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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20241008BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20241008BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20241008BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20241008BHJP
   H10B 12/00 20230101ALI20241008BHJP
   H10B 41/70 20230101ALI20241008BHJP
   H10K 59/12 20230101ALI20241008BHJP
   H01L 21/363 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L27/088 331E
H01L29/78 618F
H01L29/78 620
H10B12/00 621Z
H10B12/00 671Z
H10B12/00 801
H10B41/70
H10K59/12
H01L21/363
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023093921
(22)【出願日】2023-06-07
(62)【分割の表示】P 2022018476の分割
【原出願日】2013-12-24
(65)【公開番号】P2023115050
(43)【公開日】2023-08-18
【審査請求日】2023-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2012288288
(32)【優先日】2012-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正弘
(72)【発明者】
【氏名】廣橋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】津吹 将志
(72)【発明者】
【氏名】太田 将志
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-86923(JP,A)
【文献】特開2011-119718(JP,A)
【文献】特開2011-86927(JP,A)
【文献】特開2012-134468(JP,A)
【文献】特開2012-134475(JP,A)
【文献】特開2011-141543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L29/78
H01L27/06-27/118
H01L21/312-21/475
H10B10/00-99/00
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタのゲート電極としての機能を有する第1の導電層と、
前記第1の導電層上に位置する第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層の上面と接する領域を有する第1の酸化物半導体層と、
前記第1の酸化物半導体層の上面と接する領域を有する第2の酸化物半導体層と、
前記第2の酸化物半導体層上に位置し、前記トランジスタのソース電極及びドレイン電極の一方としての機能を有する第2の導電層と、
前記第2の酸化物半導体層上に位置し、前記トランジスタのソース電極及びドレイン電極の他方としての機能を有する第3の導電層と、
前記第2の導電層上及び前記第3の導電層上に位置する第2の絶縁層と、を有し、
前記第1の絶縁層は、酸化シリコンを有し、
前記第2の酸化物半導体層は、c軸配向性を有する結晶部を有し、
前記第2の酸化物半導体層は、前記第1の酸化物半導体層よりも高い結晶性を有し、
前記第1の酸化物半導体層は、Inと、Gaと、Znとを有し、
前記第2の酸化物半導体層は、Inと、Gaと、Znとを有し、
前記第2の酸化物半導体層における水素の濃度は、前記第1の酸化物半導体層における水素の濃度よりも低い、半導体装置。
【請求項2】
トランジスタのゲート電極としての機能を有する第1の導電層と、
前記第1の導電層上に位置する第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層の上面と接する領域を有する第1の酸化物半導体層と、
前記第1の酸化物半導体層の上面と接する領域を有する第2の酸化物半導体層と、
前記第2の酸化物半導体層上に位置し、前記トランジスタのソース電極及びドレイン電極の一方としての機能を有する第2の導電層と、
前記第2の酸化物半導体層上に位置し、前記トランジスタのソース電極及びドレイン電極の他方としての機能を有する第3の導電層と、
前記第2の導電層上及び前記第3の導電層上に位置する第2の絶縁層と、を有し、
前記第1の絶縁層は、酸化シリコンを有し、
前記第2の酸化物半導体層は、c軸配向性を有する結晶部を有し、
前記第2の酸化物半導体層は、前記第1の酸化物半導体層よりも高い結晶性を有し、
前記第1の酸化物半導体層は、Inと、Gaと、Znとを有し、
前記第2の酸化物半導体層は、Inと、Gaと、Znとを有し、
前記第2の酸化物半導体層におけるシリコンの濃度は、前記第1の酸化物半導体層におけるシリコンの濃度よりも低い、半導体装置。
【請求項3】
トランジスタのゲート電極としての機能を有する第1の導電層と、
前記第1の導電層上に位置する第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層の上面と接する領域を有する第1の酸化物半導体層と、
前記第1の酸化物半導体層の上面と接する領域を有する第2の酸化物半導体層と、
前記第2の酸化物半導体層上に位置し、前記トランジスタのソース電極及びドレイン電極の一方としての機能を有する第2の導電層と、
前記第2の酸化物半導体層上に位置し、前記トランジスタのソース電極及びドレイン電極の他方としての機能を有する第3の導電層と、
前記第2の導電層上及び前記第3の導電層上に位置する第2の絶縁層と、を有し、
前記第1の絶縁層は、酸化シリコンを有し、
前記第2の酸化物半導体層は、c軸配向性を有する結晶部を有し、
前記第2の酸化物半導体層は、前記第1の酸化物半導体層よりも高い結晶性を有し、
前記第1の酸化物半導体層は、Inと、Gaと、Znとを有し、
前記第2の酸化物半導体層は、Inと、Gaと、Znとを有し、
前記第2の酸化物半導体層における水素の濃度は、前記第1の酸化物半導体層における水素の濃度よりも低く、
前記第2の酸化物半導体層におけるシリコンの濃度は、前記第1の酸化物半導体層におけるシリコンの濃度よりも低い、半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一において、
前記第1の酸化物半導体層におけるInとGaとZnとの組成比と、前記第2の酸化物半導体層におけるInとGaとZnとの組成比とは、互いに異なる、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する発明は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本発明は、
プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター
)に関する。特に、本発明は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、それらの駆
動方法、または、それらの製造方法に関する。例えば、本発明は、酸化物半導体を有する
半導体装置、表示装置、または、発光装置に関する。
【0002】
なお、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装
置全般を指し、電気光学装置、半導体回路、表示装置、発光装置及び電子機器は全て半導
体装置である。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体膜を用いてトランジスタを構成する技術が注
目されている。該トランジスタは、集積回路(IC)や画像表示装置(単に表示装置とも
表記する)のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能は半導
体膜としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として半導体特性
を示す金属酸化物(酸化物半導体)が注目されている。
【0004】
例えば、酸化物半導体として、In、Zn、Ga、Snなどを含む非晶質酸化物を用いて
トランジスタを作製する技術が特許文献1で開示されている。
【0005】
酸化物半導体を用いたトランジスタは、比較的容易にトランジスタ特性を得られるものの
、酸化物半導体膜が非晶質化しやすく物性が不安定であるため、信頼性の確保が困難であ
る。
【0006】
一方、結晶性酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、非晶質酸化物半導体膜を用いたト
ランジスタと比較して、優れた電気特性及び信頼性を有することが報告されている(非特
許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-165529号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Shunpei Yamazaki, Jun Koyama, Yoshitaka Yamamoto and Kenji Okamoto, ”Research, Development, and Application of Crystalline Oxide Semiconductor” SID 2012 DIGEST pp183-186
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一態様は、酸化物半導体を含み、信頼性の高い半導体装置を提供することを課題
の一とする。
【0010】
または、本発明の一態様は、オフ電流の低いトランジスタなどを提供することを課題の一
とする。または、本発明の一態様は、ノーマリーオフ特性を有するトランジスタなどを提
供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、しきい値電圧の変動や劣化の
少ないトランジスタなどを提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、
消費電力の低い半導体装置などを提供することを課題とする。または、本発明の一態様は
、目に優しい表示装置などを提供することを課題とする。または、本発明の一態様は、透
明な半導体層を用いた半導体装置などを提供することを課題とする。または、本発明の一
態様は、新規な半導体装置などを提供することを課題とする。
【0011】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題
は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図
面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
開示する発明の一態様は、酸化物半導体層と、酸化物半導体層に接する絶縁層と、を含み
、酸化物半導体層は、10nm以下のサイズの結晶を有する第1の領域と、第1の領域を
挟んで絶縁層と重なり、c軸が酸化物半導体層の表面の法線ベクトルと平行な方向に揃っ
た結晶部を有する第2の領域と、を含む半導体装置である。より具体的には、例えば以下
の構成を有する半導体装置である。
【0013】
本発明の一態様は、酸化物半導体層と、酸化物半導体層に接する絶縁層と、酸化物半導体
層と重なるゲート電極層と、酸化物半導体層と電気的に接続するソース電極層及びドレイ
ン電極層と、を有し、酸化物半導体層は、10nm以下のサイズの結晶を有する第1の領
域と、第1の領域を挟んで絶縁層と重なり、c軸が酸化物半導体層の表面の法線ベクトル
と平行な方向に揃った結晶部を有する第2の領域と、を含む半導体装置である。
【0014】
上記において、第1の領域と、第2の領域と、は組成の異なる酸化物半導体を有していて
もよい。
【0015】
また、本発明の一態様は、第1の絶縁層と、第1の絶縁層の上方の酸化物半導体層と、酸
化物半導体層の上方の第2の絶縁層と、酸化物半導体層と重なるゲート電極層と、酸化物
半導体層と電気的に接続するソース電極層及びドレイン電極層と、を有し、酸化物半導体
層は、10nm以下のサイズの結晶を有する第1の領域と、第1の領域を挟んで第1の絶
縁層と重なり、c軸が酸化物半導体層の表面の法線ベクトルと平行な方向に揃った結晶部
を有する第2の領域と、第2の領域と第2の絶縁層との間に位置し、10nm以下のサイ
ズの結晶を有する第3の領域と、を含む半導体装置である。
【0016】
また、上記において、第1の領域と、第2の領域と、は組成の異なる酸化物半導体を有し
ていてもよく、第2の領域と、第3の領域と、は組成の異なる酸化物半導体を有していて
もよい。
【0017】
上記の半導体装置において、第3の領域は、電子線のビーム径を1nmφ以上10nmφ
以下に収束させた極微電子線回折によって、円周状に分布した複数のスポットが観察され
、且つ、電子線のビーム径が300nmφ以上である透過型電子顕微鏡を用いた制限視野
電子線回折では、ハローパターンが観察されることがある。
【0018】
また、上記の半導体装置において、第1の領域は、電子線のビーム径を1nmφ以上10
nmφ以下に収束させた極微電子線回折によって、円周状に分布した複数のスポットが観
察され、且つ、電子線のビーム径が300nmφ以上である透過型電子顕微鏡を用いた制
限視野電子線回折では、ハローパターンが観察されることがある。
【0019】
また、上記の半導体装置において、第2の領域の膜密度は、第1の領域の膜密度よりも高
いことが好ましい。
【0020】
また、上記の半導体装置において、第2の領域にチャネルが形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一態様の半導体装置に含まれる積層構造の一例を示す模式図。
図2】スパッタリング用ターゲットから剥離するスパッタリング粒子の様子を示した模式図。
図3】AC電源を用いたスパッタリング時の放電状態を説明する図。
図4】基板加熱時にスパッタリング粒子が被成膜面に到達する様子を示した模式図。
図5】室温成膜時にスパッタリング粒子が被成膜面に到達する様子を示した模式図。
図6】本発明の一態様に係る酸化物半導体の結晶構造を説明する図。
図7】スパッタリング用ターゲットの作製方法の一例を示すフロー図。
図8】本発明の一態様の半導体装置に含まれる積層構造の一例を示す模式図、及びそのバンド構造を示す図。
図9】実施の形態に係る、トランジスタの構成例を説明する図。
図10】実施の形態に係る、トランジスタの作製方法例を説明する図。
図11】実施の形態に係る、トランジスタの構成例を説明する図。
図12】本発明の一態様の半導体装置の回路図。
図13】本発明の一態様の半導体装置の回路図及び概念図。
図14】実施の形態に係る表示パネルの構成を説明する図。
図15】実施の形態に係る電子機器のブロック図を説明する図。
図16】実施の形態に係る電子機器の外観図を説明する図。
図17】ナノ結晶酸化物半導体層の断面TEM像及び極微電子線回折パターンを示す図。
図18】ナノ結晶酸化物半導体層の平面TEM像及び制限視野電子線回折パターンを示す図。
図19】電子線回折強度の分布の概念図。
図20】石英ガラス基板の極微電子線回折パターンを示す図。
図21】ナノ結晶酸化物半導体層の極微電子線回折パターンを示す図。
図22】ナノ結晶酸化物半導体層の断面TEM像を示す図。
図23】ナノ結晶酸化物半導体層のX線回折分析結果を示す図。
図24】計算に用いた酸化物半導体層の結晶構造を示す図。
図25】水素添加による結晶状態への影響を示す計算結果。
図26】動径分布関数による計算結果。
図27】酸化物半導体層の極微電子線を用いた極微電子線回折パターンを示す図。
図28】酸化物半導体層のCPM測定結果を示す図。
図29】酸化物半導体層のCPM測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以
下に示す説明に限定されず、その形態及び態様を様々に変更し得ることは、当業者であれ
ば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈
されるものではない。
【0024】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、膜の厚さ、又は領域は、明瞭
化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0025】
なお、本明細書等において、第1、第2等として付される序数詞は、便宜上用いるもので
あり、工程順又は積層順等を示すものではない。また、本明細書等において発明を特定す
るための事項として固有の名称を示すものではない。
【0026】
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度
で配置されている状態をいう。従って、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「
垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。
従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0027】
また、本明細書等において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表
す。
【0028】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置に含まれる、酸化物半導体層について、
図1を参照して説明する。
【0029】
<酸化物半導体層の積層構造>
図1(A)は、本発明の一態様の半導体装置に含まれる積層構造の一例を示す模式図であ
る。本発明の一態様の半導体装置は、絶縁層102上に接して、酸化物半導体層104を
有する。
【0030】
酸化物半導体層104は、第1の領域104aと、第1の領域104aを挟んで絶縁層1
02と重なる第2の領域104bとを有する。
【0031】
酸化物半導体層104において、第1の領域104aと第2の領域104bとは、共に結
晶性を有する領域であり、且つ、互いに異なる結晶性を有する。より具体的には、第2の
領域104bは、第1の領域104aよりも高い結晶性を有している。
【0032】
結晶性の酸化物半導体としては、例えば、単結晶酸化物半導体、CAAC-OS(C A
xis Aligned Crystalline Oxide Semiconduc
tor)、多結晶を含む酸化物半導体(以下、多結晶酸化物半導体)、微結晶(ナノ結晶
ともよぶ)を含む酸化物半導体(以下、ナノ結晶酸化物半導体)が挙げられる。
【0033】
本実施の形態の酸化物半導体層104において、第1の領域104aは、例えば、1nm
以上10nm以下のサイズの結晶(ナノ結晶(nc:nano crystal))を含
むことが好ましい。
【0034】
ナノ結晶酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導体膜と比較して、膜密度が高く緻密な膜で
ある。よって、ナノ結晶を含む酸化物半導体層104の第1の領域104aは、非晶質酸
化物半導体膜と比較して欠陥準位密度が低減された領域である。
【0035】
なお、本明細書において非晶質酸化物半導体膜とは、膜中における原子配列が不規則であ
り、結晶成分を有さない酸化物半導体膜である。微小領域においても結晶部を有さず、膜
全体が完全な非晶質構造の酸化物半導体膜が典型である。
【0036】
第2の領域104bは、c軸が被形成面の法線ベクトルまたは酸化物半導体層104の表
面の法線ベクトルに平行な方向に揃っている結晶部を有することが好ましい。このような
酸化物半導体膜の一例としては、CAAC-OS膜がある。
【0037】
CAAC-OS膜は、複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つであり、ほとんどの結
晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。したがってCAAC-
OS膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満又は3nm未満の立方体内
に収まる大きさの場合も含まれる。また、CAAC-OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM
:Transmission Electron Microscope)によって観察
すると、結晶部同士の明確な境界、すなわち結晶粒界(グレインバウンダリー)を確認す
ることができない。そのため、CAAC-OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が
起こりにくいといえる。
【0038】
