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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】物質容器の蓋及び蓋を備える物質容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 17/32 20060101AFI20241008BHJP
   B65D 17/34 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B65D17/32
B65D17/34
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2023502739
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2020069794
(87)【国際公開番号】W WO2022012738
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】523013444
【氏名又は名称】オーシー ビーイーブイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OC BEV LTD
【住所又は居所原語表記】85 Great Portland Street, London, W1W 7LT, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】メンタスティ グラネリ ケリー
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-507853(JP,A)
【文献】特開昭58-020649(JP,A)
【文献】特開昭61-178841(JP,A)
【文献】米国特許第06908005(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0263332(US,A1)
【文献】米国特許第05964366(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0205378(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 17/00-17/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質を収容可能な金属容器(11)の蓋であって、
少なくとも1本の切り込み線(又はプレカット線)(13)によって画定され、引き上げることで少なくとも部分的に破断させることが可能な閉止栓(12)と、
前記切り込み線(13)をまたいで配置され、前側支点端(15)と、前記閉止栓(12)に取り付けられた可撓片(17)を備える中間領域(16)とを含む開封レバー(14)と、
前記切り込み線(13)の近傍に配置され、前記可撓片(17)を前記閉止栓(12)に機械的に取り付けるように構成され、かつ前記可撓片(17)と協働するように構成された機械要素(18)と、
を備え、
前記切り込み線(13)は、前記閉止栓(12)が引き上げられた際に破断し始める領域である前部において、前記開封レバー(14)の前記前側支点端(15)に向かって外方に突出した突出部(19)を有し、
前記突出部(19)は、前記突出部(19)を画する、前記切り込み線(13)の区画縁部(20)を有し、前記区画縁部(20)は、前記機械要素(18)から、対応する各変形領域(21)まで延在し、前記各変形領域(21)は、前記切り込み線(13)の圧縮によって形成されることを特徴とする、蓋。
【請求項2】
前記突出部(19)は丸みを帯びた形状であり、幅(W1)が約8mmから約10mmであることを特徴とする、請求項1記載の蓋。
【請求項3】
前記突出部(19)は円弧状であり、曲率半径が約5mmから約6mmであることを特徴とする、請求項1又は2記載の蓋。
【請求項4】
前記突出部(19)の半径が前記機械要素(18)の半径よりも大きく、前記突出部(19)の形状が、前記機械要素(18)から前記区画縁部(20)により、対応する前記各変形領域(21)まで継続し、前記各変形領域(21)において、前記切り込み線(13)の開口方向が変化し、前記開口方向の変化は内側径によって規定されることを特徴とする、請求項1、2、又は3記載の蓋。
【請求項5】
圧縮によって形成された前記各変形領域(21)は、前記蓋の外方に対して凹部を有する少なくとも第1湾曲部(27)と、前記蓋の内方に対して凹部を有する少なくとも第2湾曲部(28)とを有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項記載の蓋。
【請求項6】
請求項5における前記第1湾曲部(27)と前記第2湾曲部(28)とが連なることによって、請求項4記載の前記切り込み線(13)の前記開口方向における移行及び変化が規定されることを特徴とする、蓋。
【請求項7】
前記第1湾曲部(27)の曲率半径が、約1.5mmから約2.5mmであることを特徴とする、請求項5又は6記載の蓋。
【請求項8】
前記第2湾曲部(28)の曲率半径が、約2mmから約3mmであることを特徴とする、請求項5、6、又は7記載の蓋。
【請求項9】
圧縮によって形成された前記各変形領域(21)の直径(D1)が、約1mmから約3mmであることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項記載の蓋。
