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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】筒状のタイヤ部材の製造装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/30 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
B29D30/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023129625
(22)【出願日】2023-08-08
【審査請求日】2024-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正智
(72)【発明者】
【氏名】松村 謙介
(72)【発明者】
【氏名】沼崎 康
(72)【発明者】
【氏名】河合 勝広
(72)【発明者】
【氏名】大石 潤平
(72)【発明者】
【氏名】善養寺 千裕
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 武大
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大
(72)【発明者】
【氏名】松丸 輝明
(72)【発明者】
【氏名】大西 康平
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 誠之
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-205516(JP,A)
【文献】特開2019-202454(JP,A)
【文献】特開2022-30605(JP,A)
【文献】特開2010-260178(JP,A)
【文献】特開2012-2522(JP,A)
【文献】特開平5-42616(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0283351(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00 - 30/72
G01B 11/00 - 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のタイヤ材料を平置き状態で供給するコンベヤと、前記コンベヤにより供給された前記タイヤ材料が巻き付けられて筒状に成形される成形ドラム体とを有し、
複数の前記コンベヤがドラム幅方向に並列されていて、前記成形ドラム体をドラム幅方向にスライド移動させるスライド移動機構と、前記成形ドラム体を上下移動させる上下移動機構とを備えた筒状のタイヤ部材の製造装置において、
ベース部の上に前記成形ドラム体を含む上部構造部が配置されていて、前記ベース部と前記上部構造部とが前記上下移動機構により連結されていて、
前記スライド移動機構により、前記ベース部、前記上部構造部および前記上下移動機構を含むドラムユニットを一体としてドラム幅方向に移動させる構成にして、
前記上部構造部は、前記成形ドラム体をドラム幅方向に移動させるドラム移動機構を有し、前記ドラム移動機構が前記スライド移動機構とは別の機構として設置されている筒状のタイヤ部材の製造装置。
【請求項2】
前記コンベヤに平置きされた前記タイヤ材料を検知するセンサと、前記センサにより検知された前記タイヤ材料の幅方向位置データが入力される制御部とを有し、前記幅方向位置データに基づいて前記制御部が前記ドラム移動機構を制御することにより、前記成形ドラム体のドラム幅方向位置が調整されつつ、前記タイヤ材料が前記成形ドラム体に巻き付けられる構成にした請求項1に記載の筒状のタイヤ部材の製造装置。
【請求項3】
