(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】グランドパッキン用治具
(51)【国際特許分類】
B25B 27/14 20060101AFI20241009BHJP
B23P 19/00 20060101ALI20241009BHJP
B23P 19/02 20060101ALI20241009BHJP
F16J 15/24 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
B25B27/14 A
B23P19/00 304A
B23P19/02 A
F16J15/24 Z
(21)【出願番号】P 2023542303
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2022029237
(87)【国際公開番号】W WO2023021962
(87)【国際公開日】2023-02-23
【審査請求日】2024-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2021134845
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(73)【特許権者】
【識別番号】591043581
【氏名又は名称】東京都
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須川 修司
(72)【発明者】
【氏名】濱出 真人
(72)【発明者】
【氏名】滝照 和正
(72)【発明者】
【氏名】増子 知樹
(72)【発明者】
【氏名】馬場 崇
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 和徳
(72)【発明者】
【氏名】内免 梓
(72)【発明者】
【氏名】新島 清伸
(72)【発明者】
【氏名】國岡 哲哉
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-185027(JP,A)
【文献】特開2018-204639(JP,A)
【文献】実開昭62-25174(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 27/00-27/30;
B23P 19/00-19/12;
F16J 15/00-15/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランドパッキンを所定部材に設けられた溝内に挿入するとともに、前記所定部材の溝内に挿入されたグランドパッキンを前記溝内から引き抜くグランドパッキン用治具であって、
前記グランドパッキン用治具は、
前記所定部材に着脱自在に固定される固定手段と、
前記固定手段から連続し、グランドパッキン挿入手段を溝外から溝内の方向に移動させるとともに、グランドパッキン引き抜き手段を溝外から溝内の方向に移動させ、さらに溝内から溝外の方向に移動させる上下動手段と、
前記上下動手段にいずれか一方が着脱自在に接続されるグランドパッキン挿入手段またはグランドパッキン引き抜き手段と、
を備え、
前記グランドパッキン挿入手段は、
前記グランドパッキンが溝内に挿入されていない場合に前記上下動手段に接続され、前記グランドパッキンを前記溝外から溝内に向けて押圧し前記溝内に挿入する押圧部を有し、
前記グランドパッキン引き抜き手段は、
前記グランドパッキンが溝内に挿入されている場合に前記上下動手段に接続され、前記グランドパッキンに係合させて前記グランドパッキンを前記溝内から溝外に向けて引き上げることで前記溝内から引き抜く係合部を有することを特徴とするグランドパッキン用治具。
【請求項2】
前記上下動手段が、シーソー本体を有する略シーソー状構造であり、
前記シーソー本体の中央部に位置する支点部分に前記固定手段が回動可能に軸支され、
前記シーソー本体の一端部に位置する作用点部分に前記グランドパッキン挿入手段またはグランドパッキン引き抜き手段のいずれか一方が着脱自在に接続され、
前記シーソー本体の他端部に位置する力点部分を上下動させることで、前記グランドパッキン挿入手段を溝外から溝内の方向に移動させるとともに、前記グランドパッキン引き抜き手段を溝外から溝内の方向に移動させ、さらに溝内から溝外の方向に移動させるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項3】
前記シーソー本体は、
前記中央部に位置する支点部分を介して回動され、前記一端部に位置する作用点部分と他端部に位置する力点部分とを相互に入れ替え可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項4】
前記グランドパッキン挿入手段が、
横長円柱状の円柱本体部を備え、
前記円柱本体部の曲面部が、前記押圧部であることを特徴とする請求項2に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項5】
前記シーソー本体が、略直線状または略く字状に構成されていることを特徴とする請求項2に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項6】
前記シーソー本体の中央部には、前記シーソー本体の延設方向に細長い細長貫通穴を備えることを特徴とする請求項2に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項7】
前記上下動手段とグランドパッキン挿入手段との接続手段が、
前記上下動手段とグランドパッキン挿入手段のいずれか一方に設けられた雄ネジ部およびいずれか他方に設けられた雌ネジ部による接続手段であるか、
前記上下動手段とグランドパッキン挿入手段のいずれか一方に設けられた嵌合凹部およびいずれか他方に設けられた嵌合凸部による接続手段であり、
前記上下動手段とグランドパッキン引き抜き手段との接続手段が、
前記上下動手段とグランドパッキン引き抜き手段のいずれか一方に設けられた雄ネジ部およびいずれか他方に設けられた雌ネジ部による接続手段であるか、
前記上下動手段とグランドパッキン引き抜き手段のいずれか一方に設けられた嵌合凹部およびいずれか他方に設けられた嵌合凸部による接続手段であることを特徴とする請求項2に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項8】
前記シーソー本体の力点部分に相当する他端部には、
本体延長部材が着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項9】
前記上下動手段が、ラック部材とピニオン部材を有する略ラックアンドピニオン構造であり、
垂直方向に延設された前記ラック部材の下端部に前記固定手段が接続され、
前記ピニオン部材には前記グランドパッキン挿入手段またはグランドパッキン引き抜き手段のいずれか一方が着脱自在に接続され、
前記ピニオン部材を作動させ、前記ラック部材上を前記ピニオン部材が移動することで、前記グランドパッキン挿入手段を溝外から溝内の方向に移動させるとともに、前記グランドパッキン引き抜き手段を溝外から溝内の方向に移動させ、さらに溝内から溝外の方向に移動させるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項10】
前記ピニオン部材の作動が、ラチェットレンチによって行われるよう構成されていることを特徴とする請求項9に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項11】
前記上下動手段が、レバー部材とカム状部材を用いた略カムレバー構造であり、
前記レバー部材を保持する保持部の下端部に前記固定手段が接続され、
前記レバー部材の一端部に設けられたカム状部材に前記グランドパッキン挿入手段またはグランドパッキン引き抜き手段のいずれか一方が着脱自在に接続され、
前記レバー部材を所定位置から下方位置に傾倒させるとともに下方位置から所定位置に戻すことで、前記グランドパッキン挿入手段を溝外から溝内の方向に移動させるとともに、前記グランドパッキン引き抜き手段を溝外から溝内の方向に移動させ、さらに溝内から溝外の方向に移動させるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項12】
前記上下動手段において、前記レバー部材が脱着自在に構成されていることを特徴とする請求項11に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項13】
前記グランドパッキン引き抜き手段の前記係合部が棒状本体を有し、
前記棒状本体の一端部には、前記グランドパッキンに差し込まれて係合される螺旋状部が設けられ、
前記棒状本体の他端部には、前記棒状本体を回動させるための回動部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項14】
前記棒状本体の一端部に設けられた回動部が、ハンドルであることを特徴とする請求項13に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項15】
前記棒状本体の一端部に設けられた回動部が、把持部であることを特徴とする請求項13に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項16】
前記棒状本体には、前記棒状本体の延設方向に複数の突起部が間隔を空けて設けられており、
前記グランドパッキンが溝内に挿入されている場合、
前記上下動手段は、前記棒状本体の突起部と接続されるよう構成されていることを特徴とする請求項13に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項17】
前記棒状本体が、可撓性を有することを特徴とする請求項13に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項18】
前記固定手段には、
前記上下動手段の溝に対する位置を調整するための位置調整手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項19】
前記上下動手段が、回転運動を直線運動に変換する運動変換構造であり、
前記所定部材に前記固定手段が接続され、
前記固定手段は、
前記所定部材から立設された立設雄ネジ部材と、
前記立設雄ネジ部材を貫通し前記立設雄ネジ部材に螺合された雌ネジ部材を介して前記所定部材に固定され、内周壁に雌ネジ部が設けられた略ドーナッツ状の固定本体部と、を備え、
前記グランドパッキン挿入手段および前記グランドパッキン引き抜き手段は、いずれも前記固定本体部の雌ネジ部に螺合する雄ネジ部を外周壁に有する略筒状の筒状本体部を備え、
前記上下動手段は、
前記固定本体部の雌ネジ部に前記グランドパッキン挿入手段またはグランドパッキン引き抜き手段のいずれか一方の雄ネジ部を着脱自在に螺合させ、前記グランドパッキン挿入手段の筒状本体部またはグランドパッキン引き抜き手段の筒状本体部を回転させることで、前記グランドパッキン挿入手段を溝外から溝内の方向に移動させるとともに、前記グランドパッキン引き抜き手段を溝外から溝内の方向に移動させ、さらに溝内から溝外の方向に移動させるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項20】
前記グランドパッキン引き抜き手段の前記係合部が、
前記筒状本体部の下端に設けられた、返し付き係合爪であることを特徴とする請求項19に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項21】
前記グランドパッキン挿入手段の筒状本体部における外側壁の略上端部および/または略下端部に、着脱自在にハンドルが設けられていることを特徴とする請求項19に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項22】
前記グランドパッキン引き抜き手段の筒状本体部における外側壁の略上端部および/または略下端部に、着脱自在にハンドルが設けられていることを特徴とする請求項19に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項23】
前記上下動手段が、回転運動を直線運動に変換する運動変換構造であり、
前記所定部材に前記固定手段が接続され、
前記固定手段は、
前記所定部材から立設された立設雄ネジ部材と、
前記立設雄ネジ部材を貫通し前記立設雄ネジ部材に螺合された雌ネジ部材を介して前記所定部材に固定され、内周壁に雌ネジ部が設けられた略ドーナッツ状の固定本体部と、を備え、
前記グランドパッキン挿入手段および前記グランドパッキン引き抜き手段は、いずれも前記固定本体部の雌ネジ部に螺合する雄ネジ部を外周壁に有する略筒状の筒状本体部を備え、
前記上下動手段は、
前記グランドパッキン挿入手段を溝外から溝内の方向に移動させるとともに、前記グランドパッキン引き抜き手段を溝外から溝内の方向に移動させる第1上下動手段と、
前記グランドパッキン引き抜き手段を溝内から溝外の方向に移動させる第2上下動手段と、から構成され、
前記第1上下動手段において、
前記固定本体部の雌ネジ部に、前記グランドパッキン挿入手段の筒状本体部またはグランドパッキン引き抜き手段の筒状本体部のいずれか一方の雄ネジ部を着脱自在に螺合させ、前記グランドパッキン挿入手段の筒状本体部またはグランドパッキン引き抜き手段の筒状本体部を回転させることで、前記グランドパッキン挿入手段を溝外から溝内の方向に移動させるとともに溝内から溝外の方向に移動させ、さらに前記グランドパッキン引き抜き手段を溝外から溝内の方向に移動させ、
