(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】車両用画像処理システム、車両及び画像送信方法
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20241009BHJP
B60R 1/26 20220101ALI20241009BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20241009BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241009BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20241009BHJP
B60W 30/09 20120101ALI20241009BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B60R1/26
B60R11/02 C
G06T7/00 650B
B60W50/14
B60W30/09
(21)【出願番号】P 2021019568
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 尚
【審査官】薄井 義明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/115981(WO,A1)
【文献】特開2012-169948(JP,A)
【文献】特開2007-201701(JP,A)
【文献】特開2013-192185(JP,A)
【文献】特開2016-092571(JP,A)
【文献】特開2019-059252(JP,A)
【文献】特開平09-307879(JP,A)
【文献】特開2000-316112(JP,A)
【文献】特開2012-147107(JP,A)
【文献】特開2017-005497(JP,A)
【文献】特開平11-298853(JP,A)
【文献】特開2018-036901(JP,A)
【文献】特開2021-019270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺領域に存在する物標を認識するための認識処理に用いる認識用画像を取得する
とともに、表示用画像を取得する複数の第1カメラ装置と、
前記認識処理を実行する認識ユニットと、
前記第1カメラ装置及び前記認識ユニットと通信可能に接続され、前記第1カメラ装置によって送信された前記認識用画像を受信し、前記認識用画像を前記認識ユニットへ送信する通信ユニットと、
前記表示用画像に対して所定の表示制御処理を実行し、前記表示制御処理を実行した表示用画像を前記車両に配設されたディスプレイに表示する表示制御ユニットと、
を備え、
前記通信ユニットは、前記複数の第1カメラ装置から受信した認識用画像の前記認識ユニットへの送信タイミングが異なるように前記認識用画像を前記認識ユニットに送信するように構成され、
前記認識ユニットは、前記通信ユニットから受信した認識用画像を用いて前記認識処理を実行するように構成され、
前記第1カメラ装置のそれぞれは、
前記認識用画像を取得した場合には、認識識別子を付与して当該認識用画像を前記通信ユニットに送信し、
前記表示用画像を取得した場合には、表示識別子を付与して当該表示用画像を前記通信ユニットに送信し、
前記通信ユニットは、
前記表示制御ユニットにも通信可能に接続され、
前記第1カメラ装置から前記認識用画像及び前記表示用画像の何れかの画像を受信した場合、前記画像に前記認識識別子が付与されていれば、当該画像を前記認識ユニットに送信し、前記画像に前記表示識別子が付与されていれば、当該画像を前記表示制御ユニットに送信する、
ように構成された、
車両用画像処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用画像処理システムにおいて、
前記第1カメラ装置のそれぞれは、
前記第1カメラ装置同士で前記認識用画像の取得タイミングが異なるように、前記認識用画像を取得し、
前記認識用画像を前記通信ユニットに送信する、
ように構成され、
前記通信ユニットは、前記第1カメラ装置から前記認識用画像を受信した場合、当該認識用画像を前記認識ユニットに送信する、ように構成された、
車両用画像処理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用画像処理システムにおいて、
前記認識ユニットは、前記複数の第1カメラ装置へ認識用同期信号を異なるタイミングで送信するように構成され、
前記第1カメラ装置のそれぞれは、前記認識用同期信号を受信したときに前記認識用画像を取得するように構成された、
車両用画像処理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用画像処理システムにおいて、
前記表示制御ユニットは、前記複数の第1カメラ装置が取得した表示用画像を合成する処理を前記表示制御処理として実行するように構成された、
車両用画像処理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用画像処理システムであって、
前記表示用画像を取得する少なくとも一つの第2カメラ装置を、更に、備え、
前記第1カメラ装置及び前記第2カメラ装置は、前記車両の周辺領域の画像を分担して取得するように構成され、
前記表示制御ユニットは、
前記第1カメラ装置及び前記第2カメラ装置が取得した表示用画像を合成した画像に基いて前記車両の上から前記周辺領域を俯瞰した俯瞰画像を生成する処理を前記表示制御処理として実行する、
ように構成された、
車両用画像処理システム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の車両用画像処理システムであって、
第1カメラ装置が取得する認識用画像のデータ容量よりも大きなデータ容量を有する認識用画像を取得する第3カメラ装置を、更に、備え、
前記通信ユニットは、
前記第1カメラ装置及び前記認識ユニットの他に、前記第3カメラ装置にも通信可能に接続され、
前記第3カメラ装置によって送信された前記認識用画像を受信し、前記認識用画像を前記認識ユニットに送信する、
ように構成された、
車両用画像処理システム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載の車両用画像処理システムにおいて、
前記認識ユニットは、
前記認識処理にて認識した物標が前記車両と衝突する可能性を表す衝突指標値を取得し、
前記衝突指標値と所定の閾値との関係が所定の条件を満たす場合、前記車両の運転者に前記物標と衝突する可能性があることを知らせる警報制御、前記車両の車輪に制動力を付与することにより前記車両を減速させる制動制御、及び、前記車両が前記物標との衝突を回避するために前記車両の進行方向を変更する回避制御、の少なくとも一つを行う、
ように構成された、
車両用画像処理システム。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか一つに記載の車両用画像処理システムを備える車両。
【請求項9】
複数の第1カメラ装置が取得した認識用画像を前記複数の第1カメラ装置から受信し、前記認識用画像を用いて車両の周辺領域に存在する物標を認識するための認識処理を実行する認識ユニットへ前記認識用画像を送信する画像送信方法において、
前記複数の第1カメラ装置のそれぞれから前記認識用画像を受信するステップと、
前記複数の第1カメラ装置から受信した認識用画像の前記認識ユニットへの送信タイミングが異なるように前記認識用画像を前記認識ユニットへ送信するステップと、
を含み、
前記複数の第1カメラ装置のそれぞれは、
前記認識用画像の他に前記車両に配設されたディスプレイに表示するための表示用画像を取得し、
前記認識用画像を取得した場合には、当該認識用画像に認識識別子を付与し、
前記表示用画像を取得した場合には、当該表示用画像に表示識別子を付与し、
前記画像送信方法は、更に、
