(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H10B 12/00 20230101AFI20241008BHJP
H10B 41/70 20230101ALI20241008BHJP
H10B 99/00 20230101ALI20241008BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241008BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20241008BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20241008BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20241008BHJP
H10B 80/00 20230101ALI20241008BHJP
【FI】
H10B12/00 801
H10B41/70
H10B99/00 441
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L27/088 H
H01L27/088 331E
H01L29/78 613B
H01L29/78 613Z
H01L29/78 617N
H01L29/78 618B
H10B80/00
(21)【出願番号】P 2024016208
(22)【出願日】2024-02-06
(62)【分割の表示】P 2020568868の分割
【原出願日】2019-11-22
【審査請求日】2024-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2019013469
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [刊行物名] international ELECTRON DEVICES meeting 2018 TECHNICAL DIGEST, 312-315 発行年月日 平成30年12月1日 [集会名] 2018 IEEE International Electron Devices Meeting 開催日 平成30年12月1日-5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】長塚 修平
(72)【発明者】
【氏名】大貫 達也
(72)【発明者】
【氏名】石津 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 清
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-065638(JP,A)
【文献】特開2016-225617(JP,A)
【文献】特開2016-225613(JP,A)
【文献】特開2012-033906(JP,A)
【文献】特開2017-168836(JP,A)
【文献】特開2013-149970(JP,A)
【文献】特開2011-151383(JP,A)
【文献】特開2018-085507(JP,A)
【文献】特開2018-201003(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/161713(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/035683(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10B 12/00
H10B 41/70
H10B 99/00
H01L 21/8234
H01L 27/088
H01L 29/786
H10B 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
第1の層乃至第lの層(lは1以上の整数)と、
前記第1の層の側面乃至前記第lの層の側面のそれぞれ及び前記第lの層の上面を覆う一の第1の絶縁体と、
第2の絶縁体と、
を有し、
前記半導体基板には、前記半導体基板に形成されたトランジスタを用いて、周辺回路が構成され、
前記第k(kは1以上l以下の整数)の層には、前記第kの層に形成された薄膜トランジスタを用いて、メモリセルアレイが構成され、
前記周辺回路は、第1のワード線ドライバ回路乃至第lのワード線ドライバ回路と、ビット線ドライバ回路とを有し、
前記第kの層に構成されたメモリセルアレイは、前記第kのワード線ドライバ回路と電気的に接続され、
前記メモリセルアレイは、それぞれ、前記ビット線ドライバ回路と電気的に接続され、
前記メモリセルアレイは、それぞれ、複数のメモリセルを有し、
前記メモリセルは、第1の前記薄膜トランジスタと、第2の前記薄膜トランジスタとを有し、
前記第1の層は、前記半導体基板の上方に積層して設けられ、
前記第j(jは2以上l以下の整数)の層は、前記第j-1の層の上方に積層して設けられ、
前記第1の絶縁体は、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを含み、
前記第1の絶縁体及び前記第2の絶縁体は、前記トランジスタの上方に配置され、
前記第1の絶縁体及び前記第2の絶縁体がそれぞれ有する開口部には、前記トランジスタと電気的に接続された導電体が埋め込まれており、
前記第1の層の側面乃至前記第lの層の側面のそれぞれは、前記第1の絶縁体及び前記第2の絶縁体を介して、前記導電体と重なりを有する、
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一形態は、記憶装置に関する。特に、半導体特性を利用することで機能しうる記憶装置に関する。
【0002】
また、本発明の一形態は、半導体装置に関する。本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指す。例えば、集積回路、集積回路を備えたチップや、パッケージにチップを収納した電子部品、集積回路を備えた電子機器は、半導体装置の一例である。
【0003】
なお、本発明の一形態は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一形態は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。
【背景技術】
【0004】
DRAM(Dynamic Random Access Memory)は、各種電子機器に内蔵される記憶装置(メモリともいう)として広く用いられている。DRAMのメモリセルは、1個のトランジスタと1個の容量素子で構成され、DRAMは容量素子に電荷を蓄積することでデータを記憶するメモリである。
【0005】
DRAMのメモリセルを、2個のトランジスタと1個の容量素子で構成してもよい。蓄積した電荷を近くのトランジスタで増幅することで、容量素子の容量が小さい場合でも、メモリとしての動作を行うことができる(以後、ゲインセル型のメモリセルという)。
【0006】
また、トランジスタのチャネルが形成される領域(以下、チャネル形成領域ともいう)に金属酸化物を有するトランジスタ(酸化物半導体トランジスタ、OSトランジスタともいう)が近年注目されている。OSトランジスタは、トランジスタがオフ状態にあるときのドレイン電流(オフ電流ともいう)が非常に小さいため、DRAMのメモリセルに用いることで、容量素子に蓄積した電荷を長時間にわたって保持することができる。
【0007】
OSトランジスタは薄膜トランジスタであるため、積層して設けることができる。例えば、単結晶シリコン基板に形成されたSiトランジスタを用いて第1の回路を構成し、その上方にOSトランジスタを用いて第2の回路を構成することができる。OSトランジスタをDRAMに用いることで、例えば、第1の回路として駆動回路や制御回路などの周辺回路、第2の回路としてメモリセルを構成することができ、DRAMのチップ面積を削減することができる。
【0008】
特許文献1には、周辺回路を構成した半導体基板上に、OSトランジスタを用いた複数のメモリセルを有する半導体装置の例が開示されている。特許文献2には、OSトランジスタとOSトランジスタ以外のトランジスタ(例えば、Siトランジスタ)を、ゲインセル型のメモリセル(容量素子は省略してもよい)に用いた例が開示されている。
【0009】
なお、本明細書等では、OSトランジスタを用いたゲインセル型のメモリセルを有する記憶装置または半導体装置を、NOSRAM(登録商標、Nonvolatile Oxide Semiconductor Random Access Memory)と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2012-256820号公報
【文献】特開2012-256400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
DRAMにおいて、ゲインセル型のメモリセルは、蓄積した電荷を近くのトランジスタで増幅できるため、容量素子の容量を小さくすることができる。もしくは、トランジスタのゲート容量や、配線の寄生容量等を利用することで、容量素子を作成しなくてもよい(容量素子を省略してもよい)。
【0012】
しかし、ゲインセル型のメモリセルは、1メモリセルあたり少なくとも2つのトランジスタが必要であり、単位面積あたりに配置できるメモリセルの数(配置密度)を増やしにくいという課題があった。すなわち、メモリセルの配置密度を増やすことで、記憶装置の記憶密度(単位面積あたりに記憶できるデータ量)を増やすことが難しいという課題があった。
【0013】
本発明の一形態は、ゲインセル型のメモリセルを有する記憶装置において、単位面積あたりに記憶できるデータ量が多い記憶装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一形態は、ゲインセル型のメモリセルを有し、単位面積あたりに記憶できるデータ量が多い記憶装置を有する電子機器を提供することを課題の一つとする。
【0014】
なお、本発明の一形態は、必ずしも上記の課題の全てを解決する必要はなく、少なくとも一つの課題を解決できるものであればよい。また、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。これら以外の課題は、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から自ずと明らかになるものであり、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一形態は、半導体基板と、第1乃至第lの層(lは1以上の整数)とを有する記憶装置である。半導体基板には、半導体基板に形成されたトランジスタを用いて、周辺回路が構成され、第k(kは1以上l以下の整数)の層には、第kの層に形成された薄膜トランジスタを用いて、メモリセルアレイが構成される。第1の層は、半導体基板の上方に積層して設けられ、第j(jは2以上l以下の整数)の層は、第j-1の層の上方に積層して設けられる。
【0016】
また、本発明の一形態は、半導体基板と、第1乃至第lの層(lは1以上の整数)とを有する記憶装置である。半導体基板には、半導体基板に形成されたトランジスタを用いて、周辺回路が構成され、第k(kは1以上l以下の整数)の層には、第kの層に形成された薄膜トランジスタを用いて、メモリセルアレイが構成される。メモリセルアレイは、それぞれ複数のメモリセルを有し、メモリセルは、第1の薄膜トランジスタと第2の薄膜トランジスタとを有する。第1の層は、半導体基板の上方に積層して設けられ、第j(jは2以上l以下の整数)の層は、第j-1の層の上方に積層して設けられる。
【0017】
また、本発明の一形態は、半導体基板と、第1乃至第lの層(lは1以上の整数)とを有する記憶装置である。半導体基板には、半導体基板に形成されたトランジスタを用いて、周辺回路が構成され、第k(kは1以上l以下の整数)の層には、第kの層に形成された薄膜トランジスタを用いて、メモリセルアレイが構成される。周辺回路は、第1乃至第lのワード線ドライバ回路と、ビット線ドライバ回路とを有し、第kの層に構成されたメモリセルアレイは、第kのワード線ドライバ回路と電気的に接続され、メモリセルアレイは、それぞれビット線ドライバ回路と電気的に接続される。第1の層は、半導体基板の上方に積層して設けられ、第j(jは2以上l以下の整数)の層は、第j-1の層の上方に積層して設けられる。
【0018】
また、本発明の一形態は、半導体基板と、第1乃至第lの層(lは1以上の整数)とを有する記憶装置である。半導体基板には、半導体基板に形成されたトランジスタを用いて、周辺回路が構成され、第k(kは1以上l以下の整数)の層には、第kの層に形成された薄膜トランジスタを用いて、メモリセルアレイが構成される。周辺回路は、第1乃至第lのワード線ドライバ回路と、ビット線ドライバ回路とを有し、第kの層に構成されたメモリセルアレイは、第kのワード線ドライバ回路と電気的に接続され、メモリセルアレイは、それぞれビット線ドライバ回路と電気的に接続される。メモリセルアレイは、それぞれ複数のメモリセルを有し、メモリセルは、第1の薄膜トランジスタと第2の薄膜トランジスタとを有する。第1の層は、半導体基板の上方に積層して設けられ、第j(jは2以上l以下の整数)の層は、第j-1の層の上方に積層して設けられる。
【0019】
また、上記形態において、薄膜トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有する。
【0020】
また、上記形態において、薄膜トランジスタは、それぞれ、フロントゲートとバックゲートとを有する。
【0021】
また、上記形態において、薄膜トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有し、薄膜トランジスタは、それぞれ、フロントゲートとバックゲートとを有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一形態により、ゲインセル型のメモリセルを有する記憶装置において、単位面積あたりに記憶できるデータ量が多い記憶装置を提供することができる。または、本発明の一形態により、ゲインセル型のメモリセルを有し、単位面積あたりに記憶できるデータ量が多い記憶装置を有する電子機器を提供することができる。
【0023】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。また、本発明の一形態は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。これら以外の効果は、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、記憶装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、記憶装置の構成例を示す斜視概略図である。
【
図3】
図3は、記憶装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、メモリセルアレイの構成例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、ビット線ドライバ回路を構成する回路について構成例を示す回路図である。
【
図7】
図7は、メモリセルの動作例を説明するタイミングチャートである。
【
図8】
図8A、
図8Bは、本発明の一態様に係る記憶装置の上面図および断面図である。
【
図9】
図9A、
図9Bは、本発明の一態様に係る記憶装置の上面図および断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の一態様に係る記憶装置の上面図である。
【
図11】
図11は、本発明の一態様に係る記憶装置の断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の一態様に係る記憶装置の断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の一態様に係る記憶装置の断面図である。
【
図14】
図14Aは、IGZOの結晶構造の分類を説明する図である。
図14Bは、石英ガラスのXRDスペクトルを説明する図である。
図14Cは、結晶性IGZOのXRDスペクトルを説明する図である。
【
図19】
図19は、各種の記憶装置を階層ごとに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる形態で実施することが可能であり、趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0026】
また、以下に示される複数の実施の形態は、適宜組み合わせることが可能である。また、1つの実施の形態の中に複数の構成例が示される場合は、互いに構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0027】
なお、本明細書に添付した図面では、構成要素を機能ごとに分類し、互いに独立したブロックとしてブロック図を示しているが、実際の構成要素は機能ごとに完全に切り分けることが難しく、一つの構成要素が複数の機能に係わることもあり得る。
【0028】
また、図面等において、大きさ、層の厚さ、領域等は、明瞭化のため誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状または値などに限定されない。
【0029】
また、図面等において、同一の要素または同様な機能を有する要素、同一の材質の要素、あるいは同時に形成される要素等には同一の符号を付す場合があり、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0030】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0031】
また、本明細書等において、「上」や「下」などの配置を示す用語は、構成要素の位置関係が、「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0032】
また、本明細書等において、「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではない。
【0033】
また、本明細書等において、「電気的に接続」とは、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、容量素子、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。また、「電気的に接続」と表現される場合であっても、実際の回路において、物理的な接続部分がなく、配線が延在しているだけの場合もある。
【0034】
また、本明細書等において、「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆も同様である。
【0035】
また、本明細書等において、電気回路における「端子」とは、電流または電位の入力(または、出力)や、信号の受信(または、送信)が行なわれる部位を言う。よって、配線または電極の一部が端子として機能する場合がある。
【0036】
また、一般に、「容量」は、2つの電極が絶縁体(誘電体)を介して向かい合う構成を有する。本明細書等において、「容量素子」とは、前述の「容量」である場合が含まれる。すなわち、本明細書等において、「容量素子」とは、2つの電極が絶縁体を介して向かい合う構成を有したもの、2本の配線が絶縁体を介して向かい合う構成を有したもの、または、2本の配線が絶縁体を介して配置されたもの、である場合が含まれる。
【0037】
また、本明細書等において、「電圧」とは、ある電位と基準の電位(例えば、グラウンド電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧と電位差とは言い換えることができる。
【0038】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む、少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域、またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域、またはソース電極)の間にチャネル形成領域を有しており、チャネル形成領域を介して、ソースとドレインとの間に電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル形成領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
【0039】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等において、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0040】
また、本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態(非導通状態、遮断状態ともいう)にあるときのドレイン電流をいう。オフ状態とは、特に断りがない場合、nチャネル型のトランジスタでは、ソースに対するゲートの電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低い状態、pチャネル型のトランジスタでは、ソースに対するゲートの電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも高い状態をいう。つまり、nチャネル型のトランジスタのオフ電流とは、ソースに対するゲートの電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低いときのドレイン電流、という場合がある。
【0041】
上記オフ電流の説明において、ドレインをソースと読み替えてもよい。つまり、オフ電流は、トランジスタがオフ状態にあるときのソース電流をいう場合がある。また、オフ電流と同じ意味で、リーク電流という場合がある。また、本明細書等において、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態にあるときに、ソースとドレインとの間に流れる電流を指す場合がある。
【0042】
また、本明細書等において、オン電流とは、トランジスタがオン状態(導通状態、ともいう)にあるときに、ソースとドレインとの間に流れる電流を指す場合がある。
【0043】
また、本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い意味での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む)、酸化物半導体などに分類される。
【0044】
例えば、トランジスタのチャネル形成領域に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、金属酸化物が増幅作用、整流作用、およびスイッチング作用の少なくとも1つを有する場合、当該金属酸化物を、金属酸化物半導体(metal oxide semiconductor)と呼ぶことができる。すなわち、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタを、「酸化物半導体トランジスタ」、「OSトランジスタ」と呼ぶことができる。
