(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】乗り物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20241009BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/22
(21)【出願番号】P 2019238845
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘規
(72)【発明者】
【氏名】亀井 聡一郎
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-019345(JP,A)
【文献】特開2010-254109(JP,A)
【文献】特開2018-192183(JP,A)
【文献】特開2017-214069(JP,A)
【文献】特表2008-520356(JP,A)
【文献】特開2015-067133(JP,A)
【文献】特開2018-162033(JP,A)
【文献】特開2008-068634(JP,A)
【文献】特開平11-216037(JP,A)
【文献】特開2013-067240(JP,A)
【文献】特開2018-203209(JP,A)
【文献】特開2015-003599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - B60N 2/90
A47C 7/00 - A47C 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸周りで回転軸線(SX)に直交する鉛直面に沿って広がって、前記鉛直面に沿って上向きに延びる板状部(35a)
、前記板状部(35a)の前縁か
ら内向きに
伸長する前壁(35b)、および
、前記板状部(35a)の後縁か
ら内向きに
伸長する後壁(35c)を有する左右のサイドフレーム(35)と、
前記左右のサイドフレーム(35)を相互に連結する背領域(51)を有するロワーフレーム(36)と、
前記ロワーフレーム(36)の上方で前記左右のサイドフレーム(35)を相互に連結するアッパーフレーム(37)とを有するシートバックフレーム(25)を備える乗り物用シート(11)において、
前記背領域(51)は
、前記後壁(35c)
のシート前後方向の後ろ側の面に接合され、
前記ロワーフレーム(36)は、前記背領域(51)の下縁から連続して前記回転軸線(SX)よりも前方に向かって広がり前記前壁(35b)
のシート前後方向の後ろ側の面に接合される補強域(52)を有し、
正面視において、前記後壁(35c)は、前記補強域(52)の
前端と重なる位置を避けた位置で、かつ、前記背領域(51)とは重なる位置に配置されていることを特徴とする乗り物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗り物用シートにおいて、
前記前壁(35b)と前記補強域(52)が接合する箇所には、溶接痕(63)が形成され、
前記溶接痕(63)は、正面視において前記後壁(35c)と重ならない位置にあることを特徴とする乗り物用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の乗り物用シートにおいて、
前記後壁(35c)と前記背領域(51)が接合する箇所には、溶接痕(54)が形成され、
前記溶接痕(54)は、正面視において前記前壁(35b)と重ならない位置にあることを特徴とする乗り物用シート。
【請求項4】
請求項
1乃至3のいずれか一項に記載の乗り物用シートにおいて、前記背領域(51)の上縁は、
左右中央位置から左右方向に前記回転軸線(SX)に平行に延びる第1縁(53a)と、
前記第1縁(53a)の左右端からそれぞれ上向きに湾曲しながら延びる第2縁(53b)と、を有することを特徴とする乗り物用シート。
【請求項5】
請求項
4に記載の乗り物用シートにおいて、前記背領域(51)の上縁は、
前記第2縁(53b)の上端からそれぞれ外側に向かって前記回転軸線(SX)に平行に延び、前記サイドフレーム(35)に重ねられる第3縁(53c)を含むことを特徴とする乗り物用シート。
【請求項6】
請求項
4又は5に記載の乗り物用シートにおいて、前記後壁(35c)は、
前記回転軸線(SX)方向において前記板状部(35a)から前記第2縁(53b)まで延びる高壁部(61b)と、
前記高壁部(61b)よりも下方に配置され、前記回転軸線(SX)方向において前記板状部(35a)から前記高壁部(61b)よりも短く延びる低壁部(61a)と、を有し、
前記低壁部(61a)は、前記補強域(52)の
前記前端の左右端よりも外側の位置に形成され、
前記補強域(52)の
前記前端は、前記高壁部(61b)よりも下方に配置されることを特徴とする乗り物用シート。
【請求項7】
請求項
6に記載の乗り物用シートにおいて、前記第1縁(53a)と前記第2縁(53b)には、前向きに
伸長するフランジ(51b)が設けられ、
前記フランジ(51b)は、前記第1縁(53a)及び前記第2縁(53b)で連続し、前記第2縁(53b)の上端まで延びることを特徴とする乗り物用シート。
【請求項8】
請求項
7に記載の乗り物用シートにおいて、前記後壁(35c)には、前記後壁(35c)の内端か
ら前向きに
伸長するサイドフレームフランジ(41)が形成され、
前記サイドフレームフランジ(41)は、シート上下方向に延び、
前記サイドフレームフランジ(41)の下端は、前記高壁部(61b)のシート幅方向内側における下端に形成されることを特徴とする乗り物用シート。
【請求項9】
請求項
8に記載の乗り物用シートにおいて、前記フランジ(51b)は、前記サイドフレームフランジ(41)よりもシート幅方向における内側に配置されることを特徴とする乗り物用シート。
【請求項10】
請求項6に記載の乗り物用シートにおいて、
前記サイドフレーム(35)の前記前壁(35b)には、前記前壁(35b)の内縁から内方に広がって前記ロワーフレーム(36)に重なる重ね片(62)が形成され、
