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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】ボトム衣類
(51)【国際特許分類】
   A41C 1/00 20060101AFI20241009BHJP
   A41B 9/04 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
A41C1/00 F
A41B9/04 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021051350
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149285
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】306033379
【氏名又は名称】株式会社ワコール
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100146064
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】角野 まき
(72)【発明者】
【氏名】坂本 晶子
(72)【発明者】
【氏名】上家 倫子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 栞里
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-255148(JP,A)
【文献】特開2001-192903(JP,A)
【文献】特開2020-023758(JP,A)
【文献】特開2017-089018(JP,A)
【文献】実開平01-037407(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C 1/00-5/00
A41B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性のボトム本体部と、少なくとも臀溝部を覆う部分に配置される左右一対の伸縮性の第1サポート部材とを含み、
前記第1サポート部材の上辺部は、少なくとも後中心側部分は、前記ボトム本体部に固定され、
前記第1サポート部材の下辺部は、前記ボトム本体部から遊離しており、
前記第1サポート部材後中心側上方と下方と前記ボトム本体部の後中心側に固定されており、前記第1サポート部材の後中心側の中間部分が前記ボトム本体部の後中心側から遊離していることを特徴とする、ボトム衣類。
【請求項2】
前記第1サポート部材が前記ボトム本体部から遊離している前記後中心側における前記中間部分において、
固定されている上方の下端と固定されている下方の上端との間の長さについて、前記第1サポート部材の前記長さは前記ボトム本体部の前記長さよりも短いことを特徴とする、請求項1記載のボトム衣類。
【請求項3】
さらに、左右一対の伸縮性の第2サポート部材を、前記ボトム本体部と前記第1サポート部材との間に含み、
前記第2サポート部材は、少なくとも、後中心と脇端の間の後中心側2/3の範囲の領域に、前記第1サポート部材の大きさを超えない範囲で配置され、
前記第2サポート部材の上辺部は、前記ボトム本体部または前記第1サポート部材に固定され、
前記第2サポート部材の下辺部の少なくとも脇側は、臀溝部に対応する位置で前記ボトム本体部または前記第1サポート部材に固定され、
前記第2サポート部材の脇側部は前記ボトム本体部および前記第1サポート部材から遊離しており、
前記第2サポート部材後中心側上方と下方と前記ボトム本体部の後中心側に固定されており、前記第2サポート部材の後中心側の中間部分が前記ボトム本体部および前記第1サポート部材の後中心側から遊離していることを特徴とする、請求項1または2記載のボトム衣類。
【請求項4】
前記第2サポート部材の下辺部は、後中心側と脇側とで前記ボトム本体部に固定されて、下辺中間部分が前記ボトム本体部から遊離していることを特徴とする、請求項記載のボトム衣類。
【請求項5】
前記後中心側における第2サポート部材が前記ボトム本体部から遊離している前記中間部分において、
固定されている上方の下端と固定されている下方の上端との間の長さについて、前記第2サポート部材の前記長さは前記ボトム本体部の前記長さよりも短いことを特徴とする、請求項3または4記載のボトム衣類。
【請求項6】
さらに、伸縮性の第3サポート部材を有し、