【0045】
また、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と呼称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。金属酸化物の詳細については後述する。
【0046】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一形態に係わる記憶装置の構成例について説明する。本発明の一形態に係わる記憶装置は、半導体特性を利用することで機能しうる記憶装置であり、メモリとも呼ばれている。また、本発明の一形態に係わる記憶装置は、半導体基板に形成されたトランジスタを有する層の上方に、OSトランジスタを有する層が複数積層して設けられた構造を有する。
【0047】
図1は、本発明の一形態に係わる記憶装置10の構成例を示す斜視図である。記憶装置10は、層100、および、層200_1乃至層200_lを有する(lは1以上の整数)。なお、本明細書等において、同様の機能を有する複数の要素を区別するために、「_1」あるいは[_2]などの符号が用いられる。すなわち、層200_1乃至層200_lのうち、任意の層を指すときは、層200の符号を用いて説明し、1つを特定する必要があるときは、層200_1、層200_2などの符号を用いて説明する。
【0048】
図1に示すように、記憶装置10は、層100の上方に層200_1が積層して設けられ、層200_1の上方に層200_2が積層して設けられ、同様に、層200_3(図示しない)乃至層200_lに関しても、順に積層して設けられた構造を有する。また、説明をわかりやすくするため、本実施の形態においては、以後、lが2である場合について説明する。
【0049】
<記憶装置の斜視概略図>
図2は、本発明の一形態に係わる記憶装置10の構成例を示す斜視概略図である。
【0050】
図2に示す記憶装置10は、層100、層200_1、および、層200_2を有し、層100の上方に層200_1が積層して設けられ、層200_1の上方に層200_2が積層して設けられている。
【0051】
層100、層200_1、および、層200_2には、それぞれ、半導体特性を利用することで機能しうる回路が設けられており、具体的には、層100には周辺回路101が、層200_1および層200_2にはメモリセルアレイ111が、設けられている。なお、本明細書等で説明する図面においては、主な信号の流れを矢印または線で示しており、電源線等は省略する場合がある。
【0052】
周辺回路101は、ローデコーダ121、ワード線ドライバ回路122、ワード線ドライバ回路123、カラムデコーダ131、ビット線ドライバ回路132、ページバッファ138、出力回路141、および、コントロールロジック回路151を有する。周辺回路101は、メモリセルアレイ111の駆動回路および制御回路としての機能を有する。
【0053】
周辺回路101は、半導体基板SUBに形成されたトランジスタを用いて構成される。半導体基板SUBは、トランジスタのチャネル領域を形成することが可能であれば、特に限定されない。例えば、単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板、化合物半導体基板(SiC基板、GaN基板など)、SOI(Silicon on Insulator)基板などを用いることができる。
【0054】
また、SOI基板としては、鏡面研磨ウェハーに酸素イオンを注入した後、高温加熱することにより、表面から一定の深さに酸化層を形成させるとともに、表面層に生じた欠陥を消滅させて形成されたSIMOX(Separation by Implanted Oxygen)基板や、水素イオン注入により形成された微小ボイドの熱処理による成長を利用して半導体基板を劈開するスマートカット法、ELTRAN法(登録商標:Epitaxial Layer Transfer)などを用いて形成されたSOI基板を用いてもよい。単結晶基板を用いて形成されたトランジスタは、チャネル形成領域に単結晶半導体を有する。
【0055】
本実施の形態においては、半導体基板SUBに、単結晶シリコン基板を用いた場合について説明する。なお、単結晶シリコン基板に形成されたトランジスタを、Siトランジスタと呼ぶ。Siトランジスタを用いて構成された周辺回路101は、高速な動作が可能である。
【0056】
メモリセルアレイ111は、複数のメモリセル112を有し、メモリセル112はOSトランジスタを用いて構成される。OSトランジスタは薄膜トランジスタであるため、メモリセルアレイ111は、半導体基板SUB上に積層して設けることができる。
【0057】
ここで、酸化物半導体のバンドギャップは2.5eV以上、好ましくは3.0eV以上であるため、OSトランジスタは熱励起によるリーク電流が小さく、オフ電流が非常に小さい。
【0058】
OSトランジスタのチャネル形成領域に用いられる金属酸化物は、インジウム(In)および亜鉛(Zn)の少なくとも一方を含む酸化物半導体であることが好ましい。このような酸化物半導体としては、In-M-Zn酸化物(元素Mは、例えばAl、Ga、YまたはSn)が代表的である。電子供与体(ドナー)となる水分、水素などの不純物を低減し、かつ酸素欠損も低減することで、酸化物半導体をi型(真性)、または実質的にi型にすることができる。このような酸化物半導体は、高純度化された酸化物半導体と呼ぶことができる。なお、OSトランジスタの詳細については、実施の形態3で説明する。
【0059】
メモリセル112は、電荷を蓄積し保持することで、データを記憶する機能を有する。メモリセル112は、2値(ハイレベルまたはローレベル)のデータを記憶する機能を有していてもよいし、4値以上のデータを記憶する機能を有していてもよい。または、アナログデータを記憶する機能を有していてもよい。
【0060】
OSトランジスタは、オフ電流が非常に小さいため、メモリセル112に用いるトランジスタとして好適である。OSトランジスタは、例えば、チャネル幅1μmあたりのオフ電流を100zA/μm以下、または10zA/μm以下、または1zA/μm以下、または10yA/μm以下とすることができる。OSトランジスタをメモリセル112に用いることにより、メモリセル112に記憶したデータを長時間に渡って保持することができる。
【0061】
OSトランジスタは、高温下でもオフ電流が増加しにくい特徴を有するため、記憶装置10は、設置されている環境の温度が高い場合でも動作することができる。また、周辺回路101の発熱による高温下においても、メモリセル112に記憶したデータの消失が生じにくい。OSトランジスタを用いることで、記憶装置10の信頼性を高めることができる。
【0062】
もしくは、メモリセル112に用いるトランジスタとして、オフ電流が低ければOSトランジスタ以外のトランジスタを用いてもよい。例えば、チャネル形成領域にバンドギャップが大きい半導体を有するトランジスタを用いてもよい。バンドギャップが大きい半導体とは、バンドギャップが2.2eV以上の半導体を指す場合があり、例えば、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ダイヤモンドなどが挙げられる。
【0063】
図2に示すように、メモリセルアレイ111において、メモリセル112は行列状(マトリクス状ともいう)に配置され、各メモリセル112は、配線WLおよび配線BLと電気的に接続される。メモリセル112は、配線WLに印加される電位によって選択され、配線BLを介して、選択されたメモリセル112にデータが書き込まれる。または、メモリセル112は、配線WLに印加される電位によって選択され、配線BLを介して、選択されたメモリセル112からデータが読み出される。すなわち、配線WLはメモリセル112のワード線としての機能を有し、配線BLはメモリセル112のビット線としての機能を有する。
【0064】
なお、
図2に示す配線WLおよび配線BLは、それぞれ、複数の配線から構成される。例えば、配線WLは、プレート線PL、書き込みワード線WWL、読み出しワード線RWL、配線BG1、および、配線BG2から構成され、配線BLは、読み出しビット線RBL、および、書き込みビット線WBLから構成される(
図3および
図4、参照)。
【0065】
そして、層200_1に設けられたメモリセルアレイ111は、配線WLを介してワード線ドライバ回路122と電気的に接続され、層200_2に設けられたメモリセルアレイ111は、配線WLを介してワード線ドライバ回路123と電気的に接続される。また、層200_1に設けられたメモリセルアレイ111と、層200_2に設けられたメモリセルアレイ111は、配線BLを介して、ビット線ドライバ回路132と電気的に接続される。
【0066】
メモリセルアレイ111と、ワード線ドライバ回路122、ワード線ドライバ回路123、および、ビット線ドライバ回路132との電気的な接続については、後ほど
図4を用いて説明し、周辺回路101については、
図3を用いて説明する。
【0067】
<記憶装置のブロック図>
図3は、記憶装置10の構成例を示すブロック図である。
図3に示すブロック図では、層200_2に設けられたメモリセルアレイ111と、ワード線ドライバ回路123を省略し、メモリセルアレイ111が有するメモリセル112は、代表的に1つのみ図示している。
【0068】
図3に示すように、記憶装置10は、周辺回路101、および、メモリセルアレイ111を有する。周辺回路101は、ローデコーダ121、ワード線ドライバ回路122、カラムデコーダ131、ビット線ドライバ回路132、ページバッファ138、出力回路141、および、コントロールロジック回路151を有する。
【0069】
メモリセルアレイ111は、複数のメモリセル112(
図3では1つのみ図示)を有し、メモリセル112は、プレート線PL、書き込みワード線WWL、読み出しワード線RWL、配線BG1、および、配線BG2を介してワード線ドライバ回路122と電気的に接続され、読み出しビット線RBL、および、書き込みビット線WBLを介してビット線ドライバ回路132と電気的に接続される。
【0070】
記憶装置10には、電位Vss、電位Vdd、電位Vdh、プリチャージ電位Vpre、および、レファレンス電位Vrefが入力される。電位Vdhは、書き込みワード線WWLの高電源電位である。
【0071】
記憶装置10には、クロック信号CLK、チップイネーブル信号CE、グローバル書き込みイネーブル信号GW、バイト書き込みイネーブル信号BW、アドレス信号ADDR、および、データ信号WDATAが入力され、記憶装置10は、データ信号RDATAを出力する。なお、これらの信号は、ハイレベルまたはローレベル(HighまたはLow、HまたはL、1または0等で表される場合がある)で表されるデジタル信号である。
【0072】
なお、本実施の形態では、デジタル信号のハイレベルは電位Vddを用いて表され、ローレベルは電位Vssを用いて表される。また、書き込みワード線WWLのハイレベルには電位Vdhが用いられ、ローレベルには電位Vssが用いられる。そして、バイト書き込みイネーブル信号BW、アドレス信号ADDR、データ信号WDATA、および、データ信号RDATAは、複数ビットを有する信号である。
【0073】
本明細書等では、複数ビットを有する信号に対して、例えば、バイト書き込みイネーブル信号BWが4ビットを有する場合、バイト書き込みイネーブル信号BW[3:0]と表記する。これは、バイト書き込みイネーブル信号がBW[0]乃至BW[3]を有することを意味し、1つのビットを特定する必要がある場合、例えば、バイト書き込みイネーブル信号BW[0]と表記する。また、バイト書き込みイネーブル信号BWと表記した場合、任意のビットを指している。
【0074】
例えば、バイト書き込みイネーブル信号BWを4ビット、データ信号WDATAおよびデータ信号RDATAを32ビットとすることができる。すなわち、バイト書き込みイネーブル信号BW、データ信号WDATA、および、データ信号RDATAは、それぞれ、バイト書き込みイネーブル信号BW[3:0]、データ信号WDATA[31:0]、データ信号RDATA[31:0]と表記される。
【0075】
なお、記憶装置10において、上述の各回路、各信号、および、各電位は、必要に応じて適宜取捨することができる。あるいは、他の回路、他の信号、または、他の電位を追加してもよい。
【0076】
コントロールロジック回路151は、チップイネーブル信号CE、グローバル書き込みイネーブル信号GWを処理して、ローデコーダ121、カラムデコーダ131の制御信号を生成する。例えば、チップイネーブル信号CEがハイレベル、グローバル書き込みイネーブル信号GWがローレベルの場合、ローデコーダ121およびカラムデコーダ131は読み出し動作を行い、チップイネーブル信号CEがハイレベル、グローバル書き込みイネーブル信号GWがハイレベルの場合、ローデコーダ121およびカラムデコーダ131は書き込み動作を行い、チップイネーブル信号CEがローレベルの場合、グローバル書き込みイネーブル信号GWのハイレベル、ローレベルにかかわらず、ローデコーダ121およびカラムデコーダ131はスタンバイ動作とすることができる。コントロールロジック回路151が処理する信号は、これに限定されるものではなく、必要に応じて他の信号を入力してもよい。
【0077】
また、コントロールロジック回路151は、バイト書き込みイネーブル信号BW[3:0]を処理して、書き込み動作を制御する。具体的には、バイト書き込みイネーブル信号BW[0]がハイレベルの場合、ローデコーダ121およびカラムデコーダ131は、データ信号WDATA[7:0]の書き込み動作を行う。同様に、バイト書き込みイネーブル信号BW[1]がハイレベルの場合、データ信号WDATA[15:8]の書き込み動作、バイト書き込みイネーブル信号BW[2]がハイレベルの場合、データ信号WDATA[23:16]の書き込み動作、バイト書き込みイネーブル信号BW[3]がハイレベルの場合、データ信号WDATA[31:24]の書き込み動作を行う。
【0078】
ローデコーダ121およびカラムデコーダ131には、上述した、コントロールロジック回路151が生成する制御信号に加えて、アドレス信号ADDRが入力される。
【0079】
ローデコーダ121は、アドレス信号ADDRをデコードし、ワード線ドライバ回路122の制御信号を生成する。ワード線ドライバ回路122は、プレート線PL、書き込みワード線WWL、読み出しワード線RWL、配線BG1、および、配線BG2を駆動する機能、または、所定の電位を印加する機能を有する。ワード線ドライバ回路122は、ローデコーダ121の制御信号に基づき、アクセス対象行の書き込みワード線WWL、または、読み出しワード線RWLを選択する。ワード線ドライバ回路122は、配線BG1、または、配線BG2を選択する機能を有していてもよい。
【0080】
また、メモリセルアレイ111が、複数のブロックに分割されている場合、プレデコーダ124を設けてもよい。プレデコーダ124は、アドレス信号ADDRをデコードして、アクセスされるブロックを決定する機能を有する。
【0081】
カラムデコーダ131、ビット線ドライバ回路132、および、ページバッファ138は、データ信号WDATAにより入力されたデータをメモリセルアレイ111に書き込む機能、メモリセルアレイ111からデータを読み出す機能、読み出したデータを増幅し、出力回路141に出力する機能等を有する。
【0082】
出力回路141は、カラムデコーダ131およびビット線ドライバ回路132によって、メモリセルアレイ111から読み出され、ページバッファ138に記憶されたデータを、データ信号RDATAとして出力する。
【0083】
なお、
図3の例では、ビット線ドライバ回路132は、プリチャージ回路133、センスアンプ回路134、出力MUX(マルチプレクサ)回路135、および、書き込みドライバ回路136を有する。なお、プリチャージ回路133、センスアンプ回路134、出力MUX回路135、および、書き込みドライバ回路136については、後述する。
【0084】
<メモリセルアレイ>
図4は、メモリセルアレイ111の構成例を示すブロック図である。
図4には、2つのメモリセルアレイ111と、ワード線ドライバ回路122、ワード線ドライバ回路123、および、ビット線ドライバ回路132を図示し、
図4は、メモリセルアレイ111がプレート線PL、書き込みワード線WWL、読み出しワード線RWL、配線BG1、および、配線BG2を介してワード線ドライバ回路122と電気的に接続される様子、メモリセルアレイ111が配線WLを介してワード線ドライバ回路123と電気的に接続される様子、および、メモリセルアレイ111が読み出しビット線RBL、および、書き込みビット線WBLを介してビット線ドライバ回路132と電気的に接続される様子も示している。
【0085】
ここで、配線WLを介してワード線ドライバ回路122と電気的に接続されたメモリセルアレイ111は、層200_1に設けられたメモリセルアレイ111であり、配線WLを介してワード線ドライバ回路123と電気的に接続されたメモリセルアレイ111は、層200_2に設けられたメモリセルアレイ111である。
【0086】
1つのメモリセルアレイ111は、一列にm(mは1以上の整数)個、一行にn(nは1以上の整数)個、合計m×n個のメモリセル112を有し、メモリセル112は行列状に配置されている。なお、
図4では、層200_1および層200_2に同じメモリセルアレイ111が設けられているとしたが、層200_1に設けられたメモリセルアレイ111と、層200_2に設けられたメモリセルアレイ111において、有するメモリセル112の個数等が異なっていてもよい。
【0087】
図4では、メモリセル112のアドレスも表記しており、[1,1]、[i,1]、[m,1]、[1,j]、[i,j]、[m,j]、[1,n]、[i,n]、[m,n](iは1以上m以下の整数、jは1以上n以下の整数)は、メモリセル112のアドレスである。例えば、[i,j]と表記されたメモリセル112は、i行j列に配置されたメモリセル112である。
【0088】
アドレスと同様に、プレート線PL、書き込みワード線WWL、読み出しワード線RWL、配線BG1、配線BG2、読み出しビット線RBL、書き込みビット線WBLの後に付された、[1]、[i]、[m]、[j]、[n]も、行または列を表す番号である。
【0089】
i行j列に配置されたメモリセル112は、プレート線PL[i]、書き込みワード線WWL[i]、読み出しワード線RWL[i]、配線BG1[i]、配線BG2[i]、読み出しビット線RBL[j]、および、書き込みビット線WBL[j]と電気的に接続される。また、i行j列に配置されたメモリセル112は、プレート線PL[i]、書き込みワード線WWL[i]、読み出しワード線RWL[i]、配線BG1[i]、および、配線BG2[i]を介してワード線ドライバ回路122、または、ワード線ドライバ回路123と電気的に接続され、読み出しビット線RBL[j]、および、書き込みビット線WBL[j]を介してビット線ドライバ回路132と電気的に接続される。
【0090】
すなわち、記憶装置10は、2×m本のプレート線PL、2×m本の書き込みワード線WWL、2×m本の読み出しワード線RWL、2×m本の配線BG1、2×m本の配線BG2、n本の読み出しビット線RBL、および、n本の書き込みビット線WBLを有する。
【0091】
<メモリセル>
図5Aは、メモリセル112の構成例を示す回路図である。
【0092】
メモリセル112は、トランジスタ11、トランジスタ12、および、容量素子C11を有する。ここで、トランジスタ11を書き込みトランジスタ、トランジスタ12を読み出しトランジスタと呼ぶ場合がある。また、トランジスタ11およびトランジスタ12は、それぞれ、フロントゲート(単にゲートと呼ぶ場合がある)、および、バックゲートを有する。
【0093】
トランジスタ11のソースまたはドレインの一方は、書き込みビット線WBLと電気的に接続され、トランジスタ11のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ12のフロントゲート、および、容量素子C11の一方の端子と電気的に接続され、トランジスタ11のフロントゲートは、書き込みワード線WWLと電気的に接続され、トランジスタ11のバックゲートは配線BG1と電気的に接続される。
【0094】
トランジスタ12のソースまたはドレインの一方は、読み出しビット線RBLと電気的に接続され、トランジスタ12のソースまたはドレインの他方は、読み出しワード線RWLと電気的に接続され、トランジスタ12のバックゲートは配線BG2と電気的に接続される。また、容量素子C11の他方の端子は、プレート線PLと電気的に接続される。
【0095】
ここで、配線BG1は、トランジスタ11のバックゲートに、所定の電位を印加するための配線として機能し、配線BG2は、トランジスタ12のバックゲートに、所定の電位を印加するための配線として機能し、プレート線PLは、容量素子C11の他方の端子に、所定の電位を印加するための配線として機能する。
【0096】
また、トランジスタ11のソースまたはドレインの他方と、トランジスタ12のフロントゲート、および、容量素子C11の一方の端子が、電気的に接続された接続部をノードN11と呼称する。トランジスタ11は、ノードN11と、書き込みビット線WBLとを、導通または非導通とするスイッチとしての機能を有する。また、メモリセル112は、容量素子C11を有さない構成としてもよい。
【0097】
データの書き込みは、書き込みワード線WWLにハイレベルの電位を印加してトランジスタ11を導通状態とし、ノードN11と書き込みビット線WBLとを電気的に接続することによって行われる。具体的には、トランジスタ11が導通状態のとき、書き込みビット線WBLに書き込むデータに対応する電位を印加し、ノードN11に当該電位を書き込む。その後、書き込みワード線WWLにローレベルの電位を印加し、トランジスタ11を非導通状態とすることによって、ノードN11の電位を保持する。
【0098】
データの読み出しは、読み出しビット線RBLに所定の電位を印加し、その後、読み出しビット線RBLを電気的に浮遊(フローティング)状態とし、かつ、読み出しワード線RWLにローレベルの電位を印加することによって行われる。以後、読み出しビット線RBLに所定の電位を印加し、その後、読み出しビット線RBLをフローティング状態とすることを、読み出しビット線RBLをプリチャージする、と表現する。
【0099】
例えば、読み出しビット線RBLに電位Vddをプリチャージすることで、トランジスタ12はソースとドレインとの間に電位差を有し、トランジスタ12のソースとドレインとの間に流れる電流は、ノードN11に保持されている電位によって決まる。そのため、読み出しビット線RBLがフローティング状態のときの、読み出しビット線RBLの電位変化を読み出すことによって、ノードN11に保持されている電位を読み出すことができる。
【0100】
また、データを書き込むメモリセル112が配置されている行は、ハイレベルの電位を印加する書き込みワード線WWLによって選択され、データを読み出すメモリセル112が配置されている行は、ローレベルの電位を印加する読み出しワード線RWLによって選択される。逆に、データを書き込まないメモリセル112が配置されている行は、書き込みワード線WWLにローレベルの電位を印加し、データを読み出さないメモリセル112が配置されている行は、読み出しワード線RWLに読み出しビット線RBLにプリチャージする電位と同じ電位を印加することで、非選択とすることができる。
