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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】めっき基板
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/30 20060101AFI20241009BHJP
   C23C 18/16 20060101ALI20241009BHJP
   C23C 18/20 20060101ALI20241009BHJP
   C23C 18/38 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
C23C18/30
C23C18/16 A
C23C18/20 A
C23C18/38
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022501975
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2021006135
(87)【国際公開番号】W WO2021167009
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-07-27
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2020026618
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】大石 知司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 育史
(72)【発明者】
【氏名】平山 克郎
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】池渕 立
【審判官】佐藤 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-123261(JP,A)
【文献】特開2006-188757(JP,A)
【文献】特公平6-76668(JP,B2)
【文献】中国特許出願公開第109576684(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C18/20
C23C18/30
C23C18/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に塩基およびめっき触媒金属を有する改質樹脂基材であって、
前記めっき触媒金属は、Co3+、Fe3+、Cu2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu、Ag、Au、Hg、Pd2+、およびPt2+から選択され、
前記めっき触媒金属と前記塩基の組み合わせは、ルイス酸塩基として、HSAB則において、Co3+およびFe3+から選択される硬い酸と硬い塩基または中間の塩基の組み合わせ、Cu2+、Fe2+、Co2+およびNi2+から選択される中間の酸と硬い塩基、中間の塩基または柔らかい塩基の組み合わせ、あるいは、Cu、Ag、Au、Hg、Pd2+およびPt2+から選択される柔らかい酸と中間の塩基または柔らかい塩基の組み合わせである、改質樹脂基材。
【請求項2】
前記塩基は硬い塩基であり、前記めっき触媒金属は中間の酸である、請求項1に記載の改質樹脂基材。
【請求項3】
前記塩基は-NHであり、前記めっき触媒金属はCu2+である、請求項1または2に記載の改質樹脂基材。
【請求項4】
表面に塩基およびめっき触媒金属を有する改質樹脂基材と、該改質樹脂基材上に形成されためっき層とを有するめっき基板であって、
前記めっき触媒金属は、Co3+、Fe3+、Cu2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu、Ag、Au、Hg、Pd2+、およびPt2+から選択され、
前記めっき触媒金属と前記塩基の組み合わせは、ルイス酸塩基として、HSAB則において、Co3+およびFe3+から選択される硬い酸と硬い塩基または中間の塩基の組み合わせ、Cu2+、Fe2+、Co2+およびNi2+から選択される中間の酸と硬い塩基、中間の塩基または柔らかい塩基の組み合わせ、あるいは、Cu、Ag、Au、Hg、Pd2+およびPt2+から選択される柔らかい酸と中間の塩基または柔らかい塩基の組み合わせである、めっき基板。
【請求項5】
前記塩基は硬い塩基であり、前記めっき触媒金属の酸は中間の酸である、請求項4に記載のめっき基板。
