(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】レーザレーダ
(51)【国際特許分類】
G01S 7/4865 20200101AFI20241009BHJP
【FI】
G01S7/4865
(21)【出願番号】P 2020179821
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】松川 将磨
(72)【発明者】
【氏名】末吉 英一
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0188766(US,A1)
【文献】特開平03-220814(JP,A)
【文献】特表2009-527158(JP,A)
【文献】特開平06-283984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
17/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開始タイミングから連続する第1レベルの信号と、前記第1レベルと異なり且つ連続する第2レベルの信号とにより構成された一定周期のクロック信号を発生するクロック発生器と、
前記クロック信号に同期してパルスレーザ光を投光する投光部と、
前記パルスレーザ光が物体により反射された反射光を受光する受光部と、
前記投光部により前記パルスレーザ光が投光された投光タイミングから、前記受光部により前記反射光が受光された受光タイミングまでに対応する前記第1レベルの信号の開始数である第1カウンタ値をカウントする第1カウンタと、
前記投光タイミングから前記受光タイミングまでに対応する前記第2レベルの信号の開始数である第2カウンタ値をカウントする第2カウンタと、
前記クロック信号の各周期において、前記第1レベルの信号の開始タイミングである第1開始タイミングよりも後であり且つ前記第2レベルの信号の開始タイミングである第2開始タイミングよりも前のタイミングである所定タイミング
以前のタイミングにおいて前記第2カウンタ値を第3カウンタ値として選択し、前記所定タイミングよりも後のタイミングにおいて前記第1カウンタ値を前記第3カウンタ値として選択する選択部と、
前記受光タイミングを含む前記クロック信号の周期において、前記クロック信号の先頭から前記受光タイミングまでの時間又は前記受光タイミングから前記クロック信号の末尾までの時間である端数時間を算出する端数算出部と、
前記第3カウンタ値と、前記端数算出部により算出された前記端数時間とに基づいて、前記パルスレーザ光の往復時間を算出する時間算出部と、
前記パルスレーザ光の速度と前記時間算出部により算出された前記往復時間とに基づいて、前記物体までの距離を算出する距離算出部と、
を備えるレーザレーダ。
【請求項2】
開始タイミングから連続する第1レベルの信号と、前記第1レベルと異なり且つ連続する第2レベルの信号とにより構成された一定周期のクロック信号を発生するクロック発生器と、
前記クロック信号に同期してパルスレーザ光を投光する投光部と、
前記パルスレーザ光が物体により反射された反射光を受光する受光部と、
前記投光部により前記パルスレーザ光が投光された投光タイミングから、前記受光部により前記反射光が受光された受光タイミングまでに対応する前記第1レベルの信号の開始数である第1カウンタ値をカウントする第1カウンタと、
前記投光タイミングから前記受光タイミングまでに対応する前記第2レベルの信号の開始数である第2カウンタ値をカウントする第2カウンタと、
前記クロック信号の各周期において、前記第1レベルの信号の開始タイミングである第1開始タイミングよりも後であり且つ前記第2レベルの信号の開始タイミングである第2開始タイミングよりも前のタイミングである所定タイミングよりも、前のタイミングにおいて前記第2カウンタ値を第3カウンタ値として選択し、前記所定タイミング以後のタイミングにおいて前記第1カウンタ値を前記第3カウンタ値として選択する選択部と、
前記受光タイミングを含む前記クロック信号の周期において、前記クロック信号の先頭から前記受光タイミングまでの時間又は前記受光タイミングから前記クロック信号の末尾までの時間である端数時間を算出する端数算出部と、
前記第3カウンタ値と、前記端数算出部により算出された前記端数時間とに基づいて、前記パルスレーザ光の往復時間を算出する時間算出部と、
前記パルスレーザ光の速度と前記時間算出部により算出された前記往復時間とに基づいて、前記物体までの距離を算出する距離算出部と、
を備えるレーザレーダ。
【請求項3】
開始タイミングから連続する第1レベルの信号と、前記第1レベルと異なり且つ連続する第2レベルの信号とにより構成された一定周期のクロック信号を発生するクロック発生器と、
前記クロック信号に同期してパルスレーザ光を投光する投光部と、
前記パルスレーザ光が物体により反射された反射光を受光する受光部と、
前記投光部により前記パルスレーザ光が投光された投光タイミングから、前記受光部により前記反射光が受光された受光タイミングまでに対応する前記第1レベルの信号の開始数である第1カウンタ値をカウントする第1カウンタと、
前記投光タイミングから前記受光タイミングまでに対応する前記第2レベルの信号の開始数である第2カウンタ値をカウントする第2カウンタと、
前記クロック信号の各周期において、前記第1レベルの信号の開始タイミングである第1開始タイミングよりも後であり且つ前記第2レベルの信号の開始タイミングである第2開始タイミングよりも前のタイミングである第1所定タイミング
以前のタイミングにおいて前記第2カウンタ値を第3カウンタ値として選択し、前記第2レベルの信号の開始タイミングである第2開始タイミングよりも後であり且つ前記第2レベルの信号の終了タイミングよりも前のタイミングである第2所定タイミングよりも、後のタイミングにおいて前記第2カウンタ値を第3カウンタ値として選択し、前記第1所定タイミングよりも後であり且つ前記第2所定タイミング
以前のタイミングにおいて前記第1カウンタ値を前記第3カウンタ値として選択する選択部と、
前記受光タイミングを含む前記クロック信号の周期において、前記クロック信号の先頭から前記受光タイミングまでの時間又は前記受光タイミングから前記クロック信号の末尾までの時間である端数時間を算出する端数算出部と、
前記第3カウンタ値と、前記端数算出部により算出された前記端数時間とに基づいて、前記パルスレーザ光の往復時間を算出する時間算出部と、
前記パルスレーザ光の速度と前記時間算出部により算出された前記往復時間とに基づいて、前記物体までの距離を算出する距離算出部と、
を備えるレーザレーダ。
【請求項4】
開始タイミングから連続する第1レベルの信号と、前記第1レベルと異なり且つ連続する第2レベルの信号とにより構成された一定周期のクロック信号を発生するクロック発生器と、
