(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20241009BHJP
F25B 13/00 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
F25B1/00 396B
F25B1/00 396E
F25B1/00 396Z
F25B1/00 361D
F25B13/00 M
F25B13/00 A
(21)【出願番号】P 2023005586
(22)【出願日】2023-01-18
(62)【分割の表示】P 2021062241の分割
【原出願日】2021-03-31
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】田中 政貴
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 英二
(72)【発明者】
【氏名】岩田 育弘
(72)【発明者】
【氏名】加治 隆平
(72)【発明者】
【氏名】吉見 敦史
(72)【発明者】
【氏名】上田 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 雅樹
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-277080(JP,A)
【文献】特開昭62-162853(JP,A)
【文献】特開2000-009354(JP,A)
【文献】実開昭63-201963(JP,U)
【文献】国際公開第2015/140887(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(10)及び温度調整対象の温度調整を行う利用熱交換器(40)を含み、第1冷媒と
前記第1冷媒より沸点が高い第2冷媒とを含む非共沸混合冷媒を用いる冷凍サイクル(50)と、
前記冷凍サイクルを流れる冷媒中の、前記第1冷媒と前記第2冷媒との組成比を変更する変更部(70,170)と、
前記圧縮機の回転数を変更する第1制御と、前記変更部の動作を制御
し、前記冷凍サイクルを流れる前記第1冷媒と前記第2冷媒との混合比を変更する第2制御と、を実行し、前記利用熱交換器の前記温度調整対象に対する温度調整の能力を調整する制御部(110)と、
を備え、
前記制御部は、
前記能力を調整する際に、前記能力の調整範囲のうち、所定の能力より前記能力が高い領域では、前記第2制御による前記能力の総操作量を、前記第1制御による前記能力の総操作量よりも大きくする、
冷凍サイクル装置(100)。
【請求項2】
前記制御部は、制御モードとして、前記変更部の動作を制御して前記冷凍サイクルに前記第2冷媒を略単独で流す第1モードと、前記変更部の動作を制御して前記冷凍サイクルに前記第1冷媒と前記第2冷媒との混合冷媒を流す第2モードと、を有する、
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記利用熱交換器を蒸発器として機能させる際に、前記第1モードのみを実行し、
前記利用熱交換器を放熱器として機能させる際に、前記第1モードまたは前記第2モードを実行する、
請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記利用熱交換器を放熱器として機能させる際に、前記第1モードにおいて前記第1制御を実行中に、前記圧縮機の回転数が所定の回転数以上になった場合に、前記第2モードを実行する、
請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記能力を調整する際に、前記第1制御と前記第2制御のうち、前記冷凍サイクルのCOPが高く維持可能な方を実行する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記能力を増加させる際に、前記第1制御と前記第2制御のうち、前記冷凍サイクル装置の電力増加量が少ない方を変更する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記能力を減少させる際に、前記第1制御と前記第2制御のうち、前記冷凍サイクル装置の電力減少量が多い方を変更する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記第1モードでは、前記冷凍サイクルに前記第2冷媒の濃度が92wt%以上の冷媒が流される、
請求項
2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項9】
前記第1モードでは、前記冷凍サイクルに前記第2冷媒の濃度が98wt%以上の冷媒が流される、
請求項
8に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項10】
前記第1冷媒は、CO2であり、
前記第2冷媒は、R1234Ze又はR1234yfである、
請求項1から
9のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項11】
前記第1冷媒は、R1132(E)またはR1123であり、
前記第2冷媒は、R1234Ze又はR1234yfである、
請求項1から
9のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクル装置に使用する冷媒には、冷媒としての性能に加え、安全性が高い、環境負荷が小さい等の様々な要求を満たすことが求められている。例えば、特許文献1(特開2008-281326号公報)には、R134aに代えて、地球温暖化係数の小さなR1234yfを冷凍サイクル装置に使用することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、冷媒に対する様々な要求がある中で、運転条件によらず、効率が良く、十分な能力を得ることが可能な冷媒を選定することは一般に困難である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点に係る冷凍サイクル装置は、冷凍サイクルと、変更部と、制御部と、を備える。冷凍サイクルは、第1冷媒と第2冷媒とを含む非共沸混合冷媒を用いる。変更部は、冷凍サイクルを流れる冷媒中の、第1冷媒と第2冷媒との組成比を変更する。制御部は、変更部の動作を制御する。制御部は、第1モードと、第2モードと、を実行する。第1モードは、変更部の動作を制御して冷凍サイクルに第2冷媒を略単独で流すモードである。第2モードは、変更部の動作を制御して冷凍サイクルに第1冷媒と第2冷媒との混合冷媒を流すモードである。
【0005】
第1観点の冷凍サイクル装置は、第2冷媒を略単独で使用することも、第1冷媒と第2冷媒とを含む非共沸混合冷媒を使用することも可能であるため、運転条件に応じて、適切な組成の冷媒を使用できる。
【0006】
第2観点に係る冷凍サイクル装置は、第1観点の冷凍サイクル装置であって、第1モードでは、冷凍サイクルに第2冷媒の濃度が92wt%以上の冷媒が流される。
【0007】
第3観点に係る冷凍サイクル装置は、第2観点の冷凍サイクル装置であって、第1モードでは、冷凍サイクルに第2冷媒の濃度が98wt%以上の冷媒が流される。
【0008】
第4観点に係る冷凍サイクル装置は、第1観点から第3観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、検知部を更に備える。検知部は、冷凍サイクルを流れる冷媒中の、第1冷媒と第2冷媒との組成比を検知する。制御部は、検知部が検知する第1冷媒と第2冷媒との組成比が目標組成比になるように、変更部の動作を制御する。
【0009】
第4観点の冷凍サイクル装置では、冷媒の組成比を検知しながら、第1冷媒と第2冷媒との組成比を変更するので、運転条件に応じ、適切な組成の冷媒を使用できる。
【0010】
