(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】カテーテル用バルーン体及びバルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20241008BHJP
A61B 17/22 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
A61M25/10 550
A61M25/10 510
A61B17/22
(21)【出願番号】P 2023529708
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2022021096
(87)【国際公開番号】W WO2022270191
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2021103066
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】393015324
【氏名又は名称】株式会社グッドマン
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】太田 光浩
(72)【発明者】
【氏名】岡本 光正
(72)【発明者】
【氏名】平塚 信介
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-000708(JP,A)
【文献】国際公開第2020/195697(WO,A1)
【文献】特表2006-512952(JP,A)
【文献】特表2008-506454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61B 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収縮状態と膨張状態とに変形可能なバルーンと、
前記バルーンの側面に位置し、外側に突出した複数の硬性部材と、
を備えたカテーテル用バルーン体であって、
前記バルーンは、
前記複数の硬性部材の各々が設けられた連結部を少なくとも含む複数の剛性部と、周方向において前記複数の剛性部の間に配置され、前記複数の剛性部よりも柔らかい複数の柔性部とを有し、
前記収縮状態から前記膨張状態に切り替わるとき、前記複数の硬性部材の各々が所定の基準軸から離隔する向きに移動するように変形し、且つ、前記膨張状態から前記収縮状態に切り替わるとき、前記複数の硬性部材の各々が前記基準軸に近接する向きに移動するように変形し、
前記複数の硬性部材は、前記バルーンの前記複数の柔性部よりも硬く、
前記基準軸と直交する断面において、
前記複数の剛性部の夫々の前記周方向の端部が、前記周方向において隣接する他の剛性部の前記周方向における端部に連結したときに形成される仮想閉領域であって、前記基準軸が中心に配置された前記仮想閉領域に、前記収縮状態の前記バルーンに設けられた前記複数の硬性部材のうち、前記バルーンに対して外側に突出した部分の各々の少なくとも一部が配置される
ことを特徴とするカテーテル用バルーン体。
【請求項2】
前記仮想閉領域の重心、内心、外心、垂心の何れかに前記基準軸が配置されたことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項3】
前記膨張状態の前記バルーンの前記基準軸と直交する断面の形状は、略円形であり、
前記基準軸は、
前記膨張状態の前記バルーンの各部位からの距離が等しい位置に配置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項4】
前記バルーンが前記収縮状態のとき、前記複数の剛性部の夫々の前記周方向における端部は、前記周方向において隣接する前記他の剛性部の端部を除く部位に近接することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項5】
前記バルーンが前記収縮状態のとき、前記複数の剛性部の夫々の前記周方向における端部は、前記周方向において隣接する前記他の剛性部に含まれる前記連結部に近接することを特徴とする請求項4に記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項6】
前記バルーンが前記収縮状態のとき、前記複数の柔性部の各々は、前記複数の硬性部材を、前記複数の硬性部材の各々の前記基準軸と近接する側と反対側から覆うことを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項7】
前記基準軸と直交する断面において、
前記仮想閉領域に前記複数の硬性部材が全て配置されることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項8】
前記バルーンが前記収縮状態のとき、前記複数の硬性部材と前記基準軸との間の最短距離が、複数の前記連結部の前記周方向の中点と前記基準軸との間の最短距離よりも小さいことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項9】
前記剛性部と前記連結部の前記周方向の長さが等しく、且つ前記硬性部材と前記剛性部と前記連結部が同じ材料であることを特徴とする請求項1から請求項8の何れかに記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項10】
請求項1から6の何れかに記載のカテーテル用バルーン体と、
前記基準軸に沿って延び、前記バルーンに挿通される長尺部材と
を備え、
前記バルーンが前記収縮状態のとき、前記複数の剛性部の夫々は、前記長尺部材に接することを特徴とするバルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル用バルーン体及びバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
バルーンカテーテルにおける血管内での通過性を良好とするために、収縮状態のバルーンの径は小さい程好ましい。このため、収縮状態におけるバルーンの径を小さくするための技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