前記第1カメラ装置から前記認識用画像及び前記表示用画像の何れかの画像を受信した場合、前記画像に前記認識識別子が付与されていれば、当該画像を前記認識ユニットに送信し、前記画像に前記表示識別子が付与されていれば、当該画像を、当該画像に対して所定の表示制御処理を実行し且つ前記表示制御処理を実行した表示用画像を前記ディスプレイに表示する表示制御ユニットへ送信するステップを含む、
画像送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のカメラ装置が取得した認識用画像を、認識用画像を用いて車両の周辺領域に存在する物標を認識する認識ユニットへ送信する車両用画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載したカメラ装置が取得した画像に基いて各種制御を行う車両用画像処理システムが知られている。特許文献1に記載された車両用画像処理システム(以下、「第1従来システム」と称呼する。)は、複数のカメラ装置が取得した画像を合成した合成画像を生成する表示制御処理を実行し、合成画像をディスプレイに表示する。以下では、第1従来システムのカメラ装置を「表示用カメラ装置」と称呼する。
【0003】
更に、特許文献2に記載された車両用画像処理システム(以下、「第2従来システム」と称呼する。)は、カメラ装置が取得した画像に基いて物標を認識するための認識処理を実行する。以下では、第2従来システムのカメラ装置を「認識用カメラ装置」と称呼する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-042704号公報
【文献】特開2019-026129号公報
【発明の概要】
【0005】
認識用カメラ装置が取得した画像だけでなく複数の表示用カメラ装置が取得した画像も用いて上記認識処理を実行する車両用画像処理システム(以下、「検討システム」と称呼する。)を検討する。
【0006】
検討システムは、複数の表示用カメラ装置、認識用カメラ装置、上記表示制御処理を行う表示制御ユニット、上記認証処理を行う認識ユニット、及び通信ユニットを備えている。通信ユニットは、第1カメラ装置及び第2カメラ装置に通信可能に接続されるとともに、表示制御ユニット及び認識ユニットにも通信可能に接続されている。
【0007】
認識ユニットへは、「認識用カメラ装置が取得した画像」の他に「複数の表示用カメラ装置が取得した画像」が送信される。このため、検討システムの通信ユニットから認識ユニットへの通信帯域(以下、「認識用通信帯域」と称呼する。)の使用帯域の最大値は、第2従来システムの認識用通信帯域の使用帯域の最大値よりも大きくなる。場合によっては、使用帯域の最大値が最大通信帯域を超えてしまう可能性がある。この場合、認識ユニットが画像を受信できなくなる可能性がある。
【0008】
本発明は前述した課題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、認識用通信帯域の使用帯域の最大値が小さくなるように通信ユニットから認識ユニットへ画像を送信する車両用画像処理システムを提供することにある。
【0009】
本発明の車両用画像処理システム(以下、「本発明システム」とも呼称する。)は、
車両の周辺領域に存在する物標を認識するための認識処理に用いる認識用画像を取得する複数の第1カメラ装置(34Fr及び34Rr、又は、34L及び34R)と、
前記認識処理を実行する認識ユニット(24)と、
前記第1カメラ装置及び前記認識ユニットと通信可能に接続され、前記第1カメラ装置によって送信された前記認識用画像を受信し、前記認識用画像を前記認識ユニットへ送信する通信ユニット(22)と、
を備え、
前記通信ユニットは、前記複数の第1カメラ装置から受信した認識用画像の前記認識ユニットへの送信タイミングが異なるように前記認識用画像を前記認識ユニットに送信するように構成され(ステップ735、ステップ745、ステップ825、ステップ915、
図6の(B)及び(C))、
前記認識ユニットは、前記通信ユニットから受信した認識用画像を用いて前記認識処理を実行するように構成されている(ステップ1000乃至ステップ1095、ステップ1100乃至ステップ1295)。
【0010】
本発明システムによれば、複数の第1カメラ装置が取得した認識用画像の通信ユニットから認識ユニットへの送信タイミングが重複しない。これにより、これらの認識用画像の送信タイミングが同じである場合と比較して、認識用通信帯域の使用帯域の最大値を小さくすることができる。これにより、上記最大値が最大通信帯域を超えてしまう可能性を低減でき、認識ユニットが確実に認識用画像を受信する可能性を高めることができる。
【0011】
本発明の一態様において、
前記第1カメラ装置のそれぞれは、
前記第1カメラ装置同士で前記認識用画像の取得タイミングが異なるように、前記認識用画像を取得し(ステップ735、ステップ745、ステップ815、
図6の(B)及び(C))、
前記認識用画像を前記通信ユニットに送信する(ステップ825)、
ように構成され、
前記通信ユニットは、前記第1カメラ装置から前記認識用画像を受信した場合、当該認識用画像を前記認識ユニットに送信する(ステップ915)、ように構成されている。
【0012】
本態様によれば、第1カメラ装置のそれぞれが、異なるタイミングで認識用画像を取得し、認識用画像を通信ユニットに送信する。これによって、通信ユニットから認識ユニットへの認識用画像の送信タイミングを異ならせることができる。
【0013】
上記態様において、
前記認識ユニットは、前記複数の第1カメラ装置へ認識用同期信号を異なるタイミングで送信するように構成され(ステップ735、ステップ745)、
前記第1カメラ装置のそれぞれは、前記認識用同期信号を受信したときに前記認識用画像を取得するように構成されている(ステップ815)。
【0014】
第1カメラ装置のそれぞれが「認識用画像の取得タイミングとなったか否かを判定するための時間」を管理している場合、第1カメラ装置間で発生する時間の誤差が発生する可能性がある。この誤差に起因して、第1カメラ装置の認識用画像の取得タイミングが同じとなってしまう可能性がある。本態様によれば、第1カメラ装置は、認識ユニットから送信された認識用同期信号を受信したときに認識用画像を取得する。このため、第1カメラ装置の認識用画像の取得タイミングを確実に異ならせることができる。
【0015】
本発明の一態様であって、
表示用画像に対して所定の表示制御処理を実行し、前記表示制御処理を実行した前記車両に配設されたディスプレイ(90)に表示する表示制御ユニット(26)を、更に、備え、
前記第1カメラ装置のそれぞれは、
前記認識用画像の他に前記表示用画像を取得可能に構成されるとともに(ステップ830)、
前記認識用画像を取得した場合に、認識識別子を付与して(ステップ820)当該認識用画像を前記通信ユニットに送信し(ステップ825)、
前記表示用画像を取得した場合には、表示識別子を付与して(ステップ835)当該表示用画像を前記通信ユニットに送信し(ステップ840)、
前記通信ユニットは、
前記表示制御ユニットにも通信可能に接続され、
前記第1カメラ装置から前記認識用画像及び前記表示用画像の何れかの画像を受信した場合(ステップ905「Yes」)、前記画像に前記認識識別子が付与されていれば(ステップ910「Yes」)、当該画像を前記認識ユニットに送信し(ステップ915)、前記画像に前記表示識別子が付与されていれば(ステップ910「No」)、当該画像を前記表示制御ユニットに送信する(ステップ920)、
ように構成されている。
【0016】
本態様によれば、通信ユニットは、認識用画像を認識ユニットに送信し、表示用画像を認識ユニットに送信する。これにより、認識ユニットが認識処理に不要な表示用画像を受信しない。このため、第1カメラ装置が認識用画像及び表示用画像を取得するように構成されている場合に、認識用通信帯域の使用帯域の最大値を小さくすることができる。
【0017】
上記態様において、
前記表示制御ユニットは、前記複数の第1カメラ装置が取得した表示用画像を合成する処理(ステップ1010)を前記表示制御処理として実行するように構成されている。
【0018】
