(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】吊り足場
(51)【国際特許分類】
E04G 5/00 20060101AFI20241009BHJP
E04G 3/32 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
E04G5/00 301J
E04G3/32 B
(21)【出願番号】P 2024090879
(22)【出願日】2024-06-04
【審査請求日】2024-06-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521417853
【氏名又は名称】小野 大
(73)【特許権者】
【識別番号】516288044
【氏名又は名称】株式会社クリス・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】小野 大
(72)【発明者】
【氏名】栗栖 龍男
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-230315(JP,A)
【文献】特開2013-256861(JP,A)
【文献】特開2023-117755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/00
E04G 3/32
F16B 45/00
F16B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業床を有する足場部材と、
複数の環状の鎖素子を数珠繋ぎにして形成されて前記足場部材を吊持するチェーンと、
前記足場部材に設置され前記チェーンを前記足場部材に連結するチェーン連結装置とを備え、
前記鎖素子の孔と正対する側を正面側としたとき、正面側から見た前記鎖素子の幅を横幅、側面側から見た前記鎖素子の幅を縦幅として、
前記チェーン連結装置は、
軸線が鉛直方向に沿うとともに内部に前記チェーンが挿通される筒体と、
前記鎖素子の横幅よりも狭く前記鎖素子の縦幅よりも広い幅の切欠きを有して前記筒体の下端に当接するストッパとを備える
ことを特徴とする吊り足場。
【請求項2】
作業床を有する足場部材と、
複数の環状の鎖素子を数珠繋ぎにして形成されて前記足場部材を吊持するチェーンと、
前記足場部材に設置され前記チェーンを前記足場部材に連結するチェーン連結装置とを備え、
前記鎖素子の孔と正対する側を正面側としたとき、正面側から見た前記鎖素子の幅を横幅、側面側から見た前記鎖素子の幅を縦幅として、
前記チェーン連結装置は、
軸線が鉛直方向に沿うとともに内部に前記チェーンが挿通される筒体と、
前記鎖素子の横幅よりも狭く前記鎖素子の縦幅よりも広い幅の切欠きを有する規制部と、
前記規制部を前記筒体の上端に対して横方向移動を許容しつつ上下方向の移動を規制する状態で連結する連結手段とを備える
ことを特徴とする吊り足場。
【請求項3】
前記ストッパは、前記筒体の下端と上下方向で嵌合する嵌合部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の吊り足場。
【請求項4】
前記嵌合部の内側に前記筒体の下端外周が嵌合されており、
前記チェーン連結装置は、前記嵌合部の上端に設けられて前記筒体の外周に対して遠近可能な押圧手段を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の吊り足場。
【請求項5】
前記ストッパは前記筒体の下端に当接する規制部を有し、
前記規制部は、円盤状であって、上端側方から開口する前記切欠きと、下端側方から開口して前記切欠きに通じるとともに前記鎖素子の上部を収容可能な半円状の凹部とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の吊り足場。
【請求項6】
前記連結手段が、
前記筒体の上端外周に設けられる突出部と、
前記規制部の下端に設けられて前記突出部の下端に引っ掛け可能なフック部とを有する
ことを特徴とする請求項2に記載の吊り足場。
【請求項7】
前記突出部は環状であって、
前記フック部は、前記規制部の下端から下向きに突出する断面U字状の周壁部と、前記周壁部の下端から内側に向けて突出して前記突出部の下端に当接するU字状の当接部とを有する
ことを特徴とする請求項6に記載の吊り足場。
【請求項8】
前記チェーン連結装置は、J字状又はU字状であって、一端が前記規制部に設けられた挿通孔に挿入され、他端が前記切欠きを介して前記筒体内に挿入される抜け止めピンを備える
ことを特徴とする請求項2に記載の吊り足場。
【請求項9】
前記足場部材は、並列に配置される複数の梁部材と、前記梁部材の端部に連結されるジョイントと、前記梁部材間に設置される前記作業床とを有し、
前記チェーン連結装置は、前記ジョイントに設けられている
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の吊り足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吊り足場に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の吊り足場としては、例えば、チェーンによって建築物や構造物から吊り下げられて、建築物や構造物の建設、保守工事において利用されるものがある。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている吊り足場は、奥行方向と幅方向とに並列に配置される複数の梁部材と梁部材の端部同士を連結するジョイントと梁部材間に設置される作業床とを有する足場部材とを備え、建築物や構築物等から吊り下げられたチェーンの下端がジョイントに連結されている。
【0004】
具体的には、ジョイントは、軸線が鉛直方向に沿うとともに内部にチェーンの挿通を許容する筒体を有しており、筒体には径方向で対向する一対の貫通孔が形成されている。そして、筒体の内部にチェーンを挿通して筒体の貫通孔とチェーンを構成する鎖素子内とにピンを挿入することで、チェーンをジョイントの筒体に連結して、足場部材を吊り下げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したように、チェーンの鎖素子内と筒体の貫通孔にピンを挿通してチェーンを筒体に連結する場合、鎖素子の内側が筒体の貫通孔と正対するように、鎖素子の上下方向の位置や周方向の向きを調整する必要があるため、チェーンを足場部材に連結する作業が面倒であった。
【0007】
そこで、本発明は、チェーンを足場部材に容易に連結できる吊り足場の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成させるため、本発明の吊り足場は、作業床を有する足場部材と、複数の環状の鎖素子を数珠繋ぎにして形成されて足場部材を吊持するチェーンと、足場部材に設置されチェーンを足場部材に連結するチェーン連結装置とを備え、鎖素子の孔と正対する側を正面側としたとき、正面側から見た鎖素子の幅を横幅、側面側から見た鎖素子の幅を縦幅として、チェーン連結装置は、軸線が鉛直方向に沿うとともに内部に前記チェーンが挿通される筒体と、鎖素子の横幅よりも狭く前記鎖素子の縦幅よりも広い幅の切欠きを有して筒体の下端に当接するストッパとを備えることを特徴とする。この構成によると、鎖素子の向きや孔の位置を調整せずに、ストッパをチェーン側へ横方向にスライド移動させて、ストッパの切欠き内に筒体の下端の下方に位置する鎖素子を挿入し、チェーンを引き上げるだけで、チェーンを筒体に連結できる。よって、チェーンを足場部材に対して容易に連結できる。また、本発明の吊り足場では、チェーン連結装置のストッパの上面を筒体の下端に当接させて筒体を支持するので、ストッパは、鎖素子の孔の大きさに制限を受けず十分な強度を確保できるから、吊り足場に要求される積載荷重に応じて必要な強度を確保できる。よって、本発明の吊り足場によると、吊り足場の最大積載荷重を大きくできるとともにチェーンの本数も低減できる。
【0009】
また、他の発明の吊り足場は、作業床を有する足場部材と、複数の環状の鎖素子を数珠繋ぎにして形成されて足場部材を吊持するチェーンと、足場部材に設置されチェーンを足場部材に連結するチェーン連結装置とを備え、鎖素子の孔と正対する側を正面側としたとき、正面側から見た鎖素子の幅を横幅、側面側から見た鎖素子の幅を縦幅として、チェーン連結装置は、軸線が鉛直方向に沿うとともに内部に前記チェーンが挿通される筒体と、鎖素子の横幅よりも狭く鎖素子の縦幅よりも広い幅の切欠きを有する規制部と、規制部を筒体の上端に対して横方向移動を許容しつつ上下方向の移動を規制する状態で連結する連結手段とを備えることを特徴とする。この構成によると、鎖素子の向きや孔の位置を調整せずに、ストッパを筒体側へ横方向にスライド移動させて、連結手段により規制部を筒体の上端に対して連結するとともに、切欠き内に筒体の上端付近に位置する鎖素子を挿入するだけで、チェーンを筒体に連結できる。よって、チェーンを足場部材に対して容易に連結できる。
【0010】
また、本発明の吊り足場では、ストッパは、筒体の下端と上下方向で嵌合する嵌合部を有してもよい。この構成によると、嵌合部を筒体の下端と嵌合すると、ストッパの筒体に対する横方向の移動が規制されるので、ストッパがチェーンから脱落するのを防止できる。
【0011】
また、本発明の吊り足場では、嵌合部の内側に筒体の下端外周が嵌合されており、チェーン連結装置は、嵌合部の上端に設けられて筒体の外周に対して遠近可能な押圧手段を有してもよい。この構成によると押圧手段を筒体の外周に対して接近させて筒体の外周を横方向から押圧すると、嵌合部の内径が設計よりも多少大きくて、嵌合部の内周と筒体の外周との間に隙間があったとしても、筒体の外周が嵌合部の内周に押し付けられるので、ストッパが横方向に動けなくなる。よって、嵌合部の寸法管理を厳密にせずとも、ストッパの横方向のがたつきの発生を防止することができる。
【0012】
また、本発明の吊り足場では、ストッパは筒体の下端に当接する規制部を有し、規制部は、円盤状であって、上端側方から開口する切欠きと、下端側方から開口して切欠きに通じるとともに鎖素子の上部を収容可能な半円状の凹部とを有してもよい。この構成によると、規制部の全体の肉厚を上下で隣り合う同じ向きの鎖素子間の隙間の大きさ以上に設定しても、規制部における切欠きの周囲の部分の肉厚を薄くすることができる。よって、チェーンにおける隣り合う同じ向きの2つの鎖素子間に規制部における切欠きの周囲の部分の挿入を許容しつつ、規制部における他の部分の肉厚を確保することができるので、ストッパが十分な強度を得られる。
【0013】