血管内の病変部に作用させるための硬性部材がバルーンに設けられたバルーンカテーテルがある。このようなバルーンカテーテルでは、バルーンの収縮時において硬性部材が外側に張り出し、径の小型化の妨げとなる場合がある。
【0005】
本発明の目的は、硬性部材が設けられる場合でも、収縮時における径を小型化できるカテーテル用バルーン体、及び、このカテーテル用バルーン体を備えたバルーンカテーテルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係るカテーテル用バルーン体は、収縮状態と膨張状態とに変形可能なバルーンと、前記バルーンの側面に位置し、外側に突出した複数の硬性部材と、を備えたカテーテル用バルーン体であって、前記バルーンは、前記複数の硬性部材の各々が設けられた連結部を少なくとも含む複数の剛性部と、周方向において前記複数の剛性部の間に配置され、前記複数の剛性部よりも柔らかい複数の柔性部とを有し、前記収縮状態から前記膨張状態に切り替わるとき、前記複数の硬性部材の各々が所定の基準軸から離隔する向きに移動するように変形し、且つ、前記膨張状態から前記収縮状態に切り替わるとき、前記複数の硬性部材の各々が前記基準軸に近接する向きに移動するように変形し、前記複数の硬性部材は、前記バルーンの前記複数の柔性部よりも硬く、前記基準軸と直交する断面において、前記複数の剛性部の夫々の前記周方向の端部が、前記周方向において隣接する他の剛性部の前記周方向における端部に連結したときに形成される仮想閉領域であって、前記基準軸が中心に配置された仮想閉領域に、前記収縮状態の前記バルーンに設けられた前記複数の硬性部材のうち、前記バルーンに対して外側に突出した部分の各々の少なくとも一部が配置されることを特徴とする。
【0007】
第1態様に係るカテーテル用バルーン体では、仮想閉領域に沿って複数の剛性部が配置された状態における径よりも、収縮状態における径を小さくできる。このためカテーテル用バルーン体は、バルーンに複数の硬性部材が設けられる場合でも、収縮状態における径を小型化できる。
【0008】
第1態様において、前記仮想閉領域の重心、内心、外心、垂心の何れかに前記基準軸が配置されてもよい。この場合、カテーテル用バルーン体は、周方向に亘って径を均一に小型化できる。
【0009】
第1態様において、前記膨張状態の前記バルーンの前記基準軸と直交する断面の形状は、略円形であり、前記基準軸は、前記膨張状態の前記バルーンの各部位からの距離が等しい位置に配置されてもよい。この場合、カテーテル用バルーン体は、膨張状態から収縮状態に変形したとき、バルーンを周方向において均一に収縮させることで径を最小化できる。
【0010】
第1態様において、前記バルーンが前記収縮状態のとき、前記複数の剛性部の夫々の前記周方向における端部は、前記周方向において隣接する前記他の剛性部の端部を除く部位に接触してもよい。この場合、カテーテル用バルーン体は、バルーンを収縮状態とした場合において、仮想閉領域内に複数の硬性部材の各々の少なくとも一部が配置される状態を、容易に形成させることができる。
【0011】
第1態様において、前記バルーンが前記収縮状態のとき、前記複数の剛性部の夫々の前記周方向における端部は、前記周方向において隣接する前記他の剛性部に含まれる前記連結部に接触してもよい。この場合、カテーテル用バルーン体は、バルーンを収縮状態とした場合において、仮想閉領域内に複数の硬性部材の各々の少なくとも一部が配置される状態を、更に容易に形成させることができる。
【0012】
第1態様において、前記バルーンが前記収縮状態のとき、前記複数の柔性部の各々は、前記複数の硬性部材を、前記複数の硬性部材の各々の前記基準軸と近接する側と反対側から覆ってもよい。この場合、カテーテル用バルーン体は、収縮状態において複数の硬性部材が血管内に引っ掛ることを、複数の柔性部により抑制できる。このためカテーテル用バルーン体は、血管内における通過性を良好にできる。
【0013】
第1態様において、前記基準軸と直交する断面において、前記仮想閉領域に前記複数の硬性部材が全て配置されてもよい。この場合、カテーテル用バルーン体は、収縮状態における径を最小化できる。
【0014】
第1態様において、前記バルーンが前記収縮状態のとき、前記複数の硬性部材と前記基準軸との間の最短距離が、複数の前記連結部の前記周方向の中点と前記基準軸との間の最短距離よりも小さくてもよい。この場合、カテーテル用バルーン体は、バルーンを収縮状態とした場合において、仮想閉領域内に複数の硬性部材の各々の少なくとも一部が配置された状態を、容易に形成させることができる。
【0015】
第1態様において、前記剛性部と前記連結部の前記周方向の長さが等しく、且つ前記硬性部材と前記剛性部と前記連結部が同一材料であってもよい。この場合、硬性部材、剛性部、及び柔性部を有するカテーテル用バルーン体を容易に作成できる。
【0016】
本発明の第2態様に係るバルーンカテーテルは、第1態様に係るカテーテル用バルーン体と、前記基準軸に沿って延び、前記バルーンに挿通される長尺部材とを備え、前記バルーンが前記収縮状態のとき、前記複数の剛性部の夫々は、前記長尺部材に接することを特徴とする。第2態様によれば、バルーンカテーテルは、収縮状態におけるカテーテル用バルーン体の径を最小化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】膨張状態のバルーン3を含むバルーンカテーテル1Aを示す図である。
【
図2】剛性部30Aと柔性部30Bとの境界部分を拡大した部分拡大図である。
【
図3】収縮状態のバルーン3を含むバルーンカテーテル1Aを示す図である。
【
図4】収縮状態のバルーン3を含むバルーン体10Aを示す図である。
【
図5】仮想閉領域S1に沿って剛性部30Aが配置されたバルーン3を含むバルーン体10Aを示す図である。
【
図6】バルーン体10Aが膨張状態と収縮状態とに変化する様子を示す図である。
【
図7】膨張状態のバルーン4を含むバルーンカテーテル1Bを示す図である。
【
図8】収縮状態のバルーン4を含むバルーンカテーテル1Bを示す図である。
