IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキン工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】表面処理剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/18 20060101AFI20241009BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20241009BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20241009BHJP
   C09D 183/12 20060101ALI20241009BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241009BHJP
   C08G 65/336 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
C09K3/18 104
C09K3/18 102
C09K3/00 R
C09K3/00 112D
C09K3/00 112E
C09K3/00 112F
C09D5/16
C09D183/12
C09D7/61
C08G65/336
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021002779
(22)【出願日】2021-01-12
(62)【分割の表示】P 2020084870の分割
【原出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021063232
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2019099993
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100188802
【弁理士】
【氏名又は名称】澤内 千絵
(72)【発明者】
【氏名】丸橋 和希
(72)【発明者】
【氏名】小澤 香織
(72)【発明者】
【氏名】三橋 尚志
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-503380(JP,A)
【文献】特開2016-138240(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143433(WO,A1)
【文献】特開2013-144726(JP,A)
【文献】特開2018-193548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/18
C08G 65/00- 65/48
C09D 171/00-171/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)または(2):
【化1】
[式中:
F1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf-R-O-であり;
F2は、-Rf -R-O-であり;
Rfは、 1-16 パーフルオロアルキル基であり;
Rfは、 1-6 パーフルオロアルキレン基であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、
-(OC 12 -(OC 10 -(OC -(OC -(OC -(OCF
[式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は5以上であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基であり;
pは、0または1であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり;
Siは、各出現においてそれぞれ独立して、式(S4):
【化2】
[式中:
d1 は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z -CR 31 p2 32 q2 33 r2 であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、C 1-6 アルキレン基、-(CH z5 -O-(CH z6 -(式中、z5は、0~6の整数であり、z6は、0~6の整数である)、または、-(CH z7 -フェニレン-(CH z8 -(式中、z7は、0~6の整数であり、z8は、0~6の整数である)であり;
31 は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z 2’ -CR 32’ q2’ 33’ r2’ であり;
32 は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z -SiR 34 n2 35 3-n2 であり;
33 は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基またはC 1-20 アルキル基であり;
p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
2’ は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、C 1-6 アルキレン基、-(CH z5’ -O-(CH z6’ -(式中、z5’は、0~6の整数であり、z6’は、0~6の整数である)、または、-(CH z7’ -フェニレン-(CH z8’ -(式中、z7’は、0~6の整数であり、z8’は、0~6の整数である)であり;
32’ は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z -SiR 34 n2 35 3-n2 であり;
33’ は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基またはC 1-20 アルキル基であり;
q2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、C 1-6 アルキレン基、-(CH z5” -O-(CH z6” -(式中、z5”は、0~6の整数であり、z6”は、0~6の整数である)、または、-(CH z7” -フェニレン-(CH z8” -(式中、z7”は、0~6の整数であり、z8”は、0~6の整数である)であり;
34 は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基であり;
35 は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC 1-20 アルキル基であり;
n2は、各出現においてそれぞれ独立して、1~3の整数であり;
e1 は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z -SiR 34 n2 35 3-n2 であり;
f1 は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基またはC 1-20 アルキル基であり;
k2は、0または1であり;
l2は、2または3であり;
m2は、0または1である。]
で表される基であり
は、それぞれ独立して、単結合または下記式:
-(R 51 p5 -(X 51 q5
[式中、
51 は、単結合、または-(CH s5 -であり、
s5は、1~20の整数であり、
51 は、-(X 52 l5 -を表し、
52 は、各出現においてそれぞれ独立して、-O-、-C(O)O-、-CONR 54 -、-O-CONR 54 -、-NR 54 -および-(CH n5 -からなる群から選択される基であり、
54 は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC 1-6 アルキル基であり、
l5は、1~10の整数であり、
p5は、0または1であり、
q5は、0または1であり、
ここに、p5およびq5の少なくとも一方は1であり、p5またはq5を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基であり;
αは、であり;
βは、であり;
γは、である。]
で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物、および塩素イオンを含む表面処理剤であって、該表面処理剤中の塩素イオン濃度が、0.1質量ppm以上1.0質量ppm以下である、表面処理剤。
【請求項2】
は、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)または(f5):
-(OC- (f1)
[式中、dは1~200の整数である。]
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、cおよびdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり;
eおよびfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり;
c、d、eおよびfの和は、10~200の整数であり;
添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCFまたはOCであり;
は、OC、OC、OC、OC10およびOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2または3つの基の組み合わせであり;
gは、2~100の整数である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f4)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、dおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、dおよびeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、請求項に記載の表面処理剤。
【請求項3】
表面処理剤中の塩素イオン濃度が、0.2~0.8質量ppmである、請求項1または2に記載の表面処理剤。
【請求項4】
含フッ素オイル、シリコーンオイル、および触媒から選択される1種またはそれ以上の他の成分をさらに含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の表面処理剤。
【請求項5】
さらに溶媒を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の表面処理剤。
【請求項6】
防汚性コーティング剤または防水性コーティング剤として使用される、請求項1~のいずれか1項に記載の表面処理剤。
【請求項7】
真空蒸着用である、請求項1~のいずれか1項に記載の表面処理剤。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の表面処理剤を含有するペレット。
【請求項9】
基材と、該基材の表面に、請求項1~のいずれか1項に記載の表面処理剤より形成された層とを含む物品。
【請求項10】
光学部材である、請求項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の含フッ素シラン化合物は、基材の表面処理に用いると、優れた撥水性、撥油性、防汚性などを提供し得ることが知られている。含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤から得られる層(以下、「表面処理層」とも言う)は、いわゆる機能性薄膜として、例えばガラス、プラスチック、繊維、建築資材など種々多様な基材に施されている。
【0003】
そのような含フッ素化合物として、パーフルオロポリエーテル基を分子主鎖に有し、Si原子に結合した加水分解可能な基を分子末端または末端部に有するパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物が知られている(特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-218639号公報
【文献】特開2017-082194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む表面処理剤から得られる層は、撥水性、撥油性、防汚性などの機能を薄膜でも発揮し得ることから、光透過性および透明性が求められるメガネやタッチパネルなどの光学部材に好適に利用されている。とりわけ、これら用途においては、繰り返し摩擦を受けてもかかる機能を維持し得るように摩擦耐久性が求められる。
【0006】
本開示は、高い摩擦耐久性を有する層を形成することができるフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物を含んで成る表面処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は以下の態様を含む。
[1]下記式(1)または(2):
【化1】
[式中:
F1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf-R-O-であり;
F2は、-Rf -R-O-であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり;
Rfは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり;
pは、0または1であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり;
Siは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解可能な基、水素原子または1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
少なくとも1つのRSiは、水酸基または加水分解可能な基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
は、それぞれ独立して、単結合または2~10価の有機基であり;
αは、1~9の整数であり;
βは、1~9の整数であり;
γは、それぞれ独立して、1~9の整数である。]
で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物、および塩素イオンを含む表面処理剤であって、該表面処理剤中の塩素イオン濃度が、0.1質量ppm以上1.0質量ppm以下である、表面処理剤。
[2] Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、C1-16パーフルオロアルキル基である、上記[1]に記載の表面処理剤。
[3] Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、C1-6パーフルオロアルキレン基である、上記[1]または[2]に記載の表面処理剤。
[4] Rは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OCFa -(OC-(OCF
[式中、RFaは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の表面処理剤。
[5] RFaは、フッ素原子である、上記[4]に記載の表面処理剤。
[6] Rは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)または(f5):
-(OC- (f1)
[式中、dは1~200の整数である。]
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、cおよびdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり;
eおよびfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり;
c、d、eおよびfの和は、10~200の整数であり;
添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCFまたはOCであり;
は、OC、OC、OC、OC10およびOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2または3つの基の組み合わせであり;
gは、2~100の整数である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f4)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、dおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、dおよびeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の表面処理剤。
[7] RSiは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、または(S4):
【化2】
[式中:
11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基であり;
12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり;
n1は、(SiR11 n112 3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基であり;
13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり;
