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特許7568817ストロークデータに基づく学習及び指導支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ストロークデータに基づく学習及び指導支援システム
(51)【国際特許分類】
   G09B 7/04 20060101AFI20241008BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20241008BHJP
   G06Q 50/20 20120101ALI20241008BHJP
【FI】
G09B7/04
G09B19/00 H
G06Q50/20
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2023195756
(22)【出願日】2023-11-17
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】592212087
【氏名又は名称】株式会社公文教育研究会
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】惣宇利 紀子
【審査官】白形 優依
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-081454(JP,A)
【文献】国際公開第2019/176374(WO,A1)
【文献】特開2015-161892(JP,A)
【文献】特開2019-152864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00 - 9/56
G09B17/00 -19/26
G06Q50/00 -50/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習者の自学自習する力の程度を推定するためのシステムであって、
前記システムは、学習者端末と、情報処理端末とを備え、
前記学習者端末は、学習課題を表示する表示部と、前記学習課題に対する学習者の解答の入力を受け付ける入力受付部と、前記学習者が前記解答に要した時間を学習解答時間として測定する時間測定部と、前記学習者の筆記ストロークを記録するストローク記録部と、前記学習者が前記解答を訂正した訂正回数を記録する訂正回数記録部とを備え、
前記情報処理端末は、
前記学習課題と、前記学習課題に対する正答と、前記学習課題に対する標準解答時間とを記憶し、さらに、前記学習者端末から受信した前記学習解答時間と、前記筆記ストロークと、前記訂正回数とを記憶する記憶部と、
前記正答に基づいて、前記学習者端末から受信した前記解答の採点を行い点数を算出し、前記点数を前記学習者端末に送信する採点部と、前記学習解答時間と前記標準解答時間とを比較して時間判定値を算出する時間判定部と、前記点数、前記訂正回数、および前記時間判定値に基づいて前記筆記ストロークの評価を行うストローク評価部とを有する採点処理部と、
前記ストロークの評価に基づいて、前記自学自習する力の程度の推定結果を提示する推定結果提示部とを備える、システム。
【請求項2】
前記学習者端末が、前記解答を記入するための記入デバイスを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムが、指導者端末を備え、前記推定結果が前記情報処理端末から前記指導者端末に送信される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記訂正回数記録部は、前記学習者が前記解答を一部消去して訂正を行った一部訂正回数と、前記学習者が前記解答を全部消去して訂正を行った全部訂正回数とを記録し、
前記訂正回数は、前記一部訂正回数および前記全部訂正回数の合計またはいずれか一方である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記訂正回数は、1問以上の任意の問題群ごとに設定されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記採点部で採点された前記点数が所定の点数に満たない場合、
前記学習者端末の前記表示部に再学習課題が表示され、
前記学習者の再学習の結果である再解答を前記入力受付部が受け付け、
前記再解答が前記学習者端末に送信され、
前記採点部により前記再解答が採点される、再学習が再度行われる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記再学習課題の内容は、前記学習課題の内容と同一である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記再学習課題の内容は、前記学習課題のうち前記学習者が間違えた問題と、該間違えた問題に類似する問題とのうち、いずれかまたは両方を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記標準解答時間は、1問以上の任意の問題群ごとに設定されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記再解答の点数が所定の点数に満たない場合、前記再解答の点数が前記所定の点数以上となるまで、前記再学習が繰り返される、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
前記再学習が繰り返し行われ、
前記訂正回数記録部は、
前記学習者が1回目の学習時に前記解答を一部消去して訂正を行った回数である1回目一部訂正回数と、
前記学習者が1回目の学習時に前記解答を全部消去して訂正を行った回数である1回目全部訂正回数と、
前記学習者が2回目以降の学習時に前記解答を一部消去して訂正を行った回数の合計である2回目以降一部訂正回数と、
前記学習者が2回目以降の学習時に前記解答を全部消去して訂正を行った回数の合計である2回目以降全部訂正回数とを記録し、
前記訂正回数は、1回目訂正回数と2回目以降訂正回数との合計であり、
前記1回目訂正回数は、前記1回目の学習時に前記学習者が前記解答を一部消去して訂正を行った回数である1回目一部訂正回数と、前記1回目の学習時に前記学習者が前記解答を全部消去して訂正を行った回数である1回目全部訂正回数との合計であり、
前記2回目以降訂正回数は、前記2回目以降の学習時に前記学習者が前記解答を一部消去して訂正を行った回数である2回目以降一部訂正回数と、前記2回目以降の学習時に前記学習者が前記解答を全部消去して訂正を行った回数である2回目以降全部訂正回数との合計であり、
前記記憶部は、前記学習者端末から受信した前記1回目一部訂正回数、前記1回目全部訂正回数、前記2回目以降一部訂正回数、および前記2回目以降全部訂正回数を記憶し、
