(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】高い熱、反射率およびレーザー直接構造化機能を有する物品および構造体
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20241008BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241008BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20241008BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20241008BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20241008BHJP
C08K 7/04 20060101ALI20241008BHJP
H05K 1/03 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K3/013
C08K3/01
C08K3/22
C08K3/38
C08K7/04
H05K1/03 610H
(21)【出願番号】P 2022549197
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(86)【国際出願番号】 IB2021051127
(87)【国際公開番号】W WO2021165796
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-09-02
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521198963
【氏名又は名称】エスエイチピーピー グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ユナン
(72)【発明者】
【氏名】ツェン,ユン
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-142362(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105623206(CN,A)
【文献】国際公開第2015/033955(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/141157(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/02
C08K 3/013
C08K 3/01
C08K 3/22
C08K 3/38
C08K 7/04
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)またはそのコポリマー約34.3重量%~約54.3重量%と、
(b)ガラス繊維を含む強化充填剤約20重量%~約
53.7重量%と、
(c)酸化スズ、酸化アンチモン、またはそれらの組み合わせを含むレーザー直接構造化(LDS)添加剤約2重量%~約20重量%と、
(d)チタン化合物を含む反射添加剤約10重量%~約20重量%と、を含む、熱可塑性組成物であって、
(1)前記組成物中の前記LDS添加剤に対する前記組成物中の総チタンの重量比が、少なくとも0.7/1であるか、または
(2)前記PCTに対する前記組成物中の総チタンの重量比が、1.1/1以下であり、
前記酸化スズ若しくは酸化アンチモンは、前記LDS添加剤として存在し、又はさらなるLDS添加剤のコーティングとして存在し、
全ての重量%の値は、組成物の総重量を基準とするものであり、全ての成分の重量%の値の合計は100である、熱可塑性組成物。
【請求項2】
前記酸化スズまたは前記酸化アンチモンが、さらなるLDS添加剤上のコーティングの形態にある、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項3】
前記さらなるLDS添加剤が酸化チタンを含む、請求項2に記載の熱可塑性組成物。
【請求項4】
前記組成物が、要素(b)中の前記強化充填剤とは異なる熱伝導性充填剤をさらに含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項5】
前記熱伝導性充填剤が窒化ホウ素を含む、請求項4に記載の熱可塑性組成物。
【請求項6】
前記強化充填剤が、セラミック繊維、炭素繊維、無機充填剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項7】
前記組成物が、1.82メガパスカル(MPa)および3.2ミリメートル(mm)のサンプル厚さで少なくとも220℃の熱変形温度(HDT)、または0.45MPaおよび3.2mmのサンプル厚さで少なくとも200℃のHDTを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項8】
前記組成物が、CIE L
*a
*b
*色空間標準に従って決定した場合に、少なくとも70のL
*を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項9】
前記組成物が、400ナノメートル(nm)~750nmの波長で、約50%~約95%の反射率を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項10】
前記組成物が、少なくとも0.5ワット毎メートルケルビン(W/(m・K))の面内熱伝導率または少なくとも0.5W/(m・K)の面貫通熱伝導率を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項11】
前記組成物が、1つ以上のさらなる添加剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項12】
前記1つ以上のさらなる添加剤が、衝撃改質剤、酸捕捉剤、ドリップ防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、連鎖延長剤、着色剤、脱型剤、流動促進剤、潤滑剤、離型剤、可塑剤、クエンチング剤、難燃剤、UV反射添加剤、またはそれらの組み合わせを含む、請求項11に記載の熱可塑性組成物。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物を含む物品であって、前記物品が、発光ダイオード(LED)の構成要素または5Gネットワーク通信デバイスの構成要素である、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザーめっき可能な熱可塑性組成物に関し、特に、高い反射率特性を提供するためにチタン化合物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
回路の小型化および集積化の流れの中で、回路を小型化し、異なる産業の他の機能部品と組み合わせ可能にするという要望がある。主にその設計の柔軟性から、レーザー直接構造化(LDS)技術が、プリント回路基板(PCB)技術などの従来の回路製造技術と比較して好まれている。LDSポリマー組成物を添加剤と組み合わせてさらなる特性(例えば、剛性、色など)を提供し、従来のコンパウンディング技術によって加工可能なペレットへと成形することができる。LDSポリマーは、モバイル通信デバイスなどの家電産業で広く受け入れられ、使用されている。特に、LDSポリマーは、そのようなデバイスのためのアンテナに使用されてきた。