また、他の発明の吊り足場では、連結手段が、筒体の上端外周に設けられる突出部と、規制部の下端に設けられて突出部の下端に引っ掛け可能なフック部とを有してもよい。この構成によると、ストッパを筒体側へ横方向にスライド移動させて、切欠き内に筒体の上端付近に位置する鎖素子を挿入しつつ、フック部を突出部に引っ掛けるだけで、チェーンを筒体に連結できる。よって、チェーンを足場部材に対してより容易に連結できる。さらに、この構成によると、足場部材と足場部材に積載される積載物の荷重を、筒体の上端外周に設けられた突出部の下端に当接するフック部の当接部で受けることになるが、フック部は筒体の外周側に配置されて筒体の突出部を支持するので、フック部の肉厚や寸法は制限を受けない。そのため、フック部の肉厚や寸法を大きくすることで、フック部の強度を確保できる。よって、吊り足場の最大積載荷重を大きくできるとともにチェーンの本数も低減できる。
【0014】
また、他の発明の吊り足場では、突出部は環状であって、フック部は、規制部の下端から下向きに突出する断面U字状の周壁部と、前記周壁部の下端から内側に向けて突出して突出部の下端に当接するU字状の当接部とを有してもよい。この構成によると、周壁部や当接部の肉厚を厚くすることでフック部の強度を確保できる。よって、このように構成された吊り足場によると、吊り足場の最大積載荷重を大きくできるとともにチェーンの本数も低減できる。
【0015】
また、他の発明の吊り足場では、チェーン連結装置は、J字状又はU字状であって、一端が規制部に設けられた挿通孔に挿入され、他端が切欠きを介して筒体内に挿入される抜け止めピンを備えてもよい。この構成によると、筒体の上端にストッパが取付けられた状態で、抜け止めピンの各端部を挿通孔と筒体内に挿入すると、ストッパを筒体から取り外そうと横方向移動させても、筒体内に挿入されたチェーンが抜け止めピンに当接して切欠き内から出られない。したがって、抜け止めピンによってストッパの横方向移動が規制される。よって、ストッパの筒体からの脱落を防止できる。
【0016】
また、本発明の吊り足場では、足場部材は、並列に配置される複数の梁部材と、梁部材の端部に連結されるジョイントと、梁部材間に設置される作業床とを有し、チェーン連結装置は、ジョイントに設けられていてもよい。この構成によると、足場部材の梁部材の端部に連結されるジョイントにチェーン連結装置を設けているので、吊り足場の部品点数を削減できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の吊り足場によれば、チェーンを足場部材に容易に連結できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第一の実施の形態の吊り足場を示す斜視図である。
【
図2】第一の実施の形態の吊り足場における梁部材の側面である。
【
図3】第一の実施の形態の吊り足場における梁部材を一端側から見た正面図である。
【
図4】第一の実施の形態の吊り足場におけるジョイントの斜視図である。
【
図5】第一の実施の形態の吊り足場におけるジョイントと梁部材の接続部を拡大して示す側面図である。
【
図6】第一の実施の形態の吊り足場における連結ピンの斜視図である。
【
図7】第一の実施の形態の吊り足場におけるチェーン連結装置を拡大して示す側面図である。
【
図8】第一の実施の形態の吊り足場におけるチェーン連結装置のストッパを拡大して示す斜視図である。
【
図9】第一の実施の形態の吊り足場の組立方法を説明する図であって、梁部材の上側梁材の一端を上下方向に沿わせた姿勢でジョイントのプレートの凹部に挿入する工程を示す図である。
【
図10】第一の実施の形態の吊り足場の組立方法を説明する図であって、梁部材の上側梁材の他端を奥側へ回転させて倒す工程を示す図である。
【
図11】第一の実施の形態の吊り足場の組立方法を説明する図であって、奥行方向に沿って延びる2本の梁部材を並列に配置する工程を示す図である。
【
図12】第一の実施の形態の吊り足場の組立方法を説明する図であって、並列に配置される2本の梁部材間に作業床を設置する工程を示す図である。
【
図13】第一の実施の形態の吊り足場の組立方法を説明する図であって、並列に配置される2本の梁部材の他端に取付けられたジョイント間に幅方向に沿う梁部材を掛け渡す工程を示す図である。
【
図14】第一の実施の形態の吊り足場の組立方法を説明する図であって、2つの吊り足場のジョイント間に梁部材を掛け渡す工程を示す図である。
【
図15】第二の実施の形態の吊り足場におけるチェーン連結装置を拡大して示す側面図である。
【
図16】第二の実施の形態の吊り足場におけるチェーン連結装置のストッパを拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しながら本実施の形態について説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は同じ部品を示す。
【0020】
本発明の第一の実施の形態の吊り足場1は、作業床3を有する足場部材10と、複数の環状の鎖素子4aを数珠繋ぎにして形成されて足場部材10を吊持するチェーン4と、足場部材10に設置されチェーン4を足場部材10に連結するチェーン連結装置Aとを備える。
【0021】
本実施の形態の足場部材10は、並列に配置される複数の梁部材5,5と梁部材5の端部に連結されるジョイント6と梁部材5,5間に設置される作業床3とを有している。
【0022】
本実施の形態では、
図1に示すように、足場部材10は、各ジョイント6に複数の梁部材5を連結して形成される複数の枠体2と、各枠体2の梁部材5,5間に架け渡される複数の足場板3aからなる作業床3とを備えており、各枠体2は奥行方向と幅方向にそれぞれ接続されて配置されている。なお、
図1では、足場部材10の構造を理解しやすくするために一部の枠体2に設置される作業床3を省略している。また、
図1に示す吊り足場1は、幅方向に2列、奥行方向に2列配置された4つの枠体2を備えているが、枠体2の数は足場部材10の床面積に応じて任意に決定されればよく、枠体2の数は1つであってもよい。
【0023】
より具体的には、枠体2は、奥行方向に沿って並列に配置される2本の梁部材5,5と、幅方向に沿って並列に配置される2本の梁部材5,5と、各梁部材5の端部に後述する連結部材としての連結ピン7により連結され各梁部材5の端部同士を連結する4つのジョイント6とで平面視で四角状に形成されており、奥行方向及び幅方向で隣り合う枠体2同士は中央の1本の梁部材5とその梁部材5の両端に連結されたジョイント6を共有している。なお、本実施の形態では、枠体2は、奥行方向に沿って並列に配置される2本の梁部材5,5と幅方向に沿って並列に配置される2本の梁部材5,5とを備えているが、奥行方向に沿って並列に配置される2本の梁部材5,5同士が、作業床3によって連結されて構造体として機能する場合には、幅方向に沿って並列に配置される2本の梁部材5,5は省略されてもよい。また、枠体2の形状も平面視で正方形以外の形状、例えば、長方形や平行四辺形であってもよい。
【0024】
梁部材5は、
図2,
図3に示すように、上下一対の梁材50,51と、上側梁材50と下側梁材51間に架け渡され梁材50,51同士を接続する複数の束材52と、上側梁材50の各端部の下部から鉛直方向に沿って延びる平板状であって軸方向から見て左右一対の取付片53,53,54,54とを備える。このように、本実施の形態の梁部材5は、梁材が横並びに配置される構造となっていないため、幅方向でコンパクトな構造となっている。
【0025】
また、下側梁材51には、
図2に示すように、軸方向の左右2カ所の上部から上向きに突出するピン状の固定部51a,51aが設けられている。図示しないが、枠体2において互いに奥行方向或いは幅方向にて対向する下側梁材51,51間の固定部51a,51aにブレース材(図示せず)を対角線上に掛け渡すことで、枠体2の強度を高められる。ただし、ブレース材が設置されなくとも枠体2の強度が不足しないのであれば、ブレース材を設置するための固定部51aは省略されてもよい。
【0026】
また、取付片53と取付片54は一部を除く同一の構造となっている。具体的には、各取付片53,54には、梁部材5の軸方向から見て、上下方向に沿って並べて配置される2つのピン孔53a,53a,54a,54aが左右方向で互いに対向するように形成されている。なお、本実施の形態では、上側梁材50と下側梁材51は、円筒状に形成されているが、円筒状以外の形状、例えば角筒状であってもよい。
【0027】
また、本実施の形態では、
図2,
図3に示すように、梁部材5の一端側である
図2中右側に設けられる取付片53(以下、「一端側取付片53」と称する。)は、上側梁材50の下部と下側梁材51の上部との間に架け渡されており、上端及び下端がそれぞれ上側梁材50と下側梁材51に連結されているため、一端側取付片53,53間の隙間の下方は下側梁材51によって閉塞されている。他方、梁部材5の他端側である
図2中左側に設けられる取付片54(以下、「他端側取付片54」と称する。)は、下端の
図2中右側面が下側梁材51の
図2中左端面に連結されているため、他端側取付片54,54間の隙間の下方は開放されている。ただし、一端側取付片53,53間の隙間の下方を開放し、他端側取付片54,54間の隙間の下方を下側梁材51で閉塞するようにしてもよい。或いは、一端側取付片53,53間の隙間と他端側取付片54,54間の隙間の両方の下方を開放又は閉塞するようにしてもよい。
【0028】
また、作業床3は、
図1に示すように、枠体2における幅方向で互いに対向する梁部材5,5の上側梁材50,50間に架け渡される複数の矩形板状の足場板3aで構成されている。
【0029】
そして、各足場板3aの長手方向の両端の4隅にそれぞれ1つずつフック3bが設けられており、このフック3bを梁部材5の上側梁材50に引っ掛けることで、足場板3aは幅方向で互いに対向する梁部材5,5の上側梁材50,50間に架け渡されている。なお、図示しないが、足場板3aの長手方向の一端に設けられるフック3bと他端に設けられるフック3bは、足場板3aの短手方向で互いにずれるように配置されている。そのため、幅方向で隣り合う枠体2,2にそれぞれ足場板3aを設置すると、隣り同士の枠体2,2の足場板3aのフック3bが中央の梁部材5に引っ掛けられるが、各作業床3のフック3b,3bは、幅方向で隣り合う枠体2,2で共有している中央の梁部材5上に互い違いになるように配置されるので、フック3b,3b同士が干渉しないようになっている。
【0030】
なお、上述した作業床3の構成は一例であって、作業床3は1枚の足場板3aで構成されてもよいし、或いは、足場板3aをフック以外の取付金具を介して梁部材5に連結して足場板3aを幅方向で互いに対向する梁部材5,5間に架け渡してもよい。
