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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241009BHJP
   H02M 7/797 20060101ALI20241009BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
H02M7/48 K
H02M7/797
H02M3/155 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020085291
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021180572
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】菊永 恭平
(72)【発明者】
【氏名】古賀 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】中津 泰輔
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/159042(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/130854(WO,A1)
【文献】特開2000-354303(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0363661(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42~ 7/98
H02M 3/00~ 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から供給される直流電力によって、力行モード及び回生モードで交互に周期的に動作するインバータ部と、
前記直流電源及び前記インバータ部に対して電気的に並列に接続され、前記インバータ部の入力側の電流を平滑化する平滑コンデンサと、
前記インバータ部の動作モードを判定する駆動制御部と、
前記インバータ部の動作モードを判定するチョッパ回路制御部と、
前記駆動制御部による前記インバータ部の動作モードの判定結果に応じて、前記直流電源と前記インバータ部との通電または非通電を制御することにより、前記直流電源側に電流が逆流することを防止する電源保護部と、
前記平滑コンデンサに対して電気的に並列に接続され、チョッパ回路用スイッチング素子及び出力用コンデンサを有する双方向チョッパ回路と、
を備え、
前記チョッパ回路制御部は、前記インバータ部が力行モードで動作している期間の一部を回生モードとして判定し、
前記双方向チョッパ回路は、前記チョッパ回路制御部による前記インバータ部の動作モードの判定結果に応じて、前記出力用コンデンサから直流電力を出力する出力モードと、前記出力用コンデンサで直流電力を充電する充電モードとに切り替えられる、電力変換装置。
【請求項2】
請求項に記載の電力変換装置において、
前記電源保護部は、
前記直流電源と前記インバータ部との間に流れる電流を制御する電流制御用スイッチング素子と、
前記駆動制御部による前記インバータ部の動作モードの判定結果に応じてオンまたはオフに切り替わることにより、前記電流制御用スイッチング素子の駆動を制御する駆動制御用スイッチング素子と、
を備える、電力変換装置。
【請求項3】
請求項1またはに記載の電力変換装置において、
前記チョッパ回路制御部は、
前記インバータ部の入力側の電流の信号波形を、前記力行モードと前記回生モードとで同一の振幅になるようにオフセットさせた電流の信号波形を得るフィルタを有し、
前記フィルタによってオフセットされた電流の前記信号波形を用いて、前記インバータ部の動作モードを判定する、電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源から供給される直流電力によって動作するインバータ部を備える電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電源から供給される直流電力によって動作するインバータ部を備える電力変換装置が知られている。このような電力変換装置の一例として、例えば特許文献1には、直流電源で作動する電子機器の保護装置が開示されている。
【0003】
前記保護装置は、直流電源の逆接保護用にPチャンネルFETを有する。このPチャンネルFETは、ドレインが正極側の電源供給端子に接続され、ソースが電子機器の電源入力端子に接続され、ゲートが接地ラインに接続されている。
【0004】
前記保護装置では、直流電源が正常極性で接続されると、PチャンネルFETのゲートに電圧が印加され、PチャンネルFETがオン状態になる。一方、前記保護装置では、直流電源が逆極性で接続されると、PチャンネルFETがオフ状態になる。
【0005】
また、前記電力変換装置の一例として、例えば特許文献2には、回生エネルギーを有効に活用することにより、外部からのエネルギー供給を最小限にするエレベータ制御装置が開示されている。このエレベータ制御装置は、電圧形インバータと、平滑コンデンサと、エネルギー蓄積装置とを備える。
【0006】
前記電圧形インバータは、エレベータの力行運転の際には電動機を駆動する一方、エレベータの回生運転の際には回生エネルギーを入力端子側に戻す。前記平滑コンデンサは、前記電圧形インバータの入力端子側に設けられ、前記電圧形インバータに入力する電流を平滑化する。前記エネルギー蓄電装置は、前記平滑コンデンサの電圧が所定値を超えたときは前記平滑コンデンサからのエネルギーを蓄積し、前記平滑コンデンサの電圧が所定値未満になったときは蓄積したエネルギーを前記平滑コンデンサに放出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-37933号公報
【文献】特開平10-236743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、直流電源の直流電力を用いてモータを駆動させる場合、前記モータの回生モードでエネルギーを直流電源に戻すことなく蓄積し、前記モータの力行モードでは前記蓄積したエネルギーを前記モータの駆動に用いる構成が望まれている。
【0009】
前記特許文献1の構成では、直流電源の逆接続保護を実現できるが、前記直流電源が正常極性で接続された場合に、逆接保護用のPチャンネルFETはオン状態である。よって、回生動作の際に、直流電源側にエネルギーが戻るため、直流電源側に電力が戻ることを抑制できない。
【0010】
また、前記特許文献2の構成は、電動機の回生モード時に直流電源側に電力が戻ることを抑制可能な回路構成であるが、電動機の力行モード時及び回生モード時のエネルギーが平滑コンデンサに蓄積される。前記特許文献2の構成では、前記直流電源と電圧インバータとの間の電圧変動は、設定された電圧幅で制御される。そのため、前記電動機の回生モード及び力行モードが頻繁に且つ周期的に切り替わる場合には、前記直流電源と電圧インバータとの間の電圧は、回生モード及び力行モードの切り替えに応じて、前記設定した電圧幅で頻繁に変動する。したがって、前記直流電源と前記電圧インバータとの間の電圧を精度良く平滑された状態で制御できない。
