(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】自動車用流体ポンプ装置の取付装置を備えた自動車用流体ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04B 53/22 20060101AFI20241008BHJP
F04B 39/14 20060101ALI20241008BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
F04B53/22
F04B39/14
F04D29/66 D
(21)【出願番号】P 2023528564
(86)(22)【出願日】2020-11-23
(86)【国際出願番号】 EP2020083072
(87)【国際公開番号】W WO2022106038
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】515069336
【氏名又は名称】ピアーブルグ パンプ テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Pierburg Pump Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Alfred-Pierburg-Strasse 1, 41460 Neuss, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘン,シュテフェン
(72)【発明者】
【氏名】クント,ロッコ
(72)【発明者】
【氏名】パツナー,ルネ
(72)【発明者】
【氏名】ラトケ,ロナルド
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-027203(JP,A)
【文献】国際公開第2020/083495(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/083496(WO,A1)
【文献】実開平02-067093(JP,U)
【文献】実開昭53-055959(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/14
F04B 53/22
F04D 29/60
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプユニット(15)と、前記ポンプユニット(15)を支持して取り付けるための取付装置(20)と、を備えた自動車用流体ポンプ装置(10)であって、前記取付装置(20)は、
前記ポンプユニット(15)を半径方向に囲み支持するリング状の振動デカップリング支持部(22)を備え、
前記振動デカップリング支持部(22)には、軸方向停止面(25)と取付部(27)とが設けられ、前記軸方向停止面(25)は、前記ポンプユニットを軸方向の取付方向(M)に制止させるための対応する軸方向ポンプユニット停止面(17)と協働し、前記取付部(27)は、前記取付装置(20)を対応する自動車用取付構造(50)に取り付けるために設けられ、
前記ポンプユニット(15)を軸方向の取外方向(D)に摩擦係止するために、リング状の前記振動デカップリング支持部(22)には、前記ポンプユニットを全周に亘って囲み、引っ張られることで摩擦を増強させる
、前記振動デカップリング支持部(22)の内周から半径方向内側に延在するリップリング(30)が設けられる、
ことを特徴とする自動車用流体ポンプ装置(10)。
【請求項2】
前記ポンプユニット(15)を前記取付装置(20)に対して取り付ける前の前記リップリング(30´)の内周は、ポンプユニット取付部(18)の外周より少なくとも5%小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動車用流体ポンプ装置(10)。
【請求項3】
前記ポンプユニット(15)を前記取付装置(20)に対して取り付ける前の前記リップリング(30´)は円錐形である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用流体ポンプ装置(10)。
【請求項4】
前記リップリング(30、30´)は、前記振動デカップリング支持部(22)に一体的に設けられている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の自動車用流体ポンプ装置(10)。
【請求項5】
前記リップリング(30、30´)と、前記ポンプユニットの軸方向の取付方向(M)に延在する前記振動デカップリング支持部(22)との接続ゾーン(32)から、前記リップリング(30、30´)が見えている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の自動車用流体ポンプ装置(10)。
【請求項6】
リング状の前記振動デカップリング支持部(22)および前記ポンプユニットにおける対応する前記ポンプユニット取付部(18)は円形である、
ことを特徴とする請求項2に記載の自動車用流体ポンプ装置(10)。
【請求項7】
