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特許7568843破裂ダイヤフラムを有する燃料隔離システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】破裂ダイヤフラムを有する燃料隔離システム
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/40 20060101AFI20241008BHJP
   F16K 17/40 20060101ALI20241008BHJP
   F16K 17/16 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B64G1/40 200
F16K17/40 Z
F16K17/16
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023521478
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 US2020057602
(87)【国際公開番号】W WO2022093203
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】594203852
【氏名又は名称】エアロジェット ロケットダイン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ジャクベック,マシュー
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-092055(JP,U)
【文献】特表2012-509449(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0122735(US,A1)
【文献】特開昭63-254280(JP,A)
【文献】特開平08-277951(JP,A)
【文献】実開昭62-097275(JP,U)
【文献】実公昭37-006260(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/40
F16K 17/40
F16K 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口から出口へと延在する流路を画定するバルブ本体と、
前記バルブ本体に一体化された破裂ダイヤフラムであって、前記流路内にあり、かつ前記入口を前記出口から流体的に密閉する、破裂ダイヤフラムと、
前記破裂ダイヤフラムに隣接して配置されたアクチュエータであって、移動して前記破裂ダイヤフラムを破壊し、それにより前記入口と前記出口とを流体的に接続するように構成されたプランジャを含んだ、アクチュエータと、
前記バルブ本体の前記入口に取り付けられたまたは一体化された出口を有する推進薬タンクと、
を備え
前記アクチュエータが、パラフィンワックスと、前記パラフィンワックスを溶融させるように動作可能なヒータと、を含み、前記パラフィンワックスは、溶融して膨張し、その膨張により前記プランジャを伸長させて、前記破裂ダイヤフラムを破裂させるように構成される、燃料隔離システム。
【請求項2】
前記アクチュエータが、熱アクチュエータであることを特徴とする請求項1に記載の燃料隔離システム。
【請求項3】
前記アクチュエータが、ワックスアクチュエータであることを特徴とする請求項1に記載の燃料隔離システム。
【請求項4】
前記プランジャが、ピストンであることを特徴とする請求項1に記載の燃料隔離システム。
【請求項5】
前記プランジャが、前記破裂ダイヤフラムを突き刺すように構成されることを特徴とする請求項1に記載の燃料隔離システム。
【請求項6】
前記破裂ダイヤフラムが、少なくとも1つのスコアラインを有することを特徴とする請求項1に記載の燃料隔離システム。
【請求項7】
前記破裂ダイヤフラムが、湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の燃料隔離システム。
【請求項8】
前記破裂ダイヤフラムに隣接し、かつ、前記アクチュエータから前記破裂ダイヤフラムの反対側に位置決めされたナイフエッジをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料隔離システム。
【請求項9】
前記破裂ダイヤフラムが、前記バルブ本体に溶接されることを特徴とする請求項1に記載の燃料隔離システム。
【請求項10】
前記破裂ダイヤフラムが、金属製であることを特徴とする請求項1に記載の燃料隔離システム。
【請求項11】
前記入口および前記出口に加えて、前記バルブ本体が、前記流路内に開口し、かつ前記入口ではなく前記出口と流体接続されたテストポートを画定することを特徴とする請求項1に記載の燃料隔離システム。
【請求項12】
前記出口が、フィルタを含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料隔離システム。
【請求項13】
前記出口が、ベンチュリを含むことを特徴とする請求項12に記載の燃料隔離システム。
【請求項14】
前記入口に接続された燃料タンクをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料隔離システム。
【請求項15】
前記推進薬タンクが、加圧されたヒドラジンを含むことを特徴とする請求項14に記載の燃料隔離システム。
【請求項16】
請求項1に記載の燃料隔離システムを備えた、飛行体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
飛行体は、推進力および/または向きの調整のために燃料を燃焼する。一部の種類の飛行体では、燃料は「起動」するまで、飛行体の燃料システムの隔離セクション内に封じ込まれる。隔離セクションは、漏れのない封じ込めを保証するために堅牢である。起動すると、燃料が隔離セクションから放出され、それにより飛行体が推進力および/または方向調整のために作動可能となる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本開示の一例による燃料隔離システムは、入口から出口へと延在する流路を画定するバルブ本体と、バルブ本体に一体化された破裂ダイヤフラムと、を含む。破裂ダイヤフラムは、流路内にあり、かつ入口を出口から流体的に密閉する。アクチュエータが、破裂ダイヤフラムに隣接して配置される。アクチュエータは、移動して破裂ダイヤフラムを破壊し、それにより入口と出口とを流体的に接続するように構成されたプランジャを含む。推進薬タンクが、バルブ本体の入口に取り付けられたまたはバルブ本体の入口と一体化された出口を有する。
