IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立国際電気の特許一覧

<>
  • 特許-通信装置及び通信システム 図1
  • 特許-通信装置及び通信システム 図2
  • 特許-通信装置及び通信システム 図3
  • 特許-通信装置及び通信システム 図4
  • 特許-通信装置及び通信システム 図5
  • 特許-通信装置及び通信システム 図6
  • 特許-通信装置及び通信システム 図7
  • 特許-通信装置及び通信システム 図8
  • 特許-通信装置及び通信システム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】通信装置及び通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 84/18 20090101AFI20241008BHJP
   H04W 24/08 20090101ALI20241008BHJP
   H04W 28/06 20090101ALI20241008BHJP
   H04W 28/18 20090101ALI20241008BHJP
   H04W 72/0453 20230101ALI20241008BHJP
【FI】
H04W84/18
H04W24/08
H04W28/06 110
H04W28/18 110
H04W72/0453
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023542049
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(86)【国際出願番号】 JP2021029936
(87)【国際公開番号】W WO2023021560
(87)【国際公開日】2023-02-23
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】庄司 智也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大希
(72)【発明者】
【氏名】下尾 雄也
(72)【発明者】
【氏名】河野 日向子
【審査官】永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-205555(JP,A)
【文献】特許第5848956(JP,B2)
【文献】特開2017-11568(JP,A)
【文献】特開2008-258702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線局が自律分散アクセスする無線ネットワークで用いられる通信装置であって、
受信フレームから前記無線局の識別子を取得し、当該受信フレームの受信のタイミングで通信品質の情報を取得し、更に、前記無線局毎のフレームの送受信数と通信方式の情報を取得し、当該無線局毎の品質情報、フレームの送受信数、及び通信方式に基づいて、該当する無線局へのアグリゲーション量とアグリゲーション方式を決定して、通信のフレームを連結するアグリゲーション方式を変更する通信装置。
【請求項2】
送受信する信号の有効サブキャリア数を判断し、前記有効サブキャリア数に応じて連結するフレーム数を変化させてアグリゲーション量を変更する請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
送受信する信号の等化誤差から通信品質を判断し、当該通信品質に応じて最適な変調方式を選択し、当該選択された変調方式に応じて連結するフレーム数を変化させてアグリゲーション量を変更する請求項1記載の通信装置。
【請求項4】
無線局から受信した信号の信号対雑音比から通信品質を判断し、当該通信品質に応じてフレームを連結するアグリゲーション方式を変更する請求項1記載の通信装置。
【請求項5】
通信範囲に存在する無線局の優先度情報を判別し、当該優先度情報に応じてアグリゲーション方式を変更する請求項1記載の通信装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか記載の通信装置を備える通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ネットワークで用いられる通信装置に係り、特に、無線ネットワークの状態における適正なフレーム連結(フレームアグリゲーション)を実現し、無線回線の不正な占有を回避できる通信装置及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
移動体ネットワークでは、移動通信局間で自律的に端末を検知し、自律的に経路の最適化を実施、その場限りの無線ネットワーク(アドホックネットワーク)を構築することで、遅延量を少なくしながらも、回線の負荷を抑止した通信を実現している。
