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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】LED光源装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/38 20100101AFI20241009BHJP
   H01L 33/62 20100101ALI20241009BHJP
【FI】
H01L33/38
H01L33/62
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021017819
(22)【出願日】2021-02-05
(65)【公開番号】P2022120726
(43)【公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森安 研吾
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-108117(JP,A)
【文献】特開2011-114240(JP,A)
【文献】特開2013-175635(JP,A)
【文献】特開2017-069475(JP,A)
【文献】国際公開第2018/190618(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面に平行な方向に関して相互に電気的に離間された、第一導電領域と第二導電領域とを有する基台と、
前記基台の前記第一導電領域の上面に載置された導電性基板と、
前記導電性基板の上層に形成された半導体積層体と、
前記半導体積層体の上面の一部領域において、上面視で前記半導体積層体の一対の辺が対向する第一方向に関して離間した複数の位置で延在して形成された第一上部電極と、
前記半導体積層体と前記導電性基板とを電気的に接続する下部電極と、
前記基台の前記第二導電領域のうち、前記第一導電領域を挟んで前記第一方向に離間した異なる位置と、前記第一方向に離間した異なる位置で延在する前記第一上部電極とを、上面視で両者の間に位置する前記半導体積層体の一辺を跨いでそれぞれ電気的に接続する複数のワイヤと、
前記半導体積層体の上面の一部領域に形成され、前記第一方向に関して離間した前記第一上部電極同士を複数の箇所で連絡するように延在して形成された、第二上部電極を備え、
前記第二上部電極は、前記第一上部電極よりも本数が多く、断面積が小さいことを特徴とするLED光源装置。
【請求項2】
前記半導体積層体の上面視の面積に対する、前記第一上部電極と前記第二上部電極の上面視の面積の比率が12%~19%であることを特徴とする、請求項に記載のLED光源装置。
【請求項3】
前記第二上部電極は、上面視で前記半導体積層体の辺に対して実質的に平行な方向に複数本が延在して形成され、
隣接する前記第二上部電極同士の間隔は61μm~134μmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のLED光源装置。
【請求項4】
主面に平行な方向に関して相互に電気的に離間された、第一導電領域と第二導電領域とを有する基台と、
前記基台の前記第一導電領域の上面に載置された導電性基板と、
前記導電性基板の上層に形成された半導体積層体と、
前記半導体積層体の上面の一部領域において、上面視で前記半導体積層体の一対の辺が対向する第一方向に関して離間した複数の位置で延在して形成された第一上部電極と、
前記半導体積層体と前記導電性基板とを電気的に接続する下部電極と、
前記基台の前記第二導電領域のうち、前記第一導電領域を挟んで前記第一方向に離間した異なる位置と、前記第一方向に離間した異なる位置で延在する前記第一上部電極とを、上面視で両者の間に位置する前記半導体積層体の一辺を跨いでそれぞれ電気的に接続する複数のワイヤとを備え、
前記第一上部電極は、前記複数のワイヤが接続される箇所において、周囲の箇所よりも上面視の面積が大きい複数のパッド領域を有し、
前記複数のパッド領域のうち、少なくとも一部は形状が異なることを特徴とするLED光源装置。
【請求項5】
前記導電性基板と前記半導体積層体との間に形成された絶縁層を備え、
前記半導体積層体は、第一半導体層と、前記第一半導体層の上層に形成された活性層と、前記活性層の上層に形成され前記第一半導体層とは導電型の異なる第二半導体層とを含み、
前記第一上部電極は、前記第二半導体層の上層の一部領域に形成されており、
前記下部電極は、前記導電性基板の主面に平行な方向に分散した複数の位置で前記絶縁層を貫通して前記第一半導体層と前記導電性基板とを電気的に接続する内部電極で構成されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のLED光源装置。
【請求項6】
前記活性層は、Ga、In、As及びPからなる群に属する2種以上の元素を少なくとも含む物質で構成され、発光波長が700~1700nmの赤外領域であることを特徴とする、請求項に記載のLED光源装置。
【請求項7】
前記第一上部電極は、前記第一方向に離間した位置において、上面視で前記半導体積層体の辺に対して実質的に平行な方向に複数本が延在して形成されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のLED光源装置。
【請求項8】
前記半導体積層体は、上面視の面積が2mm2以上であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のLED光源装置。
【請求項9】
前記複数のワイヤは、それぞれ同一の前記第一上部電極の異なる2箇所以上の位置に接続されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のLED光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高い光出力を示すLED光源装置の実現が市場から求められている。LED光源装置は、n型半導体層とp型半導体層とで活性層を挟持してなる半導体積層体を含むLEDチップが、パッケージ(基台)に搭載されることで構成される。下記特許文献1には、単一のパッケージに複数のLEDチップを搭載することで、光出力を高める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-302077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LEDチップをパッケージに搭載する際、LEDチップに対して電流を供給するための給電線(ワイヤ)を取り回す必要がある。よって、単一のパッケージ内に複数のLEDチップを搭載する場合、各LEDチップを密接して配置することができず、相互に所定の間隔を設ける必要がある。この結果、好ましい配光特性が実現できないという課題を有する。
