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  • 特許-疑似血流発生装置及び疑似血流発生方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】疑似血流発生装置及び疑似血流発生方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/00 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
A61B3/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023104792
(22)【出願日】2023-06-27
(62)【分割の表示】P 2019155112の分割
【原出願日】2019-08-27
(65)【公開番号】P2023115140
(43)【公開日】2023-08-18
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100123858
【弁理士】
【氏名又は名称】磯田 志郎
(72)【発明者】
【氏名】小高 沙希
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 達也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 崇
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-519328(JP,A)
【文献】特表2017-514487(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0104725(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0287071(US,A1)
【文献】実開平02-136604(JP,U)
【文献】特表2002-511156(JP,A)
【文献】特開2005-040299(JP,A)
【文献】特開2014-106245(JP,A)
【文献】特開2006-166956(JP,A)
【文献】特開2011-053462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
G09B 23/00 -29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管の断層像を撮像する装置について、その性能の検査又は調整を行うために用いる、疑似血液を疑似血管内で流動させる疑似血流発生装置において、
疑似血液及び前記疑似血液とは相溶性のない液体である非相溶性液体を収容する液体容器と、
前記疑似血液及び/又は前記非相溶性液体に電界を印加する電界印加装置とを有し、
前記疑似血液は、血液に疑似した光学的性質を付与するための微粒子を分散して調整され、
前記微粒子は、錯体、顔料、色素、金属微粒子、樹脂微粒子、又はタンパク質であり、
前記液体容器の少なくとも一部が管状で網状に分岐した形状の疑似血管となっており、
前記電界印加装置により前記疑似血液及び/又は前記非相溶性液体に電界を印加することで、
エレクトロウェッティングの原理により、前記疑似血液を前記疑似血管内で流動させることを特徴とする、
疑似血流発生装置。
【請求項2】
前記微粒子は、銅又は鉄のフタロシアニン錯体を用いることを特徴とする請求項1に記載の疑似血流発生装置。
【請求項3】
前記網状に分岐した形状は、ヒトの網膜表層毛細血管層、網膜深層毛細血管層、網膜外層又は脈絡膜毛細血管板の血管構造を疑似した構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載の疑似血流発生装置。
【請求項4】
血管の断層像を撮像する装置について、その性能の検査又は調整を行うために用いる、疑似血液を網状に分岐した形状の疑似血管内で流動させる疑似血流発生方法であって、
前記疑似血液は、血液に疑似した光学的性質を付与するための微粒子を分散して調整され、
前記微粒子は、錯体、顔料、色素、金属微粒子、樹脂微粒子、又はタンパク質であり、
疑似血管内で流動させる疑似血液に、前記疑似血液とは相溶性のない液体である非相溶性液体を加えて、
前記疑似血液及び/又は前記非相溶性液体に電界を印加することで、エレクトロウェッティングの原理により、前記疑似血液を前記疑似血管内で流動させることを特徴とする、疑似血流発生方法。