これによって、複数の第1カメラ装置が取得した表示用画像が合成された画像がディスプレイに表示されるので、運転者は複数の第1カメラ装置が取得した表示用画像を一度に視認することができる。
【0019】
上記態様において、
前記表示用画像を取得する少なくとも一つの第2カメラ装置(34L、34R)を、更に、備え、
前記第1カメラ装置及び前記第2カメラ装置は、前記車両の周辺領域の画像を分担して取得するように構成され、
前記表示制御ユニットは、
前記第1カメラ装置及び前記第2カメラ装置が取得した表示用画像を合成した画像に基いて前記車両の上から前記周辺領域を俯瞰した俯瞰画像を生成する処理(ステップ1010)を前記表示制御処理として実行する、
ように構成されている。
【0020】
これにより、車両の上から車両の周辺領域を俯瞰した俯瞰画像がディスプレイに表示されるので、運転者の車両の周辺領域を視認しやすくすることができる。
【0021】
本発明の一態様であって、
第1カメラ装置が取得する認識用画像のデータ容量よりも大きなデータ容量を有する認識用画像を取得する第3カメラ装置(32)を、更に、備え、
前記通信ユニットは、
前記第1カメラ装置及び前記認識ユニットの他に、前記第3カメラ装置にも通信可能に接続され、
前記第3カメラ装置によって送信された前記認識用画像を受信し、前記認識用画像を前記認識ユニットに送信する、
ように構成されている。
【0022】
これにより、認識ユニットは、第3カメラ装置が取得したデータ容量の大きな認識用画像も用いて認識処理を実行するので、より正確に物標を認識することができる。
【0023】
本発明の一態様において、
前記認識ユニットは、
前記認識処理にて認識した物標が前記車両と衝突する可能性を表す衝突指標値(TTC)を取得し(ステップ1015)、
前記衝突指標値と所定の閾値との関係が所定の条件を満たす場合(ステップ1020「Yes」、ステップ1030「Yes」)、前記車両の運転者に前記物標と衝突する可能性があることを知らせる警報制御(ステップ1025)、前記車両の車輪に制動力を付与することにより前記車両を減速させる制動制御(ステップ1045)、及び、前記車両が前記物標との衝突を回避するために前記車両の進行方向を変更する回避制御(ステップ1040)、の少なくとも一つを行う、
ように構成されている。
【0024】
これにより、衝突指標値と閾値との関係が所定の条件を満たす場合、警報制御、制動制御及び回避制御の少なくとも一つが行われるので、車両が物標と衝突する可能性を低減することができる。
【0025】
本発明の画像送信方法は、複数の第1カメラ装置(34Fr及び34Rr、又は、34L及び34R)が取得した認識用画像を前記複数の第1カメラ装置から受信し、前記認識用画像を用いて車両の周辺領域に存在する物標を認識するための認識処理を実行する認識ユニット(24)へ前記認識用画像を送信する方法である。
更に、本発明の画像送信方法は、
前記複数の第1カメラのそれぞれから前記認識用画像を受信するステップ(ステップ905)と、
前記複数の第1カメラから受信した認識用画像の前記認識ユニットへの送信タイミングが異なるように前記認識用画像を前記認識ユニットへ送信するステップ(ステップ735、ステップ745、ステップ825、ステップ915、
図6の(B)及び(C))と、
を含む。
【0026】
これにより、認識用画像の送信タイミングが同じである場合と比較して、認識用通信帯域の使用帯域の最大値を小さくすることができる。上記最大値が最大通信帯域を超えてしまう可能性を低減でき、認識ユニットが確実に認識用画像を受信する可能性を高めることができる。
【0027】
なお、上記説明においては、発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、発明の各構成要素は、前記名称及び/又は符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係る車両用画像処理システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は
図1に示した前方カメラ装置、前方PVMカメラ装置及び後方PVMカメラ装置の撮影範囲の説明図である。
【
図3】
図3は
図1に示した左PVMカメラ装置及び右PVMカメラ装置の撮影範囲の説明図である。
【
図4】
図4は、前方衝突物標及び回避領域の説明図である。
【
図5】
図5は、車両用画像処理システムの作動例の説明図である。
【
図6】
図6は、各カメラ装置の認識用画像及び表示用画像の送信タイミングの説明図である。
【
図7】
図7は、認識SoCのCPUが実行する同期信号送信ルーチンを表すフローチャートである。
【
図8】
図8は、各カメラ装置のCPUが実行する画像取得ルーチンを表すフローチャートである。
【
図9】
図9は、表示用Desが実行する画像振分ルーチンを表すフローチャートである。
【
図10】
図10は、認識SoCのCPUが実行する前方安全制御ルーチンを表すフローチャートである。
【
図11】
図11は、認識SoCのCPUが実行する後方安全制御ルーチンを表すフローチャートである。
【
図12】
図12は、表示制御SoCのCPUが実行する表示制御ルーチンを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る車両用画像処理システム(以下、「本システム」と称呼する。)10を説明する。
図1は、本システム10及び本システム10が搭載(適用)される車両VAを示している。
【0030】
図1に示すように、本システム10は制御ECU20、エンジンECU40、ブレーキECU50及びステアリングECU60を備える。これらのECUは、CAN(Controller Area Network)65を介してデータ交換可能(通信可能)に互いに接続されている。ECUは、エレクトロニックコントロールユニットの略称である。制御ECU20は、CPU、ROM、RAM及びインターフェース等を含む後述する複数のSoC(System On a chip)24及び26を備える電子制御回路である。エンジンECU40、ブレーキECU50及びステアリングECU60は、CPU、ROM、RAM及びインターフェース等を含むマイクロコンピュータを主要構成部品として有する電子制御回路である。CPUは、メモリ(ROM)に格納されたインストラクション(ルーチン)を実行することにより各種機能を実現する。ECU40、50及び60の総て又は幾つかは、一つのECUに統合されてもよい。
【0031】
制御ECU20は、通信ユニット22、認識SoC24及び表示制御SoC26を備える。通信ユニット22は、前方カメラ装置32、前方PVMカメラ装置34Fr、後方PVMカメラ装置34Rr、左PVMカメラ装置34L及び右PVMカメラ装置34Rと通信可能に接続されている。認識SoC24は、認識SoC24に入力された後述する認識用画像に基いて物標を認識し、その物標に基いて前方安全制御及び後方安全制御を実行する。表示制御SoC26は、表示制御SoC26に入力された後述する表示用画像を合成し、合成画像に基いて車両VAの上から車両VAの周辺領域を俯瞰したPVM画像(俯瞰画像)を生成する表示制御処理を行う。
以下では、認識SoC24を「認識ユニット」と称呼し、表示制御SoC26を「表示制御ユニット」と称呼する場合もある。更に、PVMカメラ装置34Fr、34Rr、34L及び34Rは、これらが区別される必要がない場合には、「PVMカメラ装置34」と称呼する。
【0032】
以下、各カメラ装置32及び34について説明する。
前方カメラ装置32は、
図2に示したように、車両VAの車室内のフロントウィンドウFWの上部に配設されている。前方PVMカメラ装置34Frは、
図2に示したように、車両VAの前端部FRの車幅方向の中心に配設されている。前方カメラ装置32及び前方PVMカメラ装置34Frは、車両VAの前方領域の画像を取得する。前方カメラ装置32が取得する画像の画角θaは、前方PVMカメラ装置34Frが取得する画像の画角θbよりも小さい。このため、前方PVMカメラ装置34Frが取得する画像は、前方カメラ装置32が取得した画像に含まれない領域UA1及びUA2を含む。
【0033】
