(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20241009BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241009BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20241009BHJP
C23C 16/505 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
H05H1/46 L
H01L21/31 C
H01L21/302 101C
C23C16/505
(21)【出願番号】P 2020196606
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】松尾 大輔
(72)【発明者】
【氏名】安東 靖典
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06028285(US,A)
【文献】特開2013-020871(JP,A)
【文献】特開2020-181656(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0079042(US,A1)
【文献】特開2011-096687(JP,A)
【文献】特開2012-033960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H01L 21/31
H01L 21/3065
C23C 16/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器と、
前記真空容器の外部に設けられて高周波電流が流れるアンテナと、
前記真空容器の前記アンテナに臨む位置に形成された開口を塞ぐ高周波窓とを備え、
前記アンテナが、
高周波電流の流れる方向が互いに逆向きの往路導体及び復路導体を有し、
前記往路導体及び前記復路導体の相対距離を部分的に調整する距離調整機構をさらに備え
、
前記距離調整機構は、
前記復路導体を把持しながら前記往路導体に対して進退可能な把持部、又は、前記往路導体を把持しながら前記復路導体に対して進退可能な把持部を有する、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記距離調整機構が、前記復路導体の位置を調整するものである、請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記距離調整機構が、前記復路導体の複数箇所の位置を調整するものである、請求項2記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記往路導体が前記復路導体よりも前記真空容器の近くに配置されている、請求項1乃至3のうち何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記復路導体を被服する誘電体チューブと、
前記誘電体チューブ内に設けられて、前記誘電体チューブ内において前記復路導体を位置決めする位置決め部材とをさらに備える、請求項1乃至4のうち何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記誘電体チューブ内に冷却水が流れる、請求項5記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記位置決め部材が、前記誘電体チューブ内の複数箇所に設けられており、
前記各位置決め部材は、前記冷却水が流れる流通孔を有している、請求項6記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記冷却水が前記誘電体チューブ内を蛇行しながら流れる、請求項7記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のプラズマ処理装置としては、特許文献1に示すように、高周波電流が流れるアンテナを、高周波電流の往路となる導体と、往路から折り返されて高周波電流の復路となる導体とから構成したものがある。
【0003】
このようにアンテナを途中で折り返してなる往復導体により構成することで、往路と復路とに流れる高周波電流が互いに逆向きとなるので、往路に流れる高周波電流により生じる磁場と、復路に流れる高周波電流により生じる磁場とが互いに打ち消し合うことになる。
【0004】
そこで、特許文献1に示すプラズマ処理装置では、アンテナの中央部における往復導体の間隔よりも、両端部における往復導体の間隔を大きくし、アンテナの中央部よりも両端部の実効インピーダンスが相対的に大きくなるようにしている。これにより、アンテナの中央部よりも両端部からプラズマに供給する磁場エネルギーを相対的に大きくし、アンテナの長手方向に沿ったプラズマ密度分布の均一化を図っている。