【0101】
メモリセル112は、ノードN11に電荷を蓄積し保持することで、データを記憶することができる。本実施の形態では、ノードN11に、2値のデータを記憶できるものとする。
【0102】
また、メモリセル112は、2トランジスタ1容量素子(または、2トランジスタ)で構成されるゲインセル型のメモリセルである。ゲインセル型のメモリセルは、電荷を蓄積する容量が小さい場合でも、蓄積した電荷を直近のトランジスタで増幅することで、メモリとしての動作を行うことができる。メモリセル112は、上述したNOSRAMである。
【0103】
<トランジスタ>
トランジスタ11およびトランジスタ12は、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタ(OSトランジスタ)である。例えば、トランジスタ11およびトランジスタ12のチャネル形成領域に、インジウム、元素M(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)、亜鉛のいずれか一つを有する金属酸化物を用いることができる。特に、インジウム、ガリウム、亜鉛からなる金属酸化物であることが好ましい。
【0104】
OSトランジスタはオフ電流が非常に小さいため、トランジスタ11にOSトランジスタを用いることで、ノードN11に書き込んだ電位を長時間保持することができる。すなわち、メモリセル112に書き込んだデータを長時間保持することができる。
【0105】
または、トランジスタ11にOSトランジスタを用いることで、容量素子C11の容量を小さくすることができる。例えば、容量素子C11として、トランジスタのゲート容量や、配線の寄生容量等を利用することができる。そのため、メモリセル112において、トランジスタや配線とは別に容量素子を作成する必要がなく、メモリセル112は、容量素子C11を有さない構成としてもよい。メモリセル112が容量素子C11を有さない構成とすることで、メモリセル112の面積を小さくできる。
【0106】
また、OSトランジスタは薄膜トランジスタであるため、トランジスタ11およびトランジスタ12にOSトランジスタを用いることで、メモリセルアレイ111は、周辺回路101に積層して設けることができる。
【0107】
トランジスタ11およびトランジスタ12が有するバックゲートに関して、トランジスタ11およびトランジスタ12のバックゲートに、配線BG1または配線BG2を介して所定の電位を印加することで、トランジスタ11およびトランジスタ12のしきい値電圧を増減することができる。
【0108】
具体的には、トランジスタ11およびトランジスタ12のバックゲートに印加する電位を高くすることで、しきい値電圧はマイナスにシフトし、トランジスタ11およびトランジスタ12のバックゲートに印加する電位を低くすることで、しきい値電圧はプラスにシフトする。しきい値電圧をマイナスにシフトすることで、トランジスタのオン電流を増加することができ、メモリセル112は、高速動作を行うことができる。しきい値電圧をプラスにシフトすることで、トランジスタのオフ電流を低減することができ、メモリセル112は、データを長時間保持することができる。
【0109】
図5Aに示すメモリセル112において、トランジスタ11のバックゲートは配線BG1と電気的に接続され、トランジスタ12のバックゲートは配線BG2と電気的に接続されるため、配線BG1に印加する電位を低くすることでトランジスタ11のオフ電流を低減し、配線BG2に印加する電位を高くすることでトランジスタ12のオン電流を増加することができる。トランジスタ11およびトランジスタ12を、それぞれの目的に合わせたトランジスタとすることができる。または、配線BG1と配線BG2をまとめて一本の配線とし、トランジスタ11のバックゲートと、トランジスタ12のバックゲートに、同じ電位を印加してもよい。
【0110】
または、配線BG2を、ワード線ドライバ回路122またはワード線ドライバ回路123を用いて、駆動してもよい。ワード線ドライバ回路122またはワード線ドライバ回路123は、読み出し対象行の配線BG2に印加する電位を高くすることで、読み出し動作時にトランジスタ12のオン電流を増加することができる。逆に、読み出し対象行以外の配線BG2に低い電位を印加することで、読み出し動作を行っていないトランジスタ12のオフ電流を低減することができる。
【0111】
データの読み出し動作が行われているメモリセル112が有するトランジスタ12のオン電流を増加することで、メモリセル112の読み出し動作を高速にし、それ以外のメモリセル112が有するトランジスタ12のオフ電流を低減することで、読み出しビット線RBLにリークする電流を小さくすることができる。読み出しビット線RBLにリークする電流を小さくすることで、読み出し動作の精度を高めることができる。
【0112】
<メモリセル2>
または、トランジスタ11が有するバックゲートとトランジスタ11が有するフロントゲートとを電気的に接続し、トランジスタ12が有するバックゲートとトランジスタ12が有するフロントゲートとを電気的に接続してもよい。
図5Bは、メモリセル113の構成例を示す回路図である。
【0113】
メモリセル113は、トランジスタ11、トランジスタ12、および、容量素子C11を有する。
【0114】
トランジスタ11のソースまたはドレインの一方は、書き込みビット線WBLと電気的に接続され、トランジスタ11のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ12のフロントゲート、トランジスタ12のバックゲート、および、容量素子C11の一方の端子と電気的に接続され、トランジスタ11のフロントゲートは、書き込みワード線WWL、および、トランジスタ11のバックゲートと電気的に接続される。
【0115】
トランジスタ12のソースまたはドレインの一方は、読み出しビット線RBLと電気的に接続され、トランジスタ12のソースまたはドレインの他方は、読み出しワード線RWLと電気的に接続される。また、容量素子C11の他方の端子は、プレート線PLと電気的に接続される。
【0116】
トランジスタ11が有するバックゲートとトランジスタ11が有するフロントゲートとを電気的に接続することで、トランジスタ11のオン電流を増加することができる。また、トランジスタ12が有するバックゲートとトランジスタ12が有するフロントゲートとを電気的に接続することで、トランジスタ12のオン電流を増加することができる。すなわち、メモリセル113は、高速動作を行うことができる。
【0117】
または、トランジスタ11およびトランジスタ12を、それぞれ、バックゲートを有さないトランジスタとしてもよい。トランジスタ11およびトランジスタ12を、それぞれ、フロントゲートのみ有するトランジスタとすることで、トランジスタの製造工程を簡略化することができる。
【0118】
<ビット線ドライバ回路の構成例>
ビット線ドライバ回路132には、列ごとに、
図6に示す回路50が設けられている。
図6は、回路50の構成例を示す回路図である。本実施の形態では、メモリセルアレイ111は、一行に128個のメモリセル112を有するものとする(n=128)。
【0119】
回路50は、トランジスタ61乃至トランジスタ66、センスアンプ回路51、AND回路52、アナログスイッチ53、および、アナログスイッチ54を有する。
【0120】
回路50は、信号SEN、信号SEP、信号BPR、信号RSEL[3:0]、信号WSEL、信号GRSEL[3:0]、信号GWSEL[15:0]に従い、動作する。なお、1つの回路50には、4ビットの信号RSEL[3:0]のうち、何れか1ビットの信号が入力される。複数のビットを有する他の信号(GRSEL[3:0]等)についても同様である。
【0121】
ビット線ドライバ回路132によって、データDIN[31:0]がメモリセルアレイ111に書き込まれ、データDOUT[31:0]がメモリセルアレイ111から読み出される。1つの回路50は、32ビットのデータDIN[31:0]のうち、何れか1ビットのデータをメモリセルアレイ111に書き込み、32ビットのデータDOUT[31:0]のうち、何れか1ビットのデータをメモリセルアレイ111から読み出す機能を有する。
【0122】
なお、データDIN[31:0]およびデータDOUT[31:0]は内部信号であり、データDIN[31:0]は、ページバッファ138からビット線ドライバ回路132に供給される信号であり、データDOUT[31:0]は、ビット線ドライバ回路132からページバッファ138へ出力される信号である。また、ページバッファ138には、記憶装置10の外部からデータ信号WDATAが入力され、ページバッファ138は、出力回路141を介して、データ信号RDATAを記憶装置10の外部へ出力する。
【0123】
ページバッファ138は、少なくとも、メモリセルアレイ111において一行に記憶できるデータ量(nビット)を記憶できることが好ましい。本実施の形態では、128ビット以上のデータを記憶できることが好ましい。
【0124】
<<プリチャージ回路>>
トランジスタ61は、プリチャージ回路133を構成する。トランジスタ61によって、読み出しビット線RBLは、プリチャージ電位Vpreにプリチャージされる。なお、本実施の形態では、プリチャージ電位Vpreとして、電位Vdd(ハイレベル)を用いた場合を説明する(
図6、
図7では、Vdd(Vpre)と表記する)。信号BPRはプリチャージ信号であり、信号BPRによって、トランジスタ61の導通状態が制御される。
【0125】
<<センスアンプ回路>>
センスアンプ回路51は、センスアンプ回路134を構成する。センスアンプ回路51は、読み出し動作時には、読み出しビット線RBLに入力されたデータのハイレベルまたはローレベルを判定する。また、センスアンプ回路51は、書き込み動作時には、書き込みドライバ回路136から入力されたデータDINを一時的に保持するラッチ回路として機能する。
【0126】
図6に示すセンスアンプ回路51は、ラッチ型センスアンプである。センスアンプ回路51は、2個のインバータ回路を有し、一方のインバータ回路の入力ノードが他方のインバータ回路の出力ノードと接続される。一方のインバータ回路の入力ノードをノードNS、出力ノードをノードNSBとすると、ノードNSおよびノードNSBにおいて相補データが保持される。
【0127】
信号SENおよび信号SEPは、センスアンプ回路51を活性化するためのセンスアンプイネーブル信号であり、レファレンス電位Vrefは、読み出し判定電位である。センスアンプ回路51は、レファレンス電位Vrefを基準に、活性化された時点のノードNSBの電位が、ハイレベルであるか、ローレベルであるかを判定する。
【0128】
AND回路52は、ノードNSと、書き込みビット線WBLとの導通状態を制御する。また、アナログスイッチ53は、ノードNSBと、読み出しビット線RBLとの導通状態を制御し、アナログスイッチ54は、ノードNSと、レファレンス電位Vrefを供給する配線との導通状態を制御する。
【0129】
すなわち、読み出しビット線RBLの電位はアナログスイッチ53によってノードNSBに伝えられ、読み出しビット線RBLの電位がレファレンス電位Vrefより低くなると、センスアンプ回路51は、読み出しビット線RBLはローレベルであると判定する。また、読み出しビット線RBLの電位がレファレンス電位Vrefより低くならない場合、センスアンプ回路51は、読み出しビット線RBLはハイレベルであると判定する。
【0130】
信号WSELは、書き込み選択信号であり、AND回路52を制御する。信号RSEL[3:0]は、読み出し選択信号であり、アナログスイッチ53およびアナログスイッチ54を制御する。
【0131】
<<出力MUX回路>>
トランジスタ62およびトランジスタ63は、出力MUX回路135を構成する。信号GRSEL[3:0]は、グローバル読み出し選択信号であり、出力MUX回路135を制御する。出力MUX回路135は、128本の読み出しビット線RBLから、データを読み出す32本の読み出しビット線RBLを選択する機能を有する。出力MUX回路135は、128入力32出力のマルチプレクサとして機能する。
【0132】
出力MUX回路135は、センスアンプ回路134から、データDOUT[31:0]を読み出し、ページバッファ138に出力する。
【0133】
<<書き込みドライバ回路>>
トランジスタ64乃至トランジスタ66は、書き込みドライバ回路136を構成する。信号GWSEL[15:0]は、グローバル書き込み選択信号であり、書き込みドライバ回路136を制御する。書き込みドライバ回路136は、データDIN[31:0]をセンスアンプ回路134に書き込む機能を有する。
【0134】
書き込みドライバ回路136は、データDIN[31:0]を書き込む列を選択する機能を有する。書き込みドライバ回路136は、信号GWSEL[15:0]に従い、バイト単位、ハーフワード単位、または、1ワード単位のデータ書き込みを行う。
【0135】
回路50は、4列ごとに、データDIN[h](hは0以上31以下の整数)と電気的に接続される。また、回路50は、4列ごとに、データDOUT[h]と電気的に接続される。
【0136】
<メモリセルの動作例>
図7は、メモリセル112の動作例を説明するタイミングチャートである。
図7では、メモリセル112の書き込み動作および読み出し動作における、書き込みワード線WWL、読み出しワード線RWL、読み出しビット線RBL、および、書き込みビット線WBLの電位関係について説明する。また、配線BG2を、ワード線ドライバ回路122またはワード線ドライバ回路123を用いて駆動する場合についても、後ほど説明する。
【0137】
図7において、期間Twriteは、書き込み動作を行う期間であり、期間Treadは、読み出し動作を行う期間である。また、読み出しワード線RWL、読み出しビット線RBL、および、書き込みビット線WBLのハイレベルは電位Vddであり、ローレベルは電位Vssである。書き込みワード線WWLのハイレベルは電位Vdhであり、書き込みワード線WWLのローレベルは電位Vssである。
【0138】
<<書き込み動作>>
期間Twriteにおいて、書き込みビット線WBLには、書き込むデータに対応する電位Vdataが印加される。書き込みビット線WBLに書き込むデータに対応する電位Vdataが印加された状態で、データを書き込むメモリセル112が配置されている行の書き込みワード線WWLに電位Vdhが印加されると、トランジスタ11が導通状態となり、書き込むデータに対応する電位VdataがノードN11に書き込まれる。
【0139】
また、期間Twriteにおいて、読み出しワード線RWLおよび読み出しビット線RBLには、電位Vddが印加される。
【0140】
<<読み出し動作>>
期間Treadにおいて、読み出しビット線RBLには、電位Vddがプリチャージされている。読み出しビット線RBLがフローティングの状態で、データを読み出すメモリセル112が配置されている行の読み出しワード線RWLに電位Vssが印加されると、ノードN11に書き込まれたデータがハイレベルの場合、トランジスタ12が導通状態となり、読み出しビット線RBLの電位が下がり始める。
【0141】
読み出しビット線RBLの電位がΔV1下がり、レファレンス電位Vrefより低くなると、センスアンプ回路51は、読み出しビット線RBLはローレベルであると判定する。
【0142】
また、読み出しビット線RBLがフローティングの状態で、データを読み出すメモリセル112が配置されている行の読み出しワード線RWLに電位Vssが印加されても、ノードN11に書き込まれたデータがローレベルの場合、トランジスタM12が導通状態とならないため、読み出しビット線RBLの電位は変化しない。この場合、センスアンプ回路51は、読み出しビット線RBLはハイレベルであると判定する。
【0143】
期間Treadにおいて、書き込みビット線WBLおよび書き込みワード線WWLには、電位Vssが印加される。
【0144】
配線BG2を、ワード線ドライバ回路122またはワード線ドライバ回路123を用いて駆動する場合、例えば、配線BG2のハイレベルを電位Vdh、配線BG2のローレベルを電位Vssとすることができる。
【0145】
期間Twriteにおいて、配線BG2には電位Vssが印加され、期間Treadにおいて、データを読み出すメモリセル112が配置されている行の配線BG2には電位Vdhが印加される。
【0146】
配線BG2に、電位Vdhが印加されることで、データを読み出すメモリセル112が有するトランジスタ12のオン電流を増加することができる。また、配線BG2に、電位Vssが印加されることで、トランジスタ12のオフ電流を低減することができる。
【0147】
上述のように、記憶装置10は、nチャネル型のトランジスタで構成されたゲインセル型のメモリセルを有し、書き込みワード線WWL、読み出しワード線RWL、書き込みビット線WBL、および、読み出しビット線RBLは、3種類の電位(電位Vss、電位Vdd、および、電位Vdh)によって、ハイレベルまたはローレベルが表される。すなわち、少ない電源数で記憶装置10を動作させることができ、記憶装置10を搭載する電子機器のコストを低減することができる。
【0148】
ゲインセル型のメモリセルは、1メモリセルあたり少なくとも2つのトランジスタが必要であり、単位面積あたりに配置できるメモリセルの数を増やすことが難しかったが、メモリセル112を構成するトランジスタにOSトランジスタを用いることで、メモリセルアレイ111を、周辺回路101を形成した半導体基板SUB上に複数積層して設けることができる。すなわち、単位面積あたりに記憶できるデータ量を増やすことができる。
【0149】
また、ゲインセル型のメモリセルは、電荷を蓄積する容量が小さい場合でも、蓄積した電荷を直近のトランジスタで増幅することで、メモリとしての動作を行うことができる。さらに、オフ電流が非常に小さいOSトランジスタを、メモリセル112を構成するトランジスタに用いることで、容量素子C11の容量を小さくできる。または、容量素子C11として、トランジスタのゲート容量や配線の寄生容量等を利用することができ、容量素子C11を省略することができる。すなわち、メモリセル112の面積を小さくできる。
【0150】
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0151】
(実施の形態2)
以下では、上記実施の形態に係る記憶装置の一例について、
図8A、
図8B、
図9A、
図9B、
図10乃至
図13を用いて説明する。まず、当該記憶装置を構成するメモリセルの構成例について説明する。
【0152】
<メモリセルの構成例>
図8Aおよび
図8Bに、本発明の一態様に係る記憶装置を構成するメモリセル860の構造を示す。
図8Aは、メモリセル860周辺の上面図である。また、
図8Bは、メモリセル860の断面図であり、
図8Bは、
図8AにA1-A2の一点鎖線で示す部位に対応する。
図8Bにおいて、トランジスタ600のチャネル長方向の断面と、トランジスタ700のチャネル幅方向の断面を示す。なお、
図8Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。なお、
図8Aに示す、X方向、Y方向、およびZ方向は、それぞれが互いに直交または交差する方向である。ここで、X方向およびY方向は基板面に対して平行または概略平行であり、Z方向は基板面に対して垂直または概略垂直であることが好ましい。
【0153】
本実施の形態に示す、メモリセル860は、トランジスタ600、トランジスタ700、および容量素子655を有する。メモリセル860は、先の実施の形態に示すメモリセル112と対応しており、トランジスタ600、トランジスタ700、および容量素子655は、それぞれ、先の実施の形態に示す、トランジスタ11、トランジスタ12、容量素子C11と対応する。よって、トランジスタ600のソースおよびドレインの一方と、トランジスタ700のゲートと、容量素子655の電極の一方は電気的に接続されている。
【0154】
図8A、
図8Bに示すように、メモリセル860では、絶縁体614上にトランジスタ600およびトランジスタ700が配置され、また、トランジスタ600およびトランジスタ700の一部の上に絶縁体680が配置され、トランジスタ600、トランジスタ700および絶縁体680の上に絶縁体682が配置され、絶縁体682の上に絶縁体685が配置され、絶縁体685の上に容量素子655が配置され、容量素子655の上に絶縁体688が配置される。絶縁体614、絶縁体680、絶縁体682、絶縁体685、および絶縁体688は、層間膜として機能する。
【0155】
ここで、トランジスタ600は、絶縁体614上の絶縁体616と、絶縁体616に埋め込まれるように配置された導電体605(導電体605a、および導電体605b)と、絶縁体616上、および導電体605上の絶縁体622と、絶縁体622上の絶縁体624と、絶縁体624上の酸化物630aと、酸化物630a上の酸化物630bと、酸化物630b上の酸化物643aおよび酸化物643bと、酸化物643a上の導電体642aと、酸化物643b上の導電体642bと、絶縁体624の一部、酸化物630aの側面、酸化物630bの側面、酸化物643aの側面、導電体642aの側面、導電体642aの上面、酸化物643bの側面、導電体642bの側面、および導電体642bの上面とそれぞれ接する絶縁体672と、絶縁体672上の絶縁体673と、酸化物630b上の酸化物630cと、酸化物630c上の絶縁体650と、絶縁体650上に位置し、酸化物630cと重なる導電体660(導電体660a、および導電体660b)と、を有する。また、酸化物630cは、酸化物643aの側面、酸化物643bの側面、導電体642aの側面および導電体642bの側面とそれぞれ接する。ここで、
図8Bに示すように、導電体660の上面は、絶縁体650の上面、酸化物630cの上面、および絶縁体680の上面と略一致して配置される。また、絶縁体682は、導電体660、絶縁体650、酸化物630c、および絶縁体680のそれぞれの上面と接する。
【0156】
なお、以下において、酸化物630a、酸化物630b、および酸化物630cをまとめて酸化物630と呼ぶ場合がある。また、酸化物643aと酸化物643bをまとめて酸化物643と呼ぶ場合がある。また、導電体642aと導電体642bをまとめて導電体642と呼ぶ場合がある。
【0157】
トランジスタ600において、導電体660は、ゲートとして機能し、導電体642aおよび導電体642bは、それぞれソースまたはドレインとして機能する。また、導電体605は、バックゲートとして機能する。トランジスタ600は、ゲートとして機能する導電体660が、絶縁体680などによって形成される開口を埋めるように自己整合的に形成される。このように、本実施の形態に係る記憶装置では、位置合わせをせずに、導電体660を導電体642aと導電体642bの間の領域に確実に配置することができる。
【0158】