【0003】
その一方で、無線からのネットワーク接続を容易にするという特性から、ネットワークに関するサイバー攻撃を受けやすい環境にある。
無線ネットワークでは、1つの周波数資源を複数の移動通信局間で共有する方式が多い。具体的な共有方法として多元接続アクセスである時分割多元接続(TDMA:Time Division Multiple Access)やキャリアセンスによる競合回避方式である搬送波感知多重アクセス(CSMA/CA:Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)が用いられる。
【0004】
しかしながら、これらの方法は悪意のある通信が発生した場合でも通信に用いられる制御情報の内容に誤りがなければ、正常とする場合が多く、このため、悪意のある通信の検出、遮断が容易ではないものである。
【0005】
[従来の通信装置:図8
従来の無線ネットワークで用いられる通信装置について図8を参照しながら説明する。図8は、従来の通信装置の構成概略図である。尚、IP(Internet Protocol)パケットの流れを実線の矢印で、制御・情報取得の流れを破線の矢印で示している。
従来の通信装置10は、図8に示すように、ネットワーク部110と、無線アクセス制御部120と、無線信号処理部130と、高周波部140によって構成される。
また、通信装置10には、通信端末2と、制御端末30と、アンテナ5が接続される。
【0006】
ネットワーク部110は、主にパソコン等のユーザ端末(通信端末2)とのインタフェースとなり、無線アクセス制御部120とのユーザ端末から入力されたネットワーク情報、いわゆるIPパケットのやりとりを行う。
【0007】
無線アクセス制御部120は、ネットワーク部110から受けたIPパケットを元に、周波数資源、いわゆる無線回線が使用中ではないこと、もしくは自局の送信可能時間かどうかを判定する。
無判定の結果、送信可能と判断した場合は、無線アクセス制御部120は、IPパケットに制御情報を付与したフレームという単位に生成後、フレームを複数連結した上で、情報への暗号化等を実施し、無線信号処理部130へ転送する。
【0008】
無線信号処理部130は、通信の誤りを訂正するための符号化やインタリーブを行った後、搬送波にするための変調処理を行って、同期信号・制御信号等を付与し、高周波部140へ転送する。
高周波部140は、受信した搬送波を周波数の高い高周波に変換し、規定の電力に増幅の後、アンテナ5から送信する。
【0009】
対向となる受信側の通信装置では、高周波部140は、アンテナ5から高周波を受信し、搬送波に変換後、無線信号処理部130に出力する。
無線信号処理部130は、復調を行い搬送波から同期信号、制御信号を検出し、デジタル情報に復元する。復元後、誤った情報の訂正処理を行い、無線アクセス制御部120へ送信する。
【0010】
無線アクセス制御部120は、必要に応じて暗号化されたデジタル情報を復号し、受信したデジタル情報がフレームかどうかを判別、フレームであれば連結されているかどうかを判別の上、連結されていれば、フレームを分解する。
その後、無線アクセス制御部120は、分解したフレーム内に格納された制御情報に従って、応答処理や送信可能時間の調整等を実施する。
【0011】
また、無線アクセス制御部120は、フレームにIPパケットが格納されている場合は、ネットワーク部110へ出力する。
ネットワーク部で110は、受信したIPパケットから接続するユーザ端末向けのパケットか否かを判断し、ユーザ端末に対してパケットを転送する。
また、制御端末30は、通信装置10の設定や通信状況を表示して監視する。
【0012】
そして、従来の無線システムにおいて、フレームアグリゲーションでのデータ転送は、自局の輻輳率、基地局及びアクセスポイント等の管理局で規定された時間などの条件によりアグリゲーション量(連結させるフレーム数)を決定して行われるようになっている。
【0013】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特許第5848956号公報「通信装置」(特許文献1)がある。
特許文献1には、自局の使用サブキャリア数や通信方式のみでデータ連結サイズを決めている通信装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特許第5848956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記従来の無線システムでは、図9に示すような、無線ネットワークが一時的なネットワーク、所謂アドホックネットワークである場合には、基地局やアクセスポイントが用意できず、自局の輻輳率のみでアグリゲーション量を決定し、回線を占有する恐れがあり、悪意のある通信の検出及び遮断を行うことができないという問題点があった。