CAAC-OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観察
)すると、結晶部において金属原子が層状に配列していることを確認することができる。
金属原子の各層は、CAAC-OS膜の膜を形成する面(被形成面)または、上面の凹凸
を反映した形状であり、CAAC-OS膜の被形成面又は上面と平行に配列する。
【0039】
一方、CAAC-OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面TE
M観察)すると、結晶部において金属原子が三角形状または六角形状に配列していること
が確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない
【0040】
断面TEM観察及び平面TEM観察により、CAAC-OS膜の結晶部は配向性を有して
いることがわかる。
【0041】
CAAC-OS膜に対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)装
置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnOの結晶を有するCAAC-OS膜
のout-of-plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが
現れる場合がある。このピークは、InGaZnOの結晶の(009)面に帰属される
ことから、CAAC-OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面又は上面に概略
垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0042】
一方、CAAC-OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin-pl
ane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは
、InGaZnOの結晶の(110)面に帰属される。InGaZnOの単結晶酸化
物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)と
して試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと(110)面と等価な結晶面に帰
属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC-OS膜の場合は、2θを56
°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
【0043】
以上のことから、CAAC-OS膜では、異なる結晶部間ではa軸及びb軸の配向は不規
則であるが、c軸配向性を有し、且つc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平行な
方向を向いていることがわかる。したがって、前述の断面TEM観察で確認された層状に
配列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
【0044】
なお、結晶部は、CAAC-OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を行
った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC-OS膜の被形成面又は
上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。したがって、例えば、CAAC-OS膜の
形状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC-OS膜の被形成
面又は上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
【0045】
また、CAAC-OS膜中の結晶化度が均一でなくてもよい。例えば、CAAC-OS膜
の結晶部がCAAC-OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上面近
傍の領域は、被形成面近傍の領域よりも結晶化度が高くなることがある。また、CAAC
-OS膜に不純物を添加する場合、不純物が添加された領域の結晶化度が変化し、部分的
に結晶化度の異なる領域が形成されることもある。
【0046】
なお、InGaZnOの結晶を有するCAAC-OS膜のout-of-plane法
による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れ
る場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC-OS膜中の一部にc軸配向性を
有さない結晶が含まれることを示している。CAAC-OS膜は2θが31°近傍にピー
クを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0047】
CAAC-OS膜は、ナノ結晶酸化物半導体膜よりもさらに膜密度が高く緻密な膜である
。よって、CAAC-OSを含む酸化物半導体層104の第2の領域104bは、ナノ結
晶を含む第1の領域104aと比較してさらに欠陥準位密度が低減された領域である。
【0048】
本実施の形態で示す酸化物半導体層104は、欠陥準位密度の低減された酸化物半導体で
あるナノ結晶を含む第1の領域104aと、ナノ結晶酸化物半導体よりもさらに欠陥準位
密度の低減された酸化物半導体であるCAAC-OSを含む第2の領域104bと、を有
する。
【0049】
酸化物半導体層を用いた半導体装置において、信頼性の向上のためにはチャネルとして機
能する酸化物半導体層およびその界面の欠陥準位を低減する必要がある。特に、酸化物半
導体層を用いたトランジスタのしきい値電圧のマイナス方向への変動は、チャネルとして
機能する酸化物半導体層及びその界面の酸素欠損に起因する欠陥準位が原因であると考え
られる。
【0050】
そこで、本実施の形態に示すように、欠陥準位の低減された領域を含む酸化物半導体層1
04をトランジスタに用いることで、当該トランジスタの、可視光や紫外光の照射による
電気特性の変動を低減することが可能である。よって、当該トランジスタの信頼性を向上
させることができる。
【0051】
また、酸化物半導体層104をトランジスタに用いる場合、より欠陥準位の低減されたC
AAC-OSを含む第2の領域104bをトランジスタの主な電流経路(チャネル)に適
用することが好適である。また、第2の領域104bがトランジスタの主な電流経路とし
て機能する場合には、絶縁層102と第2の領域104bとの界面に、第1の領域104
aを有することで、チャネルと絶縁層102との界面に欠陥準位が形成されることを抑制
する効果も奏する。
【0052】
また、酸化物半導体層104において、第2の領域104bが電流の主な経路として機能
する場合であっても、第1の領域104aにも一定量の電流が流れる場合がある。本実施
の形態で示す酸化物半導体層104は、第1の領域104aにおいても欠陥準位密度が低
減されたナノ結晶酸化物半導体を含むため、第1の領域104aが非晶質酸化物半導体で
ある場合と比較して、信頼性を向上させることができる。
【0053】
なお、本発明の一態様の半導体装置に含まれる積層構造は、図1(A)の構成に限られな
い。例えば、図1(B)に示すように、酸化物半導体層114上に絶縁層106を有する
構成としてもよい。
【0054】
図1(B)において絶縁層106の下層に位置する酸化物半導体層114は、CAAC-
OSを含む第2の領域114b上にナノ結晶を含む第1の領域114aを有している。換
言すると、図1(B)においても図1(A)と同様に、第1の領域114aと、第1の領
域114aを挟んで絶縁層106と重なる第2の領域114bとを有する。
【0055】
または、図1(C)に示すように、絶縁層102上の酸化物半導体層124と、酸化物半
導体層124上の絶縁層106と、を有する構成において、酸化物半導体層124が、ナ
ノ結晶を含む第1の領域124aと、第1の領域124aを挟んで絶縁層102と重なり
、CAAC-OSを含む第2の領域124bと、第2の領域124bと絶縁層106との
間に位置し、ナノ結晶を含む第3の領域124cと、を含む積層構造としてもよい。
【0056】
図1(B)に示す酸化物半導体層114及び図1(C)に示す酸化物半導体層124は、
図1(A)と同様に、ナノ結晶を含む領域及びCAAC-OSを含む領域を有し、欠陥準
位の低減された酸化物半導体層である。よって、このような酸化物半導体層をトランジス
タに適用することで、電気特性の変動が低減された、信頼性の高いトランジスタとするこ
とができる。
【0057】
また、図1(A)と同様に、図1(B)に示す積層構造においては、CAAC-OSを含
む第2の領域114bと絶縁層106との間にナノ結晶を含む第1の領域114aが設け
られている。また、図1(C)に示す積層構造においてはCAAC-OSを含む第2の領
域124bと絶縁層102との間にナノ結晶を含む第1の領域124aが設けられ、CA
AC-OSを含む第2の領域124bと絶縁層106との間にナノ結晶を含む第3の領域
124cが設けられている。このような構成とすることで、酸化物半導体層114を含む
トランジスタにおいて、第2の領域114bをチャネルとして機能させた場合に、酸化物
半導体層114と接する絶縁層106と、チャネルとが直接接することを抑制することが
できる。また、酸化物半導体層124を含むトランジスタにおいて、第2の領域124b
をチャネルとして機能させた場合に、酸化物半導体層124と接する絶縁層102または
絶縁層106と、チャネルとが直接接することを抑制することができる。これにより、チ
ャネルの界面に欠陥準位が形成されることを防ぐことができる。よって、トランジスタの
信頼性を向上させることができる。
【0058】
なお、図1に示す酸化物半導体層104、114、124は、単結晶領域を含んでいても
よい。又は、非晶質領域を含んでいてもよい。
【0059】
例えば、図1(A)において、酸化物半導体層104は、第2の領域104b上に非晶質
領域を含んでいてもよい。又は、図1(B)において、酸化物半導体層114は、第2の
領域114bの下層に、非晶質領域を含んでいてもよい。
【0060】
また、図1(A)に示す酸化物半導体層104に含まれる第1の領域104aと第2の領
域104bとは、単層の膜において、結晶性の異なる領域を含ませてもよいし、結晶性の
異なる膜を積層させた構成としてもよい。すなわち、本明細書等において、特別な記載の
ない限り、「領域」の用語は、「層」と読み替えることができる。例えば、酸化物半導体
層104は、ナノ結晶を含む第1の酸化物半導体層と、CAAC-OSを含む第2の酸化
物半導体層との積層構造としてもよい。
【0061】
なお、酸化物半導体層104を、ナノ結晶を含む第1の酸化物半導体層と、CAAC-O
Sを含む第2の酸化物半導体層との積層構造とする場合、第1の酸化物半導体層と第2の
酸化物半導体層を構成する金属元素は同一であってもよいし、異なる金属元素を含んでい
てもよい。また、同一の金属元素を含む場合、その組成は同一であってもよいし、異なっ
ていてもよい。酸化物半導体層114及び酸化物半導体層124についても同様である。
【0062】
本実施の形態で示す酸化物半導体層は、電流の主な経路として機能するCAAC-OSを
含む領域と絶縁層との界面に、ナノ結晶を含む領域を有する。よって、当該酸化物半導体
層を含むトランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0063】
なお、本実施の形態で示す酸化物半導体層は、例えば、トランジスタの活性層として構成
することができるが、本発明の実施の形態は、これに限定されない。本実施の形態で示す
酸化物半導体層は、様々な素子の一部として構成することができる。例えば、本実施の形
態で示す酸化物半導体層は、抵抗素子の一部として構成することが可能である。その抵抗
素子を用いて、保護回路を構成することができる。または、例えば、本実施の形態で示す
酸化物半導体層は、容量素子の電極の一部として構成することも可能である。その容量素
子は、画素の中の保持容量として構成することも可能であるし、駆動回路の中の容量素子
として構成することも可能である。本実施の形態で示す酸化物半導体層を、トランジスタ
、容量素子、または、抵抗素子として構成する場合、これらの素子に含まれる酸化物半導
体層を同時に形成してもよい。その場合、プロセス工程数を削減することが出来るため好
ましい。なお、本実施の形態で示す酸化物半導体層を、容量素子、または、抵抗素子とし
て構成する場合、抵抗値を下げるために、水素などを膜中に導入することも可能である。
そのため、窒化珪素膜などの水素を含む膜を、本実施の形態で示す酸化物半導体層と接す
るようにして、本実施の形態で示す酸化物半導体層の抵抗値を下げることも可能である。
【0064】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0065】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で示した酸化物半導体層に含まれる結晶部の成膜に関し
図2乃至図6を参照して説明する。但し、以下に説明する成膜モデルはあくまでも一考
察であり、本発明の実施の形態は以下のモデルに限定されるものではないことを付記する
【0066】
<結晶部の成膜モデル>
図2(A)は、酸化物半導体層の成膜において、スパッタリング用ターゲット1000に
イオン1001が衝突し、スパッタリング粒子1002が剥離する様子を示した模式図で
ある。図2では、スパッタリング粒子1002が六角柱状であって、六角形の面がa-b
面と平行な面である場合、又はスパッタリング粒子が三角柱状であって、三角形の面がa
-b面と平行な面である場合を例に図示している。その場合、六角形の面と垂直な方向が
c軸方向である(図2(B)参照。)。なお、三角柱状の場合も同様である。スパッタリ
ング粒子1002は、用いる酸化物半導体の種類によっても異なるが、a-b面と平行な
面の直径(円相当径)が1nm以上30nm以下、または1nm以上10nm以下程度と
なる。なお、イオン1001は、酸素の陽イオンを用いる。また、酸素の陽イオンに加え
て、アルゴンの陽イオンを用いてもよい。なお、アルゴンの陽イオンに代えて、その他希
ガスの陽イオンを用いてもよい。
【0067】
イオン1001として酸素の陽イオンを用いることで、成膜時のプラズマダメージを軽減
することができる。従って、イオン1001がスパッタリング用ターゲット1000の表
面に衝突した際に、スパッタリング用ターゲット1000の結晶性が低下すること、また
は非晶質化することを抑制できる。
【0068】
剥離されたスパッタリング粒子1002は、正に帯電させることが好ましい。ただし、ス
パッタリング粒子1002が、正に帯電するタイミングは特に問わない。具体的には、ス
パッタリング粒子1002がプラズマに曝されることで正に帯電する場合がある。または
、イオン1001の衝突時に電荷を受け取ることで正に帯電する場合がある。または、酸
素の陽イオンであるイオン1001がスパッタリング粒子1002の側面、上面または下
面に結合することで正に帯電する場合がある。
【0069】
スパッタリング粒子1002は、多角形状の面における角部に正の電荷を有する。多角形
状の面の角部に正の電荷を有することで、正の電荷同士が反発し合い、平板状の形状を維
持することができる。
【0070】
スパッタリング粒子1002の多角形状の面における角部が、正の電荷を有するためには
、直流(DC)電源を用いることが好ましい。なお、高周波(RF)電源、交流(AC)
電源を用いることもできる。ただし、RF電源は、大面積の基板へ成膜可能なスパッタリ
ング装置への適用が困難である。また、以下に示す観点からAC電源よりもDC電源が好
ましいと考えられる。
【0071】
AC電源を用いた場合、隣接するターゲットが互いにカソード電位とアノード電位を繰り
返す。図3(A)に示す期間Aでは、図3(B1)に示すようにターゲット1がカソード
として機能し、ターゲット2がアノードとして機能する。また、図3(A)に示す期間B
では、図3(B2)に示すようにターゲット1がアノードとして機能し、ターゲット2が
カソードとして機能する。期間Aと期間Bとを合わせると、20乃至50μ秒であり、期
間Aと期間Bを一定周期で繰り返している。
【0072】
スパッタリング粒子1002は、正に帯電している場合、互いに反発し合うことにより、
平板状の形状を維持することができる。ただし、AC電源を用いた場合、瞬間的に電界が
かからない時間が生じるため、スパッタリング粒子1002に帯電していた電荷が消失し
て、スパッタリング粒子の構造が崩れてしまうことがある(図3(C)参照。)。従って
、AC電源を用いるよりも、DC電源を用いる方が好ましいことがわかる。
【0073】
≪CAAC-OSの成膜≫
以下に、スパッタリング粒子の被成膜面に堆積する様子を、図4を用いて説明する。なお
図4は、基板を加熱しながら成膜した場合を示す。
【0074】
図4より、基板を加熱している場合、スパッタリング粒子1002は被成膜面1003に
おいて、他のスパッタリング粒子1002が堆積していない領域に移動し、マイグレーシ
ョンすることで既に堆積している粒子の横に結合することで堆積していく。このように、
スパッタリング粒子1002は、平板面が上を向くように敷き詰められる。堆積したスパ
ッタリング粒子1002は、被成膜面1003に垂直な方向にc軸が揃っており、CAA
C-OSとなる。また、堆積して得られる酸化物膜は厚さが均一で、結晶の配向の揃った
酸化物半導体層となる。
【0075】
当該メカニズムによって得られるCAAC-OSは、非晶質表面、非晶質絶縁表面、非晶
質酸化物膜表面などであっても、高い結晶性を有する。
【0076】
≪ナノ結晶酸化物半導体の成膜≫
図5は、基板を加熱せずに成膜した場合に、スパッタリング粒子が被成膜面に堆積する様
子を示す。
【0077】
図5より、基板を加熱しない場合(例えば、基板温度が室温プラスマイナス50℃、好ま
しくは室温プラスマイナス10℃の場合)、スパッタリング粒子1002は被成膜面10
03に不規則に降り注ぐ。従って、スパッタリング粒子1002が既に他のスパッタリン
グ粒子1002が堆積している領域も含め、無秩序に堆積していく。即ち、堆積して得ら
れる酸化物半導体層は厚さが均一でなく、結晶の配向もバラバラになる。このようにして
得られた酸化物半導体層は、平板状のスパッタリング粒子1002が有する結晶性がある
程度維持されるため、結晶部を有する酸化物半導体層となる。
【0078】
なお、上述したようにスパッタリング粒子1002は、例えば、a-b面と平行な面の直
径が1nm以上30nm以下、または1nm以上10nm以下程度であり、成膜された酸
化物半導体層に含まれる結晶部は、スパッタリング粒子1002よりも小さくなることが
ある。例えば、10nm以下、または5nm以下の結晶部を有するナノ結晶酸化物半導体
層となることがある。
【0079】
ナノ結晶酸化物半導体層は、巨視的には無秩序な原子配列を有する膜と同等である。この
ため、測定範囲の広い(例えば、スパッタリング粒子1002よりも大きいビーム径を有
する)X線回折(XRD:X-ray diffraction)による分析では配向を
示すピークが検出されない場合がある。また、スパッタリング粒子1002よりも大きい
ビーム径を有する電子線による回折パターンでは、ハローパターンが観測される場合があ
る。この場合、例えば、電子線のビーム径をスパッタリング粒子1002より十分に小さ
い径としてナノ結晶酸化物半導体層を測定することで、得られる極微電子線回折パターン
ではスポット(輝点)を観測することができる。
【0080】
なお、被成膜面1003は絶縁表面を有すると好ましい。被成膜面1003が絶縁表面を
有することにより、被成膜面1003に堆積したスパッタリング粒子1002から正の電
荷が消失しにくくなる。ただし、スパッタリング粒子1002の堆積速度が正の電荷の消
失よりも遅い場合は、被成膜面1003が導電性を有していても構わない。また、被成膜
面1003は、非晶質表面、非晶質絶縁表面であると好ましい。
【0081】
図6(A)に、結晶のa-b面と平行に見たときのIn-Ga-Zn酸化物の結晶構造を
示す。また、スパッタリング時にイオンが衝突した後の結晶構造を図6(B)に示す。
【0082】
例えば、In-Ga-Zn酸化物に含まれる結晶は、図6(B)に示すガリウム原子又は
/及び亜鉛原子ならびに酸素原子を有する層と、ガリウム原子又は/及び亜鉛原子ならび
に酸素原子を有する層と、の間で劈開する。これは、当該層においてマイナスの電荷を有
する酸素原子同士が近距離にあるためである。このように、劈開面はa-b面に平行な面
となる。
【0083】
即ち、In-Ga-Zn酸化物の結晶粒を含むスパッタリング用ターゲットの表面にイオ
ンが衝突すると、In-Ga-Zn酸化物に含まれる結晶は、結晶のa-b面に平行な面
に沿って劈開し、a-b面に平行な上面および下面を有する平板状のスパッタリング粒子
が剥離する。
【0084】
また、図6に示したIn-Ga-Zn酸化物の結晶は、a-b面に垂直な方向から見て、
正三角形または正六角形に金属原子が配列するため、前述の平板状の結晶粒は内角が12
0°である正六角形の面を有する六角柱状となりやすい。
【0085】
