(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】バガス含有グアユールゴムとシランとを組み合わせたゴム組成物及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
C08L 7/00 20060101AFI20241008BHJP
C08L 97/02 20060101ALI20241008BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241008BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20241008BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L97/02
C08K3/013
C08K5/54
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2023537121
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2021072972
(87)【国際公開番号】W WO2022133478
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-07-25
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デデッカー,マーク エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョンジェ
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0265601(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105419002(CN,A)
【文献】国際公開第2017/038001(WO,A1)
【文献】特開2018-111768(JP,A)
【文献】特表2018-502980(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079594(WO,A1)
【文献】特開2015-044948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤトレッドに用いられるタイヤゴム組成物であって、
a.バガス成分を含む、過半重量のグアユールゴムを含む、100部のゴム成分と、
b.シリカを含まない充填剤成分と、
c.メルカプトシラン、ブロック化メルカプトシラン、及びアルコキシシランからなる群から選択される少なくとも1つのシランと、
を含む、タイヤゴム組成物。
【請求項2】
前記グアユールゴムの前記バガス成分が、前記グアユールゴムの重量に基づいて1~20重量%の量で存在する、請求項1に記載のタイヤゴム組成物。
【請求項3】
4phr未満の
グアユール樹脂を含む、請求項1又は請求項2に記載のタイヤゴム組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載のタイヤゴム組成物を含む
タイヤトレッドを有するタイ
ヤ。
【請求項5】
タイヤゴム組成物の転がり抵抗を改善する方法であって、請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤゴム組成物を提供することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、シリカ充填剤の非存在下でバガス含有グアユールゴムとシランとを組み合わせたタイヤゴム組成物、及びタイヤゴム組成物の転がり抵抗を低減する関連方法を対象とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
グアユール植物(Parthenium argentatum)は、植物の細胞内にゴムを含有する木質の低木様植物である。グアユール植物からゴムを単離することを目的とするプロセスは、木質材料(バガスと呼ばれるもの)からゴムを単離することを必要とする。グアユールゴム中のバガスの存在は、特にゴム組成物がタイヤにおいて(例えば、トレッドゴム組成物において)使用される場合、ゴム組成物の特性にとって有害であり得る。
【0003】
ゴム組成物であって、バガス成分を含む、ゴム成分としての過半重量のグアユールゴムと、シリカを含まない充填剤成分と、少なくとも1つのシランと、を含む、ゴム組成物が本明細書に開示される。また、ゴム組成物を提供することによって、タイヤゴム組成物の転がり抵抗を改善する方法であって、ゴム組成物が、バガス成分を含む、ゴム成分としての過半重量のグアユールゴムと、シリカを含まない充填剤成分と、少なくとも1つのシランと、を含む、方法も開示される。
【0004】
第1の実施形態では、タイヤゴム組成物の転がり抵抗を改善する方法が提供される。この方法は、少なくとも1つのシランであって、メルカプトシラン、ブロック化メルカプトシラン、及びアルコキシシランからなる群から選択される少なくとも1つのシランをゴム組成物中に含めることによって、ゴム組成物であって、バガス成分を含む、過半重量のグアユールゴムを含む、ゴム成分と、シリカを含まない充填剤成分と、を含む、ゴム組成物を提供することを含む。
【0005】
第2の実施形態では、タイヤゴム組成物が提供される。タイヤゴム組成物は、(a)バガス成分を含む、過半重量のグアユールゴムを含む、ゴム成分100部と、(b)シリカを含まない充填剤成分と、(c)メルカプトシラン、ブロック化メルカプトシラン、及びアルコキシシランからなる群から選択される少なくとも1つのシランと、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
ゴム組成物であって、バガス成分を含む、ゴム成分としての過半重量のグアユールゴムと、シリカを含まない充填剤成分と、少なくとも1つのシランと、を含む、ゴム組成物が本明細書に開示される。また、ゴム組成物を提供することによって、タイヤゴム組成物の転がり抵抗を改善する方法であって、ゴム組成物が、バガス成分を含む、ゴム成分としての過半重量のグアユールゴムと、シリカを含まない充填剤成分と、少なくとも1つのシランと、を含む、方法も開示される。
【0007】
第1の実施形態では、タイヤゴム組成物の転がり抵抗を改善する方法が提供される。この方法は、少なくとも1つのシランであって、メルカプトシラン、ブロック化メルカプトシラン、及びアルコキシシランからなる群から選択される少なくとも1つのシランをゴム組成物中に含めることによって、ゴム組成物であって、バガス成分を含む、過半重量のグアユールゴムを含む、ゴム成分と、シリカを含まない充填剤成分と、を含む、ゴム組成物を提供することを含む。
【0008】
第2の実施形態では、タイヤゴム組成物が提供される。タイヤゴム組成物は、(a)バガス成分を含む、過半重量のグアユールゴムを含む、ゴム成分100部と、(b)シリカを含まない充填剤成分と、(c)メルカプトシラン、ブロック化メルカプトシラン、及びアルコキシシランからなる群から選択される少なくとも1つのシランと、を含む。
【0009】
定義
本明細書に記載される用語は、実施形態を説明するためだけのものであり、全体として本発明を限定すると解釈すべきではない。
【0010】
本明細書で使用されるとき、用語「BR」又は「ポリブタジエン」は、1,3-ブタジエンのホモポリマーを指す。
【0011】
本明細書で使用されるとき、用語「過半量」は、50%超(例えば、少なくとも50.1%、少なくとも50.5%、少なくとも51%等)を指す。
【0012】
本明細書で使用されるとき、用語「半量未満」は、50%未満(例えば、49.5%以下、49%以下等)を指す。
【0013】
本明細書で使用されるとき、略記Mnは、数平均分子量に使用される。
【0014】
本明細書で使用されるとき、略記Mpは、ピーク分子量に使用される。
【0015】
本明細書で使用されるとき、略記Mwは、重量平均分子量に使用される。
【0016】
本明細書で特に明記しない限り、用語「ムーニー粘度」は、ムーニー粘度、ML1+4を指す。ゴム組成物のムーニー粘度は、加硫又は硬化に先立って測定されることを、当業者は理解するであろう。
【0017】
本明細書で使用されるとき、用語「天然ゴム」は、ヘベアゴムの木等の資源及び非ヘベア資源(例えば、グアユール植物及びTKS等のタンポポ)から採集することができるもの等の天然に存在するゴムを意味する。言い換えれば、用語「天然ゴム」は、合成ポリイソプレンを除くものと解釈すべきである。
【0018】
本明細書で使用されるとき、用語「グアユールゴム」は、グアユール植物から採集された天然ゴムの下位分類である。対照的に、グアユール植物から採集されたものではない天然ゴムは、本明細書では「非グアユール天然ゴム」と呼ばれ、ヘベアゴム並びにタンポポ等の他の資源を含み得る。
【0019】
本発明で使用する場合、用語「phr」とは、ゴム100部当たりの部を意味する。100部のゴムは、本明細書では100部のゴム成分とも称される。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「ポリイソプレン」は、合成ポリイソプレンを意味する。言い換えれば、この用語は、イソプレンモノマーから製造されたポリマーを示すために用いられ、天然由来のゴム(例えば、パラゴムノキ天然ゴム、グアユール起源の天然ゴム、又はタンポポ起源の天然ゴム)を含むと解釈すべきではない。ただし、用語「ポリイソプレン」は、イソプレンモノマーの天然源から製造されるポリイソプレンを含むと解釈すべきである。
【0021】
本明細書で使用されるとき、用語「SBR」は、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを意味する。
【0022】
本明細書で使用されるとき、用語「トレッド」は、通常の膨張及び荷重下で道路と接触するタイヤの部分を指し、用語「サブトレッド」は、概して道路と接触しないトレッドの下にある部分を指す。
【0023】
ゴム成分
上述したように、第1及び第2の実施形態によれば、タイヤゴム組成物は、バガス成分を含む、過半重量(例えば、51%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%)のグアユールゴムを含む、ゴム成分を含む。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ゴム成分は、少なくとも60重量%(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、60~100%、60~90%、60~80%、60~70%等)のグアユールゴムを含む。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ゴム成分は、少なくとも70重量%(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、70~100%、70~90%、70~80%等)のグアユールゴムを含む。第1及び第2の実施形態の更に他の実施形態では、ゴム成分の全体(すなわち、100重量%)がグアユールゴムである。
【0024】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態によれば、ゴム組成物に使用されるグアユールゴムのMw及びMnは、様々であり得る。第1及び第2の実施形態の好ましい実施形態では、グアユールゴムは、少なくとも100万グラム/モル(例えば、100万、110万、120万、130万、140万、150万、160万、170万、180万、190万、200万、又はそれ以上)又は100万~200万グラム/モル(例えば、100万、110万、120万、130万、140万、150万、160万、170万、180万、190万又は、200万)、好ましくは130万~200万グラム/モル(例えば、130万、140万、150万、160万、170万、180万、190万、又は200万)、より好ましくは150万~200万グラム/モル(例えば、100万、150万、160万、170万、180万、190万、又は200万)のMwを有する。第1及び第2の実施形態の好ましい実施形態では、グアユールゴムは、少なくとも200,000グラム/モル(例えば、200,000;250,000;300,000;350,000;400,000;450,000;500,000;550,000;又はそれ以上)、又は200,000~500,000グラム/モル(例えば、200,000;250,000;300,000;350,000;400,000;450,000;又は500,000)、より好ましくは少なくとも300,000グラム/モル(例えば、300,000;350,000;400,000、450,000;500,000;550,000;又はそれ以上)、又は300,000~500,000グラム/モル(例えば、300,000;350,000;400,000、450,000;又は500,000)のMnを有する。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、グアユールゴムは、各々前述の範囲のうちの1つ内にあるMw及びMn、好ましくは各々前述の好ましい範囲のうちの1つ内にあるMw及びMn、より好ましくは各々前述のより好ましい範囲のうちの1つ内にあるMw及びMnを有する。
【0025】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、グアユールゴム中に存在するグアユール樹脂の量は限定される。第1及び第2の実施形態の好ましい実施形態では、グアユールゴムは、5重量%以下のグアユール樹脂(例えば、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.5%以下)、好ましくは4重量%以下のグアユール樹脂(例えば、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.5%以下)のグアユール樹脂、より好ましくは4%未満のグアユール樹脂(例えば、3.9%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.5%以下)のグアユール樹脂、更により好ましくは1%未満のグアユール樹脂(例えば、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%又は0%)のグアユール樹脂を含む。
【0026】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態によれば、グアユールゴム中に存在するバガス(すなわち、バガス成分)の量は様々であり得る。第1及び第2の実施形態の好ましい実施形態では、バガス成分は、1~20重量%(例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、又は20%)のグアユールゴムを含む。上記の特定の実施形態では、バガス成分は、より好ましくは1~10重量%(例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%)のグアユールゴム、又は5重量%未満(例えば、4.9%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、又は0.1%未満)のグアユールゴムを含む。概して、現在の技術方法によれば、0.00重量%のバガスを含有するグアユールゴムは入手不可能である。したがって、0.1%以下又は0.1%未満の量は、微量のバガスを含むものとして理解されるべきである。第1及び第2の実施形態の他の実施形態では、バガス成分は、グアユールゴムの重量に基づいて、5~20重量%(例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、又は20%)、好ましくは10~20重量%(例えば、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、又は20%)を構成する。相対的により多くのバガスがグアユールゴム中に存在する(例えば、5~20重量%又は10~20重量%)第1及び第2の実施形態の実施形態は、より多くのバガスが存在するのを可能にすることにより、グアユール植物からのグアユールゴムの単離に関連する加工コスト及び時間を低減することができるので、グアユール植物からのグアユールゴムの単離に関して利点を提示することができる。