【0011】
本発明の目的は、力行モード及び回生モードで交互に周期的に且つ頻繁に動作するインバータ部を備えた電力変換装置において、直流電源側に電流が逆流することなく、前記平滑コンデンサの電圧を精度良く平滑化できる構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態に係る電力変換装置は、直流電源から供給される直流電力によって、力行モード及び回生モードで交互に周期的に動作するインバータ部と、前記直流電源及び前記インバータ部に対して電気的に並列に接続され、前記インバータ部の入力側の電流を平滑化する平滑コンデンサと、前記インバータ部の動作モードを判定する動作モード判定部と、前記動作モード判定部による前記インバータ部の動作モードの判定結果に応じて、通電または非通電を制御することにより、前記直流電源に電流が逆流することを防止する電源保護部と、前記平滑コンデンサに対して電気的に並列に接続され、チョッパ回路用スイッチング素子及び出力用コンデンサを有する双方向チョッパ回路と、を備える。前記双方向チョッパ回路は、前記動作モード判定部による前記インバータ部の動作モードの判定結果に応じて、前記出力用コンデンサから直流電力を出力する出力モードと、前記出力用コンデンサで直流電力を充電する充電モードとに切り替えられる(第1の構成)。
【0013】
このように、インバータ部の動作モードを判定して、その判定結果に応じて電源保護部の通電または非通電を制御することにより、直流電源に電流が逆流することを防止できる。
【0014】
しかも、平滑コンデンサに対して電気的に並列に接続された双方向チョッパ回路を、前記動作モード判定部による前記インバータ部の動作モードの判定結果に応じて、前記出力用コンデンサから直流電力を出力する出力モードと、前記出力用コンデンサで直流電力を充電する充電モードとに切り替えることにより、前記平滑コンデンサの電圧を精度良く平滑化できる。すなわち、上述の構成により、インバータ部の動作モードに応じて、双方向チョッパ回路の出力用コンデンサに直流電力を充電できるとともに、前記出力用コンデンサから直流電力を出力できる。したがって、例えば、前記インバータ部が回生モードで動作しているときには、前記出力用コンデンサに直流電力を充電し、前記インバータ部が力行モードで動作しているときには、前記出力用コンデンサから直流電力を出力できる。
【0015】
したがって、上述の構成により、力行モード及び回生モードで交互に周期的に且つ頻繁に動作するインバータ部を備えた電力変換装置において、直流電源側に電流が逆流することなく、前記平滑コンデンサの電圧を精度良く平滑化できる。
【0016】
前記第1の構成において、前記動作モード判定部は、前記インバータ部が力行モードで動作している期間の一部を回生モードとして判定する(第2の構成)。
【0017】
これにより、インバータ部の動作モードを判定する際に、前記インバータ部の力行モードの一部を回生モードとして判定することで、双方向チョッパ回路の出力用コンデンサに多くの直流電力を充電できる。これにより、回生モードで前記出力用コンデンサに充電する直流電力と、力行モードで前記出力用コンデンサから出力する直流電力とをバランスさせることが可能になる。
【0018】
したがって、回生モードと力行モードとにおいて、前記直流電源と前記インバータ部との間で生じる電圧変動を抑制できる。よって、平滑コンデンサの電圧を精度良く平滑化できる。また、回生モードで前記出力用コンデンサによって回収される直流電力が増えるため、スイッチング素子などの各種素子に、耐圧が高い素子を用いる必要がなくなる。
【0019】
前記第1の構成において、前記電源保護部は、前記直流電源と前記インバータ部との間に流れる電流を制御する電流制御用スイッチング素子と、前記動作モード判定部による前記インバータ部の動作モードの判定結果に応じてオンまたはオフに切り替わることにより、前記電流制御用スイッチング素子の駆動を制御する駆動制御用スイッチング素子と、を備える(第3の構成)。
【0020】
これにより、インバータ部の動作モードに応じて、直流電源と前記インバータ部との間に流れる電流を制御する電流制御用スイッチング素子の駆動を、より精度良く制御することができる。しかも、駆動制御用スイッチング素子を用いて前記電流制御用スイッチング素子の駆動を制御することにより、直流電源の逆接保護回路がダイオードによって構成されている場合に比べて、回路で生じる損失を低減できる。
【0021】
前記第1から第3の構成のうちいずれか一つの構成において、前記動作モード判定部は、前記出力モードで前記出力用コンデンサから出力される直流電力と、前記充電モードで前記出力用コンデンサを充電する直流電力とが同等のエネルギー量になるように、前記インバータ部の入力側の電流または電圧を演算処理するフィルタを有し、前記フィルタによって演算処理された電流または電圧を用いて、前記インバータ部の動作モードを判定する(第4の構成)。
【0022】
これにより、上述の第1から第3の構成を容易に実現することができる。すなわち、出力モードで出力用コンデンサから出力される直流電力と、充電モードで前記出力用コンデンサを充電する直流電力とが同等のエネルギー量になるように、インバータ部の入力側の電流または電圧をフィルタによって演算処理することにより、動作モード判定部の判定結果を変更することができる。したがって、前記動作モード判定部の判定結果に応じて、前記出力用コンデンサに対する直流電力の充電または出力を容易に切り替えることができる。
【0023】
前記第1から第3の構成のうちいずれか一つの構成において、前記動作モード判定部は、前記出力モードで前記出力用コンデンサから出力される直流電力と、前記充電モードで前記出力用コンデンサを充電する直流電力とが同等のエネルギー量になるように、前記直流電源の電圧と前記双方向チョッパ回路の入出力電圧との関係から、前記インバータ部の動作モードを判定する(第5の構成)。
【0024】
これにより、上述の第1から第3の構成を容易に実現することができる。すなわち、出力モードで出力用コンデンサから出力される直流電力と、充電モードで前記出力用コンデンサを充電する直流電力とが同等のエネルギー量になるように、直流電源の電圧と前記双方向チョッパ回路の入出力電圧との関係からインバータ部の動作モードを判定することで、前記出力用コンデンサに対する直流電力の充電または出力を容易に切り替えることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一実施形態に係る電力変換装置は、直流電源から供給される直流電力によって、力行モード及び回生モードで交互に周期的に動作するインバータ部と、前記直流電源及び前記インバータ部に対して電気的に並列に接続され、前記インバータ部の入力側の電流を平滑化する平滑コンデンサと、前記インバータ部の動作モードを判定する動作モード判定部と、前記動作モード判定部による前記インバータ部の動作モードの判定結果に応じて、通電または非通電を制御することにより、前記直流電源側に電流が逆流することを防止する電源保護部と、前記動作モード判定部による前記インバータ部の動作モードの判定結果に応じて、出力用コンデンサから直流電力を出力する出力モードと、前記出力用コンデンサで直流電力を充電する充電モードとに切り替えられる双方向チョッパ回路とを備える。