<スパッタリングターゲットの作製方法>
【0086】
図7を用いて、上述したスパッタリング用ターゲットの作製方法を示す。
【0087】
図7(A)では、スパッタリング用ターゲットとなる複数の金属元素を含む酸化物粉末を
作製する。まずは、工程S101にて酸化物粉末を秤量する。
【0088】
ここでは、複数の金属元素を含む酸化物粉末として、In、MおよびZnを含む酸化物粉
末(In-M-Zn酸化物粉末ともいう。)を作製する場合について説明する。具体的に
は、原料としてInO酸化物粉末、MO酸化物粉末およびZnO酸化物粉末を用意
する。なお、X、YおよびZは任意の正数であり、例えばXは1.5、Yは1.5、Zは
1とすればよい。もちろん、上記の酸化物粉末は一例であり、所望の組成とするために適
宜酸化物粉末を選択すればよい。なお、Mは、Ga、Sn、Hf、Al、La、Ce、P
r、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbまたはLuである。
本実施の形態では三種の酸化物粉末を用いた例を示すが、これに限定されない。例えば、
本実施の形態を四種以上の酸化物粉末を用いた場合に適用しても構わないし、一種または
二種の酸化物粉末を用いた場合に適用しても構わない。
【0089】
次に、InO酸化物粉末、MO酸化物粉末およびZnO酸化物粉末を所定のmol
数比で混合する。
【0090】
所定のmol数比としては、例えば、InO酸化物粉末、MO酸化物粉末およびZn
酸化物粉末が、2:2:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3、1
:1:2、3:1:4または3:1:2とする。このようなmol数比とすることで、後
に結晶性の高い多結晶酸化物を含むスパッタリング用ターゲットを得やすくなる。
【0091】
次に、工程S102にて、所定のmol数比で混合したInO酸化物粉末、MO酸化
物粉末およびZnO酸化物粉末に対し第1の焼成を行うことでIn-M-Zn酸化物を
得る。
【0092】
なお、第1の焼成は、不活性雰囲気、酸化性雰囲気または減圧雰囲気で行い、温度は40
0℃以上1700℃以下、好ましくは900℃以上1500℃以下とする。第1の焼成の
時間は、例えば3分以上24時間以下、好ましくは30分以上17時間以下、さらに好ま
しくは30分以上5時間以下で行えばよい。第1の焼成を前述の条件で行うことで、主た
る反応以外の余分な反応を抑制でき、In-M-Zn酸化物粉末中に含まれる不純物濃度
を低減することができる。そのため、In-M-Zn酸化物粉末の結晶性を高めることが
できる。
【0093】
また、第1の焼成は、温度又は/及び雰囲気を変えて、複数回行ってもよい。例えば、第
1の雰囲気にて第1の温度でIn-M-Zn酸化物粉末を保持した後、第2の雰囲気にて
第2の温度で保持しても構わない。具体的には、第1の雰囲気を不活性雰囲気または減圧
雰囲気として、第2の雰囲気を酸化性雰囲気とすると好ましい。これは、第1の雰囲気に
てIn-M-Zn酸化物粉末に含まれる不純物を低減する際にIn-M-Zn酸化物中に
酸素欠損が生じることがあるためである。そのため、第2の雰囲気にて得られるIn-M
-Zn酸化物中の酸素欠損を低減することが好ましい。In-M-Zn酸化物中の不純物
濃度を低減し、かつ酸素欠損を低減することにより、In-M-Zn酸化物粉末の結晶性
を高めることができる。
【0094】
次に、工程S103にて、In-M-Zn酸化物を粉砕することでIn-M-Zn酸化物
粉末を得る。
【0095】
In-M-Zn酸化物は、a-b面に平行な面の表面構造を多く含む。そのため、得られ
るIn-M-Zn酸化物粉末は、a-b面に平行な上面および下面を有する平板状の結晶
粒を多く含むことになる。また、In-M-Zn酸化物の結晶は六方晶または三方晶(菱
面体晶)となることが多いため、前述の平板状の結晶粒は内角が120°である概略正六
角形の面を有する六角柱状であることが多い。
【0096】
次に、得られたIn-M-Zn酸化物粉末の粒径を工程S104にて確認する。ここでは
、In-M-Zn酸化物粉末の平均粒径が3μm以下、好ましくは2.5μm以下、さら
に好ましくは2μm以下となっていることを確認する。なお、工程S104を省略し、粒
径フィルターを用いて、粒径が3μm以下、好ましくは2.5μm以下、さらに好ましく
は2μm以下であるIn-M-Zn酸化物粉末のみを選り分けてもよい。In-M-Zn
酸化物粉末を、粒径が3μm以下、好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2μm
以下に選り分けることで、確実にIn-M-Zn酸化物粉末の平均粒径を3μm以下、好
ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2μm以下とすることができる。
【0097】
工程S104にて、In-M-Zn酸化物粉末の平均粒径が所定の値を超えた場合、工程
S103に戻り、再びIn-M-Zn酸化物粉末を粉砕する。
【0098】
以上のようにして、平均粒径が3μm以下、好ましくは2.5μm以下、さらに好ましく
は2μm以下であるIn-M-Zn酸化物粉末を得ることができる。なお、平均粒径が3
μm以下、好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2μm以下であるIn-M-Z
n酸化物粉末を得ることで、後に作製するスパッタリング用ターゲットに含まれる結晶粒
の粒径を小さくすることができる。
【0099】
次に、図7(B)では、図7(A)に示すフローチャートで得られたIn-M-Zn酸化
物粉末を用いてスパッタリング用ターゲットを作製する。
【0100】
工程S111にて、In-M-Zn酸化物粉末を型に敷き詰めて成形する。ここで、成形
とは、型に均一な厚さで敷き詰めることをいう。具体的には、型にIn-M-Zn酸化物
粉末を導入し、外部から振動を与えることで成形すればよい。または、型にIn-M-Z
n酸化物粉末を導入し、ローラーなどを用いて均一な厚さに成形すればよい。なお、工程
S111では、In-M-Zn酸化物粉末に水と、分散剤と、バインダとを混合したスラ
リーを成形してもよい。その場合、型にスラリーを流し込んだ後で、型の底面から吸引す
ることで成形すればよい。その後、吸引後の成形体に対し、乾燥処理を行う。乾燥処理は
自然乾燥により行うと成形体にひびが入りにくいため好ましい。その後、300℃以上7
00℃以下の温度で加熱処理することで、自然乾燥では取りきれなかった残留水分などを
除去する。
【0101】
a-b面に平行な上面および下面を有する平板状の結晶粒を多く含むIn-M-Zn酸化
物粉末を型に敷き詰めて成形することで、結晶粒のa-b面と平行な面が上を向いて並べ
られる。従って、得られたIn-M-Zn酸化物粉末を敷き詰めて成形することで、a-
b面に平行な面の表面構造の割合を増加させることができる。なお、型は、金属製または
酸化物製とすればよく、矩形または丸形の上面形状を有する。
【0102】
次に、工程S112にて、In-M-Zn酸化物粉末に対し第2の焼成を行う。その後、
工程S113にて、第2の焼成が行われたIn-M-Zn酸化物粉末に対し第1の加圧処
理を行い、板状In-M-Zn酸化物を得る。第2の焼成は第1の焼成と同様の条件およ
び方法で行えばよい。第2の焼成を行うことで、In-M-Zn酸化物の結晶性を高める
ことができる。
【0103】
なお、第1の加圧処理は、In-M-Zn酸化物粉末を押し固めることができればよく、
例えば、型と同種で設けられたおもりなどを用いて行えばよい。または、圧縮空気などを
用いて高圧で押し固めてもよい。そのほか、公知の様々な技術を用いて第1の加圧処理を
行うことができる。なお、第1の加圧処理は、第2の焼成と同時に行っても構わない。
【0104】
第1の加圧処理の後に平坦化処理を行ってもよい。平坦化処理は、化学機械研磨(CMP
:Chemical Mechanical Polishing)処理などを用いれば
よい。
【0105】
こうして得られた板状In-M-Zn酸化物は、結晶性の高い多結晶酸化物となる。
【0106】
次に、工程S114にて、得られた板状In-M-Zn酸化物の厚さを確認する。板状I
n-M-Zn酸化物が所望の厚さより薄い場合は、工程S111に戻り、板状In-M-
Zn酸化物上にIn-M-Zn酸化物粉末を敷き詰め、成形する。板状In-M-Zn酸
化物が所望の厚さである場合は、当該板状In-M-Zn酸化物を以て、スパッタリング
用ターゲットとする。以下は、板状In-M-Zn酸化物が所望の厚さより薄かった場合
について説明する。
【0107】
次に、工程S112にて、板状In-M-Zn酸化物、および板状In-M-Zn酸化物
上のIn-M-Zn酸化物粉末に対し第3の焼成を行う。その後、工程S113にて、第
3の焼成が行われた板状In-M-Zn酸化物、および板状In-M-Zn酸化物上のI
n-M-Zn酸化物粉末に対し第2の加圧処理を行い、In-M-Zn酸化物粉末の分だ
け厚さの増した板状In-M-Zn酸化物を得る。厚さの増した板状In-M-Zn酸化
物は、板状In-M-Zn酸化物を種結晶として結晶成長させて得られるため、結晶性の
高い多結晶酸化物となる。
【0108】
なお、第3の焼成は第2の焼成と同様の条件および方法で行えばよい。また、第2の加圧
処理は第1の加圧処理と同様の条件および方法で行えばよい。第2の加圧処理は、第3の
焼成と同時に行っても構わない。
【0109】
再び、工程S114にて、得られた板状In-M-Zn酸化物の厚さを確認する。
【0110】
以上の工程によって、結晶の配向性を高めつつ徐々に板状In-M-Zn酸化物を厚くす
ることができる。
【0111】
この板状In-M-Zn酸化物を厚くする工程をn回(nは自然数)繰り返すことで、所
望の厚さ(t)、例えば2mm以上20mm以下、好ましくは3mm以上20mm以下の
板状In-M-Zn酸化物を得ることができる。当該板状In-M-Zn酸化物を以て、
スパッタリング用ターゲットとする。
【0112】
その後、平坦化処理を行ってもよい。
【0113】
なお、得られたスパッタリング用ターゲットに対し、第4の焼成を行っても構わない。第
4の焼成は第1の焼成と同様の条件および方法で行えばよい。第4の焼成を行うことで、
さらに結晶性の高い多結晶酸化物を含むスパッタリング用ターゲットを得ることができる
【0114】
以上のようにして、a-b面に平行な劈開面を有し、複数の結晶粒を有する多結晶酸化物
を含み、複数の結晶粒の平均粒径が小さいスパッタリング用ターゲットを作製することが
できる。
【0115】
なお、このようにして作製したスパッタリング用ターゲットは高密度にすることができる
。スパッタリング用ターゲットの密度が高いことで、成膜される膜密度も高くできる。具
体的には、スパッタリング用ターゲットの相対密度が90%以上、95%以上、または9
9%以上とできる。
【0116】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0117】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置に含有される積層構造の他の例について
図8を用いて説明する。具体的には、本実施の形態では、実施の形態1に示す酸化物半
導体層において、ナノ結晶を含む第1の酸化物半導体層と、CAAC-OSを含む第2の
酸化物半導体層と、ナノ結晶を含む第3の酸化物半導体層と、を積層させた場合を例に示
す。
【0118】
図8(A)は、絶縁層間に位置する酸化物半導体層の断面図である。また、図8(B)は
図8(A)X1-Y1におけるバンド構造を示す図である。
【0119】
本実施の形態の積層構造は、絶縁層402と、絶縁層410間に、酸化物半導体層404
を有し、酸化物半導体層404は、第1の酸化物半導体層404a、第2の酸化物半導体
層404b及び第3の酸化物半導体層404cを含む。
【0120】
酸化物半導体層404に含まれる第2の酸化物半導体層404bとして、CAAC-OS
を含む酸化物半導体層を用いる。また、第2の酸化物半導体層404bとして、第1の酸
化物半導体層404a及び第3の酸化物半導体層404cよりも電子親和力の大きい酸化
物半導体層を用いる。例えば、第2の酸化物半導体層404bとして、第1の酸化物半導
体層404a及び第3の酸化物半導体層404cよりも0.07eV以上1.3eV以下
、好ましくは0.1eV以上0.7eV以下、さらに好ましくは0.15eV以上0.4
eV以下、電子親和力の大きい酸化物半導体層を用いる。
【0121】
なお、電子親和力は、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差である。図8(B)にお
いて、第1の酸化物半導体層404aの伝導帯下端のエネルギーをEc1、第2の酸化物
半導体層404bの伝導帯下端のエネルギーをEc2、第3の酸化物半導体層404cの
伝導帯下端のエネルギーをEc3と表記する。また、第1の酸化物半導体層404aの価
電子帯上端のエネルギーをEv1、第2の酸化物半導体層404bの価電子帯上端のエネ
ルギーをEv2、第3の酸化物半導体層404cの価電子帯上端のエネルギーをEv3と
表記する。
【0122】
また、酸化物半導体層404に含まれる第1の酸化物半導体層404a及び第3の酸化物
半導体層404cのうち、少なくとも一方は、ナノ結晶を含む酸化物半導体層を用いる。
本実施の形態では、第1の酸化物半導体層404a及び第3の酸化物半導体層404cの
双方に、ナノ結晶を含む酸化物半導体層を用いるものとする。
【0123】
また、第1の酸化物半導体層404a及び第3の酸化物半導体層404cには、第2の酸
化物半導体層404bのエネルギーギャップEg2よりもエネルギーギャップの大きい酸
化物半導体層を用いる。例えば、第1の酸化物半導体層404aのエネルギーギャップE
g1及び第3の酸化物半導体層404cのエネルギーギャップEg3は、2.7eV以上
4.9eV以下、好ましくは3eV以上4.7eV以下、さらに好ましくは3.2eV以
上4.4eV以下とする。なお、第2の酸化物半導体層404bのエネルギーギャップE
g2は、Eg1及びEg3よりも小さく、例えば、2.5eV以上4.2eV以下、好ま
しくは2.8eV以上3.8eV以下、さらに好ましくは3eV以上3.5eV以下とす
る。
【0124】
このような構造において、ゲート電極層に電界を印加すると、酸化物半導体層404のう
ち、伝導帯下端のエネルギーが最も小さい第2の酸化物半導体層404bが電流の主な経
路となる。すなわち、第2の酸化物半導体層404bと絶縁層402との間に第1の酸化
物半導体層404aが形成され、第2の酸化物半導体層404bと絶縁層410との間に
第3の酸化物半導体層404cが形成されていることよって、トランジスタのチャネルを
ゲート絶縁層と接しない構造とすることができる。
【0125】
第2の酸化物半導体層404bは、第1の酸化物半導体層404a及び第3の酸化物半導
体層404cよりも膜密度が高く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体層である。よって、
当該第2の酸化物半導体層404bにチャネルが形成されることで、欠陥準位に起因した
トランジスタの電気特性の変動を抑制することができるため、信頼性の高いトランジスタ
とすることができる。
【0126】
また、第2の酸化物半導体層404bは、キャリア密度の低い酸化物半導体層を用いる。
例えば、第2の酸化物半導体層404bは、キャリア密度が1×1017個/cm以下
、好ましくは1×1015個/cm以下、さらに好ましくは1×1013個/cm
下、より好ましくは1×1011個/cm以下の酸化物半導体層を用いる。
【0127】
第2の酸化物半導体層404bは、少なくともインジウムを含む酸化物半導体層である。
第2の酸化物半導体層404bが少なくともインジウムを含むと、キャリア移動度(電子
移動度)が高くなるため好ましい。また、インジウムに加えて、元素M(アルミニウム、
ガリウム、イットリウム、ジルコニウムまたはスズ)を含むと好ましい。
【0128】
第1の酸化物半導体層404aは、第2の酸化物半導体層404bを構成する元素一種以
上、または二種以上から構成される酸化物半導体層である。第2の酸化物半導体層404
bを構成する元素一種以上、または二種以上から第1の酸化物半導体層404aが構成さ
れるため、第2の酸化物半導体層404bと第1の酸化物半導体層404aとの界面にお
いて、界面散乱が起こりにくい。従って、該界面においてはキャリアの動きが阻害されな
いため、トランジスタの電界効果移動度が高くなる。
【0129】
第1の酸化物半導体層404aは、例えば、アルミニウム、チタン、シリコン、ガリウム
、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、スズ、ランタン、セリウムまたはハフニ
ウムをインジウムよりも高い原子数比で含む酸化物半導体層とすればよい。具体的には、
第1の酸化物半導体層404aとして、インジウムよりも前述の元素を1.5倍以上、好
ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上高い原子数比で含む酸化物半導体層を用い
る。前述の元素は酸化物半導体層のエネルギーギャップを大きくする機能を有する場合が
ある。また、前述の元素が酸化物半導体層に高い原子数比で含まれることにより、酸化物
半導体層の電子親和力を小さくする機能を有する場合がある。また、前述の元素はインジ
ウムよりも酸素と強く結合するため、酸素欠損が酸化物半導体層に生じることを抑制する
機能を有する。また、前述の元素が、酸化物半導体層の不純物を遮蔽する機能、または不
純物の拡散係数を小さくする機能を有する場合がある。第1の酸化物半導体層404aは
、前述の元素を第2の酸化物半導体層404bよりも高い原子数比で含む酸化物半導体層
である。
【0130】
第3の酸化物半導体層404cは、第2の酸化物半導体層404bを構成する元素一種以
上、または二種以上から構成される酸化物半導体層である。第2の酸化物半導体層404
bを構成する元素一種以上、または二種以上から第3の酸化物半導体層404cが構成さ
れるため、第2の酸化物半導体層404bと第3の酸化物半導体層404cとの界面にお
いて、界面散乱が起こりにくい。従って、該界面においてはキャリアの動きが阻害されな
いため、トランジスタの電界効果移動度が高くなる。
【0131】
第3の酸化物半導体層404cは、例えば、アルミニウム、チタン、シリコン、ガリウム
、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、スズ、ランタン、セリウムまたはハフニ
ウムをインジウムよりも高い原子数比で含む酸化物半導体層とすればよい。具体的には、
第3の酸化物半導体層404cとして、インジウムよりも前述の元素を1.5倍以上、好
ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上高い原子数比で含む酸化物半導体層を用い
る。なお、第3の酸化物半導体層404cは、前述の元素を第2の酸化物半導体層404
bよりも高い原子数比で含む酸化物半導体層である。
【0132】
なお、第1の酸化物半導体層404aと第3の酸化物半導体層404cとは、異なる物性
を有する酸化物半導体層を用いてもよいし、同じ物性を有する酸化物半導体層を用いても
よい。
【0133】
なお、第1の酸化物半導体層404aがIn-M-Zn酸化物であるとき、Znと酸素を
除いたInとMの原子数比率は、好ましくはInが50atomic%未満、Mが50a
tomic%以上、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atom
ic%以上とする。また、第2の酸化物半導体層404bがIn-M-Zn酸化物である
とき、Znと酸素を除いたInとMの原子数比率は好ましくはInが25atomic%
以上、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%以上、
Mが66atomic%未満とする。また、第3の酸化物半導体層404cがIn-M-
Zn酸化物であるとき、Znと酸素を除いたInとMの原子数比率は好ましくはInが5
0atomic%未満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくはInが25at
omic%未満、Mが75atomic%以上とする。
【0134】
なお、第1の酸化物半導体層404aの厚さは、5nm以上100nm以下、好ましくは
5nm以上50nm以下とする。また、第2の酸化物半導体層404bの厚さは、5nm
以上200nm以下、好ましくは5nm以上100nm以下、さらに好ましくは5nm以
上50nm以下とする。また、第3の酸化物半導体層404cの厚さは、5nm以上10
0nm以下、好ましくは5nm以上50nm以下とする。
【0135】
また、第1の酸化物半導体層404a及び第3の酸化物半導体層404cは、第2の酸化
物半導体層404bを構成する金属元素を一種以上含む酸化物半導体層であるから、酸化
物半導体層404は主成分を共通して積層された酸化物積層ともいえる。主成分を共通と
して積層された酸化物積層は、各層を単に積層するのではなく連続接合(ここでは、特に
伝導帯下端のエネルギーが各層の間で連続的に変化するU字型の井戸構造)が形成される
ように作製する。なぜなら、各層の界面にトラップ中心や再結合中心のような欠陥準位を
