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特許7568857セリウム系複合酸化物粉末、摩擦材組成物、及び、摩擦材
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  • 特許-セリウム系複合酸化物粉末、摩擦材組成物、及び、摩擦材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】セリウム系複合酸化物粉末、摩擦材組成物、及び、摩擦材
(51)【国際特許分類】
   C01G 25/00 20060101AFI20241008BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20241008BHJP
   F16D 69/02 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C01G25/00
C09K3/14 520M
C09K3/14 520C
F16D69/02 G
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2023529854
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 JP2022023603
(87)【国際公開番号】W WO2022264961
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/022503
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000208662
【氏名又は名称】第一稀元素化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍋田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼瀬 元希
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-095336(JP,A)
【文献】特開2013-049627(JP,A)
【文献】特開平09-013009(JP,A)
【文献】特表2008-529758(JP,A)
【文献】特開2007-022835(JP,A)
【文献】特開2000-302410(JP,A)
【文献】特表2012-528782(JP,A)
【文献】特表2004-536771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00
C09K 3/14
F16D 69/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリウム、ジルコニウム、及び、アルミニウムを含み、
セリウムの含有量が酸化物換算で40質量%以上95質量%以下であり、
ジルコニウムの含有量が酸化物換算で0.1質量%以上50質量%以下の範囲内であり、
アルミニウムの含有量が酸化物換算で0.1質量%以上24質量%以下の範囲内であり、
比表面積が0.5m/g以上10m/g以下であることを特徴とするセリウム系複合酸化物粉末。
【請求項2】
結晶子径が10nm以上80nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のセリウム系複合酸化物粉末。
【請求項3】
粒子径D50が0.5μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセリウム系複合酸化物粉末。
【請求項4】
粒子径D99が60μm以下であることを特徴とする請求項1~のいずれか1に記載のセリウム系複合酸化物粉末。
【請求項5】
単粒圧壊強度が50N以上300N以下の範囲内であることを特徴とする請求項1~のいずれか1に記載のセリウム系複合酸化物粉末。
【請求項6】
アルミニウムの含有量が酸化物換算で0.1質量%以上10質量%以下の範囲内である請求項1~5のいずれか1に記載のセリウム系複合酸化物粉末。
【請求項7】
ジルコニウムの含有量が酸化物換算で0.1質量%以上40質量%以下の範囲内であり、
アルミニウムの含有量が酸化物換算で0.1質量%以上10質量%以下の範囲内であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1に記載のセリウム系複合酸化物粉末。
【請求項8】
セリウムの含有量が酸化物換算で49質量%以上91質量%以下であり、
ジルコニウムの含有量が酸化物換算で1質量%以上43質量%以下の範囲内であり、
アルミニウムの含有量が酸化物換算で1質量%以上8質量%以下の範囲内であることを特徴とする請求項1~のいずれか1に記載のセリウム系複合酸化物粉末。
【請求項9】
セリウム、ジルコニウム及びアルミニウムの合計含有量が酸化物換算で60質量%以上であることを特徴とする請求項1~のいずれか1に記載のセリウム系複合酸化物粉末。
【請求項10】
CeAlOを含むことを特徴とする請求項1~のいずれか1に記載のセリウム系複合酸化物粉末。
【請求項11】
セリウム以外の希土類元素を含むことを特徴とする請求項1~10のいずれか1に記載のセリウム系複合酸化物粉末。
【請求項12】
セリウム以外の希土類元素を酸化物換算で0.1質量%以上40質量%以下の範囲内で含むことを特徴とする請求項1~11のいずれか1に記載のセリウム系複合酸化物粉末。
【請求項13】
前記セリウム以外の希土類元素が、イットリウム、及び、ランタンからなる群より選ばれる1以上であることを特徴とする請求項11又は12に記載のセリウム系複合酸化物粉末。
【請求項14】
アルカリ土類元素を含むことを特徴とする請求項1~13のいずれか1に記載のセリウム系複合酸化物粉末。
【請求項15】
摩擦材用であることを特徴とする請求項1~14のいずれか1に記載のセリウム系複合酸化物粉末。
【請求項16】
摩擦調整剤と、繊維基材と、結合剤とを含み、
前記摩擦調整剤として、請求項1~15のいずれか1に記載のセリウム系複合酸化物粉末を含むことを特徴とする摩擦材組成物。
【請求項17】
前記セリウム系複合酸化物粉末の含有量が、摩擦材組成物全体を100質量%としたときに、5質量%以上20質量%以下の範囲内であることを特徴とする請求項16に記載の摩擦材組成物。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の摩擦材組成物の成形体で構成されていることを特徴とする摩擦材。
【請求項19】
自動車技術会規格JASO C406に準じて、下記測定条件Aにて測定される第1フェード試験を9回実施し、得られた挙動ピークにおいて、最小摩擦係数を示したときの最大値μ値と最小値μ値の平均値を算出し、その平均値が0.20μ以上であることを特徴とする請求項18に記載の摩擦材。
<測定条件A>
制動初速度100km/h
制動間隔35秒
第1回目測定時の制動前ブレーキ温度80℃
制動減速度0.45G
制動回数9回
【請求項20】
自動車技術会規格JASO C406に準じて下記測定条件Bにて測定される摩擦係数の平均値であるすり合わせμ値が0.39以上であることを特徴とする請求項18又は19に記載の摩擦材。
<測定条件B>
制動初速度65km/h
制動前ブレーキ温度120℃
制動減速度0.35G
測定回数200回
【請求項21】
自動車技術会規格JASO C406に準じて、下記測定条件Cにて測定される第2効力試験での測定回数8回における摩擦係数の平均値を摩擦係数Xとし、
自動車技術会規格JASO C406に準じて、下記測定条件Dにて測定される第2効力試験での測定回数8回における摩擦係数の平均値を摩擦係数Yとしたとき、
摩擦係数の差[(摩擦係数X)-(摩擦係数Y)]が、0.12以下であることを特徴とする請求項1820のいずれか1に記載の摩擦材。
<測定条件C>
制動初速度100km/h
制動前ブレーキ温度80℃
制動減速度0.2G
測定回数8回
<測定条件D>
制動初速度100km/h
制動前ブレーキ温度80℃
制動減速度0.7G
測定回数8回。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリウム系複合酸化物粉末、摩擦材組成物、及び、摩擦材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの制動にはブレーキパッドが多く使用される。従来、ブレーキパッドは、アスベストを添加して所望の性能を得ることが主流であった。しかしながら、近年、環境負荷の問題からアスベストフリーのブレーキパッドが要求され、活発に研究開発されている。
【0003】
また、従来、一般的に、ブレーキパッドに使用される摩擦材には、ジルコン原鉱石の粉末、又は、原鉱石から珪素等の不純物を除去した酸化ジルコニウムの粉末が用いられることが多い。しかしながら、近年の原料価格の高騰、鉱石由来の放射性元素を含有している等の問題が発生している。
【0004】
特許文献1には、繊維基材と摩擦調整剤を熱硬化製樹脂で結合してなる摩擦材において、前記摩擦調整剤の少なくとも一部として、希土類の酸化物を含む摩擦材が開示されている。また、特許文献1には、効果として、CeO、La、Yなどの希土類酸化物は、アルミナ等の一般的なアブレーシブ材に比べて硬度が低く、変質等も起こし難いため、高くて安定した摩擦係数を得ながら相手材への攻撃性を下げることができる旨、開示されている。
【0005】