【請求項10】
前記切り込み線(13)の周囲に配置された破損防止線(29)を備えることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項記載の蓋。
【請求項11】
前記破損防止線(29)は、前記閉止栓(12)の後部フラップ(30)と前記閉止栓(12)の前記機械要素(18)が位置する領域との間の少なくとも前記閉止栓(12)の領域において、前記切り込み線(13)に沿った形状であることを特徴とする、請求項10記載の蓋。
【請求項12】
前記破損防止線(29)と前記切り込み線(13)とは、前記閉止栓(12)の前記後部フラップ(30)の近傍で末端枝部(23)によって接続されることを特徴とする、請求項11記載の蓋。
【請求項13】
前記切り込み線(13)と前記破損防止線(29)との間の平均距離(X1)が、約1mmから約2mmであることを特徴とする、請求項10乃至12のいずれか1項記載の蓋。
【請求項14】
前記切り込み線(13)の深さ(Z1)が、前記破損防止線(29)の深さ(Z2)よりも深いことを特徴とする、請求項10乃至13のいずれか1項記載の蓋。
【請求項15】
前記切り込み線(13)と前記破損防止線(29)との間の領域における厚さ(Z4)が、約1.5mmから約2.5mmであることを特徴とする、請求項10乃至14のいずれか1項記載の蓋。
【請求項16】
前記切り込み線(13)の下方における厚さ(Z3)が、約1mmから約1.5mmであることを特徴とする、請求項10乃至15のいずれか1項記載の蓋。
【請求項17】
圧縮によって形成された前記各変形領域(21)は、前記破損防止線(29)を越えて延在することを特徴とする、請求項10乃至16のいずれか1項記載の蓋。
【請求項18】
前記破損防止線(29)と前記機械要素(18)の中心との間の最小距離(Y1)が、約4mmから約5mmであることを特徴とする、請求項10乃至17のいずれか1項記載の蓋。
【請求項19】
圧縮によって形成された前記各変形領域(21)に対応する位置における厚さ(Z5)が、約1.5mmから約2mmであることを特徴とする、請求項1乃至18のいずれか1項記載の蓋。
【請求項20】
少なくとも第1補強線(34)及び少なくとも第2補強線(35)によって画定された補強縁部(33)を備えることを特徴とする、前記請求項1乃至19のいずれか1項記載の蓋。
【請求項21】
前記第1補強線(34)は、前記切り込み線(13)を完全に囲む環状線であることを特徴とする、請求項20記載の蓋。
【請求項22】
前記第1補強線(34)は、接続円弧部(31)を上部に有し、前記接続円弧部(31)の曲率半径が約1.5mmから約2.5mmであることを特徴とする、請求項21記載の蓋。
【請求項23】
前記第2補強線(35)は、前記第1補強線(34)を部分的に囲む非環状線であり、前記切り込み線(13)の一端側及び他端側において、前記切り込み線(13)の圧縮によって形成された前記各変形領域(21)と略同じ位置で途切れる2つの枝部(36)を備えることを特徴とする、請求項21又は22記載の蓋。
【請求項24】
前記第2補強線(35)の前記枝部(36)は、前記切り込み線(13)から離隔することを特徴とする、請求項23記載の蓋。
【請求項25】
前記補強縁部(33)に対応する位置における厚さが、約0.4mmから約0.6mmであることを特徴とする、請求項21乃至24のいずれか1項記載の蓋。
【請求項26】
前記第1補強線(34)と前記機械要素(18)の中心との間の最小距離(Y3)が、約5mmから約7mmであることを特徴とする、請求項21乃至25のいずれか1項記載の蓋。
【請求項27】
前記切り込み線(13)と前記機械要素(18)の中心との間の最小距離(Y2)が、約1.5mmから約2.5mmであることを特徴とする、請求項1乃至26のいずれか1項記載の蓋。
【請求項28】
前記機械要素(18)は、平均直径が約3mmから約4mmのリベットであることを特徴とする、請求項1乃至27のいずれか1項記載の蓋。
【請求項29】
前記開封レバー(14)の前側縁部と協働して前記開封レバー(14)を中心合わせするための側方中心合わせ隆起部(37)を複数備え、前記側方中心合わせ隆起部(37)の各々は、長さが約7mmから約8mm、幅が約2mmから約3mm、高さが約0.2mmから約1mmであることを特徴とする、請求項1乃至28のいずれか1項記載の蓋。
【請求項30】
請求項1乃至29のいずれかに記載の蓋を備える容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋及び蓋を備える容器又は缶に関する。容器又は缶は、人又は動物が摂取可能な物質、特に飲料、ドリンク、食品全般、栄養補助食品、医薬物質、化粧品等を収容するために通常用いられるが、これらに限定されるものではない。このような物質は、流体又は液体だけでなく、例えば粒状、粉末等の固体であってもよい。
【0002】
例えば、ドリンクの場合に、一般に、二酸化炭素が添加された発泡性又は炭酸性のドリンク又は飲料であれば、本明細書に記載の容器は、例えば約5.4気圧(80psi)以上、例えば約6気圧から8気圧(90psiから120psi)又はそれ以上の内圧に耐えることができる。
【0003】
また、本発明に係る蓋は、種子、実験用製品、化学製品等の特殊製品用の水密容器の作成にも適している。
【0004】