前記軸方向停止面(25)および前記軸方向ポンプユニット停止面(17)を対応させて城郭風構造とすることで形状嵌合接続し、接線方向にポンプ出口(19)を備えた前記ポンプユニット(15)の回転を防止する、
ことを特徴とする請求項6に記載の自動車用流体ポンプ装置(10)。
【請求項8】
電気プラグソケット(40)は、前記ポンプユニット(15)の前記軸方向の前端面(16)から軸方向に延びる、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の自動車用流体ポンプ装置(10)。
【請求項9】
前記ポンプユニット(15)が前記取付装置(20)に対して取り付けられる前の前記リップリング(30´)の直径(dL)は、前記ポンプユニット取付部(18)の直径(dP)より少なくとも5%小さい、
ことを特徴とする請求項6に記載の自動車用流体ポンプ装置(10)。
【請求項10】
前記取付部(27)は、前記振動デカップリング支持部(22)に一体的に設けられている、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の自動車用流体ポンプ装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用流体ポンプ装置に関し、特に、自動車用流体ポンプユニットを自動車用取付構造に取り付けるための振動デカップリング取付装置を備えた自動車用流体ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなポンプ装置は、自動車の流体回路内で流体を循環させるために設けられる水循環用ポンプユニット、好ましくは電動ポンプユニットを備える。さらに、ポンプ装置は、ポンプユニットを自動車のフレームや内燃機関へ取り付けるための取付装置を備える。取付装置には、自動車のフレームに取り付け可能であると共に、ポンプユニットを支持するように構成される振動デカップリング本体が設けられている。ポンプユニットに関連する振動が自動車のフレームや内燃機関に伝達されたり、その逆が起こったりしないように、振動デカップリング本体は、比較的柔軟性のある材料で構成される。このような構成により、騒音の放出を比較的低く抑えることができる。一般的に、振動デカップリング本体はリング状に形成され、ポンプユニットを半径方向に囲んで支持する。
【0003】
このようなポンプ装置は、例えば独国特許出願公開第102016209204号明細書に開示されている。ここで、振動デカップリング本体のリング開口部は、ポンプユニットハウジングの対応する周面に圧入され、これにより、ポンプユニットは、デカップリング本体に力により係止されて支持される。デカップリング本体は、効率的に振動をデカップリングするために比較的弾性を有して構成される必要があることから、デカップリング本体による係止接続では、ポンプユニットは、その軸方向のみが比較的小さい力で支持されるに留まる。そこで、半径方向に突出し、デカップリング本体と軸方向に接触する支持突起をポンプユニットハウジングに設け、ポンプユニットを、デカップリング本体に対して形状により追加的に係止し支持するようにする。支持突起は、デカップリング本体の軸方向両側に配置され、軸方向両側で支持する。このように構成されたデカップリング本体は、ポンプユニットハウジングの組み立て時にポンプユニットに取り付けられなければならず、組み立てが完成したポンプユニットに取り付けることはできない。そのため、デカップリング本体の取付工程を、ポンプユニットの組み立て工程に組み込まなければならず、ポンプ装置の組み立て工程が複雑なものになってしまう。
【0004】
国際公開第2020/083495号には、組み立てが完成した後のポンプユニットを自動車用取付構造に取り付けるための、柔軟性を有するデカップリング本体を備えた取付構造が開示されている。この取付構造では、デカップリング本体の軸方向停止面と、ポンプユニットの対応する停止面とを利用することにより、デカップリング本体に挿入したポンプユニットを形状により係止して接続軸方向に固定する。このような形状による係止接続では、ポンプユニットは、第1軸取付方向に固定され、また第2軸取外方向において、別途設けられた保持クリップにより追加的に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102016209204号明細書
【文献】国際公開第2020/083495号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの従来技術による固定方法では、ポンプユニットをデカップリング本体に取り付けるために、追加の固定要素や、複雑な取り付け工程が必要となる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、自動車のフレームへポンプユニットを取り付ける際に、信頼性および費用効率の高い振動デカップリングを実現すると共に、その組み立てを簡単な方法ですることのできる自動車用流体ポンプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的は、請求項1の特徴を有する自動車用ポンプ装置によって達成される。
【0009】
