(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】運転支援装置及びコンピュータプログラムを記録した記録媒体
(51)【国際特許分類】
B60W 40/101 20120101AFI20241008BHJP
B60W 40/105 20120101ALI20241008BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20241008BHJP
B60W 30/095 20120101ALI20241008BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241008BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20241008BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20241008BHJP
G01S 17/931 20200101ALN20241008BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20241008BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
B60W40/101
B60W40/105
B60W40/04
B60W30/095
G08G1/16 C
B62D6/00
B60T7/12 C
G01S17/931
B62D101:00
B62D113:00
(21)【出願番号】P 2023549312
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2021035443
(87)【国際公開番号】W WO2023047598
(87)【国際公開日】2023-03-30
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹林 洋亮
(72)【発明者】
【氏名】米田 毅
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-097644(JP,A)
【文献】特開2008-287480(JP,A)
【文献】特開2005-178622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転支援装置において、
一つ又は複数のプロセッサと、前記一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、
前記プロセッサは、
自車両の周囲環境の情報を検出する周囲環境センサの検出データに基づいて、前記自車両の前方に存在する他車両の車速、及び、前記他車両の前部又は後部の左右の中心部の移動量及びスリップ角を演算し、
少なくとも前記他車両の車速、及び、前記他車両の前部又は後部の左右の中心部の移動量及びスリップ角の情報と、前記他車両の後輪の車軸から前記他車両の前部又は後部の左右の中心部までの推定距離の情報と、に基づいて、前記他車両の後輪のスリップ角又はスリップ角速度を推定する、運転支援装置。
【請求項2】
前記他車両の後輪の車軸から前記他車両の前部又は後部の左右の中心部までの推定距離として、二つの異なる第1距離及び第2距離があらかじめ設定され、
前記プロセッサは、
前記第1距離及び前記第2距離をそれぞれ用いて、二つの前記他車両の後輪の前記スリップ角又は二つの前記他車両の後輪の前記スリップ角速度を推定し、
前記二つの前記他車両の後輪の前記スリップ角又は前記二つの前記他車両の後輪の前記スリップ角速度のうちのいずれか大きい方の値を前記後輪のスリップ角又はスリップ角速度とする、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記第1距離及び前記第2距離は、前記他車両の種類に応じてあらかじめ設定され、
前記プロセッサは、
前記周囲環境センサの検出データに基づいて推定される前記他車両の種類に応じた前記第1距離及び前記第2距離を用いる、請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記他車両の前記後輪のスリップ角又はスリップ角速度が所定の閾値を超える場合、前記自車両を減速させる、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記他車両の前記後輪のスリップ角又はスリップ角速度が所定の閾値を超える場合、
前記後輪のスリップ角又はスリップ角速度が所定の閾値を超えたときの前記他車両の走行地点を記録し、
以降、前記自車両が前記走行地点を通過する際に前記自車両の操舵角速度又は加減速度の少なくともいずれか一方に制限をかける、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項6】
車両の運転支援装置において、
自車両の周囲環境の情報を検出する周囲環境センサの検出データに基づいて、前記自車両の前方に存在する他車両の車速、及び、前記他車両の前部又は後部の左右の中心部の移動量及びスリップ角を演算する他車両運動量算出部と、
少なくとも前記他車両の車速、及び、前記他車両の前部又は後部の左右の中心部の移動量及びスリップ角の情報と、前記他車両の後輪の車軸から前記他車両の前部又は後部の左右の中心部までの推定距離の情報と、に基づいて、前記他車両の後輪のスリップ角又はスリップ角速度を推定する車輪スリップ角推定部と、
を備える、運転支援装置。
【請求項7】
車両の運転支援装置に適用可能なコンピュータプログラムを記録した記録媒体において、
一つ又は複数のプロセッサに、
自車両の周囲の環境情報を検出する周囲環境センサの検出データに基づいて、前記自車両の前方に存在する他車両の車速、及び、前記他車両の前部又は後部の左右の中心部の移動量及びスリップ角を演算することと、
少なくとも前記他車両の車速、及び、前記他車両の前部又は後部の左右の中心部の移動量及びスリップ角の情報と、前記他車両の後輪の車軸から前記他車両の前部又は後部の左右の中心部までの推定距離の情報と、に基づいて、前記他車両の後輪のスリップ角又はスリップ角速度を推定することと、
を含む処理を実行させるコンピュータプログラムを記録した、記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の運転を支援する運転支援装置及びコンピュータプログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、主として交通事故の削減及び運転負荷の軽減を目的として、運転支援機能や自動運転機能が搭載された車両の実用化が進められている。例えば車両に設けられた車外撮影カメラやLiDAR(Light Detection and Ranging)等の車両の周囲環境の情報を検出する種々のセンサにより検出された検出データに基づいて車両の周囲に存在する障害物を検知し、自車両と障害物との衝突を回避するよう自車両の運転を支援する装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、自車両と先行車両との距離と、自車両から進行方向に延びる進行方向仮想線から先行車両までの距離とに基づいて、先行車両と自車両との相対スリップ角を演算し、この相対スリップ角に基づいてスピン判断閾値を設定し、相対スリップ角がスピン判断閾値を超えたときに、相対スリップ角が減少するようにヨーモーメントを制御する車両制御システムが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、自車両に搭載された走行軌跡予測装置が、ステレオカメラにより撮像された視差画像を解析して、先行車両の車体面の向きを検出し、先行車両の車体面の向きの変化から先行車両のヨーレートを算出し、先行車両の位置の変化から先行車両の速度を算出して、先行車両のヨーレート及び速度を用いて先行車両の将来の走行軌跡を予測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-000655号公報