【0026】
このように、インバータ部の動作モードを判定して、その判定結果に応じて、直流電源側に電流が逆流することを防止するとともに、双方向チョッパ回路のチョッパ回路用スイッチング素子によって出力用コンデンサの出力モードと充電モードとを切り替えることにより、平滑コンデンサの電圧を精度良く平滑化できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、実施形態1に係る電力変換装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、インバータ部に流れる電流波形を模式的に示す図である。
図3図3は、実施形態1の電力変換装置において、インバータ部が力行モードで動作している場合の電流の流れを実線矢印で示す図である。
図4図4は、実施形態1の電力変換装置において、インバータ部が回生モードで動作している場合の電流の流れを実線矢印で示す図である。
図5図5は、実施形態1の電力変換装置において、インバータ部が力行モードで動作している期間の一部で、回生モードの際の制御信号を生成した場合の電流の流れを実線矢印で示す図である。
図6図6は、実施形態1の電力変換装置において、出力コンデンサ電圧の変動、電源ラインの電圧変動及びインバータ部に流れる電流の変動を示す図である。
図7図7は、実施形態2に係る電力変換装置の概略構成を示すブロック図である。
図8図8は、実施形態2の電力変換装置において、インバータ部が力行モードで動作している場合の電流の流れを実線矢印で示す図である。
図9図9は、実施形態2の電力変換装置において、インバータ部が回生モードで動作している場合の電流の流れを実線矢印で示す図である。
図10図10は、実施形態3に係る電力変換装置の概略構成を示すブロック図である。
図11図11は、実施形態3の電力変換装置において、インバータ部が力行モードで動作している場合の電流の流れを実線矢印で示す図である。
図12図12は、実施形態2の電力変換装置において、インバータ部が回生モードで動作している場合の電流の流れを実線矢印で示す図である。
図13図13は、実施形態2の電力変換装置において、インバータ部が力行モードで動作している期間の一部で、回生モードの際の制御信号を生成した場合の電流の流れを実線矢印で示す図である。
図14図14は、その他の実施形態に係る電力変換装置の概略構成を示すブロック図である。
図15図15は、テーブルデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0029】
[実施形態1]
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る電力変換装置1の概略構成を示す図である。この電力変換装置1は、モータMが力行モードで運転している場合にはモータMに対して電力を供給する一方、モータMが回生モードで運転している場合にはモータMから回生エネルギーを回収する。すなわち、電力変換装置1は、力行モードと回生モードとで運転可能である。
【0030】
モータMは、例えば往復移動するレシプロ方式のモータである。モータMは、例えば、特開2010-233298号公報や特開2012-249426号公報などに開示されている構成を有する。
【0031】
モータMの詳しい構成については説明を省略するが、モータMは、可動子と、固定子と、弾性支持部とを有する。前記可動子は、前記固定子に対して前記弾性支持部を介して移動可能に接続されている。前記可動子は、例えば電磁気力によって前記固定子に対して一方向に移動する一方、前記弾性支持部で生じる弾性復元力によって前記固定子に対して元の位置に戻る。
【0032】
モータMは、前記可動子が前記一方向に移動する際には、力行モードで動作し、前記可動子が元の位置に戻る際には、回生モードで動作する。すなわち、モータMは、力行モードと回生モードとが交互に且つ周期的に変わる動作形態を有する。
【0033】
電力変換装置1は、インバータ部10と、平滑コンデンサ20と、ダイオード30と、電源保護部40と、駆動制御部50と、双方向チョッパ回路140と、チョッパ回路制御部150とを有する。
【0034】
インバータ部10は、直流電源2の直流電力を交流電力に変換して、モータMに出力する。インバータ部10は、複数のスイッチング素子SW1~SW4を有する。複数のスイッチング素子SW1~SW4は、例えばPチャンネルFETである。なお、複数のスイッチング素子SW1~SW4は、それぞれ、スイッチング動作が可能な他のスイッチング素子であってもよい。
【0035】
複数のスイッチング素子SW1~SW4のうち、スイッチング素子SW1,SW2は、電気的に直列に接続されている。すなわち、スイッチング素子SW1,SW2は、第1スイッチングレグ11を構成する。複数のスイッチング素子SW1~SW4のうち、スイッチング素子SW3,SW4は、電気的に直列に接続されている。すなわち、スイッチング素子SW3,SW4は、第2スイッチングレグ12を構成する。
【0036】
第1スイッチングレグ11におけるスイッチング素子SW1,SW2の中点及び第2スイッチングレグ12におけるスイッチング素子SW3,SW4の中点は、それぞれ、モータMの端子に電気的に接続されている。第1スイッチングレグ11及び第2スイッチングレグ12は、直流電源2に対して、電気的に並列に接続されている。
【0037】
なお、本実施形態では、モータMは、単相交流モータである。
【0038】
例えば、スイッチング素子SW1がオンのときには、スイッチング素子SW2がオフである。スイッチング素子SW4がオンのときには、スイッチング素子SW3がオフである。また、スイッチング素子SW2がオンのときには、スイッチング素子SW1がオフである。スイッチング素子SW3がオンのときには、スイッチング素子SW4がオフである。
【0039】
上述のようにスイッチング素子SW1~SW4が駆動することにより、インバータ部10とモータMとの間に交流電流を流すことができる。
【0040】
なお、スイッチング素子SW1~SW4には、それぞれ、ダイオードD1~D4が電気的に並列に接続されている。ダイオードD1~D4は、スイッチング素子SW1~SW4とは別部品であってもよいし、スイッチング素子SW1~SW4の寄生ダイオードであってもよい。
【0041】
平滑コンデンサ20は、直流電源2から出力される直流電力を充電するとともに、直流電流を平滑化する。また、平滑コンデンサ20は、インバータ部10から出力される電力を充電する。
【0042】
ダイオード30は、ツェナーダイオードである。ダイオード30は、インバータ部10に供給する電圧を一定にする。
【0043】
電源保護部40は、インバータ部10が回生モードで動作している場合に直流電源2に電流が逆流することを防止する。電源保護部40は、後述の駆動制御部50でインバータ部10が力行モードで動作していると判定された際にはオンである一方、駆動制御部50でインバータ部10が回生モードで動作していると判定された際にはオフである電流制御用スイッチング素子41を有する。電源保護部40は、電流制御用スイッチング素子41を駆動制御する駆動制御用スイッチング素子42も有する。
【0044】
