(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、その製造方法および硬化物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/10 20060101AFI20241009BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20241009BHJP
C08K 3/18 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
C08L101/10
C08L63/00 Z
C08K3/18
(21)【出願番号】P 2021563832
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2020043634
(87)【国際公開番号】W WO2021117476
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2019223576
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】久永 卓矢
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106566451(CN,A)
【文献】特表2011-518666(JP,A)
【文献】特開平9-249735(JP,A)
【文献】特開2002-88267(JP,A)
【文献】特開2013-124324(JP,A)
【文献】特開2009-127043(JP,A)
【文献】特表2011-500803(JP,A)
【文献】国際公開第2007/123231(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/125636(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)~(E)成分を含む、硬化性樹脂組成物:
(A)成分:1分子中にエポキシ基を2以上有するエポキシ樹脂;
(B)成分:ビスマス系触媒;
(C)成分:pH8.0以上の水;
(D)成分:1分子中に加水分解性シリル基を2以上有する有機重合体;
(E)成分:エポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項2】
前記(C)成分は、アルカリ電解水である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウムおよびメタ珪酸ナトリウムからなる群から選択される化合物を少なくとも1以上含む水である、請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)成分が、カルボン酸ビスマスである、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)成分100質量部に対して、前記(C)成分を0.05~30質量部含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(E)成分が25℃で液状のアミン化合物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
(F)成分として、充填剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
常温硬化性樹脂組成物である、請求項1~7のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
二液硬化性樹脂組成物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
前記二液硬化性樹脂組成物は、A剤およびB剤を含有し、前記A剤は、前記(A)~前記(C)成分を含有し、前記B剤は前記(D)成分および前記(E)成分を含有する、請求項9に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化することで得られる、硬化物。
【請求項12】
下記の(A)~(E)成分を混合することを含む、硬化性樹脂組成物の製造方法:
(A)成分:1分子中にエポキシ基を2以上有するエポキシ樹脂;
(B)成分:ビスマス系触媒;
(C)成分:pH8.0以上の水;
(D)成分:1分子中に加水分解性シリル基を2以上有する有機重合体;
(E)成分:エポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項13】
請求項12に記載の硬化性樹脂組成物の製造方法によって硬化性樹脂組成物を製造し、製造された硬化性樹脂組成物を硬化することを含む、硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機錫触媒を用いずに、硬化性が優れる硬化性樹脂組成物、その製造方法、および硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、接着力、封止性、高強度、耐熱性、電気特性、耐薬品性に優れる。このことから、従来、エポキシ樹脂は、接着剤、封止剤、シーラント剤、ポッティング剤、コーティング剤、導電性ペーストなどの様々な用途で用いられてきた。しかし、このようなエポキシ樹脂の硬化物は、強靱な力学的強度を発現するものの、可撓性が乏しい場合がある。そのため、エポキシ樹脂の硬化物には、被着体の動きに追従することができず、クラックやはがれ等が発生する場合がある。
【0003】
このことから、エポキシ樹脂に柔軟性を付与する目的で、変成シリコーン樹脂を配合することが行われている。このような技術として、特開2007-099806号公報には、エポキシ樹脂、変成シリコーン系ポリマーの硬化触媒、および充填材の配合されたA液と、末端にアルコキシシリル基を持つ変成シリコーン系ポリマー、およびエポキシ樹脂硬化剤が配合されたB液とからなることを特徴とする、接着剤が開示されている。
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、特開2007-099806号公報に開示された硬化性樹脂組成物は、変成シリコーン系ポリマーの硬化触媒(変成シリコーン樹脂用硬化剤)として、有機錫触媒を用いている。錫触媒は、毒性が強く、人体への有害性が問題となっており、各国で使用を規制する動きが出てきている。そのため、有機錫触媒の代替触媒が強く要望されている。
【0005】
有機錫の代替触媒としては、チタン触媒等が挙げられる。しかしながら、本発明者らは、検討の結果、チタン触媒を用いた硬化性樹脂組成物は、後述する本願明細書の比較例5に示すように、表面硬化性および接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性が劣るという問題があることを見出した。なお、接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性の問題とは、以下に示すものである。湿気硬化性樹脂組成物での基材同士の貼り合わせにおいて、大面積で接着する場合、湿気を含む空気と接触している周縁部の湿気硬化性樹脂組成物が先行して硬化する。そして、前記硬化物が未硬化の中心部に湿気が浸透するのを遮断することに起因して、中心部の湿気硬化性樹脂組成物が硬化するまでには多大の時間を要する。
【0006】
そこで、本発明は、有機錫触媒を用いずに、表面硬化性および接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の要旨を次に説明する。本発明は、従来のエポキシ樹脂、変成シリコーン系ポリマー、およびチタン触媒を含む硬化性樹脂組成物の問題点の少なくとも1つを克服するものである。
【0008】
本発明の一形態は、下記[1]に関する:
[1]下記の(A)~(E)成分を含む、硬化性樹脂組成物:
(A)成分:1分子中にエポキシ基を2以上有するエポキシ樹脂;
(B)成分:ビスマス系触媒;
(C)成分:pH8.0以上の水(すなわち、pH8.0以上である、水含有液);
(D)成分:1分子中に加水分解性シリル基を2以上有する有機重合体;
(E)成分:エポキシ樹脂用硬化剤。
【0009】
また、本発明は、好ましい形態の非限定的な例として、下記[2]~[11-2]に係る形態を包含する:
[2]前記(C)成分は、アルカリ電解水であることを特徴とする、[1]に記載の硬化性樹脂組成物;
[3]前記(C)成分が、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウムおよびメタ珪酸ナトリウムからなる群から選択される化合物を少なくとも1以上含む水であることを特徴とする[1]または[2]に記載の硬化性樹脂組成物;
[4]前記(B)成分が、カルボン酸ビスマスであることを特徴とする、[1]~[3]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
[5]前記(A)成分100質量部に対して、前記(C)成分を0.05~30質量部含むことを特徴とする、[1]~[4]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
[6]前記(E)成分が25℃で液状であるアミン化合物であることを特徴とする、[1]~[5]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
[7](F)成分として、充填剤をさらに含むことを特徴とする、[1]~[6]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
[8]常温硬化性樹脂組成物であることを特徴とする、[1]~[7]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
[9]二液硬化性樹脂組成物であることを特徴とする、[1]~[8]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
[10]前記二液硬化性樹脂組成物は、A剤およびB剤を含有し、前記A剤は、前記(A)~前記(C)成分を含有し、前記B剤は、前記(D)成分および前記(E)成分を含有する、二液硬化性樹脂組成物であることを特徴とする、[9]に記載の硬化性樹脂組成物;
[10-2]有機錫触媒を実質的に含まない、[1]~[10]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
[10-3]前記(A)成分が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型のアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型のアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルおよびビスフェノールE型のアルキレンオキサイド付加体からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[1]~[10-2]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