形成するような不純物が混在していると、エネルギーバンドの連続性が失われ、界面でキ
ャリアがトラップあるいは再結合により消滅してしまうためである。
【0136】
連続接合を形成するためには、ロードロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装置
(スパッタリング装置)を用いて各層を大気に触れさせることなく連続して積層すること
が必要となる。スパッタリング装置における各チャンバーは、酸化物半導体にとって不純
物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを
用いて高真空排気(5×10-7Pa乃至1×10-4Pa程度まで)することが好まし
い。または、ターボ分子ポンプとコールドトラップを組み合わせて排気系からチャンバー
内に気体が逆流しないようにしておくことが好ましい。
【0137】
また、酸化物半導体層において欠陥準位の要因となる水素及び酸素欠損を低減させ、酸化
物半導体層を高純度真性化させる得るためには、チャンバー内を高真空排気するのみなら
ずスパッタガスの高純度化も必要である。スパッタガスとして用いる酸素ガスやアルゴン
ガスは、露点が-40℃以下、好ましくは-80℃以下、より好ましくは-100℃以下
にまで高純度化したガスを用いることで酸化物半導体に水分等が取り込まれることを可能
な限り防ぐことができる。
【0138】
第2の酸化物半導体層404bの上層又は下層に設けられる第1の酸化物半導体層404
a及び第3の酸化物半導体層404cはバリア層として機能し、酸化物半導体層404に
接する絶縁層と、酸化物半導体層404との界面に形成される欠陥準位の影響が、トラン
ジスタのキャリアの主な経路(キャリアパス)となる第2の酸化物半導体層404bへと
及ぶことを抑制することができる。
【0139】
例えば、酸化物半導体層に含まれる酸素欠損は、酸化物半導体のエネルギーギャップ内の
深いエネルギー位置に存在する局在準位として顕在化する。このような局在準位にキャリ
アがトラップされることで、トランジスタの信頼性が低下するため、酸化物半導体層に含
まれる酸素欠損を低減することが必要となる。酸化物半導体層404においては、第2の
酸化物半導体層404bと比較して酸素欠損の生じにくい組成を有する酸化物半導体層を
第2の酸化物半導体層404bの上下に接して設けることで、第2の酸化物半導体層40
4bにおける酸素欠損を低減することができる。
【0140】
また、第2の酸化物半導体層404bが、構成元素の異なる絶縁層(例えば、酸化シリコ
ン膜を含む下地絶縁層)と接する場合、2層の界面に界面準位が形成され、該界面準位は
チャネルを形成することがある。このような場合、しきい値電圧の異なる第2のトランジ
スタが出現し、トランジスタの見かけ上のしきい値電圧が変動することがある。しかしな
がら、酸化物半導体層404においては第2の酸化物半導体層404bを構成する金属元
素を一種以上含んで第1の酸化物半導体層404aが構成されるため、第1の酸化物半導
体層404aと第2の酸化物半導体層404bの界面に界面準位を形成しにくくなる。よ
って第1の酸化物半導体層404aを設けることにより、トランジスタのしきい値電圧な
どの電気特性のばらつきを低減することができる。
【0141】
また、ゲート絶縁層(ここでは、絶縁層410と仮定する)と第2の酸化物半導体層40
4bとの界面にチャネルが形成される場合、該界面で界面散乱が起こり、トランジスタの
電界効果移動度が低くなる。しかしながら、酸化物半導体層404においては、第2の酸
化物半導体層404bを構成する金属元素を一種以上含んで第3の酸化物半導体層404
cが構成されるため、第2の酸化物半導体層404bと第3の酸化物半導体層404cと
の界面ではキャリアの散乱が起こりにくく、トランジスタの電界効果移動度を高くするこ
とができる。
【0142】
また、第1の酸化物半導体層404a及び第3の酸化物半導体層404cは、酸化物半導
体層404に接する絶縁層の構成元素が、第2の酸化物半導体層404bへ混入して、不
純物による準位が形成されることを抑制するためのバリア層としても機能する。
【0143】
例えば、酸化物半導体層404に接する絶縁層402、410として、シリコンを含む絶
縁層を用いる場合、該絶縁層中のシリコン、又は絶縁層中に混入されうる炭素が、第1の
酸化物半導体層404a又は第3の酸化物半導体層404cの中へ界面から数nm程度ま
で混入することがある。シリコン、炭素等の不純物が酸化物半導体層中に入ると不純物準
位を形成し、不純物準位がドナーとなり電子を生成することでn型化することがある。
【0144】
しかしながら、第1の酸化物半導体層404a及び第3の酸化物半導体層404cの膜厚
が、数nmよりも厚ければ、混入したシリコン、炭素等の不純物が第2の酸化物半導体層
404bにまで到達しないため、不純物準位の影響は低減される。
【0145】
ここで、酸化物半導体層に含まれるシリコンの濃度は3×1018/cm以下、好まし
くは3×1017/cm以下とする。また、酸化物半導体層に含まれる炭素の濃度は3
×1018/cm以下、好ましくは3×1017/cm以下とする。特に第2の酸化
物半導体層404bに第14族元素であるシリコン又は炭素が多く混入しないように、第
1の酸化物半導体層404a及び第3の酸化物半導体層404cで、キャリアパスとなる
第2の酸化物半導体層404bを挟む、または囲む構成とすることが好ましい。すなわち
、第2の酸化物半導体層404bに含まれるシリコン及び炭素の濃度は、第1の酸化物半
導体層404a及び第3の酸化物半導体層404cに含まれるシリコン及び炭素の濃度よ
りも低いことが好ましい。
【0146】
なお、酸化物半導体層中の不純物濃度は二次イオン分析法(SIMS:Secondar
y Ion Mass Spectrometry)で測定することができる。
【0147】
また、水素や水分が不純物として酸化物半導体層に含まれてしまうとドナーを作りn型化
するため、酸化物半導体層404の上方に水素や水分が外部から侵入することを防止する
保護絶縁層(窒化シリコン層など)を設けることは、井戸型構造を実現する上で有用であ
る。
【0148】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0149】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1または実施の形態3で示した酸化物半導体層を含むトラ
ンジスタの構成例について、図面を参照して説明する。
【0150】
<トランジスタの構成例>
図9(A)に、トランジスタ300の断面概略図を示す。本構成例で例示するトランジス
タ300はボトムゲート型のトランジスタである。
【0151】
トランジスタ300は、基板301上に設けられるゲート電極層302と、基板301及
びゲート電極層302上に設けられる絶縁層303と、絶縁層303上にゲート電極層3
02と重なるように設けられる酸化物半導体層314と、酸化物半導体層314の上面に
接するソース電極層305a及びドレイン電極層305bとを有する。また、絶縁層30
3、酸化物半導体層314、ソース電極層305a及びドレイン電極層305bを覆う絶
縁層306と、絶縁層306上に絶縁層307が設けられている。
【0152】
トランジスタ300の備える酸化物半導体層314は、酸化物半導体層314aと酸化物
半導体層314bとが積層されて構成される。なお、酸化物半導体層314aと酸化物半
導体層314bの境界は不明瞭である場合があるため、図9(A)等の図中には、これら
の境界を破線で示している。
【0153】
酸化物半導体層314a及び酸化物半導体層314bは、共に結晶性を有する酸化物半導
体層であり、互いに結晶性が異なる。本実施の形態では、酸化物半導体層314aは、酸
化物半導体層314bと比較して膜密度が高く、欠陥準位密度の低減された酸化物半導体
層を用いる。好ましくは、酸化物半導体層314aは、CAAC-OS膜であり、酸化物
半導体層314bは、ナノ結晶酸化物半導体層である。すなわち、本実施の形態のトラン
ジスタ300において酸化物半導体層314は、実施の形態1で図1(B)を用いて示し
た酸化物半導体層114に相当する。またトランジスタ300において絶縁層306は、
実施の形態1で図1(B)を用いて示した絶縁層106に相当する。
【0154】
酸化物半導体層314aは、代表的にはIn-Ga酸化物、In-Zn酸化物、In-M
-Zn酸化物(MはAl、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、またはHf)を用
いる。また、酸化物半導体層314aがIn-M-Zn酸化物であるとき、Znと酸素を
除いたInとMの原子数比率は、好ましくは、Inが25atomic%以上、Mが75
atomic%未満、さらに好ましくは、Inが34atomic%以上、Mが66at
omic%未満とする。また例えば、酸化物半導体層314aは、エネルギーギャップが
2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である材料を用いる
【0155】
また、本実施の形態において酸化物半導体層314bは、酸化物半導体層314aを構成
する金属元素を一種以上含む酸化物半導体層を適用する。例えば、In-M-Zn酸化物
(Al、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf等の金属)で表記さ
れ、酸化物半導体層314aよりもMの原子数比が高い酸化物半導体層とする。具体的に
は、酸化物半導体層314aよりも元素Mを1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに
好ましくは3倍以上高い原子数比で含む酸化物半導体を用いることが好ましい。元素Mは
インジウムよりも酸素と強く結合するため、酸素欠損が生じることを抑制する機能を有す
る。よって、酸化物半導体層314bは酸化物半導体層314aよりも酸素欠損が生じに
くい酸化物半導体層とすることができる。
【0156】
また、酸化物半導体層314bとして、In-M-Zn酸化物(MはAl、Ti、Ga、
Y、Zr、La、Ce、NdまたはHf)であり、且つ酸化物半導体層314aよりも伝
導帯の下端のエネルギーが真空準位に近い酸化物半導体を適用することが好ましい。例え
ば、酸化物半導体層314bの伝導帯の下端のエネルギーと、酸化物半導体層314aの
伝導帯の下端のエネルギーとの差が、0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV
以上、または0.15eV以上、且つ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、または
0.4eV以下とすることが好ましい。
【0157】
例えば、酸化物半導体層314bがIn-M-Zn酸化物であるとき、Znと酸素を除い
たInとMの原子数比率は、好ましくは、Inが50atomic%未満、Mが50at
omic%以上、さらに好ましくは、Inが25atomic%未満、Mが75atom
ic%以上とする。
【0158】
例えば、酸化物半導体層314aとしてIn:Ga:Zn=1:1:1または3:1:2
の原子数比のIn-Ga-Zn酸化物を用いることができる。また、酸化物半導体層31
4bとしてIn:Ga:Zn=1:3:2、1:6:4、または1:9:6の原子数比の
In-Ga-Zn酸化物を用いることができる。なお、酸化物半導体層314a、及び酸
化物半導体層314bの原子数比はそれぞれ、誤差として上記の原子数比のプラスマイナ
ス20%の変動を含む。
【0159】
なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性及び電気特性(電界効果
移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする
トランジスタの半導体特性を得るために、酸化物半導体層314a、酸化物半導体層31
4bのキャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、
密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0160】
なお、上記では酸化物半導体層314として、2層の酸化物半導体層が積層された構成を
例示したが、3つ以上の酸化物半導体層を積層する構成としてもよい。
【0161】
《基板301》
基板301の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の
耐熱性を有する材料を用いる。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファ
イヤ基板、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)基板等を、基板301として用いても
よい。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリ
コンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板等を適用することも可能である。
また、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板301として用いてもよい
【0162】
また、基板301として、プラスチックなどの可撓性基板を用い、該可撓性基板上に直接
、トランジスタ300を形成してもよい。または、基板301とトランジスタ300の間
に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上層にトランジスタの一部あるいは全部を形成
した後、基板301より分離し、他の基板に転載するのに用いることができる。その結果
、トランジスタ300は耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。
【0163】
《ゲート電極層302》
ゲート電極層302は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タ
ングステンから選ばれた金属、または上述した金属を成分とする合金か、上述した金属を
組み合わせた合金等を用いて形成することができる。また、マンガン、ジルコニウムのい
ずれか一または複数から選択された金属を用いてもよい。また、ゲート電極層302は、
単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム
膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタ
ン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タ
ンタル膜または窒化タングステン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と
、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構
造等がある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、ク
ロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた一または複数の金属を組み合わせた合金膜、
もしくはこれらの窒化膜を用いてもよい。
【0164】
また、ゲート電極層302は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム
酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸
化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを添
加したインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また
、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属の積層構造とすることもできる。
【0165】
また、ゲート電極層302と絶縁層303との間に、In-Ga-Zn系酸窒化物半導体
膜、In-Sn系酸窒化物半導体膜、In-Ga系酸窒化物半導体膜、In-Zn系酸窒
化物半導体膜、Sn系酸窒化物半導体膜、In系酸窒化物半導体膜、金属窒化膜(InN
、ZnN等)等を設けてもよい。これらの膜は5eV以上、好ましくは5.5eV以上の
仕事関数を有し、酸化物半導体の電子親和力よりも大きい値であるため、酸化物半導体を
用いたトランジスタのしきい値電圧をプラスにシフトすることができ、所謂ノーマリーオ
フ特性のスイッチング素子を実現できる。例えば、In-Ga-Zn系酸窒化物半導体膜
を用いる場合、少なくとも酸化物半導体層314より高い窒素濃度、具体的には7原子%
以上のIn-Ga-Zn系酸窒化物半導体膜を用いる。
【0166】
《絶縁層303》
絶縁層303は、ゲート絶縁膜として機能する。酸化物半導体層314の下面と接する絶
縁層303は、非晶質膜であることが好ましい。
【0167】
絶縁層303は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリ
コン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa-Zn系金属酸化物
などを用いればよく、積層または単層で設ける。
【0168】
また、絶縁層303として、ハフニウムシリケート(HfSiO)、窒素が添加された
ハフニウムシリケート(HfSi)、窒素が添加されたハフニウムアルミネー
ト(HfAl)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh-k材料
を用いることでトランジスタのゲートリークを低減できる。
【0169】
《ソース電極層305a及びドレイン電極層305b》
ソース電極層305a及びドレイン電極層305bは、導電材料として、アルミニウム、
チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタ
ル、またはタングステンからなる単体金属、またはこれを主成分とする合金を単層構造ま
たは積層構造として用いることができる。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層
構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、タングステン膜上にチタン膜を
積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造
、チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニ
ウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層
構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン
膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒
化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化
亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0170】
また、ソース電極層305a及びドレイン電極層305bの、少なくとも酸化物半導体層
314と接する部分に、酸化物半導体層314の一部から酸素を奪い、酸素欠損を生じさ
せることが可能な材料を用いることが好ましい。酸化物半導体層314中の酸素欠損が生
じた領域はキャリア濃度が増加し、当該領域はn型化し、n型領域(n層)となる。し
たがって、当該領域はソース領域及びドレイン領域として作用させることができる。酸化
物半導体層314から酸素を奪い、酸素欠損を生じさせることが可能な材料の一例として
、タングステン、チタン等を挙げることができる。
【0171】
また、酸化物半導体層314を構成する材料や厚さによっては、酸化物半導体層314の
ソース電極層305a及びドレイン電極層305bと重畳する領域全体がソース領域及び
ドレイン領域となることもありうる。
【0172】
酸化物半導体層314にソース領域及びドレイン領域が形成されることにより、ソース電
極層305a及びドレイン電極層305bと酸化物半導体層314の接触抵抗を低減する
ことができる。よって、電界効果移動度や、しきい値電圧などの、トランジスタの電気特
性を良好なものとすることができる。
【0173】
《絶縁層306、307》
絶縁層306は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用
いることが好ましい。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜
は、加熱により一部の酸素が脱離する。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を
含む酸化物絶縁膜は、昇温脱離ガス分光法(TDS:Thermal Desorpti
on Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.