【0003】
しかしながら、一部のエレクトロニクス産業では、技術的な障壁のためにLDS技術の採用が遅れている。例えば、LED産業では、回路集積化ではんだ付け可能である、組み立てが簡単かつ経済的に実現可能な白色の高反射率の表面をまだ特定できていない。そのようなLED用途のLDSソリューションが望ましいであろう。
【0004】
そのような用途について考えられ得る従来のポリマーのなかでも、液晶ポリマー(LCP)およびポリフェニレンスルフィド(PPS)は、それらの価格が高いことから、価格が引き下げられてきた。ポリフタルアミド(PPA)は、半結晶性の芳香族ポリアミドであり、これは、非常に有望であるが、吸水性、寸法安定性、および色(黄変)の問題を含む、LDS用途について望ましくないものにするいくつかの特性もある。特に、PPAの吸水特性によって、PPAを含む組成物の誘電性能が不安定になるため、5Gネットワーク用途での使用に適切ではない。
【0005】
ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)は、高熱の白色のプラットフォームを提供することができる。しかしながら、PCTおよび他の高熱ベース樹脂の結晶化は、充填剤および他の添加剤によって悪影響を受ける可能性があり、結果として、これらは、LDS用途では広く採用されていない。
【0006】
これらおよび他の欠点は、本開示の態様によって対処される。
【発明の概要】
【0007】
本開示の態様は、(a)ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)またはそのコポリマーと、(b)ガラス繊維を含む強化充填剤少なくとも10重量%と、(c)酸化スズ、酸化アンチモン、またはそれらの組み合わせを含むレーザー直接構造化(LDS)添加剤と、(d)チタン化合物を含む反射添加剤と、を含む、熱可塑性組成物に関する。組成物中のLDS添加剤に対する組成物中の総チタンの重量比は、少なくとも0.7:1であるか、またはPCTに対する組成物中の総チタンの重量比は、1.1:1以下である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない図面では、同様の数字は、異なるビューにおいて同様の構成要素を示し得る。異なる文字の添字を有する同様の数字は、同様の構成要素の異なる例を表し得る。図面は、一般に、例として、限定ではなく、本文書において論じられる様々な態様を示す。
【0009】
【
図1】本開示の態様に従って形成された対照および実施例の組成物の波長の関数としての反射率を示すグラフである。
【
図2】例2の比較および実施例の組成物のLDSめっきプラークの写真を提供する。
【
図3】例3の比較および実施例の組成物のLDSめっきプラークの写真を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、本開示の以下の詳細な説明およびこれに含まれる実施例を参照することによって、より容易に理解することができる。様々な態様において、本開示は、(a)少なくとも250℃の溶融温度(Tm)を有する少なくとも1つの高熱ベース樹脂と、強化充填剤少なくとも20重量%と、(c)酸化スズ、酸化アンチモン、またはそれらの組み合わせを含むLDS添加剤と、(d)チタン化合物を含む反射添加剤と、を含む、レーザーめっき可能な熱可塑性組成物に関する。組成物は、いくつかの態様において、400ナノメートル(nm)~750nmの波長で、約50%~約95%の反射率を有する。
【0011】
本発明の化合物、組成物、物品、システム、デバイス、および/または方法が、開示および記載される前に、それらは、特に指定がない限り、具体的な合成方法、または特に指定がない限り、特定の試薬に限定されず、当然のことながら、様々であり得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の態様を記載することのみを目的としており、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0012】
本開示の要素の様々な組み合わせ、例えば、同じ独立請求項に従属する従属請求項からの要素の組み合わせなどは、本開示によって包含される。
【0013】
さらに、特に明記しない限り、本明細書に記載の方法は、その工程が特定の順序で実施されることを要求すると解釈されることを決して意図しないことを理解されたい。したがって、方法の特許請求の範囲が、その工程が従うべき順序を実際に詳述していない場合、または工程が特定の順序に限定されると特許請求の範囲もしくは記載において特に記載されていない場合、いかなる点においても、順序が推測されることを意図したものではない。これは、工程または操作フローの配置に関する論理の問題、文法的な構成または句読点に由来する明白な意味、および本明細書に記載されている態様の数またはタイプを含む、解釈のための任意の可能な非明示的根拠に当てはまる。
【0014】
本明細書で言及されるすべての刊行物は、刊行物が引用されることに関連して方法および/または材料を開示および記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
定義
本明細書で使用される用語は、特定の態様を記載することのみを目的としており、限定することを意図するものではないことも理解されたい。本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、態様「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」を含み得る。特に定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書および以下の特許請求の範囲では、本明細書で定義されなければならないいくつかの用語が参照される。
【0016】
明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、特に文脈が明確に指示をしない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「強化充填剤」への言及は、2つ以上の強化充填剤の混合物を含む。
【0017】
本明細書で使用される場合、「組み合わせ」という用語は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物などを含む。
【0018】