前記ストローク評価部は、前記点数、前記訂正回数、前記1回目一部訂正回数、前記1回目全部訂正回数、前記2回目以降一部訂正回数、前記2回目以降全部訂正回数、および前記時間判定値に基づいて前記筆記ストロークの評価を行う、請求項6に記載のシステム。
【請求項12】
前記時間測定部は、
前記学習者が1回目の学習時に前記解答に要した時間である1回目学習解答時間と、
前記学習者が2回目以降の学習時に前記解答に要した時間の合計である2回目以降学習解答時間とを記録し、
前記学習解答時間は、前記1回目学習解答時間と前記2回目以降学習解答時間との合計であり、
前記記憶部は、前記学習課題に対する1回目の学習時の標準学習解答時間である1回目標準学習解答時間と、前記学習課題に対する2回目以降の学習時の標準学習解答時間である2回目以降標準学習解答時間とを記憶しており、さらに、前記学習者端末から受信した前記1回目学習解答時間および前記2回目以降学習解答時間を記憶し、
前記時間判定部は、前記1回目学習解答時間と前記1回目標準学習解答時間とを比較して1回目時間判定値を算出し、前記2回目以降学習解答時間と前記2回目以降標準学習解答時間とを比較して2回目以降時間判定値を算出し、
前記ストローク評価部は、前記点数、前記訂正回数、前記1回目時間判定値、および前記2回目以降時間判定値に基づいて前記筆記ストロークの評価を行う、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記ストローク評価部が、1回目の学習時の前記点数、最終回の学習時の前記点数、および前記訂正回数に基づいて前記筆記ストロークの評価を行う、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記自学自習する力の程度は、試行錯誤することを含む自ら考える力、軌道修正する力、または最後までやりきる力の程度を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
システムにより学習者の自学自習する力の程度を推定するための方法であって、
前記システムは、学習者端末と、情報処理端末とを備え、
前記学習者端末は、学習課題を表示する表示部と、前記学習課題に対する学習者の解答の入力を受け付ける入力受付部と、前記学習者が前記解答に要した時間を学習解答時間として測定する時間測定部と、前記学習者の筆記ストロークを記録するストローク記録部と、前記学習者が前記解答を訂正した訂正回数を記録する訂正回数記録部とを備え、
前記情報処理端末は、
前記学習課題と、前記学習課題に対する正答と、前記学習課題に対する標準解答時間とを記憶し、さらに、前記学習者端末から受信した前記学習解答時間と、前記筆記ストロークと、前記訂正回数とを記憶する記憶部と、
採点処理部と、
推定結果提示部とを備え、
前記方法は、
前記表示部が、学習課題を表示するステップと、
前記入力受付部が、前記学習課題に対する学習者の解答の入力を受け付けるステップと、
前記時間測定部が、前記学習者が前記解答に要した解答時間を測定するステップと、
前記ストローク記録部が、前記学習者の筆記ストロークを記録するステップと、
前記訂正回数記録部が、前記学習者が前記解答を訂正した訂正回数を記録するステップと、
前記採点処理部の採点部が、前記正答に基づいて、前記学習者端末から受信した前記解答の採点を行い点数を算出するステップと、
前記採点部が、前記学習者端末に前記点数を送信するステップと、
前記採点処理部の時間判定部が、前記学習解答時間と前記標準解答時間とを比較して時間判定値を算出するステップと、
前記採点処理部のストローク評価部が、前記点数、前記時間判定値、および前記訂正回数に基づいて、前記筆記ストロークの評価を行うステップと、
前記推定結果提示部が、前記筆記ストロークの評価に基づき前記自学自習する力の程度の推定結果を提示するステップとを含む、方法。
【請求項16】
前記解答の前記入力は、記入デバイスを用いて行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記システムが、指導者端末を備え、前記推定結果が前記情報処理端末から前記指導者端末に送信される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記訂正回数を記録するステップにおいて、前記訂正回数記録部は、前記学習者が前記解答を一部消去して訂正を行った一部訂正回数と、前記学習者が前記解答を全部消去して訂正を行った全部訂正回数とを記録し、
前記訂正回数は、前記一部訂正回数および前記全部訂正回数の合計またはいずれか一方である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記訂正回数は、1問以上の任意の問題群ごとに設定されている、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記点数を算出するステップにおいて、前記採点部で採点された前記点数が所定の点数に満たない場合、
前記学習者端末の前記表示部が、再学習課題を表示するステップと、
前記入力受付部が、再学習課題に対する前記学習者の再解答の入力を受け付けるステップと、
前記学習者端末が、前記再解答を前記学習者端末に送信するステップと、
前記採点部が、前記再解答を採点するステップとをさらに備え、
これにより、学習者の再学習が再度行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記再学習課題の内容は、前記学習課題の内容と同一である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記再学習課題の内容は、前記学習課題のうち前記学習者が間違えた問題と、該間違えた問題に類似する問題とのうち、いずれかまたは両方を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記標準解答時間は、1問以上の任意の問題群ごとに設定されている、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記再解答の点数が所定の点数に満たない場合、前記再解答の点数が前記所定の点数以上となるまで、前記再学習が繰り返される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記再学習が繰り返し行われ、
前記訂正回数記録部は、
前記学習者が1回目の学習時に前記解答を一部消去して訂正を行った回数である1回目一部訂正回数と、
前記学習者が1回目の学習時に前記解答を全部消去して訂正を行った回数である1回目全部訂正回数と、
前記学習者が2回目以降の学習時に前記解答を一部消去して訂正を行った回数の合計である2回目以降一部訂正回数と、
前記学習者が2回目以降の学習時に前記解答を全部消去して訂正を行った回数の合計である2回目以降全部訂正回数とを記録し、
