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  • 特許-船舶の甲板構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】船舶の甲板構造
(51)【国際特許分類】
   B63B 3/48 20060101AFI20241008BHJP
   E04F 15/18 20060101ALI20241008BHJP
   E04F 15/12 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B63B3/48
E04F15/18 601D
E04F15/12 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023081985
(22)【出願日】2023-05-18
【審査請求日】2023-05-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 出願人である株式会社神戸タフ興産が、令和4年11月19日に、常石造船株式会に対し、その社内において、「船舶の甲板構造」に係る発明を図面を用いて開示した。
(73)【特許権者】
【識別番号】514225179
【氏名又は名称】株式会社神戸タフ興産
(74)【代理人】
【識別番号】100082832
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 邦章
(72)【発明者】
【氏名】山岡 丘人
(72)【発明者】
【氏名】戸江 武久
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-77702(JP,A)
【文献】特開昭62-171955(JP,A)
【文献】特開2004-249805(JP,A)
【文献】特開2016-26948(JP,A)
【文献】特開2016-11230(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0104377(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第115465402(CN,A)
【文献】特開2014-227067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 3/48
E04F 15/18
E04F 15/12
C04B 24/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の甲板の鋼板の上に、所定量の天然ゴムのラテックス10~15重量%、脱脂粉乳0.1~1.0重量%を混合したセルフレベリング材を所要厚さに敷設したことを特徴とする船舶の甲板構造。
【請求項2】
セルフレベリング材をセメント系として、天然ゴムのラテックス10~15重量%、脱脂粉乳0.1~1.0重量%を混合したことを特徴とする請求項1に記載の船舶の甲板構造。
【請求項3】
セルフレベリング材水硬性成分8~15重量%、無機材8~15重量%、骨材40~60重量%に清水10~15重量%を装填して、凝結促進剤、凝結遅延剤、流動化剤、増粘剤、消泡剤から選択される1種以上を少量添加し、天然ゴムのラテックス10~15重量%、脱脂粉乳0.1~1.0重量%を混合したものであることを特徴とする請求項1に記載の船舶の甲板構造。
【請求項4】
船舶の甲板の鋼板にセルフレベリング材を敷設した上に、仕上げのグラウト材をセルフレベリング材に清水に水硬性成分のポルトラントセメント、無機材の高炉スラグ、骨材の珪砂に凝結促進剤、凝結遅延剤、流動化剤、増粘剤、消泡剤を1種以上をそれぞれ少量を添加して敷設したことを特徴とする請求項に記載の船舶の甲板構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶分野における船舶の甲板構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶の居住区域の船舶騒音について、遮音材の設置および防音を重み付き音響透過損失で測定することが義務付けられ、隣接する区域間の境界における仕切り材の防音性能の新騒音規則が適用されることになった。
【0003】