また、トランジスタ700は、絶縁体614上の絶縁体616と、絶縁体616に埋め込まれるように配置された導電体705(導電体705a、および導電体705b)と、絶縁体616上、および導電体705上の絶縁体622と、絶縁体622上の絶縁体624と、絶縁体624上の酸化物730aと、酸化物730a上の酸化物730bと、酸化物730b上の酸化物743aおよび酸化物743bと、酸化物743a上の導電体742aと、酸化物743b上の導電体742bと、絶縁体624の一部、酸化物730aの側面、酸化物730bの側面、酸化物743aの側面、導電体742aの側面、導電体742aの上面、酸化物743bの側面、導電体742bの側面、および導電体742bの上面とそれぞれ接する絶縁体672と、絶縁体672上の絶縁体673と、酸化物730b上の酸化物730cと、酸化物730c上の絶縁体750と、絶縁体750上に位置し、酸化物730cと重なる導電体760(導電体760a、および導電体760b)と、を有する。また、酸化物730cは、酸化物743aの側面、酸化物743bの側面、導電体742aの側面および導電体742bの側面とそれぞれ接する。ここで、
図8Bに示すように、導電体760の上面は、絶縁体750の上面、酸化物730cの上面、および絶縁体680の上面と略一致して配置される。また、絶縁体682は、導電体760、絶縁体750、酸化物730c、および絶縁体680のそれぞれの上面と接する。
【0159】
また、以下において、酸化物730a、酸化物730b、および酸化物730cをまとめて酸化物730と呼ぶ場合がある。また、酸化物743aと酸化物743bをまとめて酸化物743と呼ぶ場合がある。また、導電体742aと導電体742bをまとめて導電体742と呼ぶ場合がある。
【0160】
トランジスタ700において、導電体760は、ゲートとして機能し、導電体742aおよび導電体742bは、それぞれソースまたはドレインとして機能する。また、導電体705は、バックゲートとして機能する。トランジスタ700は、ゲートとして機能する導電体760が、絶縁体680などによって形成される開口を埋めるように自己整合的に形成される。このように、本実施の形態に係る記憶装置では、位置合わせをせずに、導電体760を導電体742aと導電体742bの間の領域に確実に配置することができる。
【0161】
ここで、トランジスタ700は、トランジスタ600と同じ層に形成され、同様の構成を有する。よって、トランジスタ700のチャネル長方向の断面は図示されていないが、
図8Bに示すトランジスタ600のチャネル長方向の断面と同様の構造を有する。つまり、断面図において図示されていない、酸化物743と導電体742も、
図8Bに示す、酸化物643と導電体642と同様の構造を有する。なお、トランジスタ600のチャネル幅方向の断面は図示されていないが、
図8Bに示すトランジスタ700のチャネル幅方向の断面と同様の構造を有する。
【0162】
よって、酸化物730は、酸化物630と同様の構成を有し、酸化物630の記載を参酌することができる。導電体705は、導電体605と同様の構成を有し、導電体605の記載を参酌することができる。酸化物743は、酸化物643と同様の構成を有し、酸化物643の記載を参酌することができる。導電体742は、導電体642と同様の構成を有し、導電体642の記載を参酌することができる。絶縁体750は、絶縁体650と同様の構成を有し、絶縁体650の記載を参酌することができる。導電体760は、導電体660と同様の構成を有し、導電体660の記載を参酌することができる。以下において、特段の記載がない限り、上記のようにトランジスタ700の構成は、トランジスタ600の構成の記載を参酌することができる。
【0163】
ここで、トランジスタ600およびトランジスタ700は、チャネル形成領域を含む酸化物630および酸化物730に、酸化物半導体として機能する金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう)を用いることが好ましい。
【0164】
例えば、酸化物半導体として機能する金属酸化物は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。エネルギーギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタ600の非導通状態におけるリーク電流(オフ電流)を極めて小さくすることができる。
【0165】
酸化物半導体として、例えば、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、錫、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、または錫を用いるとよい。また、酸化物半導体として、In-M酸化物、In-Zn酸化物、またはM-Zn酸化物を用いてもよい。
【0166】
チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたトランジスタ600およびトランジスタ700は、非導通状態におけるリーク電流(オフ電流)が極めて小さいため、低消費電力の記憶装置を提供できる。また、トランジスタ600およびトランジスタ700は、高温環境下でもオフ電流がほとんど増加しない。具体的には室温以上200℃以下の環境温度下でもオフ電流がほとんど増加しない。よって、高温環境下においても動作が安定し、信頼性の良好な記憶装置を実現できる。
【0167】
トランジスタ600のオフ電流が極めて小さいので、容量素子655の容量値を小さく設定することができる。これにより、メモリセル860の占有面積を小さくし、記憶装置の集積化を図ることができる。
【0168】
図8Aに示すように、導電体742a、導電体660、導電体605、および導電体705は、Y方向に延在していることが好ましい。このような構造にすることで、導電体742aは、先の実施の形態に示す読み出しワード線RWLとして機能する。また、導電体660は、先の実施の形態に示す書き込みワード線WWLとして機能する。また、導電体605は、先の実施の形態に示す配線BG1として機能する。また、導電体705は、先の実施の形態に示す配線BG2として機能する。
【0169】
容量素子655は、絶縁体685上の導電体646aと、導電体646aを覆う絶縁体686と、導電体646aの少なくとも一部と重畳して絶縁体686上に配置される導電体656と、を有する。ここで、導電体646aは、容量素子655の一方の電極として機能し、導電体656は、容量素子655の他方の電極として機能する。また、絶縁体686は容量素子655の誘電体として機能する。
【0170】
また、導電体656は、Y方向に延在させて、先の実施の形態に示すプレート線PLとして機能させることが好ましい。
【0171】
また、絶縁体672、絶縁体673、絶縁体680、絶縁体682、および絶縁体685に開口が形成されており、プラグとして機能する導電体640(導電体640a、導電体640b、導電体640c、および導電体640d)が当該開口に埋め込まれるように設けられる。また、導電体640は、絶縁体685の上面に露出して設けられる。
【0172】
導電体640aは、下面が導電体642aに接し、上面が導電体646aに接する。導電体640cは、下面が導電体760に接し、上面が導電体646aに接する。このようにして、トランジスタ600のソースおよびドレインの一方と、トランジスタ700のゲートと、容量素子655の電極の一方は電気的に接続される。
【0173】
導電体640bは、下面が導電体642bに接して設けられる。また、導電体640bの上面に接して導電体646bが設けられる。導電体646bは導電体646aと同じ層に形成され、同様の構成を有する。
図8Aに示すように、導電体646bはX方向に延在していることが好ましい。このような構造にすることで、導電体646bは、先の実施の形態に示す書き込みビット線WBLとして機能する。
【0174】
また、断面図に図示していないが、導電体640dは、下面が導電体742bに接して設けられる。また、導電体640dの上面に接して導電体746が設けられる。導電体746は導電体646aと同じ層に形成され、同様の構成を有する。
図8Aに示すように、導電体746はX方向に延在していることが好ましい。このような構造にすることで、導電体746は、先の実施の形態に示す読み出しビット線RBLとして機能する。
【0175】
図8Bに示すように、トランジスタ600とトランジスタ700を同じ層に形成することで、トランジスタ600とトランジスタ700を同じ工程で形成することができるので、記憶装置製造の工程を短縮し、生産性を向上させることができる。
【0176】
なお、メモリセル860において、トランジスタ600のチャネル長方向とトランジスタ700のチャネル幅方向が平行になるように、トランジスタ600、トランジスタ700および容量素子655を設けているが、本実施の形態に示す記憶装置はこれに限られるものではない。
図8等に示すメモリセル860は、記憶装置の構成の一例であり、回路構成や駆動方法に応じて、適切な構造のトランジスタまたは容量素子などを、適宜配置すればよい。
【0177】
[メモリセルの詳細な構成]
以下では、本発明の一態様に係るメモリセル860の詳細な構成について説明する。以下において、トランジスタ700の構成要素は、トランジスタ600の構成要素の記載を参酌できるものとする。
【0178】
図8に示すように、酸化物630は、絶縁体624上の酸化物630aと、酸化物630a上の酸化物630bと、酸化物630b上に配置され、少なくとも一部が酸化物630bの上面に接する酸化物630cと、を有することが好ましい。ここで、酸化物630cの側面は、酸化物643a、酸化物643b、導電体642a、導電体642b、絶縁体672、絶縁体673、および絶縁体680に接して設けられていることが好ましい。
【0179】
酸化物630b下に酸化物630aを有することで、酸化物630aよりも下方に形成された構造物から、酸化物630bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物630b上に酸化物630cを有することで、酸化物630cよりも上方に形成された構造物から、酸化物630bへの不純物の拡散を抑制することができる。
【0180】
なお、トランジスタ600では、チャネル形成領域と、その近傍において、酸化物630a、酸化物630b、および酸化物630cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化物630bの単層、酸化物630bと酸化物630aの2層構造、酸化物630bと酸化物630cの2層構造、または4層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。例えば、酸化物630cを2層構造にして、4層の積層構造を設ける構成にしてもよい。
【0181】
また、酸化物630は、各金属原子の原子数比が異なる複数の酸化物層の積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物630aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物630bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物630aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物630bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物630bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物630aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物630cは、酸化物630aまたは酸化物630bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。なお、酸化物630cに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物630bに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きくなってもよい。
【0182】
具体的には、例えば元素Mにガリウムを用いた場合、酸化物630aとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]もしくはその近傍の組成、または1:1:0.5[原子数比]もしくはその近傍の組成の金属酸化物を用いればよい。
【0183】
また、酸化物630bとして、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]もしくはその近傍の組成、または1:1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物630bとして、In:Ga:Zn=5:1:3[原子数比]もしくはその近傍の組成、またはIn:Ga:Zn=10:1:3[原子数比]もしくはその近傍の組成の金属酸化物を用いてもよい。また、酸化物630bとして、In-Zn酸化物(例えば、In:Zn=2:1[原子数比]もしくはその近傍の組成、In:Zn=5:1[原子数比]もしくはその近傍の組成、またはIn:Zn=10:1[原子数比]もしくはその近傍の組成)を用いてもよい。また、酸化物630bとして、In酸化物を用いても良い。
【0184】
また、酸化物630cとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比もしくはその近傍の組成]、Ga:Zn=2:1[原子数比]もしくはその近傍の組成、またはGa:Zn=2:5[原子数比]もしくはその近傍の組成の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物630cに、酸化物630bに用いることのできる材料を適用し、単層または積層で設けてもよい。例えば、酸化物630cを積層構造とする場合の具体例としては、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]もしくはその近傍の組成と、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]もしくはその近傍の組成との積層構造、Ga:Zn=2:1[原子数比]もしくはその近傍の組成と、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]もしくはその近傍の組成との積層構造、Ga:Zn=2:5[原子数比]もしくはその近傍の組成と、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]もしくはその近傍の組成との積層構造、酸化ガリウムと、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]もしくはその近傍の組成との積層構造などが挙げられる。
【0185】
また、酸化物630b、630cとして、膜中のインジウムの比率を高めることで、トランジスタのオン電流、または電界効果移動度などを高めることが出来るため、好適である。また、上述した近傍の組成とは、所望の原子数比の±30%の範囲を含む。
【0186】
また、酸化物630bは、結晶性を有していてもよい。例えば、後述するCAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)を用いることが好ましい。CAAC-OSなどの結晶性を有する酸化物は、不純物や欠陥(酸素欠損など)が少なく、結晶性の高い、緻密な構造を有している。よって、ソース電極またはドレイン電極による、酸化物630bからの酸素の引き抜きを抑制することができる。また、加熱処理を行っても、酸化物630bから酸素が、引き抜かれることを低減できるので、トランジスタ600は、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対して安定である。
【0187】
また、酸化物630cは、絶縁体680を含む層間膜に設けた開口内に設けられることが好ましい。従って、絶縁体650、および導電体660は、酸化物630cを介して、酸化物630b、および酸化物630aの積層構造と重畳する領域を有する。当該構造とすることで、酸化物630cと絶縁体650とを連続成膜により、形成することが可能となるため、酸化物630と絶縁体650との界面を清浄に保つことができる。従って、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ600は高いオン電流、および高い周波数特性を得ることができる。
【0188】
酸化物630(例えば、酸化物630b)には、キャリア濃度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体のキャリア濃度を低くする場合においては、酸化物半導体中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。なお、酸化物半導体中の不純物としては、例えば、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0189】
特に、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸化物半導体中に酸素欠損(VO:oxygen vacancyともいう)を形成する場合がある。さらに、酸素欠損に水素が入った欠陥(以下、VOHと呼ぶ場合がある)はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。また、酸化物半導体中の水素は、熱、電界などのストレスによって動きやすいため、酸化物半導体に多くの水素が含まれると、トランジスタの信頼性が悪化する恐れもある。
【0190】
VOHは、酸化物半導体のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、酸化物半導体においては、ドナー濃度ではなく、キャリア濃度で評価される場合がある。よって、本明細書等では、酸化物半導体のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア濃度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア濃度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。
【0191】
以上より、酸化物半導体を酸化物630に用いる場合、酸化物630中のVOHをできる限り低減し、高純度真性または実質的に高純度真性にすることが好ましい。このように、VOHが十分低減された酸化物半導体を得るには、酸化物半導体中の水分、水素などの不純物を除去すること(脱水処理、脱水素化処理と記載する場合がある)と、酸化物半導体に酸素を供給して酸素欠損を補填すること(加酸素化処理と記載する場合がある)が好ましい。VOHなどの不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0192】
例えば、酸化物630bの二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とすることができる。水素などの不純物が十分に低減された酸化物630をトランジスタ600のチャネル形成領域に用いることで、ノーマリーオフ特性にすることができ、安定した電気特性を有するとともに、信頼性を向上させることができる。
【0193】
また、酸化物630に酸化物半導体を用いる場合、チャネル形成領域として機能する領域の酸化物半導体のキャリア濃度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域として機能する領域の酸化物半導体のキャリア濃度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0194】
そこで、絶縁体614、絶縁体622、絶縁体672、絶縁体673、および絶縁体682として、不純物の拡散を抑制する材料(以下、不純物に対するバリア性材料ともいう)を用いて、水素などの不純物が酸化物630に拡散するのを低減することが好ましい。なお、本明細書等において、バリア性とは、対応する物質の拡散を抑制する機能(透過性が低いともいう)とする。または、対応する物質を、捕獲、および固着する(ゲッタリングともいう)機能とする。また、本明細書等において、バリア性を有する絶縁膜をバリア絶縁膜と呼ぶ場合がある。
【0195】
例えば、水素、および酸素に対する拡散を抑制する機能を有する材料として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、インジウムガリウム亜鉛酸化物、窒化シリコン、または窒化酸化シリコンなどがある。特に、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンは、水素に対するバリア性が高いため、封止する材質として用いることが好ましい。
【0196】
また、例えば、水素を捕獲、および固着する機能を有する材料として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、インジウムガリウム亜鉛酸化物、などの金属酸化物がある。
【0197】
例えば、絶縁体614として、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。これにより、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ600側に拡散するのを抑制することができる。または、絶縁体624などに含まれる酸素が、基板側に拡散するのを抑制することができる。
【0198】
導電体605は、酸化物630、および導電体660と、重なるように配置する。また、導電体605は、絶縁体616に埋め込まれて設けることが好ましい。
【0199】
導電体605がゲート電極として機能する場合、導電体605に印加する電位を、導電体660に印加する電位と、連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ600のしきい値電圧(Vth)を制御することができる。特に、導電体605に負の電位を印加することにより、トランジスタ600のVthをより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体605に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体660に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0200】
なお、導電体605は、
図8Aに示すように、酸化物630の導電体642aおよび導電体642bと重ならない領域の大きさよりも、大きく設けるとよい。特に、
図8Bに示すように、導電体605は、酸化物630のチャネル幅方向と交わる端部よりも外側の領域においても、延伸していることが好ましい。つまり、酸化物630のチャネル幅方向における側面の外側において、導電体605と、導電体660とは、絶縁体を介して重畳していることが好ましい。または、導電体605を大きく設けることによって、導電体605形成以降の作製工程のプラズマを用いた処理において、局所的なチャージング(チャージアップと言う)の緩和ができる場合がある。ただし、本発明の一態様はこれに限定されない。導電体605は、少なくとも導電体642aと、導電体642bとの間に位置する酸化物630と重畳すればよい。
【0201】
また、絶縁体624の底面を基準として、酸化物630aおよび酸化物630bと、導電体660とが、重ならない領域における導電体660の底面の高さは、酸化物630bの底面の高さより低い位置に配置されていることが好ましい。