【0005】
図1Aは、パッケージ91に3個のLEDチップ92を搭載したLED光源装置90aの模式的な平面図である。図1Bは、図1Aに示すLED光源装置90aを実際に点灯させたときの配光分布を示すグラフである。図1Bに示すように、X方向に係る配光分布の形状と、Y方向に係る配光分布の形状には、差が生じている。これは、パッケージ91上に搭載したLEDチップ92の数を3個(奇数個)としたことによる。すなわち、図1Aによれば、中心位置Oを基準としたときに、+Y側には1個のLEDチップ92が搭載される一方、-Y側には2個のLEDチップ92が搭載される。この結果、図1Bに示すように、Y方向に係る配光分布が配光角0°を基準としたときに非対称な形状を示す。
【0006】
図2Aは、パッケージ91に4個のLEDチップ92を搭載したLED光源装置90bの模式的な平面図である。図2Bは、図2Aに示すLED光源装置90bを実際に点灯させたときの配光分布を示すグラフである。
【0007】
図2Aに示すLED光源装置90bの場合、LEDチップ92の搭載個数を4個(偶数個)としたことで、中心位置Oを基準としたときに、X方向とY方向のLEDチップ92の搭載個数を同一の数(ここでは2個)に設定できる。つまり、パッケージ91上において、各LEDチップ92を、中心位置Oを基準とした回転対称の位置に配置できる。このため、LED光源装置90bの場合、図1Aに示すLED光源装置90aとは異なり、X方向に係る配光分布の形状と、Y方向に係る配光分布の形状とを実質的に同一にできる。かかる事情から、図2Bでは、Y方向に係る配光分布の形状のみが示されている。
【0008】
しかし、LED光源装置90bの場合、図2Bに示すように、配光角0°付近における光強度に落ち込みが見られる。これは、図2Aに示すように、中心位置Oの近傍にはLEDチップ92が位置していないことに起因するものである。つまり、LED光源装置90bによれば、パッケージ91の中心位置Oを通過して光軸に平行な軸(中心軸)に近い領域が周囲よりも暗く照明されてしまう結果、遠方を高照度で照明するのが難しい。
【0009】
本発明者は上記の課題に鑑み、図3に示すように、上面視においてパッケージ91の中心位置Oを含む領域に、大型のLEDチップ93を1個搭載したLED光源装置90cについて検討した。図1A及び図2Aに示すLEDチップ92は、例えば1mm角の大きさ(面積1mm2)であるのに対し、図3に示すLEDチップ93は、例えば2mm角の大きさ(面積4mm2)である。LED光源装置90cのように、従来よりも大型のLEDチップ93を搭載することで、光出力を向上させることができる上、搭載されるLEDチップ93が単一であるため中心位置Oに配置できることから、良好な配光特性も実現できると考えられる。
【0010】
しかしながら、図1Aに示すLED光源装置90aに対して、単に3個の小型のLEDチップ92に代えて大型の1個のLEDチップ93を配置することでLED光源装置90cを形成し、相対的に高い電流を供給して点灯させたところ、LEDチップ93の光取り出し面内に輝度の分布(バラツキ)が生じていることが確認された。この事実は、LED光源装置90cについても、配光特性を改善する余地があることを示唆するものである。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑み、高い光出力と良好な配光特性の両立を実現できるLED光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るLED光源装置は、
主面に平行な方向に関して相互に電気的に離間された、第一導電領域と第二導電領域とを有する基台と、
前記基台の前記第一導電領域の上面に載置された導電性基板と、
前記導電性基板の上層に形成された半導体積層体と、
前記半導体積層体の上面の一部領域において、上面視で前記半導体積層体の一対の辺が対向する第一方向に関して離間した複数の位置で延在して形成された第一上部電極と、
前記半導体積層体と前記導電性基板とを電気的に接続する下部電極と、
前記基台の前記第二導電領域のうち、前記第一導電領域を挟んで前記第一方向に離間した異なる位置と、前記第一方向に離間した異なる位置で延在する前記第一上部電極とを、上面視で両者の間に位置する前記半導体積層体の一辺を跨いでそれぞれ電気的に接続する複数のワイヤとを備えることを特徴とする。
【0013】
本明細書において、基台や導電性基板等の部材の「主面」とは、各部材を構成する複数の面のうち、他の面よりも遥かに面積の大きい面を指す。また「矩形状」とは、長方形、正方形の他、全体的な外観が略四角形状であるものを含む。全体的な外観が略四角形状であるとは、例えば、四角形に対して、頂点に少し丸みを帯びさせた形状や、辺に微小な凹凸が形成されたものや、隣接する辺同士を90°±5°の範囲内の角度で傾斜させたもの等を含む概念である。
【0014】
上記構成によれば、半導体積層体の上面において、離間した位置で延在形成された第一上部電極と、それぞれの第一上部電極に対して近い位置にある第二導電領域とが、ワイヤによって接続される。言い換えれば、向かい合う一対の方向から、ワイヤを介して第一上部電極と第二導電領域とが接続される。これにより、LEDチップを大型化した場合であても、すなわち、半導体積層体を上面から見たときの面積が大きくなった場合であっても、電流を面方向に均質に流すことが可能となり、面方向に係る輝度の分布が抑制される。詳細には、「発明を実施するための形態」の項で後述される。
【0015】
前記LED光源装置は、前記導電性基板と前記半導体積層体との間に形成された絶縁層を備え、
前記半導体積層体は、第一半導体層と、前記第一半導体層の上層に形成された活性層と、前記活性層の上層に形成され前記第一半導体層とは導電型の異なる第二半導体層とを含み、
前記第一上部電極は、前記第二半導体層の上層の一部領域に形成されており、
前記下部電極は、前記導電性基板の主面に平行な方向に分散した複数の位置で前記絶縁層を貫通して前記第一半導体層と前記導電性基板とを電気的に接続する内部電極で構成されているものとしても構わない。
【0016】