本実施形態では、電流制御用スイッチング素子41は、例えばPチャンネルFETである。駆動制御用スイッチング素子42は、例えばトランジスタである。駆動制御用スイッチング素子42のコレクタ側が電流制御用スイッチング素子41のゲートに電気的に接続されている。これにより、駆動制御用スイッチング素子42が導通状態になると、電流制御用スイッチング素子41がオン状態になる。一方、駆動制御用スイッチング素子42が非導通状態の場合には、電流制御用スイッチング素子41はオフ状態である。
【0045】
電源保護部40は、抵抗43,44と、ダイオード45,46とを有する。抵抗44及びダイオード45,46は、電流制御用スイッチング素子41のゲート-ソース間に対して電気的に並列に接続されている。抵抗43は、駆動制御用スイッチング素子42のコレクタに対し、電気的に直列に接続されている。
【0046】
なお、電流制御用スイッチング素子41には、ダイオード47が電気的に並列に接続されている。
【0047】
駆動制御用スイッチング素子42のゲートには、後述する駆動制御部50で生成された制御信号が入力される。駆動制御部50は、インバータ部10の入力側に設けられたシャント抵抗60で計測される電流値に基づいて、インバータ部10が力行モードで動作しているか回生モードで動作しているかを判定する。すなわち、駆動制御部50は、本発明の動作モード判定部としても機能する。
【0048】
駆動制御部50は、インバータ部10の動作モードの判定結果に応じて、前記制御信号を生成して駆動制御用スイッチング素子42のゲートに出力する。前記制御信号は、インバータ部10が力行モードで動作している場合に、駆動制御用スイッチング素子42をオンにする信号であり、インバータ部10が回生モードで動作している場合に、駆動制御用スイッチング素子42をオフにする信号である。
【0049】
双方向チョッパ回路140は、平滑コンデンサ20に対して電気的に並列に接続されている。双方向チョッパ回路140は、インバータ部10から出力される電力を充電する一方、充電した電力をインバータ部10に供給する。
【0050】
双方向チョッパ回路140は、出力用コンデンサ141と、リアクトル142と、降圧用スイッチング素子143と、昇圧用スイッチング素子144とを有する。
【0051】
出力用コンデンサ141及びリアクトル142は、電気的に直列に接続されている。降圧用スイッチング素子143及び昇圧用スイッチング素子144は、電気的に直列に接続されている。降圧用スイッチング素子143及び昇圧用スイッチング素子144の中点には、電気的に直列に接続された出力用コンデンサ141及びリアクトル142が接続されている。電気的に直列に接続された出力用コンデンサ141及びリアクトル142は、昇圧用スイッチング素子144に対して電気的に並列に接続されている。
【0052】
降圧用スイッチング素子143及び昇圧用スイッチング素子144は、例えばNチャネルFETである。なお、降圧用スイッチング素子143及び昇圧用スイッチング素子144は、それぞれ、スイッチング動作が可能な他のスイッチング素子であってもよい。降圧用スイッチング素子143及び昇圧用スイッチング素子144には、それぞれ、第1ダイオード145及び第2ダイオード146が電気的に並列に接続されている。降圧用スイッチング素子143及び昇圧用スイッチング素子144は、本発明のチョッパ回路用スイッチング素子に対応する。
【0053】
降圧用スイッチング素子143がオフ状態で且つ昇圧用スイッチング素子144がオンオフを繰り返す状態のときには、双方向チョッパ回路140は昇圧チョッパ回路として機能する。一方、昇圧用スイッチング素子144がオフ状態で且つ降圧用スイッチング素子143がオンオフを繰り返す状態のときには、双方向チョッパ回路140は降圧チョッパ回路として機能する。また、降圧用スイッチング素子143及び昇圧用スイッチング素子144がオンオフを繰り返す状態のときには、双方向チョッパ回路140は昇降圧チョッパ回路として機能する。
【0054】
双方向チョッパ回路140では、後述のチョッパ回路制御部150によってインバータ部10が力行モードで動作していると判定された場合、降圧用スイッチング素子143がオフ状態で且つ昇圧用スイッチング素子144がオン状態になる。これにより、双方向チョッパ回路140は、昇圧チョッパ回路として機能し、出力用コンデンサ141からインバータ部10に電力を供給する。すなわち、このときの双方向チョッパ回路140は、出力モードで動作する。よって、このときの降圧用スイッチング素子143及び昇圧用スイッチング素子144の駆動モードは、出力モードである。
【0055】
一方、双方向チョッパ回路140では、後述のチョッパ回路制御部150によってインバータ部10が回生モードで動作していると判定された場合、降圧用スイッチング素子143がオン状態で且つ昇圧用スイッチング素子144がオフ状態になる。これにより、双方向チョッパ回路140は、降圧チョッパ回路として機能し、出力用コンデンサ141に電力を充電する。すなわち、このときの双方向チョッパ回路140は、充電モードで動作する。よって、このときの降圧用スイッチング素子143及び昇圧用スイッチング素子144の駆動モードは、充電モードである。
【0056】
降圧用スイッチング素子143及び昇圧用スイッチング素子144に対する制御信号は、インバータ部10の入力電流に基づいて、チョッパ回路制御部150によって生成される。すなわち、チョッパ回路制御部150によって生成された制御信号は、降圧用スイッチング素子143及び昇圧用スイッチング素子144のそれぞれのゲートに入力される。
【0057】
チョッパ回路制御部150は、バンドパスフィルタ(図1では、BPF)151と、ローパスフィルタ(図1では、LPF)152と、演算器153と、PI演算部154と、三角波比較部155とを有する。
【0058】
バンドパスフィルタ151は、シャント抵抗60で計測されるインバータ部10の入力電流の信号をフィルタ処理する。具体的には、バンドパスフィルタ151は、インバータ部10のスイッチング素子SW1~SW4が駆動した際に生じるリプル成分をカットするローパスフィルタ機能と、前記入力電流の直流成分をカットするハイパスフィルタ機能とを有する。
【0059】
ところで、インバータ部10に流れる電流は、ローパスフィルタ等によりリプル成分がカットされると、図2に実線で示すような波形を有する。すなわち、インバータ部10に流れる電流は、インバータ部10の力行モードと回生モードとで、電流値の正負が逆転するような電流波形を有する。インバータ部10の回生モードでは、モータMのメカロスや、インバータ部10のダイオードD1~D4によって生じる損失によって、インバータ部10の力行モードよりも、インバータ部10に流れる電流が少ない。よって、図2に実線で示すように、回生モード時にインバータ部10に流れる電流の絶対値は、力行モード時にインバータ部10に流れる電流の絶対値よりも小さい。
【0060】
そのため、インバータ部10が回生モードで動作している際に、インバータ部10から出力される電力を出力用コンデンサ141に充電しても、インバータ部10が力行モードで動作している際に、出力用コンデンサ141からインバータ部10に十分な電力を供給できない可能性がある。この場合には、平滑コンデンサ20からインバータ部10に供給する電力量にばらつきが生じるため、平滑コンデンサ20の電圧変動が生じる可能性がある。
【0061】