【0202】
図に示すように、ゲートとして機能する導電体660は、チャネル形成領域の酸化物630bの側面および上面を酸化物630cおよび絶縁体650を介して覆う構造とすることにより、導電体660から生じる電界を、酸化物630bに生じるチャネル形成領域全体に作用させやすくなる。従って、トランジスタ600のオン電流を増大させ、周波数特性を向上させることができる。本明細書において、第1のゲート、および第2のゲートの電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(S-channel)構造とよぶ。
【0203】
また、導電体605aは、水または水素などの不純物および酸素の透過を抑制する導電体が好ましい。例えば、チタン、窒化チタン、タンタル、または窒化タンタルを用いることができる。また、導電体605bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。なお、導電体605を2層で図示したが、3層以上の多層構造としてもよい。
【0204】
また、絶縁体616、絶縁体680、絶縁体685、および絶縁体688は、絶縁体614よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体616、絶縁体680、絶縁体685、および絶縁体688として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、または空孔を有する酸化シリコンなどを適宜用いればよい。
【0205】
また、絶縁体616、絶縁体680、絶縁体685、および絶縁体688は、水素原子を含まない、または水素原子の含有量が少ない、化合物ガスを用いてCVD法またはALD法により成膜してもよい。
【0206】
上記絶縁膜の成膜では、成膜ガスとして、シリコン原子を含む分子を有するガスが主に用いられる。上記絶縁膜に含まれる水素を低減するには、当該シリコン原子を含む分子に含まれる水素原子が少ないことが好ましく、当該シリコン原子を含む分子が水素原子を含まないことがより好ましい。もちろん、シリコン原子を含む分子を有するガス以外の成膜ガスも、含有される水素原子が少ないことが好ましく、水素原子を含まないことがより好ましい。
【0207】
上記のようなシリコン原子を含む分子をSix-Ryで表すと、例えば、官能基Rとして、イソシアネート基(-N=C=O)、シアネート基(-O-C≡N)、シアノ基(-C≡N)、ジアゾ基(=N2)、アジド基(-N3)、ニトロソ基(-NO)、およびニトロ基(-NO2)の少なくとも一つを用いることができる。例えば、1≦x≦3、1≦y≦8、とすればよい。このようなシリコン原子を含む分子としては、例えば、テトライソシアネートシラン、テトラシアネートシラン、テトラシアノシラン、ヘキサイソシアネートシラン、オクタイソシアネートシラン等を用いることができる。ここでは、シリコン原子に同じ種類の官能基が結合する分子を例示したが、本実施の形態はこれに限られるものではない。シリコン原子に異なる種類の官能基が結合する構成にしてもよい。
【0208】
また、例えば、官能基Rとしてハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素、またはフッ素)を用いる構成にしてもよい。例えば、1≦x≦2、1≦y≦6、とすればよい。このようなシリコン原子を含む分子としては、例えば、テトラクロロシラン(SiCl4)、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6)等を用いることができる。塩素を官能基とする例を示したが、塩素以外の、臭素、ヨウ素、フッ素等のハロゲンを官能基として用いてもよい。また、シリコン原子に異なる種類のハロゲンが結合する構成にしてもよい。
【0209】
絶縁体622、および絶縁体624は、ゲート絶縁体としての機能を有する。
【0210】
ここで、酸化物630と接する絶縁体624は、加熱により酸素を脱離することが好ましい。本明細書では、加熱により離脱する酸素を過剰酸素と呼ぶことがある。例えば、絶縁体624は、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンなどを適宜用いればよい。酸素を含む絶縁体を酸化物630に接して設けることにより、酸化物630中の酸素欠損を低減し、トランジスタ600の信頼性を向上させることができる。
【0211】
絶縁体624として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、昇温脱離ガス分析(TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析)にて、酸素分子の脱離量が1.0×1018molecules/cm3以上、好ましくは1.0×1019molecules/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019molecules/cm3以上、または3.0×1020molecules/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
【0212】
絶縁体622は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ600に混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。例えば、絶縁体622は、絶縁体624より水素透過性が低いことが好ましい。絶縁体622および絶縁体672等によって、絶縁体624および酸化物630などを囲むことにより、外方から水または水素などの不純物がトランジスタ600に侵入することを抑制することができる。
【0213】
さらに、絶縁体622は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。例えば、絶縁体622は、絶縁体624より酸素透過性が低いことが好ましい。絶縁体622が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物630が有する酸素が、絶縁体622より下側へ拡散することを低減できるので、好ましい。また、導電体605が、絶縁体624や、酸化物630が有する酸素と反応することを抑制することができる。
【0214】
絶縁体622は、絶縁性材料であるアルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体622を形成した場合、絶縁体622は、酸化物630からの酸素の放出や、トランジスタ600の周辺部から酸化物630への水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0215】
または、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。または、これらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0216】
また、絶縁体622は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)または(Ba,Sr)TiO3(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いてもよい。例えば、絶縁体622を積層とする場合、酸化ジルコニウムと、酸化アルミニウムと、酸化ジルコニウムと、が順に形成された3層積層や、酸化ジルコニウムと、酸化アルミニウムと、酸化ジルコニウムと、酸化アルミニウムと、が順に形成された4層積層などを用いれば良い。また、絶縁体622としては、ハフニウムと、ジルコニウムとが含まれる化合物などを用いても良い。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁体の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁体として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0217】
なお、絶縁体622、および絶縁体624が、2層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0218】
また、酸化物630bと、ソース電極またはドレイン電極として機能する導電体642(導電体642aおよび導電体642b)と、の間に酸化物643(酸化物643aおよび酸化物643b)を配置してもよい。導電体642と、酸化物630とが接しない構成となるので、導電体642が、酸化物630の酸素を吸収することを抑制できる。つまり、導電体642の酸化を防止することで、導電体642の導電率の低下を抑制することができる。従って、酸化物643は、導電体642の酸化を抑制する機能を有することが好ましい。
【0219】
従って、酸化物643は、酸素の透過を抑制する機能を有することが好ましい。ソース電極やドレイン電極として機能する導電体642と酸化物630bとの間に酸素の透過を抑制する機能を有する酸化物643を配置することで、導電体642と、酸化物630bとの間の電気抵抗が低減されるので好ましい。このような構成とすることで、トランジスタ600の電気特性およびトランジスタ600の信頼性を向上させることができる。
【0220】
酸化物643として、元素Mを有する金属酸化物を用いてもよい。特に、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、または錫を用いるとよい。酸化物643は、酸化物630bよりも元素Mの濃度が高いことが好ましい。また、酸化物643として、酸化ガリウムを用いてもよい。また、酸化物643として、In-M-Zn酸化物等の金属酸化物を用いてもよい。具体的には、酸化物643に用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物630bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物643の膜厚は、0.5nm以上5nm以下が好ましく、より好ましくは、1nm以上3nm以下である。また、酸化物643は、結晶性を有すると好ましい。酸化物643が結晶性を有する場合、酸化物630中の酸素の放出を好適に抑制することが出来る。例えば、酸化物643としては、六方晶などの結晶構造であれば、酸化物630中の酸素の放出を抑制できる場合がある。
【0221】
なお、酸化物643は必ずしも設けなくてもよい。その場合、導電体642(導電体642a、および導電体642b)と酸化物630とが接することで、酸化物630中の酸素が導電体642へ拡散し、導電体642が酸化する場合がある。導電体642が酸化することで、導電体642の導電率が低下する蓋然性が高い。なお、酸化物630中の酸素が導電体642へ拡散することを、導電体642が酸化物630中の酸素を吸収する、と言い換えることができる。
【0222】
また、酸化物630中の酸素が導電体642(導電体642a、および導電体642b)へ拡散することで、導電体642aと酸化物630bとの間、および、導電体642bと酸化物630bとの間に異層が形成される場合がある。当該異層は、導電体642よりも酸素を多く含むため、当該異層は絶縁性を有すると推定される。このとき、導電体642と、当該異層と、酸化物630bとの3層構造は、金属-絶縁体-半導体からなる3層構造とみなすことができ、MIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造と呼ぶ、またはMIS構造を主としたダイオード接合構造と呼ぶ場合がある。
【0223】
なお、上記異層は、導電体642と酸化物630bとの間に形成されることに限られず、例えば、異層が、導電体642と酸化物630cとの間に形成される場合や、導電体642と酸化物630bとの間、および導電体642と酸化物630cとの間に形成される場合がある。
【0224】
酸化物643上には、ソース電極、およびドレイン電極として機能する導電体642(導電体642a、および導電体642b)が設けられる。導電体642の膜厚は、例えば、1nm以上50nm以下、好ましくは2nm以上25nm以下、とすればよい。
【0225】
導電体642としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。
【0226】
絶縁体672は、導電体642上面に接して設けられており、バリア絶縁膜として機能することが好ましい。また、絶縁体672上に、バリア絶縁膜として機能する絶縁体673を設けることが好ましい。このような構成にすることで、導電体642による、絶縁体680が有する過剰酸素の吸収を抑制することができる。また、導電体642の酸化を抑制することで、トランジスタ600と配線とのコンタクト抵抗の増加を抑制することができる。よって、トランジスタ600に良好な電気特性および信頼性を与えることができる。
【0227】
従って、絶縁体672および絶縁体673は、酸素の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。例えば、絶縁体672は、絶縁体680よりも酸素の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。絶縁体672としては、例えば、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を成膜するとよい。絶縁体673としては、例えば、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンなどを用いればよい。
【0228】
また、水または水素などの不純物が、絶縁体672および絶縁体673を介して配置されている絶縁体680などからトランジスタ600側に拡散するのを抑制することができる。このように、トランジスタ600を、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁体672、および絶縁体673で取り囲む構造とすることが好ましい。
【0229】
絶縁体650は、ゲート絶縁体として機能する。絶縁体650は、酸化物630cの上面に接して配置することが好ましい。絶縁体650は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
【0230】
絶縁体624と同様に、絶縁体650は、加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体650として、酸化物630cの上面に接して設けることにより、酸化物630bのチャネル形成領域に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体624と同様に、絶縁体650中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体650の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
【0231】
また、絶縁体650と導電体660との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体650から導電体660への酸素拡散を抑制することが好ましい。酸素の拡散を抑制する金属酸化物を設けることで、絶縁体650から導電体660への酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物630へ供給する酸素量の減少を抑制することができる。また、絶縁体650の酸素による導電体660の酸化を抑制することができる。
【0232】
また、当該金属酸化物は、ゲート絶縁体の一部としての機能を有する場合がある。したがって、絶縁体650に酸化シリコンや酸化窒化シリコンなどを用いる場合、当該金属酸化物は、比誘電率が高いhigh-k材料である金属酸化物を用いることが好ましい。ゲート絶縁体を、絶縁体650と当該金属酸化物との積層構造とすることで、熱に対して安定、かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。したがって、ゲート絶縁体の物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電位の低減化が可能となる。また、ゲート絶縁体として機能する絶縁体の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
【0233】
具体的には、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。特に、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。
【0234】
または、当該金属酸化物は、ゲートの一部としての機能を有する場合がある。この場合は、酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けるとよい。酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けることで、当該導電性材料から離脱した酸素がチャネル形成領域に供給されやすくなる。
【0235】
特に、ゲートとして機能する導電体として、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる金属元素および酸素を含む導電性材料を用いることが好ましい。また、前述した金属元素および窒素を含む導電性材料を用いてもよい。また、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、シリコンを添加したインジウム錫酸化物を用いてもよい。また、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化物を用いてもよい。このような材料を用いることで、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる水素を捕獲することができる場合がある。または、外方の絶縁体などから混入する水素を捕獲することができる場合がある。
【0236】
導電体660は、底面および側面が絶縁体650に接して配置される。導電体660は、
図8では2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
【0237】
導電体660aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2など)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0238】
また、導電体660aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体650に含まれる酸素により、導電体660bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、または酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。
【0239】
また、導電体660bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体660は、配線としても機能するため、導電体660bに導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体660bは積層構造としてもよく、例えば、チタン又は窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
【0240】
絶縁体680は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、または空孔を有する酸化シリコンなどを用いることが好ましい。特に、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、空孔を有する酸化シリコンなどの材料は、加熱により脱離する酸素を含む領域を容易に形成することができるため好ましい。また、絶縁体680は、上記の材料が積層された構造でもよく、例えば、スパッタリング法で成膜した酸化シリコンと、その上に積層されたCVD法で成膜された酸化窒化シリコンの積層構造とすればよい。また、さらに上に窒化シリコンを積層してもよい。
【0241】
ここで、絶縁体680は、過剰酸素を有することが好ましい。例えば、絶縁体680は、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンなどを適宜用いればよい。過剰酸素を含む絶縁体680を酸化物630に接して設けることにより、酸化物630中の酸素欠損を低減し、トランジスタ600の信頼性を向上させることができる。絶縁体680に過剰酸素を含ませるには、例えば、絶縁体682の成膜を、酸素を含む雰囲気でスパッタリング法を用いて行えばよい。スパッタリング法を用いて、酸素を含む雰囲気で絶縁体682の成膜を行うことで、成膜しながら、絶縁体680に酸素を添加することができる。
【0242】
絶縁体680中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。また、絶縁体680の上面は、平坦化されていてもよい。
【0243】
絶縁体682は、水または水素などの不純物が、上方から絶縁体680に混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。また、絶縁体682は、酸素の透過を抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。絶縁体682としては、例えば、酸化アルミニウム、窒化シリコン、または窒化酸化シリコンなどの絶縁体を用いればよい。例えば、絶縁体682として、酸素に対してバリア性が高い酸化アルミニウムを用いればよい。
【0244】
図8Bに示すように、絶縁体682は、酸化物630cに直接接する構造となっている。当該構造とすることで、絶縁体680に含まれる酸素の導電体660への拡散を抑制することができる。従って、絶縁体680に含まれる酸素は、酸化物630cを介して、酸化物630aおよび酸化物630bへ効率よく供給することができるので、酸化物630a中および酸化物630b中の酸素欠損を低減し、トランジスタ600の電気特性および信頼性を向上させることができる。
【0245】
また、絶縁体682の上に、層間膜として機能する絶縁体685を設けることが好ましい。絶縁体685は、絶縁体624などと同様に、膜中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0246】
導電体640は、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体640は積層構造としてもよい。なお、
図8Aで導電体640は、上面視において円形状にしているが、これに限られるものではない。例えば、導電体640が、上面視において、楕円などの略円形状、四角形などの多角形状、四角形等の多角形の角部を丸めた形状になっていてもよい。
【0247】