範囲は、本明細書では、1つの値(第1の値)から別の値(第2の値)までとして表され得る。そのような範囲が表される場合、範囲は、いくつかの態様において、第1の値および第2の値の一方または両方を含む。同様に、値が近似値として表される場合、先行詞「約(about)」を使用することによって、特定の値が別の態様を形成することが理解される。さらに、範囲の各々の終点は、他の終点に関して、および他の終点とは独立して、重要であることがさらに理解される。本明細書に開示される多くの値が存在し、各値はまた、値自体に加えて、その特定の値について「約」として本明細書に開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、次いで、「約10」も開示される。2つの特定の単位間の各単位も開示されることも理解される。例えば、10および15が開示されている場合、11、12、13、および14も開示されていることになる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「約(about)」および「約(at or about)」という用語は、当該の量または値が、指定値、ほぼ指定値、または指定値とほぼ同じであり得ることを意味する。本明細書で使用される場合、それは、特に指示または推測されない限り、±10%の変動を示す公称値であることが一般に理解される。用語は、類似の値が特許請求の範囲に詳述された同等の結果または効果を促進することを伝えることを意図している。すなわち、量、サイズ、配合、パラメータ、ならびに他の量および特性は、正確である必要はないが、公差、換算係数、四捨五入、測定誤差など、および当事者に既知である他の要因を反映して、必要に応じて、概ねおよび/またはより大きくまたはより小さくてもよいことが理解される。一般に、量、サイズ、配合、パラメータ、または他の量もしくは特性は、そのように明記されているか否かにかかわらず、「約(about)」または「概ね(approximate)」である。定量値の前に「約(about)」が使用される場合、特に記載しない限り、パラメータは、特定の定量値自体も含むことが理解される。
【0020】
本開示の組成物を調製するために使用される成分、ならびに本明細書に開示される方法内で使用される組成物自体が開示される。これらおよび他の材料が本明細書に開示され、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどが開示される場合、これらの化合物の各々の様々な個々および集合的な組み合わせおよび順列の具体的な参照は、明示的に開示され得ないが、各々が具体的に企図され、本明細書に記載されることが理解される。例えば、特定の化合物が開示および考察され、その化合物を含む多くの分子に対して行うことができるいくつかの変性が考察される場合、具体的に企図されるのは、特に反対の指示がない限り、化合物のありとあらゆる組み合わせおよび順列、ならびに可能な変性である。したがって、分子A、B、およびCのクラス、ならびに分子D、E、およびFのクラス、および組み合わせ分子の例が開示される場合、A~Dが開示され、次いで、各々が個別に詳述されていなくても、各々が個別におよび集合的に企図され、組み合わせA~E、A~F、B~D、B~E、B~F、C~D、C~E、およびC~Fが開示されているとみなされることを意味する。同様に、それらの任意のサブセットまたは組み合わせも開示される。したがって、例えば、A~E、B~F、およびC~Eのサブグループは、開示されているとみなされる。この概念は、本開示の組成物を作製および使用する方法における工程を含むが、これらに限定されることはない、本出願のすべての態様に適用される。したがって、実施され得る様々なさらなる工程が存在する場合、これらのさらなる工程の各々は、本開示の方法の任意の具体的な態様または態様の組み合わせで実施され得ることが理解される。
【0021】
組成物または物品中の特定の要素または成分の重量部に対する明細書および結論の特許請求の範囲における参照は、重量部が表される組成物または物品中の、要素または成分と、任意の他の要素または成分との間の重量関係を示す。したがって、2重量部の成分Xおよび5重量部の成分Yを含有する化合物において、XおよびYは、2:5の重量比で存在し、さらなる成分が化合物中に含有されるかどうかに関係なく、そのような比で存在する。
【0022】
成分の重量パーセントは、特に反対の記載がない限り、成分が含まれる配合物または組成物の総重量に基づく。
【0023】
本明細書で使用される場合、「数平均分子量」または「M
n」という用語は、互換的に使用することができ、サンプル中のすべてのポリマー鎖の統計的平均分子量を指し、式によって定義され、
【数1】
式中、M
iは、鎖の分子量であり、N
iは、その分子量の鎖の数である。分子量標準、例えば、ポリカーボネート標準またはポリスチレン標準、好ましくは認証されたまたは追跡可能な分子量標準を使用して、当業者に周知の方法によって、ポリマー、例えばポリカーボネートポリマーについてM
nを決定することができる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「重量平均分子量」または「M
w」という用語は、互換的に使用することができ、式によって定義され、
【数2】
式中、M
iは、鎖の分子量であり、N
iは、その分子量の鎖の数である。M
nと比較して、M
wは、分子量平均への寄与を決定する際に、所定の鎖の分子量を考慮する。したがって、所与の鎖の分子量が大きいほど、その鎖は、よりM
wに寄与する。分子量標準、例えば、ポリカーボネート標準またはポリスチレン標準、好ましくは認証されたまたは追跡可能な分子量標準を使用して、当業者に周知の方法によって、ポリマー、例えばポリカーボネートポリマーについてM
wを決定することができる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「多分散指数」または「PDI」という用語は、互換的に使用することができ、以下の式によって定義される。
【数3】
PDIは、1以上の値を有するが、ポリマー鎖が均一な鎖長に近づくにつれて、PDIは1に近づく。
【0026】
本明細書で使用される場合、互換的に使用され得る「BisA」、「BPA」、または「ビスフェノールA」という用語は、以下の式によって表される構造を有する化合物を指す。
【化1】
BisAは、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール、p,p’-イソプロピリデンビスフェノール、または2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンという名称によっても称され得る。BisAは、CAS番号80-05-7を有する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「ポリカーボネート」とは、1つ以上のジヒドロキシ化合物、例えば、カーボネート結合によって結合されたジヒドロキシ芳香族化合物の残基を含むオリゴマーまたはポリマーを指し、これは、ホモポリカーボネート、コポリカーボネート、および(コ)ポリエステルカーボネートも包含する。
【0028】
ポリマーの構成成分に関連して使用される「残基」および「構造単位」という用語は、本明細書全体を通して同義語である。
【0029】
本明細書で使用される場合、互換的に使用され得る「重量パーセント」、「重量%(wt%)」、および「重量%(wt.%)」という用語は、特に指定がない限り、組成物の総重量に対する所与の成分の重量パーセントを示す。すなわち、特に指定がない限り、すべての重量%の値は、組成物の総重量に基づく。開示された組成物または配合物中のすべての成分の重量%の値の合計は、100に等しいことを理解されたい。
【0030】
本明細書に反対の記載がない限り、すべての試験規格は、この出願を提出した時点で有効な最新の規格である。
【0031】
本明細書に開示される材料の各々は、市販されているか、および/またはその生成のための方法が当業者に既知であるかのいずれかである。
【0032】
本明細書に開示される組成物は、特定の機能を有することが理解される。本明細書に開示されるのは、開示される機能を実施するための特定の構造要件であり、開示される構造に関連する同じ機能を実施し得る様々な構造が存在し、これらの構造は、典型的には同じ結果を達成することが理解される。