特許文献2には、結合剤、有機充填材、無機充填材および繊維基材を含む摩擦材組成物であって、該摩擦材組成物中に元素として銅を含まず、前記無機充填材が、平均粒径10nm~50μmのγアルミナ、平均粒径1~20μmのドロマイト、平均粒径1~20μmの炭酸カルシウム、平均粒径1~20μmの炭酸マグネシウム、平均粒径1~20μmの二酸化マンガン、平均粒径10nm~1μmの酸化亜鉛、平均粒径1.0μm以下の四三酸化鉄、平均粒径0.5~5μmの酸化セリウム、および平均粒径5~50nmのジルコニアから選ばれる1種または2種以上である摩擦材組成物が開示されている。また、特許文献2には、効果として、自動車用ディスクブレーキパッド等の摩擦材に用いた際に、環境負荷の高い銅を用いなくとも、耐フェード性と500℃を超える高温の耐磨耗性に優れる旨、開示されている。
【0006】
特許文献3には、結合剤、有機充填材、無機充填材及び繊維基材を含む摩擦材組成物であって、該摩擦材組成物中に元素として銅を含まず、複数の凸部形状を有するチタン酸カリウムと平均粒径が1~2.5μmの珪酸ジルコニウムとを含有する摩擦材組成物が開示されている。また、特許文献3には、効果として、環境負荷の高い銅を用いなくとも、高温での耐摩耗性に優れ、異音の少ない旨、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-13009号公報
【文献】国際公開第2016/060129号
【文献】特開2016-79246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、アスベストを使用しないブレーキパッド(ノンアスベストオーガニックブレーキパッド(NAOブレーキパッド))の研究開発が進められている。NAOブレーキパッドの弱点としては、連続使用による制動力の低下(フェード現象)が挙げられる。フェード現象によるμ値の低下が大きい場合、ブレーキング時の違和感につながることとなる。また、近年、高いμ値を有するブレーキパッドが求められる傾向にあるが、高μ値にすることで、急ブレーキ時のμ値と軽いブレーキ時のμ値との差が大きくなりやすいという問題が発生する。急ブレーキ時のμ値と軽いブレーキ時のμ値との差が大きくなると、ブレーキング時の違和感につながることとなる。
以下、本明細書では、急ブレーキ時のμ値と軽いブレーキ時のμ値との差が小さいことを摩擦安定性に優れるという。
【0009】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブレーキパッドの摩擦材に使用すると、耐フェード性に優れ、高μ値を有しながらも、摩擦安定性に優れる摩擦材を得ることを可能とするセリウム系複合酸化物粉末を提供することにある。また、本発明の他の目的は、当該セリウム系複合酸化物粉末を含む摩擦材組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、当該摩擦材組成物の成形体で構成された摩擦材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ブレーキパッドの摩擦材に使用する粉末について鋭意検討を行った。その結果、驚くべきことに、セリア粉末にアルミナ粉末とを混合し、溶融、粉砕して得られた粉末をブレーキパッドの摩擦材に使用すると、耐フェード性に優れ、高μ値を有しながらも、摩擦安定性に優れる摩擦材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係るセリウム系複合酸化物粉末は、
セリウム、及び、アルミニウムを含み、
比表面積が0.5m/g以上10m/g以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明者らの検討によれば、アルミニウムを含まない酸化セリウム(セリア)の粉末では、耐フェード性に優れるものの、高μ値を得ることはできず、また、摩擦安定性にも劣る結果となっていた。これに対して、本発明では、セリウムに加えて、アルミニウムを含み比表面積が10m/g以下のセリウム系複合酸化物粉末としたため、当該セリウム系複合酸化物粉末をブレーキパッドの摩擦材に使用すると、耐フェード性に優れ、高μ値を有しながらも、摩擦安定性に優れる摩擦材を得ることが可能となる。このことは、実施例からも明らかである。
セリウムに加えてアルミニウムを含むセリウム系複合酸化物粉末とすると、耐フェード性に優れ、高μ値を有しながらも、摩擦安定性に優れる摩擦材を得ることが可能となる点につき、詳細は明らかではないが、本発明者らは、以下のように推察している。
セリウムは、主な役割として耐フェード性に寄与する。セリウムは、酸素吸蔵能が高いことが知られている。高負荷時のブレーキングにはブレーキパット表面は摩擦熱により、400℃以上になることがある。そのため、ブレーキパットを固めている樹脂が燃焼することで強還元ガスが発生することがある。そして、そのガスにより、研磨剤として添加されている金属酸化物が還元されて、摩擦係数が低減することがあると考えられる。セリウムは400℃付近で、雰囲気が還元状態であれば酸素を放出する性質がある。そのため、金属酸化物が還元されずに摩擦係数が低減しないことが期待できる。
また、アルミン酸セリウムは、主な役割として高μ値、及び、摩擦安定性に寄与している。アルミナ単体では硬度が高すぎて、ローターディスクへの攻撃性が高く、実用的ではない。また、セリウム単体では必要な摩擦係数が得られない。一方、アルミン酸セリウムは、アルミナ単体、セリウム単体のような不利益が少なく、耐フェード性に優れ、高μ値を有しながらも、摩擦安定性に優れる摩擦材を得ることが可能となる。
【0013】
前記構成においては、ジルコニウムを含むことが好ましい。
【0014】
セリウムに加えて、ジルコニウム、及び、アルミニウムを含むセリウム系複合酸化物粉末とすると、耐フェード性に優れ、高μ値を有しながらも、摩擦安定性に優れる摩擦材を得ることが容易となる。セリウムに加えて、ジルコニウム、及び、アルミニウムを含むセリウム系複合酸化物粉末とすると、耐フェード性に優れ、高μ値を有しながらも、摩擦安定性に優れる摩擦材を得ることが容易となる点につき、詳細は明らかではないが、本発明者らは、当該セリウム系複合酸化物粉末が、ジルコニアとセリアとが固溶した結晶相、及び、セリウムとアルミニウムとを含む結晶相の2つの結晶相を有することとなるために、このような特性が得られたものと推察している。また、比表面積が10m/g以下であるために、高硬度とすることができ、高μ値とすることができたものと推察している。
【0015】
なお、特許文献1~3には、セリウム、ジルコニウム、及び、アルミニウムの3つの元素を含むセリウム系複合酸化物粉末は開示されていない。また、特許文献1~3には、耐フェード性に優れ、高μ値を有し、摩擦安定性に優れるという3つの特性を兼ね備えるという課題や効果についても開示されていない。
【0016】
前記構成においては、結晶子径が10nm以上80nm以下の範囲内であることが好ましい。
【0017】
結晶子径が10nm以上であると、充分な結晶成長ができており、高μ値等の特性を容易に得ることができる。
【0018】
前記構成においては、粒子径D50が0.5μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0019】
粒子径D50が0.5μm以上20μm以下であると、高μ値等の特性をより容易に得ることができる。
【0020】
前記構成においては、粒子径D99が60μm以下であることが好ましい。
【0021】
粒子径D99が60μm以下であると、高μ値等の特性をさらに容易に得ることができる。
【0022】
前記構成においては、単粒圧壊強度が50N以上300N以下の範囲内であることが好ましい。
【0023】
単粒圧壊強度が50N以上であると、粒子の強度が高く、高μ値等の特性を特に容易に得ることができる。
【0024】
前記構成においては、セリウムの含有量が酸化物換算で40質量%以上95質量%以下であり、
ジルコニウムの含有量が酸化物換算で0.1質量%以上50質量%以下の範囲内であり、
アルミニウムの含有量が酸化物換算で0.1質量%以上24質量%以下の範囲内であることが好ましい。
【0025】
セリウムの含有量が酸化物換算で40質量%以上95質量%以下であり、ジルコニウムの含有量が酸化物換算で0.1質量%以上50質量%以下の範囲内であり、アルミニウムの含有量が酸化物換算で0.1質量%以上24質量%以下の範囲内であると、高μ値等の特性が得られるのに好適な比率となる。
上述したように、本発明者らは、当該セリウム系複合酸化物粉末が、ジルコニアとセリアとが固溶した結晶相、及び、セリウムとアルミニウムとを含む結晶相の2つの結晶相を有するために、高μ値等の特性が容易に得られると推察している。
ここで、セリウムの含有量が酸化物換算で40質量%以上95質量%以下であり、ジルコニウムの含有量が酸化物換算で0.1質量%以上50質量%以下の範囲内であり、アルミニウムの含有量が酸化物換算で0.1質量%以上24質量%以下の範囲内であると、ジルコニアとセリアとが固溶した結晶相と、セリウムとアルミニウムとを含む結晶相との2つが、高μ値等の特性が得られるのに好適な比率となると推察される。
【0026】
前記構成においては、アルミニウムの含有量が酸化物換算で0.1質量%以上10質量%以下の範囲内であることが好ましい。
【0027】
前記構成においては、ジルコニウムの含有量が酸化物換算で0.1質量%以上40質量%以下の範囲内であり、
アルミニウムの含有量が酸化物換算で0.1質量%以上10質量%以下の範囲内であることが好ましい。
【0028】
前記構成においては、セリウムの含有量が酸化物換算で49質量%以上91質量%以下であり、
ジルコニウムの含有量が酸化物換算で1質量%以上43質量%以下の範囲内であり、