前記重ね片(62)は、前記回転軸線(SX)方向において前記高壁部(61b)より短く、かつ前記低壁部(61a)よりも長く延びることを特徴とする乗り物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸周りで回転軸線に直交する鉛直面に沿って広がって、鉛直面に沿って上向きに延びる板状部、および、板状部の後縁から連続し内向きに折り曲げ成形され、回転軸周りから鉛直方向に延びる湾曲域を形成する後壁を有する左右のサイドフレームと、回転軸の後方に配置されて後壁に後方から接合され左右のサイドフレームを相互に連結する背領域を有するロワーフレームと、ロワーフレームの上方で左右のサイドフレームを相互に連結するアッパーフレームとを有するシートバックフレームを備える乗り物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートクッションにリクライニング自在に連結されるシートバックを備える車両用シート(乗り物用シート)が開示される。シートバックは、回転軸から鉛直方向に上向きに延び、シートバックパッドを支持する左右のサイドフレームと、リクライニングの回転軸線の後方に配置されて左右のサイドフレームを相互に連結するロワーパネル(ロワーフレーム)と、ロワーパネルの上方で左右のサイドフレームを相互に連結するアッパークロスメンバー(アッパーフレーム)とを有する。左右のサイドフレーム、ロワーパネルおよびアッパークロスメンバーは四角いフレーム構造を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
個々のサイドフレームは、リクライニングの回転軸線に直交する鉛直面に沿って広がる板状部と、板状部の後縁から連続し内向きに折り曲げ成形され、回転軸周りから鉛直方向に延びアッパークロスメンバーに至る湾曲域を形成する後壁とを有する。シートバックフレームの組み立てにあたってロワーパネルは後方からサイドフレームの後壁に接合される。したがって、ロワーパネルには一方向からサイドフレームは組み付けられることができる。サイドフレームは良好な作業効率でロワーパネルに組み付けられることができる。
【0005】
その一方で、2つの接合領域の間は平板形状であることから、フレーム構造のねじれ剛性はそれほど高くない。ねじれ剛性の確保にあたってロワーパネルおよびサイドフレームの接合に高い接合強度が要求される。接合の作業負荷は増大する。
【0006】
本発明は、シートバックフレームの組み立てにあたって作業負荷の軽減に貢献することができる乗り物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1側面によれば、回転軸周りで回転軸線SXに直交する鉛直面に沿って広がって、前記鉛直面に沿って上向きに延びる板状部35a、前記板状部35aの前縁から内向きに伸長する前壁35b、および、前記板状部35aの後縁から内向きに伸長する後壁35cを有する左右のサイドフレーム35と、前記左右のサイドフレーム35を相互に連結する背領域51を有するロワーフレーム36と、前記ロワーフレーム36の上方で前記左右のサイドフレーム35を相互に連結するアッパーフレーム37とを有するシートバックフレーム25を備える乗り物用シート11において、前記背領域51は、前記後壁35cのシート前後方向の後ろ側の面に接合され、前記ロワーフレーム36は、前記背領域51の下縁から連続して前記回転軸線SXよりも前方に向かって広がり前記前壁35bのシート前後方向の後ろ側の面に接合される補強域52を有し、正面視において、前記後壁35cは、前記補強域52の前端と重なる位置を避けた位置で、かつ、前記背領域51とは重なる位置に配置されている。
【0008】
第2側面によれば、第1側面の構成に加えて、前記前壁35bと前記補強域52が接合する箇所には、溶接痕63が形成され、前記溶接痕63は、正面視において前記後壁35cと重ならない位置にある。
【0009】
第3側面によれば、第2側面の構成に加えて、前記後壁35cと前記背領域51が接合する箇所には、溶接痕54が形成され、前記溶接痕54は、正面視において前記前壁35bと重ならない位置にある。
【0010】
第4側面によれば、第1~第3側面の構成に加えて、前記背領域51の上縁は、左右中央位置から左右方向に前記回転軸線SXに平行に延びる第1縁53aと、前記第1縁53aの左右端からそれぞれ上向きに湾曲しながら延びる第2縁53bと、を有する。
【0011】
第5側面によれば、第4側面の構成に加えて、前記背領域51の上縁は、前記第2縁53bの上端からそれぞれ外側に向かって前記回転軸線SXに平行に延び、前記サイドフレーム35に重ねられる第3縁53cを含む。
【0012】
第6側面によれば、第4~第5側面の構成に加えて、前記後壁35cは、前記回転軸線SX方向において前記板状部35aから前記第2縁53bまで延びる高壁部61bと、前記高壁部61bよりも下方に配置され、前記回転軸線SX方向において前記板状部35aから前記高壁部61bよりも短く延びる低壁部61aと、を有し、前記低壁部61aは、前記補強域52の前記前端の左右端よりも外側の位置に形成され、前記補強域52の前記前端は、前記高壁部61bよりも下方に配置される。
【0013】
第7側面によれば、第6側面の構成に加えて、前記第1縁53aと前記第2縁53bには、前向きに伸長するフランジ51bが設けられ、前記フランジ51bは、前記第1縁53a及び前記第2縁53bで連続し、前記第2縁53bの上端まで延びる。
【0014】
第8側面によれば、第7側面の構成に加えて、前記後壁35cには、前記後壁35cの内端から前向きに伸長するサイドフレームフランジ41が形成され、前記サイドフレームフランジ41は、シート上下方向に延び、前記サイドフレームフランジ41の下端は、前記高壁部61bのシート幅方向内側における下端に形成される。
【0015】
第9側面によれば、第8側面の構成に加えて、前記フランジ51bは、前記サイドフレームフランジ41よりもシート幅方向における内側に配置される。
