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特許7568747カーボンブラック、スラリー及びリチウムイオン二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】カーボンブラック、スラリー及びリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/48 20060101AFI20241008BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20241008BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241008BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20241008BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C09C1/48
C09D17/00
H01M4/13
H01M4/139
H01M4/62 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022566979
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2021044304
(87)【国際公開番号】W WO2022118921
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2020201971
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】原田 祐作
(72)【発明者】
【氏名】古賀 祐司
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-522977(JP,A)
【文献】特開2006-213767(JP,A)
【文献】特表平06-500138(JP,A)
【文献】特開2014-221889(JP,A)
【文献】国際公開第2010/035871(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/039336(WO,A1)
【文献】特開2002-121422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
比表面積が150m/g以上400m/g以下であり、
DBP吸収量が180mL/100g以上であり、
圧縮DBP吸収量(CDBP)に対するDBP吸収量(DBP)の比(DBP/CDBP)が1.4以上2.0以下であり、
平均一次粒子径が25nm未満である、カーボンブラック。
【請求項2】
DBP吸収量が200mL/100g以上350mL/100g以下である、請求項1に記載のカーボンブラック。
【請求項3】
灰分が0.02質量%以下である、請求項1又は2に記載のカーボンブラック。
【請求項4】
鉄の含有量が2000質量ppb未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載のカーボンブラック。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のカーボンブラックと、分散媒と、を含む、スラリー。
【請求項6】
25℃でせん断速度10s-1における粘度が、200mPa・s以上1200mPa・s以下である、請求項5に記載のスラリー。
【請求項7】
正極と負極とセパレータとを備え、
前記正極及び前記負極のうち少なくとも一方が請求項1~4のいずれか一項に記載のカーボンブラックを含有する、リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンブラック、スラリー及びリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、スマートフォン、タブレット型パソコン等の小型電子機器の電源として幅広く用いられている。リチウムイオン二次電池は一般に、電極、セパレータ、電解液を備えて構成される。電極は、活物質、導電剤、バインダー等を分散媒に分散させた合材スラリーを集電体用金属板上に塗工・乾燥させ、合材層とすることで製造される。
【0003】
導電剤には、例えばカーボンブラックが使用される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-193986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導電剤の役割は電極内で導電パスを形成することである。そのため、電極内で凝集してしまうと、局所的に導電性の劣る部分が現れ、活物質が有効に利用されずに放電容量が低下し、電池特性が低下する原因となる。
【0006】
近年、リチウムイオン二次電池の高容量化が求められており、合材層中の活物質の配合比率を増加させ、導電剤及びバインダーの配合比率を減少させる傾向にある。導電剤の配合比率が減少すると電極内での導電パスの形成が困難となり、電池特性が低下してしまう。そこで小粒径の導電剤を用いて単位質量あたりの粒子個数を増やし、電極内で導電剤同士の近接距離を短くしたり、活物質及び集電体との接触点を増やすことで導電性を向上させる検討が行われている。しかしながら、導電剤の小粒径化に伴い比表面積が高くなると、合材スラリーの粘度が著しく上昇してしまうため、均一分散が困難となる。
【0007】
また、導電剤としてカーボンブラックを用いる場合、カーボンブラックのストラクチャーが導電性及びスラリー粘度に影響する。ここでカーボンブラックのストラクチャーとは一次粒子が連結した構造のことである。カーボンブラックのストラクチャーは、一次粒子の小粒径化に伴い、複雑に絡み合った形状で発達する。ストラクチャーが発達すると、電極内での導電パスを効率的に形成できるが、分散状態が悪いとその効果を十分に発揮できない。
