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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】塗装装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 7/26 20060101AFI20241009BHJP
   B05B 5/025 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
B05B7/26
B05B5/025 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021004848
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109498
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 唯行
(72)【発明者】
【氏名】大野 将宏
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 克海
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-102708(JP,A)
【文献】特開2004-089861(JP,A)
【文献】特開2002-355603(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0150677(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 7/26
B05B 5/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料タンク内の粉体塗料を吸引して静電塗装ガンにエア搬送するインジェクタと、
エア供給源から前記インジェクタにエアを供給するエア供給路と、
前記エア供給路を開閉し、開度が調整されることで前記エア供給路を流れるエア流量を調整するエアバルブと、
前記エアバルブの開度を調整する制御部と、
前記エア供給路内を流れるエア流量を検出する流量センサと、を備え、
前記制御部は、前記流量センサの検出値と前記エア供給路内の圧力とに基づいて前記エアバルブの開度を調整する塗装装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記エア供給路内のエア流量が基準値に近づくように前記エアバルブの開度を調整するものであり、前記エア供給路内の複数の圧力毎に、前記流量センサの検出値と前記エア供給路内を流れるエア流量との対応関係を示す対応情報を記憶しており、前記エア供給路内の圧力に対応する前記対応情報においてエア流量が前記基準値であるときの前記流量センサの検出値を補正基準値とする基準値補正処理を行い、前記流量センサの検出値が前記補正基準値に近づくように前記エアバルブの開度を調整する請求項1に記載の塗装装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記流量センサの検出値が前記補正基準値よりも大きい場合に前記エアバルブの開度を小さくし、前記流量センサの検出値が前記補正基準値よりも小さい場合に前記エアバルブの開度を大きくする請求項2に記載の塗装装置。
【請求項4】
前記エア供給路内の圧力を検出する圧力センサを備え、
前記制御部は、前記流量センサの検出値と前記圧力センサの検出値とに基づいて前記エアバルブの開度を調整する請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の塗装装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記エアバルブの開度を基準開度で一定に維持したときの前記流量センサの検出値と前記エア供給路内の圧力との対応関係を示す第2対応情報を記憶しており、前記第2対応情報と前記流量センサの検出値とから前記エア供給路内の圧力を特定する請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、塗装タンク内の粉体塗料をインジェクタによって吸引して静電塗装ガンにエア搬送し、静電塗装ガンから粉体塗料を吐出させる塗装装置が開示されている。