【0016】
尚、特許文献1には、無線ネットワークの状態において適正なフレームアグリゲーションを実現し、悪意のある通信の検出及び遮断を行うための構成が記載あれていない。
【0017】
本発明は上記実状に鑑みて為されたものであり、無線ネットワークの状態において適正なフレームアグリゲーションを実現し、不要な回線の占有を回避して、悪意のある通信の検出及び遮断を行うことができる通信装置及び通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、複数の無線局が自律分散アクセスする無線ネットワークで用いられる通信装置であって、受信フレームから無線局の識別子を取得し、当該受信フレームの受信のタイミングで通信品質の情報を取得し、更に、無線局毎のフレームの送受信数と通信方式の情報を取得し、当該無線局毎の品質情報、フレームの送受信数、及び通信方式に基づいて、該当する無線局へのアグリゲーション量とアグリゲーション方式を決定して、通信のフレームを連結するアグリゲーション方式を変更するものである。
【0019】
本発明は、上記通信装置において、送受信する信号の有効サブキャリア数を判断し、有効サブキャリア数に応じて連結するフレーム数を変化させてアグリゲーション量を変更するものである。
【0020】
本発明は、上記通信装置において、送受信する信号の等化誤差から通信品質を判断し、当該通信品質に応じて最適な変調方式を選択し、当該選択された変調方式に応じて連結するフレーム数を変化させてアグリゲーション量を変更するものである。
【0021】
本発明は、上記通信装置において、無線局から受信した信号の信号対雑音比から通信品質を判断し、当該通信品質に応じてフレームを連結するアグリゲーション方式を変更するものである。
【0022】
本発明は、上記通信装置において、通信範囲に存在する無線局の優先度情報を判別し、当該優先度情報に応じてアグリゲーション方式を変更するものである。
【0023】
本発明は、上記通信装置を備える通信システムである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、複数の無線局が自律分散アクセスする無線ネットワークで用いられる通信装置であって、受信フレームから無線局の識別子を取得し、当該受信フレームの受信のタイミングで通信品質の情報を取得し、更に、無線局毎のフレームの送受信数と通信方式の情報を取得し、当該無線局毎の品質情報、フレームの送受信数、及び通信方式に基づいて、該当する無線局へのアグリゲーション量とアグリゲーション方式を決定して、通信のフレームを連結するアグリゲーション方式を変更する通信装置としているので、無線ネットワークの状態において適正なフレームアグリゲーションを実現し、不要な回線の占有を回避して、悪意のある通信の検出及び遮断を行うことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本通信装置の構成概略図である。
図2】送受信フレーム及び上位プロトコルデータの構成概略図である。
図3】通信品質情報の例を示す図である。
図4】通信方式情報の例を示す図である。
図5】アグリゲーション量の決定処理(1)を示すフロー図である。
図6】アグリゲーション量の決定処理(2)を示すフロー図である。
図7】アグリゲーション方式の決定処理を示すフロー図である。
図8】従来の通信装置の構成概略図である。
図9】アドホックネットワークの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る通信装置(本通信装置)は、複数の無線局が自律分散アクセスする無線ネットワークで用いられる通信装置であって、無線局毎に取得される通信品質の情報と、当該無線ネットワークの通信方式の情報に基づいて、通信のフレームを連結するアグリゲーション方式を変更するものとしているので、無線ネットワークの状態において適正なフレームアグリゲーションを実現し、不要な回線の占有を回避して、悪意のある通信の検出及び遮断を行うことができるものである。
尚、本通信装置が無線ネットワークで用いられる通信システムを「本通信システム」と呼ぶ。
【0027】
[本通信システムでの処理の概要]
本通信システムにおける処理の概要を説明する。
本通信システムにおける通信装置では、受信フレームから通信局(無線局)の識別子を取得し、当該受信フレームの受信のタイミングで通信品質の情報(通信品質情報)を取得し、更に、通信局毎のフレームの送受信数と通信方式の情報を取得し、当該通信局毎の品質情報、フレームの送受信数、通信方式に基づいて、該当する通信局へのアグリゲーション量、アグリゲーション方式を決定するものである。
【0028】
[本通信装置:図1
本通信装置について図1を参照しながら説明する。図1は、本通信装置の構成概略図である。尚、IPパケットの流れを実線の矢印で、制御・情報取得の流れを破線の矢印で示している。