0×1018atoms/cm以上、好ましくは3.0×1020atoms/cm
以上である酸化物絶縁膜である。
【0174】
絶縁層306としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を含む絶縁層用いることがで
きる。
【0175】
なお、絶縁層306は、後に形成する絶縁層307を形成する際の、酸化物半導体層31
4へのダメージ緩和膜としても機能する。
【0176】
また、絶縁層306と酸化物半導体層314の間に、酸素を透過する酸化物膜を設けても
よい。
【0177】
酸素を透過する酸化物膜としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を含む絶縁層用い
ることができる。なお、本明細書中において、酸化窒化シリコン膜とは、その組成として
、窒素よりも酸素の含有量が多い膜を指し、窒化酸化シリコン膜とは、その組成として、
酸素よりも窒素の含有量が多い膜を指す。
【0178】
絶縁層307は、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する絶縁膜を用いることがで
きる。絶縁層306上に絶縁層307を設けることで、酸化物半導体層314からの酸素
の外部への拡散と、外部から酸化物半導体層314への水素、水等の侵入を防ぐことがで
きる。酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する絶縁膜としては、窒化シリコン、窒
化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガ
リウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウ
ム等を含む絶縁層がある。
【0179】
なお、酸化物半導体層314のチャネル形成領域の上に、チャネル保護膜を設けることも
可能である。チャネル保護膜は、ソース電極層305aと酸化物半導体層314の間や、
ドレイン電極層305bと酸化物半導体層314の間にも設けられる。このようなチャネ
ル保護膜が設けられている場合には、チャネル保護型のトランジスタとなる。チャネル保
護膜は、一例としては、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を用いることが出来る
。酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成する場合、原料ガスとしては、シリコ
ンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体
の代表例としては、シラン、ジシラン、トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体
としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素、二酸化窒素等がある。
【0180】
<トランジスタ300の変形例>
以下では、トランジスタ300と一部が異なるトランジスタの構成例について説明する。
【0181】
《変形例1》
図9(B)に、トランジスタ310の断面概略図を示す。トランジスタ310は、酸化物
半導体層の構成が異なる点で、トランジスタ300と相違している。
【0182】
トランジスタ310において、酸化物半導体層304は、酸化物半導体層304aと酸化
物半導体層304bを含む。酸化物半導体層304aは、ナノ結晶を含む酸化物半導体層
を適用する。また、酸化物半導体層304bには、酸化物半導体層304aよりも膜密度
が高く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体層を適用する。好ましくは、酸化物半導体層3
04bとして、CAAC-OSを適用する。すなわち、本実施の形態のトランジスタ31
0において酸化物半導体層304は、実施の形態1で図1(A)を用いて示した酸化物半
導体層104に相当する。またトランジスタ310において絶縁層303は、実施の形態
1で図1(A)を用いて示した絶縁層102に相当する。
【0183】
なお、トランジスタ310において、酸化物半導体層304以外の構成は、トランジスタ
300を参酌することができる。
【0184】
《変形例2》
図9(C)に、トランジスタ320の断面概略図を示す。トランジスタ320は、酸化物
半導体層の構成が異なる点で、トランジスタ300及びトランジスタ310と相違してい
る。
【0185】
トランジスタ320の備える酸化物半導体層324は、酸化物半導体層324a、酸化物
半導体層324b、酸化物半導体層324cが順に積層されて構成される。
【0186】
酸化物半導体層324a及び酸化物半導体層324bは、絶縁層303上に積層して設け
られる。また酸化物半導体層324cは、酸化物半導体層324bの上面、並びにソース
電極層305a及びドレイン電極層305bの上面及び側面に接して設けられる。
【0187】
酸化物半導体層324a及び酸化物半導体層324cは、ナノ結晶を含む酸化物半導体層
を適用することができる。また、酸化物半導体層324bには、酸化物半導体層324a
及び酸化物半導体層324cよりも膜密度が高く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体層を
適用する。好ましくは、酸化物半導体層324bとして、CAAC-OSを適用する。
【0188】
<トランジスタの作製方法例>
続いて、図9(A)に例示するトランジスタ300の作製方法の一例について説明する。
【0189】
まず、図10(A)に示すように、基板301上にゲート電極層302を形成し、ゲート
電極層302上に絶縁層303を形成する。
【0190】
ここでは、基板301としてガラス基板を用いる。
【0191】
《ゲート電極層の形成》
ゲート電極層302の形成方法を以下に示す。はじめに、スパッタリング法、CVD法、
蒸着法等により導電膜を形成し、導電膜上に第1のフォトマスクを用いてフォトリソグラ
フィ工程によりレジストマスクを形成する。次に、該レジストマスクを用いて導電膜の一
部をエッチングして、ゲート電極層302を形成する。その後、レジストマスクを除去す
る。
【0192】
なお、ゲート電極層302は、上記形成方法の代わりに、電解メッキ法、印刷法、インク
ジェット法等で形成してもよい。
【0193】
《ゲート絶縁層の形成》
ゲート絶縁層として機能する絶縁層303は、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で
形成する。
【0194】
絶縁層303として酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、または窒化酸化シリコン膜を
形成する場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用いるこ
とが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、トリシ
ラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素、二酸
化窒素等がある。
【0195】
また、絶縁層303として窒化シリコン膜を形成する場合、2段階の形成方法を用いるこ
とが好ましい。はじめに、シラン、窒素、及びアンモニアの混合ガスを原料ガスとして用
いたプラズマCVD法により、欠陥の少ない第1の窒化シリコン膜を形成する。次に、原
料ガスを、シラン及び窒素の混合ガスに切り替えて、水素濃度が少なく、且つ水素をブロ
ッキングすることが可能な第2の窒化シリコン膜を成膜する。このような形成方法により
、絶縁層303として、欠陥が少なく、且つ水素ブロッキング性を有する窒化シリコン膜
を形成することができる。
【0196】
また、絶縁層303として酸化ガリウム膜を形成する場合、MOCVD(Metal O
rganic Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成
することができる。
【0197】
《酸化物半導体層の形成》
次に、図10(B)に示すように、絶縁層303上に酸化物半導体層304を形成する。
【0198】
酸化物半導体層314の形成は、実施の形態2で説明した方法を用いることができる。本
実施の形態では、はじめに、基板301を加熱しながら、CAAC-OSを含む酸化物半
導体層314aを形成し、その後、基板温度を室温として酸化物半導体層314bを形成
する。そして、酸化物半導体層314b上にフォトマスクを用いてフォトリソグラフィ工
程によりレジストマスクを形成する。次に、該レジストマスクを用いて島状の酸化物半導
体層314を形成する。その後、レジストマスクを除去する。
【0199】
酸化物半導体層314aを形成する際に、基板301を加熱する温度としては、150℃
以上450℃以下とすればよく、好ましくは基板温度が200℃以上350℃以下とすれ
ばよい。なお、基板301を高温に保持した状態で酸化物半導体層を形成することは、酸
化物半導体層中に含まれうる不純物濃度を低減するのに有効である。
【0200】
なお、酸化物半導体層314を形成後、膜中に含まれる過剰な水素(水や水酸基を含む)
を除去(脱水化又は脱水素化)するための熱処理を行うことが好ましい。熱処理の温度は
、300℃以上700℃以下、又は基板の歪み点未満とする。熱処理は減圧下又は窒素雰
囲気下などで行うことができる。この熱処理によって、n型の導電性を付与する不純物で
ある水素を除去することができる。
【0201】
なお、脱水化又は脱水素化のための熱処理は、酸化物半導体層の成膜後であればトランジ
スタの作製工程においてどのタイミングで行ってもよい。また、脱水化又は脱水素化のた
めの熱処理は、複数回行ってもよく、他の熱処理と兼ねてもよい。
【0202】
熱処理においては、窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素など
が含まれないことが好ましい。又は、熱処理装置に導入する窒素、又はヘリウム、ネオン
、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.
99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)と
することが好ましい。
【0203】
また、熱処理で酸化物半導体層314を加熱した後、加熱温度を維持、又はその加熱温度
から徐冷しながら同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度の一酸化二窒素ガス、又は超乾燥エ
ア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した
場合の水分量が20ppm(露点換算で-55℃)以下、好ましくは1ppm以下、より
好ましくは10ppb以下の空気)を導入してもよい。酸素ガス又は一酸化二窒素ガスに
、水、水素などが含まれないことが好ましい。又は、熱処理装置に導入する酸素ガス又は
一酸化二窒素ガスの純度を、6N以上好ましくは7N以上(即ち、酸素ガス又は一酸化二
窒素ガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好
ましい。酸素ガス又は一酸化二窒素ガスの作用により、脱水化又は脱水素化処理による不
純物の排除工程によって同時に減少してしまった酸化物半導体を構成する主成分材料であ
る酸素を供給することによって、酸化物半導体層を高純度化及びi型(真性)化すること
ができる。
【0204】
なお、高純度真性酸化物半導体を得るためには、チャンバー内を高真空排気するのみなら
ずスパッタガスの高純度化も必要である。スパッタガスとして用いる酸素ガスやアルゴン
ガスは、露点が-40℃以下、好ましくは-80℃以下、より好ましくは-100℃以下
にまで高純度化したガスを用いることで酸化物半導体に水分等が取り込まれることを可能
な限り防ぐことができる。
【0205】
また、脱水化又は脱水素化処理によって、酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素
が同時に脱離して減少してしまうおそれがあるため、脱水化又は脱水素化処理を行った酸
化物半導体層に、酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれか
を含む)を導入して膜中に酸素を供給してもよい。
【0206】
脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体層に、酸素を導入して膜中に酸素を供給す
ることによって、酸化物半導体層を高純度化、及びi型(真性)化することができる。高
純度化し、i型(真性)化した酸化物半導体を有するトランジスタは、電気特性変動が抑
制されており、電気的に安定である。
【0207】
《ソース電極層及びドレイン電極層の形成》
次に、図10(C)に示すように、ソース電極層305a及びドレイン電極層305bを
形成する。
【0208】
ソース電極層305a及びドレイン電極層305bの形成方法を以下に示す。はじめに、
スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で導電膜を形成する。次に、該導電膜上に第3の
フォトマスクを用いてフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成する。次に、
該レジストマスクを用いて導電膜の一部をエッチングして、ソース電極層305a及びド
レイン電極層305bを形成する。その後、レジストマスクを除去する。
【0209】
なお、図10(C)に示すように、導電膜のエッチングの際に酸化物半導体層304の上
部の一部がエッチングされ、薄膜化することがある。
【0210】
《絶縁層の形成》
次に、図10(D)に示すように、酸化物半導体層304、ソース電極層305a及びド
レイン電極層305b上に、絶縁層306を形成し、続いて絶縁層306上に絶縁層30
7を形成する。
【0211】
絶縁層306として酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成する場合、原料ガス
としては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用いることが好ましい。シリコン
を含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、トリシラン、フッ化シラン等が
ある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素、二酸化窒素等がある。
【0212】
例えば、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置された基板を180℃以上
260℃以下、さらに好ましくは200℃以上240℃以下に保持し、処理室に原料ガス
を導入して処理室内における圧力を100Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは1
00Pa以上200Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に0.17W/cm以上
0.5W/cm以下、さらに好ましくは0.25W/cm以上0.35W/cm
下の高周波電力を供給する条件により、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成
する。
【0213】
成膜条件として、上記圧力の処理室において上記パワー密度の高周波電力を供給すること
で、プラズマ中で原料ガスの分解効率が高まり、酸素ラジカルが増加し、原料ガスの酸化
が進むため、酸化物絶縁膜中における酸素含有量が化学量論比よりも多くなる。しかしな
がら、基板温度が、上記温度であると、シリコンと酸素の結合力が弱いため、加熱により
酸素の一部が脱離する。この結果、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み
、加熱により酸素の一部が脱離する酸化物絶縁膜を形成することができる。
【0214】
また、酸化物半導体層304と絶縁層306の間に酸化物絶縁膜を設ける場合には、絶縁
層306の形成工程において、該酸化物絶縁膜が酸化物半導体層304の保護膜となる。
この結果、酸化物半導体層304へのダメージを低減しつつ、パワー密度の高い高周波電
力を用いて絶縁層306を形成することができる。
【0215】
例えば、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置された基板を180℃以上
400℃以下、さらに好ましくは200℃以上370℃以下に保持し、処理室に原料ガス
を導入して処理室内における圧力を20Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは10
0Pa以上250Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に高周波電力を供給する条件
により、酸化物絶縁膜として酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成することが
できる。また、処理室の圧力を100Pa以上250Pa以下とすることで、該酸化物絶
縁層を成膜する際に、酸化物半導体層304へのダメージを低減することが可能である。
【0216】
酸化物絶縁膜の原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用いるこ
とが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、トリシ
ラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素、二酸
化窒素等がある。
【0217】
絶縁層307は、スパッタリング法、CVD法等で形成することができる。
【0218】
絶縁層307として窒化シリコン膜、または窒化酸化シリコン膜を形成する場合、原料ガ
スとしては、シリコンを含む堆積性気体、酸化性気体、及び窒素を含む気体を用いること
が好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、トリシラ
ン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素、二酸化
窒素等がある。窒素を含む気体としては、窒素、アンモニア等がある。
【0219】
以上の工程により、トランジスタ300を形成することができる。
【0220】
<トランジスタの他の構成例>
以下では、本発明の一態様の酸化物半導体層を適用可能な、トップゲート型のトランジス
タの構成例について説明する。
【0221】
なお、以下では、上記と同様の構成、または同様の機能を備える構成要素においては、同
一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0222】
《構成例》
図11(A)に、トップゲート型のトランジスタ360の断面概略図を示す。
【0223】
トランジスタ360は、絶縁層351が設けられた基板301上に設けられる酸化物半導
体層364と、酸化物半導体層364の上面に接するソース電極層305a及びドレイン
電極層305bと、酸化物半導体層364、ソース電極層305a及びドレイン電極層3
05b上に設けられる絶縁層303と、絶縁層303上に酸化物半導体層364と重なる
ように設けられるゲート電極層302とを有する。また、絶縁層303及びゲート電極層
302を覆って絶縁層352が設けられている。
【0224】
トランジスタ360の酸化物半導体層364に、本発明の一態様の酸化物半導体層を適用
することができる。
【0225】
例えば、酸化物半導体層364は、酸化物半導体層364aと酸化物半導体層364bと
酸化物半導体層364cとを含む。ここでは、酸化物半導体層364a及び酸化物半導体
層364cは、ナノ結晶を含む酸化物半導体層を適用する。また、酸化物半導体層364
bには、酸化物半導体層364a及び酸化物半導体層364cよりも膜密度が高く、欠陥
準位密度の低い酸化物半導体層を適用する。好ましくは、酸化物半導体層364bとして
、CAAC-OSを適用する。
【0226】
絶縁層351は、基板301から酸化物半導体層364への不純物の拡散を抑制する機能
を有する。例えば、上記絶縁層307と同様の構成を用いることができる。なお、絶縁層
351は、不要であれば設けなくてもよい。
【0227】
絶縁層352には、上記絶縁層307と同様、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有
する絶縁膜を適用することができる。なお、絶縁層307は不要であれば設けなくてもよ
い。
【0228】
《変形例》
以下では、トランジスタ360と一部が異なるトランジスタの構成例について説明する。
【0229】
図11(B)に、トランジスタ370の断面概略図を示す。トランジスタ370は、ソー
ス電極層及びドレイン電極層の構成が異なる点で、トランジスタ360と相違している。
より具体的には、トランジスタ370では、ソース電極層305a上にソース電極層31
6aが形成され、ドレイン電極層305b上にドレイン電極層316bが形成されている
点が異なる。
【0230】
上述したように、ソース電極層305a及びドレイン電極層305bとして、酸化物半導
体層に酸素欠損を生じさせることが可能な材料を用いると、酸化物半導体層においてソー
ス電極層305a及びドレイン電極層305bと接触した近傍の領域に酸素欠損が発生し
、当該領域がn型化してトランジスタのソース領域またはドレイン領域として作用させる
ことができる。
【0231】
しかしながら、チャネル長が極めて短いトランジスタを形成する場合、上記酸素欠損の発
生によってn型化した領域がトランジスタのチャネル長方向に延在してしまうことがある
。この場合、トランジスタの電気特性には、しきい値電圧の変動や、ソース領域とドレイ
ン領域が導通状態となりオン状態とオフ状態の制御ができないなどの現象が現れる。その
ため、チャネル長が極めて短いトランジスタを形成する場合は、ソース電極層及びドレイ
ン電極層に酸素と結合し易い導電材料を用いることは好ましくない。
【0232】
したがって、図11(B)にL1として示すソース電極層305aとドレイン電極層30
5bとの間隔は、0.8μm以上、好ましくは1.0μm以上とする。L1が0.8μm
より小さいと、チャネル形成領域において発生する酸素欠損の影響を排除できなくなり、
トランジスタの電気特性が低下する可能性がある。なお、L1は、酸化物半導体層364
と接して向かい合うソース電極層305aの端部からドレイン電極層305bの端部まで
の最短距離と言う事ができる。なお、図11(B)ではn型化した領域を模式的に点線で
図示している。
【0233】
そこで、トランジスタ370では、酸素と結合しにくい導電材料を用いて、ソース電極層
305aと酸化物半導体層364に接してソース電極層316aを形成する。また、酸素
と結合しにくい導電材料を用いて、ドレイン電極層305bと酸化物半導体層364に接
してドレイン電極層316bを形成する。
【0234】
ソース電極層316aは、酸化物半導体層364と接するソース電極層305aの端部を
越えてL1の方向に延伸し、ドレイン電極層316bは、酸化物半導体層364と接する
ドレイン電極層305bの端部を越えてL1の方向に延伸する。
【0235】
ソース電極層316aの上記延伸部分と、ドレイン電極層316bの上記延伸部分は酸化
物半導体層364(特に、酸化物半導体層364c)と接している。また、図11(B)
に示すトランジスタ370において、ソース電極層316aの上記延伸部分の酸化物半導
体層364と接する先端部分から、ドレイン電極層316bの上記延伸部分の酸化物半導
体層364と接する先端部分までの間隔がチャネル長であり、図11(B)にL2として
示す。
【0236】
ソース電極層316a及びドレイン電極層316bを形成するための酸素と結合しにくい
導電材料としては、例えば、窒化タンタル、窒化チタンなどの導電性窒化物、またはルテ
ニウムなどを用いることが好ましい。なお、酸素と結合しにくい導電材料には、酸素が拡
散しにくい材料も含まれる。該導電材料の厚さは、好ましくは5nm以上500nm以下