前記訂正回数は、1回目訂正回数と2回目以降訂正回数との合計であり、
前記1回目訂正回数は、前記1回目の学習時に前記学習者が前記解答を一部消去して訂正を行った回数である1回目一部訂正回数と、前記1回目の学習時に前記学習者が前記解答を全部消去して訂正を行った回数である1回目全部訂正回数との合計であり、
前記2回目以降訂正回数は、前記2回目以降の学習時に前記学習者が前記解答を一部消去して訂正を行った回数である2回目以降一部訂正回数と、前記2回目以降の学習時に前記学習者が前記解答を全部消去して訂正を行った回数である2回目以降全部訂正回数との合計であり、
前記記憶部は、前記学習者端末から受信した前記1回目一部訂正回数、前記1回目全部訂正回数、前記2回目以降一部訂正回数、および前記2回目以降全部訂正回数を記憶し、
前記筆記ストロークの評価を行うステップは、前記ストローク評価部により、前記点数、前記訂正回数、前記1回目一部訂正回数、前記1回目全部訂正回数、前記2回目以降一部訂正回数、前記2回目以降全部訂正回数、および前記時間判定値に基づいて行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記時間測定部は、
前記学習者が1回目の学習時に前記解答に要した時間である1回目学習解答時間と、
前記学習者が2回目以降の学習時に前記解答に要した時間の合計である2回目以降学習解答時間とを記録するように構成されており、
前記学習解答時間は、前記1回目学習解答時間と前記2回目以降学習解答時間との合計であり、
前記記憶部は、前記学習課題に対する1回目の学習時の標準学習解答時間である1回目標準学習解答時間と、前記学習課題に対する2回目以降の学習時の標準学習解答時間である2回目以降標準学習解答時間とを記憶しており、さらに、前記学習者端末から受信した前記1回目学習解答時間および前記2回目以降学習解答時間を記憶し、
前記時間判定部は、前記1回目学習解答時間と前記1回目標準学習解答時間とを比較して1回目時間判定値を算出し、前記2回目以降学習解答時間と前記2回目以降標準学習解答時間とを比較して2回目以降時間判定値を算出し、
前記筆記ストロークの評価を行うステップは、前記ストローク評価部により、前記点数、前記時間判定値、前記1回目時間判定値、前記2回目以降時間判定値、および前記訂正回数に基づいて行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記ストローク評価部が、1回目の学習時の前記点数、最終回の学習時の前記点数、および前記訂正回数に基づいて前記筆記ストロークの評価を行う、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記自学自習する力の程度は、試行錯誤することを含む自ら考える力、軌道修正する力、または最後までやりきる力の程度を含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項29】
学習者の自学自習する力の程度を推定するための情報処理端末であって、
学習課題と、前記学習課題に対する正答と、前記学習課題に対する標準解答時間と、筆記ストロークと、訂正回数とを記憶する記憶部と、
採点部と、時間判定部と、ストローク評価部とを有する採点処理部と、
推定結果提示部とを備え、
前記採点処理部は、学習者端末から、前記学習課題に対する解答と、前記解答に要した解答時間と、前記解答を訂正した回数である前記訂正回数を受信し、
前記採点部が、前記正答に基づいて前記解答の採点を行い点数を算出し、
前記採点部が、前記点数を前記学習者端末に送信し、
前記時間判定部が、前記標準解答時間と前記解答時間とを比較して時間判定値を算出し、
前記ストローク評価部が、前記点数、前記時間判定値、および前記訂正回数に基づいて前記筆記ストロークの評価を行い、
前記推定結果提示部が、前記ストロークの評価に基づいて、前記自学自習する力の程度の推定結果を提示するように構成された、情報処理端末。
【請求項30】
前記学習者端末が、前記解答を記入するための記入デバイスを備える、請求項29に記載の情報処理端末。
【請求項31】
前記推定結果が前記情報処理端末から指導者端末に送信される、請求項29に記載の情報処理端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストロークデータを用いて学習者の内面の状態を検知し、その結果に基づいて指導者にフィードバックを行う方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、学習者が電子ペン等の記入デバイスを用いてタブレット等の装置に文字入力を行う学習システムが知られている。近年では、記入された文字の記録や採点といった基本的な機能に加えて、文字入力に付随して得られる様々なデータを処理する機能を有するものが開発されている。
【0003】
たとえば、引用文献1には、解答エリアとメモエリアのそれぞれの記入内容に対して正誤判断を行い、さらに対応部分の判定を行う学習装置が記載されている。また、引用文献2には、ストロークデータの入力時刻(時間帯)から各受講者の理解度等の状態を検出する装置が記載されている。他には、たとえば引用文献3には、学習者データの特徴量と学習教材の特徴量による予測モデルに基づく機械学習によって学習者のやる気度を測定し、学習教材を推薦する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-200844号公報
【文献】特開2015-161892号公報
【文献】特開2022-28719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
指導者においては、学習者に対して適切な指導を行うためには、学習者のアウトプットに対する評価だけでなく、意欲、試行錯誤することを含む自ら考える力、軌道修正する力、最後までやりきる力や理解度といった学習者の内面の状態を把握することが重要である。なぜなら、学習者に学習結果に変化が見られない場合であっても、このような内面の状態を向上したり、または向上させようと努力しているケースがあり、その内面の状態を把握し適宜学習者のそれらの行為を承認したり、軌道修正したりすることで、学習者の学習結果や学びに向かう姿勢に効果的に結びついていくことができるためである。たとえば、一度解答した問題が不正解である場合、間違いの解答全てを消去するのではなく、間違いの部分だけを消して再解答するといった行動が見られるときは、間違いを受け止めた上で自ら解き方を省み、自ら軌道修正する力があると評価できる。また、満点を取った場合であっても、提出までに何度も書いたり、消したりを繰り返しながら学習を行っているときは、学習結果だけでなく、自分自身で試行錯誤でき、間違いに気づく力などがあると評価できる。しかしながら、指導者が学習者の内面の状態を把握することは一般的に容易ではない。また、このようなタスクは指導者の習熟度に大きく依存するため、経験の浅い指導者が、熟練した指導者と同等のレベルで学習者の内面の状態を把握することは難しい。更に、一人の指導者が多人数の学習者を同時に指導する場合には、内面の状態を把握できる学習者の範囲には限界がある。このような状況において、学習者の自学自習する力の程度を捉え、可視化する仕組みが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によるシステムは、学習者端末と、情報処理端末とを備え、