【0005】
しかしながら、上述した構成では、アンテナの長手方向に沿ったプラズマ密度分布を大まかには均一化できるものの、部分的に細やかに調整することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本願発明は、かかる問題を解決するべくなされたものであり、アンテナの長手方向に沿ったプラズマ密度分布を細やかに調整できるようにして、プラズマ密度分布のさらなる均一化を図ることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係るプラズマ処理装置は、真空容器と、前記真空容器の外部に設けられて高周波電流が流れるアンテナと、前記真空容器の前記アンテナに臨む位置に形成された開口を塞ぐ高周波窓とを備え、前記アンテナが、高周波電流の流れる方向が互いに逆向きの往路導体及び復路導体を有し、前記往路導体及び前記復路導体の相対距離を部分的に調整する距離調整機構をさらに備えることを特徴とするものである。
【0009】
このように構成されたプラズマ処理装置によれば、距離調整機構が、往路導体及び復路導体の相対距離を部分的に調整するので、アンテナの長手方向に沿ったプラズマ密度分布を細やかに調整することができ、プラズマ密度分布のさらなる均一化を図れる。
【0010】
仮に復路導体を設けることなく、往路導体を流れた高周波電流を真空容器等の接地電位の構造物を介して電源へ戻そうとすると、その戻り経路を流れる高周波電流は、発熱による電力損失を生じるに過ぎず、プラズマ生成に有効に用いられない。
そこで、復路導体を流れる高周波電流を有効に活用するためには、前記距離調整機構が、前記復路導体の位置を調整するものであることが好ましい。
これならば、復路導体を流れる高周波電流によりプラズマ密度分布を調整できるので、復路導体を流れる高周波電流をプラズマ生成に有効に活用することができる。
【0011】
アンテナの長手方向に沿ったプラズマ密度分布をより細やかに調整できるようにするためには、前記距離調整機構が、前記復路導体の複数箇所の位置を調整するものであることが好ましい。
【0012】
前記往路導体が前記復路導体よりも前記真空容器の近くに配置されていることが好ましい。
これならば、往路導体から真空容器内までの距離を短くすることができ、往路導体から生じた高周波磁場を効率良く真空容器内に供給することができる。
【0013】
前記復路導体を被服する誘電体チューブと、前記誘電体チューブ内に設けられて、前記誘電体チューブ内において前記復路導体を位置決めする位置決め部材とをさらに備えることが好ましい。
これならば、誘電体チューブを外力で容易に変形させることができるので、プラズマ密度分布の部分的な調整を簡単に行うことがでる。
しかも、復路導体が位置決め部材により誘電体チューブ内で位置決めされているので、往路導体と復路導体との相対距離をより精度良く調整することができ、ひいてはアンテナの長手方向に沿ったプラズマ密度分布をより細かやかに調整することが可能となる。
【0014】
復路導体を流れる高周波電流による発熱が誘電体チューブを損傷させる懸念される。
そこで、前記誘電体チューブ内に冷却水が流れることが好ましい。
これならば、誘電体チューブによる距離調整の簡素化を担保しつつ、この誘電体チューブの冷却機能をも発揮させることができる。
【0015】
より具体的な実施態様としては、前記位置決め部材が、前記誘電体チューブ内の複数箇所に設けられており、前記各位置決め部材は、前記冷却水が流れる流通孔を有している態様を挙げることができる。
【0016】
冷却水による冷却効果を向上させるためには、前記冷却水が前記誘電体チューブ内を蛇行しながら流れることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
このように構成した本発明によれば、アンテナの長手方向に沿ったプラズマ密度分布を細やかに調整できるようにして、プラズマ密度分布のさらなる均一化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す縦断面図。
【
図2】同第1実施形態のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す横断面図。
【
図3】同第1実施形態における距離調整機構の構成を示す模式図。
【
図4】第2実施形態における復路導体の構成を示す模式図。
【
図5】同第2実施形態における位置決め部材の構成を示す模式図。
【
図6】同第2実施形態における位置決め部材の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下に、本発明に係るプラズマ処理装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
<装置構成>