【0033】
熱可塑性組成物
本開示は、高い熱性能(熱変形温度、HDTによって識別される)、良好な誘電特性、および良好な色(反射率または白色度)特性を有する、高熱ベース樹脂LDS組成物に関する。本開示の熱可塑性組成物は、LED回路を含む広範囲の回路用途で使用することができる。さらに、これらは、高い誘電率または比誘電率(Dk)および低い散逸率(Df)を含む良好な誘電特性を有するため、通信用途、特に5Gネットワーク用途での使用に価値がある。
【0034】
本開示の態様による熱可塑性組成物は、ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)または他の高熱ベース樹脂、ガラス繊維などの強化充填剤、およびLDS添加剤を組み合わせる。これらの組成物は、高熱はんだ付け可能であり、レーザーめっき可能であり、良好な色(反射率)特性を有する。
【0035】
特に、本開示の態様による熱可塑性組成物は、チタンを含み得て、これは、組成物の高い熱性能(1.8メガパスカル(MPa)で200℃超のHDT)を維持するのに役立ち得る。比較すると、チタンを含まない同様の組成物は、約100℃のHDTを有する。チタンは、酸化チタンまたはLDS添加剤で被覆された酸化チタンなどであるがこれらに限定されることはない様々な形態で存在し得る。さらに、酸化チタンを含めることによって、低いDf(約0.007)を維持しながら、より高いDk(例えば、3.5~5)を有する組成物を得ることができる。
【0036】
本開示の特定の態様は、(a)少なくとも250セルシウス度(℃)の溶融温度(Tm)を有する少なくとも1つの高熱ベース樹脂と、(b)強化充填剤少なくとも20重量%と、(c)酸化スズ、酸化アンチモン、またはそれらの組み合わせを含むレーザー直接構造化(LDS)添加剤と、(d)チタン化合物を含む反射添加剤と、を含む、熱可塑性組成物に関する。組成物は、いくつかの態様において、400ナノメートル(nm)~750nmの波長で、約50%~約95%の反射率を有する。反射率は、いくつかの態様において、ASTM D6290-98に従って決定され得る。反射率および色L*/a*/b*は、GretagMacbethから入手可能なColorEye 7000Aを使用して測定することができ、これは、360nm~750nmの波長間隔の反射率を測定し、正透過および全透過の読み取りの両方を行う機能を有する。
【0037】
高熱ベース樹脂は、少なくとも250℃の溶融温度(Tm)を有する。いくつかの態様において、高熱ベース樹脂は、250℃~350℃のTmを有する。このTm特性を有する任意のポリマー樹脂を組成物に使用することができる。いくつかの態様において、少なくとも1つの高熱樹脂は、ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)、ポリフタルアミド(PPA)、それらのコポリマー、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されることはない。
【0038】
PCTは、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)とテレフタル酸(TPA)との重縮合によって生成される高性能の半結晶性熱可塑性ポリエステルである。これは、一般に、ポリエチレンテレフタレート(PET)と比較して、曲げ強度、衝撃強度、および引張強度(30%GF)を含むがこれらに限定されることはない同等の機械的特性を有する。加水分解および熱に対するその耐久性が優れている。さらに、純粋なPCTは、PET(約245℃)よりも高い融点を有する(約285℃)。PCTモノマーは、以下の式によって表され、CAS Reg.No.25135-20-0を有する。
【化2】
【0039】
本開示の態様での使用に好適な例示的なPCTコポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートグリコール(PCTG)、およびポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート酸(PCTA)が挙げられるが、これらに限定されることはない。PETGおよびPCTGは、重合反応にエチレングリコール(EG)を含めることによって形成されるコポリエステルである。コポリエステル中のジオール含有量の50%未満がCHDMである場合、PETGが形成され、コポリエステル中のジオール含有量の50%超がCHDMである場合、PCTGが形成される。PCTAは、イソフタル酸(IPA)などのさらなる二酸を含めることによって形成される。
【0040】
PPAは、テレフタル酸またはイソフタル酸(またはそれらの組み合わせ)の主なビルディングブロックと、ヘキサメチレンジアミンなどの少なくとも1つの脂肪族ジアミンとを含む、半芳香族エンジニアリング熱可塑性物質である。PPAモノマーは、以下の式によって表される。
【化3】
【0041】
芳香族酸部分は、ポリマー鎖における繰り返し単位の少なくとも55モルパーセントを占め、PPA樹脂は、部分的にのみ芳香族である。PPA樹脂は、融点、剛性、熱安定性、および耐薬品性、ならびに低い吸湿性を有することを特徴とする。例示的なPPA組成物は、例えば、米国特許第5,387,645号に開示されており、その開示は、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0042】
高耐熱ベース樹脂のTmは、示差走査熱量測定(DSC)によって測定することができる。DSCの測定に好適な機器としては、Shimadzu DSC-60Aが挙げられる。測定温度範囲は、±10~20℃/分の加熱または冷却速度で、約80℃~400℃である。サンプルは、粉末、ペレット、または一部分の形態にあり得る。典型的なサンプルサイズは、20mgである。
【0043】
いくつかの態様において、酸化スズまたは酸化アンチモンは、さらなるLDS添加剤上のコーティングの形態にある。さらなるLDS添加剤は、いくつかの態様において、チタン化合物であり得る。さらなるLDS添加剤に含まれるチタン化合物は、組成物の要素(d)中のチタン化合物に加わる。
【0044】
組成物は、いくつかの態様において、LDS添加剤を約2重量%~約20重量%含む。特定の態様において、組成物は、LDS添加剤を約5重量%~約10重量%含む。
【0045】
さらなる態様において、組成物は、チタン化合物を含む反射添加剤を約5重量%~約50重量%含む。特定の態様において、組成物は、チタン化合物を含む反射添加剤を約10重量%~約20重量%含む。
【0046】
特定の態様において、組成物の要素(d)のチタン化合物は、二酸化チタンなどであるがこれに限定されることはない酸化チタンである。同様に、さらなるLDS添加剤(要素(c))に含まれる場合、チタン化合物は、二酸化チタンなどであるがこれに限定されることはない酸化チタンを含み得る。
【0047】
本開示の態様による熱可塑性組成物での使用に好適な例示的な強化充填剤としては、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、無機充填剤、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されることはない。特定の態様において、強化充填剤は、ガラス繊維を含む。組成物は、特定の態様において、少なくとも20重量%の強化充填剤または20重量%~70重量%の強化充填剤を含む。
【0048】