そのため、特開2016-107955号公報のように船舶用遮音床材について、一般構造用圧延鋼材の甲板にポリマーセメント系の接着層と、ガラス繊維の吸音層と、面密度を向上させたデッキコンポジションの遮音層と、ポリマーセメント系の接着層の仕上層を積層して新たな騒音コードの規制値に適合できるようにしたものが知られている。
【0004】
しかし、船舶の床材に接着層や吸音層、遮音層等の耐火層を敷設しているが、床材の鋼板が平坦ではなく、特開2004-249805公報のように床材の凸凹状に対して刷毛やこて等で塗布しているもので、手間と時間がかかるものであった。セルフレベリング材を流し込んで敷設することが知られているが、床材の鋼板との接着性、耐久性がよくないため、プライマーの下地材を塗布して接着力を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-107955号公報
【文献】特開2004-249805公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようにセルフレベリング材を敷設するにも、プライマーの下地材を刷毛やこて等で塗布しなければならないため、施工に手間と時間がかかっているとともに割れが生じるもので、手間がかからずに、容易に、短期間で割れの生じなく敷設できるようにすることが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような点に鑑みたもので、上記の課題を解決するために、船舶の甲板の鋼板の上に、所定量の天然ゴムのラテックス10~15重量%、脱脂粉乳0.1~1.0重量%を混合したセルフレベリング材を所要厚さに敷設したことを特徴とする船舶の甲板構造を提供するにある。
【0008】
また、セルフレベリング材をセメント系として、天然ゴムのラテックス10~15重量%、脱脂粉乳0.1~1.0重量%を混合したことを特徴とする船舶の甲板構造を提供するにある。
【0009】
さらに、セルフレベリング材水硬性成分8~15重量%、無機材8~15重量%、骨材40~60重量%に清水10~15重量%を装填して、凝結促進剤、凝結遅延剤、流動化剤、増粘剤、消泡剤から選択される1種以上を少量添加し、天然ゴムのラテックス10~15重量%、脱脂粉乳0.1~1.0重量%を混合したものであることを特徴とする船舶の甲板構造を提供するにある。
【0010】
またさらに、船舶の甲板の鋼板にセルフレベリング材を敷設した上に、仕上げのグラウト材をセルフレベリング材に清水に水硬性成分のポルトラントセメント、無機材の高炉スラグ、骨材の珪砂に凝結促進剤、凝結遅延剤、流動化剤、増粘剤、消泡剤を1種以上をそれぞれ少量を添加して敷設したことを特徴とする船舶の甲板構造を提供するにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1のように、船舶の甲板の鋼板の上に、所定量の天然ゴムのラテックス10~15重量%、脱脂粉乳0.1~1.0重量%を混合したセルフレベリング材を所要厚さに敷設したことによって、下地にプライマーを刷毛やこて等で塗布することなく、セルフレベリング材を所要厚さに流し込んで鋼板に強固に接着することができ、割れが生じずに、所要の厚さの平滑状に仕上げられ、短時間で、左官いらずで手間がかからずに敷設することができ、船舶の居住区域の船舶騒音の遮音、制振、防火の規格に適合する構造に施工できる。
【0012】
また、特許請求の範囲の請求項2のように、セルフレベリング材をセメント系として、セルフレベリング材に天然ゴムのラテックス10~15重量%、脱脂粉乳0.1~1.0重量%を混合したことによって、セルフレベリング材のフロー値を所要値にできて、円滑に所要の厚さの平滑状に敷設できる。
【0013】
さらに、特許請求の範囲の請求項3のように、セルフレベリング材水硬性成分8~15重量%、無機材8~15重量%、骨材40~60重量%に清水10~15重量%を装填して、凝結促進剤、凝結遅延剤、流動化剤、増粘剤、消泡剤から選択される1種以上を少量添加し、天然ゴムのラテックス10~15重量%、脱脂粉乳0.1~1.0重量%を混合したことによって、上記したように下地にプライマーを刷毛やこて等で塗布することなく、セルフレベリング材を所要厚さに流し込んで鋼板に強固に接着することができて、割れが生じなく、所要の厚さの均一状に仕上げられ、短時間に手間がかからずに施工することができる。