【請求項6】
前記塩基は-NHであり、前記めっき触媒金属はCu2+である、請求項4または5に記載のめっき基板。
【請求項7】
前記めっき層は、銅めっき層である、請求項4~6のいずれか1項に記載のめっき基板。
【請求項8】
樹脂基材上にめっき層を形成する方法であって、
前記樹脂基材の表面に塩基を存在させ、
前記塩基を有する表面に金属イオンを接触させてめっき触媒金属を表面に存在させ、
前記塩基およびめっき触媒金属を有する樹脂基材上に、無電解めっきにより前記めっき層を形成することを含み、
前記金属イオンは、Co3+、Fe3+、Cu2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu、Ag、Au、Hg、Pd2+、およびPt2+から選択され、
前記めっき触媒金属は、Co3+、Fe3+、Cu2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu、Ag、Au、Hg、Pd2+、およびPt2+から選択され、
前記金属イオンと前記塩基の組み合わせは、ルイス酸塩基として、HSAB則において、Co3+およびFe3+から選択される硬い酸と硬い塩基または中間の塩基の組み合わせ、Cu2+、Fe2+、Co2+およびNi2+から選択される中間の酸と硬い塩基、中間の塩基または柔らかい塩基の組み合わせ、あるいは、Cu、Ag、Au、Hg、Pd2+およびPt2+から選択される柔らかい酸と中間の塩基または柔らかい塩基の組み合わせである、めっき層の形成方法。
【請求項9】
前記塩基は硬い塩基であり、前記めっき触媒金属の酸は中間の酸である、請求項8に記載のめっき層の形成方法。
【請求項10】
前記樹脂基材の表面に塩基を存在させる方法は、塩基雰囲気下で前記樹脂基材にエネルギー照射することにより行われる、請求項8または9に記載のめっき層の形成方法。
【請求項11】
前記塩基雰囲気は、アンモニア雰囲気である、請求項10に記載のめっき層の形成方法。
【請求項12】
前記塩基を有する表面上にめっき触媒金属を存在させる方法は、前記塩基を有する樹脂基材を、金属イオンを含有する溶液に浸漬することにより行われる、請求項8~11のいずれか1項に記載のめっき層の形成方法。
【請求項13】
前記金属イオンは、Cu2+である、請求項12に記載のめっき層の形成方法。
【請求項14】
前記無電解めっきは、銅めっきである、請求項8~13のいずれか1項に記載のめっき層の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、めっき基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁基板上に金属層を形成する方法として、無電解めっきが利用される。絶縁体である基材の表面に無電解めっきにより金属層を形成する場合には、通常、基材の表面に金属の析出を促進するためのめっき触媒金属としてPdを付与する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-225929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように基材の表面にめっき触媒金属としてのPdを付与することにより無電解めっきを行うことが可能になるが、基材と金属層の密着性が十分に得られないという問題が生じ得る。特に、基材の表面が平滑であるほどこの問題は顕著になる。
【0005】
本開示は、樹脂基材上に無電解めっきによるめっき層を有するめっき基板であって、樹脂基材とめっき層との密着性が高いめっき基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様を含む。
[1] 表面に塩基およびめっき触媒金属が導入された改質樹脂基材であって、
前記めっき触媒金属と前記塩基の組み合わせは、ルイス酸塩基として、HSAB(Hard and Soft Acids and Bases)則において、硬い酸と硬い塩基または中間の塩基の組み合わせ、中間の酸と硬い塩基、中間の塩基または柔らかい塩基の組み合わせ、あるいは、柔らかい酸と中間の塩基または柔らかい塩基の組み合わせである、改質樹脂基材。
[2] 前記塩基は硬い塩基であり、前記めっき触媒金属は中間の酸である、上記[1]に記載の改質樹脂基材。
[3] 前記塩基は-NHであり、前記めっき触媒金属はCu2+である、上記[1]または[2]に記載の改質樹脂基材。
[4] 表面に塩基およびめっき触媒金属が導入された改質樹脂基材と、該改質樹脂基材上に形成されためっき層とを有するめっき基板であって、