【0016】
第10側面によれば、第6側面の構成に加えて、前記サイドフレーム35の前記前壁35bには、前記前壁35bの内縁から内方に延びて前記ロワーフレーム36に重なる重ね片62が形成され、前記重ね片62は、前記回転軸線SX方向において前記高壁部61bより短く、かつ前記低壁部61aよりも長く延びる。
【発明の効果】
【0017】
第1側面によれば、ロワーフレームは、背領域に加えて、背領域の下縁から回転軸線よりも前方に向かって広がる補強域で個々のサイドフレームに接合されることから、シートバックフレームのねじれ剛性は高められることができる。ロワーフレームが背領域だけでサイドフレームに接合される場合に比べて、ロワーフレームおよびサイドフレームの接合強度は軽減されることができる。こうして接合の作業負荷は軽減されることができる。しかも、シートバックフレームの組み立てにあたってロワーフレームは後方からサイドフレームに組み付けられることができる。ロワーフレームには一方向からサイドフレームは組み付けられることができる。組み立ての作業性は損なわれない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用シートの全体構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】シートフレームの構造を概略的に示す斜視図である。
【
図3】シートクッションパッドおよびシートバックパッドの構成を概略的に示す斜視図である。
【
図7】シートバックフレームの拡大部分下面図である。
【
図10】
図8の10-10線に沿った断面図である。
【
図11】アッパーフレームの上壁の拡大斜視図である。
【
図12】差し込み孔の中心軸を通る切断面で切断されたロワーフレームの断面図である。
【
図13】ロワーフレームに重ねられて、差し込み孔の中心軸を通る切断面で切断されたサイドフレームの断面図である。
【
図14】サイドフレームに重ねられて、差し込み孔の中心軸を通る切断面で切断されたアッパーフレームの断面図である。
【
図15】開口の中心軸を通る切断面で切断されたロワーフレームおよび連結軸の断面図である。
【
図16】変形例に係るアッパーフレームの正面図である。
【
図17】開口の中心軸を通る切断面で切断されたロワーフレームおよび連結軸の断面図であって他の具体例に係る連結軸を示す図である。
【
図18】アッパーフレームの上壁および下壁に挿入される支持筒を概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、前後、左右および上下は通常の着座姿勢(運転時の基本姿勢)で車両用シートに着座した乗員から見た方向をいう。
【0029】
図1は本発明の一実施形態に係る車両用シート(乗り物用シート)の全体構成を概略的に示す。車両用シート11は、例えば車両のモノコック構造の1構成要素として機能するフロアパネル12に結合されるスライドレール13と、前後方向に移動可能にスライドレール13に支持されて、乗員の臀部および大腿を受け止めるシートクッション14と、揺動軸線SX回りで前後方向に揺動可能にシートクッション14に連結されて、乗員の背中を受け止めるシートバック15と、シートバック15の上端に支持されて、乗員の頭を受け止めるヘッドレスト16とを備える。シートクッション14、シートバック15およびヘッドレスト16は個別に内部のパッドを包み込む表皮材14a、15a、16aを有する。表皮材15a、16aは、吊り込み糸17の働きでパッドの窪みに倣ってパッドの外面に密着する。パッドの詳細は後述される。車両用シート11は左座席用に構成される。車両用シート11が右座席用に用いられる場合には、車両用シート11で左右が入れ替えられればよい。
【0030】
シートクッション14はサイドカバー18を備える。サイドカバー18には第1レバー(操作子)19aおよび第2レバー(操作子)19bが取り付けられる。第1レバー19aは、回転軸線SXに平行な軸線回りで揺動自在に支持される。第1レバー19aが軸線回りで上方に引き上げられると、シートクッション14およびシートバック15は上方に移動する。第1レバー19aが軸線回りで下方に押し下げられると、シートクッション14およびシートバック15は下方に移動する。第2レバー19bは回転軸線SX回りで揺動自在に支持される。第2レバー19bが揺動軸線SX回りで上方に引き上げられると、シートクッション14およびシートバック15の間で揺動軸線SX回りにロックは解除される。揺動軸線SX回りでシートバック15の揺動は許容される。シートバック15はばね力の働きで揺動軸線SX回りに前方に駆動される。ばね力に抗して揺動軸線SX回りに後方にシートバック15に外力が加えられると、シートバック15は揺動軸線SX回りに後方に駆動されることができる。第2レバー19bが揺動軸線SX回りの引き上げ力から解放されると、シートクッション14およびシートバック15の間で揺動軸線SX回りにロックは確立される。揺動軸線SX回りにシートバック15の角度は固定されることができる。
【0031】
シートクッション14には第3レバー(操作子)19cが取り付けられる。第3レバー19cは、揺動軸線SXに平行な軸線回りで揺動自在に支持される。第3レバー19cが軸線回りで上方に引き上げられると、シートクッション14およびスライドレール13の間でロックは解除される。スライドレール13上でシートクッション14の線形移動は許容される。シートクッション14に前向きまたは後向きに外力が加えられると、シートクッション14はスライドレール13に沿って変位することができる。第3レバー19cが軸線回りの引き上げ力から解放されると、シートクッション14およびスライドレール13の間でロックは確立される。スライドレール13上で前後方向にシートクッション14の位置は固定されることができる。
【0032】