前記クロック信号に同期してパルスレーザ光を投光する投光部と、
前記パルスレーザ光が物体により反射された反射光を受光する受光部と、
前記投光部により前記パルスレーザ光が投光された投光タイミングから、前記受光部により前記反射光が受光された受光タイミングまでに対応する前記第1レベルの信号の開始数である第1カウンタ値をカウントする第1カウンタと、
前記投光タイミングから前記受光タイミングまでに対応する前記第2レベルの信号の開始数である第2カウンタ値をカウントする第2カウンタと、
前記クロック信号の各周期において、前記第1レベルの信号の開始タイミングである第1開始タイミングよりも後であり且つ前記第2レベルの信号の開始タイミングである第2開始タイミングよりも前のタイミングである第1所定タイミングよりも、前のタイミングにおいて前記第2カウンタ値を第3カウンタ値として選択し、前記第2レベルの信号の開始タイミングである第2開始タイミングよりも後であり且つ前記第2レベルの信号の終了タイミングよりも前のタイミングである第2所定タイミング以後のタイミングにおいて前記第2カウンタ値を第3カウンタ値として選択し、前記第1所定タイミング以後であり且つ前記第2所定タイミングよりも前のタイミングにおいて前記第1カウンタ値を前記第3カウンタ値として選択する選択部と、
前記受光タイミングを含む前記クロック信号の周期において、前記クロック信号の先頭から前記受光タイミングまでの時間又は前記受光タイミングから前記クロック信号の末尾までの時間である端数時間を算出する端数算出部と、
前記第3カウンタ値と、前記端数算出部により算出された前記端数時間とに基づいて、前記パルスレーザ光の往復時間を算出する時間算出部と、
前記パルスレーザ光の速度と前記時間算出部により算出された前記往復時間とに基づいて、前記物体までの距離を算出する距離算出部と、
を備えるレーザレーダ。
【請求項5】
開始タイミングから連続する第1レベルの信号と、前記第1レベルと異なり且つ連続する第2レベルの信号とにより構成された一定周期のクロック信号を発生するクロック発生器と、
前記クロック信号に同期してパルスレーザ光を投光する投光部と、
前記パルスレーザ光が物体により反射された反射光を受光する受光部と、
前記投光部により前記パルスレーザ光が投光された投光タイミングから、前記受光部により前記反射光が受光された受光タイミングまでに対応する前記第1レベルの信号の開始数である第1カウンタ値をカウントする第1カウンタと、
前記投光タイミングから前記受光タイミングまでに対応する前記第2レベルの信号の開始数である第2カウンタ値をカウントする第2カウンタと、
前記クロック信号の各周期において、前記第1レベルの信号の開始タイミングである第1開始タイミングよりも後であり且つ前記第2レベルの信号の開始タイミングである第2開始タイミングよりも前のタイミングである第1所定タイミング以前のタイミングにおいて前記第2カウンタ値を第3カウンタ値として選択し、前記第2レベルの信号の開始タイミングである第2開始タイミングよりも後であり且つ前記第2レベルの信号の終了タイミングよりも前のタイミングである第2所定タイミング以後のタイミングにおいて前記第2カウンタ値を第3カウンタ値として選択し、前記第1所定タイミングよりも後であり且つ前記第2所定タイミングよりも前のタイミングにおいて前記第1カウンタ値を前記第3カウンタ値として選択する選択部と、
前記受光タイミングを含む前記クロック信号の周期において、前記クロック信号の先頭から前記受光タイミングまでの時間又は前記受光タイミングから前記クロック信号の末尾までの時間である端数時間を算出する端数算出部と、
前記第3カウンタ値と、前記端数算出部により算出された前記端数時間とに基づいて、前記パルスレーザ光の往復時間を算出する時間算出部と、
前記パルスレーザ光の速度と前記時間算出部により算出された前記往復時間とに基づいて、前記物体までの距離を算出する距離算出部と、
を備えるレーザレーダ。
【請求項6】
開始タイミングから連続する第1レベルの信号と、前記第1レベルと異なり且つ連続する第2レベルの信号とにより構成された一定周期のクロック信号を発生するクロック発生器と、
前記クロック信号に同期してパルスレーザ光を投光する投光部と、
前記パルスレーザ光が物体により反射された反射光を受光する受光部と、
前記投光部により前記パルスレーザ光が投光された投光タイミングから、前記受光部により前記反射光が受光された受光タイミングまでに対応する前記第1レベルの信号の開始数である第1カウンタ値をカウントする第1カウンタと、
前記投光タイミングから前記受光タイミングまでに対応する前記第2レベルの信号の開始数である第2カウンタ値をカウントする第2カウンタと、
前記クロック信号の各周期において、前記第1レベルの信号の開始タイミングである第1開始タイミングよりも後であり且つ前記第2レベルの信号の開始タイミングである第2開始タイミングよりも前のタイミングである第1所定タイミングよりも、前のタイミングにおいて前記第2カウンタ値を第3カウンタ値として選択し、前記第2レベルの信号の開始タイミングである第2開始タイミングよりも後であり且つ前記第2レベルの信号の終了タイミングよりも前のタイミングである第2所定タイミングよりも、後のタイミングにおいて前記第2カウンタ値を第3カウンタ値として選択し、前記第1所定タイミング以後であり且つ前記第2所定タイミング以前のタイミングにおいて前記第1カウンタ値を前記第3カウンタ値として選択する選択部と、
前記受光タイミングを含む前記クロック信号の周期において、前記クロック信号の先頭から前記受光タイミングまでの時間又は前記受光タイミングから前記クロック信号の末尾までの時間である端数時間を算出する端数算出部と、
前記第3カウンタ値と、前記端数算出部により算出された前記端数時間とに基づいて、前記パルスレーザ光の往復時間を算出する時間算出部と、
前記パルスレーザ光の速度と前記時間算出部により算出された前記往復時間とに基づいて、前記物体までの距離を算出する距離算出部と、
を備えるレーザレーダ。
【請求項7】
入力された信号を遅延させながら伝送する遅延ユニットを複数段接続して構成され、前記クロック信号が連続して入力される遅延回路を備え、
前記端数算出部は、前記受光タイミングを含む前記クロック信号の周期において、前記クロック信号の先頭が最初の前記遅延ユニットに入力されてから前記受光タイミングまでに、前記クロック信号の先頭が伝送された前記遅延ユニットの段数である伝送段数に基づいて前記端数時間を算出する、請求項
1~6のいずれか1項に記載のレーザレーダ。
【請求項8】
前記時間算出部は、前記第3カウンタ値に前記一定周期を掛けた時間と、前記伝送段数に各遅延ユニットが信号を遅延させる遅延時間を掛けた時間との加算値に基づいて、前記パルスレーザ光の往復時間を算出する、請求項
