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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】食品包装用フィルム及び食品包装用袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20241009BHJP
   B32B 9/02 20060101ALI20241009BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B9/02
B32B27/32 C
B32B27/32 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018106471
(22)【出願日】2018-06-01
(65)【公開番号】P2019048666
(43)【公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-05-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2017173988
(32)【優先日】2017-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】110001391
【氏名又は名称】弁理士法人レガート知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 一浩
(72)【発明者】
【氏名】山田 知夫
(72)【発明者】
【氏名】古川 央庸
【合議体】
【審判長】神山 茂樹
【審判官】長清 吉範
【審判官】八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-64845(JP,A)
【文献】特開2015-34038(JP,A)
【文献】特開2013-28161(JP,A)
【文献】特開平5-92507(JP,A)
【文献】特開平6-340771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂中に澱粉を分散した澱粉樹脂を素材とする澱粉樹脂フィルムを用いた食品包装用フィルムであって、
前記澱粉にはトウモロコシ澱粉又は馬鈴薯澱粉が用いられ、トウモロコシ澱粉を用いた場合には前記オレフィン系樹脂に対して10重量%以上50重量%以下の割合で配合され、馬鈴薯澱粉を用いた場合には前記オレフィン系樹脂に対して5重量%以上50重量%以下の割合で配合され、
前記澱粉樹脂フィルム中の澱粉粒子の一部が前記澱粉樹脂フィルムの表面に前記オレフィン系樹脂に覆われた状態で突出することで粗面化された表面を備え、前記粗面化された表面によって被包装食品との剥離性を向上させた食品包装用フィルム。
【請求項2】
澱粉樹脂フィルムの粗面側に融点が100℃以下の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層が積層され、前記澱粉樹脂フィルム中の澱粉粒子によって前記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層の表面が粗面化された、請求項1記載の食品包装用フィルム。
【請求項3】
澱粉樹脂フィルムの片面側にオレフィン系樹脂層が積層された、請求項1又は2記載の食品包装用フィルム。
【請求項4】
オレフィン系樹脂層は低密度ポリエチレン樹脂で構成された、請求項3記載の食品包装用フィルム。
【請求項5】
オレフィン系樹脂層にナイロン樹脂層が積層された、請求項3又は4記載の食品包装用フィルム。
【請求項6】
請求項5記載の食品包装用フィルムのナイロン樹脂層を外側に、粗面化されたフィルム表面を内側に配置して形成された食品包装用袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カステラや菓子パン、羊羹などのように糖分や水分を多く含んだ食品を包装する際に使用する食品包装用フィルム及び食品包装用袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カステラや菓子パン、羊羹などのように糖分や水分を多く含んだ食品を包装袋に包装する際には、包装袋から食品を取り出す際に包装袋の内面に食品が付着して型崩れ等してしまわないように、食品との剥離性に優れた当て紙や保護フィルムを食品に被せた状態で袋に収容されるのが一般的である。
【0003】
従来、食品との剥離性に優れた当て紙や保護フィルムとして、例えば、不織布やエンボスフィルムが用いられているが、不織布は繊維を絡み合わせてシート状に構成されているために、繊維くずが発生して食品に混入しやすいという問題があり、エンボスフィルムは凹凸が大きく目立つために、見た目が悪く食品の包装には適さないという問題がある。