、より好ましくは10nm以上300nm以下、さらに好ましくは10nm以上100n
m以下とする。
【0237】
上記酸素と結合しにくい導電材料をソース電極層316aおよびドレイン電極層316b
に用いることによって、酸化物半導体層364に形成されるチャネル形成領域に酸素欠損
が形成されることを抑制することができ、チャネル形成領域のn型化を抑えることができ
る。したがって、チャネル長が極めて短いトランジスタであっても良好な電気特性を得る
ことができる。すなわち、L2をL1より小さい値とすることが可能となり、例えば、L
2を30nm以下としても良好なトランジスタの電気特性を得ることが可能となる。また
、酸化物半導体層364に含まれる単結晶領域が30nm以上の幅を有している場合には
、チャネル長方向の断面においてチャネル形成領域の全領域が単結晶酸化物半導体層とな
りうる。
【0238】
なお、窒化タンタル、窒化チタンなどの導電性窒化物は、水素を吸蔵する可能性がある。
よって、酸化物半導体層364と接して導電性窒化物を設けることで、酸化物半導体層3
64中の水素濃度を低減することができる。
【0239】
なお、チャネル長が極めて短いトランジスタを形成する場合は、電子ビーム露光などの細
線加工に適した方法を用いてレジストマスクを形成し、エッチング処理を行うことによっ
て、ソース電極層316a及びドレイン電極層316bを形成すればよい。なお、当該レ
ジストマスクとしては、ポジ型レジストを用いれば、露光領域を最小限にすることができ
、スループットを向上させることができる。このような方法を用いれば、チャネル長を3
0nm以下とするトランジスタを作製することができる。
【0240】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施すること
ができる。
【0241】
(実施の形態5)
本発明の一態様に係る半導体装置の一例として、論理回路であるNOR型回路の回路図の
一例を図12(A)に示す。図12(B)はNAND型回路の回路図である。
【0242】
図12(A)に示すNOR型回路において、pチャネル型トランジスタであるトランジス
タ801、802は、チャネル形成領域に酸化物半導体以外の半導体材料(例えば、シリ
コンなど)を用いたトランジスタとし、nチャネル型トランジスタであるトランジスタ8
03、804は、酸化物半導体を含み実施の形態4で示すトランジスタと同様な構造を有
するトランジスタを用いる。
【0243】
シリコンなどの半導体材料を用いたトランジスタは高速動作が容易である。一方、酸化物
半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0244】
論理回路の小型化のために、nチャネル型のトランジスタであるトランジスタ803、8
04は、pチャネル型のトランジスタであるトランジスタ801、802上に積層される
ことが好ましい。例えば、単結晶シリコン基板を用いてトランジスタ801、802を形
成し、絶縁層を介してトランジスタ801、802上にトランジスタ803、804を形
成することが可能である。
【0245】
また、図12(B)に示すNAND型回路では、pチャネル型トランジスタであるトラン
ジスタ811、814は、チャネル形成領域に酸化物半導体以外の半導体材料(例えば、
シリコンなど)を用いたトランジスタとし、nチャネル型トランジスタであるトランジス
タ812、813は、酸化物半導体層を含み、上記実施の形態4で示すトランジスタと同
様な構造を有するトランジスタを用いる。
【0246】
なお、図12(B)に示すNAND型回路において、トランジスタ812、813として
、トランジスタ360と同様な構成を有する構成として、第2のゲート電極の電位を制御
し、例えばGNDとすることでトランジスタ812、813のしきい値電圧をよりプラス
とし、さらにノーマリーオフのトランジスタとすることができる。
【0247】
また、図12(A)に示すNOR回路と同様に、論理回路の小型化のために、nチャネル
型のトランジスタであるトランジスタ812、813は、pチャネル型のトランジスタで
あるトランジスタ811、812上に積層されることが好ましい。
【0248】
本実施の形態に示す半導体装置では、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたオフ電流
の極めて低いトランジスタを適用することで、消費電力を十分に低減することができる。
【0249】
また、異なる半導体材料を用いた半導体素子を積層することにより、微細化及び高集積化
を実現し、かつ安定で高い電気的特性を付与された半導体装置、及び該半導体装置の作製
方法を提供することができる。
【0250】
また、本発明の一態様に係る酸化物半導体層を含むトランジスタの構成を適用することで
、信頼性が高く、安定した特性を示すNOR型回路とNAND型回路を提供することがで
きる。
【0251】
なお、本実施の形態では、実施の形態3に示すトランジスタを使用したNOR型回路とN
AND型回路の例を示したが、特に限定されず、実施の形態3に示すトランジスタを使用
したAND型回路やOR回路などを形成することもできる。
【0252】
または、本実施の形態や、別の実施の形態で述べたトランジスタと、表示素子とを組み合
わせて、表示装置を構成することが可能である。例えば、表示素子、表示素子を有する装
置である表示装置、発光素子、及び発光素子を有する装置である発光装置は、様々な形態
を用いること、又は様々な素子を有することが出来る。表示素子、表示装置、発光素子又
は発光装置の一例としては、EL(エレクトロルミネッセンス)素子(有機物及び無機物
を含むEL素子、有機EL素子、無機EL素子)、LED(白色LED、赤色LED、緑
色LED、青色LEDなど)、トランジスタ(電流に応じて発光するトランジスタ)、電
子放出素子、液晶素子、電子インク、電気泳動素子、グレーティングライトバルブ(GL
V)、プラズマディスプレイ(PDP)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、
圧電セラミックディスプレイ、カーボンナノチューブ、など、電気磁気的作用により、コ
ントラスト、輝度、反射率、透過率などが変化する表示媒体を有するものがある。EL素
子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素子を用い
た表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FED)又はSED
方式平面型ディスプレイ(SED:Surface-conduction Elect
ron-emitter Disply)などがある。液晶素子を用いた表示装置の一例
としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイ、反
射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ)などがある
。電子インク又は電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペーパーなどがあ
る。
【0253】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0254】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態3に示すトランジスタを使用し、電力が供給されない状況
でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置(記憶装置
)の一例を、図面を用いて説明する。
【0255】
図13(A)は、本実施の形態の半導体装置を示す回路図である。
【0256】
図13(A)に示すトランジスタ260は、酸化物半導体以外の半導体材料(例えば、シ
リコンなど)を用いたトランジスタを適用することができ、高速動作が容易である。また
、トランジスタ262には本発明の一態様の酸化物半導体層を含み実施の形態4で示すト
ランジスタと同様な構造を有するトランジスタを適用することができ、その特性により長
時間の電荷保持を可能とする。
【0257】
なお、上記トランジスタは、いずれもnチャネル型トランジスタであるものとして説明す
るが、本実施の形態に示す半導体装置に用いるトランジスタとしては、pチャネル型トラ
ンジスタを用いることもできる。
【0258】
図13(A)において、第1の配線(1st Line)とトランジスタ260のソース
電極層とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line)とトランジスタ260
のドレイン電極層とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line
)とトランジスタ262のソース電極層又はドレイン電極層の一方とは、電気的に接続さ
れ、第4の配線(4th Line)と、トランジスタ262のゲート電極層とは、電気
的に接続されている。そして、トランジスタ260のゲート電極層と、トランジスタ26
2のソース電極層又はドレイン電極層の他方は、容量素子264の電極の一方と電気的に
接続され、第5の配線(5th Line)と、容量素子264の電極の他方は電気的に
接続されている。
【0259】
図13(A)に示す半導体装置では、トランジスタ260のゲート電極層の電位が保持可
能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能であ
る。
【0260】
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、トランジスタ
262がオン状態となる電位にして、トランジスタ262をオン状態とする。これにより
、第3の配線の電位が、トランジスタ260のゲート電極層、および容量素子264に与
えられる。すなわち、トランジスタ260のゲート電極層には、所定の電荷が与えられる
(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷
、Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線
の電位を、トランジスタ262がオフ状態となる電位にして、トランジスタ262をオフ
状態とすることにより、トランジスタ260のゲート電極層に与えられた電荷が保持され
る(保持)。
【0261】
トランジスタ262のオフ電流は極めて低いため、トランジスタ260のゲート電極層の
電荷は長時間にわたって保持される。
【0262】
次に情報の読み出しについて説明する。第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態
で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ260のゲート
電極層に保持された電荷量に応じて、第2の配線は異なる電位をとる。一般に、トランジ
スタ260をnチャネル型とすると、トランジスタ260のゲート電極層にHighレベ
ル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Hは、トランジスタ260のゲ
ート電極層にLowレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Lより
低くなるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは、トランジスタ260を「オン
状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線
の電位をVth_HとVth_Lの中間の電位Vとすることにより、トランジスタ26
0のゲート電極層に与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、High
レベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(>Vth_H)となれ
ば、トランジスタ260は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合
には、第5の配線の電位がV(<Vth_L)となっても、トランジスタ260は「オ
フ状態」のままである。このため、第2の配線の電位を見ることで、保持されている情報
を読み出すことができる。
【0263】
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合、所望のメモリセルの情報のみを読み
出せることが必要になる。このように情報を読み出さない場合には、ゲート電極層の状態
にかかわらずトランジスタ260が「オフ状態」となるような電位、つまり、Vth_H
より小さい電位を第5の配線に与えればよい。又は、ゲート電極層の状態にかかわらずト
ランジスタ260が「オン状態」となるような電位、つまり、Vth_Lより大きい電位
を第5の配線に与えればよい。
【0264】
図13(B)に異なる記憶装置の構造の一形態の例を示す。図13(B)は、半導体装置
の回路構成の一例を示し、図13(C)は半導体装置の一例を示す概念図である。まず、
図13(B)に示す半導体装置について説明を行い、続けて図13(C)に示す半導体装
置について、以下説明を行う。
【0265】
図13(B)に示す半導体装置において、ビット線BLとトランジスタ262のソース電
極またはドレイン電極とは電気的に接続され、ワード線WLとトランジスタ262のゲー
ト電極層とは電気的に接続され、トランジスタ262のソース電極またはドレイン電極と
容量素子254の第1の端子とは電気的に接続されている。
【0266】
酸化物半導体を用いたトランジスタ262は、オフ電流が極めて低いという特徴を有して
いる。このため、トランジスタ262をオフ状態とすることで、容量素子254の第1の
端子の電位(あるいは、容量素子254に蓄積された電荷)を極めて長時間にわたって保
持することが可能である。
【0267】
次に、図13(B)に示す半導体装置(メモリセル250)に、情報の書き込み及び保持
を行う場合について説明する。
【0268】
まず、ワード線WLの電位を、トランジスタ262がオン状態となる電位として、トラン
ジスタ262をオン状態とする。これにより、ビット線BLの電位が、容量素子254の
第1の端子に与えられる(書き込み)。その後、ワード線WLの電位を、トランジスタ2
62がオフ状態となる電位として、トランジスタ262をオフ状態とすることにより、容
量素子254の第1の端子の電位が保持される(保持)。
【0269】
トランジスタ262のオフ電流は極めて低いため、容量素子254の第1の端子の電位(
あるいは容量素子254に蓄積された電荷)を長時間にわたって保持することができる。
【0270】
次に、情報の読み出しについて説明する。トランジスタ262がオン状態となると、浮遊
状態であるビット線BLと容量素子254とが導通し、ビット線BLと容量素子254の
間で電荷が再分配される。その結果、ビット線BLの電位が変化する。ビット線BLの電
位の変化量は、容量素子254の第1の端子の電位(あるいは容量素子254に蓄積され
た電荷)によって、異なる値をとる。
【0271】
例えば、容量素子254の第1の端子の電位をV、容量素子254の容量をC、ビット線
BLが有する容量成分(以下、ビット線容量とも呼ぶ)をCB、電荷が再分配される前の
ビット線BLの電位をVB0とすると、電荷が再分配された後のビット線BLの電位は、
(CB×VB0+C×V)/(CB+C)となる。従って、メモリセル250の状態とし
て、容量素子254の第1の端子の電位がV1とV0(V1>V0)の2状態をとるとす
ると、電位V1を保持している場合のビット線BLの電位(=(CB×VB0+C×V1
)/(CB+C))は、電位V0を保持している場合のビット線BLの電位(=(CB×
VB0+C×V0)/(CB+C))よりも高くなることがわかる。
【0272】
そして、ビット線BLの電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すことができ
る。
【0273】
このように、図13(B)に示す半導体装置は、トランジスタ262のオフ電流が極めて
低いという特徴から、容量素子254に蓄積された電荷は長時間にわたって保持すること
ができる。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度
を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また
、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能であ
る。
【0274】
次に、図13(C)に示す半導体装置について、説明を行う。
【0275】
図13(C)に示す半導体装置は、上部に記憶回路として図13(B)に示したメモリセ
ル250を複数有するメモリセルアレイ251(メモリセルアレイ251a及びメモリセ
ルアレイ251bを有し、下部に、メモリセルアレイ251を動作させるために必要な周
辺回路253を有する。なお、周辺回路253は、メモリセルアレイ251と電気的に接
続されている。
【0276】
図13(C)に示した構成とすることにより、周辺回路253をメモリセルアレイ251
(メモリセルアレイ251a及びメモリセルアレイ251b)の直下に設けることができ
るため半導体装置の小型化を図ることができる。
【0277】
周辺回路253に設けられるトランジスタは、トランジスタ262とは異なる半導体材料
を用いるのがより好ましい。例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、
炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いることが
好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いたト
ランジスタは、十分な高速動作が可能である。したがって、前記トランジスタにより、高
速動作が要求される各種回路(論理回路、駆動回路など)を好適に実現することが可能で
ある。
【0278】
なお、図13(C)に示した半導体装置では、2つのメモリセルアレイ251(メモリセ
ルアレイ251aと、メモリセルアレイ251b)が積層された構成を例示したが、積層
するメモリセルアレイの数はこれに限定されない。3つ以上のメモリセルアレイを積層す
る構成としてもよい。
【0279】
トランジスタ262として、本発明の一態様の酸化物半導体層をチャネル形成領域に用い
るトランジスタを適用することによって、長期にわたり記憶内容を保持することが可能で
ある。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、或いは、リフレッシュ動作の頻度が極
めて少ない半導体記憶装置とすることが可能となるため、消費電力を十分に低減すること
ができる。
【0280】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0281】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示パネルの構成について、図14を参照しながら
説明する。
【0282】
図14(A)は、本発明の一態様の表示パネルの上面図であり、図14(B)は、本発明
の一態様の表示パネルの画素に液晶素子を適用する場合に用いることができる画素回路を
説明するための回路図である。また、図14(C)は、本発明の一態様の表示パネルの画
素に有機EL素子を適用する場合に用いることができる画素回路を説明するための回路図
である。
【0283】
画素部に配置するトランジスタは、実施の形態3に従って形成することができる。また、
当該トランジスタはnチャネル型とすることが容易なので、駆動回路のうち、nチャネル
型トランジスタで構成することができる駆動回路の一部を画素部のトランジスタと同一基
板上に形成する。このように、画素部や駆動回路に実施の形態3に示すトランジスタを用
いることにより、信頼性の高い表示装置を提供することができる。
【0284】
アクティブマトリクス型表示装置のブロック図の一例を図14(A)に示す。表示装置の
基板500上には、画素部501、第1の走査線駆動回路502、第2の走査線駆動回路
503、信号線駆動回路504を有する。画素部501には、複数の信号線が信号線駆動
回路504から延伸して配置され、複数の走査線が第1の走査線駆動回路502、及び第
2の走査線駆動回路503から延伸して配置されている。なお走査線と信号線との交差領
域には、各々、表示素子を有する画素がマトリクス状に設けられている。また、表示装置
の基板500はFPC(Flexible Printed Circuit)等の接続
部を介して、タイミング制御回路(コントローラ、制御ICともいう)に接続されている
【0285】
図14(A)では、第1の走査線駆動回路502、第2の走査線駆動回路503、信号線
駆動回路504は、画素部501と同じ基板500上に形成される。そのため、外部に設
ける駆動回路等の部品の数が減るので、コストの低減を図ることができる。また、基板5
00外部に駆動回路を設けた場合、配線を延伸させる必要が生じ、配線間の接続数が増え
る。同じ基板500上に駆動回路を設けた場合、その配線間の接続数を減らすことができ
、信頼性の向上、又は歩留まりの向上を図ることができる。
【0286】
<液晶パネル>
また、画素の回路構成の一例を図14(B)に示す。ここでは、VA型液晶表示パネルの
画素に適用することができる画素回路を示す。
【0287】
この画素回路は、一つの画素に複数の画素電極層を有する構成に適用できる。それぞれの
画素電極層は異なるトランジスタに接続され、各トランジスタは異なるゲート信号で駆動
できるように構成されている。これにより、マルチドメイン設計された画素の個々の画素
電極層に印加する信号を、独立して制御できる。
【0288】
トランジスタ516のゲート配線512と、トランジスタ517のゲート配線513には
、異なるゲート信号を与えることができるように分離されている。一方、データ線として
機能するソース電極層又はドレイン電極層514は、トランジスタ516とトランジスタ
517で共通に用いられている。トランジスタ516とトランジスタ517は実施の形態
3で説明するトランジスタを適宜用いることができる。これにより、信頼性の高い液晶表
示パネルを提供することができる。
【0289】
トランジスタ516と電気的に接続する第1の画素電極層と、トランジスタ517と電気
的に接続する第2の画素電極層の形状について説明する。第1の画素電極層と第2の画素
電極層の形状は、スリットによって分離されている。第1の画素電極層はV字型に広がる
形状を有し、第2の画素電極層は第1の画素電極層の外側を囲むように形成される。
【0290】
トランジスタ516のゲート電極層はゲート配線512と接続され、トランジスタ517
のゲート電極層はゲート配線513と接続されている。ゲート配線512とゲート配線5
13に異なるゲート信号を与えてトランジスタ516とトランジスタ517の動作タイミ
ングを異ならせ、液晶の配向を制御できる。
【0291】
また、容量配線510と、誘電体として機能するゲート絶縁層と、第1の画素電極層また
は第2の画素電極層と電気的に接続する容量電極とで保持容量を形成してもよい。
【0292】
マルチドメイン構造は、一画素に第1の液晶素子518と第2の液晶素子519を備える
。第1の液晶素子518は第1の画素電極層と対向電極層とその間の液晶層とで構成され
、第2の液晶素子519は第2の画素電極層と対向電極層とその間の液晶層とで構成され
る。
【0293】
なお、図14(B)に示す画素回路は、これに限定されない。例えば、図14(B)に示
す画素に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、トランジスタ、センサ、又は論理回路な
どを追加してもよい。
【0294】
<有機ELパネル>
また、画素の回路構成の他の一例を図14(C)に示す。ここでは、有機EL素子を用い
た表示パネルの画素構造を示す。
【0295】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極の一方から電子が、