本発明にかかる自動車用ポンプ装置は、自動車用流体回路内で作動流体を循環させるポンプユニットを備える。好ましくは、ポンプユニットは、内燃機関により機械的に駆動されるのではなく、電気モータによって電気的に駆動される。ポンプユニットは、特に、自動車用の暖房または冷房回路内で水を循環させるための電動の水ポンプであってもよい。
【0010】
また、本発明にかかる自動車用流体ポンプ装置は、ポンプユニットを自動車のフレームに取り付けるための取付装置を備える。取付装置はリング形状の振動デカップリング支持部を備え、この振動デカップリング支持部は、実質的にポンプユニットの水平面横方向に延在している。支持部は、ポンプユニットを半径方向に囲んで支持する。支持部には、ポンプユニット取付部の形状に対応するリング開口部が横方向に設けられ、ポンプユニットは、この支持部によって実質的に全周に沿って半径方向に支持される。
【0011】
好ましくは、支持部は、電動ポンプユニットの電動モータを半径方向に囲み、ポンプユニットの質量の中心が実質的に支持部内に位置するようにする。取付装置は、さらに、取付装置を自動車用取付構造に取り付けるための取付部を備える。ポンプユニットは、取付装置のみを介して自動車フレームに支持され、特に、自動車のフレームとは直接接触しない。好ましくは、支持部は、例えばゴム、シリコーン、SEBS、EPDM、または他のエラストマー等の比較的柔らかく弾性のある材料からなる。このような構成により、振動デカップリング支持部で自動車のフレームの振動を補償することができる。
【0012】
支持部には、ポンプユニットの回転軸に対して実質的に垂直に配向される軸方向停止面が設けられている。ポンプユニットには、これに対応する停止面が設けられ、この停止面は、支持体の軸方向停止面と協働して、ポンプを第1軸方向のポンプユニット挿入方向、すなわち、取付方向に固定する。また、支持部には、圧力スリーブのように作用し、引っ張られることで摩擦を増強させる縦方向のリップリングが設けられる。弾性リップリングは、ポンプユニットを全周に亘って囲み、外側のポンプユニット取付部に法線力を及ぼす。こうして、リップリングとポンプユニットとの間に生じた摩擦力により、ポンプユニットは軸方向の取外方向に摩擦係止される。
【0013】
好ましくは、ポンプユニットを取付装置に対して取り付ける前のリップリングの内周は、ポンプユニット取付部の外周より少なくとも5%小さい。この取り付け前の状態では、リップリングは、支持部の開口部から実質的に半径方向内側に延在していて、好ましくはわずかに円錐形である。円錐形のリップリングは取付方向に先細りになっているため、ポンプユニットは導かれるように進入する。ポンプユニット取付部の外径に比べてリップリングの内径が小さいことから、ポンプユニットの支持部への取り付け時に、リップリングが取付方向に反転し、それにより、ポンプユニット取付部に隙間なく適合する。このように変形することでリップリングに張力が生じ、比較的大きい法線力が取付部に作用する。このように与えられる法線力は、従来の圧入接続による法線力より実質的に大きい。結果として生じる摩擦力は、通常の軸方向変位力に対してポンプユニットを支持部内に軸方向に固定するのに十分である。このように、支持部は、クリップまたはねじ等の追加の固定手段を設けることなく、ポンプユニットを軸方向、すなわち取付方向および取外方向の両方に固定することができる。したがって、取り付けられた状態では、リップリングは、実質的に完全に軸方向を向いて、ポンプユニットの外面およびリング開口部の内面に接触している。
【0014】
引っ張られている状態にあるリップリングとポンプユニット取付部との間の摩擦力の方が、リップリングとリング開口部の内周面との間の摩擦力よりも大きいため、ポンプユニットが取外方向に変位した場合には、リップリングはポンプユニット取付部の外周面ではなく、リング開口部の内周面で滑ることなる。すると、リップリングは、ポンプユニットと接触したままベローのように折り畳まれ、支持体のリング開口部内で詰まるので、ポンプユニットはそれ以上変位することができない。このように、摩擦により係止されたリップリングが詰まることで、結果として、ポンプユニットのハウジングに逃げ溝を設けることなく、形状による取外方向の係止接続が実現する。
【0015】
本発明にかかる自動車用流体ポンプ装置の好ましい実施形態では、リップリングは、エラストマーの支持部に一体的に設けられている。リップリングは、例えば、リング開口部の内面でエラストマーの支持体上に一体的に形成される。これにより、リップリングを支持部に接続するための追加の固定手段を設けることなく、一つの部位のみで、ポンプユニットを半径方向に支持させると共に、軸方向、つまり、取付方向および取外方向の両方に固定することができる。このように一体的に設計すると、ポンプユニットをクリップやねじで軸方向に固定するための追加の組立工程が必要ないため、製造コストを比較的抑えることができる。また、リップリングを一体的に設けることで、支持部を比較的コンパクトに設計することがでるため、取付装置自体がコンパクトになり、ポンプ装置を自動車に適用する際に特に好ましい。
【0016】