前記タイヤ材料が前記コンベヤから供給される際に、そのコンベヤの先端部のドラム幅方向位置に基づいて前記スライド移動機構を制御することにより、前記成形ドラム体のドラム幅方向位置が調整され、かつ、そのコンベヤの先端部の上下位置に基づいて前記上下移動機構を制御することにより、前記成形ドラム体の上下位置が調整されて、前記成形ドラム体がそのコンベヤの前端部近傍の巻き付け位置に設置される構成にした請求項1または2に記載の筒状のタイヤ部材の製造装置。
【請求項4】
成形ドラム体に対して複数のコンベヤがドラム幅方向に並列されていて、それぞれの前記コンベヤにより平置き状態で供給される帯状のタイヤ材料を前記成形ドラム体に巻付けて筒状に成形する際に、前記成形ドラム体をドラム幅方向に移動させるスライド移動機構と、上下方向に移動させる上下移動機構とを用いて、前記成形ドラム体を、前記成形ドラム体に前記タイヤ材料を供給する前記コンベヤの前端部近傍の巻付け位置に移動させ、次いで、前記巻き付け位置の前記成形ドラム体に、前記コンベヤにより供給される前記タイヤ材料を巻付ける筒状のタイヤ部材の製造方法において、
ベース部の上に前記成形ドラム体を含む上部構造部を配置して、前記ベース部と前記上部構造部とを上下移動機構により連結し、前記上部構造部は前記成形ドラム体をドラム幅方向に移動させるドラム移動機構を前記スライド移動機構とは別に有していて、
前記スライド移動機構により、前記ベース部、前記上部構造部および前記上下移動機構を含むドラムユニットを一体としてドラム幅方向に移動させ、かつ、前記上下移動機構により前記上部構造部を上下方向に移動させて、前記成形ドラム体を前記巻き付け位置に移動させ、
前記巻き付け位置では、前記成形ドラム体を前記ドラム移動機構によりドラム幅方向に移動させることにより、前記成形ドラム体に巻付ける前記タイヤ材料のドラム幅方向位置のバラつきを是正しながら前記成形ドラム体に巻き付ける筒状のタイヤ部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状のタイヤ部材の製造装置および方法に関し、さらに詳しくは、並列された複数のコンベヤにより平置き状態で供給される帯状のタイヤ材料を、円滑かつ迅速に成形ドラム体に供給するとともに精度よくドラム幅方向の位置決めして、高品質の筒状のタイヤ部材を生産性よく製造できる製造装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤはグリーンタイヤを加硫することで製造される。グリーンタイヤは多数種類のタイヤ材料が積層して成形される。例えば、インナーライナ、カーカス材、ベルト材、トレッドゴム、一対のビード部材などを成形ドラム上で一体化させることでグリーンタイヤが成形される。
【0003】
多数種類の帯状のタイヤ材料を成形ドラムに供給する際に、それぞれのタイヤ材料を平置き状態で供給するコンベヤを上下方向に重なる範囲に配置して、それぞれのコンベヤの先端位置に応じて成形ドラムを上下方向に移動させる装置が提案されている(特許文献1の図2などを参照)。このようにコンベヤを配置することで装置のコンパクト化を図っている。この成形ドラム2は、レール8に沿ってドラム幅方向に移動することで、並列されているそれぞれのコンベヤ10の前方位置に配置され、それぞれのコンベヤ10により供給されたタイヤ材料は、成形ドラムに巻き付けられて筒状のタイヤ部材が製造される。
【0004】
成形ドラムに供給される1枚のタイヤ材料においてドラム幅方向位置にバラつきがあると、そのタイヤ材料は蛇行した状態で成形ドラムに巻き付けられるので、筒状に製造されたタイヤ部材の品質低下の要因になる。また、成形ドラムに複数枚のタイヤ材料を順次巻き付けて積層する場合に、供給されるそれぞれのタイヤ材料のドラム幅方向位置にバラつきがあると、それぞれのタイヤ材料が幅方向にずれて積層されるので、筒状に製造されたタイヤ部材(積層体)の品質低下の要因になる。供給されるタイヤ材料に対して成形ドラムを幅方向に移動させることで、タイヤ材料のドラム幅方向位置のバラつきを是正することができる。しかしながら、引用文献1で提案されている装置では、成形ドラム2だけでなく、成形ドラム2を支持する鉛直支持体15などを含む組立ユニット1が一体的にレール8に沿って移動する。