前記第2上下動手段において、
前記立設雄ネジ部材に螺合された雌ネジ部材を回動させることで前記グランドパッキン引き抜き手段を溝内から溝外の方向に移動させるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項24】
前記上下動手段が、回転運動を直線運動に変換する運動変換構造であり、
前記所定部材に前記固定手段が接続され、
前記固定手段は、
前記所定部材から立設された立設雄ネジ部材と、
前記立設雄ネジ部材を貫通し前記立設雄ネジ部材に螺合された雌ネジ部材を介して前記所定部材に固定された略ドーナッツ状の固定本体部と、を備え、
さらに前記固定本体部は、
前記溝の直上に位置する箇所に、前記固定本体部を貫通する複数の貫通雌ネジ部が設けられ、
前記グランドパッキン挿入手段は、
前記固定本体部の貫通雌ネジ部と螺合する複数の雄ネジ部材を備え、
前記雄ネジ部材の一端部が前記押圧部であり、
前記雄ネジ部材の他端部が、前記上下動手段との接続部であり、
前記雄ネジ部材の接続部に上下動手段を接続して、前記雄ネジ部材を回動させることで、前記グランドパッキン挿入手段を溝外から溝内の方向に移動させるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項25】
前記グランドパッキン引き抜き手段の前記係合部が棒状本体を有し、
前記棒状本体の一端部には、前記グランドパッキンに差し込まれて係合される螺旋状部が設けられていることを特徴とする請求項24に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項26】
前記上下動手段は、
前記グランドパッキン挿入手段を溝外から溝内の方向に移動させるとともに溝内から溝外の方向に移動させ、さらに前記グランドパッキン引き抜き手段を溝外から溝内の方向に移動させる第1上下動手段と、
前記グランドパッキン引き抜き手段を溝内から溝外の方向に移動させる第2上下動手段と、から構成され、
前記第1上下動手段において、
前記雄ネジ部材または棒状本体の他端部を回動させる回動部を備え、
前記回動部を介して前記雄ネジ部材または前記棒状本体を回動させることで、前記グランドパッキン挿入手段を溝外から溝内の方向に移動させるとともに溝内から溝外の方向に移動させ、さらに前記グランドパッキン引き抜き手段を溝外から溝内の方向に移動させ、
前記第2上下動手段において、
前記立設雄ネジ部材に設けられた雌ネジ部材を回動させることで前記グランドパッキン引き抜き手段を溝内から溝外の方向に移動させるよう構成されていることを特徴とする請求項24に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項27】
前記第1上下動手段の回動部は、電動工具を介して回動されるよう構成されていることを特徴とする請求項26に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項28】
前記グランドパッキン挿入手段は、
前記グランドパッキンを前記溝内に挿入する際、前記溝内にグランドパッキンを入り易く案内する案内スロープ部を有することを特徴とする請求項1に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項29】
前記所定部材に板状体が締結され、
前記固定手段が、
前記板状体に着脱自在に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項30】
前記板状体が、複数の分割体から構成され、
前記複数の分割体は、隣接する一方側の分割体に嵌合凸部を備えるとともに、他方側の分割体に嵌合凹部を備え、前記嵌合凸部と嵌合凹部により嵌合されて成ることを特徴とする請求項29に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項31】
前記一方側の分割体に設けられた嵌合凸部があり溝形凸部であり、
前記他方側の分割体に設けられた嵌合凹部があり溝形凹部であることを特徴とする請求項30に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項32】
前記所定部材に板状体が締結され、
前記板状体の一端部に、前記固定手段が着脱自在に固定され、
前記板状体の他端部に、前記グランドパッキンを前記溝内に挿入する際、前記溝内にグランドパッキンを入り易く案内する案内スロープ部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項33】
前記案内スロープ部の傾斜面において、
前記溝外から溝内の方向に対する前記傾斜面の傾斜角度が、5~30度の範囲内であることを特徴とする請求項32に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項34】
前記グランドパッキンを前記溝内に挿入する際、
前記押圧部と前記グランドパッキンとの間に押圧補助部材を備えることを特徴とする請求項1に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項35】
前記押圧補助部材の少なくとも上面に磁石が設けられていることを特徴とする請求項34に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項36】
前記押圧補助部材が、複数の円弧状分割体を組み合わせてなる周状であって、
前記円弧状分割体の隣合う分割面に磁石が配設されていることを特徴とする請求項34に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項37】
前記押圧補助部材が、複数の円弧状分割体を組み合わせてなる周状であって、
前記円弧状分割体の隣合う分割面の一方側には嵌合凹部が設けられ、他方側には嵌合凸部が設けられていることを特徴とする請求項34に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項38】
前記押圧部が、磁性体から成るまたは磁石を有することを特徴とする請求項1に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項39】
前記所定部材に設けられた溝内に挿入されたグランドパッキンは、
前記溝内に複数重ねられて多段状に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項40】
前記グランドパッキンが、断面角形に編組されたパッキンであることを特徴とする請求項1に記載のグランドパッキン用治具。
【請求項41】
前記所定部材がスタフィングボックスであり、
前記溝が前記スタフィングボックス内の軸と前記スタフィングボックスとの間に設けられた空間であることを特徴とする請求項1に記載のグランドパッキン用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グランドパッキンを所定部材に設けられた溝内に挿入する際に用いられるとともに、所定部材の溝内に挿入されたグランドパッキンを溝内から引き抜く際に用いられるグランドパッキン用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水道ポンプなどの所定部材(スタフィングボックス)において、
図56に示したような回転軸150のシール部材としてグランドパッキン110が用いられている。このようなグランドパッキン110は、挿入工具100の押圧部102で溝120の底部側へ人力で挿入されたり、特許文献1に開示された挿入工具などを用いて溝120内に挿入されている。
【0003】
ところで、このような挿入工具を用いて溝内に挿入されたグランドパッキンは定期的に交換が必要であり、交換の際には、
図57に示したように、溝120内のグランドパッキン110に引き抜き工具200のスクリュー部210をねじ込み、ハンドル220を溝120外の方向に引くことで溝120内からグランドパッキン110を引き抜くようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、グランドパッキンが設けられる場所によっては使用に適した空間が足りず、これらの挿入工具や引き抜き工具では操作がし辛く、作業効率が低くなってしまう場合があった。また挿入工具や引き抜き工具は手作業によって使われるため、作業者の熟練具合によっては多くの作業時間を要する場合もあり、グランドパッキンを溝内に挿入する際と、グランドパッキンを溝内から引き抜く際のいずれの作業においても作業効率を高めることのできる新たなグランドパッキン用治具が求められているのが実情である。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みなされたものであって、誰でも簡単に操作することができ、狭い場所であってもグランドパッキンの溝内への挿入作業や溝内からの引き抜き作業がし易く、作業効率を高めることのできるグランドパッキン用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述した従来技術における課題を解決するために発明されたものであって、
本発明のグランドパッキン用治具は、
グランドパッキンを所定部材に設けられた溝内に挿入するとともに、前記所定部材の溝内に挿入されたグランドパッキンを前記溝内から引き抜くグランドパッキン用治具であって、
前記グランドパッキン用治具は、
前記所定部材に着脱自在に固定される固定手段と、
前記固定手段から連続し、グランドパッキン挿入手段を溝外から溝内の方向に移動させるとともに、グランドパッキン引き抜き手段を溝外から溝内の方向に移動させ、さらに溝内から溝外の方向に移動させる上下動手段と、
前記上下動手段にいずれか一方が着脱自在に接続されるグランドパッキン挿入手段またはグランドパッキン引き抜き手段と、
を備え、
前記グランドパッキン挿入手段は、
前記グランドパッキンが溝内に挿入されていない場合に前記上下動手段に接続され、前記グランドパッキンを前記溝外から溝内に向けて押圧し前記溝内に挿入する押圧部を有し、
前記グランドパッキン引き抜き手段は、
前記グランドパッキンが溝内に挿入されている場合に前記上下動手段に接続され、前記グランドパッキンに係合させて前記グランドパッキンを前記溝内から溝外に向けて引き上げることで前記溝内から引き抜く係合部を有することを特徴とする。
【0008】
このように構成すれば、グランドパッキン挿入手段とグランドパッキン引き抜き手段とを必要に応じて上下動手段に付け替えるだけで、グランドパッキンの溝内への挿入と、グランドパッキンの溝内からの引き抜きの両方を行うことができる。また、操作方法が分かりやすい構造であるため、誰でも直感的に使用することができる。
【0009】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記上下動手段が、シーソー本体を有する略シーソー状構造であり、
前記シーソー本体の中央部に位置する支点部分に前記固定手段が回動可能に軸支され、
前記シーソー本体の一端部に位置する作用点部分に前記グランドパッキン挿入手段またはグランドパッキン引き抜き手段のいずれか一方が着脱自在に接続され、
前記シーソー本体の他端部に位置する力点部分を上下動させることで、前記グランドパッキン挿入手段を溝外から溝内の方向に移動させるとともに、前記グランドパッキン引き抜き手段を溝外から溝内の方向に移動させ、さらに溝内から溝外の方向に移動させるよう構成されていることを特徴とする。
【0010】
このように上下動手段が略シーソー状構造であれば、てこの原理により少ない力でグランドパッキンを確実に溝内に挿入させることができるとともに、グランドパッキンを確実に溝内から引き抜くことができる。
【0011】
さらに略シーソー状構造であれば、作業空間が狭くても作業を可能とする構造であるため、確実にグランドパッキンの溝内への挿入とグランドパッキンの溝内からの引き抜きの両方を行うことができる。
【0012】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記シーソー本体は、
前記中央部に位置する支点部分を介して回動され、前記一端部に位置する作用点部分と他端部に位置する力点部分とを相互に入れ替え可能に構成されていることを特徴とする。
【0013】
このようにシーソー本体の一端部と他端部とが回動によって反転されるように構成されていれば、例えば一端部をグランドパッキン挿入手段との接続用とし、他端部をグランドパッキン引き抜き手段との接続用と決めて使用することができ、作業効率を高めることができる。
【0014】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記グランドパッキン挿入手段が、
横長円柱状の円柱本体部を備え、
前記円柱本体部の曲面部が、前記押圧部であることを特徴とする。
【0015】
このように円柱本体部の曲面部が、押圧部であれば、グランドパッキンに押圧部が当接する際に、グランドパッキンに無理な負荷がかかることがないのでグランドパッキンを誤って破損してしまうようなことを確実に防止することができる。
【0016】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記シーソー本体が、略直線状または略く字状に構成されていることを特徴とする。
【0017】