7に記載のレーザレーダ。
【請求項9】
前記遅延ユニットは、前記第1レベルの信号が入力された時に前記第1レベルの信号を出力し、前記第1レベルと異なるレベルの信号が入力された時に前記第2レベルの信号を出力する、請求項
7又は8に記載のレーザレーダ。
【請求項10】
前記端数算出部は、最初の前記遅延ユニットから前記一定周期において前記クロック信号の先頭を伝送可能な前記遅延ユニットまでの出力を含む計測用出力を取得し、最初の前記遅延ユニットから前記計測用出力において前記第1レベルの信号と前記第2レベルの信号とのエッジに対応する前記遅延ユニットまでの段数を前記伝送段数とする、請求項
9に記載のレーザレーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスレーザ光を投光してから、その反射光を受光するまでの時間に基づいて、対象物までの距離を算出するレーザレーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のレーザレーダにおいて、対象物に向けて発信した探信波のピークレベル検出直後のクロック信号立ち上がりから、反射波のピークレベル検出直後のクロック信号の立ち上がりまでにおけるクロック信号の計数値と、反射波のピークレベル検出から直後のクロック信号立ち上がりまでのクロック信号の端数時間とを算出するレーザレーダがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のレーザレーダでは、反射波のピークレベルの検出がクロック信号の立ち上がりと重なった場合に、クロック信号の計数値がクロック信号の立ち上がり前の値と立ち上がり後の値とのいずれの値を取るか不安定となることに、本願発明者は着目した。この場合、クロック信号の端数時間を算出して、探信波の発信から反射波の受信までの時間を正確に算出しようとしても、クロック信号の計数値1(1カウント)に相当する時間誤差が発生するおそれがある。
【0005】
なお、反射波のピークレベルの検出に代えて、反射波の立ち上がりの検出を実行するレーザレーダであっても、反射波の立ち上がりの検出がクロック信号の立ち上がりと重なった場合に、同様の問題が生じ得る。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、クロック信号の計数値により算出した時間とクロック信号の端数時間とに基づいて、パルスレーザ光の往復時間を算出するレーザレーダにおいて、パルスレーザ光の往復時間を正確に算出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の手段は、レーザレーダであって、
開始タイミングから連続する第1レベルの信号と、前記第1レベルと異なり且つ連続する第2レベルの信号とにより構成された一定周期のクロック信号を発生するクロック発生器と、
前記クロック信号に同期してパルスレーザ光を投光する投光部と、
前記パルスレーザ光が物体により反射された反射光を受光する受光部と、
前記投光部により前記パルスレーザ光が投光された投光タイミングから、前記受光部により前記反射光が受光された受光タイミングまでに対応する前記第1レベルの信号の開始数である第1カウンタ値をカウントする第1カウンタと、
前記投光タイミングから前記受光タイミングまでに対応する前記第2レベルの信号の開始数である第2カウンタ値をカウントする第2カウンタと、
前記クロック信号の各周期において、前記第1レベルの信号の開始タイミングである第1開始タイミングよりも後であり且つ前記第2レベルの信号の開始タイミングである第2開始タイミングよりも前のタイミングである所定タイミングよりも、前のタイミングにおいて前記第2カウンタ値を第3カウンタ値として選択し、前記所定タイミングよりも後のタイミングにおいて前記第1カウンタ値を前記第3カウンタ値として選択する選択部と、
前記受光タイミングを含む前記クロック信号の周期において、前記クロック信号の先頭から前記受光タイミングまでの時間又は前記受光タイミングから前記クロック信号の末尾までの時間である端数時間を算出する端数算出部と、
前記第3カウンタ値と、前記端数算出部により算出された前記端数時間とに基づいて、前記パルスレーザ光の往復時間を算出する時間算出部と、
前記パルスレーザ光の速度と前記時間算出部により算出された前記往復時間とに基づいて、前記物体までの距離を算出する距離算出部と、
を備える。
【0008】
上記構成によれば、クロック発生器は、開始タイミングから連続する第1レベルの信号と、前記第1レベルと異なり且つ連続する第2レベルの信号とにより構成された一定周期のクロック信号を発生する。投光部は、前記クロック信号に同期してパルスレーザ光を投光する。このため、クロック信号の発生タイミングとレーザ光の投光タイミングとを対応させることができる。受光部は、前記パルスレーザ光が物体により反射された反射光を受光する。第1カウンタは、前記投光部により前記パルスレーザ光が投光された投光タイミングから、前記受光部により前記反射光が受光された受光タイミングまでに対応する前記第1レベルの信号の開始数である第1カウンタ値をカウントする。第2カウンタは、前記投光タイミングから前記受光タイミングまでに対応する前記第2レベルの信号の開始数である第2カウンタ値をカウントする。このため、第1カウンタ及び第2カウンタによってそれぞれカウントされた第1カウンタ値及び第2カウンタ値により、前記投光タイミングから前記受光タイミングまでのおおよその時間を算出することができる。
【0009】
ここで、例えば受光タイミングが第1レベルの信号の開始タイミングである第1開始タイミングと重なった場合は、第1カウンタ値が第1開始タイミングよりも前の値と第1開始タイミングよりも後の値とのいずれの値を取るか不安定となる。一方、この場合に受光タイミングは、第2レベルの信号の開始タイミングである第2開始タイミングと重なっていないため、第2カウンタ値は安定した値となる。この点、選択部は、前記クロック信号の各周期において、第1開始タイミングよりも後であり且つ第2開始タイミングよりも前のタイミングである所定タイミングよりも、前のタイミングにおいて前記第2カウンタ値を第3カウンタ値として選択し、前記所定タイミングよりも後のタイミングにおいて前記第1カウンタ値を前記第3カウンタ値として選択する。したがって、受光タイミングが第1開始タイミングと重なった場合は、第2カウンタ値が第3カウンタ値として選択され、第3カウンタ値を安定した値とすることができる。同様に、受光タイミングが第2開始タイミングと重なった場合は、第1カウンタ値が第3カウンタ値として選択され、第3カウンタ値を安定した値とすることができる。
【0010】