【
図9】収縮状態のバルーン4を含むバルーン体10Bを示す図である。
【
図10】仮想閉領域S2に沿って剛性部40Aが配置されたバルーン4を含むバルーン体10Bを示す図である。
【
図11】バルーン体10Bが膨張状態と収縮状態とに変化する様子を示す図である。
【
図12】仮想閉領域S3の中心K3~K6を示す図である。
【
図13】収縮状態のバルーン3を含むバルーンカテーテル1Aの変形例を示す図である。
【
図14】収縮状態のバルーン3における各種実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るバルーンカテーテル1(1A、1B)の一実施形態について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。記載されている装置の構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。バルーンカテーテル1は、血管に形成された狭窄性の病変を拡張したり、後述する硬性部材6(第1実施形態)、7(第2実施形態)を病変に作用させて粉砕したり切開したりできる。
【0019】
<第1実施形態(バルーンカテーテル1A)>
図1~
図6を参照し、第1実施形態に係るバルーンカテーテル1Aについて説明する。バルーンカテーテル1Aは、カテーテルシャフト2及びバルーン体10Aを有する。
【0020】
<カテーテルシャフト2>
図1、
図3に示すように、バルーン体10Aは、管状のカテーテルシャフト2の一方側の端部に接続される。バルーンカテーテル1Aは、カテーテルシャフト2の他方側の端部に非図示のハブが接続された状態で使用される。ハブは、バルーン体10Aのバルーン3(後述)に対し、カテーテルシャフト2を介して圧縮流体を供給可能である。
【0021】
カテーテルシャフト2の両端のうち一方側を、「先端側」という。カテーテルシャフト2の両端のうち他方側を、「基端側」という。カテーテルシャフト2に沿って延びる方向を、「延伸方向」という。カテーテルシャフト2の中心を通って延伸方向に延びる軸を、基準軸C1という。基準軸C1と直交する平面において切断した場合の断面(単に「断面」という。)において、基準軸C1を中心とする半径方向のうち、基準軸C1に近接する側を「内側」といい、基準軸C1から離隔する側を「外側」という。
【0022】
カテーテルシャフト2は、外側チューブ21及び内側チューブ22を有する。外側チューブ21及び内側チューブ22は、それぞれ可撓性を有する。外側チューブ21の内径は、内側チューブ22の外径よりも大きい。内側チューブ22は、先端側の所定部分を除き、外側チューブ21の内腔に配置される。内側チューブ22の先端側の所定部分は、外側チューブ21の先端側の端(「先端211」という。)から先端側に向けて突出する。内側チューブ22の先端側の端(「先端221」という。)は、外側チューブ21の先端211よりも先端側に配置される。内側チューブ22の先端側の所定部分を、「突出部分225」という。外側チューブ21及び内側チューブ22の材料は特に限定されない。外側チューブ21及び内側チューブ22の材料の一例としてポリアミド系樹脂が用いられる。
【0023】
外側チューブ21の内腔のうち、内側チューブ22の内腔以外の空間には、ハブから供給される圧縮流体が通流する。内側チューブ22の内腔には、非図示のガイドワイヤが挿通される。
【0024】
<バルーン体10A>
バルーン体10Aは、バルーン3及び硬性部材6を有する。バルーン3は、非図示のハブによる圧縮流体の供給の有無に応じ、収縮状態と膨張状態との間で変形可能である。
図1は膨張状態のバルーン3を示し、
図3は収縮状態のバルーン3を示す。硬性部材6は、バルーン3に固定される。
【0025】
<バルーン3>
バルーン3は、先端側の端(「先端3D」という。)が、内側チューブ22の突出部分225のうち先端221の近傍に熱溶着によって接続される。又、バルーン3は、基端側の端(「基端3P」という。)が、外側チューブ21の先端211の近傍に熱溶着によって接続される。バルーン3は、内側チューブ22の突出部分225を外側から覆う。バルーン3の材料は特に限定されない。バルーン3の材料の一例としてポリアミド系樹脂が用いられる。
図1に示すように、膨張状態であるバルーン3の断面形状は、基準軸C1を中心とした略円形である。つまり基準軸C1は、バルーン3の各部位からの距離が等しい位置に配置される。なお、
図1では、説明の容易化の為、後述の剛性部30Aと柔性部30Bとのそれぞれと基準軸C1との間の距離が僅かに相違するように示されている。しかし、基準軸C1と後述の剛性部30Aとの間の距離と、基準軸C1と柔性部30Bとの間の距離との間の相違量は、夫々の距離と比べて非常に小さい。このため、実質上、基準軸C1は、バルーン3の剛性部30A及び柔性部30Bを含む各部位からの距離が等しい位置に配置される。
【0026】
図1に示すように、バルーン3において、先端側コーン領域3A、膨張領域3B、及び基端側コーン領域3Cが定義される。先端側コーン領域3Aは、膨張状態のバルーン3において先端3Dから基端3Pに向けて拡径しながら延びる領域である。基端側コーン領域3Cは、拡張状態のバルーン3において基端3Pから先端3Dに向けて拡径しながら延びる領域である。膨張領域3Bは、拡張状態のバルーン3において先端側コーン領域3Aと基端側コーン領域3Cとの間に挟まれた領域であり、延伸方向に亘って径が略同一となる。バルーン3の膨張領域3Bの側面を、「側面30」という。
【0027】
バルーン3の膨張領域3Bは、剛性部31A、32A、33A、34A(総称して「剛性部30A」という。)、及び、柔性部31B、32B、33B、34B(総称して「柔性部30Bという。」)を有する。剛性部30A及び柔性部30Bは、各々、剛性部31A、柔性部31B、剛性部32A、柔性部32B、剛性部33A、柔性部33B、剛性部34A、柔性部34Bの順で周方向E1に順番に配列される。剛性部30A及び柔性部30Bは、周方向E1に交互に並ぶ。剛性部31A、32A、33A、34Aは、周方向E1において等間隔に配置される。周方向E1とは、バルーン3の膨張領域3Bに沿って延びる方向のうち基準軸C1と直交する方向に対応する。