[10-4]前記加水分解性シリル基を構成する加水分解性基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシド基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシド基からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[1]~[10-3]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
[10-5]前記加水分解性シリル基は、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリフェノキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基およびジメチルエトキシシリル基からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[1]~[10-4]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
[10-6]前記(D)成分は、ポリオキシアルキレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリビニルブチラールおよびポリビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の構造を有することを特徴とする、[1]~[10-5]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
[10-7]前記(E)成分が、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、2級アミン、3級アミン、ポリアミドアミンおよびポリアミドからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[1]~[10-6]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
[10-8]前記(E)成分が、ピペリジン、ピリジン、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルアミノフェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルアミノp-クレゾール、ピペリジン、1,4-ジアザジシクロ〔2.2.2〕オクタン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールおよび1.8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン-1からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[1]~[10-7]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
[10-9](F)成分として、充填剤をさらに含み、前記(F)成分は、タルク、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ガラス、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化アルミ、窒化ホウ素、カーボン、ダイヤモンド、金、銀、銅およびニッケルからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[1]~[10-8]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
[10-10](F)成分として、充填剤をさらに含み、前記(F)成分は、平均粒径が0.01μm以上5.0μm未満の平均粒径が小さい充填剤と、平均粒径が5.0μm以上150μm以下の平均粒径が大きい充填剤とを含むことを特徴とする、[1]~[10-9]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
[10-11]さらにシランカップリング剤を含むことを特徴とする、[1]~[10-10]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
[10-12]前記シランカップリング剤は、ビニル基含有シランカップリング剤であることを特徴とする、[1]~[10-11]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
[10-13]常温硬化性樹脂組成物であることを特徴とする、[10-2]~[10-12]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
[10-14]二液硬化性樹脂組成物であることを特徴とする、[10-2]~[10-13]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物;
[10-15]前記二液硬化性樹脂組成物は、A剤およびB剤を含有し、前記A剤は、前記(A)~前記(C)成分を含有し、前記B剤は、前記(D)成分および前記(E)成分を含有する、二液硬化性樹脂組成物であることを特徴とする、[10-14]に記載の硬化性樹脂組成物;
[11][1]~[10]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化することで得られることを特徴とする、硬化物;
[11-2][10-2]~[10-15]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化することで得られることを特徴とする、硬化物。
【0010】
また、本発明の他の一形態は、下記[12]に関する:
[12]下記の(A)~(E)成分を混合することを含む、硬化性樹脂組成物の製造方法:
(A)成分:1分子中にエポキシ基を2以上有するエポキシ樹脂;
(B)成分:ビスマス系触媒;
(C)成分:pH8.0以上の水(すなわち、pH8.0以上である、水含有液);
(D)成分:1分子中に加水分解性シリル基を2以上有する有機重合体;
(E)成分:エポキシ樹脂用硬化剤。
【0011】
また、本発明は、好ましい形態の非限定的な例として、下記[12-2~13-2]に係る形態を包含する:
[12-2]前記(C)成分は、アルカリ電解水であることを特徴とする、[12]に記載の硬化性樹脂組成物の製造方法;
[12-3]前記(C)成分が、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウムおよびメタ珪酸ナトリウムからなる群から選択される化合物を少なくとも1以上含む水であることを特徴とする、[12]または[12-2]に記載の硬化性樹脂組成物の製造方法;
[12-4]前記(B)成分が、カルボン酸ビスマスであることを特徴とする、[12]~[12-3]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法;
[12-5]前記(A)成分100質量部に対して、前記(C)成分を0.05~30質量部含むことを特徴とする、[12]~[12-4]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法;
[12-6]前記(E)成分が25℃で液状であるアミン化合物であることを特徴とする、[12]~[12-5]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法;
[12-7](F)成分として、充填剤をさらに含むことを特徴とする、[12]~[12-6]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法;
[12-8]有機錫触媒を実質的に含まない、[12]~[12-7]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法;
[12-9]前記(A)成分が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型のアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型のアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルおよびビスフェノールE型のアルキレンオキサイド付加体からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[12]~[12-8]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法;
[12-10]前記加水分解性シリル基を構成する加水分解性基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシド基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシド基からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[12]~[12-9]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法;
[12-11]前記加水分解性シリル基は、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリフェノキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基およびジメチルエトキシシリル基からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[12]~[12-10]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法;
[12-12]前記(D)成分は、ポリオキシアルキレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリビニルブチラールおよびポリビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の構造を有することを特徴とする、[12]~[12-11]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法;