端数算出部は、前記受光タイミングを含む前記クロック信号の周期において、前記クロック信号の先頭から前記受光タイミングまでの時間又は前記受光タイミングから前記クロック信号の末尾までの時間である端数時間を算出する。時間算出部は、前記第3カウンタ値と、前記端数算出部により算出された前記端数時間とに基づいて、前記パルスレーザ光の往復時間を算出する。したがって、クロック信号の計数値である第3カウンタ値により算出した時間と、クロック信号の端数時間とに基づいて、パルスレーザ光の往復時間を算出するレーザレーダにおいて、パルスレーザ光の往復時間を正確に算出することができる。そして、距離算出部は、前記パルスレーザ光の速度と前記時間算出部により算出された前記往復時間とに基づいて、前記物体までの距離を正確に算出することができる。
【0011】
第1の手段の選択部のみを、以下のように変更した第2の手段を採用することもできる。第2の手段では、選択部は、前記クロック信号の各周期において、前記第1レベルの信号の開始タイミングである第1開始タイミングよりも後であり且つ前記第2レベルの信号の開始タイミングである第2開始タイミングよりも前のタイミングである第1所定タイミングよりも、前のタイミングにおいて前記第2カウンタ値を第3カウンタ値として選択し、前記第2レベルの信号の開始タイミングである第2開始タイミングよりも後であり且つ前記第2レベルの信号の終了タイミングよりも前のタイミングである第2所定タイミングよりも、後のタイミングにおいて前記第2カウンタ値を第3カウンタ値として選択し、前記第1所定タイミングよりも後であり且つ前記第2所定タイミングよりも前のタイミングにおいて前記第1カウンタ値を前記第3カウンタ値として選択する。
【0012】
上記構成によっても、受光タイミングが第1開始タイミングと重なった場合は、第2カウンタ値が第3カウンタ値として選択され、第3カウンタ値を安定した値とすることができる。同様に、受光タイミングが第2開始タイミングと重なった場合は、第1カウンタ値が第3カウンタ値として選択され、第3カウンタ値を安定した値とすることができる。したがって、クロック信号の計数値である第3カウンタ値により算出した時間と、クロック信号の端数時間とに基づいて、パルスレーザ光の往復時間を算出するレーザレーダにおいて、パルスレーザ光の往復時間を正確に算出することができる。
【0013】
第3の手段では、入力された信号を遅延させながら伝送する遅延ユニットを複数段接続して構成され、前記クロック信号が連続して入力される遅延回路を備え、前記端数算出部は、前記受光タイミングを含む前記クロック信号の周期において、前記クロック信号の先頭が最初の前記遅延ユニットに入力されてから前記受光タイミングまでに、前記クロック信号の先頭が伝送された前記遅延ユニットの段数である伝送段数に基づいて前記端数時間を算出する。
【0014】
上記構成によれば、遅延回路は、入力された信号を遅延させながら伝送する遅延ユニットを複数段接続して構成され、前記クロック信号が連続して入力される。このため、最初の遅延ユニットにクロック信号の先頭から入力され、続く遅延ユニットへ順次伝送される。そして、最初の遅延ユニットにクロック信号の末尾まで入力されると、再び最初の遅延ユニットにクロック信号の先頭から入力されることが繰り返される。したがって、遅延回路において最初の遅延ユニットからクロック信号の先頭が伝送された遅延ユニットの段数は、前記クロック信号の先頭から前記受光タイミングまでの時間である上記端数時間を表している。なお、投光タイミングから受光タイミングまでの時間を、遅延回路のみを用いて計測しようとすると、遅延ユニットが多数必要になる。
【0015】
そこで、前記端数算出部は、前記受光タイミングを含む前記クロック信号の周期において、前記クロック信号の先頭が最初の前記遅延ユニットに入力されてから前記受光タイミングまでに、前記クロック信号の先頭が伝送された前記遅延ユニットの段数である伝送段数に基づいて前記端数時間を算出する。そして、時間算出部は、前記第3カウンタ値と、前記端数算出部により算出された前記端数時間とに基づいて、前記パルスレーザ光の往復時間を算出する。このため、遅延ユニットが多数必要になることを抑制しつつ、パルスレーザ光の往復時間を正確に算出することができる。
【0016】
ところで、パルス遅延回路に起動用パルスを入力し、停止用パルスが入力された時にラッチした全ての遅延ユニットの出力に基づいて、端数時間を計測するレーザレーダでは、遅延回路を用いて微小時間を計測した後に、次に遅延回路を用いて微小時間を計測するためには、全ての遅延ユニットの出力をリセットする必要がある。
【0017】
この点、複数段の遅延ユニットは、一定周期のクロック信号を繰り返し伝送し続ける。このため、遅延回路を用いて微小時間を計測した後に、次に遅延回路を用いて微小時間を計測するまでに、全ての遅延ユニットの出力をリセットする必要がない。このため、レーザレーダから対象物までの間に存在する煙や粉塵等からの反射光を受光して微小時間の計測が実行され、連続して対象物からの反射光を受光した場合であっても、微小時間の計測を連続して実行することができる。そして、距離算出部は、前記パルスレーザ光の速度と前記時間算出部により算出された前記往復時間とに基づいて、前記物体までの距離を算出する。したがって、反射光を連続して受光した場合であっても、対象物までの距離を算出することができる。
【0018】
具体的には、第4の手段のように、前記時間算出部は、前記第3カウンタ値に前記一定周期を掛けた時間と、前記伝送段数に各遅延ユニットが信号を遅延させる遅延時間を掛けた時間との加算値に基づいて、前記パルスレーザ光の往復時間を算出する、といった構成を採用することができる。
【0019】
第5の手段では、前記遅延ユニットは、前記第1レベルの信号が入力された時に前記第1レベルの信号を出力し、前記第1レベルと異なるレベルの信号が入力された時に前記第2レベルの信号を出力する。こうした構成によれば、一定周期のクロック信号と同一の信号を、複数段の遅延ユニットにより繰り返し伝送し続けることができ、クロック信号の先頭を遅延ユニットにより順次伝送することができる。したがって、端数算出部は、受光タイミングを含む前記クロック信号の周期における上記伝送段数に基づいて、前記端数時間を算出することができる。
【0020】
第6の手段では、前記端数算出部は、最初の前記遅延ユニットから前記一定周期において前記クロック信号の先頭を伝送可能な前記遅延ユニットまでの出力を含む計測用出力を取得し、最初の前記遅延ユニットから前記計測用出力において前記第1レベルの信号と前記第2レベルの信号とのエッジに対応する前記遅延ユニットまでの段数を前記伝送段数とする、請求項5に記載のレーザレーダ。
【0021】