tは、各出現においてそれぞれ独立して、2~10の整数であり;
14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子であり;
a1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR21 p122 q123 r1であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基であり;
21は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1’-SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’であり;
22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基であり;
23は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり;
p1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
1’は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基であり;
21’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1”-SiR22” q1”23” r1”であり;
22’は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基であり;
23’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり;
p1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
1”は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基であり;
22”は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基であり;
23”は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり;
q1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
b1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基であり;
c1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり;
k1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
d1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-CR31 p232 q233 r2であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子または2価の有機基であり;
31は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z2’-CR32’ q2’33’ r2’であり;
32は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり;
33は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり;
p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
2’は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子または2価の有機基であり;
32’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり;
33’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり;
q2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子または2価の有機基であり;
34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基であり;
35は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり;
n2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
e1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり;
f1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり;
k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。]
で表される基である、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の表面処理剤。
[8] α、β、およびγは、1である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の表面処理剤。
[9] Xは、それぞれ独立して、3価の有機基であり、
αは1かつβは2であるか、αは2かつβは1であり、
γは2である、
上記[1]~[7]のいずれかに記載の表面処理剤。
[10] 表面処理剤中の塩素イオン濃度が、0.2~0.8質量ppmである、上記[1]~[9]のいずれかに記載の表面処理剤。
[11] 含フッ素オイル、シリコーンオイル、および触媒から選択される1種またはそれ以上の他の成分をさらに含有する、上記[1]~[10]のいずれかに記載の表面処理剤。
[12] さらに溶媒を含む、上記[1]~[11]のいずれかに記載の表面処理剤。
[13] 防汚性コーティング剤または防水性コーティング剤として使用される、上記[1]~[12]のいずれかに記載の表面処理剤。
[14] 真空蒸着用である、上記[1]~[13]のいずれかに記載の表面処理剤。
[15] 上記[1]~[14]のいずれかに記載の表面処理剤を含有するペレット。
[16] 基材と、該基材の表面に、上記[1]~[14]のいずれかに記載の表面処理剤より形成された層とを含む物品。
[17] 光学部材である、上記[16]に記載の物品。
【発明の効果】
【0008】
本開示の表面処理剤は、塩素イオン濃度を0.1質量ppm以上1.0質量ppm以下の範囲とすることにより、摩擦耐久性に優れた表面処理層を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において用いられる場合、「1価の有機基」とは、炭素を含有する1価の基を意味する。1価の有機基としては、特に限定されないが、炭化水素基またはその誘導体であり得る。炭化水素基の誘導体とは、炭化水素基の末端または分子鎖中に、1つまたはそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有している基を意味する。尚、単に「有機基」と示す場合、1価の有機基を意味する。また、「2~10価の有機基」とは、炭素を含有する2~10価の基を意味する。かかる2~10価の有機基としては、特に限定されないが、有機基からさらに1~9個の水素原子を脱離させた2~10価の基が挙げられる。例えば、2価の有機基としては、特に限定されるものではないが、有機基からさらに1個の水素原子を脱離させた2価の基が挙げられる。
【0010】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素および水素を含む基であって、炭化水素から1個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、C1-20炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つまたはそれ以上の環構造を含んでいてもよい。
【0011】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基および5~10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0012】
本明細書において、「加水分解可能な基」とは、本明細書において用いられる場合、加水分解反応を受け得る基を意味し、すなわち、加水分解反応により、化合物の主骨格から脱離し得る基を意味する。加水分解可能な基の例としては、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、ハロゲン(これら式中、Rは、置換または非置換のC1-4アルキル基を示す)などが挙げられる。
【0013】
本開示の表面処理剤は、下記式(1)または(2):
【化3】
で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物を含み、表面処理剤中の塩素イオン濃度が、0.1質量ppm以上1.0質量ppm以下である。
【0014】
上記式(1)において、RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf-R-O-である。
【0015】
上記式(2)において、RF2は、-Rf -R-O-である。
【0016】
上記式において、Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基である。
【0017】
上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基における「C1-16アルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基である。
【0018】
上記Rfは、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-16アルキル基であり、より好ましくはCFH-C1-15パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-16パーフルオロアルキル基である。
【0019】
上記C1-16パーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基、具体的には-CF、-CFCF、または-CFCFCFである。
【0020】
上記式において、Rfは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基である。
【0021】
上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基における「C1-6アルキレン基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-3アルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3アルキレン基である。
【0022】
上記Rfは、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-6アルキレン基であり、より好ましくはC1-6パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-3パーフルオロアルキレン基である。
【0023】
上記C1-6パーフルオロアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-3パーフルオロアルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3パーフルオロアルキル基、具体的には-CF-、-CFCF-、または-CFCFCF-である。
【0024】
上記式において、pは、0または1である。一の態様において、pは0である。別の態様においてpは1である。
【0025】
上記式において、qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1である。一の態様において、qは0である。別の態様においてqは1である。
【0026】
上記式(1)および(2)において、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基である。
【0027】
は、好ましくは、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OCFa -(OC-(OCF
[式中:
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上である。a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である。
【0028】
Faは、好ましくは、水素原子またはフッ素原子であり、より好ましくは、フッ素原子である。
【0029】
a、b、c、d、eおよびfは、好ましくは、それぞれ独立して、0~100の整数であってもよい。
【0030】
a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上または20以上であってもよい。a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは60以下であり、例えば50以下または30以下であってもよい。
【0031】
これら繰り返し単位は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよい。例えば、上記繰り返し単位は、-(OC12)-は、-(OCFCFCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCFCFCF)-、-(OCFCF(CF)CFCFCF)-、-(OCFCFCF(CF)CFCF)-、-(OCFCFCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCFCFCF(CF))-等であってもよい。-(OC10)-は、-(OCFCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCFCF)-、-(OCFCF(CF)CFCF)-、-(OCFCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCFCF(CF))-等であってもよい。-(OC)-は、-(OCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCF)-、-(OCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCF(CF))-、-(OC(CFCF)-、-(OCFC(CF)-、-(OCF(CF)CF(CF))-、-(OCF(C)CF)-および-(OCFCF(C))-のいずれであってもよい。-(OC)-(即ち、上記式中、RFaはフッ素原子である)は、-(OCFCFCF)-、-(OCF(CF)CF)-および-(OCFCF(CF))-のいずれであってもよい。-(OC)-は、-(OCFCF)-および-(OCF(CF))-のいずれであってもよい。
【0032】
一の態様において、上記繰り返し単位は直鎖状である。上記繰り返し単位を直鎖状とすることにより、表面処理層の表面滑り性、摩擦耐久性等を向上させることができる。
【0033】
一の態様において、上記繰り返し単位は分枝鎖状である。上記繰り返し単位を分枝鎖状とすることにより、表面処理層の動摩擦係数を大きくすることができる。
【0034】
一の態様において、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)~(f5):
-(OC- (f1)
[式中、dは、1~200の整数である。];
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、cおよびdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下の整数であり、
c、d、eおよびfの和は2以上であり、
添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。];
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCFまたはOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10およびOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。];または
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f4)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、dおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、dおよびeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である。
【0035】
上記式(f1)において、dは、好ましくは5~200、より好ましくは10~100、さらに好ましくは15~50、例えば25~35の整数である。上記式(f1)は、好ましくは、-(OCFCFCF-または-(OCF(CF)CF-で表される基であり、より好ましくは、-(OCFCFCF-で表される基である。
【0036】