アルミニウムの含有量が酸化物換算で1質量%以上8質量%以下の範囲内であることが好ましい。
【0029】
セリウムの含有量が酸化物換算で49質量%以上91質量%以下であり、ジルコニウムの含有量が酸化物換算で1質量%以上43質量%以下の範囲内であり、アルミニウムの含有量が酸化物換算で1質量%以上8質量%以下の範囲内であると、高μ値等の特性が得られるのにより好適な比率となる。
【0030】
前記構成においては、セリウム、ジルコニウム及びアルミニウムの合計含有量が酸化物換算で60質量%以上であることが好ましい。
【0031】
前記構成においては、CeAlOを含むことが好ましい。
【0032】
CeAlOを含む場合、高μ値等の特性により優れる。
【0033】
前記構成においては、セリウム以外の希土類元素を含むことが好ましい。
【0034】
セリウム以外の希土類元素を含むと、結晶相が安定し、より高μ値とすることができる。
【0035】
前記構成においては、セリウム以外の希土類元素を酸化物換算で0.1質量%以上40質量%以下の範囲内で含むことが好ましい。
【0036】
セリウム以外の希土類元素を酸化物換算で0.1質量%以上40質量%以下の範囲内で含むと、結晶相がより安定し、より高μ値とすることができる。
【0037】
前記構成において、前記セリウム以外の希土類元素が、イットリウム、及び、ランタンからなる群より選ばれる1以上であることが好ましい。
【0038】
前記セリウム以外の希土類元素が、イットリウム、及び、ランタンからなる群より選ばれる1以上であると、結晶相が安定し、高μ値とすることができる。
【0039】
前記構成においては、アルカリ土類元素を含んでも構わない。
【0040】
アルカリ土類元素を含むと、イットリア等の希土類に比べて安定性はわずかに劣るものの、安価に製造することができる。
【0041】
前記構成においては、摩擦材用であることが好ましい。
【0042】
前記セリウム系複合酸化物粉末は、ブレーキパッドの摩擦材に使用すると、耐フェード性に優れ、高μ値を有しながらも、摩擦安定性に優れる摩擦材が得られるため、摩擦材用として好適に使用できる。
【0043】
また、本発明に係る摩擦材組成物は、摩擦調整剤と、繊維基材と、結合剤とを含み、
前記摩擦調整剤として、前記セリウム系複合酸化物粉末を含むことを特徴とする。
【0044】
前記構成によれば、摩擦調整剤として、前記セリウム系複合酸化物粉末を含むため、当該摩擦材組成物を成形し、ブレーキパッドの摩擦材に使用すると、耐フェード性に優れ、高μ値を有しながらも、摩擦安定性に優れる摩擦材を得ることが可能となる。
【0045】
前記構成において、前記セリウム系複合酸化物粉末の含有量が、摩擦材組成物全体を100質量%としたときに、5質量%以上20質量%以下の範囲内であることが好ましい。
【0046】
前記セリウム系複合酸化物粉末の含有量が、摩擦材組成物全体を100質量%としたときに、5質量%以上20質量%以下の範囲内であると、高μ値等の特性をより容易に得ることができる。
【0047】
また、本発明に係る摩擦材は、前記摩擦材組成物の成形体で構成されていることを特徴とする。
【0048】
前記構成によれば、前記摩擦材組成物の成形体で構成されているため、耐フェード性に優れ、高μ値を有しながらも、摩擦安定性に優れる摩擦材を得ることが可能となる。
【0049】
前記構成においては、自動車技術会規格JASO C406に準じて、下記測定条件Aにて測定される第1フェード試験を9回実施し、得られた挙動ピークにおいて、最小摩擦係数を示したときの最大値μ値と最小値μ値の平均値を算出し、その平均値が0.20μ以上であることが好ましい。
<測定条件A>
制動初速度100km/h
制動間隔35秒
第1回目測定時の制動前ブレーキ温度80℃
制動減速度0.45G
制動回数9回
【0050】
前記の数値が0.20μ以上であると、ブレーキング時の違和感をより低減することができる。
【0051】
前記構成においては、自動車技術会規格JASO C406に準じて下記測定条件Bにて測定される摩擦係数の平均値であるすり合わせμ値が0.39以上であることが好ましい。
<測定条件B>
制動初速度65km/h
制動前ブレーキ温度120℃
制動減速度0.35G
測定回数200回
【0052】
前記すり合わせμ値が0.39以上であると、少ない押圧でより強い制動力が得られる。
【0053】
前記構成においては、自動車技術会規格JASO C406に準じて、下記測定条件Cにて測定される第2効力試験での測定回数8回における摩擦係数の平均値を摩擦係数Xとし、
自動車技術会規格JASO C406に準じて、下記測定条件Dにて測定される第2効力試験での測定回数8回における摩擦係数の平均値を摩擦係数Yとしたとき、
摩擦係数の差[(摩擦係数X)-(摩擦係数Y)]が、0.12以下であることが好ましい。
<測定条件C>
制動初速度100km/h
制動前ブレーキ温度80℃
制動減速度0.2G
測定回数8回
<測定条件D>
制動初速度100km/h
制動前ブレーキ温度80℃
制動減速度0.7G
測定回数8回
【0054】
前記摩擦係数の差[(摩擦係数X)-(摩擦係数Y)]が、0.12以下であると、ブレーキング時の違和感をさらに低減することができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、ブレーキパッドの摩擦材に使用すると、耐フェード性に優れ、高μ値を有しながらも、摩擦安定性に優れる摩擦材を得ることを可能とするセリウム系複合酸化物粉末を提供することができる。また、当該セリウム系複合酸化物粉末を含む摩擦材組成物を提供することができる。また、当該摩擦材組成物の成形体で構成された摩擦材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】実施例4に係るセリウム系複合酸化物粉末のX線回折スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。なお、本明細書において、ジルコニア(酸化ジルコニウム)とは一般的なものであり、ハフニアを含めた10質量%以下の不純物金属化合物(不可避不純物)を含むものである。
【0058】
[セリウム系複合酸化物粉末]
本実施形態に係るセリウム系複合酸化物粉末は、
セリウム、及び、アルミニウムを含み、
比表面積が0.5m/g以上10m/g以下である。
【0059】
本実施形態に係るセリウム系複合酸化物粉末(以下、「複合酸化物粉末」ともいう)は、セリウムに加えて、アルミニウムを含み比表面積が10m/g以下の複合酸化物粉末としたため、当該複合酸化物粉末をブレーキパッドの摩擦材に使用すると、耐フェード性に優れ、高μ値を有しながらも、摩擦安定性に優れる摩擦材を得ることが可能となる。このことは、実施例からも明らかである。
【0060】
(複合酸化物粉末の組成)
本実施形態に係る複合酸化物粉末は、全体としてセリウム(Ce)、及び、アルミニウム(Al)を含んでおり、複数種の酸化物の複合体として形成されている。本実施形態に係る複合酸化物粉末は、ジルコニウム(Zr)をさらに含むことが好ましい。複数種の酸化物の複合体とは、組成比率の異なる2つ以上の酸化物が合わさって一体となったものをいう。
なお、本実施形態に係る複合酸化物粉末は、セリア(酸化セリウム)、アルミナ(酸化アルミニウム)の混合物ではない。また、ジルコニウムをさらに含む場合、本実施形態に係る複合酸化物粉末は、セリア(酸化セリウム)、ジルコニア(二酸化ジルコニウム)、アルミナ(酸化アルミニウム)の混合物ではない。
【0061】
前記複合酸化物粉末に含まれるセリウムの含有量は、酸化物換算で40質量%以上が好ましく、49質量%以上がより好ましく、53質量%以上がさらに好ましく、56質量%以上が特に好ましく、60質量%以上が特別に好ましい。
前記複合酸化物粉末に含まれるセリウムの含有量は、酸化物換算で95質量%以下が好ましく、92質量%以下がより好ましく、91質量%以下がさらに好ましく、90質量%以下が特に好ましく、88質量%以下が特別に好ましい。
摩擦熱により摩擦材表面の温度が400~800℃まで達することで、摩擦材に含まれる樹脂成分が蒸発する。その際、生じる蒸発ガスにより強還元雰囲気となる。本実施形態に係る複合酸化物粉末は、酸化セリウムを含むため、酸化セリウムの価数変化により酸素を供給することで摩擦材の還元を抑制することができる。特に、酸化セリウムを多く含む場合(セリウムを酸化物換算で40質量%以上含む場合)摩擦材の還元をより抑制することができる。通常、摩擦材は酸化物であるため、強還元雰囲気下では酸素が奪われ、硬度低下の可能性があるが、本実施形態では、酸化セリウムを含むため、摩擦材の還元による硬度低下が抑制される。
【0062】
前記複合酸化物粉末に含まれるジルコニウムの含有量は、酸化物換算で0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、4質量%以上が特に好ましく、5質量%以上が特別に好ましい。
前記複合酸化物粉末に含まれるジルコニウムの含有量は、酸化物換算で50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、43質量%以下がさらに好ましく、35質量%以下が特に好ましく、30質量%以下が特別に好ましい。
【0063】
前記複合酸化物粉末に含まれるアルミニウムの含有量は、酸化物換算で0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましく、3質量%以上が特に好ましい。