このようにシーソー本体が略直線状に構成されていれば、てこの原理を用いるのに一番好適な形状であるため、少ない力でグランドパッキンを確実に溝内に挿入させることができるとともに、グランドパッキンを確実に溝内から引き抜くことができる。
【0018】
さらにシーソー本体が略く字状に構成されていれば、特に平坦面からの突設量が少ない所定部材の場合であっても、平坦面にシーソー本体の力点部分がぶつかってしまうことなく、確実にグランドパッキンを溝内に挿入させることができるとともに、グランドパッキンを溝内から引き抜くことができる。
【0019】
このため、略直線状のシーソー本体を用いるか、略く字状のシーソー本体を用いるかについては、作業空間の状況や所定部材の突設状況などを考慮して選択することが好ましい。
【0020】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記シーソー本体の中央部には、前記シーソー本体の延設方向に細長い細長貫通穴を備えることを特徴とする。
【0021】
このようにシーソー本体の中央部において、延設方向に細長い細長貫通穴を備えていれば、所定部材のサイズによって溝の位置が異なっていても、この細長い細長貫通穴内において、支点部分を左右に移動させることができるため、確実にグランドパッキンを溝内に挿入させることができるとともに、グランドパッキンを溝内から引き抜くことができる。
【0022】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記上下動手段とグランドパッキン挿入手段との接続手段が、
前記上下動手段とグランドパッキン挿入手段のいずれか一方に設けられた雄ネジ部およびいずれか他方に設けられた雌ネジ部による接続手段であるか、
前記上下動手段とグランドパッキン挿入手段のいずれか一方に設けられた嵌合凹部およびいずれか他方に設けられた嵌合凸部による接続手段であり、
前記上下動手段とグランドパッキン引き抜き手段との接続手段が、
前記上下動手段とグランドパッキン引き抜き手段のいずれか一方に設けられた雄ネジ部およびいずれか他方に設けられた雌ネジ部による接続手段であるか、
前記上下動手段とグランドパッキン引き抜き手段のいずれか一方に設けられた嵌合凹部およびいずれか他方に設けられた嵌合凸部による接続手段であることを特徴とする。
【0023】
このように雄ネジ部と雌ネジ部による接続手段であるか、嵌合凹部と嵌合凸部による接続手段であれば、着脱が容易であるため、狭い作業空間内におけるグランドパッキンの交換作業の効率を向上させることができる。
【0024】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記シーソー本体の力点部分に相当する他端部には、
本体延長部材が着脱自在に設けられていることを特徴とする。
【0025】
このように本体延長部材が設けられていれば、本体延長部材によって、支点部分から力点部分までの距離を広げることができ、溝内にグランドパッキンを挿入させ、溝内から引き抜く際に大きな力が必要な場合であっても、確実に溝内にグランドパッキンを挿入させ、溝内から引き抜くことができる。
【0026】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記上下動手段が、ラック部材とピニオン部材を有する略ラックアンドピニオン構造であり、
垂直方向に延設された前記ラック部材の下端部に前記固定手段が接続され、
前記ピニオン部材には前記グランドパッキン挿入手段またはグランドパッキン引き抜き手段のいずれか一方が着脱自在に接続され、
前記ピニオン部材を作動させ、前記ラック部材上を前記ピニオン部材が移動することで、前記グランドパッキン挿入手段を溝外から溝内の方向に移動させるとともに、前記グランドパッキン引き抜き手段を溝外から溝内の方向に移動させ、さらに溝内から溝外の方向に移動させるよう構成されていることを特徴とする。
【0027】
このように上下動手段が略ラックアンドピニオン構造であれば、狭い空間内においても、グランドパッキン挿入手段またはグランドパッキン引き抜き手段を用いて、グランドパッキンの溝内への挿入とグランドパッキンの溝内からの引き抜きの両方を確実に行うことができる。
【0028】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記ピニオン部材の作動が、ラチェットレンチによって行われるよう構成されていることを特徴とする。
【0029】
特にラチェットレンチであれば、少ない可動範囲でピニオン部材を作動させることができるため、特に狭い空間内における作業において好適に用いることができる。
【0030】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記上下動手段が、レバー部材とカム状部材を用いた略カムレバー構造であり、
前記レバー部材を保持する保持部の下端部に前記固定手段が接続され、
前記レバー部材の一端部に設けられたカム状部材に前記グランドパッキン挿入手段またはグランドパッキン引き抜き手段のいずれか一方が着脱自在に接続され、
前記レバー部材を所定位置から下方位置に傾倒させるとともに下方位置から所定位置に戻すことで、前記グランドパッキン挿入手段を溝外から溝内の方向に移動させるとともに、前記グランドパッキン引き抜き手段を溝外から溝内の方向に移動させ、さらに溝内から溝外の方向に移動させるよう構成されていることを特徴とする。
【0031】
このように上下動手段が略カムレバー構造であれば、狭い空間内においても、グランドパッキン挿入手段またはグランドパッキン引き抜き手段を用いて、グランドパッキンの溝内への挿入とグランドパッキンの溝内からの引き抜きの両方を確実に行うことができる。
【0032】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記上下動手段において、前記レバー部材が脱着自在に構成されていることを特徴とする。
【0033】
このようにレバー部材が脱着自在であれば、狭い作業空間であっても、確実に本グランドパッキン用治具を用いることができる。なお、レバー部材が脱着自在である場合には、レバー部材として例えばラチェットレンチを用いることが好ましい。
【0034】
このようなラチェットレンチであれば、少ない可動範囲でも用いることができ、また取り外しも容易であり、レバー部材として好適である。
【0035】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記グランドパッキン引き抜き手段の前記係合部が棒状本体を有し、
前記棒状本体の一端部には、前記グランドパッキンに差し込まれて係合される螺旋状部が設けられ、
前記棒状本体の他端部には、前記棒状本体を回動させるための回動部が設けられていることを特徴とする。
【0036】
このように螺旋状部であれば、確実にグランドパッキンに食い込ませることができる構造であるため、確実に溝内からグランドパッキンを引き抜くことができる。
【0037】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記棒状本体の一端部に設けられた回動部が、ハンドルであることを特徴とする。
【0038】
このようにハンドルであれば、手作業でも棒状本体を回動させることができるため、狭い作業空間であっても、確実に本グランドパッキン用治具を用いることができる。
【0039】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記棒状本体の一端部に設けられた回動部が、把持部であることを特徴とする。
【0040】
このように把持部であれば、例えばこの把持部に電動工具などを取り付けて回転させることができ、作業効率を高めることができる。また汎用の工具を取り付けることもできるため、誰でも簡単に作業を行うことができる。
【0041】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記棒状本体には、前記棒状本体の延設方向に複数の突起部が間隔を空けて設けられており、
前記グランドパッキンが溝内に挿入されている場合、
前記上下動手段は、前記棒状本体の突起部と接続されるよう構成されていることを特徴とする。
【0042】
このように棒状本体に突起部が複数設けられていれば、突起部の下に上下動手段を接続させ、溝内からグランドパッキンを引き抜く際に、隣接する突起部から突起部に接続し替えていくことで、上下動手段の上下方向の動作範囲を小さくすることができ、作業し辛い狭小な作業環境であっても、確実に溝内からグランドパッキンを引き抜くことができる。
【0043】
また、突起部の上に上下動手段を接続させれば、グランドパッキン引き抜き手段の係合部をグランドパッキンに係合させる際に、係合部をグランドパッキン側に押し込み係合させ易くすることができる。
【0044】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記棒状本体が、可撓性を有することを特徴とする。
【0045】
このように棒状本体が可撓性を有していれば、作業し辛い狭小な環境であっても、棒状本体を曲げて溝の直上から外れた箇所から作業をすることができる。したがって確実に溝内のグランドパッキンにグランドパッキン引き抜き手段の係合部を係合させることができるとともに、確実に溝内からグランドパッキンを引き抜くことができる。
【0046】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記固定手段には、
前記上下動手段の溝に対する位置を調整するための位置調整手段が設けられていることを特徴とする。
【0047】
このように位置調整手段が設けられていれば、固定部材と溝との間の距離を調整することができるため、本グランドパッキン用治具を用いる現場環境が現場ごとに異なっていても、確実にグランドパッキン用治具を用いることができる。
【0048】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記上下動手段が、回転運動を直線運動に変換する運動変換構造であり、
前記所定部材に前記固定手段が接続され、
前記固定手段は、
前記所定部材から立設された立設雄ネジ部材と、
前記立設雄ネジ部材を貫通し前記立設雄ネジ部材に螺合された雌ネジ部材を介して前記所定部材に固定され、内周壁に雌ネジ部が設けられた略ドーナッツ状の固定本体部と、を備え、
前記グランドパッキン挿入手段および前記グランドパッキン引き抜き手段は、いずれも前記固定本体部の雌ネジ部に螺合する雄ネジ部を外周壁に有する略筒状の筒状本体部を備え、
前記上下動手段は、
前記固定本体部の雌ネジ部に前記グランドパッキン挿入手段またはグランドパッキン引き抜き手段のいずれか一方の雄ネジ部を着脱自在に螺合させ、前記グランドパッキン挿入手段の筒状本体部またはグランドパッキン引き抜き手段の筒状本体部を回転させることで、前記グランドパッキン挿入手段を溝外から溝内の方向に移動させるとともに、前記グランドパッキン引き抜き手段を溝外から溝内の方向に移動させ、さらに溝内から溝外の方向に移動させるよう構成されていることを特徴とする。
【0049】
このように上下動手段が運動変換構造であれば、狭い空間内においても、グランドパッキン挿入手段またはグランドパッキン引き抜き手段を用いて、グランドパッキンの溝内への挿入とグランドパッキンの溝内からの引き抜きの両方を確実に行うことができる。
【0050】
また回転運動であれば、ゆっくり均等に力をグランドパッキンに加えることができるため、グランドパッキンの溝内への挿入とグランドパッキンの溝内からの引き抜きに、本発明の運動変換構造の上下動手段は好適である。
【0051】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記グランドパッキン引き抜き手段の前記係合部が、
前記筒状本体部の下端に設けられた、返し付き係合爪であることを特徴とする。
【0052】
このように係合部が返し付き係合爪であれば、グランドパッキンとグランドパッキン引き抜き手段との係合状態を強固なものとすることができ、グランドパッキン引き抜き手段を回転させた際に、グランドパッキンと係合部との係合が簡単に解除されず維持された状態とすることができる。したがってグランドパッキンの溝内への挿入とグランドパッキンの溝内からの引き抜きの両方を確実に行うことができる。
【0053】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記グランドパッキン挿入手段の筒状本体部における外側壁の略上端部および/または略下端部に、着脱自在にハンドルが設けられていることを特徴とする。
【0054】
このようにハンドルが着脱自在に設けられていれば、小さな力で確実にグランドパッキン挿入手段を上下動手段で上下動させることができる。また、ハンドルを回す際に、ハンドルが既存の部材に当たってしまうような場合でも、着脱自在なハンドルであれば、既存の部材を避け、別の箇所にハンドルを接続することでハンドルの回転を維持することができる。
【0055】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記グランドパッキン引き抜き手段の筒状本体部における外側壁の略上端部および/または略下端部に、着脱自在にハンドルが設けられていることを特徴とする。
【0056】
このようにハンドルが着脱自在に設けられていれば、小さな力で確実にグランドパッキン引き抜き手段を上下動手段で上下動させることができる。また、ハンドルを回す際に、ハンドルが既存の部材に当たってしまうような場合でも、着脱自在なハンドルであれば、既存の部材を避け、別の箇所にハンドルを接続することでハンドルの回転を維持することができる。