本実施形態のプラズマ処理装置100は、誘導結合型のプラズマPを用いて基板Wに処理を施すものである。ここで、基板Wは、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板、フレキシブルディスプレイ用のフレキシブル基板等である。また、基板Wに施す処理は、例えば、プラズマCVD法による膜形成、エッチング、アッシング、スパッタリング等である。
【0021】
なお、このプラズマ処理装置100は、プラズマCVD法によって膜形成を行う場合はプラズマCVD装置、エッチングを行う場合はプラズマエッチング装置、アッシングを行う場合はプラズマアッシング装置、スパッタリングを行う場合はスパッタリング装置とも呼ばれる。
【0022】
具体的にプラズマ処理装置100は、
図1及び
図2に示すように、真空排気され且つガスGが導入される真空容器1と、真空容器1の内部にプラズマを発生させるプラズマ源200とを具備してなり、プラズマ源200は、真空容器1の外部に設けられたアンテナ2と、アンテナ2に高周波を印加する高周波電源3とを備えたものである。かかる構成において、アンテナ2に高周波電源3から高周波を印加することによりアンテナ2には高周波電流IRが流れて、真空容器1内に誘導電界が発生して誘導結合型のプラズマPが生成される。
【0023】
真空容器1は、例えば金属製の容器であり、その壁(ここでは上壁1a)には、厚さ方向に貫通する開口1xが形成されている。この真空容器1は、ここでは電気的に接地されており、その内部は真空排気装置4によって真空排気される。
【0024】
また、真空容器1内には、例えば流量調整器(図示省略)や真空容器1に設けられた1又は複数のガス導入口10Pを経由して、ガスGが導入される。ガスGは、基板Wに施す処理内容に応じたものにすれば良い。例えば、プラズマCVD法によって基板に膜形成を行う場合には、ガスGは、原料ガス又はそれを希釈ガス(例えばH2)で希釈したガスである。より具体例を挙げると、原料ガスがSiH4の場合はSi膜を、SiH4+NH3の場合はSiN膜を、SiH4+O2の場合はSiO2膜を、SiF4+N2の場合はSiN:F膜(フッ素化シリコン窒化膜)を、それぞれ基板上に形成することができる。
【0025】
この真空容器1の内部には、基板Wを保持する基板ホルダ5が設けられている。この例のように、基板ホルダ5にバイアス電源6からバイアス電圧を印加するようにしても良い。バイアス電圧は、例えば負の直流電圧、負のバイアス電圧等であるが、これに限られるものではない。このようなバイアス電圧によって、例えば、プラズマP中の正イオンが基板Wに入射する時のエネルギーを制御して、基板Wの表面に形成される膜の結晶化度の制御等を行うことができる。基板ホルダ5内に、基板Wを加熱するヒータ51を設けておいても良い。
【0026】
アンテナ2は、
図1及び
図2に示すように、真空容器1に形成された開口1xに臨むように配置されている。なお、アンテナ2の本数は1本に限らず、複数本のアンテナ2を設けても良い。
【0027】
アンテナ2は、
図2に示すように、その一端部である給電端部2aが、整合回路31を介して高周波電源3が接続されており、他端部である終端部2bが、直接接地されている。なお、終端部2bは、コンデンサ又はコイル等を介して接地されてもよい。
【0028】
高周波電源3は、整合回路31を介してアンテナ2に高周波電流IRを流すことができる。高周波の周波数は例えば一般的な13.56MHzであるが、これに限られるものではなく適宜変更してもよい。
【0029】
ここで、本実施形態のプラズマ源200は、真空容器1の壁(上壁1a)に形成された開口1xを真空容器1の外側から塞ぐスリット板7と、スリット板7に形成されたスリット7xを真空容器1の外側から塞ぐ誘電体板8とをさらに備えている。
【0030】
スリット板7は、その厚み方向に貫通してなるスリット7xが形成されたものであり、アンテナ2から生じた高周波磁場を真空容器1内に透過させるとともに、真空容器1の外部から真空容器1の内部への電界の入り込みを防ぐものである。
【0031】
具体的にこのスリット板7は、
図3に示すように、具体的には互いに平行な複数のスリット7xが形成された平板状のものであり、後述する誘電体板よりも機械強度が高いことが好ましく、誘電体板よりも厚み寸法が大きいことが好ましい。
【0032】
より具体的に説明すると、スリット板7は、例えばCu、Al、Zn、Ni、Sn、Si、Ti、Fe、Cr、Nb、C、Mo、W又はCoを含む群から選択される1種の金属又はそれらの合金(例えばステンレス合金、アルミニウム合金等)等の金属材料を圧延加工(例えば冷間圧延や熱間圧延)などにより製造したものであり、例えば厚みが約5mmのものである。ただし、製造方法や厚みはこれに限らず仕様に応じて適宜変更して構わない。
【0033】
誘電体板8は、スリット板7の外向き面(真空容器1の内部を向く内向き面の裏面)に設けられて、スリット板のスリットを塞ぐものである。