上記構成によれば、前記端数算出部は、最初の前記遅延ユニットから前記一定周期において前記クロック信号の先頭を伝送可能な前記遅延ユニットまでの出力を含む計測用出力を取得する。このため、クロック信号の一定周期において、クロック信号の先頭が伝送された遅延ユニットの段数を算出するために必要な情報を取得することができる。そして、端数算出部は、最初の前記遅延ユニットから前記計測用出力において前記第1レベルの信号と前記第2レベルの信号とのエッジに対応する前記遅延ユニットまでの段数を前記伝送段数とすることで、伝送段数を容易に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】第1実施形態のFPGAの構成を示すブロック図。
【
図4】パルスレーザ光の往復時間を算出する態様を示すタイムチャート。
【
図5】第2実施形態のFPGAの構成を示すブロック図。
【
図6】パルスレーザ光の往復時間を算出する態様を示すタイムチャート。
【
図7】対象物までの距離と計測時間との関係を示すグラフ。
【
図8】パルスレーザ光の往復時間を算出する態様の変更例を示すタイムチャート。
【
図9】パルスレーザ光の往復時間を算出する態様の他の変更例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、対象物までの距離を算出するレーザレーダに具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1に示すように、レーザレーダ10は、投光部20、受光部30等を備えている。投光部20は、クロック信号に同期したSTART信号によりパルスレーザ光を投光する。受光部30は、パルスレーザ光が対象物T(物体)により反射された反射光を受光し、反射光を検知した時にSTOP信号を出力する。レーザレーダ10は、パルスレーザ光の速度である光速に、START信号からSTOP信号までの時間(パルスレーザ光の往復時間T1)を2で割った時間を掛けて、レーザレーダ10から対象物Tまでの距離を算出する。
【0025】
図2は、往復時間T1を算出するFPGA(Field Programmable Gate Array)40の構成を示すブロック図である。FPGA40は、レーザレーダ10に搭載されている。FPGA40は、クロック発生器41、カウンタ42、遅延回路44、サンプリング部46、エンコーダ47、統合部48等を備えている。
【0026】
クロック発生器41は、例えば400[MHz](数百[MHz])、すなわち2.5[ns]周期(一定周期)のクロック信号を発生する。クロック信号は、1.25[ns]の「1」(Highレベル、第1レベル)の信号と、続く1.25[ns]の「0」(Lowレベル、第2レベル)の信号とにより構成されている。すなわち、クロック信号は、開始タイミングから連続する第1レベルの信号と、第1レベルと異なり且つ連続する第2レベルの信号とにより構成されている。
【0027】
カウンタ42は、クロック信号の発生タイミング(先頭)に同期したSTART信号を入力したタイミングから、STOP信号を入力したタイミングまでに発生されたクロック信号の数であるカウンタ値をカウントする。すなわち、カウンタ42は、投光部20によりパルスレーザ光が投光された投光タイミングから、受光部30により反射光が受光された受光タイミングまでに発生されたクロック信号の数をカウントする。受光部30は、反射光の強度が判定値Irを超えた時に反射光を検知し、その時が受光タイミングとなる。カウンタ値は、0から開始して受光タイミングまで、クロック信号の「0」から「1」への立ち上がりエッジ(立ち上がり)を検出した時に値が1増加される。カウンタ42は、カウンタ値にクロック信号の周期を掛けた時間であるカウンタ時間T2を算出する。カウンタ42は、算出したカウンタ時間T2を統合部48へ出力する。
【0028】
遅延回路44は、直列に接続された複数の遅延ユニット44a,44b,44c,・・・を備えている。各遅延ユニットは、入力された信号を遅延させながら伝送する。遅延回路44は、入力された信号を、クロック信号の1周期よりも長い時間遅延させることが可能な数の遅延ユニットを備えている。すなわち、最初の遅延ユニット44aに信号の先頭が入力されてからクロック信号の1周期が経過した時に、信号の先頭は最後の遅延ユニットまで到達していない。
【0029】
各遅延ユニットは、例えば加算器の桁上げ回路により構成され、入力信号を加算して桁上げ信号(キャリー信号)を、次の遅延ユニット及びサンプリング部46へ出力する。各加算器には、前の加算器からのキャリー信号と、「1」とが入力される。最初の遅延ユニット44aには、クロック信号と、「1」とが入力される。このため、各遅延ユニットは、クロック信号が「1」である間はキャリー信号として「1」を出力し、クロック信号が「0」である間はキャリー信号として「0」を出力する。すなわち、各遅延ユニットは、第1レベルの信号が入力された時に第1レベルの信号を出力し、第1レベルと異なるレベルの信号が入力された時に第2レベル(第1レベルと異なるレベル)の信号を出力する。
【0030】
サンプリング部46は、STOP信号を入力した時に、各遅延ユニットの出力をサンプリングする。サンプリング部46は、サンプリングした各遅延ユニットの出力を繋げて、2進数の計測用出力を取得する。例えば、遅延ユニット44a,44b,44c・・・の出力がそれぞれ「1」,「1」,「0」,・・・であれば、計測用出力は110・・・となる。サンプリング部46は、取得した計測用出力をエンコーダ47へ出力する。
【0031】
エンコーダ47は、計測用出力を入力して、計測用出力に基づいて、受光タイミングを含むクロック信号の周期において、クロック信号の先頭から受光タイミングまでの時間である端数時間T3を算出する。
【0032】
具体的には、
図3に示すように、キャリー信号が遅延ユニットにより順次伝送されることにより、計測用信号は時間の経過とともに変化する。例えば、サンプリング部46は、STOP1信号を入力すると、その時の各遅延ユニットの出力をサンプリングして計測用出力を取得する。同図では、「11000001111100000」が計測用出力として取得される。計測用出力において、「10」はクロック信号の「0」から「1」への立ち上がりエッジ、すなわちクロック信号の先頭を表している。
【0033】
このため、エンコーダ47は、取得した計測用出力において左から「10」を探索し、「10」が進んだ段数を算出する。計測用出力において「10」が進んだ段数は、受光タイミングを含むクロック信号の周期において、クロック信号の先頭が最初の遅延ユニット44aに入力されてから受光タイミングまでに、クロック信号の先頭が伝送された遅延ユニットの段数である伝送段数を表している。エンコーダ47は、最初の遅延ユニット44aからクロック信号の1周期においてクロック信号の先頭を伝送可能な遅延ユニットまでの出力を含む計測用出力を取得し、最初の遅延ユニット44aから計測用出力において第1レベルの信号「1」と第2レベルの信号「2」とのエッジに対応する遅延ユニットまでの段数を伝送段数とする。エンコーダ47は、伝送段数に各遅延ユニットが信号を遅延させる遅延時間を掛けて、端数時間T3を算出する。すなわち、エンコーダ47は、計測用出力をエンコードして端数時間T3を算出する。エンコーダ47は、算出した端数時間T3を統合部48へ出力する。なお、サンプリング部46及びエンコーダ47により、端数算出部が構成されている。