【請求項5】
前記微粒子は、銅又は鉄のフタロシアニン錯体を用いることを特徴とする請求項4に記載の疑似血流発生方法。
【請求項6】
前記網状に分岐した形状は、ヒトの網膜表層毛細血管層、網膜深層毛細血管層、網膜外層又は脈絡膜毛細血管板の血管構造を疑似した構造であることを特徴とする請求項4又は5に記載の疑似血流発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OCT装置等の血管の断層像を撮像する装置について、その性能の検査又は調整を行うために用いる疑似血流発生装置に関する。本発明の疑似血流発生装置は、疑似血液を疑似血管内で流動させる装置であり、疑似血液及び疑似血液に相溶性のない液体を収容する液体容器と、液体に電界を印加する電界印加装置とを有し、液体容器の少なくとも一部が疑似血管となっており、エレクトロウェッティングの原理により、疑似血管の内部で疑似血液を流動させる装置である。また、本発明は、エレクトロウェッティングの原理により、疑似血管の内部で疑似血液を流動させる、疑似血流発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:「OCT」と略称される)の原理に基づくOCT装置は、コヒーレンスが低い(可干渉距離が短い)光源を用いて、干渉計を構成し、これにより生体組織等の断層像を得る装置である。このOCT装置を、眼科用の顕微鏡に用いることで、眼の網膜や角膜、虹彩等の断層像を得ることができ、眼の組織の表面だけでなく内部の状態も観察することができる。これにより眼の疾患の診断精度を高め、また、眼科手術の成功率を高めることが可能となった。
OCT装置の応用として、OCT Angiography(OCTA)と呼ばれる技術が開発されている。OCTAは、非侵襲的に血液の流動に基づいて、血管構造を抽出することができる技術である。OCTAの原理は、OCTで眼底の同一部位を複数枚撮影して、変化のあるシグナルのみを画像化するものであり、血液が流れている部位ではOCT画像間に変化が生じ、この動きのある部分のみを血流情報として描出して血管像が構築される。
【0003】
OCT装置は、ヒトの診断等に用いられる医療機器であることから、その製造・出荷にあたっては、その性能を十分に検査又は調整する必要がある。ヒトの実際の眼を被検体として、OCT装置の検査又は調整を行う方法は、ヒトの眼の個人差の問題や、安全性の問題があることから、好ましい方法ではなかった。
【0004】
従来、眼底検査装置の検査又は調整に用いる疑似血管や疑似眼底が開発されている。例えば、特許文献1には、複数の微粒子を有する微粒子層からなる模擬視細胞層と、毛細血管を模したパターンを有する模擬血管パターン層とを有する模擬眼底が開示されている。しかしながら、特許文献1の模擬眼底は、血流を再現できるものではなかった。また、特許文献2には、血液に似た液体が流される透明な細管と、血液に似た液体を流動させるためのポンプを有する模型眼底が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5322172号公報
【文献】実公平5-42803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の疑似血管や疑似眼底は、疑似血流を発生させる場合にポンプのような複雑な機械的機構を要するものであり、眼底における血流を模擬することが容易ではなかった。
そこで、本発明は、前記従来の状況に鑑み、簡単な構成で疑似血流を発生させることができる疑似血流発生装置を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本願の発明者らは鋭意研究した結果、疑似血液及び疑似血液と相溶性のない液体を同一の液体容器内に収容し、液体容器の少なくとも一部を管状の疑似血管とし、液体容器内の液体に電界を印加することで、エレクトロウェッティングの原理により、疑似血液を疑似血管内で流動させることができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明は、疑似血流発生装置に関する下記の第1の発明と、疑似血流発生方法に関する下記の第2の発明を提供する。
(1) 第1の発明は、疑似血液を疑似血管内で流動させる疑似血流発生装置に関するものであり、
疑似血液及び前記疑似血液とは相溶性のない液体である非相溶性液体を収容する液体容器と、