この塗装装置は、エア供給装置からインジェクタに接続されるエアホースに設けられた流量絞り弁の開度を調整することで、インジェクタに供給するエア流量を調整することができ、その結果、粉体塗料の吐出量などを調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-47432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インジェクタに供給するエア流量を調整する方法として、例えば流量センサによってエアホース内を流れるエア流量を測定し、その測定値に基づいて流量絞り弁の開度を調整することが考えられる。しかし、エアホース内の圧力は、設備環境などに応じて変化し、流量センサの測定値は、エアホース内の圧力の変化に起因して誤差が生じ得る。このため、エア流量の調整精度が低下し、その結果、粉体塗料の吐出量などの調整精度が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、エア流量の調整精度を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の塗装装置は、
塗料タンク内の粉体塗料を吸引して静電塗装ガンにエア搬送するインジェクタと、
エア供給源から前記インジェクタにエアを供給するエア供給路と、
前記エア供給路を開閉するエアバルブと、
前記エアバルブの開度を調整する制御部と、
前記エア供給路内を流れるエア流量を検出する流量センサと、を備え、
前記制御部は、前記流量センサの検出値と前記エア供給路内の圧力とに基づいて前記エアバルブの開度を調整する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の塗装装置は、流量センサの検出値に加え、エア供給路内の圧力を加味してエアバルブの開度を調整することができる。このため、エア供給路内の圧力に起因した流量センサの検出値の誤差の影響を減らすことができ、その結果、エア流量の調整精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の塗装装置の構成を概略的に示す図である。
図2】実施例1の塗装処理の流れを示すフローチャートである。
図3】流量センサの検出値とエア供給路内を流れるエア流量との対応関係を示す対応情報のグラフである。
図4】対応情報に基づいて補正基準値を特定する方法を概念的に示す説明図である。
図5】実施例2の塗装装置の構成を概略的に示す図である。
図6】実施例2の事前処理の流れを示すフローチャートである。
図7】流量センサの検出値とエア供給路内の圧力との対応関係を示す第2対応情報のグラフである。
図8】実施例2の圧力特定処理の流れを示すフローチャートである。
図9】第2対応情報に基づいて圧力を特定する方法を概念的に示す説明図である。
図10】実施例2の塗装処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)本発明において、制御部は、エア供給路内のエア流量が基準値に近づくようにエアバルブの開度を調整するものであり、エア供給路内の複数の圧力毎に、流量センサの検出値とエア供給路内を流れるエア流量との対応関係を示す対応情報を記憶しており、エア供給路内の圧力に対応する対応情報においてエア流量が上記基準値であるときの流量センサの検出値を補正基準値とする基準値補正処理を行い、流量センサの検出値が補正基準値に近づくようにエアバルブの開度を調整するようにしてもよい。
この塗装装置は、基準値を、エア供給路内の圧力を加味した補正基準値に補正することができる。そして、この塗装装置は、流量センサの検出値が補正基準値に近づくようにエアバルブの開度を調整することで、エア供給路内のエア流量が基準値に近づくようにエアバルブの開度を調整することができる。よって、この塗装装置は、エア流量の調整精度を向上させることができる。
【0010】
(2)本発明において、制御部は、流量センサの検出値が補正基準値よりも大きい場合にエアバルブの開度を小さくし、流量センサの検出値が補正基準値よりも小さい場合にエアバルブの開度を大きくするようにしてもよい。
この塗装装置は、流量センサの検出値が補正基準値よりも大きい場合にエアバルブの開度を小さくし、流量センサの検出値が補正基準値よりも小さい場合にエアバルブの開度を大きくすることができる。これにより、この塗装装置は、流量センサの検出値が補正基準値に近づくようにエアバルブの開度を調整することができる。その結果、この塗装装置は、エア流量の調整精度を向上させることができる。
【0011】
(3)本発明の塗装装置は、圧力センサを備えるようにしてもよい。更に、制御部は、前記流量センサの検出値と前記圧力センサの検出値とに基づいて前記エアバルブの開度を調整するようにしてもよい。
この塗装装置は、圧力センサを備えているため、塗装中においても、エア供給路内の圧力を常に監視することができる。このため、塗装中の基準値の変更などに伴いエアバルブの開度が大きく変化する過渡現象においても、変化する圧力に対応してエアバルブの開度を調整することができる。