【0008】
導電剤の高分散及び合材スラリーの低粘度化を目的として、高圧ジェットミルなどの装置で強力な衝突エネルギーを与えて分散することや、分散処理時間の延長などが検討されているが、装置の摩耗により不純物が混入するなどの問題があった。また、分散剤の添加も検討されているが、導電剤の小粒径化により分散剤の添加量が増加すると、電池特性の低下を招くといった問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、高い比表面積を有し、且つ、低粘度のスラリーを形成可能な新規カーボンブラックを提供することを目的とする。また、本発明は、当該カーボンブラックを含むスラリー、及び、当該カーボンブラックを含むリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、高い比表面積を有するカーボンブラックにおいて、圧縮DBP吸収量に対するDBP吸収量の比がスラリー粘度に大きく影響することを見出した。
【0011】
すなわち、上記課題を解決する本発明は、下記に例示される。
(1) 比表面積が150m/g以上400m/g以下であり、圧縮DBP吸収量(CDBP)に対するDBP吸収量(DBP)の比(DBP/CDBP)が2.0以下である、カーボンブラック。
(2) DBP吸収量が200mL/100g以上350mL/100g以下である、(1)に記載のカーボンブラック。
(3) 灰分が0.02質量%以下である、(1)又は(2)に記載のカーボンブラック。
(4) 鉄の含有量が2000質量ppb未満である、(1)~(3)のいずれかに記載のカーボンブラック。
(5) (1)~(4)のいずれかに記載のカーボンブラックと、分散媒と、を含む、スラリー。
(6) 25℃でせん断速度10s-1における粘度が、200mPa・s以上1200mPa・s以下である、(5)に記載のスラリー。
(7) 正極と負極とセパレータとを備え、前記正極及び前記負極のうち少なくとも一方が(1)~(4)のいずれかに記載のカーボンブラックを含有する、リチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い比表面積を有し、且つ、低粘度のスラリーを形成可能な新規カーボンブラックが提供される。また、本発明によれば、当該カーボンブラックを含むスラリー、及び、当該カーボンブラックを含むリチウムイオン二次電池が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、特にことわりがない限り、「~」を用いて示される数値範囲は、左側の数値「以上」かつ右側の数値「以下」の範囲を意味する。例えば、「A~B」は、A以上B以下であるという意味である。
【0014】
<カーボンブラック>
本実施形態のカーボンブラックは、150m/g以上400m/g以下の比表面積を有する。この比表面積は、リチウムイオン二次電池の導電剤として従来から使用されているカーボンブラックの比表面積と比べて高い。このような高比表面積を有するカーボンブラックは、マトリックス中でのパーコレーション効果により導電性付与能力が高くなるため、導電剤として有効である。
【0015】
なお、比表面積は、JIS K6217-2:2017のA法流通法(熱伝導度測定法)に従って測定される。
【0016】
カーボンブラックの比表面積が150m/g未満であると、合材層中で活物質との接触点が少なくなり、十分な導電性を発揮できない場合がある。導電性付与能力がより向上する観点から、カーボンブラックの比表面積は、好ましくは160m/g以上、より好ましくは180m/g以上、更に好ましくは200m/g以上である。すなわち、カーボンブラックの比表面積は、例えば、150~400m/g、160~400m/g、180~400m/g又は200~400m/gであってよい。また、カーボンブラックの比表面積が400m/gを超えると、スラリー中での分散が著しく困難となり、電極内において局所的に導電性の劣る部分が生じ、電池特性が低下する場合がある。カーボンブラックの比表面積は、一次粒子の小粒径化、中空化、粒子表面の多孔質化などにより高めることができる。
【0017】
本実施形態のカーボンブラックにおいて、圧縮DBP吸収量(CDBP)に対するDBP吸収量(DBP)の比(DBP/CDBP)は、2.0以下である。
【0018】
DBP吸収量(DBP)は、カーボンブラックの粒子表面及びストラクチャーが作る空隙にジブチルフタレートを吸収する能力を評価する指標である。本明細書中、DBP吸収量は、JIS K6221のB法に記載の方法により測定された値を、下記式(a)により、JIS K6217-4:2008相当の値に換算した値を示す。
DBP吸収量=(A-10.974)/0.7833 …(a)
[式中、Aは、JIS K6221に記載の方法により測定されたDBP吸収量の値を示す。]
DBP吸収量(DBP)の測定では、強い外力が加わるため、カーボンブラックのアグロメレート(ストラクチャーの二次凝集)は解砕され、一次粒子の表面積とストラクチャーの発達度合いとが評価される。
【0019】
圧縮DBP吸収量(CDBP)は、カーボンブラックを予め圧縮してストラクチャーを破壊した後に測定するDBP吸収量であり、ストラクチャーの機械的強度を示す指標である。JIS K6217-4:2008に従って測定することができ、具体的には、試料を油圧シリンダにセットし、165MPaで1秒間圧縮した後に試料を取り出し、試料の塊が0.25cm以下になるまでふるう。この一連の操作を4回繰り返した後、DBP吸収量を測定することで圧縮DBP吸収量(CDBP)を求めることができる。
【0020】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、高い比表面積を有するカーボンブラックにおいて、圧縮DBP吸収量に対するDBP吸収量の比(DBP/CDBP)がスラリー粘度に大きく影響することを見出した。すなわち、本実施形態のカーボンブラックは、比(DBP/CDBP)が2.0以下であることで、高い比表面積を有しながら十分に低いスラリー粘度を実現できる。