【0004】
また、食品の包装工程において、包装袋に食品を収容する前に当て紙や保護フィルムを食品に被せる工程が必要となるため、生産効率(包装効率)が悪いという問題もある。
【0005】
この点、当て紙や保護フィルムが予め内面側に積層された食品包装用袋を用いることにより、包装袋に食品を収容する前に当て紙や保護フィルムを食品に被せる工程を省略することができる。不織布が内面側に積層された食品包装用袋も従来より存在するが、上記したように、不織布は繊維くずが食品に混入しやすいという問題がある。また、エンボスフィルムの場合、他の樹脂フィルムに積層して食品包装用袋を形成しようとすると、他の樹脂フィルムを積層する際に凹凸が潰れてしまうため、食品包装用袋の材料としては不適である。
【文献】特開2000-190410号公報
【0006】
加えて、食品包装用袋にあっては、収容される食品の品質を保持するため、外部からの酸素の侵入を防止するガスバリア層を備えている必要があるが、基材となるフィルムにガスバリア層を積層して食品包装用袋を構成する場合、基材フィルムはガスバリア層との接着性に優れていなければならない。
さらには、内部に食品を収容後、食品包装用袋はヒートシールなどによってシールされるところ、シール性にも優れている必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、異物混入のおそれがなく、食品の包装にも適した外観を有するだけでなく、食品の包装工程を簡略化できる食品包装用袋にも好適な、剥離性に優れた食品包装用フィルムを得るとともに、この食品包装用フィルムを用いた食品包装用袋を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の食品包装用フィルムは、オレフィン系樹脂中に澱粉を分散した澱粉樹脂を素材とする澱粉樹脂フィルムを用いた食品包装用フィルムであって、前記澱粉にはトウモロコシ澱粉又は馬鈴薯澱粉が用いられ、トウモロコシ澱粉を用いた場合には前記オレフィン系樹脂に対して10重量%以上50重量%以下の割合で配合され、馬鈴薯澱粉を用いた場合には前記オレフィン系樹脂に対して5重量%以上50重量%以下の割合で配合され、澱粉樹脂フィルム中の澱粉粒子の一部が前記澱粉樹脂フィルムの表面に前記オレフィン系樹脂に覆われた状態で突出することで粗面化された表面を備え、前記粗面化された表面によって被包装食品との剥離性を向上させた食品包装用フィルムとして構成する。
前記澱粉樹脂フィルムは、オレフィン系樹脂中に澱粉を分散した澱粉樹脂を素材として、インフレーション成形、T-ダイ成形、カレンダー成形等により形成されている。前記澱粉樹脂に用いられるオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)樹脂(低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む。)の他、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体(EPR)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)などを用いることができる。
前記澱粉粒子によるフィルム表面の粗面化は、少なくともフィルムの片面においてなされていればよいが、両面が粗面化されていてもよい。
【0009】
請求項2の発明は、前記澱粉樹脂フィルムの粗面側に融点が100℃以下の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層を積層し、前記澱粉樹脂フィルム中の澱粉粒子によって前記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層の表面を粗面化したことを特徴とする。前記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層は、前記澱粉樹脂フィルムの粗面が両面に形成されている場合には、何れか一方の粗面側に積層されるものとする。
【0010】
請求項3の発明は、前記澱粉樹脂フィルム表面の片面側にオレフィン系樹脂層を積層したことを特徴とする。前記澱粉樹脂フィルム表面の片面側に積層されるオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)樹脂(低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む。)の他、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体(EPR)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)などを用いることができ、また、前記澱粉樹脂フィルムの素材として用いられている澱粉樹脂中のオレフィン系樹脂と同じオレフィン系樹脂を用いることもできるが、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)を用いるのが好ましい(請求項4)。