【0012】
(4)本発明において、制御部は、前記エアバルブの開度を基準開度で一定に維持したときの前記流量センサの検出値と前記エア供給路内の圧力との対応関係を示す第2対応情報を記憶しており、前記第2対応情報と前記流量センサの検出値とから前記エア供給路内の圧力を特定するようにしてもよい。
この塗装装置は、圧力センサを備えることなく、エア供給路内の圧力を特定し、特定した圧力に基づいてエアバルブの開度を調整することができる。
【0013】
<実施例1>
以下では、本発明を具体化した実施例1を図1図4を参照して説明する。
【0014】
[塗装装置の構成]
図1に示す塗装装置10は、粉体塗料11を吐出させる静電塗装ガン12と、塗料タンク13内の粉体塗料11を吸引して静電塗装ガン12にエア搬送するインジェクタ14と、エア供給源15と、エア供給源15からインジェクタ14にエアを供給するエア供給路20と、を備える。静電塗装ガン12は、本実施形態では自動ガンとするが、作業者が手動で操作するハンドガンであってもよい。
【0015】
更に、塗装装置10は、エア供給路20を開閉するエアバルブ31,32と、エア供給路20内を流れるエア流量を検出する流量センサ33,34と、エア供給路20内の圧力を検出する圧力センサ35と、を備える。更に、塗装装置10は、エア供給路20内の圧力を調整する減圧弁36と、制御部37と、操作部38と、表示部39と、を備える。なお、本明細書において、エア流量とは、単位時間当たりのエア流量のことを意味する。
【0016】
エア供給路20は、エア供給源15に接続されインジェクタ14側に延びる共通流路21と、共通流路21から分岐してインジェクタ14に接続されるメイン流路22及びサブ流路23と、を有する。
【0017】
エアバルブ31,32は、例えば比例制御弁である。エアバルブ31は、メイン流路22に設けられ、制御部37によって開度が調整されることで、メイン流路22を流れるエア流量を調整する。メイン流路22を流れるエア流量の調整によって、粉体塗料11の吐出量が調整される。粉体塗料11の吐出量は、具体的には粉体塗料11の単位時間当たりの吐出量のことであり、作業者によって予め設定されている。粉体塗料11の吐出量は、例えば重さではなく最大吐出量を100%としたときの割合として設定される。インジェクタ14から静電塗装ガン12に供給される総エア流量は、作業者などによって予め設定されている。この総エア流量に対して上記粉体塗料11の吐出量を乗算することで求められる値(以下では、「メイン基準値」ともいう)が、メイン流路22を流れるエア流量の「基準値」の一例に相当する。
【0018】
エアバルブ32は、サブ流路23に設けられ、制御部37によって開度が調整されることで、サブ流路23を流れるエア流量を調整する。エアバルブ32の開度は、メイン流路22から供給されるエア流量とサブ流路23から供給されるエア流量との合算値が上記総エア流量となるように、調整される。つまり、「総エア流量」-「総エア流量に対して粉体塗料11の吐出量を乗算することで求められる値(メイン基準値)」(以下では、「サブ基準値」ともいう)が、サブ流路23を流れるエア流量の「基準値」の一例に相当する。
【0019】
流量センサ33,34は、例えば差圧センサである。流量センサ33は、メイン流路22のうちエアバルブ31よりもエア供給源15側に設けられ、メイン流路22を流れるエア流量を検出する。流量センサ34は、サブ流路23のうちエアバルブ32よりもエア供給源15側に設けられ、サブ流路23を流れるエア流量を検出する。流量センサ33,34の検出値は、制御部37に入力される。
【0020】
圧力センサ35は、共通流路21に設けられ、エア供給源15とエアバルブ31,32との間に配置される。圧力センサ35は、共通流路21内の圧力を検出する。圧力センサ35の検出値は、制御部37に入力される。
【0021】
減圧弁36は、共通流路21のうち圧力センサ35よりもエア供給源15側に配置され、エア供給源15から供給されるエアの圧力が所定の圧力以上になると開弁してエアを外に逃がす。
【0022】
制御部37は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成され、CPU、ROM、RAMなどを有する。操作部38は、例えば操作パネル、タッチパネルなどである。操作パネルは、例えばキーシート、板金及び実装基板を備えて構成される。表示部39は、例えば液晶表示器である。上述した粉体塗料11の吐出量、及び総エア流量は、操作部38を用いて作業者などによって設定される。制御部37には、操作部38による操作結果が入力される。制御部37は、表示部39に所定の情報を表示させる。