前記複合酸化物粉末に含まれるアルミニウムの含有量は、酸化物換算で24質量%以下が好ましく、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましく、6質量%以下が特に好ましく、5質量%以下が特別に好ましい。
【0064】
前記複合酸化物粉末に含まれるセリウム、ジルコニウム、アルミニウムの含有量は、上記の中でも、セリウムの含有量が酸化物換算で40質量%以上95質量%以下であり、ジルコニウムの含有量が酸化物換算で0.1質量%以上50質量%以下の範囲内であり、アルミニウムの含有量が酸化物換算で0.1質量%以上24質量%以下の範囲内であることが好ましい。
また、セリウムの含有量が酸化物換算で49質量%以上91質量%以下であり、ジルコニウムの含有量が酸化物換算で1質量%以上43質量%以下の範囲内であり、アルミニウムの含有量が酸化物換算で1質量%以上8質量%以下の範囲内であることがより好ましい。
【0065】
セリウム、ジルコニウム、アルミニウムの含有量が上記数値範囲内であると、高μ値等の特性が得られるのに好適な比率となる。
【0066】
セリウム、ジルコニウム及びアルミニウムの合計含有量は、酸化物換算で60質量%以上であることが好ましい。前記合計含有量は、酸化物換算で72質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが特に好ましく、85質量%以上であることが特別好ましく、87質量%が格別に好ましい。前記合計含有量は、多いほど好ましいが、例えば、酸化物換算で100質量%以下、97質量%以下、95質量%以下、90質量%以下等である。
【0067】
前記複合酸化物粉末は、セリウム以外の希土類元素を含んでいてもよい。セリウム以外の希土類元素を含むと、結晶相が安定し、より高μ値とすることができる。
【0068】
セリウム以外の希土類元素としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム等が挙げられる。前記複合酸化物粉末に含まれるセリウム以外の希土類元素は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。セリウム以外の希土類元素としては、なかでも、イットリウム、及び、ランタンからなる群より選ばれる1以上であることが好ましく、特に、イットリウムが好ましい。イットリウム、ランタンが含まれる場合、特にイットリウムが含まれる場合、結晶相がさらに安定し、さらに高μ値とすることができる。
【0069】
セリウム以外の希土類元素の含有量は、複合酸化物粉末全体を100質量%としたときに、酸化物換算で0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。
セリウム以外の希土類元素の含有量は、複合酸化物粉末全体を100質量%としたときに、酸化物換算で40質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましく、4質量%以下が特別に好ましく、3質量%以下が格別に好ましい。
セリウム以外の希土類元素を酸化物換算で0.1質量%以上26質量%以下の範囲内で含むと、結晶相がより安定し、より高μ値とすることができる。
【0070】
前記複合酸化物粉末は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、その他の元素が含まれていてもよい。前記その他の元素としては、アルカリ元素、アルカリ土類元素、遷移金属元素が挙げられる。前記その他の元素の具体例としては、カルシウム、マグネシウム、ケイ素、チタンが挙げられる。これらは、酸化物として複合酸化物粉末に含まれることが好ましい。
前記その他の元素の含有量は、複合酸化物粉末全体を100質量%としたときに、酸化物換算で40質量%以下が好ましい。
【0071】
(比表面積)
前記複合酸化物粉末の比表面積は、0.5m/g以上10m/g以下である。前記比表面積は、1m/g以上であることが好ましく、1.5m/g以上であることがより好ましく、1.8m/g以上であることがさらに好ましく、2m/g以上であることが特に好ましい。
前記比表面積は、4.5m/g以下であることが好ましく、4m/g以下であることがより好ましく、3.5m/g以下であることがさらに好ましく、3.2m/g以下であることが特に好ましく、3m/g以下であることが特別に好ましい。
前記比表面積が0.5m/g以上10m/g以下であると、前記複合酸化物粉末は、所望の結晶性及び強度を有する溶融固化物とし易い。なお、製法の特性上、溶融固化物の中には半溶融固化物も含み得る。
前記比表面積を有する複合酸化物粉末を得る方法としては、セリア粉末にジルコニア粉末とアルミナ粉末とを混合し、溶融、粉砕する方法が挙げられる。
前記複合酸化物粉末の比表面積は、実施例に記載の方法により得られた値をいう。
【0072】
(結晶子径)
前記複合酸化物粉末の結晶子径は、10nm以上80nm以下の範囲内であることが好ましい。前記結晶子径は、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは30nm以上、特に好ましくは35nm以上である。前記結晶子径は、より好ましくは70nm以下、さらに好ましくは65nm以下、特に好ましくは60nm以下である。
前記結晶子径が10nm以上であると、充分な結晶成長ができており、高μ値等の特性を容易に得ることができる。一方、結晶成長を過度に促進する必要はない。前記結晶子径に特に上限はないが、生産性を考慮すると、前記結晶子径が80nm以下であると好ましい。
前記結晶子径は、XRD測定における2θが40°~42°のピークの測定結果を次のScherrerの式に当てはめ、算出する。
Dp=(K×λ)/βcosθ
ここで、Dpは複合酸化物粉末の結晶子径、λはX線の波長、θは回折角、Kは形状因子とよばれる定数、βは装置による回折線の広がりを補正したあとのピーク幅である。
2θが40°~42°のピークは、CeAlOの(111)に由来するピークである。
XRD測定条件の詳細は実施例に記載の通りである。
前記結晶子径を有する複合酸化物粉末を得る方法としては、セリア粉末にジルコニア粉末とアルミナ粉末とを混合し、溶融、粉砕する方法が挙げられる。
【0073】
(結晶相)
上述したように、前記複合酸化物粉末は、全体としてセリウム、及び、アルミニウムを含んでおり、複数種の酸化物の複合体として形成されている。また、前記複合酸化物粉末は、さらに、ジルコニウムを含む場合、全体としてセリウム、ジルコニウム、及び、アルミニウムを含んでおり、複数種の酸化物の複合体として形成されている。複合体を構成する各酸化物は、少なくともセリウム、ジルコニウム、及び、アルミニウムのうちの1種を含んでいればよく、3種全部を含んでいる必要はない。前記複合体は、さらに、セリウム、ジルコニウム、アルミニウム以外の酸化物を複合体の一部として含んでいてもよい。前記複合体は、酸化物以外の化合物(元素)を複合体の一部として含んでいてもよい。
【0074】
前記複合酸化物粉末は、中でも、セリウムとジルコニアとを含む酸化物(以下、結晶相Aともいう)と、セリウムとアルミニウムとを含む酸化物(以下、結晶相Bともいう)とを含む複合体であることが好ましい。
前記結晶相Aは、ジルコニアがセリアに固溶したものであり、特定の組成式を持たない。前記複合酸化物粉末が結晶相Aを有すると、酸素貯蔵・放出能を持ち、硬度低下が抑制される。また、高μ値等の特性により優れる。
前記結晶相Bの組成式はCeAlOである。
前記複合酸化物粉末が結晶相Aと結晶相Bとの2相を有する場合、耐フェード性に優れ、高μ値を有しながらも、摩擦安定性に優れる摩擦材を得ることが可能となる。
【0075】
前記複合酸化物粉末がセリウム以外の希土類元素を含む場合、セリウム以外の希土類元素の添加量に応じた酸化物が複合体の一部として含まれることになる。特に、前記複合酸化物粉末がセリウム以外の希土類元素としてイットリウム、ランタンを含む場合、それらは、セリアとジルコニアに固溶する。
【0076】
(粒子径D50
前記複合酸化物粉末の粒子径D50は、20μm以下であることが好ましい。前記粒子径D50は、より好ましくは0.8μm以上、さらに好ましくは1μm以上、特に好ましくは1.5μm以上、特別に好ましくは2μm以上、格別に好ましくは2.3μm以上である。前記粒子径D50は、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは7μm以下、特別に好ましくは5μm以下、格別に好ましくは4μm以下である。
前記粒子径D50が20μm以下であると、高μ値等の特性をさらに容易に得ることができる。
【0077】
(粒子径D90
前記複合酸化物粉末の粒子径D90は、25μm以下であることが好ましい。前記粒子径D90は、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、特に好ましくは6.5μm以上である。前記粒子径D90は、より好ましくは21μm以下、さらに好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下であり、特別に好ましくは8μm以下である。
前記粒子径D90が25μm以下であると、高μ値等の特性をさらに容易に得ることができる。
【0078】
(粒子径D99
前記複合酸化物粉末の粒子径D99は、60μm以下であることが好ましい。前記粒子径D99は、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは48μm以下、特に好ましくは20μm以下であり、特別に好ましくは15μm以下である。前記粒子径D99は、好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、特に好ましくは11μm以上である。
