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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】光電センサ及び焦点調節方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/40 20210101AFI20241008BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20241008BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20241008BHJP
【FI】
G02B7/40
G02B7/04 E
G03B13/36
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023063884
(22)【出願日】2023-04-11
(65)【公開番号】P2024002907
(43)【公開日】2024-01-11
【審査請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】22180971
(32)【優先日】2022-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーマス プフレングレ
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブ ブルガー
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-200366(JP,A)
【文献】中国実用新案第207571371(CN,U)
【文献】特開平08-029676(JP,A)
【文献】特開2014-045304(JP,A)
【文献】特開2012-198524(JP,A)
【文献】特開2009-111774(JP,A)
【文献】独国実用新案第202019106399(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/40
G03B 13/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光器(16)と、該受光器(16)の前に配置された受信光学系(14)と、前記受光器(16)を移動させるように構成された、アクチュエータ(38)を有する焦点調節ユニット(18)とを備える光電センサ(10)において、
前記焦点調節ユニット(18)が、固定した第1の軸受(32)とそれに対向する可動の第2の軸受(34)と少なくとも1つの可撓性の保持要素(28、30)を有する平行案内装置であって、前記可撓性の保持要素(28、30)が、第1の側(46a)で前記第1の軸受(32)において軸受けされ、対向する第2の側(46b)で前記第2の軸受(34)において軸受けされると共に、前記受光器(16)が、前記第2の軸受(34)と少なくとも間接的に固定的に接続され、前記第1の軸受(32)とは可撓性を持って接続されているか全く接続されていない、平行案内装置を備え、前記受光器(16)を同じ向きのまま前記受信光学系(14)の光軸上で移動させるように、前記受光器(16)が前記第2の側(46b)での前記可撓性の保持要素(28、30)の運動を一緒に行うこと
前記少なくとも1つの可撓性の保持要素(28、30)が追加の熱伝導層(52)を備えていること、及び
前記少なくとも1つの可撓性の保持要素(28、30)が、前記熱伝導層(52)を間に挟んだ2つの金属層(50a、50b)を備えていること
を特徴とする光電センサ(10)。
【請求項2】
前記アクチュエータ(38)がステップモータ又は可動コイルを備えている、及び/又は、前記センサ(10)が、前記アクチュエータ(38)、前記平行案内装置又は前記受光器(16)の位置を特定するための位置センサ(20)を備えている、請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項3】
前記受光器(16)が少なくとも1つの可撓性の部分領域(44)を備える回路基板(26)上に配置されている、請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項4】
前記回路基板(26)が少なくとも前記可撓性の部分領域(44)において圧延銅を備えている、請求項3に記載のセンサ(10)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの可撓性の保持要素(28、30)が前記受光器(16)を囲む枠として構成されている、請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの可撓性の保持要素(28、30)が少なくとも1つの板ばねを備えている、請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項7】
前記平行案内装置が2つの可撓性の保持要素(28、30)を備え、前記受光器(16)が該2つの可撓性の保持要素(28、30)の間に配置されている、請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの可撓性の保持要素(28、30)が熱伝導性の金属を備えている、請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項9】