上記式(f2)において、eおよびfは、それぞれ独立して、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10~200の整数である。また、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上または20以上であってもよい。一の態様において、上記式(f2)は、好ましくは、-(OCFCFCFCF-(OCFCFCF-(OCFCF-(OCF-で表される基である。別の態様において、式(f2)は、-(OC-(OCF-で表される基であってもよい。
【0037】
上記式(f3)において、Rは、好ましくは、OCである。上記(f3)において、Rは、好ましくは、OC、OCおよびOCから選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、より好ましくは、OCおよびOCから選択される基である。OC、OCおよびOCから独立して選択される2または3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、および-OCOCOC-等が挙げられる。上記式(f3)において、gは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上の整数である。上記gは、好ましくは50以下の整数である。上記式(f3)において、OC、OC、OC、OC10およびOC12は、直鎖または分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、上記式(f3)は、好ましくは、-(OC-OC-または-(OC-OC-である。
【0038】
上記式(f4)において、eは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0039】
上記式(f5)において、fは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0040】
一の態様において、上記Rは、上記式(f1)で表される基である。
【0041】
一の態様において、上記Rは、上記式(f2)で表される基である。
【0042】
一の態様において、上記Rは、上記式(f3)で表される基である。
【0043】
一の態様において、上記Rは、上記式(f4)で表される基である。
【0044】
一の態様において、上記Rは、上記式(f5)で表される基である。
【0045】
上記Rにおいて、fに対するeの比(以下、「e/f比」という)は、0.1~10であり、好ましくは0.2~5であり、より好ましくは0.2~2であり、さらに好ましくは0.2~1.5であり、さらにより好ましくは0.2~0.85である。e/f比を10以下にすることにより、この化合物から得られる表面処理層の滑り性、摩擦耐久性および耐ケミカル性(例えば、人工汗に対する耐久性)がより向上する。e/f比がより小さいほど、表面処理層の滑り性および摩擦耐久性はより向上する。一方、e/f比を0.1以上にすることにより、化合物の安定性をより高めることができる。e/f比がより大きいほど、化合物の安定性はより向上する。
【0046】
一の態様において、上記e/f比は、好ましくは0.2~0.95であり、より好ましくは0.2~0.9である。
【0047】
一の態様において、耐熱性の観点から、上記e/f比は、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.0~2.0である。
【0048】
上記フルオロポリエーテル基含有化合物において、RF1およびRF2部分の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば500~30,000、好ましくは1,500~30,000、より好ましくは2,000~10,000である。本明細書において、RF1およびRF2の数平均分子量は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0049】
別の態様において、RF1およびRF2部分の数平均分子量は、500~30,000、好ましくは1,000~20,000、より好ましくは2,000~15,000、さらにより好ましくは2,000~10,000、例えば3,000~6,000であり得る。
【0050】
別の態様において、RF1およびRF2部分の数平均分子量は、4,000~30,000、好ましくは5,000~10,000、より好ましくは6,000~10,000であり得る。
【0051】
上記式(1)および(2)において、RSiは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解可能な基、水素原子または1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり、少なくとも1つのRSiは、水酸基または加水分解可能な基が結合したSi原子を含む1価の基である。
【0052】
好ましい態様において、RSiは、水酸基または加水分解可能な基が結合したSi原子を含む1価の基である。
【0053】
好ましい態様において、RSiは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、または(S4):
【化4】
で表される基である。
【0054】
上記式中、R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基である。
【0055】
11は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解可能な基である。
【0056】
11は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、またはハロゲン(これら式中、Rは、置換または非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0057】
上記式中、R12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解可能な基を除く1価の有機基である。
【0058】
12において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0059】
上記式中、n1は、(SiR11 n112 3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、RSiが式(S1)または(S2)で表される基である場合、式(1)および式(2)の末端のRSi部分(以下、単に式(1)および式(2)の「末端部分」ともいう)において、n1が1~3である(SiR11 n112 3-n1)単位が少なくとも1つ存在する。即ち、かかる末端部分において、すべてのn1が同時に0になることはない。換言すれば、式(1)および式(2)の末端部分において、水酸基または加水分解可能な基が結合したSi原子が少なくとも1つ存在する。
【0060】
n1は、(SiR11 n112 3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0061】
上記式中、X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基である。かかる2価の有機基は、好ましくはC1-20アルキレン基である。かかるC1-20アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。
【0062】
好ましい態様において、X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または直鎖のC1-6アルキレン基であり、好ましくは単結合または直鎖のC1-3アルキレン基、より好ましくは単結合または直鎖のC1-2アルキレン基であり、さらに好ましくは直鎖のC1-2アルキレン基である。
【0063】
上記式中、R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基である。かかる1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基である。かかるC1-20アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。
【0064】
好ましい態様において、R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または直鎖のC1-6アルキル基であり、好ましくは水素原子または直鎖のC1-3アルキル基、好ましくは水素原子またはメチル基である。
【0065】
上記式中、tは、各出現においてそれぞれ独立して、2~10の整数である。
【0066】
好ましい態様において、tは、各出現においてそれぞれ独立して、2~6の整数である。
【0067】
上記式中、R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子である。かかるハロゲン原子は、好ましくはヨウ素原子、塩素原子またはフッ素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。好ましい態様において、R14は、水素原子である。
【0068】
上記式中、Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR21 p122 q123 r1である。
【0069】
上記Zは、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基である。尚、以下Zとして記載する構造は、右側が(SiR21 p122 q123 r1)に結合する。
【0070】
好ましい態様において、Zは、2価の有機基である。
【0071】
好ましい態様において、Zは、Zが結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。即ち、式(S3)において、(Si-Z-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0072】
上記Zは、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz1-O-(CHz2-(式中、z1は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)または、-(CHz3-フェニレン-(CHz4-(式中、z3は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、およびC2-6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0073】
好ましい態様において、Zは、C1-6アルキレン基または-(CHz3-フェニレン-(CHz4-、好ましくは-フェニレン-(CHz4-である。Zがかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0074】
別の好ましい態様において、上記Zは、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Zは、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Zは、-CHCH-であり得る。
【0075】
上記R21は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1’-SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’である。
【0076】
上記Z1’は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基である。尚、以下Z1’として記載する構造は、右側が(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)に結合する。
【0077】
好ましい態様において、Z1’は、2価の有機基である。
【0078】
好ましい態様において、Z1’は、Z1’が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。即ち、式(S3)において、(Si-Z1’-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0079】
上記Z1’は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz1’-O-(CHz2’-(式中、z1’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)または、-(CHz3’-フェニレン-(CHz4’-(式中、z3’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、およびC2-6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0080】
好ましい態様において、Z1’は、C1-6アルキレン基または-(CHz3’-フェニレン-(CHz4’-、好ましくは-フェニレン-(CHz4’-である。Z1’がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0081】
別の好ましい態様において、上記Z1’は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1’は、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Z1’は、-CHCH-であり得る。
【0082】
上記R21’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1”-SiR22” q1”23” r1”である。
【0083】
上記Z1”は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基である。尚、以下Z1”として記載する構造は、右側が(SiR22” q1”23” r1”)に結合する。
【0084】
好ましい態様において、Z1”は、2価の有機基である。
【0085】
好ましい態様において、Z1”は、Z1”が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。即ち、式(S3)において、(Si-Z1”-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0086】
上記Z1”は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz1”-O-(CHz2”-(式中、z1”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)または、-(CHz3”-フェニレン-(CHz4”-(式中、z3”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、およびC2-6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0087】
好ましい態様において、Z1”は、C1-6アルキレン基または-(CHz3”-フェニレン-(CHz4”-、好ましくは-フェニレン-(CHz4”-である。Z1”がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0088】
別の好ましい態様において、上記Z1”は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1”は、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Z1”は、-CHCH-であり得る。
【0089】
上記R22”は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基である。
【0090】
上記R22”は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解可能な基である。
【0091】
上記R22”は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、またはハロゲン(これら式中、Rは、置換または非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0092】
上記R23”は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解可能な基を除く1価の有機基である。
【0093】
上記R23”において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0094】
上記q1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、上記r1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、q1”とr1”の合計は、(SiR22” q1”23” r1”)単位において、3である。
【0095】
上記q1”は、(SiR22” q1”23” r1”)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0096】
上記R22’は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基である。
【0097】
22’は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解可能な基である。
【0098】
22’は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、またはハロゲン(これら式中、Rは、置換または非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0099】