学習者端末は、学習課題を表示する表示部と、学習課題に対する学習者の解答の入力を受け付ける入力受付部と、学習者が解答に要した時間を解答時間として測定する時間測定部と、学習者の筆記ストロークを記録するストローク記録部と、学習者が解答を訂正した訂正回数を記録する訂正回数記録部とを備え、
情報処理端末は、
学習課題と、学習課題に対する正答と、学習課題に対する標準解答時間とを記憶し、さらに、学習者端末から受信した学習解答時間と、筆記ストロークと、訂正回数とを記憶する記憶部と、
正答に基づいて、学習者端末から受信した解答の採点を行い点数を算出し、点数を学習者端末に送信する採点部と、学習解答時間と標準解答時間とを比較して時間判定値を算出する時間判定部と、点数、訂正回数、および時間判定値に基づいて筆記ストロークの評価を行うストローク評価部とを有する採点処理部と、
ストロークの評価に基づいて、自学自習する力の程度の推定結果を提示する推定結果提示部とを備える。
【0007】
本発明の一態様によるシステムにおいて、学習者端末が、解答を記入するための記入デバイスを備える。
【0008】
本発明の一態様によるシステムにおいて、システムが指導者端末を備え、推定結果が情報処理端末から指導者端末に送信される。
【0009】
本発明の一態様によるシステムにおいて、訂正回数記録部は、学習者が解答を一部消去して訂正を行った一部訂正回数と、学習者が解答を全部消去して訂正を行った全部訂正回数とを記録し、
訂正回数は、一部訂正回数および全部訂正回数の合計またはいずれか一方である。
【0010】
本発明の一態様によるシステムにおいて、訂正回数は、1問以上の任意の問題群ごとに設定されている。
【0011】
本発明の一態様によるシステムにおいて、採点部で採点された点数が所定の点数に満たない場合、
学習者端末の表示部に再学習課題が表示され、
学習者の再学習の結果である再解答を入力受付部が受け付け、
再解答が学習者端末に送信され、
採点部により再解答が採点される、再学習が再度行われる。
【0012】
本発明の一態様によるシステムにおいて、再学習課題の内容は、学習課題の内容と同一である。
【0013】
本発明の一態様によるシステムにおいて、再学習課題の内容は、学習課題のうち学習者が間違えた問題と、該間違えた問題に類似する問題とのうち、いずれかまたは両方を含む。
【0014】
本発明の一態様によるシステムにおいて、標準解答時間は、1問以上の任意の問題群ごとに設定されている。
【0015】
本発明の一態様によるシステムにおいて、再解答の点数が所定の点数に満たない場合、再解答の点数が所定の点数以上となるまで、再学習が繰り返される。
【0016】
本発明の一態様によるシステムにおいて、再学習が繰り返し行われ、
訂正回数記録部は、
学習者が1回目の学習時に解答を一部消去して訂正を行った回数である1回目一部訂正回数と、
学習者が1回目の学習時に解答を全部消去して訂正を行った回数である1回目全部訂正回数と、
学習者が2回目以降の学習時に解答を一部消去して訂正を行った回数の合計である2回目以降一部訂正回数と、
学習者が2回目以降の学習時に解答を全部消去して訂正を行った回数の合計である2回目以降全部訂正回数とを記録し、
訂正回数は、1回目訂正回数と2回目以降訂正回数との合計であり、
1回目訂正回数は、1回目の学習時に学習者が解答を一部消去して訂正を行った回数である1回目一部訂正回数と、1回目の学習時に学習者が解答を全部消去して訂正を行った回数である1回目全部訂正回数との合計であり、
2回目以降訂正回数は、2回目以降の学習時に学習者が解答を一部消去して訂正を行った回数である2回目以降一部訂正回数と、2回目以降の学習時に学習者が解答を全部消去して訂正を行った回数である2回目以降全部訂正回数との合計であり、
記憶部は、学習者端末から受信した1回目一部訂正回数、1回目全部訂正回数、2回目以降一部訂正回数、および2回目以降全部訂正回数を記憶し、
ストローク評価部は、点数、訂正回数、1回目一部訂正回数、1回目全部訂正回数、2回目以降一部訂正回数、2回目以降全部訂正回数、および時間判定値に基づいて筆記ストロークの評価を行う。
【0017】
本発明の一態様によるシステムにおいて、時間測定部は、
学習者が1回目の学習時に解答に要した時間である1回目学習解答時間と、
学習者が2回目以降の学習時に解答に要した時間の合計である2回目以降学習解答時間とを記録し、
学習解答時間は、1回目学習解答時間と2回目以降学習解答時間との合計であり、
記憶部は、学習課題に対する1回目の学習時の標準学習解答時間である1回目標準学習解答時間と、学習課題に対する2回目以降の学習時の標準学習解答時間である2回目以降標準学習解答時間とを記憶しており、さらに、学習者端末から受信した1回目学習解答時間および2回目以降学習解答時間を記憶し、
時間判定部は、1回目学習解答時間と1回目標準学習解答時間とを比較して1回目時間判定値を算出し、2回目以降学習解答時間と2回目以降標準学習解答時間とを比較して2回目以降時間判定値を算出し、
ストローク評価部は、点数、訂正回数、1回目時間判定値、および2回目以降時間判定値に基づいて筆記ストロークの評価を行う。
【0018】
本発明の一態様によるシステムにおいて、ストローク評価部が、1回目の学習時の点数、最終回の学習時の点数、および訂正回数に基づいて筆記ストロークの評価を行う。
【0019】
本発明の一態様によるシステムにおいて、自学自習する力の程度は、自ら考える力、軌道修正する力、または最後までやりきる力の程度を含む。
【0020】
本発明の一態様による方法において、
システムは、学習者端末と、情報処理端末とを備え、
学習者端末は、学習課題を表示する表示部と、学習課題に対する学習者の解答を受け付ける入力受付部と、学習者が解答に要した時間を解答時間として測定する時間測定部と、学習者の筆記ストロークを記録するストローク記録部と、学習者が解答を訂正した訂正回数を記録する訂正回数記録部とを備え、
情報処理端末は、学習課題と、学習課題に対する正答と、学習課題に対する標準解答時間と、筆記ストロークと、訂正回数とを記憶する記憶部と、採点処理部と、推定結果提示部とを備え、
方法は、
表示部が、学習課題を表示するステップと、
入力受付部が、学習課題に対する学習者の解答の入力を受け付けるステップと、