これに対し、上述のバンドパスフィルタ151のハイパスフィルタ機能によって、図2に破線で示すように、インバータ部10の入力電流から得られる信号波形を、絶対値が小さくなるようにオフセットさせることができる。
【0062】
このように、バンドパスフィルタ151によって、前記信号波形をオフセットさせることにより、力行モードと回生モードで同一の振幅になるような電流の信号波形が得られる。そして、このように前記信号波形をオフセットさせることにより、後述するように、インバータ部10が力行モードで動作している期間の一部において、双方向チョッパ回路140は、回生モード時の動作を行ことができる。
【0063】
これにより、出力用コンデンサ141で十分な電力を充電することができる。よって、インバータ部10が力行モードで動作する際に、出力用コンデンサ141からインバータ部10に十分な電力を供給することができる。
【0064】
ローパスフィルタ152は、双方向チョッパ回路140に流れる電流から、リプル成分を除去する。
【0065】
演算器153は、バンドパスフィルタ151から出力された信号から、ローパスフィルタ152から出力された信号を減算し、それらの差分を求める。この差分は、PI演算部154で演算処理された後、三角波比較部155によって、基準信号である三角波と比較される。これにより、降圧用スイッチング素子143及び昇圧用スイッチング素子144のゲートに入力される制御信号が生成される。
【0066】
なお、降圧用スイッチング素子143のゲートに入力される制御信号と、昇圧用スイッチング素子144に入力される制御信号とは、逆の信号である。すなわち、降圧用スイッチング素子143のゲートに入力される制御信号がオン信号の場合には、昇圧用スイッチング素子144に入力される制御信号はオフ信号である。また、降圧用スイッチング素子143のゲートに入力される制御信号がオフ信号の場合には、昇圧用スイッチング素子144に入力される制御信号はオン信号である。
【0067】
換言すると、チョッパ回路制御部150は、インバータ部10及び双方向チョッパ回路140に流れる電流に基づいて、インバータ部10の動作モードが力行モードであるか回生モードであるかを判定する。チョッパ回路制御部150は、インバータ部10の動作モードの判定結果に応じて、双方向チョッパ回路140の降圧用スイッチング素子143及び昇圧用スイッチング素子144を駆動させるための制御信号を生成する。チョッパ回路制御部150は、インバータ部10の動作モードを判定する動作モード判定部として機能する。
【0068】
なお、駆動制御部50及びチョッパ回路制御部150は、一体の制御部によって構成されていてもよいし、共通の制御部であってもよい。
【0069】
(電力変換装置の動作)
図3は、インバータ部10が力行モードで動作している場合の電流の流れを実線矢印で示す図である。図4は、インバータ部10が回生モードで動作している場合の電流の流れを実線矢印で示す図である。
【0070】
駆動制御部50によってインバータ部10が力行モードで動作していると判定された場合に、駆動制御用スイッチング素子42がオン状態になる。よって、電流制御用スイッチング素子41はオン状態である。したがって、インバータ部10が力行モードで動作している場合には、直流電源2及び平滑コンデンサ20からインバータ部10に直流電力を供給する。
【0071】
一方、駆動制御部50によってインバータ部10が回生モードで動作していると判定された場合に、駆動制御用スイッチング素子42はオフ状態になる。よって、電流制御用スイッチング素子41はオフ状態である。したがって、インバータ部10が回生モードで動作している場合には、直流電源2とインバータ部10との間には電流が流れない。このときには、インバータ部10から平滑コンデンサ20に回生エネルギーが電力として供給される。よって、インバータ部10が回生モードで動作している場合には、インバータ部10で生じた電力が平滑コンデンサ20に充電される。
【0072】
このように、インバータ部10の動作モードに応じて、電源保護部40の電流制御用スイッチング素子41を駆動させることにより、ダイオードを用いて逆接保護回路を構成する場合に比べて、損失を低減することができる。
【0073】
また、チョッパ回路制御部150によって、インバータ部10が力行モードで動作していると判定された場合には、直流電源2、平滑コンデンサ20及び出力用コンデンサ141から、インバータ部10に電力が供給される。このとき、チョッパ回路制御部150は、双方向チョッパ回路140の降圧用スイッチング素子143をオフにするとともに昇圧用スイッチング素子144をオンにする制御信号を生成する。すなわち、双方向チョッパ回路140は、昇圧チョッパ回路として機能し、出力モードとして動作する。
【0074】
一方、チョッパ回路制御部150によって、インバータ部10が回生モードで動作していると判定された場合には、インバータ部10で生じた電力が平滑コンデンサ20だけでなく、出力用コンデンサ141にも充電される。このとき、チョッパ回路制御部150は、双方向チョッパ回路140の降圧用スイッチング素子143をオンにするとともに昇圧用スイッチング素子144をオフにする制御信号を生成する。すなわち、双方向チョッパ回路140は、降圧チョッパ回路として機能し、充電モードとして動作する。
【0075】
図5は、インバータ部10が力行モードで動作している一部の期間において、チョッパ回路制御部150が回生モードの際の制御信号を生成した場合に、電力変換装置1内に流れる電流を矢印で示す図である。すなわち、図5は、既述のようにチョッパ回路制御部150のバンドパスフィルタ151によってインバータ部10の入力電流から得られる信号波形をオフセットさせることにより、チョッパ回路制御部150がインバータ部10の力行モードの一部の期間を回生モードと判定した場合に、電力変換装置1内に流れる電流を矢印で示す図である。
【0076】
図5に示すように、直流電源2からインバータ部10に直流電力を供給するとともに、直流電源2から平滑コンデンサ20及び出力用コンデンサ141に対しても直流電力を供給する。これにより、インバータ部10が力行モードで動作している期間のうち一部の期間でも、平滑コンデンサ20及び出力用コンデンサ141に直流電力を充電することができる。よって、インバータ部10が回生モードで動作する場合に、平滑コンデンサ20及び出力用コンデンサ141からインバータ部10に対して十分な直流電力を供給することができる。
【0077】
これにより、インバータ部10が力行モードで動作している場合に消費する電力と、インバータ部10が回生モードで動作している場合に平滑コンデンサ20及び出力用コンデンサ141に充電される電力とのアンバランスを少なくすることができる。よって、直流電源2とインバータ部10との接続ライン(電源ライン)の電圧変動を抑制できる。したがって、平滑コンデンサ20の電圧を精度良く平滑化できる。
【0078】
図6は、出力コンデンサ電圧の変動、電源ラインの電圧変動及びインバータ部10に流れる電流の変動を示す図である。この図において、電流及び電圧のゼロ点は、それぞれ、0c、0vである。また、図6において、電流の波形はリプル成分をカットした波形である。図6では、比較のために、本実施形態のチョッパ回路制御部150を用いた場合(図では、“BPFの場合”と記載)と、チョッパ回路制御部150においてバンドパスフィルタ(BPF)151の代わりにローパスフィルタ(LPF)を用いた場合(図では、“LPFの場合”と記載)における、各電圧の変動及び電流の変動を示す。