他方から正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして
、電子および正孔が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、そ
の励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光
素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0296】
図14(C)は、適用可能な画素回路の一例を示す図である。ここではnチャネル型のト
ランジスタを1つの画素に2つ用いる例を示す。なお、本発明の一態様の酸化物半導体層
は、nチャネル型のトランジスタのチャネル形成領域に用いることができる。また、当該
画素回路は、デジタル時間階調駆動を適用することができる。
【0297】
適用可能な画素回路の構成及びデジタル時間階調駆動を適用した場合の画素の動作につい
て説明する。
【0298】
画素520は、スイッチング用トランジスタ521、駆動用トランジスタ522、発光素
子524及び容量素子523を有している。スイッチング用トランジスタ521は、ゲー
ト電極層が走査線526に接続され、第1電極(ソース電極層及びドレイン電極層の一方
)が信号線525に接続され、第2電極(ソース電極層及びドレイン電極層の他方)が駆
動用トランジスタ522のゲート電極層に接続されている。駆動用トランジスタ522は
、ゲート電極層が容量素子523を介して電源線527に接続され、第1電極が電源線5
27に接続され、第2電極が発光素子524の第1電極(画素電極)に接続されている。
発光素子524の第2電極は共通電極528に相当する。共通電極528は、同一基板上
に形成される共通電位線と電気的に接続される。
【0299】
スイッチング用トランジスタ521および駆動用トランジスタ522は実施の形態3で説
明するトランジスタを適宜用いることができる。これにより、信頼性の高い有機EL表示
パネルを提供することができる。
【0300】
発光素子524の第2電極(共通電極528)の電位は低電源電位に設定する。なお、低
電源電位とは、電源線527に設定される高電源電位より低い電位であり、例えばGND
、0Vなどを低電源電位として設定することができる。発光素子524の順方向のしきい
値電圧以上となるように高電源電位と低電源電位を設定し、その電位差を発光素子524
に印加することにより、発光素子524に電流を流して発光させる。なお、発光素子52
4の順方向電圧とは、所望の輝度とする場合の電圧を指しており、少なくとも順方向しき
い値電圧を含む。
【0301】
なお、容量素子523は駆動用トランジスタ522のゲート容量を代用することにより省
略できる。駆動用トランジスタ522のゲート容量については、チャネル形成領域とゲー
ト電極層との間で容量が形成されていてもよい。
【0302】
次に、駆動用トランジスタ522に入力する信号について説明する。電圧入力電圧駆動方
式の場合、駆動用トランジスタ522が十分にオンするか、オフするかの二つの状態とな
るようなビデオ信号を、駆動用トランジスタ522に入力する。なお、駆動用トランジス
タ522を線形領域で動作させるために、電源線527の電圧よりも高い電圧を駆動用ト
ランジスタ522のゲート電極層にかける。また、信号線525には、電源線電圧に駆動
用トランジスタ522の閾値電圧Vthを加えた値以上の電圧をかける。
【0303】
アナログ階調駆動を行う場合、駆動用トランジスタ522のゲート電極層に発光素子52
4の順方向電圧に駆動用トランジスタ522の閾値電圧Vthを加えた値以上の電圧をか
ける。なお、駆動用トランジスタ522が飽和領域で動作するようにビデオ信号を入力し
、発光素子524に電流を流す。また、駆動用トランジスタ522を飽和領域で動作させ
るために、電源線527の電位を、駆動用トランジスタ522のゲート電位より高くする
。ビデオ信号をアナログとすることで、発光素子524にビデオ信号に応じた電流を流し
、アナログ階調駆動を行うことができる。
【0304】
なお、画素回路の構成は、図14(C)に示す画素構成に限定されない。例えば、図14
(C)に示す画素回路にスイッチ、抵抗素子、容量素子、センサ、トランジスタ又は論理
回路などを追加してもよい。
【0305】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0306】
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の一態様の酸化物半導体層を用いた半導体装置および電子機器
の構成について、図15および図16を参照しながら説明する。
【0307】
図15は、本発明の一態様の酸化物半導体層を適用した半導体装置を含む電子機器のブロ
ック図である。
【0308】
図16は、本発明の一態様の酸化物半導体層を適用した半導体装置を含む電子機器の外観
図である。
【0309】
図15に示す電子機器はRF回路901、アナログベースバンド回路902、デジタルベ
ースバンド回路903、バッテリー904、電源回路905、アプリケーションプロセッ
サ906、フラッシュメモリ910、ディスプレイコントローラ911、メモリ回路91
2、ディスプレイ913、タッチセンサ919、音声回路917、キーボード918など
より構成されている。
【0310】
アプリケーションプロセッサ906はCPU907、DSP908、インターフェイス(
IF)909を有している。また、メモリ回路912はSRAMまたはDRAMで構成す
ることができる。
【0311】
実施の形態3で説明するトランジスタを、メモリ回路912に適用することにより、情報
の書き込みおよび読み出しが可能な信頼性の高い電子機器を提供することができる。
【0312】
また、実施の形態3で説明するトランジスタを、CPU907またはDSP908に含ま
れるレジスタ等に適用することにより、情報の書き込みおよび読み出しが可能な信頼性の
高い電子機器を提供することができる。
【0313】
なお、実施の形態3で説明するトランジスタのオフリーク電流が極めて低い場合は、長期
間の記憶内容の保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減されたメモリ回路912を提供
できる。また、パワーゲーティングされている期間に、パワーゲーティング前の状態をレ
ジスタ等に記憶することができるCPU907またはDSP908を提供することができ
る。
【0314】
また、ディスプレイ913は表示部914、ソースドライバ915、ゲートドライバ91
6によって構成されている。
【0315】
表示部914はマトリクス状に配置された複数の画素を有する。画素は画素回路を備え、
画素回路はゲートドライバ916と電気的に接続されている。
【0316】
実施の形態3で説明するトランジスタを、画素回路またはゲートドライバ916に適宜用
いることができる。これにより、信頼性の高いディスプレイを提供することができる。
【0317】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機とも
いう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメ
ラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型
ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられ
る。
【0318】
図16(A)は、携帯型の情報端末であり、本体1101、筐体1102、表示部110
3a、1103bなどによって構成されている。表示部1103bはタッチパネルとなっ
ており、表示部1103bに表示されるキーボードボタン1104を触れることで画面操
作や、文字入力を行うことができる。勿論、表示部1103aをタッチパネルとして構成
してもよい。実施の形態3で示したトランジスタをスイッチング素子として液晶パネルや
有機発光パネルを作製して表示部1103a、1103bに適用することにより、信頼性
の高い携帯型の情報端末とすることができる。
【0319】
図16(A)に示す携帯型の情報端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など
)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表
示した情報を操作又は編集する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を
制御する機能、等を有することができる。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(
イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。
【0320】
また、図16(A)に示す携帯型の情報端末は、無線で情報を送受信できる構成としても
よい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロード
する構成とすることも可能である。
【0321】
図16(B)は、携帯音楽プレイヤーであり、本体1021には表示部1023と、耳に
装着するための固定部1022と、スピーカー、操作ボタン1024、外部メモリスロッ
ト1025等が設けられている。実施の形態3で示したトランジスタをスイッチング素子
として液晶パネルや有機発光パネルを作製して表示部1023に適用することにより、よ
り信頼性の高い携帯音楽プレイヤーとすることができる。
【0322】
さらに、図16(B)に示す携帯音楽プレイヤーにアンテナやマイク機能や無線機能を持
たせ、携帯電話と連携させれば、乗用車などを運転しながらワイヤレスによるハンズフリ
ーでの会話も可能である。
【0323】
図16(C)は、携帯電話であり、筐体1030及び筐体1031の二つの筐体で構成さ
れている。筐体1031には、表示パネル1032、スピーカー1033、マイクロフォ
ン1034、ポインティングデバイス1036、カメラ用レンズ1037、外部接続端子
1038などを備えている。また、筐体1030には、携帯電話の充電を行う太陽電池セ
ル1040、外部メモリスロット1041などを備えている。また、アンテナは筐体10
31内部に内蔵されている。実施の形態3で説明するトランジスタを表示パネル1032
に適用することにより、信頼性の高い携帯電話とすることができる。
【0324】
また、表示パネル1032はタッチパネルを備えており、図16(C)には映像表示され
ている複数の操作キー1035を点線で示している。なお、太陽電池セル1040で出力
される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0325】
例えば、昇圧回路などの電源回路に用いられるパワートランジスタも実施の形態3で説明
するトランジスタの酸化物半導体層の膜厚を2μm以上50μm以下とすることで形成す
ることができる。
【0326】
表示パネル1032は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル
1032と同一面上にカメラ用レンズ1037を備えているため、テレビ電話が可能であ
る。スピーカー1033及びマイクロフォン1034は音声通話に限らず、テレビ電話、
録音、再生などが可能である。さらに、筐体1030と筐体1031は、スライドし、図
16(C)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適
した小型化が可能である。
【0327】
外部接続端子1038はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能
であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部
メモリスロット1041に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応でき
る。
【0328】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであっても
よい。
【0329】
図16(D)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置1050は、
筐体1051に表示部1053が組み込まれている。表示部1053により、映像を表示
することが可能である。また、筐体1051を支持するスタンド1055にCPUが内蔵
されている。実施の形態3で説明するトランジスタを表示部1053およびCPUに適用
することにより、信頼性の高いテレビジョン装置1050とすることができる。
【0330】
テレビジョン装置1050の操作は、筐体1051が備える操作スイッチや、別体のリモ
コン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から
出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0331】
なお、テレビジョン装置1050は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機に
より一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線に
よる通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向
(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0332】
また、テレビジョン装置1050は、外部接続端子1054や、記憶媒体再生録画部10
52、外部メモリスロットを備えている。外部接続端子1054は、USBケーブルなど
の各種ケーブルと接続可能であり、パーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能で
ある。記憶媒体再生録画部1052では、ディスク状の記録媒体を挿入し、記録媒体に記
憶されているデータの読み出し、記録媒体への書き込みが可能である。また、外部メモリ
スロットに差し込まれた外部メモリ1056にデータ保存されている画像や映像などを表
示部1053に映し出すことも可能である。
【0333】
また、実施の形態3で説明するトランジスタのオフリーク電流が極めて低い場合は、当該
トランジスタを外部メモリ1056やCPUに適用することにより、消費電力が十分に低
減された信頼性の高いテレビジョン装置1050とすることができる。
【実施例1】
【0334】
本実施例では、本発明の一態様に係る酸化物半導体層に含まれるナノ結晶について、ナノ
結晶酸化物半導体膜の電子線回折パターンを用いて、以下説明を行う。
【0335】
ナノ結晶酸化物半導体膜は、ビーム径が10nmφ以下とした電子線回折(極微電子線回
折)を用いた電子線回折パターンにおいて、非晶質状態を示すハローパターンとも、特定
の面に配向した結晶状態を示す規則性を有するスポットとも異なり、方向性を持たないス
ポットが観察される酸化物半導体膜である。
【0336】
図17(A)にナノ結晶酸化物半導体膜の断面TEM(Transmission El
ectron Microscopy(透過型電子顕微鏡))像を示す。また、図17
B)に図17(A)のポイント1において極微電子線回折を用いて測定した電子線回折パ
ターンを、図17(C)に図17(A)のポイント2において極微電子線回折を用いて測
定した電子線回折パターンを、図17(D)に図17(A)のポイント3において極微電
子線回折を用いて測定した電子線回折パターンをそれぞれ示す。
【0337】
図17では、ナノ結晶酸化物半導体膜の一例として、In-Ga-Zn系酸化物膜を石英
ガラス基板上に膜厚50nmで成膜した試料を用いる。図17に示すナノ結晶酸化物半導
体膜の成膜条件は、In:Ga:Zn=1:1:1(原子数比)である酸化物ターゲット
を用いて、酸素雰囲気下(流量45sccm)、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.
5kW、基板温度を室温とした。そして、成膜したナノ結晶酸化物半導体膜を100nm
以下(例えば、40nmプラスマイナス10nm)の幅に薄片化し、断面TEM像及び極
微電子線回折による電子線回折パターンを得た。
【0338】
図17(A)では、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製「H-9000NAR
」)を用い、加速電圧を300kV、倍率200万倍として撮影したナノ結晶酸化物半導
体膜の断面TEM像である。また、図17(B)乃至図17(D)は、透過型電子顕微鏡
(日立ハイテクノロジーズ製「HF-2000」)を用い、加速電圧を200kV、ビー
ム径を約1nmφとして極微電子線回折によって得られた電子線回折パターンである。な
お、ビーム径を約1nmφとした場合の極微電子線回折での測定範囲は、5nmφ以上1
0nmφ以下である。
【0339】
図17(B)に示すように、ナノ結晶酸化物半導体膜は、極微電子線回折を用いた電子線
回折パターンにおいて、円周状に配置された複数のスポット(輝点)が観察される。換言
すると、ナノ結晶酸化物半導体膜では、円周状(同心円状)に分布した複数のスポットが
観察されるともいえる。または、円周状に分布した複数のスポットが複数の同心円を形成
するともいえる。
【0340】
また、石英ガラス基板との界面近傍である図17(D)及び、ナノ結晶酸化物半導体膜の
膜厚方向中央部の図17(C)においても図17(B)と同様に円周状に分布した複数の
スポットが観察される。図17(C)において、第1の円周までの半径(メインスポット
からの距離)は、3.88/nmから4.93/nmであった。面間隔に換算すると、0
.203nmから0.257nmである。
【0341】
図17の極微電子線回折パターンより、ナノ結晶酸化物半導体膜は、面方位が不規則であ
って、且つ、大きさの異なる結晶部が複数混在する膜であることがわかる。
【0342】
次いで、図18(A)にナノ結晶酸化物半導体膜の平面TEM像を示す。また、図18
B)に図18(A)において円で囲んだ領域を、制限視野電子線回折を用いて測定した電
子線回折パターンを示す。
【0343】
図18では、ナノ結晶酸化物半導体膜の一例として、In-Ga-Zn系酸化物膜を石英
ガラス基板上に膜厚30nmで成膜した試料を用いる。図18に示すナノ結晶酸化物半導
体膜の成膜条件は、In:Ga:Zn=1:1:1(原子数比)である酸化物ターゲット
を用いて、酸素雰囲気下(流量45sccm)、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.
5kW、基板温度を室温とした。そして、試料を薄片化し、ナノ結晶酸化物半導体膜の平
面TEM像及び電子線回折による電子線回折パターンを得た。
【0344】
図18(A)では、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製「H-9000NAR
」)を用い、加速電圧を300kV、倍率50万倍として撮影したナノ結晶酸化物半導体
膜の平面TEM写真である。また、図18(B)は、制限視野を300nmφとして電子
線回折によって得られた電子線回折パターンである。なお、電子線の広がりを考慮すると
、測定範囲は、300nmφ以上である。
【0345】
図18(B)に示すように、ナノ結晶酸化物半導体膜では、極微電子線回折よりも測定範
囲の広い制限視野電子線回折を用いた電子線回折パターンでは、極微電子線回折によって
観察された複数のスポットがみられず、ハローパターンが観察される。
【0346】
次に、図19に、図17及び図18の電子線回折パターンにおける回折強度の分布を概念
的に示す。図19(A)は、図17(B)乃至図17(D)に示す極微電子線回折パター
ンにおける回折強度の分布の概念図である。また、図19(B)は、図18(B)に示す
制限視野電子線回折パターンにおける回折強度の分布の概念図である。また、図19(C
)は単結晶構造または多結晶構造の電子線回折パターンにおける回折強度の分布の概念図
である。
【0347】
図19において、縦軸はスポットなどの分布を表す電子線回折強度(任意単位)、横軸は
メインスポットからの距離を示す。
【0348】
図19(C)に示す単結晶構造または多結晶構造においては、結晶部が配向する面の面間
隔(d値)に応じた、メインスポットからの特定の距離にピークがみられる。
【0349】
一方、図17に示すようにナノ結晶酸化物半導体膜の極微電子線回折パターンで観察され
る複数のスポットによって形成された円周状の領域は、比較的大きい幅を有する。よって
図19(A)は離散的な分布を示す。また、極微電子線回折パターンにおいて、同心円
状の領域間に明確なスポットとならないものの輝度の高い領域が存在することがわかる。
【0350】
また、図19(B)に示すように、ナノ結晶酸化物半導体膜の制限視野電子線回折パター
ンにおける電子線回折強度分布は、連続的な強度分布を示す。図19(B)は、図19
A)に示す電子線回折強度分布を広範囲で観察した結果と近似可能であるため、複数のス
ポットが重なってつながり、連続的な強度分布が得られたものと考察できる。
【0351】
図19(A)乃至図19(C)に示すように、ナノ結晶酸化物半導体膜は、面方位が不規
則であり、且つ、大きさの異なる結晶部が複数混在する膜であり、且つ、その結晶部は、
制限視野電子線回折パターンにおいてはスポットが観察されない程度に、極微細であるこ
とが示唆される。
【0352】
複数のスポットが観察された図17において、ナノ結晶酸化物半導体膜は50nm以下に
薄片化されている。また電子線のビーム径は1nmφに収束されているため、その測定範
囲は5nm以上10nm以下である。よって、ナノ結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部
は、50nm以下であり、例えば、10nm以下、または5nm以下であることが推測さ
れる。
【0353】
ここで、図20に、石英ガラス基板における極微電子線回折パターンを示す。図20の測
定条件は、図17(B)乃至図17(D)に示す電子線回折パターンと同様とした。
【0354】
図20に示すように、非晶質構造を有する石英ガラス基板では、特定のスポットを有さず
、メインスポットから輝度が連続的に変化するハローパターンが観測される。このように
、非晶質構造を有する膜においては、極微小な領域の電子線回折を行ったとしても、ナノ
結晶酸化物半導体膜で観察されるような円周状に分布した複数のスポットが観察されない
。従って、図17(B)乃至図17(D)で観察される円周状に分布した複数のスポット
は、ナノ結晶酸化物半導体膜に特有のものであることが確認される。
【0355】
また、図21に、図17(A)に示すポイント2に、ビーム径を約1nmφに収束した電
子線を1分間照射した後に、測定を行った電子線回折パターンを示す。
【0356】
図21に示す電子線回折パターンは、図17(C)に示す電子線回折パターンと同様に、
円周状に分布した複数のスポットが観察され、両者の測定結果に特段の相違点は確認され
ない。このことは、図17(C)の電子線回折パターンで確認された結晶部は酸化物半導
体膜の成膜時から存在していることを意味しており、収束した電子線を照射したことで結
晶部が形成されたものではないことを意味する。
【0357】
次に、図22に、図17(A)に示す断面TEM像の部分拡大図を示す。図22(A)は
図17(A)のポイント1近傍(ナノ結晶酸化物半導体膜表面)を、倍率800万倍で
観察した断面TEM像である。また、図22(B)は、図17(A)のポイント2近傍(
ナノ結晶酸化物半導体膜の膜厚方向中央部)を、倍率800万倍で観察した断面TEM像
である。
【0358】
図22に示す断面TEM像からは、ナノ結晶酸化物半導体膜において結晶構造が明確には
確認できない。
【0359】
また、図17及び図18の観察に用いた、石英ガラス基板上に本実施の形態のナノ結晶酸
化物半導体膜が成膜された試料をX線回折(XRD:X-Ray Diffractio
n)を用いて分析した。図23にout-of-plane法を用いてXRDスペクトル
を測定した結果を示す。
【0360】
図23において、縦軸はX線回折強度(任意単位)であり、横軸は回折角2θ(deg.