【0028】
剛性部30Aと柔性部30Bとでは、厚さが相違する。剛性部30Aと柔性部30Bとでは、厚さの相違に応じて硬さも相違する。剛性部30Aよりも柔性部30Bの方が厚さが薄いため、剛性部30Aよりも柔性部30Bの方が柔らかい。なお、剛性部30Aと柔性部30Bとの硬さの相違は、周知の様々な硬さ試験のうち少なくとも何れかの結果により生じていればよい。
【0029】
剛性部30Aは、後述の硬性部材6を接着する為に接着剤が塗布されることにより形成される。つまり、剛性部30Aと柔性部30Bとのそれぞれを形成する材料は、相違する。又、剛性部30Aの厚さは、接着剤の厚さ分、柔性部30Bの厚さよりも大きくなる。又、剛性部30Aの硬さは、接着剤が塗布されることにより、柔性部30Bよりも硬くなる。
【0030】
剛性部30Aの硬さは、周方向の両端部近傍において、両端部に向けて次第に柔らかくなる。柔性部30Bの硬さは、周方向の両端部近傍において、両端部に向けて次第に硬くなる。バルーン3の硬さの周方向の変化は、剛性部30Aと柔性部30Bとの間で緩やかに変化する。剛性部30Aと柔性部30Bとの境界部分における硬さの急激な変化は生じない。このため、
図2に示すように、バルーン3が膨張状態の時、剛性部30Aの周方向の両端部は湾曲し、剛性部30Aと柔性部30Bとの境界部分に段差は生じない。なお、説明を簡略化する為、
図2以外の図面においては、剛性部30Aを湾曲状とせず平面状としている。
【0031】
図1に示すように、柔性部30Bは、バルーン3が膨張状態の時、基準軸C1を中心とする円弧に沿って湾曲する。剛性部31A~34Aの夫々の周方向E1の長さは同一である。柔性部31B~34Bの夫々の周方向E1の長さは同一である。剛性部30Aの周方向E1の長さは、柔性部30Bの周方向E1の長さよりも短い。又、剛性部30Aの周方向E1の長さは、内側チューブ22の直径よりも大きい。
【0032】
<硬性部材6>
バルーン3の側面30に、硬性部材61A、62A、63A、64A(総称して「硬性部材6」という。)が設けられる。硬性部材6の各々の形状は三角柱であり、延伸方向に延びる。硬性部材61A、62A、63A、64Aは、各々、バルーン3の剛性部31A、32A、33A、34Aに固定される。硬性部材6は、バルーン3に対して外側に突出する。硬性部材6のうち、膨張状態において基準軸C1に近接する側面を、「側面601」という。バルーン3の剛性部30Aにおいて、硬性部材6の側面601に接触する部分を、「連結部301」という。
【0033】
硬性部材6の側面601の周方向E1の長さは、硬性部材6が連結する剛性部30Aの周方向E1の長さよりも短い。剛性部30Aの周方向E1の両端部は、剛性部30Aに固定される硬性部材6に対して、周方向E1の両側に突出する。バルーン3を膨張状態とした場合において剛性部30Aの周方向E1の一方側の端部及び他方側の端部に対応する部分を、各々、「端部311」「端部312」という。端部311、312を総称して「端部310」という。例えば、剛性部31Aの端部311と剛性部32Aの端部312とは、夫々、柔性部31Bに連結する。剛性部32Aの端部311と剛性部33Aの端部312とは、夫々、柔性部32Bに連結する。剛性部33Aの端部311と剛性部34Aの端部312とは、夫々、柔性部33Bに連結する。剛性部34Aの端部311と剛性部31Aの端部312とは、夫々、柔性部34Bに連結する。
【0034】
硬性部材6のうち側面601を除く2つの側面602が交差する頂点を、「頂点600」という。側面601と直交して延び且つ側面601から頂点600を通って延びる方向を、「突出方向Y1」という。膨張状態において、突出方向Y1は、半径方向の外側を向く。
【0035】
硬性部材6の硬さは、バルーン3の柔性部30Bよりも硬い。なお、硬性部材6と柔性部30Bとの硬さの相違は、周知の様々な硬さ試験のうち少なくとも何れかの結果により生じていればよい。硬性部材6と、バルーン3の剛性部30Aとの夫々の硬さの大小関係は限定されない。硬性部材6の硬さは、剛性部30Aの硬さよりも硬くてもよいし、柔らかくてもよい。硬性部材6と剛性部30Aとの夫々の硬さは同一でもよい。硬性部材6の材質は特に限定されない。硬性部材6の材質の一例として金属が用いられる。つまり、バルーン体10Aでは、バルーン3とは異なる材料により生成された硬性部材6が、剛性部30Aの側面30に固定されることにより形成される。硬性部材6は、バルーン3と同じ材料により生成されてもよい。
【0036】
<バルーン3の収縮/膨張>
図3に示すように、収縮状態のバルーン3は、羽根31C、32C、33C、34C(総称して「羽根30C」という。)を有する。羽根31C、32C、33C、34Cは、各々、バルーン3の柔性部31B、32B、33B、34Bが折り畳まれ、且つ、各々が硬性部材61A、62A、63A、64Aに外側から巻き付くことにより形成される。硬性部材6のうち基準軸C1と近接する側と反対側、即ち外側の部分は、羽根30Cによって覆われる。羽根30Cは、「フラップ」「ウイング」とも呼ばれる。
【0037】
収縮状態のバルーン3において、剛性部30Aは、カテーテルシャフト2の内側チューブ22に接触する。又、バルーン3の剛性部31Aの端部311は、剛性部32Aのうち硬性部材62Aが固定される面と反対側の面、且つ、端部310を除く部位に近接する。より詳細には、剛性部31Aの端部311は、剛性部32Aのうち硬性部材62Aが固定される連結部301に、硬性部材62Aが固定される側と反対側から近接する。なお、詳細説明は省略するが、バルーン3の剛性部32Aの端部311と剛性部33Aとの位置関係、バルーン3の剛性部33Aの端部311と剛性部34Aとの位置関係、及び、バルーン3の剛性部34Aの端部311と剛性部31Aとの位置関係についても同様である。つまり、剛性部30Aの夫々の端部311は、周方向E1の一方側に隣接する他の剛性部30Aの端部311、312を除く部位、より詳細には、周方向E1の一方側に隣接する他の剛性部30Aの連結部301に近接する。なお、バルーン3の剛性部31Aの端部311は、剛性部32Aのうち硬性部材62Aが固定される面と反対側の面、且つ、端部310を除く部位に接触してもよい。より詳細には、剛性部31Aの端部311は、剛性部32Aのうち硬性部材62Aが固定される連結部301に、硬性部材62Aが固定される側と反対側から接触してもよい。バルーン3の剛性部32A~34Aについても同様である。