本通信装置1は、図1に示すように、ネットワーク部11と、無線アクセス制御部12と、無線信号処理部13と、高周波部14によって構成される。
また、通信装置1には、通信端末2と、制御端末3と、アンテナ5が接続される。
【0029】
[ネットワーク部11]
ネットワーク部11は、主に、IP電話端末やPCなどの通信端末2や制御端末3とのインタフェースとなり、無線アクセス制御部12とのIPパケットのやりとりや通信方式の設定を行う。
【0030】
また、ネットワーク部で11は、無線アクセス制御部12から入力されたIPパケットについて、受信したIPパケットから接続するユーザ端末(通信端末2)向けのパケットか否かを判断し、ユーザ端末に対してパケットを転送する。
【0031】
更に、本通信装置のネットワーク部11は、後述するように、通信方式や通信局の品質に応じてフレームアグリゲーションのアグリゲーション量とアグリゲーション方式を求め、無線アクセス制御部12に通知する。
ネットワーク部11の具体的な内部構成については、後述する。
【0032】
[無線アクセス制御部12]
無線アクセス制御部12は、無線回線が使用中かどうかを監視して、使用可能(回線が未使用)であれば、ネットワーク部11から入力されたIPパケットを、無線信号処理部13に出力する。また、無線通信においてデータが相手に確実に届いたかを判定し、必要に応じて、再送制御を行う。
【0033】
また、無線アクセス制御部12は、ネットワーク部11から入力されたIPパケットを元に、周波数資源、いわゆる無線回線が使用中ではないこと、もしくは自局の送信可能時間かどうかを判定し、無判定の結果、送信可能と判断した場合は、IPパケットに制御情報を付与したフレームを生成する。
【0034】
更に、無線アクセス制御部12は、生成したフレームをネットワーク部11から通知されたアグリゲーション量及びアグリゲーション方式に従って、複数連結するアグリゲーションを行い、情報への暗号化等を実施し、無線信号処理部13へ出力する。
【0035】
無線アクセス制御部12は、無線信号処理部13から入力されたデジタル情報について、必要に応じて暗号化されたデジタル情報を復号し、受信したデジタル情報がフレームかどうかを判別、フレームであれば連結されているかどうかを判別の上、連結されていれば、フレームを分解する。
【0036】
そして、無線アクセス制御部12は、分解したフレーム内に格納された制御情報に従って、応答処理や送信可能時間の調整等を実施する。
また、無線アクセス制御部12は、フレームにIPパケットが格納されている場合は、ネットワーク部11へ出力する。
【0037】
そして、無線アクセス制御部12は、送受信カウンタ121と、信号品質取得部122を備えている。
送受信カウンタ121は、通信局毎のフレームの送受信数をカウントする。
信号品質取得部122は、後述する通信品質情報を取得する。
【0038】
[無線信号処理部13]
無線信号処理部13は、通信の誤りを訂正するための符号化やインタリーブを行った後、搬送波にするための変調処理を行って、同期信号・制御信号等を付与し、高周波部14に転送する。
無線信号処理部13は、復調を行い、搬送波から同期信号、制御信号を検出し、デジタル情報に復元する。復元後、誤った情報の訂正処理を行い、無線アクセス制御部12へ出力する。
【0039】
[高周波部14]
高周波部14は、受信した搬送波を周波数の高い高周波に変換し、規定の電力に増幅の後、アンテナ5から送信する。
また、高周波部14は、アンテナ5から高周波を受信し、搬送波に変換後、無線信号処理部13に出力する。
【0040】
[制御端末3]
制御端末3は、通信装置10の設定や通信状況を表示して監視する。
具体的には、制御端末3は、設定情報や通信状況を表示する表示機能を備え、更に、優先度情報を設定する優先度情報設定機能を備えている。
ここで、設定される優先度情報は、フレームアグリゲーション方式を変更する際に利用される。
【0041】
[ネットワーク部11の詳細]
ネットワーク部11は、更に、QoS機能部111と、フレーム送受信部112と、通信方式機能部113と、通信局品質管理部114とを備えている。
【0042】
[QoS機能部111]
QoS機能部111は、通信品質を保証するための処理を行うものであり、入力スケジューラ、パケットキュー、出力スケジューラを備えると共に、本装置の特徴として、アグリゲーション管理部111aを備えている。
また、QoS機能部111は、通信端末2からのIPパケットを入力し、フレーム送受信部112に出力し、フレーム送受信部112からのIPパケットを通信端末2に出力する。
【0043】
[アグリゲーション管理部111a]