【0031】
このように、上側梁材50には、複数の足場板3aが引っ掛けられているため、作業床3の荷重が下側梁材51に対してよりも大きく作用する。したがって、上側梁材50の方が下側梁材51よりも高い曲げ強度が求められるため、
図3に示すように、上側梁材50の直径は下側梁材51の直径よりも大きくなっている。ただし、梁部材5の強度が不足しない限りにおいて、下側梁材51の直径を上側梁材50の直径と同じ大きさとしてもよいし、或いは下側梁材51の直径を上側梁材50の直径よりも大きくしてもよい。
【0032】
ジョイント6は、
図4に示すように、軸線が鉛直方向に沿う円筒状の筒体60と、筒体60の外周における周方向に90度の間隔をあけて配置されるとともに筒体60の軸方向に沿う4つのプレート61とを備える。なお、筒体60の形状は、筒状であれば円筒状には限られない。
【0033】
プレート61は、筒体60の外周から筒体60の径方向に突出して筒体60の軸方向に沿う縦向きのプレート本体61aと、プレート本体61aの先端側上部から上方へ突出する突出部61bと、突出部61bと筒体60との間に形成される凹部61cとを有している。なお、本実施の形態では、凹部61cは、プレート61の上端における突出部61bと筒体60との間に形成されているが、凹部61cの位置は特に限定されず、例えば、プレート61の上端における筒体60から離間した位置に凹部61cが形成されてもよい。
【0034】
また、
図5に示すように、プレート61の上端である突出部61bの上端は、筒体60の上端よりも下方に位置している。さらに、凹部61cにおけるプレート61の延長方向の幅(以下、単に「凹部61cの幅」という。)は上側梁材の上下方向の高さよりも広くなるように設定されている。
【0035】
また、プレート61の上下方向の長さは、梁部材5の上側梁材50と下側梁材51の間の上下の間隔よりも僅かに短くなっており、プレート61の板厚は、梁部材5の取付片53,53,54,54間の隙間の大きさよりも僅かに薄くなっているので、
図5に示すように、プレート61を取付片53,53,54,54間に嵌合できる。また、一端側取付片53の上端及び下端はそれぞれ上側梁材50と下側梁材51に連結されているので、プレート61が一端側取付片53,53間に嵌合された状態では、他端側取付片54,54間に嵌合される場合とは異なってプレート61が上側梁材50と下側梁材51とに挟み込まれた状態となるので、梁部材5とジョイント6の上下方向の相対移動が規制される。
【0036】
さらに、プレート本体61aには、上下方向に沿って並べて配置され、プレート61が取付片53,53,54,54間に嵌合された状態で、取付片53,54のピン孔53a,54aと対向する2つの挿通孔61a1,61a1が形成されている。また、プレート本体61aには、
図4に示すように、反筒体側の下側を斜めに切り欠いて形成された逃げ部61a2が設けられている。
【0037】
そして、
図5に示すように、梁部材5の取付片53,53,54,54間にジョイント6のプレート61を嵌合させた状態で、互いに対向する2つのピン孔53a,53a,54a,54a及び挿通孔61a1,61a1に連結部材としての後述する連結ピン7のピン部70をそれぞれ挿入することで、梁部材5はジョイント6のプレート61に対して連結される。
【0038】
また、本実施の形態では、梁部材5の取付片53,53,54,54が、ジョイント6のプレート61に対して2カ所でピン接合されているので、梁部材5の取付片53,53,54,54をジョイント6のプレート61に対して1カ所でピン接合する場合に比べて、梁部材5のプレート61に対する上下方向の回転が規制されるので、梁部材5の上下方向のがたつきが抑制される。
【0039】
なお、本実施の形態では、
図5に示すように、取付片53,53,54,54の形状は、取付片53,53,54,54間にプレート61が嵌合された状態で、プレート61と略一致する形状とされているが、取付片53,53,54,54の形状は特に限定されず、例えば矩形板状であってもよい。
【0040】
また、本実施の形態の連結ピン7は、
図6に示すように、ピン孔53aと挿通孔61a1に挿入可能であって一対のピン孔53a,53a,54a,54a及び一対の挿通孔61a1,61a1と同じ間隔で互いに平行に配置される一対のピン部70,70と、一対のピン部70,70の基端側同士を接続する接続部としての円柱状の把持部71と、一対のピン部70,70の中央付近同士を接続する接続部としての矩形板状の規制部72とを備える。
【0041】
連結ピン7がこのように構成されていると、作業者は、把持部71を持ち手にして2つのピン部70を取付片53,54とプレート61に形成された互いに対向する2つのピン孔53a,53a,54a,54a及び挿通孔61a1,61a1(以下、「孔53a,54a,61a1」と称する)に対して挿入できる。このように取付片53,54とプレート61の2つの孔53a,54a,61a1に対して2つのピン部70,70を一度に挿入できるので、2つの孔53a,54a,61a1に対して1本ずつピンを挿入する場合に比べて、梁部材5をジョイント6に対して連結する作業の効率が向上する。
【0042】
また、本実施の形態では、規制部72は、ピン部70の軸方向におけるピン部70が取付片53,54とプレート61の孔53a,54a,61a1に対して適切な位置まで挿入されたときに取付片53,54に当接する位置に設けられている。そのため、作業者は、ピン部70を孔53a,54a,61a1に対して規制部72が取付片53,54に当接するまで挿入すれば、ピン部70の挿入量が常に一定となるので、梁部材5の取付片53,54とジョイント6のプレート61との連結強度にバラつきがでるのを防止できる。
【0043】
なお、規制部72は、例えば、ピン部70の外周から突出する突起であってもよい。その場合であっても、ピン部70の挿入量を一定にできる。ただし、本実施の形態のように、ピン部70,70間に規制部72が掛け渡されていると、一対のピン部70,70を把持部71と規制部72とで支持できるので、ピン部70の径方向に作用する力に対する強度が高くなる。
【0044】
また、本実施の形態では、一方(
図6中上側)のピン部70の先端部分には、径方向に貫通する貫通孔70aが形成されている。この貫通孔70aは、ピン部70が取付片53,54とプレート61の孔53a,54a,61a1に挿入された状態で、取付片53,54から突出する位置に配置されている。そして、図示しないが、ピン部70を孔53a,54a,61a1に挿入した状態で、貫通孔70aに図外の抜け止めピンを挿入することで連結ピン7の取付片53,54とプレート61の孔53a,54a,61a1からの抜けを防止できるようになっている。
【0045】
なお、上述した連結ピン7の構成は一例であって、例えば、連結ピン7は把持部71又は規制部72のいずれかが省略されて構成されてもよい。或いは、連結ピン7を独立した複数のピンとして、取付片53,54とプレート61の孔53a,54a,61a1にピンを1本ずつ挿入して梁部材5をジョイント6のプレート61に対してピン接合するようにしてもよい。
【0046】
また、取付片53,54とプレート61の孔53a,54a,61a1の数と連結ピンのピン部70の数は3つ以上であってもよく、その場合であっても、取付片53,54とプレート61が複数箇所で連結されるので梁部材5の上下方向のがたつきを抑制できるとともに、取付片53,54とプレート61の複数の孔53a,54a,61a1に対して複数のピン部70,70を一度に挿入できるので、作業性が向上する。
【0047】
ただし、取付片53,54とプレート61の孔53a,54a,61a1の数が1つであってもよい。その場合は、連結ピンを1本の独立したピンとすればよい。
【0048】
また、本実施の形態では、取付片53,54とプレート61の孔53a,54a,61a1は、それぞれ、上下方向に沿って並べて配置されているが、孔53a,54a,61a1の並ぶ方向は特に限定されず、例えば横方向に沿って並べて配置されてもよい。ただし、孔53a,54a,61a1を取付片53,54とプレート61に対して上下方向に沿って並べて配置すると、孔53a,54a,61a1を横方向に沿って並べて配置する場合に比べて、取付片53,54とプレート61の横幅(
図2中左右方向の幅)を短くできる。
【0049】
以上のように、ジョイント6の各プレート61には、連結ピン7を介して梁部材5をそれぞれ連結できるようになっている。枠体2は、4つのジョイント6同士の互いに対向するプレート61に梁部材5の各端部をそれぞれ連結ピン7を介して連結することで、平面視で四角状に構成されている。また、
図1に示すように吊り足場1が複数の枠体2を備えている場合、奥行方向又は幅方向で隣り合う枠体2,2同士は、枠体2,2の中央に配置される1本の梁部材5とこの梁部材5の両端部に連結ピン7を介して連結されたジョイント6を共有している。
【0050】
つづいて、チェーン4を足場部材10に連結するチェーン連結装置Aについて詳細に説明する。チェーン4は、複数の環状の鎖素子4aを数珠繋ぎにして形成されている。以下、鎖素子4aの内側を鎖素子4aの孔と称するとともに鎖素子4aの孔と正対する側を正面側とし、正面側から見た鎖素子4aの向きを横向き、側面側から見た鎖素子4aの向きを縦向きとして、横向きの鎖素子4aの幅を横幅、縦向きの鎖素子4aの幅を縦幅と称して説明する。
【0051】
チェーン連結装置Aは、
図7に示すように、内部にチェーン4が挿通されるジョイント6の筒体60と、鎖素子4aの横幅よりも狭く鎖素子4aの縦幅よりも広い幅の切欠き80aを有して筒体60の下端に当接するストッパ8とを備える。なお、
図7ではチェーン連結装置Aの構成を分かりやすくするために、梁部材5の図示を省略している。
【0052】
より詳細には、本実施の形態のストッパ8は筒体60の下端に当接する規制部80を有し、規制部80は、
図7,
図8に示すように、円盤状であって、上端側方から開口する切欠き80aと、下端側方から開口して切欠き80aに通じるとともに鎖素子4aの上部を収容可能な半円状の凹部80bとを有している。切欠き80aは、規制部80の上端を側方から径方向に規制部80の半径以上の長さで角丸長方形状に切り欠いて形成されている。また、ストッパ8を側方から見たときの切欠き80aの横方向の幅(以下、単に「切欠き80aの幅」という。)は、鎖素子4aの横幅よりも狭く鎖素子4aの縦幅よりも広くなるように設定されている。
【0053】
また、本実施の形態の凹部80bは、
図7に示すように、規制部80を側方から見たときに、