【0038】
図4に示すように、バルーン3が収縮状態であるバルーン体10Aの断面において、仮想閉領域S1を定義する。仮想閉領域S1は、剛性部30Aの端部311が、バルーン3が膨張状態のときに周方向E1の一方側に隣接する他の剛性部30Aの端部312に連結することを想定した場合において、各剛性部30A(剛性部31A~34A)の断面で囲まれる領域である(
図5参照)。
【0039】
なお、端部311、312が連結した連結部分T1における剛性部30Aと他の剛性部30Aとのなす角度は、仮想閉領域S1に含まれるすべての連結部分T1において同一となる。例えばバルーン体10Aの場合、4つの剛性部30A(剛性部31A~34A)を含むので、仮想閉領域S1の形状は、剛性部31A~34Aの夫々の断面で示される線分を各辺とする正方形となる。又、仮想閉領域S1の4つの隅(4つの連結部分T1)の夫々における剛性部30Aと他の剛性部30Aとのなす角度は、何れも90°となる。
【0040】
又、仮想閉領域S1は、仮想閉領域S1の中心K1が基準軸C1の位置と一致するように定義される。なお、仮想閉領域S1の中心K1とは、仮想閉領域S1の重心に対応する。更に、仮想閉領域S1は、仮想閉領域S1の全ての辺の各々が、何れかの剛性部30Aと平行となるように定義される。
【0041】
上記のように仮想閉領域S1が定義された場合、バルーン体10Aの断面において、硬性部材61A~64Aの各々の一部は、仮想閉領域S1の内部に配置される。断面において、収縮状態のバルーン3の羽根30Cに接し且つ基準軸C1を中心とする外接円U11を定義する。外接円U11の半径を、R11と表記する。
【0042】
図5は、バルーン3の実際の収縮状態(
図4参照)と異なる収縮状態を例示する。
図5では、剛性部31Aの端部311に剛性部32Aの端部312が接触し、剛性部32Aの端部311に剛性部33Aの端部312が接触し、剛性部33Aの端部311に剛性部34Aの端部312が接触し、剛性部34Aの端部311に剛性部31Aの端部312が接触する。つまり、
図5では、剛性部31A~34Aの夫々の断面で示される線分が、仮想閉領域S1の各辺の位置に配置される。
【0043】
図5に示すように剛性部30Aが配置された場合、バルーン体10Aの断面において、硬性部材61A~64Aの各々は、仮想閉領域S1の外部に配置される。断面において、バルーン3の羽根30Cに接し且つ基準軸C1を中心とする外接円U12を定義する。外接円U12の半径を、R12と表記する。半径R12は、
図4における半径R11よりも大きい。つまり、収縮状態におけるバルーン3の剛性部30Aを、
図4に示すように配置することによって、バルーン3の径は
図5に示す場合よりも小さくなる。
【0044】
図6は、バルーン体10Aのバルーン3が収縮状態と膨張状態との間で変形する様子を示す。
図6(A)に示す収縮状態のバルーン3に対し、非図示のハブから圧縮流体が供給されたとする。この場合、
図6(B)に示すように、バルーン3の柔性部31B~34Bは伸長し、羽根31C~34C(
図6(A)参照)は解消される。硬性部材61A~64Aは、各々、半径方向に沿って外側に向けて移動する。硬性部材61A~64Aは、各々、基準軸C1から離隔する。
【0045】
更に、圧縮流体がバルーン3に供給された場合、硬性部材61A~64Aは、各々、回転して突出方向Y1(
図1参照)の向きを変えながら、基準軸C1から離隔する方向に更に移動する。結果、
図6(C)に示すように、バルーン3は膨張状態となる。
【0046】
一方、
図6(C)に示す膨張状態のバルーン3から、圧縮流体が除去されたとする。この場合、
図6(B)に示すように、バルーン3の柔性部31B~34Bは折り畳まれる。又、硬性部材61A~64Aは、各々、膨張状態における位置(
図6(C)参照)に対し、半径方向に沿って内側に向けて移動する。このとき、硬性部材61A~64Aは、各々、基準軸C1に近接する方向に移動する。
【0047】
更にバルーン3から圧縮流体が除去された場合、硬性部材61A、62A、63A、64Aは各々、基準軸C1に近接する方向に更に移動する。又、バルーン3の柔性部31B~34Bは、折り畳まれた状態で硬性部材61A~64Aに巻き付き、羽根31C~34Cを形成させる。これにより、
図6(A)に示すように、バルーン3は収縮状態となる。
【0048】
なお、バルーン3には、膨張状態から収縮状態に変化する時に剛性部30Aが
図6(A)に示す配置となるよう、癖付けがされている。
【0049】
<第1実施形態の作用、効果>
バルーンカテーテル1Aでは、仮想閉領域S1に沿って剛性部30Aが配置された状態(
図5参照)におけるバルーン体10Aの半径R12よりも、バルーン3を収縮状態とした場合(
図4参照)におけるバルーン体10Aの半径R11を小さくできる。このためバルーンカテーテル1Aは、バルーン3に硬性部材6が設けられる場合でも、収縮状態における径を小型化できる。
【0050】
仮想閉領域S1は、重心に対応する中心K1が、基準軸C1と一致する位置に配置される。この場合、バルーンカテーテル1Aは、バルーン体10Aの径を周方向E1に亘って均一に小型化できる。
【0051】
膨張状態のバルーン3において、基準軸C1と直交する断面の形状は略円形であり、バルーン3の各部位からの距離が等しい位置に基準軸C1が配置される。この場合、バルーンカテーテル1Aは、膨張状態における断面が略円形であるバルーン3を収縮状態としたとき、バルーン3を周方向E1において均一に収縮させることでバルーン体10Aの径を最小化できる。
【0052】
バルーン3が収縮状態のとき、剛性部30Aの夫々の端部311は、周方向E1の一方側に隣接する他の剛性部30Aの端部311,312を除く部位、より詳細には、他の剛性部30Aの連結部301に近接する。この場合、バルーンカテーテル1Aは、バルーン3を収縮状態とした場合において、仮想閉領域S1内に硬性部材6の一部が配置された状態を、容易に形成させることができる。