【0003】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、アクチュエータは、熱アクチュエータである。
【0004】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、アクチュエータは、ワックスアクチュエータである。
【0005】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、プランジャは、ピストンである。
【0006】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、プランジャは、破裂ダイヤフラムを突き刺すように構成される。
【0007】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、破裂ダイヤフラムは、少なくとも1つのスコアラインを有する。
【0008】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、破裂ダイヤフラムは、湾曲している。
【0009】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態が、破裂ダイヤフラムに隣接し、かつ、アクチュエータから破裂ダイヤフラムの反対側に位置決めされたナイフエッジを含む。
【0010】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、破裂ダイヤフラムは、バルブ本体に溶接される。
【0011】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、破裂ダイヤフラムは、金属製である。
【0012】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、入口および出口に加えて、バルブ本体は、流路に開口し、かつ入口ではなく出口と流体接続されたテストポートを画定する。
【0013】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、出口は、フィルタを含む。
【0014】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、出口は、ベンチュリを含む。
【0015】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態が、入口に接続された燃料タンクを含む。
【0016】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、推進薬タンクは、加圧されたヒドラジンを含む。
【0017】
さらなる実施形態では、前述の実施形態のいずれかの燃料隔離システムが、飛行体内にある。
【0018】
本開示の様々な特徴および利点は、以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。詳細な説明に添付の図面は、次のように簡単に説明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】宇宙船内の一例の燃料システムを示す図である。
図2】作動状態にあり、破裂ダイヤフラムを破裂させた、燃料システムの隔離弁を示す図である。
図3】一例の破裂ダイヤフラムの分離図である。
図4】テストポートとともに構成された別の例の隔離弁を示す図である。
図5】ダイヤフラム部にナイフエッジが隣接する別の例の隔離弁を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
飛行体(vehicles)における燃料システムの隔離セクションからの燃料の放出を制御する機構は、比較的複雑となりうる。このような機構は、確実に制御され、必要な時間にのみ燃料を放出するように作動する必要がある。理解されるように、これらの要件を満たすために、そのような機構は比較的複雑な設計を有する場合がある。それらの解決策は効果的であるが、設計自体だけでなく、設置手順や品質保証対策からも費用がかかる可能性がある。これらの方針に沿って、本開示から明らかなように、本明細書の独自の燃料隔離システム(fuel-isolation system)は、燃料の放出の起動を制御するための信頼できる損失コストオプションを提供することを意図する。
【0021】
図1は、例示的な燃料システム20(「システム20」)を概略的に示す。図示のように、システム20は、一般に22で示される飛行体内にある。例えば、飛行体22は人工衛星であるが、本開示はその他の種類の飛行体にも適用しうる。
【0022】
システム20は、ヒドラジンなどの燃料26aを収容する燃料タンク26の出口25と流体接続された隔離弁(isolation valve)24を含む。例えば、出口25は隔離弁24に取り付けられているか、または一体化されている。隔離弁24は、燃料システム20の残りの部分から燃料26aを隔離する働きをし、燃料システム20の残りの部分は、一般に28で示されている。理解されるように、燃料システムの残りの部分28は、流体ライン、バルブ、インジェクタ、および当該分野でよく理解されているその他のエンジンまたはスラスタコンポーネントを含みうる。
【0023】
隔離弁24は、バルブ本体30から形成される。バルブ本体30は、金属合金から形成され、圧力および使用条件下で漏れがない限り、単一部品または複数部品の構造であってもよい。バルブ本体30は、入口32、出口34、および入口32から出口34まで延在する流路36を含む。入口32は、燃料タンク26の出口25に溶接される。この例では、隔離弁は、流路36が約90度向きを変えるような「エルボー」構成を有する。しかしながら、隔離弁24および流路36の経路の幾何学形状は変更可能であることを理解されたい。
【0024】
