(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】軌道面研削盤
(51)【国際特許分類】
B24B 19/06 20060101AFI20241009BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20241009BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
B24B19/06
B24B49/10
B24B55/06
(21)【出願番号】P 2020157215
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】阿閉 克彦
(72)【発明者】
【氏名】坂下 和幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】嘉戸 成介
(72)【発明者】
【氏名】境 信之
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-159397(JP,A)
【文献】特開昭54-024383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 19/00
B24B 49/00
B24B 55/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを研削加工して該ワークに転動体の軌道面を形成する研削部と、
前記ワークの寸法を測定する測定機と、
前記ワークの加工位置近傍に設置
することで前記ワークと近い環境下にあるマスターワークと
、
前記マスターワークを取り付ける取付治具とを備え、
前記測定機は、前記マスターワークを測定して該測定機を校正した後に前記ワークの寸法を測定
し、
前記取付治具には、前記ワークを洗浄するクーラントを循環させることを特徴とする軌道面研削盤。
【請求項2】
当該軌道面研削盤は、前記ワークを前記研削部で研削した後であって、該ワークの寸法を前記測定機で測定する前に、前記ワークをクーラントで再び洗浄することを特徴とする請求項
1に記載の軌道面研削盤。
【請求項3】
前記測定機は、前記ワークおよび前記マスターワークに押し当てられる測定子を有し、
当該軌道面研削盤は、前記ワークおよび前記マスターワークを前記測定機で測定する前に、前記ワーク、前記マスターワークおよび前記測定子をエアブローで清掃することを特徴とする請求項1
または2に記載の軌道面研削盤。
【請求項4】
当該軌道面研削盤は、前記ワークを加工する加工室と、前記測定子を洗浄する洗浄室と、前記マスターワークを設置するマスター測定室とに区画されていて、
前記各部屋の隔壁のうち前記測定機が出入りする隔壁には、シャッターが設けられていることを特徴とする請求項
3に記載の軌道面研削盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを研削加工して転動体の軌道面を形成する軌道面研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物であるワークを砥石などで研削加工して、ワークにレールの軌道面などを形成する研磨機が知られている(例えば特許文献1)。特許文献1には、ワークを研削することでリニア案内レールを製造する複合研磨機が開示されている。
【0003】
この複合研磨機は、ワークが載置されるワークテーブルと、門型コラムと、一対の総形砥石車を有する第一研削手段と、1個の総形砥石車を有する第二研削手段とを備える。ワークテーブルは、長尺状ベース上に設けられていて、駆動手段によって長尺状ベース上で左右方向に往復移動可能なテーブルである。門型コラムは、長尺状ベースを前後に跨いで立架した一対のコラムと、一対のコラム間に水平方向に設けられた梁とを有する。
【0004】
第一研削手段の一対の総形砥石車は、門型コラムの左側前正面に設けたクロスレールに対して左右方向移動可能におよび上下方向昇降可能に設けられた砥石軸に軸支されている。第二研削手段の1個の総形砥石車は、門型コラムの背後面に設けたクロスレールに対して前後方向移動可能におよび上下方向昇降可能に設けた砥石軸に軸支されている。
【0005】