前記疑似血液及び/又は前記非相溶性液体に電界を印加する電界印加装置と
を有し、
前記液体容器の少なくとも一部が管状の疑似血管となっており、
前記電界印加装置により前記疑似血液及び/又は前記非相溶性液体に電界を印加することで、エレクトロウェッティングの原理により、前記疑似血液を前記疑似血管内で流動させることを特徴とする。
(2) 第1の発明の疑似血流発生装置においては、前記液体容器が、前記疑似血管と、前記疑似血管の少なくとも一方の端に設けられた液溜め部とを有することが好ましい。
(3) 前記(2)の疑似血流発生装置においては、前記液溜め部が、鉛直方向又は水平方向に延びる中空管であることが好ましい。
(4) 前記(3)の疑似血流発生装置においては、前記液溜め部が、前記疑似血管との連結部から鉛直上向き方向及び鉛直下向き方向に延びる中空管とすることができる。
(5) 前記(2)~(4)のいずれかの疑似血流発生装置においては、前記液溜め部が、前記疑似血管の両端に設けられていることが好ましい。
(6) 前記いずれかの疑似血流発生装置においては、前記液体容器が、前記疑似血液と前記非相溶性液体とを内部に密封して収容する容器であることが好ましい。
(7) 前記いずれかの疑似血流発生装置においては、前記電界印加装置が、電極と、前記電極に電圧を印加する電圧装置とを有することが好ましい。
(8) 前記(7)の疑似血流発生装置においては、前記電極を、一対の平板電極とすることができる。
(9) 前記(7)の疑似血流発生装置においては、前記電極を、複数に分割され、それぞれの電極について個別にオン・オフを制御できるアレイ電極とすることができる。
(10) 前記(7)の疑似血流発生装置においては、少なくとも2方向に電界を印加する、2以上の電極対を有することにより、同一平面上の任意の方向に電界を印加することもできる。
(11) 前記(7)の疑似血流発生装置においては、少なくとも3つの異なる方向に電界を印加する、3以上の電極対を有することにより、任意の3次元方向に電界を印加することもできる。
(12) 前記(7)~(11)のいずれかの疑似血流発生装置においては、前記電圧装置が、直流電圧及び/又は交流電圧を発生させる装置とすることができる。
(13) 前記(5)の疑似血流発生装置においては、前記疑似血管の両端に設けられた前記液溜め部のそれぞれに対して、個別に電界を印加する電界印加装置を有することが好ましい。
(14) 第2の発明は、疑似血液を疑似血管内で流動させる疑似血流発生方法に関するものであり、
疑似血管内で流動させる疑似血液に、前記疑似血液とは相溶性のない液体である非相溶性液体を加えて、
前記疑似血液及び/又は前記非相溶性液体に電界を印加することで、エレクトロウェッティングの原理により、前記疑似血液を前記疑似血管内で流動させることを特徴とする。(15) 第2の発明の疑似血流発生方法においては、前記電界が、直流電界又は交流電界とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の疑似血流発生装置及び疑似血流発生方法は、液体容器と電界発生装置とで疑似血流を発生できるため、複雑な機械的構成を要することなく、簡単な構成で疑似血流を発生するこることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の疑似血流発生装置の1つの実施形態を模式的に示す図面である。
図2】エレクトロウェッティングの原理を模式的に示す図面である
【発明を実施するための形態】
【0011】
1. 疑似血流発生の原理
本発明の疑似血流発生装置及び疑似血流発生方法は、疑似血液を疑似血管内で流動させる装置及び方法であり、エレクトロウェッティングの原理により、疑似血流を発生させることを特徴としている。
エレクトロウェッティングとは、液滴に電界を印加すると、液滴の表面自由エネルギーが変化することにより、液滴の接触角が変化する現象である。
図2は、エレクトロウェッティングの原理を示す模式図である。図2(A)に示されるように、表面に誘電膜を有する電極上に液滴を形成すると、大気と接する液滴の表面自由エネルギーにより、液滴は盛り上がった形状となる。液滴の盛り上がりの程度は、接触角により表すことができる。接触角とは、図2(A)のθで示されるとおり、液滴の端面が水平面となす角度である。
次に図2(B)に示されるように、液滴に電界を印加すると、液滴の表面自由エネルギーが変化することにより、液滴の盛り上がりの程度、すなわち接触角が変化する。
【0012】