【0027】
全体として、第1及び第2の実施形態によれば、ゴム組成物のゴム成分中に存在するゴムの全体量は100部であると理解されるべきである。したがって、第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ゴム成分は、少なくとも1つの追加のゴムを半重量未満含むものとして理解することができる。少なくとも1つの追加のゴムの半重量未満を構成する特定の量は、使用されるグアユールゴムの量に応じて変動する。非限定的な例として、ゴム成分が60重量%のグアユールゴム(又は60部のグアユールゴム)を含む場合、ゴム成分の40重量%は、少なくとも1つの追加のゴムで構成される。したがって、概して、少なくとも1つの追加のゴムが存在する場合、それは49~1%、49~5%、49~10%、40~1%、40~5%、40~10%、30~1%、30~5%、30~10%(全ての量はゴム成分の総重量に基づく重量による)等の量を構成する。特定の追加のゴム又は使用されるゴムは様々であり得る。第1及び第2の実施形態の好ましい実施形態では、ゴム成分は、非グアユール天然ゴム(例えば、ヘベア天然ゴム、又はタンポポ等の非ヘベア及び非グアユール資源からの天然ゴム)、ポリイソプレン、少なくとも90%のシス-1,4-結合含量を有するポリブタジェン、少なくとも90%のシス-1,4-結合含量を有する官能化ポリブタジェン、スチレン-ブタジエンゴム、及び官能化スチレン-ブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも1つのゴムを半重量未満含む。
【0028】
ゴム成分が官能化ゴム(例えば、少なくとも90%のシス-1,4-結合含量を有する官能化ポリブタジエン及び/又は官能化SBR)を含む第1及び第2の実施形態の実施形態では、存在する官能基は様々であり得る。前述の好ましい実施形態によれば、使用される官能基は、カーボンブラック反応性であり、より好ましい実施形態では、官能基は極性基を含む。(BR及びSBRについての)好適な官能基の非限定的な例としては、ヒドロキシル、カルボニル、エーテル、エステル、ハライド、アミン、イミン、アミド、ニトリル、及びオキシラン(例えば、エポキシ環)基が挙げられるが、これらに限定されない。官能化ポリマーが使用される場合、官能基は、ポリマーの頭部及び/若しくは尾部に組み込まれてもよく、並びに/又はポリマー骨格に沿って付加されてもよい。官能化開始剤の非限定的な例としては、有機アルカリ金属化合物(例えば、有機リチウム化合物)であって、1つ以上のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、ホウ素、ケイ素、硫黄、スズ、及びリン原子)又は上記原子を含む複素環基、多くの場合1つ以上の窒素原子を更に含み(例えば、置換アルジミン、ケチミン、第二級アミン等)、任意選択でジイソプロぺニルベンゼン等の化合物と予備反応された、有機アルカリ金属化合物が挙げられる。多数の官能性開始剤は、当分野において公知である。例示的なものは、米国特許第5,153,159号、同第5,332,810号、同第5,329,005号、同第5,578,542号、同第5,393,721号、同第5,698,464号、同第5,491,230号、同第5,521,309号、同第5,496,940号、同第5,567,815号、同第5,574,109号、同第5,786,441号、同第7,153,919号、同第7,868,110号、及び米国特許出願公開第2011-0112263号に開示されており、それらは、参照により本明細書に組み込まれる。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、官能性開始剤が使用される場合、官能性窒素含有開始剤が利用され、非限定的な例としては、環状アミン、特にアゼチジンなどの環状二級アミン;ピロリジン;ピペリジン;モルホリン;N-アルキルピペラジン;ヘキサメチレンイミン;ヘプタメチレンイミン、及びドデカメチレンイミンが挙げられる。
【0029】
スチレン-ブタジエンゴム
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態によれば、ゴム組成物のゴム成分に少なくとも1つのSBRが存在する場合、スチレン-ブタジエンゴムのMw、Mn、及び多分散度(Mw/Mn)は様々であり得る。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、SBRは、300,000~600,000グラム/モル(例えば、300,000;325,000;350,000;375,000;400,000;425,000;450,000;475,000;500,000;525,000;550,000;575,000;又は600,000グラム/モル)のMwを有する。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、SBRは、350,000~550,000、又は400,000~500,000グラム/モルのMwを有する。本明細書において言及されるMw値は、重量平均分子量であり、これは、スチレン-ブタジエン標準及び対象のポリマーに対してマルク-ハウインク定数により較正されたゲル浸透クロマトグラフィ(gel permeation chromatography、GPC)を使用することにより決定することができる。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、SBRは200,000~400,000グラム/モル(例えば、200,000;225,000;250,000;275,000;300,000;325,000;350,000;375,000;又は400,000グラム/モル)のMnを有する。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、SBRは、200,000~300,000のMnを有する。本明細書において言及されているMn値は、数平均分子量であり、これは、スチレン-ブタジエン標準及び対象のポリマーに対してマルク-ハウインク定数により較正されたゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を使用することにより決定することができる。本明細書に開示される第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、SBRは、1.2~2.5(例えば、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、又は2.5、好ましくは、1.3~2)のMw/Mn(多分散度)を有する。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、SBRのMw、Mn、及びMw/Mnは全て、前述の範囲の1つに属し、特定のそのような実施形態では、Mw、Mn、及びMw/Mnの各々は、前述の好ましい範囲の1つに属する。第1及び第2の実施形態の他の実施形態では、利用されるSBRは、(a)350,000~600,000グラム/モル(例えば、350,000;400,000;450,000;500,000;550,000;又は600,000グラム/モル)、若しくは400,000~550,000グラム/モル(例えば、400,000;425,000;450,000;475,000;500,000;525,000;又は550,000グラム/モル)のMwを有するSBRと組み合わせて前述の範囲のうちの1つ内のMw、Mn、及び/又はMw/Mnを有する前述のSBRのうちの少なくとも1つを含むか、(b)又は350,000~600,000グラム/モル(例えば、350,000;400,000;450,000;500,000;550,000;又は600,000グラム/モル)、若しくは400,000~550,000グラム/モル(例えば、400,000;425,000;450,000;475,000;500,000;525,000;又は550,000グラム/モル)のMwを有する1つ以上のSBRのみを含む。
【0030】
第1及び第2の実施形態によれば、ゴム成分において使用される任意のSBRのTgは、様々であり得る。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の好ましい実施形態では、SBRは、約-75~約-50℃、-75~-50℃(例えば、-75、-70、-65、-60、-55、若しくは-50℃)、好ましくは-70~-55℃(例えば、-70、-65、-60、若しくは-55℃)、又はより好ましくは-65~-55℃(例えば、-65、-60、若しくは-55℃)のTgを有する。第1及び第2の実施形態における他の実施形態では、利用されるSBRとしては、約-10~約-70℃、-10~-70℃(例えば、-10、-15、-20、-25、-30、-35、-40、-45、-50、-55、-60、-65、又は-70℃)、好ましくは約-10~約-49℃又は-10~-49℃(例えば、-10、-12、-14、-15、-16、-18、-20、-22、-24、-26、-28、-30、-32、-34、-36、-35、-38、-40、-42、-44、-45、-46、-48、又は-49℃)のTgを有するSBRが挙げられる。SBRは、前述の範囲のうちの1つのTgを、任意選択で、上記のMw、Mn、及び/又はMw/Mnの範囲のうちの1つ以上と組み合わせて、並びに特定の実施形態では、任意選択で、後述するスチレンモノマー含量のうちの1つと組み合わせて、有し得る。エラストマーについて本明細書で言及されるTg値は、油展を全く伴わずにエラストマー上で行われたTg測定を表す。言い換えれば、油展性エラストマーでは、上記のTg値は、油展前のTg、又は同じエラストマーの非油展バージョンを指す。エラストマー又はポリマーTg値は、TA Instruments(New Castle,Delaware)製などの示差走査熱量測定(DSC)計器を使用して測定され得、測定は、-120℃で冷却してから10℃/分の温度上昇を使用して実施する。その後、正接をDSC曲線の急上昇前後のベースラインに引く。DSC曲線上の温度(2つの接点の中間に対応する点で読み取る)をTgとして使用することができる。
【0031】
第1及び第2の実施形態によれば、ゴム成分で使用される任意のSBRのスチレンモノマー含量(すなわち、ブタジエン単位と違ってスチレン単位を含むポリマー鎖の重量パーセント)は様々であり得る。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、SBRのスチレンモノマー含量は、約10~約40重量%、10~40重量%(例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、若しくは40%)、10~30重量%(例えば、10%、15%、20%、25%、若しくは30%)、又は10~20重量%(例えば、10%、12%、14%、16%、18%、若しくは20%)である。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、SBRは、前述の範囲のうちの1つのスチレンモノマー含量を、任意選択で、後述するMw、Mn、及び/又はMw/Mnの範囲のうちの1つ又は複数と組み合わせて、並びに特定の実施形態では、任意選択で、上記のTgの範囲及び/又は以下のビニル結合含量のうちの1つと組み合わせて、有し得る。
【0032】
第1の実施形態及び第2の実施形態によれば、エラストマー成分で使用される任意のSBRのビニル結合含量(即ち、1,2-微細構造)は様々であり得る。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、SBRのビニル結合含量は、約10~約50%、10~50%(例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、若しくは50%)、約10~約40%、10~40%(例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、若しくは40%)、約20~約40%、又は20~40%(例えば、20%、25%、30%、35%、若しくは40%)である。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、SBRは、前述の範囲のうちの1つのビニル結合含量を、任意選択で上記のMw、Mn、Mw/Mn、Tg、及び/又はスチレンモノマー含量の範囲のうちの1つ又は複数との組み合わせで有し得る。本明細書で言及されるビニル結合含量は、SBRポリマー鎖のブタジエン部分におけるビニル結合含量ではなく、SBRポリマー鎖中の総ビニル結合含量についてであるものとして理解されるべきであり、H1-NMR及びC13-NMRによって(例えば、300MHz Gemini 300NMR 分光計システム(Varian)を使用して)測定することができる。
【0033】
ポリブタジエン
第1及び第2の実施形態によれば、ゴム組成物のゴム成分は、ポリブタジエンゴムを含み得る。利用されるポリブタジエンゴムの特定の種類は様々であり得る。好ましくは、第1及び第2の実施形態によれば、ゴム成分中に存在する任意のポリブタジエンゴムは、少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上)、好ましくは少なくとも92%(例えば、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上)、より好ましくは少なくとも95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上)のシス結合含量、及び-101℃未満(例えば、-102、-103、-104、-105、-106、-107、-108、-109℃、又はそれ以下)のTgを有する。特定のそのような実施形態では、ポリブタジエンゴムのTgは、-101~-110℃である。シス結合含量は、シス1,4-結合含量を指す。本明細書で言及されるシス1,4-結合含量は、FTIR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy、フーリエ変換赤外分光法)によって決定され、その場合、ポリマー試料は、CS2に溶解され、次いで、FTIRに供する。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ゴム成分中に存在するポリブタジエンゴムは、少なくとも98%(例えば、98%、99%、又はそれ以上)、又は少なくとも99%(例えば、99%、99.5%、又はそれ以上)のシス1,4-結合含量を有し得る。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ゴム成分中に存在する任意のポリブタジエンゴムは、-105~-110℃又は-105~-108℃等、-105℃以下(例えば、-105、-106、-107、-108、-109℃、又はそれ以下)のTgを有する。第1及び第2の実施形態における特定の実施形態では、ゴム成分中に存在する任意のポリブタジエンゴムは、3重量%未満(例えば、3%、2%、1%、0.5%、又はそれ以下)、好ましくは1重量%未満(例えば、1%、0.5%、又はそれ以下)又は0重量%のシンジオタクチック1,2-ポリブタジエンを含有する。概して、第1及び第2の実施形態によれば、少なくとも92%のシス結合含量及び-101℃未満のTgを有する1つ以上のポリブタジエンゴムをゴム成分において使用することができる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、使用される唯一のポリブタジエンゴムは、少なくとも92%(例えば、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上)のシス結合含量及び-101℃未満のTgを有する。上述したように、ポリブタジエンがゴム成分中に存在する場合、それは、上述した官能基のうちの1つ以上を用いて任意選択で官能化されてもよい。