また、前記半導体積層体は、上面視が矩形状を示すものとしても構わない。ここでいう「矩形状」とは、上述した定義による。前記LED光源装置は、このような形状の単一の前記半導体積層体を備えるものとしても構わない。
【0017】
なお、前記導電性基板と前記絶縁層との間には、金属層が形成されているものとしても構わない。
【0018】
上記構成によれば、絶縁層内を貫通するように形成された内部電極が、面方向に分散して配置されている。半導体層とオーミック接続を実現する内部電極は、金属層と比較して反射率が低い。このため、内部電極を面方向にベタ状(膜状)に形成すると、光取り出し効率が低下してしまう。これに対し、上記の構成としたことで、活性層から出射された光のうち、光取り出し面側とは反対側(基台側)に向かって進行した光についても、絶縁層を介して金属層で反射できるため、高い光取り出し効率が実現できる。
【0019】
前記第一上部電極は、前記第一方向に離間した位置において、上面視で前記半導体積層体の辺に対して実質的に平行な方向に複数本が延在して形成されているものとしても構わない。
【0020】
ここで、ある方向d1と別の方向d2とが「実質的に平行である」とは、両者の角度が0°である場合は勿論、±5°以下の範囲内で傾斜している場合を含む概念である。
【0021】
上記構成の場合、半導体積層体を上面から見たときの矩形が示す面をXY平面とすると、X方向(上の「第一方向」に対応する。)に離間した複数の位置で、Y方向に延在して形成されている。これにより、半導体積層体の上面視の面積が大きくなった場合であっても、電流を面方向に均質に流すことができる。
【0022】
前記半導体積層体は、上面視の面積が2mm2以上であるものとしても構わない。これにより、高出力のLED光源装置が実現される。一例として、前記半導体積層体を上面視で2mm角の寸法とすることができ、この場合は面積が4mm2である。
【0023】
なお、基台に搭載できる寸法上の制約や、一枚のウェハから切り出される数量の低下を抑えて生産効率を高める等の理由により、前記半導体積層体は、上面視の面積を16mm2以下とするのが好適である。
【0024】
前記複数のワイヤは、それぞれ同一の前記第一上部電極の異なる2箇所以上の位置に接続されているものとしても構わない。
【0025】
例えば、第一上部電極がX方向に離間した複数の位置でY方向に延在されており、且つ、同一の第一上部電極に対しては1箇所でワイヤが接続される場合を想定する。この場合、高い光出力を得るために高い電流を供給すると、第一上部電極とワイヤとの接続箇所の近傍において局所的に電流密度が高くなり、この箇所で部分的に輝度が高くなる場合がある。これに対し、上記の構成によれば、同一の第一上部電極に対してY方向の異なる位置で複数のワイヤが接続されるため、半導体積層体に対して高い電流を注入する場合であっても、それぞれのワイヤに流すべき電流量を抑制できる。この結果、輝度ムラの発生が抑制できる。
【0026】
前記LED光源装置は、更に、前記第二半導体層の上層の一部領域に形成され、前記第一方向に関して離間した前記第一上部電極同士を複数の箇所で連絡するように延在して形成された、第二上部電極を備え、
前記第二上部電極は、前記第一上部電極よりも本数が多く、断面積が小さいものとしても構わない。
【0027】
これにより、半導体積層体を流れる電流を更に面方向に広げやすくなり、輝度バラツキが抑制される。
【0028】
なお、第一上部電極は、第二導電領域とワイヤで接続されることから、断線等を生じさせることなく高い電流を流すことができるように、比較的太い線状電極で形成するのが好ましい。一方で、この太い線状電極を半導体積層体の上面に多く形成すると、光を外部に取り出すことのできる領域の面積が低下してしまう。よって、第一上部電極よりも断面積の小さい(すなわち、線幅の細い)第二上部電極を、離間した複数の位置に形成された第一上部電極同士を連絡するように設けることで、光取り出し効率の低下を抑制しながらも、電流を面方向に広がりやすくする効果が実現できる。
【0029】
前記半導体積層体の上面視の面積に対する、前記第一上部電極と前記第二上部電極の上面視の面積の比率が12%~19%であるものとしても構わない。
【0030】
上記構成によれば、内部電極の近傍に局所的に電流密度が高まることを抑制でき、照度維持率が向上する。
【0031】
前記第二上部電極は、上面視で前記半導体積層体の辺に対して実質的に平行な方向に複数本が延在して形成され、
隣接する前記第二上部電極同士の間隔は61μm~134μmであるものとしても構わない。
【0032】
上記構成によれば、内部電極の近傍に局所的に電流密度が高まることを抑制でき、照度維持率が向上する。
【0033】
前記第一上部電極は、前記複数のワイヤが接続される箇所において、他の箇所よりも上面視の面積が大きい複数のパッド領域を有し、
前記複数のパッド領域のうち、少なくとも一部は形状が異なるものとしても構わない。
【0034】
上記構成によれば、半導体積層体を含むLEDチップを基台に搭載する際に、形状が異なっているパッド領域を基準位置とした位置合わせに活用できる。
【0035】
前記活性層は、Ga、In、As及びPからなる群に属する2種以上の元素を少なくとも含む物質で構成され、発光波長が700~1700nmの赤外領域であるものしても構わない。
【0036】
上記構成によれば、高出力で、配光特性の良好な赤外光源が実現される。このような赤外光源は、例えば、防犯・監視用のカメラ、ナンバープレートの自動認識装置等、目標物に対して遠方に配置される撮像装置に対して好適に利用される。
【発明の効果】
【0037】
本発明のLED光源装置によれば、高い光出力と良好な配光特性とを両立することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1A】従来における単一のパッケージに3個のLEDチップが搭載されてなるLED光源装置の模式的な平面図の一例である。
図1B図1Aに示すLED光源装置を実際に点灯させたときの配光分布を示すグラフである。
図2A】従来における単一のパッケージに4個のLEDチップが搭載されてなるLED光源装置の模式的な平面図の一例である。
図2B図2Aに示すLED光源装置を実際に点灯させたときの配光分布を示すグラフである。
図3】単一のパッケージに大型のLEDチップを1個搭載してなるLED光源装置の模式的な平面図の一例である。
図4】LED光源装置の一実施形態の構造を模式的に示す平面図である。
図5図4に示すLED光源装置の模式的な断面図である。