前記第3サポート部材は、一対の前記第1サポート部材の上部同士を接続する部材であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のボトム衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトム衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガードルなどのボトム衣類は、腹部、脇部、ヒップの贅肉による膨らみや弛みを押さえて体型をスッキリ見せる補整機能を備えたものが多い。このようなボトム衣類としては、補整が必要な部位においては、衣類本体にさらに当て布を配置して、前記部位を押さえる力を増強して贅肉を効果的に押さえ込もうとするものが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、これらのボトム衣類では、例えば、ヒップアップを目的として、ヒップの下部を当て布等で覆うと、運動時にクロッチ部周りがずれ上がったり、臀溝部にくい込みが生じやすいといった着くずれの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭64-37407号公報
【文献】特開2010-255148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明においては、着くずれと皮膚変形の関連性に着目し、補整機能を備えるだけでなく、日常生活動作の中でヒップの皮膚が大きく変形するのを解消し、より皮膚の伸びを均一な状態に保つことで、皮膚にかかる負担を少なくしヒップケアできるボトム衣類(下半身衣類)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明のボトム衣類は、伸縮性のボトム本体部と、少なくとも臀溝部を覆う部分に配置される左右一対の伸縮性の第1サポート部材とを含み、
前記第1サポート部材の上辺部は、少なくとも後中心側部分は、前記ボトム本体部に固定され、
前記第1サポート部材の下辺部は、前記ボトム本体部から遊離しており、
前記第1サポート部材後中心側上方と下方と前記ボトム本体部の後中心側に固定されており、前記第1サポート部材の後中心側の中間部分が前記ボトム本体部の後中心側から遊離していることを特徴とする。
【0006】
本発明者は、皮膚にかかる負担を少なくして肌理やハリを維持する衣類を実現するために、座る、歩く、走る等の日常生活動作による皮膚の変形のメカニズムについて鋭意研究を行った。その結果、以下の知見が得られた。ヒップの皮膚は、伸びが均一に保たれている状態が理想であり、このような状態は無重力状態で実現できる。しかし、通常の状態(地上での状態)では、重力の影響があるため、ヒップの皮膚の伸びが均一に保たれた状態を維持するのは難しい。実際に、異なる重力方向でのヒップの肌状態を、肌理(キメ)と皮膚表面回復率(ハリ)とで評価すると、ヒップにかかる下向きの重力をモデル的に解消した斜伏臥状態と通常の立位状態とでは、肌理は斜伏臥状態ではキメが流れていないのに対して、立位状態では流れている状態が確認できた。ハリについても斜伏臥の方が大きい(皮膚表面の回復率が高い)ことが確認できた。日常生活でのヒップの皮膚の伸びを均一に保つには、重力や動作時の外力によって起こる皮膚のたわみや縮みをなくせばよい。そこで、特に、後中心側の臀溝直上部分(ヒップ下の内側部分)およびヒップ下脇の太腿との境目部分に、斜伏臥状態での形状を維持できる方向の力をかけることができるボトム衣類を検討した結果、前記構成とすることで、立位時に、たわみや縮みの皮膚変形をなくした状態(皮膚の伸びの均一性)を保ち、丸みのある形に整え、動作時に、大きな皮膚変形が起こらない(皮膚の伸びが均一な)状態を効果的にキープできることを確認し、本発明に至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、補整機能を備えるだけでなく、日常生活動作の中でヒップの皮膚が大きく変形するのを解消し、より皮膚の伸びを均一な状態に保つことで、皮膚にかかる負担を少なくしヒップケアできるボトム衣類(下半身衣類)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明のボトム衣類の一例である、第1の実施形態に係るガードル100を示す背面斜視図である。
図2図2(A)は、前記第1の実施形態に係るガードル100の第1サポート部の配置を説明する図である。図2(B)は、前記第1の実施形態に係るガードル100の第2サポート部の配置を説明する図である。