【0034】
第1の実施形態及び第2の実施形態によれば、ゴム組成物にポリブタジエンゴムが使用される場合、使用量は様々であり得る。グアユールゴムが過半量で存在するので、ゴム成分中に存在する任意のポリブタジエンゴムの総量は、半重量未満、すなわち50重量%未満になる。第1の実施形態及び第2の実施形態のそのような実施形態では、ゴム成分中に存在するポリブタジエンゴムの総量は、50phr未満、40phr未満、30phr未満、20phr未満、又は10phr未満である。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ゴム成分中に存在するポリブタジエンゴムの総量は、5~49phr、5~40phr、5~30phr、5~20phr、5~10phr、10~49phr、10~40phr、10~30phr、10~20phr、20~49phr、20~40phr、又は20~30phrである。
【0035】
非グアユール天然ゴム又はポリイソプレン
第1及び第2の実施形態によれば、ゴム成分は、非グアユール天然ゴム、ポリイソプレン、又はそれらの組み合わせを含み得る。第1の実施形態及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ゴム成分は、非グアユール天然ゴムを含むが、ポリイソプレンは含まない。第1及び第2の実施形態における他の実施形態では、ゴム成分は、ポリイソプレンのみを含み、天然ゴムは含まない。第1及び第2の実施形態によれば、天然ゴムがゴム成分中に存在する場合、それは、好ましくはヘベア天然ゴムである。第1及び第2の実施形態のゴム組成物において非グアユール天然ゴムが使用される場合、天然ゴムは、好ましくは、1,000,000~2,000,000グラム/モル(例えば、100万、110万、120万、130万、140万、150万、160万、170万、180万、190万、200万グラム/モル)、1,250,000~2,000,000グラム/モル、又は1,500,000~2,000,000グラム/モル(ポリスチレン標準を使用してGPCによって測定される)のMwを有する。第1及び第2の実施形態のゴム組成物において非グアユール天然ゴムが使用される場合、天然ゴムのTgは様々であり得る。好ましくは、第1及び第2の実施形態によれば、非グアユール天然ゴムが利用される場合、それは、-65~-80℃(例えば、-65、-66、-67、-68、-69、-70、-71、-72、-73、-74、-75、-76、-77、-78、-79、又は-80℃)のTg、より好ましくは-67~-77℃(例えば、-67、-68、-69、-70、-71、-72、-73、-74、-75、-76、又は-77℃)のTgを有する。第1の実施形態及び第2の実施形態のゴム組成物にポリイソプレンが利用される場合、ポリイソプレンのTgは様々であり得る。好ましくは、第1及び第2の実施形態によれば、ポリイソプレンが利用される場合、それは、-55~-75℃(例えば、-55、-56、-57、-58、-59、-60、-61、-62、-63、-64、-65、-66、-67、-68、-69、-70、-71、-72、-73、-74、又は-75℃)、より好ましくは-58~-74℃(例えば、-58、-59、-60、-61、-62、-63、-64、-65、-66、-67、-68、-69、-70、-71、-72、-73、又は-74℃)のTgを有する。
【0036】
第1及び第2の実施形態によれば、ゴム組成物において非グアユール天然ゴム及び/又はポリイソプレンが使用される場合、利用される量は様々であり得る。概して、第1及び第2の実施形態によれば、グアユールゴムが過半量で使用されるので、ゴム成分中に存在する任意の非グアユール天然ゴム及び/又はポリイソプレンの総量は、半重量未満、すなわち50重量%未満になる。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ゴム成分中に存在する非グアユール天然ゴム及び/又はポリイソプレンの総量は、50phr未満、40phr未満、30phr未満、20phr未満、又は10phr未満である。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ゴム成分中に存在する非グアユール天然ゴム及び/又はポリイソプレンの総量は、5~49phr、5~40phr、5~30phr、5~20phr、5~10phr、10~49phr、10~40phr、10~30phr、10~20phr、20~49phr、20~40phr、又は20~30phrである。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ゴム成分は、非グアユール天然ゴムを含むが、ポリイソプレンは含まず、天然ゴムの量は前述の範囲のうちの1つ内である。
【0037】
充填剤成分
上述したように、第1及び第2の実施形態によれば、ゴム組成物は、シリカを含まない充填剤成分を含む。シリカを含まないとは、充填剤成分(ひいては、ゴム組成物全体)が0phrのシリカを含有することを意味する。理論に束縛されるものではないが、充填剤成分からシリカを排除すると、少なくとも1つのシランのバガス成分への結合(少なくとも1つのシランのシリカへの結合ではなく)が可能になる。本明細書に開示される第1及び第2の実施形態によれば、ゴム組成物の充填剤成分中に存在する充填剤の量及び種類は、様々であり得る。
【0038】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の好ましい実施形態では、充填剤成分は、30~200phr(例えば、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、又は200phr)、より好ましくは30~150phr(例えば、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、又は150phr)、又は40~120phr(例えば、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、又は140phr)の量で存在する。本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の好ましい実施形態では、充填剤成分は、前述の量のうちの1つで存在し、過半重量の補強カーボンブラックを含む(例えば、少なくとも60重量%の補強カーボンブラック、少なくとも70重量%の補強カーボンブラック、少なくとも80重量%の補強カーボンブラック、及び少なくとも90重量%の補強カーボンブラックを含む)。特定の前述の実施形態では、充填剤成分は、全体的に補強カーボンブラックである、すなわち、充填剤成分の100重量%が補強カーボンブラックである。
【0039】
第1の実施形態及び第2の実施形態によれば、使用されるカーボンブラックの特定の種類は様々であり得る。概して、第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態のゴム組成物中の補強充填剤として使用するための好適なカーボンブラックは、少なくとも約20m2/g(少なくとも20m2/gを含む)、及び、より好ましくは、少なくとも約35m2/g~最大で約200m2/g、又はそれより高い(35m2/g~200m2/gを含む)の表面積を有するものを含む、一般に入手可能な商業的に製造されたカーボンブラックのいずれかを含む。カーボンブラックについて本明細書において使用される表面積の値は、臭化セチルトリメチル-アンモニウム(cetyltrimethyl-ammonium bromide、CTAB)技法を使用するASTM D-1765によって決定される。有用なカーボンブラックの中には、ファーネスブラック、チャネルブラック、及びランプブラックがある。より詳細には、有用なカーボンブラックの例としては、超耐摩耗性ファーネス(super abrasion furnace、SAF)ブラック、高耐摩耗性ファーネス(HAF)ブラック、良押出性ファーネス(fast extrusion furnace、FEF)ブラック、微細ファーネス(fine furnace、FF)ブラック、準超耐摩耗性ファーネス(intermediate super abrasion furnace、ISAF)ブラック、半補強性ファーネス(semi-reinforcing furnace、SRF)ブラック、中加工性チャネルブラック、難加工性チャネルブラック、及び導電性チャネルブラックが挙げられる。利用することができる他のカーボンブラックとしては、アセチレンブラックが挙げられる。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、ゴム組成物は、上述のブラックの2種以上の混合物を含む。好ましくは、第1の実施形態及び第2の実施形態によれば、カーボンブラック充填剤が存在する場合、1つの種類(又は等級)の補強カーボンブラックのみからなる。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態での使用に好適な典型的なカーボンブラックは、ASTM D-1765-82aによって指定される、N-110、N-220、N-339、N-330、N-351、N-550及びN-660である。使用されるカーボンブラックは、ペレット化形状又は非ペレット化綿状塊とすることができる。好ましくは、一層均質な混合を行うため、非ペレット化カーボンブラックが好ましい。
【0040】
第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、カーボンブラック以外の補強充填剤(すなわち、追加の補強充填剤)を含む。1種以上の追加の補強充填剤が利用され得るが、それらの総量は、好ましくは、10phr以下(例えば、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1又は0phr)、又は5phr以下(例えば、5、4、3、2、1,又は0phr)に制限される。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の好ましい実施形態では、トレッドのゴム組成物は、追加の補強充填剤を含有しない(即ち、0phr)。言い換えれば、そのような実施形態では、カーボンブラック以外の補強充填剤は存在しない。
【0041】
追加の補強充填剤が利用される第1の実施形態及び第2の実施形態におけるそれらの実施形態では、追加の補強充填剤は様々であり得る。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態のゴム組成物において使用するための好適な追加の補強充填剤の非限定例としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、クレイ(補強等級)、水酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、二酸化チタン、補強酸化亜鉛、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、非カーボンブラックの非補強充填剤である少なくとも1つの非補強充填剤を含む。第1の実施形態及び第2の実施形態における他の好ましい実施形態では、ゴム組成物は、非カーボンブラックの非補強充填剤を含まない(即ち、0phr)。第1の実施形態及び第2の実施形態における更なる他の実施形態では、ゴム組成物は、非補強充填剤を含まない(そのような実施形態では、充填剤成分のカーボンブラック充填剤は、補強カーボンブラック充填剤である)。少なくとも1種の非補強充填剤が利用される、第1の実施形態及び第2の実施形態における実施形態では、少なくとも1種の非カーボンブラックの非補強充填剤は、クレイ(非補強等級)、黒鉛、二酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、デンプン、窒化ホウ素(非補強等級)、窒化ケイ素、窒化アルミニウム(非補強等級)、ケイ酸カルシウム、炭化ケイ素、粉砕ゴム、及びそれらの組み合わせから選択され得る。第1及び第2の実施形態の特定の好ましい実施形態では、ゴム組成物は、1~20phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20phr)の粉砕ゴム、好ましくは1~5phr(例えば、1、2、3、4、又は5phr)の粉砕ゴムを含む。用語「非補強充填剤」は、約20m2/g未満(20m2/g未満を含む)である、特定の実施形態では、約10m2/g未満(10m2/g未満を含む)である窒素吸着比表面積(N2SA)を有する微粒子材料を意味するために使用される。微粒子材料のN2SA表面積は、ASTM D6556を含む様々な標準的方法に従って決定され得る。ある特定の実施形態では、用語「非補強充填剤」は、代替として又は更に、約1000nmより大きな(1000nm超を含む)粒径を有する微粒子材料を指す。第1の実施形態及び第2の実施形態におけるそれらの実施形態では、非カーボンブラックの非補強充填剤がゴム組成物に存在し、非カーボンブラックの非補強充填剤の総量は様々であり得るが、好ましくは20phr以下(例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、若しくは1phr)であり、特定の実施形態では、1~10phr、10phr以下、5phr以下(例えば、5、4、3、2、若しくは1phr)、1~5phr、又は1phr以下である。
【0043】
少なくとも1つのシラン
上述したように、第1及び第2の実施形態によれば、ゴム組成物は、メルカプトシラン、ブロック化メルカプトシラン、及びアルコキシシランからなる群から選択される少なくとも1つのシランを含む。以下でより詳細に論じる通り、アルコキシシランは、硫黄含有アルコキシシラン並びに非硫黄含有アルコキシシランの両方を含むと理解されるべきである。
【0044】
