプレインターレーシング圧力が小さいと、後続の多段高倍率延伸に不利であり、フィラメント切れが多く発生しやすくなる。
【0128】
応用例
上記の実施例及び比較例で得られた工業用糸をそれぞれ撚り合わせて製織した後、染色の均一度の測定を行った。染色の均一度のレベルは、それぞれ以下の通りである。実施例1~12の工業用糸は、3.5レベル以上であり、実施例13~19、実施例21、比較例1の工業用糸は、3レベルであり、実施例20の工業用糸は、3.5レベルである。
【0129】
また、本開示に係るポリアミド5X工業用糸は、吸水後に糸の性能変化が小さいので、後続の加工及び応用において寸法安定性の面でより大きな優位性を持つ。ポリアミド繊維の沸水収縮率が大きい場合、染色過程において収縮が深刻であり、色ムラ現象が起こりやすい。特に、紡糸分野で一般的に使用されているチーズ染色の過程において、工業用糸の吸水後の収縮率が大きい場合、糸の内外張力が異なるので、ボビンに近い糸のほうが張力が大きくて染料が浸透しにくく、染色しにくくなり、内外層の染色に色差が生じる。次に、ボビン糸の解舒過程において収縮後の張力が異なり、解舒が困難で糸切れが起こりやすく、加工の難易度が向上するので、製造コストが高くなる。また、沸水収縮率が大きい場合、染色過程において生地の幅収縮が大きくなりやすいので、幅が制御されにくく、特に、後続に生地を服装にした後、熱水で水洗した後に収縮が大きいので、保形性が悪くなる。
【0130】
特に限定しない限り、本開示に使用される用語は、いずれも当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
本開示に記載される実施形態は、例示的な目的で使用されるものに過ぎず、本発明の保護範囲を制限するためのものではなく、当業者は、本開示の範囲において他の様々な置換、変更及び改良を行うことができるので、本開示は、上記の実施形態に限定されるものではないが、特許請求の範囲によってのみ限定される。