【文献】特開2018-097644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された車両制御システムは、自車両のスピンを予測し自車両の挙動の安定性を確保するものであり、先行車両のスピンを予測するものではない。また、特許文献2に開示された技術は、先行車両のヨーレート及び速度を用いて先行車両の将来の走行軌跡を予測するものであるが、先行車両のスピンを予測するものではない。自車両の走行中に、前方に存在する他車両のスピンを事前に予測することができれば、自車両が他車両に衝突するリスクを低減したり、衝突時に発生する被害を軽減したりすることができると考えられる。
【0007】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的とするところは、自車両の前方に存在する他車両のスピンを事前に予測可能な運転支援装置及びコンピュータプログラムを記録した記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示のある観点によれば、車両の運転支援装置であって、一つ又は複数のプロセッサと、一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、プロセッサは、自車両の周囲環境の情報を検出する周囲環境センサの検出データに基づいて、自車両の前方に存在する他車両の車速、及び、他車両の前部又は後部の運動量を演算し、少なくとも他車両の車速、及び、他車両の前部又は後部の運動量の情報と、他車両の後輪から他車両の前部又は後部までの推定距離の情報と、に基づいて、他車両の後輪のスリップ角又はスリップ角速度を推定する運転支援装置が提供される。
【0009】
上記課題を解決するために、本開示のある観点によれば、車両の運転支援装置であって、自車両の周囲環境の情報を検出する周囲環境センサの検出データに基づいて、自車両の前方に存在する他車両の車速、及び、他車両の前部又は後部の運動量を演算する他車両運動量算出部と、少なくとも他車両の車速、及び、他車両の前部又は後部の運動量の情報と、他車両の後輪から他車両の前部又は後部までの推定距離の情報と、に基づいて、他車両の後輪のスリップ角又はスリップ角速度を推定する車輪スリップ角推定部と、を備える運転支援装置が提供される。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本開示の別の観点によれば、車両の運転支援装置に適用可能なコンピュータプログラムを記録した記録媒体であって、一つ又は複数のプロセッサに、自車両の周囲の環境情報を検出する周囲環境センサの検出データに基づいて、自車両の前方に存在する他車両の車速、及び、他車両の前部又は後部の運動量を演算することと、少なくとも他車両の車速、及び、他車両の前部又は後部の運動量の情報と、他車両の後輪から他車両の前部又は後部までの推定距離の情報と、に基づいて、他車両の後輪のスリップ角又はスリップ角速度を推定することとを含む処理を実行させるコンピュータプログラムを記録した記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本開示によれば、自車両の前方に存在する他車両のスピンを事前に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の第1の実施の形態に係る運転支援装置を備えた車両の構成例を示す模式図である。
【
図2】同実施形態に係る運転支援装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】同実施形態に係る運転支援装置の処理部により実行される処理のフローチャートである。
【
図4】同実施形態による後輪スリップ角演算処理のフローチャートである。
【
図5】同実施形態による先行車両の後部の中央のスリップ角の求め方を示す説明図である。
【
図6】同実施形態による先行車両の後輪のスリップ角の求め方を示す説明図である。
【
図7】車輪のスリップ角とコーナリングフォースとの関係を示す説明図である。
【
図8】本開示の第2の実施の形態に係る運転支援装置の構成例を示すブロック図である。
【
図9】同実施形態によるスリップ位置判定記録処理のフローチャートである。
【
図10】同実施形態によるスリップ回避処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
<<1.第1の実施の形態>>
まず、本開示の第1の実施の形態に係る運転支援装置を説明する。第1の実施の形態に係る運転支援装置は、運転支援装置を搭載した自車両の前方に存在する先行車両の後輪又は前輪のスリップ角又はスリップ角速度を推定し、先行車両のスピンを予測して自車両が他車両に衝突するリスクを回避する制御を実行可能に構成される。
【0015】
なお、本明細書において、車輪のスリップとはタイヤが路面上を滑る状態をいい、車両のスピンとは車両の前後方向の向きと車両の移動方向の向きとが一致しない状態をいう。また、後輪のスリップ角とは、車両の移動方向の向きと車両を上下方向に見た場合の後輪の長さ方向の向きとが成す角度をいう。
【0016】
<1-1.車両の全体構成>
はじめに、本実施形態に係る運転支援装置を備えた車両の全体構成の一例を説明する。
図1は、運転支援装置50を備えた車両1の構成例を示す模式図である。
図1に示した車両1は、車両1の駆動トルクを生成する駆動力源9から出力される駆動トルクを左前輪3LF、右前輪3RF、左後輪3LR及び右後輪3RR(以下、特に区別を要しない場合には「車輪3」と総称する)に伝達する四輪駆動車として構成されている。駆動力源9は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であってもよく、駆動用モータであってもよく、内燃機関及び駆動用モータをともに備えていてもよい。
【0017】
なお、車両1は、駆動力源9から出力される駆動トルクを前輪又は後輪のいずれかに伝達する二輪自動車であってもよい。また、車両1は、例えば前輪駆動用モータ及び後輪駆動用モータの二つの駆動用モータを備えた電気自動車であってもよく、それぞれの車輪3に対応する駆動用モータを備えた電気自動車であってもよい。また、車両1が電気自動車やハイブリッド電気自動車の場合、車両1には、駆動用モータへ供給される電力を蓄積する二次電池や、バッテリに充電される電力を発電するモータや燃料電池等の発電機が搭載される。
【0018】
車両1は、車両1の運転制御に用いられる機器として、駆動力源9、電動ステアリング装置15及びブレーキ液圧制御ユニット20を備えている。駆動力源9は、図示しない変速機や前輪差動機構7F及び後輪差動機構7Rを介して前輪駆動軸5F及び後輪駆動軸5Rに伝達される駆動トルクを出力する。駆動力源9や変速機の駆動は、一つ又は複数の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)を含んで構成された車両制御装置41により制御される。