前記熱伝導性の金属が銅又は銅・ベリリウム合金である、請求項8に記載のセンサ(10)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの可撓性の保持要素(28、30)が、材料の厚さを増大させた少なくとも1つの剛性領域(28a、30a)を備えている、請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項11】
少なくとも1つの追加の筋状金属片(48a、48b)を用いて、前記材料の厚さを増大させている、請求項10に記載のセンサ(10)。
【請求項12】
前記熱伝導層(52)がグラファイト箔により形成されている、請求項1~11のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項13】
前記受光器(16)で撮影された画像データから、撮影されたコード(60)のコード情報を読み出すように構成された制御及び評価ユニット(54)を備えている、請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項14】
受光器(16)と、該受光器(16)の前に配置された受信光学系(14)とを備える光電センサ(10)の焦点調節方法であって、前記受光器(16)が焦点調節ユニット(18)によりアクチュエータ(38)を用いて移動させられる方法において、
前記焦点調節ユニット(18)に備えられた固定した第1の軸受(32)とそれに対向する可動の第2の軸受(34)と少なくとも1つの可撓性の保持要素(28、30)を有する平行案内装置であって、前記可撓性の保持要素(28、30)が、第1の側(46a)で前記第1の軸受(32)において軸受けされ、対向する第2の側(46b)で前記第2の軸受(34)において軸受けされると共に、前記受光器(16)が、前記第2の軸受(34)と少なくとも間接的に固定的に接続され、前記第1の軸受(32)とは可撓性を持って接続されているか全く接続されていない、平行案内装置を用いて、前記受光器(16)を同じ向きのまま前記受信光学系(14)の光軸上で移動させるように、前記受光器(16)が前記第2の側(46b)での前記可撓性の保持要素(28、30)の運動を一緒に行うこと
前記少なくとも1つの可撓性の保持要素(28、30)が追加の熱伝導層(52)を備えていること、及び
前記少なくとも1つの可撓性の保持要素(28、30)が、前記熱伝導層(52)を間に挟んだ2つの金属層(50a、50b)を備えていること
を特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1及び15のプレアンブルにそれぞれ記載の光電センサ(特にカメラ)及び光電センサの焦点調節方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラは、とりわけ産業上の利用において、例えば物品の検査や測定等の目的で、物品の特性を自動的に捕らえるために多様な方法で用いられる。その場合、物品の画像が撮影され、業務に応じて画像処理により評価される。カメラの別の用途としてコードの読み取りがある。画像センサを用いて、表面にコードが付された物品が撮影され、その画像内でコード領域が識別されて復号が行われる。カメラベースのコードリーダは、1次元バーコード以外に、マトリクスコードのように2次元的に構成され、より多くの情報を利用できる種類のコードも問題なく処理できる。印刷された住所や手書き文書の自動的なテキスト認識(OCR: Optical Character Recognition)も原則的にはコードの読み取りである。カメラベースのコードリーダにはこうしたより大きな多様性があるにも関わらず、特殊化している代わりに同じ読み取り性能ならより割安であるのが普通であるバーコードスキャナが依然として広く用いられている。コードリーダの典型的な応用分野としては、スーパーマーケットのレジ、荷物の自動識別、郵便物の仕分け、空港での荷物の発送準備、その他の物流での利用が挙げられる。
【0003】
よくある検出状況の1つはコードリーダ又は検査若しくは測定業務用のカメラをベルトコンベアの上方に取り付けるというものである。カメラはベルトコンベア上で物品の流れが相対移動している間、画像を撮影し、捕らえた情報を保存する、あるいは取得した物品特性に応じてその後の処理ステップを開始する。このような処理ステップでは、例えば、搬送中の物品に作用する機械上で具体的な物品に合わせて更なる処理を行ったり、物品の流れの中から品質管理の枠組み内で特定の物品を引き出すこと又は物品の流れを複数の物品の流れに分岐させることにより物品の流れを変化させたりすることができる。コードリーダにより、物品が、それに付されたコードに基づき、正しい仕分け等の処理ステップのために識別される。
【0004】
様々な作動距離に対応するため、そして特に異なる距離のコードの読み取りを可能にするために、焦点位置を調節しなければならない。それはしばしば自動焦点と結び付けられ、その場合、撮影対象の物体までの距離を測定し、それに応じて焦点位置を調節する。焦点調節には様々な技術が知られている。典型的には、対物レンズの位置を変化させ、画像焦点距離を変化させることで焦点変更を達成する。
【0005】