[12-13]前記(E)成分が、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、2級アミン、3級アミン、ポリアミドアミンおよびポリアミドからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[12]~[12-12]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法;
[12-14]前記(E)成分が、ピペリジン、ピリジン、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルアミノフェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルアミノp-クレゾール、ピペリジン、1,4-ジアザジシクロ〔2.2.2〕オクタン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールおよび1.8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン-1からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[12]~[12-13]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法;
[12-15](F)成分として、充填剤をさらに含み、前記(F)成分は、タルク、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ガラス、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化アルミ、窒化ホウ素、カーボン、ダイヤモンド、金、銀、銅およびニッケルからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[12]~[12-14]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法;
[12-16](F)成分として、充填剤をさらに含み、前記(F)成分は、平均粒径が0.01μm以上5.0μm未満の平均粒径が小さい充填剤と、平均粒径が5.0μm以上150μm以下の平均粒径が大きい充填剤とを含むことを特徴とする、[12]~[12-15]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法;
[12-17]さらにシランカップリング剤を含むことを特徴とする、[12]~[12-16]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法;
[12-18]前記シランカップリング剤は、ビニル基含有シランカップリング剤であることを特徴とする、[12]~[12-17]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法;
[12-19]常温硬化性樹脂組成物であることを特徴とする、[12]~[12-18]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法;
[12-20]二液硬化性樹脂組成物であることを特徴とする、[12]~[12-19]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法;
[12-21]前記二液硬化性樹脂組成物は、A剤およびB剤を含有し、前記A剤は、前記(A)~前記(C)成分を含有し、前記B剤は、前記(D)成分および前記(E)成分を含有する、二液硬化性樹脂組成物であることを特徴とする、[12-20]に記載の硬化性樹脂組成物の製造方法;
[13][12]に記載の硬化性樹脂組成物の製造方法によって硬化性樹脂組成物を製造し、製造された硬化性樹脂組成物を硬化することを含むことを特徴とする、硬化物の製造方法;
[13-2][12-2]~[12-21]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の製造方法によって硬化性樹脂組成物を製造し、製造された硬化性樹脂組成物を硬化することを含むことを特徴とする、硬化物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「X~Y」は、その前後に記載される数値(XおよびY)を下限値および上限値として含む意味で使用し、「X以上Y以下」を意味する。
【0013】
また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行う。
【0014】
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの総称である。(メタ)アクリル酸等の(メタ)を含む化合物等も同様に、名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。
【0015】
本発明の一形態は、下記の(A)~(E)成分を含む硬化性樹脂組成物に関する:
(A)成分:1分子中にエポキシ基を2以上有するエポキシ樹脂;
(B)成分:ビスマス系触媒;
(C)成分:pH8.0以上の水(pH8.0以上である、水含有液);
(D)成分:1分子中に加水分解性シリル基を2以上有する有機重合体;
(E)成分:エポキシ樹脂用硬化剤。
【0016】
かような硬化性樹脂組成物は、有機錫触媒を用いずに、表面硬化性および接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性が優れるものである。
【0017】
以下に発明の詳細を説明する。
【0018】
<(A)成分>
本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物は、(A)成分:1分子中にエポキシ基を2以上有するエポキシ樹脂を含む。本発明における(A)成分は、1分子中にエポキシ基を2以上有するエポキシ樹脂であれば、特に制限されない。(A)成分は、単独、あるいは2種以上を混合して使用することができる。(A)成分としては、作業性の観点から25℃で液状であるものが好ましい。
【0019】
なお、本明細書において、エポキシ樹脂とは、重合(硬化)して樹脂を形成することができる硬化性エポキシ化合物を表す。ここで、硬化性エポキシ化合物としては、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよい。
【0020】
(A)成分としては、特に制限されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型のアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型のアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ビスフェノールE型のアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールE型エポキシ樹脂、グリシジルアミン骨格を有するエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、水添クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、水添フェノールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノールジグリシジルエーテル、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、ウレタン変成エポキシ樹脂などが挙げることができる。これらの中でも、後述する(D)成分と相性がよく、表面硬化性および接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性により優れるという観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型のアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型のアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ビスフェノールE型のアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルが好ましく用いられる。また、これらの中でも、ビスフェノールA型のアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルが特に好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0021】
(A)成分としては、市販品を用いても合成品を用いてもよい。(A)成分の市販品としては、例えば、jER(登録商標)シリーズ 825、827、828、828EL、828US、828XA、834、806、806H、807、604、630、871、YX8000、YX8034、YX4000(以上、三菱ケミカル株式会社製)、EPICLON(登録商標)シリーズ 840、840-S、850、850-S、850-LC、EXA-850CRP、830、830-S、835、EXA-830LVP、EXA-850CRP、835LV、HP4032D、703、720、726、HP820、N-660、N-680、N-695、N-655-EXP-S、N-665-EXP-S、N-685-EXP-S、N-740、N-775、N-865(以上、DIC株式会社製)、アデカレジン(登録商標)EP4100、EP4000、EP4080、EP4085、EP4088、EP4100HF、EP4901HF、EP4000S、EP4000L、EP4003S、EP4010S、EP4010L、EPU6、EPR4023、EPR1309、EP49-20(以上、株式会社ADEKA製)、TEPIC(登録商標)、TEPIC(登録商標)-S、TEPIC(登録商標)-VL(以上、日産化学工業株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、それぞれ単独で用いても良く、また2種以上を混合して用いても良い。
【0022】
(A)成分のエポキシ当量は、50~5000g/epが好ましく、さらに好ましくは100~1000g/epであり、特に好ましくは120~600g/epである。
【0023】
<(B)成分>
本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物は、(B)成分:ビスマス系触媒を含む。
【0024】