隔離弁24はさらに、流路36内に配置された破裂ダイヤフラム(rupture diaphragm)38と、破裂ダイヤフラム38に隣接して配置されたアクチュエータ40と、を含む。破裂ダイヤフラム38は、入口32を出口34から流体的に密閉する。アクチュエータ40は、(矢印42で表されるように)伸長して動くように構成されたプランジャ40aを含む。アクチュエータ40は、プランジャ40aが破裂ダイヤフラム38と交差するストロークにわたって伸長可能なように配置される。例えば、約1/2インチのストロークで約100ポンドの力を及ぼす。破裂ダイヤフラム38は、プランジャ40aの伸長が破裂ダイヤフラム38の破裂(breach)を引き起こすように、プランジャ40aの衝撃下で壊れやすい。
【0025】
一例では、アクチュエータ40は熱アクチュエータ(thermal actuator)である。熱アクチュエータの一例は、パラフィン(paraffin)アクチュエータなどの、ワックスアクチュエータである。熱アクチュエータは、プランジャ40aの伸長の形で熱エネルギーを機械エネルギーに変換する。パラフィンに基づく一例では、アクチュエータ40は、パラフィンワックスの融解温度(約176°F)を超える温度などで、パラフィンワックスを加熱するように動作可能なヒータを含む。ワックスが溶融して膨張し、この膨張によりプランジャ40aが伸長する。理解されるように、その他の種類のアクチュエータを使用することも可能であるが、ワックスアクチュエータは、ヒータを作動させるための比較的単純なバイナリ・オン/オフ動作を有し、低コストである。
【0026】
破裂前(図1)、破裂ダイヤフラム38は、燃料26aがシステム20内で隔離されたままとなるように、出口34から入口32を密閉する。システム20が作動されたとき、アクチュエータ40が作動してプランジャ40aを伸長させ、宇宙船22が推進および/または方向調整のために動作可能になるように燃料を放出する。作動すると、図2に示すように、プランジャ40aが伸長して破裂ダイヤフラム38を破裂させる。破裂すると、入口32と出口34が流体的に接続され、それにより燃料が隔離弁24を通って、推進および/または方向調整のためにシステム20の残りの部分28に流れることができるようになる。さらなる一例では、隔離弁24は、破れた破裂ダイヤフラム38を取り外し、それを新しい破れていない破裂ダイヤフラム38と交換することによって再使用することができる。
【0027】
図3は、破裂ダイヤフラム38の一例の分離図を示す。破裂ダイヤフラム38は、ダイヤフラム部38aおよびリム38bを含む。この例のダイヤフラム部38aは金属製であり、チタンまたはアルミニウム合金で形成される。この点に関して、破裂ダイヤフラム38は、一般的に剛性であるが、燃料26aの隔離を維持できる限り、代替的に可撓性であってもよい。
【0028】
この例では、ダイヤフラム部38aは、部分的に球状で、(プランジャ40aに向かって)凸状である。このような幾何学的形状により、ダイヤフラム部38aをプランジャ40aに比較的近づけることができ、それにより破裂に必要なストローク長が減少する。設計エンベロープおよびストローク長が許せば、ダイヤフラム部38aは、代替的に、円錐形、角錐形、またはその他の形状を有してもよく、凹面または平面でさえあってもよい。
【0029】
図示の例では、ダイヤフラム部38aの表面は、少なくとも1本のスコアライン38cを有する。スコアライン38cは、プランジャ40aによる破裂を容易にするためにダイヤフラム部38aを弱める働きをする表面の溝である。リム38bは、ダイヤフラム38が隔離弁24のバルブ本体30に漏れのないように固定されることを可能にする。例えば、図1に示されるように、ダイヤフラム38は、入口32のフランジ32aに溶接されたリム38bを介してバルブ本体30に(すなわち、バルブ本体30とともに)一体化される。付加的にまたは代替的に、一部または全てのダイヤフラム38がバルブ本体30に機械加工されてもよい。
【0030】
図4は、別の例の隔離弁124を示す。この開示において、同様の参照符号は、適切な場合には同様の要素を示し、100またはその倍数を加えた参照符号は、対応する要素の同じ特徴および利点を組み込むものと理解される修正された要素を示す。この例では、隔離弁124は、流れ試験用に構成されている。これに関して、入口32および出口34に加えて、バルブ本体30は、流路36に開口し、かつ、(少なくとも破裂ダイヤフラム38の破裂前に)入口32ではなく出口34と流体的に接続されたテストポート46を画定する。テストポート46は、様々な試験装置を取り付けるための所望の形態のコネクタに適合させることができる。出口34は、フィルタ48およびベンチュリ50を含む。フィルタ48は、試験流体中の不純物の除去を容易にする働きをし、ベンチュリは、ウォーターハンマーの減少を助ける。
【0031】
図5は、隔離弁224の別の例を示す。この例では、隔離弁224は、破裂ダイヤフラム38に隣接する少なくとも1つのナイフエッジ52を含む。ナイフエッジ52は、アクチュエータ40のプランジャ140aから、破裂ダイヤフラム32の反対側に位置決めされている。プランジャ140aは、伸長すると、ダイヤフラム部38aをナイフエッジ52に向かって偏向させる。ナイフエッジ52とダイヤフラム部38aとの間の衝突により、ナイフエッジ52はダイヤフラム部38aを破る。この破れは、入口32と出口34とが流体的に接続されるように破裂ダイヤフラム38を破裂させるのに十分な切断、穿孔、引き裂き、またはその他の方法によって生じ、それにより燃料が推進および/または方向調整のために隔離弁224を通流することを可能にする。
【0032】
図示の例では特徴の組み合わせが示されているが、本開示の様々な実施形態の利点を実現するためにそれらの全てを組み合わせる必要はない。言い換えれば、本開示の一実施形態に従って設計されたシステムは、必ずしも、図面のいずれか1つに示される特徴の全て、または図面に概略的に示される部分の全てを含むとは限らない。さらに、1つの例示的な実施形態の選択された特徴は、他の例示的な実施形態の選択された特徴と組み合わせることができる。
【0033】
前述の説明は、本質的に限定ではなく例示的なものである。開示された例に対する変形および修正が、必ずしも本開示から逸脱するものではないことが当業者に明らかとなるであろう。本開示に与えられる法的保護の範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定することができる。
図1
図2
図3
図4
図5