特に、本明細書では、蓋及び蓋を含む対応する容器又は缶について記載する。容器又は缶は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金又は他の金属材料、例えば鋼もしくは鋼系合金等の鉄系材料、錫系金属材料、又は他の適切な金属もしくは合金、あるいはそれらの組み合わせで作成されると有利であるが、上記材料に限定されるものではない。上記容器又は缶には、排出口を気密に閉止する閉止栓が設けられる。閉止栓は、はじめは蓋の一体部品であり、後に少なくとも一部が破断されると、栓が一体に残ったまま排出口を形成する(「ステイオンタブ」と呼ばれる)。変形例によれば、閉止栓は、排出のために開封されると完全に分離される(「プルタブ」と呼ばれる)。
【0005】
特に、本発明は、蓋及び蓋を備える容器に関するものであり、蓋を開封レバー付き又はなしの閉止栓として構成することができる。破断時及び開封時に閉止栓が容器内に入ることはない。つまり本発明は、衛生的で、特に、汚染のない蓋及び容器に関する。
【0006】
本発明に係る容器は、内容物によっては、容器を構成する金属で形成された内面を有してもよく、又は内容物に応じて適した材料による保護膜を内面に形成してもよい。この保護膜によって、内容物と容器外側との接触を防止することができる。
【背景技術】
【0007】
本出願人名義の国際公開第2009/030526号及び同第2011/001273号は、蓋及び蓋を備える物質容器に関し、開封後も蓋と一体のまま残る(ステイオンタブ)プルオフ式の開口部を有する閉止栓が開示されている。これらの公知文献においては、開封レバーを閉止栓に連結するリベットが設けられ、このリベットは、閉止栓を画定する切り込み線の内側に配置されている。
【0008】
公知の米国特許第4,503,989号には、非環状の切り込み線によって画定されたプルオフ式の開口部と閉止栓を有する蓋を備える「ステイオンタブ」式の構成が記載されている。この構成では、開封レバーが一体型リベットによって閉止栓に連結され、一体型リベットは切り込み線によって画定された外周部の内側に配置されている。
【0009】
また、公知の米国特許第3,773,210号には、環状の切り込み線によって画定されたプルオフ式の開口部と閉止栓による、完全に取り外し可能な栓が記載されている。この場合も、環状の切り込み線の内側にリベットが設けられ、リベットによって閉止栓に開封レバーが連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2009/030526号
【文献】同第2011/001273号
【文献】米国特許第4,503,989号
【文献】米国特許第3,773,210号
【文献】国際公開第2015/104659号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この容器内の物質を人又は動物が摂取する場合、閉止栓が少しも容器内部に入り込まないことが強く求められる。その理由は、閉止栓の外側には様々な汚染物質が付着する可能性があり、こうした汚染物質が容器内に入ると内容物が汚染される可能性があるためである。従って、容器内の物質の汚染防止が課題であり、容器内の製品に埃や汚れ、雑菌、細菌といった病原体等の異物が混入するのを防止するために、衛生的な蓋及び容器の作成が求められる。
【0012】
一時的であっても、容器が野外や保護下にない環境等、蓋に異物が付着するような場所に置かれる場合に、上記の要求を特に満たす必要がある。この際、一例として容器がドリンクや薬品を収容している場合、閉止栓によって異物が容器内に入り込むと、使用者に危険な状態が生じ得る。
【0013】
また、特に、人又は動物が医薬品を摂取する場合、上記汚染物質、汚染源、又は病原体の混入によって、この医薬品を摂取した人又は動物の病状が改善されない可能性がある場合にも、上記要求が生じ得る。また、例えばスポーツ食品や栄養補助食品等、スポーツ活動用の物質についても同様である。
【0014】
当技術分野で公知のシステムでは、プルオフ開封時、一時的に僅かではあるが閉止栓が容器の内側に入り込む、又は容器の内部に対向するという欠点があり、衛生面及び健康面での問題があった。
【0015】
さらに、公知のシステムでは、衛生及び/又は非汚染性が保証されないため、このような蓋を備える密封容器の使用には限界がある。そのため、汚染物質や汚染が禁じられる物質の輸送及び/又は保存にこうした容器を使用することができない。
【0016】
さらに、公知のシステムでは内容物の種類が限られ、また場合によっては栓を開封する短時間の間に空気が十分な量流入して排出口において液体に乱流を生じさせることがあり、このような公知のシステムが不適となる場合がある。
【0017】
本出願人名義の国際公開第2015/104659号には、別の容器蓋が開示されている。
この容器蓋は、切り込み線によって画定され、前部分を備える閉止栓と、切り込み線をまたいで配置され、前部分の前部に配置された前側支点端と、閉止栓に取り付けられた可撓片を備える中間領域とを備える開封レバーと、可撓片を閉止栓に機械的に取り付けるように構成され、上部支持ヘッドを備える機械要素とを備え、ヘッドは可撓片と協働するように構成され、外周面によって周囲が画されている。この機械要素は、切り込み線の前部分に実質的に接するように配置され、上部支持ヘッドの外周面は切り込み線に直交する。
【0018】
国際公開第2015/104659号に記載の容器蓋は、他の公知の容器蓋に比べて確かな利点を有する開発品であると考えられるが、閉止システムの有効性、例えば容器内の物質の衛生及び非汚染性に関して、この蓋にも改善の余地がある。