そのため、タイヤ材料のドラム幅方向位置のバラつきを是正するためには、成形ドラム2に比して大きくて重い組立ユニット1をドラム幅方向に移動させる必要があるので、成形ドラム2を迅速にドラム幅方向に移動させることが困難になる。これに伴い、タイヤ材料を円滑かつ迅速に成形ドラムに供給して精度よくドラム幅方向の位置決めして巻き付けるには不利になるため、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2010-506766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、並列された複数のコンベヤにより平置き状態で供給される帯状のタイヤ材料を、円滑かつ迅速に成形ドラム体に供給するとともに精度よくドラム幅方向の位置決めして、高品質の筒状のタイヤ部材を生産性よく製造できる製造装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の筒状のタイヤ部材の製造装置は、帯状のタイヤ材料を平置き状態で供給するコンベヤと、前記コンベヤにより供給された前記タイヤ材料が巻き付けられて筒状に成形される成形ドラム体とを有し、複数の前記コンベヤがドラム幅方向に並列されていて、前記成形ドラム体をドラム幅方向にスライド移動させるスライド移動機構と、前記成形ドラム体を上下移動させる上下移動機構とを備えた筒状のタイヤ部材の製造装置において、ベース部の上に前記成形ドラム体を含む上部構造部が配置されていて、前記ベース部と前記上部構造部とが前記上下移動機構により連結されていて、前記スライド移動機構により、前記ベース部、前記上部構造部および前記上下移動機構を含むドラムユニットを一体としてドラム幅方向に移動させる構成にして、前記上部構造部は、前記成形ドラム体をドラム幅方向に移動させるドラム移動機構を有し、前記ドラム移動機構が前記スライド移動機構とは別の機構として設置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の筒状のタイヤ部材の製造方法は、成形ドラム体に対して複数のコンベヤがドラム幅方向に並列されていて、それぞれの前記コンベヤにより平置き状態で供給される帯状のタイヤ材料を前記成形ドラム体に巻付けて筒状に成形する際に、前記成形ドラム体をドラム幅方向に移動させるスライド移動機構と、上下方向に移動させる上下移動機構とを用いて、前記成形ドラム体を、前記成形ドラム体に前記タイヤ材料を供給する前記コンベヤの前端部近傍の巻付け位置に移動させ、次いで、前記巻き付け位置の前記成形ドラム体に、前記コンベヤにより供給される前記タイヤ材料を巻付ける筒状のタイヤ部材の製造方法において、ベース部の上に前記成形ドラム体を含む上部構造部を配置して、前記ベース部と前記上部構造部とを上下移動機構により連結し、前記上部構造部は前記成形ドラム体をドラム幅方向に移動させるドラム移動機構を前記スライド移動機構とは別に有していて、前記スライド移動機構により、前記ベース部、前記上部構造部および前記上下移動機構を含むドラムユニットを一体としてドラム幅方向に移動させ、かつ、前記上下移動機構により前記上部構造部を上下方向に移動させて、前記成形ドラム体を前記巻き付け位置に移動させ、前記巻き付け位置では、前記成形ドラム体を前記ドラム移動機構によりドラム幅方向に移動させることにより、前記成形ドラム体に巻付ける前記タイヤ材料のドラム幅方向位置のバラつきを是正しながら前記成形ドラム体に巻き付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記スライド移動機構によって前記ドラムユニットを一体としてドラム幅方向に移動させ、前記上下移動機構により前記上部構造部を上下方向に移動させることで、前記タイヤ材料を前記コンベヤから前記成形ドラム体に円滑に移載させることができる適切な前記巻き付け位置に、前記成形ドラム体を移動させることができる。