また、導電体640を積層構造とする場合、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。例えば、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、ルテニウム、または酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する導電性材料は、単層または積層で用いてもよい。当該導電性材料を用いることで、絶縁体680などから拡散する水または水素などの不純物が、導電体640を通じて酸化物630に混入するのをさらに低減することができる。また、絶縁体680に添加された酸素が導電体640に吸収されるのを防ぐことができる。
【0248】
また、導電体640aの上面、および導電体640cの上面に接して導電体646aが配置され、導電体640bの上面に接して導電体646bが配置され、導電体640dの上面に接して導電体746が配置される。導電体646a、導電体646b、および導電体746は、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体646a、導電体646b、および導電体746は、積層構造としてもよく、例えば、チタン又は窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。なお、当該導電体は、絶縁体に設けられた開口に埋め込むように形成してもよい。
【0249】
絶縁体685、導電体646a、導電体646b、および導電体746を覆って、絶縁体686が設けられる。絶縁体686は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、窒化酸化ハフニウム、窒化ハフニウム、酸化ジルコニウムなどを用いればよく、積層または単層で設けることができる。
【0250】
例えば、絶縁体686には、酸化窒化シリコンなどの絶縁耐力が大きい材料と、高誘電率(high-k)材料との積層構造を用いてもよい。当該構成により、容量素子655は、高誘電率(high-k)の絶縁体を有することで、十分な容量を確保でき、絶縁耐力が大きい絶縁体を有することで、絶縁耐力が向上し、容量素子655の静電破壊を抑制することができる。
【0251】
なお、高誘電率(high-k)材料(高い比誘電率の材料)の絶縁体としては、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化物、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化窒化物またはシリコンおよびハフニウムを有する窒化物などがある。
【0252】
一方、絶縁耐力が大きい材料(低い比誘電率の材料)としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンまたは樹脂などがある。
【0253】
絶縁体686を介して導電体646aの少なくとも一部と重畳するように導電体656が配置される。導電体656は、導電体646に用いることができる導電体を用いればよい。
【0254】
また、絶縁体686および導電体656の上に、層間膜として機能する絶縁体688を設けることが好ましい。絶縁体688は、絶縁体624などと同様に、膜中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0255】
<<メモリセルの変形例>>
以下では、
図9を用いてメモリセルの変形例について説明する。
図9Aは、メモリセル860周辺の上面図である。また、
図9Bは、メモリセル860の断面図であり、
図9Bは、
図9AにA1-A2の一点鎖線で示す部位に対応する。
図9Bにおいて、トランジスタ690のチャネル長方向の断面と、トランジスタ790のチャネル幅方向の断面を示す。なお、
図9Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。なお、
図9Aに示す、X方向、Y方向、およびZ方向は、それぞれが互いに直交または交差する方向である。ここで、X方向およびY方向は基板面に対して平行または概略平行であり、Z方向は基板面に対して垂直または概略垂直であることが好ましい。
【0256】
図9に示すメモリセル860は、トランジスタ600およびトランジスタ700の代わりに、トランジスタ690およびトランジスタ790が用いられている点において、
図8に示すメモリセル860と異なる。ここで、トランジスタ790は、トランジスタ690と同じ層に形成され、同様の構成を有する。以下において、トランジスタ790の構成要素は、トランジスタ690の構成要素の記載を参酌できるものとする。
【0257】
トランジスタ690は、酸化物630cが、絶縁体680、絶縁体672、絶縁体673、導電体642(導電体642a、導電体642b)、及び酸化物630bに形成された開口部を沿うようにU字状(U-Shape)に形成される点において、トランジスタ600と異なる。
【0258】
例えば、トランジスタのチャネル長を微細化(代表的には5nm以上60nm未満、好ましくは10nm以上30nm以下)した場合に、トランジスタ600が上記の構造を有することで、実効L長を長くすることができる。一例としては、導電体642aと、導電体642bとの間の距離が20nmである場合、実効L長を40nm以上60nm以下と、導電体642aと導電体642bとの間の距離、すなわち最小加工寸法よりも2倍以上3倍以下程度長くすることができる。したがって、
図9に示すメモリセル860は、微細化に優れたトランジスタ690、トランジスタ790、および容量素子655を有する構造となる。
【0259】
<<金属酸化物>>
酸化物630として、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。以下では、本発明に係る酸化物630に適用可能な金属酸化物について説明する。
【0260】
金属酸化物は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特に、インジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、ガリウム、イットリウム、錫などが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0261】
ここでは、金属酸化物が、インジウム、元素Mおよび亜鉛を有するIn-M-Zn酸化物である場合を考える。なお、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、または錫とする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。
【0262】
なお、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。
【0263】
酸化物半導体(金属酸化物)としては、CAC-OS(Cloud-Aligned Composite Oxide Semiconductor)、CAAC-OS(c-axis Aligned Crystal Oxide Semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、および非晶質酸化物半導体などを用いることができる。これらの詳細については、後の実施の形態で説明する。
【0264】
[不純物]
ここで、金属酸化物中における各不純物の影響について説明する。
【0265】
酸化物半導体に不純物が混入すると、欠陥準位または酸素欠損が形成される場合がある。よって、酸化物半導体のチャネル形成領域に不純物が混入することで、酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性が変動しやすく、信頼性が悪くなる場合がある。また、チャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。
【0266】
また、上記欠陥準位には、トラップ準位が含まれる場合がある。金属酸化物のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い金属酸化物をチャネル形成領域に有するトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0267】
また、酸化物半導体のチャネル形成領域に不純物が存在すると、チャネル形成領域の結晶性が低くなる場合がある、また、チャネル形成領域に接して設けられる酸化物の結晶性が低くなる場合がある。チャネル形成領域の結晶性が低いと、トランジスタの安定性または信頼性が悪化する傾向がある。また、チャネル形成領域に接して設けられる酸化物の結晶性が低いと、界面準位が形成され、トランジスタの安定性または信頼性が悪化する場合がある。
【0268】
したがって、トランジスタの安定性または信頼性を向上させるには、酸化物半導体のチャネル形成領域およびその近傍の不純物濃度を低減することが有効である。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0269】
具体的には、当該酸化物半導体のチャネル形成領域およびその近傍において、SIMSにより得られる上記不純物の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。または、当該酸化物半導体のチャネル形成領域およびその近傍において、EDXを用いた元素分析により得られる上記不純物の濃度を、1.0atomic%以下にする。なお、当該酸化物半導体として元素Mを含む酸化物を用いる場合、当該酸化物半導体のチャネル形成領域およびその近傍において、元素Mに対する上記不純物の濃度比を、0.10未満、好ましくは0.05未満にする。ここで、上記濃度比を算出する際に用いる元素Mの濃度は、上記不純物の濃度を算出した領域と同じ領域の濃度でもよいし、当該酸化物半導体中の濃度でもよい。
【0270】
また、不純物濃度を低減した金属酸化物は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0271】
また、金属酸化物中の酸素欠損に水素が入った場合、酸素欠損と水素とが結合しVOHを形成する場合がある。VOHはドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。
【0272】
従って、水素が多く含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。また、酸化物半導体中の水素は、熱、電界などのストレスによって動きやすいため、酸化物半導体に多くの水素が含まれると、トランジスタの信頼性が悪化する恐れもある。
【0273】
つまり、金属酸化物中のVOHをできる限り低減し、高純度真性または実質的に高純度真性にすることが好ましい。このように、VOHが十分低減された酸化物半導体を得るには、酸化物半導体中の水分、水素などの不純物を除去すること(脱水処理、脱水素化処理と記載する場合がある)と、酸化物半導体に酸素を供給して酸素欠損を補填すること(加酸素化処理と記載する場合がある)が重要である。VOHなどの不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0274】
また、トランジスタには、キャリア濃度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体のキャリア濃度を低くする場合においては、酸化物半導体中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。なお、酸化物半導体中の不純物としては、例えば、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0275】
特に、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸化物半導体中に酸素欠損を形成する場合がある。酸化物半導体中のチャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となる場合がある。さらに、酸素欠損に水素が入った欠陥はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。
【0276】
酸素欠損に水素が入った欠陥(VOH)は、酸化物半導体のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、酸化物半導体においては、ドナー濃度ではなく、キャリア濃度で評価される場合がある。よって、本明細書等では、酸化物半導体のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア濃度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア濃度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。
【0277】
よって、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。水素などの不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0278】
また、チャネル形成領域の酸化物半導体のキャリア濃度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域の酸化物半導体のキャリア濃度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0279】
本発明の一態様により、信頼性が良好な記憶装置または半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、良好な電気特性を有する記憶装置または半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、微細化または高集積化が可能な記憶装置または半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、低消費電力の記憶装置または半導体装置を提供することができる。
【0280】
<<その他の半導体材料>>
酸化物630に用いることができる半導体材料は、上述の金属酸化物に限られない。酸化物630として、バンドギャップを有する半導体材料(ゼロギャップ半導体ではない半導体材料)を用いてもよい。例えば、シリコンなどの単体元素の半導体、ヒ化ガリウムなどの化合物半導体、半導体として機能する層状物質(原子層物質、2次元材料などともいう)などを半導体材料に用いることが好ましい。特に、半導体として機能する層状物質を半導体材料に用いると好適である。
【0281】
ここで、本明細書等において、層状物質とは、層状の結晶構造を有する材料群の総称である。層状の結晶構造は、共有結合やイオン結合によって形成される層が、ファンデルワールス力のような、共有結合やイオン結合よりも弱い結合を介して積層している構造である。層状物質は、単位層内における電気伝導性が高く、つまり、2次元電気伝導性が高い。半導体として機能し、かつ、2次元電気伝導性の高い材料をチャネル形成領域に用いることで、オン電流の大きいトランジスタを提供することができる。
【0282】
層状物質として、グラフェン、シリセン、カルコゲン化物などがある。カルコゲン化物は、カルコゲンを含む化合物である。また、カルコゲンは、第16族に属する元素の総称であり、酸素、硫黄、セレン、テルル、ポロニウム、リバモリウムが含まれる。また、カルコゲン化物として、遷移金属カルコゲナイド、13族カルコゲナイドなどが挙げられる。
【0283】
酸化物630として、例えば、半導体として機能する遷移金属カルコゲナイドを用いることが好ましい。酸化物630として適用可能な遷移金属カルコゲナイドとして、具体的には、硫化モリブデン(代表的にはMoS2)、セレン化モリブデン(代表的にはMoSe2)、モリブデンテルル(代表的にはMoTe2)、硫化タングステン(代表的にはWS2)、セレン化タングステン(代表的にはWSe2)、タングステンテルル(代表的にはWTe2)、硫化ハフニウム(代表的にはHfS2)、セレン化ハフニウム(代表的にはHfSe2)、硫化ジルコニウム(代表的にはZrS2)、セレン化ジルコニウム(代表的にはZrSe2)などが挙げられる。
【0284】
<メモリセル配置の構成例>
次に、上述のメモリセル860の配置の一例について、
図10および
図11を用いて説明する。
図10および
図11に、上記メモリセル860を2×2×2個配置した、メモリセルブロックを示す。
図10は、メモリセルブロックの上面図である。また、
図11は、メモリセルブロックの断面図であり、
図11は、
図10にB1-B2の一点鎖線で示す部位に対応する。
図11において、トランジスタ600のチャネル長方向の断面と、トランジスタ700のチャネル幅方向の断面を示す。なお、
図10の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。なお、
図10に示す、X方向、Y方向、およびZ方向は、それぞれが互いに直交または交差する方向である。ここで、X方向およびY方向は基板面に対して平行または概略平行であり、Z方向は基板面に対して垂直または概略垂直であることが好ましい。
【0285】
図10および
図11に示すメモリセルブロックにおいて、メモリセル860_1のX方向に隣接してメモリセル860_2が配置される。また、メモリセル860_1、およびメモリセル860_2のY方向に隣接してメモリセル860_3、およびメモリセル860_4が配置される。また、メモリセル860_1、およびメモリセル860_2のZ方向に隣接してメモリセル860_5、およびメモリセル860_6が配置される。
【0286】
図10および
図11に示すように、メモリセル860_1とメモリセル860_2は、それぞれの構成要素を線対称に配置することができる。このとき、メモリセル860_1のトランジスタ600と、メモリセル860_2のトランジスタ600を、同一の酸化物630aおよび酸化物630bを用いて形成してもよい。さらに、
図10および
図11に示すように、酸化物643b、導電体642b、導電体640b、および導電体646bも、メモリセル860_1のトランジスタ600と、メモリセル860_2のトランジスタ600で、共通で用いることができる。このように、メモリセル860_1とメモリセル860_2に接続する配線等として機能する、酸化物643b、導電体642b、導電体640b、および導電体646bを共通化することで、メモリセルの占有面積をさらに縮小することができる。
【0287】
また、
図10に示すように、メモリセル860_1とメモリセル860_2で共通化された導電体646bは、X方向に延在して設けられている。このようにして書き込みビット線WBLをX方向に延在させることができる。また、
図10に示すように、メモリセル860_1の導電体746は、メモリセル860_2に延在して設けられている。このようにして読み出しビット線RBLをX方向に延在させることができる。
【0288】
また、
図10に示すように、メモリセル860_1の導電体660は、メモリセル860_3に延在して設けられている。このようにして書き込みワード線WWLをY方向に延在させることができる。また、
図10に示すように、メモリセル860_1の導電体742aは、メモリセル860_3に延在して設けられている。このようにして読み出しワード線RWLをY方向に延在させることができる。また、
図10に示すように、メモリセル860_1の導電体605は、メモリセル860_3に延在して設けられている。このようにして配線BG1をY方向に延在させることができる。また、
図10に示すように、メモリセル860_1の導電体705は、メモリセル860_3に延在して設けられている。このようにして配線BG2をY方向に延在させることができる。
【0289】
なお、
図11に示すように、メモリセル860_1およびメモリセル860_2の上層には、メモリセル860_1およびメモリセル860_2と同様の構成を有する、メモリセル860_5およびメモリセル860_6を設けることができる。
【0290】
なお、
図10では、導電体660に重ねて酸化物630cを延在させる構成にしているが、本実施の形態に示す記憶装置はこれに限られるものではない。例えば、酸化物630cをメモリセル860ごとにパターン形成して、酸化物630cをトランジスタ600ごとに離隔して設ける構成にしてもよい。また、例えば、酸化物630cを2層の積層構造にする場合、酸化物630cの上層および下層のいずれか一方を、トランジスタ600ごとに離隔して設ける構成にしてもよい。
【0291】
<記憶装置の構成例>
次に、上述のメモリセル860を積層させた記憶装置の一例について、
図12を用いて説明する。
図12は、シリコン層871の上に、メモリセル860を含むメモリセル層870が複数積層された、記憶装置の断面図である。
図12に示す記憶装置は、
図1等に示す記憶装置10に対応しており、シリコン層871は層100に対応し、メモリセル層870は層200に対応する。
【0292】
まず、シリコン層871について説明する。シリコン層871には複数のトランジスタ800が設けられており、
図2に示す周辺回路101(例えば、ビット線ドライバ回路132など)を構成している。
【0293】
トランジスタ800は、基板811上に設けられ、ゲートとして機能する導電体816、ゲート絶縁体として機能する絶縁体815、基板811の一部からなる半導体領域813、およびソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域814a、および低抵抗領域814bを有する。トランジスタ800は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
【0294】
ここで、
図12に示すトランジスタ800はチャネルが形成される半導体領域813(基板811の一部)が凸形状を有する。また、半導体領域813の側面および上面を、絶縁体815を介して、導電体816が覆うように設けられている。なお、導電体816は仕事関数を調整する材料を用いてもよい。このようなトランジスタ800は半導体基板の凸部を利用していることからFIN型トランジスタとも呼ばれる。なお、凸部の上部に接して、凸部を形成するためのマスクとして機能する絶縁体を有していてもよい。また、ここでは半導体基板の一部を加工して凸部を形成する場合を示したが、SOI基板を加工して凸形状を有する半導体膜を形成してもよい。
【0295】
なお、
図12に示すトランジスタ800は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0296】
また、各構造体の間には、層間膜、配線、およびプラグ等が設けられた配線層が設けられていてもよい。また、配線層は、設計に応じて複数層設けることができる。ここで、プラグまたは配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と電気的に接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、および導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0297】
例えば、トランジスタ800上には、層間膜として、絶縁体820、絶縁体822、絶縁体824、および絶縁体826が順に積層して設けられている。また、絶縁体820、絶縁体822、絶縁体824、および絶縁体826には、プラグまたは配線として機能する導電体828、および導電体830等が埋め込まれている。