前記めっき触媒金属と前記塩基の組み合わせは、ルイス酸塩基として、HSAB則において、硬い酸と硬い塩基または中間の塩基の組み合わせ、中間の酸と硬い塩基、中間の塩基または柔らかい塩基の組み合わせ、あるいは、柔らかい酸と中間の塩基または柔らかい塩基の組み合わせである、めっき基板。
[5] 前記塩基は硬い塩基であり、前記めっき触媒金属の酸は中間の酸である、上記[4]に記載のめっき基板。
[6] 前記塩基は-NHであり、前記めっき触媒金属はCu2+である、上記[4]または[5]に記載のめっき基板。
[7] 前記めっき層は、銅めっき層である、上記[4]~[6]のいずれか1項に記載のめっき基板。
[8] 樹脂基材上にめっき層を形成する方法であって、
前記樹脂基材の表面に塩基を導入し、
前記塩基が導入された表面に金属イオンを接触させてめっき触媒金属を導入し、
前記塩基およびめっき触媒金属が導入された樹脂基材上に、無電解めっきにより前記めっき層を形成することを含み、
前記金属イオンと前記塩基の組み合わせは、ルイス酸塩基として、HSAB則において、硬い酸と硬い塩基または中間の塩基の組み合わせ、中間の酸と硬い塩基、中間の塩基または柔らかい塩基の組み合わせ、あるいは、柔らかい酸と中間の塩基または柔らかい塩基の組み合わせである、めっき層の形成方法。
[9] 前記塩基は硬い塩基であり、前記めっき触媒金属の酸は中間の酸である、上記[8]に記載のめっき層の形成方法。
[10] 前記樹脂基材の表面への塩基の導入は、塩基雰囲気下で前記樹脂基材にエネルギー照射することにより行われる、上記[8]または[9]に記載のめっき層の形成方法。
[11] 前記塩基性雰囲気は、アンモニア雰囲気である、上記[9]に記載のめっき層の形成方法。
[12] 前記塩基が導入された表面上へのめっき触媒金属の導入は、前記塩基が導入された樹脂基材を、金属イオンを含有する溶液に浸漬することにより行われる、上記[8]~[11]のいずれか1項に記載のめっき層の形成方法。
[13] 前記金属イオンは、Cu2+である、上記[12]に記載のめっき層の形成方法。
[14] 前記無電解めっきは、銅めっきである、上記[8]~[13]のいずれか1項に記載のめっき層の形成方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示のめっき基板は、基材上に導入された塩基とめっき触媒金属とが、ルイス酸塩基としてHSAB則において硬さが近い組み合わせであることから、基材とめっき層との密着性が高くなる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示のめっき基板は、表面に塩基およびめっき触媒金属が導入された改質樹脂基材と、該改質樹脂基材上に形成されためっき層とを有し、上記めっき触媒金属の酸と上記塩基の組み合わせが、HSAB則において、硬い酸と硬い塩基または中間の塩基の組み合わせ、中間の酸と硬い塩基、中間の塩基または柔らかい塩基の組み合わせ、あるいは、柔らかい酸と中間の塩基または柔らかい塩基の組み合わせであることを特徴とする。
【0009】
<改質樹脂基材>
本開示は、樹脂基材の表面を改質して、塩基およびめっき触媒金属を導入した改質樹脂基材を提供する。
【0010】
上記樹脂基材を形成する樹脂としては、例えば、絶縁性の樹脂であればよく、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、パーフルオロアルコキシ共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン-テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FTFP)等のフッ素樹脂;および、ポリエチレン、ポロプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、シクロオレフィン樹脂、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、アクリル-スチレン共重合体、ブタジエン-スチレン共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリシクロヘキサンテレフタラート、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル、スチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリジメチルシリコーン、ポリウレタン等、あるいはこれらを含む共重合体、ブレンド、ポリマーアロイ等の非フッ素樹脂が挙げられる。
【0011】