【0053】
バルーン3が収縮状態のとき、柔性部30Bは、硬性部材6のうち基準軸C1と近接する側と反対側を覆う。この場合、バルーンカテーテル1Aは、収縮状態において硬性部材6が血管内に引っ掛ることを、柔性部30Bにより抑制できる。このため、バルーンカテーテル1Aは、血管内におけるバルーン体10Aの通過性を良好にできる。
【0054】
<第2実施形態(バルーンカテーテル1B)>
図7~
図11を参照し、第2実施形態に係るバルーンカテーテル1Bについて説明する。バルーンカテーテル1Bは、カテーテルシャフト2及びバルーン体10Bを有する。カテーテルシャフト2の構成は、第1実施形態におけるバルーンカテーテル1Aのカテーテルシャフト2(
図1、
図3参照)と同一であるので、説明を省略する。第1実施形態と共通する他の構成については、説明を簡略化する。
【0055】
<バルーン体10B>
バルーン体10Bは、バルーン4及び硬性部材7を有する。バルーン4は、第1実施形態におけるバルーン3に対応する。
図7は膨張状態のバルーン4を示し、
図8は収縮状態のバルーン4を示す。
【0056】
<バルーン4>
図7に示すバルーン4の先端4D、基端4P、先端側コーン領域4A、膨張領域4B、基端側コーン領域4C、側面40は、各々、第1実施形態におけるバルーン3の先端3D、基端3P、先端側コーン領域3A、膨張領域3B、基端側コーン領域3C、側面30に対応する。膨張状態であるバルーン4の断面形状は、基準軸C2を中心とした略円形である。つまり基準軸C2は、バルーン4の各部位からの距離が等しい位置に配置される。
【0057】
バルーン4の膨張領域4Bは、剛性部41A、42A、43A、44A、45A、46A(総称して「剛性部40A」という。)、及び、柔性部41B、42B、43B、44B、45B、46B(総称して「柔性部40Bという。」)を有する。剛性部40A及び柔性部40Bは、剛性部41A、柔性部41B、剛性部42A、柔性部42B、剛性部43A、柔性部43B、剛性部44A、柔性部44B、剛性部45A、柔性部45B、剛性部46A、柔性部46Bの順で周方向E2に順番に配列される。剛性部40A及び柔性部40Bは、周方向E2に交互に並ぶ。剛性部41A、42A、43A、44A、45A、46Aは、周方向E2において等間隔に配置される。
【0058】
剛性部40Aと柔性部40Bとでは、厚さが相違する。剛性部40Aと柔性部40Bとでは、厚さの相違に応じて硬さも相違する。剛性部40Aよりも柔性部40Bの方が厚さが薄いため、剛性部40Aよりも柔性部40Bの方が柔らかい。柔性部40Bは、バルーン4が膨張状態の時、基準軸C2を中心とする円弧に沿って湾曲する。剛性部40Aの周方向E2の長さは、柔性部40Bの周方向E2の長さよりも短い。剛性部40Aの周方向E2の長さは、内側チューブ22の直径よりも大きい。その他の剛性部40A及び柔性部40Bの特徴は、第1実施形態における剛性部30A及び柔性部30Bに準ずる。
【0059】
<硬性部材7>
バルーン4の側面40に、硬性部材71A、72A、73A、74A、75A、76A(総称して「硬性部材7」という。)が固定される。硬性部材7の形状は、第1実施形態における硬性部材6と同一である。硬性部材71A、72A、73A、74A、75A、76Aは、各々、バルーン4の剛性部41A、42A、43A、44A、45A、46Aに固定される。硬性部材7は、バルーン4に対して外側に突出する。バルーン4の剛性部40Aのうち、硬性部材7の側面701に接触する部分を、「連結部401」という。
【0060】
硬性部材7の側面701の周方向E2の長さは、硬性部材7が連結する剛性部40Aの周方向E2の長さよりも短い。剛性部40Aの各々の周方向E2の両端部は、剛性部40Aに固定される硬性部材7に対して、周方向E2の両側に突出する。剛性部40Aの端部411、412は、各々、第1実施形態における剛性部30Aの端部311、312に対応する。端部411、412を総称して「端部410」という。硬性部材7のうち側面701を除く2つの側面702が交差する頂点を、「頂点700」という。側面701と直交して延び且つ側面701から頂点700を通って延びる方向を、突出方向Y2という。突出方向Y2は、半径方向の外側を向く。
【0061】
<バルーン4の収縮/膨張>
図8に示すように、収縮状態のバルーン4は、羽根41C、42C、43C、44C、45C、46C(総称して「羽根40C」という。)を有する。羽根40Cは、各々、剛性部41A及び柔性部46B(羽根41C)、剛性部42A及び柔性部41B(羽根42C)、剛性部43A及び柔性部42B(羽根43C)、剛性部44A及び柔性部43B(羽根44C)、剛性部45A及び柔性部44B(羽根45C)、剛性部46A及び柔性部45B(羽根46C)が折り畳まれることにより形成される。バルーン体10Bの断面において、羽根40Cは、正六角形の各辺に対応する位置に配置される。
【0062】
収縮状態のバルーン4において、剛性部41Aの端部412は、剛性部42Aの端部411に近接する。剛性部42Aの端部412は、剛性部43Aの端部411に近接する。剛性部43A、44A、45A、46Aの位置関係についても同様である。硬性部材7のうち基準軸C2と近接する側と反対側、即ち外側の部分は、羽根40Cによって覆われる。
【0063】
収縮状態におけるバルーン4では、第1実施形態におけるバルーン3と異なり、カテーテルシャフト2の内側チューブ22に剛性部40Aが接触せず、離隔する。剛性部40Aと内側チューブ22との間に、硬性部材7が介在する。硬性部材7の側面701から頂点700を通って延びる突出方向Y2は、半径方向に沿って延び、内側の基準軸C2を向く。
【0064】
硬性部材7と基準軸C2との間の最短の距離を、D1と表記する。距離D1は、硬性部材7の頂点700と基準軸C2との間の半径方向の距離に対応する。剛性部40Aの連結部401と基準軸C2との間の最短の距離を、D2と表記する。距離D1は、距離D2よりも小さい。
【0065】
図9に示すように、バルーン4が収縮状態であるバルーン体10Bの断面において、仮想閉領域S2を定義する。仮想閉領域S2は、剛性部40Aの端部411が、バルーン4が膨張状態のときに周方向E2の一方側に隣接する他の剛性部40Aの端部412に連結することを想定した場合において、各剛性部40A(剛性部41A~46A)の断面で囲まれる領域である(