前記巻き付け位置では、前記成形ドラム体を前記ドラム移動機構によりドラム幅方向に移動させることで、前記成形ドラム体に巻付ける際に前記タイヤ材料のドラム幅方向位置のバラつきを是正できる。そして、前記ドラム移動機構は、前記ドラムユニットではなく、前記成形ドラム体をドラム幅方向に移動させるので、前記成形ドラム体を所望のドラム幅方向位置に迅速に移動させるには有利になる。これにより、並列されたそれぞれの前記コンベヤから前記タイヤ材料を円滑かつ迅速に成形ドラム体に供給するとともに、精度よくドラム幅方向の位置決めできる。その結果、前記成形ドラム体では、前記タイヤ材料をドラム幅方向のバラつきを抑制して筒状に成形できるので、高品質の筒状のタイヤ部材を生産性よく製造するには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】筒状のタイヤ部材の製造装置の実施形態を平面視で例示する説明図である。
図2図1の製造装置を正面視で例示する説明図である。
図3図1の製造装置を側面視で例示する説明図である。
図4図1の成形ドラム体を一方の巻付け位置に移動させた状態を平面視で例示する説明図である。
図5図4の成形ドラム体を側面視で例示する説明図である。
図6図4の巻き付け位置でタイヤ材料を成形ドラム体に巻付けている状態を例示する説明図である。
図7図6の成形ドラム体を他方の巻付け位置に移動させた状態を平面視で例示する説明図である。
図8図7の成形ドラム体を側面視で例示する説明図である。
図9図7の巻き付け位置でタイヤ材料を成形ドラム体に巻付けている状態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の筒状のタイヤ部材の製造装置および方法を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図1図3に例示する筒状のタイヤ部材の製造装置1の実施形態を用いて、平置き状態でコンベヤ10a、10bにより供給される帯状のタイヤ材料M1、M2が、成形ドラム体6に巻付けられて筒状のタイヤ部材Mが製造される。例えば、タイヤ材料M1、M2としてインナーライナ、カーカス材が使用されて、成形ドラム体6に順次供給されて、筒状のタイヤ部材Mとしてインナーライナ層、カーカス層が製造されて積層される。このインナーライナ層、カーカス層が使用されてグリーンタイヤGが成形される。成形されたグリーンタイヤGが加硫されることでタイヤTが製造される。
【0013】
製造装置1は、タイヤ材料M1、M2を平置き状態で供給するコンベヤ10a、10bと、成形ドラム体6を含むドラムユニット2と、ドラムユニット2をドラム幅方向にスライド移動させるスライド移動機構8と、成形ドラム体6を上下移動させる上下移動機構9とを備えている。この実施形態では、製造装置1はさらに、センサ11と制御部12とを備えている。図中のX、Y、Z矢印はそれぞれ、製造装置1(成形ドラム体6)の幅方向、前後方向、高さ方向を示していて互いに直交する方向である。図面では、前後方向(Y方向)でコンベヤ10a、10bから成形ドラム体6に向かう方向が前方である。
【0014】
コンベヤ10a、10bは、ベルトコンベヤ或いはこれに類する搬送手段である。複数のコンベヤ10a、10bがドラム幅方向に並列されている。それぞれのコンベヤ10a、10bは、基本的に地盤の一定位置に固定されていて移動しない。この実施形態では、それぞれのコンベヤ10a、10bの前端の前後方向位置は実質的に同じ位置に設定されていて、上下方向位置は若干異なる位置に設定されている。それぞれのコンベヤ10a、10bの前端の前後方向位置を異ならせた設定にすることも、上下方向位置を実質的に同じ位置に設定することもできる。
【0015】
成形ドラム体6は、コンベヤ10a、10bにより供給されたタイヤ材料M1、M2が巻き付けられて筒状に成形する。成形ドラム体6のドラム軸心CはX方向に延在している。成形ドラム体6は、回転駆動部6aによってドラム軸心Cを中心にして回転する。
【0016】