本発明にかかる好ましい実施形態では、リング状の支持部およびポンプユニットにおける対応する取付部は円形である。円形に設けることにより、一般的には、ポンプユニットが自動車に取り付けられた後であっても、接線方向に配向されたポンプ出口の向きを自由に適合させることができる。これにより、取付装置、そしてポンプユニットを、様々な取付位置で様々な自動車に適用することができため、幅広い用途に対応する取付装置を実現することができる。さらに、円形に設けることにより、ポンプユニットを支持部へ取り付ける工程を簡略化することができる。リップリングとポンプユニットとの間の摩擦力により、取付工程におけるポンプユニットの回転は、ポンプユニットのリング状支持部への挿入を容易にする。
【0017】
本発明にかかる好ましい実施形態では、軸方向支持部停止面には、軸方向に延在する複数のマーロンを備える城郭風構造が設けられる。城郭風構造のマーロンは、好ましくは、支持部の円周に沿って等角度配置で配置され、その間に複数のポンプ受け部が画定される。ポンプユニットの停止面には、例えば、ポンプユニットハウジングのねじソケットにより構成される、対応する城郭風構造が設けられる。ポンプ装置の取付状態で、ポンプユニットハウジングのねじソケットがポンプ受け部に係合すると、ポンプユニットは、支持部内で回転することができない。それにより、ポンプユニットの、支持部、そして自動車フレームに対する回転姿勢が画定されて安定する。このように、城郭風構造を備えることで、ポンプユニットの回転防止を簡単に実現することができる。
【0018】
本発明にかかる好ましい実施形態では、電動ポンプユニットの電気プラグソケットは、ポンプユニットの軸方向前端面から軸方向に延在する。軸方向前端面は、ポンプハウジングのボリュートと軸方向に対向するポンプユニットの端部に画定される。ポンプはその前端を先にして支持部のリング開口部に挿入されるため、軸方向前端面は取付方向を向く。電気プラグソケットは、ポンプユニット取付部を半径方向に超えないように配置される。より好ましくは、電気プラグソケットは、ポンプユニット取付部に対して半径方向に距離をおいて配置される。このように配置することで、ポンプユニットを支持部に取り付ける際に、プラグソケットがリップリングに損傷を与えることのないようにする。電気プラグをプラグソケットに軸方向に差し込む際にも、リップリングの摩擦力により、ポンプユニットの変位を十分に回避することができる。
【0019】
本発明にかかる好ましい実施形態では、ポンプユニットを取付装置に対して取り付ける前のリップリングの直径は、ポンプユニット取付部の直径より少なくとも5%小さい。円形のリップリングが半径方向に拡張することで生じる張力により、円形のポンプユニット取付部には、全周に沿って均等に法線力が分布する。これにより、ポンプユニットは確実に軸方向に固定される。さらに、軸方向の取外方向にポンプユニットが変位してリップリングが詰まることによる効果は、円形のリップリングを用いる場合により高まる。
【0020】
本発明にかかる好ましい実施形態では、取付装置を自動車用取付構造に取り付けるための取付部は、リング状の支持部に一体的に設けられる。これにより、取付装置は低コストの単一部位によって画定され、多数の部位からなる取付装置と比較して、製造および組み立てにかかる労力を低減することができる。取付装置は、例えば、取付部内に一体的に形成されたねじ穴を使用するねじ継手によって自動車の取付構造に取り付けられるため、取付装置のねじ穴を製造するために追加の機械加工をする必要がない。さらに、取付部を支持部に接続するための追加の組立工程を設ける必要もない。一体的な設計により、自動車用取付構造とポンプユニットを効率的に振動デカップリングすることができると共に、ポンプユニットを確実かつ十分に固定することのできる、非常にコンパクトで単純な構成の取付装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1a】ポンプユニットおよび取付装置を備えた自動車用流体ポンプ装置が分解された状態の斜視図である。
【
図1b】
図1aの自動車用流体ポンプ装置が組み立てられた状態の斜視図である。
【
図2a】
図1aの自動車用流体ポンプ装置が分解された状態の上面断面図である。
【
図2b】
図1aの自動車用流体ポンプ装置が組み立てられた状態の上面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
【0023】
図1a、
図1b、
図2a、
図2bは、本発明にかかる自動車用流体ポンプ装置10の実施形態を示す。自動車用流体ポンプ装置10は、水循環用電動ポンプユニット15と、ポンプユニット15を自動車用取付構造50に取り付けるための取付装置20とを備える。
図1aおよび
図2aに示すように、取付装置20は円形リング状の振動デカップリング支持部22を備え、この振動デカップリング支持部22には、円形のリング開口部35が設けられている。
【0024】
電動ポンプユニット15は円筒形のポンプユニット取付部18を備え、このポンプユニット取付部18は、ポンプユニット15を軸方向および径方向に固定するために、支持部22の円形リング開口部35に挿入される。
図1b、
図2bに示すように、円筒形の支持部本体23は、挿入されたポンプユニット取付部18を径方向に囲んで、ポンプユニット15を径方向に支持する。
【0025】
支持部22はエラストマーにより構成され、ポンプユニット15を自動車用取付構造50から振動デカップリングする。取付装置20は、円形リング状支持部22に一体的に構成された取付部27をさらに備える。