【0023】
制御部37は、メイン流路22内のエア流量がメイン基準値に近づくようにエアバルブ31の開度を調整し、サブ流路23内のエア流路がサブ基準値に近づくようにエアバルブ32の開度を調整する。なお、本実施例では、エアバルブ32の開度の調整は、エアバルブ31の開度の調整と同様に行われる。このため、以下では、主にエアバルブ31の開度の調整について説明し、エアバルブ32の開度の調整については詳しい説明を省略する。
【0024】
制御部37は、図2に例示する塗装処理を行う。制御部37は、塗装開始条件が成立した場合に塗装処理を開始する。塗装開始条件は、例えば操作部38によって所定の塗装開始操作が行われたことである。制御部37は、塗装処理において、まずエアを流しているか否かを判定する(ステップS10)。制御部37は、コンベアで流れてくるワーク(塗装対象)の有無を判別し、ワークが無い状態ではエアバルブ31,32の開度を0とし、ワークが有る状態ではエアバルブ31,32の開度を0よりも大きくしてエア供給路20にエアを流す。制御部37は、エアバルブ31,32の開度を0としている場合にエアを流していないと判定し、エアバルブ31,32の開度を0よりも大きくしている場合にエアを流していると判定する。制御部37は、エアを流していないと判定した場合(ステップS10にてNoの場合)、塗装処理を終了し、直ぐに塗装処理を再開する。つまり、制御部37は、エアを流していると判定するまでステップS10の処理を繰り返す。
【0025】
なお、制御部37は、静電塗装ガン12がハンドガンである場合には、コンベアで流れてくるワークの有無を判別しない。この場合、制御部37は、例えばハンドガンのトリガのオンオフ状態を検出し、オンオフ状態に基づいてエアバルブ31,32を開閉させるように構成され、ハンドガンのトリガがオン状態である場合にエアを流していると判定し、オフ状態である場合にエアを流していないと判定する。
【0026】
制御部37は、エアを流していると判定した場合(ステップS10にてYesの場合)、圧力センサ35の検出値を取得する(ステップS11)。そして、制御部37は、圧力センサ35によって検出された圧力に対応する対応情報においてエア流量がメイン基準値であるときの流量センサ33の検出値を補正基準値とする基準値補正処理を行う(ステップS12)。ここで、対応情報とは、エア供給路20内の複数の圧力毎に、流量センサ33の検出値とメイン流路22(エア供給路20)内を流れるエア流量との対応関係を示す情報のことであり、予め制御部37に記憶されている。より具体的には、対応情報は、「エア供給路20内の複数の圧力毎に、エア供給路20内を流れるエア流量を変数として流量センサ33,34の検出値を規定する演算式(関数)」である。図3には、0.4MPaに対応する対応情報GA、0.5MPaに対応する対応情報GB、0.6MPaに対応する対応情報GCが例示されている。制御部37は、基準値補正処理において、例えば圧力センサ35によって検出された圧力が0.6MPaであった場合、0.6MPaに対応する対応情報GCを選択する。そして、制御部37は、図4に示すように、対応情報GCにおいてメイン基準値(基準値)をエア流量としたときの流量センサ33の検出値を補正基準値とする。
【0027】
制御部37は、基準値補正処理を行った後、流量センサ33の検出値を取得し(ステップS13)、流量センサ33の検出値が補正基準値に近づくようにエアバルブ31の開度を調整する。具体的には、制御部37は、流量センサ33の検出値が補正基準値よりも大きいか否かを判定する(ステップS14)。そして、制御部37は、流量センサ33の検出値が補正基準値よりも大きい場合(ステップS14にてYesの場合)、エアバルブ31の開度を小さくし(ステップS15)、ステップS10の処理に戻る。これにより、メイン流路22を流れるエア流量が減少して、流量センサ33の検出値が補正基準値に近づき、その結果、メイン流路22を流れるエア流量が基準値に近づく。
【0028】
制御部37は、流量センサ33の検出値が補正基準値よりも大きくない場合(ステップS14にてNoの場合)、流量センサ33の検出値が補正基準値よりも小さいか否かを判定する(ステップS16)。制御部37は、流量センサ33の検出値が補正基準値よりも小さい場合(ステップS16にてYesの場合)、エアバルブ31の開度を大きくして(ステップS17)、ステップS10の処理に戻る。これにより、メイン流路22を流れるエア流量が増加して、流量センサ34の検出値が補正基準値に近づき、その結果、メイン流路22を流れるエア流量が基準値に近づく。
【0029】