図6】LEDチップの模式的な平面図である。
図7】LEDチップの断面を含むLED光源装置の模式的な断面図である。
図8】内部電極の配置パターンの一例を模式的に示す平面図である。
図9】比較例としてのLED光源装置の構造を示す模式的な平面図である。
図10】比較例としてのLED光源装置の構造を示す模式的な平面図である。
図11図9及び図10に示すLED光源装置に搭載されたLEDチップを流れる電流の様相を説明するための概念図である。
図12】比較例としてのLED光源装置の構造を示す模式的な平面図である。
図13図4に示すLED光源装置を実際に点灯させたときの配光分布を示すグラフである。
図14図6に示すLEDチップを搭載したLED光源装置に対して点灯を継続させたときの光出力の経時的な変化を示すグラフである。
図15図6に示すLEDチップを搭載したLED光源装置に対して、供給電流量を変えながら点灯させたときの、LEDチップの上面の撮像写真である。
図16】第二上部電極の間隔を異ならせた複数のLEDチップのサンプルに対して、連続点灯試験を行ったときの結果を示すグラフである。
図17A】検証に利用された、サンプル#2(電極本数11本)に対応するLEDチップの模式的な平面図である。
図17B】検証に利用された、サンプル#5(電極本数21本)に対応するLEDチップの模式的な平面図である。
図17C図17A内の領域A1の拡大模式図である。
図18A】第二上部電極の配置パターンの変形例を説明するための、LEDチップの模式的な平面図である。
図18B】第二上部電極の配置パターンの別の変形例を説明するための、LEDチップの模式的な平面図である。
図18C】第二上部電極の配置パターンの更に別の変形例を説明するための、LEDチップの模式的な平面図である。
図18D】第二上部電極の配置パターンの更に別の変形例を説明するための、LEDチップの模式的な平面図である。
図18E】第二上部電極の配置パターンの更に別の変形例を説明するための、LEDチップの模式的な平面図である。
図19A】別実施形態のLED光源装置の構造を模式的に示す断面図である。
図19B】別実施形態のLED光源装置の構造を模式的に示す断面図である。
図20】別実施形態のLED光源装置が備えるLEDチップの構造を模式的に示す平面図である。
図21】別実施形態のLED光源装置の構造を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明に係るLED光源装置の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の図面は模式的に示されたものであり、図面上の寸法比と実際の寸法比とは必ずしも一致しない。また、図面間においても寸法比が一致していない場合がある。
【0040】
本明細書において、「GaInAsP」という記述は、GaとInとAsとPの混晶であることを意味し、組成比の記述を単に省略して記載したものである。「AlGaInAs」などの他の記載も同様である。
【0041】
本明細書内において、「層Z1の上層に層Z2が形成されている」という表現は、層Z1の面上に直接層Z2が形成されている場合はもちろん、層Z1の面上に薄膜を介して層Z2が形成されている場合も含む意図である。なお、ここでいう「薄膜」とは、膜厚10nm以下の層を指し、好ましくは5nm以下の層を指すものとして構わない。
【0042】
[第一実施形態]
図4は本実施形態のLED光源装置を模式的に示す平面図であり、図5はこのLED光源装置の模式的な断面図である。
【0043】
LED光源装置1は、基台30と、基台30上に載置された単一のLEDチップ10とを備える。以下では、基台30の面(主面)をXY平面とし、この面に直交する方向をZ方向とする、X-Y-Z座標系を用いて適宜説明される。
【0044】
以下では、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載される。また、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。すなわち、本明細書において、単に「X方向」と記載されている場合には、「+X方向」と「-X方向」の双方が含まれる。Y方向及びZ方向についても同様である。
【0045】
基台30は、XY平面に平行な方向に関して、絶縁部材35を介して電気的に離間した、複数の導電領域(31,32)を有する。本実施形態では、X方向に関して第一導電領域31を挟むように、複数の第二導電領域32が形成されている。
【0046】
第一導電領域31及び第二導電領域32は、導電性を示す材料で構成される。一例としては、銅に銀メッキが施された材料で構成される。また、絶縁部材35は、第一導電領域31と第二導電領域32との間の絶縁性を確保できる限りにおいて、どのような材料を用いてもよく、一例としては樹脂材料が好適に利用される。
【0047】
LEDチップ10は、基台30のうちの第一導電領域31の上面に載置されている。より詳細には、LEDチップ10は、第一導電領域31の上面において、導電性接着部材7を介して載置されている。導電性接着部材7は、LEDチップ10を基台30に対して高い密着性を有して固定しつつ、導電性を示す材料で構成されており、例えば銀ペーストやAuSn等からなる。
【0048】
LEDチップ10は、図7を参照して後述されるように、複数の半導体層が積層されてなる半導体積層体11を備える。この半導体積層体11内の活性層14で生成された光10Lが、+Z方向に取り出される。LEDチップ10(半導体積層体11)は、図1A図2Aに示したLEDチップ92と比べて大型であり、具体的には上面視の面積が2mm2以上である。また、点灯の際に供給される電流量についても、図1A図1Bに示した小型のLEDチップ92に対する供給電流量より高い。具体的には、連続点灯の場合、小型のLEDチップ92に対する供給電流量は0.1A~1Aであるのに対し、大型のLEDチップ10に対する供給電流量は0.2A~16Aである。また、パルス点灯の場合、小型のLEDチップ92に対する供給電流量は1A~5Aであるのに対し、大型のLEDチップ10に対する供給電流量は2A~80Aである。特にLEDチップ10の光出力を高める場合(高輝度を実現する場合)には、LEDチップ10に対する供給電流量は、小型のLEDチップ92に対して供給可能な電流量よりも高くなり、実現したい輝度によっては極めて高くなることがある。
【0049】