【0021】
カーボンブラックは、合成時の熱履歴(例えば、燃料油の熱分解及び燃焼反応、原料の熱分解及び燃焼反応、冷却用媒体による急冷及び反応停止等に起因する熱履歴)、一次粒子の衝突頻度の違い等によって、ストラクチャーの形状及び強度が大きく異なる。
【0022】
本発明者らの知見によれば、同じ比表面積を有するカーボンブラックで比較した場合、比(DBP/CDBP)が2.0以下のカーボンブラックは、比(DBP/CDBP)が2.0を超えるカーボンブラックよりスラリー粘度が低くなる。ここで、比(DBP/CDBP)が低いことは、外力によるストラクチャーの破壊が少ないことを意味する。本実施形態のカーボンブラックは、スラリー作製時に、外力によるストラクチャーによる破壊が少ないため、破壊により新たに生じる高活性の表面が少なくなり、カーボンブラックの再凝集が起こり難く、スラリー粘度が低くなると考えられる。
【0023】
本実施形態では、比(DBP/CDBP)が2.0以下であることで、小粒径で高比表面積で、且つストラクチャーの発達したカーボンブラックであっても、合材スラリーの粘度上昇による集電体への塗工むらや電極内での材料の偏在を減少させることができる。また、電極内での活物質と導電剤の分散状態、接触状態が良くなることで、局所的な導電性の低下や電池の放電容量の低下を抑制しつつ、リチウムイオン二次電池の高容量化が達成できる。
【0024】
本実施形態のカーボンブラックにおいて、比(DBP/CDBP)は、上記効果がより顕著に奏される観点から、好ましくは1.9以下、より好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.7以下である。
【0025】
本実施形態のカーボンブラックにおいて、比(DBP/CDBP)が小さすぎると、ストラクチャーの機械的強度が強過ぎる、又は、ストラクチャーが破壊され難い形状であるため、スラリー作製時にアグロメレートの過度な発達によってスラリー粘度が上昇する場合がある。このアグロメレートの過度な発達を抑制する観点からは、比(DBP/CDBP)は、1.0以上が好ましく、1.1以上がより好ましく、1.2以上が更に好ましく、1.3以上が一層好ましく、1.4以上が特に好ましい。すなわち、比(DBP/CDBP)は、例えば、1.0~2.0、1.0~1.9、1.0~1.8、1.0~1.7、1.1~2.0、1.1~1.9、1.1~1.8、1.1~1.7、1.2~2.0、1.2~1.9、1.2~1.8、1.2~1.7、1.3~2.0、1.3~1.9、1.3~1.8、1.3~1.7、1.4~2.0、1.4~1.9、1.4~1.8、又は、1.4~1.7であってよい。
【0026】
本実施形態のカーボンブラックのDBP吸収量は、例えば180mL/100g以上であってよく、好ましくは190mL/100g以上、より好ましくは200mL/100g以上である。また、本実施形態のカーボンブラックのDBP吸収量は、例えば370mL/100g以下、より好ましくは350mL/100g以下である。すなわち、本実施形態のカーボンブラックのDBP吸収量は、例えば、180~370mL/100g、180~350mL/100g、190~370mL/100g、190~350mL/100g、200~370mL/100g、又は、200~350mL/100gであってよい。
【0027】
ストラクチャーの発達したカーボンブラックでは、一次粒子が融着してできるネック部や粒子間で形成される空隙が多くなるためDBP吸収量が多くなる。DBP吸収量が少なすぎると、ストラクチャーが十分に発達していないために電極内での導電性付与能力が低くなる場合があり、また、リチウムイオン二次電池の充放電に伴う活物質の体積変化を緩衝することができず、サイクル特性などの電池特性が低下する場合がある。DBP吸収量が多すぎると、カーボンブラックのストラクチャーに合材層中のバインダーがトラップされてしまい、活物質や集電体との密着性が低下し、電池特性が低下してしまう場合がある。
【0028】
本実施形態のカーボンブラックの平均一次粒子径は、例えば35nm未満であってよく、好ましくは30nm未満、より好ましくは25nm未満である。本発明者らの知見によれば、上述の比(DBP/CDBP)を満たすカーボンブラックでは、比表面積が同程度で平均一次粒子径が異なる2種を比較したところ、小粒径のカーボンブラックのほうがスラリー粘度が低くなる。これは、大粒径のカーボンブラックでは表面の多孔質化によって比表面積が高くなる一方、小粒径のカーボンブラックでは比較的表面が滑らかなカーボンブラックが複雑なストラクチャーを構成することで高比表面積を達成していると考えられ、比(DBP/CDBP)で表されるストラクチャー強度による上述の効果がより顕著に奏されるためと考えられる。
【0029】
従来、リチウムイオン二次電池の導電剤に用いられるカーボンブラックは、平均一次粒子径が小さい(例えば30nm未満である)とスラリー化が困難であったが、本実施形態のカーボンブラックは、上述の比(DBP/CDBP)を満たすため、平均一次粒子径が小さい(例えば30nm未満の)場合でもスラリー化することができる。このように小粒径のカーボンブラックの使用が可能となることにより、合材層における配合比率が低くても高い導電性を発揮することができる。カーボンブラックの平均一次粒子径は、例えば1nm以上であってよく、5nm以上であってもよく、10nm以上であってもよい。すなわち、カーボンブラックの平均一次粒子径は、例えば、1nm以上35nm未満、1nm以上30nm未満、1nm以上25nm未満、5nm以上35nm未満、5nm以上30nm未満、5nm以上25nm未満、10nm以上35nm未満、10nm以上30nm未満、又は、10nm以上25nm未満であってよい。
【0030】