上記R23’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解可能な基を除く1価の有機基である。
【0100】
23’において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0101】
上記p1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、q1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、r1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p’、q1’とr1’の合計は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位において、3である。
【0102】
一の態様において、p1’は、0である。
【0103】
一の態様において、p1’は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、または3であってもよい。好ましい態様において、p1’は、3である。
【0104】
一の態様において、q1’は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0105】
一の態様において、p1’は0であり、q1’は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0106】
上記R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基である。
【0107】
22は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解可能な基である。
【0108】
22は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、またはハロゲン(これら式中、Rは、置換または非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0109】
上記R23は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解可能な基を除く1価の有機基である。
【0110】
23において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0111】
上記p1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、q1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、r1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p1、q1とr1の合計は、(SiR21 p122 q123 r1)単位において、3である。
【0112】
一の態様において、p1は、0である。
【0113】
一の態様において、p1は、(SiR21 p122 q123 r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、または3であってもよい。好ましい態様において、p1は、3である。
【0114】
一の態様において、q1は、(SiR21 p122 q123 r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0115】
一の態様において、p1は0であり、q1は、(SiR21 p122 q123 r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0116】
上記式中、Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基である。
【0117】
上記Rb1は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解可能な基である。
【0118】
上記Rb1は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、またはハロゲン(これら式中、Rは、置換または非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0119】
上記式中、Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解可能な基を除く1価の有機基である。
【0120】
上記Rc1において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0121】
上記k1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、k1、l1とm1の合計は、(SiRa1 k1b1 l1c1 m1)単位において、3である。
【0122】
一の態様において、k1は、(SiRa1 k1b1 l1c1 m1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2または3、より好ましくは3である。好ましい態様において、k1は、3である。
【0123】
上記式(1)および(2)において、RSiが式(S3)で表される基である場合、好ましくは、式(1)および式(2)の末端部分において、水酸基または加水分解可能な基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0124】
好ましい態様において、式(S3)で表される基は、-Z-SiR22 q123 r1(式中、q1は、1~3の整数であり、好ましくは2または3、より好ましくは3であり、r1は、0~2の整数である。)、-Z1’-SiR22’ q1’23’ r1’(式中、q1’は、1~3の整数であり、好ましくは2または3、より好ましくは3であり、r1’は、0~2の整数である。)、または-Z1”-SiR22” q1”23” r1”(式中、q1”は、1~3の整数であり、好ましくは2または3、より好ましくは3であり、r1”は、0~2の整数である。)のいずれか1つを有する。
【0125】
好ましい態様において、式(S3)において、R21’が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR21’において、q1”は、1~3の整数であり、好ましくは2または3、より好ましくは3である。
【0126】
好ましい態様において、式(S3)において、R21が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR21において、p1’は、0であり、q1’は、1~3の整数であり、好ましくは2または3、より好ましくは3である。
【0127】
好ましい態様において、式(S3)において、Ra1が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのRa1において、p1は、0であり、q1は、1~3の整数であり、好ましくは2または3、より好ましくは3である。
【0128】
好ましい態様において、式(S3)において、k1は2または3、好ましくは3であり、p1は0であり、q1は2または3、好ましくは3である。
【0129】
d1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-CR31 p232 q233 r2である。
【0130】
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子または2価の有機基である。尚、以下Zとして記載する構造は、右側が(CR31 p232 q233 r2)に結合する。
【0131】
好ましい態様において、Zは、2価の有機基である。
【0132】
上記Zは、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz5-O-(CHz6-(式中、z5は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)または、-(CHz7-フェニレン-(CHz8-(式中、z7は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、およびC2-6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0133】
好ましい態様において、Zは、C1-6アルキレン基または-(CHz7-フェニレン-(CHz8-、好ましくは-フェニレン-(CHz8-である。Zがかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0134】
別の好ましい態様において、上記Zは、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Zは、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Zは、-CHCH-であり得る。
【0135】
31は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z2’-CR32’ q2’33’ r2’である。
【0136】
2’は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子または2価の有機基である。尚、以下Z2’として記載する構造は、右側が(CR32’ q2’33’ r2’)に結合する。
【0137】
上記Z2’は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz5’-O-(CHz6’-(式中、z5’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)または、-(CHz7’-フェニレン-(CHz8’-(式中、z7’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、およびC2-6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0138】
好ましい態様において、Z2’は、C1-6アルキレン基または-(CHz7’-フェニレン-(CHz8’-、好ましくは-フェニレン-(CHz8’-である。Z2’がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0139】
別の好ましい態様において、上記Z2’は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z2’は、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Z2’は、-CHCH-であり得る。
【0140】
上記R32’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2である。
【0141】
上記Zは、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子または2価の有機基である。尚、以下Zとして記載する構造は、右側が(SiR34 n235 3-n2)に結合する。
【0142】
一の態様において、Zは酸素原子である。
【0143】
一の態様において、Zは2価の有機基である。
【0144】
上記Zは、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz5”-O-(CHz6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)または、-(CHz7”-フェニレン-(CHz8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、およびC2-6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0145】
好ましい態様において、Zは、C1-6アルキレン基または-(CHz7”-フェニレン-(CHz8”-、好ましくは-フェニレン-(CHz8”-である。Zがかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0146】
別の好ましい態様において、上記Zは、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Zは、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Zは、-CHCH-であり得る。
【0147】
上記R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基である。
【0148】
34は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解可能な基である。
【0149】
34は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、またはハロゲン(これら式中、Rは、置換または非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0150】
上記R35は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解可能な基を除く1価の有機基である。
【0151】
上記R35において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0152】
上記式中、n2は、(SiR34 n235 3-n2)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、RSiが式(S4)で表される基である場合、式(1)および式(2)の末端部分において、n2が1~3である(SiR34 n235 3-n2)単位が少なくとも1つ存在する。即ち、かかる末端部分において、すべてのn2が同時に0になることはない。換言すれば、式(1)および式(2)の末端部分において、水酸基または加水分解可能な基が結合したSi原子が少なくとも1つ存在する。
【0153】
n2は、(SiR34 n235 3-n2)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0154】
上記R33’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解可能な基を除く1価の有機基である。
【0155】
上記R33’において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0156】
一の態様において、R33’は、水酸基である。
【0157】
別の態様において、R33’は、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0158】
上記q2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、上記r2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、q2’とr2’の合計は、(CR32’ q2’33’ r2’)単位において、3である。
【0159】
q2’は、(CR32’ q2’33’ r2’)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0160】
32は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2である。かかる-Z-SiR34 n235 3-n2は、上記R32’における記載と同意義である。
【0161】
上記R33は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解可能な基を除く1価の有機基である。
【0162】
上記R33において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0163】
一の態様において、R33は、水酸基である。
【0164】
別の態様において、R33は、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0165】
上記p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p2、q2およびr2の合計は、(CR31 p232 q233 r2)単位において、3である。
【0166】
一の態様において、p2は、0である。
【0167】
一の態様において、p2は、(CR31 p232 q233 r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、または3であってもよい。好ましい態様において、p2’は、3である。
【0168】
一の態様において、q2は、(CR31 p232 q233 r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0169】
一の態様において、p2は0であり、q2は、(CR31 p232 q233 r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0170】
上記Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2である。かかる-Z-SiR34 n235 3-n2は、上記R32’における記載と同意義である。
【0171】
上記Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解可能な基を除く1価の有機基である。
【0172】
上記Rf1において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0173】