LEDチップ10の+Z側における面(上面)は、複数のワイヤ40によって第二導電領域32と電気的に接続されている。図4に示す例では、+X側に位置する第二導電領域32からLEDチップ10の上面に向けて接続される複数のワイヤ40と、-X側に位置する第二導電領域32からLEDチップ10の上面に向けて接続される複数のワイヤ40とが設けられている。ワイヤ40は、抵抗率が低い金属材料で構成され、好適にはAuやCuが用いられる。
【0050】
以下では、図5に示すように、+X側に位置する第二導電領域32を「第二導電領域32a」と称し、-X側に位置する第二導電領域32を「第二導電領域32b」と称することがある。同様に、第二導電領域32aとLEDチップ10の上面とを連絡するワイヤ40を「ワイヤ40a」と称し、第二導電領域32bとLEDチップ10の上面とを連絡するワイヤ40を「ワイヤ40b」と称することがある。
【0051】
図5に示すように、基台30は、LEDチップ10が載置されている領域の外側を覆うように枠部材37を有する。枠部材37は、絶縁性を有し、LEDチップ10から出射される光10Lに対しては、透過性を示す場合や、吸収する場合等、必要に応じて適宜選択できる。一例として、枠部材37は、樹脂で構成される。
【0052】
図4に示すように、LEDチップ10は、上面視において矩形状を呈している。本実施形態では、上面視においてLEDチップ10を構成する四辺のうち、ある一対の辺がX方向に対向し、別の一対の辺がY方向に対向している。
【0053】
LED光源装置1の点灯の際には、基台30を介してLEDチップ10に対して給電される。第一導電領域31がアノードである場合、第二導電領域32(32a,32b)がカソードとなる。逆に、第一導電領域31がカソードである場合、第二導電領域32(32a,32b)がアノードとなる。第一導電領域31がアノードであるかカソードであるかは、図7を参照して後述される半導体積層体11において、p型半導体層とn型半導体層の位置関係によって決定される。以下では、第一導電領域31がアノードで、第二導電領域32(32a,32b)がカソードである場合を例に挙げて説明する。
【0054】
第一導電領域31及び第二導電領域32は、それぞれ図示しない外部電源と電気的に接続されている。LEDチップ10に対しては、第一導電領域31から導電性接着部材7を介して電流が流れる。この電流は、複数のワイヤ40を通じて、X方向に離間して形成された複数の第二導電領域32に向かって流れる。
【0055】
図6は、LEDチップ10の上面を模式的に示す平面図である。また、図7は、LEDチップ10の断面を含むLED光源装置1の模式的な断面図である。
【0056】
上述したように、LEDチップ10は、基台30の上面に導電性接着部材7を介して載置されている。より詳細には、図7に示すように、本実施形態のLEDチップ10は、導電性基板16と、導電性基板16の上層に形成された金属層17と、金属層17の上層に形成された絶縁層18と、絶縁層18の上層に形成された半導体積層体11とを含む。
【0057】
導電性基板16は、例えばSiやGe等の半導体や、Cu、CuW等の金属材料で構成されている。導電性基板16の-Z側(基台30側)の面にはAu等の金属層が成膜されていてもよい。本実施形態では、導電性基板16の主面がXY平面に平行な方向を示している。
【0058】
本実施形態においては、導電性基板16の上層に金属層17が形成されている。この金属層17は、例えばAu/Sn等の材料からなり、必要に応じてTiやPt等を含む多層構造を示してもよい。
【0059】
半導体積層体11は、活性層14と、活性層14をZ方向に挟持するように、導電型の異なる半導体層(第一半導体層13,第二半導体層15)とが積層されてなる。ここでは、第一半導体層13がp型半導体であり、第二半導体層15がn型半導体であるものとして説明するが、両者の導電型が逆転しても構わない。後者の場合には、第一導電領域31がカソードとなり、第二導電領域32がアノードとなる。
【0060】
活性層14は、光10Lとして得たい波長に応じた材料で構成される。例えば、光10Lを波長700~1700nmの赤外光としたい場合、活性層14は、GaInP、GaInAsP、AlGaAs、InGaAs又はAlGaInAsの単層構造としても構わないし、GaInP、GaInAsP、AlGaAs、InGaAs又はAlGaInAsからなる井戸層と、井戸層よりもバンドギャップエネルギーの大きいGaInP、GaInAsP、AlGaAs、InGaAs、AlGaInAs又はInPからなる障壁層とを含むMQW(Multiple Quantum Well:多重量子井戸)構造としても構わない。また、半導体積層体11内に複数層からなる活性層14が形成されていても構わない。
【0061】
また、第一半導体層13及び第二半導体層15は、活性層14の材料に応じて、エピタキシャル成長可能な材料から適宜選択される。例えば、第一半導体層13は、GaAs、AlGaAs、AlGaInP、InPが利用でき、第二半導体層15は、GaAs、AlGaAs、GaP、InP、InAsPが利用できる。なお、第一半導体層13及び第二半導体層15には、導電型(n型又はp型)に応じたドーパントがドープされており、具体的には、n型の場合には例えばSiが、p型の場合には例えばMgがそれぞれドープされている。本実施形態においては、第一半導体層13はp型であり、第二半導体層14はn型である。ただし、上述したように、両者の極性は反転されていてもよい。
【0062】
また、第一半導体層13及び第二半導体層15は、単一の組成を示す半導体層からなるものとしても構わないし、異なる組成を示す複数の半導体層が積層されてなるものとしても構わない。
【0063】
半導体積層体11は、上述したように、これら複数の半導体層(13,14,15)が積層されてなり、上面視(Z方向から見て)で矩形状を呈している。
【0064】
絶縁層18は、光10Lに対して透過性が高い材料が好ましい。例えば、例えばSiO2、SiN、Al23等からなる。
【0065】
図7に示すように、LEDチップ10は、絶縁層18を貫通して第一半導体層13と導電性基板16とを電気的に接続する内部電極25を有している。より詳細には、本実施形態では、内部電極25が、第一半導体層13と金属層17とを連絡するように、絶縁層18内を貫通して形成されている。この内部電極25は、XY平面に平行な方向(すなわち、導電性基板16の主面に平行な方向)に分散した複数の位置に設けられている。図8は、内部電極25の配置パターンの一例を模式的に示す平面図である。この内部電極25が「下部電極」に対応する。