【0079】
図6に示すように、本実施形態のチョッパ回路制御部150がバンドパスフィルタ(BPF)151を有することで、インバータ部10に流れる電流における正負のバランスを改善できるとともに、出力コンデンサ電圧及び電源ライン電圧の変動を抑制することができる。したがって、上述のように、平滑コンデンサ20の電圧を精度良く平滑化できる。
【0080】
しかも、インバータ部10が力行モードで動作している期間のうち一部の期間でも、出力用コンデンサ141に電力を充電することにより、出力用コンデンサ141の電圧変動を大きくする一方、平滑コンデンサ20の電圧変動を抑制することができる。これにより、平滑コンデンサ20として小容量のコンデンサを用いることができる。よって、電力変換装置101の小型化を図れる。
【0081】
なお、本実施形態のバンドパスフィルタ151は、前記出力モードで出力用コンデンサ141から出力される直流電力と、前記充電モードで出力用コンデンサ141を充電する直流電力とが同等のエネルギー量になるように、インバータ部10の入力側の電流を演算処理するのが好ましい。この場合には、制御部150の判定結果を変更することができる。したがって、チョッパ回路制御部150の判定結果に応じて、出力用コンデンサ141に対する直流電力の充電または出力を容易に切り替えることができる。
【0082】
本実施形態の電力変換装置1は、直流電源2から供給される直流電力によって、力行モード及び回生モードで交互に周期的に動作するインバータ部10と、直流電源2及びインバータ部10に対して電気的に並列に接続され、インバータ部10の入力側の電流を平滑化する平滑コンデンサ20と、インバータ部10の動作モードを判定する駆動制御部50及びチョッパ回路制御部150と、駆動制御部50によるインバータ部10の動作モードの判定結果に応じて、通電または非通電を制御することにより、直流電源2に電流が逆流することを防止する電源保護部40と、平滑コンデンサ20に対して電気的に並列に接続され、降圧用スイッチング素子143、昇圧用スイッチング素子144及び出力用コンデンサ141を有する双方向チョッパ回路140と、を備える。
【0083】
このように、駆動制御部50によってインバータ部10の動作モードを判定して、その判定結果に応じて電源保護部40の通電または非通電を制御することにより、直流電源2に電流が逆流することを防止できる。
【0084】
しかも、本実施形態の構成では、平滑コンデンサ20に対して電気的に並列に接続された双方向チョッパ回路140において、チョッパ回路制御部150によるインバータ部10の動作モードの判定結果に応じて、降圧用スイッチング素子143及び昇圧用スイッチング素子144を、出力用コンデンサ141から直流電力を出力する出力モードと、出力用コンデンサ141で直流電力を充電する充電モードとに切り替える。これにより、平滑コンデンサ20の電圧を精度良く平滑化できる。
【0085】
すなわち、上述の構成により、インバータ部10の動作モードの判定結果に応じて、双方向チョッパ回路140の出力用コンデンサ141に直流電力を充電できるとともに、出力用コンデンサ141から直流電力を出力できる。したがって、例えば、インバータ部10が回生モードで動作していると判定された場合には、出力用コンデンサ141に直流電力を充電し、インバータ部10が力行モードで動作していると判定された場合には、出力用コンデンサ141から直流電力を出力できる。
【0086】
また、チョッパ回路制御部150は、インバータ部10が力行モードで動作している期間の一部を回生モードとして判定する。このように、インバータ部10の動作モードを判定する際に、インバータ部10の力行モードの一部を回生モードとして判定することで、双方向チョッパ回路140の出力用コンデンサ141に多くの直流電力を充電できる。これにより、回生モードで出力用コンデンサ141に充電する直流電力と、力行モードで出力用コンデンサ141から出力する直流電力とをバランスさせることが可能になる。
【0087】
したがって、回生モードと力行モードとにおいて、直流電源2とインバータ部10との間で生じる電圧変動を抑制できる。よって、平滑コンデンサ20の電圧を精度良く平滑化できる。また、回生モードで出力用コンデンサ141によって回収される直流電力が増えるため、スイッチング素子などの各種素子に、耐圧が高い素子を用いる必要がなくなる。
【0088】
また、電源保護部40は、直流電源2とインバータ部10との間に流れる電流を制御する電流制御用スイッチング素子41と、駆動制御部50の動作モードの判定結果に応じてオンまたはオフに切り替わることにより、電流制御用スイッチング素子41の駆動を制御する駆動制御用スイッチング素子42と、を備える。
【0089】
これにより、インバータ部10の動作モードの判定結果に応じて、直流電源2とインバータ部10との間に流れる電流を制御する電流制御用スイッチング素子41の駆動を、より精度良く制御することができる。しかも、駆動制御用スイッチング素子42を用いて電流制御用スイッチング素子41の駆動を制御することにより、直流電源2の逆接保護回路がダイオードによって構成されている場合に比べて、回路で生じる損失を低減できる。
【0090】
なお、チョッパ回路制御部150のバンドパスフィルタ151は、前記出力モードで出力用コンデンサ141から出力される直流電力と、前記充電モードで出力用コンデンサ141を充電する直流電力とが同等のエネルギー量になるように、インバータ部10の入力側の電流を演算処理してもよい。この場合、チョッパ回路制御部150は、バンドパスフィルタ151によって演算処理された電流を用いて、インバータ部10の動作モードを判定する。
【0091】
これにより、インバータ部10の動作モードを判定するチョッパ回路制御部150の構成を容易に実現することができる。すなわち、出力モードで出力用コンデンサ141から出力される直流電力と、充電モードで出力用コンデンサ141を充電する直流電力とが同等のエネルギー量になるように、インバータ部10の入力側の電流をバンドパスフィルタ151によって演算処理することにより、チョッパ回路制御部150の判定結果を変更することができる。したがって、チョッパ回路制御部150の判定結果に応じて、出力用コンデンサ141に対する直流電力の充電または出力を容易に切り替えることができる。
【0092】
[実施形態2]
(全体構成)
図7は、本発明の実施形態2に係る電力変換装置101の概略構成を示す図である。この電力変換装置101は、双方向チョッパ回路140及びチョッパ回路制御部150を有さない点で、実施形態1の電力変換装置1の構成と異なる。以下では、実施形態1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0093】
電力変換装置101は、インバータ部10と、平滑コンデンサ20と、ダイオード30と、電源保護部40と、駆動制御部50とを有する。インバータ部10、平滑コンデンサ20、ダイオード30、電流調整部40及び駆動制御部50の各構成は、実施形態1の各構成と同じである。
【0094】