アグリゲーション管理部111aは、本通信装置1におけるアグリゲーションを管理するものであり、通信局品質管理部114から通信局毎の通信品質情報とフレーム送受信数を入力し、通信方式機能部113から通信方式情報を取得し、制御端末3から優先度情報を取得して、当該通信局へのアグリゲーション量とアグリゲーション方式を決定し、フレーム送受信部112を介して無線アクセス制御部12に出力する。
無線アクセス制御部12では、そのアグリゲーション量とアグリゲーション方式によりフレームアグリゲーションが為される。
アグリゲーション管理部111aの処理の詳細は、後述する。
【0044】
[フレーム送受信部112]
フレーム送受信部112は、QoS機能部111からのIPパケットにフレーム化に必要な制御情報を付加して無線アクセス制御部12に出力する。無線アクセス制御部12では、フレーム送受信部112からの入力に従ってフレームを生成する。
また、フレーム送受信部112は、無線アクセス制御部12からフレームに含まれていたIPパケットと制御情報を入力し、制御情報に従ってIPパケットをQoS機能部111に出力する。
【0045】
また、フレーム送受信部112は、通信局品質管理部114に受信フレームの通信局の識別子を出力し、アグリゲーション管理部111aからの通信局に対応したアグリゲーション量とアグリゲーション方式を入力し、無線アクセス制御部12に出力すると共に通信局品質管理部114にも出力する。
【0046】
[通信方式機能部113]
通信方式機能部113は、制御端末3からの通信方式や回線状態に関する情報に基づいて、通信方式を切り替える制御を行う。
具体的には、通信方式機能部113は、例えば、専用の制御端末3から、無線通信に使用する通信方式(アクセス方式)やデータキャリアなどを指示する通信方式指示情報が入力された場合に、入力された通信方式指示情報に従って無線アクセス制御部12、無線信号処理部13、高周波部14の設定を切り換える。本通信装置の各部には、予め複数の通信方式に対応した設定情報が記憶されているものである。
【0047】
更に、通信方式機能部113は、決定した通信方式に応じて、通信容量(送信容量)を求め、無線アクセス制御部12に通知する。
通信容量は、予め通信方式に対応付けて記憶されていてもよいし、算出してもよい。
【0048】
[通信局品質管理部114]
通信局品質管理部114は、フレーム送受信部112から受信フレームの通信局の識別子を取得し、無線アクセス制御部12内の送受信カウンタ121から通信局毎のフレーム送受信数を取得し、信号品質取得部122から通信局毎の通信品質情報を取得し、データベースとして記憶し管理する。
また、通信局品質管理部114は、アグリゲーション管理部111aからの要求により通信局毎の通信品質情報とフレーム送受信数を出力する。
【0049】
[本通信装置での特徴的な処理:図2~4]
次に、本通信装置1における特徴的な処理について図2~4を参照しながら説明する。図2は、送受信フレーム及び上位プロトコルデータの構成概略図であり、図3は、通信品質情報の例を示す図であり、図4は、通信方式情報の例を示す図である。
尚、図2では、1段目に「WLAN Frame(QoSFrame)」を、2段目に「IP Packet」を、3段目に「TCP Segment」を、4段目に「UDP Segment」を示している。
【0050】
本通信装置1のネットワーク部11のQoS機能部111内のアグリゲーション管理部111aが、アンテナ5で受信したフレームをフレーム送受信部112から入力し、通信局の識別子を取得する。
識別子は、図2の1段目の「WLAN Frame(QoSFrame)」の「Source MAC Address」から取得する。
この識別子は、通信局の起動の際に、一意に設定されるものであり、動的な変更や通信局間の重複はない。
【0051】
そして、ネットワーク部11の通信局品質管理部114が、フレーム受信のタイミングで無線アクセス制御部12内の信号品質取得部122から通信品質情報を取得する。
通信品質情報は、図3に示すような情報がある。図3の例では、Rssi(Received Signal Strength Indicator):受信信号強度、受信サブキャリア数:受信した際の1シンボル単位の有効サブキャリア数、等化誤差:周波数特性を考慮し、等化器にてシンボルを補償した際の合計補償値を示しているが、これ以外の通信品質の情報であってもよい。
【0052】
そして、通信局品質管理部114は、通信局の識別子1つに対して通信品質情報を複数レコード保持できる形でデータベースとして管理する。
また、通信局品質管理部114は、無線アクセス制御部12内の送受信カウンタ121からフレームの送受信数も取得し、通信品質情報に付加する。
つまり、通信局品質管理部114は、通信局毎に通信品質情報とフレームの送受信数を管理している。
【0053】
また、アグリゲーション管理部111aは、制御端末3が送信する図4に示す通信方式情報を、通信方式機能部113を経由して入力する。