この複合研磨機では、ワークテーブルにワークを載置して、ワークテーブルを移動させながら、第一研削手段の一対の総形砥石車によってワークの両側面を研削加工し、同時に、第二研削手段の1個の総形砥石車によってワークの頭頂部を研削加工している。そして特許文献1では、ワークの頭頂部と両側部を同時に研削加工できるので、ワークの研削加工時間を短縮できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1の複合研磨機は、ワークの研削加工時間を短縮するものに過ぎず、ワークの寸法を測定する手法については記載がない。従来は一般的には幅ゲージなどを用いて作業員が手作業でレールやブロックの溝の距離を測定しては、所定の寸法まで研削加工することを繰り返していた。これを自動化することを考えたとき、一例として、ワークの寸法を自動的に測定する測定機を複合研磨機に単に追加した場合では、研削加工時のワークの温度変化に伴う熱膨張による寸法のずれや、ワークに付着した研削粉などによって、ワークの寸法を精度よく測定することは困難である。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、ワークの寸法を精度よく測定し、寸法精度の高い研削加工を行うことができる軌道面研削盤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる軌道面研削盤の代表的な構成は、ワークを研削加工してワークに転動体の軌道面を形成する研削部と、ワークの寸法を測定する測定機と、ワークの加工位置近傍に設置されたマスターワークとを備え、測定機は、マスターワークを測定して測定機を校正した後にワークの寸法を測定することを特徴とする。
【0010】
上記構成では、研削部によって研削加工されるワークの加工位置近傍にマスターワークを設置している。マスターワークは、研削加工後のワークの理想的な形状を有するものであり、ワークの加工位置近傍に設置することで、ワークと近い環境下(主に温度環境)にある。そして測定機は、ワークの寸法を測定する前に、ワークと近い環境下にあるマスターワークを測定することで校正され、校正後すなわち測定の信頼性を高めた状態でワークの寸法を測定する。したがって上記構成の軌道面研削盤によれば、ワークの寸法を精度よく測定し、寸法精度の高い研削加工を行うことができる。
【0011】
上記の軌道面研削盤は、マスターワークを取り付ける取付治具をさらに備え、取付治具には、ワークを洗浄するクーラントを循環させるとよい。
【0012】
このように、マスターワークの取付治具に、ワークを洗浄するクーラントを循環させることにより、マスターワークの温度を安定させつつ、ワークの温度とマスターワークの温度を近づける(温度差を低減する)ことができる。これにより、マスターワークをワークとより近い環境下におくことができるため、校正後の測定機による測定の信頼性をより高めることができる。
【0013】
上記の軌道面研削盤は、ワークを研削部で研削した後であって、ワークの寸法を測定機で測定する前に、ワークをクーラントで再び洗浄するとよい。
【0014】
研削時にはクーラントを供給するが、それとは別に、研削加工後のワークの寸法を測定機で測定する前に、さらにワークをクーラントで洗浄するので、ワークに付着した研削粉をほぼ確実に除去することができ、測定機によってワークの寸法を正確に測定できる。また、ワークをクーラントで再度洗浄してさらに冷却するので、ワークの熱膨張による寸法のずれを低減できる。
【0015】
上記の測定機は、ワークおよびマスターワークに押し当てられる測定子を有し、軌道面研削盤は、ワークおよびマスターワークを測定機で測定する前に、ワーク、マスターワークおよび測定子をエアブローで清掃するとよい。
【0016】
これにより、ワーク、マスターワークおよび測定機の測定子に付着した研削粉を、エアブローによって除去することができ、測定機によってワークの寸法を正確に測定できる。
【0017】
上記の軌道面研削盤は、ワークを加工する加工室と、測定子を洗浄する洗浄室と、マスターワークを設置するマスター測定室とに区画されていて、各部屋の隔壁のうち測定機が出入りする隔壁には、シャッターが設けられているとよい。
【0018】
これにより、ワークの加工時に加工室で発生した研削粉は、シャッターによって遮られて、加工室から洗浄室やマスター測定室に入り込むことがない。このため、測定機の測定子やマスターワークに研削粉が付着しないため、研削粉に起因する測定誤差が発生することを防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ワークの寸法を精度よく測定し、寸法精度の高い研削加工を行うことができる軌道面研削盤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態における軌道面研削盤を例示する図である。
【
図2】
図1の研削装置の測定機およびその周辺の構造を例示する図である。
【
図3】
図2(a)の取付治具およびその周辺の構造を例示する図である。
【
図4】
図1の研削装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図4の各動作を行う研削装置の様子を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態における軌道面研削盤(以下、研削装置100)を例示する図である。