時間測定部が、学習者が解答に要した解答時間を測定するステップと、
ストローク記録部が、学習者の筆記ストロークを記録するステップと、
訂正回数記録部が、学習者が解答を訂正した訂正回数を記録するステップと、
採点処理部の採点部が、正答に基づいて、学習者端末から受信した解答の採点を行い点数を算出するステップと、
採点部が、学習者端末に点数を送信するステップと、
採点処理部の時間判定部が、標準解答時間と学習者端末から受信した解答時間とを比較して時間判定値を算出するステップと、
採点処理部のストローク評価部が、点数、時間判定値、および訂正回数に基づいて、筆記ストロークの評価を行うステップと、
推定結果提示部が、筆記ストロークの評価に基づき自学自習する力の程度の推定結果を提示するステップとを含む。
【0021】
本発明の一態様による方法において、解答の入力は、記入デバイスを用いて行われる。
【0022】
本発明の一態様において、システムが、指導者端末を備え、推定結果が情報処理端末から指導者端末に送信される。
【0023】
本発明の一態様による方法において、訂正回数を記録するステップにおいて、訂正回数記録部は、学習者が解答を一部消去して訂正を行った一部訂正回数と、学習者が解答を全部消去して訂正を行った全部訂正回数とを記録し、
訂正回数は、一部訂正回数および全部訂正回数の合計またはいずれか一方である。
【0024】
本発明の一態様による方法において、訂正回数は、1問以上の任意の問題群ごとに設定されている。
【0025】
本発明の一態様による方法において、点数を算出するステップにおいて、採点部で採点された点数が所定の点数に満たない場合、
学習者端末の表示部が、再学習課題を表示するステップと、
入力受付部が、再学習課題に対する学習者の再解答の入力を受け付けるステップと、
学習者端末が、再解答を学習者端末に送信するステップと、
採点部が、再解答を採点するステップとをさらに備え、
これにより、学習者の再学習が再度行われる。
【0026】
本発明の一態様による方法において、再学習課題の内容は、学習課題の内容と同一である。
【0027】
本発明の一態様による方法において、再学習課題の内容は、学習課題のうち学習者が間違えた問題と、該間違えた問題に類似する問題とのうち、いずれかまたは両方を含む。
【0028】
本発明の一態様による方法において、標準解答時間は、1問以上の任意の問題群ごとに設定されている。
【0029】
本発明の一態様による方法において、再解答の点数が所定の点数に満たない場合、再解答の点数が所定の点数以上となるまで、再学習が繰り返される。
【0030】
本発明の一態様による方法において、
再学習が繰り返し行われ、
訂正回数記録部は、
学習者が1回目の学習時に解答を一部消去して訂正を行った回数である1回目一部訂正回数と、
学習者が1回目の学習時に解答を全部消去して訂正を行った回数である1回目全部訂正回数と、
学習者が2回目以降の学習時に解答を一部消去して訂正を行った回数の合計である2回目以降一部訂正回数と、
学習者が2回目以降の学習時に解答を全部消去して訂正を行った回数の合計である2回目以降全部訂正回数とを記録し、
訂正回数は、1回目訂正回数と2回目以降訂正回数との合計であり、
1回目訂正回数は、1回目の学習時に学習者が解答を一部消去して訂正を行った回数である1回目一部訂正回数と、1回目の学習時に学習者が解答を全部消去して訂正を行った回数である1回目全部訂正回数との合計であり、
2回目以降訂正回数は、2回目以降の学習時に学習者が解答を一部消去して訂正を行った回数である2回目以降一部訂正回数と、2回目以降の学習時に学習者が解答を全部消去して訂正を行った回数である2回目以降全部訂正回数との合計であり、
記憶部は、学習者端末から受信した1回目一部訂正回数、1回目全部訂正回数、2回目以降一部訂正回数、および2回目以降全部訂正回数を記憶し、
筆記ストロークの評価を行うステップは、ストローク評価部により、点数、訂正回数、1回目一部訂正回数、1回目全部訂正回数、2回目以降一部訂正回数、2回目以降全部訂正回数、および時間判定値に基づいて行われる。
【0031】
本発明の一態様による方法において、
時間測定部は、
学習者が1回目の学習時に解答に要した時間である1回目学習解答時間と、
学習者が2回目以降の学習時に解答に要した時間の合計である2回目以降学習解答時間とを記録するように構成されており、
学習解答時間は、1回目学習解答時間と2回目以降学習解答時間との合計であり、
記憶部は、学習課題に対する1回目の学習時の標準学習解答時間である1回目標準学習解答時間と、学習課題に対する2回目以降の学習時の標準学習解答時間である2回目以降標準学習解答時間とを記憶しており、さらに、学習者端末から受信した1回目学習解答時間および2回目以降学習解答時間を記憶し、
時間判定部は、1回目学習解答時間と1回目標準学習解答時間とを比較して1回目時間判定値を算出し、2回目以降学習解答時間と2回目以降標準学習解答時間とを比較して2回目以降時間判定値を算出し、
筆記ストロークの評価を行うステップは、ストローク評価部により、点数、時間判定値、1回目時間判定値、2回目以降時間判定値、および訂正回数に基づいて行われる。
【0032】
本発明の一態様による方法において、ストローク評価部が、1回目の学習時の点数、最終回の学習時の点数、および訂正回数に基づいて筆記ストロークの評価を行う。
【0033】
本発明の一態様において、自学自習する力の程度は、自ら考える力、軌道修正する力、または最後までやりきる力の程度を含む。
【0034】
本発明の一態様による情報処理端末において、
情報処理端末は、
学習課題と、学習課題に対する正答と、学習課題に対する標準解答時間と、筆記ストロークと、訂正回数とを記憶する記憶部と、
採点部と、時間判定部と、ストローク評価部とを有する採点処理部と、
推定結果提示部とを備え、
採点処理部は、学習者端末から、学習課題に対する解答と、解答に要した解答時間と、解答を訂正した回数である訂正回数を受信し、
採点部が、正答に基づいて解答の採点を行い点数を算出し、
採点部が、点数を学習者端末に送信し、
時間判定部が、標準解答時間と解答時間とを比較して時間判定値を算出し、
ストローク評価部が、点数、時間判定値、および訂正回数に基づいて筆記ストロークの評価を行い、
推定結果提示部が、ストロークの評価に基づいて、自学自習する力の程度の推定結果を提示するように構成される。
【0035】
本発明の一実施形態による情報処理端末において、学習者端末が、解答を記入するための記入デバイスを備える。
【0036】
本発明の一実施形態による情報処理端末において、推定結果が情報処理端末から指導者端末に送信される。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、学習者の自学自習する力の程度を推定することができる。
【0038】