第5観点に係る冷凍サイクル装置は、第1観点から第4観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、第2冷媒の沸点は、第1冷媒の沸点より高い。
【0011】
第6観点に係る冷凍サイクル装置は、第5観点の冷凍サイクル装置であって、冷凍サイクルは、温度調整対象の温度調整を行う利用熱交換器を含む。利用熱交換器を蒸発器として利用する際に、制御部は、第1モードを実行する。利用熱交換器を放熱器として利用する際に、制御部は、第2モードを実行する。
【0012】
第6観点の冷凍サイクル装置では、利用熱交換器を蒸発器として利用する際には第2冷媒を略単独で使用して効率を重視した運転をすることができる。一方、能力不足の発生しやすい利用熱交換器を放熱器として利用する運転の際には、第1冷媒と第2冷媒との非共沸混合冷媒を用いて必要な能力を得ることができる。
【0013】
第7観点に係る冷凍サイクル装置は、第6観点の冷凍サイクル装置であって、利用熱交換器を放熱器として利用する際に、制御部は、冷凍サイクル装置に対する要求能力に応じて、第1モード又は第2モードを実行する。
【0014】
第7観点の冷凍サイクル装置では、利用熱交換器を放熱器として利用する際にも、能力的に第1冷媒と第2冷媒との混合冷媒を用いることが不要であれば、第2冷媒を略単独で使用して効率を重視した運転を行うことができる。
【0015】
第8観点に係る冷凍サイクル装置は、第7観点の冷凍サイクル装置であって、冷凍サイクルは、圧縮機を含む。制御部は、圧縮機の回転数を更に制御する。制御部は、第1モードを実行中に、圧縮機の回転数を所定の回転数に上げても要求能力が得られない場合に、第2モードを実行する。
【0016】
第8観点の冷凍サイクル装置では、効率の低下を抑制しつつ、必要な能力を得ることができる。
【0017】
第9観点に係る冷凍サイクル装置は、第6観点又は第7観点の冷凍サイクル装置であって、制御部は、第2モードを実行する際に、変更部の動作を制御して、冷凍サイクルを流れる冷媒中の第1冷媒と第2冷媒との組成比を、第1組成比と、第2組成比と、の間で変更する。第2組成比は、第1組成比より第1冷媒の比率が高い。
【0018】
第9観点の冷凍サイクル装置では、第1冷媒と第2冷媒との組成比を段階的に変化させるので、効率の低下は抑制しつつ、必要な能力を得ることができる。
【0019】
第10観点に係る冷凍サイクル装置は、第9観点の冷凍サイクル装置であって、冷凍サイクルは、圧縮機を含む。制御部は、圧縮機の回転数を更に制御する。制御部は、冷凍サイクル装置に対する要求能力の変化に応じて、圧縮機の回転数、又は、冷凍サイクルを流れる冷媒中の第1冷媒と第2冷媒との組成比、のいずれかを変更する。
【0020】
第10観点の冷凍サイクル装置では、効率の低下は抑制しつつ、必要な能力を得ることができる。
【0021】
第11観点に係る冷凍サイクル装置は、第10観点の冷凍サイクル装置であって、制御部は、要求能力が増大した際に、圧縮機の回転数、及び、冷凍サイクルを流れる冷媒中の第1冷媒と第2冷媒との組成比のうち、変更した際の圧縮機の電力増加量が少ない方を変更する。
【0022】
第11観点の冷凍サイクル装置では、効率の低下は抑制しつつ、必要な能力を得ることができる。
【0023】
第12観点に係る冷凍サイクル装置は、第10観点又は第11観点の冷凍サイクル装置であって、制御部は、要求能力が低下した際に、冷凍サイクルを流れる冷媒中の第1冷媒の比率が所定値より高い場合には、冷凍サイクルを流れる冷媒中の第1冷媒の比率を下げるよう変更部を制御し、冷凍サイクルを流れる冷媒中の第1冷媒の比率が所定値以下の場合には、圧縮機の回転数を下げる。
【0024】
第12観点の冷凍サイクル装置では、効率の低下は抑制しつつ、必要な能力を得ることができる。
【0025】
第13観点に係る冷凍サイクル装置は、第1観点から第12観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、第1冷媒は、CO2である。第2冷媒は、R1234Ze又はR1234yfである。
【0026】
第14観点に係る冷凍サイクル装置は、第1観点から第12観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、第1冷媒は、R1132(E)又はR1123である。第2冷媒は、R1234Ze又はR1234yfである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】一実施形態に係る冷凍サイクル装置の概略構成図である。
【
図2】圧縮機のモータの回転数を変更して能力を変更する際のCOPの変化と、冷媒中の第1冷媒の比率を変更して能力を変更する際のCOPの変化と、を模式的に表した図である。
【
図3】冷凍サイクル装置の能力不足時に行われる制御のフローチャートの例である。
【
図4】冷凍サイクル装置の能力過剰時に行われる制御のフローチャートの例である。
【
図5】変形例Aに係る冷凍サイクル装置の概略構成図である。
【
図6】変形例Gに係る冷凍サイクル装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図面を参照して、本開示の冷凍サイクル装置の実施形態を説明する。
【0029】
冷凍サイクル装置は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを利用して、温度調整対象の冷却及び温度調整対象の加熱の少なくとも一方を行う装置である。本開示の冷凍サイクル装置は、冷媒として、非共沸混合冷媒を使用する。本開示の冷凍サイクル装置は、後述のように、条件に応じ、冷凍サイクルを流れる冷媒の組成比を変更する。
【0030】
<第1実施形態>
(1)全体概要
図1を参照して、第1実施形態に係る冷凍サイクル装置100を説明する。
図1は、冷凍サイクル装置100の概略構成図である。
【0031】
ここでは、冷凍サイクル装置100は、温度調整対象である空気の冷却及び加熱を行う空調装置である。ただし、これに限定されるものではなく、冷凍サイクル装置100は、温度調整対象の液体(例えば水)の冷却及び加熱を行う装置でもよい。
【0032】
冷凍サイクル装置100は、
図1に示すように、冷凍サイクルの一例としての主冷媒回路50と、変更部70と、検知部150と、コントローラ110と、を主に備える。主冷媒回路50と、主冷媒回路50に接続される後述する変更部70の第1バイパス流路80と、を含めて、冷媒回路200と呼ぶ。
【0033】
冷媒回路200には、非共沸混合冷媒が充填されている。言い換えれば、主冷媒回路50は、非共沸混合冷媒を用いる。非共沸混合冷媒は、少なくとも2種類の冷媒の混合物である。第1実施形態の冷凍サイクル装置100の冷媒回路200には、2種類の冷媒(第1冷媒及び第2冷媒)だけを含む非共沸混合冷媒が充填される。ただし、これに限定されるものではなく、非共沸混合冷媒は、3種類以上の冷媒の混合物であってもよい。例えば、第2冷媒は、1種類の冷媒ではなく、2種類以上の冷媒を含む共沸混合冷媒又は疑似共沸混合冷媒であってもよい。要するに、非共沸混合冷媒は、第2冷媒としての2種類以上の冷媒を含む共沸混合冷媒又は疑似共沸混合冷媒と、第2冷媒とは非共沸の第1冷媒と、の混合冷媒であっても。
【0034】
限定するものではないが、具体的には、第1冷媒は、CO2(二酸化炭素)であり、第2冷媒は、HFO(ハイドロフルオロオレフィン)である。HFOは、温暖化係数が極めて低い冷媒である。限定するものではないが、第2冷媒として用いられるHFOの具体例は、R1234Ze(シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン)である。また、例えば、R1234Zeに代えて、R1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロプロペン)が、第2冷媒のHFOとして用いられてもよい。CO2は沸点の比較的低い冷媒であり、R1234ZeやR1234yfは沸点の比較的高い冷媒である。言い換えれば、第2冷媒の沸点は、第1冷媒の沸点より高い。以下では、第1冷媒を低沸点冷媒と呼び、第2冷媒を高沸点冷媒と呼ぶ場合がある。