エレクトロウェッティングの原理を利用し、液滴に様々なパターンの電界を印加することで、液滴を自由に変形することができ、例えば、液滴の一部の接触角を変化させる等して、液滴を移動させることが可能となり、また、液滴に周期的する電界を印加して液滴を振動させることも可能となり、液滴の自由なマニピュレーションが可能となる。
図2では、液滴が大気と接触している場合を示したが、互いに相溶性のない2種類以上の液体を接触させて、液体と液体の間に界面を生じさせた場合でも、同様に、表面自由エネルギーの変化を利用して、エレクトロウェッティングにより液体をマニピュレーションすることが可能である。
【0013】
本発明は、上記のエレクトロウェッティングの原理を利用して、疑似血流を発生させる装置及び方法を提供する。
本発明の疑似血流発生装置では、疑似血液と、疑似血液とは相溶性が無い液体である非相溶性液体とを、同じ液体容器内に収容し、疑似血液と非相溶性液体とを接触させて両者の間に界面を生じさせる。
ここで、液体容器の少なくとも一部は管状に形成されており、その管状部分を疑似血管として使用する。
そして、電界印加装置を用いて、液体容器内の疑似血液及び/又は非相溶性液体に電界を印加することで、エレクトロウェッティングの原理により、液体をマニピュレーションして、疑似血液を疑似血管内で流動させることができる。
【0014】
図1は、本発明の疑似血流発生装置の1つの実施形態を示す模式図である。
図1に示されるとおり、疑似血流発生装置1は、液体容器2と電界印加装置3とを有している。液体容器2は、管状の疑似血管201と、2つの液溜め部202,203と、連通部204とを有している。疑似血管201の内部には、逆流を防止するための逆流防止弁205が設けられている。
液体容器2の内部には、疑似血液4と非相溶性液体5が密封して収容されている。疑似血液4と非相溶性溶液5とは互いに相溶性がないため、両者は分離しており、比重の重い疑似血液4は底面側に存在し、比重の軽い非相溶性液体5は上面側に存在している。
電界印加装置3は、電圧装置301と、液溜め部202に電界を印加するための電極302,303と、液溜め部203に電界を印加するための電極304,305とを有している。電圧装置301は、対となる電極302,303の間に電圧を印加することができ、これとは個別に、他の対となる電極304,305の間に電圧を印加することができる。電圧装置301は、直流電圧のみならず交流電圧を印加することもできる。
【0015】
疑似血液4は、非相溶性液体5との間に形成する界面が、その表面自由エネルギーにより盛り上がった形状となっている。ここで、電極302,303により液溜め部202に変動する電界を印加すると、疑似血液4と非相溶性液体5との界面が周期的に振動し、ポンプのような作用が生じ、液溜め部202内に存在する疑似血液4が疑似血管201へと押し出される。疑似血管201内には逆流防止弁205が存在するため、疑似血管201へと押し出された疑似血液4は逆流することがなく、疑似血管201内で疑似血液4が脈動しながら一方向に移動することとなる。
これとは逆向きの血流を発生させる場合には、逆流防止弁205の向きを反対側とし、電極304,305により液溜め部203に変動する電界を印加すると、今度は液溜め部203でポンプのような振動が生じ、液溜め部203内に存在する疑似血液4を疑似血管201へ押し出して、疑似血流を発生させることができる。
【0016】
2. 疑似血流発生装置及び疑似血流発生方法の詳細な説明
本発明の疑似血流発生装置で用いる液体容器は、少なくとも一部が管状の疑似血管となっている容器であれば、いかなる容器でも用いることができる。液体容器は、全体が管状の疑似血管となっている容器を用いることもできるが、疑似血管以外の部分を有することが好ましく、例えば、疑似血管の少なくとも一方の端に液溜め部を有することが好ましい。
液溜め部は、疑似血管よりも容積の大きな形状となっているものであれば、如何なる形状のものでも用いることができ、これらに限定されるわけではないが、円筒状、角柱状、球状等とすることができる。
液溜め部は、より多くの量の疑似血液及び非相溶性液体を収容することで、エレクトロウェッティングにより疑似血液を流動させる効率を向上させることができる。
【0017】
液体容器の液溜め部は、疑似血流を効率的に発生させる観点から、疑似血管の両方の端部に設けることが好ましい。
液溜め部は、鉛直方向又は水平方向に延びる中空管とすることができる。ここで、疑似血管を直線状とすれば、疑似血管と液溜め部によりHの字状の液体容器とすることもできる。