本発明における(B)成分は、ビスマス系触媒であれば、特に制限されない。シラノール触媒は、シラノール基を有する化合物を反応させる触媒である。シラノール触媒は、後述する(D)成分である1分子中に加水分解性シリル基を2以上有する有機重合体や、後述するその他の成分であるシランカップリング剤などが加水分解した後に得られるシラノール基を反応させるよう作用する。シラノール触媒の中でも本発明の(B)成分を選択し、本発明のその他成分と組み合わせることにより、有機錫触媒を用いずに、表面硬化性および接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性が優れるという顕著な効果をもたらすことができる。
【0025】
(B)成分としては、特に制限されないが、例えば、ネオデカン酸ビスマス、カルボン酸ビスマス、安息香酸ビスマス、アビエチン酸ビスマス、ネオアビエチン酸ビスマス、オクチル酸ビスマスなどが挙げられる。これらの中でも、接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性およびアルミニウムに対する接着性により優れるとの観点から、ネオデカン酸ビスマス、カルボン酸ビスマスが好ましい。また、これらの中でも、カルボン酸ビスマスが特に好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0026】
(B)成分としては、市販品を用いても合成品を用いてもよい。(B)成分の市販品としては、特に制限されないが、例えば、プキャット(登録商標)B7、プキャット(登録商標)25、ネオデカン酸ビスマス(以上、日本化学産業株式会社製)、K-KAT(登録商標) 348、K-KAT(登録商標) XC-C227、K-KAT(登録商標) XK-628、K-KAT(登録商標) XK-640(以上、KING INDUSTRIES社製)、Borchi(登録商標) Kat 315、Borchi(登録商標) Kat 320、Borchi(登録商標) Kat 24(以上、Borchers社製)などが挙げられる。
【0027】
(B)成分の配合量は、特に制限されないが、好ましくは、(D)成分100質量部に対して、0.01~50質量部の範囲であり、より好ましくは、0.05~30質量部であり、特に好ましくは、0.1~10質量部である。上記の範囲内であることで、より一層、接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性およびアルミニウムに対する接着性に優れる。
【0028】
<(C)成分>
本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物は、(C)成分:pH8.0以上の水(すなわち、pH8.0以上である、水含有液)を含む。本発明の(C)成分は、pH8.0以上の水(すなわち、pH8.0以上である、水含有液)であれば特に制限されない。本発明の(C)成分は、その他成分と組み合わせることにより、有機錫触媒を用いずに、表面硬化性および接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性が優れるという顕著な効果をもたらすことができる。一方、pH8.0未満の水(すなわち、pH8.0未満である、水含有液)を使用する場合や、水を使用しない場合には、表面硬化性および接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性に劣る結果となる。また、本発明の(C)成分を使用する場合と比較して、接着性がより低くなる傾向がある。
【0029】
(C)成分のpHは、8.0以上であれば特に制限されないが、好ましくは、8.5~13.5であり、さらに好ましくは、9.0~13.3であり、特に好ましくは、9.5~13.0である。(C)成分のpHの評価方法は、特に制限されないが、例えば、株式会社堀場エステック製ガラス電極式水素イオン濃度指示計D-54により算出した値を用いることができる。
【0030】
水(pH8.0以上である、水含有液、またはその原料としての水)としては、特に制限されないが、例えば、蒸留水、イオン交換水、水道水、アルカリ電解水などを用いることができる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、アルカリ電解水を用いることが好ましい。よって、本発明の好ましい一実施形態において、(C)成分は、アルカリ電解水である。
【0031】
本明細書において、アルカリ電解水とは、電解質を添加した水を電気分解し、陰極側から得られることを経た、アルカリ性を示す水を表す。よって、電解質を添加した水を電気分解し、陰極側から得られるアルカリ性を示す水は、アルカリ電解水である。また、電解質を添加した水を電気分解し、陰極側から得られるアルカリ性を示す水が、蒸留水、イオン交換水、水道水などの他の水によって希釈されて得られる水も、アルカリ電解水として取り扱う。そして、電解質を添加した水を電気分解し、陰極側から得られるアルカリ性を示す水から、残存する電解質や当該電解質より生じうるイオンを除去して得られる水も、アルカリ電解水であるとする。よって、アルカリ電解水としては、特に制限されないが、例えば、水を電気分解することで陰極側より発生する水酸化物イオンが含まれる水などが挙げられる。また、アルカリ電解水としては、特に制限されないが、例えば、水を電気分解することで陰極側より発生する水酸化物イオンが含まれる水を、純水で希釈することで得られた水などが挙げられる。これらの中でも、水を電気分解することで陰極側より発生する水酸化物イオンが含まれる水が好ましい。
【0032】
アルカリ電解水は、不純物を含んでいてもよく、不純物が除去されてこれを含まないものであってもよい。不純物としては、特に制限されないが、例えば、アルカリ電解水の調製における電気分解の際に添加される電解質または当該電解質より生じうるイオン等が挙げられる。また、アルカリ電解水の調製における電気分解の際に添加される電解質は、特に限定されず、公知の電解質を用いることができる。電解質としては、特に制限されないが、(A)成分、(B)成分、(D)成分および(E)成分以外の成分であって、水に溶解する化合物であることが好ましい。ここで、他の成分としては、例えば、(A)成分、(B)成分、(D)成分、(E)成分、および(F)成分以外の成分等が挙げられる。また、例えば、(A)成分、(B)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、シランカップリング剤、スチレン系共重合体等の各種エラストマー、ポリチオール化合物、保存安定剤、酸化防止剤、光安定剤、重金属不活性剤、粘着付与剤、可塑剤、消泡剤、染料、顔料、防錆剤、レベリング剤、分散剤、レオロジー調整剤および界面活性以外の成分等が挙げられる。また、(C)成分に含まれる電解質としては、特に制限されないが、例えば、塩基性化合物等が挙げられる。また、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム等が挙げられる。
【0033】
また、(C)成分は、水のみであってもよく、(C)成分は、水と、他の化合物とを混合して得られる液であってもよい。(C)成分に混合される他の化合物としては、特に制限されないが、例えば、上記の電解質と同様のものが挙げられる。また、(C)成分に含まれる他の化合物としては、特に制限されないが、少なくとも水のpHを8.0以上とすることができる化合物であることが好ましく、特に制限されないが、例えば、塩基性化合物等が挙げられる。また、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム等が挙げられる。
【0034】
これらのことから、本発明の好ましい一実施形態に係る(C)成分としては、電解質を含む水が挙げられる。また、本発明のより好ましい一実施形態に係る(C)成分としては、塩基性化合物を含む水が挙げられる。そして、本発明のさらに好ましい一実施形態に係る(C)成分としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウムおよびメタ珪酸ナトリウムからなる群から選択される化合物を少なくとも1以上含む水が挙げられる。
【0035】
(C)成分のpHは、特に制限されないが、例えば、電解質で調整することができる。また、(C)成分のpHは、例えば、塩基性化合物で調整することができる。そして、(C)成分のpHは、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、メタ珪酸ナトリウムで調整することができる。(C)成分がアルカリ電解水である場合、(C)成分のpHは、例えば、電解質の種類および量、ならびに電気分解の条件等によって調整することができる。また、(C)成分のpHは、例えば、電気分解の結果、陰極より得られた水に対して添加する水(例えば、純水)の量によって調整することができる。また、(C)成分が水と、他の化合物とを混合して得られる液である場合、(C)成分のpHは、例えば、水に対して塩基性化合物を添加することで調整することができる。また、(C)成分のpHは、水に対して、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、メタ珪酸ナトリウムなどを添加することで調整することができる。この際、(C)成分に含まれる水と、他の化合物の配合量の比の好ましい一例としては、特に制限されないが、水と、他の化合物とを混合した際に、pHを8.0以上とすることができる比が挙げられる。
【0036】
(C)成分としては、市販品を用いても自ら準備したものを用いてもよい。また、市販品を原料として用いて調整したものを用いてもよい。(C)成分やその原料となる市販品としては、特に制限されないが、例えば、ThreeBond 6658(株式会社スリーボンド製)、ファースト・アルカリウォーター(大一産業株式会社製)などが挙げられる。
【0037】
(C)成分の配合量は、特に制限されないが、(D)成分100質量部に対して、好ましくは、0.05~30質量部であり、より好ましくは、0.1~20質量部であり、特に好ましくは、0.3~10質量部である。上記の範囲内であることで、より一層、表面硬化性および接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性、アルミニウムに対する接着性に優れる。
【0038】
(C)成分の配合量は、特に制限されないが、(A)成分100質量部に対して、好ましくは、0.05~30質量部であり、より好ましくは、0.1~20質量部であり、特に好ましくは、0.3~10質量部である。上記の範囲内であることで、より一層、表面硬化性および接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性、アルミニウムに対する接着性に優れる。
【0039】
<(D)成分>