また、上記文献に記載の蓋には、脱気/噴出現象、特に予期せぬ脱気又は急激な脱気を防止する効果について改善の余地があり、この現象はある内圧を特徴とする容器、例えば炭酸ドリンク、発泡性ドリンク等、一般に二酸化炭素が添加された飲料を収容した容器の場合に生じ得る。
【0019】
特に、容器内のガスが抜ける「脱気」現象は、開封レバーを引き上げたときに生じることが多く、このとき切り込み線に張力が加わり、切り込み線が破断するまでガスが抜け続ける。この時点で破断した部分から容器内の圧力が下がるものの、容器内の圧力が下がりきるまでは開封レバーに力が加わり続ける。切り込み線が破断すれば、閉止栓が開きやすくなる。この時点で切り込み線に引上げ張力ではなく、剪断応力が加わるためである。従って、このような脱気が生じる加圧ガスを収容した容器では、最初の開封工程において容器からガスが抜ける(脱気)際に、使用者の開封レバー引張り力にガス圧力が加わることになる。このように引張り力にガス圧力が加わることで、栓が容器から予想に反して早期に破断するおそれがある。
【0020】
従って、当技術分野における課題の少なくとも1つを克服することができる容器蓋が求められている。
【0021】
特に、本発明の一目的は、開封時に容器内の物質の衛生及び非汚染性を実質的に保証し、開封時に閉止栓が僅かでも容器内に入ることを防止するように改良された閉止システムを備える容器蓋を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、切り込み線、特に蓋の閉止栓が離れ始める領域における切り込み線の形状を効果的にし、対応する開封レバーを用いて脱気/噴出現象、特に予期せぬ脱気又は急激な脱気を大幅に抑制できる容器蓋を提供することである。
【0023】
本出願人は、当技術分野における課題を克服し、上記及び他の目的及び利点を得るために、本発明を考案、試験し、実施した。
【課題を解決するための手段】
【0024】
(発明の要約)
本発明は、独立請求項の記載を特徴とする。従属請求項には、本発明の他の特徴又は本発明の主旨に基づく変形例を記載する。
【0025】
上記目的に応じて、本発明に係る物質を収容可能な金属容器蓋は、少なくとも1本の切り込み線又はプレカット線によって画定され、引き上げることで少なくとも部分的に破断させることが可能な閉止栓と、切り込み線をまたいで配置され、前側支点端と、閉止栓に取り付けられた可撓片を備える中間領域とを含む開封レバーと、閉止栓が引き上げられた際に破断し始める領域である前部において、開封レバーの前側支点端に向かって外方に突出した突出部を有する切り込み線と、切り込み線の近傍に配置され、可撓片を閉止栓に機械的に取り付けるように構成され、かつ可撓片と協働するように構成された機械要素とを備える。
【0026】
本発明の一態様によれば、突出部は、両側に切り込み線の部位を有し、各部位は、機械要素から、対応する変形領域まで延在し、変形領域は、切り込み線の圧縮によって形成される。
突出部に対応する切り込み線の形状と、圧縮によって形成され、突出部を実質的に画する変形領域とによって、本発明による蓋は、特に蓋の閉止栓が離れ始める領域における脱気/噴出現象、特に予期せぬ脱気又は急激な脱気を、対応する開口の可撓片によって大幅に抑制することが可能である点において有利である。
【0027】
従って、本発明は、発泡性のドリンク又は飲料、例えば炭酸ドリンク又は炭酸飲料等、一般に二酸化炭素が添加されたドリンク又は飲料用の加圧容器において、有利には5.4気圧(80psi)以上、例えば約6気圧から8気圧(90psiから120psi)又はそれ以上の内圧の容器の開封(脱気)時にガスを適切に抜くことを可能にするという課題を解決したものである。上記は、ガスが抜ける特定の領域が切り込み線によって画定されているため可能となる。本明細書に記載の蓋の閉止栓は、従来から公知の「ステイオンタブ」式の蓋と比較して面積が広い点が非常に重要である。従って切り込み線は、実際には機械要素に対応して幅広となっている突出部を有する。切り込み線の各部位の形状は、機械要素から、蓋を構成する金属材料の圧縮によって形成された対応する各変形領域まで延在し、ガスが抜ける(脱気する)最初の開封時に有利に働く。また、閉止栓が破断するのを防止し、「脱気」作用が継続して閉止栓が予期せず開封すること、また場合によっては急激に開封することを防ぐこともできる。この点において、切り込み線の部位の形状だけでなく、この部位における切り込み線の材料変形も重要な役割を持つ。実際には、この部位において蓋の金属材料の厚みを機械的に圧縮することによって得られる機械的変形作用によって、金属材料の厚さが切り込み線の経路に対応して変化する。この圧縮による材料変形によって、切り込み線の経路における金属材料が歪み、開封時の剪断応力に対する局所的な望ましい抵抗が生じる。従って、ごく特定の点又は領域において、開封レバーを引く力を過度に増大させることなく脱気作用を制御することが可能となる。言い換えれば、幅広の突出部、切り込み線の部位、及び切り込み線の材料圧縮によって形成された変形領域の形状が組み合わさることにより、「脱気」動作の間、閉止栓は所望のように局所的にゆっくり開封される。従って閉止栓が破断又は裂けることなくガスが確実に適切に抜ける。
【0028】
ある実施形態では、突出部は略丸みを帯びた形状であり、幅が約8mmから約10mmである。
突出部は円弧状であり、曲率半径が約5mmから約6mmであると有利であるが、これは必須ではない。
【0029】