後方PVMカメラ装置34Rrは、
図2に示したように、車両VAの後端部RRの車幅方向の中心に配設されている。後方PVMカメラ装置34Rrは、車両VAの後方領域の画像を取得する。後方PVMカメラ装置34Rrは、車両VAの後方領域の画像を取得する。後方PVMカメラ装置34Rrが取得する画像の画角θcは、前方PVMカメラ装置34Frが取得する画像の画角θbと同じである。
【0034】
左PVMカメラ装置34Lは、
図3に示したように、車両VAの左サイドミラーLSMに配設されている。左PVMカメラ装置Rrは、左PVMカメラ装置34Lは、車両VAの左領域の画像を取得する。左PVMカメラ装置34Lが取得する画像の画角θdは、前方PVMカメラ装置34Frが取得する画像の画角θbと同じである。
【0035】
右PVMカメラ装置34Rは、
図3に示したように、車両VAの右サイドミラーRSMに配設されている。右PVMカメラ装置34Rは、車両VAの右領域の画像を取得する。右PVMカメラ装置34Rが取得する画像の画角θeは、前方PVMカメラ装置34Frが取得する画像の画角θbと同じである。
【0036】
前方カメラ装置32は、認識処理に用いられる画像である認識用画像を取得する。前方PVMカメラ装置34Fr及び後方PVMカメラ装置34Rrは、認識用画像及び表示用画像を取得する。左PVMカメラ装置34L及び右PVMカメラ装置34Rは、表示用画像を取得する。以下、認識用画像及び表示用画像を取得するPVMカメラ装置34Fr及び34Rrを「第1カメラ装置」と称呼する場合がある。表示用画像を取得するPVMカメラ装置34L及び34Rを「第2カメラ装置」と称呼する場合がある。認識用画像を取得するカメラ装置32を「第3カメラ装置」と称呼する場合がある。
【0037】
ここで、認識用画像と表示用画像との違いを説明する。
認識SoC24は、認識処理においては、画像からエッジを抽出してそのエッジに基いて物標を認識する。画像にブレがある場合には、認識SoC24は、その画像からエッジを抽出できない可能性がある。このため、認識用画像はブレが少ない画像であることが望まれる。一方で、表示用画像は車両VAの運転者が視認するための画像であるので、表示用画像は多少のブレがある画像であってもよい。ブレを少なくするために、認識用画像は、表示用画像に比べて遅いシャッタースピードで撮影されることによって取得される点で、表示用画像と異なる。
【0038】
エンジンECU40は、複数の車輪速センサ41、アクセルペダル操作量センサ42及びエンジンセンサ44に接続され、これらのセンサの検出信号を受け取る。
【0039】
各車輪速センサ41は車両VAの対応する車輪(左前輪、右前輪、左後輪又は右後輪)に設けられ、対応する車輪が所定角度回転する毎に一つのパルス信号(車輪パルス信号)を発生させる。エンジンECU40は、各車輪速センサ41から送信されてくる車輪パルス信号の単位時間におけるパルス数を計測し、その計測したパルス数に基いて各車輪の回転速度(車輪速度)を算出する。エンジンECU40は、各車輪の車輪速度に基いて車両VAの速度を示す車速Vsを算出する。一例として、制御ECU20は、四つの車輪の車輪速度の平均値を車速Vsとして算出する。
【0040】
アクセルペダル操作量センサ42は、車両VAの図示しないアクセルペダルの操作量を検出する。エンジンECU40は、アクセルペダルの操作量を表す検出信号をアクセルペダル操作量センサ42から受け取る。アクセルペダルは、車両VAの駆動装置(本例において、内燃機関)48が発生する駆動力を増加させることによって車両VAを加速させるために運転者が操作する加速操作子である。
【0041】
エンジンセンサ44は、内燃機関48の運転状態量を検出するセンサである。エンジンセンサ44は、スロットル弁開度センサ、機関回転速度センサ及び吸入空気量センサ等である。
【0042】
更に、エンジンECU40は、「スロットル弁アクチュエータ及び燃料噴射弁」等のエンジンアクチュエータ46に接続されている。エンジンECU40は、アクセルペダルの操作量及び車速Vsに基いて決められる操作目標スロットル弁開度と実際のスロットル弁開度とが一致するようにエンジンアクチュエータ46を制御する。これにより、内燃機関48が発生するトルクが変更され、車両VAの駆動力が調整される。
【0043】
ブレーキECU50は、車輪速センサ41及びブレーキペダル操作量センサ52と接続され、これらのセンサの検出信号を受け取るようになっている。
【0044】
ブレーキペダル操作量センサ52は、車両VAの図示しないブレーキペダルの操作量を検出する。ブレーキECU50は、ブレーキペダルの操作量を表す検出信号をブレーキペダル操作量センサ52から受け取る。ブレーキペダルは、車両VAの車輪に制動力を付与するために運転者が操作する減速操作子である。
【0045】
ブレーキECU50は、ブレーキアクチュエータ54と接続されている。ブレーキアクチュエータ54は油圧制御アクチュエータである。ブレーキアクチュエータ54は、「ブレーキペダルの踏力によって作動油を加圧するマスタシリンダ(不図示)」と、「各車輪に設けられる周知のホイールシリンダを含む摩擦ブレーキ装置(不図示)」と、の間の油圧回路(不図示)に配設される。ブレーキアクチュエータ54はホイールシリンダに供給する油圧を調整する。
【0046】
ブレーキECU50は、車速Vs及びブレーキペダルの操作量に基いて「負の値のブレーキ目標加速度」を取得する。より詳細には、ブレーキペダルの操作量が大きいほどブレーキ目標加速度の値は小さくなる。ブレーキECU50は、取得したブレーキ目標加速度に基いてブレーキアクチュエータ43を駆動することによりホイールシリンダに供給される作動油の油圧を制御する。その結果、各車輪に調整された制動力(摩擦制動力)が発生し、以て、車両VAの加速度がブレーキ目標加速度と一致させられる。
【0047】
ステアリングECU60は、周知の電動パワーステアリングシステムの制御装置であって、操舵角センサ62及び操舵用モータ64に接続されている。操舵用モータ64は、車両VAの「図示しないステアリングホイール、ステアリングホイールに連結された図示しないステアリングシャフト及び操舵用ギア機構等を含む図示しないステアリング機構」に組み込まれている。
【0048】
操舵角センサ62は、車両VAの操舵角θを検出する。ステアリングECU60は、操舵角θを表す検出信号を操舵角センサ62から受け取る。
操舵用モータ64は、向き及び大きさ等がステアリングECU60によって制御される電力に応じてトルクを発生し、このトルクによって操舵アシストトルクを加えたり、左右の操舵輪を操舵したりする。即ち、操舵用モータ64を用いて舵角を制御できる。なお、上記電力は車両VAに搭載された図示しないバッテリから供給される。
【0049】
制御ECU20は、スピーカ70、第1ディスプレイ80及び第2ディスプレイ90と通信可能に接続されている。
スピーカ70は、車両VAの車室内に配設されている。スピーカ70は、制御ECU20からの警報指令に応じて警報音を発音する。
第1ディスプレイ80は、車両VAの車室内に配設され、例えばマルチインフォーメーションディスプレイである。第1ディスプレイ80は、制御ECU20からの警報指令に応じて「車両VAが物標と衝突する可能性がある旨を運転者に知らせるための警報画面」を表示する。
第2ディスプレイ90は、車両VAの車室内に配設され、例えばナビゲーションディスプレイである。第2ディスプレイ90は、制御ECU20からの送信されたPVM画像を表示する。
【0050】
<前方安全制御>
認識SoC24は、前方カメラ装置32及び前方PVMカメラ装置34Frが取得した認識用画像(以下、「前方認識用画像」と称呼する。)を受信する。認識SoC24は、前方認識用画像に基いて物標の車両VAに対する位置を特定することにより物標を認識する前方認識処理を実行する。更に、認識SoC24は、前回の前方認識処理にて特定された物標の位置(前回位置)及び今回の前方認識処理にて特定された位置(今回位置)に基いて、物標の車両VAに対する移動方向及び物標の車両VAに対する相対速度Vrを特定する。