図7中で左右方向で中央と切欠き80aの中央を鉛直方向に沿って通る軸線とが同一直線上となるように合わせて、円盤状の規制部80の下端を側方から径方向に規制部80の中央を少し過ぎたところまで半円筒状に切り欠いて形成されており、凹部80bの上部が切欠き80aと通じている。なお、本実施の形態では、凹部80bは、規制部80の下端を側方向から径方向に規制部80の中央を少し過ぎたところまで切り欠いて形成されているが、規制部80を径方向に貫通して形成されてもよい。また、凹部80bはチェーン4の鎖素子4aの上部と符号する大きさに形成されている。
【0054】
このように構成されたストッパ8では、切欠き80aの幅は、縦向きの鎖素子4aの幅よりも広いので、切欠き80aと縦向きの鎖素子4aを水平方向で正対させた状態で、ストッパ8をチェーン4側へ横方向にスライド移動させると、切欠き80a内に縦向きの鎖素子4aを挿入できる。また、切欠き80aの幅は、横向きの鎖素子4aの幅よりも狭いので、切欠き80aは、内側に縦向きの鎖素子4aが挿入された状態で、切欠き80a内に挿入された縦向きの鎖素子4aの上下にそれぞれ連結される2つの横向きの鎖素子4a,4aの上下方向の通過を許容しない。つまり、切欠き80aは、チェーン4の横方向からの挿入を許容するが、内側に挿入されたチェーン4の上下方向の移動を許容しない。したがって、規制部80の切欠き80a内に縦向きの鎖素子4aが挿入されると、ストッパ8がチェーン4に対して上下移動が規制された状態で連結される。
【0055】
よって、チェーン4の筒体60の下端よりも下方に位置する縦向きの鎖素子4aを規制部80の切欠き80a内に挿入した状態で、ストッパ8をチェーン4で吊り下げると、筒体60の下端に規制部80の上面が当接して、筒体60がストッパ8によって下方から支持されるので、足場部材10がストッパ8とともにチェーン4で吊り下げられて支持される。
【0056】
このように、本実施の形態のチェーン連結装置Aでは、ストッパ8をチェーン4側へ横方向にスライド移動させて、規制部80の切欠き80a内に筒体60の下端の下方に位置する縦向きの鎖素子4aを挿入し、チェーン4を上方へ引き上げると、チェーン4を筒体60に取付け得る。よって、従来のように、筒体に挿入されたチェーンの鎖素子の孔の位置と向きを筒体に設けた貫通孔と正対するように調整してから鎖素子の孔と当該貫通孔にピンを挿通することでチェーンを筒体に連結する場合に比べて、本実施の形態のチェーン連結装置Aでは、鎖素子4aの向きや孔の位置を筒体の貫通孔の位置と同じ高さ同じ向きに調整する必要がないため、チェーン4を足場部材10に対して容易に連結できる。
【0057】
また、従来の吊り足場では、チェーンと筒体を連結するピンに対して、足場部材と足場部材に積載される積載物の荷重が作用する。この際、当該荷重は、ピンにおける筒体に設けられた貫通孔に挿通される部分に集中することになるため、当該荷重が大きくなるとピンの強度を高くする必要がある。しかしながら、当該ピンの径は鎖素子の孔を通る大きさに制限されるとともにピンの径を大きくすると筒体の径を大きくする必要があって、ピンの強度を高めるにも限度がある。したがって、従来の吊り足場では、最大積載荷重を大きくするのが困難であった。
【0058】
これに対して、本実施の形態のチェーン連結装置Aでは、ストッパ8が規制部80の上面を筒体60の下端に当接させて筒体60を支持するので、規制部80は、鎖素子4aの孔の大きさに制限を受けず十分な強度を確保できるから、吊り足場1に要求される積載荷重に応じて必要な強度を確保できる。よって、チェーン連結装置Aを備える吊り足場1によると、吊り足場1の最大積載荷重を大きくできるとともにチェーン4の本数も低減できる。
【0059】
なお、本実施の形態では、切欠き80aは、角丸長方形状に形成されて、横幅が一定となっている。そして、前述したように、切欠き80aの横幅は、鎖素子4aの縦幅よりも広く、鎖素子4aの横幅よりも狭くなっている。そのため、本実施の形態では、切欠き80aの全ての幅が鎖素子4aの縦幅よりも広く、鎖素子4aの横幅よりも狭くなっているが、少なくとも切欠き80aの一部の幅が鎖素子4aの縦幅よりも広く、鎖素子4aの横幅よりも狭くなっていれば、切欠き80aの他の部分の幅は、鎖素子4aの縦幅よりも広くてもよい。ただし、本実施の形態のように、切欠き80aの全ての幅が、鎖素子4aの縦幅よりも広く、鎖素子4aの横幅よりも狭くなっていると、チェーン4がストッパ8に対して横方向に多少ずれても、ストッパ8がチェーン4から脱落しない。
【0060】
また、通常、このようにストッパ8を横方向にスライド移動させて、規制部80の切欠き80a内に縦向きの鎖素子4aを挿入する場合、規制部80が横向きの鎖素子4aに干渉しないように、規制部80の肉厚は上下で隣り合う横向きの鎖素子4a,4a間の隙間の大きさよりも薄くせざるを得ない。ところが、本実施の形態の規制部80は、規制部80の下端側方から開口して切欠き80aに通じるとともに鎖素子4aの上部を収容可能な半円状の凹部80bを備えているため、規制部80の全体の肉厚を上下で隣り合う横向きの鎖素子4a,4a間の隙間の大きさ以上に設定しても、規制部80における切欠き80aの周囲の部分の肉厚を薄くすることができる。よって、横向きの鎖素子4a,4a間に規制部80における切欠き80aの周囲の部分の挿入を許容しつつ、規制部80における他の部分の肉厚を確保することができるので、ストッパ8が十分な強度を得られる。
【0061】
また、本実施の形態の凹部80bはチェーン4の鎖素子4aの上部と符号する大きさの半円状に形成されている。そのため、
図7に示すように、縦向きの鎖素子4aが切欠き80a内に挿入された状態では、切欠き80a内に挿入された縦向きの鎖素子4aの下端に連結される横向きの鎖素子4aの上端が凹部80bに嵌り込む。したがって、鎖素子4aの凹部80b内での座りが良くなり鎖素子4aの上端の摩耗を抑制できるとともに、チェーン4で足場部材10を安定的に吊り下げできる。ただし、凹部80bの大きさは、鎖素子4aの上部を収容可能な大きさであれば、鎖素子4aの上部と符合する大きさでなくともよい。
【0062】
なお、ストッパ8の強度が不足しないのであれば、規制部80の全体の肉厚を上下で隣り合う横向きの鎖素子4a,4a間の隙間の大きさ未満にしてもい。その場合には、凹部80bは省略される。
【0063】
なお、本実施の形態のストッパ8では、筒体60の下端に当接する規制部80がチェーン4の上下移動を規制する切欠き80aを備えているが、このようなストッパ8の構造は一例であって、例えば、ストッパ8は、筒体60の下端に当接する規制部と、鎖素子4aの横幅よりも狭く鎖素子4aの縦幅よりも広い幅の切欠きを有するチェーン取付部を別々に備える構造であってもよい。
【0064】
ただし、本実施の形態のように、筒体60の下端に当接する規制部80が切欠き80aを備えていると、ストッパ8は規制部80とは別に切欠きを有するチェーン取付部を備える必要がないため、ストッパ8を小型化できるとともに材料を削減できる。
【0065】
また、
図7,
図8に示すようにストッパ8は、規制部80の上端に設けられて筒体60の下端の外周に嵌合する嵌合部81を備えている。具体的には、嵌合部81は、内径が筒体60の外径よりも大きく筒体60の下端の外周に嵌合するC型筒状であって、鎖素子4aの切欠き80a内への挿入を許容するため、開口を規制部80の切欠き80aの開口に一致させて、規制部80の外周縁から上向きに突出している。
【0066】
このように構成されたストッパ8では、筒体60の下端よりも下方に位置するチェーン4の縦向きの鎖素子4aを規制部80の切欠き80a内に挿入してから、規制部80の上端と筒体60の下端を接近させていき、
図7に示すように、規制部80の上面に筒体60の下端が当接すると、筒体60の下端が嵌合部81の内側に入り込んで嵌合される。このように、嵌合部81内に筒体60の下端外周が嵌合されると、ストッパ8の筒体60に対する横方向の移動が規制されるので、ストッパ8がチェーン4から脱落するのを防止できる。
【0067】
なお、本実施の形態では、内径が筒体60の外径よりも大きいC字筒状の嵌合部81が、規制部80の周縁に沿うように設けられており、嵌合部81の内側に筒体60の下端が入り込んで嵌合されているが、外径が筒体60の内径よりも小さく筒体60の内周に嵌合されるC字筒状の嵌合部81を規制部80の周縁よりも内側に設けて、嵌合部81を筒体60の内側に嵌合するようにしてもよいし、規制部80の上端に筒体60の下端の嵌合を許容する円環状の溝を設けてこれを嵌合するとしてもよい。
【0068】
また、嵌合部81の形状は、筒体60の下端に嵌合された状態で、ストッパ8の筒体60に対する横方向移動を規制できる限りにおいて、特に限定されず、例えば、嵌合部81が、規制部80の上端の外周縁から周方向に沿って間欠的に突出する複数の円弧状の突起で構成されてもよい。また、筒体60の断面形状が円以外の場合には、その筒体60の断面形状に合わせて、嵌合部81の形状を適宜変更すればよい。ただし、嵌合部81は省略されてもよい。
【0069】
また、嵌合部81の上端には、筒体60の外周に対して遠近可能であって、筒体60の外周を押圧する押圧手段82が設けられている。具体的には、押圧手段82は、嵌合部81の上端にねじ孔(符示せず)が筒体60の外周に対向する向きで取付けられたナット82aと、ナット82aに螺合されたボルト82bとを備え、ボルト82bを周方向に回転させると送りねじの要領でボルト82bが筒体60に対して遠近する。
【0070】
そして、
図7に示すように、嵌合部81が筒体60の下端に嵌合されて規制部80の上面が筒体60の下端に当接した状態で、ボルト82bをナット82aに対して回転させて筒体60側へ接近させると、ボルト82bの先端が筒体60の外周に当接して、筒体60を横方向から押圧する。このように、筒体60の外周がボルト82bによって押圧されると、嵌合部81の内径が寸法誤差などにより設計よりも多少大きくて、嵌合部81の内周と筒体60の外周との間に隙間ができたとしても、筒体60の外周が嵌合部81の内周に押し付けられるので、ストッパ8が横方向に動けなくなる。よって、嵌合部81の寸法管理を厳密にせずとも、ストッパ8の横方向のがたつきの発生を防止することができる。なお、本実施の形態では、ボルト82bは、基端に一対の円弧状の取手82b1,82b1が設けられた蝶ボルトとされているため、工具を使わずにボルト82bを回転操作しやすくなっている。ただし、ボルト82bは、蝶ボルト以外であってもよく、工具を使って回転操作されてもよい。
【0071】