図10参照)。
【0066】
例えばバルーン体10Bの場合、6つの剛性部40A(剛性部41A~46A)を含むので、仮想閉領域S2の形状は、剛性部41A~46Aの夫々の断面で示される線分を各辺とする正六角形となる。又、仮想閉領域S2の6つの隅(剛性部40Aの端部411と、他の剛性部40Aの412との連結部分T2)における剛性部40Aと他の剛性部40Aとのなす角度は、何れも120°となる。
【0067】
又、仮想閉領域S2は、仮想閉領域S2の中心K2が基準軸C2の位置と一致するように定義される。なお、仮想閉領域S2の中心K2とは、仮想閉領域S2の重心に対応する。更に、仮想閉領域S2は、仮想閉領域S2の全ての辺の各々が、何れかの剛性部40Aと平行となるように定義される。
【0068】
上記のように仮想閉領域S2が定義された場合、バルーン体10Bの断面において、硬性部材71A~76Aの各々の一部は、仮想閉領域S2の内部に配置される。断面において、収縮状態のバルーン4の羽根40Cに接し且つ基準軸C2を中心とする外接円U21を定義する。外接円U21の半径を、R21と表記する。
【0069】
図10は、バルーン4の実際の収縮状態(
図9参照)と異なる収縮状態を例示する。
図10では、剛性部41A~46Aの夫々の断面で示される線分が、仮想閉領域S2の各辺の位置に配置される。この場合、バルーン体10Bの断面において、硬性部材71A~76Aの各々は、仮想閉領域S2の外部に配置される。断面において、バルーン4の柔性部41B~46Bの各々が折り畳まれて形成される羽根に接し且つ基準軸C2を中心とする外接円U22を定義する。外接円U22の半径を、R22と表記する。半径R22は、
図9における半径R21よりも大きい。つまり、収縮状態におけるバルーン4の剛性部40Aを、
図9に示す配置とすることによって、バルーン4の径は小さくなる。
【0070】
図11は、バルーン体10Bのバルーン4が収縮状態と膨張状態との間で変形する様子を示す。
図11(A)に示す収縮状態のバルーン4に対し、非図示のハブから圧縮流体が供給されたとする。この場合、
図11(B)に示すように、バルーン4の柔性部41B~46Bは伸長し、羽根41C~46C(
図11(A)参照)は解消される。又、硬性部材71A~76Aは、各々、回転して突出方向Y2を外側に向けながら、半径方向に沿って外側に向けて移動する。このとき、硬性部材71A~76Aは、各々、基準軸C2から離隔する。
【0071】
更に、圧縮流体がバルーン4に供給された場合、硬性部材71A~76Aは各々、基準軸C2から離隔する方向に更に移動する。結果、
図11(C)に示すように、バルーン4は膨張状態となる。この時、硬性部材71A~76Aの各々の突出方向Y2は外側を向く。
【0072】
一方、
図11(C)に示す膨張状態のバルーン4から圧縮流体が除去されたとする。この場合、
図11(B)に示すように、バルーン4の柔性部41B~46Bは折り畳まれる。又、硬性部材71A~76Aは、各々、膨張状態における位置(
図11(C)参照)に対し、半径方向に沿って内側に向けて移動する。このとき、硬性部材71A~76Aは、各々、回転して突出方向Y2(
図7参照)を内側に向けながら、基準軸C2に近接する方向に移動する。
【0073】
更にバルーン4から圧縮流体が除去された場合、硬性部材71A~76Aは、各々、回転して突出方向Y2を内側に向けながら、基準軸C2に近接する方向に更に移動する。又、バルーン4の柔性部41B~46Bは、折り畳まれた状態で硬性部材71A~76Aを外側から覆う。剛性部41A~46A及び柔性部41B~46Bにより、羽根41C~46Cが形成される。これにより、
図11(A)に示すように、バルーン4は収縮状態となる。この時、硬性部材71A~76Aの各々の突出方向Y2は、内側の基準軸C2を向く。
【0074】
なお、バルーン4には、膨張状態から収縮状態に変化する時に剛性部40Aが
図11(A)に示す配置となるよう、癖付けがされている。
【0075】
<第2実施形態の作用、効果>
バルーンカテーテル1Bでは、仮想閉領域S2に沿って剛性部40Aが配置された状態(
図10参照)におけるバルーン体10Bの半径R22よりも、バルーン4を収縮状態とした場合(
図9参照)におけるバルーン体10Bの半径R21を小さくできる。このためバルーンカテーテル1Bは、バルーン4に硬性部材7が設けられる場合でも、収縮状態における径を小型化できる。
【0076】
仮想閉領域S2は、重心に対応する中心K2が基準軸C2と一致する位置に配置される。この場合、バルーンカテーテル1Bは、バルーン体10Bの径を周方向E2に亘って均一に小型化できる。
【0077】
膨張状態のバルーン4において、基準軸C2と直交する断面の形状は略円形であり、バルーン4の各部位からの距離が等しい位置に基準軸C2が配置される。この場合、バルーンカテーテル1Bは、膨張状態における断面が略円形であるバルーン4を収縮状態としたとき、バルーン4を周方向E2において均一に収縮させることでバルーン体10Bの径を最小化できる。
【0078】
バルーン4が収縮状態のとき、硬性部材7と基準軸C2との間の最短距離である距離D1は、剛性部40Aの連結部401と基準軸C2との間の最短距離である距離D2よりも小さい。この場合、バルーン体10Bは、バルーン4を収縮状態とした場合において、仮想閉領域S2内に硬性部材7の各々の一部が配置された状態を、容易に形成させることができる。
【0079】
<変形例>
本発明は第1実施形態及び第2実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。以下では、特に説明のない限り、第1実施形態を例に挙げて変形例を具体的に説明する。しかし、以下の変形例の内容は、適宜、第2実施形態にも適用可能である。
【0080】
バルーンカテーテル1Aの内側チューブ22は、突出部分225を有さなくてもよい。この場合、バルーン3の内部にチューブが設けられず、バルーン3の先端3Dは閉塞してもよい。内側チューブ22の代わりに、可撓性を有するシャフトが設けられてもよい。