【0019】
前輪駆動軸5Fには電動ステアリング装置15が設けられている。電動ステアリング装置15は図示しない電動モータやギヤ機構を含み、車両制御装置41により制御されることによって左前輪3LF及び右前輪3RFの操舵角を調節する。車両制御装置41は、手動運転中には、ドライバによるステアリングホイール13の操舵角に基づいて電動ステアリング装置15を制御する。また、車両制御装置41は、自動運転中には、自動運転を司る制御装置により設定される目標操舵角に基づいて電動ステアリング装置15を制御する。
【0020】
車両1のブレーキシステムは、油圧式のブレーキシステムとして構成されている。ブレーキ液圧制御ユニット20は、それぞれ前後左右の駆動輪3LF,3RF,3LR,3RRに設けられたブレーキキャリパ17LF,17RF,17LR,17RR(以下、特に区別を要しない場合には「ブレーキキャリパ17」と総称する)に供給する油圧をそれぞれ調節し、制動力を発生させる。ブレーキ液圧制御ユニット20の駆動は、車両制御装置41により制御される。車両1が電気自動車あるいはハイブリッド電気自動車の場合、ブレーキ液圧制御ユニット20は、駆動用モータによる回生ブレーキと併用される。
【0021】
車両制御装置41は、車両1の駆動トルクを出力する駆動力源9、ステアリングホイール13又は操舵輪の操舵角を制御する電動ステアリング装置15、車両1の制動力を制御するブレーキ液圧制御ユニット20の駆動を制御する一つ又は複数の電子制御装置を含む。車両制御装置41は、駆動力源9から出力された出力を変速して車輪3へ伝達する変速機の駆動を制御する機能を備えていてもよい。
【0022】
車両制御装置41は、自動運転を司る制御装置から送信される情報を取得可能に構成され、車両1の自動運転制御を実行可能に構成されている。また、車両制御装置41は、車両1の手動運転時においては、ドライバの運転による操作量の情報を取得し、車両1の駆動トルクを出力する駆動力源9、ステアリングホイール13又は操舵輪の操舵角を制御する電動ステアリング装置15、車両1の制動力を制御するブレーキ液圧制御ユニット20の駆動を制御する。さらに、本実施形態において、車両制御装置41は、車両1の自動運転時及び手動運転時において、運転支援装置50から送信される情報に基づいて衝突リスク回避制御を実行可能に構成されている。
【0023】
また、車両1は、前方撮影カメラ31LF,31RF、LiDAR(Light Detection And Ranging)31S、車両状態センサ35及びGNSS(Global Navigation Satellite System)センサ37を備えている。
【0024】
前方撮影カメラ31LF,31RF及びLiDAR31Sは、車両1の周囲環境の情報を取得するための周囲環境センサを構成する。前方撮影カメラ31LF,31RFは、車両1の前方を撮影し、画像データを生成する。前方撮影カメラ31LF,31RFは、CCD(Charged-Coupled Devices)又はCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)等の撮像素子を備え、生成した画像データを運転支援装置50へ送信する。
【0025】
図1に示した車両1では、前方撮影カメラ31LF,31RFは、左右一対のカメラを含むステレオカメラとして構成されているが、単眼カメラであってもよい。車両1は、前方撮影カメラ31LF,31RF以外に、例えば車両1の後部に設けられて後方を撮影する後方撮影カメラあるいはサイドミラー11L,11Rに設けられて左後方又は右後方を撮影するカメラを備えていてもよい。
【0026】
LiDAR31Sは、光学波を送信するとともに当該光学波の反射波を受信し、光学波を送信してから反射波を受信するまでの時間に基づいて障害物、障害物までの距離及び障害物の位置を検知する。LiDAR31Sは、検出データを運転支援装置50へ送信する。車両1は、周囲環境の情報を取得するための周囲環境センサとして、LiDAR31Sの代わりに、又はLiDAR31Sと併せて、ミリ波レーダ等のレーダセンサ、超音波センサのうちのいずれか一つ又は複数のセンサを備えていてもよい。
【0027】
車両状態センサ35は、車両1の操作状態及び挙動を検出する一つ又は複数のセンサからなる。車両状態センサ35は、例えば舵角センサ、アクセルポジションセンサ、ブレーキストロークセンサ、ブレーキ圧センサ又はエンジン回転数センサのうちの少なくとも一つを含み、ステアリングホイール13あるいは操舵輪の操舵角、アクセル開度、ブレーキ操作量又はエンジン回転数等の車両1の操作状態を検出する。また、車両状態センサ35は、例えば車速センサ、加速度センサ、角速度センサのうちの少なくとも一つを含み、車速、前後加速度、横加速度、ヨーレート等の車両の挙動を検出する。車両状態センサ35は、検出した情報を含むセンサ信号を運転支援装置50へ送信する。
【0028】
GNSSセンサ37は、複数の衛星から送信される衛星信号を受信し、GNSSセンサ37の位置つまり車両1の位置を検出する。GNSSセンサ37は、検出した車両1の位置情報を運転支援装置50へ送信する。
【0029】
<1-2.運転支援装置>
続いて、本実施形態に係る運転支援装置50を具体的に説明する。
以下、車両1の前方を走行する先行車両のスピンを事前に予測し、車両1と先行車両との衝突リスクを低減する処理を実行する例を説明する。以下の説明において、運転支援装置50が搭載された支援対象の車両1を自車両といい、自車両1の周囲の車両を他車両という。
【0030】
(1-2-1.構成例)
図2は、本実施形態に係る運転支援装置50の構成例を示すブロック図である。
運転支援装置50には、専用線又はCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Inter Net)等の通信手段を介して、周囲環境センサ31及び車両状態センサ35が接続されている。また、運転支援装置50には、専用線又はCANやLIN等の通信手段を介して、車両制御装置41が接続されている。なお、運転支援装置50は、自車両1に搭載された電子制御装置に限られるものではなく、スマートホンやウェアラブル機器等の端末装置であってもよい。
【0031】
運転支援装置50は、処理部51、記憶部53及び距離情報データベース55を備えている。処理部51は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを備えて構成される。処理部51の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。記憶部53は、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等のメモリにより構成される。ただし、記憶部53の数や種類は特に限定されない。記憶部53は、処理部51により実行されるコンピュータプログラムや、演算処理に用いられる種々のパラメタ、検出データ、演算結果等の情報を記憶する。
【0032】
運転支援装置50は、一つ又は複数のプロセッサがコンピュータプログラムを実行することで車両1の運転を支援する装置として機能する。当該コンピュータプログラムは、運転支援装置50が実行すべき後述する動作をプロセッサに実行させるためのコンピュータプログラムである。プロセッサにより実行されるコンピュータプログラムは、運転支援装置50に備えられた記憶部(メモリ)53として機能する記録媒体に記録されていてもよく、運転支援装置50に内蔵された記録媒体又は運転支援装置50に外付け可能な任意の記録媒体に記録されていてもよい。