なお、上述した押圧手段82の構成は一例であって、筒体60の外周に対して遠近して筒体60を押圧して嵌合部81へ筒体60を押し付けできる限りにおいて、押圧手段82の構成は特に限定されない。例えば、押圧手段は、外周に設けられるフランジを有する押圧ピンと、嵌合部の上端に設けられて押圧ピンが摺動自在に挿通される孔を有するばね受プレートと、ばね受プレートとフランジとの間に介装されて押圧ピンを筒体60側へ付勢するコイルばねとを備える構成とされてもよい。このように構成された押圧手段では、コイルばねの付勢力で押圧ピンを筒体60側へ接近させて筒体60を押圧でき、コイルばねの付勢力に抗して押圧ピンを引っ張ることで押圧ピンを筒体60から遠ざけることができる。ただし、ストッパ8の横方向の多少のがたつきを許容する場合には、押圧手段82は省略されてもよい。
【0072】
なお、本実施の形態の吊り足場1のチェーン4の本数は、足場部材10の大きさや支持荷重に合わせて任意の本数にすることができ、全てのジョイント6の筒体60にチェーン4を連結しなくともよい。また、本実施の形態では、ジョイント6にチェーン連結装置Aを設けることで、ジョイント6にチェーン4を連結しているが、チェーン連結装置Aを足場部材10のジョイント6以外の部分、例えば、梁部材5に筒体60を設けて、その筒体60にストッパ8を介してチェーン4を連結してもよい。
【0073】
つづいて、本実施の形態の吊り足場1の組立方法について、詳細に説明する。まず、梁部材5とジョイント6を前述したように連結ピン7で連結して複数の枠体2を組み立てて、各枠体2の上に作業床3をそれぞれ設置して、足場部材10を地上で組み立てる。そして、地上で組み立てた足場部材10(以下、「既設の足場部材10」とする。)に対してチェーン連結装置Aでチェーン4を連結する。具体的には、前述したように、足場部材10の各ジョイント6の筒体60に、チェーン4を挿通し、筒体60の下端よりも下方に位置するチェーン4の鎖素子4aに対してストッパ8を横方向にスライド移動させて、ストッパ8の切欠き80a内に鎖素子4aを挿入し、チェーン4を上向きに引っ張ってストッパ8の規制部80の上面を筒体60の下端に当接することで、チェーン4をジョイント6の筒体60に連結する。このように、規制部80の切欠き80a内に筒体60の下端の下方に位置する鎖素子4aを挿入するだけで、チェーン4を筒体60に対して容易に連結できるため、作業時間を短縮できる。そして、チェーン4を重機やチェーンブロックで吊り上げてチェーン4を建築物や構築物に固定することにより、
図1に示すように、既設の足場部材10を建築物や構築物等に吊り下げる。
【0074】
次に、建築物や構築物等に吊り下げられた足場部材10の床面積を拡張する方法について説明する。以下、既設の足場部材10に取付けられる部品に対しては語頭に「拡張用の」を付けて説明する。まず、
図9に示すように、既設の足場部材10における奥行方向で床面積を拡張する側である奥側に配置されたジョイント6のプレート61の上端に形成された凹部61cに対して、拡張用の梁部材5の上側梁材50の一端を下にして立てた上下方向に沿う姿勢で挿入する。その後、
図10に実線で示すように、作業者は拡張用の梁部材5の先端である他端に取り付けた図示しないロープ等の支持具を介して拡張用の梁部材5を支持しながら、上側梁材50の一端を支点として上側梁材50の他端を奥側へ回転させながら拡張用の梁部材5を徐々に倒していく。なお、作業者が拡張用の梁部材5を支持する支持具は、ロープ以外であってもよく、例えば、ベルトやチェーン或いは小型のクレーンであってもよい。
【0075】
ここで、凹部61cの幅は上側梁材50の上下方向の高さよりも広いため、
図9に示すように、上側梁材50の一端を、鉛直方向に沿う姿勢で凹部61c内に挿入できるとともに、上側梁材50の一端と凹部61cの側壁(突出部61b及び筒体60)との間に隙間ができる。すると、上側梁材50を鉛直方向に沿う姿勢にできることで上側梁材50の姿勢が凹部61c内で安定するとともに、上側梁材50の一端と凹部61cの側壁(突出部61b及び筒体60)との間に隙間ができることにより上側梁材50の奥側への回転が許容されるので、上下方向に沿う姿勢の拡張用の梁部材5を奥側へ倒す作業を安全で容易に行うことができる。
【0076】
なお、上述した上側梁材50の一端を凹部61c内に挿入する際の上側梁材50の「上下方向に沿う姿勢」には、鉛直方向に沿う姿勢だけでなく、奥側に傾く姿勢も含まれる。したがって、初めから上側梁材50を奥側に傾く姿勢にして、上側梁材50の一端の角部を凹部61c内に挿入してもよい。このように、初めから奥側に傾く姿勢の上側梁材50の一端の角部を凹部61c内に挿入する場合には、凹部61cの幅は、上側梁材50の一端の角部の挿入を許容できる限りにおいて、上側梁材50の上下方向の高さよりも狭くともよい。
【0077】
また、
図10に実線で示すように、拡張用の梁部材5が奥側へ傾いた状態では、上側梁材50の一端は凹部61cの奥側の側壁である突出部61bの上端の角部に当接する。つまり、拡張用の梁部材5は、上側梁材50をプレート61の上端に支持させながら奥側へ倒れる。よって、拡張用の梁部材5を奥側へ倒す際に、拡張用の梁部材5が一気に倒れてしまうのを防止できるので、拡張用の梁部材5を安全に奥側へ倒すことができる。さらに、凹部61c内に挿入された上側梁材50の一端は、凹部61cの側壁(突出部61b及び筒体60)によって奥行方向で挟まれているので、拡張用の梁部材5を奥側へ倒す際に上側梁材50の一端がプレート61の上面を滑って動いてしまうのを防止できる。
【0078】
そして、拡張用の梁部材5の上側梁材50が、
図10に破線で示すように、軸方向が水平方向に沿う姿勢(横向き姿勢)になるまで倒れると、上側梁材50の下端が突出部61bの上端に支持されるとともに、一端側取付片53,53間にプレート61が嵌合されて、一端側取付片53のピン孔53aとプレート61の挿通孔61a1が対向する。
【0079】
ここで、プレート61の上端である突出部61bの上端は筒体60の上端よりも下方に位置している。そのため、拡張用の梁部材5の上側梁材50が横向き姿勢になると、
図10に破線で示すように、上側梁材50の一端側(図中右側)の端面が筒体60の外周に正対するので、上側梁材50の端面を筒体60の外周に当接させれば、拡張用の梁部材5をプレート61の延長方向(図中左右方向)で位置決めできる。なお、突出部61bの上端と筒体60の上端の位置の高さの差は、上側梁材50の端面が筒体60に引っ掛かる程度あればよく、上側梁材50の上下方向の高さ以下であってもよい。ただし、拡張用の梁部材5のプレート61の延長方向での位置決めが不要であれば、突出部61bの上端は筒体60の上端よりも上方に位置してもよい。
【0080】
また、前述したように、一対の一端側取付片53,53は、上側梁材50と下側梁材51との間に上下に架け渡されており、一端側取付片53,53間の隙間の下方は、下側梁材51によって閉塞されている。そのため、拡張用の梁部材5の上側梁材50が横向き姿勢になったときに、下側梁材51がプレート61の下端に当接して、拡張用の梁部材5の上側梁材50がそれ以上倒れるのを防止できるので、一端側取付片53のピン孔53aとプレート61の挿通孔61a1とが対向する位置で拡張用の梁部材5を位置決めできる。
【0081】
また、このように一対の一端側取付片53,53が上側梁材50と下側梁材51に架け渡されていると、拡張用の梁部材5を奥側へ倒して一端側取付片53,53間にプレート61を嵌合する際に、下側梁材51の一端が描く回転軌跡がプレート61側を通ることになる。
【0082】
これに対し、本実施の形態のプレート61には、拡張用の梁部材5を奥側へ倒して一端側取付片53,53間にプレート61を嵌合する際に、下側梁材51の一端が描く回転軌跡上にプレート61が配置されないように、プレート本体61aの反筒体側の下側を切り欠いて形成される逃げ部61a2が設けられている。したがって、一対の一端側取付片53,53が上側梁材50と下側梁材51に架け渡されていても、拡張用の梁部材5を奥側へ倒して一端側取付片53,53間にプレート61を嵌合する際に、拡張用の梁部材5の下側梁材51がプレート61に干渉するのを回避できる。
【0083】
なお、本実施の形態では、逃げ部61a2は、プレート本体61aを斜めに切り欠いて形成されているが、切欠き形状は特に限定されず、例えば、プレート本体61aを円弧状又はL字状に切り欠いて形成されてもよい。ただし、逃げ部61a2がプレート本体61aを斜めに切り欠いて形成されると、プレート本体61aを円弧状に切り欠いて形成する場合に比べて加工が容易で、プレート本体61aをL字状に切り欠いて形成する場合に比べてプレート本体61aを切り欠く面積が小さくなるのでプレート61の強度の低下を抑制できる。
【0084】
また、拡張用の梁部材5を奥側へ倒して一端側取付片53,53間にプレート61を嵌合する際に、下側梁材51がプレート61に干渉するのを回避する手段は、プレート本体61aの反筒体側に逃げ部61a2を設ける方法には限定されない。例えば、プレート61の上下方向の長さを下側梁材51が干渉しない程度に短くするか、或いは、上側梁材50と下側梁材51の上下の間隔を下側梁材51が干渉しない程度に大きくしてもよい。ただし、プレート61の上下方向の長さを短くする場合にはプレート61の強度の低下を招き、上側梁材50と下側梁材51の上下の間隔を大きくする場合には梁部材5の上下方向の高さが高くなるので、梁部材5が大型化して重量の増加を招く。
【0085】
これに対して、本実施の形態のように、プレート本体61aの反筒体側に逃げ部61a2を設けて、下側梁材51がプレート61に干渉するのを回避する場合、プレート61の上下方向の長さや上側梁材50と下側梁材51の上下の間隔を変える必要がないため、プレート61の強度の低下を防止しつつ、梁部材5の重量の増加を回避できる。
【0086】
また、図示しないが、拡張用の梁部材5の他端を上下方向に沿う姿勢でプレート61の凹部61cに挿入した状態で、拡張用の梁部材5を奥側へ倒して他端側取付片54,54間にプレート61を嵌合するようにしてもよい。この場合、一対の他端側取付片54,54の下端は下側梁材51の他端面に連結されているため、プレート61に逃げ部61a2を設けずとも、拡張用の梁部材5を奥側へ倒して他端側取付片54,54間にプレート61を嵌合する際に、下側梁材51がプレート61に干渉することがない。
【0087】
また、上述した、上下方向に沿わせた姿勢で上側梁材50の一端をプレート61の凹部61cに挿入する工程と、上側梁材50の一端を凹部61cに挿入した状態で上側梁材50の他端を奥側へ回転させて倒すとともに上側梁材50の一端側取付片53,53間にプレート61を嵌合する工程は、全て作業者が既設の足場部材10の作業床3上から身を乗り出さずに行うことができる。
【0088】
その後、拡張用の梁部材5の上側梁材50を横向き姿勢にした状態で、互いに対向する一端側取付片53のピン孔53aとプレート61の挿通孔61a1に連結ピン7を挿入して、梁部材5をジョイント6のプレート61に連結する。ここで、ジョイント6のプレート61は、既設の足場部材10の作業床3の至近にあるため、作業者は、一端側取付片53のピン孔53aとプレート61の挿通孔61a1に連結ピン7を挿入する作業を、作業床3から身を乗り出すことなく行える。