前記粒子径D99が60μm以下であると、高μ値等の特性をさらに容易に得ることができる。
【0079】
前記複合酸化物粉末の粒子径D50、粒子径D90、粒子径D99は、実施例に記載の方法により得られた値をいう。なお、本明細書に記載の前記前記粒子径D50、前記粒子径D90、前記粒子径D99は体積基準で測定されており、前記粒子径D50はレーザー回折法により測定される、最少粒径値より累積値50%にあたる粒子径であり、前記粒子径D90はレーザー回折法により測定される、最少粒径値より累積値90%にあたる粒子径であり、前記粒子径D99はレーザー回折法により測定される、最少粒径値より累積値99%にあたる粒子径である。
前記粒子径D50、前記粒子径D90、前記粒子径D99を有する複合酸化物粉末を得る方法としては、セリア粉末にジルコニア粉末とアルミナ粉末とを混合し、溶融、粉砕して複合酸化物粉末を得る際の粉砕条件をコントロールする方法が挙げられる。
【0080】
(単粒圧壊強度)
前記複合酸化物粉末の単粒圧壊強度は、50N以上300N以下の範囲内であることが好ましい。前記単粒圧壊強度は、より好ましくは70N以上、さらに好ましくは80N以上、特に好ましくは90N以上、特別に好ましくは100N以上、格別に好ましくは110N以上である。前記単粒圧壊強度の上限は特に限定されないが、前記単粒圧壊強度は、250N以下、230N以下、210N以下、190N以下、180N以下等とすることができる。
前記単粒圧壊強度は、粉砕前の粒子にて測定する。粉砕前の粒子としては、粒子径2.36mm~2.80mmの範囲内のものを用いる。前記粒子径の粒子は、市販の篩を用いて得ることができる。測定個数は50個とし、その平均値を単粒圧壊強度とする。測定装置は引張圧縮試験機を使用する。具体的に、引張圧縮試験機には、(株)今田製作所社製のSV-201-NSLを用いる。ロードスピードは0.50mm/minで行う。
前記単粒圧壊強度の測定方法の詳細は、実施例に記載の通りである。
前記単粒圧壊強度を有する複合酸化物粉末を得る方法としては、セリア粉末にジルコニア粉末とアルミナ粉末とを混合し、溶融、粉砕する方法が挙げられる。
【0081】
(密度(真比重))
前記複合酸化物粉末の真比重は、6.0g/cm以上7.2g/cm以下であることが好ましい。前記真比重は、好ましくは6.3g/cm以上、より好ましくは6.5g/cm以上、さらに好ましくは6.7g/cm以上である。前記真比重は、好ましくは7.1g/cm以下、より好ましくは7.0g/cm以下、さらに好ましくは6.9g/cm以下である。
前記真比重が6.0g/cm以上7.2g/cm以下であると、高μ値等の特性をさらに容易に得ることができる。
前記真比重は、JIS Z8807:2012に準拠して測定した値をいう。
前記真比重を有する複合酸化物粉末を得る方法としては、セリア粉末にジルコニア粉末とアルミナ粉末とを混合し、溶融、粉砕する方法が挙げられる。
【0082】
以上、本実施形態に係る複合酸化物粉末について説明した。
【0083】
[複合酸化物粉末の製造方法]
以下、複合酸化物粉末の製造方法の一例について説明する。ただし、本発明に係る複合酸化物粉末の製造方法は、以下の例示に限定されない。
【0084】
本実施形態に係る複合酸化物粉末の製造方法は、
出発原料を準備する工程1と、
前記出発原料に所定の熱量を与えることにより、前記出発原料を溶融させる工程2と、
前記工程2で得られた溶融物を冷却してインゴットを形成する工程3と、
前記工程3で得られたインゴットを粉砕して粉体とする工程4と、
前記工程4で得られた粉体を400~1100℃の雰囲気下で加熱する工程5とを含む。
【0085】
<工程1>
本実施形態に係る複合酸化物粉末の製造方法においては、まず、出発原料を準備する。具体的には、例えば、セリウム原料と、アルミニウム原料とを準備する。また、必要に応じて、さらに、ジルコニウム原料を準備する。
【0086】
前記セリウム原料は、複合酸化物粉末にセリウム元素を主として導入するための材料である。「複合酸化物粉末にセリウム元素を主として導入する」とは、他の元素(ジルコニウム、アルミニウム、セリウム以外の希土類元素)と比較して多く導入する(等モルよりも多く導入する)ことをいう。つまり、前記セリウム原料は、セリウム元素よりも少ない量(少ないモル数)であれば、ジルコニウム、アルミニウム、セリウム以外の希土類元素を含んでいてもよい。
前記セリウム原料としては、特に限定されないが、酸化セリウムを含むことが好ましい。酸化セリウムは、例えば、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、臭化物等の各種原料から合成することができる。前記セリウム原料は、セリウムとアルミニウムとの複合酸化物であってもよい。また、前記セリウム原料は、セリウムとジルコニウムとアルミニウムとの複合酸化物であってもよい。前記セリウム原料は、セリウムの硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物等の化合物を含んでいてもよい。前記セリウム原料は、ジルコニウムの硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物等の化合物を含んでいてもよい。
【0087】
前記ジルコニウム原料は、複合酸化物粉末にジルコニウム元素を主として導入するための材料である。「複合酸化物粉末にジルコニウム元素を主として導入する」とは、他の元素(セリウム、アルミニウム、セリウム以外の希土類元素)と比較して多く導入する(等モルより多く導入する)ことをいう。つまり、前記ジルコニウム原料は、ジルコニウム元素よりも少ない量(少ないモル数)であれば、ジルコニウム、アルミニウム、セリウム以外の希土類元素を含んでいてもよい。
前記ジルコニウム原料としては、特に限定されないが、例えば、バデライト、脱珪ジルコニア、酸化ジルコニウム等の各種ジルコニウム系材料、その他、酸化ジルコニウムを含むジルコニウム材料などを使用することができる。酸化ジルコニウムは、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、臭化物等の各種原料から合成することができる。前記ジルコニウム原料は、ジルコニウムと、セリウム及びセリウム以外の希土類元素の少なくとも一方の元素との複合酸化物を含んでもよい。前記ジルコニウム原料には、セリウムの硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物等の化合物が含まれていてもよい。前記ジルコニウム原料には、ジルコニウムの硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物等の化合物が含まれていてもよい。前記ジルコニウム原料としては、放射性元素を含有しない原料を用いることが望ましい。
【0088】
前記アルミニウム原料は、複合酸化物粉末にアルミニウム元素を主として導入するための材料である。「複合酸化物粉末にアルミニウム元素を主として導入する」とは、他の元素(セリウム、ジルコニウム、セリウム以外の希土類元素)と比較して多く導入する(等モルよりも多く導入する)ことをいう。つまり、前記アルミニウム原料は、アルミニウム元素よりも少ない量(少ないモル数)であれば、セリウム、ジルコニウム、セリウム以外の希土類元素を含んでいてもよい。
前記アルミニウム原料としては、特に限定されないが、酸化アルミニウムを含むが好ましい。酸化アルミニウムは、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、臭化物等の各種原料から合成することができる。前記アルミニウム原料は、ジルコニウムと、セリウム及びセリウム以外の希土類元素の少なくとも一方の元素との複合酸化物であってもよい。前記アルミニウム原料には、セリウムの硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物等の化合物が含まれていてもよい。前記アルミニウム原料には、ジルコニウムの硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物等の化合物が含まれていてもよい。
【0089】
工程1では、原料として、セリウム以外の希土類元素を含む原料(以下、「第3の元素原料」ともいう)を準備してもよい。
【0090】
第3の元素原料は、複合酸化物粉末にセリウム以外の希土類元素(以下、「第3の元素」ともいう)を主として導入するための材料である。「複合酸化物粉末に第3の元素を主として導入する」とは、他の元素(セリウム、ジルコニウム、アルミニウム)と比較して多く導入する(等モルよりも多く導入する)ことをいう。つまり、前記第3の元素原料は、第3の元素よりも少ない量(少ないモル数)であれば、セリウム、ジルコニウム、アルミニウムを含んでいてもよい。
第3の元素としては、イットリアが好ましい。イットリア(酸化イットリウム)は、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、臭化物等の各種原料から合成することができる。
【0091】
本明細書において、「原料を準備する工程1」とは、この工程1において、セリウム元素を導入するための材料と、アルミニウム元素を導入するための材料とが最終的に全体として準備されていればよく、セリウム原料と、アルミニウム原料とに明確に区別して準備する必要はない。
【0092】