熱可塑性組成物は、いくつかの態様において、1つ以上のさらなる添加剤を含み得る。1つ以上のさらなる添加剤としては、衝撃改質剤、酸捕捉剤、ドリップ防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、連鎖延長剤、着色剤、脱型剤、流動促進剤、潤滑剤、離型剤、可塑剤、クエンチング剤、難燃剤、UV反射添加剤、またはそれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されることはない。1つ以上のさらなる添加剤は、組成物の所望の特性に著しく悪影響を及ぼさない任意の量で熱可塑性組成物に含まれ得る。
【0049】
本開示の態様による熱可塑性組成物は、酸化スズ、酸化アンチモン、またはそれらの組み合わせを含むレーザー直接構造化(LDS)添加剤(要素(c))と、チタン化合物を含む反射添加剤(要素(d))のどちらも含まない比較組成物と比較して、改善された特性を有する。
【0050】
特に、本開示の態様による熱可塑性組成物は、高い熱変形温度(HDT)を有する。HDTは、ASTM D648に従って、例えば3.2mmのサンプル厚さおよび0.45または1.82メガパスカル(MPa)の荷重を使用して評価され得る。特定の態様において、組成物は、1.82MPaで少なくとも200℃、またはさらなる態様においては少なくとも250℃のHDTを有する。他の態様において、組成物は、0.45MPaで少なくとも200℃、またはさらなる態様においては少なくとも250℃、またはよりさらなる態様においては270℃のHDTを有する。
【0051】
いくつかの態様において、組成物は、0.01未満の散逸率(Df)を有する。Dfは、1.1ギガヘルツ(GHz)、1.9GHz、5GHz、10GHz、および/または20GHzで、Agilent Split Post Dielectric Resonatorを使用して決定され得る。この方法は、本明細書では「SABIC法」と称される。
【0052】
組成物は、いくつかの態様において、良好な色特性を有し得る。特に、組成物は、CIE L*a*b*色空間標準に従って決定した場合に、少なくとも50のL*を有し得る。さらなる態様において、組成物は、CIE L*a*b*色空間標準に従って決定した場合に少なくとも70のL*、またはよりさらなる態様においては、CIE L*a*b*色空間標準に従って決定した場合に少なくとも80~95のL*を有する。
【0053】
特定の態様において、組成物は、400nm~550nmの波長で、約50%~約95%の反射率を有する。特定の態様において、組成物は、450nmの波長で、約50%~約95%の反射率を有する。反射率は、本明細書の実施例に記載されているプロセスに従って評価され得る。
【0054】
熱可塑性組成物を作製するための方法
本明細書に記載の1つまたは任意の前述の成分は、最初に互いに乾式ブレンドされるか、または前述の成分の任意の組み合わせと乾式ブレンドされてから、1つ以上のフィーダーから押出機に供給され得るか、または1つ以上のフィーダーから押出機に別々に供給され得る。添加剤または充填剤などのさらなる成分も、最初にマスターバッチへと加工され、次いで、押出機に供給される。成分は、スロートホッパーまたは任意のサイドフィーダーから押出機に供給され得る。
【0055】
本開示で使用される押出機は、単一スクリュー、複数スクリュー、噛み合い同方向回転または逆回転スクリュー、非噛み合い同方向回転または逆回転スクリュー、往復スクリュー、ピン付きスクリュー、スクリーン付きスクリュー、ピン付きバレル、ロール、ラム、ヘリカルロータ、共混錬機、ディスクパックプロセッサ、様々な他のタイプの押出機器、または前述のうちの少なくとも1つを含む組み合わせを有し得る。
【0056】
また、これらの成分を一緒に混合し、次いで、溶融ブレンドして熱可塑性組成物を形成してもよい。成分の溶融ブレンドは、剪断力、伸展力、圧縮力、超音波エネルギー、電磁エネルギー、熱エネルギー、または前述の力もしくは形態のエネルギーのうちの少なくとも1つを含む組み合わせの使用を伴う。
【0057】
コンパウンディング中の押出機のバレル温度は、樹脂が半結晶性有機ポリマーである場合、ポリマーの少なくとも一部がほぼ溶融温度以上の温度に達した温度に、または樹脂が非晶性樹脂である場合、流動点(例えば、ガラス転移温度)に設定することができる。
【0058】
先に述べた成分を含む混合物は、必要に応じて、複数のブレンドおよび成形工程に供され得る。例えば、熱可塑性組成物を、最初に押し出し、ペレットへと成形することができる。次いで、ペレットを、成形機に供給し、そこで、これを任意の所望の形状または製品へと成形することができる。あるいは、単一のメルトブレンダーから出てくる熱可塑性組成物を、シートまたはストランドに形成し、アニーリング、一軸または二軸延伸などの後押出プロセスに供することができる。
【0059】
本プロセスにおける溶融物の温度は、いくつかの態様において、成分の過度の熱分解を避けるために、できるだけ低く維持され得る。いくつかの態様において、溶融加工された組成物は、ダイの小さな出口穴を通って押出機などの加工装置から出る。得られた溶融樹脂のストランドは、ストランドを水浴に通すことによって冷却され得る。冷却されたストランドは、包装およびさらなる処理のために切り刻んで、ペレットにすることができる。本開示の態様による熱可塑性組成物を作製するための例示的な条件は、以下の実施例に記載されている。
【0060】
製造物
特定の態様において、本開示は、熱可塑性組成物を含む、造形、形成、または成形された物品に関する。熱可塑性組成物は、射出成形、押出、回転成形、ブロー成形、および熱形成などの様々な手段によって有用な造形品へと成形されて、例えば、携帯電話、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータ、ノートブックおよびポータブルコンピュータ、ならびに他のそのような機器、医療用途品、RFID用途品、自動車用途品などを含むがこれらに限定されることはない個人用または商用電子機器デバイスの物品および構造構成要素を形成することができる。さらなる態様において、物品は、押出成形される。よりさらなる態様において、物品は、射出成形される。
【0061】
特定の態様において、物品は、発光ダイオード(LED)の構成要素または5Gネットワーク通信デバイスの構成要素である。
【0062】
本開示の要素の様々な組み合わせ、例えば、同じ独立請求項に従属する従属請求項からの要素の組み合わせなどは、本開示によって包含される。
【0063】
本開示の態様
様々な態様において、本開示は、少なくとも以下の態様に関し、これらを含む。
【0064】
態様1:
(a)少なくとも250セルシウス度(℃)、または250℃~350℃の溶融温度(Tm)を有する少なくとも1つの高熱ベース樹脂と、
(b)強化充填剤少なくとも20重量%と、
(c)酸化スズ、酸化アンチモン、またはそれらの組み合わせを含むレーザー直接構造化(LDS)添加剤と、
(d)チタン化合物を含む反射添加剤と、を含む、からなる、またはから本質的になる、熱可塑性組成物。
態様2.酸化スズまたは酸化アンチモンが、さらなるLDS添加剤上のコーティングの形態にある、態様1に記載の熱可塑性組成物。
態様3.さらなるLDS添加剤がチタン化合物である、態様2に記載の熱可塑性組成物。
態様4.チタン化合物が酸化チタンを含む、態様3に記載の熱可塑性組成物。