一の態様において、Rf1は、水酸基である。
【0174】
別の態様において、Rf1は、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0175】
上記k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、k2、l2およびm2の合計は、(CRd1 k2e1 l2f1 m2)単位において、3である。
【0176】
一の態様において、RSiが式(S4)で表される基である場合、n2が1~3、好ましくは2または3、より好ましくは3である(SiR34 n235 3-n2)単位は、式(1)および式(2)の各末端部分において、2個以上、例えば2~27個、好ましくは2~9個、より好ましくは2~6個、さらに好ましくは2~3個、特に好ましくは3個存在する。
【0177】
好ましい態様において、式(S4)において、R32’が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR32’において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2または3、より好ましくは3である。
【0178】
好ましい態様において、式(S4)において、R32が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR32において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2または3、より好ましくは3である。
【0179】
好ましい態様において、式(S4)において、Re1が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのRa1において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2または3、より好ましくは3である。
【0180】
好ましい態様において、式(S4)において、k2は0であり、l2は2または3、好ましくは3であり、n2は、2または3、好ましくは3である。
【0181】
一の態様において、RSiは、式(S2)、(S3)または(S4)で表される基である。これらの化合物は、高い表面滑り性を有する表面処理層を形成することができる。
【0182】
一の態様において、RSiは、式(S1)、(S3)または(S4)で表される基である。これらの化合物は、一の末端に複数の加水分解可能な基を有することから、基材に強く密着し、高い摩擦耐久性を有する表面処理層を形成することができる。
【0183】
一の態様において、RSiは、式(S3)または(S4)で表される基である。これらの化合物は、一の末端に、一のSi原子またはC原子から分岐した複数の加水分解可能な基を有し得ることから、さらに高い摩擦耐久性を有する表面処理層を形成することができる。
【0184】
一の態様において、RSiは、式(S1)で表される基である。
【0185】
一の態様において、RSiは、式(S2)で表される基である。
【0186】
一の態様において、RSiは、式(S3)で表される基である。
【0187】
一の態様において、RSiは、式(S4)で表される基である。
【0188】
上記式(1)および(2)において、Xは、主に撥水性および表面滑り性等を提供するフルオロポリエーテル部(RF1およびRF2)と基材との結合能を提供する部(RSi)とを連結するリンカーと解される。従って、当該Xは、式(1)および(2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、単結合であってもよく、いずれの基であってもよい。
【0189】
上記式(1)において、αは1~9の整数であり、βは1~9の整数である。これらαおよびβは、Xの価数に応じて変化し得る。αおよびβの和は、Xの価数と同じである。例えば、Xが10価の有機基である場合、αおよびβの和は10であり、例えばαが9かつβが1、αが5かつβが5、またはαが1かつβが9となり得る。また、Xが2価の有機基である場合、αおよびβは1である。
【0190】
上記式(2)において、γは1~9の整数である。γは、Xの価数に応じて変化し得る。即ち、γは、Xの価数から1を引いた値である。
【0191】
は、それぞれ独立して、単結合または2~10価の有機基であり;
【0192】
上記Xにおける2~10価の有機基は、好ましくは2~8価の有機基である。一の態様において、かかる2~10価の有機基は、好ましくは2~4価の有機基であり、より好ましくは2価の有機基である。別の態様において、かかる2~10価の有機基は、好ましくは3~8価の有機基、より好ましくは3~6価の有機基である。
【0193】
一の態様において、Xは、単結合または2価の有機基であり、αは1であり、βは1である。
【0194】
一の態様において、Xは、単結合または2価の有機基であり、γは1である。
【0195】
一の態様において、Xは3~6価の有機基であり、αは1であり、βは2~5である。
【0196】
一の態様において、Xは3~6価の有機基であり、γは2~5である。
【0197】
一の態様において、Xは、3価の有機基であり、αは1であり、βは2である。
【0198】
一の態様において、Xは、3価の有機基であり、γは2である。
【0199】
が、単結合または2価の有機基である場合、式(1)および(2)は、下記式(1’)および(2’)で表される。
【化5】
【0200】
一の態様において、Xは単結合である。
【0201】
別の態様において、Xは2価の有機基である。
【0202】
一の態様において、Xとしては、例えば、単結合または下記式:
-(R51p5-(X51q5
[式中:
51は、単結合、-(CHs5-またはo-、m-もしくはp-フェニレン基を表し、好ましくは-(CHs5-であり、
s5は、1~20の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~3の整数、さらにより好ましくは1または2であり、
51は、-(X52l5-を表し、
52は、各出現においてそれぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-C(O)O-、-Si(R53-、-(Si(R53O)m5-Si(R53-、-CONR54-、-O-CONR54-、-NR54-および-(CHn5-からなる群から選択される基を表し、
53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1-6アルキル基またはC1-6アルコキシ基を表し、好ましくはフェニル基またはC1-6アルキル基であり、より好ましくはメチル基であり、
54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1-6アルキル基(好ましくはメチル基)を表し、
m5は、各出現において、それぞれ独立して、1~100の整数、好ましくは1~20の整数であり、
n5は、各出現において、それぞれ独立して、1~20の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~3の整数であり、
l5は、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数であり、
p5は、0または1であり、
q5は、0または1であり、
ここに、p5およびq5の少なくとも一方は1であり、p5またはq5を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である]
で表される2価の有機基が挙げられる。ここに、X(典型的にはXの水素原子)は、フッ素原子、C1-3アルキル基およびC1-3フルオロアルキル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。好ましい態様において、Xは、これらの基により置換されていない。
【0203】
好ましい態様において、上記Xは、それぞれ独立して、-(R51p5-(X51q5-R52-である。R52は、単結合、-(CHt5-またはo-、m-もしくはp-フェニレン基を表し、好ましくは-(CHt5-である。t5は、1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。ここに、R52(典型的にはR52の水素原子)は、フッ素原子、C1-3アルキル基およびC1-3フルオロアルキル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。好ましい態様において、R56は、これらの基により置換されていない。
【0204】
好ましくは、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合、
-C1-20アルキレン基、
-R51-X53-R52-、または
-X54-R
[式中、R51およびR52は、上記と同意義であり、
53は、
-O-、
-S-、
-C(O)O-、
-CONR54-、
-O-CONR54-、
-Si(R53-、
-(Si(R53O)m5-Si(R53-、
-O-(CHu5-(Si(R53O)m5-Si(R53-、
-O-(CHu5-Si(R53-O-Si(R53-CHCH-Si(R53-O-Si(R53-、
-O-(CHu5-Si(OCHOSi(OCH-、
-CONR54-(CHu5-(Si(R53O)m5-Si(R53-、
-CONR54-(CHu5-N(R54)-、または
-CONR54-(o-、m-またはp-フェニレン)-Si(R53
(式中、R53、R54およびm5は、上記と同意義であり、
u5は1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。)を表し、
54は、
-S-、
-C(O)O-、
-CONR54-、
-O-CONR54-、
-CONR54-(CHu5-(Si(R54O)m5-Si(R54-、
-CONR54-(CHu5-N(R54)-、または
-CONR54-(o-、m-またはp-フェニレン)-Si(R54
(式中、各記号は、上記と同意義である。)
を表す。]
であり得る。
【0205】
より好ましくは、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合、
-C1-20アルキレン基、
-(CHs5-X53-、
-(CHs5-X53-(CHt5
-X54-、または
-X54-(CHt5
[式中、X53、X54、s5およびt5は、上記と同意義である。]
である。
【0206】
より好ましくは、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合、
-C1-20アルキレン基、
-(CHs5-X53-(CHt5-、または
-X54-(CHt5
[式中、各記号は、上記と同意義である。]
であり得る。
【0207】
好ましい態様において、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合
-C1-20アルキレン基、
-(CHs5-X53-、または
-(CHs5-X53-(CHt5
[式中、
53は、-O-、-CONR54-、または-O-CONR54-であり、
54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1-6アルキル基を表し、
s5は、1~20の整数であり、
t5は、1~20の整数である。]
であり得る。
【0208】
一の態様において、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合、
-C1-20アルキレン基、
-(CHs5-O-(CHt5-、
-(CHs5-(Si(R53O)m5-Si(R53-(CHt5-、
-(CHs5-O-(CHu5-(Si(R53O)m5-Si(R53-(CHt5-、または
-(CHs5-O-(CHt5-Si(R53-(CHu5-Si(R53-(Cv2v)-
[式中、R53、m5、s5、t5およびu5は、上記と同意義であり、v5は1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。]
である。
【0209】
上記式中、-(Cv2v)-は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、例えば、-CHCH-、-CHCHCH-、-CH(CH)-、-CH(CH)CH-であり得る。
【0210】
上記Xは、それぞれ独立して、フッ素原子、C1-3アルキル基およびC1-3フルオロアルキル基(好ましくは、C1-3パーフルオロアルキル基)から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。一の態様において、Xは、非置換である。
【0211】
尚、上記Xは、各式の左側がRF1またはRF2に結合し、右側がRSiに結合する。
【0212】
一の態様において、Xは、それぞれ独立して、-O-C1-6アルキレン基以外であり得る。
【0213】
別の態様において、Xとしては、例えば下記の基が挙げられる:
【化6】
【化7】
[式中、R41は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、炭素数1~6のアルキル基、またはC1-6アルコキシ基、好ましくはメチル基であり;
Dは、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CFO(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH4-、
-CONH-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、および
【化8】
(式中、R42は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6のアルキル基またはC1-6のアルコキシ基、好ましくはメチル基またはメトキシ基、より好ましくはメチル基を表す。)
から選択される基であり、
Eは、-(CH-(nは2~6の整数)であり、
Dは、分子主鎖のRF1またはRF2に結合し、Eは、RSiに結合する。]
【0214】
上記Xの具体的な例としては、例えば:
単結合、
-CHOCH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CF-CH-O-CH-、
-CF-CH-O-(CH-、
-CF-CH-O-(CH-、
-CF-CH-O-(CH-、
-CHO(CHSi(CHOSi(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHOSi(CHOSi(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHO(Si(CHO)Si(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHO(Si(CHO)Si(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHO(Si(CHO)10Si(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHO(Si(CHO)20Si(CH(CH-、
-CHOCFCHFOCF-、
-CHOCFCHFOCFCF-、
-CHOCFCHFOCFCFCF-、
-CHOCHCFCFOCF-、
-CHOCHCFCFOCFCF-、
-CHOCHCFCFOCFCFCF-、
-CHOCHCFCFOCF(CF)CFOCF-、
-CHOCHCFCFOCF(CF)CFOCFCF-、
-CHOCHCFCFOCF(CF)CFOCFCFCF-、
-CHOCHCHFCFOCF-、
-CHOCHCHFCFOCFCF-、
-CHOCHCHFCFOCFCFCF-、
-CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCF-、
-CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCFCF-、
-CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCFCFCF-、
-CHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-CH-、
-CHOCH(CHCHSi(OCHOSi(OCH(CHSi(OCHOSi(OCH(CH-、
-CHOCHCHCHSi(OCHOSi(OCH(CH-、
-CHOCHCHCHSi(OCHCHOSi(OCHCH(CH-、
-CHOCHCHCHSi(OCHOSi(OCH(CH-、
-CHOCHCHCHSi(OCHCHOSi(OCHCH(CH-、
-(CH-Si(CH-(CH-、
-CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-CF-CH-、
-CF-(CH-、
-CF-(CH-、
-CF-(CH-、
-CF-(CH-、
-CF-(CH-、
-CO-、
-CONH-、
-CONH-CH-、
-CONH-(CH-、
-CONH-(CH-、
-CONH-(CH-、
-CONH-(CH-、
-CONH-(CH-、
-CFCONHCH-、
-CFCONH(CH-、
-CFCONH(CH-、
-CFCONH(CH-、
-CFCONH(CH-、
-CFCONH(CH-、
-CON(CH)-CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(Ph)-CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CF-CON(CH)-(CH-、
-CF-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CF-CON(CH)-(CH-、