好ましい態様において、上記樹脂基材を形成する樹脂は、フッ素樹脂、特にPTFEが好ましい。樹脂基材の材料としてフッ素樹脂、特にPTFEを用いることにより、低誘電率の基材を得ることができる。
【0012】
上記塩基としては、-NH、NH、RNH、HO、-OH、ROH、OH、F、Cl、CHCOO、NO 、CO 、ClO 、SO 2-、OR、PO 3-等の硬い塩基、Br、NO 、SO 2-、N 、アニリン、ピリジン等の中間の塩基、RS、RSH、I、RS、CN、SCN、S 2-、S2-、R、PR、CO、C等の軟らかい塩基が挙げられる。なお、上記Rは、炭化水素基、好ましくはアルキル基、例えばC1-3アルキル基である。
【0013】
上記めっき触媒金属としては、Co3+、Fe3+等の硬い酸、Cu2+、Fe2+、Co2+、Ni2+等の中間の酸、Cu、Ag、Au、Hg、Pd2+、Pt2+等の軟らかい酸から構成される金属が挙げられる。
【0014】
なお、上記硬い塩基、中間の塩基、軟らかい塩基、硬い酸、中間の酸、軟らかい酸とは、HSAB(Hard and Soft Acids and Bases)則に基づく。
【0015】
上記金属と塩基の組み合わせは、HSAB則において硬さが近い組み合わせ、即ち、硬い酸と硬い塩基または中間の塩基の組み合わせ、中間の酸と硬い塩基、中間の塩基または柔らかい塩基の組み合わせ、あるいは、柔らかい酸と中間の塩基または柔らかい塩基の組み合わせである。好ましくは、金属と塩基の組み合わせは、硬い酸と硬い塩基の組み合わせ、中間の酸と中間の塩基の組み合わせ、軟らかい酸と軟らかい塩基の組み合わせであり得る。このような組み合わせとすることにより、金属と塩基の結合が強くなり、その結果、金属により構成されるめっき触媒金属上に形成されるめっき層の基材への密着性が向上する。
【0016】
一の具体的な態様において、上記金属と塩基の組み合わせとしては、例えば、中間の酸であるCu2+と硬い塩基である-NHの組み合わせが挙げられる。
【0017】
本開示の改質樹脂基材は、基材表面に、塩基を介して結合した金属の層を有し、めっきを行う場合に上記金属がめっき触媒として機能することから、めっき処理を良好に行うことができる。また、塩基と金属の硬さの組み合わせを上記の組み合わせとすることにより、めっき層と基材との密着性を高くすることができる。
【0018】
<めっき基板>
本開示は、表面に塩基およびめっき触媒金属が導入された改質樹脂基材と、該改質樹脂基材上に形成されためっき層とを有するめっき基板を提供する。
【0019】
上記めっき層を形成する金属としては、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt等が挙げられ、特にCuが好ましい。
【0020】
好ましい態様において、本開示のめっき基板は、表面に塩基として-NHが導入され、さらにめっき触媒金属としてCu2+が導入された改質樹脂基材上に、銅めっき層が設けられた基板である。
【0021】
本開示のめっき基板は、本開示の改質樹脂基材を基材として用い、その上にめっき層を形成していることから、めっき層の基材への密着性が高い。
【0022】
<製造方法>
本開示は、上記改質樹脂基材の製造方法を提供する。本開示の改質樹脂基材の製造方法は、樹脂基材の表面に塩基を導入し、当該塩基が導入された表面にめっき触媒金属を導入することを含む。
【0023】
上記樹脂基材の表面に塩基を導入する方法としては、基材表面に塩基を導入できる方法であれば特に限定されないが、例えば、塩基またはその前駆体の存在下で基材表面に高エネルギーを与える、あるいは、基材を塩基またはその前駆体を含む処理剤で化学的に処理する方法が挙げられる。
【0024】
一の具体的な態様において、容器内に原料として塩基またはその前駆体を封入して塩基原料の雰囲気を作成し、該雰囲気下に基材を配置し、エネルギー処理を行うことにより、基材の表面に塩基を導入することができる。上記エネルギー処理としては、例えば紫外線照射、エキシマ光照射、レーザー照射等の光照射が挙げられ、特にエキシマ光照射が好ましい。
【0025】
好ましい態様において、上記塩基の導入は、容器内にアンモニア水を封入して容器内をアンモニア雰囲気とし、そこに基材を配置してエキシマ光照射することにより行うことができる。
【0026】
上記塩基またはその前駆体としては、上記した塩基を基材に導入できるものであれば特に限定されないが、例えば、硬い塩基またはその前駆体として、NH、RNH、HO、ROH、NHF、HCl、CHCOOH、HNO、(NHCO、NHClO、HSO、CO、(NHPO等、中間の塩基またはその前駆体として、NHBr、HNO、HSO、NaN、アニリン、ピリジン等、軟らかい塩基またはその前駆体として、RS、RSH、NHI、CS、HCN、NHSCN、Na、NaS、CH、C、C、PR、CO、C等が挙げられる。なお、上記Rは、炭化水素基、好ましくはアルキル基、例えばC1-3アルキル基である。