【0033】
コンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、ハードディスク、フロッピーディスク及び磁気テープ等の磁気媒体、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、SSD(Solid State Drive)及びBlu-ray(登録商標)等の光記録媒体、フロプティカルディスク等の磁気光媒体、RAM及びROM等の記憶素子、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等のフラッシュメモリ、その他のプログラムを格納可能な媒体であってよい。
【0034】
(1-2-2.距離情報データベース)
距離情報データベース55は、RAM等のメモリ、あるいは、HDDやCD-ROM、DVD、SSD、USBメモリ、ストレージ装置等の更新可能な記録媒体により構成される。ただし、記録媒体の種類は特に限定されない。距離情報データベース55のうちの一部又は全部は、自車両1に搭載されていてもよく、移動体通信等の無線通信手段を介して運転支援装置50と通信可能なサーバ等の外部機器に格納されていてもよい。
【0035】
距離情報データベース55には、軽自動車、乗用車、SUV、ワゴン車、トラック、バス等の車両の種類ごとに、車両の前後方向に沿う後輪の車軸と車両の後部との間の距離Lrの参照データが記録されている。車両の前後方向に沿う後輪の車軸と車両の後部との間の距離Lrは、車両の種類に応じた平均的な値であってよい。車両の種類は、少なくとも前方撮影カメラ31LF,31RFの撮像データによって判別可能な車両の種類ごとに区分けされてよい。例えばトラックやバスは、最大積載量や座席数によって車長が異なるが、前方撮影カメラ31LF,31RFにより取得されるトラックやバスの後部の撮像データから車長まで判別できない場合には、トラックやバスのサイズまで区分されなくてもよい。
【0036】
本実施形態では、距離情報データベース55には、二つの異なる第1距離Lr1及び第2距離Lr2の参照データが記録されている。第1距離Lr1及び第2距離Lr2は、それぞれの車両の種類ごとに、一般的な車両で想定される最大距離及び最小距離であってよいが、特に限定されるものではない。例えば一般的な車両で想定される距離の平均値に、任意の距離を加減算した二つの値であってもよく、当該距離の平均値に任意の係数を掛けた二つの値であってもよい。
【0037】
(1-2-3.機能構成)
運転支援装置50の処理部51は、周囲環境検出部61、自車両情報取得部63、自車両運動量算出部65、他車両運動量算出部67、車輪スリップ角推定部69及びリスク回避制御部71を備えている。これらの各部は、CPU等のプロセッサによるコンピュータプログラムの実行により実現される機能であってよいが、その一部がアナログ回路により構成されていてもよい。以下、処理部51の各部の機能を簡単に説明した後で、具体的な処理動作を説明する。
【0038】
(周囲環境検出部)
周囲環境検出部61は、周囲環境センサ31から送信される検出データに基づいて自車両1の周囲環境を検出する。具体的に、周囲環境検出部61は、自車両1の周囲に存在する障害物の種類、サイズ(幅、高さ及び奥行き)、位置、速度、自車両1から障害物までの距離、及び自車両1と障害物との相対速度を算出する。検出される障害物は、走行中の他車両や駐車車両、歩行者、自転車、側壁、縁石、建造物、電柱、交通標識、交通信号機、自然物その他の自車両1の周囲に存在するあらゆる物体を含む。本実施形態では、周囲環境検出部61は、少なくとも自車両1の前方を走行する先行車両を検出し、当該先行車両のサイズ、位置、向き、車速、自車両1から先行車両までの距離、及び自車両1と先行車両との相対速度を算出する。周囲環境検出部61は、所定の周期で周囲環境の情報を検出し、記憶部53に記録する。
【0039】
(自車両情報取得部)
自車両情報取得部63は、車両状態センサ35から送信される検出データに基づいて自車両1の操作状態及び挙動の情報を取得する。自車両情報取得部63は、ステアリングホイールあるいは操舵輪の操舵角、アクセル開度、ブレーキ操作量又はエンジン回転数等の自車両1の操作状態、及び、車速、前後加速度、横加速度、ヨーレート等の自車両1の挙動の情報を所定の演算周期ごとに取得する。また、自車両情報取得部63は、GNSSセンサ37から送信される位置情報を取得する。自車両情報取得部63は、取得したこれらの情報を記憶部53に記録する。
【0040】
(自車両運動量算出部)
自車両運動量算出部65は、自車両1の運動量を演算する。本実施形態では、自車両運動量算出部65は、所定の周期で、自車両1の移動量s_e(m)及び前後方向の向きの変化量β_e(rad)を演算により求める。例えば自車両運動量算出部65は、GNSSセンサ37により検出された自車両1の位置の変化に基づいて自車両1の移動量を算出する。また、LiDAR31Sの検出データに基づいてICP(Iterative Closest Point)マッチング等の処理を実行し、同一の検出対象物までの距離及び検出対象物の角度の変化に基づいて自車両1の移動量及び自車両1の前後方向の向きの変化量を算出する。
【0041】
なお、自車両運動量算出部65は、自車両1の操舵角、車速、加速度及びヨーレート等の走行状態の情報に基づいて、自車両1の移動量及び前後方向の向きの変化量を推定してもよい。
【0042】
(他車両運動量算出部)
他車両運動量算出部67は、周囲環境検出部61により検出された先行車両の後部の運動量を演算する。本実施形態では、他車両運動量算出部67は、所定の周期で、先行車両の後部の中心(左右の中心)の移動量s_o(m)及びスリップ角β_o(rad)を演算により求める。他車両運動量算出部67は、周囲環境センサ31から送信される検出データに基づいて、あらかじめ設定された任意の時間tでの先行車両の後部の中心の移動量s_oを算出する。また、他車両運動量算出部67は、ある時刻での先行車両の前後方向の向きD_oと、上記の任意の時間tでの先行車両の後部の中心の移動方向の向きDm_oとが成す角度を、先行車両の後部の中心のスリップ角β_oとして算出する。任意の時間tは、処理部51を構成するプロセッサの演算周期であってもよく、任意に設定されてもよい。
【0043】
(車輪スリップ角推定部)
車輪スリップ角推定部69は、周囲環境検出部61により検出された先行車両の後輪のスリップ角βr_o(rad)を推定する。車両のスピンは、車輪のスリップにより発生するため、車輪のスリップ角に基づいて先行車両のスピンを予測することで、車両自体の挙動から先行車両のスピンを予測する場合に比べて、先行車両のスピンの予測精度を高めることができる。また、前輪は操舵輪であって、車両の前後方向の向きと前輪の向きとが一致していないことが多いために、本実施形態では後輪のスリップ角βr_oを推定する。
【0044】
(リスク回避制御部)
リスク回避制御部71は、車輪スリップ角推定部69により推定された先行車両の後輪のスリップ角βr_oに基づいて先行車両のスピンが発生すると予測される場合に、自車両1と先行車両との衝突リスクを回避する制御を実行する。具体的に、リスク回避制御部71は、先行車両の後輪のスリップ角βr_oに基づいて先行車両のスピンが発生するか否かを予測し、スピンが発生すると予測される場合に、自車両1を減速させて衝突のリスクを低減する。リスク回避制御部71は、自車両1を減速させることに代えて、あるいは自車両1を減速させることと併せて、自車両1の軌道を修正して衝突のリスクを低減してもよいが、先行車両の移動方向が予測できない場合もあることから自車両1を減速させることを優先することが好ましい。