-CF-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CONH-(CHNH(CH-、
-CONH-(CHNH(CH-、
-CHO-CONH-(CH-、
-CHO-CONH-(CH-、
-S-(CH-、
-(CHS(CH-、
-CONH-(CHSi(CHOSi(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHOSi(CHOSi(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHO(Si(CHO)Si(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHO(Si(CHO)Si(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHO(Si(CHO)10Si(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHO(Si(CHO)20Si(CH(CH-、
-C(O)O-(CH-、
-C(O)O-(CH-、
-CH-O-(CH-Si(CH-(CH-Si(CH-(CH-、
-CH-O-(CH-Si(CH-(CH-Si(CH-CH(CH)-、
-CH-O-(CH-Si(CH-(CH-Si(CH-(CH-、
-CH-O-(CH-Si(CH-(CH-Si(CH-CH(CH)-CH-、
-OCH-、
-O(CH-、
-OCFHCF-、
【化9】

などが挙げられる。
【0215】
さらに別の態様において、Xは、それぞれ独立して、式:-(R16x1-(CFR17y1-(CHz1-で表される基である。式中、x1、y1およびz1は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、x1、y1およびz1の和は1以上であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。
【0216】
上記式中、R16は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、フェニレン、カルバゾリレン、-NR18-(式中、R18は、水素原子または有機基を表す)または2価の有機基である。好ましくは、R18は、酸素原子または2価の極性基である。
【0217】
上記「2価の極性基」としては、特に限定されないが、-C(O)-、-C(=NR19)-、および-C(O)NR19-(これらの式中、R19は、水素原子または低級アルキル基を表す)が挙げられる。当該「低級アルキル基」は、例えば、炭素数1~6のアルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピルであり、これらは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい。
【0218】
上記式中、R17は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または低級フルオロアルキル基であり、好ましくはフッ素原子である。当該「低級フルオロアルキル基」は、例えば、炭素数1~6、好ましくは炭素数1~3のフルオロアルキル基、好ましくは炭素数1~3のパーフルオロアルキル基、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、さらに好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0219】
さらに別の態様において、Xの例として、下記の基が挙げられる:
【化10】
[式中、
41は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、炭素数1~6のアルキル基、またはC1-6アルコキシ基好ましくはメチル基であり;
各X基において、Tのうち任意のいくつかは、分子主鎖のRF1またはRF2に結合する以下の基:
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CFO(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH4-、
-CONH-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、または
【化11】
[式中、R42は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6のアルキル基またはC1-6のアルコキシ基、好ましくはメチル基またはメトキシ基、より好ましくはメチル基を表す。]
であり、別のTのいくつかは、分子主鎖のRSiに結合し、存在する場合、残りのTは、それぞれ独立して、メチル基、フェニル基、C1-6アルコキシ基またはラジカル捕捉基または紫外線吸収基である。
【0220】
ラジカル捕捉基は、光照射で生じるラジカルを捕捉できるものであれば特に限定されないが、例えばベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、安息香酸エステル類、サリチル酸フェニル類、クロトン酸類、マロン酸エステル類、オルガノアクリレート類、ヒンダードアミン類、ヒンダードフェノール類、またはトリアジン類の残基が挙げられる。
【0221】
紫外線吸収基は、紫外線を吸収できるものであれば特に限定されないが、例えばベンゾトリアゾール類、ヒドロキシベンゾフェノン類、置換および未置換安息香酸もしくはサリチル酸化合物のエステル類、アクリレートまたはアルコキシシンナメート類、オキサミド類、オキサニリド類、ベンゾキサジノン類、ベンゾキサゾール類の残基が挙げられる。
【0222】
好ましい態様において、好ましいラジカル捕捉基または紫外線吸収基としては、
【化12】
が挙げられる。
【0223】
この態様において、Xは、それぞれ独立して、3~10価の有機基であり得る。
【0224】
さらに別の態様において、Xの例として、下記の基が挙げられる:
【化13】
[式中、R25、R26およびR27は、それぞれ独立して2~6価の有機基であり、
25は、少なくとも1つのRF1に結合し、R26およびR27は、それぞれ、少なくとも1つのRSiに結合する。]
【0225】
一の態様において、上記R25は、単結合、C1-20アルキレン基、C3-20シクロアルキレン基、C5-20アリーレン基、-R57-X58-R59-、-X58-R59-、または-R57-X58-である。上記、R57およびR59は、それぞれ独立して、単結合、C1-20アルキレン基、C3-20シクロアルキレン基、またはC5-20アリーレン基である。上記X58は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-または-COO-である。
【0226】
一の態様において、上記R26およびR27は、それぞれ独立して、炭化水素、または炭化水素の端または主鎖中にN、OおよびSから選択される少なくとも1つの原子を有する基であり、好ましくは、C1-6アルキル基、-R36-R37-R36-、-R36-CHR38 -などが挙げられる。ここに、R36は、それぞれ独立して、単結合または炭素数1~6のアルキル基、好ましくは炭素数1~6のアルキル基である。R37は、N、OまたはSであり、好ましくはNまたはOである。R38は、-R45-R46-R45-、-R46-R45-または-R45-R46-である。ここに、R45は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基である。R46は、N、OまたはSであり、好ましくはOである。
【0227】
この態様において、Xは、それぞれ独立して、3~10価の有機基であり得る。
【0228】
上記式(1)または式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物は、特に限定されるものではないが、5×10~1×10の平均分子量を有し得る。かかる範囲のなかでも、2,000~32,000、より好ましくは2,500~12,000の平均分子量を有することが、摩擦耐久性の観点から好ましい。なお、かかる「平均分子量」は、数平均分子量を言い、「平均分子量」は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0229】
一の態様において、本開示の表面処理剤中、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、式(1)で表される化合物である。
【0230】
別の態様において、本開示の表面処理剤中、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、式(2)で表される化合物である。
【0231】
別の態様において、本開示の表面処理剤中、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、式(1)で表される化合物および式(2)で表される化合物である。
【0232】
本開示の表面処理剤中、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計に対して、式(2)で表される化合物が、好ましくは0.1モル%以上35モル%以下である。式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計に対する式(2)で表される化合物の含有量の下限は、好ましくは0.1モル%、より好ましくは0.2モル%、さらに好ましくは0.5モル%、さらにより好ましくは1モル%、特に好ましくは2モル%、特別には5モル%であり得る。式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計に対する式(2)で表される化合物の含有量の上限は、好ましくは35モル%、より好ましくは30モル%、さらに好ましくは20モル%、さらにより好ましくは15モル%または10モル%であり得る。式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計に対する式(2)で表される化合物は、好ましくは0.1モル%以上30モル%以下、より好ましくは0.1モル%以上20モル%以下、さらに好ましくは0.2モル%以上10モル%以下、さらにより好ましくは0.5モル%以上10モル%以下、特に好ましくは1モル%以上10モル%以下、例えば2モル%以上10モル%以下または5モル%以上10モル%以下である。式(2)で表される化合物をかかる範囲とすることにより、より摩擦耐久性を向上させることができる。
【0233】
上記の式(1)または(2)で表される化合物は、例えば、上記特許文献1、特許文献2等に記載の方法により得ることができる。
【0234】
本開示の表面処理剤に含まれるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、例えば、Si原子に加水分解可能な基を導入する際に、トリクロロシラン誘導体に対して、加水分解可能な基を導入できる化合物、例えばメタノールを反応させることにより製造される。このように製造された場合、表面処理剤中にはある程度の塩素イオンが存在し得る。本発明者らは、表面処理剤中に含まれる塩素イオンが表面処理剤の機能に影響を与えることに気付いた。特に、表面処理剤中に含まれる塩素イオンが1.0質量ppmを超えると、加水分解可能な基を有するシラン部分の安定性が低下し、基材との反応点が減少し、得られる表面処理層の摩擦耐久性が低下し得る。また、塩素イオンを含むことによる金属腐食の懸念も生じる。さらに、表面処理剤中に含まれる塩素イオンが0.1質量ppm未満になると、塩素イオンが有する触媒効果が十分に得られず、得られる表面処理剤の密着性が低下し、摩擦耐久性が低下し得る。そこで、本発明者らは、表面処理剤中の塩素イオン濃度を所定0.1質量ppm以上1.0質量ppmに調整することにより、上記のような問題を回避できることを見出し、本開示の表面処理剤を発明するに至った
【0235】
本開示の表面処理剤は、表面処理剤中の塩素イオン濃度が、0.1質量ppm以上1.0質量ppm以下である。塩素イオン濃度を1.0質量ppm以下とすることにより、得られる表面処理層の摩擦耐久性を高めることができる。さらに、保存に有利であり、処理時の装置への悪影響、例えば金属部品の腐食を抑制することができる。また、塩素イオン濃度を0.1質量ppm以上とすることにより、得られる表面処理層の摩擦耐久性を高めることができる。
【0236】
上記塩素イオン濃度は、1.0質量ppm以下、好ましくは0.80質量ppm以下、より好ましくは0.70質量ppm以下であり得る。
【0237】
上記塩素イオン濃度は、0.1質量ppm以上、より好ましくは0.2質量ppm以上であり得る。
【0238】
一の態様において、上記塩素イオン濃度は、好ましくは0.20~0.80質量ppm、例えば0.20~0.70質量ppm、0.30~0.80質量ppm、または0.30~0.70質量ppmであり得る。
【0239】
本開示の表面処理剤に含まれる塩素イオン濃度は、イオンクロマトグラフィーにより測定することができる。具体的には、イオンクロマトグラフィーによる塩素イオン濃度の測定は、例えば、イオンクロマトグラフ装置により塩素イオンを測定し、外部標準法により塩素イオン濃度を決定することができる。イオン濃度測定サンプルは、例えば、試料をHFE7300等のハイドロフルオロエーテルで希釈し、ついで、超純粋を加えて水層へ塩素イオンを抽出することにより調製することができる。装置および条件としては、例えば以下のものが例示される。
装置名: Dionex ICS-2100 (Themo SCIENTIFIC)
カラム: Dionex IonPac AS20
温度: 30℃
流速: 1.0mL/min
検出器: 電気伝導度
【0240】
本開示の表面処理剤に含まれる塩素イオン濃度は、塩素イオン濃度が高い組成物を精製することにより、あるいは塩素または塩素イオンを生じる化合物(例えばHCl、-SiCl基を有する化合物)を添加することにより、本開示の表面処理剤における塩素イオン濃度に調製することができる。
【0241】
上記精製方法としては、例えば、塩素イオン濃度が高い組成物に、金属もしくは金属化合物を加え、加熱する方法、過剰量のアルコールで洗浄する方法、金属アルコキシドで処理する方法、または陰イオン性交換樹脂に付す方法が挙げられる。
【0242】
上記金属としては、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム等が挙げられる。
【0243】
上記金属化合物としては、有機金属化合物、好ましくは有機亜鉛化合物、例えばジメチル亜鉛、オクテン酸亜鉛等が挙げられる。
【0244】
上記金属および金属化合物は、好ましくは粉末の形態で用いられる。
【0245】
上記アルコールとしては、エタノール、プロパノール等の炭化水素系アルコールが挙げられる。
【0246】
上記金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、カリウムエトキシド等の塩基性金属アルコキシドが挙げられる。
【0247】
本開示の表面処理剤は、溶媒、含フッ素オイルとして理解され得る(非反応性の)フルオロポリエーテル化合物、好ましくはパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物(以下、まとめて「含フッ素オイル」と言う)、シリコーンオイルとして理解され得る(非反応性の)シリコーン化合物(以下、「シリコーンオイル」と言う)、触媒、界面活性剤、重合禁止剤、増感剤等を含み得る。
【0248】
上記溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、酢酸カルビトール、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル-2-ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチルセルソルブ、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル等のグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール、3-ペンタノール、オクチルアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノール、tert-アミルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート;1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、ジメチルスルホキシド、1,1-ジクロロ-1,2,2,3,3-ペンタフルオロプロパン(HCFC225)、ゼオローラH、HFE7100、HFE7200、HFE7300等のフッ素含有溶媒等が挙げられる。あるいはこれらの2種以上の混合溶媒等が挙げられる。
【0249】
含フッ素オイルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の一般式(3)で表される化合物(パーフルオロ(ポリ)エーテル化合物)が挙げられる。
Rf-(OCa’-(OCb’-(OCc’-(OCFd’-Rf ・・・(3)
式中、Rfは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16アルキル基(好ましくは、C1―16のパーフルオロアルキル基)を表し、Rfは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16アルキル基(好ましくは、C1-16パーフルオロアルキル基)、フッ素原子または水素原子を表し、RfおよびRfは、より好ましくは、それぞれ独立して、C1-3パーフルオロアルキル基である。