【0034】
統合部48は、カウンタ42から入力したカウンタ時間T2と、エンコーダ47から入力した端数時間T3とを加算して、パルスレーザ光の往復時間T1を算出する(T1=T2+T3)。すなわち、統合部48は、カウンタ時間T2と端数時間T3との加算値に基づいて、パルスレーザ光の往復時間T1を算出する。統合部48は、算出したパルスレーザ光の往復時間T1を、距離算出部50へ出力する。距離算出部50は、レーザレーダ10に搭載されている。なお、サンプリング部46、エンコーダ47、及び統合部48により、時間算出部が構成されている。
【0035】
距離算出部50は、パルスレーザ光の速度である光速に、パルスレーザ光の往復時間T1を2で割った時間を掛けて、レーザレーダ10から対象物Tまでの距離を算出する。すなわち、距離算出部50は、パルスレーザ光の速度と、時間算出部により算出されたパルスレーザ光の往復時間T1とに基づいて、物体までの距離を算出する。
【0036】
図4は、パルスレーザ光の往復時間を算出する態様を示すタイムチャートである。
【0037】
時刻t1において、クロック信号の発生に同期してパルスレーザ光が投光され、パルスレーザ光の強度が増加する。カウンタ42は、「0」からカウンタ値のカウントを開始する。クロック信号の1周期においてクロック信号の先頭が伝送された遅延ユニットの段数である伝送段数(キャリー伝送段数)は、クロック信号の1周期にわたって0から増加する。なお、ここでは、クロック信号の1周期において、伝送段数が0から99まで増加する例を示している。
【0038】
時刻t2において、次の周期のクロック信号の先頭が遅延回路44へ入力されると、カウンタ42は、カウンタ値を「0」から「1」へ増加させる。伝送段数は、再び0から99まで増加する。
【0039】
時刻t4において、例えば煙によりパルスレーザ光が反射されて反射光の強度が判定値Irを超えると、反射光が検知されて第1受光タイミングとなる。このとき、カウンタ時間T21は、カウンタ値=nにクロック信号の周期を掛けた時間となる。端数時間T31は、時刻t3から時刻t4までの伝送段数に、各遅延ユニットが信号を遅延させる遅延時間を掛けた時間となる。そして、統合部48は、カウンタ時間T21と端数時間T31とを加算して、パルスレーザ光の往復時間T11を算出する。
【0040】
時刻t6において、例えば対象物Tによりパルスレーザ光が反射されて反射光の強度が判定値Irを超えると、反射光が検知されて第2受光タイミングとなる。このとき、カウンタ時間T22は、カウンタ値=n+1にクロック信号の周期を掛けた時間となる。端数時間T32は、時刻t5から時刻t46での伝送段数に、各遅延ユニットが信号を遅延させる遅延時間を掛けた時間となる。そして、統合部48は、カウンタ時間T22と端数時間T32とを加算して、パルスレーザ光の往復時間T12を算出する。
【0041】
その後、距離算出部50は、パルスレーザ光の速度である光速に、パルスレーザ光の往復時間T11,T12を2で割った時間をそれぞれ掛けて、レーザレーダ10から煙,対象物Tまでの距離をそれぞれ算出する。
【0042】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0043】
・クロック発生器41は、一定周期(2.5[ns]周期)のクロック信号を発生する。投光部20は、クロック信号に同期してパルスレーザ光を投光する。このため、クロック信号の発生タイミングとレーザ光の投光タイミングとを対応させることができる。受光部30は、パルスレーザ光が物体により反射された反射光を受光する。カウンタ42は、投光部20によりパルスレーザ光が投光された投光タイミングから、受光部30により反射光が受光された受光タイミングまでに発生されたクロック信号の数であるカウンタ値をカウントする。このため、カウンタ42によってカウントされたカウンタ値により、投光タイミングから受光タイミングまでのおおよその時間を算出することができる。
【0044】
・遅延回路44は、入力された信号を遅延させながら伝送する複数段の遅延ユニット44a,44b,44c,・・・を接続して構成され、クロック信号が連続して入力される。このため、最初の遅延ユニット44aにクロック信号の先頭から入力され、続く遅延ユニット44b,44c,・・・へ順次伝送される。そして、最初の遅延ユニット44aにクロック信号の末尾まで入力されると、再び最初の遅延ユニット44aにクロック信号の先頭から入力されることが繰り返される。したがって、遅延回路44において最初の遅延ユニット44aからクロック信号の先頭が伝送された遅延ユニットの段数により、クロック信号の先頭が最初の遅延ユニット44aに入力されてからの微小時間を表すことができる。なお、投光タイミングから受光タイミングまでの時間を、遅延回路44のみを用いて計測しようとすると、遅延ユニット44a,44b,44c,・・・が多数必要になる。
【0045】
・時間算出部は、カウンタ42によりカウントされたカウンタ値と、受光タイミングを含むクロック信号の周期において、クロック信号の先頭が最初の遅延ユニット44aに入力されてから受光タイミングまでに、クロック信号の先頭が伝送された遅延ユニットの段数である伝送段数とに基づいて、パルスレーザ光の往復時間を算出する。このため、遅延ユニットが多数必要になることを抑制しつつ、パルスレーザ光の往復時間を正確に算出することができる。
【0046】
・複数段の遅延ユニット44a,44b,44c,・・・は、一定周期のクロック信号を繰り返し伝送し続ける。そして、時間算出部は、カウンタ値と、受光タイミングを含むクロック信号の周期における上記伝送段数に基づいて、パルスレーザ光の往復時間を算出する。このため、遅延回路44を用いて微小時間を計測した後に、次に遅延回路44を用いて微小時間を計測するまでに、全ての遅延ユニット44a,44b,44c,・・・の出力をリセットする必要がない。したがって、レーザレーダ10から対象物Tまでの間に存在する煙や粉塵等からの反射光を受光して微小時間の計測が実行され、連続して対象物Tからの反射光を受光した場合であっても、微小時間の計測を連続して実行することができる。そして、距離算出部50は、パルスレーザ光の速度と時間算出部により算出された往復時間とに基づいて、物体までの距離を算出する。したがって、反射光を連続して受光した場合であっても、対象物Tまでの距離を算出することができる。なお、遅延回路44を用いて微小時間を計測してから、全ての遅延ユニット44a,44b,44c,・・・の出力をリセットするまでには、クロック信号の1~4周期(数周期)が必要となり、特許文献1に記載のレーザレーダではその間は遅延回路44を用いて微小時間を計測することができなくなる。