【0045】
<1-3.運転支援装置の動作>
続いて、本実施形態に係る運転支援装置50の動作例を具体的に説明する。
【0046】
図3は、運転支援装置50の処理部51により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
まず、運転支援装置50を含む車載システムが起動されると(ステップS11)、処理部51の自車両情報取得部63は、自車両1の情報を取得する(ステップS13)。具体的に、自車両情報取得部63は、車両状態センサ35から送信される検出データに基づいて自車両1の操作状態及び挙動の情報を取得する。自車両情報取得部63は、少なくともステアリングホイールあるいは操舵輪の操舵角、アクセル開度、ブレーキ操作量又はエンジン回転数等の自車両1の操作状態、及び、車速、前後加速度、横加速度、ヨーレート等の自車両1の挙動の情報を取得する。また、自車両情報取得部63は、GNSSセンサ37から送信される位置情報を取得する。自車両情報取得部63は、取得したこれらの情報を記憶部53に記録する。
【0047】
次いで、処理部51の周囲環境検出部61は、自車両1の周囲環境情報を取得する(ステップS15)。具体的に、周囲環境検出部61は、周囲環境センサ31から送信される検出データに基づいて自車両1の周囲に存在する障害物を検出する。本実施形態では、周囲環境検出部61は、少なくとも自車両1の前方を走行する先行車両を検出する。また、周囲環境検出部61は、検出した先行車両の位置、サイズ、向き、車速、自車両1から先行車両までの距離及び自車両1と先行車両との相対速度を算出する。先行車両のサイズは、少なくとも先行車両の後部の車幅の長さを含む。
【0048】
例えば周囲環境検出部61は、前方撮影カメラ31LF,31RFから送信される画像データを画像処理することにより、パターンマッチング技術等を用いて自車両1の前方の障害物及び当該障害物の種類を検出する。また、周囲環境検出部61は、画像データ中の障害物の位置、画像データ中に障害物が占めるサイズ及び左右の前方撮影カメラ31LF,31RFの視差の情報に基づいて、自車両1から見た障害物の位置、サイズ及び障害物までの距離を算出する。さらに、周囲環境検出部61は、距離の変化を時間微分することにより自車両1と障害物との相対速度を算出するとともに、当該相対速度の情報と自車両1の車速の情報とに基づいて障害物の速度を算出する。
【0049】
また、周囲環境検出部61は、LiDAR31Sから送信される検出データに基づいて障害物を検出してもよい。例えば周囲環境検出部61は、LiDAR31Sから電磁波を送信してから反射波を受信するまでの時間、反射波を受信した方向及び反射波の測定点群の範囲の情報に基づいて、障害物の位置、種類、サイズ、自車両1から障害物までの距離を算出してもよい。また、周囲環境検出部61は、距離の変化を時間微分することにより自車両1と障害物との相対速度及び障害物の速度を算出してもよい。
【0050】
また、周囲環境検出部61は、前方撮影カメラ31LF,31RFの画像データに基づいて他車両の後部が認識される場合、当該他車両を、対向車両ではない先行車両として特定する。そして、周囲環境検出部61は、周囲環境センサ31の検出データに基づいて先行車両の後部の中心の位置及び先行車両の向きを算出する。先行車両の向きは、例えば前方撮影カメラ31LF,31RFあるいはLiDAR31Sの画角に対する、先行車両の後部の傾きに基づいて推定することができる。ただし、先行車両の向きの求め方は、上記の例に限られない。周囲環境検出部61は、取得した周囲環境情報を記憶部53に記録する。
【0051】
次いで、処理部51の他車両運動量算出部67は、周囲環境検出部61により取得された障害物として、自車両1の前方を走行する先行車両が存在するか否かを判定する(ステップS17)。先行車両が存在しない場合(S17/No)、処理部51は、車載システムを停止するか否かを判定し(ステップS25)、車載システムを停止しない限り(S25/No)、ステップS13に戻って上述した処理を繰り返す。一方、先行車両が存在する場合(S17/Yes)、処理部51は、検出された先行車両の後輪のスリップ角βr_oを演算により求める(ステップS19)。
【0052】
ここで、
図4~
図6を参照して、先行車両の後輪のスリップ角βr_oを演算により求める後輪スリップ角演算処理を詳しく説明する。
図4は、後輪スリップ角演算処理のフローチャートである。また、
図5は、先行車両の後部の中央のスリップ角β_oの求め方を示す説明図であり、
図6は、先行車両の後輪のスリップ角βr_oの求め方を示す説明図である。
【0053】
まず、処理部51は、記憶部53に記録されている自車両1の情報及び先行車両の情報を取得する(ステップS31)。具体的に、処理部51の自車両運動量算出部65は、今回のルーチンで取得されて記録されたGNSSセンサ37の位置情報及びLiDAR31Sの検出データと、前回のルーチンで取得されて記録されたGNSSセンサ37の位置情報及びLiDAR31Sの検出データとを取得する。また、処理部51の他車両運動量算出部67は、今回のルーチンで取得されて記録された先行車両の位置、自車両1から先行車両までの距離及び先行車両の向きの情報と、前回のルーチンで取得されて記録された先行車両の位置、自車両1から先行車両までの距離及び先行車両の向きの情報とを取得する。
【0054】
次いで、自車両運動量算出部65は、取得した自車両1の情報に基づいて、自車両1の移動量s_e(m)及び前後方向の向きの変化量β_e(rad)を演算により求める(ステップS33)。例えば自車両運動量算出部65は、GNSSセンサ37の位置情報が示す位置の変化に基づいて自車両1の移動量を算出する。GNSSセンサ37の位置情報は、GNSSシステムにおいて設定されているグローバル座標系上の位置座標の情報を含んでいることから、自車両運動量算出部65は、今回のルーチン実行時の位置座標と前回のルーチン実行時(t秒前)の位置座標との距離を算出し、自車両1の移動量s_eとする。また、自車両運動量算出部65は、LiDAR31Sの検出データに基づいてICPマッチング等の処理を実行し、同一の検出対象物までの距離及び検出対象物の角度の変化に基づいて自車両1の前後方向の向きの変化量β_eを算出する。
【0055】
次いで、他車両運動量算出部67は、今回のルーチン及び前回のルーチンで取得した先行車両の走行状態の情報に基づいて先行車両の後部の中心の移動量s_o(m)及びスリップ角β_o(rad)を演算により求める(ステップS35)。
【0056】
具体的に、
図5に示すように、他車両運動量算出部67は、前回のルーチン実行時の自車両1の位置Pe(-t)を原点とし、自車両1の前後方向の向きをy軸、車幅方向の向きをx軸とする座標系上に、今回のルーチン実行時の自車両1の位置Peをプロットする。今回のルーチン実行時の自車両1の位置Peは、自車両1の移動量s_eに基づいて求められる。また、他車両運動量算出部67は、自車両1の前後方向の向きの変化量β_eに基づいて今回のルーチン実行時の自車両1の前後方向の向きを当該座標系上でのベクトルに変換して、自車両1の前後方向の向きD_eを当該ベクトルに合わせる。
【0057】