前記澱粉樹脂フィルム表面の片面側とは、前記澱粉樹脂による前記フィルム表面の粗面化が、フィルムの片面においてなされていた場合には粗面化されていない側の表面を、フィルムの両面においてなされていた場合には何れか一方の側の表面をいい、前記澱粉樹脂フィルムの粗面側に前記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層を積層した場合には、前記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層が積層されていない側の表面をいう。
【0011】
請求項5の発明は、請求項3又は4の食品包装用フィルムのオレフィン系樹脂層にナイロン樹脂層を積層したことを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項4又は5記載の食品包装用フィルムのナイロン樹脂層を外側に、粗面化されたフィルム表面側を内側に配置して食品包装用袋を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、オレフィン系樹脂中に澱粉を分散した澱粉樹脂を素材とする澱粉樹脂フィルムを用いた食品包装用フィルムにおいて、前記澱粉にはトウモロコシ澱粉又は馬鈴薯澱粉を用い、トウモロコシ澱粉を用いる場合には前記オレフィン系樹脂に対して10重量%以上50重量%以下の割合で、馬鈴薯澱粉を用いる場合には前記オレフィン系樹脂に対して5重量%以上50重量%以下の割合で配合するものとし、前記澱粉樹脂フィルム中の澱粉粒子の一部が前記澱粉樹脂フィルムの表面に前記オレフィン系樹脂に覆われた状態で突出することによって食品包装用フィルムの表面が粗面化されているので、包装される食品との接触が点接触となって十分な剥離性が得られるとともに、不織布のように繊維くずが食品に混入するおそれがなく、また、粗面化されたフィルム表面の外観も澱粉粒子による微細な凹凸によるものであるからさほど目立たず、食品の包装にも適した外観とすることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、請求項1の食品包装用フィルムにおいて、澱粉樹脂フィルムの粗面側に融点が100℃以下の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層を積層し、前記澱粉樹脂フィルム中の澱粉粒子によって前記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層の表面を粗面化したので、包装される食品との十分な剥離性を備えつつ、低温ヒートシール性にも優れた食品包装用フィルムを得ることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、請求項1又は2の食品包装用フィルムにおいて、澱粉樹脂フィルムの片面側にオレフィン系樹脂層を積層したので、フィルム表面の片面側がオレフィン系樹脂層で覆われ、このオレフィン系樹脂層にナイロン樹脂層等のガスバリア層を面接着によって強固に積層することができる。
特に、前記澱粉粒子によって澱粉樹脂フィルムの両面が粗面化されていた場合であっても、片面側がオレフィン系樹脂層で覆われるので、ナイロン樹脂層等のガスバリア層を面接着により積層することができる。すなわち、澱粉粒子によって粗面化された澱粉樹脂フィルム表面に直接ナイロン樹脂層等のガスバリア層を接着により積層した場合には、粗面化された澱粉樹脂フィルム表面の凸部との点接着となるため接着力が弱く、澱粉樹脂フィルム表面とガスバリア層との間に層間剥離が生じるおそれがあるところ、粗面化された澱粉樹脂フィルム表面にオレフィン系樹脂を積層することによって粗面が平滑化され、この平滑なオレフィン系樹脂層にガスバリア層が面接着されることとなるので、接着力が強く、澱粉樹脂フィルム表面とガスバリア層との間に層間剥離が生じるおそれはない。
【0016】