例えば特許文献1は、カメラベースのコードリーダのために、モータで駆動されるカム板と、複数の平らな板ばねを備えるばね軸受内で物体を平行に案内する装置とを用いる焦点調節装置を提案している。ここでの欠点は機械的な摩耗であり、それは対物レンズの重みとともに更に増す。そのため対物レンズの選択が軽めの対物レンズに限られる。より大きい対物レンズは摩耗を増大させるだけでなく、機械装置もそれに合わせる必要があるため、変種形成に高いコストがかかる。
【0006】
特許文献2では自動焦点レンズホルダが2枚の板ばねの間に保持されており、該板ばねが、光軸に沿って移動可能なレンズホルダのための中心開口を有している。この焦点調節装置は重さの問題に関して何の改善ももたらさない。それはますます複雑で大型の構造を有している。
【0007】
特許文献3は自動焦点装置に関するものである。該装置では、レンズを備えるレンズ担持体が、互いに平行でレンズの光軸に垂直な2枚の板ばね隔壁から成る機械的な案内装置内で、弾性的に軸方向に移動する。しかし、この装置の案内特性及び力配分特性は特許文献1に記載のような平行案内装置の特性に達していない。
【0008】
摩耗を低減するため、アクチュエータとして可動コイル(ボイスコイル)を用いることができる。可動コイルは例えば一眼レフカメラにおいて像を安定させるために用いられる。特許文献4は、発射光学系が旋回アーム上にあり、該アームを読み取り光線の焦点合わせのために可動コイルアクチュエータで旋回させるバーコードスキャナを開示している。従ってそれはまず、あまり複雑ではない発射光学系にしか適しておらず、受光対物レンズには適していない。加えて旋回アームが円運動するため発射光学系と発光器との間にずれが生じ、そのずれが受光路に伝えられると著しい光学的な損失につながる。
【0009】
特許文献5には対物レンズを2枚の丸められた板ばねの間で移動させる焦点調節装置が記載されている。特許文献6は2つの枠状のばね要素を有する対物レンズ懸架装置を開示している。どちらの場合もアクチュエータとして可動コイルを用いるようになっている。これによりそれぞれ寿命が改善される。なぜなら、摩耗に弱いカム板又はそれと同等の機械的な伝達要素がなくなるからである。しかし、より質量の大きい他の対物レンズを用いなければならない場合、アクチュエータを可動コイルと共に設計し直さなければならない。従って対物レンズの変種は依然として不経済である。
【0010】
より質量が大きい対物レンズ又はとにかく質量が異なる対物レンズを動かさずに済むようにするため、代わりに画像センサを移動させるという考え方が従来技術に存在する。特許文献7に、受光器が旋回アーム上に配置され、その運動により固定位置の受信光学系に対する距離が変わることで焦点位置が調節されるコードリーダが記載されている。しかしその場合、画像焦点距離だけでなく受信光学系に対する受光器の光軸も変化するため、焦点調節毎に異なる結像誤差が生じる。特許文献8はその基本構成を変形して、画像センサを旋回アームそのものではなくそれに連結されたばねアーム上に収められている。これによれば、画像センサは焦点調節の際にその向きを変え、それにより結像誤差が部分的に回避されるが、完全には回避されない。
【0011】
特許文献9では受信光学系が揺り腕上に配置されている。これによれば、焦点位置が変化すると検出領域が変化する。特許文献9の応用は線状に検出を行うものに限定されているため、前記のずれはその線状の検出に平行に合わせることができ、そうすれば最終的な効果は損なわれない。しかしそれは一般的なカメラ及びその使用には転用できない。受信光学系の代わりに受光器が揺り腕と一緒に運動するように配置することが最後に述べられてはいるが、その詳しい説明はない。
【0012】
特許文献10は画像センサをレンズに対して移動させる自動焦点モジュールを有する医学的な検査装置を開示している。特許文献11は焦点モータを用いて焦点レンズ又はセンサ領域を移動させるという両方の可能性に言及している。特許文献12にはビデオカメラ用の自動焦点装置が提示されており、冒頭で、更なるコンパクト化のためにレンズ群の代わりに画像センサを移動させることができることが論じられている。特許文献13は、回動及び傾動可能な枠上に画像受信器が配置された可動コイルベースの焦点系に関するものである。いずれの文献でも、より深い機械的又は光学的な結果については考慮されていない。
【0013】
従来技術において更に、可変の焦点距離を有するレンズ、特に液体レンズが知られている。これは構造要素を巨視的にずらす必要が全くない。液体レンズはまだとても市販の対物レンズの全シリーズに自由に利用できるものではない。利用できる液体レンズは小口径に限られており、従ってより大きな対物レンズに用いることはできない。液体レンズの利用可能性は別としても、高コストの温度補償が必要であり、低温での利用には液体レンズは全体として適していない。液体レンズは典型的には対物レンズに代わるものではなくこれを補うものであるから、設計において液体レンズ用の追加の組立て空間を設けることになる。変種形成の際には各々の対物レンズに対する個別の適合化とそれに合った液体レンズが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】EP 2 498 113 A1
【文献】US 2016/0178923 A1
【文献】EP 757 270 B1
【文献】DE 10 2016 112 123 A1
【文献】EP 3 525 026 A1
【文献】EP 3 663 846 A1
【文献】EP 1 513 094 B1
【文献】EP 1 698 996 B1
【文献】EP 2 112 540 A1
【文献】US 7 419 467