【0035】
冷凍サイクル装置100の冷媒回路200に充填されている全冷媒の総重量に対する、冷媒回路200に充填されている第1冷媒の総重量の割合は、20wt%以下であることが好ましい。
【0036】
主冷媒回路50、変更部70、検知部150及びコントローラ110について概説する。
【0037】
主冷媒回路50は、
図1に示すように、圧縮機10と、流路切換機構15と、熱源熱交換器20と、膨張機構30と、利用熱交換器40と、を主に含む。圧縮機10と、流路切換機構15と、熱源熱交換器20と、膨張機構30と、利用熱交換器40とは、後述する冷媒配管52a~52eにより接続されて主冷媒回路50を構成する(
図1参照)。冷凍サイクル装置100は、冷媒を主冷媒回路50において循環させることで、温度調整対象の空気の冷却及び加熱を行う。
【0038】
変更部70は、主冷媒回路50を流れる冷媒中の、第1冷媒と第2冷媒との組成比を変更する機構である。
【0039】
検知部150は、主冷媒回路50内を循環する冷媒の組成比を検知する。
【0040】
なお、冷凍サイクル装置100は、
図1に二点鎖線で示すように、図示しないケーシングを有する熱源ユニット2と、図示しないケーシングを有し、熱源ユニット2と冷媒配管を介して接続される利用ユニット4と、を備える。熱源ユニット2は、例えば、冷凍サイクル装置100の設置される建物の屋上又は機械室や、冷凍サイクル装置100の設置される建物の周囲等に設置される。利用ユニット4は、空調対象空間内や、空調対象空間の近傍の空間(例えば天井裏や機械室等)に配置される。限定するものではないが、熱源ユニット2のケーシングには、主冷媒回路50の圧縮機10、流路切換機構15、熱源熱交換器20及び膨張機構30と、変更部70と、検知部150と、が主に収容される。利用ユニット4のケーシングには、主冷媒回路50の利用熱交換器40が主に収容される。
【0041】
コントローラ110は、冷凍サイクル装置100の各種構成の動作を制御する。
【0042】
例えば、コントローラ110は、変更部70の動作を制御する。コントローラ110は、変更部70の動作を制御することで、第1モードと、第2モードと、を実行する。第1モードは、変更部70の動作を制御して主冷媒回路50に第2冷媒を略単独で流すモードである。第2モードは、変更部70の動作を制御して主冷媒回路50に第1冷媒と第2冷媒との混合冷媒を流すモードである。
【0043】
なお、ここで、第2冷媒を略単独で流すとは、第1冷媒を含まない第2冷媒を流す状態に限定されず、所定濃度以上の高濃度の第2冷媒を流す状態(実質的に第2冷媒を単独で流す状態)を含む。具体的には、主冷媒回路50に第2冷媒を略単独で流す状態には、主冷媒回路50に92wt%以上の濃度の第2冷媒を流す状態を含む。なお、第1モードでは、なるべく第2冷媒の濃度が高い冷媒(第1冷媒の濃度が低い冷媒)が主冷媒回路50に流されることが好ましい。好ましくは、第1モードでは、主冷媒回路50には、第2冷媒の濃度が98wt%以上の冷媒が流される。
【0044】
(2)詳細構成
(2-1)主冷媒回路
主冷媒回路50は、
図1に示すように、圧縮機10と、流路切換機構15と、熱源熱交換器20と、膨張機構30と、利用熱交換器40と、を主に含む。
【0045】
主冷媒回路50は、圧縮機10、流路切換機構15、熱源熱交換器20、膨張機構30、及び利用熱交換器40を接続するための配管として、
図1に示すように、吸入管52aと、吐出管52bと、第1ガス冷媒管52cと、液冷媒管52dと、第2ガス冷媒管52eと、を有する(
図1参照)。吸入管52aは、圧縮機10の吸入口10bと、流路切換機構15と、を接続している。吐出管52bは、圧縮機10の吐出口10cと、流路切換機構15と、を接続している。第1ガス冷媒管52cは、流路切換機構15と、熱源熱交換器20のガス端と、を接続している。液冷媒管52dは、熱源熱交換器20の液端と、利用熱交換器40の液端と、を接続している。液冷媒管52dには、膨張機構30が設けられている。第2ガス冷媒管52eは、利用熱交換器40のガス端と、流路切換機構15と、を接続している。
【0046】
(2-1-1)圧縮機
圧縮機10は、吸入口10bから冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を吸入して、図示しない圧縮機構において冷媒を圧縮し、冷凍サイクルにおける高圧の冷媒を吐出口10cから吐出する。
図1では、圧縮機10は1台だけ描画されているが、主冷媒回路50は、直列又は並列に接続された複数の圧縮機10を有してもよい。
【0047】
圧縮機10は、例えばスクロール圧縮機である。ただし、これに限定されるものではなく、圧縮機10は、ロータリ圧縮機等、スクロール圧縮機以外のタイプの圧縮機でもよい。圧縮機10の種類は、適宜選択されればよい。
【0048】
圧縮機10は、限定するものではないが、モータ10aの回転数が可変の、インバータ制御方式の圧縮機である。圧縮機10の動作を制御する後述のコントローラ110は、例えば空調負荷に応じ、圧縮機10のモータ10aの回転数を制御する。
【0049】
(2-1-2)流路切換機構
流路切換機構15は、冷凍サイクル装置100の運転モード(冷房運転モード/暖房運転モード)に応じ、主冷媒回路50における冷媒の流れ方向を切り換える機構である。冷房運転モードは、熱源熱交換器20を放熱器として機能させ、利用熱交換器40を蒸発器として機能させる冷凍サイクル装置100の運転モードである。暖房運転モードは、利用熱交換器40を放熱器として機能させ、熱源熱交換器20を蒸発器として機能させる冷凍サイクル装置100の運転モードである。
【0050】
冷房運転モードでは、流路切換機構15は、圧縮機10が吐出する冷媒が熱源熱交換器20に送られるように、主冷媒回路50における冷媒の流向を切り換える。具体的には、冷房運転モードでは、流路切換機構15は、吸入管52aを第2ガス冷媒管52eと連通させ、吐出管52bを第1ガス冷媒管52cと連通させる(
図1中の実線参照)。
【0051】
暖房運転モードでは、流路切換機構15は、圧縮機10が吐出する冷媒が利用熱交換器40に送られるように、主冷媒回路50における冷媒の流向を切り換える。具体的には、暖房運転モードでは、流路切換機構15は、吸入管52aを第1ガス冷媒管52cと連通させ、吐出管52bを第2ガス冷媒管52eと連通させる(
図1中の破線参照)。
【0052】
流路切換機構15は、例えば四路切換弁である。ただし、流路切換機構15は、四路切換弁以外で実現されてもよい。例えば、流路切換機構15は、上記の冷媒の流れ方向の切り換えを実現できるように、複数の電磁弁と配管とを組み合わせて構成されてもよい。
【0053】
(2-1-3)熱源熱交換器
熱源熱交換器20は、冷凍サイクル装置100が冷房運転モードで運転される際には冷媒の放熱器として機能し、冷凍サイクル装置100が暖房運転モードで運転される際には冷媒の蒸発器として機能する。
図1では、熱源熱交換器20は1台だけ描画されているが、主冷媒回路50は、複数の並列に配置された熱源熱交換器20を有してもよい。
【0054】
限定するものではないが、熱源熱交換器20は、例えば、複数の伝熱管及び複数の伝熱フィンを有するフィンアンドチューブ型の熱交換器である。
【0055】
熱源熱交換器20の一端には、
図1に示すように第1ガス冷媒管52cが接続される。熱源熱交換器20の他端には、
図1に示すように液冷媒管52dが接続される。
【0056】
冷凍サイクル装置100が冷房運転モードで運転される際には、第1ガス冷媒管52cから熱源熱交換器20に冷媒が流入する。第1ガス冷媒管52cから熱源熱交換器20に流入した冷媒は、図示しないファンにより供給される空気と熱交換することで放熱し、少なくとも一部が凝縮する。熱源熱交換器20で放熱した冷媒は、液冷媒管52dに流出する。