図1(a)は、研削装置100の全体を示す図である。研削装置100は、被加工物であるワーク102の寸法を自動的に測定し、ワーク102を研削加工する装置であり、テーブル104と、コラム106と、研削機108と、測定機110と、マスターワーク112とを備える。なお
図1(b)、
図1(c)は、
図1(a)の研削装置100の研削機108側、測定機110側をそれぞれ示している。
【0023】
テーブル104は、ベース114に設けられ、ベース114上で
図1(a)に示す矢印A方向に移動可能に構成されていて、その上部にはワーク102が取り付けられている。コラム106は、ベース114に設けられ、
図1(b)および
図1(c)に示すように門型に形成されていて、ワーク102およびテーブル104を上方から囲うように配置されている。
【0024】
研削機108は、
図1(b)に示すように門型のコラム106の前面側に設置されていて、一対の砥石車116、118を有する。研削機108は、移動するテーブル104に取り付けられたワーク102を一対の砥石車116、118によって研削加工して、ワーク102のレールやブロックに転動体(例えば玉)の軌道面を形成する。測定機110は、
図1(c)に示すように門型のコラム106の背面側に設置されていて、ワーク102およびマスターワーク112の寸法を測定する。
【0025】
マスターワーク112は、研削加工後のワーク102の理想的な形状を有するものであり、マスター測定室(測定室120)に設置されている。測定室120では、測定機110によってマスターワーク112の寸法を測定したり、マスターワーク112をエアブローで清掃したりする(後述)。また測定室120は、
図1(c)に示すように、研削機108によってワーク102が研削加工される加工室(研削室122)の近傍に設置されている。このため、マスターワーク112は、ワーク102の加工位置近傍に設置されることになり、ワーク102と近い環境下(主に温度環境)にある。
【0026】
図2は、
図1の研削装置100の測定機110およびその周辺の構造を例示する図である。
図2(a)は、
図1(c)の研削装置100の一部を拡大しさらに詳細に示す図である。
図2(b)は、
図2(a)の一部を拡大して示す図である。
【0027】
研削装置100は、
図2(a)に示すように測定室120および研削室122に加え、測定室120に隣接する洗浄室124によって区画されている。測定室120と洗浄室124は、隔壁126、128、130、天面140によって区画されている。なお天面140も隔壁のひとつである。
【0028】
測定機110は、
図2(b)に示すように一対のアーム132、134と、アーム132、134によって支持される一対の測定子136、138とを有する。測定子136、138は、ワーク102の寸法およびマスターワーク112の寸法を測定するときに、アーム132、134によってワーク102およびマスターワーク112に押し当てられる。
図2(a)では、アーム132、134が測定子136、138をワーク102に押し当てて、ワーク102の寸法を測定している状態を例示している。
【0029】
測定機110は、
図2(a)の矢印B、Cに示すようにコラム106に対して上下方向、水平方向にそれぞれ移動可能に構成されている。また、洗浄室124および測定室120の天面140には、開閉自在のシャッター142が設けられている。このため、測定機110は、例えば
図2(a)に示す研削室122に進入した状態から上昇して、さらに水平方向に移動して、洗浄室124や測定室120の上方で待機し、シャッター142が開くと下降することにより、洗浄室124や測定室120に進入することができる。
【0030】
また測定機110はさらに、
図2(b)に示す一対のエアブローノズル144、146を有する。エアブローノズル144、146は、アーム132、134に支持された測定子136、138およびその周辺に向けられていて、測定子136、138、ワーク102およびマスターワーク112をエアブローで清掃する。なお測定子136、138は、洗浄室124で清掃される。
【0031】
研削装置100はさらに、研削室122に一対のエアブローノズル148、150および一対のクーラント洗浄ノズル152、154と、マスターワーク112を取り付ける取付治具156とを備える。エアブローノズル148、150は、ワーク102に向けられていて、ワーク102をエアブローで清掃する。クーラント洗浄ノズル152、154は、ワーク102に向けられていて、ワーク102をクーラントで洗浄する。取付治具156には、ワーク102を洗浄するクーラントを循環させている(