【0298】
また、層間膜として機能する絶縁体は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。例えば、絶縁体822の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0299】
絶縁体826、および導電体830上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図12において、絶縁体850、絶縁体852、及び絶縁体854が順に積層して設けられている。また、絶縁体850、絶縁体852、及び絶縁体854には、導電体856が形成されている。導電体856は、プラグ、または配線として機能する。
【0300】
層間膜として用いることができる絶縁体としては、絶縁性を有する酸化物、窒化物、酸化窒化物、窒化酸化物、金属酸化物、金属酸化窒化物、金属窒化酸化物などがある。
【0301】
例えば、層間膜として機能する絶縁体には、比誘電率が低い材料を用いることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。したがって、絶縁体の機能に応じて、材料を選択するとよい。
【0302】
例えば、絶縁体820、絶縁体822、絶縁体826、絶縁体852、および絶縁体854等には、比誘電率の低い絶縁体を有することが好ましい。例えば、当該絶縁体は、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンまたは樹脂などを有することが好ましい。または、当該絶縁体は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコンまたは空孔を有する酸化シリコンと、樹脂との積層構造を有することが好ましい。酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、樹脂と組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の低い積層構造とすることができる。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアクリルなどがある。
【0303】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体で囲うことによって、トランジスタの電気特性を安定にすることができる。従って、絶縁体824および絶縁体850等には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体を用いればよい。
【0304】
水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。具体的には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
【0305】
配線、プラグに用いることができる導電体としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウムなどから選ばれた金属元素を1種以上含む材料を用いることができる。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
【0306】
例えば、導電体828、導電体830、および導電体856等としては、上記の材料で形成される金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0307】
シリコン層871の上に、絶縁体611および絶縁体612が配置され、絶縁体611および絶縁体612の上に、メモリセル層870_1乃至メモリセル層870_n(nは1以上の整数)が積層される。なお、上記nの値については、特に限定は無いが1以上200以下、好ましくは1以上100以下、さらに好ましくは、1以上10以下である。
【0308】
各メモリセル層870においては、
図10と同様に、メモリセル860および各種配線がマトリクス状に配置されている。
【0309】
また、
図12に示すように、各メモリセル層870において延在された導電体646bは、メモリセル層870の端部で、導電体615、導電体640e、および導電体657を介して、隣接する上下の層の導電体646bと接続される。ここで、導電体615は、導電体605と同じ層に形成され、同様の構成を有する。導電体640eは、絶縁体622、絶縁体624、絶縁体672、絶縁体673、絶縁体680、絶縁体682、および絶縁体685に形成された開口を埋め込むように配置され(
図8B参照)、導電体640bなどと同様の構成を有する。導電体657は、絶縁体686、絶縁体688、および絶縁体614に形成された開口を埋め込むように配置され、導電体640bなどと同様の構成を有する。
【0310】
導電体646bの下面に接して導電体640eが設けられ、導電体640eの下面に接して導電体615が設けられ、導電体615の下面に接して導電体657が設けられ、導電体657の下面は、一つ下層の導電体646bの上面に接する。このようにして導電体646bは、メモリセル層870の端部で、隣接する上下の層の導電体646bと接続される。
【0311】
また、
図12に示すように、最下層のメモリセル層870_1において、導電体615の下に、絶縁体611および絶縁体612に埋め込まれるように、導電体607が配置されている。導電体607は、導電体856と同じ層に設けられた導電体857と接している。このようにして、メモリセル860に接続された書き込みビット線WBLは、導電体857を介して、ビット線ドライバ回路132に接続される。また、図示してはいないが、上記と同様の方法でメモリセル860に接続された読み出しビット線RBLも、導電体857を介して、ビット線ドライバ回路132に接続することができる。このようにして、先の実施の形態で
図2に示したように、配線BLをメモリセルアレイの端部において連結させて、ビット線ドライバ回路132に接続させることができる。
【0312】
また、メモリセル層870_1乃至メモリセル層870_nは、絶縁体611、絶縁体612、絶縁体687、絶縁体683、および絶縁体684によって、封止された構造であることが好ましい。ここで、シリコン層871の上に絶縁体611が配置され、絶縁体611の上に絶縁体612が配置される。絶縁体612の上にメモリセル層870_1乃至メモリセル層870_nが配置されており、絶縁体612も、上面視において、メモリセル層870_1乃至メモリセル層870_nと同じパターンに形成されている。絶縁体611の上面、絶縁体612の側面、およびメモリセル層870_1乃至メモリセル層870_nの側面に接して絶縁体687が配置される。つまり、絶縁体687は、メモリセル層870_1乃至メモリセル層870_nに対してサイドウォール状に形成される。絶縁体611、絶縁体687、およびメモリセル層870_1乃至メモリセル層870_nを覆って絶縁体683が配置される。さらに、絶縁体683を覆って絶縁体684が配置される。
【0313】
絶縁体611、絶縁体612、絶縁体687、絶縁体683、および絶縁体684は、絶縁体682などと同様に、バリア性材料を用いることが好ましい。
【0314】
ここで、各メモリセル層870は、絶縁体614、絶縁体687、および絶縁体682によって封止されている。絶縁体614、絶縁体687、および絶縁体682には、同じ材料を用いることが好ましい。また、絶縁体614、絶縁体687、および絶縁体682の成膜方法は、同じ条件を用いて成膜することが好ましい。膜質が等しい絶縁体614、絶縁体687、および絶縁体682が接することで、密閉性が高い封止構造とすることができる。
【0315】
また、絶縁体614、絶縁体687、および絶縁体682には、水素を捕獲、および固着する機能を有する材料を用いることが好ましい。具体的には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、インジウムガリウム亜鉛酸化物などの金属酸化物を用いることができる。
【0316】
封止構造を形成する絶縁体614、絶縁体687、および絶縁体682は、絶縁体680に接して設けられる。従って、絶縁体680中に混入した水素を捕獲、および固着することで、メモリセル860が有する酸化物半導体の水素濃度を低減することができる。
【0317】
また、メモリセル層870を封止する構造である絶縁体614、絶縁体687、および絶縁体682は、絶縁体611、絶縁体612、絶縁体683によってさらに覆われている。例えば、
図12に示すように、メモリセル層870_1乃至メモリセル層870_nの外側で、絶縁体611と絶縁体683とが接することで、2重目の封止構造を形成する。
【0318】
ここで、絶縁体611、絶縁体612と絶縁体683には、水素、および酸素に対する拡散を抑制する機能を有する材料を用いることが好ましい。特に、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンは、水素に対するバリア性が高いため、封止する材質として用いることが好ましい。
【0319】
また、トランジスタ600の上方を被覆する絶縁体683の上方に、被覆性が高い絶縁体684を設けることが好ましい。なお、絶縁体684は、絶縁体612および絶縁体683と同じ材料を用いることが好ましい。
【0320】
例えば、絶縁体612、絶縁体683は、スパッタリング法を用いて成膜することで、膜中の水素濃度が比較的低い膜により封止構造を設けることができる。
【0321】
一方、スパッタリング法を用いて成膜した膜は、比較的被覆性が低い。そこで、絶縁体611、および絶縁体684を、被覆性が高いCVD法などを用いて成膜することで、より密閉性を高めることができる。
【0322】
従って、絶縁体612および絶縁体683は、絶縁体611と絶縁体684よりも水素濃度が低いことが好ましい。
【0323】
以上のようにして、メモリセル層870_1乃至メモリセル層870_nを、バリア絶縁膜を用いて封止することで、各メモリセル860に含まれる酸化物半導体に拡散する水素を低減することができるので、信頼性の高い記憶装置を提供することができる。
【0324】
なお、好ましくは、絶縁体611、絶縁体612、絶縁体614、絶縁体682、絶縁体687、絶縁体683、および絶縁体684は、酸素に対するバリア性を有する材料を用いてもよい。上記封止構造が、酸素に対するバリア性を有することで、絶縁体680が有する過剰酸素の外方拡散を抑制し、効率的にトランジスタ600へと供給することができる。
【0325】
また、メモリセル層870_1乃至メモリセル層870_n、および絶縁体684などを埋め込むように絶縁体674が設けられることが好ましい。絶縁体674は、絶縁体680に用いることができる絶縁体を用いればよい。
図12に示すように、絶縁体674と絶縁体684は、上面の高さが概略一致することが好ましい。
【0326】
また、
図12に示すように、絶縁体674、絶縁体684、絶縁体683、および絶縁体611に開口を設け、当該開口に導電体876を配置してもよい。導電体876は、下面が導電体856に接する。導電体876の上面に接して配線として機能する導電体878を設ければよい。また、メモリセル層870_n、絶縁体674、および導電体878を覆って、層間膜として機能する絶縁体689を設けることが好ましい。このような構造にすることで、メモリセル層870を介さず、上層の配線(導電体878)とシリコン層871の回路を電気的に接続することができる。
【0327】
なお、
図12では、メモリセル層870_1乃至メモリセル層870_nを絶縁体611、絶縁体612、絶縁体687、絶縁体683、および絶縁体684で一括して封止する構成を示したが、本実施の形態に係る記憶装置はこれに限られるものではない。たとえば、
図13に示すように、各メモリセル層870が絶縁体611、絶縁体612、絶縁体687、絶縁体683、および絶縁体684で封止される構成にしてもよい。ここで、絶縁体614の下に絶縁体612および絶縁体611が配置される。
【0328】
絶縁体680、絶縁体673、絶縁体672、絶縁体624、絶縁体622、絶縁体616、および絶縁体614の側面に接して絶縁体687が配置される。絶縁体680および絶縁体687を覆って、絶縁体683が設けられ、絶縁体683の上に絶縁体684が配置される。この場合、絶縁体682より上に設けられる、容量素子655および絶縁体688は、絶縁体684の上に配置すればよい。
【0329】
なお、本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態や実施例と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明したOSトランジスタに用いることができる金属酸化物である、CAC-OS(Cloud-Aligned Composite Oxide Semiconductor)、およびCAAC-OS(c-axis Aligned Crystal Oxide Semiconductor)の構成について説明する。
【0330】
<金属酸化物の構成>
CAC-OSまたはCAC-metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OSまたはCAC-metal oxideを、トランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSまたはCAC-metal oxideに付与することができる。CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0331】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、導電性領域、および絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0332】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0333】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OSまたはCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、および高い電界効果移動度を得ることができる。
【0334】
すなわち、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0335】
<金属酸化物の構造>
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導体などがある。
【0336】
また、酸化物半導体は、結晶構造に着目した場合、上記とは異なる分類となる場合がある。ここで、酸化物半導体における、結晶構造の分類について、
図14Aを用いて説明を行う。
図14Aは、酸化物半導体、代表的にはIGZO(Inと、Gaと、Znと、を含む金属酸化物)の結晶構造の分類を説明する図である。
【0337】
図14Aに示すように、IGZOは、大きく分けてAmorphousと、Crystallineと、Crystalと、に分類される。また、Amorphousの中には、completely amorphousが含まれる。また、Crystallineの中には、CAAC(c-axis aligned crystalline)、nc(nanocrystalline)、およびCAC(Cloud-Aligned Composite)が含まれる。また、Crystalの中には、single crystal、およびpoly crystalが含まれる。
【0338】
なお、
図14Aに示す太枠内の構造は、New crystalline phaseに属する構造である。当該構造は、Amorphousと、Crystalとの間の境界領域にある。すなわち、エネルギー的に不安定なAmorphousと、Crystallineとは全く異なる構造と言い換えることができる。
【0339】
なお、膜または基板の結晶構造は、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)像を用いて評価することができる。ここで、石英ガラス、およびCrystallineに分類される結晶構造を有するIGZO(結晶性IGZOともいう)のXRDスペクトルを、
図14B、
図14Cに示す。また、
図14Bが石英ガラス、
図14Cが結晶性IGZOのXRDスペクトルである。なお、
図14Cに示す結晶性IGZOとしては、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]の組成である。また、
図14Cに示す結晶性IGZOとしては、厚さ500nmである。
【0340】
図14Bの矢印に示すように、石英ガラスは、XRDスペクトルのピークがほぼ対称である。一方で、
図14Cの矢印に示すように、結晶性IGZOは、XRDスペクトルのピークが非対称である。XRDスペクトルのピークが非対称であることは、結晶の存在を明示している。別言すると、XRDスペクトルのピークで左右対称でないと、Amorphousであるとは言えない。
【0341】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0342】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。なお、明確な結晶粒界(グレインバウンダリ―)が確認される結晶構造は、いわゆる多結晶(polycrystal)と呼ばれる。結晶粒界は、再結合中心となり、キャリアが捕獲されトランジスタのオン電流の低下、または電界効果移動度の低下を引き起こす可能性が高い。よって、明確な結晶粒界が確認されないCAAC-OSは、トランジスタの半導体層に好適な結晶構造を有する結晶性の酸化物の一つである。なお、CAAC-OSを構成するには、Znを有する構成が好ましい。例えば、In-Zn酸化物、及びIn-Ga-Zn酸化物は、In酸化物よりも結晶粒界の発生を抑制できるため好適である。
【0343】
また、CAAC-OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0344】
CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC-OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。また、CAAC-OSは、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対しても安定である。したがって、OSトランジスタにCAAC-OSを用いると、製造工程の自由度を広げることが可能となる。
【0345】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0346】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。即ち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0347】
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一形態の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0348】
<酸化物半導体を有するトランジスタ>
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
【0349】
上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0350】
トランジスタには、キャリア濃度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体膜のキャリア濃度を低くする場合においては、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性と言う。
【0351】
また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0352】
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル形成領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0353】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0354】
<不純物>
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
【0355】
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。
【0356】
また、酸化物半導体にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。
【0357】
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア濃度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい。例えば、酸化物半導体中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
【0358】
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。
【0359】
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0360】
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0361】
(実施の形態4)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した記憶装置などが組み込まれた電子部品および電子機器の一例について説明する。
【0362】
<電子部品>
まず、記憶装置10が組み込まれた電子部品の例を、
図15A、
図15Bを用いて説明する。
【0363】
図15Aに、電子部品3000および電子部品3000が実装された基板(実装基板3004)の斜視図を示す。
図15Aに示す電子部品3000は、モールド3011内に記憶装置10を有している。
図15Aは、電子部品3000の内部を示すために、一部を省略している。電子部品3000は、モールド3011の外側にランド3012を有する。ランド3012は電極パッド3013と電気的に接続され、電極パッド3013は記憶装置10とワイヤ3014によって電気的に接続されている。電子部品3000は、例えばプリント基板3002に実装される。このような電子部品が複数組み合わされて、それぞれがプリント基板3002上で電気的に接続されることで実装基板3004が完成する。
【0364】
図15Bに、電子部品3030の斜視図を示す。電子部品3030は、SiP(System in package)またはMCM(Multi Chip Module)の一例である。電子部品3030は、パッケージ基板3032(プリント基板)上にインターポーザ3031が設けられ、インターポーザ3031上に半導体装置3035、および複数の記憶装置10が設けられている。
【0365】