図3図3は、着用評価におけるヒップ下内のたわみの状態を示す図である。
図4図4は、着用評価におけるヒップ脇の皮膚の縮みの状態を示す図である。
図5図5は、本発明の第2の実施形態に係るガードル200を示す背面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のボトム衣類において、前記第1サポート部材が前記ボトム本体部から遊離している前記後中心側における前記中間部分において、固定されている上方の下端と固定されている下方の上端との間の長さについて、前記第1サポート部材の前記長さは前記ボトム本体部の前記長さよりも短いことが好ましい。
【0010】
本発明のボトム衣類において、さらに、左右一対の伸縮性の第2サポート部材を、前記ボトム本体部と前記第1サポート部材との間に含み、前記第2サポート部材は、少なくとも、後中心と脇端の間の後中心側2/3の範囲の領域に、前記第1サポート部材の大きさを超えない範囲で配置され、前記第2サポート部材の上辺部は、前記ボトム本体部または前記第1サポート部材に固定され、前記第2サポート部材の下辺部の少なくとも脇側は、臀溝部に対応する位置で前記ボトム本体部または前記第1サポート部材に固定され、前記第2サポート部材の脇側部は前記ボトム本体部および前記第1サポート部材から遊離しており、前記第2サポート部材は、後中心側において、上方と下方とで前記ボトム本体部の後中心側に固定されて中間部分が前記ボトム本体部および前記第1サポート部材から遊離していることが好ましい。ここで、「後中心と脇端の間の後中心側2/3の範囲の領域」とは、ボトム衣類を平置きの状態にしたときの位置および領域である。
【0011】
本発明のボトム衣類において、前記第2サポート部材の下辺部は、後中心側と脇側とで前記ボトム本体部に固定されて、下辺中間部分が前記ボトム本体部から遊離していることが好ましい。
【0012】
本発明のボトム衣類において、前記後中心側における第2サポート部材が前記ボトム本体部から遊離している前記中間部分において、固定されている上方の下端と固定されている下方の上端との間の長さについて、前記第2サポート部材の前記長さは前記ボトム本体部の前記長さよりも短いことが好ましい。
【0013】
本発明のボトム衣類は、さらに、伸縮性の第3サポート部材を有し、前記第3サポート部材は、一対の前記第1サポート部材の上部同士を接続する部材であることが好ましい。
【0014】
本発明のボトム衣類について、例をあげて説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定および制限されない。なお、以下で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。
【0015】
(第1の実施形態)
図1に、本発明のボトム衣類の第1の実施形態に係るガードル100の図を示す。図1は、ガードル100の背面斜視図であり、着用時の肌側を表側にした状態での図である。本実施形態のガードル100は、伸縮性のボトム本体部101に、伸縮性の第1サポート部材110および伸縮性の第2サポート部材120が取り付けられている。第1サポート部材110および伸縮性の第2サポート部材120は、各々左右一対設けられている(一部図示せず)。
【0016】
第1サポート部材110は、少なくとも臀溝部を覆う部分に配置されている。第1サポート部材110の上辺部110Aは、少なくとも後中心側部分は、ボトム本体部101に固定されている。そして、第1サポート部材110の下辺部110Bは、ボトム本体部101から遊離している。第1サポート部材110の後中心側(臀裂側)の部分は、上方Rと下方Sとでボトム本体部101の後中心側に固定されており、中間部分Tはボトム本体部101から遊離している。第1サポート部材110の上辺部110Aは、ヒップトップPを覆わないように配置すると、ヒップを潰さないため、ヒップの形状をより理想形(正円に近い形)に近づけることができ好ましい。
【0017】
図2(A)は、前記第1の実施形態に係るガードル100の第1サポート部110の配置を説明する図である。図2(A)においては、説明をわかりやすくするため、ボトム本体部101を省略して図示している。
【0018】