突出部の半径は機械要素の半径よりも大きく、突出部の形状は、前述のように、機械要素から各部位を介して、材料変形による、対応する各変形領域まで継続する点において有利である。これらの変形領域において、切り込み線の開口方向が変化し、開口方向の変化は内側径によって規定される。この変化によって、閉止栓の破断を防ぎ、また、ガスが抜け続けて閉止栓が意図せず急激に開封することも防ぐことができる。移行部分における材料変形による変形領域と切り込み線の開口方向の変化とが組み合わさった上記態様によって、脱気作用を適切に制御することができる。
【0030】
特に、圧縮によって形成された変形領域は、蓋の外方に向かって凹部(くぼみ)を有する少なくとも第1湾曲部と、蓋の内方に向かって凹部(くぼみ)を有する少なくとも第2湾曲部とを有する。第1湾曲部と第2湾曲部とが連なることによって、切り込み線の開口方向における移行及び変化を規定することができる点において有利である。
第1湾曲部の曲率半径は、約1.5mmから約2.5mmである。
第2湾曲部の曲率半径は、約2mmから約3mmである。
各変形領域の直径は、約1mmから約3mmとすることができる。
【0031】
さらなる変形例によれば、蓋は、切り込み線の周囲に配置された破損防止線を備えることができる。
破損防止線は、閉止栓の後部フラップと閉止栓の機械要素が位置する領域との間の少なくとも閉止栓の領域において、切り込み線に沿った形状とすることができる。
さらに、各変形領域は、破損防止線を越えて延在させることができる。
さらに、各破損防止線と切り込み線とは、閉止栓の後部フラップの近傍で接続円弧部によって接続することができる。
接続円弧部の曲率半径は、約1.5mmから約2.5mmとすることができる。
切り込み線と破損防止線との間の平均距離は、約1mmから約2mmとすることができる。
切り込み線の深さは、好ましくは破損防止線の深さよりも深くすることができる。
切り込み線と破損防止線との間の領域における蓋の厚さは、約1.5mmから約2.5mmとすることができる。
さらに、切り込み線の下方における蓋の厚さは、約1mmから約1.5mmとすることができる
変形領域に対応する位置における蓋の厚さは、約1.5mmから約2mmとすることができる。
【0032】
蓋は、少なくとも第1補強線及び少なくとも第2補強線によって画定された補強縁部を備えることができる。
第1補強線は、切り込み線を完全に囲む環状線とすることができる。
第2補強線は、第1補強線を部分的に囲む非環状線(開放状線)とすることができ、切り込み線の一端側及び他端側において、切り込み線の圧縮によって形成された変形領域と略同じ位置(高さ)で途切れる2つの枝部を備えることができる。
第2補強線の枝部は、第1切り込み線から離隔させることができる。
さらに、補強縁部における蓋の厚さは、約0.4mmから約0.6mmとすることができる。
第1補強線と機械要素の中心との間の最小距離は、約5mmから約7mmである。
破損防止線と機械要素の中心との間の最小距離は、約4mmから約5mmである。
切り込み線と機械要素の中心との間の最小距離は、約1.5mmから約2.5mmとすることができる。
機械要素は、平均直径が約3mmから約4mmのリベットとすることができる。
【0033】
さらに、蓋は、開封レバーの前側縁部と協働して開封レバーを中心合わせするための側方中心合わせ隆起部を複数備えることができる。側方中心合わせ隆起部の各々は、長さが約7mmから約8mm、幅が約2mmから約3mm、高さが約0.2mmから約1mmとすることができる。
【0034】
また、本発明は、上記で定義された蓋を含む容器に関する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明の上記及び他の特徴は、添付の図面を参照しながら非限定的な例として示す以下のいくつかの実施形態の説明から明らかとなるであろう。
図1】本発明に係る容器蓋の立体斜視図である。
図2図1の蓋の平面図である。
図3図1及び図2の蓋から開封レバーを除いた別の平面図である。
図4図3の線IV-IVに沿った蓋の断面図である。
図5図3の線V-Vに沿った蓋の断面図である。
図6】本発明の蓋の開口状態を示す平面図である。
図7】本発明の蓋の開口状態を下方から見た図である。
図8】蓋の開封手順の一例を示す立体図である。
図9】蓋の開封手順の一例を示す立体図である。
図10】蓋の開封手順の一例を示す立体図である。
図11】蓋の開封手順の一例を示す立体図である。 理解しやすいように、図面において同一の共通要素は可能な限り同じ参照番号を用いて識別する。一実施形態の要素及び特徴は、追加の説明なく他の実施形態に適宜組み込むことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施可能な形態について、非限定的な1つ以上の例として添付の図面に示し、詳細に説明する。本明細書で使用する用語又は表現は、非限定的な例示である。
【0037】
添付図面の特に図1図2図3を参照すると、本発明に係る蓋10が示されている。蓋10は、例えば流体、液体、粉末、粒状、又は他の固体物質、特に注ぐことのできる物質、例えばドリンク、食品全般、栄養補助食品、医薬物質等の人又は動物が摂取可能な物質を収容可能な容器11の蓋として使用することができる。
液体物質は、例えば炭酸ドリンク、炭酸清涼ドリンク、アルコール飲料、果汁、お茶、煎じ薬、ビール、精力剤等のドリンクとすることができる。
【0038】
容器11は、例えばドリンク又は飲料を収容する缶、すなわち缶入りドリンク又は缶飲料用の缶として構成することができる。特に、容器11は、圧力下(加圧)で保持される飲料又はドリンク、特に炭酸飲料又は炭酸ドリンクを収容するのに適した缶であってもよい。容器11は、例えば約5.4気圧(80psi)以上、約6気圧から8気圧(90psiから120psi)、又はそれ以上の内圧に耐えることができる。