【文献】US 2014/0093228 A1
【文献】US 5 101 278
【文献】US 5 245 172
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
要するに従来技術は、多様なアプローチがあるにも関わらず、多数の対物レンズ、特により大きくてより重い対物レンズまでサポートする焦点調節装置のためには、これまで不十分な方法しか提供していない。
【0016】
故に本発明の課題は光電センサの焦点調節を更に改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題は請求項1及び15にそれぞれ記載の光電センサ及び光電センサの焦点調節方法により解決される。本センサは受光器(好ましくはライン状又はマトリクス状の画像センサの形をしたもの)を備えており、これにより本センサはカメラとなる。付属する受信光学系乃至は受光対物レンズが鮮明な撮影画像を作り出す。焦点変更の際には焦点調節ユニットがアクチュエータで受光器を移動させる。この移動により画像焦点距離が変わり、それにより焦点位置が変わる。従って、他の場合なら一般に普通であるように受信光学系を移動させるのではなく、受光器又は受光器を含む回路基板を移動させる。受信光学系又はその少なくとも1つの要素を追加的に移動させることもできるが、好ましくは受光器だけが受信光学系に対して相対的に移動し、受信光学系は不動のままとする。ここで「移動」とは常にカメラの基準系内での移動を意味する。特に移動式の応用ではカメラ全体も移動することがあり得るが、それにより焦点調節が変わることはない。
【0018】
本発明の出発点となる基本思想は、受光器を同じ向きのまま受信光学系の光軸上で移動させること、すなわち移動として平行移動を行うことにある。従って受光器が傾いたり様々な傾き状態になったりしない。前記同じ向きは受光器の面を光軸に対して常に垂直に保つことが好ましい。好ましくは横方向の位置も維持する。そうすると移動によって受光器上での光軸の貫通点が変化することがなくなる。前記同じ向きは、少なくとも1つの可撓性の保持要素を用いて焦点調節ユニットを平行に案内することにより達成される。平行移動とは数学的に完璧なものではなく実際的なものを意味している。公差等の枠内での僅かな傾動及び横方向のずれは、それに対応する光学的な変化及び誤差が許容できる限り、可能なままである。
【0019】
本発明には、対物レンズに比べて比較的小さい質量を受光器とともに移動させるだけで済むという利点がある。これにより摩耗が最小限となり、それどころかアクチュエータによっては摩耗がほとんどなくなり、以て寿命が長くなる。そのため、焦点調節ユニットの適合化又は再設計は不要になり、同じ焦点モジュールを様々な装置クラス及び非常に多数の対物レンズの変種のために用いることができる。対物レンズの重さが極めて異なるのに対し、受光器を交換しても重さの変化はほとんど取るに足りず、しかも異なる画素解像度の画像センサがしばしばピン互換的に同じパッケージで販売されているからなおさらである。焦点調節のための構成的・機械的な基盤が不変であるため開発及び製造のコストが低減するとともに変種の多様性が高まる。標準化されているのは対物レンズのフランジと光学的な面までの距離だけである。従って、焦点距離、絞り及び他の光学的な特性が異なるほぼ任意の対物レンズを組み合わせることができ、しかもそれはセンサメーカーの側だけでなく顧客の側でさえも可能であって、その多様な対物レンズは市場で自由に調達したり付属品として提供したりできる。従って、要求に応じて非常に高価な対物レンズを用いたり、逆にもっと安価ではあるが全く不足のない対物レンズを用いたりできる。液体レンズに関連する欠点も同様に克服され、液体レンズメーカーへの依存性や、特殊な特定の液体レンズとの共働用に設計された対物レンズへの依存性がなくなる。
【0020】
アクチュエータはステップモータ又は可動コイルを備えていることが好ましい。ステップモータは定評があって容易に利用可能な部品である。可動コイルアクチュエータ(ボイスコイル)は、力の伝達が非接触のままであるため機械的な摩耗が全くない又は少なくともより少ないという利点がある。自己選択により、コイルを固定して磁石を可動式に配置にしてもよいし、逆にしてもよい。配置を特にコンパクトにするためにコイル又は磁石を受光器の回路基板上に統合することができる。
【0021】
本センサは、アクチュエータ、平行案内装置又は受光器の位置を特定するための位置センサを備えていることが好ましい。位置センサとしては例えばホールセンサを用いることができる。実施形態によってアクチュエータ、平行案内装置又は受光器の位置が測定されるが、これらは全て既知の方法で互いに関連付けられており、故に最終的には同じ測定情報、即ち調節後の焦点位置に関するフィードバックをもたらす。距離測定又は画像鮮明度測定と組み合わせれば焦点制御乃至は自動焦点を実現することができる。
【0022】
受光器は少なくとも1つの可撓性の部分領域を備える回路基板上に配置されていることが好ましい。従ってこの回路基板はフレキシブル基板である。可撓性により、回路基板、そして受光器を様々な移動位置においてセンサの残りの電子部品と接続された状態に保つことができる。
【0023】
前記回路基板は少なくとも前記可撓性の部分領域において圧延銅を備えていることが好ましい。これにより、前記少なくとも1つの可撓性の部分領域の機械的な安定性が、センサの寿命を通じて焦点調節の枠内で数千回、それどころか数百万回の曲げにも耐えられるものになる。