ヘッドレスト16は、シートバック15の上端から上方に延びるヘッドレストピラー21に固定される。ヘッドレストピラー21は、上下方向に軸方向に変位自在にシートバック15に支持される。ヘッドレストピラー21の変位に応じてヘッドレスト16の高さは調整されることができる。
【0033】
図2に示されるように、車両用シート11は、パッドを支持するシートフレーム23を備える。シートフレーム23は、シートクッション14のパッドを支持するシートクッションフレーム24と、揺動軸線SX回りに揺動可能にシートクッションフレーム24に連結されて、シートバック15のパッドを支持するシートバックフレーム25と、長手方向に前後移動自在にスライドレール13に案内されて、スライドレール13上でシートクッションフレーム24を支持するベースフレーム26とを備える。シートクッションフレーム24はリンク機構27でベースフレーム26に連結される。リンク機構27は、揺動軸線SXに平行に左右方向に延びる水平軸線FH回りで回転自在にベースフレーム26に結合される一端と、水平軸線FHに平行に左右方向に延びる水平軸線SH回りで回転自在にシートクッションフレーム24に結合される他端とを有するリンク部材28を備える。リンク部材28は水平軸線FH回りでベースフレーム26に対してシートクッションフレーム24の上下移動を案内する。
【0034】
シートクッションフレーム24は、個々のスライドレール13に並んで延びるクッションサイドフレーム24aと、シートクッション14の前端でクッションサイドフレーム24a同士を接続するパンフレーム24bと、シートクッション14の後端でクッションサイドフレーム24a同士を連結する連結パイプ24cとを備える。パンフレーム24bと連結パイプ24cとの間には複数のSばね(図示されず)が配置される。個々のSばねはジグザグ形状で前後に延びる。ジグザグ形状は、前後方向に延びる線材と、左右方向に延びる線材とが交互に組み合わせられて形成される。
【0035】
ベースフレーム26にはマニュアル式前後移動装置29が取り付けられる。マニュアル式前後移動装置29に第3レバー19cは連結される。マニュアル式前後移動装置29は、第3レバー19cの揺動に応じて、スライドレール13上でベースフレーム26の移動のロックおよびロック解除を切り替える。
【0036】
シートクッションフレーム24のクッションサイドフレーム24aにはマニュアル式上下移動装置31が取り付けられる。マニュアル式上下移動装置31は、クッションサイドフレーム24aに支持されて、リンク機構27に連結される伝達機構32を備える。伝達機構32は、クッションサイドフレーム24aの外側に配置されて、軸線回りに第1レバー19aから伝わる駆動力に応じて、水平軸線SH回りにクッションサイドフレーム24aに対してリンク部材28の回転を引き起こす。伝達機構32は、例えば第1レバー19aの揺動軸に固定される駆動ギアと、水平軸線SH回りでリンク部材28に固定される被動ギアとを含めばよい。
【0037】
シートバックフレーム25は、リクライニングユニット(リクライニング機構)34で個々のクッションサイドフレーム24aの内側に連結される左右のサイドフレーム35と、リクライニングユニット34周りで相互にサイドフレーム35の下端を連結するロワーフレーム36と、ロワーフレーム36の上方で相互にサイドフレーム34の上端を連結するアッパーフレーム37とを備える。サイドフレーム35は、リクライニングユニット34周りで揺動軸線SXに直交する鉛直面に沿って広がって、鉛直面に沿って上向きに延びる板状部35aと、板状部35aの前縁から連続し内向きに折り曲げ成形され、リクライニングユニット34周りから鉛直方向に延びる湾曲域38を形成する前壁35bと、板状部35aの後縁から連続し内向きに折り曲げ成形され、リクライニングユニット34周りから鉛直方向に延びる湾曲域39を形成する後壁35cとを有する。後壁35cには、後壁35cの内端から連続し前向きに折り曲げ成形されるサイドフレームフランジ41が形成される。個々のサイドフレーム35は例えば1枚の金属板から成形される。アッパーフレーム37には上下方向にスライド可能にヘッドレストピラー21を支持するヘッドレストピラーガイド42が固定される。アッパーフレーム37の詳細は後述される。
【0038】
リクライニングユニット34は、シートクッションフレーム24およびシートバックフレーム25に対して相対回転自在に支持される回転体43を備える。一方の回転体(ここでは左の回転体)43には揺動軸線SXに同軸に軸体44が結合される。軸体44に第2レバー19bは固定される。回転体43の回転に応じてシートクッションフレーム24およびシートバックフレーム25の相対回転のロックおよびロック解除は切り替えられる。左右のリクライニングユニット34は連結軸45で相互に連結される。連結軸45は揺動軸線SX回りで回転することができる。連結軸45は一方の回転体(ここでは左の回転体)43の回転を他方の回転体(ここでは右の回転体)43に伝達する。こうして第2レバー19bの操作は一方のリクライニングユニット34から他方のリクライニングユニット34に伝達される。
【0039】
図3に示されるように、シートクッション14は、シートクッションフレーム24に支持されて、表皮材14aに包み込まれるシートクッションパッド46をさらに備える。シートバック15は、シートバックフレーム25に支持されて、表皮材15aに包み込まれるシートバックパッド47をさらに備える。シートクッションパッド46およびシートバックパッド47は例えば発泡ウレタンといった弾力性を有する素材から形成される。
【0040】
図4~
図6に示されるように、ロワーフレーム36は、揺動軸線SXの後方に配置されてサイドフレーム35の後壁35cに後方から接合され左右のサイドフレーム35を相互に連結する背領域51と、背領域51の下縁から連続して揺動軸線SXよりも前方に向かって広がり前壁35bに後方から接合される補強域52とを有する。補強域52は、サイドフレーム35の板状部35aに直交する姿勢の母線を有して板状部35aの縁に沿って揺動軸線SX周りに湾曲する。湾曲する補強域52の働きで揺動軸線SX回りにロワーフレーム36のねじれ剛性は高められることができる。ロワーフレーム36は例えば1枚の金属板から成形される。