図8は、インバータ部10が力行モードで動作している場合の電流の流れを実線矢印で示す図である。図9は、インバータ部10が回生モードで動作している場合の電流の流れを実線矢印で示す図である。
【0095】
インバータ部10が力行モードで動作していると駆動制御部50によって判定された場合に、駆動制御用スイッチング素子42がオン状態になる。よって、電流制御用スイッチング素子41はオン状態である。したがって、インバータ部10が力行モードで動作している場合には、直流電源2及び平滑コンデンサ20からインバータ部10に直流電力が供給される。
【0096】
一方、インバータ部10が回生モードで動作していると駆動制御部50によって判定された場合に、駆動制御用スイッチング素子42がオフ状態である。よって、電流制御用スイッチング素子41はオフ状態である。したがって、インバータ部10が回生モードで動作している場合には、直流電源2とインバータ部10との間には電流が流れない。このときには、インバータ部10から平滑コンデンサ20に回生エネルギーが電力として供給される。よって、インバータ部10が回生モードで動作している場合には、インバータ部10で生じた電力が平滑コンデンサ20に充電される。
【0097】
本実施形態の電力変換装置101は、直流電源2とインバータ部10との間に流れる電流を制御する電流制御用スイッチング素子41と、駆動制御部50によるインバータ部10の動作モードの判定結果に応じてオンまたはオフに切り替わることにより、電流制御用スイッチング素子41の駆動を制御する駆動制御用スイッチング素子42と、を備える。
【0098】
これにより、インバータ部10が回生モードで動作していると駆動制御部50によって判定された場合には、電流制御用スイッチング素子41をオフ状態にして直流電源2とインバータ部10との間に電流が流れないようにすることで、直流電源2に電流が逆流するのを防止できる。
【0099】
しかも、インバータ部10の動作モードに応じて、駆動制御用スイッチング素子42を駆動させることにより、電流制御用スイッチング素子41をより精度良く制御することができる。さらに、ダイオードを用いて逆接保護回路を構成する場合に比べて、回路で生じる損失を低減することができる。
【0100】
[実施形態3]
図10は、本発明の実施形態3に係る電力変換装置201の概略構成を示すブロック図である。この電力変換装置201は、電源保護部40を有さない点で、実施形態1の電力変換装置1の構成と異なる。以下では、実施形態1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0101】
電力変換装置201は、インバータ部10と、平滑コンデンサ20と、ダイオード130と、双方向チョッパ回路140と、チョッパ回路制御部150とを有する。インバータ部10、平滑コンデンサ20、ダイオード130、双方向チョッパ回路140及びチョッパ回路制御部150の各構成は、実施形態1の各構成と同じである。
【0102】
図11は、インバータ部10が力行モードで動作している場合の電流の流れを実線矢印で示す図である。図12は、インバータ部10が回生モードで動作している場合の電流の流れを実線矢印で示す図である。
【0103】
インバータ部10が力行モードで動作しているとチョッパ回路制御部150によって判定された場合には、直流電源2、平滑コンデンサ20及び出力用コンデンサ141から、インバータ部10に電力が供給される。このとき、チョッパ回路制御部150は、電流調整部140の降圧用スイッチング素子143をオフにするとともに昇圧用スイッチング素子144をオンにする制御信号を生成する。
【0104】
インバータ部10が回生モードで動作しているとチョッパ回路制御部150によって判定された場合には、インバータ部10で生じた電力が平滑コンデンサ20及び出力用コンデンサ141に充電される。このとき、チョッパ回路制御部150は、電流調整部140の降圧用スイッチング素子143をオンにするとともに昇圧用スイッチング素子144をオフにする制御信号を生成する。
【0105】
図13は、インバータ部10が力行モードで動作している一部の期間において、チョッパ回路制御部150が回生モードの際の制御信号を生成した場合に、電力変換装置101内に流れる電流を矢印で示す図である。すなわち、図13は、既述のようにチョッパ回路制御部150のバンドパスフィルタ151によってインバータ部10の入力電流から得られる信号波形をオフセットさせることにより、チョッパ回路制御部150がインバータ部10の力行モードの一部の期間を回生モードと判定した場合に、電力変換装置101内に流れる電流を矢印で示す図である。
【0106】
図13に示すように、直流電源2からインバータ部10に直流電力が供給されるとともに、直流電源2から平滑コンデンサ20及び出力用コンデンサ141に対しても直流電力が供給される。これにより、インバータ部10が力行モードで動作している期間のうち一部の期間でも、平滑コンデンサ20及び出力用コンデンサ141に直流電力を充電することができる。よって、インバータ部10が回生モードで動作する場合に、平滑コンデンサ20及び出力用コンデンサ141からインバータ部10に対して十分な直流電力を供給することができる。
【0107】
これにより、インバータ部10が力行モードで動作している場合に消費する電力と、インバータ部10が回生モードで動作している場合に平滑コンデンサ20及び出力用コンデンサ141に充電される電力とのアンバランスを少なくすることができる。よって、直流電源2とインバータ部10との接続ライン(電源ライン)の電圧変動を抑制できる。したがって、電力変換装置101の電源ラインにおける電流品質を向上することができる。
【0108】
しかも、インバータ部10が力行モードで動作している期間のうち一部の期間でも、出力用コンデンサ141に電力を充電することにより、出力用コンデンサ141の電圧変動を大きくする一方、平滑コンデンサ20の電圧変動を抑制することができる。これにより、平滑コンデンサ20として小容量のコンデンサを用いることができる。よって、電力変換装置101の小型化を図れる。
【0109】
本実施形態の構成では、平滑コンデンサ20に対して電気的に並列に接続された双方向チョッパ回路140は、降圧用スイッチング素子143及び昇圧用スイッチング素子144を含む。双方向チョッパ回路140は、昇圧用スイッチング素子144に対して電気的に並列に接続された出力用コンデンサ141を備える。チョッパ回路制御部150は、インバータ部10の力行モードの一部を回生モードとして判定するように構成されている。前記降圧用スイッチング素子143及び昇圧用スイッチング素子144は、チョッパ回路制御部150によるインバータ部10の動作モードの判定結果に応じて、出力用コンデンサ141から直流電力を出力する出力モードと、出力用コンデンサ141で直流電力を充電する充電モードとを切り替えるように動作する。
【0110】
これにより、チョッパ回路制御部150によるインバータ部10の動作モードの判定結果に応じて、双方向チョッパ回路140の出力用コンデンサ141に直流電力を充電できるとともに、出力用コンデンサ141から直流電力を出力できる。したがって、例えば、チョッパ回路制御部150によってインバータ部10が回生モードで動作していると判定されたときには、出力用コンデンサ141に直流電力を充電し、チョッパ回路制御部150によってインバータ部10が力行モードで動作していると判定されたときには、出力用コンデンサ141から直流電力を出力できる。