【0014】
さらにまた、特許請求の範囲の請求項4のように、船舶の甲板の鋼板にセルフレベリング材を敷設した上に、仕上げのグラウト材をセルフレベリング材に清水に水硬性成分のポルトラントセメント、無機材の高炉スラグ、骨材の珪砂に凝結促進剤、凝結遅延剤、流動化剤、増粘剤、消泡剤を1種以上をそれぞれ少量を添加して敷設したことによって、セルフレベリング材を敷設した上に仕上げのグラウト材を短時間で、左官いらずで手間がかからずに敷設することができ、船舶の居住区域の船舶騒音の遮音、制振、防火の規格に適合する構造に施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例の一部省略した甲板構造の側断面図、
図2】同上のセルフレベリング材の攪拌作成用の概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の船舶の甲板構造は、船舶の甲板の鋼板の上に、所定量の天然ゴムのラテックス10~15重量%、脱脂粉乳0.1~1.0重量%を混合したセルフレベリング材を所要厚さに敷設したことを特徴としている。
【0017】
セルフレベリング材2は、水硬性成分8~15重量%、無機材8~15重量%、骨材40~60重量%を清水10~15重量%に装填して、凝結促進剤、凝結遅延剤、流動化剤、増粘剤、消泡剤から選択される1種以上を少量添加し、天然ゴムのラテックス10~15重量%、脱脂粉乳0.1~1.0重量%を混合することが好ましい。
【0018】
上記セルフレベリング材2は、セメント系が好ましく、数十~数百μmの所定の粉末状で、水硬性成分のポルトラントセメント7~10重量%、アルミナセメント1~3重量%、無機材として高炉スラグ8~12重量%、骨材として珪砂40~60重量%、凝結促進剤、凝結遅延剤、流動化剤、増粘剤、消泡剤を1種以上をそれぞれ少量を配合して使用することができる。
【0019】
このようにセルフレベリング材2に、天然ゴムのラテックス、脱脂粉乳を混合することによって、下地にプライマーを刷毛やこて等で塗布することなく、セルフレベリング材2を所要のフロー値として所要厚さに流し込めて、鋼板1への接着力を増強させることができ、図1のように船舶の甲板の鋼板1の上にセルフレベリング材2を平滑状に敷設施工することができる。
【0020】
天然ゴムのラテックスは、ゴムの木をはじめとした天然の木から得られ、ゴムの木の樹液、ゴムの木の樹液を加工した伸縮性の高いゴムで、セルフレベリング材2に天然ゴムのラテックス10~15重量%を混合して鋼板1への接着力を増強し、割れの発生を防止することができる。
【0021】
上記脱脂粉乳は、粉乳の一種で、遠心分離機で牛乳から脂肪分を取り除き、ほぼ水分を除去した粉末状にしたもので、セルフレベリング材2に0.1~1.0重量%を混合して有効にフロー値を制御することができた。
【0022】
天然ゴムのラテックスを混入したセルフレベリング材2に所定量の脱脂粉乳を混入すると、骨材の沈降や上面の浮き水を生じることなく、天然ゴムのラテックスが粒状となるのを防止でき、セルフレベリング材2を所要のフロー値にできて、刷毛やこて等を使用することなく、左官いらずで、円滑に流し込むようにできて、所要の厚さの平滑状に敷設できる。
【0023】
たとえば、図2のようにセルフレベリング材2として、攪拌器3に清水を入れて水硬性成分、無機材を装填して攪拌し、ついで骨材を装填し、凝結促進剤、凝結遅延剤、流動化剤、増粘剤、消泡剤をそれぞれ少量を添加し、天然ゴムのラテックスおよび脱脂粉乳を混入して十分に攪拌してフロー値が190mm以上のものを得ることができる。
【0024】
そして、図1のように船舶の甲板の鋼板1の上にセルフレベリング材2を流し込んで、所要の厚さに敷設することができる。その表面にグラウト材4を敷設して仕上げることが好ましい。グラウト材4も、セルフレベリング材2と同様に清水に水硬性成分のポルトラントセメント、無機材の高炉スラグ、骨材の珪砂に、凝結促進剤、凝結遅延剤、流動化剤、増粘剤、消泡剤を1種以上をそれぞれ少量を添加して、所要量の天然ゴムのラテックスおよび脱脂粉乳を混合して流し込めて敷設するものとできる。
【0025】