また、本発明によれば、学習者の学習意欲の程度、自ら考える力の程度、軌道修正する力の程度、最後までやりきる力の程度、根気強さの程度、または集中力の程度を推定することができる。
【0039】
さらに、本発明によれば、学習指導者が学習者の内面的な力を把握して学習者に適切なフィードバックを行い、学習者が学習習慣や自己肯定感を育むことが可能となる。
本発明の他の目的、特徴及び利点は添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の例示的な実施形態によるシステムの機能を示すブロック図を示す。
図2】本発明の第1の実施形態によるフローチャートを示す。
図3】本発明の例示的な実施形態における自学自習する力の程度を推定するためのフローチャートを示す。
図4】本発明の第2の実施形態によるフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
図1は、本発明の一実施形態によるシステムの機能を示すブロック図である。図1に示されるように、本発明のシステム1は、学習者端末100、情報処理端末200、記入デバイス300、および指導者端末400を備える。学習者端末100は、表示部101、入力受付部102、時間測定部103、ストローク記録部104、および訂正回数記録部105を備える。情報処理端末200は、採点部211、時間判定部212、およびストローク評価部213を有する採点処理部210と、課題・正答・標準解答時間DB221、ストロークDB222、および訂正回数DB223を有する記憶部220と、推定結果提示部230とを備える。
【0043】
学習者端末100は、たとえばタブレット機器であってよく、記入デバイス300は、ペン型の機器であってよい。情報処理端末200は、コンピュータであってよい。指導者端末400は、たとえばタブレット機器やコンピュータであってよい。情報処理端末200と指導者端末400は、別個の機器であってもよいし、一体化した機器であってもよい。
【0044】
学習者端末100の表示部101は、学習者が学習する学習課題を表示するように構成されている。学習課題は、あらかじめ学習者端末100に記憶されていてもよいし、学習者端末100が情報処理端末200と通信して記憶部220の課題・正答・標準解答時間DB221から取得するようにしてもよい。表示部101に表示される学習課題は、小問単位でたとえば10問~20問程度の問題を表示するようにしてもよいが、表示する問題の数や形式はこれに限定されない。たとえば、大問を1問~5問程度表示するようにしてもよく、大問と小問を組み合わせて表示させてもよい。さらに、表示部101は、学習者が学習を開始する際に押下(タップ)する開始ボタンと、学習者が解答を提出する際に押下(タップ)する提出ボタンを備えてよい。また、学習課題を表示するページは、1ページで完結していてもよく、複数ページに渡っていてもよい。学習課題が複数ページに渡って表示される場合は、学習者がページ間を移動するために押下するページ移動ボタンが設けられていてよい。
【0045】
入力受付部102は、学習者が学習課題に対する解答を記入できるように構成されている。学習者が解答を記入する際の入力手段として、記入デバイス300を用いることができる。記入デバイス300の形態としては、たとえばスタイラスペンやタッチペンの形態とすることができるが、これに限定されず、他の形態としてもよい。また、記入デバイス300の入力方式は、静電容量方式または感圧式であってもよく、他の方式であってもよい。さらには、このような記入デバイス300を用いず学習者の手の指等により入力することとしてもよい。学習者は、入力受付部102に記入した解答に対して、問題ごとに訂正を行うことができる。訂正を行う際、学習者は、1つの問題に対する解答について、記入した事項の全部を消去して書き直しを行ってもよいし、修正の必要があると学習者が判断した部分のみを消去して書き直しを行ってもよい。全部消去とするか一部消去とするかは、学習者の意思によって都度自由に決めることができ、また、問題ごとに異なる消し方をしてもよい。
【0046】
時間測定部103は、学習者が解答に要した時間である解答時間を測定するように構成されている。解答時間とは、たとえば、学習者が学習を開始してから、学習者がすべての課題に対する解答の入力を終えるまでの時間、具体的には、学習者が開始ボタンを押下(タップ)してから、提出ボタンを押下(タップ)するまでの時間としてよい。提出ボタンは、学習者がすべての解答を入力したタイミングで初めて表示部101に表示される構成としてもよいし、あらかじめ表示部101に表示しておき、学習者がすべての解答を入力したタイミングで押下可能とする構成としてもよい。また、採点後に学習者が再学習を繰り返す場合は、学習者が初回に学習を開始してから、最終回の再学習を終えるまでの時間、すなわち、最初に開始ボタンが押下されてから最後に提出ボタンが押下されるまでの時間を解答時間としてもよい。他の構成としては、開始ボタンが押下されてから提出ボタンが押下されるまでの時間のうち、学習者が記入デバイス300に触れている(握っている)時間を集計したものを解答時間としてもよい。また、学習者が再学習を繰り返す場合は、開始ボタンが最初に押下されてから、提出ボタンが最後に押下されるまでの時間のうち、学習者が記入デバイス300に触れている時間を集計したものを解答時間としてもよい。
【0047】
ストローク記録部104は、学習者が記入デバイス300に入力した筆記ストロークを記録するように構成されている。筆記ストロークのデータは、たとえば映像形式であってもよいし、画像形式であってもよい。筆記ストロークのデータは、学習者端末100に記録され、学習者が提出ボタンを押下したタイミングで情報処理端末200に送信するように構成してもよいし、学習者端末100からリアルタイムで情報処理端末200に送信するように構成してもよい。
【0048】
訂正回数記録部105は、学習者が訂正を行った回数を記録するように構成されている。学習者が解答の一部を消去し書き直した一部訂正の回数と、学習者が解答の全部を消去し書き直した全部訂正の回数とを区別して記録してもよい。
【0049】
任意の単位で各設問に配点および採点単位が予め決定されており、採点処理部210の採点部211は、学習者端末100の入力受付部102に記入された解答を受信し、記憶部220の課題・正答・標準解答時間DB221に記憶された正答に基づき、学習者の解答の採点を行う。また、課題・正答・標準解答時間DB221には、各課題に対する標準解答時間が記憶されている。ここで、標準解答時間とは、問題の正解を導くためにかかる標準的な時間(一度間違えた場合は、それを訂正する時間を含む)をいい、3分や5分といった固定値であってもよいし、4分~6分といった幅を有する値でもよい。標準解答時間は、任意の問題群ごとに設定されてもよいし、各問題ごとに設定されてもよい。さらに、課題・正答・解答時間DB221は、各課題や課題群について、学習の進捗を評価する際の指標となる評価基準点と、学習を終了するための基準となる終了基準点を記憶していてもよい。評価基準点は、たとえば6割~8割程度の点数としてよく、終了基準点は、たとえば8割~満点としてよい。評価基準点および終了基準点は、学習課題の難易度に合わせて自動的に設定されるように構成してもよい。また、設定する時間や評価基準点および終了基準点は、これらに限定されず、種々の変更が考えられる。