請求項4の発明によれば、オレフィン系樹脂層に用いられるオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)を用いたので、オレフィン系樹脂層が積層される澱粉樹脂フィルムの表面が粗面化されていても、粗面化された澱粉樹脂フィルム表面の凹凸が、積層されるオレフィン系樹脂層の表面に転写されにくく、粗面化された澱粉樹脂フィルム表面に積層されるオレフィン系樹脂層の表面を一層平滑化することができ、澱粉樹脂フィルム表面とガスバリア層との面接着をより強固なものとすることができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、請求項3又は4の食品包装用フィルムにおいて、オレフィン系樹脂層にナイロン樹脂層を積層したので、ガスバリア性を備えた食品包装用フィルムを得ることができ、この食品包装用フィルムを用いて食品包装用袋を構成することもできる。
また、耐熱性の高いナイロン樹脂層が積層されているので、この食品包装用フィルムの粗面化された表面側を内側に、ナイロン樹脂層側を外側に配置して食品包装袋を形成する場合には、内部に食品を収容した後、開口部をヒートシールにより密封する際に高温でシールすることが可能となり、澱粉粒子により粗面化された表面同士をシールする場合であってもシール強度を向上させることができる。すなわち、ナイロン樹脂層が積層されていない場合には、食品包装用袋の開口部をヒートシールにより密封する際、食品包装用袋を構成する澱粉樹脂の耐熱温度の範囲内でシールしなければならず、この場合、澱粉樹脂の溶融が不十分でシール強度が弱くならざるを得ないところ、ナイロン樹脂の融点は澱粉樹脂の耐熱温度(120℃)よりも高い215℃であるため、ナイロン樹脂の融点未満であれば澱粉樹脂の耐熱温度よりも高い温度で加熱してもナイロン樹脂層自体が破損することはないので、澱粉樹脂を十分に溶融させて強固にシールすることができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、請求項4又は5の食品包装用フィルムのナイロン樹脂層を外側に、澱粉粒子によって粗面化されたフィルム表面を内側に配置して食品包装用袋を形成したので、食品に接する包装袋の内側面は剥離性に優れ、包装袋から食品を取り出す際に包装袋に収容された食品が袋の内面に付着して型崩れ等を起こすおそれがない。したがって、食品の包装工程において、包装袋に収容する際にわざわざ食品に当て紙等を被せる必要がなくなり、直接包装袋に収容することが可能となるので、生産効率(包装効率)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明の食品包装用フィルムの第1の実施例の概要を示す断面図
図2】同じく粗面化されたフィルム表面の概要を示す拡大図
図3】この発明の食品包装用フィルムの第2の実施例(一方のフィルム表面にオレフィン系樹脂層及びナイロン樹脂層を積層した食品包装用フィルム)の概要を示す断面図
図4】同じく食品包装用フィルム(第2の実施例)の引き裂き強度の比較実験データ
図5】この発明の食品包装用フィルムを用いて形成した食品包装用袋の概要を示す図
図6】同じく食品との接触状態を示す拡大図(図5のA部分の拡大図)
図7】同じくヒートシール部の拡大図(図5のB部分の拡大図)
図8】同じく食品包装用袋の切断方向と食品包装用フィルム成形時における材料樹脂の流れる方向の関係を示す図
図9】この発明の食品包装用フィルムの第3の実施例(澱粉樹脂フィルムの粗面側に直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を積層して当該直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層の表面を粗面化した食品包装用フィルム)の概要を示す断面図
図10】同じくこの発明の食品包装用フィルムの第4の実施例(第3の実施例のフィルム表面にオレフィン系樹脂層及びナイロン樹脂層を積層した食品包装用フィルム)の概要を示す断面図
図11】この発明の食品包装用フィルムの第4の実施例を用いて形成した食品包装用袋の概要を示す図
図12】同じく食品との接触状態を示す拡大図(図11のA部分の拡大図)
図13】同じくヒートシール部の拡大図(図11のB部分の拡大図)
図14】同じく食品包装用フィルム(第4の実施例)の引き裂き強度の比較実験データ
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1及び2は、この発明の食品包装用フィルムの第1の実施例の概要を示す図である。
食品包装用フィルム1は、オレフィン系樹脂であるポリエチレン樹脂2にトウモロコシの澱粉粒子3が分散された澱粉樹脂を素材としてインフレーション成形によりフィルム状に形成された澱粉樹脂フィルム4からなり、その表面は、澱粉樹脂フィルム4中の澱粉粒子3が突出して澱粉樹脂フィルム4の表面41に凹凸を形成することにより粗面化されている。澱粉粒子3によって形成された澱粉樹脂フィルム4の表面41の凹凸は、澱粉粒子3がフィルム表面41から露出することによって形成されているのではなく、オレフィン系樹脂2に澱粉粒子3の表面が覆われた状態でフィルム表面41から突出することによって形成されている。