)である。なお、XRDスペクトルの測定は、Bruker AXS社製X線回折装置D
-8 ADVANCEを用いた。
【0361】
図23に示すように、2θ=20乃至23°近傍に石英に起因するピークが観察されるも
のの、ナノ結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部に起因するピークは確認できない。
【0362】
図22及び図23の結果からも、ナノ結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、極微細な
結晶部であることが示唆される。
【0363】
以上示したように、本実施例のナノ結晶酸化物半導体膜では、測定範囲の広いX線回折(
XRD:X-ray diffraction)による分析では配向を示すピークが検出
されず、また、測定範囲の広い制限視野電子線回折によって得られる電子線回折パターン
では、ハローパターンが観測される。よって、本実施例のナノ結晶酸化物半導体膜は、巨
視的には無秩序な原子配列を有する膜と同等であるといえる。しかしながら、電子線のビ
ーム径が十分に小さい径(例えば、10nmφ以下)の極微電子線回折によってナノ結晶
酸化物半導体膜を測定することで、得られる極微電子線回折パターンではスポット(輝点
)を観測することができる。よって、本実施例のナノ結晶酸化物半導体膜は、面方位の不
規則な極微な結晶部(例えば、粒径が10nm以下、または5nm以下、または3nm以
下の結晶部)が凝集して形成された膜と推測できる。また、極微細な結晶部を含有するナ
ノ結晶領域は、ナノ結晶酸化物半導体膜の膜厚方向の全領域において含まれる。
【実施例2】
【0364】
本実施例では、酸化物半導体層中の不純物が、酸化物半導体層の結晶性に及ぼす影響を計
算した。
【0365】
本実施例においては、酸化物半導体層中に含まれる不純物として水素を想定し、酸化物半
導体層への水素の添加量と、当該水素を添加された酸化物半導体層の秩序性との相関を第
一原理計算により調べた。
【0366】
酸化物半導体層としては、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]のIn-Ga-Z
n酸化物を適用した。はじめに、図24に示す28原子の構造を最適化した後、a軸及び
b軸をそれぞれ2倍にして、112原子を含む格子とした。そして、112原子を含む格
子に水素(H)を添加した構造と、112原子を含む格子に水素(H)を添加しない構造
に対してそれぞれ温度を変化させ、各原子の運動を計算し、水素の添加の有無による構造
の違いを調べた。
【0367】
本実施例において、水素添加の構造では、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]の
In-Ga-Zn酸化物の112原子を含む格子に、水素原子4個(水素濃度3.45a
tom%)、又は、水素原子8個(水素濃度6.67atom%)を添加した。ここで、
添加した水素は完全結晶の格子内に配置した。
【0368】
水素添加なし、水素原子4個添加、水素原子8個添加の3つの構造に対して、分子動力学
計算を行い、水素添加によるIn-Ga-Zn酸化物内の結合力の変化と構造乱れについ
て調べるため、動径分布関数による解析を行った。計算条件を表1に示す。なお、計算は
”VASP(Vienna Ab-initio Simulation Packag
e)”を用いて行った。
【0369】
【表1】
【0370】
計算結果を図25に示す。図25(A)は、初期状態のIn-Ga-Zn酸化物の結晶構
造である。図25(B)は、水素添加なしのIn-Ga-Zn酸化物において、温度を2
500Kとした場合の5psec後の結晶構造である。図25(C)は、水素原子4個添
加した(水素濃度3.45atom%)のIn-Ga-Zn酸化物において、温度を25
00Kとした場合の5psec後の結晶構造である。そして、図25(D)は、水素原子
8個添加した(水素濃度6.67atom%)のIn-Ga-Zn酸化物において、温度
を2500Kとした場合の5psec後の結晶構造である。
【0371】
図25より、水素を添加した構造では、水素を添加していない構造と比較して結晶構造が
乱れていることが確認される。これは、In-Ga-Zn酸化物内での結合が水素添加に
よって弱くなっていることを示唆している。
【0372】
In-Ga-Zn酸化物内での結合強度に対する水素の添加を定量的に評価するため、3
psecから5psecの構造に対して、水素以外の元素であるIn、Ga、Zn、Oの
みを対象とした動径分布関数を計算した。計算結果を図26に示す。
【0373】
図26において矢印で示すように、水素の添加が多い程、第1ピークが低くなり、且つ、
第1ピークと第2ピークの間の谷が浅くなっていることが確認できる。動径分布関数g(
r)とは、ある原子から距離r離れた位置において、他の原子が存在する確率密度を表す
関数である。原子同士の相関が小さくなると、g(r)は1に近づく。したがって、図2
6の結果は、水素の添加により、In-Ga-Zn酸化物内の結合が弱くなり、構造が崩
れやすくなっている(秩序が乱れている)ことを示している。
【0374】
以上より、酸化物半導体層中に不純物(ここでは水素)濃度が高くなると、酸化物半導体
層の秩序が乱れ、結晶性が低減することが確認された。また、非晶質構造の酸化物半導体
層は、不純物(ここでは水素)を多量に含む膜であるということができる。
【実施例3】
【0375】
本実施例では、結晶状態の異なる酸化物半導体層を種々の方法を用いて測定し、比較した
結果について説明する。
【0376】
はじめに、本実施例で用いた測定試料の作製方法を以下に示す。
【0377】
<測定試料A>
測定試料Aには、CAAC-OS層を適用した。測定試料Aでは、In-Ga-Zn酸化
物(In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比])であるターゲットを用い、成膜ガスと
してアルゴンガスを30sccm、酸素ガスを15sccm用い、圧力を0.4Paとし
、基板温度を400℃とし、DC電力を0.5kW印加する条件を用いたスパッタリング
法により、酸化物半導体層を形成した。なお、基板にはガラス基板を用いた。次に、45
0℃の窒素雰囲気で1時間加熱した後、450℃の酸素雰囲気で1時間加熱して、酸化物
半導体層に含まれる水素を脱離させる処理及び酸化物半導体層に酸素を供給する処理を行
った。以上によって、CAAC-OS層である酸化物半導体層を含む測定試料Aを得た。
【0378】
なお、測定試料Aに関し、X線反射率法(XRR(X-ray Reflectomet
ry))を用いた膜密度の測定を行ったところ、膜密度は、6.3g/cmであった。
すなわち、CAAC-OS膜は、膜密度の高い膜である。
【0379】
<測定試料B1、測定試料B2>
測定試料B1及び測定試料B2には、ナノ結晶酸化物半導体層を適用した。測定試料B1
は、In-Ga-Zn酸化物(In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比])であるター
ゲットを用い、成膜ガスとしてアルゴンガスを30sccm、酸素ガスを15sccm用
い、圧力を0.4Paとし、基板温度を室温とし、DC電力を0.5kW印加する条件を
用いたスパッタリング法により、酸化物半導体層を形成した。なお、基板にはガラス基板
を用いた以上によって、ナノ結晶酸化物半導体層である酸化物半導体層を含む測定試料B
1を得た。
【0380】
また、測定試料B2は、測定試料B1と同様に作製した酸化物半導体層を、450℃の窒
素雰囲気で1時間加熱した後、450℃の酸素雰囲気で1時間加熱することで、酸化物半
導体層に含まれる水素を脱離させる処理及び酸化物半導体層に酸素を供給する処理を行っ
た。以上によって、測定試料B2を得た。
【0381】
なお、測定試料B1及び測定試料B2に関し、X線反射率法を用いた膜密度の測定を行っ
た。測定試料B1の膜密度は、5.9g/cmであり、測定試料B2の膜密度は6.1
g/cmであった。
【0382】
従って、加熱処理により、酸化物半導体膜の膜密度を高めることができることが確認され
た。
【0383】
<測定試料C>
測定試料Cには、ナノ結晶酸化物半導体層であって、測定試料B1及び測定試料B2より
も多量に水素を含む酸化物半導体層を適用した。実施例2で説明した通り、酸化物半導体
層中に水素を添加することで、酸化物半導体層の秩序が乱れ、結晶性が低下する。従って
、測定試料Cは、測定試料B1及び測定試料B2よりもさらに結晶性の低下したナノ結晶
酸化物半導体層であるといえる。
【0384】
測定試料Cは、In-Ga-Zn酸化物(In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比])
であるターゲットを用い、成膜ガスとしてアルゴンガスと水素の混合ガス(Ar:H
14.8sccm:0.2sccm)を用い、圧力を2.0Paとし、基板温度を室温と
し、DC電力を200W印加する条件を用いたスパッタリング法により、酸化物半導体層
を形成した。以上によって、測定試料Cを得た。
【0385】
なお、測定試料Cに関し、X線反射率法を用いた膜密度の測定を行った。測定試料Cの膜
密度は、5.0g/cmであり、水素を添加することで膜密度が低下することが確認さ
れた。
【0386】
得られた測定試料A、測定試料B1、及び測定試料Cの極微電子線回折パターンを図27
に示す。図27(A)は、測定試料Aの極微電子線回折パターンであり、図27(B)は
、測定試料B1の極微電子線回折パターンであり、図27(C)は、測定試料Cの極微電
子線回折パターンである。図27に示す極微電子線回折パターンにおいては、電子線のビ
ーム径を1nmφに収束させて観察した。
【0387】
図27より、高密度なCAAC-OS層である測定試料Aでは、スポットが結晶性に由来
して規則的に配列している。一方、低密度なナノ結晶酸化物半導体層である測定試料Cで
は、電子ビームのスポットが広がったハローパターンのように見えるが、一部ではナノ結
晶も残存している。また、中密度なナノ結晶酸化物半導体層である測定試料B1では、ス
ポット状のパターンがより明確に確認される。
【0388】
よって、膜密度の高い膜である程、結晶性が高いことが示された。換言すると、水素濃度
の低い程、結晶性の高い膜が得られることが示された。
【0389】
また、得られた測定試料A、測定試料B1、及び測定試料B2の局在準位(欠陥準位)を
測定した。ここでは、酸化物半導体層をCPM(Constant photocurr
ent method)測定で評価した結果について説明する。
【0390】
CPM測定は、酸化物半導体層に接して設けた一対の電極間に電圧を印加した状態で光電
流値が一定となるように端子間の試料面に照射する光量を調整し、所望の波長の範囲にお
いて照射光量から吸光係数を導出した。
【0391】
測定試料AをCPM測定して得られた吸収係数からバンドテイル起因の吸収係数を除いた
吸収係数、即ち欠陥に起因する吸収係数を図28に示す。また、測定試料B1をCPM測
定して得られた吸収係数からバンドテイル起因の吸収係数を除いた吸収係数、即ち欠陥に
起因する吸収係数を図29(A)に示す。また、測定試料B2をCPM測定して得られた
吸収係数からバンドテイル起因の吸収係数を除いた吸収係数、即ち欠陥に起因する吸収係
数を図29(B)に示す。
【0392】
図28及び図29において、横軸は吸収係数を表し、縦軸は光エネルギーを表す。なお、
図28及び図29の縦軸において、酸化物半導体層の伝導帯の下端を0eVとし、価電子
帯の上端を3.15eVとする。また、図28及び図29において、曲線は吸収係数と光
エネルギーの関係を示す曲線であり、欠陥準位に相当する。
【0393】
図28に示す曲線において、欠陥準位による吸収係数は、5.86×10-4cm-1
あった。即ち、CAAC-OS膜は、欠陥準位による吸収係数が1×10-3/cm未満
、好ましくは1×10-4/cm未満であり、欠陥準位密度の低い膜である。
【0394】
図29(A)より、測定試料B1の欠陥準位による吸収係数は、5.28×10-1cm
-1であった。図29(B)より、測定試料B2の欠陥準位による吸収係数は、1.75
×10-2cm-1であった。従って、加熱処理により、酸化物半導体層に含まれる欠陥
を低減することができる。
【0395】
以上得られた結果をもとに、酸化物半導体(OSと示す)における結晶状態の分類、及び
シリコン(Siと示す)との対比を表2に示す。
【0396】
【表2】
【0397】
表2に示すように、酸化物半導体の結晶状態には、例えば、非晶質酸化物半導体(a-O
S、a-OS:H)、微結晶酸化物半導体(nc-OS、μc-OS)、多結晶酸化物半
導体(多結晶OS)、連続結晶酸化物半導体(CAAC-OS)、単結晶酸化物半導体(
単結晶OS)などがあるといえる。なお、シリコンの結晶状態には、例えば、表2に示す
ように、非晶質シリコン(a-Siやa-Si:H)、微結晶シリコン(nc-Si、μ
c-Si)、多結晶シリコン(多結晶Si)、連続結晶シリコン(CG(Continu
ous Grain)シリコン)、単結晶シリコン(単結晶Si)などがある。
【0398】
各結晶状態における酸化物半導体に対し、ビーム径を10nmφ以下に収束させた電子線
を用いる電子線回折(極微電子線回折)を行うと、以下のような電子線回折パターン(極
微電子線回折パターン)が観測される。非晶質酸化物半導体では、ハローパターン(ハロ
ーリングまたはハローとも言われる。)が観測される。微結晶酸化物半導体では、スポッ
トまたは/およびリングパターンが観測される。多結晶酸化物半導体では、スポットが観
測される。連続結晶酸化物半導体では、スポットが観測される。単結晶酸化物半導体では
、スポットが観測される。
【0399】
なお、極微電子線回折パターンより、微結晶酸化物半導体は、結晶部がナノメートル(n
m)からマイクロメートル(μm)の径であることがわかる。多結晶酸化物半導体は、結
晶部と結晶部との間に粒界を有し、境界が不連続であることがわかる。連続結晶酸化物半
導体は、結晶部と結晶部との間に境界が観測されず、連続的に繋がることがわかる。
【0400】
各結晶状態における酸化物半導体の密度について説明する。非晶質酸化物半導体の密度は
低い。微結晶酸化物半導体の密度は中程度である。連続結晶酸化物半導体の密度は高い。
即ち、連続結晶酸化物半導体の密度は微結晶酸化物半導体の密度より高く、微結晶酸化物
半導体の密度は非晶質酸化物半導体の密度より高い。
【0401】
また、各結晶状態における酸化物半導体に存在する欠陥準位密度(DOS:densit
y of state)の特徴を説明する。非晶質酸化物半導体はDOSが高い。微結晶
酸化物半導体はDOSがやや高い。連続結晶酸化物半導体はDOSが低い。単結晶酸化物
半導体はDOSが極めて低い。即ち、単結晶酸化物半導体は連続結晶酸化物半導体よりD
OSが低く、連続結晶酸化物半導体は微結晶酸化物半導体よりDOSが低く、微結晶酸化
物半導体は非晶質酸化物半導体よりDOSが低い。
【0402】
本発明の一態様に係る酸化物半導体層は、DOSの低い連続結晶酸化物半導体を電流の主
な経路であるチャネルとして含み、且つ、絶縁層とチャネルとの界面に非晶質よりもDO
Sの低減された微結晶酸化物半導体を含む。従って、該酸化物半導体層を含むトランジス
タを信頼性の高いトランジスタとすることが可能となる。
【符号の説明】
【0403】
102 絶縁層
104 酸化物半導体層
104a 領域
104b 領域
106 絶縁層
114 酸化物半導体層
114a 領域
114b 領域
124 酸化物半導体層
124a 領域
124b 領域
124c 領域
250 メモリセル
251 メモリセルアレイ
251a メモリセルアレイ
251b メモリセルアレイ
253 周辺回路
254 容量素子
260 トランジスタ
262 トランジスタ
264 容量素子
300 トランジスタ
301 基板
302 ゲート電極層
303 絶縁層
304 酸化物半導体層
304a 酸化物半導体層
304b 酸化物半導体層
305a ソース電極層
305b ドレイン電極層
306 絶縁層
307 絶縁層
310 トランジスタ
314 酸化物半導体層
314a 酸化物半導体層
314b 酸化物半導体層
316a ソース電極層
316b ドレイン電極層
320 トランジスタ
324 酸化物半導体層
324a 酸化物半導体層
324b 酸化物半導体層
324c 酸化物半導体層
351 絶縁層
352 絶縁層
360 トランジスタ
364 酸化物半導体層
364a 酸化物半導体層
364b 酸化物半導体層
364c 酸化物半導体層
370 トランジスタ
402 絶縁層
404 酸化物半導体層
404a 酸化物半導体層
404b 酸化物半導体層
404c 酸化物半導体層
410 絶縁層
500 基板
501 画素部
502 走査線駆動回路
503 走査線駆動回路
504 信号線駆動回路
510 容量配線
512 ゲート配線
513 ゲート配線
514 ドレイン電極層
516 トランジスタ
517 トランジスタ
518 液晶素子
519 液晶素子
520 画素
521 スイッチング用トランジスタ
522 駆動用トランジスタ
523 容量素子
524 発光素子
525 信号線
526 走査線
527 電源線
528 共通電極
801 トランジスタ
802 トランジスタ
803 トランジスタ
804 トランジスタ
811 トランジスタ
812 トランジスタ
813 トランジスタ
814 トランジスタ
901 RF回路
902 アナログベースバンド回路
903 デジタルベースバンド回路
904 バッテリー
905 電源回路
906 アプリケーションプロセッサ
907 CPU
908 DSP
910 フラッシュメモリ
911 ディスプレイコントローラ
912 メモリ回路
913 ディスプレイ
914 表示部
915 ソースドライバ
916 ゲートドライバ
917 音声回路
918 キーボード
919 タッチセンサ
1000 スパッタリング用ターゲット
1001 イオン
1002 スパッタリング粒子
1003 被成膜面
1021 本体
1022 固定部
1023 表示部
1024 操作ボタン
1025 外部メモリスロット
1030 筐体
1031 筐体
1032 表示パネル
1033 スピーカー
1034 マイクロフォン
1035 操作キー
1036 ポインティングデバイス
1037 カメラ用レンズ
1038 外部接続端子
1040 太陽電池セル
1041 外部メモリスロット
1050 テレビジョン装置
1051 筐体
1052 記憶媒体再生録画部
1053 表示部
1054 外部接続端子
1055 スタンド
1056 外部メモリ
1101 本体
1102 筐体
1103a 表示部
1103b 表示部
1104 キーボードボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29