【0039】
一般に、蓋10と容器11はともに、例えばアルミニウムもしくはその合金、又は鉄系金属、特に鋼系、例えば鋼もしくは鋼系合金、錫系金属材料や他の適切な金属もしくは合金、又はそれらの組み合わせ等の金属で作成することができる。蓋10と容器11の材料は、互いに異なってもよい。また、これらは内容物に応じて適した材料である。例えば、炭酸ドリンク、すなわちガスが添加されたドリンク、又は発酵によるガスを含むドリンク用として、蓋10は、通常アルミニウムもしくは鉄又はそれらの合金、あるいは他の適切な金属材料で作成することができる。
【0040】
また、容器11の内部及び蓋10の内部を、特殊なコーティング、例えば内容物の要件に応じて適した保護膜で覆うことも可能である。内容物及び/又は収容期間によっては、プラスチックやセラミック等の材料で保護してもよい。コーティングは容器11の内面に固着させると有利であるが、必ずしもそうする必要はない。
【0041】
容器11の寸法は、平面視で蓋10の寸法と同様であってもよく、又はそれよりも大きくても小さくてもよい。従って、容器11は、例えば蓋10と同じ直径であってもよく、又はより大径又はより小径であってもよい。
【0042】
本発明に係る蓋10は、イージーオープン式であることが好ましい。
蓋10は、破断によって開封できる閉止栓(閉止パネル)12を備える。閉止栓12は、少なくとも切り込み線(プレカット線)13によって画定されているため、閉止栓12を引き上げて少なくとも部分的に破断させることができる。切り込み線13は、閉止栓12が蓋10から引き上げられても蓋10につながったままとなる(「ステイオンタブ」と呼ばれる)全体形状が非環状である点において有利である。
【0043】
また、蓋10は開封レバー(タブ)14を備える。開封レバー14は切り込み線13をまたいで配置され、前側支点端15と、閉止栓12に取り付けられた可撓片17を備える中間領域16とを備える。
蓋はまた、切り込み線13の近傍に配置された機械要素18、例えばリベット等を備える。機械要素18は、可撓片17を閉止栓に機械的に取り付け、可撓片17と協働するように構成される。
【0044】
切り込み線13は、閉止栓12が引き上げられた際に破断し始める領域である前部において、開封レバー14の前側支点端15に向かって外方に突出した突出部19を有する。
【0045】
本発明の一態様によれば、突出部19は、切り込み線13の区画縁部20を両側に有する。これらの区画縁部20は、機械要素18から、切り込み線13の圧縮によって形成された対応する各変形領域21まで延在する(例えば図2図3図6図7参照)。
丸みを帯びた幅広形状の突出部19をこのように形成するとともに、切り込み線13上の両区画縁部20の端部に変形領域21を設けることによって、公知の蓋で生じる脱気/噴出現象、特に予期せぬ脱気又は急激な脱気を大幅に抑制することが可能である。
【0046】
例えば、図6及び図7を参照すると、切り込み線13によって排出口22の外周が画されている。排出口22は通常、閉止栓12によって閉止されており、ここから容器11内の物質を排出又は注ぐことが可能である。
【0047】
蓋10は、例えば、対応する容器11と同様の円形の閉止壁32を排出口22の周囲に有し、容器11に連結することができる。蓋10はまた、環状の周辺リブ(ビード)38によって画することができる。環状の周辺リブ(ビード)38の外側には、蓋10の平面及び閉止壁32から立ち上がった縁部26がある。
閉止栓12は、蓋10から引き上げて切り離すことができ、上述の排出口22が形成される。
【0048】
「ステイオンタブ」式の蓋10を提供することが可能である。この目的で、本明細書に記載の実施可能な形態によれば、切り込み線13は途切れていてもよく、例えば少なくとも部分的に湾曲した形状、又は曲線/直線が混在して延在する非環状とすることができる。切り込み線13が途切れている、すなわち非環状であるということは、蓋10から引き上げた後も、閉止栓12は周囲に飛ぶ危険なく蓋10につながったままとなり(「ステイオンタブ」と呼ばれる)、従って環境汚染を防止することができることを意味する。
【0049】
切り込み線13が延在し、例えばカール状の末端枝部23が設けられているため、閉止栓12は引き上げても破損等によって蓋10の他の部分から容易に切り離されないようにすることが可能である。末端枝部23は、切り込み線13の外方に湾曲した部位によって画定され、応力を吸収する弾性があり、閉止栓12の破損を防止する点において有利である。
【0050】
さらに、例えば図6を参照すると、閉止栓12の下面41には、宣伝用の表示、標識、ロゴ、又は他の広告手段を設けることができる。このような表示は、下面41に刻印、印刷、又は他の手段で設けることができる。
【0051】
切り込み線13は、実質的に所定の破断形状を規定するように予め設けられた切り込み線又はプレカット線であり、この線に沿って閉止栓12を破断し、切り離すことができる。切り込み線13は、当技術分野で公知の技術に従って形成することができる。切り込み線は、例えば二重に設けることができ、添付の図面に示すように、本明細書に記載の切り込み線13を内側の主線とし、その外側に破損防止線29を設けることができる。これらの線について以下に詳細に説明する。
【0052】