【0089】
以上の通り、上記方法によれば、既設の足場部材10における奥行方向で奥側に配置されたジョイント6に拡張用の梁部材5を連結する作業において、作業者が既設の足場部材10の作業床3上から身を乗り出す必要がないので、足場部材10の床面積の拡張作業を安全に行える。
【0090】
つづいて、拡張用の梁部材5を連結したジョイント6に幅方向で隣接するジョイント6に対しても同様の手順で拡張用の梁部材5を連結する。すると、
図11に示すように、奥行方向に沿って延びる2本の拡張用の梁部材5,5が、並列配置される。
【0091】
次に、
図12に示すように、並列配置された2本の拡張用の梁部材5,5の間に複数の拡張用の足場板3aを掛け渡し作業床3を設置する。その後、
図13に示すように、2本の拡張用の梁部材5の他端側取付片54,54にそれぞれ拡張用のジョイント6を取付ける。具体的には、予め建築物や構築物等に吊り下げられたチェーン4に拡張用のジョイント6をストッパ8を介して連結しておいてから、その拡張用のジョイント6を連結ピン7を介して拡張用の梁部材5の他端側取付片54に取付ける。すると、チェーン4を拡張用のジョイント6に取付けるために、作業者が作業床3上から身を乗り出す必要がない。また、チェーン4に拡張用のジョイント6を連結する作業は、空中で行うことになるが、前述したように、拡張用のジョイント6の筒体60内にチェーン4を挿通し、筒体60の下端よりも下方に位置するチェーン4の鎖素子4aに対してストッパ8を横方向にスライド移動させて、ストッパ8の切欠き80a内に鎖素子4aを挿入し、ストッパ8の規制部80の上面を筒体60の下端に当接させるだけで、チェーン4をジョイント6の筒体60に連結できる。よって、空中での作業時間を短縮できるとともに、作業床3を設置してから作業床3上で作業でき作業者が作業床3から身を乗り出す必要がないため、安全で容易に足場部材10の床面積の拡張作業を行うことができる。
【0092】
なお、拡張用の梁部材5の他端に拡張用のジョイント6を取付けてから、拡張用のジョイント6の筒体60にストッパ8を介してチェーン4を取付けるようにしてもよい。その場合であっても、筒体60は作業床3の至近にあるため、作業者は作業床3上から身を乗り出さずに、筒体60にチェーン4を取付けることができる。よって、この場合であっても、足場部材10の床面積の拡張作業を安全で容易に行うことができる。
【0093】
最後に、並列配置された2本の拡張用の梁部材5の他端側取付片54,54に取付けられた拡張用のジョイント6,6に、幅方向に沿って延びる拡張用の梁部材5の各端部を連結ピン7を介して連結する。これらの作業においても、作業者は作業床3上から身を乗り出す必要がないため、足場部材10の床面積の拡張作業を安全に行える。
【0094】
以上の手順を奥行方向又は幅方向で繰り返すことで、本実施の形態の吊り足場1は、建築物や構築物等に吊り下げ支持された状態で任意の位置まで足場部材10の床面積を拡張できるようになっている。なお、上述した吊り足場1の組立方法は、一例であって、上述した方法には限定されない。
【0095】
また、2つの既設の足場部材10,10を空中で同時に組み立てていき、2つの既設の足場部材10,10の互いに正対するジョイント6,6間に拡張用の梁部材5を掛け渡すことで、2つの既設の足場部材10,10を空中で接続して、1つの吊り足場1を組み立ててもよい。具体的には、
図14に示すように、2つの既設の足場部材10,10のうち図中右側の一方の足場部材10のジョイント6のプレート61の凹部61cに拡張用の梁部材5の上側梁材50の一端を下にして立てた上下方向に沿う姿勢で挿入した状態から図中左側の他方の足場部材10のジョイント6側に向けて倒していく。ここで、前述したように、本実施の形態の梁部材5の他端側に設けられた一対の他端側取付片54,54の下端が下側梁材51の他端面に連結されているため、他端側取付片54,54間の隙間の下方は開放されている。そのため、拡張用の梁部材5の上側梁材50を他方の足場部材10側へ倒したときに、拡張用の梁部材5の上側梁材50が他方の足場部材10のジョイント6のプレート61の上端に対して上から覆い被さって当接して、他端側取付片54,54間にプレート61が嵌合された状態となる。その後、両方の足場部材10,10の作業床3上から拡張用の梁部材5の端部を各ジョイント6に連結ピン7を介して連結することで、一方の足場部材10のジョイント6と他方の足場部材10のジョイント6の間に拡張用の梁部材5を掛け渡して連結することができる。
【0096】
そして、図示しないが、上記の手順で一方の足場部材10の並列する2つのジョイント6,6と他方の足場部材10の並列する2つのジョイント6,6の間にそれぞれ拡張用の梁部材5を掛け渡し、2本の拡張用の梁部材5,5間に複数の足場板3aを掛け渡して作業床3を設置することで、2つの足場部材10,10同士を空中で接続できる。このように、2つの足場部材10,10同士を空中で接続して1つの吊り足場1を組み立てるようにすると、床板面積の大きな吊り足場1を短時間で組み立てることができる。
【0097】
なお、本実施の形態では、2つの足場部材10,10のジョイント6,6間に拡張用の梁部材5を掛け渡すことができるように、梁部材5の他端側に設けられた他端側取付片54,54間の隙間は下方が開放されているが、そのような用途での使用が想定されない場合は、他端側取付片54,54間の隙間は、一端側取付片53,53間の隙間と同様に、下側梁材51で閉塞されてもよい。このようにすると、梁部材5の一端側と他端側の構造が同じになるので、組間違いが発生するのを防止できる。
【0098】
前述したように、本実施の形態の吊り足場1は、作業床3を有する足場部材10と、複数の環状の鎖素子4aを数珠繋ぎにして形成されて足場部材10を吊持するチェーン4と、足場部材10に設置されチェーン4を足場部材10に連結するチェーン連結装置Aとを備え、鎖素子4aの孔と正対する側を正面側としたとき、正面側から見た鎖素子4aの幅を横幅、側面側から見た鎖素子4aの幅を縦幅として、チェーン連結装置Aは、軸線が鉛直方向に沿うとともに内部にチェーン4が挿通される筒体60と、鎖素子4aの横幅よりも狭く鎖素子4aの縦幅よりも広い幅の切欠き80aを有して筒体60の下端に当接するストッパ8とを備えている。
【0099】
このように構成された吊り足場1では、ストッパ8をチェーン4側へ横方向にスライド移動させて、ストッパ8の切欠き80a内に筒体60の下端の下方に位置する鎖素子4aを挿入し、チェーン4を引き上げるだけで、チェーン4を筒体60に連結できる。よって、従来のように、筒体に挿入されたチェーンの鎖素子の孔の位置と向きを筒体に設けた貫通孔と正対するように調整してから鎖素子の孔と当該貫通孔にピンを挿通することでチェーンを筒体に連結する場合に比べて、鎖素子4aの向きや孔の位置を筒体の貫通孔の位置と同じ高さ同じ向きに調整する必要がないため、チェーン4を足場部材10に対して容易に連結できる。
【0100】
また、従来の吊り足場では、チェーンと筒体を連結するピンに対して、足場部材と足場部材に積載される積載物の荷重が作用する。この際、当該荷重は、ピンにおける筒体に設けられた貫通孔に挿通される部分に集中することになるため、当該荷重が大きくなるとピンの強度を高くする必要がある。しかしながら、当該ピンの径は鎖素子の孔を通る大きさに制限されるとともにピンの径を大きくすると筒体の径も大きくする必要があって、ピンの強度を高めるにも限度がある。したがって、従来の吊り足場では、最大積載荷重を大きくするのが困難であった。
【0101】
これに対して、本実施の形態の吊り足場1では、チェーン連結装置Aのストッパ8の上面を筒体60の下端に当接させて筒体60を支持するので、ストッパ8は、鎖素子4aの孔の大きさに制限を受けず十分な強度を確保できるから、吊り足場1に要求される積載荷重に応じて必要な強度を確保できる。よって、本実施の形態の吊り足場1によると、吊り足場1の最大積載荷重を大きくできるとともにチェーン4の本数も低減できる。
【0102】
また、本実施の形態の吊り足場1では、ストッパ8は、筒体60の下端と上下方向で嵌合する嵌合部81を有する。このように構成された吊り足場1では、嵌合部81を筒体60の下端と嵌合すると、ストッパ8の筒体60に対する横方向の移動が規制されるので、ストッパ8がチェーン4から脱落するのを防止できる。ただし、嵌合部81は省略されてもよい。
【0103】
また、本実施の形態の吊り足場1では、嵌合部81の内側に筒体60の下端外周が嵌合されており、チェーン連結装置Aは、嵌合部81の上端に設けられて筒体60の外周に対して遠近可能な押圧手段82を有している。このように構成された吊り足場1によると、押圧手段82を筒体60の外周に対して接近させて筒体60の外周を横方向から押圧すると、嵌合部81の内径が設計よりも多少大きくて、嵌合部81の内周と筒体60の外周との間に隙間があったとしても、筒体60の外周が嵌合部81の内周に押し付けられるので、ストッパ8が横方向に動けなくなる。よって、嵌合部81の寸法管理を厳密にせずとも、ストッパ8の横方向のがたつきの発生を防止することができる。ただし、ストッパ8の横方向の多少のがたつきを許容する場合には、押圧手段82は省略されてもよい。
【0104】
また、本実施の形態の吊り足場1では、ストッパ8は筒体60の下端に当接する規制部80を有し、規制部80は、円盤状であって、上端側方から開口する切欠き80aと、下端側方から開口して切欠き80aに通じるとともに鎖素子4aの上部を収容可能な半円状の凹部80bとを有している。このように構成された吊り足場1によると、規制部80の全体の肉厚を隣り合う横向きの鎖素子4a,4a間の隙間の大きさ以上に設定しても、規制部80における切欠き80aの周囲の部分の肉厚を薄くすることができる。よって、本実施の形態のストッパ8では、横向きの鎖素子4a,4a間に規制部80における切欠き80aの周囲の部分の挿入を許容しつつ、規制部80における他の部分の肉厚を確保することができるので、ストッパ8が十分な強度を得られる。
【0105】
また、本実施の形態の凹部80bはチェーン4の鎖素子4aの上部と符号する大きさの半円状に形成されている。そのため、切欠き80a内に鎖素子4aが挿入された状態で、切欠き80a内に挿入された縦向きの鎖素子4aの下端に連結される下側の鎖素子4aの上端が凹部80bに嵌り込む。したがって、鎖素子4aの凹部80b内での座りが良くなり鎖素子4aの上端の摩耗を抑制できるとともに、チェーン4で足場部材10を安定的に吊り下げできる。ただし、凹部80bの大きさは、鎖素子4aの上部を収容可能な大きさであれば、鎖素子4aの上部と符合する大きさでなくともよい。