【0024】
平行案内装置は固定した第1の軸受とそれに対向する可動の第2の軸受とを備え、前記可撓性の保持要素は第1の側で第1の軸受において軸受けされ、対向する第2の側で第2の軸受において軸受けされていることが好ましい。これによれば、可撓性の保持要素は一方の側で固定的又は静的に軸受され、他方の側で焦点調節のためにアクチュエータにより上下に動かされる。
【0025】
受光器は第2の軸受と少なくとも間接的に固定的に接続され、第1の軸受とは可撓性を持って接続されているか全く接続されていないことが好ましい。「少なくとも間接的に」とは特に、接続されているのが受光器そのものではなくその回路基板であるという意味である。可動の第2の軸受への接続は固定的である。即ち、受光器は第2の軸受側での可撓性の保持要素の運動を一緒に行い、ここでアクチュエータにより焦点調節のために上昇及び下降させられる。対向する静止した第1の軸受側では、受光器が可撓性を持って接続されているため十分な遊びが生じて受光器の剛性運動乃至は平行移動を許容するか、若しくはここには接続が全くないため運動を制限しないかのいずれかである。これらの特性は機械的な接続に関するものである。電気的な接続は、第1の軸受との可撓性の接続を作り出すことができる回路基板の可撓性の部分領域を通じて行うことが好ましい。その代わりに又はそれに加えて、電子的な接触を持つ可撓性の部分領域を第2の軸受の向こう側に設けることができる。
【0026】
前記少なくとも1つの可撓性の保持要素は受光器又はその回路基板を囲む枠として構成されていることが好ましい。これは受光器を上から見たときに該受光器が可撓性の保持要素により取り囲まれているものと理解すべきである。焦点調節とともにその枠が曲がり、それにより受光器が平行移動させられ、それにより場合によっては該受光器が少なくとも部分的に該受光器に垂直な方向に、光軸に沿って、枠からずれる。
【0027】
前記少なくとも1つの可撓性の保持要素は少なくとも1つの板ばねを備えていることが好ましい。これは安価で簡単に適切な形状に製造できる部品であり、それにも関わらず全ての要求を満たす。代わりに例えば、ばね付きの軸受ブッシュ内に合せピンを填め込んだものも考えられよう。
【0028】
平行案内装置は2つの可撓性の保持要素を備え、受光器は該2つの可撓性の保持要素の間に配置されていることが好ましい。これによれば受光器は、該受光器に垂直な方向に、光軸に沿って、各可撓性の保持要素により上及び下で取り囲まれている。これにより非常に簡単且つ頑強に平行案内装置を実現できる。
【0029】
前記少なくとも1つの可撓性の保持要素は熱伝導性の金属、特に銅又は銅・ベリリウム合金を備えていることが好ましい。アクチュエータ、可動部及び受光器の放熱は大きな課題となる。銅又は銅・ベリリウム合金のような熱伝導性の高い金属によりその問題性を少なくとも部分的に和らげることができる。
【0030】
前記少なくとも1つの可撓性の保持要素は、特に少なくとも1つの追加の筋状金属片を用いて、材料の厚さを増大させた少なくとも1つの剛性領域を備えていることが好ましい。これによれば、可撓性の保持要素は全長にわたって曲がるのではなく、少なくとも1つの曲げ領域だけで曲がる。それに対応して、所要の曲げ特性を損なうことなく材料の厚さを増大させることができる剛性領域が存在する。これによれば、少なくともその剛性領域の区間の部分を通じて熱伝導性が改善される。追加の材料は、例えば安価なアルミニウムのように、それ自身は突出した熱伝導特性を示さないものであっても、熱伝導を改善する。特に好ましくは、銅又は銅・ベリリウム合金のような熱伝導性の高い材料を用いる。構造的には、少なくとも1つの筋状金属片、例えば2枚の筋状金属片を上と下から貼付することにより非常に簡単に厚さを増大させることができる。
【0031】
前記少なくとも1つの可撓性の保持要素は追加の熱伝導層、特にグラファイト箔を備えていることが好ましい。曲げ領域では、曲げ特性を損なうことなく、それどころか失うことなく材料の厚さを増大させることはできない。薄い熱伝導層がここで問題を解消する助けとなり、それには特にグラファイト箔が適していることが分かっている。薄い熱伝導層が本当に必要なのは曲げ領域のみであるが、剛性領域、又は可撓性の保持要素全体にそれを設けることもできる。これにより製造も容易になる。
【0032】
前記少なくとも1つの可撓性の保持要素は、前記熱伝導層を間に挟んだ2つの金属層を備えていることが好ましい。これによれば、熱伝導層は、可撓性の保持要素が曲がったときでも最小限の力しか受けないように、真ん中、好ましくはいわゆる中立軸の位置にある。外面に熱伝導層を設ける等、他の場合には熱伝導層(特に薄いグラファイト箔)が焦点調節のせいで破れる恐れがある。真ん中の配置によりその危険性が明らかに低減される。なお、内部での小さな破れはほとんど問題とならない。なぜなら、破れの周辺部はほぼ隣接したままであり、せいぜい小さくて克服可能な隙間がより低い熱伝導性を持って生じるにすぎないからである。一方、外面に貼付された箔は完全に引きちぎれる可能性がある。
【0033】
本センサは、受光器で撮影された画像データから、撮影されたコードのコード情報を読み出すように構成された制御及び評価ユニットを備えていることが好ましい。これにより本センサはコードリーダとなる。受光器が画像センサであれば、それはカメラベースのコードリーダである。本発明に係る焦点調節のおかげで鮮明な画像が無数の読み取りサイクルと焦点サイクルを含む長い寿命にわたって撮影され、それにより高い読み取り率のための必要条件が作り出される。