【0047】
・一定周期のクロック信号は、連続する第1レベルの信号「1」と、第1レベルと異なり且つ連続する第2レベルの信号「0」とにより構成され、遅延ユニット44a,44b,44c,・・・は、第1レベルの信号「1」が入力された時に第1レベルの信号「1」を出力し、第1レベルと異なるレベルの信号が入力された時に第2レベルの信号「0」を出力する。こうした構成によれば、一定周期のクロック信号と同一の信号を、複数段の遅延ユニット44a,44b,44c,・・・により繰り返し伝送し続けることができ、クロック信号の先頭を遅延ユニット44a,44b,44c,・・・により順次伝送することができる。したがって、時間算出部は、受光タイミングを含むクロック信号の周期における上記伝送段数に基づいて、パルスレーザ光の往復時間を算出することができる。
【0048】
・時間算出部は、最初の遅延ユニット44aから一定周期(2.5[ns])においてクロック信号の先頭を伝送可能な遅延ユニットまでの出力を含む計測用出力を取得する。このため、クロック信号の一定周期において、クロック信号の先頭が伝送された遅延ユニットの段数を算出するために必要な情報を取得することができる。そして、時間算出部は、最初の遅延ユニット44aから計測用出力において第1レベルの信号「1」と第2レベルの信号「0」とのエッジに対応する遅延ユニットまでの段数を伝送段数とすることで、伝送段数を容易に算出することができる。
【0049】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態のレーザレーダは、第1カウンタ値をカウントする第1カウンタと、第2カウンタ値をカウントする第2カウンタと、第1カウンタ値及び第2カウンタ値の一方を第3カウンタ値として選択する選択部とを備えている。そして、時間算出部は、第3カウンタ値と、端数算出部により算出された端数時間T3とに基づいて、パルスレーザ光の往復時間T1を算出する。
【0050】
図5に示すように、FPGA140は、第1実施形態のFPGA40のカウンタ42に代えて、カウンタ142と選択部43とを備えている。FPGA140のその他の構成は、FPGA40と同一である。
【0051】
例えば、
図6の時刻t13~t14において、受光タイミング(STOP)がクロック信号の立ち上がり(第1レベルの信号「1」の開始タイミング)である第1開始タイミングと重なった場合は、第1カウンタ値(第1実施形態のカウンタ値と同一)が、第1開始タイミングよりも前の値「0」と第1開始タイミングよりも後の値「1」とのいずれの値を取るか不安定となる。この場合、
図7に示すように、対象物Tまでの距離に応じて、パルスレーザ光の往復時間の計測時間に飛び値が発生するおそれがある。一方、
図6に示すように、この場合に受光タイミングは、クロック信号の立ち下がり(第2レベルの信号「0」の開始タイミング)である第2開始タイミングと重なっていないため、第2カウンタ値(第1カウンタ値とクロック信号の半周期ずれたカウンタ値)は安定した値となる。
【0052】
そこで、カウンタ142は、第1カウンタ142aと第2カウンタ142bとを備えている(
図5参照)。第1カウンタ142aは、投光タイミングから受光タイミングまでのクロック信号の「0」から「1」への立ち上がりエッジ数、すなわち投光タイミングから受光タイミングまでに対応する第1レベルの信号「1」の開始数を、第1カウンタ値としてカウントする。第2カウンタ142bは、投光タイミングから受光タイミングまでのクロック信号の「1」から「0」への立ち下がりエッジ数、すなわち投光タイミングから受光タイミングまでに対応する第2レベルの信号「0」の開始数を、第2カウンタ値としてカウントする。
【0053】
選択部43は、クロック信号の立ち上がり及び立下がりに重ならない位置で、キャリー伝送段数を前と後とに分ける閾値を設定している。キャリー伝送段数の「0」及び「50」付近でクロック信号がそれぞれ立ち上がり及び立下がりとなるため、例えば閾値として「30」を設定している。選択部43は、キャリー伝送段数が「30」以下である場合に第2カウンタ値を第3カウンタ値として選択し、キャリー伝送段数が「30」を超える場合に第1カウンタ値を第3カウンタ値として選択する。すなわち、選択部43は、クロック信号の各周期において、第1レベルの信号「1」の開始タイミングである第1開始タイミングよりも後であり且つ第2レベルの信号「0」の開始タイミングである第2開始タイミングよりも前のタイミングである所定タイミングt12,t15(閾値=30に対応)よりも、前のタイミングにおいて第2カウンタ値を第3カウンタ値として選択し、所定タイミングt12,t15よりも後のタイミングにおいて第1カウンタ値を第3カウンタ値として選択する。そして、選択部43は、第3カウンタ値にクロック信号の周期を掛けたカウンタ時間T2を統合部48へ出力する(
図5参照)。
【0054】
統合部48は、カウンタ時間T2と、エンコーダ47から入力した端数時間T3とを加算して、パルスレーザ光の往復時間T1を算出する(T1=T2+T3)。
【0055】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。ここでは、第1実施形態と異なる利点のみを述べる。
【0056】
・第1カウンタ142aは、投光部20によりパルスレーザ光が投光された投光タイミングから、受光部30により反射光が受光された受光タイミングまでに対応する第1レベルの信号「1」の開始数である第1カウンタ値をカウントする。第2カウンタ142bは、投光タイミングから受光タイミングまでに対応する第2レベルの信号「0」の開始数である第2カウンタ値をカウントする。このため、第1カウンタ142a及び第2カウンタ142bによってそれぞれカウントされた第1カウンタ値及び第2カウンタ値により、投光タイミングから受光タイミングまでのおおよその時間を算出することができる。
【0057】
・選択部43は、クロック信号の各周期において、第1開始タイミングよりも後であり且つ第2開始タイミングよりも前のタイミングである所定タイミングt12,t15よりも、前のタイミングにおいて第2カウンタ値を第3カウンタ値として選択し、所定タイミングt12,t15よりも後のタイミングにおいて第1カウンタ値を第3カウンタ値として選択する。したがって、受光タイミングが第1開始タイミングと重なった場合は、第2カウンタ値が第3カウンタ値として選択され、第3カウンタ値を安定した値とすることができる。同様に、受光タイミングが第2開始タイミングと重なった場合は、第1カウンタ値が第3カウンタ値として選択され、第3カウンタ値を安定した値とすることができる。