カーボンブラックの平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)の5万倍拡大画像から無作為に選択した100個以上のカーボンブラックの一次粒子径を測り、平均値を算出して求めることができる。カーボンブラックの一次粒子はアスペクト比が小さく真球に近い形状をしているが、完全な真球ではない。そこで、本実施形態では、TEM画像における一次粒子の外周2点を結ぶ線分のうちで最大のものをカーボンブラックの一次粒子径とする。
【0031】
本実施形態のカーボンブラックの灰分は、例えば0.05質量%以下であってよく、好ましくは0.03質量%以下、より好ましくは0.02質量%以下である。灰分はJIS K1469:2003に従って測定することができ、例えば、カーボンブラックを乾式サイクロンなどの装置で分級することによって低減できる。
【0032】
本実施形態のカーボンブラックの鉄の含有量は、例えば2500質量ppb未満であってよく、好ましくは2300質量ppb未満、より好ましくは2000質量ppb未満である。鉄の含有量は、例えばカーボンブラックを磁石に接触させることで低減できる。
【0033】
カーボンブラックの鉄の含有量はJIS K0116:2014に従い酸分解法にて前処理し、高周波誘導結合プラズマ質量分析法にて測定することができる。具体的には、以下の方法で測定できる。まず、カーボンブラック1gを石英ビーカーに精秤し、大気雰囲気中で電気炉により800℃×3hr加熱する。次いで残渣に混酸(塩酸70質量%、硝酸30質量%)10mLと超純水10mL以上を添加しホットプレート上で200℃×1hr加熱溶解する。放冷後、超純水により25mLに希釈・調整した溶液を高周波誘導結合プラズマ質量分析装置(Agilent社製Agilent8800)で測定する。
【0034】
本実施形態のカーボンブラックの灰分及び鉄の含有量が少ないと、混練処理において、装置等の損傷による金属、セラミックス等の異物の混入をより顕著に抑制できる。また、灰分、絶縁性異物等の混入による電極内での導電性低下も抑制できる。このため、灰分及び鉄の含有量が少ない本実施形態のカーボンブラックは、高い安全性が求められるリチウムイオン二次電池に好適に使用することができる。
【0035】
本実施形態のカーボンブラックの製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、炭化水素などの原料を反応炉の上流部に設置されたノズルから供給し、熱分解反応及び/又は燃焼反応によりカーボンブラックを製造し、反応炉の下流部に直結されたバグフィルターから捕集することができる。
【0036】
使用する原料は特に限定されるものではなく、アセチレン、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのガス状炭化水素や、トルエン、ベンゼン、キシレン、ガソリン、灯油、軽油、重油などのオイル状炭化水素を使用することができる。中でも不純物が少ないアセチレンを使用することが好ましい。アセチレンは他の原料よりも分解熱が大きく、反応炉内の温度を高くすることができるため、カーボンブラックの核生成が付加反応による粒子成長よりも優勢となり、カーボンブラックの一次粒子径を小さくすることができる。また、本発明者らは、カーボンブラックのストラクチャー強度を制御するために鋭意検討を行った結果、複数の原料を使用し、かつ、原料を加熱してから反応炉へ供給することが有効であることを見出した。従来の製法では反応炉の高温部を経由して生成したカーボンブラックと、低温部を経由して生成したカーボンブラックが混在し、特性上のばらつきも大きかったが、複数の原料を使用することにより反応炉内の温度が均一になり、経由する熱分解、燃焼の反応履歴も均一になるため、カーボンブラックのストラクチャー強度が均一化して、弱い部分からの破壊が減少するためと考えられる。また、原料を加熱することで複数原料の混合が促進され、より均一な温度場を形成することができたと考えられる。複数の原料は反応炉へ供給する前に混合することが好ましい。オイル状炭化水素を用いる場合には加熱によりガス化して供給することが好ましい。加熱の方法は特に限定されるものではなく、例えばタンク、輸送配管を熱媒との熱交換により加熱することができる。
【0037】
また、炭素源となる原料とは別に、酸素、水素、窒素、スチームなどを反応炉に供給することが好ましい。これらの原料以外のガスは反応炉内のガス攪拌を促進し、原料から生成したカーボンブラックの一次粒子同士が衝突、融着する頻度を高めるため、原料以外のガスを使用することで、カーボンブラックのストラクチャーが発達し、DBP吸収量が多くなる傾向がある。原料以外のガスとしては、酸素を使用することが好ましい。酸素を使用すると原料の一部が燃焼して反応炉内の温度が高くなり、小粒径、高比表面積のカーボンブラックが得られやすくなる。原料以外のガスとして、複数のガスを使用することもできる。原料以外のガスの供給箇所は反応炉の上流部が好ましく、原料とは別のノズルから供給することが好ましい。これにより同じく上流部から供給される原料の攪拌が効率的に起こり、ストラクチャーが発達しやすくなる。
【0038】
従来のカーボンブラック製造では、原料の熱分解、燃焼反応の停止のために反応炉の下流部から水などの冷却用媒体を送入する場合があるが、ストラクチャー発達の効果は見られず、一方で急激な温度変化によりストラクチャー強度のばらつきが大きくなって比(DBP/CDBP)が低くなるおそれがあるため、本実施形態では反応炉の下流部から冷却用媒体を送入しないことが好ましい。
【0039】
<スラリー>
本実施形態のスラリーは、本実施形態のカーボンブラックと分散媒とを含む。
【0040】
スラリーの粘度が高すぎると、活物質との混練時に強いせん断が加わるため、カーボンブラックのストラクチャーが破壊されて導電性が低下したり、装置の摩耗による異物混入が起こる場合がある。一方、スラリーの粘度が低すぎると、スラリー中でカーボンブラックの沈降が起こりやすくなり、均一性の維持が困難となる場合がある。本実施形態では、上述のカーボンブラックの使用のためスラリー粘度を低くできるため、カーボンブラックのストラクチャーの破壊が顕著に抑制されて優れた導電性付与能を維持でき、また、装備の摩耗による異物混入が顕著に抑制される。すなわち、本実施形態では、スラリーの粘度特性及び導電性を損なうことなく、合材層中の活物質の配合比率を高めることができ、リチウムイオン二次電池の高容量化が達成できる。