【0034】
本発明に係る方法は、前記と同様のやり方で仕上げていくことが可能であり、それにより同様の効果を奏する。そのような効果をもたらす特徴は、例えば本願の独立請求項に続く従属請求項に模範的に記載されているが、それらに限られるものではない。
【0035】
以下、本発明について、更なる特徴及び利点をも考慮しつつ、模範的な実施形態に基づき、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】カメラとして構成された光電センサのブロック図。
図2】平行案内装置内で受光器を移動させることによる光電センサの焦点調節装置の3次元図。
図3図2の受光器を移動させるためのアクチュエータの3次元図。
図4】基本位置にある図2の焦点調節装置の概略側面図。
図5】平行移動した位置にある、図4に対応する概略側面図。
図6図2の焦点調節装置に使用できる板ばねの3次元図。
図7】内部に熱伝導層を有する2重型の図6の(今度は軸受されている)板ばねの概略的な一部切り出し断面図。
図8】(a)、(b)図7の板ばねが曲がったときに作用する力と、内部の熱伝導層を中立軸の位置に設けることの利点とを分かりやすく説明するための略図。
図9】焦点調節装置の様々な実施形態における熱経路を比較するための表。
図10】本発明に係る光電センサをベルトコンベアの上方で用いる模範的な応用の概略的な3次元図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は焦点調節装置を有する光電センサ10の一例であるカメラのブロック図である。このカメラは2次元カメラ又は3次元カメラとして構成することができる。検出領域12からの受信光が受信光学系14に当たり、これが受信光を受光器16へ導く。受信光学系14はここでは単に概略的に単一のレンズとして描かれている。一般的にはこれはレンズ及び他の光学素子(絞り、プリズム等)から成る任意の対物レンズであり、最も単純な実施形態において単一レンズであるにすぎない。カメラの場合、受光器16はライン配置又はマトリクス配置になった多数の受光素子を有する画像センサである。他のセンサ10ではフォトダイオード、APD(アバランシェフォトダイオード)、あるいはSPAD受信器(シングルフォトンアバランシェダイオード)も用いる。
【0038】
センサ10の焦点を合わせるために、受光器16を受信光学系14の光軸に沿って移動させることができる。これにより画像焦点距離が変わり、以て焦点位置の変化が生じる。このような焦点変更を焦点調節装置18が担う。図1ではそれが単に記号的に描かれており、これについては引き続き図2~9を参照してより詳しく説明する。他の場合のように普通に受信光学系14を移動させるのではなく、受光器16を移動させることにより、同じ焦点調節装置18を非常に多様な対物レンズと共働させることができる。これにより、その都度の応用と関連させて所望の光学的特性を持つ対物レンズを受信光学系14として用いることができる。質量及び大きさは焦点調節装置18にとって重要ではない。
【0039】
任意選択であり、故に破線で示されている位置センサ20は、最新の調節された焦点位置に関するフィードバックを出力する。位置センサ20は例えば、受光器16を駆動するモータのモータシャフト上にある回転式ホールエンコーダ、又は受光器16若しくは該受光器16と一緒に移動する部品の位置を直接特定するためのリニアホールエンコーダとして実装することができる。追加のセンサ素子、特にホール素子が補足的にその都度の最大変位を認識することができる。
【0040】
更に任意選択で、故に破線で示されているように、距離センサ22を設けることができる。これは検出対象の物体までの距離、ひいては必要な焦点位置をその都度特定する。距離センサ22は、距離測定法として好ましい光伝播時間法(TOF、飛行時間)を表す「TOF」で示されている。代わりにそれ自体公知のいかなる距離測定も可能である。
【0041】
制御及び評価ユニット24が受光器16、焦点調節装置18、そしてもし存在すれば位置センサ20及び距離センサ22と接続されている。受光器16の受信信号が制御及び評価ユニット24により読み取られ、例えば画像として保存され、準備処理され、画像解析法を用いて処理され、またカメラベースのコードリーダにおいてはコード領域が調べられて復号される。焦点調節装置18を通じてその都度必要な焦点位置が設定される。必要な焦点位置に関する情報は距離センサ22が供給する。実際の焦点位置に関する位置センサ20のフィードバックを用いて制御系乃至は自動焦点を実現することができる。
【0042】
図2は焦点調節装置18の一実施形態の3次元図である。受光器16は回路基板26上に収められており、他方で該基板は上に配置された第1の板ばね28と下に配置された第2の板ばね30の間に位置している。2枚の板ばね28、30はそれぞれ長方形状であり、上から見たときに受光器16を取り囲んでいる。これらのばねは一方の側(特に長方形の短辺側)で固定軸受32において軸受けされ、他方の側で可動軸受34において軸受けされている。可動軸受34は焦点調節のためにアクチュエータにより矢印36の方向に上下に移動させられる。
【0043】