【0057】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記上下動手段が、回転運動を直線運動に変換する運動変換構造であり、
前記所定部材に前記固定手段が接続され、
前記固定手段は、
前記所定部材から立設された立設雄ネジ部材と、
前記立設雄ネジ部材を貫通し前記立設雄ネジ部材に螺合された雌ネジ部材を介して前記所定部材に固定され、内周壁に雌ネジ部が設けられた略ドーナッツ状の固定本体部と、を備え、
前記グランドパッキン挿入手段および前記グランドパッキン引き抜き手段は、いずれも前記固定本体部の雌ネジ部に螺合する雄ネジ部を外周壁に有する略筒状の筒状本体部を備え、
前記上下動手段は、
前記グランドパッキン挿入手段を溝外から溝内の方向に移動させるとともに、前記グランドパッキン引き抜き手段を溝外から溝内の方向に移動させる第1上下動手段と、
前記グランドパッキン引き抜き手段を溝内から溝外の方向に移動させる第2上下動手段と、から構成され、
前記第1上下動手段において、
前記固定本体部の雌ネジ部に、前記グランドパッキン挿入手段の筒状本体部またはグランドパッキン引き抜き手段の筒状本体部のいずれか一方の雄ネジ部を着脱自在に螺合させ、前記グランドパッキン挿入手段の筒状本体部またはグランドパッキン引き抜き手段の筒状本体部を回転させることで、前記グランドパッキン挿入手段を溝外から溝内の方向に移動させるとともに溝内から溝外の方向に移動させ、さらに前記グランドパッキン引き抜き手段を溝外から溝内の方向に移動させ、
前記第2上下動手段において、
前記立設雄ネジ部材に螺合された雌ネジ部材を回動させることで前記グランドパッキン引き抜き手段を溝内から溝外の方向に移動させるよう構成されていることを特徴とする。
【0058】
このように上下動手段が第1上下動手段と第2上下動手段から成るように構成されていれば、グランドパッキンを溝内から溝外に引き抜く際には、筒状本体部を回転させずに垂直方向に移動させることになるため、筒状本体部を回転させるための大掛かりなハンドルなどを用いる必要がなく、特に狭い作業空間である場合に作業効率を高めることができる。
【0059】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記上下動手段が、回転運動を直線運動に変換する運動変換構造であり、
前記所定部材に前記固定手段が接続され、
前記固定手段は、
前記所定部材から立設された立設雄ネジ部材と、
前記立設雄ネジ部材を貫通し前記立設雄ネジ部材に螺合された雌ネジ部材を介して前記所定部材に固定された略ドーナッツ状の固定本体部と、を備え、
さらに前記固定本体部は、
前記溝の直上に位置する箇所に、前記固定本体部を貫通する複数の貫通雌ネジ部が設けられ、
前記グランドパッキン挿入手段は、
前記固定本体部の貫通雌ネジ部と螺合する複数の雄ネジ部材を備え、
前記雄ネジ部材の一端部が前記押圧部であり、
前記雄ネジ部材の他端部が、前記上下動手段との接続部であり、
前記雄ネジ部材の接続部に上下動手段を接続して、前記雄ネジ部材を回動させることで、前記グランドパッキン挿入手段を溝外から溝内の方向に移動させるよう構成されていることを特徴とする。
【0060】
このように運動変換構造であれば、非常に簡易的な構造であるため、狭い作業空間であっても効率的に作業を行うことができる。また、グランドパッキン用治具に要する製造コストを抑えることができ、汎用性を高めることができる。
【0061】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記グランドパッキン引き抜き手段の前記係合部が棒状本体を有し、
前記棒状本体の一端部には、前記グランドパッキンに差し込まれて係合される螺旋状部が設けられていることを特徴とする。
【0062】
このように棒状本体の一端部に螺旋状部が設けられていれば、確実にグランドパッキンに食い込ませることができる構造であるため、確実に溝内からグランドパッキンを引き抜くことができる。
【0063】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記上下動手段は、
前記グランドパッキン挿入手段を溝外から溝内の方向に移動させるとともに溝内から溝外の方向に移動させ、さらに前記グランドパッキン引き抜き手段を溝外から溝内の方向に移動させる第1上下動手段と、
前記グランドパッキン引き抜き手段を溝内から溝外の方向に移動させる第2上下動手段と、から構成され、
前記第1上下動手段において、
前記雄ネジ部材または棒状本体の他端部を回動させる回動部を備え、
前記回動部を介して前記雄ネジ部材または前記棒状本体を回動させることで、前記グランドパッキン挿入手段を溝外から溝内の方向に移動させるとともに溝内から溝外の方向に移動させ、さらに前記グランドパッキン引き抜き手段を溝外から溝内の方向に移動させ、
前記第2上下動手段において、
前記立設雄ネジ部材に設けられた雌ネジ部材を回動させることで前記グランドパッキン引き抜き手段を溝内から溝外の方向に移動させるよう構成されていることを特徴とする。
【0064】
このように特に上下動手段を、第1上下動手段と第2上下動手段から構成すれば、非常に簡易的な構造であるため、グランドパッキン用治具を少ない構成部材で構成することができ、汎用性を高めることができるとともに、グランドパッキン用治具の製造コストを抑えることができる。
【0065】
さらに、直感的に使用方法が分かる構造であるため、誰でも簡単にグランドパッキン用治具を確実に用いることができる。
【0066】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記第1上下動手段の回動部は、電動工具を介して回動されるよう構成されていることを特徴とする。
このように第1上下動手段の回動部が、電動工具を介して回動されるよう構成されていれば、作業空間が狭くとも少ない動作範囲でグランドパッキン用治具を用いることができる。
【0067】
なお、第1上下動手段としては、例えば電動工具用に市販されているフレキシブルシャフトを用いると良い。
【0068】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記グランドパッキン挿入手段は、
前記グランドパッキンを前記溝内に挿入する際、前記溝内にグランドパッキンを入り易く案内する案内スロープ部を有することを特徴とする。
【0069】
このように案内スロープ部が設けられていれば、グランドパッキンに無理な力を加えることなく、またグランドパッキンを破損させることなく、確実に溝内にグランドパッキンを挿入させることができる。
【0070】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記所定部材に板状体が締結され、
前記固定手段が、
前記板状体に着脱自在に固定されていることを特徴とする。
【0071】
このように板状体を介して、所定部材に固定手段が固定されていれば、所定部材の形状が固定手段による固定に合わないような形状であったとしても、確実に板状体で固定手段を所定部材に固定することができる。
【0072】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記板状体が、複数の分割体から構成され、
前記複数の分割体は、隣接する一方側の分割体に嵌合凸部を備えるとともに、他方側の分割体に嵌合凹部を備え、前記嵌合凸部と嵌合凹部により嵌合されて成ることを特徴とする。
【0073】
このように板状体が嵌合凸部と嵌合凹部により嵌合されてなる複数の分割体から構成されていれば、所定部材に対して板状体を締結する際に、板状体の取付けがし易く、作業効率を高めることができる。
【0074】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記一方側の分割体に設けられた嵌合凸部があり溝形凸部であり、
前記他方側の分割体に設けられた嵌合凹部があり溝形凹部であることを特徴とする。
【0075】
このようにあり溝形凸部とあり溝形凹部であれば、分割体同士を嵌合させた際に、板状体の厚さ方向に直交する水平方向に力が加わっても、分割体同士が外れてしまうことがなく、確実に所定部材に固定手段を固定することができる。
【0076】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記所定部材に板状体が締結され、
前記板状体の一端部に、前記固定手段が着脱自在に固定され、
前記板状体の他端部に、前記グランドパッキンを前記溝内に挿入する際、前記溝内にグランドパッキンを入り易く案内する案内スロープ部が設けられていることを特徴とする。
【0077】
このように案内スロープ部が設けられていれば、グランドパッキンに無理な力を加えることなく、またグランドパッキンを破損させることなく、確実に溝内にグランドパッキンを挿入させることができる。
【0078】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記案内スロープ部の傾斜面において、
前記溝外から溝内の方向に対する前記傾斜面の傾斜角度が、5~30度の範囲内であることを特徴とする。
【0079】
このような傾斜角度であれば、グランドパッキンを無理なく確実に溝内に挿入することができる。
【0080】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記グランドパッキンを前記溝内に挿入する際、
前記押圧部と前記グランドパッキンとの間に押圧補助部材を備えることを特徴とする。
【0081】
このように押圧補助板部を備えていれば、押圧補助板部を介してグランドパッキンを広範囲に均等な力で押圧することができるため、確実にグランドパッキンを溝内へ挿入することができる。
【0082】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記押圧補助部材の少なくとも上面に磁石が設けられていることを特徴とする。
【0083】
このように押圧補助部材の上面に磁石が設けられていれば、押圧部に磁石を配設しておくか押圧部を磁性体で形成しておくことで、押圧補助部材と押圧部とを磁力で互いにくっつけ、確実に押圧補助部材を溝内から取り出すことができる。
【0084】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記押圧補助部材が、複数の円弧状分割体を組み合わせてなる周状であって、
前記円弧状分割体の隣合う分割面に磁石が配設されていることを特徴とする。
【0085】
このように円弧状分割体の隣合う分割面に磁石が配設されていれば、上下動手段でグランドパッキンを溝内に挿入し終えた際に、複数の円弧状分割体を一体的な押圧補助部材であるかのように取り扱うことができるので、押圧補助部材の溝内からの取り出しを、容易に行うことができる。
【0086】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記押圧補助部材が、複数の円弧状分割体を組み合わせてなる周状であって、
前記円弧状分割体の隣合う分割面の一方側には嵌合凹部が設けられ、他方側には嵌合凸部が設けられていることを特徴とする。
【0087】
このように嵌合凹部と嵌合凸部により嵌合される複数の円弧状分割体で押圧補助部材が構成されていても、確実にグランドパッキンの溝内への挿入を行うことができる。
【0088】
なお、嵌合凹部と嵌合凸部の形状は限定されるものではないが、特に押圧補助部材の厚さ方向に力が加わった際に、嵌合凹部と嵌合凸部による嵌合が解かれるような形状であれば、押圧補助部材により、グランドパッキンを溝内に挿入する際に、大きな力が必要な場合であっても、円弧状分割体の大きさの分だけ、グランドパッキンを溝内に押し込むようにすることができる。
【0089】
すなわち、いっぺんにグランドパッキンを溝内に押し込む場合よりも狭い範囲を複数回に分けてグランドパッキンを溝内に押し込むようにすることができ、この場合には大きな力を必要とせず、確実にグランドパッキンを溝内に押し込むことができる。
【0090】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記押圧部が、磁性体から成るまたは磁石を有することを特徴とする。
【0091】
このように押圧部が、磁性体から成るまたは磁石を有していれば、上下動手段でグランドパッキンを溝内に繰り返し挿入した際に、押圧部に押圧補助部材が磁力でくっつくため、押圧補助部材を溝内から取り出し易くすることができる。
【0092】
なお、押圧補助部材が複数の円弧状分割体を組み合わせてなる場合には、分割面に磁石を設けることで、例えば周状の一体物として押圧補助部材を取り扱うことができ、作業中に押圧補助部材がばらばらに脱落するようなことがなく、安全に作業をすることができる。さらに、押圧補助部材の下面にも磁石が設けられていれば、例えば押圧補助部材を重ねて使用した場合にも、一体的に押圧補助部材を取り扱うことができる。
【0093】
また、上下動手段の端部である押圧部は、磁性体で造るか、または押圧部に磁石を配設すれば、押圧補助部材と押圧部の磁力により互いがくっつくため、押圧補助部材を溝内から確実に取り出すことができる。
【0094】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記所定部材に設けられた溝内に挿入されたグランドパッキンは、
前記溝内に複数重ねられて多段状に挿入されていることを特徴とする。
【0095】