【0106】
また、ストッパ8の強度が不足しないのであれば、規制部80の全体の肉厚を隣り合う横向きの鎖素子4a,4a間の隙間の大きさ未満であってもよい。その場合には、凹部80bは省略される。
【0107】
なお、本実施の形態では、規制部80は円盤状に形成されているが、規制部80の形状は、上面が筒体60の下端に当接可能な限りにおいて、特に限定されない。
【0108】
また、本実施の形態の吊り足場1では、足場部材10は、並列に配置される複数の梁部材5と、梁部材5の端部に連結されるジョイント6と、梁部材5,5間に設置される作業床3とを有し、チェーン連結装置Aは、ジョイント6に設けられている。
【0109】
このように構成された吊り足場1によると、足場部材10の梁部材5の端部に連結されるジョイント6にチェーン連結装置Aを設けているので、吊り足場1の部品点数を削減できる。ただし、チェーン連結装置Aを足場部材10のジョイント6以外の部分、例えば、梁部材5に筒体60を設けて、その筒体60にストッパ8を介してチェーン4を連結してもよい。
【0110】
つづいて、第二の実施の形態の吊り足場1について説明する。第二の実施の形態の吊り足場1の構成と第一の実施の形態の吊り足場1の構成との違いは、チェーン連結装置Aに代えて別のチェーン連結装置A1を利用してチェーン4を足場部材10に連結している点のみ異なる。共通の構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0111】
第一の実施の形態のチェーン連結装置Aでは、筒体60の下端にストッパ8の規制部80の上面を当接させてストッパ8が筒体60を支持しているのに対し、第二の実施の形態のチェーン連結装置A1は、筒体60の上端にストッパ9を取付けることで、チェーン4を足場部材10のジョイント6に連結できるようになっている。
【0112】
具体的には、第二の実施の形態のチェーン連結装置A1は、
図15,
図16に示すように、内部にチェーン4が挿通される筒体60と、鎖素子4aの横幅よりも狭く鎖素子4aの縦幅よりも広い幅の切欠き90aを有する規制部90と、規制部90を筒体60の上端に対して横方向移動を許容しつつ上下方向の移動を規制する状態で連結する連結手段とを備える。また、連結手段は、
図15に示すように、筒体60の上端外周に設けられる環状の突出部60aと、規制部90の下端に設けられて突出部60aの下端に引っ掛け可能なフック部91とで構成されている。また、
図15は、チェーン連結装置A1の構成を分かりやすくするために梁部材5の図示を省略している。なお、第一の実施の形態のチェーン連結装置Aでは、筒体60の下端にストッパ8の規制部80の上面を当接させることで、チェーン4を筒体60に連結しているため、突出部60aを省略できる。
【0113】
以下、チェーン連結装置A1の各部について詳細に説明する。本実施の形態のストッパ9は、規制部90と、規制部90の下端に設けられるフック部91とを備えている。規制部90は、
図16に示すように、D字板状であって、直線部90bの中央から規制部90の中心に向けて前記中心を少し過ぎた位置まで長方形状に切り欠いて形成される切欠き90aを有している。また、ストッパ9を側方から見たときの切欠き90aの横方向の幅(以下、単に「切欠き90aの幅」という。)は、鎖素子4aの横幅よりも狭く鎖素子4aの縦幅よりも広くなるように設定されている。また、規制部90の直線部90b側付近には規制部90を上下方向(肉厚方向)に貫通する挿通孔90cが設けられている。
【0114】
また、フック部91は、規制部90の周縁の直線部90b以外の部分から下向きに突出する断面U字状の周壁部91aと、周壁部91aの下端から内側に向けて突出するU字状の当接部91bとを有している。規制部90の下端と当接部91bの上端との間の距離は、筒体60の上端外周に設けられる環状の突出部60aの上下方向の厚み以上になっている。
【0115】
このように構成されたストッパ9では、規制部90の下端とフック部91の当接部91bの間の隙間を筒体60の突出部60aに対して水平方向で正対させた状態で、ストッパ9を横方向にスライド移動させて、規制部90の下端とフック部91の当接部91bの間の隙間に突出部60aを挿入できる。そして、このように、規制部90の下端とフック部91の当接部91bの間の隙間に突出部60aが挿入されると、突出部60aが規制部90の下端とフック部91の当接部91bとに挟まれるので、ストッパ9は上下方向の移動が規制された状態で筒体60の上端に連結される。
【0116】
さらに、切欠き90aの幅は縦向きの鎖素子4aの幅よりも広いので、ストッパ9を横方向にスライド移動させて、ストッパ9を筒体60の突出部60aに連結する際に、筒体60内に挿入されているチェーン4における筒体60の上端付近に位置する縦向きの鎖素子4aを、切欠き90a内に挿入できる。そして、切欠き90aの幅は、横向きの鎖素子4aの幅よりも狭いので、切欠き90a内に縦向きの鎖素子4aが挿入されると、切欠き90a内に挿入された縦向きの鎖素子4aの上下にそれぞれ連結される2つの横向きの鎖素子4a,4aの上下方向の通過を許容しない。つまり、切欠き90aは、チェーン4の横方向からの挿入を許容するが、内側に挿入されたチェーン4の上下方向の移動を許容しない。したがって、規制部90の切欠き90a内に縦向きの鎖素子4aが挿入されると、ストッパ9がチェーン4に対して上下移動が規制された状態で連結される。
【0117】
また、チェーン連結装置A1は、
図15,
図16に示すように、J字状であって、短い方の端部である一端が規制部90に設けられた挿通孔90cに挿入され、長い方の端部である他端が切欠き90aを介して筒体60内に挿入される抜け止めピン11を備えている。
図15に示すように、筒体60の上端にストッパ9が取付けられて規制部90の切欠き90a内にチェーン4が挿入された状態で、抜け止めピン11の各端部を挿通孔90cと筒体60内に挿入すると、ストッパ9を筒体60から取り外そうと横方向移動させても、筒体60内に挿入されたチェーン4が抜け止めピン11に当接して切欠き90a内から出られない。したがって、抜け止めピン11によってストッパ9の横方向移動が規制されるので、ストッパ9の筒体60からの脱落を防止できる。
【0118】
また、抜け止めピン11の短い方である一端側の長さは、挿通孔90cに挿入されたときに筒体60の突出部60aの上端に干渉しない長さに設定されているので、抜け止めピン11の一端が突出部60aの上端に干渉して抜け止めピン11が浮き上がってしまうことがない。ただし、抜け止めピン11の一端が挿通孔90cから抜けない限りにおいて、抜け止めピン11の一端側の長さは抜け止めピン11の一端が突出部60aの上端に干渉する長さであってもよい。
【0119】
また、抜け止めピン11は、直線状の金属棒を折り曲げてJ字状に形成されているため、抜け止めピン11の屈曲部分は円弧状に湾曲している。そのため、抜け止めピン11の屈曲部分の内側は、抜け止めピン11の屈曲部分が全て直角に折れ曲がるように形成されている場合に比べて、内側に入り込む形状となっている。これに対し、本実施の形態では、
図16に示すように、切欠き90aの上側角部を面取りすることで、抜け止めピン11の円弧状の屈曲部分が切欠き90aの上側角部に干渉して、抜け止めピン11が浮き上がらないようになっている。ただし、抜け止めピン11が切欠き90aの上側角部に干渉しない形状であれば、切欠き90aの上側角部は面取りされていなくともよい。
【0120】
なお、図示するところでは、抜け止めピン11はJ字状に形成されているが、抜け止めピン11の一端を挿通孔90cに挿入した状態で、抜け止めピン11の他端を切欠き90aを介して筒体60内に挿入可能であれば、抜け止めピン11はU字状に形成されてもよい。ただし、抜け止めピン11は省略されてもよい。
【0121】
続いて、チェーン連結装置A1によってチェーン4を筒体60に連結する手順について説明する。まず、筒体60内にチェーン4を挿入する。その後、ストッパ9を横方向にスライド移動させて、フック部91の周壁部91a内に筒体60の突出部60aを挿入しつつ、規制部90の切欠き90a内に筒体60の上端付近に位置する縦向きの鎖素子4aを挿入する。、ストッパ9をチェーン4で吊り下げると、ストッパ9がチェーン4によって上方に持ち上げられて、フック部91の当接部91bに突出部60aの下端が当接して、フック部91が突出部60aに引っ掛かる。すると、筒体60がストッパ9によって支持されるので、足場部材10がチェーン4で吊り下げ支持される。
【0122】
最後に、抜け止めピン11の各端部を規制部90に設けられた挿通孔90cと切欠き90aを介して筒体60内に挿入すると、抜け止めピン11によってストッパ9の横方向移動が規制されるので、ストッパ9の筒体60からの脱落を防止できる。
【0123】
なお、本実施の形態では、規制部90は、D字板状に形成されているが、規制部90の形状は特に限定されず、例えば円盤状であってもよい。また、本実施の形態では、切欠き90aは、長方形状に形成されて、横幅が一定となっている。そして、前述したように、切欠き90aの横幅は、鎖素子4aの縦幅よりも広く、鎖素子4aの横幅よりも狭くなっている。そのため、本実施の形態では、切欠き90aの全ての幅が鎖素子4aの縦幅よりも広く、鎖素子4aの横幅よりも狭くなっているが、切欠き90aの少なくとも一部の幅が鎖素子4aの縦幅よりも広く、鎖素子4aの横幅よりも狭くなっていれば切欠き90aの他の部分の幅は、鎖素子4aの縦幅よりも広くてもよい。ただし、本実施の形態のように、切欠き90aの全ての幅が、鎖素子4aの縦幅よりも広く、鎖素子4aの横幅よりも狭くなっていると、チェーン4がストッパ9に対して横方向に多少ずれても、ストッパ9がチェーン4から脱落しない。
【0124】
また、第二の実施の形態のチェーン連結装置A1では、チェーン4を筒体60内に挿入してから、ストッパ9を筒体60側へ横方向にスライド移動させて、規制部90の下端とフック部91の当接部91bの間の隙間に筒体60の上端に設けられた突出部60aを挿入しつつ、規制部90の切欠き90a内に筒体60の上端付近に位置する縦向きの鎖素子4aを挿入して、フック部91を突出部60aに引っ掛けるだけで、チェーン4を筒体60に連結できる。よって、従来のように、筒体に挿入されたチェーンの鎖素子の孔の位置と向きを筒体に設けた貫通孔と正対するように調整してから鎖素子の孔と当該貫通孔にピンを挿通することでチェーンを筒体に連結する場合に比べて、本実施の形態のチェーン連結装置A1では、鎖素子4aの向きや孔の位置を筒体の貫通孔の位置と同じ高さ同じ向きに調整する必要がないため、チェーン4を足場部材10に対して容易に連結できる。