【0057】
冷凍サイクル装置100が暖房運転モードで運転される際には、液冷媒管52dから熱源熱交換器20に冷媒が流入する。液冷媒管52dから熱源熱交換器20に流入した冷媒は、熱源熱交換器20で、図示しないファンにより供給される空気と熱交換することで吸熱し、蒸発する。熱源熱交換器20で吸熱した(加熱された)冷媒は、第1ガス冷媒管52cへと流出する。
【0058】
なお、本実施形態では、熱源熱交換器20では、内部を流れる冷媒と、熱源熱交換器20に供給される熱源としての空気の間で熱交換が行われるが、熱源熱交換器20は空気と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器に限定されない。例えば、熱源熱交換器20は、内部を流れる冷媒と、熱源熱交換器20に供給される熱源としての液体との間で熱交換を行う熱交換器であってもよい。
【0059】
(2-1-4)膨張機構
膨張機構30は、冷媒の減圧や、冷媒の流量調節を行う機構である。本実施形態では、膨張機構30は、開度調節可能な電子膨張弁である。膨張機構30の開度は、運転状況に応じて適宜調節される。なお、膨張機構30は、電子膨張弁に限定されるものではなく、温度自動膨張弁や、キャピラリチューブであってもよい。
【0060】
(2-1-5)利用熱交換器
利用熱交換器40は、冷凍サイクル装置100が冷房運転モードで運転される際には冷媒の蒸発器として機能し、冷凍サイクル装置100が暖房運転モードで運転される際には冷媒の放熱器として機能する。利用熱交換器40は、蒸発器として機能する際には、温度調整対象(本実施形態では空気)を冷却する。利用熱交換器40は、放熱器として機能する際には、温度調整対象(本実施形態では空気)を加熱する。
【0061】
なお、
図1に示した例では、冷凍サイクル装置100は、利用熱交換器40を1台だけ有する。ただし、これに限定されるものではない。冷凍サイクル装置100の主冷媒回路50は、並列に配置された複数の利用熱交換器40を有してもよい。そして、各利用ユニット4は、利用熱交換器40の液側に配置される、図示しない膨張機構(例えば開度調整可能な電子膨張弁)を有してもよい。
【0062】
限定するものではないが、利用熱交換器40は、例えば、複数の伝熱管及び複数の伝熱フィンを有するフィンアンドチューブ型の熱交換器である。
【0063】
利用熱交換器40の一端には、
図1に示すように液冷媒管52dが接続される。利用熱交換器40の他端には、
図1に示すように第2ガス冷媒管52eが接続される。
【0064】
冷凍サイクル装置100が冷房運転モードで運転される際には、液冷媒管52dから利用熱交換器40に冷媒が流入する。液冷媒管52dから利用熱交換器40に流入した冷媒は、利用熱交換器40で、図示しないファンにより供給される空気と熱交換して吸熱し、蒸発する。利用熱交換器40で吸熱した(加熱された)冷媒は、第2ガス冷媒管52eへと流出する。なお、利用熱交換器40で冷却された温度調整対象としての空気は、空調対象空間へと吹き出す。
【0065】
冷凍サイクル装置100が暖房運転モードで運転される際には、第2ガス冷媒管52eから利用熱交換器40に冷媒が流入する。第2ガス冷媒管52eから利用熱交換器40に流入した冷媒は、図示しないファンにより供給される空気と熱交換することで放熱し、少なくとも一部が凝縮する。利用熱交換器40で放熱した冷媒は、液冷媒管52dに流出する。なお、利用熱交換器40で加熱された温度調整対象としての空気は、空調対象空間へと吹き出す。
【0066】
(2-2)変更部
変更部70は、主冷媒回路50を流れる冷媒中の、第1冷媒と第2冷媒との組成比を変更する機構である。
【0067】
変更部70は、第1バイパス流路80と、冷媒容器72と、熱源側弁82aと、利用側弁82bと、を含む。
【0068】
第1バイパス流路80は、主冷媒回路50の熱源側端Aと、主冷媒回路50の利用側端Bと、を接続する配管である。熱源側端Aは、主冷媒回路50の液冷媒管52dの、熱源熱交換器20と膨張機構30との間の部分である。利用側端Bは、主冷媒回路50の液冷媒管52dの、利用熱交換器40と膨張機構30との間の部分である。
【0069】
第1バイパス流路80には、冷媒容器72と、熱源側弁82aと、利用側弁82bと、が配置される。
【0070】
冷媒容器72は、内部に冷媒を貯留可能な容器である。
【0071】
熱源側弁82aは、熱源側端Aと変更部70との間に配置される。利用側弁82bは、利用側端Bと変更部70との間に配置される。熱源側弁82a及び利用側弁82bは、開度調整可能な電子膨張弁である。
【0072】
変更部70が、主冷媒回路50を流れる冷媒中の、第1冷媒と第2冷媒との組成比を変更する方法について説明する。
【0073】
冷凍サイクル装置100の運転中に、熱源側弁82a及び利用側弁82bの開度が調節されると、熱源側弁82aと利用側弁82bとの開度に応じて、冷媒容器72に貯留される冷媒の液相と気相との比率を増減させることができる。
【0074】
共沸混合冷媒や疑似共沸混合冷媒が気液二相の状態で存在する場合には、気相の冷媒の組成比と、液相の冷媒の組成比と、は概ね同一となる。
【0075】
これに対し、低沸点冷媒(第1冷媒)と高沸点冷媒(第2冷媒)との非共沸混合冷媒が気液二相の状態で存在する場合には、液相部分では高沸点冷媒の比率が高くなり、ガス相部分では低沸点冷媒の比率が高くなる。そのため、熱源側弁82a及び利用側弁82bとの開度を調節して、冷媒容器72に貯留される液相の冷媒量とガス相の冷媒量とを変化させれば、冷媒容器72に貯留される第1冷媒の量を増減させることができる。そして、冷媒容器72に貯留される第1冷媒を増加させれば、主冷媒回路50中に存在する第1冷媒の量が減るため、主冷媒回路50を流れる冷媒中の第2冷媒の比率を高めることができる。一方で、冷媒容器72に貯留される第1冷媒を減少させれば、主冷媒回路50中に存在する第1冷媒の量が増えるため、主冷媒回路50を流れる冷媒中の第2冷媒の比率を下げる(第1冷媒の比率を高める)ことができる。
【0076】
(2-3)検知部
検知部150は、主冷媒回路50内を循環する冷媒中の、第1冷媒と第2冷媒との組成比を検知する。
【0077】
検知部150は、主冷媒回路50の、熱源熱交換器20と膨張機構30との間と利用熱交換器40と膨張機構30との間と、を接続する配管151を含む。なお、配管151は、主冷媒回路50を流れる冷媒の組成の検知に用いられるものであり、蒸気圧縮式冷凍サイクルには直接的には不要な配管である。配管151は、液冷媒管52dに比べて細径の配管であり、ごく少量の冷媒が流れる。
【0078】
検知部150は、配管151に配置される、冷媒容器152と、弁154と、を含む。弁154は、第1弁154aと、第2弁154bと、を含む。第1弁154aは、配管151の、熱源熱交換器20と膨張機構30との間における液冷媒管52dとの接続部と、冷媒容器152と、の間に配置される。第2弁154bは、配管151の、利用熱交換器40と膨張機構30との間における液冷媒管52dとの接続部と、冷媒容器152と、の間に配置される。第1弁154a及び第2弁154bは、例えば開度可変の電子膨張弁である。ただし、これに限定されるものではなく、第1弁154a及び第2弁154bは、例えばキャピラリチューブであってもよい。検知部150は、冷媒容器152内の冷媒の圧力を計測する圧力センサ156と、冷媒容器152内の冷媒の温度を計測する温度センサ158と、を有する。
【0079】
コントローラ110は、冷房運転時や暖房運転時に、必要に応じ、第1弁154a及び第2弁154bを開き、冷媒容器152内に二相の(液相及び気相の)冷媒が存在するように、第1弁154a及び第2弁154bを所定の開度に制御する。例えば、コントローラ110は、吸着制御及び脱着制御を行う際に、第1弁154a及び第2弁154bを開き、冷媒容器152に二相の冷媒が貯留されるように、第1弁154a及び第2弁154bを所定の開度に制御する。