前記セリウム原料、前記ジルコニウム原料、前記アルミニウム原料、前記第3の元素原料の純度は、特に限定されるものではないが、目的生成物の純度を高くできるという点で99.9%以上の純度であることが好ましい。なお、上述した通り、前記セリウム原料、前記ジルコニウム原料、前記アルミニウム原料、前記第3の元素原料の各々の原料には、複合酸化物粉末の特性が阻害されない程度であればその他の物質が含まれていてもよい。その他の物質としては、上述した通り、例えば、セリウムやジルコニウムの硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物等が挙げられる。また、その他の物質として、アルカリ元素、アルカリ土類元素、遷移金属元素等が含まれていてもよい。なかでも、アルカリ土類元素が好ましい。前記複合酸化物粉末がアルカリ土類元素を含むと、イットリア等の希土類に比べて安定性はわずかに劣るものの、安価に製造することができる。
アルカリ土類元素としては、Ca、Mg、Sr、Baが好ましく、Ca、Mg、Srがより好ましく、Ca、Mgがさらに好ましく、Caが特に好ましい。Caは原料が安価であるだけでなく、ジルコニアに比較的固溶しやすく、製造が容易となる。
【0093】
前記原料を準備した後、セリウム、アルミニウムの含有量が所定の範囲内となるように各原料を配合する。ジルコニウムを含ませる場合には、前記原料を準備した後、セリウム、ジルコニウム、アルミニウムの含有量が所定の範囲内となるように各原料を配合する。
【0094】
<工程2>
次に、前記出発原料に所定の熱量を与えることにより、前記出発原料を溶融させる。工程2では、すべての原料を溶融させることが好ましい。すべての原料を溶融させた場合、得られる複合酸化物粉末の結晶構造が安定し、高μ等の特性を得ることができる。すべての原料を溶融させるには、出発原料に含まれる各種原料の融点のうちの最も高い融点以上の温度となるように、出発原料に熱量を与えるようにすればよい。
【0095】
出発原料を溶融させる方法は、特に限定されないが、例えば、アーク式、高周波熱プラズマ式等の溶融方法が例示される。中でも一般的な電融法、すなわち、アーク式電気炉(溶融装置)を用いた溶融方法を採用することが好ましい。
【0096】
出発原料を加熱するには、例えば、電力原単位換算で0.5~2.5kWh/kgの電力によって熱を加えればよい。この加熱により、出発原料に含まれる各種原料の融点のうちの最も高い融点を超える温度にまで出発原料を昇温させることができ、出発原料の溶融物を得ることができる。
【0097】
上記アーク式電気炉を用いた溶融方法を採用する場合、加熱工程(工程2)を行うにあたっては、あらかじめ出発原料に初期の通電を促すためにコークス等を導電材として所定量添加しておいてもよい。ただし、コークスの添加量等は、工程1で使用する各原料の混合割合に応じて適宜決定することができる。
【0098】
工程2における出発原料の溶融時の雰囲気については、特に限定されず、大気、窒素雰囲気の他、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気を採用できる。また、溶融時の圧力も特に限定されず、大気圧、加圧、減圧のいずれでもよいが、通常は大気圧下で行われる。
【0099】
<工程3>
次に、工程2で得られた溶融物を冷却(好ましくは、徐冷却)してインゴットを形成する。インゴットを形成する方法は、特に限定されないが、例えば、工程2の溶融を電気炉で行った場合には、この電気炉に炭素蓋を装着し、10~60時間かけて徐冷却する方法が挙げられる。徐冷却時間は、好ましくは20~50時間であり、より好ましくは30~45時間であり、さらに好ましくは35~40時間である。また、溶融物を徐冷却するにあたっては、例えば、大気中にて、溶融物の温度が100℃以下、好ましくは50℃以下となるように放冷すればよい。溶融物の温度が急激に下がって徐冷却時間が20~60時間より短くなるおそれがある場合には、適宜、徐冷却工程中に溶融物を加熱するなどして溶融物の急激な温度低下を回避すればよい。
上記のように徐冷却工程中における溶融物の急激な温度低下を回避しながら徐冷却を行うことで、原料中に含まれる元素が互いに均一に化合しやすくなる。
【0100】
<工程4>
次に、工程3で得られたインゴットを粉砕して粉体とする。インゴットを粉砕する方法は特に限定されないが、ジョークラッシャー、ロールクラッシャー等の粉砕機で粉砕する方法が例示される。粉砕は、複数の粉砕機を併用して行ってもよい。インゴットを粉砕するにあたっては、後工程での粉体の取り扱い性を考慮して、粉砕後の粉体の平均粒子径が3mm以下、必要に応じて1mm以下になるように粉砕してもよい。粉砕後は分級を行ってもよく、例えば、篩等を使用して所望の平均粒子径の粉体を捕集することが可能である。
【0101】
<工程5>
次に、工程4で得られた粉体を400~1100℃の雰囲気下で加熱する。前記加熱をするにあたって、あらかじめ粉体を磁力選鉱して不純物などを分離しておくことが好ましい。その後、電気炉等を用いて、粉体を400~1100℃の雰囲気下で加熱すればよい。この加熱によって粉体は加熱焼成され、工程3における溶融工程で生成した亜酸化物や過冷却によって発生した結晶内の歪みが除去され得る。上記加熱温度は、好ましくは400℃~1000℃、より好ましくは600℃~800℃であり、いずれの場合も亜酸化物や結晶内の歪みが除去されやすくなる。また、加熱の時間は、特に限定されないが、例えば、1~5時間、好ましくは2~3時間とすることができる。上記加熱は、大気下で行ってもよいし、酸素雰囲気下で行ってもよい。
以上により、固体状又は粉末状の複合酸化物が得られる。粉末状の複合酸化物が得られた場合には、これを本実施形態に係る複合酸化物粉末としてもよい。
【0102】
<工程6>
上記工程5によって得られた固体状又は粉末状の複合酸化物は、遊星ミル、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機でさらに微粉砕してもよい。微粉砕は、複合酸化物の使用用途に応じて適宜行えばよい。微粉砕する場合、複合酸化物を上記粉砕機で5~30分程度処理すればよい。また、複合酸化物を上記微粉砕する場合、複合酸化物の平均粒径は、上記の範囲が好ましい。
以上により、本実施形態に係る複合酸化物粉末を得ることができる。
【0103】
[摩擦材組成物]
本実施形態に係る摩擦材組成物は、摩擦調整剤と、繊維基材と、結合剤とを含み、前記摩擦調整剤として、前記複合酸化物粉末を含む。
摩擦調整剤として、前記複合酸化物粉末を含むため、当該摩擦材組成物を成形し、ブレーキパッドの摩擦材に使用すると、耐フェード性に優れ、高μ値を有しながらも、摩擦安定性に優れる摩擦材を得ることが可能となる。
【0104】
(摩擦調整剤)
前記摩擦調整剤は、無機充填剤と有機充填剤とを含む。
【0105】
前記無機充填剤は、摩擦材の耐熱性の悪化を避ける、耐摩耗性を向上させる、摩擦係数を向上する、潤滑性を向上させる等の目的で添加される。
【0106】
前記無機充填剤は、前記複合酸化物粉末を含む。
【0107】
前記摩擦材組成物中における、前記複合酸化物粉末の含有量は、摩擦材組成物全体を100質量%としたときに、5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、7質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。前記複合酸化物粉末の含有量が、摩擦材組成物全体を100質量%としたときに、5質量%以上20質量%以下の範囲内であると、高μ値等の特性をより容易に得ることができる。
【0108】
また、前記無機充填剤は、前記複合酸化物粉末以外に、例えば、硫化錫、硫化ビスマス、二硫化モリブデン、硫化鉄、三硫化アンチモン、硫化亜鉛、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、硫酸バリウム、コークス、マイカ、バーミキュライト、硫酸カルシウム、タルク、クレー、ゼオライト、ムライト、クロマイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、シリカ、黒鉛、雲母、ドロマイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、粒状または板状のチタン酸塩、珪酸カルシウム、二酸化マンガン、酸化亜鉛、四三酸化鉄、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などを用いることができ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。粒状または板状のチタン酸塩としては、6チタン酸カリウム、8チタン酸カリウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸マグネシウムカリウム、チタン酸ナトリウムなどを用いることができる。
【0109】
前記摩擦材組成物中における、無機充填剤の含有量(前記複合酸化物粉末を含む無機充填剤全体の含有量)は、摩擦材組成物全体を100質量%としたときに、20~70質量%であることが好ましく、30~65質量%であることがより好ましく、35~60質量%であることが特に好ましい。無機充填剤の含有量を上記の範囲とすることで、耐熱性の悪化を避けることができ、摩擦剤のその他成分の含有量バランスの点でも好ましい。
【0110】
前記有機充填剤は、摩擦材の音振性能や耐摩耗性などを向上させるための摩擦調整用として添加される。
【0111】
前記有機充填剤は、上記性能を発揮できるものであれば特に制限はなく、通常に使用される有機充填剤が用いられる。例えば、カシューダストやゴム成分などが挙げられる。