【0050】
採点処理部210は、採点した点数を学習者端末100に送信する。点数が課題・正答・標準解答時間DB221に記憶された終了基準点に満たない場合は、学習者端末100に再学習課題を表示させる構成としてもよい。再学習課題の内容は、初回の学習課題と同一の内容でもよいし、学習者の間違えた課題のみを抽出した課題群であってもよい。また、学習者が間違えた課題と類似する他の問題を表示させるようにしてもよい。
【0051】
学習者が再学習を繰り返す回数について、上限を設けたり、学習者の学習時間に上限を設けておき、学習者の繰り返し回数や学習時間がこれらの上限の回数または時間を超えた場合、学習が終了するように構成してもよい。
【0052】
学習者が再学習を繰り返す場合、訂正回数記録部105は、学習者が初回の学習時に訂正を行った回数と、2回目以降の学習時に訂正を行った回数とを区別して記録するようにしてもよい。初回の学習時の訂正は、採点が行われる前に学習者が自ら解答の間違いに気が付き、修正を行った行動であると考えることができる。これに対し、2回目以降の学習時の訂正は、採点後に解答の間違いが判明している状況で学習者が解答を修正した行動である。このように、初回学習時における訂正と、2回目以降の学習時の訂正とでは、学習者の内面の状況が異なる。初回の学習時の訂正回数が多い場合は、学習者の自学自習する力があるものと推定することができる。
また、さらに、初回の学習時と2回目以降の学習時のそれぞれについて、学習者が解答の一部を消去し書き直した一部訂正の回数と、学習者が解答の全部を消去し書き直した全部訂正の回数とを区別して記録してもよい。
【0053】
学習者が再学習を繰り返す場合、時間測定部103は、学習者が初回の学習時に掛かった時間と、2回目以降の学習時に掛かった時間とを区別して記録するようにしてもよい。
【0054】
採点処理部210の時間判定部212は、学習者端末100の時間測定部103にて測定された解答時間を受信し、これを記憶部220の課題・正答・標準解答時間DB221に記憶された標準解答時間と比較して、時間判定を行い、時間判定値を算出する。
【0055】
また、採点処理部210は、学習者端末100から受信したストロークデータについて、評価を行う。ストロークの評価の方法としては、採点した点数と、時間判定値と、学習者が書いたり消したりといった行動の回数と、学習者が解答を訂正した際の文字の消し方(全部消去・一部消去)とを個別的または総合的に考慮するものであってよい。また、ストロークの評価は、書いたり消したりする行動数や訂正時に一部消しか全消しの行動数に基づいて行うようにしてもよい。学習者が学習を繰り返す場合、ストロークの評価に用いる点数は、初回学習時の点数と、最終回の学習時の点数としてもよい。
【0056】
推定結果提示部230は、ストロークデータの評価結果に基づいて、学習者の自学自習する力の程度を推定する。推定結果提示部230は、推定結果を指導者端末400に送信し、学習指導者がこれを確認する。推定結果については、指導結果提示部230から指導者端末400への送信を行う代わりに、指導者が指導結果提示部230を直接確認するようにしてもよい。もしくは、学習者にストロークデータの評価結果がフィードバックされ、それが同時に直接指導結果提示部230に表示され指導者が確認することでもよい。
【0057】
指導者端末400に送信された推定結果を閲覧した学習指導者は、推定結果に対するフィードバックを指導者端末400に入力し、指導者端末400は、このフィードバックを推定結果提示部230に送信する。学習指導者が、フィードバックを指導結果提示部230に直接入力するようにしてもよい。
【0058】
フィードバックを受信または入力された推定結果提示230は、フィードバックの内容を学習者端末100に送信する。学習者端末100は、このフィードバックの内容を表示部101に表示する。
【0059】
次に、本発明の実施形態を説明する。
【0060】
図2は、本発明の第1の実施形態を示すフローチャートである。ステップS101にて、学習者端末100の表示部101に学習課題が表示される。続いて学習者が開始ボタンを押下し、学習を開始する(ステップS102)。学習者は、記入デバイス300を用いて入力受付部102に解答を記入する(ステップS103)。学習者が開始ボタンを押下したタイミングで、時間測定部103が学習時間の測定を開始し、ストローク記録部104が筆記ストロークの記録を開始する。学習者が解答の訂正を行った場合、訂正回数記録部105が訂正回数を記録する(ステップS104)。
【0061】
学習者は、すべての課題に対する解答の入力を終えた後、提出ボタンを押下し、解答を提出する(ステップS105)。提出ボタンが押下されると、解答データ、学習時間データ、ストロークデータ、および訂正回数データが学習者端末100から情報処理端末200に送信される。
【0062】
情報処理端末200が受信した解答について、採点処理部210の採点部211が採点を行い、採点した点数を学習者端末100に送信する(ステップS106)。続いて、時間判定部212により、学習者の解答時間と標準解答時間を比較し、時間判定値を算出する(ステップS107)。ストローク評価部213は、点数、時間判定値、および訂正回数に基づいて、ストロークデータについての評価を行うことができる(ステップS108)。このストロークデータの評価を用いて、自学自習する力の程度を推定する(ステップS109)。
【0063】
ステップS109における自学自習する力の程度の推定は、たとえば、図3に示されるフローチャートに従って行われる。点数、訂正回数、および学習時間をそれぞれ基準値と比較し、学習者の自学自習する力を推定する。たとえば、点数が評価基準点以上であり、訂正回数が基準回数以上である場合(パターンA)は、学習者が一定回数以上の訂正行動を経て高得点を獲得しているので、試行錯誤する力があると推定することができる。点数が評価基準点以上であり、訂正回数が基準回数未満である場合(パターンB)は、学習者が少ない訂正回数で高得点を獲得しているので、課題に対する理解が一定以上あると推定することができる。点数が評価基準点未満であり、学習時間が基準時間以上であり、訂正回数が基準回数以上である場合(パターンC)は、学習者の訂正行動が結果に繋がっていないことが予想され、学習者の学習が行き詰っている可能性があると推定することができる。点数が評価基準点未満であり、学習時間が基準時間未満である場合(パターンD)は、学習者が学習に時間を掛けずに完成度の低い状態で解答を提出しているので、学習者が課題に対して丁寧に取り組んでいない等、行動面に課題がある可能性があると推定することができる。点数が評価基準点未満であり、学習時間が基準時間以上であり、訂正回数が基準回数未満である場合(パターンE)は、学習者が訂正行動が少ない段階で完成度の低い解答を提出してしまっているので、学習者が諦めていたり集中できていない等、意識面で何らかの課題を抱えている可能性があると推定することができる。