このように多段状にグランドパッキンが挿入されていても、本発明のグランドパッキン用治具が狭小環境での作動に適した構造であるため、グランドパッキンの溝内への挿入と、グランドパッキンの溝内からの引き抜きの両方を確実に行うことができる。
【0096】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記グランドパッキンが、断面角形に編組されたパッキンであることを特徴とする。
【0097】
このような構造を有するグランドパッキンであれば、所望のシール性能を確実に得ることができる。
【0098】
また本発明のグランドパッキン用治具は、
前記所定部材がスタフィングボックスであり、
前記溝が前記スタフィングボックス内の軸と前記スタフィングボックスとの間に設けられた空間であることを特徴とする。
【0099】
特にこのような箇所であれば、本発明のグランドパッキン用治具を好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0100】
本発明のグランドパッキン用治具によれば、グランドパッキン挿入手段とグランドパッキン引き抜き手段とを必要に応じて上下動手段に簡単に付け替えて使用する構造であり、しかも部品が少なく直感的に使用することができるため、設置がし易く誰でも簡単に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態におけるグランドパッキン用治具において、グランドパッキンを溝内に挿入している状態の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したグランドパッキン用治具の正面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示したグランドパッキン用治具の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態におけるグランドパッキン用治具において、溝内のグランドパッキンにグランドパッキン引き抜き手段を係合している状態(右側)と、グランドパッキンをグランドパッキン引き抜き手段で溝内から引き抜く状態(左側)の斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示したグランドパッキン用治具の正面図である。
【
図6】
図6は、
図4に示したグランドパッキン用治具の断面図である。
【
図7】
図7は、板状体の変形例について説明するための斜視図である。
【
図8】
図8は、円筒状治具について説明するための概略図である。
【
図10】
図10は、押圧補助部材の変形例について説明するための斜視図である。
【
図11】
図11は、押圧補助部材の変形例について説明するための斜視図である。
【
図12】
図12は、押圧補助部材の変形例について説明するための斜視図である。
【
図13】
図13は、押圧補助部材の変形例について説明するための斜視図である。
【
図14】
図14は、本発明のグランドパッキン用治具において、グランドパッキン引き抜き手段を説明するための説明図である。
【
図15】
図15は、本発明のグランドパッキン用治具において、グランドパッキン引き抜き手段の可撓性について説明するための説明図である。
【
図16】
図16は、本発明の第1の実施形態の変形例1におけるグランドパッキン用治具において、グランドパッキンを溝内に挿入している状態の斜視図である。
【
図19】
図19は、本発明の第1の実施形態の変形例1におけるグランドパッキン用治具において、溝内のグランドパッキンにグランドパッキン引き抜き手段を係合している状態(右側)と、グランドパッキンをグランドパッキン引き抜き手段で溝内から引き抜く状態(左側)の斜視図である。
【
図22】
図22は、本発明の第1の実施形態の変形例2におけるグランドパッキン用治具の斜視図である。
【
図23】
図23は、本発明の第1の実施形態の変形例2におけるグランドパッキン用治具の正面図である。
【
図24】
図24は、本発明の第2の実施形態におけるグランドパッキン用治具において、グランドパッキンを溝内に挿入している状態の斜視図である。
【
図27】
図27は、本発明の第2の実施形態におけるグランドパッキン用治具において、溝内のグランドパッキンにグランドパッキン引き抜き手段を係合している状態(右側)と、グランドパッキンをグランドパッキン引き抜き手段で溝内から引き抜く状態(左側)の斜視図である。
【
図30】
図30は、本発明の第3の実施形態におけるグランドパッキン用治具において、グランドパッキンを溝内に挿入している状態の斜視図である。
【
図33】
図33は、本発明の第3の実施形態におけるグランドパッキン用治具において、溝内のグランドパッキンにグランドパッキン引き抜き手段を係合している状態(右側)と、グランドパッキンをグランドパッキン引き抜き手段で溝内から引き抜く状態(左側)の斜視図である。
【
図36】
図36は、本発明の第3の実施形態の変形例におけるグランドパッキン用治具において、グランドパッキンを溝内に挿入している状態の斜視図である。
【
図39】
図39は、本発明の第3の実施形態の変形例におけるグランドパッキン用治具において、溝内のグランドパッキンにグランドパッキン引き抜き手段を係合している状態(右側)と、グランドパッキンをグランドパッキン引き抜き手段で溝内から引き抜く状態(左側)の斜視図である。
【
図42】
図42は、本発明の第4の実施形態におけるグランドパッキン用治具において、グランドパッキンを溝内に挿入している状態の斜視図である。
【
図45】
図45は、グランドパッキン挿入手段の正面図および底面図である。
【
図46】
図46は、本発明の第4の実施形態におけるグランドパッキン用治具において、溝内のグランドパッキンにグランドパッキン引き抜き手段を係合している状態の斜視図である。
【
図49】
図49は、グランドパッキン引き抜き手段の正面図および底面図である。
【
図50】
図50は、本発明の第4の実施形態の変形例におけるグランドパッキン用治具において、グランドパッキンを溝内に挿入している状態の斜視図である。
【
図53】
図53は、本発明の第4の実施形態の変形例におけるグランドパッキン用治具において、溝内のグランドパッキンにグランドパッキン引き抜き手段を係合している状態の斜視図である。
【
図56】
図56は、従来のグランドパッキン挿入手段を用いて、グランドパッキンを溝内に挿入する状態を示した斜視図である。
【
図57】
図57は、従来のグランドパッキン引き抜き手段を用いて、グランドパッキンを溝内から引き抜く状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0102】
以下、本発明の第1の実施形態から第4の実施形態について、図面に基づきより詳細に説明する。
【0103】
本発明のグランドパッキン用治具は、グランドパッキンを所定部材に設けられた溝内に挿入するとともに、所定部材の溝内に挿入されたグランドパッキンを溝内から引き抜くために用いられるものであり、誰でも簡単に操作することができ、狭い場所であっても作業がし易く、作業効率を高めることのできるものである。
【0104】
[第1の実施形態]
<<グランドパッキン用治具10>>
本発明の第1の実施形態におけるグランドパッキン用治具10は、
図1~
図6に示したように、所定部材30に着脱自在に固定される固定手段40と、この固定手段40から連続し、グランドパッキン挿入手段50を溝34外から溝34内の方向に移動(
図1~
図3)させるとともに、グランドパッキン引き抜き手段60を溝34外から溝34内の方向に移動させ、さらに溝34内から溝34外の方向に移動(
図4~
図6)させる上下動手段70と、上下動手段70にいずれか一方が着脱自在に接続されるグランドパッキン挿入手段50(
図1~
図3)またはグランドパッキン引き抜き手段60(
図4~
図6)と、を備えている。
【0105】
すなわち、本発明のグランドパッキン用治具10は、上下動手段70にグランドパッキン挿入手段50を接続した際には、
図1~
図3に示したように、上下動手段70でグランドパッキン挿入手段50を溝34外から溝34内の方向に移動させることができるようになっている。
【0106】
一方、上下動手段70にグランドパッキン引き抜き手段60を接続した際には、
図4~
図6に示したように、上下動手段70でグランドパッキン引き抜き手段60を溝34外から溝34内の方向に移動させ、さらに溝34内から溝34外の方向に移動させることができるようになっている。
【0107】
なお、グランドパッキン用治具10が用いられる所定部材30としては、グランドパッキン20が装着される如何なる部材であっても構わないが、具体例としてはスタフィングボックスを挙げることができる。そしてスタフィングボックス内の軸32とスタフィングボックスとの間に設けられた空間が溝34に相当する。
次に本発明のグランドパッキン用治具10を構成する各構成要素について説明する。
【0108】
<固定手段40>
固定手段40は、所定部材30に着脱自在に固定されるものであり、作業性を高める目的で、まず所定部材30のフランジ36の外周よりも一回り大きな板状体80を、所定部材3のフランジ36上に締結させ、この板状体80に断面略コ字状の固定本体部93を、締結部材44,44を介して締結させるようにすることが好ましい。
【0109】
締結部材44,44は、板状体80の周方向のどの位置でも固定本体部93を固定することができ、締め付けたり緩めたりを自在に行えるようなものであることが好ましい。
本実施形態では、
図1~
図6に示したように、左右に1つずつ、合計2つの固定手段40が用いられている。
【0110】
<板状体80>
固定手段40が取り付けられる板状体80は、特に形状が限定されるものではないが、取扱い性を高める目的で所定部材30のフランジ36よりも一回り大きく、ドーナッツを複数に分割したような形態をした複数の分割体から成るようにすることが好ましい。例えば
図1~
図6に示したような二つの分割体80a,80bから成る板状体80とすることが好ましい。
【0111】
なお、所定部材30のフランジ36には、必要に応じて立設雄ネジ部材12が複数(
図1~
図6では4箇所)設けられており、板状体80には、この立設雄ネジ部材12を回避するための貫通穴83が、立設雄ネジ部材12の位置と同位置に設けられている。
【0112】
二つの分割体80a,80bから成る板状体80は、単に分割体80aと分割体80bを並べるようにすれば良いが、板状体80の厚さ方向から板状体80に強い力が加わった際に位置ずれが生じそうな場合には、例えば
図7に示したように、分割体80aと分割体80bが互いに係合されて一体的に構成されるよう、互いの結合部分に凹部81aおよび凸部81bが設けられた板状体80とすることが好ましい。
【0113】
この凹部81aおよび凸部81bの形状については特に限定されるものではないが、両者が互いに簡単に分離してしまわないよう、ジグソーパズルの嵌め合いのような、あり溝状の凹部81aと逆テーパー状の凸部81bとすることが好ましい。
【0114】
このような板状体80は、所定部材30のフランジ36の上に設けられた立設雄ネジ部材12を貫通穴83内に通した後、この立設雄ネジ部材12に螺合する雌ネジ部材75を介して所定部材30のフランジ36の上面に固定されるが、板状体80に設けられた貫通穴83と立設雄ネジ部材12との間に若干の余裕があるため、場合によっては板状体80が貫通穴83と立設雄ネジ部材12との間のクリアランスの分だけ片側に寄り、溝34の位置と板状体80の軸用穴77の位置とがずれを生じてしまう場合がある。このように溝34と板状体80とで、上下に位置ずれを生じてしまうと、溝34の一部を板状体80が塞いでしまうことになるため、グランドパッキン20を溝34内に挿入することが困難となる。
【0115】
このため、
図8に示したように、板状体80を所定部材30のフランジ36の上に配設した後、板状体80の内側の軸用穴77内に、別途用意した断面楔型の円筒状治具85を挿入し、溝34の位置と板状体80の内側の軸用穴77の位置とを上下に合わせた状態で、立設雄ネジ部材12に雌ネジ部材75を螺合させて、板状体80をフランジ36の上に固定するようにすることが好ましい。板状体80をフランジ36の上に固定した後は、円筒状治具85を取り外し保管すると良い。
【0116】
このような円筒状治具85はどのようにして構成しても良いが、例えば
図9に示したように、左右の分割体85a,85bを互いの凹部73aおよび凸部73bで着脱自在に嵌合させてなるように構成することが好ましい。
【0117】
なお板状体80は、
図3に円部を拡大して示したように、所定部材30の溝34側に位置する端部に、案内スロープ部82が設けられていることが好ましい。案内スロープ部82は、後述するグランドパッキン20を溝34内に挿入する際、溝34内にグランドパッキン20を入り易く案内するために設けられた箇所である。
【0118】
このような案内スロープ部82の傾斜面は、溝34外から溝34内の方向に対する傾斜面の傾斜角度θが、5~30度の範囲内、好ましくは5~15度の範囲内であることが好ましい。このような角度であれば、グランドパッキン20を無理なく確実に溝34内に挿入することができる。
【0119】
なお案内スロープ部82は、板状体80とは別の板状体(図示せず)の端部に設けても良く、その場合には、例えば板状体80と同様な形状の板状体(図示せず)を別途用意し、その板状体(図示せず)の溝34側に位置する端部に案内スロープ部82を設けるようにし、これを板状体80の上に配設するようにすれば良い。
【0120】
<上下動手段70>
断面略コ字状の固定手段40から連続するように設けられた上下動手段70は、第1の実施形態においては、