a’、b’、c’およびd’は、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロ(ポリ)エーテルの4種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0以上300以下の整数であって、a’、b’、c’およびd’の和は少なくとも1、好ましくは1~300、より好ましくは20~300である。添字a’、b’、c’またはd’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。これら繰り返し単位のうち、-(OC)-は、-(OCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCF)-、-(OCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCF(CF))-、-(OC(CFCF)-、-(OCFC(CF)-、-(OCF(CF)CF(CF))-、-(OCF(C)CF)-および(OCFCF(C))-のいずれであってもよいが、好ましくは-(OCFCFCFCF)-である。-(OC)-は、-(OCFCFCF)-、-(OCF(CF)CF)-および(OCFCF(CF))-のいずれであってもよく、好ましくは-(OCFCFCF)-である。-(OC)-は、-(OCFCF)-および(OCF(CF))-のいずれであってもよいが、好ましくは-(OCFCF)-である。
【0250】
上記一般式(3)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物の例として、以下の一般式(3a)および(3b)のいずれかで示される化合物(1種または2種以上の混合物であってよい)が挙げられる。
Rf-(OCFCFCFb”-Rf ・・・(3a)
Rf-(OCFCFCFCFa”-(OCFCFCFb”-(OCFCFc”-(OCFd”-Rf ・・・(3b)
これら式中、RfおよびRfは上記の通りであり;式(3a)において、b”は1以上100以下の整数であり;式(3b)において、a”およびb”は、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、c”およびd”はそれぞれ独立して1以上300以下の整数である。添字a”、b”、c”、d”を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。
【0251】
また、別の観点から、含フッ素オイルは、一般式Rf-F(式中、RfはC5-16パーフルオロアルキル基である。)で表される化合物であってよい。また、クロロトリフルオロエチレンオリゴマーであってもよい。
【0252】
上記含フッ素オイルは、500~10000の平均分子量を有していてよい。含フッ素オイルの分子量は、GPCを用いて測定し得る。
【0253】
含フッ素オイルは、本開示の組成物に対して、例えば0~50質量%、好ましくは0~30質量%、より好ましくは0~5質量%含まれ得る。一の態様において、本開示の組成物は、含フッ素オイルを実質的に含まない。含フッ素オイルを実質的に含まないとは、含フッ素オイルを全く含まない、または極微量の含フッ素オイルを含んでいてもよいことを意味する。
【0254】
一の態様において、フルオロポリエーテル基含有化合物の平均分子量よりも、含フッ素オイルの平均分子量を大きくしてもよい。このような平均分子量とすることにより、特に真空蒸着法により表面処理層を形成する場合において、より優れた摩擦耐久性と表面滑り性を得ることができる。
【0255】
一の態様において、フルオロポリエーテル基含有化合物の平均分子量よりも、含フッ素オイルの平均分子量を小さくしてもよい。このような平均分子量とすることにより、かかる化合物から得られる表面処理層の透明性の低下を抑制しつつ、高い摩擦耐久性および高い表面滑り性を有する硬化物を形成できる。
【0256】
含フッ素オイルは、本開示の組成物によって形成された層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0257】
上記シリコーンオイルとしては、例えばシロキサン結合が2,000以下の直鎖状または環状のシリコーンオイルを用い得る。直鎖状のシリコーンオイルは、いわゆるストレートシリコーンオイルおよび変性シリコーンオイルであってよい。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルを、アルキル、アラルキル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル、フルオロアルキル、アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコールなどにより変性したものが挙げられる。環状のシリコーンオイルは、例えば環状ジメチルシロキサンオイルなどが挙げられる。
【0258】
本開示の組成物(例えば、表面処理剤)中、かかるシリコーンオイルは、上記本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の合計100質量部(2種以上の場合にはこれらの合計、以下も同様)に対して、例えば0~300質量部、好ましくは50~200質量部で含まれ得る。
【0259】
シリコーンオイルは、表面処理層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0260】
上記触媒としては、酸(例えば酢酸、トリフルオロ酢酸等)、塩基(例えばアンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等)、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)等が挙げられる。
【0261】
触媒は、本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の加水分解および脱水縮合を促進し、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)により形成される層の形成を促進する。
【0262】
他の成分としては、上記以外に、例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等も挙げられる。
【0263】
本開示の組成物は、基材の表面処理を行う表面処理剤として用いることができる。
【0264】
本開示の表面処理剤は、多孔質物質、例えば多孔質のセラミック材料、金属繊維、例えばスチールウールを綿状に固めたものに含浸させて、ペレットとすることができる。当該ペレットは、例えば、真空蒸着に用いることができる。
【0265】
以下、本開示の物品について説明する。
【0266】
本開示の物品は、基材と、該基材表面に本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む表面処理剤より形成された層(表面処理層)とを含む。
【0267】
本開示において使用可能な基材は、例えば、ガラス、樹脂(天然または合成樹脂、例えば一般的なプラスチック材料であってよく、板状、フィルム、その他の形態であってよい)、金属、セラミックス、半導体(シリコン、ゲルマニウム等)、繊維(織物、不織布等)、毛皮、皮革、木材、陶磁器、石材等、建築部材等、任意の適切な材料で構成され得る。
【0268】
例えば、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面を構成する材料は、光学部材用材料、例えばガラスまたは透明プラスチックなどであってよい。また、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面(最外層)に何らかの層(または膜)、例えばハードコート層や反射防止層などが形成されていてもよい。反射防止層には、単層反射防止層および多層反射防止層のいずれを使用してもよい。反射防止層に使用可能な無機物の例としては、SiO、SiO、ZrO、TiO、TiO、Ti、Ti、Al、Ta、CeO、MgO、Y、SnO、MgF、WOなどが挙げられる。これらの無機物は、単独で、またはこれらの2種以上を組み合わせて(例えば混合物として)使用してもよい。多層反射防止層とする場合、その最外層にはSiOおよび/またはSiOを用いることが好ましい。製造すべき物品が、タッチパネル用の光学ガラス部品である場合、透明電極、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛などを用いた薄膜を、基材(ガラス)の表面の一部に有していてもよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I-CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、相位差フィルム、および液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
【0269】
基材の形状は特に限定されない。また、表面処理層を形成すべき基材の表面領域は、基材表面の少なくとも一部であればよく、製造すべき物品の用途および具体的仕様等に応じて適宜決定され得る。
【0270】
かかる基材としては、少なくともその表面部分が、水酸基を元々有する材料から成るものであってよい。かかる材料としては、ガラスが挙げられ、また、表面に自然酸化膜または熱酸化膜が形成される金属(特に卑金属)、セラミックス、半導体等が挙げられる。あるいは、樹脂等のように、水酸基を有していても十分でない場合や、水酸基を元々有していない場合には、基材に何らかの前処理を施すことにより、基材の表面に水酸基を導入したり、増加させたりすることができる。かかる前処理の例としては、プラズマ処理(例えばコロナ放電)や、イオンビーム照射が挙げられる。プラズマ処理は、基材表面に水酸基を導入または増加させ得ると共に、基材表面を清浄化する(異物等を除去する)ためにも好適に利用され得る。また、かかる前処理の別の例としては、炭素-炭素不飽和結合基を有する界面吸着剤をLB法(ラングミュア-ブロジェット法)や化学吸着法等によって、基材表面に予め単分子膜の形態で形成し、その後、酸素や窒素等を含む雰囲気下にて不飽和結合を開裂する方法が挙げられる。
【0271】
またあるいは、かかる基材としては、少なくともその表面部分が、別の反応性基、例えばSi-H基を1つ以上有するシリコーン化合物や、アルコキシシランを含む材料から成るものであってもよい。
【0272】
次に、かかる基材の表面に、上記の本開示の表面処理剤の層を形成し、この層を必要に応じて後処理し、これにより、本開示の表面処理剤から層を形成する。
【0273】
本開示の表面処理剤の層形成は、上記の組成物を基材の表面に対して、該表面を被覆するように適用することによって実施できる。被覆方法は、特に限定されない。例えば、湿潤被覆法および乾燥被覆法を使用できる。
【0274】
湿潤被覆法の例としては、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティングおよび類似の方法が挙げられる。
【0275】
乾燥被覆法の例としては、蒸着(通常、真空蒸着)、スパッタリング、CVDおよび類似の方法が挙げられる。蒸着法(通常、真空蒸着法)の具体例としては、抵抗加熱、電子ビーム、マイクロ波等を用いた高周波加熱、イオンビームおよび類似の方法が挙げられる。CVD方法の具体例としては、プラズマ-CVD、光学CVD、熱CVDおよび類似の方法が挙げられる。
【0276】
更に、常圧プラズマ法による被覆も可能である。
【0277】
湿潤被覆法を使用する場合、本開示の表面処理剤は、溶媒で希釈されてから基材表面に適用され得る。本開示の組成物の安定性および溶媒の揮発性の観点から、次の溶媒が好ましく使用される:炭素数5~12のパーフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサンおよびパーフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン);ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、C13CHCH(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AC-6000)、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオローラ(登録商標)H);ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(COCH)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7000)、パーフルオロブチルメチルエーテル(COCH)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7100)、パーフルオロブチルエチルエーテル(COC)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7200)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(CCF(OCH)C)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7300)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基およびアルキル基は直鎖または分枝状であってよい)、あるいはCFCHOCFCHF(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AE-3000))など。これらの溶媒は、単独で、または、2種以上の混合物として用いることができる。なかでも、ヒドロフルオロエーテルが好ましく、パーフルオロブチルメチルエーテル(COCH)および/またはパーフルオロブチルエチルエーテル(COC)が特に好ましい。
【0278】
乾燥被覆法を使用する場合、本開示の表面処理剤は、そのまま乾燥被覆法に付してもよく、または、上記した溶媒で希釈してから乾燥被覆法に付してもよい。
【0279】
表面処理剤の層形成は、層中で本開示の表面処理剤が、加水分解および脱水縮合のための触媒と共に存在するように実施することが好ましい。簡便には、湿潤被覆法による場合、本開示の表面処理剤を溶媒で希釈した後、基材表面に適用する直前に、本開示の表面処理剤の希釈液に触媒を添加してよい。乾燥被覆法による場合には、触媒添加した本開示の表面処理剤をそのまま蒸着(通常、真空蒸着)処理するか、あるいは鉄や銅などの金属多孔体に、触媒添加した本開示の表面処理剤を含浸させたペレット状物質を用いて蒸着(通常、真空蒸着)処理をしてもよい。
【0280】
触媒には、任意の適切な酸または塩基を使用できる。酸触媒としては、例えば、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸などを使用できる。また、塩基触媒としては、例えばアンモニア、有機アミン類などを使用できる。
【0281】
上記のようにして、基材の表面に、本開示の表面処理剤に由来する層が形成され、本開示の物品が製造される。これにより得られる上記層は、高い表面滑り性と高い摩擦耐久性の双方を有する。また、上記層は、高い摩擦耐久性に加えて、使用する表面処理剤の組成にもよるが、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)、防水性(電子部品等への水の浸入を防止する)、表面滑り性(または潤滑性、例えば指紋等の汚れの拭き取り性や、指に対する優れた触感)などを有し得、機能性薄膜として好適に利用され得る。
【0282】
すなわち本開示はさらに、上記表面処理層を最外層に有する光学材料にも関する。
【0283】
光学材料としては、後記に例示するようなディスプレイ等に関する光学材料のほか、多種多様な光学材料が好ましく挙げられる:例えば、陰極線管(CRT;例えば、パソコンモニター)、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、電界放出ディスプレイ(FED;Field Emission Display)などのディスプレイまたはそれらのディスプレイの保護板、またはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの。
【0284】
本開示によって得られる層を有する物品は、特に限定されるものではないが、光学部材であり得る。光学部材の例には、次のものが挙げられる:眼鏡などのレンズ;PDP、LCDなどのディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板;携帯電話、携帯情報端末などの機器のタッチパネルシート;ブルーレイ(Blu-ray(登録商標))ディスク、DVDディスク、CD-R、MOなどの光ディスクのディスク面;光ファイバー;時計の表示面など。
【0285】
また、本開示によって得られる層を有する物品は、医療機器または医療材料であってもよい。
【0286】
上記層の厚さは、特に限定されない。光学部材の場合、上記層の厚さは、1~50nm、1~30nm、好ましくは1~15nmの範囲であることが、光学性能、表面滑り性、摩擦耐久性および防汚性の点から好ましい。
【0287】
以上、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)を使用して得られる物品について詳述した。なお、本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物またはフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む組成物の用途、使用方法ないし物品の製造方法などは、上記で例示したものに限定されない。
【実施例
【0288】