図3参照)。また洗浄室124には、エアブローノズル151およびクーラント洗浄ノズル155が備えられていて、測定子136、138を洗浄する。
【0032】
図3は、
図2(a)の取付治具156およびその周辺の構造を例示する図である。
図3(a)は、取付治具156およびその周辺の内部構造を示す図である。
図3(b)は、
図3(a)のマスターワーク112および取付治具156を下方から見た状態を示す図である。
【0033】
取付治具156は、測定室120に設置された基台158にボルトなどで固定されている。基台158の内部には、
図3(a)に示すように上下方向に延びる流路160が形成されている。流路160には、
図3(a)の矢印Dに示すように取付治具156に向かってクーラントが流れている。
【0034】
また取付治具156の内部には、
図3(a)に示すように流路162が形成されている。流路162は、
図3(b)に示すように水平方向に延びていて、さらに基台158の流路160に接続されている。このため、流路162には、流路160から流れ込んだクーラントが
図3(b)の矢印Eに示すように水平方向に流れる。
【0035】
このように研削装置100では、マスターワーク112の取付治具156に、ワーク102を洗浄するクーラントを循環させることにより、マスターワーク112の温度を安定させつつ、ワーク102の温度とマスターワーク112の温度を近づけることができる。これにより、マスターワーク112をワーク102とより近い環境下におくことができる。
【0036】
図4は、
図1の研削装置100の動作を示すフローチャートである。
図5は、
図4の各動作を行う研削装置100の様子を例示する図である。研削装置100では、まず、研削機108(
図1(b)参照)によってワーク102の軌道面を研削する(ステップS100)。またワーク102の研削時には、測定機110を移動させて洗浄室124の上方で待機させている。
【0037】
つぎに、研削時にクーラントを供給することとは別に、研削加工後のワーク102を、クーラント洗浄ノズル152、154によってクーラントで洗浄し、さらにエアブローノズル148、150によってエアブローで清掃する(ステップS102)。続いて、洗浄室124および測定室120の天面140に設けられたシャッター142を開く(ステップS104)。
【0038】
そして、
図5(a)の矢印Fに示すように測定機110を下降させ、シャッター142(図中、点線)が開いた天面140から洗浄室124に進入させて、測定子136、138を、エアブローノズル144、146、151およびクーラント洗浄ノズル155によって清掃する(ステップS106)。
【0039】
つぎに、
図5(b)の矢印Gに示すように測定機110を上昇させて洗浄室124から退避させ、さらに水平方向に移動させて測定室120の上方に待機させる。さらに矢印Gに示すように測定機110を下降させ、シャッター142が開いた天面140から測定室120に進入させて、エアブローノズル144、146によってマスターワーク112をエアブローで清掃する(ステップS108)。
【0040】
続いて、測定機110は、アーム132、134(
図2(b)参照)によって測定子136、138をマスターワーク112に押し当てて、マスターワーク112の寸法を測定し、これにより、測定機110自体を校正する(ステップS110)。
【0041】
つぎに、
図5(c)の矢印Hに示すように測定機110を上昇させて測定室120から退避させ、さらにシャッター142を閉じて(ステップS112)、測定機110を水平方向に移動させて研削室122の上方に待機させる。さらに矢印Hに示すように測定機110を下降させ、研削室122に進入させて、例えばエアブローノズル144、146、148、150によってワーク102をエアブローで清掃する(ステップS114)。
【0042】
さらに
図5(c)に示すように、測定機110は、アーム132、134(
図2(b)参照)によって測定子136、138をワーク102に押し当てて、ワーク102の寸法を2箇所以上測定する(ステップS116)。
【0043】
続いて、ステップS106と同様に洗浄室124で測定子136、138をエアブローノズル144、146、151およびクーラント洗浄ノズル155によって清掃する(ステップS118)。ステップS108と同様に測定室120のマスターワーク112をエアブローノズル144、146によって清掃する(ステップS120)。それからステップS110と同様にマスターワーク112の寸法を再測定する(ステップS122)。
【0044】