図1~
図6に示したように、シーソー本体72を有する「略シーソー状構造」を有している。
【0121】
具体的には、固定手段40の固定本体部93から延びる支柱42に、略直線状のシーソー本体72の中央部に位置する支点部分74が回動可能に軸支され、シーソー本体72の一端部(溝34側)に位置する作用点部分76に、グランドパッキン挿入手段50(
図1~
図3)またはグランドパッキン引き抜き手段60(
図4~
図6)のいずれか一方が設けられている。
【0122】
そして、シーソー本体72の一端部(溝34側)に位置する作用点部分76にグランドパッキン挿入手段50(
図1~
図3)が位置している際には、シーソー本体72の他端部に位置する力点部分78を上方に上げることで、グランドパッキン挿入手段50(
図1~
図3)を溝34外から溝34内の方向に移動させることができる。
【0123】
一方、シーソー本体72を支点部分74で左右反転させ、この状態で切り欠き部79が設けられたシーソー本体72の溝34側とは逆の力点部分78を上方に上げることで、グランドパッキン引き抜き手段60(
図4~
図6)を、溝34外から溝34内の方向に移動させ、さらに力点部分78を下方に下げることで、グランドパッキン引き抜き手段60(
図4~
図6)を、溝34内から溝34外の方向に移動させることができる。
【0124】
なお、シーソー本体72の略中央に位置する支点部分74には、シーソー本体72の延設方向に細長い細長貫通穴46が設けられているため、この細長貫通穴46の形成範囲内で、固定手段40に対するシーソー本体72の位置を前後に移動させることで、シーソー本体72を左右反転させることができるようになっている。
【0125】
<グランドパッキン挿入手段50>
グランドパッキン挿入手段50は、
図1~
図3に示したように、グランドパッキン20が溝34内に挿入されていない場合に上下動手段70の溝34側に位置する作用点部分76に接続され、溝34側とは逆の力点部分78を上方に上げることで、グランドパッキン20を溝34外から溝34内に向けて押圧し溝34内に挿入する押圧部52を有している。
【0126】
この押圧部52を介して、所定部材30の溝34内に、グランドパッキン20が挿入されるのであるが、押圧部52単体では、グランドパッキン20の一部しか押圧できないため、均等かつ広範囲を効率的に押圧する目的で、押圧部52とグランドパッキン20との間に、押圧補助部材58を備えることが好ましい。
【0127】
押圧補助部材58は、
図1~
図3に示したように、グランドパッキン20を分割したような円弧状とし、概ねグランドパッキン20の周方向の1/2~1/4程度の大きさであることが好ましいが、特にこの形状に限定されるものではなく、グランドパッキン20と同様のドーナッツ状としても良いものである。
【0128】
なお、このような押圧補助部材58としては、繰り返し押圧部52で押圧されるため圧縮変形が生じ難く、また軸32を傷付けることが無いよう、プラスチックなどの樹脂材料やアルミニウムなどの材質から成ることが好ましい。また
図10(a)に示したように、押圧補助部材58の少なくとも上面58aには磁石19を配設しておくことが好ましい。さらに
図10(b)に示したように、押圧補助部材58が分割されている場合には上面58aに加え、さらに分割面58bにも磁石19を配設しておくことが好ましい。
【0129】
このように磁石19を配設しておけば、押圧補助部材58が分割されていても、上下動手段70でグランドパッキン20を溝34内に挿入し終えた際に、押圧補助部材58を溝34内から取り出し易くすることができる。なお、押圧補助部材58に磁石19を設けた場合には、押圧部52にも磁石19を配設しておく、または押圧補助部材58(または押圧部52)そのものを磁性体で形成しておくことで、押圧補助部材58と押圧部52を磁力で互いにくっつけ、確実に押圧補助部材58を溝34内から取り出すことができる。
【0130】
さらに
図11に示したように、押圧補助部材58の上面58aおよび下面58cの両方に磁石19を配設すれば、押圧補助部材58を多段状にして用いる場合に、多段状の押圧補助部材58を一体的に取り扱うことができ、グランドパッキン20を溝34内に挿入する際の作業効率を高めることができる。
【0131】
押圧補助部材58の他の形態としては、
図12(a)~
図12(d)に示したように、左右二つの分割体59a,59bから成り、外側面に押圧補助部材58が溝34内に挿入された際の挿入方向および挿入長さを視認し易くするための矢印61aや目盛り61bが付されたものも挙げられる。さらに、二つの分割体59a,59bの内側面に、内径寸法および外径寸法61cを記しておいても良いものである。
【0132】
なお、二つの分割体59a,59bの嵌合形状について特に限定されるものではないが、押圧補助部材58が厚さ方向に押圧された際に、簡単に左右方向に分離してしまわないことが求められる場合には、
図12(a)または
図12(c)に示したような暑さ方向で嵌合の着脱がなされる形状とすることが好ましい。
【0133】
このような厚さ方向で着脱がなされる形状の押圧補助部材58の場合には、グランドパッキン挿入手段50で、溝34の外側から内側に向かって押圧補助部材58が押圧された際に、一方側の分割体59a(59b)のみを下方に移動させることができる。
【0134】
すなわち、押圧補助部材58がドーナッツ状である場合、グランドパッキン20を溝34内に挿入する際に、押圧補助部材58を溝34の外側から内側に向かって押圧するのに相当な力を要する場合がある。しかしながら、分割体59a,59bが厚さ方向に移動可能となる着脱構造であれば、一度に押圧するグランドパッキン20の押圧面積を狭めることができるため、押圧補助部材58がドーナッツ状である場合と比べて少ない力でグランドパッキン20を溝34内に挿入することができる。
【0135】
なお、押圧補助部材58の分割数や分割体同士の嵌合構造は特に限定されるものではなく、例えば
図13に示したように、4つの分割体59a,59b,59c,59dから成るようにすることもできる。このようにすれば、分割数の分だけ、一度に押圧するグランドパッキン20の押圧面積を狭めることができる。このため現場の状況(例えば所定部材30のサイズ等)に合わせ、押圧補助部材58の分割数や分割体同士の嵌合構造を設定することが好ましい。
【0136】
<グランドパッキン20>
所定部材30に設けられた溝34内に挿入されるグランドパッキン20は、それ自体は環状ではなく紐状であり、断面角形に編組されたパッキンである。この断面角形に編組されたパッキンは、溝34の外径に合わせた長さで切断され、環状となるように形が整えられてから、端部同士を突き合わせた状態で溝34内に挿入される。なお、環状となるように溝34内に挿入されるグランドパッキン20は、
図3に示したように、溝34内に複数重ねられて多段状に挿入される。
【0137】
<グランドパッキン引き抜き手段60>
グランドパッキン引き抜き手段60は、
図4~
図6,
図14~
図15に示したように、既に溝34内に挿入されているグランドパッキン20を、溝34内から溝34外へ引き抜く際に、上下動手段70の溝34側の端部に接続して用いられるものである。
【0138】
具体的には、上下動手段70のシーソー本体72の支点部分74を中心に、押圧部52が設けられた一端部と、反対側に位置する切り欠き部79が設けられた他端部とを反転させて入れ替えた状態とし、この状態で、
図4~
図6に示したように、シーソー本体72の作用点部分76(溝34側)に位置する切り欠き部79に、グランドパッキン引き抜き手段60が接続される。
【0139】
なお、グランドパッキン引き抜き手段60は、上下動手段70を介してグランドパッキン引き抜き手段60を溝34内のグランドパッキン20に係合させる際と、上下動手段70を介してグランドパッキン引き抜き手段60を溝34外へ引き抜く際の両方で用いられる。
【0140】
このため説明の便宜上、
図4~
図6において右側に位置するグランドパッキン引き抜き手段60および上下動手段70を、グランドパッキン引き抜き手段60を溝34内のグランドパッキンへ係合させる際の状態とし、
図4~
図6の左側に位置するグランドパッキン引き抜き手段60および上下動手段70を、グランドパッキン引き抜き手段60でグランドパッキン20を溝34外へ引き抜く際の状態としている。
【0141】
グランドパッキン引き抜き手段60は、
図6および
図14(a)に示したように、棒状本体64を有し、この棒状本体64の一端部(下端部)には、グランドパッキン20に差し込まれて係合される螺旋状部66が設けられ、棒状本体64の他端部(上端側)には、ハンドル68が設けられている。
【0142】
このようなグランドパッキン引き抜き手段60は、ハンドル68を回して溝34内のグランドパッキン20に螺旋状部66を係合させるようにすれば良いが、この時、棒状本体64の延設方向に間隔を空けて設けられた複数の突起部63のいずれかに、シーソー本体72の切り欠き部79を引っ掛け、この状態でシーソー本体72の溝34側とは逆の力点部分78を上方へ持ち上げ、グランドパッキン20へのグランドパッキン引き抜き手段60の螺旋状部66の係合を補助するようにすれば、螺旋状部66が真直ぐグランドパッキン20に係合されるようになり、確実にグランドパッキン20にグランドパッキン引き抜き手段60の螺旋状部66を係合させることができる。
【0143】
なおグランドパッキン引き抜き手段60を構成する棒状本体64や突起部63として、構造が特に限定されるものではないが、例えば棒状本体64を金属製ロッドとし、この金属製ロッドに金属片をカシメて突起部63を設けるようにすれば良い。
【0144】
このように金属製ロッドに金属片をカシメる際、金属片そのものをナットのように、スパナ(レンチ)などの汎用工具で回転できるような形状としておけば、ハンドル68を用いなくても、金属片を汎用工具で回転させることで棒状本体64を回転させるようにすることができ、部品点数を減らすことができる。
【0145】
また他にも棒状本体64を外側部に雄ネジが設けられたネジロッドとし、突起部63をネジロッドに螺合される雌ネジを有するナットとすれば、棒状本体64上の任意の箇所に突起部63を設けることができ好ましい。
【0146】
また、
図14(a)に示したグランドパッキン引き抜き手段60に替え、
図14(b)に示したグランドパッキン引き抜き手段60のようにハンドル68を用いることなく、代わりに把持部69を設け、この把持部69を電動ドライバー(図示せず)等の電動工具で把持して回転させるようにしても良い。
【0147】
さらにグランドパッキン引き抜き手段60は、
図15(a)および
図15(b)に示したように、棒状本体64が可撓性を有することが好ましく、このように可撓性を有していれば、作業し辛い狭小環境であっても、確実に溝34内のグランドパッキン20にグランドパッキン引き抜き手段60の螺旋状部66を係合させることができる。
【0148】
そして、グランドパッキン引き抜き手段60を溝34内のグランドパッキン20に係合させた後、今度は
図4~
図6の左側に示した上下動手段70のように、突起部63の下側にシーソー本体72の切り欠き部79を引っ掛け、シーソー本体72の溝34側とは逆側の力点部分78を下方に下げることで、グランドパッキン引き抜き手段60を溝34内から溝34外の方向(上方)に移動させ、グランドパッキン引き抜き手段60の螺旋状部66に係合されたグランドパッキン20を溝34内から溝34外へ引き抜くことができる。
【0149】
このような動作手順を溝34内に挿入されたグランドパッキン20の段数分だけ複数回繰り返すことで、全てのグランドパッキン20を溝34内から溝34外へ引き抜くことができる。
【0150】
以上のように、本発明のグランドパッキン用治具10は、グランドパッキン挿入手段50とグランドパッキン引き抜き手段60とを必要に応じて上下動手段70のシーソー本体72の溝34側の作用点部分76に付け替えるだけで、グランドパッキン20の溝34内への挿入と、グランドパッキン20の溝34内からの引き抜きの両方を行うことができる。また、操作方法が分かりやすい構造であるため、誰でも直感的かつ確実に使用することができる。
【0151】
[第1の実施形態の変形例1]
次に本発明のグランドパッキン用治具10の第1の実施形態の変形例1について説明する。
【0152】
図16~
図21は、本発明の第1の実施形態の変形例1におけるグランドパッキン用治具10である。
【0153】
図16~
図21に示したグランドパッキン用治具10は、基本的には、
図1~
図15に示した第1の実施形態のグランドパッキン用治具10と同じ構成であるので、同じ構成部材には、同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略し、相違点について説明する。
【0154】
第1の実施形態の変形例1におけるグランドパッキン用治具10は、
図16~
図18に示したように、上下動手段70の作用点部分76に接続されたグランドパッキン挿入手段50の形状が第1の実施形態と異なっている。さらに、グランドパッキン挿入手段50とグランドパッキン引き抜き手段60とを付け替える際に、シーソー本体72の作用点部分76と力点部分78を、支点部分74で左右反転させない構造である点でも、第1の実施形態と異なっている。
【0155】
具体的には、グランドパッキン挿入手段50が横長円柱状の円柱本体部15を備え、グランドパッキン20との当接面は横(水平)方向に幅広で、かつ当接面は曲面部であり、この曲面部で押圧補助部材58に接するようになっている。なお、押圧補助部材58を用いない場合には、この曲面部でグランドパッキン20に接することとなるため、グランドパッキン20をグランドパッキン挿入手段50で破損してしまうことがなく、安全に溝34内にグランドパッキン20を挿入することができる。