また、他車両運動量算出部67は、前回のルーチン実行時の先行車両90の後部の中心の位置Po(-t)及び今回のルーチン実行時の先行車両90の後部の中心の位置Poを当該座標系上にプロットする。前回のルーチン実行時の先行車両90の後部の中心の位置Po(-t)及び今回のルーチン実行時の先行車両90の後部の中心の位置Poは、それぞれ自車両1に対する先行車両90の後部の中心の相対位置に基づいて求められる。このとき、今回のルーチン実行時の先行車両90の前後方向の向きを当該座標系上でのベクトルに変換して、先行車両90の前後方向の向きD_oを当該ベクトルに合わせる。
【0058】
他車両運動量算出部67は、前回のルーチン実行時の先行車両90の後部の中心の位置Po(-t)と今回のルーチン実行時の先行車両90の後部の中心の位置Poとの距離を算出し、移動量s_oとする。また、他車両運動量算出部67は、前回のルーチン実行時の先行車両90の後部の中心の位置Po(-t)から今回のルーチン実行時の先行車両90の後部の中心の位置Poへ向かう方向を先行車両90の移動方向の向きDm_oとする。そして、先行車両90の前後方向の向きD_oと、先行車両90の移動方向の向きDm_oとが成す角度を、先行車両90の後部の中心のスリップ角β_oとする。さらに、他車両運動量算出部67は、先行車両90の後部の中心の位置をPo,Po(-t)を通り、先行車両90の前後方向の向きに直交する二本の直線(破線)の成す角度を、先行車両90の向きの変化量θ_o(rad)とする。
【0059】
図4に戻り、次いで、処理部51の車輪スリップ角推定部69は、先行車両90の後輪のスリップ角βr_o(rad)を推定する(ステップS37)。車輪スリップ角推定部69は、先行車両90の車速v_o(m/s)の情報と、先行車両90の後部の中心の移動量s_o(m)及びスリップ角β_o(rad)の情報と、先行車両90の前後方向に沿う後輪91の車軸93と先行車両90の後部との間の距離Lrの情報とに基づいて、先行車両90の後輪のスリップ角βr_o(rad)を演算により推定する。
【0060】
具体的に、
図6に示すように、先行車両90の車速v_oは、先行車両90の後部の中心の移動量s_oを演算周期に相当する時間tで割ることにより求められる。また、先行車両90の前後方向の向きの角加速度α_o(rad/t)は、先行車両90の前後方向の向きの変化量θ_oを時間tで割ることにより求められる。左右の後輪91のトレッド幅w(m)として、周囲環境検出部61により検出される先行車両90の後部の幅の値が代替値として用いられる。ただし、トレッド幅wの求め方は上記の例に限られるものではない。例えば先行車両90の後部の幅から、任意に設定されるタイヤ幅あるいは周囲環境検出部61の検出データに基づいて推定されるタイヤ幅を引いた値をトレッド幅wとしてもよい。
【0061】
一方、先行車両90を後方から検知する周囲環境センサ31により、先行車両90の前後方向に沿う後輪91の車軸93と先行車両90の後部との間の距離Lrを検出することは困難であるため、本実施形態では距離情報データベース55にあらかじめ記録された距離Lrの参照データが用いられる。上述のとおり、距離情報データベース55には、それぞれの車両の種類ごとに、一般的な車両で想定される最大距離及び最小距離が第1距離Lr1及び第2距離Lr2として記録されている。本実施形態では、車輪スリップ角推定部69は、車両の種類に関連付けて記録された第1距離Lr1及び第2距離Lr2のデータの中から、周囲環境検出部61により取得された先行車両90の種類に対応する第1距離Lr1及び第2距離Lr2を抽出する。
【0062】
そして、車輪スリップ角推定部69は、第1距離Lr1及び第2距離Lr2をそれぞれ用いて、下記式(1)により先行車両90の後部の中心のスリップ角β_oを後輪91のスリップ角βr_oに変換する。
【0063】
【0064】
ただし、先行車両90の運動量は下記式(2)の条件を満たす。
【0065】
【0066】
つまり、本実施形態では、先行車両90の前後方向に沿う後輪91の車軸93と先行車両90の後部との間の距離Lrを検出することが困難であるため、一般的な車両で想定される最大距離(第1距離Lr1)と最小距離(第2距離Lr2)を用いて二つの後輪91のスリップ角βr_o1,βr_o2を演算により求める。そして、安全リスクを考慮して、いずれか大きい方のスリップ角βr_oを採用する。
【0067】
図3に戻り、処理部51は、先行車両90の後輪91のスリップ角βr_oを演算により求めた後、リスク回避制御部71は、車輪スリップ角推定部69により推定された先行車両90の後輪91のスリップ角βr_oがあらかじめ設定された閾値βr_o_0を超えているか否かを判定する(ステップS21)。タイヤの摩擦係数をμ、車輪荷重をWとすると、コーナリングフォースK(N)は、下記式(3)で示される。このため、
図7に示すように、コーナリングフォースKは、車輪のスリップ角βrが大きくなると飽和する。
K=3μW/tanβr …(3)
【0068】
このため、後輪91のスリップ角βr_oが大きくなるとコーナリングフォースが飽和し、車両のスピンが発生するおそれのある危険な状態になることが知られている。したがって、閾値βr_o_0は、後輪91のスリップ角βr_oとコーナリングフォースとの関係からコーナリングフォースKが飽和しない領域に任意に設定されてよい。
【0069】
後輪91のスリップ角βr_oが閾値βr_o_0を超えていない場合(S21/No)、先行車両90がスピンを生じるおそれがないため、処理部51は、車載システムを停止するか否かを判定し(ステップS25)、車載システムを停止しない限り(S25/No)、ステップS13に戻って上述した処理を繰り返す。一方、後輪91のスリップ角βr_oが閾値βr_o_0を超えている場合(S21/Yes)、リスク回避制御部71は、先行車両90がスピンを生じる可能性があることから、先行車両90がスピンを生じた場合であっても自車両1が先行車両90に衝突するリスクを回避できるように自車両1の運転条件を設定する(ステップS23)。例えばリスク回避制御部71は、先行車両90に対する自車両1の相対速度及び自車両1から先行車両90までの距離の情報に基づいて減速度を設定し、自車両1を減速させて衝突のリスクを低減する。リスク回避制御部71は、自車両1を減速させることに代えて、あるいは自車両1を減速させることと併せて、自車両1の軌道を修正して衝突のリスクを低減してもよい。
【0070】
次いで、処理部51は、車載システムを停止するか否かを判定し(ステップS25)、車載システムを停止しない限り(S25/No)、ステップS13に戻って上述した処理を繰り返す。一方、車載システムが停止させる場合(S25/Yes)、処理部51は、処理を終了する。
【0071】
運転支援装置50の処理部51は、このように一連の処理を実行することにより先行車両90の後輪のスリップ角βr_oを推定し、先行車両90のスピンを事前に予測する。また、処理部51は、先行車両90のスピンが予測された場合、処理部51は、自車両1と先行車両90との衝突のリスクが低減されるように運転条件を設定し、車両制御装置41へ運転条件の情報を出力する。これにより、先行車両90がスピンを生じた場合の自車両1と先行車両90との衝突のリスクが低減され、衝突を回避することができるか、あるいは衝突時の被害を低減することができる。
【0072】
<1-4.効果>
以上のように、本実施形態に係る運転支援装置50は、周囲環境センサ31の検出データに基づいて自車両1の前方に存在する先行車両90の車速v_o、及び、先行車両90の後部の中心の移動量s_o及びスリップ角β_oを演算する。また、運転支援装置50は、少なくとも先行車両90の車速v_o、及び、先行車両90の後部の中心の移動量s_o及びスリップ角β_oの情報と、先行車両90の後輪91の車軸93から先行車両90の後部までの推定距離Lrの情報とに基づいて、先行車両90の後輪91のスリップ角βr_oを推定する。これにより、先行車両90の車体の挙動ではなく、接地箇所である後輪91のスリップ角βr_oに基づいて、車体がスピンし始める前に先行車両90のスピンを事前に予測することができる。したがって、先行車両90がスピンを生じたときに自車両1と先行車両90との衝突のリスクが低減されるように、あらかじめ自車両1を制御することができる。