態様5.少なくとも1つの高熱樹脂が、ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)、ポリフタルアミド(PPA)、それらのコポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、態様1~4のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様6.組成物が、LDS添加剤を約2重量%~約20重量%含む、態様1~5のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様7.組成物が、チタン化合物を含む反射添加剤を約5重量%~約50重量%含む、態様1~6のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様8.組成物が、チタン化合物を含む反射添加剤を約10重量%~約20重量%含む、態様7に記載の熱可塑性組成物。
態様9.強化充填剤が、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、無機充填剤、またはそれらの組み合わせを含む、態様1~8のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様10.強化充填剤がガラス繊維を含む、態様9に記載の熱可塑性組成物。
態様11.組成物が、1.82メガパスカル(MPa)で少なくとも200℃の熱変形温度(HDT)を有する、態様1~10のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様12.組成物が、1.82メガパスカル(MPa)で少なくとも250℃の熱変形温度(HDT)を有する、態様1~11のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様13.0.45MPaで少なくとも200℃のHDTを有する、態様1~12のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様14.0.45MPaで少なくとも250℃のHDTを有する、態様1~13のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様15.0.45MPaで少なくとも270℃のHDTを有する、態様1~13のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様16.組成物が、0.01未満の散逸率(Df)を有する、態様1~15のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様17.組成物が、CIE L*a*b*色空間標準に従って決定した場合に、少なくとも50のL*を有する、態様1~16のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様18.組成物が、CIE L*a*b*色空間標準に従って決定した場合に、少なくとも70のL*を有する、態様1~17のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様19.組成物が、CIE L*a*b*色空間標準に従って決定した場合に、少なくとも80~95のL*を有する、態様1~18のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様20.組成物が、400ナノメートル(nm)~750nmの波長で、約50%~約95%の反射率を有する、態様1~19のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様21.組成物が、400nm~550nmの波長で、約50%~約95%の反射率を有する、態様1~20のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様22.組成物が、450nmの波長で、約50%~約95%の反射率を有する、態様1~21のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様23.組成物が、1つ以上のさらなる添加剤をさらに含む、態様1~22のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様24.1つ以上のさらなる添加剤が、衝撃改質剤、酸捕捉剤、ドリップ防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、連鎖延長剤、着色剤、脱型剤、流動促進剤、潤滑剤、離型剤、可塑剤、クエンチング剤、難燃剤、UV反射添加剤、またはそれらの組み合わせを含む、態様23に記載の熱可塑性組成物。
態様25.態様1~24のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物を含む、物品。
態様26.物品が、発光ダイオード(LED)の構成要素または5Gネットワーク通信デバイスの構成要素である、態様25に記載の物品。
態様27.
(a)ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)またはそのコポリマーと、
(b)ガラス繊維を含む強化充填剤少なくとも10重量%と、
(c)酸化スズ、酸化アンチモン、またはそれらの組み合わせを含むレーザー直接構造化(LDS)添加剤と、
(d)チタン化合物を含む反射添加剤と、を含む、からなる、またはから本質的になる、熱可塑性組成物であって、
(1)組成物中のLDS添加剤に対する組成物中の総チタンの重量比が、少なくとも0.7:1であるか、または
(2)PCTに対する組成物中の総チタンの重量比が、1.1:1以下である、熱可塑性組成物。
いくつかの態様において、LDS添加剤に対するチタンの比は、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも4:1、少なくとも6:1、または6超:1である。
態様28.酸化スズまたは酸化アンチモンが、さらなるLDS添加剤上のコーティングの形態にある、態様27に記載の熱可塑性組成物。
態様29.さらなるLDS添加剤が酸化チタンを含む、態様28に記載の熱可塑性組成物。
態様30.組成物が、要素(b)中の強化充填剤とは異なる熱伝導性充填剤をさらに含む、態様27~29のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様31.熱伝導性充填剤が窒化ホウ素を含む、態様30に記載の熱可塑性組成物。
態様32.組成物が、LDS添加剤を約2重量%~約20重量%含む、態様27~31のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様33.組成物が、チタン化合物を含む反射添加剤を約5重量%~約50重量%含む、態様27~32のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様34.組成物が、チタン化合物を含む反射添加剤を約10重量%~約20重量%含む、態様33に記載の熱可塑性組成物。