【0080】
非共沸混合冷媒では、非共沸混合冷媒に用いられている冷媒の種類と、二相冷媒の圧力及び温度が分かれば、その組成比が算出可能である。そのため、検知部150は、圧力センサ156の計測する二相冷媒の圧力と、温度センサ158の計測する二相冷媒の温度と、に基づいて、冷媒容器152内の冷媒の組成比、言い換えれば主冷媒回路50の液冷媒管52dを流れる冷媒中の第1冷媒と第2冷媒との組成比を検知できる。
【0081】
なお、冷媒の組成比は、コントローラ110が、検知部150の一部として機能して、圧力センサ156及び温度センサ158の計測結果に基づいて、主冷媒回路50を循環する冷媒の組成比を検知(算出)してもよい。あるいは、検知部150は、コントローラ110とは独立した装置で、圧力センサ156及び温度センサ158の計測結果に基づいて主冷媒回路50を循環する冷媒の組成比を検知してもよい。
【0082】
本実施形態では、コントローラ110が、圧力センサ156及び温度センサ158の計測結果に基づいて、主冷媒回路50を循環する冷媒の組成比を検知するものとして説明する。具体的には、コントローラ110のメモリ(記憶部)には、使用する非共沸混合冷媒について、二相冷媒の圧力及び温度と、非共沸混合冷媒の組成比の関係を表すデータ(例えば、テーブルや関係式)が記憶されている。コントローラ110は、メモリに記憶されている、二相冷媒の圧力及び温度と、非共沸混合冷媒の組成比との関係を表すデータと、圧力センサ156及び温度センサ158の計測結果と、に基づいて、主冷媒回路50を循環する冷媒の組成比を検知する。
【0083】
なお、主冷媒回路50を循環する冷媒の組成比の検知方法は、ここで例示した方法に限定される必要はなく、検知部150は、他の方法で、又、上記方法とは異なる機器を用いて、主冷媒回路50を循環する冷媒の組成比を検知してもよい。
【0084】
(2-4)コントローラ
コントローラ110は、冷凍サイクル装置100の各種機器の動作を制御するための制御部である。
【0085】
コントローラ110は、例えば、マイクロコントローラユニット(MCU)や各種の電気回路や電子回路を主に含む(図示省略)。MCUは、CPU、メモリ、I/Oインタフェース等を含む。MCUのメモリには、MCUのCPUが実行するための各種プログラムが記憶されている。また、コントローラ110には、FPGAやASICが利用されてもよい。なお、コントローラ110の各種機能は、ソフトウェアで実現される必要はなく、ハードウェアで実現されても、ハードウェアとソフトウェアとが協働することで実現されてもよい。
【0086】
コントローラ110は、熱源ユニット2及び利用ユニット4とは独立した装置であってもよい。また、コントローラ110は、熱源ユニット2及び利用ユニット4と独立した装置ではなく、例えば、熱源ユニット2に搭載されている図示しない制御部と、利用ユニット4に搭載されている図示しない制御部と、が協働することで、コントローラ110として機能してもよい。
【0087】
コントローラ110は、主冷媒回路50の、圧縮機10、流路切換機構15、及び膨張機構30と電気的に接続され、圧縮機10、流路切換機構15、及び膨張機構30の動作を制御する(
図1参照)。また、コントローラ110は、熱源ユニット2の熱源熱交換器20に空気を供給する図示しないファンや、利用ユニット4の利用熱交換器40に空気を供給する図示しないファンの動作を制御できるように、これらのファンと電気的に接続されている。また、コントローラ110は、変更部70の熱源側弁82a及び利用側弁82bと電気的に接続され、熱源側弁82a及び利用側弁82bの動作を制御する(
図1参照)。また、コントローラ110は、検知部150の第1弁154a及び第2弁154bの動作を制御できるように、第1弁154a及び第2弁154bと電気的に接続されている。また、コントローラ110は、圧力センサ156及び温度センサ158と電気的に接続され、圧力センサ156及び温度センサ158の計測値を取得可能である。また、コントローラ110は、圧力センサ156及び温度センサ158以外の冷凍サイクル装置100の様々な場所に配置される図示しないセンサとも電気的に接続され、これらのセンサの計測値を取得可能である。
【0088】
コントローラ110は、例えば、CPUが、メモリに記憶されているプログラムを実行することで、各種制御を実行する。例えば、コントローラ110は、冷凍サイクル装置100が冷房運転や暖房運転を行う際に、冷凍サイクル装置100の各種機器の動作を制御する。また、コントローラ110は、冷凍サイクル装置100に対する要求能力に応じ、圧縮機10の回転数を増減したり、変更部70の動作を制御して主冷媒回路50を流れる冷媒中の、第1冷媒と第2冷媒との組成比を変更したりする。
【0089】
以下に、変更部70による主冷媒回路50を流れる冷媒中の第1冷媒と第2冷媒との組成比の制御については触れずに、冷房運転時と暖房運転時における冷凍サイクル装置100の各種機器の基本的な動作について説明する。
【0090】
その後に、冷凍サイクル装置100に対する要求能力に応じた、圧縮機10の回転数の制御や、変更部70を用いた主冷媒回路50を流れる冷媒中の第1冷媒と第2冷媒との組成比の制御(以後、説明が煩雑になるのを避けるため組成比制御と呼ぶ場合がある)について説明する。
【0091】
(2-5-1)冷房運転
コントローラ110は、図示しないリモコンから冷房運転の実行が指示された時や、空調対象空間の温度から見て冷房運転の実行が必要と判断される時に、冷房運転を実行する。
【0092】
冷房運転時には、コントローラ110は、熱源熱交換器20が冷媒の放熱器として機能し、利用熱交換器40が冷媒の蒸発器として機能するように、流路切換機構15の動作を制御する。また、コントローラ110は、圧縮機10や、図示しない熱源ユニット2及び利用ユニット4に搭載されているファンの運転を開始する。また、コントローラ110は、冷凍サイクル装置100の各種センサの計測値や、ユーザが設定する空調対象空間の目標温度等に基づき、圧縮機10のモータ10aの回転数や、熱源ユニット2及び利用ユニット4に搭載されているファンの回転数や、膨張機構30としての電子膨張弁の開度を調節する。
【0093】
(2-5-2)暖房運転
コントローラ110は、図示しないリモコンから暖房運転の実行が指示された時や、空調対象空間の温度から見て暖房運転の実行が必要と判断される時に、暖房運転を実行する。
【0094】
暖房運転時には、コントローラ110は、熱源熱交換器20が冷媒の蒸発器として機能し、利用熱交換器40が冷媒の放熱器として機能するように、流路切換機構15の動作を制御する。また、コントローラ110は、圧縮機10や、図示しない熱源ユニット2及び利用ユニット4に搭載されているファンの運転を開始する。また、コントローラ110は、冷凍サイクル装置100の各種センサの計測値や、ユーザが設定する空調対象空間の目標温度等に基づき、圧縮機10のモータ10aの回転数や、熱源ユニット2及び利用ユニット4に搭載されているファンの回転数や、膨張機構30としての電子膨張弁の開度を調節する。
【0095】
なお、コントローラ110は、暖房運転時に熱源熱交換器20への着霜が検知されると、暖房運転を中断し、流路切換機構15の動作を制御し、主冷媒回路50における冷媒の流れ方向を冷房運転時と同方向に切り換えて、デフロスト運転(逆サイクルデフロスト運転)を行う。デフロスト運転は、熱源熱交換器20に付着した霜を除去するための運転である。冷凍サイクル装置のデフロスト運転については、一般に知られているため、デフロスト運転の詳細については説明を省略する。
【0096】
(2-5-3)要求能力に応じた圧縮機及び変更部の制御
以下に、コントローラ110が実行する、冷凍サイクル装置100に対する要求能力に応じた圧縮機10及び変更部70の制御について説明する。