【0041】
上記効果がより顕著に得られる観点から、スラリーの粘度(25℃、せん断速度10s-1)は、好ましくは100mPa・s以上、より好ましくは200mPa・s以上である。これにより、カーボンブラックの沈降が抑制されてスラリーの均一性が向上する。また、上記効果がより顕著に得られる観点から、スラリー粘度(25℃、せん断速度10s-1)は、好ましくは1500mPa・s以下、より好ましくは1200mPa・s以下である。すなわち、スラリーの粘度(25℃、せん断速度10s-1)は、例えば、100~1500Pa・s、100~1200Pa・s、200~1500Pa・s、又は、200~1200Pa・sであってよい。
【0042】
分散媒は特に限定されず、例えばN-メチル-2-ピロリドン、エタノール、酢酸エチル等を使用することができる。
【0043】
本実施形態のスラリーは、本実施形態のカーボンブラックの導電性付与能力、分散性を阻害しない範囲で、その他のカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等を更に含んでいてもよい。
【0044】
本実施形態のスラリーは、活物質や、分散剤等の添加剤を更に含んでいてもよい。
【0045】
本実施形態のスラリーにおいて、本実施形態のカーボンブラックの含有量は、例えば0.5質量%以上であってよく、好ましくは1質量%以上である。また、本実施形態のスラリーにおいて、本実施形態のカーボンブラックの含有量は、例えば50質量%以下であってよく、好ましくは20質量%以下である。すなわち、本実施形態のスラリーにおいて、本実施形態のカーボンブラックの含有量は、例えば、0.5~50質量%、0.5~20質量%、1~50質量%、又は、1~20質量%であってよい。
【0046】
本実施形態のスラリーの作製方法は特に限定されず、例えば、ミキサー、ニーダー、分散機、ミル、自動公転式回転装置等の一般的な装置を使用して、各成分を混練することで作製することができる。
【0047】
本実施形態のスラリーは、リチウムイオン二次電池の電極を形成するための電極形成用スラリーとして好適に用いることができる。電極形成用スラリーは、正極形成用スラリーであってもよく、負極形成用スラリーであってもよい。
【0048】
本実施形態のスラリーが電極形成用スラリーである場合、本実施形態のスラリーは、活物質、導電剤及び分散媒を含むものであってよく、このときスラリーは、導電剤として本実施形態のカーボンブラックを含有する。
【0049】
電極形成用スラリーにおける導電剤の含有量は、例えば0.01質量%以上であってよく、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上である。また、電極形成用スラリーにおける導電剤の含有量は、例えば20質量%以下であってよく、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。すなわち、電極形成用スラリーにおける導電剤の含有量は、例えば、0.01~20質量%、0.01~15質量%、0.01~10質量%、0.05~20質量%、0.05~15質量%、0.05~10質量%、0.08~20質量%、0.08~15質量%、又は、0.08~10質量%であってよい。
【0050】
電極形成用スラリーは、カーボンブラック以外の導電剤を更に含有していてよい。カーボンブラック以外の導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等が挙げられる。
【0051】
電極形成用スラリーにおいて、導電剤に占めるカーボンブラックの割合は、例えば50質量%以上であってよく、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0052】
活物質は特に限定されず、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の活物質を特に制限無く使用できる。正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル・マンガン・コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム等が挙げられる。負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、グラファイト、活性炭、コークス、ニードルコークス、フリュードコークス、メソフェーズマイクロビーズ、炭素繊維、熱分解炭素等の炭素質材料が挙げられる。
【0053】
電極形成用スラリーは、バインダーを更に含有してよい。バインダーは特に限定されず、リチウムイオン二次電池に用いられる公知のバインダーを特に制限無く使用できる。バインダーとしては、例えば、ポリエチレン、ニトリルゴム、ポリブタジエン、ブチルゴム、ポリスチレン、スチレン・ブタジエンゴム、多硫化ゴム、ニトロセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、四フッ化エチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化クロロプレン等が挙げられる。
【0054】
電極形成用スラリーによる電極の形成方法は特に限定されず、例えば、電極形成用スラリーを集電体上に塗布し、乾燥させることにより、集電体及び合材層を含む電極を形成することができる。
【0055】
集電体は特に限定されず、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、マンガン、鉛、タングステン、チタン、及びこれらを主成分とする合金の金属箔が使用される。例えば、正極集電体にはアルミニウム箔、負極集電体には銅箔が好適に用いられる。