ドラムユニット2は、ベース部3、上部構造部4、スライド移動機構8および上下移動機構9を含む全体の構造体である。ドラムユニット2は、上下にベース部3と上部構造部4とに区分されていて、ベース部3の上方に上部構造部4が配置されている。ベース部3と上下構造部4とは上下移動機構9によって連結されている。
【0017】
ベース部3は、地盤上でドラム幅方向に延在するガイドレール2aに載置されている。ベース部3には、スライド移動機構8を構成する駆動モータなどが設置されている。スライド移動機構8としては、ベース部3をガイドレール2aに沿って移動させる公知の種々の機構を用いることができる。スライド移動機構8によってベース部3をガイドレール2aに沿って移動させると、成形ドラム体6を含むドラムユニット2がドラム幅方向に移動することになる。
【0018】
上部構造部4は、載置板5a、スライド板5b、成形ドラム体6、回転駆動部6aおよびドラム移動機構7を含んでいる。載置板5aの上に配置されたスライド板5bには成形ドラム体6、回転駆動部6aが配置されている。スライド板5bは例えば、載置板5aに形成されているドラム幅方向に延在する溝などに係合している。載置板5aの上にはドラム移動機構7が配置されている。
【0019】
ドラム移動機構7は、上部構造部4において成形ドラム体6をドラム幅方向に移動させる。この実施形態では、ドラム移動機構7によって、載置板5aに対してスライド板5bをドラム幅方向に移動させると、成形ドラム体6および回転駆動部6aがドラム幅方向に移動することになる。ドラム移動機構7としては流体シリンダやサーボモータで進退するロッドなどの公知の種々の機構を用いることができる。ドラム移動機構7はスライド移動機構8とは別の機構である。
【0020】
上下移動機構9は、ベース部3に対して上部構造部4を上下移動させる。上下移動機構9としては、流体シリンダやサーボモータで進退するロッドなどの公知の種々の機構を用いることができる。この実施形態では、上下移動機構9は、ベース部3と載置板5aとの間に介在している。上下移動機構9によって、ベース部3に対して上部構造部4を上下移動させると、成形ドラム体6が上下移動することになる。
【0021】
センサ11は、それぞれのコンベヤ10a、10bの上方に設置されている。センサ11は、コンベヤ10a、10bに載置されているタイヤ材料M1、M2の有無や位置を検知する。センサ11としては、非接触タイプの公知の種々の検知センサを用いることができる。センサ11は、それぞれのタイヤ材料M1、M2の幅方向(X方向)に間隔をあけて複数配置することも、供給方向(Y方向)に間隔をあけて複数配置することもできる。センサ11による検知データは制御部12に逐次入力される。この検知データには、コンベヤ10上でのタイヤ材料M1、M2の幅方向位置が含まれる。
【0022】
制御部12は、入力されたデータや記憶されているデータ等を用いて演算処理を行うとともに、製造装置1の様々な構成部品の制御を行なう。制御部12としては、公知の種々のコンピュータを用いることができる。
【0023】
次に、この製造装置1を用いて筒状のタイヤ部材Mを製造する手順の一例を説明する。
【0024】
この製造装置1では、成形ドラム体6に対してドラム幅方向に並列されている複数のコンベヤ10a、10bによりタイヤ材料M1、M2が平置き状態で成形ドラム体6に供給されて巻き付けられる。それぞれのタイヤ材料M1、M2が供給される際に、そのタイヤ材料M1、M2を供給するコンベヤ10a、10bの先端部近傍(巻き付け位置P1、P2)に成形ドラム体6を移動させて設置する。
【0025】
まず、図4図5に例示するように、成形ドラム体6にタイヤ材料M1を供給するコンベヤ10aの前端部近傍の巻付け位置P1に成形ドラム体6を移動させて設置する。そのため、図4に例示するように、スライド移動機構8によってドラムユニット2を一体としてドラム幅方向に移動させて巻き付け位置P1(X方向位置)に位置合わせする。また、図5に例示するように、上下移動機構9によって上部構造部4を上下方向に移動させて巻き付け位置P1(Z方向位置)に位置合わせする。巻き付け位置P1は、タイヤ材料M1をコンベヤ10aから成形ドラム体6に円滑に移載させることができる適切な位置である。