認識SoC24は、車両VAの進行方向、及び上記物標の移動方向及び物標の相対速度Vrに基いて、車両VAに衝突する可能性がある物標を前方衝突物標FOB(
図4を参照。)として特定し、その前方衝突物標FOBが車両VAに衝突するまでにかかる時間である衝突所要時間を取得する。以下では、衝突所要時間を「TTC」と称呼する。TTCは、Time To Collisionの略である。より詳細には、認識SoC24は、物標と車両VAとの間の距離を上記相対速度Vrで除算することによりTTCを取得する。
なお、TTCは、物標が車両VAと衝突する可能性で衝突可能性を表す衝突指標値である。TTCの値が小さいほど衝突可能性が高くなる。
【0051】
TTCが第1閾値時間T1th以下である場合、認識SoC24は、警報指令をスピーカ70及び第1ディスプレイ80に送信する。このような制御を「警報制御」と称呼する。
【0052】
TTCが「第1閾値時間T1thよりも小さな値である第2閾値時間T2th」以下である場合、認識SoC24は、回避領域が存在するか否かを判定する。回避領域は、以下の条件1及び条件2の両方を満たす領域である。
条件1:車両VAが左白線LWL及び右白線RWLによって区画される自車線SLからはみ出すことなく前方衝突物標FOBを回避できること。
条件2:車両VAの通行が前方衝突物標FOB以外の物標に阻害されることなく前方衝突物標FOBを回避できること。
なお、左白線LWL及び右白線RWLは、前方カメラ装置32が取得した認識用画像に基いて特定される。
【0053】
図4に示した例では、車両VAは、車両VAの前端中央部を基準にして左側で前方衝突物標FOBと重なっているため、前方衝突物標FOBの右側を通って回避しようとする。認識SoC24は、前方衝突物標FOBの右側に回避領域が存在するか否かを判定する。
より詳細には、認識SoC24は、前方衝突物標FOBの右端点RPと右白線RWLとの間の距離Wspが車両VAの車幅Wに所定のマージンDを加えた値以上である場合、条件1が成立すると判定する。
【0054】
更に、認識SoC24は、上記条件1が成立すると判定した場合、車両VAが前方衝突物標FOBを回避しながら通過すると予測される領域である通行予測領域SP(
図4を参照。)に物標が存在するか否かを判定する。認識SoC24は、通行予測領域SPに物標が存在しないと判定した場合、条件2が成立すると判定する。
通行予測領域SPは、障害物の右端点RPから車幅方向Dyの右方向に長さWspを有し、且つ、車両VAの前端から「前方衝突物標FOBの後方に長さLspだけ離れた地点」までの長さを有する長方形の領域である。長さLspは、車両VAの前後方向の長さ(車両VAの車長)程度に設定されている。
【0055】
回避領域が存在しない場合、認識SoC24は、所定の負の目標加速度を含む制動指令をエンジンECU40及びブレーキECU50に送信する。エンジンECU40は、制動指令を受信した場合、目標スロットル弁開度を「0」に設定し、この目標スロットル弁開度とスロットル弁開度とが一致するようにエンジンアクチュエータ46を制御する。ブレーキECU50は、制動指令を受信した場合、制動指令に含まれる目標加速度と車両VAの実際の加速度とが一致するようにブレーキアクチュエータ56を制御する。このような制御を「制動制御」と称呼する。
【0056】
回避領域が存在する場合、認識SoC24は、車両VAが前方衝突物標FOBとの衝突を開始するために回避領域を通過するための目標舵角を取得し、目標舵角を含む回避指令をステアリングECU60に送信する。ステアリングECU60は、回避指令を受信した場合、回避指令に含まれる目標舵角と実際の舵角とが一致するように操舵用モータ64を制御する。このような制御を「回避制御」と称呼する。
【0057】
<後方安全制御>
認識SoC24は、後方PVMカメラ装置34Rrが取得した認識用画像(以下、「後方認識用画像」と称呼する。)を受信する。認識SoC24は、後方認識用画像に基いて物標の車両VAに対する位置を特定することにより物標を認識する後方認識処理を実行する。更に、認識SoC24は、上記物標の前回位置及び今回位置に基いて物標の車両VAに対する移動方向及び物標の車両VAに対する相対速度Vrを特定する。認識SoC24は、車両VAに衝突する可能性がある物標を後方衝突物標ROBとして特定し、後方衝突物標ROBのTTCを取得する。認識SoC24は、TTCが第1閾値時間T1th以下であれば、警報制御を行い、TTCが第2閾値時間T2th以下であれば、制動制御を行う。
【0058】
(作動の概要)
本実施形態では、前方カメラ装置32のみならず前方PVMカメラ装置34Fr及び後方PVMカメラ装置34Rrも認識用画像を取得する。これらの認識用画像は認識SoCに送信される必要がある。前方PVMカメラ装置34Fr及び後方PVMカメラ装置34Rrが認識用画像を取得する場合の認識用Des220から認識SoC24への通信帯域(以下、「認識用通信帯域」と称呼する。)の使用帯域は、上記PVMカメラ装置34Fr及び34Rrが認識用画像を取得しない場合よりも、増加する。特に、三つのカメラ装置32、34Fr及び34Rrが取得した認識用画像が同じタイミングで送信されると、認識用通信帯域の使用帯域の最大値が一時的に急増する。この結果、使用帯域の最大値が認識用通信帯域の最大値を超えてしまって、認識SoC24が認識用画像を受信できない可能性がある。
【0059】
そこで、本実施形態では、前方PVMカメラ装置34Frが取得した認識用画像と後方PVMカメラ装置34Rrが取得した認識用画像とが異なるタイミングで送信されるように構成する。これにより、上記使用帯域の最大値が一時的に急増することを防止できる。この結果、認識SoC24が認識用画像を確実に受信できる可能性を高めることができる。
【0060】
(作動例)
図5に示したように、各カメラ装置32及び34は、イメージャ及びSer(Serは、シリアライザーの略であり、送信ICと称呼される場合もある。)を備えている。イメージャは、光の強弱を電気信号へ変換することにより画像(画像データ)を取得する。Serは、イメージャが取得した画像を送信する。
【0061】
通信ユニット22は、認識用Des220及び表示用Des222を備えている。Desは、デシリアライザーの略であり、受信ICと称呼される場合もある。認識用Des220は、前方カメラ装置32のSer、表示用Des222及び認識SoC24と通信可能に接続されている。表示用Des222は、PVMカメラ装置34のSer、認識用Des220及び表示制御SoC26と通信可能に接続されている。
【0062】
認識SoC24は、所定の撮影時間Tp(Tp=25ms)が経過する毎に、認識用同期信号及び表示用同期信号の何れかを各カメラ装置32及び34に送信する。
図5では、同期信号の流れを点線で示している。認識用同期信号は、認識用画像を取得するためのシャッタースピードSP1を含む。表示用同期信号は、表示用画像を取得するためのシャッタースピードSP2を含む。各カメラ装置32及び34は、同期信号を受信すると、同期信号に含まれるシャッタースピードに従って画像を取得する。
【0063】
各PVMカメラ装置34は、認識用画像を取得した場合には、その画像が認識用画像であることを示す認識情報(認識識別子)を認識用画像に付与し、認識用画像を送信する。同様に、各PVMカメラ装置34は、表示用画像を取得した場合には、その画像が表示用画像であることを示す表示情報(表示識別子)を表示用画像に付与し、表示用画像を送信する。表示用Des222は、各PVMカメラ装置34から画像を受信した場合には、表示情報が画像に付与されていれば、その画像(即ち、表示用画像)を表示制御SoC26に送信する。一方、認識情報が画像に付与されていれば、表示用Des222は、その画像(即ち、認識用画像)を認識用Des220に送信する。認識用Des220は、前方カメラ装置32又は表示用Des222から画像(即ち、認識用画像)を受信すると、その画像を認識SoC24へ送信する。
【0064】
認識SoC24は、前方カメラ装置32に対して、撮影時間Tpが経過する毎にカウンタNに「1」を加算し、カウンタNが「5」になるとカウンタNの値を「1」に設定する。認識SoC24は、前方カメラ装置32が認識用画像を40fpsで取得するように認識用同期信号を前方カメラ装置32へ送信する。即ち、認識SoC24は、カウンタNの値が何れの値であっても、認識用同期信号を前方カメラ装置32に送信する(