【0041】
背領域51は、第1平面Pfに沿って広がる平板部51aと、平板部51aの上縁から連続し前向きに折り曲げ成形されるフランジ51bとを有する。平板部51aの上縁は、左右中央位置から左右方向に揺動軸線SXに平行に延びる第1縁53aと、第1縁53aの左右端からそれぞれ上向きに湾曲しながら延びる第2縁53bと、第2縁53bの上端からそれぞれ外側に向かって揺動軸線SXに平行に延びサイドフレーム35に重ねられる第3縁53cとを含む。フランジ51bは、第1縁53aおよび第2縁53bで連続し第2縁53bの上端で途切れサイドフレームフランジ41に向き合わせられる。
【0042】
背領域51には左右のサイドフレーム35と重なる位置で溶接の溶接痕54が確立される。ここでは、溶接痕54はサイドフレーム35の縁に沿って形成される溶接ビードで構成される。溶接痕54で左右のサイドフレーム35はロワーフレーム36の背領域51に接合される。溶接には、その他、スポット溶接やレーザー溶接が用いられることができる。
【0043】
背領域51には、個々のサイドフレーム35から外れた位置で2つの差し込み孔55が形成される。差し込み孔55は、鉛直方向(重力方向)に起立するピンでロワーフレーム36が支持される際にロワーフレーム36が安定して支持される距離で揺動軸線SXの軸方向に離れて配置される。差し込み孔55は例えば円形の輪郭を有する。
【0044】
背領域51には、個々のサイドフレーム35から外れた位置で、2つの差し込み孔55よりも左右方向に中央寄りに2つの開口56が形成される。開口56は、鉛直方向(重力方向)に起立するジグで連結軸45が支持される際に連結軸45が安定して支持される距離で揺動軸線SXの軸方向に離れて配置される。開口56は例えば円形の輪郭を有する。
【0045】
図5に示されるように、背領域51には第1平面Pf内で広がってシートバックフレーム25の組み立て時に後方から支持される第1受け面57が形成される。差し込み孔55および開口56は第1受け面57内に穿たれる。ここでは、開口56は部分的に補強域52で広がってもよい。連結軸45には、開口56の前方に配置されて、後述されるようにジグに保持される角体58が形成される。角体58は、第1平面Pfに直交しながら開口56に内接する仮想円筒面に囲まれる円柱空間内に配置される。角体58は例えば丸管が平坦に押し潰されて断面角形状に形成されることができる。
【0046】
図7に示されるように、サイドフレーム35の前壁35bは、板状部35aから揺動軸線SXの軸方向に第1高さHfを有する。前壁35bはロワーフレーム36の縁を含んで揺動軸線SXに直交する仮想平面Seから揺動軸線SXの軸方向にずれて配置される。サイドフレーム35の後壁35cは、揺動軸線SX周りで板状部35aの周縁に沿って前壁35bに空間59を挟んで隣接し、板状部35aから揺動軸線SXの軸方向に第1高さHfを有する低壁61aと、低壁部61aから連続し、板状部35aから揺動軸線SXの軸方向に第1高さHfよりも大きい第2高さHsを有する高壁部61bとを有する。前壁35bの湾曲域38と後壁35cの湾曲域39とは空間59で分断される。
図4に示されるように、高壁部61bは、第1平面Pfに直交して補強域52の前縁に上方から接する仮想平面Leよりも上方に配置される。
【0047】
図7に示されるように、サイドフレーム35の前壁35bには、第1高さHfの内縁から内方に広がってロワーフレーム36の補強域52に前方から重ねられる重ね片62が形成される。重ね片62の縁には補強域52と重なる位置で溶接の溶接痕63が確立される。ここでは、溶接痕63は重ね片62の縁に沿って形成される溶接ビードで構成される。溶接痕63で左右のサイドフレーム35はロワーフレーム36の補強域52に接合される。溶接には、その他、スポット溶接やレーザー溶接が用いられることができる。
図4に示されるように、重ね片63は、第1平面Pfに直交して補強域52の前縁に上方から接する仮想平面Leよりも下方に配置される。
【0048】
図5に示されるように、個々のサイドフレーム35には第1平面Pfに対して決められた位置関係で設定される第2平面Ps内で広がって、シートバックフレーム25の組み立て時に後方から支持される第2受け面64が形成される。ここでは、第2平面Psは第1平面Pfに平行に設定される。サイドフレーム35の後壁35cには、ロワーフレーム36から外れた位置で第2受け面64内に開口する差し込み孔65が形成される。差し込み孔65は例えば円形の輪郭を有する。
【0049】
図2に示されるように、個々のサイドフレーム35の後壁35cには、差し込み孔65よりも上方でアッパーフレーム37から外れた位置に補助差し込み孔66が形成される。補助差し込み孔66は、差し込み孔65と同様に鉛直方向(重力方向)に起立するピンでサイドフレーム35が支持される際に差し込み孔65と協働でサイドフレーム35が安定して支持される距離で上下方向に差し込み孔65から離れて配置される。補助差し込み孔66は例えば円形の輪郭を有する。補助差し込み孔66は、第1平面Pfに対して決められた位置関係で設定される補助平面内で広がって、シートバックフレーム25の組み立て時に後方から支持される補助受け面で開口する。
【0050】
図8に示されるように、アッパーフレーム37は、板材から折り曲げ成形されて、水平方向に延びる上稜線67および下稜線68で仕切られる正面壁69と、上稜線67から連続し後方に広がる上壁71と、上壁71の後端から上向きに折り曲げ成形される上立ち壁72と、下稜線68から連続し後方に広がる下壁73と、下壁73の後端から下向きに折り曲げ成形される下立ち壁74とを有する。上立ち壁72には、上立ち壁72の上端から連続し前向きに折り曲げ成形される第1フランジ75が接続される。第1フランジ75は、上立ち壁72の上縁に沿って水平方向に全域にわたって連続する。下立ち壁74には、下立ち壁74の下端から連続し前向きに折り曲げ成形される第2フランジ76が接続される。第2フランジ76は、下立ち壁74の下縁に沿って水平方向に全域にわたって連続する。