このように船舶の甲板の鋼板1にセルフレベリング材2を所要の厚さに敷設して、遮音、制振、防火の規格に適合するように施工できる。なお、上記した本発明の趣旨にもとづいて適宜に当業者にとって変形態様を実施することができるものである。
【実施例
【0026】
図1図2は、本発明の実施例を示すもので、船舶の甲板の鋼板1の上に所要厚さにセルフレベリング材2を流し込んで敷設するようにしたものである。
【0027】
セルフレベリング材2は、下記の仕様どおりに、図2のように攪拌器3に清水6.5kgを注入し、粉末の水硬性成分のポルトラントセメント6.2kg、アルミナセメント0.7kg、無機の高炉スラグ6.16kgを装填して攪拌し、ついで骨材珪砂8号0.5kg、珪砂5号30kgを入れ、凝結促進剤220g、凝結遅延剤35g、流動化剤130g、増粘剤5g、消泡剤50gを添加し、天然ゴムのラテックス5.0kg、脱脂粉乳70gを混入し、骨材の沈降や上面の浮き水を生じることなく、十分に攪拌して、天然ゴムのラテックスが粒状となるのを防止して、フロー値が190mm以上のものとした。
【0028】
そして、図1のようにSS400の平鋼3.2mm厚さの鋼板1の試験体の上にセルフレベリング材2を7.8mm厚さに流し込み、円滑に平滑に敷設することができた。この試験結果は遮音、制振、防火の規格に適合できるものであった。
【0029】
セルフレベリング材の仕様

水硬性成分 ポルトラントセメント 6.2 kg
アルミナセメント 0.7 kg
無機 高炉スラグ 6.16kg
骨材 珪砂8号 0.5 kg
珪砂5号 30 kg
凝結促進剤 200g
20g
凝結遅延剤 35g
流動化剤 60g
増粘剤 5g
消泡剤 50g

清水 6.5 kg

天然ゴムのラテックス 5.0 kg
脱脂粉乳 70g
【0030】
なお、現場の船舶の甲板の鋼板1について、試験した結果、骨材の沈降や上面の浮きが生じることなく、凸凹状の床面を平滑な床に仕上げることができた。セルフレベリング材2が硬化した後は、収縮によるクラックが発生することもなかった。また、施工した翌日には軽歩行が可能であった。
【0031】
特に、セルフレベリング材2を短時間に乾燥可能に敷設できるため、新船にも、既存の船にも所定の規則に適合する甲板構造に施工することができる。
【0032】
なお、セルスレベリング材2に天然ゴムのラテックスとともに脱脂粉乳を添加すると、骨材の沈降や上面の浮きが生じることなく、セルフレベリング材2を所要のフロー値にできて、平滑状に流し込むことができて好ましい。
【0033】
このようにセルフレベリング材2は、刷毛やこて等を使用することなく、左官いらずとなるとともに、迅速かつ容易に流し込んで平滑状に敷設することができ、かつ下地用のプライマーを塗布することなく、鋼板1への接合力を増強することができ、セルフレベリング材2の割れの発生を防止することができる。また、天然ゴムのラテックスを10~15重量%混合するとより一層の効果を奏するようにできて好ましい。
【0034】
上記のように、船舶の甲板の鋼板1の上に所要厚さにセルフレベリング材2を敷設し、船舶の居住区域の船舶騒音の遮音、制振、防火の規格に適合する構造に施工できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、貨物船、客船等の船舶の居住区域や業務区域の甲板の居室、寝室、娯楽室、事務室、病護用等のホスピタル室の床等に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…鋼板 2…セルフレベリング材 4…攪拌器
【要約】      (修正有)
【課題】割れが生じずに、所要の厚さの平滑状に仕上げられ、短時間で、左官いらずで手間がかからずに敷設することができる船舶の甲板構造を提供する。
【解決手段】船舶の甲板の鋼板1の上に所定量の天然ゴムのラテックスを混合するとともに所定量の脱脂粉乳を混入したセルフレベリング材2を所要のフロー値として所要厚さに流し込んで、鋼板1と接着性よく敷設したものであり、下地にプライマーを刷毛やこて等で塗布することなく、鋼板1に強固に接着することができて、所要の厚さの平滑状に仕上げられ、短時間で手間がかからずに施工することができる。セルフレベリング材2にラテックス10~15重量%、脱脂粉乳0.1~1.0重量%を混合することが好ましい。
【選択図】図1
図1
図2