【0156】
なお、円柱本体部15の中央に位置決めローラー17を設けても良く、このようにすれば、所定部材30の軸32に対して、この位置決めローラー17を当接させながら、上下動手段70を用いることができ、円柱本体部15で軸32を傷つけてしまうようなことを確実に防止することができる。
【0157】
ここでグランドパッキン挿入手段50と、シーソー本体72の作用点部分76となる一端部とは、螺合(雄ネジ部材と雌ネジ部材による螺子結合)するようになっている。そして
図19~
図21に示したように、グランドパッキン引き抜き手段60を用いる際には、シーソー本体72の作用点部分76となる一端部からグランドパッキン挿入手段50を取り外し、代わりにグランドパッキン引き抜き手段60を螺合させるようにする。
【0158】
なおこのグランドパッキン引き抜き手段60を螺合させる際には、切り欠き部79に相当する部分を別体として用意しておき、これをシーソー本体72の作用点部分76となる一端部に螺合させるようにすれば良い。すなわちグランドパッキン引き抜き手段60と、シーソー本体72の作用点部分76となる一端部においても、上記したのと同様、螺合(雄ネジ部材と雌ネジ部材による螺子結合)するよう構成することにより、グランドパッキン挿入手段50とグランドパッキン引き抜き手段60の交互使用を容易に行うことができる。
【0159】
[第1の実施形態の変形例2]
次に本発明のグランドパッキン用治具10の第1の実施形態の変形例2について説明する。
【0160】
図22および
図23は、本発明の第1の実施形態の変形例2におけるグランドパッキン用治具10である。
【0161】
図22および
図23に示したグランドパッキン用治具10は、基本的には、
図16~
図21に示した第1の実施形態の変形例1のグランドパッキン用治具10と同じ構成であるので、同じ構成部材には、同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略し、相違点について説明する。
【0162】
第1の実施形態の変形例2におけるグランドパッキン用治具10は、
図22および
図23に示したように、まず上下動手段70のシーソー本体72が略く字状である点で、第1の実施形態の変形例1と異なっている。
【0163】
また、グランドパッキン挿入手段50の円柱本体部15と、シーソー本体72の端部とが、凹凸嵌合(嵌合凹部と嵌合凸部によって嵌合)するよう構成され、グランドパッキン引き抜き手段60の切り欠き部79と、シーソー本体72の端部とが、凹凸嵌合(嵌合凹部と嵌合凸部によって嵌合)するよう構成されている点でも第1の実施形態の変形例1と異なっている。
【0164】
さらに、固定手段40の締結部材44が、一つである点でも第1の実施形態の変形例1と異なっている。
【0165】
シーソー本体72が第1の実施形態の変形例1の場合のように、略直線状であると、特に平坦面31からの突設量が少ない所定部材30の場合、平坦面31にシーソー本体72の力点部分78が接触してしまう場合がある。しかしながら、シーソー本体72を略く字状とすれば、平坦面31にシーソー本体72の力点部分78が接触してしまうことを回避することができ、確実にグランドパッキン20を溝34内に挿入させることができるとともに、グランドパッキン20を溝34内から引き抜くことができる。
【0166】
なお、このような略く字状のシーソー本体72の力点部分78には、本体延長部材87が着脱自在に設けられていることが好ましい。このように本体延長部材87が設けられていれば、本体延長部材87によって、支点部分74から力点部分78までの距離を広げることができ、溝34内にグランドパッキン20を挿入させ、溝34内から引き抜く際に大きな力が必要な場合であっても、確実に溝34内にグランドパッキン20を挿入させ、溝34内から引き抜くことができる。
【0167】
さらに、嵌合凹部と嵌合凸部による凹凸嵌合であれば、着脱が容易であるため、例えばシーソー本体72の端部に対し、円柱本体部15と切り欠き部79とを交互に付け替える際に、効率良く付け替えを行うことができる。
また、固定手段40の締結部材44を一つとすれば、固定手段40の着脱を素早く行うことができる。
【0168】
[第2の実施形態]
次に本発明のグランドパッキン用治具10の第2の実施形態について説明する。
【0169】
図24~
図29は、本発明の第2の実施形態におけるグランドパッキン用治具10である。
【0170】
図24~
図29に示したグランドパッキン用治具10は、基本的には、
図1~
図15に示した第1の実施形態のグランドパッキン用治具10と同じ構成であるので、同じ構成部材には、同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略し、相違点について説明する。
【0171】
また、第1の実施形態と同様、グランドパッキン引き抜き手段60は、上下動手段70を介してグランドパッキン引き抜き手段60を溝34内のグランドパッキン20に係合させる際と、上下動手段70を介してグランドパッキン引き抜き手段60を溝34外へ引き抜く際の両方が用いられる。このため説明の便宜上、
図27~
図29において右側に位置するグランドパッキン引き抜き手段60および上下動手段70を、グランドパッキン引き抜き手段60をグランドパッキン20に係合させる際の状態とし、
図27~
図29の左側に位置するグランドパッキン引き抜き手段60および上下動手段70を、グランドパッキン引き抜き手段60でグランドパッキン20を溝34外へ引き抜く際の状態としている。
【0172】
本発明の第2の実施形態におけるグランドパッキン用治具10は、
図24~
図29に示したように、上下動手段70が、ラック部材84とピニオン部材86を有する「略ラックアンドピニオン構造」である点で、第1の実施形態におけるグランドパッキン用治具10と異なっている。
【0173】
略ラックアンドピニオン構造の上下動手段70は、垂直方向に延設されたラック部材84の下端部に支柱42を介して固定手段40が接続され、ピニオン部材86にはグランドパッキン挿入手段50(
図24~
図26)またはグランドパッキン引き抜き手段60(
図27~
図29)のいずれか一方が着脱自在に接続されている。
【0174】
まず、ピニオン部材86にグランドパッキン挿入手段50(
図24~
図26)が接続された際には、ピニオン部材86を作動させて、ラック部材84上をピニオン部材86が垂直方向に移動することで、グランドパッキン挿入手段50を溝34外から溝34内の方向(下方)に移動させることができる。
【0175】
ここでピニオン部材86の作動は、何を用いても構わないものであるが、例えばラチェットレンチ88によって行うようにすれば、狭い作業空間の限られた作動範囲においてピニオン部材86の垂直方向への移動を行うことができ好ましい。
【0176】
一方、ピニオン部材86からグランドパッキン挿入手段50を取り外して、代わりにピニオン部材86に切り欠き部89を接続し、
図27~
図29の右側に示したように、ピニオン部材86の切り欠き部89をグランドパッキン引き抜き手段60の突起部63に引っ掛け、ラチェットレンチ88を回動させてピニオン部材86を下方に下げ、グランドパッキン引き抜き手段60を溝34外から溝34内の方向(下方)に移動させながら、ハンドル68を回すことで、螺旋状部66をグランドパッキン20に真直ぐ係合させることができる。
【0177】
そして、グランドパッキン引き抜き手段60を溝34内のグランドパッキン20に係合させた後、今度は
図27~
図29の左側に示した上下動手段70のように、突起部63の下側にピニオン部材86の切り欠き部89を引っ掛け、ラチェットレンチ88を回動させてピニオン部材86を上方に移動させることで、グランドパッキン引き抜き手段60を溝34内から溝34外の方向(上方)に移動させ、螺旋状部66に係合されたグランドパッキン20をグランドパッキン引き抜き手段60とともに溝34内から溝34外へ引き抜くことができる。
【0178】
このような動作手順を溝34内に挿入されたグランドパッキン20の段数分だけ複数回繰り返すことで、全てのグランドパッキン20を溝34内から溝34外へ引き抜くことができる。
【0179】
[第3の実施形態]
図30~
図35は、本発明の第3の実施形態におけるグランドパッキン用治具10である。
【0180】
図30~
図35に示したグランドパッキン用治具10は、基本的には、
図1~
図15に示した第1の実施形態のグランドパッキン用治具10と同じ構成であるので、同じ構成部材には、同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略し、相違点について説明する。
【0181】
また、第1の実施形態と同様、グランドパッキン引き抜き手段60は、上下動手段70を介してグランドパッキン引き抜き手段60を溝34内のグランドパッキン20に係合させる際と、上下動手段70を介してグランドパッキン引き抜き手段60を溝34外へ引き抜く際の両方で用いられる。このため説明の便宜上、
図33~
図35において右側に位置するグランドパッキン引き抜き手段60および上下動手段70を、グランドパッキン引き抜き手段60を溝34内のグランドパッキン20へ係合させる際の状態とし、
図33~
図35の左側に位置するグランドパッキン引き抜き手段60および上下動手段70を、グランドパッキン引き抜き手段60でグランドパッキン20を溝34内から溝34外へ引き抜く際の状態としている。
【0182】
本発明の第3の実施形態におけるグランドパッキン用治具10は、
図30~
図35に示したように、上下動手段70が、レバー部材90とカム状部材92を用いた「略カムレバー構造」である点で、第1の実施形態におけるグランドパッキン用治具10と異なっている。
【0183】
略カムレバー構造の上下動手段70は、レバー部材90を保持する保持部91を備え、この保持部91の下端部に固定手段40が接続されている。
【0184】
そして、レバー部材90の一端部に設けられたカム状部材92にグランドパッキン挿入手段50(
図30~
図32)またはグランドパッキン引き抜き手段60(
図33~
図35)のいずれか一方が着脱自在に接続されている。
【0185】
そして、まず上下動手段70のカム状部材92にグランドパッキン挿入手段50(
図30~
図32)が接続された際には、レバー部材90を下方に倒し、レバー部材90に連結されたカム状部材92が下方に移動することで、グランドパッキン挿入手段50を溝34外から溝34内の方向(下方)に移動させ、押圧部52および押圧補助部材58を介してグランドパッキン20を溝34内に挿入することができる。
【0186】
一方、上下動手段70のカム状部材92にグランドパッキン引き抜き手段60が接続された際には、
図33~
図35の右側に示したように、まずカム状部材92の下端の切り欠き部97をグランドパッキン引き抜き手段60の突起部63の上側に引っ掛け、レバー部材90を下方に倒し、グランドパッキン引き抜き手段60を溝34外から溝34内の方向(下方)に移動させながら、ハンドル68を回すことで、螺旋状部66をグランドパッキン20に真直ぐ係合させることができる。
【0187】
そして、グランドパッキン引き抜き手段60を溝34内のグランドパッキン20に係合させた後、今度は
図33~
図35の左側に示した上下動手段70のように、突起部63の下側にカム状部材92の切り欠き部97を引っ掛け、レバー部材90を上方に持ち上げることで、グランドパッキン引き抜き手段60を溝34内から溝34外の方向(上方)に移動させ、螺旋状部66に係合されたグランドパッキン20を、グランドパッキン引き抜き手段60とともに溝34内から溝34外へ引き抜くことができる。
【0188】
このような動作手順を溝34内に挿入されたグランドパッキン20の段数分だけ複数回繰り返すことで、全てのグランドパッキン20を溝34内から溝34外へ引き抜くことができる。
【0189】
[第3の実施形態の変形例]
次に本発明のグランドパッキン用治具10の第3の実施形態の変形例について説明する。
【0190】
図36~
図41は、本発明の第3の実施形態の変形例におけるグランドパッキン用治具10である。
【0191】
図36~
図41に示したグランドパッキン用治具10は、基本的には、
図30~
図35に示した第3の実施形態のグランドパッキン用治具10と同じ構成であるので、同じ構成部材には、同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略し、相違点について説明する。
【0192】
第3の実施形態の変形例におけるグランドパッキン用治具10は、
図36~
図41に示したように、固定手段40に、溝34に対する上下動手段70の前後方向の位置を調整するための位置調整手段23が設けられている点、および上下動手段70の動作をラチェットレンチ88で行う点で第3の実施形態と異なっている。
【0193】
このように位置調整手段23を有することにより、固定手段40と溝34との間の距離を調整することができ、本グランドパッキン用治具10を用いる現場環境が異なっていても、確実にグランドパッキン用治具10を用いることができる。
【0194】
さらにラチェットレンチ88であれば、第2の実施形態で説明したのと同様に、狭い作業空間内においても、本グランドパッキン用治具10を確実に用いることができる。
【0195】
[第4の実施形態]
図42~