【0097】
まず、冷凍サイクル装置100に対する要求能力に応じた圧縮機10及び変更部70の制御について説明する前に、コントローラ110が、主冷媒回路50に第2冷媒を略単独で流す第1モードと、主冷媒回路50に第1冷媒と第2冷媒との混合冷媒を流す第2モードと、を切り換えて実行する理由について説明する。
【0098】
R1234ZeやR1234yfのような第2冷媒(高沸点冷媒)を用いる場合、冷凍サイクル装置100の比較的効率の良い運転が可能である。しかし、高沸点冷媒を利用すると、低外気温時に暖房運転を行う際に能力不足が生じる可能性がある。これに対し、高沸点冷媒に、CO2のような第1冷媒(低沸点冷媒)を混合した非共沸混合冷媒を用いることで、能力不足を補うことができる。ただし、第2冷媒に第1冷媒を混合した非共沸混合冷媒を用いる場合には、第2冷媒を単独で使用する場合に比べ効率が低下するという課題がある。
【0099】
そこで、コントローラ110は、冷凍サイクル装置100に対する要求能力に応じて、主冷媒回路50に第2冷媒を略単独で流す第1モードと、主冷媒回路50に第1冷媒と第2冷媒との混合冷媒を流す第2モードと、を切り換えて実行する。
【0100】
具体的には、コントローラ110は、要求能力が比較的低く、第2冷媒を略単独で使用しても能力不足が発生しにくい冷房運転時には、第1モードを実行する。ここでは、コントローラ110は、冷房運転時には、第2モードを実行しない。要するに、コントローラ110は、利用熱交換器40を蒸発器として利用する際には、第1モードを実行する。そのため、詳細な説明は省略するが、第2モードの実行後には(例えば、暖房運転中に第2モードを実行した後に、第1モードを実行するための組成比制御が行われていない場合には)、コントローラ110は、冷房運転の開始時に、主冷媒回路50に第2冷媒を略単独で流すための組成比制御を実行する。
【0101】
一方、コントローラ110は、要求能力が比較的大きくなりやすく、第1モードでは能力不足が発生する可能性のある暖房運転時には、第2モードを実行する。要するに、コントローラ110は、利用熱交換器40を放熱器として利用する際には、第2モードを実行する。
【0102】
制御方法として、暖房運転時に、常に第2モードを実行することも可能である。
【0103】
しかし、暖房運転時であっても、第1モードを実行した方が効率の良い場合もある。
図3を参照しながら説明する。
図2は、圧縮機10のモータ10aの回転数を変更して能力を変更する時のCOPの変化と、冷媒中の第1冷媒の比率を変更して能力を変更する時のCOPの変化と、を模式的に表した図である。
図2中の実線は、圧縮機10のモータ10aの回転数を増加させて冷凍サイクル装置100の能力を増加させる時のCOPの変化を示す。
図2中の破線は、主冷媒回路50を流れる冷媒中の第1冷媒の比率を増加させて冷凍サイクル装置100の能力を増加させる時のCOPの変化を示す。
図2から分かるように、ある所定の能力値までは(図中の二点鎖線参照)、圧縮機10のモータ10aの回転数を増加させてその能力を得る方が、組成比制御(変更部70を用いた主冷媒回路50を流れる冷媒中の第1冷媒と第2冷媒との組成比の制御)を行って能力を確保するよりもCOPが高いことが分かる。
【0104】
そこで、コントローラ110は、暖房運転時に(言い換えれば、利用熱交換器40を放熱器として利用する際に)、常に第2モードを実行するのではなく、冷凍サイクル装置100に対する要求能力に応じて、第1モード、又は、第2モードを実行することが好ましい。具体的には、コントローラ110は、以下に
図3及び
図4を参照しながら説明するように、圧縮機10のモータ10aの回転数の制御と、組成比制御と、を組み合わせて実行することが好ましい。
図3は、冷凍サイクル装置100の能力不足時に行われる制御のフローチャートの例である。
図4は、冷凍サイクル装置100の能力過剰時に行われる制御のフローチャートの例である。
図3及び
図4の処理は並列的に実行される。
【0105】
説明の前提として、
図2中の、二点鎖線で示す線と、圧縮機10のモータ10aの回転数を変更して能力を変更する時のCOPの変化を示す実線と、の交点に当たる位置のモータ10aの回転数(上限回転数)が予め得られているものとする。上限回転数は、実機を用いた実験で得られてもよいし、シミュレーションや、理論的な計算により得られてもよい。コントローラ110のメモリには、予め得られた上限回転数の値が記憶されている。
【0106】
コントローラ110は、暖房運転時に、要求能力が増加し、現状の運転では要求能力を達成できない場合(能力不足時)に、
図3のフローチャートに従い、圧縮機10のモータ10aの回転数の制御又は、組成比制御を行う。
【0107】
図3のフローチャートのステップS1では、現状の運転では要求能力を達成できないのかが(能力不足か否か)が判断される。ステップS1の判断は、能力不足と判断されるまで繰り替えし実行される。
【0108】
能力不足と判断された場合、処理はステップS2に進む。ステップS2では、現在の圧縮機10のモータ10aの回転数が上限回転数であるか否かが判断される。圧縮機10のモータ10aの回転数が上限回転数に達していないと判断された場合、処理はステップS3に進む。
【0109】
ステップS3では、コントローラ110は、圧縮機10のモータ10aの回転数を増加させる。ステップS3では、コントローラ110は、予め定められた値だけ回転数を増加されてもよいし、要求能力に対して不足する能力に応じて回転数の増分を変更してもよい。ステップS3の実施後、処理はステップS1に戻る。
【0110】
一方、ステップS2で、圧縮機10のモータ10aの回転数が上限回転数に達していると判断された場合には、処理はステップS4に進む。ステップS4では、コントローラ110は、組成比制御を行い、主冷媒回路50を流れる冷媒中の第1冷媒の比率を増加させる。要するに、コントローラ110は、第1モードを実行中に、圧縮機10の回転数を所定の回転数(上限回転数)に上げても要求能力が得られない場合に、第2モードを実行し、主冷媒回路50に、第1冷媒と第2冷媒との混合冷媒が流れるように変更部70を制御する。ステップS4で、コントローラ110は、予め定められた値だけ第1冷媒の比率を増加させてもよいし(例えば2wt%増やす等)、要求能力に対して不足する能力に応じて第1冷媒の比率をどれだけ増加させるかが決定してもよい。
【0111】
ステップS4では、具体的には、コントローラ110は、検知部150が検知する主冷媒回路50を流れる冷媒中の、第1冷媒と第2冷媒との組成比が目標組成比になるように、変更部70の熱源側弁82a及び利用側弁82bの開度を制御する。そして、検知部150が検知する主冷媒回路50を流れる冷媒中の、第1冷媒と第2冷媒との組成比が目標組成比になると、コントローラ110は、熱源側弁82a及び利用側弁82bを閉じる。ステップS4の実施後、処理はステップS1に戻る。
【0112】
なお、ステップS4の実施後に、再びステップS4の処理が行われる場合には、コントローラ110は、第2モードにおいて、変更部70の動作を制御して、主冷媒回路50を流れる冷媒中の第1冷媒と第2冷媒との組成比を、第1組成比と、第1組成比より第1冷媒の比率が高い第2組成比と、の間で変更することになる。このように、第1冷媒の比率を段階的に変化させることで、第1冷媒を過剰に含む冷媒を用いることで生じる効率の低下は抑制しつつ、必要な能力を確保することができる。
【0113】
コントローラ110は、暖房運転時に、
図3のフローチャートで説明する処理と並列的に、
図4のフローチャートで説明する処理を実行する。コントローラ110は、暖房運転時に、要求能力が低下し、現状の運転では要求能力が過剰である場合(能力過剰時)に、
図4のフローチャートに従い、圧縮機10のモータ10aの回転数の制御又は、組成比制御を行う。
【0114】