制御部37は、流量センサ33の検出値が補正基準値よりも小さくない場合(ステップS16にてNoの場合)、つまり流量センサ33の検出値が補正基準値と一致する場合、エアバルブの開度を変更せずにステップS10の処理に戻る。
【0030】
制御部37は、ステップS10の処理に戻った後、ステップS10からステップS17までの処理を繰り返し行う。これにより、制御部37は、エア供給路20内の圧力の変化に対応して補正基準値を随時変更し、変更した補正基準値に基づいてエアバルブ31の開度を調整することができる。
【0031】
以上のように、塗装装置10の制御部37は、流量センサ33の検出値とエア供給路20内の圧力とに基づいてエアバルブ31の開度を調整し、流量センサ34の検出値とエア供給路20内の圧力とに基づいてエアバルブ32の開度を調整する。つまり、塗装装置10は、流量センサ33の検出値に加え、エア供給路20内の圧力を加味してエアバルブ31の開度を調整することができる。また、塗装装置10は、流量センサ34の検出値に加え、エア供給と20内の圧力を加味してエアバルブ32の開度を調整することができる。このため、塗装装置10は、エア供給路20内の圧力に起因した流量センサ33,34の検出値の誤差の影響を減らすことができ、その結果、メイン流路22及びサブ流路23のエア流量の調整精度を向上させることができる。
【0032】
更に、制御部37は、メイン流路22内のエア流量がメイン基準値に近づくようにエアバルブ31の開度を調整し、サブ流路23内のエア流路がサブ基準値に近づくようにエアバルブ32の開度を調整する。制御部37は、エア供給路20内の複数の圧力毎に、流量センサ33の検出値とメイン流路22内を流れるエア流量との対応関係を示す対応情報、及び流量センサ34の検出値とサブ流路23内を流れるエア流量との対応関係を示す対応情報を記憶している。制御部37は、エア供給路20内の圧力に対応する対応情報において、エア流量がメイン基準値であるときの流量センサ33の検出値、及びエア流量がサブ基準値であるときの流量センサ34の検出値をそれぞれ補正基準値とする基準値補正処理を行う。そして、制御部37は、流量センサ33の検出値がメインの補正基準値に近づくようにエアバルブ31の開度を調整し、流量センサ34の検出値がサブの補正基準値に近づくようにエアバルブ32の開度を調整する。
この塗装装置10は、メイン基準値及びサブ基準値の各々を、エア供給路20内の圧力を加味した補正基準値に補正することができる。そして、この塗装装置10は、流量センサ33,34の検出値が補正基準値に近づくようにエアバルブ31,32の開度を調整することで、メイン流路22内のエア流量がメイン基準値に近づくようにエアバルブ31の開度を調整し、サブ流路23内のエア流路がサブ基準値に近づくようにエアバルブ32の開度を調整することができる。よって、この塗装装置10は、メイン流路22及びサブ流路23のエア流量の調整精度を向上させることができる。
【0033】
更に、制御部37は、流量センサ33の検出値がメインの補正基準値よりも大きい場合にエアバルブ31の開度を小さくし、流量センサ33の検出値がメインの補正基準値よりも小さい場合にエアバルブ31の開度を大きくする。また、制御部37は、流量センサ34の検出値がサブの補正基準値よりも大きい場合にエアバルブ32の開度を小さくし、流量センサ34の検出値がサブの補正基準値よりも小さい場合にエアバルブ32の開度を大きくする。
これにより、この塗装装置10は、流量センサ33の検出値がメインの補正基準値に近づくようにエアバルブ31の開度を調整することができ、流量センサ34の検出値がサブの補正基準値に近づくようにエアバルブ32の開度を調整することができる。その結果、この塗装装置10は、メイン流路22及びサブ流路23のエア流量の調整精度を向上させることができる。
【0034】
更に、塗装装置10は、エア供給路20内の圧力を検出する圧力センサ35を備えている。そして、制御部37は、流量センサ33,34の検出値と圧力センサ35の検出値とに基づいてエアバルブ31,32の開度を調整する。
この塗装装置10は、圧力センサ35を備えているため、塗装中においても、エア供給路20内の圧力を常に監視することができる。このため、塗装中のメイン基準値及びサブ基準値の変更などに伴いエアバルブ31,32の開度が大きく変化する過渡現象においても、変化する圧力に対応してエアバルブ31,32の開度を調整することができる。
【0035】
<実施例2>
以下では、本発明を具体化した実施例2を図5図10を参照して説明する。
【0036】