本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物は、(D)成分:1分子中に加水分解性シリル基を2以上有する有機重合体を含む。本発明の(D)成分は、1分子中に加水分解性シリル基を2以上有する有機重合体であり、湿気により架橋反応が開始される有機重合体であることが好ましい。加水分解性シリル基は、有機重合体の末端または側鎖に結合してよいが、接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性により優れるという観点から、末端に結合していることが好ましく、両末端に結合していることがより好ましい。
【0040】
本明細書において、加水分解性シリル基とは、珪素原子に1~3個の加水分解性基が結合した基を表す。加水分解性基としては、特に制限されないが、ハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、アシルオキシド基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシド基などが好ましい例として挙げられる。これらの中でも、接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性およびアルミニウムに対する接着性により優れるとの観点から、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0041】
アルコキシ基が珪素原子に結合したアルコキシシリル基としては、特に制限されないが、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリフェノキシシリル基等のトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基等のジアルコキシシリル基;ジメチルメトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基等のモノアルコキシシリル基を挙げることができる。これらの中でも、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基が好ましく、接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性およびアルミニウムに対する接着性により優れるとの観点から、トリアルコキシシリル基がより好ましい。また、これらの中でも、トリメトキシシリル基が特に好ましい。これらは単独で用いてもよく、これらを複数個組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(D)成分の有機重合体の構造は、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテル等の構造が挙げられる。これらの中でも、表面硬化性がより優れるとの観点から、ポリオキシアルキレン、ポリイソブチレン、ポリ(メタ)アクリレートなどの構造が好ましく、接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性がより優れるとの観点から、ポリオキシアルキレン、ポリ(メタ)アクリレートなどの構造がより好ましい。また、これらの中でも、ポリオキシアルキレンが特に好ましい。(D)成分としては、これらの構造の重合体を、それぞれ単独で用いても良く、また、2種以上の混合物であっても良い。そして、(D)成分としては、これらのうちの複数の構造を有する重合体を用いてもよい。
【0043】
(D)成分は、取扱いの観点より、25℃において液状であることが好ましい。(D)成分の粘度(25℃)の範囲は、特に限定されないが、好ましくは0.5~3000Pa・sの範囲であり、より好ましくは1~2000Pa・sの範囲であり、特に好ましくは、3~1500Pa・sの範囲が挙げられる。前記の範囲内であることで、より一層、接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性に優れるとともに、作業性がより良好な硬化性樹脂組成物が得られる。なお、特に断りがない限り、粘度の測定は、コーンプレート型粘度計を用い、25℃での粘度をJIS K6833-1:2008に準拠して測定することで行う。
【0044】
これらのことから(D)成分の好ましい一例としては、例えば、両末端トリメトキシシリル基含有ポリオキシアルキレン等が挙げられる。また、より好ましい一例としては、粘度(25℃)が0.5~3000Pa・s(より好ましくは1~2000Pa・s、さらに好ましくは3~1500Pa・s)である、両末端トリメトキシシリル基含有ポリオキシアルキレン等が挙げられる。
【0045】
(D)成分としては、市販品を用いても合成品を用いてもよい。(D)成分の市販品としては、特に制限されないが、例えば、サイリル(登録商標)SAT010、SAX115、SAT030,SAT030、SAT200,SAT350、SAT400,SAX220、SAX510、SAX530、SAX580、SAX710、SAX720,SAX725、SAX770、MA440、MA447、MA451、MA903、MA903M、MA904、S943、MAX923、MAX951、SAX520、OR100S、MSポリマー(登録商標)S203、S303,S203H、S303H、S943S、S911S、XMAP(登録商標)SA100S、SA310S、エピオン(登録商標)EP100S、EP103S、EP303S、EP505S等(以上、株式会社カネカ製)、エクセスター(登録商標)ES-S2410、ES-S2420、ES-S3430、ES-S3610、ES-S3630(以上、旭硝子株式会社製)等が挙げられる。
【0046】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは、30~300質量部であり、より好ましくは、30~200質量部であり、特に好ましくは、50~150質量部である。上記の範囲内であることで、より一層、表面硬化性および接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性、アルミニウムに対する接着性に優れる。
【0047】
<(E)成分>
本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物は、(E)成分:エポキシ樹脂用硬化剤を含む。すなわち、本発明の(E)成分は、エポキシ樹脂用硬化剤である。(E)成分としては、好ましくは25℃で液状のアミン化合物が挙げられる。
【0048】
(E)成分としては、特に制限されないが、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、2級アミン、3級アミン、ポリアミドアミン、ポリアミドなどが挙げられる。アミン化合物は、単独で用いられても、また、2種以上の混合物であっても良い。
【0049】
脂肪族ポリアミンとしては、特に制限されないが、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。また、脂環式ポリアミンとしては、特に制限されないが、例えば、メンセンジアミン(MDA)、イソフォロンジアミン(IPDA)、N-アミノエチルピペラジン(N-AEP)、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ノルボルナンジアミン(NBDA)等が挙げられる。また、芳香族ポリアミンとしては、特に制限されないが、例えば、メタキシリレンジアミン(MXDA)、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジエチルジフェニルメタン等が挙げられる。
【0050】
2級アミンまたは3級アミンとしては、特に制限されないが、例えば、ピペリジン、ピリジン、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルアミノフェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルアミノp-クレゾール、ピペリジン、1,4-ジアザジシクロ〔2.2.2〕オクタン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1.8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン-1等が挙げられる。
【0051】
(E)成分としては、市販品を用いても合成品を用いてもよい。(E)成分の市販品としては、特に制限されないが、例えば、アンカミン(登録商標)シリーズ K-54(エアープロダクツジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0052】
(E)成分の配合量は、特に制限されないが、(A)成分100質量部に対して、好ましくは、(E)成分が1~300質量部であり、より好ましくは、1~150質量部であり、特に好ましくは、3~100質量部である。上記の範囲内にすることで、より一層、接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性に優れるとともに、作業性がより良好な硬化性樹脂組成物が得られる。
【0053】
<(F)成分>
本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物は、(F)成分:充填剤をさらに含むことが好ましい。すなわち、さらに、本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物に対し、本発明の目的を損なわない範囲で、(F)成分である充填剤を用いることができる。従来の湿気硬化性樹脂組成物は、充填剤が大量に配合された場合、湿気硬化性樹脂組成物の内部に水分が透過しにくいため内部硬化性が著しく遅くなる傾向にあった。一方で本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物は、内部硬化性に優れることから、充填剤を大量に配合することができ、様々な機能を付与することができる。
【0054】
(F)成分としては、特に制限されないが、例えば、タルク、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ガラス、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化アルミ、窒化ホウ素、カーボン、ダイヤモンド、金、銀、銅、ニッケルなどが挙げられる。また、(F)成分は、表面処理したものであってもよい。また、これらは単独で使用してもよく、または混合して使用してもよい。
【0055】
(F)成分としては、硬化性樹脂組成物に、硬化物の高モジュラス化を付与するためには、タルク、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ガラスが好ましい。硬化性樹脂組成物に熱伝導性を付与する目的では、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化アルミ、窒化ホウ素、カーボン、ダイヤモンド等の熱伝導性粉末が好ましい。硬化性樹脂組成物に難燃性を付与する目的では、水酸化アルミニウムが好ましい。硬化性樹脂組成物に導通性を付与する目的では、金、銀、銅、ニッケル等の導電性フィラーが好ましい。