態様35.強化充填剤が、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、無機充填剤、またはそれらの組み合わせを含む、態様27~34のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様36.組成物が、1.82メガパスカル(MPa)および3.2ミリメートル(mm)のサンプル厚さで少なくとも200℃の熱変形温度(HDT)、または0.45MPaおよび3.2mmのサンプル厚さで少なくとも200℃のHDTを有する、態様27~35のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。さらなる態様において、組成物は、1.82メガパスカル(MPa)および3.2ミリメートル(mm)のサンプル厚さで少なくとも220℃の熱変形温度(HDT)を有する。
態様37.組成物が、0.01未満の散逸率(Df)を有する、態様27~36のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様38.組成物が、CIE L*a*b*色空間標準に従って決定した場合に、少なくとも70のL*を有する、態様27~37のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。さらなる態様において、組成物は、CIE L* a*b*色空間標準に従って決定した場合に、少なくとも75、または少なくとも80、または少なくとも85のL*を有する。
態様39.組成物が、400ナノメートル(nm)~750nmの波長で、約50%~約95%の反射率を有する、態様27~38のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。さらなる態様において、組成物は、400ナノメートル(nm)~750nmの波長で、約60%~約95%、または約70%~約95%、または約80%~約95%、または50%超、または60%超、または70%超、または80%超の反射率を有する。
態様40.組成物が、少なくとも0.5ワット毎メートルケルビン(W/(m・K))の面内熱伝導率または少なくとも0.5W/(m・K)の面貫通熱伝導率を有する、態様27~39のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。さらなる態様において、組成物は、少なくとも1.0W/(m・K)の面内熱伝導率を有する。
態様41.組成物が、1つ以上のさらなる添加剤をさらに含む、態様27~40のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物。
態様42.1つ以上のさらなる添加剤が、衝撃改質剤、酸捕捉剤、ドリップ防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、連鎖延長剤、着色剤、脱型剤、流動促進剤、潤滑剤、離型剤、可塑剤、クエンチング剤、難燃剤、UV反射添加剤、またはそれらの組み合わせを含む、態様41に記載の熱可塑性組成物。
態様43.態様27~42のいずれか1つに記載の熱可塑性組成物を含む物品であって、物品が、発光ダイオード(LED)の構成要素または5Gネットワーク通信デバイスの構成要素である、物品。
【実施例】
【0065】
以下の実施例は、当業者に、本明細書で特許請求される化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法がどのように作製および評価されるかについての完全な開示および説明を提供するために提示され、純粋に例示的なものであることを意図し、本開示を限定することを意図するものではない。数値(例えば、量、温度など)に関して精度を確保するための努力がなされているが、いくつかのエラーおよび偏差を考慮する必要がある。特に指示がない限り、部は、重量部であり、温度は、℃であるか、または周囲温度であり、圧力は、大気圧であるか、またはそれに近い。特に指示がない限り、組成物に関するパーセンテージは、重量%で表される。
【0066】
記載されたプロセスから得られる生成物の純度および収率を最適化するために使用され得る反応条件、例えば、成分濃度、所望の溶媒、溶媒混合物、温度、圧力、ならびに他の反応範囲、および条件の多くの変形および組み合わせが存在する。そのようなプロセス条件を最適化するには、合理的で日常的な実験のみが必要になる。
【0067】
実施例1
対照および実施例の組成物を、表1Aおよび1Bに従って調製した:
【表1】
【表2】
【0068】
表1Aおよび1Bの組成物の特性は、以下に従って決定し、それぞれ表1Cおよび1Dに報告されている。
【表3】
【表4】
【0069】
450ナノメートル(nm)での組成物の反射率のデータを先に示す。サンプルの%反射率対波長の曲線を
図1に提供する。データから、組成物の反射率が波長によって変化したことが観察される。全体として、対照組成物(C1.1、C1.2、C2、およびC3)は、どの波長でも50%の反射率を超えることができなかった。対照組成物C1.1は、最高の反射率を達成し、650~700nmのより高い波長で50%に近づいたが、到達はしなかった。
【0070】
さらに、LDS添加剤を組成物に添加すると、すべての波長にわたって反射率が低下することが観察され(例えば、C1.2およびC2参照)、高い反射率特性と組み合わされたLDS化合物を生成するのに問題および課題が示された。特定のLDS添加剤を含む組成物(例えば、コーティングされたTiO2、対照組成物C3)は、反射率の低下を緩和することができるが、反射率は、依然として比較的低い。
【0071】
チタン含有量をよりさらに増加させることによって(実施例の組成物Ex1、Ex2.1、Ex2.2、Ex3参照)、反射率は、ほとんどの波長にわたって50%超に増加した。さらに、400nm~550nmの波長(450nmの従来のLED産業の要件を含む)では、実施例の組成物の反射率は、非常に高かった。
【0072】
反射率は、従来の方法に従って、かつ従来の機器を使用して決定することができる。本明細書に記載されており、かつ
図1に示されている反射率のデータは、GretagMacbeth Color-Eye(登録商標)7000Aを使用して、360~750nmの波長間隔で測定した。反射率は、Shimadzu UV-3150分光光度計を使用して、200~800nmの波長で測定することもできる。
【0073】
実施例2
対照および実施例の組成物を、表2Aに従って調製した。組成物の特性は表2Bに示す。
【表5】
【表6】
【0074】
実施例2のデータは、スズ-アンチモンベースのLDS添加剤が、LDSめっき特性に非常に効果的であることを示す(
図2参照)。しかしながら、PCTは、結晶性ポリマーであり、その結晶性を維持することは困難である。スズ-アンチモンLDS添加剤などの金属添加剤をガラス充填PCT系に導入することによって、結晶化度、したがってHDTが、(C2.1~C2.2と比較して)大幅に低下し、特に、1.8MPaなどのより高い圧力でのHDTが低下し、これは、約100℃に低下した。
【0075】
本開示の態様に従って酸化チタンを導入することによって、HDTを、高圧でおそらく200℃超の、また低圧で250℃超の高レベル(Ex2.1)に維持することができることが見出された。そのような組成物は、はんだ付け用途での使用に好適である。
【0076】
LDS添加剤と酸化チタンとの組み合わせは、様々な量および種類で使用され得る(Ex2.1、Ex2.2、Ex2.3)。好適な組み合わせとしては、Ex2.1のようなスズまたはスズ-アンチモン酸化物および酸化チタンが挙げられる。この組み合わせはさらに、酸化チタン被覆スズまたはスズ-アンチモン酸化物(Ex2.2)などの合成前またはブレンド前の化学物質であってもよい。この組み合わせはさらに、これらの組み合わせであってもよい(Ex2.3)。
【0077】
実施例3