図5に示す実施例2の塗装装置210は、エア供給路20内の圧力を検出する圧力センサ35を備えていない点で、実施例1の塗装装置10とは異なる。なお、以下の説明では、主に実施例1の塗装装置10と異なる部分について説明し、実施例1の塗装装置10と共通する構成について同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0037】
塗装装置210におけるエア供給路20内の圧力の特定方法について説明する。作業者は、塗装装置210の出荷前の段階で、エア供給路20内を特定の圧力(例えば0.6MPa)とした状態で、図6に例示する事前処理を制御部37に行わせる。制御部37は、事前処理において、まず表示部39に開始画面を表示させ(ステップS30)、事前処理用の開始操作が行われたか否かを判定する(ステップS31)。制御部37は、事前処理用の開始操作が行われていないと判定した場合(ステップS31にてNoの場合)、ステップS31の処理に戻り、事前処理用の開始操作が行われるまで待機状態となる。制御部37は、事前処理用の開始操作が行われた場合(ステップS31にてYesの場合)、エアバルブ31,32の開度を予め定められた基準開度に設定し(ステップS32)、基準開度に設定してから一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS33)。制御部37は、一定時間が経過したと判定した場合(ステップS33にてYesの場合)、流量センサ33の検出値を取得する(ステップS34)。これにより、制御部37は、エア供給路20内の圧力が0.6MPaのときの流量センサ33の検出値DVAを取得する。制御部37は、エアバルブ31,32の開度を0に設定し(ステップS35)、流量センサ33の検出値DVAを保存するか否かを確認する画面を表示部39に表示させる。制御部37は、操作部38によって保存操作が行われたか否かを判定し(ステップS37)、保存操作が行われた場合には(ステップS37にてYesの場合)、流量センサ33の検出値DVAを記憶して、事前処理を終了する。
【0038】
制御部37は、事前処理で記憶した流量センサ33の検出値DVAに基づいて、第2対応情報GXを生成する。第2対応情報GXとは、エアバルブ31,32の開度を予め定められた基準開度で一定に維持したときの流量センサ33の検出値とエア供給路20内の圧力との対応関係を示す情報のことである。制御部37は、一次関数である以下の式(1)を第2対応情報GXとして求める。
Y=D×X+C ・・・式(1)
X及びYは、変数であり、C及びDは、定数である。Xは、エア供給路20内の圧力である。Yは、流量センサ33の検出値である。Dは、制御部37に予め記憶された値であり、例えば製品開発時の測定・検証に基づいて求められる。Cは、以下のように求められる。
制御部37は、式(1)において、事前処理を行ったときの圧力、つまり0.6MPaをXに代入し、事前処理で記憶した流量センサ33の検出値DVAをYに代入する。これにより、制御部37は、Cを求め、図7に示す第2対応情報GXを求める。
塗装装置210は、制御部37に第2対応情報GXが記憶された状態で出荷される。
【0039】
塗装装置210が出荷先の工場に設置された後、作業者は、塗装装置210の制御部37に、図8に例示する圧力特定処理を行わせる。制御部37は、圧力特定処理では、まず表示部39に開始画面を表示させ(ステップS50)、圧力特定処理用の開始操作が行われたか否かを判定する(ステップS51)。制御部37は、圧力特定処理用の開始操作が行われていないと判定した場合(ステップS51にてNoの場合)、ステップS51の処理に戻り、圧力特定処理用の開始操作が行われるまで待機状態となる。制御部37は、圧力特定処理用の開始操作が行われた場合(ステップS51にてYesの場合)、エアバルブ31,32の開度を上述した基準開度(つまり、事前処理を行ったときの開度)に設定し(ステップS52)、基準開度に設定してから一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS53)。制御部37は、一定時間が経過したと判定した場合(ステップS53にてYesの場合)、流量センサ33の検出値DVBを取得する(ステップS54)。そして、制御部37は、エアバルブ31,32の開度を0に設定し(ステップS55)、第2対応情報GXと流量センサ33の検出値DVBとからエア供給路20内の圧力を特定する(ステップS56)。具体的には、制御部37は、図9に示すように、第2対応情報GXから流量センサ33の検出値DVBに対応するエア供給路20内の圧力PBを特定する。これにより、制御部37は、出荷先に設置された塗装装置210におけるエア供給路20内の圧力を特定することができる。
【0040】