【0066】
内部電極25は、第一半導体層13に対してオーミック接続の形成が可能な材料で構成されている。一例として、内部電極25は、AuZn、AuBe、又は少なくともAuとZnを含む積層構造(例えばAu/Zn/Au等)で構成される。
【0067】
図6に示すように、半導体積層体11の上面(より詳細には、第二半導体層15の上層)には、複数の上部電極が形成されている。図6の例では、上部電極として、相対的に線幅の太い第一上部電極21と、相対的に線幅の細い(断面積の小さい)第二上部電極22とが設けられている。一例として、第一上部電極21の線幅は30μmであり、第二上部電極22の線幅は12μmである。上部電極(21,22)は、抵抗率の低い金属材料からなり、好適には、Au、Cu、Pt、AuGeNi、AuGe、AuNiSi、AuSi等が用いられる。
【0068】
図6に示すように、第一上部電極21は、X方向に離間した複数の位置で、Y方向に延在して形成されている(21a,21b)。すなわち、第一上部電極21は、第二導電領域32(32a,32b)が離間する方向(X方向)と同じ方向に離間して設けられている。図6に示す例では、X方向が「第一方向」に対応する。
【0069】
そして、第一上部電極21のうちの、+X側に位置する第一上部電極21aは、+X側に位置する第二導電領域32aに対して、ワイヤ40aによって電気的に接続される(図5参照)。また、第一上部電極21のうちの、-X側に位置する第一上部電極21bは、-X側に位置する第二導電領域32bに対して、ワイヤ40bによって電気的に接続される。
【0070】
つまり、図4及び図6を参照して理解されるように、各ワイヤ40は、上面視で第二導電領域32と第一上部電極21との間に位置するLEDチップ10(半導体積層体11)の一辺を跨ぐように配線される。ここで、「一辺を跨ぐ」とは、二辺以上を跨がないことを意味している。言い換えれば、X方向に離間した複数の位置で延在する第一上部電極21は、それぞれ、第一上部電極21に近い側の第二導電領域32とワイヤ40で接続される。これにより、各ワイヤ40の長さをほぼ均一化でき、各ワイヤ40間で抵抗値に大きな差異が生じない。
【0071】
図6に示すように、第一上部電極21の一部箇所には、周囲の箇所よりも上面視の面積が大きいパッド領域24が形成されている。パッド領域24の大きさは、例えば50~150μm程度である。このパッド領域24に対して、ワイヤ40が接続される。図4に示す例では、第二導電領域32a及び第二導電領域32bから、それぞれ5本のワイヤ40が伸びている。このため、図6に示す例では、第一上部電極21a及び第一上部電極21bに対しても、それぞれY方向に離間した5箇所の位置にパッド領域24が形成されている。
【0072】
図6に示す例では、第二上部電極22は、上面視でY方向に離間した状態で、複数本がX方向に延在して形成されている。つまり、複数の第二上部電極22は、X方向に離間した複数の位置に形成されている第一上部電極21(21a,21b)同士を、電気的に接続するように形成されている。
【0073】
このような構成によれば、LEDチップ10の光取り出し面(第二半導体層15の上面)における輝度分布が抑制される。この点につき、次に比較例を参照しながら説明する。
【0074】
図9及び図10は、図1A及び図2Aを参照して上述した、従来の小型のLEDチップ92をパッケージ91に搭載する方法と同様の方法を用いて、図3を参照して上述した大型のLEDチップ93をパッケージ91に搭載してなるLED光源装置90cの模式的な平面図の一例である。
【0075】
図9に示す構造例では、パッケージ91には、絶縁部材95を介して2つの導電領域(97,98)が形成されている。また、図10に示す構造例では、パッケージ91には、導電領域97と、この導電領域97をX方向に挟むように2つの導電領域(98,99)が形成されている。いずれの場合も、隣接する導電領域同士は、絶縁部材95によって電気的に離間されている。
【0076】
図9及び図10に示すように、従来の方法による場合、一方の側(ここでは+X側)からワイヤ96を介してLEDチップ93と導電領域97とが接続される。
【0077】
図9に示す例では、LEDチップ93が載置されている導電領域97と、LEDチップ93に対してワイヤ96が接続されている導電領域98のうちの、一方がアノードで、他方がカソードとなる。また、図10に示す例では、LEDチップ93が載置されている導電領域97及びこの導電領域97とワイヤ101で接続されている導電領域99と、LEDチップ93に対してワイヤ96が接続されている導電領域98のうちの、一方がアノードで、他方がカソードとなる。つまり、いずれの場合においても、LEDチップ93に対しては、X方向に関して一方からワイヤ96が接続されている。
【0078】
図11は、LEDチップ93内を流れる電流I1を模式的に示す図面である。LEDチップ93が大型化したことで、X方向に係る長さが長くなる。この結果、X方向に関して、ワイヤ96が形成されている箇所と、ワイヤ96から離れた箇所との間で、電流密度に大きな差が生じる。図11では、X方向に関してワイヤ96に近い領域の電流密度が高くなることを、電流I1の向きを模式的に示すことで表現している。図3を参照して上述したLED光源装置90cの場合、このように電流密度の分布が生じたことで、光取り出し面内に輝度の分布が生じたものと考えられる。
【0079】
これに対する解決策として、図12に示すように、導電領域98から、LEDチップ93上のうちの、+X側の領域93aと、-X側の領域93bとに向けて、それぞれワイヤ96を接続する方法が考えられる。これによれば、LEDチップ93が大型化して、X方向に係る長さが長くなったとしても、X方向に係る電流密度の分布が抑制される。
【0080】
しかしこの方法の場合、図12に示すように、LEDチップ93内において+X側の領域93aの上方を通過するワイヤ96の本数が増大する。つまり、LEDチップ93の-X側の領域93bと比べて、+X側の領域93aにおけるワイヤ96の占有面積が増加する。ワイヤ96は、一般的にAuやCuといった金属材料で構成され、この材料は光に対する透過性が極めて低い。このため、LEDチップ93から取り出される光量に関して、X方向に分布を生じさせてしまう。
【0081】
これに対し、図4を参照して上述したLED光源装置1によれば、LEDチップ10(半導体積層体11)に対して、+X方向と-X方向の双方からワイヤ40が接続される。この結果、X方向に係る電流密度の分布が緩和される。また、半導体積層体11の上方を通過するワイヤ40の本数についても対称性を持たせやすくなるため、照度ムラも抑制できる。