そして研削装置100では、ステップS110で測定したマスターワーク112の寸法と、ステップS122で測定したマスターワーク112の寸法とを比較して、両者の誤差が許容範囲内でなければ(ステップS124、No)、エラー表示してオペレータに異常確認を促す(ステップS126)。誤差が許容範囲内であれば(Yes)、ステップS128の動作を行う。
【0045】
研削装置100は、ステップS128において、ステップS116で測定したワーク102の寸法が許容範囲内でなければ(No)、再びステップS100に戻って誤差分を補正加工する。一方、ステップS128において、ワーク102の寸法が許容範囲内の所定の寸法であれば(Yes)、動作を終了する。
【0046】
このように研削装置100では、測定機110がワーク102の寸法を測定する前に、ワーク102と近い環境下にあるマスターワーク112を測定することで校正される。したがって研削装置100によれば、測定機110が校正後すなわち測定の信頼性を高めた状態でワーク102の寸法を測定するため、ワーク102の寸法を精度よく測定でき、さらにワーク102が所定の寸法になるように補正加工を行うことで、寸法精度の高い研削加工を行うことができる。
【0047】
また、マスターワーク112を取り付ける取付治具156(
図3参照)には、ワーク102を洗浄するクーラントを循環させるので、マスターワーク112をワーク102とより近い環境下におくことができ、校正後の測定機110による測定の信頼性をより高めることができる。
【0048】
また研削装置100では、ワーク102を研削機108で研削加工した後であって、ワーク102の寸法を測定機110で測定する前に、ワーク102をクーラントで再び洗浄している。
【0049】
つまり研削装置100では、研削時にはクーラントを供給するが、それとは別に、研削加工後のワーク102の寸法を測定機110で測定する前に、さらにワーク102をクーラントで洗浄するので、ワーク102に付着した研削粉をほぼ確実に除去することができ、測定機110によってワーク102の寸法を正確に測定できる。また、ワーク102をクーラントで再度洗浄してさらに冷却するので、研削加工時のワーク102の温度変化に伴う熱膨張による寸法のずれを低減できる。
【0050】
さらに研削装置100は、ワーク102およびマスターワーク112を測定機110で測定する前に、ワーク102、マスターワーク112および測定子136、138をエアブローで清掃している。したがって研削装置100によれば、ワーク102、マスターワーク112および測定子136、138に付着した研削粉を、エアブローによって除去することができ、測定機110によってワーク102の寸法を正確に測定できる。
【0051】
また研削装置100は、測定子136、138を清掃する洗浄室124と、マスターワーク112を設置する測定室120とが隔壁126、128、130に区画されていて、さらに測定機110が出入りする隔壁すなわち天面140には、シャッター142が設けられている。
【0052】
したがって研削装置100では、ワーク102の研削加工時に研削室122で発生した研削粉は、シャッター142によって遮られて、研削室122から洗浄室124や測定室120に入り込むことがない。このため、測定機110の測定子136、138やマスターワーク112に研削粉が付着しないため、研削粉に起因する測定誤差が発生することを防止できる。
【0053】
なお、上記実施形態ではワーク102およびマスターワーク112は、断面が矩形のワークの両側面(両外面)に溝160、162を備えるレールとして説明した。しかし、断面がコの字のワークの両内面に溝を備えるブロックであってもよい。ブロックとワークは対向する溝(軌道面)に転動体を備えて、ブロックがワークに沿って移動する関係にある。このような場合においても、ワークの寸法を測定する前に、ワークと近い環境下にあるマスターワークを測定することで測定機が校正され、校正後すなわち測定の信頼性を高めた状態でワークの寸法を測定することができる。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、ワークを研削加工してレールやブロックに転動体の軌道面を形成する軌道面研削盤として利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
100…研削装置、102…ワーク、104…テーブル、106…コラム、108…研削機、110…測定機、112…マスターワーク、114…ベース、116、118…砥石車、120…測定室、122…研削室、124…洗浄室、126、128、130…隔壁、132、134…アーム、136、138…測定子、140…天面、142…シャッター、144、146、148、150、151…エアブローノズル、152、154、155…クーラント洗浄ノズル、156…取付治具、158…基台、160、162…流路