【0056】
(F)成分の平均粒径(50%平均粒径)は、表面硬化性、接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性に優れる硬化性樹脂組成物が得られるという観点から、0.01μm以上150μm以下が好ましく、0.1μm以上100μm以下がより好ましく、0.5μm以上70μm以下が最も好ましい。なお、本発明において、平均粒径とは、例えば、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における累積50%での粒径である(D50ともいう)。
【0057】
(F)成分としては、市販品を用いても合成品を用いてもよい。(F)成分の市販品としては、特に制限されないが、例えば、ローソーダアルミナ LS-210B(日本軽金属株式会社製)、AO-509(株式会社アドマテックス製等が挙げられる。
【0058】
(F)成分の含有量は、特に限定されないが、例えば、本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物全体に対して、5~95質量%が好ましく、10~90質量%がより好ましく、20~85質量%が特に好ましい。(F)成分の含有量が前記の範囲内であることで、より一層、表面硬化性、接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性に優れる硬化性樹脂組成物が得られる。
【0059】
本発明の硬化性樹脂組成物を熱伝導性樹脂組成物として用いる場合は、(F)成分の含有量は、特に制限されないが、例えば、本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物全体に対して、30~95質量%が好ましく、40~90質量%がより好ましく、50~85質量%が特に好ましい。
【0060】
本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物を熱伝導性樹脂組成物として用いる場合、(F)成分としては、粘度が低く、熱伝導性、接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性に優れる硬化性樹脂組成物が得られることから、平均粒径違いの充填剤を2種類以上併用することが好ましい。具体的には、平均粒径が小さい充填剤は、0.01μm以上5.0μm未満が好ましく、0.1μm以上3.5μm以下がより好ましい。また、平均粒径が大きい充填剤は、硬化前の粘度が低く、熱伝導性に優れる硬化性樹脂組成物が得られることから、平均粒径が5.0μm以上150μm以下が好ましく、6.0μm以上100μm以下がより好ましく、7.0μm以上70μm以下が最も好ましい。また、平均粒径が小さい充填剤100質量部に対する、平均粒径が大きい充填剤の含有量は、好ましくは、10~700質量部であり、より好ましくは、20~600質量部であり、特に好ましくは、30~500質量部である。平均粒径が小さい充填剤と、平均粒径が大きい充填剤との添加量が前記の範囲内であることで、より一層、表面硬化性、接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性に優れる硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0061】
<他の添加剤>
本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物に対し、本発明の目的を損なわない範囲で、シランカップリング剤、スチレン系共重合体等の各種エラストマー、ポリチオール化合物、保存安定剤、酸化防止剤、光安定剤、重金属不活性剤、粘着付与剤、可塑剤、消泡剤、染料、顔料、防錆剤、レベリング剤、分散剤、レオロジー調整剤および界面活性剤等の他の添加剤を使用することができる。これらの中でも、本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤、保存安定剤または酸化防止剤を含むことが好ましく、シランカップリング剤を含むことが特に好ましい。
【0062】
シランカップリング剤としては、特に制限されないが、例えば、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン,ヘキシルトリメトキシシランなどのアルキル基含有シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのフェニル基含有シランカップリング剤;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシシリルトリエトキシシランなどのグリシジル基含有シランカップリング剤;3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;その他γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、スチリルシラン、ウレイドシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン等が挙げられる。これらの中でも、硬化性樹脂組成物の保存性を維持しつつ、表面硬化性および接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性がより優れることから、アルキル基含有シランカップリング剤、フェニル基含有シランカップリング剤、ビニル基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤が好ましく、ビニル基含有シランカップリング剤がより好ましい。また、これらの中でも、ビニルトリメトキシシランが特に好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、シランカップリング剤の添加量は、特に制限されないが、例えば、本発明の前記(D)成分100質量部に対して、好ましくは、0.05~100質量部の範囲であり、より好ましくは、0.1~50質量部であり、特に好ましくは、1~30質量部の範囲である。上記の範囲内であることで、硬化性樹脂組成物の保存性を維持しつつ、表面硬化性および接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性がより優れる。
【0063】
本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物に対し酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、例えば、β-ナフトキノン、2-メトキシ-1,4-ナフトキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノ-tert-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン等のキノン系化合物;フェノチアジン、2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、カテコール、tert-ブチルカテコール、2-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-〔1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル〕-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、3,9-ビス〔2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニロキシ〕-1,1-ジメチルエチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、チオジエチレンビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド〕、ベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ,C7-C9側鎖アルキルエステル、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕フォスフォネート、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a”-(メシチレン-2,4,6-トリル)トリ-p-クレゾール、カルシウムジエチルビス〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕フォスフォネート、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、ヘキサメチレンビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス〔(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル〕-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、N-フェニルベンゼンアミンと2,4,6-トリメチルペンテンとの反応生成物、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、ピクリン酸、クエン酸等のフェノール類;トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、トリス〔2-〔〔2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサフォスフェフィン-6-イル〕オキシ〕エチル〕アミン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリートールジフォスファイト、ビス〔2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル〕エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)〔1,1-ビスフェニル〕-4,4’-ジイルビスホスフォナイト、6-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンズ〔d、f〕〔1,3,2〕ジオキサフォスフェフィン等のリン系化合物;ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ラクトン系化合物;ビタミンE系化合物等が挙げられる。これらの中でも、フェノール系化合物が好適である。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