【0125】
また、第一の実施の形態の吊り足場1のチェーン連結装置Aでは、ジョイント6の筒体60にチェーン4を連結する際に、ストッパ8の規制部80の上面を筒体60の下端に当接させる必要がある。そのため、足場部材10の床面積の拡張作業において、拡張用の梁部材5の他端に拡張用のジョイント6を取付けてから拡張用のジョイント6にチェーン4を取付けようとした場合、ストッパ8を筒体60に取付ける作業位置が筒体60の下端よりも下方となる。
【0126】
これに対して、第二の実施の形態の吊り足場1のチェーン連結装置A1では、ストッパ9は筒体60の上端に設けられた突出部60aに取付けられる。そのため、足場部材10の床面積の拡張作業において、拡張用の梁部材5の他端に拡張用のジョイント6を取付けてから拡張用のジョイント6にチェーン4を取付けようとした場合、ストッパ9を筒体60に取付ける作業位置が筒体60の上端となるので、ストッパ8を筒体60に取付ける作業位置が筒体60の下方となる第一の実施の形態のチェーン連結装置Aよりも、第二の実施の形態のチェーン連結装置A1の方が、作業位置が作業床3に近くなる。したがって、第二の実施の形態のチェーン連結装置A1では、拡張用の梁部材5の他端に拡張用のジョイント6を取付けてから拡張用のジョイント6にチェーン4を取付ける作業を第一の実施の形態のチェーン連結装置Aよりもさらに安全で容易に行うことができる。
【0127】
また、前述したように、従来の吊り足場では、チェーンと筒体を連結するピンに対して、足場部材と足場部材に積載される積載物の荷重が作用する。この際、当該荷重は、ピンにおける筒体に設けられた貫通孔に挿通される部分に集中することになるため、当該荷重が大きくなるとピンの強度を高くする必要がある。しかしながら、当該ピンの径は鎖素子の孔を通る大きさに制限されるとともにピンの径を大きくすると筒体の径も大きくする必要があって、ピンの強度を高めるにも限度がある。したがって、従来の吊り足場では、最大積載荷重を大きくするのが困難であった。
【0128】
これに対し、第二の実施の形態のチェーン連結装置A1では、足場部材10と足場部材10に積載される積載物の荷重を、筒体60の上端外周に設けられた環状の突出部60aの下端に当接するフック部91の当接部91bで受けることになる。フック部91は筒体60の外周側に配置されて筒体60の突出部60aを支持するので、フック部91の肉厚や寸法は制限を受けない。そのため、周壁部81aや当接部91bの肉厚を厚くすることでフック部91の強度を確保できる。よって、第二の実施の形態の吊り足場1によると、吊り足場1の最大積載荷重を大きくできるとともにチェーン4の本数も低減できる。
【0129】
また、本実施の形態では、突出部60aは、筒体60の上端外周の外径を他の部分よりも大きくするようにして形成されているが、筒体60の一部に他の部分よりも外径の小さい小径部を設けて、筒体60における小径部の上側を突出部60aとしてもよい。また、本実施の形態では、突出部60aは環状に形成されているが、突出部60aはフック部91を引っ掛けられればよいので、環状以外の形状に形成されてもよい。
【0130】
前述したように、第二の実施の形態の吊り足場1は、作業床3を有する足場部材10と、複数の環状の鎖素子4aを数珠繋ぎにして形成されて足場部材10を吊持するチェーン4と、足場部材10に設置されチェーン4を足場部材10に連結するチェーン連結装置A1とを備え、鎖素子4aの孔と正対する側を正面側としたとき、正面側から見た鎖素子4aの幅を横幅、側面側から見た鎖素子4aの幅を縦幅として、チェーン連結装置A1は、軸線が鉛直方向に沿うとともに内部にチェーン4が挿通される筒体60と、鎖素子4aの横幅よりも狭く鎖素子4aの縦幅よりも広い幅の切欠き90aを有する規制部90と、規制部90を筒体60の上端に対して横方向移動を許容しつつ上下方向の移動を規制する状態で連結する連結手段とを備える。
【0131】
このように構成された吊り足場1によると、切欠き90aは、チェーン4の横方向からの挿入を許容するが、内側に挿入されたチェーン4の上下方向の移動を許容しないので、切欠き90a内に鎖素子4aが挿入されると、ストッパ9がチェーン4に対して連結される。そのため、ストッパ9を筒体60側へ横方向にスライド移動させて、連結手段により規制部90を筒体60の上端に対して連結するとともに、切欠き90a内に筒体60の上端付近に位置する鎖素子4aを挿入するだけで、チェーン4を筒体60に連結できる。よって、従来のように、筒体に挿入されたチェーンの鎖素子の孔の位置と向きを筒体に設けた貫通孔と正対するように調整してから鎖素子の孔と当該貫通孔にピンを挿通することでチェーンを筒体に連結する場合に比べて、チェーン連結装置A1では、鎖素子4aの向きや孔の位置を筒体の貫通孔の位置と同じ高さ同じ向きに調整する必要がないため、チェーン4を足場部材10に対して容易に連結できる。
【0132】
また、第二の実施の形態のチェーン連結装置A1では、規制部90が連結手段によって筒体60の上端に対して連結されるので、足場部材10の床面積を拡張する場合に、筒体60にチェーン4を取付ける作業位置が作業床3に近いため、足場部材10の床面積を拡張する作業を安全で容易に行うことができる。
【0133】
また、第二の実施の形態の吊り足場1では、連結手段が、筒体の上端外周に設けられる突出部60aと、規制部90の下端に設けられて突出部60aの下端に引っ掛け可能なフック部60bとを有する。
【0134】
このように構成された吊り足場1では、ストッパ9を筒体60側へ横方向にスライド移動させて、切欠き90a内に筒体60の上端付近に位置する鎖素子4aを挿入しつつ、フック部91を突出部60aに引っ掛けるだけで、チェーン4を筒体60に連結できる。よって、チェーン4を足場部材10に対してより容易に連結できる。
【0135】
さらに、このように構成された吊り足場1では、足場部材10と足場部材10に積載される積載物の荷重を、筒体60の上端外周に設けられた突出部60aの下端に当接するフック部91の当接部91bで受けることになるが、フック部91は筒体60の外周側に配置されて筒体60の突出部60aを支持するので、フック部91の肉厚や寸法は制限を受けない。そのため、フック部91の肉厚や寸法を大きくすることで、フック部91の強度を確保できる。よって、このように構成された吊り足場1によると、吊り足場1の最大積載荷重を大きくできるとともにチェーン4の本数も低減できる。
【0136】
また、第二の実施の形態の吊り足場1では、突出部60aは環状であって、フック部91は、規制部90の下端から下向きに突出する断面U字状の周壁部91aと、前記周壁部91aの下端から内側に向けて突出して突出部60aの下端に当接するU字状の当接部91bを有している。
【0137】
このように構成された吊り足場1によると、周壁部81aや当接部91bの肉厚を厚くすることでフック部91の強度を確保できる。よって、吊り足場1の最大積載荷重を大きくできるとともにチェーン4の本数も低減できる。
【0138】
ただし、突出部60aは、フック部91を引っ掛けられるように筒体60の上端外周から突出していればよいので、環状以外の形状であってもよい。また、フック部91の形状は、突出部60aの下端に引っ掛けることができる限りにおいて特に限定されず、例えば、フック部91は、規制部90の外周に互いに向き合う一対のフックで構成されてもよい。
【0139】
なお、第二の実施の形態のチェーン連結装置A1では、ストッパ9を筒体60の上端に対して連結する連結手段は、筒体60の上端外周に設けられる環状の突出部60aと、規制部90の下端に設けられて突出部60aの下端に引っ掛け可能なフック部91とを有して構成されているが、このような連結手段の構成は一例であって、連結手段は、ストッパ9を横方向にスライド移動させて筒体60の上端に連結できる限りにおいて特に限定されない。
【0140】
また、第二の実施の形態の吊り足場1では、チェーン連結装置A1は、J字状又はU字状であって、一端が規制部90に設けられた挿通孔90cに挿入され、他端が切欠き90aを介して筒体60内に挿入される抜け止めピン11を備えている。
【0141】
このように構成された吊り足場1では、筒体60の上端にストッパ9が取付けられた状態で、抜け止めピン11の各端部を挿通孔90cと筒体60内に挿入すると、ストッパ9を筒体60から取り外そうと横方向移動させても、筒体60内に挿入されたチェーン4が抜け止めピン11に当接して切欠き90a内から出られない。したがって、抜け止めピン11によってストッパ9の横方向移動が規制されるので、ストッパ9の筒体60からの脱落を防止できる。ただし、抜け止めピン11は省略されてもよい。
【0142】
また、第二の実施の形態の吊り足場1では、足場部材10は、並列に配置される複数の梁部材5と、梁部材5の端部に連結されるジョイント6と、梁部材5,5間に設置される作業床3とを有し、チェーン連結装置Aは、ジョイント6に設けられている。
【0143】
このように構成された吊り足場1によると、足場部材10の梁部材5の端部に連結されるジョイント6にチェーン連結装置A1を設けているので、吊り足場1の部品点数を削減できる。ただし、チェーン連結装置A1を足場部材10のジョイント6以外の部分、例えば、梁部材5に筒体60を設けて、その筒体60にストッパ8を介してチェーン4を連結してもよい。
【0144】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱なく改造、変形及び変更ができるのは当然である。
【符号の説明】
【0145】
1・・・吊り足場、3・・・作業床、4・・・チェーン(吊り材)、4a・・・鎖素子、5・・・梁部材、6・・・ジョイント、8,9・・・ストッパ、10・・・足場部材、11・・・抜け止めピン、60・・・筒体、60a・・・突出部、80,90・・・規制部、80a,90a・・・切欠き、80b・・・凹部、81・・・嵌合部、82・・・押圧手段、91・・・フック部、91b・・・当接部、A,A1・・・チェーン連結装置
【要約】
【課題】
本発明は、チェーンを足場部材に容易に連結できる吊り足場の提供を目的とする。
【解決手段】
作業床3を有する足場部材10と、複数の環状の鎖素子4aを数珠繋ぎにして形成されて足場部材10を吊持するチェーン4と、足場部材10に設置されチェーン4を足場部材10に連結するチェーン連結装置Aとを備え、鎖素子4aの孔と正対する側を正面側としたとき、正面側から見た鎖素子4aの幅を横幅、側面側から見た鎖素子4aの幅を縦幅として、チェーン連結装置Aは、軸線が鉛直方向に沿うとともに内部にチェーン4が挿通される筒体60と、鎖素子4aの横幅よりも狭く鎖素子の縦幅よりも広い幅の切欠き80aを有して筒体60の下端に当接するストッパ8とを備えることを特徴とする。
【選択図】
図5