開封レバー14は、切り込み線13をまたいで配置することができ、一部が閉止栓12の上方に、一部がその外方に設けられる。開封レバー14は、一端に蓋10との支点部を有し、他端を引き上げることができる。開封レバー14は、中間位置で閉止栓12に取り付けられる。
開封レバー14は、開封効果を高めるために、例えば蓋10の中央軸Aに沿って配置することができる。
【0053】
開封レバー14はまた、前側支点端15に対向する後側駆動端24を備えることができる。実施可能な態様では、後側駆動端24は、使用者が容易に把持可能な把持リング25を備え、使用者はこれを用いて開封レバー14を引き上げ、前側支点端15を支点として回動させる。
前側支点端15は、切り込み線13の外側に配置することができる。前側支点端15を中心にしてこのように回動させると、開封レバー14は切り込み線13の外側の箇所を押圧することができる。前側支点端15は、実質的に開封レバー14の単一の枢動点を画定するように構成することができる。
【0054】
機械要素18は、前述のように、可撓片17を閉止栓12に機械的に取り付ける、又は連結するように構成され、実質的に可撓片17を閉止栓12に固定する機械要素である。特に、機械要素18は、切り込み線13の内側に設けられる。機械固定要素18は、蓋10と同じ材料で作成することができる。機械要素18は、例えば、ある半径の略平面視円形とすることができる。
【0055】
他の実施可能な態様によれば、機械要素18は、金属要素の接合に使用される中実リベット、すなわち平頭釘、ピン、ボルト、又は切頭円錐状もしくは半球状の要素であってもよい。但し、これらの変形例では生産サイクル時間が異なる。
【0056】
あるいは、他の実施可能な態様では、機械要素18は、中空リベット、すなわち中央が穿孔され、一般に二重頭釘によって形成されたアイレット形状の中実リベットと同様の接合要素であってもよい。蓋10の製造工程では通例、アルミニウムもしくはその合金、一般にマグネシウムとのアルミニウム合金、例えば典型的には5182-H48、又は鉄もしくは鉄合金、特に鋼、例えば軟鋼もしくはステンレス鋼のロールから簡易な蓋を成形することができ、ロールには例えば錫メッキ等のコーティングが施されていても、施されていなくてもよい。
特に、機械要素18は、平均直径が約3mmから約4mmのリベットとすることができる。
【0057】
切り込み線13は、前述のように、丸みを帯びた幅広形状の突出部19を備え、例えば突出部19は円弧状等であってもよい。好ましくは、突出部19は、幅W1が約8mmから約10mmである。この値は、容器11の開封時の脱気/噴出現象、特に予期せぬ脱気又は急激な脱気に対処するのに最適であることが実験により判明している。
また、この抑制効果をさらに高めるために、突出部19を円弧状とし、曲率半径を約5mmから約6mmとすることができる。
【0058】
突出部19の半径は機械要素18の半径よりも大きく、突出部19の形状は、前述のように、機械要素18から切り込み線13の区画縁部20により、材料の各変形領域21まで継続する点において有利である。これらの変形領域21において、切り込み線13の開口方向が変化し、開口方向の変化は内側径によって規定される。この変化によって、閉止栓12の破断を防ぎ、また、ガスが抜け続けて閉止栓12が意図せず急激に開封することも防ぐことができる。移行部分における金属材料の変形領域21と切り込み線13の開口方向の変化とが組み合わさった上記態様によって、脱気作用を適切に制御することができる。
【0059】
特に、突出部19を実質的に画する各変形領域21、蓋10の外方に向かって凹部(くぼみ)を有する少なくとも第1湾曲部27と、蓋10の内方に向かって凹部(くぼみ)を有する少なくとも第2湾曲部28とを備えることができる。第1湾曲部27と第2湾曲部28とが連なることによって、切り込み線13の開口方向における移行及び変化を規定することができる点において有利である。
第1湾曲部27の曲率半径の最適値は、約1.5mmから約2.5mmとすることができる。
第2湾曲部28の曲率半径の最適値は、約2mmから約3mmとすることができる。
変形領域21は、例えば材料の機械圧縮、特にパンチング、リベット、又はコイニングによって設けることができる。変形領域21の直径D1(図5参照)は、例えば約1mmから約3mmとすることができる。
【0060】
また、蓋10は、切り込み線13に加えて、切り込み線13の周囲に配置された破損防止線29を備えることができる。破損防止線29は、少なくとも閉止栓12の後部フラップ30と閉止栓12の機械要素18が位置する領域との間に設けられ、切り込み線13に沿った形状とすることができる。
破損防止線29は、実質的に蓋10の安定性を高め、閉止栓12を開封しやすくするように機能する。
破損防止線29と切り込み線13とは、閉止栓12の後部フラップ30の近傍で末端枝部23によって接続されている。
【0061】
切り込み線13及び破損防止線29の断面を図4及び図5に示す。
切り込み線13は、例えば収束状の切り込み、例えばV字型の切り込みによって形成することができる。
切り込み線13と破損防止線29との間の平均距離X1は、例えば約1mmから約2mmとすることができる。当平均距離X1は、破損防止線29による蓋10の安定性と、閉止栓12の切り込み線13に沿った開封工程の利便性とが得られる最適値であることが分かっている。
切り込み線13の深さZ1は、破損防止線29の深さZ2よりも深くすることができる。このように、閉止栓12の引き上げ時、蓋10の壁32は、切り込み線13の下方における厚さが破損防止線29の下方における厚さよりも薄くなっている。