【0081】
硬性部材6は、バルーン3と一体で形成されてもよい。つまり、バルーン3の一部が硬性部材6として機能してもよい。なお、この場合、バルーン3を構成する樹脂の配向度(結晶化度)の違いにより、バルーン3と硬性部材6との硬さを相違させてもよい。硬性部材6の形状は、三角柱に限定されず、他の任意の形状でよい。例えば硬性部材6のうち、バルーン3の剛性部30Aと連結する連結部に対して反対側の端部は、尖っていなくてもよく、湾曲していてもよい。硬性部材6は、バルーン3の膨張領域3Bのうち延伸方向の全域に亘って延びていなくてもよい。例えば硬性部材6は、延伸方向において複数に分断されてもよい。剛性部30A、柔性部30B、及び硬性部材6は、バルーン3の先端側コーン領域3A及び基端側コーン領域3Cにも設けられてもよい。
【0082】
剛性部30A及び柔性部30Bは、同一材料により形成されてもよい。なお、この場合、バルーン3を構成する樹脂の配向度(結晶化度)の違いにより、剛性部30Aと柔性部30Bとの硬さを相違させてもよい。
【0083】
剛性部30Aと柔性部30Bとの間の境界は、硬さの閾値に基づいて規定されてもよい。硬性部材6は、剛性部30Aに対して内側にも突出してもよい。
【0084】
剛性部31A~34Aの夫々の周方向E1の長さは、各々で相違していてもよい。この場合、仮想閉領域S1の形状は、正方形に限定されず、長さが各々相違する剛性部31A~34Aの断面を各辺とする多角形となる。又、剛性部30Aの形状は平面状に限定されず、湾曲していてもよい。この場合、仮想閉領域S1の形状は、正方形に限定されず、湾曲した剛性部31A~34Aの断面で囲まれた閉領域となる。
【0085】
剛性部30Aの周方向E1の長さは、硬性部材6の側面601の周方向E1の長さと略同一でもよい。この場合、剛性部30Aの周方向E1における両端部は、硬性部材6から周方向E1の両側に突出しなくてもよい。更にこの場合、硬性部材6、剛性部30A及び連結部301は、同一材料により形成されてもよい。本構成とすることにより、バルーン3を容易に作成できる。
【0086】
剛性部30A、柔性部30B、及び硬性部材6の夫々の数は4つに限定されず、2以上の任意の数でもよい。
【0087】
仮想閉領域S1の中心K1は、仮想閉領域S1の重心に限定されない。
図12を参照し、剛性部30A、柔性部30B、及び硬性部材6の夫々の数が3つである場合を例に挙げて具体的に説明する。3つの剛性部30Aの各々を、剛性部35A、36A、37Aと表記し、この場合に仮想閉領域S3が定義される場合を例示する。
【0088】
図12(A)に示すように、仮想閉領域S3の中心K3は、仮想閉領域S3を示す三角形の3本の中線L1の交点、即ち重心に限定されない。例えば
図12(B)に示すように、仮想閉領域S3の中心K4は、仮想閉領域S3を示す三角形の各辺の垂直二等分線L2の交点、即ち外心と一致してもよい。例えば
図12(C)に示すように、仮想閉領域S3の中心K5は、仮想閉領域S3を示す三角形の各頂角の二等分線L3の交点、即ち内心と一致してもよい。例えば
図12(D)に示すように、仮想閉領域S3の中心K6は、仮想閉領域S3を示す三角形の各頂角から、向かい合う辺におろした垂線L4の交点、即ち垂心と一致してもよい。これらの場合でも、バルーンカテーテル1Aは、周方向E1に亘ってバルーン体10Aの径を均一に小型化できる。
【0089】
膨張状態のバルーン3の基準軸C1と直交する断面の形状は、剛性部30Aと柔性部30Bとで曲率の異なる略円形となる。基準軸C1から剛性部30Aまでの半径方向の距離は、基準軸C1から柔性部30Bまでの半径方向の距離よりも僅かに小さくなる。なお、膨張状態のバルーン3の基準軸C1と直交する断面の形状は略円形に限定されず、楕円形、多角形等でもよい。
【0090】
バルーン3が収縮状態のとき、剛性部30Aの夫々の端部311は、他の剛性部30Aの端部311,312を除く部位であり、且つ、他の剛性部30Aの連結部301を除く位置に近接してもよい。
【0091】
羽根31Cは、硬性部材64Aを外側から覆ってもよい。羽根32Cは、硬性部材61Aを外側から覆ってもよい。羽根33Cは、硬性部材62Aを外側から覆ってもよい。羽根34Cは、硬性部材63Aを外側から覆ってもよい。羽根30Cは、硬性部材6を外側から覆わなくてもよい。
【0092】
バルーン3を収縮状態とした場合、硬性部材6、剛性部30A、及び柔性部30Bは、
図13に示すように配置されてもよい。この場合、硬性部材6の突出方向Y1は、基準軸C1と直交する方向に向けて延びる。
図13において、剛性部30Aの連結部301のうち、膨張状態における周方向E1の中点Sを定義する。基準軸C1と硬性部材6との間の最短の距離を、D3と表記する。距離D3は、硬性部材6の側面601のうち基準軸C2に近い側の端部と基準軸C1との間の半径方向の距離に対応する。連結部301の中点Sと基準軸C1との間の最短の距離を、D4と表記する。距離D3は、距離D4よりも小さい。この場合、バルーン体10Aは、バルーン3を収縮状態とした場合において、仮想閉領域S1内に硬性部材6の各々の一部が配置された状態を容易に形成させることができる。
【0093】
第2実施形態に係るバルーン体10Bの断面において、硬性部材71A~76Aの各々は、すべての部分が仮想閉領域S2の内部に配置されてもよい。この場合、剛性部41Aの端部412は、柔性部41Bを挟んで剛性部42Aの端部411に当接してもよい。剛性部42Aの端部412は、柔性部42Bを挟んで剛性部43Aの端部411に当接してもよい。剛性部43Aの端部412は、柔性部43Bを挟んで剛性部43Aの端部411に当接してもよい。剛性部44Aの端部412は、柔性部44Bを挟んで剛性部44Aの端部411に当接してもよい。この場合、バルーンカテーテル1Bは、バルーン4を収縮状態とした場合におけるバルーン体10Bの径を最小化できる。
【0094】
硬性部材6の形状、及び、バルーン3を収縮状態とした場合における剛性部30A、柔性部30B、羽根30C、及び硬性部材6の配置は、上記に限定されない。例えば
図14に示す様々な形状及び配置とすることが可能である。
【0095】
<その他>
内側チューブ22は、本発明の「長尺部材」の一例である。