【0026】
コンベヤ10aの前端部の位置(X方向、Y方向およびZ方向位置)は予め設定されていて、成形ドラム体6のY方向位置も予め設定されている。そこで、成形ドラム体6の位置(X方向およびZ方向位置)を様々に異ならせてコンベヤ10aから成形ドラム体6にタイヤ材料M1を移載させる事前テストなどを行って、巻き付け位置P1を予め決定しておく。他方のコンベヤ10bについても同様に巻き付け位置P2を決定しておく。
【0027】
このように巻き付け位置P1を予め決定しておくことで、タイヤ材料M1を成形ドラム体6に供給する際には、スライド移動機構8を用いて成形ドラム体6のドラム幅方向位置を調整し、かつ、上下移動機構9を用いて成形ドラム体6の上下位置を調整して成形ドラム体6を巻付け位置P1に設置する。具体的には、成形ドラム体6を巻き付け位置P1に設置するには、タイヤ材料M1を供給するコンベヤ10aの先端部のドラム幅方向位置に基づいて、制御部12によってスライド移動機構8を制御して成形ドラム体6のドラム幅方向位置を調整する。また、そのコンベヤ10aの先端部の上下位置に基づいて、制御部12によって上下移動機構9を制御して成形ドラム体6の上下位置を調整する。このように制御することで、成形ドラム体6を巻き付け位置P1に自動的に設置することができる。成形ドラム6を巻き付け位置P1により迅速に設置するには、スライド移動機構8によって成形ドラム体6(ドラムユニット2)を巻き付け位置P1に向かってドラム幅方向に移動させている間に、上下移動機構9によって成形ドラム体6を上下方向に移動させて巻き付け位置P1の高さ位置に位置合わせするとよい。
【0028】
次いで、図6に例示するように、巻き付け位置P1でドラム軸心Cを中心にして成形ドラム体6を回転させて、コンベヤ10aにより供給されるタイヤ材料M1を巻付ける。コンベヤ10aに載置されているタイヤ材料M1は少なからずドラム幅方向に蛇行しているので、成形ドラム体6をドラム移動機構7によってドラム幅方向に移動させることにより、成形ドラム体6に巻付けるタイヤ材料M1のドラム幅方向位置のバラつき(蛇行具合)を是正する。
【0029】
この実施形態では、コンベヤ10aに平置きされたタイヤ材料M1をセンサ11により検知して、センサ11により検知されたタイヤ材料M1の幅方向位置データが制御部12に逐次入力される。制御部12は、入力されたタイヤ材料M1の幅方向位置データと、記憶されているタイヤ材料M1の幅方向位置データに対する基準値と、を比較して、両者の差異を小さくするようにドラム移動機構7を制御して成形ドラム体6をドラム幅方向に移動させる。この基準値はタイヤ材料M1の蛇行が無い場合のタイヤ材料M1の幅方向位置を示すデータである。即ち、タイヤ材料M1を蛇行した状態で巻き付けないように、成形ドラム体6のドラム幅方向位置を調整しつつ、タイヤ材料M1を成形ドラム体6に巻き付ける。つまり、タイヤ材料M1の幅方向中心位置と成形ドラム体6の幅方向中心位置とを一致させるようにセンタリングしたタイヤ材料M1を巻き付ける。これにより、成形ドラム体6では、タイヤ材料M1を筒状に成形したタイヤ部材Mが製造される。
【0030】
次いで、図7図8に例示するように、他方のコンベヤ10bから供給されるタイヤ材料M2によって筒状のタイヤ部材Mを製造するために、この成形ドラム体6を他方のコンベヤ10bの前端部近傍の巻付け位置P2に移動させる。成形ドラム体6を巻き付け位置P2に設置する手順は、上述した巻き付け位置P1に設置する手順と同様である。即ち、図7に例示するように、スライド移動機構8によってドラムユニット2を一体としてドラム幅方向に移動させる。また、図8に例示するように、上下移動機構9によって上部構造部4を上下方向に移動させる。
【0031】