【0034】
誘電体板8は、全体が誘電体物質で構成された平板状をなすものであり、例えばアルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素等のセラミックス、石英ガラス、無アルカリガラス等の無機材料、フッ素樹脂(例えばテフロン)等の樹脂材料等からなる。なお、誘電損を低減する観点から、誘電体板8を構成する材料は、誘電正接が0.01以下のものが好ましく、0.005以下のものがより好ましい。
【0035】
ここでは誘電体板8の板厚をスリット板7の板厚よりも小さくしているが、これに限定されず、例えば真空容器1を真空排気した状態において、スリット7xから受ける真空容器1の内外の差圧に耐え得る強度を備えれば良く、スリット7xの数や長さ等の仕様に応じて適宜設定されてよい。ただし、アンテナ2と真空容器1との間の距離を短くする観点からは薄い方が好ましい。
【0036】
かかる構成により、スリット板7及び誘電体板8は、磁場を透過させる高周波窓(磁場透過窓)9として機能を担う。すなわち、高周波電源3からアンテナ2に高周波を印加すると、アンテナ2から発生した高周波磁場が、スリット板7及び誘電体板8からなる高周波窓9を透過して真空容器1内に形成(供給)される。これにより、真空容器1内の空間に誘導電界が発生し、誘導結合型のプラズマPが生成される。
【0037】
然して、本実施形態では、
図1~
図3に示すように、アンテナ2が、高周波電流IRの流れる方向が互いに逆向きの往路導体21及び復路導体22を有し、プラズマ処理装置100が、
図3に示すように、往路導体21及び復路導体22の相対距離を部分的に調整する距離調整機構10をさらに備えている。
【0038】
まず、往路導体21及び復路導体22について説明する。
本実施形態の往路導体21及び復路導体22は、互いに電気的に接続されており、共通の高周波電源3に接続されている。具体的には、往路導体21は、整合回路31を介して高周波電源3に接続される上述の給電端部2aを有し、復路導体22は、直接接地される上述の終端部2bを有する。
【0039】
本実施形態では、往路導体21及び復路導体22が上下方向に、すなわち真空容器1の開口10xに対して垂直な方向に沿って離間して配置されており、ここでは往路導体21が復路導体22よりも真空容器1の開口10x近くに配置されている。
【0040】
往路導体21は、真空容器1の開口10xに対して平行に延びるものであり、ここではパイプ状の導体である。また、復路導体22は、往路導体21とは逆向きの高周波電流IRが流れるように配置されており、ここではパイプ状の導体である。
【0041】
次に、距離調整機構10について説明する。
距離調整機構10は、往路導体21及び復路導体22の離間方向に沿った離間距離、すなわちここでは往路導体21及び復路導体22の上下方向に沿った離間距離を部分的に調整するものである。
【0042】
本実施形態の距離調整機構10は、復路導体22の位置を調整することにより上述した離間距離を部分的に調整するものであり、具体的には復路導体22の長手方向に沿った一部分又は複数部分の位置を調整可能に構成されている。
【0043】
より具体的に説明すると、距離調整機構10は、復路導体22の複数箇所を把持しながら往路導体21に対して進退可能な複数の把持部11と、これらの把持部11を独立して移動させるモータ等の図示しない駆動源とを備えている。
【0044】
複数の把持部11は、復路導体22とは電気的に絶縁された絶縁物であり、ここでは上下方向に移動可能なものである。これらの把持部11のうちの1つは、
図3に示すように、真空容器1の開口10xの中央部の直上に配置されており、この把持部11に対して復路導体22の長手方向に沿った対称的な位置に別の把持部11が設けられている。また、本実施形態では、複数の把持部11が等間隔に配置されており、これらは何れも、真空容器1の開口10xに直交する方向から視て、開口10xの内側に設けられている。
【0045】
<第1実施形態の効果>
このように構成した本実施形態のプラズマ処理装置100によれば、距離調整機構10が、往路導体21及び復路導体22の相対距離を部分的に調整するので、アンテナ2の長手方向に沿ったプラズマ密度分布を細やかに調整することができ、プラズマ密度分布のさらなる均一化を図れる。
【0046】
また、距離調整機構10が、復路導体22の位置を調整するので、この復路導体22を流れる高周波電流IRによりプラズマ密度分布を調整でき、復路導体22を流れる高周波電流IRをプラズマ生成に有効に活用することができる。
【0047】
さらに、距離調整機構10が、復路導体22の複数箇所の位置を調整するので、アンテナ2の長手方向に沿ったプラズマ密度分布をより細やかに調整することができる。
【0048】