電子部品3030では、記憶装置10を広帯域メモリ(HBM:High Bandwidth Memory)として用いる例を示している。また、半導体装置3035としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路(半導体装置)を用いることができる。
【0366】
パッケージ基板3032は、セラミック基板、プラスチック基板、またはガラスエポキシ基板などを用いることができる。インターポーザ3031は、シリコンインターポーザ、樹脂インターポーザなどを用いることができる。
【0367】
インターポーザ3031は、複数の配線を有し、端子ピッチの異なる複数の集積回路を電気的に接続する機能を有する。複数の配線は、単層または多層で設けられる。また、インターポーザ3031は、インターポーザ3031上に設けられた集積回路をパッケージ基板3032に設けられた電極と電気的に接続する機能を有する。これらのことから、インターポーザを「再配線基板」または「中間基板」と呼ぶ場合がある。また、インターポーザ3031に貫通電極を設けて、当該貫通電極を用いて集積回路とパッケージ基板3032を電気的に接続する場合もある。また、シリコンインターポーザでは、貫通電極として、TSV(Through Silicon Via)を用いることも出来る。
【0368】
インターポーザ3031として、シリコンインターポーザを用いることが好ましい。シリコンインターポーザでは能動素子を設ける必要が無いため、集積回路よりも低コストで作製することができる。一方で、シリコンインターポーザの配線形成は半導体プロセスで行なうことができるため、樹脂インターポーザでは難しい微細配線の形成が容易である。
【0369】
HBMでは、広いメモリバンド幅を実現するために多くの配線を接続する必要がある。このため、HBMを実装するインターポーザには、微細かつ高密度の配線形成が求められる。よって、HBMを実装するインターポーザには、シリコンインターポーザを用いることが好ましい。
【0370】
また、シリコンインターポーザを用いたSiPやMCMなどでは、集積回路とインターポーザ間の膨張係数の違いによる信頼性の低下が生じにくい。また、シリコンインターポーザは表面の平坦性が高いため、シリコンインターポーザ上に設ける集積回路とシリコンインターポーザ間の接続不良が生じにくい。特に、インターポーザ上に複数の集積回路を横に並べて配置する2.5Dパッケージ(2.5次元実装)では、シリコンインターポーザを用いることが好ましい。
【0371】
また、電子部品3030と重ねてヒートシンク(放熱板)を設けてもよい。ヒートシンクを設ける場合は、インターポーザ3031上に設ける集積回路の高さを揃えることが好ましい。例えば、本実施の形態に示す電子部品3030では、記憶装置10と半導体装置3035の高さを揃えることが好ましい。
【0372】
電子部品3030を他の基板に実装するため、パッケージ基板3032の底部に電極3033を設けてもよい。
図15Bでは、電極3033を半田ボールで形成する例を示している。パッケージ基板3032の底部に半田ボールをマトリクス状に設けることで、BGA(Ball Grid Array)実装を実現できる。また、電極3033を導電性のピンで形成してもよい。パッケージ基板3032の底部に導電性のピンをマトリクス状に設けることで、PGA(Pin Grid Array)実装を実現できる。
【0373】
電子部品3030は、BGAおよびPGAに限らず様々な実装方法を用いて他の基板に実装することができる。例えば、SPGA(Staggered Pin Grid Array)、LGA(Land Grid Array)、QFP(Quad Flat Package)、QFJ(Quad Flat J-leaded package)、またはQFN(Quad Flat Non-leaded package)などの実装方法を用いることができる。
【0374】
【0375】
本発明の一形態に係わる記憶装置は、様々な電子機器に用いることができる。特に、本発明の一形態に係わる記憶装置は、電子機器に内蔵されるメモリとして用いることができる。以下、本発明の一形態に係わる記憶装置を用いることができる電子機器として、情報端末、ゲーム機、電化製品、移動体、並列計算機、サーバを含むシステム等を例に挙げ、説明する。
【0376】
例えば、本発明の一形態に係わる記憶装置を用いることができる電子機器として、情報端末5500を、
図16Aに図示する。情報端末5500は、携帯電話(スマートフォン)である。情報端末5500は、筐体5510と、表示部5511とを有しており、入力用インターフェースとして、タッチパネルが表示部5511に備えられ、ボタンが筐体5510に備えられている。
【0377】
例えば、本発明の一形態に係わる記憶装置を用いることができる電子機器として、デスクトップ型情報端末5300を、
図16Bに図示する。デスクトップ型情報端末5300は、情報端末の本体5301と、ディスプレイ5302と、キーボード5303とを有する。
【0378】
図16Aおよび
図16Bでは、スマートフォンおよびデスクトップ型情報端末を例として図示したが、それ以外の情報端末として、例えば、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型情報端末、ワークステーションなどに、本発明の一形態に係わる記憶装置を用いてもよい。
【0379】
例えば、本発明の一形態に係わる記憶装置を用いることができる電子機器として、携帯ゲーム機5200を、
図16Cに図示する。携帯ゲーム機5200は、筐体5201、表示部5202、ボタン5203等を有する。
【0380】
図16Cでは、携帯ゲーム機を例として図示したが、それ以外のゲーム機として、例えば、家庭用の据え置き型ゲーム機、娯楽施設(ゲームセンター、遊園地など)に設置されるアーケードゲーム機、スポーツ施設に設置されるバッティング練習用の投球マシンなどに、本発明の一形態に係わる記憶装置を用いてもよい。
【0381】
例えば、本発明の一形態に係わる記憶装置を用いることができる電子機器として、電気冷凍冷蔵庫5800を、
図16Dに図示する。電気冷凍冷蔵庫5800は、筐体5801、冷蔵室用扉5802、冷凍室用扉5803等を有する。
【0382】
図16Dでは、電気冷凍冷蔵庫を例として図示したが、それ以外の電化製品として、例えば、掃除機、電子レンジ、電子オーブン、炊飯器、湯沸かし器、IH調理器、ウォーターサーバ、エアーコンディショナーを含む冷暖房器具、洗濯機、乾燥機、オーディオビジュアル機器、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどに、本発明の一形態に係わる記憶装置を用いてもよい。
【0383】
例えば、本発明の一形態に係わる記憶装置を用いることができる電子機器として、自動車5700を、
図16Eに図示する。また、
図16Fは、自動車の室内におけるフロントガラス周辺を示す図である。
図16Fでは、ダッシュボードに取り付けられた表示パネル5701、表示パネル5702、表示パネル5703の他、ピラーに取り付けられた表示パネル5704を図示している。
【0384】
表示パネル5701乃至表示パネル5703は、スピードメーターやタコメーター、走行距離、燃料計、ギア状態、エアコンの設定などを表示することで、様々な情報を提供することができる。また、表示パネルに表示される表示項目やレイアウトなどは、ユーザの好みに合わせて適宜変更することができ、デザイン性を高めることができる。表示パネル5701乃至表示パネル5703は、照明装置として用いることもできる。
【0385】
表示パネル5704には、自動車5700に設けられた撮像装置(図示しない)からの画像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界(死角)を補完することができる。すなわち、自動車5700の外側に設けられた撮像装置からの画像を表示することによって、死角を補い、安全性を高めることができる。また、見えない部分を補完する画像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。表示パネル5704は、照明装置として用いることもできる。
【0386】
図16Eおよび
図16Fでは、自動車および自動車のフロントガラス周辺に取り付けられた表示パネルを例として図示したが、それ以外の移動体として、例えば、電車、モノレール、船、飛行体(ヘリコプター、無人航空機(ドローン)、飛行機、ロケット)などに、本発明の一形態に係わる記憶装置を用いてもよい。
【0387】
例えば、本発明の一形態に係わる記憶装置を用いることができる電子機器として、情報端末7000を、
図17Aおよび
図17Bに図示する。情報端末7000は、筐体7010、モニタ部7012、キーボード7013、ポート7015等を有する。
【0388】
キーボード7013およびポート7015は、筐体7010に設けられている。また、ポート7015として、例えば、USBポート、LANポート、HDMI(High-Definition Multimedia Interface;HDMIは登録商標)ポート等を有している。
【0389】
筐体7010に取り付けられているモニタ部7012は、開閉可能である。
図17Aに、モニタ部7012が開いている状態を図示し、
図17Bに、モニタ部7012が閉じている状態を図示する。例えば、モニタ部7012が開く最大の角度は135°程度である(
図17A参照)。
【0390】
筐体7010には、開閉可能なカバー7011が設けられている(
図17B参照)。筐体7010の内部には、本発明の一形態に係わる記憶装置10が組み込まれており、記憶装置10は着脱可能である。筐体7010の内部に、記憶装置10を冷却する装置、または放熱する装置を設けてもよい。カバー7011を開けて、記憶装置10を着脱できるため、情報端末7000の拡張性は高い。情報端末7000に複数の記憶装置10を組み込むことで、高度なグラフィック処理、科学技術計算、人工知能の演算等を行うことができる。
【0391】
例えば、本発明の一形態に係わる記憶装置を用いることができる電子機器として、大型の並列計算機5400を、
図18Aに図示する。並列計算機5400は、ラック5410内に、ラックマウント型の計算機5420を複数有している。
【0392】
図18Bは、計算機5420の構成例を示す斜視概略図である。計算機5420は、マザーボード5430を有し、マザーボードは、複数のスロット5431を有する。スロット5431には、PCカード5421が挿されている。PCカード5421は、接続端子5423、接続端子5424、接続端子5425を有し、それぞれ、マザーボード5430に接続されている。
【0393】
図18Cは、PCカード5421の構成例を示す斜視概略図である。PCカード5421は、ボード5422を有し、ボード5422上に、接続端子5423、接続端子5424、接続端子5425、チップ5426、チップ5427等を有する。
【0394】
チップ5426、チップ5427等として、本発明の一形態に係わる記憶装置、CPU、GPU、FPGA等が搭載されている。チップ5426、チップ5427等は、信号の入出力を行う複数の端子(図示しない)を有しており、当該端子をPCカード5421が備えるソケット(図示しない)に差し込むことで、PCカード5421との電気的な接続を行ってもよいし、当該端子をPCカード5421が備える配線に、例えば、リフロー方式のはんだ付けを行うことで、電気的な接続を行ってもよい。
【0395】
接続端子5423、接続端子5424、接続端子5425は、例えば、PCカード5421に対する電力供給、信号入出力などを行うためのインターフェースとすることができる。接続端子5423、接続端子5424、接続端子5425の規格として、例えば、USB(Universal Serial Bus)、SATA(Serial ATA)、SCSI(Small Computer System Interface)、また映像信号を出力する場合はHDMI(登録商標)等が挙げられる。
【0396】
また、PCカード5421は、ボード5422上に、接続端子5428を有する。接続端子5428は、マザーボード5430のスロット5431に挿すことができる形状であり、接続端子5428は、PCカード5421とマザーボード5430とを接続するためのインターフェースとして機能する。接続端子5428の規格として、例えば、PCI Express(PCIeともいう:PCI ExpressおよびPCIeは、登録商標)が挙げられる。
【0397】
並列計算機5400は、例えば、大規模な科学技術計算、人工知能の学習および推論に必要な大規模な演算を行うことができる。
【0398】
一般に、コンピュータなどの半導体装置では、用途に応じて様々な記憶装置(メモリ)が用いられる。
図19に、各種の記憶装置を階層ごとに示す。上層に位置する記憶装置ほど速いアクセス速度が求められ、下層に位置する記憶装置ほど大きな記憶容量と高い記録密度が求められる。
図19では、最上層から順に、CPUなどの演算処理装置にレジスタとして混載されるメモリ、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM、3D NANDメモリを示している。
【0399】
CPUなどの演算処理装置にレジスタとして混載されるメモリは、演算結果の一時保存などに用いられるため、演算処理装置からのアクセス頻度が高い。よって、記憶容量よりも速い動作速度が求められる。また、レジスタは演算処理装置の設定情報などを保持する機能も有する。
【0400】
SRAMは、例えばキャッシュに用いられる。キャッシュは、メインメモリに保持されている情報の一部を複製して保持する機能を有する。使用頻繁が高いデータをキャッシュに複製しておくことで、データへのアクセス速度を高めることができる。
【0401】
DRAMは、例えばメインメモリに用いられる。メインメモリは、ストレージから読み出されたプログラムやデータを保持する機能を有する。DRAMの記録密度は、おおよそ0.1乃至0.3Gbit/mm2である。
【0402】
3D NANDメモリは、例えばストレージに用いられる。ストレージは、長期保存が必要なデータや、演算処理装置で使用する各種のプログラムなどを保持する機能を有する。よって、ストレージには動作速度よりも大きな記憶容量と高い記録密度が求められる。ストレージに用いられる記憶装置の記録密度は、おおよそ0.6乃至6.0Gbit/mm2である。
【0403】
本発明の一形態に係わる記憶装置は、動作速度が速く、長期間のデータ保持が可能である。本発明の一形態に係わる記憶装置は、キャッシュが位置する階層とメインメモリが位置する階層の双方を含む境界領域901に位置する記憶装置として好適に用いることができる。また、本発明の一形態に係わる記憶装置は、メインメモリが位置する階層とストレージが位置する階層の双方を含む境界領域902に位置する記憶装置として好適に用いることができる。
【0404】
本発明の一形態に係わる記憶装置は、サーバ、ノートPC、スマートフォン、ゲーム機、イメージセンサ、IoT(Internet of Things)、ヘルスケアなどに用いる記憶装置として好適に用いることができる。
【0405】
例えば、本発明の一形態に係わる記憶装置を用いることができる電子機器として、サーバ5100を含むシステムを、
図20Aに図示する。
図20Aは、サーバ5100と、情報端末5500およびデスクトップ型情報端末5300との間で、通信5110を行う様子を模式的に示している。
【0406】
ユーザは、情報端末5500、デスクトップ型情報端末5300等から、サーバ5100にアクセスすることができる。そして、インターネットを介した通信5110によって、ユーザは、サーバ5100の管理者が提供するサービスを受けることができる。当該サービスとして、例えば、電子メール、SNS(Social Networking Service)、オンラインソフトウェア、クラウドストレージ、ナビゲーションシステム、翻訳システム、インターネットゲーム、オンラインショッピング、株・為替・債権などの金融取引、公共施設・商業施設・宿泊施設・病院などの予約システム、インターネット番組・講演・講義などの視聴等が挙げられる。
【0407】
また、科学技術計算、人工知能の学習および推論に必要な演算等、ユーザの手元にある情報端末5500またはデスクトップ型情報端末5300では処理能力が足りない場合、ユーザは、通信5110によってサーバ5100にアクセスし、サーバ5100上で当該計算または演算を行うことができる。
【0408】
例えば、サーバ5100上で提供されるサービスにおいて、人工知能を利用することができる。例えば、ナビゲーションシステムに人工知能を導入することで、当該システムは、道路の混雑状況、電車の運行情報などに応じて臨機応変に案内できる場合がある。例えば、翻訳システムに人工知能を導入することで、当該システムは、方言・スラングなど独特の言い回しを適切に翻訳できる場合がある。例えば、病院などの予約システムに人工知能を利用することで、当該システムは、ユーザの症状・怪我の度合いなどを判断し、適切な病院・診察所等を紹介できる場合がある。
【0409】
図20Aでは、サーバ5100と、情報端末5500およびデスクトップ型情報端末5300との間で、通信5110を行う様子を示しているが、サーバ5100と、情報端末以外の電子機器との間で、通信5110を行ってもよい。例えば、電子機器をインターネットに接続したIoTの形態であってもよい。
【0410】
図20Bは、一例として、サーバ5100と、電子機器(電気冷凍冷蔵庫5800、携帯ゲーム機5200、自動車5700、テレビジョン装置5600)との間で、通信5110を行う様子を模式的に示している。
【0411】
図20Bにおいて、それぞれの電子機器は人工知能を利用してもよい。人工知能の学習および推論に必要な演算等を、サーバ5100上で行うことができる。例えば、演算に必要なデータが、通信5110によって、電子機器の一つからサーバ5100に送信され、サーバ5100上で人工知能の演算が行われ、出力データが、通信5110によって、サーバ5100から電子機器の一つに送信される。これにより、当該電子機器は、人工知能の演算によって出力されたデータを利用することができる。
【0412】
なお、
図20Bに示す電子機器は一例であり、サーバ5100と、
図20Bに示されていない電子機器との間で、通信5110を行ってもよい。
【0413】
上述のように、本発明の一形態に係わる記憶装置は、様々な電子機器に用いることができる。本発明の一形態に係わる記憶装置は、少ない電源数で動作させることができ、当該記憶装置を用いた電子機器のコストを低減することができる。また、本発明の一形態に係わる記憶装置は、チップ面積が小さく、電子機器を小型化することができる。もしくは、より多くの記憶装置を、電子機器に搭載することができる。また、本発明の一形態に係わる記憶装置は、温度の高い環境においても、データの消失が生じにくく、高速動作を行うことができる。本発明の一形態に係わる記憶装置を用いることで、温度の高い環境においても確実に動作する、信頼性の高い電子機器を提供することができる。
【0414】
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0415】
BG1:配線、BG2:配線、C11:容量素子、M12:トランジスタ、N11:ノード、10:記憶装置、11:トランジスタ、12:トランジスタ、50:回路、51:センスアンプ回路、52:AND回路、53:アナログスイッチ、54:アナログスイッチ、61:トランジスタ、62:トランジスタ、63:トランジスタ、64:トランジスタ、66:トランジスタ、100:層、101:周辺回路、111:メモリセルアレイ、112:メモリセル、113:メモリセル、121:ローデコーダ、122:ワード線ドライバ回路、123:ワード線ドライバ回路、124:プレデコーダ、131:カラムデコーダ、132:ビット線ドライバ回路、133:プリチャージ回路、134:センスアンプ回路、135:出力MUX回路、136:ドライバ回路、138:ページバッファ、141:出力回路、151:コントロールロジック回路、200:層、200_l:層、200_1:層、200_2:層、200_3:層、600:トランジスタ、605:導電体、605a:導電体、605b:導電体、607:導電体、611:絶縁体、612:絶縁体、614:絶縁体、615:導電体、616:絶縁体、622:絶縁体、624:絶縁体、630:酸化物、630a:酸化物、630b:酸化物、630c:酸化物、640:導電体、640a:導電体、640b:導電体、640c:導電体、640d:導電体、640e:導電体、642:導電体、642a:導電体、642b:導電体、643:酸化物、643a:酸化物、643b:酸化物、646:導電体、646a:導電体、646b:導電体、650:絶縁体、655:容量素子、656:導電体、657:導電体、660:導電体、660a:導電体、660b:導電体、672:絶縁体、673:絶縁体、674:絶縁体、680:絶縁体、682:絶縁体、683:絶縁体、684:絶縁体、685:絶縁体、686:絶縁体、687:絶縁体、688:絶縁体、689:絶縁体、690:トランジスタ、700:トランジスタ、705:導電体、705a:導電体、705b:導電体、730:酸化物、730a:酸化物、730b:酸化物、730c:酸化物、742:導電体、742a:導電体、742b:導電体、743:酸化物、743a:酸化物、743b:酸化物、746:導電体、750:絶縁体、760:導電体、760a:導電体、760b:導電体、790:トランジスタ、800:トランジスタ、811:基板、813:半導体領域、814a:低抵抗領域、814b:低抵抗領域、815:絶縁体、816:導電体、820:絶縁体、822:絶縁体、824:絶縁体、826:絶縁体、828:導電体、830:導電体、850:絶縁体、852:絶縁体、854:絶縁体、856:導電体、857:導電体、860:メモリセル、860_1:メモリセル、860_2:メモリセル、860_3:メモリセル、860_4:メモリセル、860_5:メモリセル、860_6:メモリセル、870:メモリセル層、870_n:メモリセル層、870_1:メモリセル層、870_2:メモリセル層、871:シリコン層、876:導電体、878:導電体、901:境界領域、902:境界領域、3000:電子部品、3002:プリント基板、3004:実装基板、3011:モールド、3012:ランド、3013:電極パッド、3014:ワイヤ、3030:電子部品、3031:インターポーザ、3032:パッケージ基板、3033:電極、3035:半導体装置、5100:サーバ、5110:通信、5200:携帯ゲーム機、5201:筐体、5202:表示部、5203:ボタン、5300:デスクトップ型情報端末、5301:本体、5302:ディスプレイ、5303:キーボード、5400:並列計算機、5410:ラック、5420:計算機、5421:PCカード、5422:ボード、5423:接続端子、5424:接続端子、5425:接続端子、5426:チップ、5427:チップ、5428:接続端子、5430:マザーボード、5431:スロット、5500:情報端末、5510:筐体、5511:表示部、5600:テレビジョン装置、5700:自動車、5701:表示パネル、5702:表示パネル、5703:表示パネル、5704:表示パネル、5800:電気冷凍冷蔵庫、5801:筐体、5802:冷蔵室用扉、5803:冷凍室用扉、7000:情報端末、7010:筐体、7011:カバー、7012:モニタ部、7013:キーボード、7015:ポート