【0056】
<リチウムイオン二次電池>
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極と負極とセパレータとを備える。また、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極及び負極のうち少なくとも一方が上述の本実施形態のカーボンブラックを含有する。本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極及び負極のうち少なくとも一方が、上述の電極形成用スラリーから形成されたものであってもよく、正極及び負極の少なくとも一方が、上述の電極形成用スラリーにより集電体上に形成された合材層を含んでいてもよい。
【0057】
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、本実施形態のカーボンブラックを使用しているため高容量であり、また、上述の電極形成用スラリーを用いることで生産性良く製造することができる。
【0058】
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極が上述の本実施形態のカーボンブラックを含有することが好ましい。また、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極が、上述の電極形成用スラリーから形成されたものであることが好ましく、正極が、上述の電極形成用スラリーにより集電体上に形成された合材層を含むことがより好ましい。
【0059】
本実施形態のリチウムイオン二次電池において、本実施形態のカーボンブラックを含む電極以外の構成は、公知のリチウムイオン二次電池と同様の構成であってよい。
【0060】
セパレータは特に限定されず、リチウムイオン二次電池用セパレータとして公知のセパレータを特に制限なく使用できる。セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂が挙げられる。セパレータは、電解液の保持性が良いことから多孔性フィルムであることが好ましい。
【0061】
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極と負極とをセパレータを介して積層又は捲回した電極群を備えていてよい。
【0062】
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極、負極及びセパレータが電解液に浸漬されていてよい。
【0063】
電解液は、特に限定されず、例えば、リチウム塩を含む非水電解液であってよい。リチウム塩を含む非水電解液における非水溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等が挙げられる。また、非水溶媒に溶解できるリチウム塩としては、六フッ化リン酸リチウム、ホウ四フッ化リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等が挙げられる。
【0064】
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、イオン伝導ポリマー等を電解質として用いたものであってもよい。
【0065】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0066】
例えば、本発明の一側面は、比表面積が150m/g以上400m/g以下のカーボンブラックを評価する評価方法であってよい。当該評価方法は、圧縮DBP吸収量(CDBP)に対するDBP吸収量(DBP)の比(DBP/CDBP)を求める測定工程と、当該比(DBP/CDBP)によりカーボンブラックを評価する評価工程と、を備えていてよい。
【0067】
評価工程は、比(DBP/CDBP)が2.0以下のカーボンブラックを選別する選別工程であってもよい。この場合、上記評価方法は、カーボンブラックの選別方法ということもできる。
【実施例
【0068】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
<カーボンブラックの製造>
カーボンブラック反応炉(炉長6m、炉直径0.65m)の上流部に設置されたノズルから原料であるアセチレンを12Nm/h、トルエンを32kg/h、原料以外のガスとして酸素を20Nm/h供給してカーボンブラックを製造し、反応炉の下流部に設置したバグフィルターで捕集した。その後、乾式サイクロン装置、鉄除去用磁石を通過させてタンクに回収した。なお、アセチレン、トルエン、酸素は115℃に加熱してから反応炉へ供給した。得られたカーボンブラックについて、以下の物性を測定した。評価結果を表1に示す。
【0070】
(1)比表面積
JIS K6217-2:2017のA法流通法(熱伝導度測定法)に従い測定した。
(2)DBP吸収量:JIS K6221のB法に記載の方法により測定した値を、上記式(a)により、JIS K6217-4:2008相当の値に換算した。
(3)圧縮DBP吸収量(CDBP):JIS K6217-4:2008附属書A(圧縮試料の作製方法、圧縮装置I形を使用)に従い試料を作製し、JIS K6217-4:2008に従い測定した。
(4)平均一次粒子径:透過型電子顕微鏡の5万倍画像より、無作為に選択した100個以上のカーボンブラック一次粒子径を測り、平均値を算出した。
(5)灰分:JIS K1469:2003に従い測定した。
(6)鉄の含有量:鉄の含有量はJIS K0116:2014に従い酸分解法にて前処理し、高周波誘導結合プラズマ質量分析法にて測定した。
【0071】
<スラリーの調製>