図49は、本発明の第4の実施形態におけるグランドパッキン用治具10である。
【0196】
図42~
図49に示したグランドパッキン用治具10は、基本的には、
図1~
図15に示した第1の実施形態のグランドパッキン用治具10と同じ構成であるので、同じ構成部材には、同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略し、相違点について説明する。
【0197】
本発明の第4の実施形態におけるグランドパッキン用治具10は、
図42~
図49に示したように、上下動手段70が、回転運動を直線運動に変換する「運動変換構造」である点で、第1の実施形態におけるグランドパッキン用治具10と異なっている。さらに、押圧補助部材58が、グランドパッキン20上に周状の形態で設けられている点でも、第1の実施形態におけるグランドパッキン用治具10と異なっている。
【0198】
具体的には、所定部材30に固定手段40が接続され、この固定手段40は、所定部材30から立設された立設雄ネジ部材12と、この立設雄ネジ部材12を貫通し、立設雄ネジ部材12に螺合された雌ネジ部材25を介して所定部材30に固定され、内周壁に雌ネジ部94が設けられた略ドーナッツ状の固定本体部93と、を備えている。
【0199】
さらにグランドパッキン挿入手段50およびグランドパッキン引き抜き手段60は、いずれも固定本体部93の雌ネジ部94に螺合する雄ネジ部96,24を外周壁に有する略筒状の筒状本体部95,22を備えている。なお、略筒状の筒状本体部95,22はどのようにして構成しても構わないが、例えば二つの分割体95a,95b(22a,22b)を左右組み合わせて成るように構成することが好ましい。このような分割体95a,95b(22a,22b)とすることで、固定本体部93の雌ネジ部94に対し、筒状本体部95,22は若干の遊びを有した状態で螺合させることができる。
【0200】
そして、溝34内にグランドパッキン20を挿入する際には、固定本体部93の雌ネジ部94に
図45(a)および
図45(b)に示したグランドパッキン挿入手段50の筒状本体部95の雄ネジ部96を着脱自在に螺合させ、さらに筒状本体部95のハンドル98を介してグランドパッキン挿入手段50を回転させることで、グランドパッキン挿入手段50を溝34外から溝34内の方向(下方)に移動させ、グランドパッキン20を押圧部52および押圧補助部材58で溝34内に挿入することができる。
【0201】
ここでは押圧補助部材58が周状に設けられているため、グランドパッキン20の全面を押圧補助部材58全体で溝34内に向かって均等に押圧することができる。なお、周状の押圧補助部材58はどのようにして構成されても良く、例えば一体的に周状に設けられた押圧補助部材58や
図10(b),
図12a~
図12(d),
図13に示したような複数の分割体を組み合わせて周状に設けられた押圧補助部材58を用いることができる。
【0202】
特に複数の分割体を組み合わせて周状に設けられた押圧補助部材58とした場合には、所定部材30やグランドパッキン挿入手段50などを分解することなく、グランドパッキン20上に押圧補助部材58を設置することができ、作業効率を高めることができる。
【0203】
一方、溝34内のグランドパッキン20を溝34外へ引き抜く際には、
図49(a)および
図49(b)に示したグランドパッキン引き抜き手段60の筒状本体部22の雄ネジ部24を、
図46~
図48に示した固定本体部93の雌ネジ部94に螺合させ、筒状本体部22を回転させていくことで、筒状本体部22の下端に設けられた、返し付き係合爪26をグランドパッキン20に係合させる。なお、返し付き係合爪26には返しが付いており、一度係合するとグランドパッキン20から簡単には外れないようになっている。
【0204】
そして、筒状本体部22のハンドル28を先ほどとは逆方向に回転させていくことで、返し付き係合爪26にグランドパッキン20が係合されたまま、グランドパッキン20を溝34内から引き抜くことができる。
【0205】
なお、筒状本体部95,22に設けられたハンドル98,28は、外側壁の略上端部に着脱自在に設けられていることが好ましい。
【0206】
このように、ハンドル98,28が着脱自在に設けられていれば、小さな力で確実に筒状本体部95,22を上下動させることができる。また、ハンドル98,28を回す際に、ハンドル98,28が既存の部材(例えば所定部材30に立設された立設雄ネジ部材12)に当たってしまうような場合でも、着脱自在なハンドル98,28であれば、既存の部材(例えば所定部材30に立設された立設雄ネジ部材12)を避けてハンドル98,28の回転を維持することができる。
【0207】
また、ハンドル98,28が設けられる箇所は、特に限定されるものではなく、例えば筒状本体部95,22の略上端部と下端部のいずれか一方、または両方などに設けることができる。
【0208】
なお、
図49に示したグランドパッキン引き抜き手段60とは別の手段で、溝34内からグランドパッキン20を引き抜くように構成することもできる。
【0209】
すなわち、
図46に示したように、立設雄ネジ部材12に固定本体部93を固定している雌ネジ部材25を回転させて、固定本体部93を上方に真直ぐ移動させることにより、
図49に示したグランドパッキン引き抜き手段60は、返し付き係合爪26にグランドパッキン20が係合されたまま上方に移動され、グランドパッキン20を溝34内から溝34外へ引き抜くことができる。
【0210】
ここで本実施形態では、立設雄ネジ部材12を2本有するため、立設雄ネジ部材12毎に各2箇所(合計4つ)の雌ネジ部材25を回転させることで、グランドパッキン20を真直ぐ溝34内から溝34外へ引き抜くことができる。なお立設雄ネジ部材12の本数は限定されるものではなく、所定部材30のサイズなどに応じて適宜設けられる本数が異なる。したがって、立設雄ネジ部材12の本数分、各2箇所(合計は立設雄ネジ部材12の本数分×2)の雌ネジ部材25を回転させ、固定本体部93の雌ネジ部94に筒状本体部22の雄ネジ部24を螺合させた状態で固定本体部93を上方に移動させれば、返し付き係合爪26にグランドパッキン20が係合された状態で、グランドパッキン20を溝34内から溝34外へ引き抜くことができる。
【0211】
すなわちこのように構成した場合、グランドパッキン20を溝34内から溝34外へ引き抜く際には、筒状本体部22を回す必要がないため、ハンドル28を用いなくて良く、特に狭い作業空間における作業に好適である。
【0212】
このように雌ネジ部材25の回動により、溝34内からグランドパッキン20を引き抜く場合、この雌ネジ部材25そのものが上下動手段70となる。
【0213】
第4の実施形態(
図42~
図49)においては、説明の便宜上、固定本体部93とグランドパッキン挿入手段50との係合においても上下動手段70を有するため、この固定本体部93に対する筒状本体部95,22の回転における上下動手段70を第1上下動手段70aとし、雌ネジ部材25の回転における上下動手段70を第2上下動手段70bとする。
【0214】
[第4の実施形態の変形例]
次に本発明のグランドパッキン用治具10の第4の実施形態の変形例について説明する。
【0215】
図50~
図55は、本発明の第4の実施形態の変形例におけるグランドパッキン用治具10である。
【0216】
図50~
図55に示したグランドパッキン用治具10は、基本的には、
図42~
図49に示した第4の実施形態のグランドパッキン用治具10と同じ構成であるので、同じ構成部材には、同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略し、相違点について説明する。
【0217】
第4の実施形態の変形例におけるグランドパッキン用治具10は、
図50~
図55に示したように、上下動手段70が、所定部材30から立設された立設雄ネジ部材12と、この立設雄ネジ部材12を貫通し、立設雄ネジ部材12に螺合された雌ネジ部材25を介して所定部材30に固定された略ドーナッツ状の固定本体部93を備えている。
【0218】
さらに固定本体部93は、溝34の直上に位置する箇所に、固定本体部93を貫通する複数の貫通雌ネジ部41が設けられ、この貫通雌ネジ部41には、複数の雄ネジ部材43が螺合されている。そして雄ネジ部材43に上下動手段70を接続して、雄ネジ部材43を回動させることで、グランドパッキン挿入手段50を溝外から溝内の方向に移動させ、グランドパッキン20が溝内に挿入されるよう構成されている点で、第4の実施形態と異なっている。
【0219】
具体的には、
図50~
図52に示したように、雄ネジ部材43の接続部45に上下動手段70を接続し、上下動手段70の上端部を例えば電動工具などで把持して回動させることにより、グランドパッキン挿入手段50を溝外から溝内の方向に移動させ、グランドパッキン20を溝内に挿入することができる。本実施形態における上下動手段70(第1上下動手段70a)は、雄ネジ部材43を回動させる回動部71を備えて成るものであり、例えば電動工具用に市販されているフレキシブルシャフトを代用することができる。
【0220】
一方、
図53~
図55に示したように、グランドパッキン20を溝34内から引き抜く際には、まず雄ネジ部材43を固定本体部93から取り外し、取り外しによって得られた固定本体部93の貫通雌ネジ部41に対し、上下動手段70(第1上下動手段70a)を介してグランドパッキン引き抜き手段60を螺合させながら入れ、グランドパッキン20にグランドパッキン引き抜き手段60を係合させる。ここで、グランドパッキン引き抜き手段60は、棒状本体64を備え、棒状本体64の下端部には螺旋状部66が設けられ、上端部に、上下動手段70(第1上下動手段70a)が接続されるようになったものである。
【0221】
この状態で、第4の実施形態のグランドパッキン用治具10と同じように、立設雄ネジ部材12に固定本体部93を固定している雌ネジ部材25を回転させ、すなわち第2上下動手段70bとしての雌ネジ部材25を回転させることで、固定本体部93を上方に真直ぐ移動させることとなる。そして
図55に示したグランドパッキン引き抜き手段60は、螺旋状部66にグランドパッキン20が係合されたまま上方に移動され、グランドパッキン20を溝34内から溝34外へ引き抜くことができる。
【0222】
以上、本発明のグランドパッキン用治具10について説明したが、グランドパッキン用治具10の構造は上記した第1の実施形態から第4の実施形態に限定されるものではないものであり、例えば第1の実施形態から第4の実施形態を適宜組み合わせて成る実施形態であっても良いものである。
【0223】
さらには上記した第1の実施形態では、押圧補助部材58に磁石19を配設した場合に、押圧部52にも磁石19を配設することで、互いを磁力でくっつけ、押圧補助部材58を溝34内から確実に取り出すようにしているが、
図14に示したようなグランドパッキン引き抜き手段60の棒状本体64下端に位置する螺旋状部66を棒状本体64に対して着脱自在としておき、この螺旋状部66を棒状本体64から外して代わりにそこに磁石を取付けることで、押圧補助部材58の取り外し工具として機能するよう構成しても良いものである。
【0224】
またグランドパッキン引き抜き手段60の棒状本体64下端に位置する螺旋状部66を棒状本体64から外し、外された箇所を雄ネジ部とし、押圧補助部材58に予め雌ネジ部を形成しておくことで、この押圧補助部材58の雌ネジ部にグランドパッキン引き抜き手段60の雄ネジ部を螺合させることで、グランドパッキン引き抜き手段60を押圧補助部材58を溝内から溝外へ取り外す際の取り外し工具として機能するよう構成しても良いなど、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0225】
10 グランドパッキン用治具
12 立設雄ネジ部材
15 円柱本体部
17 位置決めローラー
19 磁石
20 グランドパッキン
22 筒状本体部
22a 分割体
22b 分割体
23 位置調整手段
24 雄ネジ部
25 雌ネジ部材
26 返し付き係合爪
28 ハンドル
30 所定部材
31 平坦面
32 軸
34 溝
36 フランジ
40 固定手段
41 貫通雌ネジ部
42 支柱
43 雄ネジ部材
44 締結部材
45 接続部
46 細長貫通穴
50 グランドパッキン挿入手段
52 押圧部
58 押圧補助部材
58a 上面
58b 分割面
58c 下面
59a 分割体
59b 分割体
59c 分割体
59d 分割体
60 グランドパッキン引き抜き手段
61a 矢印
61b 目盛り
61c 内径寸法および外径寸法
63 突起部
64 棒状本体
66 螺旋状部
68 ハンドル
69 把持部
70 上下動手段
70a 第1上下動手段
70b 第2上下動手段
71 回動部
72 シーソー本体
73a 凹部
73b 凸部
74 支点部分
75 雌ネジ部材
76 作用点部分
77 軸用穴
78 力点部分
79 切り欠き部
80 板状体
80a 分割体
80b 分割体
81a 凹部
81b 凸部
82 案内スロープ部
83 貫通穴
84 ラック部材
85 筒状治具
85a 分割体
85b 分割体
86 ピニオン部材
87 本体延長部材
88 ラチェットレンチ
89 切り欠き部
90 レバー部材
91 保持部
92 カム状部材
93 固定本体部
94 雌ネジ部
95 筒状本体部
95a 分割体
95b 分割体
96 雄ネジ部
97 切り欠き部
98 ハンドル
100 挿入工具
102 押圧部
110 グランドパッキン
120 溝
150 回転軸
200 引き抜き工具
210 スクリュー部
220 ハンドル
θ 傾斜角度