【0058】
・端数算出部は、受光タイミングを含むクロック信号の周期において、クロック信号の先頭から受光タイミングまでの時間である端数時間T3を算出する。時間算出部は、第3カウンタ値と、端数算出部により算出された端数時間T3とに基づいて、パルスレーザ光の往復時間T1を算出する。したがって、クロック信号の計数値である第3カウンタ値により算出したカウンタ時間T2と、クロック信号の端数時間T3とに基づいて、パルスレーザ光の往復時間T1を算出するレーザレーダ10において、パルスレーザ光の往復時間T1を正確に算出することができる。そして、距離算出部50は、パルスレーザ光の速度と時間算出部により算出された往復時間T1とに基づいて、物体までの距離を正確に算出することができる。
【0059】
なお、第2実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第2実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0060】
・第2実施形態の選択部43のみを、以下のように変更することもできる。
図8に示すように、選択部43は、クロック信号の各周期において、第1レベルの信号「1」の開始タイミングである第1開始タイミングよりも後であり且つ第2レベルの信号「0」の開始タイミングである第2開始タイミングよりも前のタイミングである第1所定タイミングt12よりも、前のタイミングにおいて第2カウンタ値を第3カウンタ値として選択し、第2レベルの信号「0」の開始タイミングである第2開始タイミングよりも後であり且つ第2レベルの信号「0」の終了タイミングよりも前のタイミングである第2所定タイミングt22,t25よりも、後のタイミングにおいて第2カウンタ値を第3カウンタ値として選択し、第1所定タイミングよりも後であり且つ第2所定タイミングよりも前のタイミングにおいて第1カウンタ値を第3カウンタ値として選択する。
【0061】
上記構成によっても、受光タイミングが第1開始タイミングと重なった場合は、第2カウンタ値が第3カウンタ値として選択され、第3カウンタ値を安定した値とすることができる。同様に、受光タイミングが第2開始タイミングと重なった場合は、第1カウンタ値が第3カウンタ値として選択され、第3カウンタ値を安定した値とすることができる。したがって、クロック信号の計数値である第3カウンタ値により算出したカウンタ時間T2と、クロック信号の端数時間T3とに基づいて、パルスレーザ光の往復時間T1を算出するレーザレーダ10において、パルスレーザ光の往復時間T1を正確に算出することができる。
【0062】
・
図9に示すように、受光タイミングt32(STOP)を含むクロック信号の周期において、受光タイミングt32からクロック信号の「0」から「1」への立ち上がりタイミングt33までの時間を端数時間T3とし、投光タイミングt31から立ち上がりタイミングt33までの時間をカウンタ時間T2とすることもできる。この場合、カウンタ時間T2から端数時間T3を引くことにより、パルスレーザ光の往復時間T1を算出することができる(T1=T2-T3)。
【0063】
こうした構成であっても、第2実施形態の第1カウンタ142a、第2カウンタ142b、及び選択部43を適用することにより、受光タイミングが第1開始タイミングと重なった場合は、第2カウンタ値が第3カウンタ値として選択され、第3カウンタ値を安定した値とすることができる。同様に、受光タイミングが第2開始タイミングと重なった場合は、第1カウンタ値が第3カウンタ値として選択され、第3カウンタ値を安定した値とすることができる。したがって、クロック信号の計数値である第3カウンタ値により算出したカウンタ時間T2と、クロック信号の端数時間T3とに基づいて、パルスレーザ光の往復時間を算出するレーザレーダ10において、パルスレーザ光の往復時間T1を正確に算出することができる。そして、距離算出部50は、パルスレーザ光の速度と時間算出部により算出された往復時間T1とに基づいて、物体までの距離を正確に算出することができる。
【0064】
・クロック信号において、「1」(Highレベル)の信号を第2レベルの信号と考え、「0」(Lowレベル)の信号を第1レベルの信号と考えることもできる。この場合、
図6において、第1開始タイミングと第2開始タイミングとが入れ替わり、それに対応して所定タイミングの位置が変化し、第1カウンタ値と第2カウンタ値とが入れ替わる。こうした構成によっても、第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
なお、第1,第2実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第1,第2実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0066】
・クロック信号において、「1」(Highレベル)の信号の長さと「0」(Lowレベル)の信号の長さとの比は任意である。
【0067】
・START信号の発生からパルスレーザ光が投光されるまでの時間、カウンタ42,第1カウンタ142a,第2カウンタ142bによりカウンタ時間T2,T21,T22を算出する処理時間、エンコーダ47の処理時間、統合部48の処理時間、反射光の強度による受光タイミングの変化の少なくとも1つを考慮して、パルスレーザ光の往復時間T1を補正することもできる。
【0068】
・遅延ユニット44a,44b,44c,・・・として、入力信号を加算して桁上げ信号(キャリー信号)出力する加算器に限らず、入力信号をそのまま出力するバッファ回路等を採用することもできる。
【0069】
・カウンタ値は、0から開始する構成に限らず、1から開始する構成であってもよい。その場合は、カウンタ時間T2を算出する際に、カウンタ値から1を引いた値にクロック信号の周期を掛ければよい。
【0070】
・反射光の受光タイミングとして、反射光の強度が判定値Irを超えた時に限らず、反射光の強度がピーク値(最大値)となった時を採用することもできる。
【符号の説明】
【0071】
10…レーザレーダ、20…投光部、30…受光部、40…FPGA、41…クロック発生器、42…カウンタ、43…選択部、44…遅延回路、44a…遅延ユニット、44b…遅延ユニット、44c…遅延ユニット、46…サンプリング部、47…エンコーダ、48…統合部、50…距離算出部、140…FPGA、142…カウンタ、142a…第1カウンタ、142b…第2カウンタ。