カーボンブラック3質量部と、分散媒としてN-メチル-2-ピロリドン(関東化学社製)97質量部を、自転公転式混合機(シンキー社製「あわとり練太郎ARV-310」)回転数2000rpmで30分間混練し、カーボンブラックスラリーを作製した。このスラリーの25℃における粘度を粘弾性測定機(AntonPaar社製「MCR102」、φ30mm、角度3°のコーンプレート使用、ギャップ1mm)で評価した。せん断速度は0.01s-1から100s-1へ変化させて測定し、せん断速度10s-1における粘度を求めた。測定結果を表2に示す。
【0072】
<電池の作製>
カーボンブラックスラリー40質量部(カーボンブラック1.2質量部、N-メチル-2-ピロリドン38.8質量部)、正極活物質としてLiNi0.5Mn0.3Co0.2(ユミコア社製「TX10」)96.8質量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(アルケマ社製「HSV900」)2質量部、分散剤としてポリビニルアルコール(デンカ社製「B05」)0.1質量部、分散媒としてN-メチル-2-ピロリドン(関東化学社製)10質量部を、自転公転式混合機(シンキー社製「あわとり練太郎ARV-310」)回転数2000rpmで10分間混練し、正極形成用合材スラリーを作製した。得られた正極形成用合材スラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔(UACJ社製)上にアプリケータにて塗工し、105℃で1時間予備乾燥させた。次に、ロールプレス機にて200kg/cmの線圧でプレスし、アルミニウム箔と塗工膜の厚みの和が80μmになるように調製した。揮発成分を除去するため、170℃で3時間真空乾燥して正極を作製した。
【0073】
負極活物質として人造黒鉛(日立化成社製「MAG-D」)97質量部、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム(日本ゼオン社製「BM-400B」)2質量部、分散剤としてカルボキシメチルセルロース(ダイセル社製「D2200」)1質量部を秤量し、純水を添加して自転公転式混合機(シンキー社製、あわとり練太郎ARV-310)を用いて混合し、負極形成用合材スラリーを作製した。得られた負極形成用合材スラリーを厚さ10μmの銅箔(UACJ社製)上にアプリケータにて塗工し、60℃で1時間で予備乾燥させた。次に、ロールプレス機にて100kg/cmの線圧でプレスし、銅箔と塗工膜の厚みの和が40μmになるように調製した。水分を完全に除去するため、120℃で3時間真空乾燥して負極を作製した。
【0074】
上記正極を40×40mm、上記負極を44×44mmに加工し、両電極間にセパレータとしてポリオレフィン微多孔質膜を配置して電池を作製した。電解液にはエチレンカーボネート(Aldrich製)/ジメチルカーボネート(Aldrich製)を1/1の容積比で混合した溶液中に六フッ化リン酸リチウム(ステラケミファ社製)を1mol/L溶解させたものを用いた。
【0075】
電池の放電試験として、作製した電池を25℃において4.35V、0.2C制限の定電流定電圧充電をした後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。次いで、放電電流を0.2C、0.5C、1C、2C、3Cと変化させ、各放電電流に対する放電容量を測定した。0.2C放電時に対する3C放電時の容量維持率を計算し、放電レート特性として評価した。また、作製した電池を25℃において4.35V、1C制限の定電流定電圧充電をした後、1Cの定電流で3.0Vまで放電した。次いで、上記充放電を500サイクル繰り返し、放電容量を測定した。1サイクル放電時に対する500サイクル放電時の容量維持率を計算し、サイクル特性として評価した。測定結果を表2に示す。
【0076】
(実施例2~4)
酸素の供給量を21Nm/h(実施例2)、22Nm/h(実施例3)又は24Nm/h(実施例4)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンブラックを作製し、評価した。結果を表1に示す。また、得られたカーボンブラックを用いて、実施例1と同様にしてスラリー及び電池の調製及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0077】
(実施例5)
トルエンの供給時の温度を100℃に変更し、且つ、酸素の供給量を21Nm/hに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンブラックを作製し、評価した。結果を表1に示す。また、得られたカーボンブラックを用いて、実施例1と同様にしてスラリー及び電池の調製及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0078】
(実施例6)
アセチレンの供給時の温度を85℃、トルエンの供給時の温度を100℃にそれぞれ変更し、且つ、酸素の供給量を21Nm/hに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンブラックを作製し、評価した。結果を表1に示す。また、得られたカーボンブラックを用いて、実施例1と同様にしてスラリー及び電池の調製及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0079】
(実施例7)
アセチレンの供給時の温度を85℃、トルエンの供給時の温度を85℃にそれぞれ変更し、且つ、酸素の供給量を21Nm/hに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンブラックを作製し、評価した。結果を表1に示す。また、得られたカーボンブラックを用いて、実施例1と同様にしてスラリー及び電池の調製及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0080】
(実施例8)
アセチレンの供給量を11Nm/h、トルエンの供給量を30kg/h、酸素の供給量を19Nm/hにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンブラックを作製し、評価した。結果を表1に示す。また、得られたカーボンブラックを用いて、実施例1と同様にしてスラリー及び電池の調製及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0081】