保存安定剤としては、特に制限されないが、例えば、エチルシリケート、プロピルシリケート、ブチルシリケートなどのシリケート化合物類;ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチルなどのホウ酸エステルなどが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
本発明の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、有機錫触媒を実質的に含まないことが好ましい。本明細書において、「有機錫触媒を実質的に含まない」とは、有機錫触媒の含有量が、硬化性樹脂組成物の総質量に対して0.1質量%未満であることをいう。有機錫触媒の含有量は、少ないほど好ましく、好ましくは0.01質量%未満であり、より好ましくは0.001質量%未満であり、有機錫触媒を含まないことが最も好ましい。
【0066】
<硬化性樹脂組成物の製造方法>
本発明の他の一形態は、下記の(A)~(E)成分を混合することを含む、硬化性樹脂組成物の製造方法に関する:
(A)成分:1分子中にエポキシ基を2以上有するエポキシ樹脂;
(B)成分:ビスマス系触媒;
(C)成分:pH8.0以上の水(すなわち、pH8.0以上である、水含有液);
(D)成分:1分子中に加水分解性シリル基を2以上有する有機重合体;
(E)成分:エポキシ樹脂用硬化剤。
【0067】
上記の(A)~(E)成分の種類、添加量、特性、好ましい態様等の詳細は、上記の硬化性樹脂組成物の説明と同様である。
【0068】
また、本発明の一実施形態に係る製造方法は、上記の(A)~(E)成分に加えて、他の添加剤を混合してもよい。他の添加剤の種類、添加量、特性、好ましい態様等の詳細は、上記の硬化性樹脂組成物の説明と同様である。
【0069】
<硬化方法、硬化物およびその製造方法>
本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物は、二液混合または湿気により常温(25℃)環境下で硬化させることが可能である、常温硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
【0070】
また、本発明の一形態に係る製造方法によって製造された硬化性樹脂組成物は、二液混合または湿気により常温(25℃)環境下で硬化させることが可能である、常温硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
【0071】
また、本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物や、本発明の一形態に係る製造方法によって製造された硬化性樹脂組成物は、加熱により短時間で硬化促進させることができる。当該加熱条件は、特に限定されないが、例えば、45~200℃の温度が好ましく、50~170℃の温度であることがより好ましく、55~150℃の温度であることがさらに好ましい。
【0072】
本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物を硬化することで得られる硬化物もまた、本発明のその他の一形態である。また、本発明の一形態に係る製造方法によって硬化性樹脂組成物を製造し、製造された硬化性樹脂組成物を硬化することを含む、硬化物の製造方法もまた、本発明のさらなる他の一形態である。
【0073】
なお、二液混合による硬化とは、使用の際に二つの液を混合することで硬化させることができることを意味する。
【0074】
<二液硬化性樹脂組成物およびその製造方法>
本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物は、二液硬化性樹脂組成物であることが好ましい。二液硬化性樹脂組成物としては、特に制限されないが、例えば、A剤およびB剤を含有するものであり、A剤は、(A)~(C)成分を含有する組成物であり、B剤は、(D)成分および(E)成分を含有する組成物であることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい一実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、A剤およびB剤を含有し、A剤は、(A)~(C)成分を含有し、B剤は(D)成分および(E)成分を含有する、二液硬化性樹脂組成物である。
【0075】
また、本発明の一実施形態に係る製造方法は、二液硬化性樹脂組成物の製造方法であって、(A)~(C)成分を混合することを含む、A液の調製工程と、(D)成分および(E)成分を混合することを含む、B液の調製工程と、を含むことが好ましい。
【0076】
これらのように、成分を別々の液に分けることにより、貯蔵中に無駄な反応をより抑えることができ貯蔵安定性をより高めることができる。そして、使用の際に二つの液を混合することで速やかに硬化させることができる。
【0077】
なお、(F)成分、シランカップリング剤などの任意成分は、A剤、B剤の片方または両方ともに含んでいてもよい。これらの中でも、(F)成分は、少なくともB剤に含まれることが好ましく、B剤のみに含まれることがより好ましい。また、シランカップリング剤は、少なくともB剤に含まれることが好ましく、B剤のみに含まれることがより好ましい。
【0078】
また、(F)成分、シランカップリング剤などの任意成分は、A剤、B剤の片方または両方の調製工程において混合されてもよい。これらの中でも、(F)成分は、少なくともB剤の調製工程において混合されることが好ましく、B剤の調製工程のみにおいて混合されることがより好ましい。また、シランカップリング剤は、少なくともB剤の調製工程において混合されることが好ましく、B剤の調製工程のみにおいて混合されることがより好ましい。
【0079】
なお、A剤100質量部に対して、B剤は、0.1~1000質量部の範囲であることが好ましく、1~900質量部の範囲であることがより好ましく、5~800質量部の範囲であることがさらに好ましく、10~700質量部の範囲であることが特に好ましい。
【0080】
また、本発明の一実施形態に係る常温硬化性樹脂組成物や、本発明の一実施形態に係る製造方法によって製造された常温硬化性樹脂組成物は、二液硬化性樹脂組成物であることが特に好ましい。
【0081】
<用途>
本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物や、本発明の一形態に係る製造方法によって製造された硬化性樹脂組成物は、有機錫触媒を用いずに、表面硬化性および接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性が優れる。このことから、これらの硬化性樹脂組成物、またはその硬化物の用途としては、特に制限されないが、例えば、接着剤、封止剤、シーラント剤、ポッティング剤、コーティング剤、熱伝導性樹脂、難燃性樹脂、導電性ペースト等の各種用途に好ましく用いられる。これらの硬化性樹脂組成物、またはその硬化物は、自動車部品、電気電子部品、建材などの用途に特に好適である。また、本発明の一実施形態に係る熱伝導性湿気硬化性組成物(熱伝導性湿気硬化性樹脂組成物)、本発明の一実施形態に係る製造方法によって製造された熱伝導性湿気硬化性組成物(熱伝導性湿気硬化性樹脂組成物)、またはこれらの硬化物は、電子基板の放熱;携帯電話、パソコンなどの電子機器の放熱;LED等の照明の放熱;光ピックアップモジュールの放熱;カメラモジュールの放熱;センシングデバイス、の放熱;パワー半導体の放熱;HEV、FCV、EV用インバーターの放熱;HEV、FCV、EV用コンバーターの放熱:電池パック、HEV、FCV、EV用ECU部品の放熱などの各種用途で使用可能である。
【0082】
<放熱方法>
本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物、本発明の一形態に係る製造方法によって製造された硬化性樹脂組成物、またはこれらの硬化物を用いた放熱方法は、本発明の一実施形態である熱伝導性湿気硬化性組成物(熱伝導性湿気硬化性樹脂組成物)、または本発明の一実施形態に係る製造方法によって製造された熱伝導性湿気硬化性組成物(熱伝導性湿気硬化性樹脂組成物)を電気電子部品に塗布することにより電気電子部品から発生した熱を外部へ放熱させるものなどが挙げられる。かような電気電子部品としては、特に制限されないが、例えば、電子基板;携帯電話;パソコンなどの電子機器;LED等の照明機器;光ピックアップモジュール;カメラモジュール;センシングデバイス;パワー半導体;HEV、FCV、EV用インバーター;HEV、FCV、EV用コンバーター;HEV、FCV、EV用ECU部品などが挙げられる。
【実施例】
【0083】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0084】
実施例および比較例において使用した試験法は、下記の通りである。
【0085】
<硬化性樹脂組成物のA剤の調製>
[A剤-1の調製]
(A)成分として、25℃で液状であるビスフェノールA型のアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル(a1)(株式会社ADEKA製 アデカレジン(登録商標) EP4000)(エポキシ当量 320g/ep)100質量部と、
(B)成分として、カルボン酸ビスマス(b1)(KING INDUSTRIES社製 K-KAT XK640)4質量部と、
(C)成分として、pH12.7のアルカリ電解水(アルカリ電解液水)(c1)(株式会社スリーボンド製 (製品名)ThreeBond 6658)1質量部と、
を添加し、常温(25℃)にてミキサーで60分混合し、A剤-1を得た。
【0086】
[A剤-2の調製]
A剤-1において、(c1)を、pH10.0のアルカリ電解水(アルカリ電解液水)(c2)に変更した以外は、A剤-1と同様にして調製し、A剤-2を得た。ここで、pH10.0のアルカリ電解水の調製は以下のように行った:
[pH10.0のアルカリ電解水の調製]
pH12.7のアルカリ電解水(アルカリ電解液水)(株式会社スリーボンド製 (製品名)ThreeBond 6658)に純水(pH7)(株式会社スリーボンド製)を添加して、pH10.0のアルカリ電解水を調製した。
【0087】
[A剤-3の調製]
A剤-1において、(c1)を、pH7.0の水(c’1)(株式会社スリーボンド製 純水)に変更した以外は、A剤-1と同様にして調製し、A剤-3を得た。
【0088】
[A剤-4の調製]
A剤-1において、(c1)を、pH2.5の水(c’2)(株式会社スリーボンド製 (製品名)ThreeBond 6658C)に変更した以外は、A剤-1と同様にして調製し、A剤-4を得た。
【0089】
[A剤-5の調製]