図1aおよび
図1bに示すように、取付部27には、ポンプユニットの中心線に対して垂直に配置され、自動車用取付構造50に接触する平坦な矩形取付面28が設けられる。また、取付部27には、ねじ継手を介して取付装置20を自動車用取付構造50に取り付けるための2つのねじ穴26が設けられている。支持部22と取付部27との間の移行領域には、ポンプユニットの水平面で横方向に延在する補強リブ24を設けて取付装置を補強する。リブ24は、円筒形の支持部22において接線方向に形成され、ねじ穴26の両側で、取付部27の接続フランジ29に接続される。
【0026】
図1aおよび
図2aは、分解された状態の自動車用流体ポンプ装置10を示す。支持部のリング開口部35の内側には、支持部22に一体に接続され、わずかに円錐形で、実質的に半径方向内側に延在する円形リップリング30´が設けられている。リップリング30´は、支持部22の半径方向内側からさらに半径方向内側に延在すると共に、ポンプユニットの軸方向の取付方向Mに延在する。そのため、リップリング30´は、支持部22との接続ゾーン32に対して取付方向Mに先細の形状となる。
図2aに示すように、リップリング30´の内径dLは、ポンプユニットの取付部18の外径dPより10%小さい。
【0027】
軸方向の前端面16は、ポンプのボリュートまたは接線方向に配向された流体の出口19とは反対側で、ポンプの軸方向端部を画定している。ポンプユニット15が軸方向の前端面16を先にして取付方向Mに挿入されると、リップリング30´は、取付方向Mに反転し、その向きは、実質的に半径方向から純粋に軸方向および長手方向に変化する。リップリング30´は円錐形状であり、取付方向に先細の形状であることから、ポンプユニット取付部18がリング開口部35内に導かれると、リップリング30´は全周に亘る圧力スリーブに変形し、ポンプユニット取付部18の外殻面に隙間なく適合する。
図2bに示すように、内径dLがポンプユニット取付部18の外径dPに対し半径方向に拡張するため、全周に亘るリップリング30は、取付方向Mに軸方向に延び、張力がかかる。
【0028】
リップリング30にかかる張力により、リップリング30の自由端34では、ポンプユニット取付部18に対し、従来の純粋な圧入接続と比較して半径方向内向きに比較的大きな法線力がかかる。リップリング30とポンプユニット15との間に生じる比較的大きな摩擦力に加え、リップリング30が軸方向Mに長手方向に延在していることから遮断効果が生じ、それにより、ポンプユニット15は取外方向Dにさらに固定される。ポンプユニット15が取外方向Dに変位すると、リップリング30はベロー状に変形し、支持部22とポンプユニット取付部18との間で詰まるため、ポンプユニット15の取外方向への変位が効果的に阻止される。
【0029】
支持部22の軸方向端部には、取外方向Dに向けられた軸方向停止面25が設けられている。軸方向停止面25は、ポンプユニット15における対応する軸方向ポンプユニット停止面17と協働する。この軸方向ポンプユニット停止面17は、支持部停止面25に対向するように、すなわち取付方向Mに向けられているため、
図2bに示すように、ポンプユニット15は、形状嵌合接続により軸方向に制止され、取付方向Mに軸方向に固定される。
【0030】
支持部22の軸方向停止面25には、
図1aに示すように、城郭風構造(castellated structure)21が設けられる。この城郭風構造21には、軸方向の取外方向Dに延び、支持部本体23の円周にわたって等角度に配置される複数の円弧状のマーロン(merlon)38が設けられる。マーロン38は、支持部のリング開口部35に同心円状に配置され、実質的に円筒形のポンプユニット15の回転を阻止する構造の第1部材を構成する。さらに、城郭風構造21には、軸方向の円筒状ねじソケット14を収容する、複数の軸方向受け部39が画定される。ねじソケット14は、ポンプユニット15の円周にわたって等角度に配置され、ポンプユニット取付面18を半径方向に超えて設けられる。
図1bに示すように、支持部22の対応する城郭風構造21によりねじソケット14が係止されるため、ポンプユニット15が支持部リング開口部35内で回転することはない。
【0031】
ポンプユニット15には、ポンプユニット15の前端面16から取付方向Mに軸方向に延びる電気プラグソケット40が設けられる。プラグソケット40は、ポンプユニット15の中心線に対して半径方向にオフセットされ、さらに、前端面16の外縁からもオフセットされている。このような構成により、例えば、
図1aに示すように、ポンプユニット15を支持部22へ差し込む際、プラグソケットが半径方向内側に延在するリップリング30´に損傷を与えることのないようにしている。
【0032】
電気プラグ(図示せず)は、軸方向の取外方向Dに差し込まれる。リップリング30とポンプユニット取付部18との間に比較的大きな摩擦力が生じ、また、ポンプユニット15が軸方向へ僅かに変位することでリップリング30が詰まるため、ポンプユニット15は軸方向の取外方向Dに十分に固定されている。そのため、軸方向への差し込みによって、ポンプユニット15が変位することはない。