通信方式情報は、図4に示すように、アクセス方式、変調方式、送信サブキャリア数、暗号方式などがある。
【0054】
アクセス方式は、無線空間での多重アクセス方式として、CSMA、TDMA、WTRMA(Wireless Token Ring Multiple Access:無線装置間でのトークン授受によるアクセス制御方式)などがある。
変調方式は、1シンボルでの多値変調方式とし、適応変調、BPSK、QSK、16QAMなどがある。
通信サブキャリア数は、1シンボル単位のサブキャリア数として、24サブキャリア、48サブキャリアなどがある。
暗号方式は、AES256+GCM、AES128+CBCなどがある。
【0055】
また、制御端末3は、図2の「IP Packet」内の「Type of Service」を優先度情報としてアグリゲーション管理部111aに送信し、アグリゲーション管理部111aは、その優先度情報も管理する。
【0056】
そして、アグリゲーション管理部111aは、任意のタイミングで、通信局毎の品質情報、フレームの送受信数を通信局品質管理部114から取得し、通信方式機能部113からの通信方式情報、優先度情報を参照して、該当通信局へのアグリゲーション量とアグリゲーション方式を決定する。
【0057】
[アグリゲーション量の決定処理:図5,6]
次に、アグリゲーション量の決定処理について図5,6を参照しながら説明する。図5は、アグリゲーション量の決定処理(1)を示すフロー図であり、図6は、アグリゲーション量の決定処理(2)を示すフロー図である。図5図6は一連の処理であるが、分けて説明する。よって、各図の(A)で連結している。
尚、アグリゲーション量の決定処理は、アグリゲーション管理部111aで為される。
【0058】
[アグリゲーション量の決定処理(1):図5
図5に示すように、第一に通信方式情報から回線の最大伝送サイズを計算する。
例えば、図4にある通信方式で示すと、暗号方式により最大伝送サイズ(MTU)を計算する。これは、アルゴリズムや方式でブロック長等が異なるため、付与する制御情報が増減するためである。
まず、暗号方式に応じたMTUの情報を取得する(S11)。
【0059】
そして、最大アグリゲーション量をAGFmax とし、MTUとフレーム連結最大サイズ(AgNum)から計算する(S12)。
計算式は、AGFmax =MTU*AgNumである。
【0060】
次にアクセス方式を確認する。
TDMAやWTRMA等の場合では、1回の送信機会で送信できるフレームのサイズに制限があるためである。この最大フレームサイズ(ACmax )を取得する(S13)。
この時、ACmax がAGFmax 以上(ACmax ≦AGFmax )であるか否かを判定する(S14)。ACmax がAGFmax 以上であれば(YESの場合)、次の処理に進み、ACmax がAGFmax を下回る場合(NOの場合)、AGFmax をACmax に更新する[AGFmax =ACmax ](S15)。
【0061】
その後、送信サブキャリア数に基づいて計算を行う。
本通信装置1のサブキャリア最大使用数(SCmax )に対して送信サブキャリア量(SCcurrent )から使用率(SCrate)を計算する(S16)。
これはSCmax を用いた除算によって行われる。計算式は、SCrate=SCcurrent /SCmax であり、この値は0<SCrate≦1となる。
【0062】
そして、サブキャリア使用率に基づいて最大アグリゲーション量を更新する(S17)。
具体的には、処理S16で算出したSCrateにAGFmax を乗算した結果を新たなAGFmax に更新する。計算式は、AGFmax =AGFmax *SCrateである。
【0063】
[アグリゲーション量の決定処理(2):図6
以上と同様に今度は受信局側の情報を用いて計算する。
図6に示すように、受信局からの受信サブキャリア量RCcurrentから使用率RCrateを計算する(S21)。計算方法は前述のサブキャリア情報と同様である。
また、サブキャリア使用率に基づいて最大アグリゲーション量(AGFrcm )を計算する(S22)。計算式は、AGFrcm =AGFmax *RCrateである。
【0064】
そして、前述のAGFmax がAGFrcm 以下(AGFmax ≦AGFrcm )であるか否かを判定する(S23)。AGFmax がAGFrcm 以下であれば(YESの場合)、次の処理に進み、AGFmax に対して、AGFrcmが小さい場合(NOの場合)は、AGFmax をAGFrcm の値に更新する[AGFmax =AGFrcm ](S24)。
【0065】
最後に等化誤差を確認する。等化誤差はdB変換し、マッピング電力との間の差分から受信CNR(Carrier-to-Noise Ratio:キャリア対雑音比)current を推定する(S25)。これは、雑音成分が増えると、等化量が大きくなった結果、誤差が増大するためである。