次いで、図9に例示するように、巻き付け位置P2でドラム軸心Cを中心にして成形ドラム体6を回転させつつ、コンベヤ10bにより供給されるタイヤ材料M2を巻付ける。コンベヤ10bに載置されているタイヤ材料M2は少なからずドラム幅方向に蛇行している。そこで、上述したタイヤ材料M1の場合と同様の手順で、成形ドラム体6をドラム移動機構7によってドラム幅方向に移動させることにより、成形ドラム体6に巻付けるタイヤ材料M2のドラム幅方向位置のバラつき(蛇行具合)を是正する。
【0032】
成形ドラム体6には既に筒状のタイヤ部材Mが製造されて巻付いているので、巻き付け位置P2では、このタイヤ部材Mの外周面にタイヤ材料M2を巻き付けることになる。そのため、巻き付け位置P2では、タイヤ材料M2によって筒状に成形されたタイヤ部材Mは、成形ドラム体6上で既に製造されているタイヤ部材Mに対して積層された状態で製造される。
【0033】
上述したように、この製造装置1では、スライド移動機構8および上下移動機構9を用いて、成形ドラム体6をそれぞれのコンベヤ10a、10bからタイヤ材料M1、M2を円滑に移載させることができる適切な巻き付け位置P1、P2に精度よく移動させることができる。これに伴い、タイヤ材料M1、M2を成形ドラム体6に移載する速度を過度に遅くする必要がないので、迅速にずれなく成形ドラム体6に移載するには有利になる。
【0034】
そして、巻き付け位置P1、P2では、成形ドラム体6をドラム移動機構7によりドラム幅方向に移動させることで、タイヤ材料M1、M2のドラム幅方向位置のバラつきを是正しながら成形ドラム体6に巻き付けることができる。ドラム移動機構7は、ドラムユニット2ではなく、ドラムユニット2の構成部品の成形ドラム体6(この実施形態では成形ドラム体6、回転駆動部6aおよびスライド板5bだけ)をドラム幅方向に移動させる。これら成形ドラム体6および付属部品は、ドラムユニット2に比して軽量であり小型なので、成形ドラム体6を所望のドラム幅方向位置に迅速に移動させるには有利になる。
【0035】
即ち、巻き付けられるタイヤ材料M1、M2の幅方向位置のバラつきを是正するように、成形ドラム体6を即座にドラム幅方向一方側および他方側にレスポンスよく移動させることができる。ドラムユニット2のように重量が大きいと慣性力が大きくなるので迅速に幅方向に移動させることがでないが、この実施形態ではそのような不具合が発生しない。これに伴い、タイヤ材料M1、M2の巻き付け速度(ドラム回転速度)を遅くすることなく、精度よくタイヤ材料M1、M2のドラム幅方向の位置決めをすることができる。その結果、成形ドラム体6では、タイヤ材料M1、M2をドラム幅方向のバラつきを抑制して筒状に成形できるので、高品質の筒状のタイヤ部材Mを生産性よく製造するには有利になる。また、この実施形態のように、タイヤ部材Mどうしを積層する場合には、タイヤ部材Mどうしのドラム幅方向の積層ずれを抑制することができるので、品質の優れた筒状のタイヤ部材の積層体を得るには有利になる。
【0036】
図1では、幅方向に離間した2か所の一方の位置にコンベヤ10aが配置されていて、他方の位置にコンベヤ10bが配置されているが、それぞれの位置に配置されるコンベヤ10a、10bは、1台に限らず複数台(例えば2台~4台)が縦列配置されることもある。一方の位置で複数台のコンベヤ10aが縦列配置されている場合は、縦列されたそれぞれのコンベヤ10aによって、複数のタイヤ材料M1が順次連続的に成形ドラム体6に供給され、それぞれが筒状に形成されて積層される。上述した実施形態のように、所定位置に固定されているそれぞれのコンベヤ10aに対して、成形ドラム体6を幅方向に移動させることで、順次連続的に供給されるタイヤ材料M1は蛇行が抑制されて成形ドラム体6の幅方向の基準位置Pxに位置決めしつつ(換言すると、制御部12に入力されたタイヤ材料M1の幅方向位置データと、記憶されているタイヤ材料M1の幅方向位置データに対する基準値とを一致させるようにしつつ)巻き付けられる。即ち、順次供給される複数のそれぞれのタイヤ材料M1を、成形ドラム体6にセンタリングして巻き付ける際に、縦列配置されているそれぞれのコンベヤ10aの位置は固定されているので、それぞれのコンベヤ10aを通じてそれぞれのタイヤ材料M1を連続的に成形ドラム体6に供給することができる。