本発明の表面処理剤について、以下の実施例を通じてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、以下に示される化学式はすべて平均組成を示し、パーフルオロポリエーテルを構成する各繰り返し単位の存在順序は任意である。
【0289】
下記において、塩素イオン濃度の測定は、下記の分析方法で行った。
・分析方法
イオンクロマトグラフィー
塩素イオン濃度の分析は、イオンクロマトグラフ装置により塩素イオンを測定し、外部標準法により濃度を決めた。
装置名: Dionex ICS-2100 (Themo SCIENTIFIC)
カラム: Dionex IonPac AS20
温度: 30℃
流速: 1.0mL/min
検出器: 電気伝導度
イオン濃度測定サンプルは、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物をNovec社製のHFE7300で10wt%希釈し、続いて超純水を加え、水層へ塩素イオンを抽出することで調製した。
【0290】
合成例1
還流冷却器、温度計および撹拌機を取り付けた100mLの4つ口フラスコに、下記の末端にトリクロロシランを有するパーフルオロポリエーテル基含有トリクロロシラン化合物(A)20g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン20gを仕込み、窒素気流下、5℃で30分間撹拌した。続いて、アリルマグネシウムブロマイドを0.7mol/L含むジエチルエーテル溶液を35.2ml加えた後、室温まで昇温させ、この温度にて10時間撹拌した。その後、5℃まで冷却し、メタノールを5ml加えた後、室温まで昇温させて不溶物をろ過した。続いて、減圧下で揮発分を留去した後、不揮発分をパーフルオロヘキサンで希釈し、分液ロートでメタノールによる洗浄操作(より詳細には、パーフルオロヘキサン相(フルオラス相)にフルオロ系化合物を維持し、メタノール相(有機相)に非フルオロ系化合物を分離除去する操作)を3回行った。続いて、減圧下で揮発分を留去することにより、末端にアリル基を有する下記のパーフルオロポリエーテル基含有アリル体(B)を含む生成物(B)18gを得た。
パーフルオロポリエーテル基含有トリクロロシラン化合物(A):
CF3O(CF2CF2O)15(CF2O)16CF2CH2OCH2CH2CH2SiCl3
パーフルオロポリエーテル基含有アリル体(B):
CF3O(CF2CF2O)15(CF2O)16CF2CH2OCH2CH2CH2Si(CH2CH=CH2)3
【0291】
合成例2
還流冷却器、温度計、撹拌機を取り付けた100mLの4つ口フラスコに、合成例1にて合成した末端にアリル基を有するパーフルオロポリエーテル基含有アリル体(B)を含む生成物(B)15g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン15g、トリアセトキシメチルシラン0.05g、トリクロロシラン4.2g仕込み、窒素気流下、5℃で30分間撹拌した。続いて、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンのPt錯体を2%含むキシレン溶液を0.15ml加えた後、60℃まで昇温させ、この温度にて5時間撹拌した。その後、減圧下で揮発分を留去することにより、末端にトリクロロシランを有する下記のパーフルオロポリエーテル基含有トリクロロシラン化合物(C)を含む生成物(C)16gを得た。
パーフルオロポリエーテル基含有トリクロロシラン化合物(C):
CF3O(CF2CF2O)15(CF2O)16CF2CH2OCH2CH2CH2Si(CH2CH2CH2SiCl3)3
【0292】
合成例3
還流冷却器、温度計、撹拌機を取り付けた100mLの4つ口フラスコに、合成例2にて合成した末端にトリクロロシランを有するパーフルオロポリエーテル基含有トリクロロシラン化合物(C)を含む生成物(C)16g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン16gを加え、窒素気流下、50℃で30分間撹拌した。続いて、メタノール1.04gとオルソギ酸トリメチル48gの混合溶液を加えた後、65℃まで昇温させ、この温度にて3時間撹拌した。その後、室温まで冷却させて不溶物をろ過し、減圧下で揮発分を留去することにより、末端にトリメチルシリル基を有する下記のパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(D)を含む生成物(D)16gを得た。
パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(D):
CF3O(CF2CF2O)15(CF2O)16CF2CH2OCH2CH2CH2Si[CH2CH2CH2Si(OCH3)3]3
(なお、平均組成としては、(CFCFCFCFO)の繰り返し単位が0.17個および(CFCFCFO)の繰り返し単位が0.18個含まれていたが、微量のため省略した。)
【0293】
合成例4
還流冷却器、温度計、撹拌機を取り付けた100mLの4つ口フラスコに、下記の末端にトリクロロシランを有するパーフルオロポリエーテル基含有トリクロロシラン化合物(E)21g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン21gを加え、窒素気流下、50℃で30分間撹拌した。続いて、メタノール1.34gとオルソギ酸トリメチル64gの混合溶液を加えた後、65℃まで昇温させ、この温度にて3時間撹拌した。その後、室温まで冷却させて不溶物をろ過し、減圧下で揮発分を留去することにより、末端にトリメチルシリル基を有する下記のパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(F)を含む生成物(F)21gを得た。
パーフルオロポリエーテル基含有トリクロロシラン化合物(E):
CF3O(CF2CF2OCF2CF2CF2CF2O)3CF2CF2OCF2CF2CF2CONHCH2C(CH2CH2CH2SiCl3)3
パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(F):
CF3O(CF2CF2OCF2CF2CF2CF2O)3CF2CF2OCF2CF2CF2CONHCH2C[CH2CH2CH2Si(OCH3)3]3
【0294】
合成例5
還流冷却器、温度計、撹拌機を取り付けた100mLの4つ口フラスコに、下記の末端にトリクロロシランを有するパーフルオロポリエーテル基含有トリクロロシラン化合物(G)16g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン16gを加え、窒素気流下、50℃で30分間撹拌した。続いて、メタノール1.04gとオルソギ酸トリメチル48gの混合溶液を加えた後、65℃まで昇温させ、この温度にて3時間撹拌した。その後、室温まで冷却させて不溶物をろ過し、減圧下で揮発分を留去することにより、末端にトリメチルシリル基を有する下記のパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(H)を含む生成物(H)16gを得た。
パーフルオロポリエーテル基含有トリクロロシラン化合物(G):
CF3O(CF2CF2O)15(CF2O)16CF2C(OCH2CH2CH2SiCl3)(CH2CH2CH2SiCl3)2
パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(H):
CF3O(CF2CF2O)15(CF2O)16CF2C[OCH2CH2CH2Si(OCH3)3][CH2CH2CH2Si(OCH3)3]2
(なお、平均組成としては、(CFCFCFCFO)の繰り返し単位が0.17個および(CFCFCFO)の繰り返し単位が0.18個含まれていたが、微量のため省略した。)
【0295】
実施例1
合成例3で得られたパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(D)を含む生成物(D)5.0gをパーフルオロヘキサン13gで希釈し、メタノール1.5gを加え、洗浄操作を3回行った。続いて、下相を濃縮することにより、パーフルオロポリエーテル基含有シラン組成物(D’)4.0gを得た。得られた組成物(D’)を上記イオンクロマトグラフィーで分析した結果、HFE7300の10wt%希釈溶液中、塩素イオン濃度は0.3質量ppmであった。
【0296】
実施例2
合成例3で得られたパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(D)を含む生成物(D)1.0gをパーフルオロヘキサン4.0gで希釈し、続いて金属亜鉛粉末を3wt%加え、室温で2時間撹拌した。続いて固形分をろ過し、濃縮して得られた不揮発成分に対し、NOVEC社製のHFE7300 9.0gで希釈し、大阪ガスケミカル社製の活性炭白鷺Aを3wt%加え、室温で2時間撹拌した。その後、固形分をろ過し、濃縮することにより、パーフルオロポリエーテル基含有シラン組成物(D”)1.0gを得た。得られた組成物(D”)を上記イオンクロマトグラフィーで分析した結果、HFE7300の10wt%希釈溶液中、塩素イオン濃度は0.7質量ppmであった。
【0297】
実施例3
合成例4で得られたパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(F)を含む生成物(F)5.0gを、実施例1と同様にメタノールにより洗浄した。得られた組成物(F’)を上記イオンクロマトグラフィーで分析した結果、HFE7300の10wt%希釈溶液中、塩素イオン濃度は0.2質量ppmであった。
【0298】
実施例4
合成例4で得られたパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(F)を含む生成物(F)1.0gを、実施例2と同様に金属亜鉛粉末および活性炭により処理した。得られた組成物(F”)を上記イオンクロマトグラフィーで分析した結果、HFE7300の10wt%希釈溶液中、塩素イオン濃度は0.7質量ppmであった。
【0299】
実施例5
合成例5で得られたパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(H)を含む生成物(H)5.0gを、実施例1と同様にメタノールにより洗浄した。得られた組成物(H’)を上記イオンクロマトグラフィーで分析した結果、HFE7300の10wt%希釈溶液中、塩素イオン濃度は0.2質量ppmであった。
【0300】
実施例6
合成例5で得られたパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(H)を含む生成物(H)1.0gを、実施例2と同様に金属亜鉛粉末および活性炭により処理した。得られた組成物(H”)を上記イオンクロマトグラフィーで分析した結果、HFE7300の10wt%希釈溶液中、塩素イオン濃度は0.8質量ppmであった。
【0301】
【表1】
【0302】
比較例1
還流冷却器、温度計、撹拌機を取り付けた100mLの4つ口フラスコに、合成例1にて合成した末端にアリル基を有するパーフルオロポリエーテル基含有アリル体(B)を含む生成物(B)15g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン15g、トリメトキシシラン3.0g、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液1.5×10-2g仕込み、窒素気流下、80℃で12時間撹拌した。その後、減圧下で揮発分を留去することにより、末端にトリメチルシリル基を有する下記のパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(D)を含む生成物(P)15gを得た。得られた生成物(P)を上記イオンクロマトグラフィーで分析した結果、HFE7300の10wt%希釈溶液中、塩素イオン濃度は、0.1質量ppm未満であった。
【0303】
比較例2
還流冷却器、温度計、撹拌機を取り付けた100mLの4つ口フラスコに、下記の末端にアリル基を有するパーフルオロポリエーテル基含有アリル体(I)10g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン10g、トリメトキシシラン2.0g、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液1.0×10-2g仕込み、窒素気流下、80℃で12時間撹拌した。その後、減圧下で揮発分を留去することにより、末端にトリメチルシリル基を有する下記のパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(F)を含む生成物(Q)15gを得た。得られた生成物(Q)を上記イオンクロマトグラフィーで分析した結果、HFE7300の10wt%希釈溶液中、塩素イオン濃度は、0.1質量ppm未満であった。
パーフルオロポリエーテル基含有アリル体(I):
CF3O(CF2CF2OCF2CF2CF2CF2O)3CF2CF2OCF2CF2CF2CONHCH2C(CH2CH=CH2)3
【0304】
比較例3
還流冷却器、温度計、撹拌機を取り付けた100mLの4つ口フラスコに、下記の末端にアリル基を有するパーフルオロポリエーテル基含有アリル体(J)10g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン10g、トリメトキシシラン2.0g、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液1.0×10-2g仕込み、窒素気流下、80℃で12時間撹拌した。その後、減圧下で揮発分を留去することにより、末端にトリメチルシリル基を有する下記のパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(H)を含む生成物(R)15gを得た。得られた生成物(R)を上記イオンクロマトグラフィーで分析した結果、HFE7300の10wt%希釈溶液中、塩素イオン濃度は、0.1質量ppm未満であった。
パーフルオロポリエーテル基含有アリル体(J):
CF3O(CF2CF2O)15(CF2O)16CF2C(OCH2CH=CH2)(CH2CH=CH2)2
【0305】
比較例4
合成例3で得られた生成物(D)の未処理品を準備した。未処理の生成物(D)の塩素イオン濃度を上記イオンクロマトグラフィーで測定すると、HFE7300の10wt%希釈溶液中6.7質量ppmであった。
【0306】
比較例5
合成例4で得られた生成物(F)の未処理品を準備した。未処理の生成物(F)塩素イオン濃度を上記イオンクロマトグラフィーで測定すると、HFE7300の10wt%希釈溶液中5.5質量ppmであった。
【0307】
比較例6
合成例5で得られた生成物(H)の未処理品を準備した。未処理の生成物(H)塩素イオン濃度を上記イオンクロマトグラフィーで測定すると、HFE7300の10wt%希釈溶液中8.7質量ppmであった。
【0308】
【表2】
【0309】
(試験例)
・摩擦耐久性評価
上記の実施例1~6および比較例1~3のパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物のHFE7300中10wt%希釈溶液を表面処理剤用いて、表面処理層を形成した。具体的には、上記表面処理剤を化学強化ガラス(コーニング社製、「ゴリラ」ガラス、厚さ0.7mm)上に真空蒸着した。真空蒸着の処理条件は、圧力3.0×10-3Paとし、化学強化ガラス表面に7nmの二酸化ケイ素膜を形成し、続いて、化学強化ガラス1枚(55mm×100mm)あたり、表面処理剤2mg(即ち、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を0.2mg含有)を蒸着させた。その後、蒸着膜付き化学強化ガラスを、温度20℃および湿度65%の雰囲気下で24時間静置した。
【0310】
上記のように基材表面に形成された表面処理層について、消しゴム摩擦耐久試験により、摩擦耐久性を評価した。具体的には、表面処理層を形成したサンプル物品を水平配置し、消しゴム(コクヨ株式会社製、KESHI-70、平面寸法1cm×1.6cm)を表面処理層の表面に接触させ、その上に500gfの荷重を付与し、その後、荷重を加えた状態で消しゴムを20mm/秒の速度で往復させた。往復回数500回毎に水の静的接触角(度)を測定した。接触角の測定値が100度未満となった時点で評価を中止した。最後に接触角が100度を超えた時の往復回数を、表3~5に示す。
【0311】
・パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(D)
【表3】
【0312】
・パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(F)
【表4】
【0313】
・パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(H)
【表5】
【0314】
上記の結果から、塩素イオン濃度が本開示の範囲内である組成物を用いた場合、より高い摩擦耐久性が得られることが確認された。本開示は、いかなる理論にも拘束されないが、塩素イオン濃度が1.0質量ppmを超える場合には、メトキシシラン部分の安定性が低下し、基材との反応点が減少し、表面処理層の摩擦耐久性が低くなると考えられる。塩素イオン濃度が0.1以上1.0質量ppm以下である場合には、微量の塩素イオン成分がガラスとの反応の際に触媒として働くため、密着性が向上し、摩擦耐久性が高くなると考えられる。さらに、塩素イオン濃度が0.1質量ppm未満である場合、触媒効果が得られず、密着性が低下し、摩擦耐久性が低くなると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0315】
本開示の表面処理剤は、種々多様な基材、特に透過性が求められる光学部材の表面に、表面処理層を形成するために好適に利用され得る。