(実施例9)
アセチレンの供給量を13Nm/h、トルエンの供給量を35kg/h、酸素の供給量を26Nm/hにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンブラックを作製し、評価した。結果を表1に示す。また、得られたカーボンブラックを用いて、実施例1と同様にしてスラリー及び電池の調製及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0082】
(実施例10)
アセチレンに代えて12Nm/hのエチレンを115℃に加熱して供給したこと、及び、酸素の供給量を22Nm/hに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンブラックを作製し、評価した。結果を表1に示す。また、得られたカーボンブラックを用いて、実施例1と同様にしてスラリー及び電池の調製及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0083】
(実施例11)
トルエンに代えて32kg/hのベンゼンを115℃に加熱して供給したこと、及び、酸素の供給量を21Nm/hに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンブラックを作製し、評価した。結果を表1に示す。また、得られたカーボンブラックを用いて、実施例1と同様にしてスラリー及び電池の調製及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0084】
(比較例1)
酸素に代えて21Nm/hの水素を115℃に加熱して供給したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンブラックを作製し、評価した。結果を表1に示す。また、得られたカーボンブラックを用いて、実施例1と同様にしてスラリー及び電池の調製及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0085】
(比較例2)
アセチレンの供給量を11Nm/h、トルエンの供給量を30kg/h、酸素の供給量を24Nm/hに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンブラックを作製し、評価した。結果を表1に示す。また、得られたカーボンブラックを用いて、実施例1と同様にしてスラリー及び電池の調製及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0086】
(実施例12)
比較例1で得られたカーボンブラックを720℃に加熱された電気炉内にて酸化処理して、カーボンブラックを得た。得られたカーボンブラックを実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。また、得られたカーボンブラックを用いて、実施例1と同様にしてスラリー及び電池の調製及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0087】
(実施例13)
酸素の供給量を21Nm/hに変更したこと、及び、乾式サイクロン装置の分級条件を変更して灰分の含有量を調整したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンブラックを作製し、評価した。結果を表1に示す。また、得られたカーボンブラックを用いて、実施例1と同様にしてスラリー及び電池の調製及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0088】
(実施例14)
酸素の供給量を21Nm/hに変更したこと、及び、鉄除去用磁石の磁束密度条件を変更して鉄の含有量を調整したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンブラックを作製し、評価した。結果を表1に示す。また、得られたカーボンブラックを用いて、実施例1と同様にしてスラリー及び電池の調製及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0089】
(比較例3)
アセチレンの供給量を38Nm/hに変更し、トルエンを供給せず、酸素の供給量を10Nm/hに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンブラックを作製し、評価した。結果を表1に示す。また、得られたカーボンブラックを用いて、実施例1と同様にしてスラリー及び電池の調製及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0090】
(比較例4)
酸素の供給量を22Nm/hに変更し、且つ、アセチレンの供給時の温度、トルエンの供給時の温度及び酸素の供給時の温度をいずれも25℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンブラックを作製し、評価した。結果を表1に示す。また、得られたカーボンブラックを用いて、実施例1と同様にしてスラリー及び電池の調製及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
表1に示すとおり、実施例のカーボンブラックを用いた場合、優れたスラリー粘度特性及び優れた電池特性が実現され、本発明のカーボンブラックによって高性能なリチウムイオン二次電池を生産性良く得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のカーボンブラックは、リチウムイオン二次電池電極用スラリー及びリチウムイオン二次電池に好適に利用することができる。