【0051】
正面壁69は、水平方向に左右2か所で前向きに折り曲げ成形され鉛直方向の谷折り線77に沿って窪みを形成しそれぞれ外方に向かって延びる連結片69aを有する。連結片69aは、水平方向にさらに窪みの外側で後向きに折り曲げ成形され鉛直方向の山折り線78に沿って稜線を形成する。正面壁69の変形に伴って上立ち壁72および下立ち壁74は同様に変形する。アッパーフレーム37は例えば1枚の金属板から成形される。
【0052】
水平方向に山折り線78よりも外側で正面壁69には溶接の溶接痕79が確立される。ここでは、溶接痕79は左右のサイドフレーム35の縁に沿って形成される溶接ビードで構成される。溶接痕79の上下に対応して上立ち壁72および下立ち壁74には溶接の溶接痕81、82が確立される。ここでは、溶接痕81、82は左右のサイドフレーム35の縁に沿って形成される溶接ビードで構成される。溶接痕79、81、82でアッパーフレーム37は左右のサイドフレーム35に固着される。溶接には、その他、スポット溶接やレーザー溶接が用いられることができる。
【0053】
図9に示されるように、前壁35bの内縁は、アッパーフレーム37の縁に対応する仮想輪郭線83aから内側に広がって後方からアッパーフレーム37の正面壁69に重ねられる突片83を有する。アッパーフレーム37の正面壁69は突片83との間で溶接痕79を形成する。後壁35cの内縁は、後方からアッパーフレーム37の上立ち壁72に重ねられる上側重ね域84と、上側重ね域84の下方で、上側重ね域84から間隔を空けて、後方からアッパーフレーム37の下立ち壁74に重ねられる下側重ね域85とを有する。アッパーフレーム37の上立ち壁72は上側重ね域84との間で溶接痕81を形成する。同様に、アッパーフレーム37の下立ち壁74は下側重ね域85との間で溶接痕82を形成する。
【0054】
図10に示されるように、アッパーフレーム37は、上壁71に形成されて、ヘッドレストピラーガイド86を受け入れる第1貫通孔87と、下壁73に形成されて、ヘッドレストピラーガイド86を受け入れる第2貫通孔88とを有する。ヘッドレストピラーガイド86は軸線方向に変位自在にヘッドレストピラー21を支持する。ヘッドレストピラーガイド86には、軸線に直交する方向に広がる位置決めフランジ89が形成される。第1貫通孔87および第2貫通孔88に上方からヘッドレストピラーガイド86が差し込まれると、位置決めフランジ89は上壁71に上方から接触して軸方向にヘッドレストピラーガイド86を位置決めする。ヘッドレストピラーガイド86は例えば樹脂材から成形されることができる。
【0055】
第1貫通孔87および第2貫通孔88の周縁にはそれぞれ下向きに折り曲げ成形される支持孔フランジ91が形成される。ヘッドレストピラーガイド86は支持孔フランジ91に圧入される。支持孔フランジ91はアッパーフレーム37に対してヘッドレストピラーガイド86を固定する。支持孔フランジ91はアッパーフレーム37からヘッドレストピラーガイド86の抜けを防止することができる。
【0056】
図11に示されるように、第1貫通孔87の後方で第1フランジ75には、第1フランジ75の前縁から下向きに折り曲げ成形される受け片92が形成される。受け片92は後方からヘッドレストピラーガイド86を受け止める。前方からヘッドレストピラーガイド86に作用する荷重はアッパーフレーム37の上立ち壁72で支持される。その他、受け片92は第1フランジ75の前縁から上向きに折り曲げ成形されてもよい。
【0057】
図8に示されるように、正面壁69の窪みには、谷折り線77に交差しながら延び曲げ方向に正面壁69の剛性を補強するビード(補強形状)93が形成される。ビード93は左右方向に水平に延びる。同様に、正面壁69には、正面視でヘッドレストピラー21に交差しながら延び面内方向に正面壁69の剛性を補強するビード(補強形状)94が形成される。ビード94は、中央寄りの最下端から外側に向かうにつれて上側に変位するように傾斜する。
【0058】
正面壁69には、2つの窪みに挟まれる領域に2つの差し込み孔95が形成される。差し込み孔95は、鉛直方向(重力方向)に起立するピンでアッパーフレーム37が支持される際にアッパーフレーム37が安定して支持される距離で揺動軸線SXの軸方向に離れて配置される。差し込み孔95は例えば円形の輪郭を有する。差し込み孔95は、
図10に示されるように、第1平面Pf(あるいは補助平面)に対して決められた位置関係で設定される第3平面Pt内で広がって、シートバックフレーム25の組み立て時に後方から支持される第3受け面96で開口する。
【0059】
次にシートバックフレーム25の製造方法を説明する。シートバックフレーム25の組み立てにあたってロワーフレーム36、左右のサイドフレーム35およびアッパーフレーム37が用意される。
図12に示されるように、第1平面Pf上にロワーフレームは設置される。設置にあたって差し込みピン101は差し込み孔55に差し込まれる。差し込みピン101は、例えば鉛直方向(重力方向)に起立する軸心を有する円柱形状に形成される。差し込みピン101は、軸心に直交する第1平面Pfを規定する段差101aを有する。差し込みピン101の段差101aにロワーフレーム36の第1受け面57は受け止められる。差し込み孔55に差し込みピン101が差し込まれることで第1平面Pfに対してロワーフレーム36は位置決めされる。
【0060】
続いて、