図6(A)を参照。)。
【0065】
認識SoC24は、左PVMカメラ装置34L及び右PVMカメラ装置34Rが表示用画像を30fpsで取得するよう表示用同期信号をこれらのPVMカメラ装置34L及び34Rへ送信する。一例として、認識SoC24は、これらのPVMカメラ装置34L及び34Rに対して、カウンタNの値が「2」であれば何れの同期信号も送信せず、カウンタNの値が「1」、「3」及び「4」の何れかであれば表示用同期信号を送信する(
図6(D)及び(E)を参照。)。
【0066】
認識SoC24は、前方PVMカメラ装置34Fr及び後方PVMカメラ装置34Rrが認識用画像を10fpsで取得し且つ表示用画像を30fpsで取得するよう認識用同期信号及び表示用同期信号を前方PVMカメラ装置34Fr及び後方PVMカメラ装置34Rrへ送信する。
【0067】
一例として、認識SoC24は、前方PVMカメラ装置34Frに対して、カウンタNの値が「4」であれば認識用同期信号を送信し、カウンタNの値が「1」乃至「3」の何れかであれば表示用同期信号を送信する(
図6(B)を参照。)。認識SoC24は、後方PVMカメラ装置34Rrに対して、カウンタNの値が「2」であれば認識用同期信号を送信し、カウンタNの値が「1」、「3」及び「4」の何れかであれば表示用同期信号を送信する(
図6(C)を参照。)。
【0068】
このように、本実施形態では、認識SoC24が認識用同期信号を前方PVMカメラ装置34Fr及び後方PVMカメラ装置34Rrへ送信するタイミングを異ならせている。これにより、前方PVMカメラ装置34Frが認識用画像を取得するタイミングと後方PVMカメラ装置34Rrが認識用画像を取得するタイミングとが異なるようになる。この結果、認識用Des220が前方PVMカメラ装置34Frが取得した認識用画像及び後方PVMカメラ装置34Rrが取得した認識用画像を認識SoC24へ送信するタイミングが異なるようになる。
【0069】
ところで、前方カメラ装置32が取得する一画像当たりのデータ容量は、各PVMカメラ装置34が取得する一画像当たりのデータ容量よりも大きい。
・前方カメラ装置32:128Mbit(=8Mpix×16bit)
・PVMカメラ装置:44.8Mbit(=2.8Mpix×16bit)
即ち、前方カメラ装置32が取得する画像は、PVMカメラ装置34が取得する画像の約3倍大きい。
【0070】
本実施形態では、このようなデータ容量が大きな認識用画像が40fpsで認識SoC24へ送信されており、更に、PVMカメラ装置34Fr及び34Rrが取得した認識用画像も10fpsで認識SoC24に送信される。このため、認識用通信帯域の使用帯域の最大値を可能な限り小さくする必要がある。本実施形態では、上述したように、認識用Des220が認識用画像を認識SoC24へ送信するタイミングが異なるようにしているので、上記使用帯域の最大値を小さくすることができる。
【0071】
(具体的作動)
<同期信号送信ルーチン>
認識SoC24のCPU(以下、「第1CPU」と表記した場合、特に断りがない限り、認識SoC24のCPUを指す。)は、
図7にフローチャートにより示した同期信号送信ルーチンを撮影時間Tpが経過する毎に実行する。
【0072】
従って、所定のタイミングになると、第1CPUは、
図7のステップ700から処理を開始し、ステップ705及びステップ710を順に実行する。
ステップ705:第1CPUは、カウンタNの値に「1」を加算する。
カウンタNの値は、イニシャルルーチンにて、「1」に設定される。イニシャルルーチンは、車両VAの図示しないイグニッション・キー・スイッチがオフ位置からオン位置へと変更されたときに第1CPUによって実行される。
ステップ710:第1CPUは、カウンタNの値が「5」であるか否かを判定する。
【0073】
カウンタNの値が「5」でない場合(即ち、カウンタNの値が「1」乃至「4」の何れかである場合)、第1CPUは、ステップ715及びステップ720を順に実行する。
ステップ715:第1CPUは、認識用同期信号を前方カメラ装置32へ送信する。
ステップ720:第1CPUは、カウンタNの値が「1」又は「3」であるか否かを判定する。
【0074】
カウンタNの値が「1」又は「3」である場合、第1CPUは、ステップ720にて「Yes」と判定してステップ725に進み、表示用同期信号を総てのPVMカメラ装置34へ送信する。その後、第1CPUは、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0075】
一方、第1CPUがステップ720に進んだ時点にてカウンタNの値が「1」及び「3」の何れでもない場合(即ち、カウンタNの値が「2」又は「4」である場合)、第1CPUは、そのステップ720にて「No」と判定し、ステップ730に進む。ステップ730にて、第1CPUは、カウンタNの値が「2」であるか否かを判定する。
【0076】
カウンタNの値が「2」である場合、第1CPUは、ステップ730にて「Yes」と判定してステップ735及びステップ740を順に実行する。
ステップ735:第1CPUは、認識用同期信号を後方PVMカメラ装置34Rrへ送信する。
ステップ740:第1CPUは、表示用同期信号を前方PVMカメラ装置34Frへ送信する。
その後、第1CPUは、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0077】
一方、第1CPUがステップ730に進んだ時点にてカウンタNの値が「2」でない場合(即ち、カウンタNの値が「4」である場合)、第1CPUは、ステップ730にて「No」と判定し、ステップ745及びステップ750を順に実行する。
ステップ745:第1CPUは、認識用同期信号を前方PVMカメラ装置34Frへ送信する。
ステップ750:第2CPUは、表示用同期信号を後方PVMカメラ装置34Rr、左PVMカメラ装置34L及び右PVMカメラ装置34Rへ送信する。
その後、第1CPUは、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0078】
一方、第1CPUがステップ710に進んだ時点にてカウンタNの値が「5」である場合、第1CPUは、ステップ710にて「Yes」と判定し、ステップ755に進む。ステップ755にて、第1CPUは、カウンタNの値を「1」に設定し、ステップ715に進む。
【0079】
<画像取得ルーチン>
各カメラ装置32及び34の図示しないCPU(以下、「第2CPU」と表記した場合、特に断りがない限り、各カメラ装置32及び34のCPUを指す。)は、
図8にフローチャートにより示した画像取得ルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。なお、この所定時間は、上記撮影時間Tpよりも短く設定されている。
【0080】
従って、所定のタイミングになると、第2CPUは、
図8のステップ800から処理を開始し、ステップ805に進む。ステップ805にて、第2CPUは、本ルーチンが前回実行されてから今回実行されるまでの期間において、カメラ装置が認識用同期信号及び表示用同期信号の何れかの同期信号を受信したか否かを判定する。
【0081】
カメラ装置が上記期間に何れの同期信号も受信していない場合、第2CPUは、ステップ805にて「No」と判定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0082】
一方、カメラ装置が上記期間に何れかの同期信号を受信した場合、第2CPUは、ステップ805にて「Yes」と判定し、ステップ810に進む。ステップ810にて、第2CPUは、受信した同期信号が認識用同期信号であるか否かを判定する。
【0083】
受信した同期信号が認識用同期信号である場合、第2CPUは、ステップ810にて「Yes」と判定し、ステップ815乃至ステップ825を実行する。
ステップ815:第2CPUは、認識用同期信号に含まれるシャッタースピードSP1でイメージャに画像を取得させることにより、認識用画像を取得する。