回路基板26も同様に一方の側で可動軸受34において軸受けされており、故に一緒に上下運動を行う。その際に該基板は平行移動させられる、即ち、その受信面の向き並びに該受信面内での横方向の位置を維持する。固定軸受32に対する相対運動とそれに伴う平行移動を可能にするため、反対側において回路基板26は可撓性の回路基板領域を介して固定軸受32と接続されているか、或いは全く接続されていない。可撓性の回路基板領域で回路基板26が電子的に接続される。その代わりに又はそれに加えて、可撓性の電子的な接続を他の箇所、特に可動軸受34の向こう側で可撓性の回路基板領域を用いて行うことができる。2枚の板ばね28、30を用いた図の平行案内装置は非常に有利であるが、合せピンとばね付きの軸受ブッシュとの間で上下運動を行う等、他の基本構成も考えられる。
【0044】
図3は可動軸受34ひいては受光素子16を上下に運動させるアクチュエータの3次元図である。ステップモータ38には、回転運動を直線運動に変換するための偏心輪として、玉軸受けされた連接棒42がシャフト40上に配置されており、この棒が所要の押し上げ運動を生み出す。回路基板26を均斉を取って上昇及び下降させるため、連結は可動軸受34の左右両側で行うことが好ましい。原則的には作用点を1つだけにすることも考えられるが、そうすると、板ばねが平行四辺形になっているにも拘わらず受光器16が少なくとも数μm傾き、その結果視野がずれる危険性がある。この危険性は真ん中に作用点を置くことで緩和又は除去される。これは少なくとも組立て形状が小さい場合に考えられ、設計が簡単になる。
【0045】
ステップモータ38の代わりに可動コイルアクチュエータ(ボイスコイル)も考えられる。このアクチュエータは板ばね28、30により形成される枠の外部でも、また内部でも配置できる。コイルが固定部分にあり磁石が可動部分にある実施形態と、その逆の実施形態の両方が可能である。それぞれの一緒に移動する部分、即ちコイル又は磁石は、受光器16とともに回路基板26に統合することができる。速度よりむしろ精度が重要である応用には、更なる代替物としてピエゾアクチュエータを用いることができる。
【0046】
図4及び5は焦点調節装置18による受光器16の平行案内又は平行移動を概略側面図で再度示したものであり、図4は受光器16の基本位置、図5はそこから平行移動した位置を示している。回路基板26は可動軸受34において軸受けされており、故に該軸受の運動を一緒に行う。図示した実施形態では回路基板26がフレキシブル基板であり、反対側で可撓性の部分領域44によって固定軸受32と接続されている。これにより、回路基板26の向きを変えたり全体として曲げたりすることなく該基板を一緒に動かすことができる。代わりに、回路基板26を前記の側において全く接続しないでおくことも可能である。その場合、他の箇所で電子的な接触が必要であるが、それは例えば可動軸受34の向こう側で可撓性の部分領域を通じて行うことが好ましい。
【0047】
回路基板26乃至はその可撓性の部分領域44が非常に多い回数の焦点調節サイクルに耐え得ることが重要である。そのためには回路基板26が高い可撓性を持つような設計が有利である。フレキシブル基板の所要の長期耐久限度を達成する1つの方法は圧延銅を用いることである。
【0048】
板ばね28、30は全長にわたって曲がるのではなく、剛性領域28a、30aと、軸受32、34への移行部分にある2つの曲げ領域28b~c、30b~cとを備えていることが好ましい。図5では垂直方向の変位が既に過度になっている可能性があるが、コードを読み取る場合のように比較的狭い距離範囲にわたる焦点調節の場合は受光器16を僅かに動かすだけで十分である。板ばね28、30を用いた平行案内装置は好ましい実施形態である。しかし他のやり方も可能であり、例えば剛性領域28a、30aをそれ自身の弾性を持つ剛性部品として実装したり、軸受32、34のばね付きブッシュに合せピンを填め込んだものを曲げ領域28b~c、30b~cとして実装したりできる。
【0049】
稼働時には受光器16からセンサ10のケーシングまで確実に熱が輸送されて外部へ放出されなければならない。必要な熱橋は可撓性の部分領域44と平行案内装置乃至は板ばね28、30により形成することができる。自然の対流と放射は通常、あまり重要ではなく、せいぜい最適化に寄与しうるにすぎない。
【0050】
ただし、板ばね28、30を通る熱流量は非常に限られている。熱経路の長さをl、断面積をA、熱伝導率をλとすると、熱抵抗RthはRth=l/(λA)である。板ばね28、30においては断面積が小さくて熱伝導率が低い長尺の熱伝導路という不利な構成になる。例えば、多数回の運動サイクルに構造的に適した材料であるばね鋼は熱伝導率が15W/(m*K)しかない。エネルギー損失が例えば1.5W、2つの板ばね28、30の長さが25mmとすると、ΔTは1200Kとなる。即ち、全く熱が除去できない。しかし各パラメータは差し当たり変更できない。特に断面積を大きくするとより大きな力がかかり、早々に破断してしまう。
【0051】
材料の最適化により一定の前進は達せられる。例えば、銅・ベリリウム合金は熱伝導率を10倍に改善する。しかし、120KというΔtは依然として明らかに大きすぎる。従ってやはり熱経路の長さ及び断面積という幾何学的なサイズに手をつける必要がある。そのために今から2つの可能な改善方法を提示する。それらは組み合わせることもできる。
【0052】