そのうえ、往路導体21が復路導体22よりも真空容器1の近くに配置されているので、往路導体21から真空容器1内までの距離を短くすることができ、往路導体21から生じた高周波磁場を効率良く真空容器1内に供給することができる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、本発明に係るプラズマ処理装置の第2実施形態について、図面を参照して説明する。
【0050】
本実施形態では、復路導体22やその周辺構造が、前記第1実施形態とは相違するので、この相違点について述べる。
【0051】
本実施形態の復路導体22は、
図4に示すように、往路導体21とは逆向きの高周波電流IRが流れるように配置されており、ここでは線状の導体である。
【0052】
そして、この復路導体22は、同
図4に示すように、誘電体チューブ23により被覆されている。
【0053】
誘電体チューブ23は、可撓性を有する誘電体からなり、具体的には例えばテフロンやナイロン等からなるチューブである。
【0054】
誘電体チューブ23の内部には、
図5及び
図6に示すように、誘電体チューブ23内において復路導体22を位置決めする位置決め部材24が設けられている。
【0055】
位置決め部材24は、誘電体からなるものであり、ここでは復路導体22を誘電体チューブ23の中心軸上に位置決めするものである。具体的にこの位置決め部材24は、誘電体チューブ23内にガタ無く嵌め入れられる柱状のものであり、その中心に復路導体22が貫通する貫通孔24Hが形成されている。
【0056】
また、誘電体チューブ23の内部には、
図5に示すように、誘電体チューブ23内において復路導体22を位置決めする第2の位置決め部材25が設けられている。この第2の位置決め部材25は、誘電体からなるものであり、復路導体22を誘電体チューブ23の中心軸上に位置決めするものである。具体的にこの第2の位置決め部材25は、誘電体チューブの中心軸に沿って延びる長尺状のものであり、その中心に復路導体22が貫通する貫通孔が形成されている。
【0057】
本実施形態では、誘電体チューブ23内に冷却水が流れるように構成されている。具体的には、
図5に示すように、誘電体チューブ23内の軸方向に沿った複数箇所に位置決め部材24が設けられており、各位置決め部材24は、冷却水が流れる流通孔24Lを有している。
【0058】
より具体的に説明すると、
図6に示すように、各位置決め部材24は、複数の流通孔24Lを有しており、これらの流通孔24Lは例えば周方向に沿って等間隔に配置されている。そして、互いに隣り合う位置決め部材24の流通孔24Lは、誘電体チューブ23の軸方向から視て重なり合うことなく、ここでは周方向にずれて配置されている。これにより、冷却水は、誘電体チューブ23内を蛇行しながら流れる。
【0059】
<第2実施形態の効果>
このように構成した本実施形態のプラズマ処理装置100によれば、復路導体22を線状のものとし、その復路導体22を誘電体チューブ23により被覆しているので、復路導体22や誘電体チューブ23を外力で容易に変形させることができ、プラズマ密度分布の部分的な調整を簡単に行うことがでる。
【0060】
しかも、復路導体22が位置決め部材24により誘電体チューブ23内で位置決めされているので、往路導体21と復路導体22との相対距離をより精度良く調整することができ、ひいてはアンテナ2の長手方向に沿ったプラズマ密度分布をより細かやかに調整することが可能となる。
【0061】
さらに、冷却水が誘電体チューブ23内を蛇行しながら流れるので、誘電体チューブ23による距離調整の簡素化を担保しつつ、この誘電体チューブ23の冷却機能をも発揮させることができる。
【0062】
[その他の変形実施形態]
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0063】
例えば、前記実施形態では往路導体21及び復路導体22が電気的に接続されている場合について説明したが、これらは必ずしも電気的に接続されている必要はなく、互いに逆向きに高周波電流IRが流れるものであれば、例えば往路導体21及び復路導体22を別々の高周波電源3に接続しても良い。
【0064】
さらに、前記実施形態の距離調整機構10は、復路導体22の位置を調整するものであったが、往路導体21の位置を調整するものであっても良い。
【0065】
加えて、前記実施形態では往路導体21及び復路導体22が上下方向に離間して設けられていたが、例えば真空容器1の開口10Xと平行な方向に沿って離間していても良い。
【0066】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
100・・・プラズマ処理装置
W ・・・基板
P ・・・誘導結合プラズマ
1 ・・・真空容器
10x・・・開口
2 ・・・アンテナ
21 ・・・往路導体
22 ・・・復路導体
23 ・・・誘電体チューブ
24 ・・・位置決め部材
24L・・・流通孔
3 ・・・高周波電源
9 ・・・高周波窓
10 ・・・距離調整機構