【0111】
しかも、チョッパ回路制御部150によってインバータ部10の動作モードを判定する際に、インバータ部10の力行モードの一部を回生モードとして判定することで、出力用コンデンサ141に多くの直流電力を充電することができる。これにより、回生モードで出力用コンデンサ141に充電する直流電力と、力行モードで出力用コンデンサ141から出力する直流電力とをバランスさせることが可能になる。
【0112】
したがって、回生モードと力行モードとにおいて、直流電源2とインバータ部10との間の電源ラインで電圧変動が生じることを防止できる。よって、平滑コンデンサ20の電圧を精度良く平滑化できる。また、回生モードで出力用コンデンサ141によって回収される直流電力が増えるため、スイッチング素子などの各種素子に、耐圧が高い素子を用いる必要がなくなる。
【0113】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0114】
前記実施形態1、2では、駆動制御部50は、インバータ部10に流れる電流を用いて、インバータ部10の動作モードを判定している。前記実施形態1、3では、チョッパ回路制御部150は、インバータ部10に流れる電流を用いて、インバータ部10の動作モードを判定している。
【0115】
しかしながら、駆動制御部は、インバータ部の電圧に基づいて、インバータ部の動作モードを判定してもよい。チョッパ回路制御部は、インバータ部の電圧に基づいて、インバータ部の動作モードを判定してもよい。
【0116】
前記実施形態1、2では、電流制御用スイッチング素子41は、PチャンネルFETである。駆動制御用スイッチング素子42は、例えばトランジスタである。しかしながら、電流制御用スイッチング素子及び駆動制御用スイッチング素子は、それぞれ、スイッチング動作が可能な他の素子であってもよい。
【0117】
前記実施形態1、3では、チョッパ回路制御部150のバンドパスフィルタ151は、インバータ部10の入力側の電流を演算処理する。しかしながら、バンドパスフィルタは、インバータ部の入力側の電圧を演算処理してもよい。
【0118】
前記実施形態1、3では、チョッパ回路制御部150は、インバータ部10に流れる電流を、バンドパスフィルタ151で処理した後、ローパスフィルタ152で処理された値との差分を求めている。しかしながら、制御部は、バンドパスフィルタの代わりに、ローパスフィルタ及びテーブルデータを組み合わせた構成を有していてもよい。
【0119】
図14は、バンドパスフィルタの代わりに、ローパスフィルタ351及びテーブルデータを組み合わせた構成を有するチョッパ回路制御部350の一例を示すブロック図である。図14に示すように、チョッパ回路制御部350は、ローパスフィルタ351,152と、演算器153と、PI演算部154と、三角波比較部155と、テーブルデータ格納部356とを有する。ローパスフィルタ152、演算器153、PI演算部154及び三角波比較部155は、実施形態1、3と同様である。よって、それらの構成の詳しい説明は省略する。符号301は、電力変換装置である。
【0120】
ローパスフィルタ351は、インバータ部10の入力電流の波形において、リプル成分を除去する。
【0121】
テーブルデータ格納部356は、双方向チョッパ回路140の入出力電圧Vc(以下、平滑コンデンサ電圧)及び直流電源の電圧Vd(以下、入力電圧という)と、出力信号との組み合わせが格納されている。テーブルデータ格納部356は、例えば記憶装置によって構成される。
【0122】
図15は、テーブルデータ格納部356に格納されるデータの一例を示す。テーブルデータ格納部356は、図11に示すようなデータから、平滑コンデンサ電圧Vc及び入力電圧Vdに対応する出力信号を出力する。テーブルデータ格納部356から出力された信号は、ローパスフィルタ351でリプル成分が除去された信号に加算される。これにより、双方向チョッパ回路140の降圧用スイッチング素子143及び昇圧用スイッチング素子144の駆動に、平滑コンデンサ電圧Vc及び入力電圧Vdを考慮することができる。
【0123】
チョッパ回路制御部350は、出力モードで出力用コンデンサ141から出力される直流電力と、充電モードで出力用コンデンサ141を充電する直流電力とが同等のエネルギー量になるように、入力電圧Vdと平滑コンデンサ電圧Vcとを比較して、前記インバータ部の動作モードを判定する。
【0124】
このように、出力モードで出力用コンデンサ141から出力される直流電力と、充電モードで出力用コンデンサ141を充電する直流電力とが同等のエネルギー量になるように、インバータ部10の動作モードを判定することで、チョッパ回路制御部350の判定結果を変更することができる。したがって、チョッパ回路制御部350の判定結果に応じて、出力用コンデンサ141に対する直流電力の充電または出力を容易に切り替えることができる。
【0125】
なお、テーブルデータ格納部356に格納されているデータは、図15に示すデータ以外のデータであってもよい。また、テーブルデータ格納部356で出力信号を選択する際に用いる平滑コンデンサ電圧Vc及び入力電圧Vdの少なくとも一方は、出力用コンデンサ141の充電期間の平均値であってもよい。
【0126】
前記実施形態1、3では、チョッパ回路制御部150は、バンドパスフィルタ151を有する。バンドパスフィルタにおける通過帯域の周波数が変更可能であってもよい。例えば、インバータ部の入力電流の周波数に応じて、バンドパスフィルタの通過帯域の周波数が変更可能であってもよい。このように、バンドパスフィルタの通過帯域の周波数を変更可能にすることで、より広い周波数の範囲で機能するフィルタを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、直流電源から供給される直流電力によって動作するインバータ部を備える電力変換装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0128】
1、101、201、301 電力変換装置
2 直流電源
10 インバータ部
20 平滑コンデンサ
30 ダイオード
40、140 電流調整部
41 電流制御用スイッチング素子
42 駆動制御用スイッチング素子
43、44 抵抗
45、46、47、130 ダイオード
50 駆動制御部(動作モード判定部)
150、350 チョッパ回路制御部(動作モード判定部)
141 出力用コンデンサ
142 リアクトル
143 降圧用スイッチング素子(チョッパ回路用スイッチング素子)
144 昇圧用スイッチング素子(チョッパ回路用スイッチング素子)
145 第1ダイオード
146 第2ダイオード
151 バンドパスフィルタ(フィルタ)
152、351 ローパスフィルタ
153 演算器
154 PI演算部
155 三角波比較部
356 テーブルデータ格納部
M モータ
SW1~SW4 スイッチング素子
D1~D4 ダイオード
図1
図2
図3
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図9
図10
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図15