図4のフローチャートのステップS11では、現状の運転では要求能力に対して能力が過剰か否かが判断される。ステップS11の判断は、能力過剰と判断されるまで繰り替え時実行される。
【0115】
能力過剰と判断された場合には、ステップS12に進む。ステップS12では、現在の主冷媒回路50を流れる冷媒中の第1冷媒の比率(言い換えれば第1冷媒の濃度)が下限値であるか否かが判断される。第1冷媒の比率の下限値は、例えば、コントローラ110が、主冷媒回路50を流れる冷媒が、略単独の第2冷媒であると判断する濃度であり、予め定められている。言い換えれば、ステップS12では、コントローラ110は、実行しているモードが第1モードであるか否かを判断する。
【0116】
ステップS12で、現在の主冷媒回路50を流れる冷媒中の第1冷媒の比率が下限値であると判定されると(第1モードを実行中と判断されると)、処理はステップS13に進む。一方、現在の主冷媒回路50を流れる冷媒中の第1冷媒の比率が下限値ではないと判定されると、処理はステップS14に進む。
【0117】
ステップS13では、コントローラ110は、圧縮機10のモータ10aの回転数を減少させる。ステップS3では、コントローラ110は、予め定められた値だけ回転数が減少されてもよいし、要求能力に対して過剰な能力に応じてどれだけ回転数を減少するかを変更してもよい。ステップS13の実施後、処理はステップS11に戻る。
【0118】
ステップS14では、コントローラ110は、組成比制御を行い、主冷媒回路50を流れる冷媒中の第1冷媒の比率を低下させる。ステップS14では、コントローラ110は、予め定められた値だけ第1冷媒の比率を低下させてもよいし、要求能力に対して過剰な能力に応じて第1冷媒の比率をどれだけ低下させるかを変更してもよい。
【0119】
ステップS14では、具体的には、コントローラ110は、検知部150が検知する主冷媒回路50を流れる冷媒中の、第1冷媒と第2冷媒との組成比が目標組成比になるように、変更部70の熱源側弁82a及び利用側弁82bの開度を制御する。そして、検知部150が検知する主冷媒回路50を流れる冷媒中の、第1冷媒と第2冷媒との組成比が目標組成比になると、コントローラ110は、熱源側弁82a及び利用側弁82bを閉じる。ステップS14の実施後、処理はステップS11に戻る。
【0120】
(3)特徴
(3-1)
冷凍サイクル装置100は、主冷媒回路50と、変更部70と、制御部の一例としてのコントローラ110と、を備える。主冷媒回路50は、第1冷媒と第2冷媒とを含む非共沸混合冷媒を用いる。変更部70は、主冷媒回路50を流れる冷媒中の、第1冷媒と第2冷媒との組成比を変更する。コントローラ110は、変更部70の動作を制御する。コントローラ110は、第1モードと、第2モードと、を実行する。第1モードは、変更部70の動作を制御して主冷媒回路50に第2冷媒を略単独で流すモードである。第2モードは、変更部70の動作を制御して主冷媒回路50に第1冷媒と第2冷媒との混合冷媒を流すモードである。
【0121】
冷凍サイクル装置100は、第2冷媒を略単独で使用することも、第1冷媒と第2冷媒とを含む非共沸混合冷媒を使用することも可能であるため、運転条件に応じて、適切な組成の冷媒を使用できる。
【0122】
なお、好ましくは、冷凍サイクル装置100では、第1モードでは、主冷媒回路50に第2冷媒の濃度が92wt%以上の冷媒が流される。
【0123】
また、さらに好ましくは、冷凍サイクル装置100では、第1モードでは、主冷媒回路50に第2冷媒の濃度が98wt%以上の冷媒が流される。
【0124】
(3-2)
冷凍サイクル装置100は、検知部150を備える。検知部150は、主冷媒回路50を流れる冷媒中の、第1冷媒と第2冷媒との組成比を検知する。コントローラ110は、検知部150が検知する第1冷媒と第2冷媒との組成比が目標組成比になるように、変更部70の動作を制御する。
【0125】
冷凍サイクル装置100では、冷媒の組成比を検知しながら、第1冷媒と第2冷媒との組成比を変更するので、運転条件に応じ、適切な組成の冷媒を使用できる。
【0126】
(3-3)
冷凍サイクル装置100では、第2冷媒の沸点は、第1冷媒の沸点より高い。
【0127】
例えば、具体的には、第1冷媒は、CO2である。第2冷媒は、R1234Ze又はR1234yfである。
【0128】
(3-4)
冷凍サイクル装置100では、主冷媒回路50は、温度調整対象の温度調整を行う利用熱交換器40を含む。利用熱交換器40を蒸発器として利用する際に、コントローラ110は、第1モードを実行する。利用熱交換器40を放熱器として利用する際に、コントローラ110は、第2モードを実行する。
【0129】
冷凍サイクル装置100では、利用熱交換器40を蒸発器として利用する際には第2冷媒を略単独で使用して効率を重視した運転をすることができる。一方、能力不足の発生しやすい利用熱交換器40を放熱器として利用する運転の際には、第1冷媒と第2冷媒との非共沸混合冷媒を用いて必要な能力を得ることができる。
【0130】
(3-5)
冷凍サイクル装置100は、利用熱交換器40を放熱器として利用する際に、コントローラ110は、冷凍サイクル装置100に対する要求能力に応じて、第1モード又は第2モードを実行する。
【0131】
冷凍サイクル装置100では、利用熱交換器40を放熱器として利用する際にも、能力的に第1冷媒と第2冷媒との混合冷媒を用いることが不要であれば、第2冷媒を略単独で使用して効率を重視した運転を行うことができる。
【0132】
(3-6)
冷凍サイクル装置100では、主冷媒回路50は、圧縮機10を含む。コントローラ110は、圧縮機10の回転数を制御する。コントローラ110は、第1モードを実行中に、圧縮機10の回転数を所定の回転数(上限回転数)に上げても要求能力が得られない場合に、第2モードを実行する。
【0133】
冷凍サイクル装置100では、効率の低下を抑制しつつ、必要な能力を得ることができる。
【0134】
(3-7)
冷凍サイクル装置100では、コントローラ110は、第2モードを実行する際に、変更部70の動作を制御して、主冷媒回路50を流れる冷媒中の第1冷媒と第2冷媒との組成比を、第1組成比と、第2組成比と、の間で変更する。第2組成比では、第1組成比より第1冷媒の比率が高い。
【0135】
冷凍サイクル装置100では、第1冷媒と第2冷媒との組成比を段階的に変化させるので、効率の低下は抑制しつつ、必要な能力を得ることができる。
【0136】
(3-8)
冷凍サイクル装置100は、主冷媒回路50は、圧縮機10を含む。コントローラ110は、圧縮機10の回転数を制御する。コントローラ110は、冷凍サイクル装置100に対する要求能力の変化に応じて、圧縮機10の回転数、又は、主冷媒回路50を流れる冷媒中の第1冷媒と第2冷媒との組成比、のいずれかを変更する。
【0137】
冷凍サイクル装置100では、効率の低下は抑制しつつ、必要な能力を得ることができる。
【0138】
(3-9)
冷凍サイクル装置100では、コントローラ110は、要求能力が低下した際に、主冷媒回路50を流れる冷媒中の第1冷媒の比率が所定値(下限値)より高い場合には、主冷媒回路50を流れる冷媒中の第1冷媒の比率を下げるよう変更部70を制御し、主冷媒回路50を流れる冷媒中の第1冷媒の比率が所定値(下限値)以下の場合には、圧縮機10の回転数を下げる。
【0139】
冷凍サイクル装置100では、効率の低下は抑制しつつ、必要な能力を得ることができる。
【0140】
(4)変形例
以下に、上記実施形態の変形例を説明する。なお、以下の変形例は、互いに矛盾しない範囲で適宜組み合わせられてもよい。
【0141】
(4-1)変形例A
主冷媒回路50を流れる冷媒の組成を変更するための機構は、上記実施形態の変更部70のような機構に限定されるものではない。例えば、冷凍サイクル装置100は、
図5のように、変更部70に代えて、変更部170を有するものであってもよい。
【0142】