上記カシューダストは、カシューナッツシェルオイルを硬化させたものを粉砕して得られる。
上記ゴム成分としては、例えば、タイヤゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、塩素化ブチルゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
前記摩擦材組成物中における、有機充填剤の含有量は、摩擦材組成物全体を100質量%としたときに、1~25質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましく、2~7質量%であることが特に好ましい。有機充填剤の含有量を上記の範囲とすることで、摩擦材の弾性率が高くなり、ブレーキ鳴きなどの音振性能の悪化を効果的に抑制することができ、さらに耐熱性の悪化や熱履歴による強度低下においても効果的に抑制することができる。
【0112】
(繊維基材)
前記繊維基材は、摩擦材において補強作用を示すものである。
【0113】
前記摩擦材組成物は、通常、繊維基材として用いられる、有機繊維、無機繊維、金属繊維、炭素系繊維などを用いることができ、これらを単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0114】
前記有機繊維としては、アラミド繊維、セルロース繊維、アクリル繊維、フェノール樹脂繊維などを用いることができ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0115】
前記無機繊維としては、セラミック繊維、生分解性セラミック繊維、鉱物繊維、ガラス繊維、シリケート繊維などを用いることができ、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0116】
前記金属繊維としては、通常、摩擦材に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、アルミ、鉄、鋳鉄、亜鉛、錫、チタン、ニッケル、マグネシウム、シリコン、銅、黄銅などの金属または合金を主成分とする繊維を用いることができる(ただし、2020年の規制対応のため銅は5%以下が望ましい)。
【0117】
前記炭素系繊維としては、耐炎化繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、活性炭繊維などを用いることができ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0118】
前記摩擦材組成物中における、前記繊維基材の含有量は、摩擦材組成物全体を100質量%としたときに、5~40質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましく、5~15質量%であることが特に好ましい。前記繊維基材の含有量を5~40質量%の範囲とすることで、摩擦材としての最適な気孔率が得られ、鳴き防止ができ、適正な材料強度が得られ、耐摩耗性を発現し、成形性をよくすることができる。
【0119】
(結合材)
前記結合材は、摩擦材組成物を構成する各材料を結合、一体化し、摩擦材(ブレーキ摩擦材)としての強度を向上させる機能を有するものである。
【0120】
前記結合材としては、熱硬化性樹脂を通常用いられる結合材として用いることができる。
【0121】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂;アクリル系樹脂;シリコン樹脂;熱硬化性フッ素系樹脂;フェノール樹脂;アクリルエラストマー分散フェノール樹脂、シリコンエラストマー分散フェノール樹脂等の各種エラストマー分散フェノール樹脂;アクリル変性フェノール樹脂、シリコン変性フェノール樹脂、カシュー変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂、アルキルベンゼン変性フェノール樹などが挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。特に、優れた耐熱性、成形性及び摩擦係数を得ることできる、フェノール樹脂、アクリル変性フェノール樹脂、シリコン変性フェノール樹脂、アルキルベンゼン変性フェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0122】
前記摩擦材組成物中における、前記結合材の含有量は、摩擦材組成物全体を100質量%としたときに、3~20質量%であることが好ましく、5~10質量%であることがより好ましい。この範囲内とすることで、摩擦材の強度を高く維持でき、また、摩擦材の気孔率を低減し、弾性率が高くなることによるブレーキ鳴きなどの音振性能の悪化をより効果的に抑制できる。
【0123】
前記摩擦材組成物は、前記各成分、及び、必要に応じた任意成分を所定の比率で配合して得ることができる。この際、前記各成分、及び、前記任意成分を、分散媒中でボールミル等により所定時間粉砕混合した後、乾燥して分散媒を除去し、ふるい等を用いて整粒する工程を含むことが好ましい。
【0124】
[摩擦材]
本実施形態に係る摩材は、前記摩擦材組成物の成形体で構成されている。
【0125】
前記摩擦材は、前記摩擦材組成物を成形し、必要に応じて、焼結することにより得ることができる。上記成形工程及び焼結工程では、公知のセラミックスの成形方法及び焼結方法を用いることができる。前記成形方法としては例えば、一軸加圧成形、冷間静水圧成形等の乾式成形法が挙げられる。前記成形方法としては上記乾式成形法の他、射出成形、押出成形、泥漿鋳込み、加圧鋳込み、回転鋳込み、ドクターブレード法等も適用することができる。前記焼結方法としては、例えば、雰囲気焼結法、反応焼結法、常圧焼結法、熱プラズマ焼結法等が挙げられる。また、焼結温度及び焼結温度での保持時間は使用原料に応じて適宜設定することができる。なお、焼結は、セラミックスの種類や添加する材料の種類によって、大気中や、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス中で行ってもよいし、一酸化炭素ガス、水素ガス等のような還元性ガス中で行ってもよい。また、真空中で行ってもよい。さらに、加圧しながら、焼結してもよい。その後、必要に応じて切削、研削、研摩等の処理を施すことにより本実施形態に係る摩擦材が得られる。
前記摩擦材は、鉄等の金属のバックプレートと貼り合わせて一体化し、摩擦材とバックプレートとを備えるブレーキパッドとすることができる。また、前記摩擦材組成物と共に熱成形して摩擦材とバックプレートとを備えるブレーキパッドとすることもできる。
【0126】
前記摩擦材は、自動車技術会規格JASO C406に準じて、下記測定条件Aにて測定される第1フェード試験を9回実施し、得られた挙動ピークにおいて、最小摩擦係数を示したときの最大値μ値と最小値μ値の平均値を算出し、その平均値が0.20μ以上であることが好ましく、0.22μ以上であることがより好ましく、0.24μ以上であることがさらに好ましく、0.25μ以上であることが特に好ましく、0.27μ以上が特別に好ましく、0.28μ以上が格別に好ましい。この数値が高いほど、ブレーキング時の違和感をより低減することができる。前記摩擦係数の平均値は、大きいほど好ましいが、例えば、0.4以下、0.35以下、0.33以下等が挙げられる。
<測定条件A>
制動初速度100km/h
制動間隔35秒
第1回目測定時の制動前ブレーキ温度80℃
制動減速度0.45G
制動回数9回
【0127】
前記摩擦材は、自動車技術会規格JASO C406に準じて下記測定条件Bにて測定される摩擦係数の平均値であるすり合わせμ値が0.39以上であることが好ましく、0.40以上であることがより好ましく、0.405以上であることがさらに好ましく、0.41以上であることが特に好ましく、0.42以上が特別に好ましく、0.43以上が格別に好ましく、0.44以上がより格別に好ましい。前記すり合わせμ値は、大きいほど好ましいが、例えば、0.6以下、0.55以下、0.53以下等が挙げられる。前記すり合わせμ値が0.39以上であると、少ない押圧でより強い制動力が得られる。
<測定条件B>
制動初速度65km/h
制動前ブレーキ温度120℃
制動減速度0.35G
測定回数200回
【0128】
前記摩擦材は、自動車技術会規格JASO C406に準じて、下記測定条件Cにて測定される第2効力試験での測定回数8回における摩擦係数の平均値を摩擦係数Xとし、自動車技術会規格JASO C406に準じて、下記測定条件Dにて測定される第2効力試験での測定回数8回における摩擦係数の平均値を摩擦係数Yとしたとき、摩擦係数の差[(摩擦係数X)-(摩擦係数Y)]が、0.12以下であることが好ましく、0.11以下であることがより好ましく、0.10以下であることがさらに好ましく、0.09以下が特に好ましく、0.08以下が特別に好ましく、0.05以下が格別に好ましい。前記摩擦係数の差[(摩擦係数X)-(摩擦係数Y)]は小さいほど好ましいが、例えば、0.01以上、0.02以上、0.03以上等が挙げられる。前記摩擦係数の差[(摩擦係数X)-(摩擦係数Y)]が、0.12以下であると、ブレーキング時の違和感をさらに低減することができる。
<測定条件C>
制動初速度100km/h
制動前ブレーキ温度80℃
制動減速度0.2G
測定回数8回
<測定条件D>
制動初速度100km/h
制動前ブレーキ温度80℃
制動減速度0.7G
測定回数8回
【実施例