第1及び第2の実施形態によれば、ゴム組成物において使用される少なくとも1つのシランの量は様々であり得る。概して、使用されるシランの量は、ゴム組成物中に存在するバガス(バガスは、概して、グアユールゴムの成分として存在する)の総量に応じて調整することができる。バガスの量は、グアユールゴム中のその濃度(概ね1~20重量%)に応じて、また、ゴム組成物において使用されるグアユールゴムの量に応じて様々であり得る。第1及び第2の実施形態の好ましい実施形態では、少なくとも1つのシランは、0.1~5phr(例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、又は5phr)の総量で、より好ましくは0.2~1phr(例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1phr)の総量で存在する。第1及び第2の実施形態の好ましい実施形態では、少なくとも1つのシランは、ゴム組成物中に存在するバガスの量に基づいて5~20重量%(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20重量%)の総量で存在する。非限定的な例として、ゴム組成物のゴム成分が70重量%のグアユールゴムを含み(すなわち、ゴム成分の70重量%がグアユールゴムであり)、このグアユールゴムが10重量%のバガスを含有している場合、ゴム組成物中のバガスの量は7phrになる。5~20重量%の量を7phrのバガスに適用すると、シラン量は0.35phr(すなわち、5%)~1.4phr(すなわち、20%)の範囲になる。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのシランは、0.1~5phr(好ましくは0.2~1phr)の総量で存在し、またゴム組成物におけるバガスの量に基づいて5~20重量%の総量で存在する。
【0045】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態によれば、ゴム組成物において1つ以上のシラン(上述のような)を使用することができる。第1及び第2の実施形態の好ましい実施形態では、ゴム組成物は、メルカプトシラン、ブロック化メルカプトシラン、及びアルコキシシランからなる群から選択されるシランを1つのみ含む。第1及び第2の実施形態の他の実施形態では、ゴム組成物は、メルカプトシラン、ブロック化メルカプトシラン、及びアルコキシシランからなる群から選択される2つのシランを含む。2つ(又はそれ以上)のシランがゴム組成物において使用される実施形態では、全てのシランの総量は、上述の通りである。
【0046】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのシランは、非硫黄含有アルコキシシランである。好ましくは、そのような実施形態によれば、非硫黄含有アルコキシシランは、式(I)を有する:
【化1】
(式中、n=2、3、又は4であり;各R
1は、独立して、1~20個の炭素、好ましくは2~18個の炭素を有するヒドロカルビル基から選択され;R
2は、1~10個の炭素、好ましくは1~6個、より好ましくは1~3個の炭素を有するアルキル基、又は6~18個の炭素、好ましくは6~12個の炭素を有する芳香族基である)。n=2の場合、非硫黄含有アルコキシシランは、ジアルコキシシランであると理解することができる。n=3の場合、非硫黄含有アルコキシシランは、トリアルコキシシランであると理解することができる。n=4の場合、非硫黄含有アルコキシシランは、テトラアルコキシシランであると理解することができる。
【0047】
第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのシランは、式(I)(式中、n=2である)を有する非硫黄含有アルコキシシランシラン、すなわち、ジアルコキシシランである。ジアルコキシシランである非硫黄含有アルコキシシランの非限定的な例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジペンチルジメトキシシラン、ジペンチルジエトキシシラン、ジヘキシルジメトキシシラン、ジヘキシルジエトキシシラン、ジヘプチルジメトキシシラン、ジヘプチルジエトキシシラン、ジオクチルジメトキシシラン、ジオクチルジエトキシシラン、ジノニルジメトキシシラン、ジノニルジエトキシシラン、ジデシルジメトキシシラン、ジデシルジエトキシシラン、ジウンデシルジメトキシシラン、ジウンデシルジエトキシシラン、ジドデシルジメトキシシラン、ジドデシルジエトキシシラン、ジトリデシルジメトキシシラン、ジトリデシルジエトキシシラン、ジテトラデシルジメトキシシラン、ジペンタデシルジメトキシシラン、ジテトラデシルジエトキシシラン、ジペンタデシルジエトキシシラン、ジヘキサデシルジメトキシシラン、ジヘキサデシルジエトキシシラン、ジヘプタデシルジメトキシシラン、ジヘプタデシルジエトキシシラン、ジオクタデシルジメトキシシラン、ジオクタデシルジエトキシシラン、ジノナデシルジメトキシシラン、ジノナデシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルジエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのシランは、式(I)(式中、n=3である)を有する非硫黄含有アルコキシシランシラン、すなわち、トリアルコキシシランである。トリアルコキシシランである非硫黄含有アルコキシシランの非限定的な例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ウンデシルトリメトキシシラン、ウンデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、トリデシルトリメトキシシラン、トリデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ペンタデシルトリメトキシシラン、ペンタデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘプタデシルトリメトキシシラン、ヘプタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、ノナデシルトリメトキシシラン、ノナデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのシランは、式(I)(式中、n=4である)を有する非硫黄含有アルコキシシランシラン、すなわち、テトラアルコキシシランである。テトラアルコキシシランである非硫黄含有アルコキシシランの非限定的な例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、及びテトライソブトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのシランは、非硫黄含有ビスアルコキシシランである。非硫黄含有ビスアルコキシシランは、好ましくは二価ヒドロカルビル基によって分離された2個のケイ素原子を含有し、各ケイ素原子が2つ又は3つのアルコキシ基を有するものとして理解することができる。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、非硫黄含有ビスアルコキシシランは、式(Y)G(Z)を有する(式中、Gは、C1~C50直鎖及び分岐アルキレン、C2~C50直鎖及び分岐アルケニレン、C6~C50芳香族からなる群から選択される分離基であり、各々任意選択で、1つ以上のO又は1つ以上のN、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるヘテロ原子を含有し;Y及びZは、同じであっても異なっていてもよく、各々独立して、式Si(R7)p(OR8)3-p(式中、各R7は、独立して、C1~C20脂肪族、脂環式、又は芳香族を含み、R8は、C1~C6脂肪族又は脂環式であり、pは0又は1の整数である)の基を含む)。第1及び第2の実施形態の好ましい実施形態では、非硫黄含有ビスアルコキシシランが前述の式を有する場合、非エラストマー反応性充填剤補強剤のGは、C2~C20アルキレン、及びアルケニレン、及びC6~C20芳香族からなる群から選択され、各々任意選択で、1つ以上のO又は1つ以上のN、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるヘテロ原子を含有する。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、非硫黄含有ビスアルコキシシランは、式(Y)G(Z)を有し、Gは、C6~C20アルキレン及びアルケニレンからなる群から選択され、各R8は、C1~C6直鎖及び分岐脂肪族からなる群から選択される。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、非硫黄含有ビスアルコキシシランは、式(Y)G(Z)を有し、Gは、C4~C20直鎖及び分岐アルキレン、並びにC4~C20直鎖及び分岐アルケニレンからなる群から選択され、いずれも任意選択で1つ以上の芳香環の形態で追加の炭素原子を含有する。特定の実施形態では、非硫黄含有ビスアルコキシシランは、C1~C6(すなわち、メチル~ヘキシル)、好ましくはC1~C3、更により好ましくはC1~C2からなる群から選択されるアルコキシの炭素部分を有するビス(トリアルコキシ)シランである。そのようなビス(トリアルコキシ)シランの具体例としては、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリブトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリブトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)ブタン、ビス(トリメトキシシリル)ブタン、ビス(トリブトキシシリル)ブタン、ビス(トリエトキシシリル)イソブタン、ビス(トリメトキシシリル)イソブタン、ビス(トリブトキシシリル)イソブタン、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリブトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)シクロヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)シクロヘキサン、ビス(トリブトキシシリル)シクロヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、ビス(トリエトキシシリル)ヘプタン、ビス(トリブトキシシリル)ヘプタン、ビス(トリエトキシシリル)オクタン、ビス(トリメトキシシリル)オクタン、ビス(トリブトキシシリル)オクタン、ビス(トリエトキシシリル)ノナン、ビス(トリメトキシシリル)ノナン、ビス(トリブトキシシリル)ノナン、ビス(トリエトキシシリル)デカン、ビス(トリメトキシシリル)デカン、ビス(トリブトキシシリル)デカン、ビス(トリエトキシシリル)ドデカン、ビス(トリメトキシシリル)ドデカン、ビス(トリブトキシシリル)ドデカン、ビス(トリエトキシシリル)テトラデカン、ビス(トリメトキシシリル)テトラデカン、ビス(トリブトキシシリル)テトラデカン、ビス(トリエトキシシリル)オクタデカン、ビス(トリメトキシシリル)オクタデカン、ビス(トリブトキシシリル)オクタデカン、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのシランは、2~6つのアルコキシシラン基を有する硫黄含有アルコキシシランである。好ましくは、そのような実施形態によれば、硫黄含有アルコキシシランは、ジスルフィドアルコキシシラン又はテトラスルフィドアルコキシシランから選択される。ジスルフィドアルコキシシランは、2つの硫黄原子(互いに単結合している)を有するものとして理解することができ、その各硫黄は、ケイ素原子に結合している分離アルキレン基に結合しており、当該ケイ素原子は、2つ又は3つのアルコキシ基を有する。テトラスルフィドアルコキシシランは、4つの硫黄原子(互いに単結合している)を有するものとして理解することができ、末端硫黄は各々、ケイ素原子に結合している分離アルキレン基に結合しており、当該ケイ素原子は、2つ又は3つのアルコキシ基を有する。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ジスルフィドアルコキシシランは、式(アルコキシ)a(アルキル)3-aSi-(CH2)b-S-S-(CH2)b-Si(アルキル)3-a(アルコキシ)a(式中、aは、2又は3であり;bは、1~10、好ましくは2~8、より好ましくは2又は3の整数であり;アルコキシ基中のアルキルは、1~10個の炭素、好ましくは1~6個の炭素、より好ましくは1~4個の炭素のアルキルから選択される)を有する。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、テトラスルフィドアルコキシシランは、式(アルコキシ)d(アルキル)3-dSi-(CH2)eS-S-S-S-(CH2)e-Si(アルキル)3-d(アルコキシ)d(式中、dは、2又は3であり;eは、1~10、好ましくは2~8、より好ましくは2又は3の整数であり;アルコキシ基中のアルキルは、1~10個の炭素、好ましくは1~6個の炭素、より好ましくは1~4個の炭素のアルキルから選択される)を有する。あるいは、他の実施形態では、テトラスルフィドアルコキシシランは、硫黄鎖の一方の末端(例えば、第1の硫黄)のみにアルコキシシランアルキレン部分を有し、硫黄鎖の他方の末端(例えば、第4の硫黄)には、別の部分が存在する(例えば、チオカルバモイル、ベンゾチアゾール)。
【0052】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのシランがジスルフィドアルコキシシランである場合、それは、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリブトキシシリル-プロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリ-m-ブトキシシリル-プロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリプロポキシプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、2,2’-ビス(ジメチルメトキシシリルエチル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ジフェニルシクロヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(エチル-ジ-sec-ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(プロピルジエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリイソプロポキシシリルプロピル)ジスルフィド、12,12’-ビス(トリイソプロポキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ジメトキシフェニルシリル-2-メチルプロピル)ジスルフィド、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0053】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのシランがテトラスルフィドアルコキシシランである場合、それは、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-ベンゾトリアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾトリアゾールテトラスルフィド、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0054】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのシランは、メルカプトシラン化合物である。特定のそのような実施形態では、少なくとも1つのシランは、メルカプトシランを含む。換言すれば、ブロック化メルカプトシラン及びアルコキシシランからなる群から選択される追加のシランを、メルカプトシランと組み合わせて使用することができる。他の実施形態では、少なくとも1つのシランは、メルカプトシランからなる。換言すれば、使用される唯一の種類のシランがメルカプトシランであり、ブロック化メルカプトシラン及びアルコキシシランはゴム組成物中に存在しない。メルカプトシラン化合物は、一般式HS-R3-Si(Xn)(R4