図13に示されるように、ロワーフレーム36上に左右のサイドフレーム35が配置される。配置にあたってサイドフレーム35の差し込み孔65に差し込みピン102は差し込まれる。差し込みピン102は、例えば鉛直方向(重力方向)に起立する軸心を有する円柱形状に形成される。差し込みピン102は、軸心に直交する第2平面Psを規定する段差102aを有する。差し込みピン102の段差102aにサイドフレーム35の第2受け面64は受け止められる。このとき、サイドフレーム35の補助差し込み孔66にさらに補助差し込みピン(図示されず)は差し込まれる。補助差し込みピンは、例えば鉛直方向(重力方向)に起立する軸心を有する円柱形状に形成される。補助差し込みピンは、補助平面を規定する段差を有する。補助差し込みピンの段差にサイドフレーム35の補助受け面は受け止められる。サイドフレーム35は第2平面Psおよび補助平面に支持される。第2平面Psおよび補助平面は第1平面Pfに対して決められた位置関係で配置されることから、ロワーフレーム36に対して左右のサイドフレーム35は精度よく位置決めされることができる。差し込みピン102の軸方向からサイドフレーム35はロワーフレーム36に重ねられることができる。サイドフレーム35の後壁35cはロワーフレーム36の背領域51に重ね合わせられる。サイドフレーム35の前壁35bはロワーフレーム36の補強域52に差し込みピン102の軸方向から重ね合わせられる。こうして位置決めされたサイドフレーム35はロワーフレーム36に溶接される。溶接痕54、63は形成される。
【0061】
続いて、
図14に示されるように、左右のサイドフレーム35上にアッパーフレーム37が配置される。配置にあたってアッパーフレーム35の差し込み孔95に差し込みピン103は差し込まれる。差し込みピン103は、例えば鉛直方向(重力方向)に起立する軸心を有する円柱形状に形成される。差し込みピン103は、軸心に直交する第3平面Ptを規定する段差103aを有する。差し込みピン103の段差103aにアッパーフレーム37の第3受け面96は受け止められる。第3平面Ptは第1平面Pfおよび補助平面に対して決められた位置関係で配置されることから、左右のサイドフレーム35に対してアッパーフレーム37は精度よく位置決めされることができる。差し込みピン103の軸方向からアッパーフレーム37はサイドフレーム35に重ねられることができる。アッパーフレーム37の正面壁69は差し込みピン103の軸方向から突片83に重ね合わせられる。アッパーフレーム37の上立ち壁72は差し込みピン103の軸方向から後壁35cの上側重ね域84に重ね合わせられる。重ね合わせにあたって上立ち壁72と前壁35bとの干渉は回避されることができる。同様に、アッパーフレーム37の下立ち壁74は差し込みピン103の軸方向から後壁35cの下側重ね域85に重ね合わせられる。重ね合わせにあたって下立ち壁74と前壁35bとの干渉は回避されることができる。こうして位置決めされたアッパーフレーム37は左右のサイドフレーム35に溶接される。溶接痕79、81、82は形成される。
【0062】
図15に示されるように、ロワーフレーム36が差し込みピン101に受け止められると、背領域51の開口56にジグ104は進入する。ジグ104の先端には揺動軸線SXに同軸に角溝104aが刻まれる。角溝104aには連結軸45の角体58がはめ込まれることができる。こうして連結軸45は個々のサイドフレーム35に対して位置決めされることができる。位置決めされた連結軸45の両端はそれぞれリクライニングユニット34の回転体43に溶接される。
【0063】
本実施形態に係るシートバックフレーム25では、ロワーフレーム36は、背領域51の下縁から連続して揺動軸線SXよりも前方に向かって広がりサイドフレーム35の前壁35bに後方から接合される補強域52を有する。ロワーフレーム36は、背領域51に加えて、背領域51の下縁から揺動軸線SXよりも前方に向かって広がる補強域52で個々のサイドフレーム35に接合される。シートバックフレーム25のねじれ剛性は高められることができる。ロワーフレーム36が背領域51だけでサイドフレームに接合される場合に比べて、ロワーフレーム36およびサイドフレーム35の接合強度は軽減されることができる。こうして接合の作業負荷は軽減されることができる。しかも、シートバックフレーム25の組み立てにあたってロワーフレーム36は後方からサイドフレーム35に組み付けられることができる。ロワーフレーム36には一方向からサイドフレーム35は組み付けられることができる。組み立ての作業性は損なわれない。
【0064】
サイドフレーム35は、リクライニングユニット34周りで板状部35aの周縁に沿って前壁35bおよび後壁35cの間に形成される空間59を有する。リクライニングユニット34周りで板状部35aの周縁に沿って折り曲げ成形される前壁35bと、リクライニングユニット34周りで板状部35aの周縁に沿って折り曲げ成形される後壁35cとは空間59で分離される。サイドフレーム35の絞り加工にあたって、前壁35bおよび後壁35cがリクライニングユニット34周りで連続する場合に比べて前壁35bおよび後壁35cの形状精度は高められることができる。したがって、ロワーフレーム36に対してサイドフレーム35の組み付け性は安定する。
【0065】
本実施形態では、ロワーフレーム36の背領域51に、シートバックフレーム25の組み立て時にジグ104の通過を許容する開口56が形成される。その一方で、連結軸45には、開口56の前方に配置されてジグ104に保持される角体58が形成される。シートバックフレーム25の組み立てにあたって後方から開口56にジグ104は挿入されることができる。ジグ104には連結軸45の角体58が保持されることができる。こうして連結軸45は左右の回転体43に対して位置決めされることができる。連結軸45は個々の回転体43に対して良好な作業効率で接合されることができる。
【0066】
ロワーフレーム36の背領域51には、第1平面Pf内で広がって後方から支持される第1受け面57が形成される。サイドフレーム35の後壁35cには、第1平面Pfに対して決められた位置関係で設定される第2平面Ps内で広がって、後方から支持される際にロワーフレーム36に対してサイドフレーム35を位置決めする第2受け面64が形成される。シートバックフレーム25の組み立てにあたってロワーフレーム36は第1受け面57で物理的に支持されることができる。サイドフレーム35が第2受け面64で物理的に支持されると、第1平面Pfおよび第2平面Psの位置関係に基づきロワーフレーム36に対して左右のサイドフレーム35は位置決めされることができる。サイドフレーム35はロワーフレーム36に対して容易に位置決めされることができる。