変更部170は、冷媒容器72に代えて、内部に吸着材172aが充填されている容器172を含む。その他の構成については、上記実施形態の変更部70と同様である。
【0143】
吸着材172aは、第1冷媒を吸着する特性を有する。具体的に、第1実施形態の冷凍サイクル装置100では、吸着材172aは、CO2を吸着する特性を有する。
【0144】
また、吸着材172aは、第2冷媒を吸着しない特性を有する。具体的に、第1実施形態の冷凍サイクル装置100では、吸着材172aは、第2冷媒として使用されるR1234ZeやR1234yfを吸着しない。あるいは、吸着材172aは、第1冷媒に加えて第2冷媒も吸着するものの、第2冷媒の吸着性能が第1冷媒の吸着性能より低い特性を有するものでもよい。
【0145】
なお、吸着材172aは、例えばCO2の吸着性能が高いゼオライトである。また、吸着材172aは、CO2の吸着性能が高い金属有機構造体(MOF)であってもよい。なお、吸着材172aの種類は、第1冷媒を吸着し、かつ、第2冷媒を吸着しない又は第2冷媒の吸着性能が第1冷媒の吸着性能より低いものであれば、例示した種類の吸着材に限定されない。
【0146】
変更部170では、吸着材172aに第1冷媒を吸着させる場合には、熱源側弁82a及び利用側弁82bが開かれ、主冷媒回路50を流れる冷媒の一部が、容器172に流入する。冷媒が容器172内を通過する際、第1冷媒は吸着材172aに吸着される一方で、第2冷媒は吸着材172aに吸着されない又はほとんど吸着されないので、容器172を通過した冷媒は第2冷媒の比率が高い冷媒となる。これを主冷媒回路50に流入させることで、主冷媒回路50を流れる冷媒中の第2冷媒の比率を増加させることができる。
【0147】
一方、吸着材172aから第1冷媒を脱着させる場合にも、熱源側弁82a及び利用側弁82bが開かれ、主冷媒回路50を流れる冷媒の一部が、容器172に流入する。脱着時には、さらに、例えば圧縮機10から吐出される高温の冷媒の熱を利用して、あるいは、図示内ヒータ等の発する熱を利用して、容器172内の吸着材172aが加熱される。その結果、吸着材172aから第1冷媒が脱着され、容器172を流れる冷媒に混入するので、容器172から流出する冷媒は、第2冷媒の比率が低い(容器172に流入した時よりも第2冷媒の比率が低い)冷媒となる。この冷媒を主冷媒回路50に流入させることで、主冷媒回路50を流れる冷媒中の第2冷媒の比率を低下させることができる。言い換えれば、この冷媒を主冷媒回路50に流入させることで、主冷媒回路50を流れる冷媒中の第1冷媒の比率を増加させることができる。
【0148】
さらに、変更部の構成は、例示のものに限定されず、主冷媒回路50を流れる冷媒の組成比を変更可能であれば、他の構成であってもよい。例えば、変更部は、冷媒精留塔を利用するものであってもよい。
【0149】
(4-2)変形例B
上記実施形態では、第1冷媒はCO2であり、第2冷媒はHFO冷媒のR1234Ze又はR1234yfである非共沸混合冷媒を用いる冷凍サイクル装置について説明を行った。ただし、第1冷媒及び第2冷媒の種類は例示の冷媒に限定されるものではない。例えば、第1冷媒は、HFO冷媒のR1132(E)(トランス-1,2?ジフルオロエチレン)またはR1123(トリフルオロエチレン)であってもよい。このような冷媒の組合せでも、第2冷媒を実質的に単独で用いることで高効率の運転を実現しつつ、第2冷媒を単独で用いる場合には能力が不足する場合には、第1冷媒と第2冷媒との非共沸混合冷媒を用いることで能力不足を補うことができる。
【0150】
(4-3)変形例C
上記実施形態では、建物等に設置される冷凍サイクル装置100を例に、本開示の冷凍サイクル装置を説明している。しかし、本開示の冷凍サイクル装置は、建物に設置されるものに限定されない。本開示の冷凍サイクル装置は、例えば、自動車等の乗物に搭載される装置であってもよい。
【0151】
(4-4)変形例D
上記実施形態では、冷凍サイクル装置100が、熱源ユニット2と、熱源ユニット2に冷媒配管により接続される利用ユニット4と、を有する場合を例に、本開示の冷凍サイクル装置を説明している。しかし、本開示の冷凍サイクル装置は、このような装置に限定されるものではない。例えば、本開示の冷凍サイクル装置は、全ての機器が1つのケーシングに搭載される一体式の装置であってもよい。
【0152】
(4-5)変形例E
上記実施形態では、コントローラ110は、利用熱交換器40を蒸発器として使用する際には、第2冷媒が実質単独で使用される第1モードを実行する。ただし、これに限定されるものでなく、コントローラ110は、利用熱交換器40を蒸発器として使用する際にも、能力不足が問題となる条件が存在する場合には、第1モードに加え、第1冷媒と第2冷媒との非共沸混合冷媒が使用される第2モードを実行してもよい。この場合、冷凍サイクル装置は、温度調整対象を冷却する運転だけを行う装置であってもよい。
【0153】
(4-6)変形例F
上記実施形態では、冷凍サイクル装置100は、利用熱交換器40を蒸発器として使用する運転と、利用熱交換器40を放熱器として使用する運転と、を切り換えて実行可能な装置である。ただし、これに限定されるものでなく、冷凍サイクル装置100は、利用熱交換器40を放熱器として使用する運転だけを主に行う装置であってもよい。
【0154】
(4-7)変形例G
上記実施形態では、要求能力の変化に応じて冷凍サイクル装置100の能力を増大させる際に、コントローラ110は、圧縮機10のモータ10aの回転数と、主冷媒回路50を流れる冷媒の組成比のうち、変更後によりCOPを高く維持可能な方を変更する。これに代えて、コントローラ110は、要求能力の変化に応じて冷凍サイクル装置100の能力を増大させる際に、圧縮機10のモータ10aの回転数と、主冷媒回路50を流れる冷媒の組成比のうち、より電力増加量の低い方を変更してもよい。
【0155】
このような制御を行うため、例えば、圧縮機10のモータ10aの回転数を変化させた場合の能力と電力使用量との関係と、主冷媒回路50を流れる冷媒の第1冷媒の比率を変化させた場合の能力と電力使用量との関係と、が求められ、閾値となる圧縮機の上限回転数が予め決定されていてもよい。上限回転数は、例えばコントローラ110のメモリ(記憶部)に記憶される。
【0156】
他の例では、
図6のように、圧縮機10に電流計又は電力量計10dが設けられてもよい。そして、コントローラ110は、冷凍サイクル装置100に対する要求が増大した場合に、主冷媒回路50を流れる冷媒中の第1冷媒と第2冷媒との組成比は変化させずに圧縮機10のモータ10aの回転数を変えた場合の電流値の変化と、圧縮機10のモータ10aの回転数は変化させずに主冷媒回路50を流れる冷媒中の第1冷媒と第2冷媒との組成比を変えた場合の電流値の変化とを、それぞれ実測してもよい。そして、コントローラ110は、2つの制御のうち、圧縮機10の電流値の増加が実際に少なかった方を、最終的に実行する制御として選択してもよい。
【0157】
(4-8)変形例H
上記実施形態では、第2モードにおいて、第1冷媒と第2冷媒との組成比を段階的に変化させているが、これに限定されるものではない。例えば、第2モードでは、コントローラ110は、主冷媒回路50を流れる冷媒中の第1冷媒と第2冷媒との組成比を、常に所定の(常に同一の)組成比になるよう制御してもよい。
【0158】
<付記>
以上、本開示の実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本開示は、冷凍サイクル装置に広く適用でき有用である。
【符号の説明】
【0160】
10 圧縮機
40 利用熱交換器
50 主冷媒回路(冷凍サイクル)
70 変更部
100 冷凍サイクル装置
110 コントローラ(制御部)
150 検知部
170 変更部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0161】