【0082】
更に、LED光源装置1によれば、基台30内に単一のLEDチップ10を搭載する構造であるため、良好な配光特性が実現できる。図13は、LED光源装置1を実際に点灯させたときの配光分布を示すグラフである。図13に示すように、LED光源装置1によれば、配光角0°近傍において最も強度が高く、且つ拡がり角に対して配光角0°を基準として実質的に対称性を示す配光特性が実現できる。なお、図13に示す配光分布の測定に際しては、図5に示すLED光源装置1に対して更にLEDチップ10の上方(+Z側)にレンズ部材を設けてなる構造が採用された。ただし、本実施例での配光特性の傾向は、レンズ部材の有無による大きな影響はない。言い換えれば、レンズ部材を設けていない図5に示す構造であっても、配光角0°近傍において最も強度が高く、且つ拡がり角に対して配光角0°を基準として実質的に対称性を示す配光特性が実現できる。
【0083】
つまり、LED光源装置1によれば、高い光出力と良好な配光特性が両立できることが分かる。
【0084】
[第二実施形態]
本発明者は、上述したLED光源装置1について更に検討を重ねた。その結果、図6に示した上部電極(21,22)の配置パターンによっては、点灯を継続させると出力の維持率が低下する現象が生じることを突き止めた。
【0085】
図14は、図6に示した上部電極(21,22)の配置パターンを示すLEDチップ10を搭載したLED光源装置1に対して点灯を継続させたときの、光出力の経時的な変化を示すグラフである。図14に示すように、250時間の連続点灯によって光出力が初期時から50%程度に低下したことが確認された。なお、図14に対応する試験では、4Aの直流電流がLEDチップ10に対して供給された。
【0086】
この理由を検証すべく、供給電流を変化させながらLED光源装置1を点灯させ、LEDチップ10上の光取り出し面の発光状態を検証した。図15は、この検証結果を示す写真である。供給電流量を高めていくに連れ、相対的に輝度の高い箇所が面方向に分散していることが確認される。この輝度の高い箇所は、図8を参照して上述した内部電極25の配置箇所にほぼ対応していることが分かった。
【0087】
この結果から、供給される電流量が増大するに伴い、内部電極25の近傍箇所に電流が集中し、この領域が局所的に明るくなったものと考えられる。そして、局所的に電流密度が高くなり負荷が増大したことで、点灯時間の経過に伴って光出力が低下したと推定される。
【0088】
次に、Y方向に並んで配置されている第二上部電極22の本数及び間隔を変更した複数のLEDチップ10のサンプル(#1~#7)を作製し、それぞれを基台30に搭載して点灯させることで出力維持率の比較を行った。
【0089】
各検証に用いられたLEDチップ10のサンプル(#1~#7)は、いずれも半導体積層体11が上面視で1900μm角の形状を示すものが利用された。いずれのサンプル(#1~#7)においても、第一上部電極21の配置パターンは共通であり、線幅30μmのものがX方向に離間した2箇所の位置において、Y方向に延在して形成された。また、いずれのサンプル(#1~#7)においても、第二上部電極22としては、線幅12μmのものがY方向に離間した複数の位置においてX方向に延在して形成された配線パターンが用いられた。
【0090】
検証の結果を、表1及び図16に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
図17Aは、サンプル#2(電極本数11本)に対応するLEDチップ10の模式的な平面図であり、図17Bは、サンプル#5(電極本数21本)に対応するLEDチップ10の模式的な平面図である。また、表1内における「第二上部電極22の間隔d22」とは、図17Cに模式的に示すように、隣接する第二上部電極22同士の間隔を指す。図17Cは、図17A内の領域A1の拡大模式図に対応する。
【0093】
第二上部電極22の本数が増えるに連れて、当然に第二上部電極22の間隔d22は短くなり、上部電極(21,22)の占有面積率は増加する。ここで、上部電極(21,22)の占有面積率とは、LEDチップ10の上面視の面積(すなわち半導体積層体11の面積)に対する、第一上部電極21及び第二上部電極22の面積の合計の比率に対応する。
【0094】
(過電流破壊試験)
過電流破壊試験とは、各サンプル(#1~#7)に対して、突発的なノイズ電流を模擬したパルス電流(波高値40A、パルス幅1ms)を供給した後、通常の点灯用電流(直流4A)を供給し、点灯が確認できるかどうかを検証した試験である。表1において、評価Cは点灯が確認されなかった(不点灯であった)ことを意味し、評価Aは点灯が確認されたことを意味する。表1に示すように、サンプル#3~#7では点灯が確認された一方で、サンプル#1~#2では不点灯となった。
【0095】
不点灯であったサンプル#1~#2に対して分析を行ったところ、特にパッド領域24の近傍において変色が確認された。更に、この変色したパッド領域24の近傍箇所においいて断面をSEMにより観察した結果、パッド領域24の近傍に位置する半導体層(半導体積層体11)の一部が消失していた。このことから、第二上部電極22の本数が相対的に少ないサンプル#1~#2の場合、半導体積層体11を流れる電流がXY平面の方向に対して十分に広がらず、パッド領域24の近傍に電流が集中したことで発熱が顕著となり、近傍の半導体層が溶融・飛散してオープン故障が生じたものと推察される。
【0096】
これに対し、第二上部電極22の本数が13本以上で間隔が134μm以下の、サンプル#3~#7によれば、過電流を供給した後であっても点灯が確認された。また、パッド領域24の近傍における損傷も確認されなかった。このことから、第二上部電極22の本数を増加することで、LEDチップ10内を流れる電流をXY平面方向に広げやすくなり、電流の局所的な集中が緩和されたものと考えられる。
【0097】
(出力維持率M1の評価)
各サンプル#1~#7に対して、直流4Aの電流を連続的に供給して点灯状態を持続させ、初期の光出力に対する250時間経過後における光出力の比率で規定される出力維持率M1を評価した。表1及び図16によれば、サンプル#1~#5を対比すると、第二上部電極22の間隔を狭めてその本数を増やすに連れて、出力維持率M1が上昇傾向を示すことが分かる。これは、第二上部電極22の間隔d22が減少して、その本数が増加することで、電流をXY平面方向に分散させる効果が高まった結果、内部電極25の近傍箇所と内部電極25から離れた位置との間における電流密度の差を減少できたことによるものと推定される。