ステップ820:第2CPUは、取得した認識用画像に認識情報を付与する。
ステップ825:第2CPUは、認識用画像をSerから送信する。
その後、第2CPUは、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0084】
一方、受信した同期信号が認識用同期信号でない場合、即ち、受信した同期信号が表示用同期信号である場合、第2CPUは、ステップ810にて「No」と判定し、ステップ830乃至ステップ835を実行する。
ステップ830:第2CPUは、表示用同期信号に含まれるシャッタースピードSP2でイメージャに画像を取得させることにより、表示用画像を取得する。
ステップ835:第2CPUは、取得した表示用画像に表示情報を付与する。
ステップ840:第2CPUは、表示用画像をSerから送信する。
その後、第2CPUは、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0085】
<画像送信ルーチン>
表示用Des222は、
図9にフローチャートにより示した画像振分ルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。なお、この所定時間は、上記撮影時間Tpよりも短く設定されている。
【0086】
従って、所定のタイミングになると、表示用Des222は、
図9のステップ900から処理を開始し、ステップ905に進む。ステップ905にて、表示用Des222は、本ルーチンが前回実行されてから今回実行されるまでの期間において、PVMカメラ装置34から画像を受信したか否かを判定する。
【0087】
上記期間にPVMカメラ装置34から画像を受信していない場合、表示用Des222は、ステップ905にて「No」と判定し、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0088】
一方、上記期間にPVMカメラ装置34から画像を受信した場合、表示用Des222は、ステップ905にて「Yes」と判定し、ステップ910に進む。ステップ910にて、表示用Des222は、受信した画像に認識情報が付与されているか否かを判定する。
【0089】
受信した画像に認識情報が付与されている場合(即ち、受信した画像が認識用画像である場合)、表示用Des222は、ステップ910にて「Yes」と判定し、ステップ915に進む。ステップ915にて、表示用Des222は、受信した画像を認識用Des220へ送信し、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0090】
一方、受信した画像に認識情報が付与されていない場合(即ち、受信した画像が表示用画像である場合)、表示用Des222は、ステップ910にて「No」と判定し、ステップ920に進む。ステップ920にて、表示用Des222は、受信した画像を表示制御SoC26へ送信し、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0091】
<前方安全制御ルーチン>
第1CPUは、
図10にフローチャートにより示した前方安全制御ルーチンを所定時間(4×Tp)が経過する毎に実行する。
【0092】
従って、所定のタイミングになると、第1CPUは、
図10のステップ1000から処理を開始し、ステップ1005及びステップ1010を順に実行する。
ステップ1005:第1CPUは、前方認識用画像に基いて、車両VAの前方領域に存在する物標を認識する。
ステップ1010:第1CPUは、前方衝突物標FOBが存在するか否かを判定する。
【0093】
前方衝突物標FOBが存在しない場合、第1CPUは、ステップ1010にて「No」と判定し、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0094】
一方、前方衝突物標FOBが存在する場合、第1CPUは、ステップ1010にて「Yes」と判定し、ステップ1015及びステップ1020を順に実行する。
ステップ1015:第1CPUは、前方衝突物標FOBのTTCを取得する。
ステップ1020:第1CPUは、TTCが第1閾値時間T1th以下であるか否かを判定する。
TTCが第1閾値時間T1thよりも大きい場合、第1CPUは、ステップ1020にて「No」と判定し、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0095】
一方、TTCが第1閾値時間T1th以下である場合、第1CPUは、ステップ1025及びステップ1030を順に実行する。
ステップ1025:第1CPUは、警報指令をスピーカ70及び第1ディスプレイ80に送信する。
ステップ1030:第1CPUは、TTCが第2閾値時間T2th以下であるか否かを判定する。
TTCが第2閾値時間T2thよりも大きい場合、第1CPUは、ステップ1030にて「No」と判定し、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0096】
一方、TTCが第2閾値時間T2th以下である場合、第1CPUは、ステップ1030にて「Yes」と判定し、ステップ1035に進む。
ステップ1035にて、第1CPUは、回避領域が存在するか否かを判定する。
【0097】
回避領域が存在する場合、第1CPUは、ステップ1035にて「Yes」と判定し、ステップ1040に進んで回避指令をステアリングECU60へ送信する。その後、第1CPUは、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0098】
回避領域が存在しない場合、第1CPUは、ステップ1035にて「No」と判定し、ステップ1045に進んで制動指令をエンジンECU40及びブレーキECU50へ送信する。その後、第1CPUは、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0099】
<後方安全制御ルーチン>
第1CPUは、
図11にフローチャートにより示した後方安全制御ルーチンを所定時間(100ms=4×Tp)が経過する毎に実行する。
【0100】
従って、所定のタイミングになると、第1CPUは、
図11のステップ1100から処理を開始し、ステップ1105及びステップ1110を順に実行する。
ステップ1105:第1CPUは、後方認識用画像に基いて、車両VAの後方領域に存在する物標を認識する。
ステップ1110:第1CPUは、後方衝突物標ROBが存在するか否かを判定する。
後方衝突物標ROBが存在しない場合、第1CPUは、ステップ1110にて「No」と判定し、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0101】
一方、後方衝突物標ROBが存在する場合、第1CPUは、ステップ1110にて「Yes」と判定し、ステップ1115及びステップ1120を順に実行する。
ステップ1115:第1CPUは、後方衝突物標ROBのTTCを取得する。
ステップ1120:第1CPUは、後方衝突物標ROBのTTCが第1閾値時間T1th以下であるか否かを判定する。
TTCが第1閾値時間T1thよりも大きい場合、第1CPUは、ステップ1120にて「No」と判定し、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0102】
一方、TTCが第1閾値時間T1th以下である場合、第1CPUは、ステップ1120にて「Yes」と判定し、ステップ1125及びステップ1130を実行する。
ステップ1125:第1CPUは、警報指令をスピーカ70及び第1ディスプレイ80に送信する。
ステップ1130:第1CPUは、TTCが第2閾値時間T2th以下であるか否かを判定する。
TTCが第2閾値時間T2thよりも大きい場合、第1CPUは、ステップ1130にて「No」と判定し、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0103】