3-n)(式中、各Xは、独立してハロゲン又はアルコキシ基から選択され(アルコキシ基の場合、式OR5(式中、R5は、C1~C6脂肪族、脂環式、又は芳香族基である)のアルコキシ基である);R3は、C1~C4アルキレンから選択され;各R4は、独立して、C1~C30アルキル、C7~C30アルカリール、C5~C30脂環式、又はC6~C20芳香族から選択され;nは、1~4の整数である)を有するものとして記載することができる。Xがハロゲンであるとき、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素からなる群から選択され、好ましくは塩素であってよい。本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の好ましい実施形態では、少なくとも1つのシランは上記式を有するメルカプトシランであり、式中、R3はC1~C3アルキレンから選択され、Xはアルコキシ基(C1~C6の炭素部分を有する)であり、nは3である。1-メルカプトメチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリプロキシシラン、18-メルカプトオクタデシルジエトキシクロロシラン
【0055】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのシランは、ブロック化メルカプトシランである。特定のそのような実施形態では、少なくとも1つのシランは、ブロック化メルカプトシランを含む。換言すれば、メルカプトシラン及びアルコキシシランからなる群から選択される追加のシランを、ブロック化メルカプトシランと組み合わせて使用することができる。他の実施形態では、少なくとも1つのシランは、ブロック化メルカプトシランからなる。換言すれば、使用される唯一の種類のシランがブロック化メルカプトシランであり、メルカプトシラン及びアルコキシシランはゴム組成物中に存在しない。ブロック化メルカプトシランは、一般式B-S-R6-Si-X3を有するものとして記載することができ、硫黄原子のポリマーとの反応を「ブロック」するためにメルカプト水素原子に置き換わったブロック基Bを有する。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ブロック化メルカプトシランが上記一般式を有する場合、Bは、単結合を介して硫黄に直接結合した不飽和ヘテロ原子又は炭素の形態であり得るブロック基であり;R6は、C1~C6直鎖又は分岐アルキル鎖から選択され、各Xは、独立して、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、ハロゲン、ハロゲン含有C1~C6アルキル、及びハロゲン含有C1~C6アルコキシからなる群から選択される。本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態において使用するのに好適なブロック化メルカプトシランとしては、米国特許第6,127,468号、同第6,204,339号、同第6,528,673号、同第6,635,700号、同第6,649,684号、同第6,683,135号、及び同第7,256,231号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのシランがブロック化メルカプトシランである場合、それは、2-トリエトキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-トリメトキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-(メチルジメトキシ-シリル)-1-エチルチオアセテート、3-トリメトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、トリエトキシシリルメチル-チオアセテート、トリメトキシシリルメチルチオアセテート、トリイソプロポキシシリルメチルチオアセテート、メチルジエトキシシリルメチルチオアセテート、メチルジメトキシシリルメチルチオアセテート、メチルジイソプロポキシシリルメチルチオアセテート、ジメチルエトキシシリルメチルチオアセテート、ジメチルメトキシシリルメチルチオアセテート、ジメチルイソプロポキシシリルメチルチオアセテート、2-トリイソプロポキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-(メチルジエトキシシリル)-1-エチルチオアセテート、2-(メチルジイソプロポキシシリル)-1-エチルチオアセテート、2-(ジメチルエトキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-(ジメチルメトキシシリル)-1-エチルチオアセテート、2-(ジメチルイソプロポキシシリル)-1-エチルチオアセテート、3-トリエトキシシリル-1-プロピル-チオアセテート、3-トリイソプロポキシシリル-1-プロピルチオアセテート、3-メチルジエトキシシリル-1-プロピル-チオアセテート、3-メチルジメトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、3-メチルジイソプロポキシシリル-1-プロピルチオアセテート、1-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-4-チオアセチルシクロヘキサン、1-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-3-チオアセチルシクロヘキサン、2-トリエトキシシリル-5-チオアセチルノルボルネン、2-トリエトキシシリル-4-チオアセチルノルボルネン、2-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-5-チオアセチルノルボルネン、2-(2-トリエトキシ-シリル-1-エチル)-4-チオアセチルノルボルネン、1-(1-オキソ-2-チア-5-トリエトキシシリルフェニル)安息香酸、6-トリエトキシシリル-1-ヘキシルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-5-ヘキシルチオアセテート、8-トリエトキシシリル-1-オクチルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-7-オクチルチオアセテート、6-トリエトキシシリル-1-ヘキシルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-5-オクチルチオアセテート、8-トリメトキシシリル-1-オクチルチオアセテート、1-トリメトキシシリル-7-オクチルチオアセテート、10-トリエトキシシリル-1-デシルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-9-デシルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-2-ブチルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-3-ブチルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-3-メチル-2-ブチルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-3-メチル-3-ブチルチオアセテート、3-トリメトキシシリル-1-プロピルチオオクタノエート、3-トリエトキシシリル-1-プロピル-1-プロピルチオパルミテート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオオクタノエート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオベンゾエート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオ-2-エチルヘキサノエート、3-メチルジアセトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、3-トリアセトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、2-メチルジアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-トリアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート、1-メチルジアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート、1-トリアセトキシシリル-1-エチル-チオアセテート、トリス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)トリチオホスフェート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)メチルジチオホスホネート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)エチルジチオホスホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルジメチルチオホスフィネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルジエチルチオ-ホスフィネート、トリス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)テトラチオホスフェート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1プロピル)メチルトリチオホスホネート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)エチルトリチオホスホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルジメチルジチオホスフィネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルジエチルジチオホスフィネート、トリス-(3-メチルジメトキシシリル-1-プロピル)トリチオホスフェート、ビス-(3-メチル-ジメトキシシリル-1-プロピル)メチルジチオホスホネート、ビス-(3-メチルジメトキシシリル-1-プロピル)-エチルジチオホスホネート、3-メチルジメトキシシリル-1-プロピルジメチルチオホスフィネート、3-メチルジメトキシシリル-1-プロピルジエチルチオホスフィネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルメチル-チオサルフェート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルメタンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピル-エタンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルベンゼンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルトルエンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルナフタレンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルキシレンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルメチルチオサルフェート、トリエトキシシリルメチルメタンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルエタンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルベンゼンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルトルエンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルナフタレンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルキシレンチオスルホネートなどからなる群から選択される。
【0056】
第1の実施形態の方法の特定の実施形態では、少なくとも1つのシランは、グアユールゴムと充填剤成分との任意の混合の前にグアユールゴムと予備混合される。特定のそのような実施形態では、グアユールゴムは、少なくとも1つのシランと予備混合されるとき、溶媒に溶解しているか又はラテックス形態で存在する。他の実施形態では、グアユールゴムは、少なくとも1つのシランと予備混合されるとき、固体形態で存在する。理論に束縛されるものではないが、グアユールゴムの予備混合は、グアユールゴム内のバガス粒子へのシランの結合を支援し得ると考えられる。
【0057】
樹脂
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物中に存在するグアユール樹脂の量は限定される。概して、グアユール樹脂は、使用されるグアユールゴムの成分としてゴム組成物に添加されてもよいが、グアユール樹脂を別個に(「遊離」樹脂として)添加することも可能である。第1及び第2の実施形態の好ましい実施形態では、ゴム組成物は、4phr以下例えば、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.5phr以下)のグアユール樹脂、より好ましくは4phr未満のグアユール樹脂(例えば、3.9、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.5phr以下)のグアユール樹脂、更により好ましくは1phr未満のグアユール樹脂(例えば0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、又は0phr以下)のグアユール樹脂を含む。
【0058】
第1及び第2の実施形態のゴム組成物中に存在するグアユール樹脂の量は限定されることが好ましいが、特定の実施形態では、ゴム組成物において他の炭化水素(非グアユール)樹脂を利用することができる。本明細書に開示される第1及び第2の実施形態のゴム組成物において非グアユール炭化水素樹脂が使用される場合、使用される樹脂の種類及び量は様々であり得る。
【0059】