【0098】
一方で、サンプル#5~#7を対比すると、第二上部電極22の間隔を狭くし過ぎると、出力維持率M1が若干低下する傾向を示すことが分かる。この理由としては、サンプル#6やサンプル#7では、第二上部電極22の本数が極めて多くなったことで、上部電極(21,22)の占有面積率が高くなり、上部電極(21,22)によって吸収される光の量が増加して発熱量が上昇したことに起因するものと考えられる。
【0099】
(初期出力の相対値k,k*M1値の評価)
サンプル#1における初期の光出力を基準値として、各サンプル#2~#7における初期の光出力の相対値kを表1及び図16に示している。サンプル#1が最も上部電極(21,22)の占有面積率が低いため、光10Lを遮る領域の面積が小さい。つまり、第二上部電極22の間隔が狭くなり、本数が増加するに伴って、相対値kは低下していることが分かる。
【0100】
ここで、初期出力の相対値kと出力維持率M1を乗じることで、250時間経過後における光出力の大小を、各サンプル#1~#7間で対比できる。この結果によれば、サンプル#3~#6において、0.80を超える値を示している。つまり、第二上部電極22の間隔d22を61μm~134μmの範囲内とすることで、第一実施形態で上述した、高い光出力と良好な配光特性の両立に加えて、過電流時におけるオープン故障の抑制、並びに、高い光取り出し効率と高い出力維持率の実現が可能となる。このとき、表1によれば、上部電極の占有面積率は12%~19%とするのが好適である。
【0101】
なお、第二上部電極22の配置パターンは、複数のバリエーションが可能である(図18A図18E参照)。図18Aは、第二上部電極22が、最外部において枠状に形成されている場合の一例である。図18Bは、第二上部電極22が、一部の箇所において周方向に複数配置された枠状体を呈して形成されている場合の一例である。図18Cは、第二上部電極22が、一筆書きの様相で折れ線形状を呈して形成されている場合の一例である。図18Dは、第二上部電極22が、X方向及びY方向に延伸することで格子状を呈して形成されている場合の一例である。図18Eは、一部の箇所において円形を呈した第二上部電極22が、同心円状に複数配置されている場合の一例である。いずれの場合においても、第二上部電極22は、半導体積層体11の上面(第二半導体層15の上層)の一部領域において、X方向に離間した複数の第一上部電極21同士を複数の箇所で連絡するように、形成されている。
【0102】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0103】
〈1〉図19Aに示すように、LED光源装置1は、LEDチップ10の上方、より詳細には光10Lの進行方向に関してLEDチップ10に対して離間した位置に、レンズ部材41を備えるものとしても構わない。この場合、レンズ部材41は基台30と一体化されていてもよい。
【0104】
また、図19Bに示すように、LED光源装置1は、図19A内のレンズ部材41に代えて曲面反射ミラー42を備えるものとしても構わない。
【0105】
上述したように、LED光源装置1は、高出力で良好な配光特性を示すLEDチップ10を搭載しているため、レンズ部材41や曲面反射ミラー42を備えることで、より遠方に対して高い照度で照明することが可能となる。
【0106】
〈2〉図20に示すように、複数のパッド領域24のうち、一部については上面視の形状を異ならせても構わない(パッド領域24a)。これにより、パッド領域24aをアライメント工程における基準位置として利用することができる。例えば、LEDチップ10を基台30に搭載する際の位置合わせに利用できる。
【0107】
〈3〉上述した実施形態では、第一導電領域31をX方向に挟むように形成された2つの第二導電領域32(32a,32b)は、相互に分離して位置していた。しかし、図21に示すように、この第二導電領域32(32a,32b)は、基台30上の別の位置でつながっていても構わない。
【0108】
〈4〉図8に模式的に示す内部電極25の配置パターンは、あくまで一例であり、このような配置パターンには限定されない。一例として、パッド領域24が配置されている箇所の近傍には、内部電極25を配置しないものとしても構わない。これにより、パッド領域24の近傍に位置する内部電極25に対する電流の局所的な集中が緩和される。
【0109】
〈5〉上記実施形態では、LEDチップ10(半導体積層体11)の上面に形成された上部電極としては、第一上部電極21と、この第一上部電極21よりも線幅の細い第二上部電極22とを含むものとした。しかし、本発明は、各上部電極の線幅が実質的に同一である場合を排除しない。
【0110】
また、図6に示す例では、第一上部電極21が一方向(ここではY方向)に延在して形成されていたが、複数の方向(例えばY方向及びX方向)に延在して形成されていても構わない。
【0111】
〈6〉上記実施形態では、導電性基板16と半導体積層体11(より詳細には第一半導体層13)とを電気的に接続する電極(下部電極)が、絶縁層18内を貫通し、且つ平面的に分散されてなる内部電極25で構成される場合について説明した。しかし、LED光源装置1が備える下部電極は、上述した内部電極25の態様には限られない。
【符号の説明】
【0112】
1 :LED光源装置
7 :導電性接着部材
10 :LEDチップ
10L :(LEDチップから出射される)光
11 :半導体積層体
13 :第一半導体層
14 :活性層
15 :第二半導体層
16 :導電性基板
17 :金属層
18 :絶縁層
21,21a,21b :第一上部電極
22 :第二上部電極
24,24a :パッド領域
25 :内部電極
30 :基台
31 :(基台の)第一導電領域
32,32a,32b :(基台の)第二導電領域
35 :絶縁部材
37 :枠部材
40,40a,40b :ワイヤ
41 :レンズ部材
42 :曲面反射ミラー
90a,90b,90c :LED光源装置
91 :パッケージ
92,93 :LEDチップ
95 :絶縁部材
96 :ワイヤ
97,98,99 :導電領域
101 :ワイヤ
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図19A
図19B
図20
図21