第1サポート部材110は、下辺部110Bおよび後中心側(臀裂側)の中間部分Tをボトム本体部101に固定せずにハンモック状に固定させることで、図中丸印(●)の部分(後中心側の臀溝直上部分=ヒップ下の内側部分)に、矢印で示すX1方向に力をかけることができる。この方向に集中的に力をかけることによって、ヒップ下の内側部分を立ち上げて、皮膚のたわみを抑制することができる。ここで、第1サポート部材110は、ボトム本体部101よりも面積を小さくしたり、ダーツを設ける等の手段によって、図中の2つの両矢印部分で第1サポート部材110の長さをボトム本体部101よりも短くすることができる。そして、ボトム本体部101から遊離している前記後中心側における中間部分Tについて、第1サポート部材110の中間部分Tの長さをボトム本体部101の中間部分Tの長さよりも短くすることが好ましい。第1サポート部材110の中間部分Tの長さをボトム本体部101よりも短くすることで、図中丸印(●)の部分にかかる、矢印で示すX1方向の力をより強くすることできるからである。第1サポート部材110の素材等を変更して伸度を変えることで力をかけることも考えられるが、この方法では第1サポート部材110全体のパワーが強くなってしまう。本発明においては、特定の部分(例えば図中丸印の部分)に重点的に力がかかることがより好ましいため、第1サポート部材110の中間部分Tの長さをボトム本体部101の中間部分Tの長さよりも短くすることが好ましい。
【0019】
また、第1サポート部材110の下辺部110Bを固定しないことによって、第1サポート部材110に、矢印で示すX2方向(上向き)の力をかけることができる。この方向に力をかけることによって、ヒップ下脇部分の皮膚の縮みをを抑制することができる。第1サポート部材110には、X1方向とX2方向との合力の方向に力がかかる。ここで、「上」「下」とは、着用状態における上下方向をいう。
【0020】
本実施形態においては、第1サポート部材110の上端部110Cは、ボトム本体部101のウエスト部102に固定されており、前側辺(図示せず)はボトム本体部101の前部分に固定されているが、本発明はこれに限定されない。上端部110Cおよび前側辺は、矢印で示すX1方向のに力がかかる際に、上辺部110Aとともに第1サポート部材110の支点となればよく、いずれかの箇所で固定されていればよい。固定箇所としては、ウエスト部102、ボトム本体部101の前部分の他に、脇接ぎの部分など、固定のための縫製線が目立ちにくい場所とすることが、デザインの自由度の観点からは好ましい。ボトム衣類においては、ボトム本体部101の前部分に、腹部の補整を目的として、ボトム本体部101より伸縮性の低いフロントパネル部材を設けることがある。この場合、第1サポート部材110の前側辺は、前記フロントパネル部材に固定してもよい。前記フロントパネル部材のサイド部分は、ボトム本体部101に結合されていてもよいし、前記フロントパネル部材をボトム本体部101から遊離させて設けてもよい。フロントパネル部材のサイド部分がボトム本体部101から遊離している場合は、第1サポート部材110の前側辺は、前記フロントパネル部材のサイド部分のみに固定すれば、ボトム本体部101には固定しなくても、支点としての効果は十分に得ることができる。
【0021】
第2サポート部材120は、ボトム本体部101と第1サポート部材110との間に設けられている。第2サポート部材120は、少なくとも、ボトム衣類100を平置きの状態としたときの後中心と脇端の間の後中心側2/3の範囲の領域に、第1サポート部材110の大きさを超えない範囲で配置されている。第2サポート部材120の上辺部120Aは、ボトム本体部101に固定されている。本実施形態では、第2サポート部材120の上辺部120Aはボトム本体部101に固定されているが、ボトム本体部101に替えて第1サポート部材110に固定されていてもよい。そして、第2サポート部材120の下辺部120Bの少なくとも脇側では、臀溝部に対応する位置でボトム本体部101に固定されている。本実施形態では、第2サポート部材120の下辺部120Bの少なくとも脇側はボトム本体部101に固定されているが、ボトム本体部101に替えて第1サポート部材110に固定されていてもよい。
【0022】
なお、本発明のボトム衣類における、第2サポート部材120の下辺部120Bの少なくとも脇側がボトム本体部101または第1サポート部材110に固定される「臀溝部に対応する位置」とは、臀溝部の位置から少しずれた位置も含むものとする。これは、着用者の体形は様々であり、すべての着用者の臀溝部の位置に完全に一致するように第2サポート部材120の下辺部120Bを配置することは現実的ではないためである。
【0023】
第2サポート部材120は、脇側部120Cはボトム本体部101および第1サポート部材110から遊離している。そして、後中心側においては、上方と下方とでボトム本体部101の後中心側に固定されて中間部分がボトム本体部101および第1サポート部材110から遊離している。第2サポート部材120の後中心側のボトム本体部101との固定箇所は、本実施形態においては、第1サポート部材110と同じ位置としているが、これに限られるものではない。