【0027】
上記樹脂基材の表面にめっき触媒金属を導入する方法としては、上記のように表面に塩基が導入された基材を、めっき触媒金属となる金属イオンと接触させる方法が挙げられる。
【0028】
一の具体的な態様において、上記樹脂基材の表面へのめっき触媒金属の導入は、上記のように表面に塩基が導入された基材を、当該めっき触媒金属としての金属イオンを含む溶液、好ましくは当該金属イオンの塩の水溶液に浸漬することにより行うことができる。
【0029】
上記金属イオンの塩としては、例えば硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物(好ましくは、塩化物)が挙げられる。
【0030】
上記の処理において、塩基およびめっき触媒金属は、ルイス酸塩基として、HSAB則において、硬さが近い組み合わせ、例えば硬い酸と硬い塩基または中間の塩基の組み合わせ、中間の酸と硬い塩基、中間の塩基または柔らかい塩基の組み合わせ、あるいは、柔らかい酸と中間の塩基または柔らかい塩基の組み合わせである。
【0031】
さらに、本開示は、上記めっき基板の製造方法を提供する。本開示のめっき基板の製造方法は、上記のように改質樹脂基材を得、かかる改質樹脂基材上に、無電解めっきによりめっき層を形成することを含む。
【0032】
上記めっき層は、好ましくは無電解めっきにより形成される。本開示の改質樹脂基材は、表面にめっき触媒金属を有することから、無電解めっきであっても容易にめっき層を形成することができる。さらに、樹脂基材に導入された塩基とめっき触媒金属の組み合わせを、ルイス酸塩基としてHSAB則において硬さが近い組み合わせとすることにより、高い密着性を有するめっき層を形成することができる。
【0033】
従って、本開示は、樹脂基材上にめっき層を形成する方法であって、
上記樹脂基材の表面に塩基を導入し、
上記塩基が導入された表面に金属イオンを接触させて、該金属から構成されるめっき触媒金属を導入し、
上記塩基およびめっき触媒金属が導入された樹脂基材上に、無電解めっきにより上記めっき層を形成することを含み、
上記金属イオンと上記塩基の組み合わせは、ルイス酸として、HSAB則において、硬い酸と硬い塩基または中間の塩基の組み合わせ、中間の酸と硬い塩基、中間の塩基または柔らかい塩基の組み合わせ、あるいは、柔らかい酸と中間の塩基または柔らかい塩基の組み合わせである、めっき層の形成方法を提供する。
【実施例
【0034】
実施例1
樹脂基材としてPTFEの基板(大きさ:縦約20mm、横約20mm、厚さ約5mm)を準備した。次いで、ポリジメチルシロキサン製の容器内に28%アンモニア水を入れ、その中に、PTFE基板をアンモニア水に浸漬しないように配置し、石英ガラスを蓋にして密閉した。基板に、波長172nmのエキシマランプを用いて42mW/cmの出力で10分間紫外線照射し、表面に塩基を導入した。
【0035】
次に、塩基を導入した基板を、60℃、1mol/Lの硫酸銅水溶液に30分間浸漬し、基板上にめっき触媒となる銅膜を形成した。
【0036】
次に、めっき触媒を形成した基板を、pH9.0、60℃の無電解銅めっき液に30分間浸漬し、厚さ1.5μmの銅めっき皮膜を形成した。
【0037】
比較例
塩基を導入した基板を硫酸銅水溶液に浸漬する代わりに、0.1mol/Lの酢酸パラジウム水溶液に浸漬した以外は、実施例1と同様にして、銅めっき皮膜を形成した。
【0038】
密着性評価
実施例1および比較例1にて得られた銅めっき皮膜を1mm間隔にクロスカットして、テープ剥離試験を行った。結果を下記表に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
上記の結果から、パラジウム触媒を用いた場合よりも、銅触媒を使用したほうが、皮膜残存個数が多いこと、即ち密着性が高いことが確認された。これは基材に導入された塩基と、めっき触媒金属の酸が、HSAB則において硬さが近い組み合わせ、即ち中間の酸であるCu2+と硬い塩基であるNHの組み合わせである実施例の方が、硬さが遠い組み合わせ、即ち軟らかい酸であるPd2+と硬い塩基であるNHの組み合わせである比較例よりもより強固に相互作用することによるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本開示のめっき基板は、めっき層の密着性が高いことから、種々の電子部品において好適に使用することができる。