非グアユール炭化水素樹脂が使用される第1及び第2の実施形態の実施形態では、ゴム組成物中に存在する量は、概ね、5~50phr(例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50phr)である。可塑化用樹脂を含む様々な種類の非グアユール炭化水素樹脂を利用することができる。本明細書で使用するとき、可塑性樹脂という用語は、室温(23℃)において固体である化合物を指し、通常、少なくとも5phrとなる使用される量で、ゴム組成物中で混和性である。概して、可塑性樹脂は希釈剤として作用し、概して非混和性である粘着付与樹脂とは対照的であり得、ゴム組成物の表面に移動して粘着性をもたらすことができる。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、非グアユール炭化水素樹脂(可塑化用樹脂の形態)が利用される場合、それは、その中に含まれるモノマーに応じて、脂肪族タイプ、芳香族タイプ、又は脂肪族/芳香族タイプから選択される。第1及び第2の実施形態のゴム組成物において使用するのに好適な可塑化用樹脂(非グアユール炭化水素樹脂)の例としては、シクロペンタジエン(CPDと略記)又はジシクロペンタジエン(DCPDと略記)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、及びC5留分ホモポリマー又はコポリマー樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。このような樹脂は、例えば、個々に、又は組み合わせて使用することができる。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、30℃超(好ましくは、40℃超及び/又は120℃以下若しくは100℃以下)のTg、400~2000グラム/モル(好ましくは、500~2000グラム/モル)の数平均分子量(Mn)、及び3未満(好ましくは、2未満)の多分散度指数(PI)(PI=Mvv/Mnであり、Mvvは、樹脂の重量平均分子量である)のうちの少なくとも1つを満たす可塑化用樹脂(非グアユール炭化水素樹脂)が使用される。樹脂のTgは、ASTM D3418(1999)に準拠して、DSC(示差走査熱量測定)によって測定することができる。樹脂のMw、Mn、及びPIは、THF、35℃、濃度1g/1、流速1ミリリットル/分、注入前に0.45μmの気孔率を有するフィルターを通して濾過した溶液、ポリスチレン標準によるムーア(Moore)較正、一連の3つの「Waters」カラムのセット(「Styragel」HR4E、HR1、及びHR0.5)、示差屈折率計(「Waters 2410」)及びその関連する操作ソフトウェア(「Waters Empower」)による検出を使用して、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定することができる。
【0060】
ゴム組成物の他の(任意選択)成分
第1及び第2の実施形態によれば、追加の成分がゴム組成物中に存在してもよい。これらの追加成分としては、液体可塑剤、硬化パッケージ、ワックス(場合によっては酸化防止剤である)、加工助剤、補強樹脂、素練り促進剤、及び酸化防止剤/劣化防止剤が挙げられるが、これらに限定されない。第1及び第2の実施形態の好ましい実施形態では、硬化パッケージがゴム組成物に含まれる。
【0061】
第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、1~30phrの液体可塑剤を含む。液体可塑剤という語句は、25℃で液体である可塑剤を指すと理解されるべきであり、そうした可塑剤としては、油及びエステル系可塑剤が挙げられるが、これらに限定されない。概して、第1の実施形態及び第2の実施形態によれば、液体可塑剤が使用される場合、1種又は2種以上の液体可塑剤が利用され得る。液体可塑剤の総量は、可塑剤成分の量と見なされる場合がある。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、1~30phr(例えば、1、2、4、6、8、10、12、14、15、16、18、20、22、24、25、26、28、又は30phr)、又は1~20phr若しくは5~20phr等の前述の範囲内の量の液体可塑剤、好ましくは、10~30phr(例えば、10、12、14、15、16、18、20、22、24、25、26、28、又は30phr)、又は10~25phr若しくは10~20phr等の範囲内の量の液体可塑剤を含む。用語「油」は、遊離油(通常、配合プロセス中に添加される)及び伸展油(ゴムを伸展させるために使用される)の両方を包含することを意味する。非限定例として、ゴム組成物が20phrの油を含むと述べることにより、任意の遊離油及び任意の伸展油の総量が20phrであることが理解されるべきである。同様に、ゴム組成物が20phrの液体可塑剤を含むと述べることにより、任意の液体可塑剤(遊離油、伸展油、及びエステル系可塑剤を含む)の総量が20phrであることが理解されるべきである。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物が油を含有する場合、唯一の油は、前述の量のうちの1つ(例えば、1~30phr、10~30phr、5~20phr等)の遊離油である。第1の実施形態及び第2の実施形態の他の実施形態では、ゴム組成物が油を含有する場合、唯一の油は、前述の量のうちの1つ(例えば、1~30phr、10~30phr、5~20phr等)の伸展油である。油展ゴムが使用される、第1の実施形態及び第2の実施形態におけるそれらの実施形態では、油展ゴムの調製に使用される油の量は様々であり得る。特定のこのような実施形態では、油展ゴム(ポリマー)中に存在する伸展油の量は、ゴム100部当たり10~50部の油(例えば、ゴム100部当たり10、15、20、25、30、35、40、45、又は50部の油)、好ましくはゴム100部当たり10~40部の油又はゴム100部当たり20~40部の油である。本明細書に開示されるゴム組成物のゴム成分において油展ゴムが使用される場合、上記のように、ゴム成分のゴムに関して指定された量は、油展ゴムの量ではなく、ゴムの量のみを指すと理解されるべきである。非限定例として、伸展油は、ゴム組成物全体で15部の量で使用されるSBRのゴム100部あたり40部の量の油で使用でき、したがって、油展SBRがゴム組成物に寄与する油の量は、6phrと記載され得る。
【0062】
本明細書で使用されるとき、油は、石油系油(例えば、芳香油、ナフテン油、及び低PCA油)、並びに植物油(野菜、木の実、及び種子から採油され得るもの等)の両方を指す。植物油は概してトリグリセリドを含み、この用語は、合成トリグリセリド、及び実際に植物から供給されたものを含むと理解されるべきである。
【0063】
第1の実施形態及び第2の実施形態によれば、1種以上の油がゴム組成物中に存在する場合、様々な種類の加工油及び伸展油が利用され得、それらの種類は、芳香油、ナフテン油、及び低PCA油(石油由来又は植物由来)を含むが、これらに限定されない。好適な低PCA油としては、IP346法によって測定すると、3重量%未満の多環式芳香族含量を有するものが挙げられる。IP346法の手順は、Institute of Petroleum(英国)発行のStandard Methods for Analysis&Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts,2003,第62版に見出すことができる。例示的な石油由来の低PCA油としては、軽度抽出溶媒和物(mild extraction solvate、MES)、処理留出物芳香族抽出物(treated distillate aromatic extract、TDAE)、TRAE、及び重ナフテン系が挙げられる。例示的なMES油は、CATENEX SNR(SHELL製)、PROREX 15及びFLEXON 683(EXXONMOBIL製)、VIVATEC 200(BP製)、PLAXOLENE MS(TOTAL FINA ELF製)、TUDALEN 4160/4225(DAHLEKE製)、MES-H(REPSOL製)、MES(Z8製)、並びにOLIO MES S201(AGIP製)として市販されている。例示的なTDAE油は、TYREX 20(EXXONMOBIL製)、VIVATEC 500、VIVATEC 180、及びENERTHENE 1849(BP製)、並びにEXTENSOIL 1996(REPSOL製)として入手可能である。例示的な重ナフテン系油は、SHELLFLEX 794、ERGON BLACK OIL、ERGON H2000、CROSS C2000、CROSS C2400、及びSAN JOAQUIN 2000Lとして入手可能である。例示的な低PCA油としてはまた、野菜、木の実、及び種子から採取することができるものなど、様々な植物由来の油も挙げられる。非限定例としては、ダイズ油、ヒマワリ油(高オレイン酸ヒマワリ油を含む)、サフラワー油、コーン油、亜麻仁油、綿実油、菜種油、カシュー油、ゴマ油、ツバキ油、ホホバ油、大麻油、マカダミアナッツ油、ココナツ油、及びヤシ油が挙げられるが、これらに限定されない。前述の加工油を、伸展油として、即ち、油展ポリマー又は共重合体の調製のために、あるいは加工油又は遊離油として使用することもできる。
【0064】
1種以上の油がゴム組成物中に存在する、第1の実施形態及び第2の実施形態におけるそれらの実施形態では、使用される1種以上の油のTgは、様々であり得る。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、利用される任意の油は、約-40~約-100℃、-40~-100℃(例えば、-40、-45、-50、-55、-60、-65、-70、-75、-80、-85、-90、-95、若しくは-100℃)、約-40~約-90℃、-40~-90℃(例えば、-40、-45、-50、-55、-60、-65、-70、-75、-80、-85、若しくは-90℃)、約-45~約-85℃、-45~-85℃(例えば、-45、-50、-55、-60、-65、-70、-75、-80、若しくは-85℃)、約-50~約-80℃、又は-50~-80℃(例えば、-50、-55、-60、-65、-70、-75、若しくは-80℃)のTgを有する。
【0065】
第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、5phr未満(例えば、4.5、4、3、2、1、又は0phr)のMES又はTDAE油を含有し、好ましくはMES油もTDAE油も含有しない(すなわち、0phr)。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、石油系油を含有せず(すなわち、0phr)、代わりに、利用される任意の油は植物油である。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、ゴム組成物は、上述の量のうちの1つのダイズ油を含有し、特定のそのような実施形態では、含まれる唯一の油はダイズ油である。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、ヒマワリ油を含有しない(すなわち、0phr)。第1の実施形態及び第2の実施形態における他の実施形態では、含まれる唯一の油はヒマワリ油である。
【0066】
第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、1つ以上のエステル系可塑剤を含み、これは、概して室温で液体である可塑剤の種類である。好適なエステル系可塑剤は、当業者に既知であり、リン酸エステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、及びオレイン酸エステル(すなわち、オレイン酸から誘導された)が挙げられるが、これらに限定されない。エステルが、少なくとも1つの-OHが-O-アルキル基で置換された酸から誘導された化学的化合物であることを考慮すると、概ねC1~C20(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20)又はC6~C12の直鎖又は分岐アルキルを含む様々なアルキル基を、トレッドゴム組成物に使用するのに好適なエステル可塑剤において使用してよい。前述のエステルのうちの特定のものは、1つを超える-OH基を有する酸に基づき、したがって、1つ以上のO-アルキル基に適応し得る(例えば、リン酸トリアルキル、フタル酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル)。好適なエステル可塑剤の非限定例としては、リン酸トリオクチル、フタル酸ジオクチル、アジピン酸ジオクチル、オレイン酸ノニル、オレイン酸オクチル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。前述のうちの1種以上など、エステル可塑剤の使用は、エステル可塑剤の比較的低いTgに少なくとも部分的に起因して、このようなエステル可塑剤を含有するトレッドゴム組成物から作製されるタイヤの雪又は氷性能に有益であり得る。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、-40℃~-70℃(例えば、-40、-45、-50、-55、-60、-65、又は-70℃)又は-50℃~-65℃(例えば、-50、-51、-52、-53、-54、-55、-56、-57、-58、-59、-60、-61、-62、-63、-64、又は-65℃)のTgを有する1つ以上のエステル系可塑剤を含む。1種以上のエステル系可塑剤が利用される、第1の実施形態及び第2の実施形態におけるそれらの実施形態では、利用される量は様々であり得る。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、1つ以上のエステル可塑剤は、1~25phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25phr)、1~20phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20phr)、1~15phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15phr)、1~10phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10phr)、2~6phr(例えば、2、3、4、5、又は6phr)、又は2~5phr(例えば、2、3、4、又は5phr)の総量で利用される。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の好ましい実施形態では、エステル系可塑剤の量は15phr以下又は12phr以下である。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、油が1~10phr未満、又は1~5phrの量で存在する場合、1種以上のエステル系可塑剤が(前述の量のうちの1つで)油と組み合わせて使用される。第1及び第2の実施形態における他の実施形態では、1つ以上のエステル系可塑剤は、トレッドゴム組成物中に油が全く存在しない状態で(すなわち、0phrの油)使用される。
【0067】