A剤-1において、(c1)を除いた以外は、A剤-1と同様にして調製し、A剤-5を得た。
【0090】
[A剤-6の調製]
A剤-1において、(b1)の代わりに、亜鉛触媒(b’1)(KING INDUSTRIES社製 K-KAT 670)に変更した以外は、A剤-1と同様にして調製し、A剤-6を得た。
【0091】
[A剤-7の調製]
A剤-1において、(b1)の代わりに、キレート系チタン触媒(b’2)(松本製薬工業株式会社製 TC-750)に変更した以外は、A剤-1と同様にして調製し、A剤-7を得た。
【0092】
[A剤-8の調製]
A剤-1において、(b1)の代わりに、有機錫触媒(b’3)(日東化成株式会社製 ネオスタン(登録商標)S-1)に変更した以外は、A剤-1と同様にして調製し、A剤-8を得た。
【0093】
<硬化性樹脂組成物のB剤の調製>
[B剤-1の調製]
(D)成分として、粘度(25℃)が7Pa・sである両末端トリメトキシシリル基含有ポリオキシアルキレン(d1)(株式会社カネカ製 サイリル(登録商標)SAX530)100質量部と、
(E)成分として、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(e1)(25℃で液状、エアープロダクツジャパン株式会社製 アンカミン(登録商標)K-54)4質量部と、
シランカップリング剤として、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、
を添加し、常温(25℃)にてミキサーで60分混合し、B剤-1を得た。
【0094】
下記表1の実施例、比較例における試験方法は下記の通りである。
【0095】
<(1)タックフリータイム試験>
下記表1に示されるように、硬化性樹脂組成物のA剤105質量部と、B剤112質量部とを、ポリエチレン製容器に投入し、25℃環境下で、木製の棒を用いて10分間混合した。次に、ガラス製テストピースに、250μm厚で混合後の硬化性樹脂組成物を塗布し、25℃×55%RHの雰囲気下に放置し、木製の棒により混合後の硬化性樹脂組成物の表面を触り、混合後の硬化性樹脂組成物の糸ひきが無くなるまでの時間を「タックフリータイム(分)」とした。ここで、600分以内にタックフリータイムを測定できなかった時は、「未硬化」と記載した。なお、タックフリータイムは、350分以内であることが好ましく、330分以内であることがより好ましい。結果を下記表1に示す。
【0096】
<(2)アルミニウムに対する引張せん断接着強さ>
[試験片の準備]
下記表1に示されるように、硬化性樹脂組成物のA剤105質量部と、B剤112質量部とを、ポリエチレン製容器に投入し、25℃環境下で、木製の棒を用いて10分間混合した。次いで、幅25mm×長さ100mm×厚さ1mmのアルミニウム(A1050P)製テストピースに、実施例、比較例の混合後の硬化性樹脂組成物を塗布した。その後、別のアルミニウム(A1050P)製テストピースを、オーバーラップ面が25mm×10mmになるように貼り合わせて、クリップで固定した。なお、オーバーラップ面は、2つのアルミニウム製テストピースの間に硬化性樹脂組成物が存在する構成となる。そして、25℃、85%RH環境下で12時間経過後したものを試験片とした。
【0097】
[引張せん断接着強さの測定]
前記試験片を用いて、25℃にて万能引張試験機(引っ張り速度50mm/min.)にて、せん断接着強さ(単位はMPa)をJIS K 6850:1999に従い測定した。せん断接着強さは最大強度時の値とする。結果を下記表1に示す。
【0098】
なお、本発明においてアルミニウムに対するせん断接着強さは、1.3MPa以上が好ましい。
【0099】
<(3)貼り合わせ後の内部硬化性>
[試験片の準備]
下記表1に示されるように、硬化性樹脂組成物のA剤105質量部と、B剤112質量部とを、ポリエチレン製容器に投入し、25℃環境下で、木製の棒を用いて10分間混合した。次いで、ポリテトラフルオロエチレン製シートが表面に貼られたガラス板(幅150mm×長さ150mm×厚さ5mm)に、混合後の硬化性樹脂組成物を塗布した。その後、別のポリテトラフルオロエチレン製シートが表面に貼られたガラス板をオーバーラップ面が25mm×10mmになるように貼り合わせて、クリップで固定した。なお、オーバーラップ面は、2つのポリテトラフルオロエチレン製シートが表面に貼られたガラス板の間に硬化性樹脂組成物が存在しており、各ポリテトラフルオロエチレン製シートと、硬化性樹脂組成物とが接触する構成となる。そして、25℃、55%RH環境下で8時間経過後したものを試験片とした。なお、貼り合わせは、被着体と被着体との間にガラス板(スペーサーとしてのガラス板(厚み0.5mm))を挟み込み、クリアランスが0.5mmになるよう管理して行った。
【0100】
[内部硬化性の確認]
前記試験片からガラステストピース(ポリテトラフルオロエチレン製シートが表面に貼られたガラス板)を剥がして、ガラス製テストピース間の隙間に存在する硬化物の状態を目視で確認した。結果は均一に硬化物が形成されていることが確認できれば「合格」とし、中心部分に液状の組成物が残っており未硬化であれば「不合格」とした。結果を下記表1に示す。
【0101】
【0102】
上記表1の実施例1、2の結果より、本発明の硬化性樹脂組成物は、有機錫触媒を用いずに、表面硬化性、接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性、アルミニウムに対する接着性が優れることが確認できた。
【0103】
一方、上記表1の比較例1、2は、本発明の実施例1と比較すると、本発明の(C)成分ではない水を用いた硬化性樹脂組成物であるが、表面硬化性、接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性、アルミニウムに対する接着性が劣ることがわかった。
【0104】
また、比較例3は、本発明の(C)成分が非含有である硬化性樹脂組成物であるが、表面硬化性、アルミニウムに対する接着性、接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性が著しく劣ることがわかった。
【0105】
そして、比較例4~6は、本発明の(B)成分ではない触媒を用いた硬化性樹脂組成物であるが、表面硬化性、アルミニウムに対する接着性、接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性が劣ることがわかった。特に、比較例6は、シラノール触媒の中でも高活性だと知られている有機錫触媒を用いた硬化性樹脂組成物であるが、実施例1の本発明の(B)成分を用いた硬化性樹脂組成物の方が、接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性、アルミニウムに対する接着性という観点で優れることは、驚くべきことであった。
【0106】
続いて、大量の熱伝導性粉末を添加した硬化性樹脂組成物について評価した。
【0107】
<硬化性樹脂組成物のB剤の調製>
[B剤-2の調製]
B剤-1において、さらに、(F)成分として、平均粒径3μmアルミナ粉(f1)(日本軽金属株式会社製 ローソーダアルミナ LS-210B)120質量部と、平均粒径10μmアルミナ粉(f2)(株式会社アドマテックス製 AO-509)280質量部とを含む点以外は、B剤-1と同様にして調製し、B剤-2を得た。
【0108】
<(4)混合後の初期硬化性試験>
下記表2に示されるように、硬化性樹脂組成物のA剤を105質量部と、B剤を512質量部とを、ポリエチレン製容器に投入し、25℃環境下で、木製の棒を用いて10分間混合した。次に、ガラス製テストピースに、250μm厚で混合後の硬化性樹脂組成物を塗布し、25℃×55%RHの雰囲気下で600分間放置後、木製の棒により混合後の硬化性樹脂組成物の表面を触り、硬化有無を評価した。結果を下記表2に示す。
【0109】
<(5)アルミニウムに対する引張せん断接着強さ>
[試験片の準備]
下記表2に示されるように、硬化性樹脂組成物のA剤105質量部と、B剤512質量部とを、ポリエチレン製容器に投入し、25℃環境下で、木製の棒を用いて10分間混合した。次いで、幅25mm×長さ100mm×厚さ1mmのアルミニウム(A1050P)製テストピースに、下記表2の実施例、比較例の混合後の硬化性樹脂組成物を塗布した。その後、別のアルミニウム(A1050P)製テストピースをオーバーラップ面が25mm×10mmになるように貼り合わせてクリップで固定した。そして、25℃環境下で60時間経過後したものを試験片とした。
【0110】
[引張せん断接着強さの測定]
前記試験片を用いて、25℃にて万能引張試験機(引っ張り速度50mm/min.)にて、せん断接着強さ(単位はMPa)をJIS K 6850:1999に従い測定した。せん断接着強さは最大強度時の値とする。結果を下記表2に示す。
【0111】
なお、本発明においてアルミニウムに対するせん断接着強さは、1.3MPa以上が好ましい。
【0112】
【0113】
上記表2の実施例3の結果によれば、本発明は大量の充填剤を添加した硬化性樹脂組成物であっても、有機錫触媒を用いずに、表面硬化性、アルミニウムに対する接着性が優れることが確認できた。
【0114】
一方で、比較例7は、本発明の(C)成分が非含有である硬化化性樹脂組成物であるが、表面硬化性、アルミニウムに対する接着性が著しく劣ることがわかった。
【0115】
次に、実施例3の硬化性樹脂組成物が熱伝導を有することを確認するために、熱伝導率を測定した。
【0116】
<(6)熱伝導率測定>
下記表2に記載の実施例3の硬化性樹脂組成物を、厚さが2.0mmになるように、幅25mm×長さ100mm×厚さ1mmのアルミニウム(A1050P)板に塗布し、25℃、50%RH環境下にて7日間放置し硬化させて試験片を作製した。熱伝導率の測定は、熱伝導計(京都電子工業株式会社製QTM-500)を用いて、熱伝導率(W/m・k)を25℃で測定した。熱伝導率は、大きいほど熱が伝わりやすいことから好ましい。特に、本発明において、熱伝導率は、1.0W/(m・k)以上であることが好ましい。実施例3の測定結果は、1.5W/(m・k)であり、優れた熱伝導性を有することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の一形態に係る硬化性樹脂組成物や、本発明の一形態に係る製造方法によって製造された硬化性樹脂組成物は、有機錫触媒を用いずに、表面硬化性、接着部材の貼り合わせ時の内部硬化性、アルミニウムに対する接着性が優れるので、接着剤、封止剤、シーラント剤、ポッティング剤、コーティング剤、熱伝導性樹脂、難燃性樹脂、導電性ペースト等の各種用途に好適用いられる。したがって、広い分野に適用可能であることから産業上有用である。
【0118】
本出願は、2019年12月11日に出願された日本国特許出願番号2019-223576号に基づいており、これらの開示内容は、参照により全体として組み入れられている。