つまり、誤差が大きければ、シンボルのCNRcurrent が悪く(小さく)、誤差が小さければCNRcurrent が大きくなる。
【0066】
このCNRcurrent から導き出される変調方式を選択する。
0<Modmin ≦Moda ≦Modmax とした最適な変調方式Moda を計算し、Modmax を分母としたMrateを算出する(S26)。計算式は、Mrate=Moda /Modmax である。
【0067】
そして、計算したMrateと前述のAGFmax の乗算結果をフレームアグリゲーション量(AGFmax )として[AGFmax =AGFmax *Mrate](S27)、処理を終了する。
【0068】
[アグリゲーション方式の決定処理:図7
次に、アグリゲーション方式の決定処理について図7を参照しながら説明する。図7は、アグリゲーション方式の決定処理を示すフロー図である。
尚、アグリゲーション方式の決定処理もアグリゲーション管理部111aで行われるが、通信方式機能部113に行わせるようにしてもよい。
まず、前述の受信NRcurrent をCNRリスト(CNRList)に登録する(S31)。
【0069】
そして、CNRListの登録数が規定以上の場合(YESの場合)は、加算平均を実現する(S33)。
加算平均(CNRavg(t))は、重みづけ係数λを乗算したCNRcurrent に対し、重みづけ係数を引いた(1-λ)を乗算したCNRagv(t-1)との合算により算出する。
計算式は、CNRavg(t)=λ*CNRcurrent(t)+(1-λ)*CNRagv(t-1)である。
【0070】
また、CNRListが規定数を満たさなかった場合(NOの場合)は、通常の平均を計算する(S34)。
【0071】
次に、上記平均に対し、CNRの標準偏差δを算出する(S35)。
標準偏差δは、CNRListに登録されている各CNRから前述のCNRavgを減算し、二乗して、それらを合計した値の共分散に対する平方根として算出する。
【0072】
そして、算出した標準偏差δに対し、閾値δcnm 及び最大偏差δcmとの関係を判定する(S36)。
具体的には、δがδcnm を超えた場合(δ ≧ δcnm )は、宛先通信局との回線品質が不安定として同期信号をより付与したMPDU(MAC protocol data unit)方式とし(S37)、δcns < δ < δcnmの場合は、A-MPDU(aggregation MAC protocol data unit)方式とし(S38)、δ ≦ δcnsではA-MSDU(aggregation MAC service data unit)方式とする(S39)。
【0073】
以上のようにして、フレームアグリゲーション方式が決定される。
尚、制御端末3から設定される優先度情報に基づいてフレームアグリゲーション方式を変更するようにしてもよい。
【0074】
このように、本通信装置1において通信局毎に適正なフレームアグリゲーションが実現されることになるので、悪意のある通信によって回線が占有されることがなく、悪意のある通信の検出、遮断が容易となるものである。
【0075】
[実施の形態の効果]
本通信装置1によれば、通信局品質管理部114が、受信フレームから通信局の識別子を取得し、当該受信フレームの受診のタイミングで通信品質情報を信号品質取得部122から取得し、更に、通信局毎のフレームの送受信数を送受信カウンタ121から取得し、アグリゲーション管理部111aが、通信局品質管理部114からの当該通信局毎の品質情報、フレームの送受信数、通信方式機能部113からの通信方式の情報に基づいて、該当する通信局へのアグリゲーション量、アグリゲーション方式を決定して、適正なフレームアグリゲーションを実現するようにしているので、不要な回線の占有を回避して、悪意のある通信の検出、遮断を容易にできる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、無線ネットワークの状態において適正なフレームアグリゲーションを実現し、不要な回線の占有を回避して、悪意のある通信の検出及び遮断を行うことができる通信装置及び通信システムに好適である。
【符号の説明】
【0077】
111と、112と、113と、114
1,10…通信装置、 2…通信端末、 3、30…制御端末、 5…アンテナ、 6…、 7…、 8…、 9…、 10…、 11,110…ネットワーク部、 12,120…無線アクセス制御部、 13,130…無線信号処理部、 14,140…高周波部、 111…QoS機能部、 111a…アグリゲーション管理部、 112…フレーム送受信部、 113…通信方式機能部、 114…通信局品質管理部、 121…送受信カウンタ、 122…信号品質取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9