一方、TTCが第2閾値時間T2th以下である場合、第1CPUは、ステップ1130にて「Yes」と判定し、ステップ1135に進んで制動指令をエンジンECU40及びブレーキECU50に送信する。その後、第1CPUは、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0104】
<表示制御ルーチン>
表示制御SoC26のCPU(以下、「第3CPU」と表記した場合、特に断りがない限り、表示制御SoC26のCPUを指す。)は、
図12にフローチャートにより示した表示制御ルーチンを撮影時間Tpが経過する毎に実行する。
【0105】
従って、所定のタイミングになると、第3CPUは、
図12のステップ1200から処理を開始し、ステップ1205に進む。ステップ1205にて、第3CPUは、本ルーチンが前回実行されてから今回実行されるまでの期間において、PVMカメラ装置34の中で表示用画像を送信していないPVMカメラ装置34が存在するか否かを判定する。換言すれば、このようなPVMカメラ装置34は、上記期間において表示用画像を取得しなかったPVMカメラ装置である。以下では、このようなPVMカメラ装置34を「非取得PVMカメラ装置34」と称呼する。
図6に示した例において、カウンタNの値が「1」又は「3」である場合には非取得PVMカメラ装置34は存在しない。カウンタNの値が「2」場合には後方PVMカメラ装置34Rr、左PVMカメラ装置34L及び右PVMカメラ装置34Rがそれぞれ非取得PVMカメラ装置34に相当する。カウンタNの値が「4」である場合には前方PVMカメラ装置34Frが非取得PVMカメラ装置34に相当する。
【0106】
非取得PVMカメラ装置34が存在しない場合、第3CPUは、ステップ1205にて「No」と判定し、ステップ1210乃至ステップ1220を順に実行する。
ステップ1210:第3CPUは、表示用画像に基いてPVM画像を生成する。
より詳細には、第3CPUは、各表示用画像を合成した合成画像の各画素値を、半球面状の立体曲面に含まれる画素に投影することにより立体画像を生成する。この立体曲面の底面は車両VAを中心とする。表示用画像の画素値が投影される立体曲面の画素とは予め対応付けられている。第3CPUは、生成した立体画像を利用して車両VAの真上から視たときの周辺領域の画像を表すPVM画像を生成する。
なお、このような立体画像の生成処理自体は周知の技術である(例えば、特開2012-217000号公報を参照。)。
【0107】
ステップ1215:第3CPUは、PVM画像を第2ディスプレイ90に送信する。第2ディスプレイは、PVM画像を受信すると、PVM画像を表示する。
ステップ1220:第3CPUは、認識SoC24のRAMに記憶されている前回表示用画像を消去し、上記期間に受信した表示用画像を新たな前回表示用画像としてRAMに記憶する。
その後、第3CPUは、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0108】
一方、第3CPUがステップ1205に進んだ時点にて非取得PVMカメラ装置34が存在する場合、第3CPUは、ステップ1205にて「Yes」と判定し、ステップ1225に進む。ステップ1225にて、第3CPUは、RAMから非取得PVMカメラ装置34に対応する前回表示用画像を取得し、ステップ1210に進む。なお、ステップ1210にて、第3CPUは、上記期間にて受信した表示用画像及びステップ1225にて取得した前回表示画像に基いてPVM画像を生成する。
【0109】
以上説明したように、本実施形態によれば、通信ユニット22は、前方PVMカメラ装置34Frが取得した認識用画像の送信タイミングと、後方PVMカメラ装置34Rrが取得した認識用画像の送信タイミングと、を異ならせる。これによって、認識用通信帯域の使用帯域の最大値を小さくすることができる。
【0110】
本発明は上記実施形態及び上記変形例に限定されることなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0111】
(第1変形例)
上記実施形態では、認識SoC24は、前方PVMカメラ装置34Fr及び後方PVMカメラ装置34Rrに対して、異なるタイミング(N=2又は4)で認識用同期信号を送信したが、同じタイミング(N=1)で認識用同期信号を送信してもよい。本変形例に係る表示用Des222は、受信した画像を一時的に記憶するバッファを備えている。表示用Des222は、認識用同期信号を受信した場合には、どのPVMカメラ装置34Fr及びRrから受信したかを識別可能に認識用同期信号をバッファに記憶する。
【0112】
本変形例では、認識SoC24は、通信ユニット22に対して、前方PVMカメラ装置34Frが取得した認識用画像の送信要求(以下、「第1送信要求」と称呼する。)と、後方PVMカメラ装置34Rrが取得した認識用画像の送信要求(以下、「第2送信要求」と称呼する。)と、を異なるタイミングで送信する。一例としては、認識SoC24は、カウンタNの値が「2」となったときに第1送信要求を通信ユニット22に送信し、カウンタNの値が「4」となったときに第2送信要求を通信ユニット22に送信する。
【0113】
通信ユニット22が第1送信要求を受信した場合、表示用Des222は、バッファから前方PVMカメラ装置34Frが取得した認識用画像を取得し、当該認識用画像を認識用Des220を介して認識SoC24へ送信する。同様に、通信ユニット22が第2送信要求を受信した場合、表示用Des222は、バッファから後方PVMカメラ装置34Rrが取得した認識用画像を取得し、当該認識用画像を認識用Des220を介して認識SoC24へ送信する。なお、認識用Des220は、認識用画像を送信した後、その認識用画像をバッファから消去する。
【0114】
以上により、前方PVMカメラ装置34Fr及び後方PVMカメラ装置34Rrが同じタイミングで認識用画像を取得する場合においても、通信ユニット22が、前方PVMカメラ装置34Frが取得した認識用画像、及び、後方PVMカメラ装置34Rrが取得した認識用画像を、異なるタイミングで送信することができる。
【0115】
(第2変形例)
本変形例では、前方PVMカメラ装置34Fr及び後方PVMカメラ装置34Rrが表示用画像のみを取得し、左PVMカメラ装置34L及び右PVMカメラ装置Rが認識用画像及び表示用画像を取得してもよい。
【0116】
本変形例の前方安全制御ルーチンでは、前方カメラ装置32が取得した認識用画像が「前方認識用画像」として用いられる。更に、第1CPUは、後方安全制御ルーチンの代わりに左安全制御ルーチン及び右安全制御ルーチンを実行する。第1CPUは、左安全制御ルーチンでは左PVMカメラ装置34Lが取得した認識用画像に基いて物標を認識する点、及び、右安全制御ルーチンでは右PVMカメラ装置34Rが取得した認識用画像に基いて物標を認識する点で、後方安全制御ルーチンと異なり、その他の処理は後方安全制御ルーチンと同じである。
【0117】
なお、上記実施形態は、PVMカメラ装置34の少なくとも二つのカメラ装置が「認識用画像及び表示用画像を取得するカメラ装置」であれば適用可能である。PVMカメラ装置34は車両VAの周辺領域の画像を取得可能であれば、PVMカメラ装置34の数及び配置位置は上記実施形態に限定されない。
【0118】
(第3変形例)
衝突指標値として、TTCの代わりに、物標と車両VAとの間の距離Lが用いられてもよい。距離Lが小さいほどが衝突可能性が高いことを表す。
更に、TTCが所定の閾値以下である場合、認識SoC24は、警報制御、回避制御及び制動制御の少なくとも一つを実行するようにしてもよい。
更に、警報制御においては、認識SoC24は、スピーカ70及び第1ディスプレイ80の何れか一つに警報指令を送信するようにしてもよい。
更に、第1ディスプレイ80及び第2ディスプレイ90は、一つのディスプレイであってもよい。
【符号の説明】
【0119】
10…車両用画像処理システム、20…制御ECU、22…通信ユニット、24…認識SoC、26…表示制御SoC、32…前方カメラ装置、34Fr…前方PVMカメラ装置、34Rr…後方PVMカメラ装置、34L…左PVMカメラ装置、34R…右PVMカメラ装置。