上述のように、本明細書に開示される第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、硬化パッケージを含む(構成する)。硬化パッケージの内容物は様々であり得るが、概して、硬化パッケージは、加硫剤、加硫促進剤、加硫活性化剤(例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸など)、加硫阻害剤、及びスコーチ防止剤のうちの少なくとも1つを含む。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、硬化パッケージは、少なくとも1種の加硫剤と、少なくとも1種の加硫促進剤と、少なくとも1種の加硫活性化剤と、任意選択で、加硫阻害剤及び/又はスコーチ防止剤とを含む。加硫促進剤及び加硫活性化剤は、加硫剤のための触媒として作用する。様々な加硫阻害剤及びスコーチ防止剤は、当技術分野で既知であり、当業者は、所望の加硫特性に基づいて選択することができる。
【0068】
第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態での使用に好適な加硫剤の種類の例としては、硫黄、又は過酸化物系硬化性成分が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、特定のこのような実施形態では、硬化パッケージは、硫黄系硬化剤又は過酸化物系硬化剤を含む。第1の実施形態及び第2の実施形態における好ましい実施形態では、加硫剤は、硫黄系硬化剤であり、特定のそのような実施形態では、加硫剤は、硫黄系硬化剤(のみ)からなる。特定の好適な硫黄加硫剤の例としては、「ゴム製造業者(rubbermaker)」の可溶性硫黄、二硫化アミン、ポリマー性ポリスルフィド、又は硫黄オレフィン付加物などの硫黄供与性硬化剤、及び不溶性のポリマー性硫黄が挙げられる。好ましくは、硫黄加硫剤は、可溶性硫黄、又は可溶性硫黄ポリマーと不溶性硫黄ポリマーとの混合物である。硬化で用いられる好適な硬化剤及び他の構成成分(例えば、加硫阻害剤及びスコーチ防止剤)の全般的な開示として、Kirk-Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,3rd ed.,Wiley Interscience,N.Y.1982,Vol.20,pp.365~468、特にVulcanization Agents and Auxiliary Materials,pp.390~402又はA.Y.CoranによるVulcanization(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,Second Edition(1989 John Wiley&Sons,Inc.))を参照することができ、これらの両方ともが、参照により本明細書に組み込まれる。加硫剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。概して、第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、加硫剤は、0.1~10phrの範囲(例えば、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10phr)、例えば、1~7.5phrなど、1~5phrなど、好ましくは、1~3.5phr(例えば、1、1.5、2、2.5、3、又は3.5phr)の量で使用され得る。
【0069】
加硫促進剤は、加硫に必要な時間及び/又は温度を制御し、加硫物の特性を改善させるために使用される。本明細書に開示される第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態での使用に好適な加硫促進剤の例としては、チアゾール加硫促進剤、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)(2,2’-dithiobis(benzothiazole)、MBTS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(N-cyclohexyl-2-benzothiazole-sulfenamide、CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(N-tert-butyl-2-benzothiazole-sulfenamide、TBBS)など、グアニジン加硫促進剤、例えば、ジフェニルグアニジン(diphenyl guanidine、DPG)など、チウラム加硫促進剤、カルバミン酸加硫促進剤などが挙げられるが、これらに限定されない。概して、使用される加硫促進剤の量は、0.1~10phr(例えば、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10phr)、好ましくは0.5~5phr(例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、又は5phr)の範囲である。好ましくは、第1の実施形態及び第2の実施形態におけるゴム組成物に使用される任意の加硫促進剤は、一硫化チウラム及び多硫化チウラムなどの任意のチウラム(その例としては、TMTM(tetramethyl thiuram monosulfide、テトラメチルチウラムモノスルフィド)、TMTD(tetramethyl thiuram disulfide、テトラメチルチウラムジスルフィド)、DPTT(dipentamethylene thiuram tetrasulfide、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド)、TETD(tetraethyl thiuram disulfide、テトラエチルチウラムジスルフィド)、TiBTD(tetraisobutyl thiuram disulfide、テトライソブチルチウラムジスルフィド)、及びTBzTD(tetrabenzyl thiuram disulfide、テトラベンジルチウラムジスルフィド)が挙げられる)を除外し、言い換えれば、第1の実施形態及び第2の実施形態におけるゴム組成物は、好ましくは、チウラム促進剤を含有しない(即ち、0phr)。
【0070】
加硫活性化剤は、加硫を補助するために使用される添加剤である。概して、加硫活性化剤は、無機成分及び有機成分の両方を含む。酸化亜鉛は、最も広く使用されている無機加硫活性化剤である。ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、及び前述の各々の亜鉛塩を含む様々な有機加硫活性化剤が、一般的に使用されている。概して、第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、使用される加硫活性化剤の量は、0.1~6phr(例えば、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、又は6phr)、好ましくは0.5~4phr(例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、又は4phr)の範囲である。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、酸化亜鉛とステアリン酸の両方が加硫活性化剤として使用され、利用される総量は、前述の範囲のうちの1つに含まれる。特定のそのような実施形態では、使用される唯一の加硫活性化剤は、酸化亜鉛及びステアリン酸である。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、1つ以上のチオ尿素化合物(前述の量で使用される)を含む1種以上の加硫活性化剤が使用され、任意選択で前述の加硫活性化剤のうちの1種以上と組み合わせされる。概して、チオ尿素化合物は、構造(R1)(R2)NS(=C)N(R3)(R4)を有する化合物として理解され得、式中、R1、R2、R3、及びR4の各々は、H、アルキル、アリール、及びN含有置換基(例えば、グアニル)から独立して選択される。任意選択で、前述の構造のうちの2つが、ジチオビ尿素化合物中でNを介して(R基のうちの1つを除去して)一緒に結合することができる。特定の実施形態では、R1又はR2の一方、及びR3又はR4の一方は、それらの間の1つ以上のメチレン基(-CH2-)と一緒に結合することができる。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、チオ尿素は、前述の基のうちの1つから選択されたR1、R2、R3、及びR4のうちの1つ又は2つを有し、残りのR基は水素である。例示的なアルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、イソ-ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びシクロヘキシル等のC1~C6直鎖、分岐、又は環状基が挙げられる。例示的なアリールとしては、フェニル、トリル、及びナフチル等のC6~C12芳香族基が挙げられる。例示的なチオ尿素化合物としては、ジアルキルチオ尿素及びジアリールチオ尿素などのジヒドロカルビルチオ尿素が挙げられるが、これらに限定されない。特定のチオ尿素化合物の非限定例としては、チオ尿素、N,N’-ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素(N,N’-diethylthiourea、DEU)、N,N’-ジメチルチオ尿素、N,N’-ジブチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N’-ジイソプロピルチオ尿素、N,N’-ジシクロヘキシルチオ尿素、1,3-ジ(o-トリル)チオ尿素、1,3-ジ(p-トリル)チオ尿素、1,1-ジフェニル-2-チオ尿素、2,5-ジチオビ尿素、グアニルチオ尿素、1-(1-ナフチル)-2-チオ尿素、1-フェニル-2-チオ尿素、p-トリルチオ尿素、及びo-トリルチオ尿素のうちの1つ以上が挙げられる。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、活性化剤は、チオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’-ジフェニルチオ尿素、及びN-N’-ジメチルチオ尿素から選択された少なくとも1つのチオ尿素化合物を含む。
【0071】
加硫阻害剤は、加硫プロセスを制御するため、概して、所望の時間及び/又は温度に達するまで加硫を遅らせるか又は阻害するために使用される。一般的な加硫阻害剤としては、限定するものではないが、Santogard製のPVI(cyclohexylthiophthalmide、シクロヘキシルチオフタルミド)が挙げられる。概して、第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の実施形態では、加硫阻害剤の量は、0.1~3phr(例えば、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、又は3phr)、好ましくは0.5~2phr(例えば、0.5、1、1.5、又は2phr)である。
【0072】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態のゴム組成物に任意選択で添加され得る様々な他の成分としては、ワックス(場合によっては酸化防止剤である)、加工助剤、補強樹脂、素練り促進剤、及び酸化防止剤/劣化防止剤が挙げられる。劣化防止剤である成分は、N,N’二置換-p-フェニレンジアミン、例えば、N-1,3-ジメチルブチル-N’フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)、N-フェニル-N-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、及びN-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(HPPD)から選択されたものなどのオゾン劣化防止剤又は酸化防止剤として分類され得る。劣化防止剤の他の例としては、アセトンジフェニルアミン縮合生成物、2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、オクチル化ジフェニルアミン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、及び特定のワックスが挙げられる。第1の実施形態及び第2の実施形態における特定の他の実施形態では、組成物は、酸化防止剤又はオゾン劣化防止剤などの劣化防止剤を含まない、又は本質的に含まない場合がある。
【0073】
転がり抵抗を改善する方法
上述のように、本明細書に開示される第1の実施形態は、ゴム組成物の転がり抵抗を改善する方法を対象とする。転がり抵抗の改善は、任意のシリカ及びシランを含まないことを除いて同じ成分を含有する対照ゴム組成物と比較した場合のものである。本明細書に開示される第2の実施形態によるタイヤゴム組成物はまた、(任意のシリカ及びシランを含まないことを除いて同じ成分を含有する対照ゴム組成物と比較した場合に)転がり抵抗の改善を示すことが理解されるべきである。
【0074】
本明細書に開示される第1及び第2の実施形態によれば、バガス含有グアユールゴムと組み合わせて少なくとも1つのシランを使用することによって達成される転がり抵抗の改善量は様々であり得る。転がり抵抗の改善は、実施例で提供される方法を含むがこれに限定されない様々な方法によって測定することができる。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、転がり抵抗の改善は、任意のシリカ及びシランを含まないことを除いて同じ成分を含有する対照ゴム組成物と比較した場合に、少なくとも3%(例えば、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、又はそれ以上)又は3~20%(例えば、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、又は20%)である。第1及び第2の実施形態の好ましい実施形態では、転がり抵抗の改善は、任意のシリカ及びシランを含まないことを除いて同じ成分を含有する対照ゴム組成物と比較した場合に、少なくとも5%(例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、又はそれ以上)又は5~20%(例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、又は20%)、より好ましくは少なくとも10%(例えば、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、又はそれ以上)又は10~20%(例えば、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、又は20%)、又は更には少なくとも15%(例えば、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、又はそれ以上)又は15~20%(例えば、15%、16%、17%、18%、19%、又は20%)である。
【0075】
第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、転がり抵抗の改善は、M300の改善と組み合わされる。そのような実施形態によれば、M300の改善量は様々であり得る。第1及び第2の実施形態の特定の実施形態では、M300の改善は、任意のシリカ及びシランを含まないことを除いて同じ成分を含有する対照ゴム組成物と比較した場合に、少なくとも3%(例えば、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、又はそれ以上)又は3~10%(例えば、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%)である。第1及び第2の実施形態の好ましい実施形態では、M300の改善は、任意のシリカ及びシランを含まないことを除いて同じ成分を含有する対照ゴム組成物と比較した場合に、少なくとも5%(例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、又はそれ以上)又は5~10%(例えば、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%)である。