【0024】
図2(B)は、前記第1の実施形態に係るガードル100の第2サポート部120の配置を説明する図である。図2(B)においては、説明をわかりやすくするため、ボトム本体部101を省略して図示している。
【0025】
第2サポート部材120は、上辺部120A、下辺部120Bの少なくとも一部および後中心側の一部において、ハンモック状に固定されていることによって、図中丸印(●)の部分(後中心側の臀溝直上部分=ヒップ下の内側部分)に、集中的に力をかけ続けることができる。この力の作用により、ヒップ下の内側部分を立ち上げて、皮膚のたわみを抑制することができるとともに、日常生活動作によって皮膚がたわもうとするのを防ぐことができる。
【0026】
第2サポート部材120は、第1サポート部材110と同様に、後中心側においてボトム本体部101から遊離している中間部分において、第2サポート部材120の前記長さはボトム本体部101の前記長さよりも短いことが好ましい。第2サポート部材120の前記中間部分の長さをボトム本体部101よりも短くすることで、図中丸印(●)の部分にかかる力をより強くすることできるからである。
【0027】
第1サポート部材110および第2サポート部材120の後中心側(臀裂側)のボトム本体部101の後中心側に固定されている下方Sの箇所は、クロッチ部103に対応した位置でボトム本体部101と固定されていることが好ましい。一般に、ボトム衣類では、安定した着用状態を維持するために、クロッチ部の肌側に難伸縮性もしくは非伸縮性の布材、例えば、綿素材を当て布として接ぎ合わせている。本実施形態においても、クロッチ部103はボトム本体部101よりも伸縮性が小さいことが好ましく、そのような低伸縮の部材付近で第1サポート部材110および第2サポート部材120を固定すれば、力がかかる際の支点として安定するため、好ましい。
【0028】
ボトム本体部101、第1サポート部材110および第2サポート部材120は、いずれも伸縮性を有する素材により構成されている。ボトム本体部101と第1サポート部材110(および第2サポート部材120)とを重ね合わせることにより、重ね合わせ部分の伸縮はボトム本体部101のみの部分の伸縮に比べて抑制することができる。第1サポート部材110および第2サポート部材120を有する本実施形態のガードル100では、ボトム本体部101のみの部分、ボトム本体部101と第1サポート部材110とが重なる部分、さらに第2サポート部材120が重なる部分の順に3段階で着圧を大きくすることができる。
【0029】
本実施形態では、第1サポート部材110および第2サポート部材120はボトム本体部101の内側(着用時の肌側)に配置されているが、本発明はこれに限定されず、第1サポート部材110および第2サポート部材120をボトム本体部101の外側(着用時に表面となる側)に配置してもよい。第1サポート部材110および第2サポート部材120をボトム本体部101の外側に配置すると、着用時の肌側面が平滑になるため、肌当たりをよくすることができる。
【0030】
本実施形態において、ボトム本体部101および各サポート部材に使用できる生地は、伸縮性を有していれば特に制限されないが、緯編地または経編地があげられ、例えば、スムース、フライス、天竺、トリコット、ラッセル等があげられる。ボトム本体部101および各サポート部材は、同じ素材を用いてもよいし、異なる素材を用いることもできる。また、クロッチ部103には、ボトム本体部101または各サポート部材と同じ生地を用いることができるが、肌側に綿素材等の当て布を設けてもよい。
【0031】
本実施形態のガードル100の着用評価を次のとおり行った。評価においては、ヌード立位状態、既存品のガードル着用状態、本実施形態のガードル100着用状態、ヌードでの斜伏臥位状態での、ヒップ下内のたわみの状態およびヒップ脇の皮膚の縮みの状態を観察した。
【0032】
図3は、着用評価におけるヒップ下内のたわみの状態を示す図である。まず、ヒップの形状を観察するため、斜伏臥位の状態でヒップの皮膚表面にマーカーで印をつけた。印は、正中から2cm、4cm、6cm、8cmの位置に上下方向にラインを入れた。(A)~(D)の各状態で、垂直モアレ縞を斜め下から見たときの前記のラインの見え方でヒップ下内のたわみの状態を評価した。(A)はヌード立位状態、(B)は既存品のガードル着用状態、(C)は本実施形態のガードル100着用状態、(D)はヌードでの斜伏臥位状態である。ヌード立位状態では、たわみが大きく、既存品のガードル着用状態ではたわみの改善は見られるもののヒップ下内の立ち上がりはやや弱かった。それに対して、本実施形態のガードル100着用状態では、ヒップ下内が立ち上がってたわみが小さくなっており、理想状態の無重力に近い斜伏臥位状態に最も近いライン形状であることがわかる。