【0018】
液体容器は、開放系の容器とすることもできるが、液体の蒸発を防ぎ、効率良く疑似血流を発生させる観点から、疑似血液と非相溶性液体を内部に密封して収容する容器とすることが好ましい。
液体容器を形成する材料としては、どのような材料を用いてもよいが、疑似血管とする部分には、光透過性のある材料を用いることが好ましい。光透過性のある材料としては、これらに限定されるわけではないが、ガラス、樹脂等を用いることができる。光透過性を有する材料とは、ガラスのような透明な材料に限らず、光を少しでも透過できるものであ
れば、どのような材料であってもよい。
【0019】
疑似血管は、これらに限定されるわけではないが、直線状、曲線状、1つ又は複数の箇所で屈曲した形状、又は網状に分岐した形状等にすることができる。
疑似血管を網状に分岐した形状にする場合には、ヒトの網膜表層毛細血管層、網膜深層毛細血管層、網膜外層又は脈絡膜毛細血管板等の血管構造を疑似した構造としてもよく、又は、碁盤目状に分岐した人工的な構造としてもよい。
疑似血管は、疑似血管がむき出しとなった状態のものでもよく、眼底組織を疑似した材料に埋め込んだ状態としたものでもよい。眼底組織を疑似した材料としては、光透過性のある材料を用いることが好ましい。
疑似血管内には、疑似血液のみを流動させることもできるが、疑似血管中を疑似血液の層と非相溶性溶液の層が2層に分かれて流動させるようにしてもよい。
【0020】
疑似血液は、溶媒に、血液に疑似した光学的性質を付与するための微粒子を分散して調整することが好ましい。ここで溶媒としては、これらに限定されるわけではないが、水や有機溶媒等を用いることができる。また、微粒子としては、光吸収性の化合物の微粒子を用いることが好ましく、これらに限定されるわけではないが、錯体、顔料、色素、金属微粒子、樹脂微粒子、タンパク質等を用いることができる。これらの中でも錯体を用いることが好ましく、フタロシアニン錯体、ポルフィリン錯体等を用いることが好ましい。また、フタロシアニン錯体を用いる場合には、銅又は鉄のフタロシアニン錯体を用いることが好ましい。
【0021】
本発明で使用する「非相溶性液体」とは、疑似血液に加えた場合に、疑似血液と分離する液体であればどのような液体でも用いることができる。例えば、疑似血液が高極性(親水性)の溶媒を用いた疑似血液の場合には、非相溶性液体として、低極性(疎水性)の溶媒をベースとした液体を用いることができる。逆に、疑似血液が低極性(疎水性)の溶媒を用いた疑似血液の場合には、非相溶性液体として、高極性(親水性)の溶媒をベースとした液体を用いることができる。
【0022】
本発明の疑似血流発生装置で用いる電界印加装置は、電極と、電極に電圧を印加する電圧装置とを含むことが好ましい。
電極は、1対の平板電極でもエレクトロウェッティングを行うことが可能であるが、エレクトロウェッティングの自由度を高め、より複雑な疑似血流の制御を行うためには、様々なパターンの電界を印加することができる電極とすることが好ましい。
そのような電極としては、例えば、これらに限定されるわけではないが、電極が、複数に分割され、それぞれの電橋について個別にオン・オフを制御できるアレイ電極を用いることができる。また、少なくとも2方向に電界を印加する、2以上の電極対を使用することにより、同一平面上の任意の方向に電界を印加することもできる。さらに、少なくとも3つの異なる方向に電界を印加する、3以上の電極対を使用することにより、任意の3次元方向に電界を印加することもできる。
【0023】
電圧装置としては、直流の電圧を印加する電圧装置でもエレクトロウェッティングを行うことが可能であるが、エレクトロウェッティングの自由度を高め、より複雑な疑似血流の制御を行うためには、交流の電圧を印加できる電圧装置や、任意の波形の電圧を印加できる電圧装置を用いることが好ましい。
【0024】
本発明は、疑似血液を疑似血管内で流動させる疑似血流発生方法を提供する。
本発明の疑似血流発生方法は、疑似血管内で流動させる疑似血液に、疑似血液とは相溶性のない液体である非相溶性溶液を加えて、疑似血液及び/又は非相溶性液体に電界を印加することで、エレクトロウェッティングの原理により、疑似血液を疑似血管内で流動さ
せる方法である。
本発明の疑似血流発生方法で使用する疑似血液、非相溶性溶液、疑似血管等は、上記したものと同じものを用いることができ、印加する電界としては、直流電界、交流電界、任意の信号により変動する電界等を用いることができる。

図1
図2