特に、切り込み線13の深さZ1は、破損防止線29の深さZ2よりも約0.05mm深い。
蓋10の切り込み線13の下方における厚さZ3は、約1mmから約1.5mmとすることができる
さらに、切り込み線13と破損防止線29との間の領域における蓋10の厚さZ4は、約1.5mmから約2.5mmとすることができる。
変形領域21に対応する位置における蓋10の厚さZ5は、約1.5mmから約2mmとすることができる。
【0062】
図4図5との比較から分かるように、変形領域21は、破損防止線29を越えて延在させることができる。
破損防止線29と機械要素18の中心との間の最小距離Y1(図3参照)は、約4mmから約5mmとすることができる。
切り込み線13と機械要素18の中心との間の最小距離Y2は、約1.5mmから約2.5mmとすることができる。
【0063】
蓋10はまた、少なくとも第1補強線34及び少なくとも第2補強線35によって画定された補強縁部33を備えることができる。補強線34、35は湾曲し、少なくとも部分的に切り込み線13の形状に沿い、破損防止線29の形状に沿う場合もある(特に図2及び図3参照)。補強線34、35は、例えば切り込み、リブ等であってもよい。
【0064】
特に、第1補強線34は、切り込み線13を完全に囲む環状線とすることができる。第1補強線34は、上部に接続円弧部31を有することができる。接続円弧部31の曲率半径の最適値は、約1.5mmから約2.5mmとすることができる。
第2補強線35は、第1補強線34を部分的に囲む非環状線(開放状線)とすることができ、切り込み線13の一端側及び他端側において、切り込み線13の変形領域21と略同じ位置で途切れる2つの枝部36を備える。
【0065】
補強線34が途切れているため、蓋10の壁32は、可撓片17が作用する領域において実質的に変化なく保持され、すなわち壁32は略平坦であり、切り込み等による傾斜がない。
また、第2補強線35の枝部36は、第1補強線34から離隔させることができる。例えば図2又は図3に示すように、枝部36の自由端は、実質的に第1補強線34からの最遠点となる。
枝部36が離隔するため、特に変形領域21付近の位置において、第1補強線34から第2補強線35への移行領域が広くなる。
補強縁部33に対応する位置における蓋10の厚さは、約0.4mmから約0.6mmとすることができる。
第1補強線34と機械要素18の中心との間の最小距離Y3は、特に図3を参照すると、約5mmから約7mmとすることができる。
【0066】
蓋はまた、開封レバー14の前側縁部と協働して開封レバー14を中心合わせするための複数の側方中心合わせ隆起部37を備えてもよい。側方中心合わせ隆起部37の各々は、長さ約7mmから約8mm、幅約2mmから約3mm、高さ約0.2mmから約1mmの平行六面体状とすることができる。
【0067】
また、蓋10は、開封レバー14を位置決めするため、すなわち蓋10の平面に対して開封レバー14を適切に位置決めするためのボス39(図3参照)を備えることができる。これらのボス39は、閉止栓12から開封レバー14に向かってに上方に突出している。
例えば、中央軸Aに対して対称の2つのボス39を開封レバー14の下に設けることができる。
【0068】
蓋10はまた、閉止栓12から突出した中央ボス40を備えることができ、この中央ボス40は開封レバー14の把持リング25と協働する。
特に、中央ボス40は、中央軸Aに沿って配置することができ、把持リング25の孔の内側の中央に位置する。中央ボス40は、開封レバー14の軸方向のより正確な中心合わせを確保するように設計されている。
【0069】
図8から図11の一連の図では、蓋10の開封手順が非限定的な例として示されている。
使用者は可撓片17を把持し、容器11の上方及び外方に回動させる。可撓片17をある程度傾斜させると、閉止栓12は切り込み線13に沿って蓋10から離れ始める(図8及び図9参照)。特に、機械要素18の抵抗によって閉止栓12がまず切り離される。この破断に続いて、閉止栓12は切り込み線13(特にその突出部19)に正確に沿って引き上げられる。従って、閉止栓12のフラップが僅かでも容器11の内部に入り込むことがなく、収容物質の汚染を防止することができる。言い換えれば、閉止栓12の、蓋10の他の部分から離れ始める領域は、切り込み線13の突出部19付近の領域である。可撓片17を、引き上げ時の回動方向に対して逆方向に引くと、閉止栓12は突出部19とは逆方向に引かれ、図10又は図11に示す状態になる。従って、衛生的な蓋を有利に得ることができる。
【0070】
蓋10を使用すると、閉止栓12を切り込み線13に沿って引き上げるのにかかる労力は、当技術分野で公知の外方に開く衛生的な栓を有する容器と比較して大幅に低減され、また、加わる力が分散されるため、均一で正確な再現性、信頼性の高い切り離しが可能となる。
【0071】
さらに、実質的に変形領域21によって画され、区画縁部20により機械要素18から離れる突出部19が設けられているため、最初の開封工程において脱気/噴出現象、特に当技術分野で公知の蓋を有する容器を開封する際に生じ得る予期せぬ脱気又は急激な脱気が抑制される。


【0072】
本発明の技術分野及び範囲から逸脱することなく、上述の容器蓋に改良及び/又は部品の追加を行うことができることは明らかである。
以下の特許請求の範囲において、括弧内の参照符号は読みやすさの目的で付されたものにすぎず、各請求項に記載の保護範囲を限定するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11