対照および実施例の組成物を、表3Aに従って調製した。組成物の特性は表3Bに示す。
【表7】
【表8】
【0078】
これらのLDSめっき組成物のいくつかのプラークの画像を
図3に示す。実施例2からのいくつかのデータと組み合わせた実施例3のデータは、LDS添加剤に対するチタンの比がPCT組成物の耐熱特性に及ぼす影響を実証している。Ex2.1は、10重量%の酸化チタンおよび10重量%のLDS(すなわち、1:1のチタン:LDSの比)を含み、良好な耐熱特性を有し、この比が好適であることを実証している。
【0079】
Ex2.2は、(Sn/Sb)O2でコーティングされたTiO2を含むLDS添加剤を含む。この添加剤は、約45~65%のチタンおよび約35~55%の(Sn/Sb)O2を含み、LDS添加剤に対するチタンの比は約0.8~1.9である。チタン:LDS添加物の比のこの範囲はまた、良好な耐熱特性を組成物に提供する。これらの例に基づくと、チタン:LDS添加剤の下限は、0.7:1が好適である。
【0080】
Ex3.1、Ex3.2、およびEx3.3は、LDS添加剤に対するチタンの比に上限がないことを実証している。酸化チタン含有量は、30重量%もの高さであり得るが、必ずしも30重量%に限定されることはない。LDS添加剤含有量は、5重量%もの低さであっても、または20重量%もの高さであってもよいが、必ずしも20重量%に限定されることはない。したがって、LDS添加剤に対するチタンの比は、1:1、2:1、4:1、6:1、またはそれより高くてもよい。各組成物において、PCT組成物の耐熱特性が維持されている。
【0081】
さらに、必ずしもガラス繊維含有量に上限はない。ガラス繊維含有量が20%超である実施例が提供されている。さらに、PCTの種類は、組成物の特性に影響しない。Ex3.3、Ex3.4、およびEx3.5を参照されたい。
【0082】
実施例4
対照および実施例の組成物を、表4Aに従って調製した。組成物の特性は表4Bに示す。
【表9】
【表10】
【0083】
実施例4のデータは、PCTに対するチタンの比が組成物の特性に及ぼす影響をさらに実証している。比較例C4において、酸化チタンは40重量%であり、PCTは34.3重量%である。したがって、チタン:PCTの比は、1.2:1である。この組成物の耐熱性は非常に低く、特に高圧1.8MPaでは、HDTが100℃低下する。この組成物は、高い白色度(L値)を有するが、この組成物は、もはやはんだ付け用途には好適でない。実施例3(Ex3.3およびEx3.4)と比較して、PCTに対するチタンの比を1.2未満に維持することによってPCT組成物の耐熱特性が維持される。
【0084】
また、この比は、熱伝導性充填剤などのさらなる成分を追加する場合に許容可能である(Ex4)。PCTに対するチタンの比を1:1未満に最小化し、10重量%のチタンを10%の熱伝導性充填剤(例えば、窒化ホウ素)で置き換えることによって、白色度および反射率の低下が最小限になり、耐熱特性が維持され、組成物の熱伝導率が改善される。白色度、反射率、耐熱性、熱伝導率、およびLDSめっき特性の組み合わせによって、はんだ付け点火用途での使用にとって価値のある組成物が提供される。そのような特性は、PCT、ガラス繊維、LDS添加剤、チタン、および任意選択的に熱伝導性充填剤の使用を含む本開示の態様による組成物によって達成される。
【0085】
本明細書に記載されている熱伝導率(TC)データについて、押出機から押し出されたペレットを射出成形して80mm×10mm×3mmのバーにし、面貫通TC測定のために10mm×10mm×3mmの正方形のサンプルに切断し、面内TC測定のために、直径100mm×厚さ0.4mmのシートを切断して直径25mm×厚さ0.4mmの円形サンプルにした。
【0086】
熱伝導率、(κ、W/m-K)は、同様の厚さを有するパイロセラム参照物を使用して、Nanoflash LFA447によって測定する。この測定によって、サンプルの熱拡散率(α、cm2/s)および比熱(Cp、J/g-K)が、水浸漬法(ASTM D792)を使用して測定される密度(ρ、g/cm3)とともに決定される。3つの値の積から、κ=α(T)Cp(T)ρ(T)に従って、面貫通方向および面内方向の熱伝導率が与えられる。正確なTCが測定されることを確実にするために、各ポイントを3回繰り返した。
【0087】
本明細書で述べたように、本開示の態様による組成物は、結晶性ポリマーの結晶化から生じる良好な耐熱特性を有する。ポリアミドのような従来のポリマーは、添加剤または成分によって容易に破壊されることなく、結晶化を維持する強い能力を有する。ポリアミド樹脂系にLDS添加剤を含めることによっては、結晶性ポリアミドの耐熱特性に悪影響は及ぼされない。しかしながら、PCT樹脂系では、LDS添加剤を含めることによって、結晶性PCTの耐熱特性に悪影響が及ぼされる。しかしながら、本開示の態様によるPCTベースの組成物は、LDS添加剤を含めても、改善された耐熱特性を有する。PCTにおけるチタンとLDSとの組み合わせによって、PCTの耐熱性が十分に維持されることが見出された。これは、驚くべき新規の発見であった。
【0088】
実施例2のデータ(表2Aおよび2B)は、LDS添加剤の添加によるPCTの結晶化および耐熱特性への悪影響と、さらに、チタンを含めることによって組成物がその結晶化および耐熱特性を維持できることとを実証していた。
【0089】
実施例3のデータ(表3Aおよび3B)は、LDS添加剤に対するチタンの比の効果を実証していた。PCTの耐熱特性を維持するという発見は、必ずしもチタンおよびLDS添加剤の開放または遊離比(open or free ratios)には当てはまらない。しかしながら、LDS添加剤に対するチタンの比を本明細書に記載されている比内に維持することによって、さらなる新規性および進歩性のある性能結果が提供される。
【0090】
実施例4のデータ(表4Aおよび4B)は、開示されている組成物におけるPCTに対するチタンの比の効果を実証していた。PCTの耐熱特性を維持するという発見は、必ずしもチタンおよびPCTの遊離比には当てはまらない。しかしながら、PCTに対するチタンの比を本明細書に記載されている比内に維持することによって、さらなる新規性および進歩性のある性能結果が提供される。
【0091】
上記の記載は、例示を意図したものであり、限定的なものではない。例えば、上記の例(またはその1つ以上の態様)は、互いに組み合わせて使用され得る。他の態様は、先の説明を検討して、当業者などによって使用され得る。要約は、読者が技術的開示の性質を迅速に確認できるように、米国特許法施行規則第1.72条(b)に準拠するように提供される。特許請求の範囲または意味を解釈または限定するために使用されないことを理解した上で提出される。また、上記の「発明を実施するための形態」では、開示を合理化するために、様々な特徴が一緒にグループ化され得る。これは、特許請求されていない開示された特徴が特許請求に不可欠であることを意図していると解釈されるべきではない。むしろ、本発明の主題は、特定の開示されている態様のすべての特徴よりも少ない場合がある。したがって、以下の特許請求の範囲は、これによって、例または態様として「発明を実施するための形態」に組み込まれ、各請求項は、別個の態様としてそれ自体で存在し、そのような態様は、様々な組み合わせまたは順列で互いに組み合わされ得ると企図される。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる同等物の全範囲とともに決定されるべきである。