【0073】
また、本実施形態に係る運転支援装置50は、先行車両90の後輪91の車軸93から先行車両90の後部までの推定距離Lrとして、距離情報データベース55に記録された二つの異なる第1距離Lr1及び第2距離Lr2を用いて後輪91のスリップ角βr_o1,βr_o2をそれぞれ算出し、いずれか大きい方の値を用いて先行車両90がスピンを生じる可能性を判定する。これにより、自車両1の周囲環境センサ31では先行車両90の後輪91の車軸93から先行車両90の後部までの距離を特定することが困難である場合であっても、先行車両90のスピンの予測精度を高めることができる。
【0074】
また、本実施形態に係る運転支援装置50では、車両の種類に応じてそれぞれ設定された第1距離Lr1及び第2距離Lr2が距離情報データベース55に記録されている。したがって、自車両1の周囲環境センサ31では先行車両90の後輪91の車軸93から先行車両90の後部までの距離を特定することが困難である場合であっても、先行車両90の種類に応じて先行車両90の後輪91のスリップ角βr_oの推定精度を高めることができる。
【0075】
また、本実施形態に係る運転支援装置50は、推定された先行車両90の後輪91のスリップ角βr_oが所定の閾値βr_o_0を超える場合、自車両1を減速させる制御を実行する。これにより、先行車両90のスピンが発生した場合に、自車両1と先行車両90との衝突を回避させ、あるいは、衝突時の被害を軽減することができる。
【0076】
<1-5.変形例>
ここまで、本実施形態に係る運転支援装置50について説明したが、上記実施形態に係る運転支援装置50は種々の変形が可能である。以下、運転支援装置50の変形例の幾つかを説明する。
【0077】
例えば上記実施形態では、自車両1の前方を走行する先行車両90の後輪のスリップ角βr_oを推定していたが、先行車両90の代わりに、あるいは先行車両90と併せて自車両1の前方に存在する対向車両の後輪のスリップ角βr_oを推定してもよい。この場合、処理部51は、対向車両の前部(フロント部分)を検出するとともに、上記実施形態において用いられていた先行車両90の後輪91の車軸93から先行車両90の後部までの推定距離Lrの代わりに、対向車両の後輪の車軸から対向車両の前部までの推定距離Lfを用いて対向車両の後輪のスリップ角βr_oを推定する。これにより、対向車両のスピンを事前に予測することができる。したがって、対向車両がスピンを生じたときに自車両1と対向車両との衝突のリスクが低減されるように、あらかじめ自車両1を制御することができる。
【0078】
なお、対向車両の後輪のスリップ角βr_oを推定する場合、処理部51は、対向車両のスピンが発生したときに自車両1及び対向車両の走行状態の情報及び自車両1及び対向車両の運動量の情報に基づいて自車両1と対向車両との衝突の可能性を判定し、衝突する可能性があると判定された場合にのみリスク回避制御を実行してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、処理部51は後輪のスリップ角βr_oを推定し、他車両のスピンを事前に予測していたが、スリップ角βr_oに代えてスリップ角速度ωr_oを推定してもよい。この場合、処理部51は、各ルーチンにおいて、推定したスリップ角速度ωr_oを積分することによってスリップ角βr_oを求め、上記式(1)及び式(2)に適用すればよい。スリップ角速度ωr_oを推定する場合であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0080】
<<2.第2の実施の形態>>
続いて、本開示の第2の実施の形態に係る運転支援装置を説明する。第2の実施の形態に係る運転支援装置は、運転支援装置を搭載した自車両の前方に存在する他車両の後輪のスリップ角を推定して他車両のスピンが生じ得る位置を地図データに記録し、自車両が当該位置でスピンを生じるリスクを回避する制御を実行可能に構成される。
【0081】
以下、第2の実施の形態に係る運転支援装置について、主として第1の実施の形態に係る運転支援装置と異なる点を説明する。なお、本実施形態では、他車両は、自車両1の周囲環境センサ31によって他車両の前部又は後部を検知可能な車両であれば先行車両及び対向車両に限らずあらゆる他車両であってよい。
【0082】
<2-1.運転支援装置の構成>
図8は、第2の実施の形態に係る運転支援装置50Aの構成例を示すブロック図である。本実施形態に係る運転支援装置50Aの処理部51は、第1の実施の形態に係る運転支援装置50におけるリスク回避制御部71の代わりに、スリップ位置記録部81及びスリップ回避制御部83を備えている。また、本実施形態に係る運転支援装置50Aは、地図データを記録した地図データ記憶部57を備えている。地図データ記憶部57は、ナビゲーションシステムに用いられる地図データが記録されたものであってよいが、運転支援装置50A専用に備えられたものであってもよい。
【0083】
処理部51の周囲環境検出部61、自車両情報取得部63、自車両運動量算出部65、他車両運動量算出部67及び車輪スリップ角推定部69は、第1の実施の形態に係る運転支援装置50と同様の機能を有している。
【0084】
スリップ位置記録部81は、車輪スリップ角推定部69により推定された他車両の後輪のスリップ角があらかじめ設定された閾値を超えている場合に、他車両の後輪のスリップ角が閾値を超えたときの他車両の走行地点をスリップ位置として地図データ上に記録する処理を実行する。また、スリップ回避制御部83は、自車両1の走行中に、地図データ上に記録されたスリップ位置を通過する際に、自車両1の操舵角速度又は加減速度の少なくともいずれか一方に制限をかける処理を実行する。スリップ位置記録部81及びスリップ回避制御部83は、処理部51によるコンピュータプログラムの実行により実現される機能であってよいが、その一部がアナログ回路により構成されていてもよい。
【0085】
<2-2.運転支援装置の動作>
続いて、本実施形態に係る運転支援装置50Aの動作例を、スリップ位置判定記録処理とスリップ回避制御処理とに分けて具体的に説明する。
【0086】
(2-2-1.スリップ位置判定記録処理)
図9は、運転支援装置50Aの処理部51により実行されるスリップ位置判定記録処理の一例を示すフローチャートである。
まず、運転支援装置50Aを含む車載システムが起動されると(ステップS11)、処理部51は、第1の実施の形態において説明した手順に沿って、ステップS11~ステップS21の各ステップの処理を実行する。
【0087】
ステップS21において、他車両の後輪91のスリップ角βr_oが閾値βr_o_0を超えていない場合(S21/No)、他車両がスピンを生じるおそれがないため、処理部51は、車載システムを停止するか否かを判定し(ステップS25)、車載システムを停止しない限り(S25/No)、ステップS13に戻って上述した処理を繰り返す。一方、後輪91のスリップ角βr_oが閾値βr_o_0を超えている場合(S21/Yes)、スリップ位置記録部81は、他車両の後輪91のスリップ角βr_oが閾値βr_o_0を超えたときの他車両の走行地点をスリップ位置として地図データ上に記録する(ステップS27)。