【0033】
図4は、着用評価におけるヒップ脇の皮膚の縮みの状態を示す図である。まず、ヒップの皮膚の動きを観察するため、斜伏臥位の状態でヒップの皮膚表面に、図4(E)および(F)に示すように、マーカーで6本のラインを描いた。横線(横1、横2、横3)は、以下の位置を通る、身体の長軸方向に対して垂直な線である。
横1:大転子
横2:大転子と臀溝の中間
横3:臀溝点
縦線(縦1、縦2、縦3)のラインは、以下の位置を通る、身体の長軸方向に対して平行な線である。
縦1:大転子
縦2:大転子を通る縦1の線と上後腸骨棘Qを通る身体の長軸方向に対して平行な線との間の距離の、縦1の線から1/3の位置
縦3:大転子を通る縦1の線と上後腸骨棘Qを通る身体の長軸方向に対して平行な線との間の距離の、縦1の線から2/3の位置
(A)~(D)の各状態で、これら6本の線で囲まれる四角形と格子の形状を観察し、ヒップ脇の皮膚の縮みの状態を評価した。(A)はヌード立位状態、(B)は既存品のガードル着用状態、(C)は本実施形態のガードル100着用状態、(D)はヌードでの斜伏臥位状態である。ヌード立位状態では、縮みが大きく、既存品のガードル着用状態ではヌード立位状態と同様であり、縮みは改善されていないことがわかる。それに対して、本実施形態のガードル100着用状態(C)では、四角形は開いており、無重力に近い理想状態である斜伏臥位状態に近い形状となっていることがわかる。
【0034】
ヌード状態、既存品のガードル着用状態および本実施形態のガードル100着用状態で、走行時の皮膚変化量の観察を行ったところ、ヌード状態では、ジャンプから落下の重心移動時の外力により、ヒップの付根から全体が振り上がり、着地時のブレーキおよび衝撃により、瞬間的に激しく変形した。既存品のガードル着用状態で同様の動作を行った場合には、ヌード時よりは振り上がりおよび変形は中程度となった。本実施形態のガードル100着用状態では、振り上がりおよび変形はともに小さくなった。
【0035】
以上より、本実施形態のガードル100は、日常生活動作の中で起こる皮膚変形を解消し、皮膚の伸びを均一な状態に保つことができていることがわかる。
【0036】
(第2の実施形態)
図5に、本発明のボトム衣類の第2の実施形態に係るガードル200の図を示す。図2は、ガードル200の背面斜視図であり、着用時の肌側を表側にした状態での図である。本実施形態のガードル200は、伸縮性の第3サポート部材230を設けたほかは、第1の実施形態のガードル100と同様の構成である。第3サポート部材230は、一対の第1サポート部材210の上部同士を接続する部材である。
【0037】
第3サポート部材230を設けることで、ウエスト付近がより安定し、X1方向の力をより強くすることができる。第3サポート部材230は、ラージサイズの場合、第1サポート部材および第2サポート部材による力の働きかけは、不十分となりやすい。このような状態の場合、第3サポート部材230を設けると、引き上げる側の力を強くすることができ、好ましい。なお、本実施形態では、第3サポート部材は別部材として設けて第1サポート部材同士を接続する態様を示したが、第1サポート部と第3サポート部とが一体となった部材を用いてもよい。
【0038】
以上、実施の形態の具体例として、ガードルをあげて本発明を説明したが、本発明のボトム衣類は、これらの具体例で記載されたもののみに限定されるものではなく、種々の態様が可能である。例えば、上記の実施形態のような衣類以外にも、ショーツ、ボディースーツ等のファンデーション衣類や、水着、レオタード、スポーツ衣類、アウターなど、その他各種の衣類に適用できる。
【符号の説明】
【0039】
100 ボトム衣類(ガードル)
101 ボトム本体部
102 ウエスト部
103 クロッチ部
110 第1サポート部材
110A (第1サポート部材の)上辺部
110B (第1サポート部材の)下辺部
110C (第1サポート部材の)上端部
120 第2サポート部材
120A (第2サポート部材の)上辺部
120B (第2サポート部材の)下辺部
120C (第2サポート部材の)脇側部
230 第3サポート部材

P ヒップトップ
Q 上後腸骨棘
R 上方固定部
S 下方固定部
T 中間部分
図1
図2
図3
図4
図5