【0076】
タイヤ
第1の実施形態によるゴム組成物(又は第1の実施形態の方法に従って作製されたゴム組成物)を使用して、ゴム組成物で構成される少なくとも1つの構成要素を有するタイヤを調製することができ、当該構成要素は、タイヤトレッド、タイヤサイドウォール、タイヤベルトスキム、又はタイヤカーカスから選択される。好ましい実施形態では、構成要素は、タイヤトレッドである。第1の実施形態によるゴム組成物(又は第1の実施形態の方法に従って作製されたゴム組成物)から作製されたトレッドを有する大型車用又は商用のトラック又はバスのタイヤも本明細書に開示される。
【実施例】
【0077】
以下の実施例は、本開示の特定の及び例示的な実施形態、並びに/又は実施形態の特徴を例示するものである。実施例は、単に例示の目的で提供されており、本開示を限定するものとして解釈すべきでない。本開示の実施形態の趣旨及び範囲を逸脱することなく、これらの具体的な実施例に対する多くの変更が可能である。ゴム組成物は、異なる量のグアユールゴム(上述したように、(異なる量のバガスを含有する))を使用して、上述したように、異なる量若しくは種類のシランを使用して、又は、上述したように、異なる量若しくは種類の充填剤を使用して調製することができることを具体的に理解されたい。また、バガス成分及びシランを含むグアユールゴムは、実施例で用いられる相対量、組成、又はこれらの両方が異なる(すなわち、前段落で開示したように完全に異なる)成分(例えば、追加のゴム、充填剤、硬化パッケージ成分)と共にゴム組成物中で利用することができることも理解されるべきである。
【0078】
実施例1~6:2種類のグアユールゴム(異なる量のバガスを含有する)のうちの1つを使用して、ゴム組成物を調製した。以下の表1に示すように、いくつかのゴム組成物は、シリカを含有するがシランは含有しておらず(実施例1及び4)、他のゴム組成物は、シリカ及びシランの両方を含有しており(実施例3及び5)、他のゴム組成物は、シランを含有するがシリカは含有していなかった(実施例2及び6)。実施例2及び6は、本発明の実施例とみなすことができ、他の実施例は比較の目的で提示する。使用したゴム組成物全体はトレッドゴム組成物であり、ゴム、カーボンブラック充填剤、シリカ充填剤、シラン、及び樹脂の相対量を表1に示し(量はphr又はゴム100部当たりの量で提供する)、他の成分は実施例1~6の全てにおいて同じままであった。特に、グアユールゴム-2の量は、110部又はphr(100部のゴム及び10部のバガスの存在を示す)として記載される。
【表1】
【0079】
各実施例の成分を、以下の表2に示す手順を用いてブラベンダーミキサー内で混合した。得られたゴム組成物を、145℃で15分間硬化させた。
【0080】
実施例1~6のゴム組成物の各々について、表3に列挙する特性を以下のように求めた。tanδ値は、TA Instruments製のAdvanced Rheometric Expansion System(ARES)で行った歪み掃引試験によって測定した。試験片は、14.4mmの長さ及び7.8mmの直径を有する円筒形状を有していた。10rad/秒の振動数を用いて試験を実施した。歪みを0.1%から16%まで掃引し、温度を22℃で開始して60℃まで上昇させ、60℃で保持した。各ゴム組成物について、60℃及び10%歪みでの測定値を表3に列挙する。ゴム組成物の60℃における指標tanδは、タイヤトレッドに組み込まれる場合の、その圧延抵抗の指標である。tanδ値は、指数(所与の実施例の値を比較の対照ゴム組成物の値と比較することによって計算される)として提示され、100を超える数を改善とみなす。60℃においては、低いtanδ値が改善とみなされるため、指数は(対照/値)x100として計算された。実施例1を実施例2及び3の対照として使用し、実施例4を実施例5及び6の対照として使用する。
【0081】
サンプルの機械的引張特性は、これには限定されないが、ASTM D-412に記載される標準的手順に従い、幅の断面寸法4mm、中心部厚さ1.9mmのダンベル型サンプルを用いて測定した。標本を一定速度でひずませ、得られる力を、伸び(ひずみ)に応じて記録した。サンプルを150℃で40分間硬化させ、次いで、25℃で引張特性を分析した。略語M300は、300%の伸びで測定された引張応力について使用される。M300値は、指数(所与の実施例の値を比較の対照ゴム組成物の値と比較することによって計算される)として提示され、100を超える数を改善とみなす。より高いM300値が改善とみなされるので、(値/対照)×100として指数を計算した。実施例1を実施例2及び3の対照として使用し、実施例4を実施例5及び6の対照として使用する。
【表2】
【表3】
【0082】
表3のデータから分かるように、実施例1~3のうち、本発明の実施例2(シランを含有するがシリカは含有しない)は、60℃でのtanδが最良であり、このことは、ゴム組成物がタイヤトレッドに利用された場合に最も低い(最良の)転がり抵抗を示すことを示す。実施例4~6のうち、本発明の実施例6(シランを含有するがシリカは含有しない)は、60℃でのtanδが最良であり、このことは、ゴム組成物がタイヤトレッドに利用された場合に最も低い(最良の)転がり抵抗を示すことを示す。
【0083】
実施例7~10:10phrの高シスポリブタジエン(96%のシス1,4-結合含量及び-108℃のTgを有する)と組み合わせて90phrの第3の種類のグアユールゴム(グアユールゴム-3)を使用して、ゴム組成物を調製した。成分を以下の表4に示す。実施例8及び9(シランを含有するがシリカは含有しない)は、本発明の実施例とみなすことができ、他の実施例は比較の目的で提示される。使用したゴム組成物全体は、トレッドゴム組成物(実施例1~6のベーストレッドゴム組成物とは若干異なるが)であり、ゴム、カーボンブラック充填剤、シリカ充填剤、シラン、及び樹脂の相対量を表4に示し(量はphr又はゴム100部当たりの量で提供する)、他の(列挙されていない)成分は実施例7~10の全てにおいて同じままであった。
【表4】
【0084】
実施例7~10の各々の成分を、上記の表2に示す手順を用いてブラベンダーミキサー内で混合した。得られたゴム組成物を、160℃で12分間硬化させた。
【0085】
実施例7~10のゴム組成物の各々について、表5に列挙した特性を、実施例1~6について上述した手順を用いて求めた。実施例7を実施例8~10の各々の対照とみなし、指数値を上記のように計算する。
【表5】
【0086】
表5のデータから分かるように、実施例7~10のうち、60℃でのtanδが最良なものは本発明の実施例8であり、このことは、このゴム組成物がタイヤトレッドに利用された場合に最も低い(最良の)転がり抵抗を示すことを示す。本発明の実施例9の60℃でのtanδは、比較例7よりもわずかに悪いだけであり、このことは、2つにおいて転がり抵抗が本質的に同じであることを示す。とりわけ、本発明の実施例9は、比較例7と比較した場合にかなり高い(すなわち、改善された)M300を有し、このことは、本発明の実施例9が全体的に比較例7よりも良好な特性を有することを示す。
【0087】
実施例11~13:10phrの高シスポリブタジエンと組み合わせて90phrのグアユールゴム-1を使用して、ゴム組成物を調製した。成分を以下の表6に示す。使用したシランは実施例1~10におけるものと同じである。実施例11及び12(シランを含有するがシリカは含有しない)は、本発明の実施例とみなすことができ、他の実施例は比較の目的で提示される。使用したゴム組成物全体は、トレッドゴム組成物(実施例7~10からの同じベーストレッドゴム組成物)であり、ゴム、カーボンブラック充填剤、シリカ充填剤、シラン、及び樹脂の相対量を表6に示し(量はphr又はゴム100部当たりの量で提供する)、他の(列挙されていない)成分は実施例11~13の全てにおいて同じままであった。
【表6】
【0088】
実施例11~13の各々の成分を、上記の表2に示したものと同じ手順を用いてブラベンダーミキサー内で混合した。得られたゴム組成物を、160℃で12分間硬化させた。
【0089】
実施例11~13のゴム組成物の各々について、表7に列挙した特性を、実施例1~6について上述した手順を用いて求めた。実施例13を実施例11及び12の対照とみなし、指数値を上記のように計算する。
【表7】
【0090】
表7のデータから分かるように、実施例11~13のうち、本発明の実施例(実施例11及び12)はいずれも、比較例13よりも良好な60℃でのtanδを有し、このことは、これらのゴム組成物がタイヤトレッドに利用された場合により低い(より良好な)転がり抵抗を示すことを示す。また、本発明の実施例はいずれも、比較例13と比較した場合により良好な(より高い)M300を有する。
【0091】
実施例14~18:グアユールゴムの代わりに天然ゴムを使用して、ゴム組成物を調製した。天然ゴム(ヘベアゴムノキの木から採取)は、バガスを全く含有しない。成分を以下の表8に示す。使用したシランは実施例1~13におけるものと同じである。これらの実施例はいずれも本発明であるとはみなされない。使用したゴム組成物全体は、トレッドゴム組成物(実施例7~13と同じベーストレッドゴム組成物)であり、ゴム、カーボンブラック充填剤、シリカ充填剤、シラン、及び樹脂の相対量を表8に示し(量はphr又はゴム100部当たりの量で提供する)、他の(列挙されていない)成分は実施例14~18の全てにおいて同じままであった。実施例15及び18で使用した樹脂は、グアユール樹脂(極性画分)であった。
【表8】
【0092】
実施例の各々の成分を、上記の表2に示したものと同じ手順を用いてブラベンダーミキサー内で混合した。得られたゴム組成物を、160℃で12分間硬化させた。
【0093】
実施例14~18のゴム組成物の各々について、表9に列挙した特性を、実施例1~6について上述した手順を用いて求めた。実施例14を実施例15~18の各々の対照とみなし、指数値を上記のように計算する。
【表9】
【0094】
表9のデータから分かるように、実施例14~18のうち、60℃でtanδが最良の(最低の)ゴム組成物は、シリカ、シラン、及び樹脂を含有しない実施例14である。換言すれば、シリカ及び樹脂の非存在下でシランを含有する実施例16及び17のゴム組成物は、実施例14よりも良好な60℃でのtanδを示さない。天然ゴムを(バガス含有グアユールゴムの代わりに)使用したこのデータは、シリカの非存在下でシランを使用する効果(すなわち、60℃でのtanδの改善)が存在しないことを示し、このことは、(シリカの非存在下における)グアユールゴム中のバガスとシランとの間で反応が起こるという結論を裏付ける。同様に、シリカの非存在下でシランを含有するだけでなく、2phrのグアユール樹脂も含む実施例15及び18のゴム組成物も、実施例14よりも良好な60℃でのtanδを示さず、このことは、転がり抵抗の改善がグアユール樹脂-シラン相互作用ではなくバガス-シラン相互作用によるものであるという結論を裏付ける。
【0095】
本出願は、本明細書において開示されている組成物及び方法の実施形態が開示される数値範囲全体で実行できるため、明確な範囲限界が明細書内に言葉どおりに言及されていなくても、開示される数値範囲内の任意の範囲を支持する、いくつかの数値範囲限界を開示している。実質的に任意の複数又は単数の用語を本明細書で用いることに関して、当業者は、状況又は用途に適切となるように、複数から単数へ、又は単数から複数へ置き換えることができる。様々な単数又は複数の置き換えは、簡潔にするため、本明細書では明示的に記述されている場合がある。
【0096】
全般的に、当業者は、本明細書及び特に添付の特許請求の範囲で使用された用語は、概して「オープン」な用語を意図していることを理解するであろう。例えば、用語「含む」は、「含むがこれらに限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有する」は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「挙げられる」は、「挙げられるがこれらに限定されない」と解釈されるべきである。更に、当業者は、前置きされた請求項の記載において特定の数が意図される場合、そのような意図は当該請求項中に明示的に記載されるものとし、そのような記載がない場合は、そのような意図も存在しないことを理解するだろう。例えば、理解を助けるものとして、以下の添付の特許請求の範囲には、請求項の記載を前置きするために、前置き語句「少なくとも1つ」及び「1つ以上」の使用を含む場合がある。しかし、そのような語句の使用は、同じ請求項が、前置き語句「1つ以上」又は「少なくとも1つ」、及び、「a」又は「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の記載の前置きが、そのように前置きされた請求項の記載を含む任意の特定の請求項を、そのような記載を1つのみ含む発明に限定することを意味するものとして解釈されてはならず(例えば、「a」又は「an」は、典型的には、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)、請求項の記載の前置きに使用される定冠詞の使用についても同じことが言える。加えて、前置きされた請求項の記載において特定の数が明示的に記載される場合でも、当業者は、このような記載が、少なくとも記載される数を意味するものと典型的には解釈されるべきであることを理解している(例えば、他の修飾語句を持たない明らかな記載である「2つの記載」は、典型的には、少なくとも2つの記載、又は2つ以上の記載を意味する)。更に、「A、B、及びCなどのうち少なくとも1つ」に類似する慣例表現を用いる場合、全般的に、このような構成は、当業者がその慣例表現を理解し得るという意味において意図される(例えば、「A、B、及びCのうち少なくとも1つを有するシステム」として、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを共に、A及びCを共に、B及びCを共に、並びに/又は、A、B、及びCを共になどを有するシステムが挙げられ得るが、これらに限定されない)。更に、当業者は、事実上、2つ以上の代替用語を示す任意の離接的単語又は語句は、明細書、請求項、又は図面を問わず、これらの用語のうちの1つ、これらの用語のうちのいずれか、又はこれらの用語の両方を含む可能性を企図すると理解されるべきであることを、理解するであろう。例えば、語句「A又はB」は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解されるであろう。特許、特許出願、及び非特許文献を含むがこれらに限定されない全ての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。組成物及び方法の様々な態様並びに実施形態を本明細書に開示してきたが、他の態様及び実施形態が、当業者には明らかであろう。本明細書で開示されている様々な態様及び実施形態は、例示目的であり、特許請求の範囲により示されている真の範囲及び趣旨を限定することを意図していない。