【0064】
再び図2のフローチャートに戻り、ステップS109で推定した内容に基づき、ステップS110にて情報処理端末200から指導者端末400に推定結果を送信する。学習指導者は、指導者端末400で受信した推定結果を確認する。学習指導者は、学習者の自学自習する力の程度について、より詳細な分析が必要であると判断した場合には、情報処理端末200の記憶部220から筆記ストロークデータを入手して参照できる。学習指導者は指導者端末400にフィードバックを入力し、入力されたフィードバックの内容は、学習者端末100に送信される(ステップS111)。
【0065】
ステップS112にて、採点した解答の点数が終了基準点以上か否かを判定する。判定の結果、点数が終了基準点以上である場合は、その旨の通知が学習者端末100に送信され、学習が終了する(ステップS113)。点数が終了基準点未満である場合は、再びステップS101に戻り、学習者端末100に再学習課題が表示される。
【0066】
本実施形態では、再学習課題として、初回の学習課題群と同一の課題群が学習者端末100の表示部101に表示される。再学習課題の内容は、学習者の間違えた課題のみを抽出した課題群であってもよいし、学習者が間違えた課題と類似する他の問題を表示させるようにしてもよい。
【0067】
学習者は、点数が所定の終了基準点以上となるまで、ステップS101~S112を繰り返す。本実施例では、終了基準点を満点に設定しており、学習者は、点数が満点となるまでステップS101~S112を繰り返す。
【0068】
図4は、本発明の第2の実施形態を示すフローチャートである。第2の実施形態は、第1の実施形態と比べて、学習指導者が学習者にフィードバックをするタイミングが異なる。第1の実施形態では、学習者の学習中に自学自習する力の程度の推定を行い、学習指導者が学習者にフィードバックを行うのに対し、第2の実施形態では、学習者が学習を終了した後に学習指導者が学習者にフィードバックを行う。以下、第2の実施形態について説明する。
【0069】
図4のステップS201~ステップS206は、図2のステップS101~ステップ106と同様である。ステップS201にて学習者端末100の表示部101に学習課題が表示され、学習者が学習を開始する(ステップS202)。学習が開始されると、学習者は解答を記入する(ステップS203)とともに、時間測定部103が学習時間を測定し、ストローク記録部104が筆記ストロークを記録し、訂正回数記録部105が訂正回数を記録する(ステップS204)。学習者が解答の記入を終えた後、提出ボタンを押下して解答を提出する(ステップS205)。提出ボタンが押下されると、解答データ、学習時間データ、ストロークデータ、および訂正回数データが学習者端末100から情報処理端末200に送信される。
【0070】
ステップS207にて、採点した解答の点数が終了基準点以上か否かを判定する。判定の結果、点数が終了基準点未満である場合は、再びステップS201に戻り、学習者端末100に再学習課題が表示される。本実施形態では、再学習課題として、学習者の間違えた課題群が学習者端末100の表示部101に表示される。
【0071】
学習者は、点数が所定の終了基準点以上となるまで、ステップS101~S112を繰り返す。本実施例では、終了基準点を9割5分に設定しており、学習者は、点数が9割5分以上となるまでステップS201~S207を繰り返す。ステップS207にて点数が終了基準点以上となった場合は、その旨の通知が学習者端末100に送信され、学習が終了する(ステップS208)。
【0072】
続いて、ストローク評価部213は、点数、時間判定値、および訂正回数に基づいて、ストロークデータについての評価を行うことができる(ステップS209)。このストロークデータの評価を用いて、自学自習する力の程度を推定する(ステップS210)。
【0073】
ステップS210における自学自習する力の程度の推定は、第1の実施例と同様に、図3に示されるフローチャートに従って行われる。点数、訂正回数、および学習時間をそれぞれ基準値と比較し、学習者の自学自習する力を推定する。このとき、推定に用いる点数、訂正回数、および学習時間は、学習者の初回学習時のデータを用いてもよいし、2回目や3回目といった途中の繰り返し時のデータを用いてもよい。判断の進め方については、実施例1にて説明した方法と同様にしてよい。
【0074】
ステップS210にて自学自習する力の程度の推定を行った後、ステップS211にて情報処理端末200から指導者端末400に推定結果を送信する。学習指導者は、指導者端末400で受信した推定結果を確認する。学習指導者は、学習者の自学自習する力の程度について、より詳細な分析が必要であると判断した場合には、情報処理端末200の記憶部220から筆記ストロークデータを入手して参照できる。学習指導者は指導者端末400にフィードバックを入力し、入力されたフィードバックの内容は、学習者端末100に送信される(ステップS212)。
【0075】
以上、図面を参照して、本発明の実施形態および実施例を詳述してきたが、具体的な構成はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない程度の変更は本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1 システム
100 学習者端末
101 表示部
102 入力受付部
103 時間測定部
104 ストローク記録部
105 訂正回数記録部
200 情報処理端末
210 採点処理部
211 採点部
212 時間判定部
213 ストローク評価部
220 記憶部
221 課題・正答・標準解答時間DB
222 ストロークDB
223 訂正回数DB
230 推定結果提示部
300 記入デバイス
400 指導者端末
【要約】
【課題】学習者の自学自習する力の程度を推定するためのシステム。
【解決手段】システムは、学習者端末と、情報処理端末とを備え、学習者端末は、表示部と、記入部と、時間測定部と、ストローク記録部と、訂正回数記録部とを備え、情報処理端末は、記憶部と、採点部、時間判定部、およびストローク評価部を有する採点処理部と、学習者の自学自習する力の程度の推定結果を提示する推定結果提示部とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4