【0129】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における複合酸化物粉末、摩擦材組成物、及び、摩擦材には、不可避不純物として酸化ハフニウムを酸化ジルコニウムに対して1.3~2.5質量%含有(下記式(Z)にて算出)している。
<式(Z)>
([酸化ハフニウムの質量]/([酸化ジルコニウムの質量]+[酸化ハフニウムの質量]))×100(%)
【0130】
(実施例1)
<複合酸化物粉末の作製>
高純度酸化セリウム(純度99.9%、三津和化学薬品製)と、高純度酸化ジルコニウム(純度99.9%、第一稀元素化学工業製)と、高純度酸化アルミニウム(純度98.0%、日本軽金属製)とを表1に示す配合比率に従って均一となるように混合した。
【0131】
次に、アーク式電気炉を用い、電力原単位換算で2.0kwh/kgを2時間印加し、2400℃以上で溶融を行った。なお、初期の通電を促すためにコークス300gを使用した。溶融終了後、電気炉に炭素蓋をして、大気中で24時間徐冷し、インゴットを得た。得られたインゴットをジョークラッシャー及びロールクラッシャーで粒径(直径)3mm以下まで粉砕した後、篩で1mm以下の粉末を捕集した。
【0132】
溶融工程で発生した亜酸化物や過冷却による結晶内の歪みを除去するために、捕集した粉末を熱処理した。熱処理は、電気炉を用いて大気中、600℃で3時間行った。その後、遊星ミル(フリッチュジャパン社製、装置名:PULVERISETTE 6)で15分間粉砕した。
具体的には、下記の条件で粉砕した。
<乾式粉砕条件>
粉砕装置:遊星型ボールミル
ZrOポット:500cc
ZrOビーズ(φ5mm):900g
回転数:400rpm
粉砕時間:15min
【0133】
以上により、実施例1に係る複合酸化物粉末を得た。
【0134】
<摩擦材組成物の作製>
表2に示す配合比率に従って各材料を均一となるように混合し、実施例1に係る摩擦材組成物を得た。混合には、(株)日本アイリッヒ製のアイリッヒ インテンシブルミキサーを用いた。
【0135】
<摩擦材及びブレーキパッドの作製>
得られた摩擦材組成物を成形プレス(Preform machine)で予備成形した。得られた予備成形物を鉄製のパックプレートと共に熱成形した。熱成形条件は、摩擦面155℃、B/P側160℃、中型140℃、成形圧力500kg/cmとした。ガス抜き条件は、摩擦面8回(計300秒)、B/P側10秒8回とした。熱成形は、熱成形プレス((株)マルシチ製、製品名:MA250型)を用いた。
【0136】
次に、得られた成形品を熱処理した。熱処理条件は、温度250℃、圧力5kg/cm、5時間とした。以上により、バックプレートと摩擦材組成物の成形体(摩擦材)との積層体を得た。
【0137】
ロータリー研磨機を用い、得られたバックプレートと摩擦材との積層体を研磨し、続いて、500℃でスコーチ処理を行い、さらにミゾ切りを行って実施例1に係るブレーキパッドを得た。
【0138】
(実施例2~実施例29)
<複合酸化物粉末、摩擦材組成物、摩擦材及びブレーキパッドの作製>
出発原料の混合比率を表1に示す配合比率に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2~実施例29に係る複合酸化物粉末、摩擦材組成物、摩擦材及びブレーキパッドを得た。
なお、表1に示したYは高純度酸化イットリウム(純度99.99%、和光純薬工業(株)製)であり、Laは高純度酸化ランタン(純度99.9%、和光純薬工業(株)製)であり、CaOは高純度酸化カルシウム(純度99.0%、和光純薬工業(株)製)であり、MgOは高純度酸化マグネシウム(純度97.0%、キシダ化学(株)製)であり、SiOは高純度シリカ(純度99.0%、1級、キシダ化学(株)製)であり、TiOは高純度酸化チタン(純度99.5%、キシダ化学(株)製)である。
【0139】
(比較例1、比較例2)
<複合酸化物粉末、摩擦材組成物、摩擦材及びブレーキパッドの作製>
高純度酸化セリウム、高純度酸化ジルコニウム、高純度酸化アルミニウムの配合比率を表1に示す配合比率に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1、比較例2に係る複合酸化物粉末、摩擦材組成物、摩擦材及びブレーキパッドを得た。
【0140】
【表1】
【0141】
【表2】
【0142】
[複合酸化物粉末の組成測定]
実施例、比較例で作製した複合酸化物粉末の組成(酸化物換算)を、ICP-AES(「ULTIMA-2」HORIBA製)を用いて分析した。その結果、表1の配合比率通りであることが確認できた。
【0143】
[複合酸化物粉末の比表面積の測定]
実施例、比較例の複合酸化物粉末の比表面積を、比表面積計(「マックソーブ」マウンテック製)を用いてBET法にて測定した。結果を表3に示す。
【0144】
[複合酸化物粉末の結晶子径の測定]
実施例、比較例の複合酸化物粉末について、X線回折装置(「RINT2500」リガク製)を用い、X線回折スペクトルを得た。測定条件は下記の通りとした。
<測定条件>
測定装置:X線回折装置(リガク製、RINT2500)
線源:CuKα線源
サンプリング間隔:0.02°
スキャン速度:2θ=1.0°/分
発散スリット(DS):1°
発散縦制限スリット:5mm
散乱スリット(SS):1°
受光スリット(RS):0.3mm
モノクロ受光スリット:0.8mm
管電圧:50kV
管電流:300mA
【0145】
その後、XRD測定における2θが40°~42°のピークの測定結果を次のScherrerの式に当てはめ、結晶子径を算出した。
Dp=(K×λ)/βcosθ
ここで、Dpは複合酸化物粉末の結晶子径、λはX線の波長、θは回折角、Kは形状因子とよばれる定数、βは装置による回折線の広がりを補正したあとのピーク幅である。
2θが40°~42°のピークは、CeAlOの(111)に由来するピークである。
結果を表3に示す。
なお、参考のため、図1に、実施例4に係る複合酸化物粉末のX線回折スペクトルを示した。
【0146】
[複合酸化物粉末の粒子径D50、粒子径D90、及び粒子径D99の測定]
実施例、比較例の複合酸化物粉末の粒子径を、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置「LA-950」((株)堀場製作所製)を用いて測定した。より詳細には、サンプル0.15gと40mlの0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液とを50mlビーカーに投入し、装置(レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置「LA-950」)に投入して測定した。
測定条件は下記の通りとした。結果を表3に示す。
分散条件:100Wで2分超音波分散
屈折率:1.70-0.0i
【0147】
[複合酸化物粉末の単粒圧壊強度の測定]
実施例、比較例の複合酸化物粉末の単粒圧壊強度は、遊星ミルで粉砕前の粒子(遊星ミルで粉砕して実施例、比較例の複合酸化物粉末とする前段階の粒子)を用いて測定した。粉砕前の粒子としては、粒子径2.36mm~2.80mmの範囲内のものを用いた。前記粒子径の粒子は、市販の篩を用いて得た。測定個数は50個とし、その平均値を単粒圧壊強度とした。測定装置は引張圧縮試験機を使用した。具体的に、引張圧縮試験機には、(株)今田製作所社製のSV-201-NSLを用いた。ロードスピードは0.5mm/minで行った。結果を表3に示す。
【0148】
[複合酸化物粉末の真比重の測定]
実施例、比較例の複合酸化物粉末の真比重を、JIS Z8807:2012に準拠して測定した。結果を表3に示す。
【0149】
【表3】
【0150】
[すり合わせμ値の測定]
自動車技術会規格JASO C406に準じて、下記測定条件Bにて200回の各摩擦係数を得た。その200回の摩擦係数の平均値を求め、これをすり合わせμ値とした。結果を表4に示す。
<測定条件B>
制動初速度65km/h
制動前ブレーキ温度120℃
制動減速度0.35G
測定回数200回
200回の各測定には、それぞれ、製造後、他の試験に使用していないものを用いた。
【0151】
[摩擦安定性評価]
自動車技術会規格JASO C406に準じて、下記測定条件Cにて第2効力試験を行い、測定回数8回における摩擦係数の平均値を摩擦係数Xとして求めた。
また、自動車技術会規格JASO C406に準じて、下記測定条件Dにて第2効力試験を行い、測定回数8回における摩擦係数の平均値を摩擦係数Yとして求めた。
その後、摩擦係数の差[(摩擦係数X)-(摩擦係数Y)]を求めた。
結果を表4に示す。
<測定条件C>
制動初速度100km/h
制動前ブレーキ温度80℃
制動減速度0.2G
測定回数8回
<測定条件D>
制動初速度100km/h
制動前ブレーキ温度80℃
制動減速度0.7G
測定回数8回
8回の各測定には、それぞれ、製造後、他の試験に使用していないものを用いた。
【0152】
[耐フェード性評価]
自動車技術会規格JASO C406に準じて、下記測定条件Aにて第1フェード試験を行い、9回の各摩擦係数を得た。その中の、摩擦係数の最も大きい値と、摩擦係数の最も小さい値、及び、摩擦係数の最も大きい値と摩擦係数の最も小さい値との差を表4に示す。
<測定条件A>
制動初速度100km/h
制動間隔35秒
第1回目測定時の制動前ブレーキ温度80℃
制動減速度0.45G
制動回数9回
【0153】
[ロータ磨耗性評価]
ブレーキ一般性能試験項目(JASO-C406ベース)の条件で全項目の試験を行なった後のロータのインナー側、アウター側のロータ磨耗量の平均値を求めた。ロータ磨耗量は少ないほど性能がよいことを示す。
【0154】
【表4】
図1