制御部37は、エア供給路20内の圧力PBを特定した後、特定したエア供給路20内の圧力PBを保存するか否かを確認する画面を表示し(ステップS57)、操作部38によって保存操作が行われたか否かを判定する(ステップS58)。制御部37は、保存操作が行われた場合(ステップS58にてYesの場合)、特定したエア供給路20内の圧力PBを記憶して、圧力特定処理を終了する。そして、制御部37は、圧力特定処理によって特定した圧力PBに基づいて、図10に例示する塗装処理を行う。
【0041】
制御部37は、塗装処理において、まずエアを流しているか否かを判定する(ステップS70)。制御部37は、エアを流していないと判定した場合(ステップS70にてNoの場合)、塗装処理を終了し、直ぐに塗装処理を再開する。つまり、制御部37は、エアを流していると判定するまでステップS70の処理を繰り返す。制御部37は、エアを流していると判定した場合(ステップS70にてYesの場合)、圧力特定処理にて特定したエア供給路20内の圧力PBを読み出す(ステップS71)。そして、制御部37は、読み出したエア供給路20内の圧力PBに対応する対応情報を選択し、選択した対応情報に基づいて実施例1で説明した基準値補正処理を行う(ステップS72)。制御部37は、基準値補正処理を行った後、実施例1と同様に、流量センサ33の検出値を取得し(ステップS73)、流量センサ33の検出値が補正基準値に近づくようにエアバルブ31の開度を調整する。具体的には、制御部37は、流量センサ33の検出値が補正基準値よりも大きいか否かを判定する(ステップS74)。そして、制御部37は、流量センサ33の検出値が補正基準値よりも大きい場合(ステップS74にてYesの場合)、エアバルブ31の開度を小さくし(ステップS75)、ステップS70の処理に戻る。制御部37は、流量センサ33の検出値が補正基準値よりも大きくない場合(ステップS74にてNoの場合)、流量センサ33の検出値が補正基準値よりも小さいか否かを判定する(ステップS76)。制御部37は、流量センサ33の検出値が補正基準値よりも小さい場合(ステップS76にてYesの場合)、エアバルブ31の開度を大きくして(ステップS77)、ステップS70の処理に戻る。制御部37は、流量センサ33の検出値が補正基準値よりも小さくない場合(ステップS76にてNoの場合)、つまり流量センサ33の検出値が補正基準値と一致する場合、エアバルブの開度を変更せずにステップS70の処理に戻る。制御部37は、ステップS70の処理に戻った後、ステップS70からステップS77までの処理を繰り返し行う。また、制御部37は、エアバルブ32の開度についても、エアバルブ31の開度と同様に、流量センサ34の検出値が補正基準値に近づくように調整する。
【0042】
以上のように、実施例2の塗装装置210の制御部37は、エアバルブ31,32の開度を基準開度で一定に維持したときの流量センサ33,34の検出値とエア供給路20内の圧力との対応関係を示す第2対応情報GXを記憶している。そして、制御部37は、第2対応情報GXと流量センサ33,34の検出値とからエア供給路20内の圧力を特定する。
この塗装装置210は、圧力センサを備えることなく、エア供給路20内の圧力を特定し、特定した圧力に基づいてエアバルブ31,32の開度を調整することができる。
【0043】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば 次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0044】
上記実施例1及び2では、流量センサの検出値とエア供給路内の圧力とに基づいてエアバルブの開度を調整する構成として、エア供給路内の圧力に基づいて基準値を補正する構成としたが、基準値は補正せずにエア流量を補正する構成としてもよい。
【0045】
上記実施例1及び2では、対応情報を、「エア供給路内の複数の圧力毎に、エア供給路内を流れるエア流量を変数として流量センサの検出値を規定する演算式(関数)」としたが、これに限らず、例えば「エア供給路内の複数の圧力毎に、エア供給路内を流れるエア流量と流量センサの検出値とを対応付けたテーブル」としてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10,210…塗装装置
11…粉体塗料
12…静電塗装ガン
14…インジェクタ
15…エア供給源
20…エア供給路
31,32…エアバルブ
33,34…流量センサ
35…圧力センサ
37…制御部
GA,GB,GC…対応情報
GX…第2対応情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10