【0067】
加えて、アッパーフレーム37には、第2平面Psに対して決められた位置関係で設定される第3平面Pt内で広がって、後方から支持される際にサイドフレーム35に対してアッパーフレーム37を位置決めする第3受け面96が形成される。アッパーフレーム37が第3受け面96に物理的に支持されると、第2平面Psおよび第3平面Ptの位置関係に基づきサイドフレーム35にアッパーフレーム37は位置決めされることができる。アッパーフレーム37はサイドフレーム35に対して容易に位置決めされることができる。
【0068】
本実施形態に係るサイドフレーム35では、前壁35bの内縁に、アッパーフレーム37の形状に対応した仮想輪郭線83aから内側に広がって後方からアッパーフレーム37の正面壁69に重ねられる突片83が形成される。アッパーフレーム37は、組み立て時の間隔で配置される左右のサイドフレーム35に前方から組み付けられることができる。このとき、サイドフレーム35の前壁35bは、アッパーフレーム37で正面壁69よりも後方に位置する上立ち壁72および下立ち壁74に干渉しないで済む。こうしてアッパーフレーム37の組み付けにあたって作業効率は向上することができる。
【0069】
アッパーフレーム37の正面壁69は、水平方向に左右2か所で前向きに折り曲げ成形され鉛直方向の谷折り線77に沿って窪みを形成し突片83に向かって延びる連結片69aを有する。正面壁69の窪みには、谷折り線77に交差しながら延び曲げ方向に剛性を補強するビード93が形成される。正面壁69では谷折り線77に沿った折り曲げに対して剛性は高められることができる。したがって、アッパーフレーム37の組み付けにあたってアッパーフレーム37の変形は抑制されることができる。組み付けの作業効率は高められることができる。
【0070】
アッパーフレーム37の正面壁69には、正面視でヘッドレストピラー21に交差しながら延び面内方向に剛性を補強するビード94が形成される。アッパーフレーム37では上壁71の第1貫通孔87および下壁73の第2貫通孔88に対応して正面壁69の剛性は高められることができる。したがって、アッパーフレーム37の組み付けにあたってアッパーフレーム37の変形は抑制されることができる。組み付けの作業効率は高められることができる。
【0071】
本実施形態に係るアッパーフレーム37では、第1貫通孔87の後方で第1フランジ75に、第1フランジ75の前縁から連続し下向きに折り曲げ成形される受け片92が形成される。上壁71の第1貫通孔87および下壁73の第2貫通孔88に対応して正面壁69の剛性は高められることができる。したがって、アッパーフレーム37の組み付けにあたってアッパーフレーム37の変形は抑制されることができる。組み付けの作業効率は高められることができる。
【0072】
図16(A)に示されるように、アッパーフレーム37の正面壁69には左右のビード94の間で抜き開口105が形成されてもよい。抜き開口105はアッパーフレーム37の軽量化に寄与することができる。ビード94は抜き開口105の形成に基づき生じる剛性の低下を抑制することができる。その他、
図16(B)に示されるように、アッパーフレーム37では、正面壁69の抜き開口105に加えて、下立ち壁74に抜き開口106が形成されてもよい。抜き開口106はさらなるアッパーフレーム37の軽量化に寄与することができる。その他、
図16(C)に示されるように、下立壁74そのものが上下方向に短縮されてもよい。この場合には、ビード93は山折り線78に向かって延長されてもよい。
【0073】
図17に示されるように、連結軸45そのものは角管で形成されてもよい。この場合には、角管は開口56の前方で角体58を形成する。
【0074】
図18に示されるように、アッパーフレーム36の上壁71および下壁73には、第1貫通孔87および第2貫通孔88に挿入されてヘッドレストピラーガイド86を支持する支持筒107が固定される。支持筒107は例えば金属材から成形される。ここでは、第1貫通孔87および第2貫通孔88にはそれぞれ周縁から上向きおよび下向きに小片108、109が折り曲げ成形される。
図19に示されるように、個々の小片108、109は支持筒107の外面に重ねられる。小片108、109は支持筒107に溶接される。溶接は、アッパーフレーム37およびサイドフレーム35の溶接と同様に、前方から実施されることができることから、シートフレーム23の組み立ての作業効率は向上する。支持筒107にヘッドレストピラーガイド86は圧入される。
【0075】
支持筒107は後方から受け片92で支持される。支持筒107および受け片92の協働で正面壁69の剛性は高められることができる。したがって、アッパーフレーム37の組み付けにあたってアッパーフレーム37の変形は抑制されることができる。組み付けの作業効率は高められることができる。
【符号の説明】
【0076】
11…乗り物用シート(車両用シート)、21…ヘッドレストピラー、24…シートクッションフレーム、25…シートバックフレーム、34…リクライニング機構(リクライニングユニット)、35…サイドフレーム、35a…板状部、35b…前壁、35c…後壁、36…ロワーフレーム、37…アッパーフレーム、38…湾曲域、39…湾曲域、45…連結部材(連結軸)、51…背領域、52…補強域、56…開口、57…第1受け面、58…角体、59…空間、64…第2受け面、67…上稜線、68…下稜線、69…正面壁、69a…連結片、71…上壁、72…上立ち壁、73…下壁、74…下立ち壁、75…フランジ(第1フランジ)、77…谷折り線、83…突片、83a…仮想輪郭線、86…ヘッドレストピラーガイド、87…貫通孔(第1貫通孔)、88…貫通孔(第2貫通孔)、92…受け片、93…補強形状(ビード)、94…補強形状(ビード)、96…第3受け面、104…ジグ、107…支持筒、Pf…第1平面、Ps…第2平面、Pt…第3平面、SX…回転軸線(揺動軸線)。