【0037】
一方、成形ドラム体6が所定位置に固定されていて、成形ドラム体6の直前のコンベヤ10aを幅方向に移動させることで、順次供給されるそれぞれのタイヤ材料M1を成形ドラム体6にセンタリングして巻き付ける方式では、成形ドラム体6の直前のコンベヤ10aを幅方向に移動させている間は、後方のコンベヤ10aから成形ドラム体6の直前のコンベヤ10aにタイヤ材料M1を移載できない。その結果、成形ドラム体6へのタイヤ材料M1の供給が滞り、直前のコンベヤ10aによるセンタリング工程が完了するまでに余分な待ち時間が発生する。これに伴い、筒状のタイヤ部材Mの生産性が低下する。したがって、上述したように、所定位置に固定されているそれぞれのコンベヤ10aに対して、成形ドラム体6を幅方向に移動させることで、順次連続的に供給されるタイヤ材料M1の蛇行を抑制して成形ドラム体6の幅方向の基準位置Pxに位置決めしつつ巻き付ける方式では、それぞれのタイヤ材料M1を成形ドラム体6に供給するまでの余分な待ち時間が抑制されて、筒状のタイヤ部材Mの生産性を向上させるには有利になる。他方の位置で複数台のコンベヤ10bが縦列配置されている場合も、上記と同様であり、所定位置に固定されて縦列配置されたコンベヤ10bに対して、成形ドラム体6を幅方向に移動させて、順次供給される複数のそれぞれのタイヤ材料M2を、成形ドラム体6にセンタリングして巻き付ける方式にすることで、筒状のタイヤ部材Mの生産性を向上させるには有利になる。
【0038】
実施形態では、それぞれのコンベヤ10a、10bの先端は、成形ドラム体6の上方位置に設定されているが、下方位置に設定することもできる。一方のコンベヤ10aの先端を成形ドラム体6の上方位置に設定し、他方のコンベヤ10bの先端を成形ドラム体6の下方に設定することもできる。コンベヤ10a、10bは2つに限らず3つ以上にすることもできる。また、実施形態では、それぞれのコンベヤ10a、10bは、成形ドラム体6に対して前後方向(Y方向)の一方側だけに配置されているが、両側に配置した構成にすることもできる。即ち、図1では成形ドラム体6に対して上側の領域に延在するコンベヤ10a、10bが設置されているが、下側の領域に延在する1つまたは複数のコンベヤを追加して設置することもできる。
【0039】
成形ドラム体6は、一般的な公知の様々な成形ドラムに限らず、例えば製造するタイヤTの内面と実質的に同じ外面を有する所謂、剛性コアであってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 製造装置
2 ドラムユニット
2a ガイドレール
3 ベース部
4 上部構造部
5a 載置板
5b スライド板
6 成形ドラム体
6a 回転駆動部
7 ドラム移動機構
8 スライド移動機構
9 上下移動機構
10(10a、10b) コンベヤ
11 センサ
12 制御部
M1、M2 帯状のタイヤ材料
M タイヤ部材
【要約】
【課題】並列された複数のコンベヤにより平置き状態で供給される帯状のタイヤ材料を、円滑かつ迅速に成形ドラム体に供給し、精度よくドラム幅方向の位置決めして、高品質の筒状のタイヤ部材を生産性よく製造できる製造装置および方法を提供する。
【解決手段】ベース部3の上に成形ドラム体6を含む上部構造部4を配置し、ベース部3と上部構造部4とを上下移動機構9により連結し、スライド移動機構8がベース部3、上部構造部4及び上下移動機構9を含むドラムユニット2を一体としてドラム幅方向に移動させ、上下移動機構9が上部構造部4を上下方向に移動させて、成形ドラム体6を巻き付け位置に移動させ、巻き付け位置では、スライド移動機構8とは別のドラム移動機構7が成形ドラム体6をドラム幅方向に移動させて、タイヤ材料M1、M2のドラム幅方向位置のバラつきを是正しながら成形ドラム体6に巻き付ける。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9