図6は熱伝導性の第1の改善を行った実施形態の板ばね28の3次元図である。板ばね28は2枚の板ばね28、30を代表しているが、熱伝導を両方の板ばね28、30で改善するという好ましい態様ではなく一方の板ばね28、30だけにすることも原則的には考えられる。短辺側46a、46bでの熱伝導は問題ではない。ここでは板ばね28はいずれにせよ面的にそれぞれの軸受32、34に結合されている。曲げ領域28b~cでは断面積及び可動性をできるだけ変えないようにする。逆に剛性領域28aでは材料の厚さを増大させている。板ばね28の製造が複雑にならないように、好ましくはそのために追加の筋状材料片48a、48b(例えば筋状アルミニウム片)が貼付される。これは一方の側だけでも、好ましくは図のように両側でもよい。これは個別の部分としてでも、また不可分に結合した形でも実現できる。こうして、板ばね28全体の長さにわたっていた非常に薄い断面を持つ熱経路が元の全長から曲げ領域28b~cだけの長さにまで大幅に短縮される。上記の数値例では、それにより元の25mmが例えば僅か2mmになる。更に、熱伝導性の高い材料を用いるという追加の可能性が存在する。
【0053】
図7は、熱伝導性を改善する第2の可能な方法を説明する断面図において、板ばね28(ここでも両方の板ばね28、30を代表している)の一部を切り出して再び示している。この第2の改善は剛性領域28aではなく曲げ領域28b~cに関係している。剛性領域は、実施形態に応じて、図6で説明し且つ図7に引き継がれているように厚さを増大させてもよいし、そうしなくてもよい。代表して曲げ領域28bだけを示している。
【0054】
何度も述べたように、曲げ領域28bにおいて断面積を大きくすると曲げ力と寿命に負の作用が及ぶ。そうはせず、板ばね28は少なくとも曲げ領域28bにおいて、好ましくは全体にわたって、2重ばね50a~bと、熱伝導性の高いコア乃至は内部の熱伝導層52との結合体として仕上げられている。熱伝導層52は好ましくは非常に薄いグラファイト箔から成り、数値例では熱伝導率が1600W/(m*K)のときに厚さは0.025mmでもう十分であり得る。
【0055】
図8(a)~(b)は伸ばした状態と曲がった状態において曲げ領域28a内で作用する力を2つの略図で分かりやすく示している。真ん中の中立軸54は僅かな力しか受けず、その上と下では追加的な圧縮と引っ張りが作用する。従ってここではごく僅かな伸長作用しか生じない。文献を見ると、ある模範的なグラファイト箔について、曲げ半径が5mmで曲げ角度が90度ならサイクル数は10万回と報告されている。本発明に係る焦点調節装置のために必要とされる曲げ角度は数度の範囲にすぎず、しかも曲げ半径はより大きくできるから、サイクル数はもっと明らかに大きくなる。
【0056】
一方、グラファイト箔を中立軸54より外側に、又はそれどころか完全に外面に配置した場合、伸長が急激に過大となり、グラファイト箔が引きちぎれる。これに対し、中立軸54においてグラファイト箔が過度に酷使された場合、そこで破れが生じたとしてもそれは最小限の裂け目のみであり、しかもそれは2重ばね50a~bの材料により上及び下で橋絡される。
【0057】
図9は焦点調節装置の様々な形態における熱経路を比較するための表である。評価は熱伝導のみに限定し、対流、放射等の他の効果は考慮していない。この模範的な計算の基礎としたのはそれぞれ、平行する経路がない最も好条件の熱経路で、排出すべきエネルギー損失が1.5W、経路長が25mm、曲げ領域の長さが2mm、ばね厚が0.1mmというものである。各行において「領域:短」として2つの曲げ領域28b~c、30b~cが考慮され、「領域:長」として剛性領域28a、30aが考慮され、最終行はΔTの総和を示している。第1列は熱最適化を行わないばね鋼の形をした単純な実装に相当しており、ここではΔT=1164で熱はほとんど排出されない。第2列ではアルミニウムとの結合体が図6の剛性領域28b、30bで筋状材料片48a、48bとして用いられている。これにより剛性領域28b、30bの寄与分は大幅に低減するが、全体ではΔT=157であり、まだ大きすぎる。一方、第3列は、第1列の単純な実施形態に対応しているが、今度は熱伝導性の高いベリリウム・銅合金を用いており、全ての寄与分が10倍改善されたものの、全体ではΔT=116であり、これも同じく十分ではない。第4列は第2列と第3列の対策を組み合わせたもので、それにより既にDT=19を達成している。第5列では図6及び7に提示した2つの対策を実施している。即ち、剛性領域28b、30bの厚さが筋状材料片48a、48bとしてのアルミニウムで増大させられ、且つ、少なくとも曲げ領域28b~c、30b~c、又は板ばね28、30全体が、グラファイト箔により形成された熱伝導層52を有する2重ばね50a~bとして実装されている。これにより更に2倍改善されてΔT=11となった。ここでベリリウム・銅合金の使用がそもそもまだ可能であるが、それすら必要ではなかった。
【0058】
最後に、図10はセンサ10をベルトコンベア56付近に設置して利用できることを示している。ベルトコンベア56は、矢印60で示したように、物体58をセンサ10の検出領域12を通過するように搬送する。物体58は表面にコード領域62を持つことができる。カメラ10の任務は物体58の特性を捕らえることであり、更にコードリーダとしての好ましい使用においては、コード領域62を認識し、そこに付されたコードを読み取り、復号して、その都度対応する物体58に割り当てることである。物体の側面に付されたコード領域64をも認識するために、好ましくは追加のカメラ10(図示せず)を異なる視点から使用する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10