【0088】
具体的に、スリップ位置記録部81は、他車両の後輪91のスリップ角βr_oが閾値βr_o_0を超えた時刻における自車両1のグローバル座標系の位置情報と、当該時刻における自車両1に対する他車両の相対位置とに基づいて他車両の走行地点の座標位置を算出する。そして、スリップ位置記録部81は、当該走行地点の座標位置を地図データ上に記録する。
【0089】
次いで、処理部51は、車載システムを停止するか否かを判定し(ステップS25)、車載システムを停止しない限り(S25/No)、ステップS13に戻って上述した処理を繰り返す。一方、車載システムが停止させる場合(S25/Yes)、処理部51は、処理を終了する。
【0090】
(2-2-2.スリップ回避制御処理)
図10は、運転支援装置50Aの処理部51により実行されるスリップ回避制御処理の一例を示すフローチャートである。
まず、運転支援装置50Aを含む車載システムが起動されると(ステップS41)、処理部51の自車両情報取得部63は、自車両1の情報を取得する(ステップS43)。具体的に、自車両情報取得部63は、少なくともGNSSセンサ37から送信される自車両1の位置情報を取得するとともに、自車両1の位置の変化に基づいて自車両1の進行方向を演算により求める。
【0091】
次いで、スリップ回避制御部83は、自車両1の進行方向の前方に、地図データ上に記録されたスリップ位置が存在するか否かを判定する(ステップS45)。例えばスリップ回避制御部83は、自車両1が走行している道路の前方の所定範囲にスリップ位置が存在するか否かを判定する。あるいは自車両1が自動運転中である場合又はナビゲーションシステムの走行ルートの設定がある場合、スリップ回避制御部83は、走行ルートの所定範囲にスリップ位置が存在するか否かを判定する。所定範囲は、例えば自車両1からの距離が50~200mの範囲とすることができるが、この範囲に限定されるものではない。
【0092】
スリップ回避制御部83は、走行中の道路、あるいは、走行ルートに設定されている道路の所定範囲のいずれかの箇所にスリップ位置が記録されている場合にスリップ位置が存在すると判定してもよく、自車両1が走行予定の車線内にスリップ位置が記録されている場合にスリップ位置が存在すると判定してもよい。
【0093】
自車両1の進行方向の前方にスリップ位置が存在しない場合(S45/No)、自車両1がスピンを生じるおそれがないため、処理部51は、車載システムを停止するか否かを判定し(ステップS49)、車載システムを停止しない限り(S49/No)、ステップS43に戻って上述した処理を繰り返す。一方、自車両1の進行方向の前方にスリップ位置が存在する場合(S45/Yes)、スリップ回避制御部83は、自車両1がスリップ位置でスピンを生じる可能性があることから、自車両1の操舵角速度又は加減速度の少なくともいずれか一方に制限をかける。つまり、自車両1の操舵角速度又は加減速度に上限を設定し、自車両1の挙動の急激な変化を抑制する処理を実行する。自車両1の操舵角速度又は加減速度の上限は、あらかじめ任意の値に設定されてよい。これにより、自車両1がスリップ位置を通過する際にスピンが生じることを防ぐことができる。
【0094】
自車両1の操舵角速度又は加減速度の少なくとも一方に制限をかけるタイミングは、例えばスリップ位置までの距離があらかじめ設定された距離になったときであってよい。あるいは、当該距離を、自車両1の車速に応じて可変としてもよい。また、記録されているスリップ位置がカーブの途中に存在する場合、当該カーブの入口を基準として自車両1の操舵角速度又は加減速度の少なくとも一方に制限をかけるタイミングを設定してもよい。
【0095】
<2-3.効果>
以上のように、本実施形態に係る運転支援装置50Aは、自車両1の周囲を走行する他車両の後輪のスリップ角βr_oを推定するとともに、当該スリップ角βr_oが所定の閾値βr_o_0を超えたときの他車両の走行地点をスリップ位置として地図データ上に記録する。また、運転支援装置50Aは、自車両1の走行中に、前方にスリップ位置が存在する場合、あらかじめ自車両1の操舵角速度又は加減速度の少なくともいずれか一方に制限をかける。これにより、自車両1がスリップ位置を通過する際に、自車両1の挙動の急激な変化が抑制されて自車両1のスピンが生じることを防ぐことができる。
【0096】
なお、本実施形態に係る運転支援装置50Aにおいても、処理部51は、後輪のスリップ角βr_oに代えてスリップ角速度ωr_oを推定してもよい。また、本実施形態に係る運転支援装置50Aのスリップ位置記録部81及びスリップ回避制御部83の機能は、第1の実施の形態に係る運転支援装置50に追加的に設けられていてもよい。
【0097】
また、本実施形態に係る運転支援装置50Aのスリップ位置記録部81は、スリップ位置を地図データ上に記録する際に、他車両の後輪のスリップ角βr_oが閾値βr_o_0を超えたときの季節の情報及び時刻の情報に関連付けてスリップ位置を記録してもよい。そして、運転支援装置50Aのスリップ回避制御部83は、現在の季節及び時刻とスリップ位置に関連付けられた季節の情報及び時刻の情報を比較し、同時期及び同じ時間帯に自車両1がスリップ位置を走行する場合に、自車両1の操舵角速度及び加減速度に制限をかけてもよい。これにより、自車両1のスピンが発生しにくい状態においても操舵角速度又は加減速度に制限がかけられることを防ぐことができる。
【0098】
また、本実施形態に係る運転支援装置50Aでは、自車両1に備えられた地図データ記憶部57にスリップ位置の情報を記録していたが、移動体通信手段を介して運転支援装置50Aと通信可能なサーバに保存された地図データにスリップ位置の情報を記録してもよい。これにより、スリップ位置が記録された地図データを複数の車両で共用することができ、スリップ位置の収集量を増やすことができるとともに、それぞれの車両が初めて走行するエリアであっても車両のスピンを回避する制御が実行されるようになる。
【0099】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0100】
例えば、上記実施形態では、運転支援装置の機能のすべてが自車両1に搭載されていたが、本開示はかかる例に限定されない。例えば運転支援装置が有する機能の一部が、移動体通信手段を介して通信可能なサーバ装置に設けられ、運転支援装置は、当該サーバ装置に対してデータを送受信するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1:車両(自車両)、9:駆動力源、15:電動ステアリング装置、20:ブレーキ液圧制御ユニット、31:周囲環境センサ、31LF・31RF:前方撮影カメラ、31S:LiDAR、35:車両状態センサ、37:GNSSセンサ、41:車両制御装置、50・50A:運転支援装置、51:処理部、53:記憶部、55:距離情報データベース、57:地図データ記憶部、61:周囲環境検出部、63:自車両情報取得部、65:自車両運動量算出部、67:他車両運動量算出部、69:車輪スリップ角推定部、71:リスク回避制御部、81:スリップ位置記録部、83:スリップ回避制御部、90:先行車両、91:後輪、93:車軸、D_e:車両の前後方向の向き、D_o:車両の前後方向の向き、Dm_o:移動方向の向き、Lr:距離、Lr1:第1距離、Lr2:第2距離、s_e:移動量、s_o:移動量、v_o:車速、w:トレッド幅、β_o:車両のスリップ角、βr_o:後輪のスリップ角、ωr_o:後輪のスリップ角速度