【0021】
この食品包装用フィルム1の厚さtは30μm~50μm、澱粉粒子3によって粗面化されたフィルム表面41の表面粗さは、最大高さRyが12μm以上のものとして形成されている。澱粉樹脂フィルム4の厚さtが30μm未満の場合にはフィルムの強度が低下し、50μm超の場合には剥離性に劣り、表面粗さ(最大高さRy)が12μm未満の場合にも剥離性が劣るためである。
【0022】
この実施例においては、ポリエチレン樹脂2に分散される澱粉としてトウモロコシ澱粉を用いたが、澱粉樹脂に配合されるトウモロコシ澱粉の割合はポリエチレン樹脂に対して10重量%から50重量%の範囲が好ましい。10重量%未満の場合にはフィルム表面41に形成される凹凸が減少して剥離性に劣り、50重量%超の場合には澱粉量が多くなって食品包装用フィルム1の強度が低下してしまうためである。
ポリエチレン樹脂2に分散される澱粉としては、馬鈴薯澱粉を用いることもでき、この場合、澱粉樹脂に配合される馬鈴薯澱粉の割合はポリエチレン樹脂に対して5重量%から50重量%の範囲とすることができる。馬鈴薯澱粉はトウモロコシ澱粉と比較して澱粉粒子が大きいため、厚さが30μm~50μmの範囲のフィルムにあっては、少量であってもフィルム表面に凹凸が形成され易くなるためである。
【0023】
表1に、トウモロコシ澱粉を用いて厚さtを30μm、50μmとした食品包装用フィルムと、馬鈴薯澱粉を用いて厚さtを30μm、50μmとした食品包装用フィルムのそれぞれについて、配合する澱粉量を変えてフィルム表面粗さと剥離強度を計測したデータを示す。表面粗さ(最大高さRy)は、JIS B 0601に準拠した表面粗さ計を用いて計測し、剥離強度は、羊羹の表面に粗面側を密着させた30mm×60mmの大きさの食品包装用フィルムの長手側縁の一方を電動アクチュエーター(スライダータイプ)のテーブル上に載置固定されたフォースゲージ(日本電産シンポ社製FGP-0.2(2N))に接続し、100mm/minの速度でフォースゲージが固定されたテーブルを水平移動させて羊羹から食品包装用フィルムをめくるように剥離して計測した。
【表1】
【0024】
上記データが示すように、澱粉樹脂の澱粉としてトウモロコシ澱粉を用いた場合には、配合量を10重量%以上とした場合の剥離強度が概ね2.0gf程度以下、馬鈴薯澱粉を用いた場合には配合量が5重量%以上であれば1.0gf以下の剥離強度となり、特に剥離強度が弱いことが確認できる。そして、この剥離強度と表面粗さ(最大高さRy)との関係をみると、概ね最大高さRyが12μm以上であれば、剥離強度が概ね2.0gf程度以下となることが理解される。
これに対し、一般的な食品包装用袋に用いられているポリエチレン樹脂とナイロン樹脂とが積層されてなる食品包装用フィルムの剥離強度は4.6gf程度である。
【0025】
そして、澱粉樹脂フィルム4の表面41は、ポリエチレン樹脂2に澱粉粒子3の表面が覆われた状態でフィルム表面41に突出することによって粗面化されているので、澱粉粒子3がフィルム表面41から分離して食品に混入するおそれはない。また、粗面化されたフィルム表面41の凹凸は微粒子によるもので目立たないことから、食品の包装にも適した外観を備えている。
【0026】
この実施例においては、澱粉樹脂を構成するオレフィン系樹脂としてポリエチレン(PE)樹脂を用いたが、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体(EPR)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)などを用いることもできる。
【0027】
図3は、澱粉樹脂フィルム4からなる食品包装用フィルム1の一方のフィルム表面にオレフィン系樹脂層及びナイロン樹脂層を積層して構成した場合の食品包装用フィルムの実施例(第2の実施例)の概要を示す図である。
すなわち、ポリエチレン樹脂2にトウモロコシの澱粉粒子3が分散された澱粉樹脂を素材として形成された厚さ30μmの澱粉樹脂フィルム4のフィルム表面41の片面側には、ポリエチレン樹脂からなる厚さ15μmのオレフィン系樹脂層5が積層されている。澱粉樹脂フィルム4とオレフィン系樹脂層5は、多層インフレーション成形によって何れも加熱溶融した状態で成形されているため、積層される澱粉樹脂フィルム4のフィルム表面41に澱粉粒子3の突出による凹凸が形成されても、この凹凸間の隙間はオレフィン系樹脂層5のオレフィン系樹脂で埋められ、オレフィン系樹脂層5は澱粉樹脂フィルム4のフィルム表面41と強固に密着した状態で積層されている。
【0028】
そして、澱粉樹脂フィルム4に積層されたオレフィン系樹脂層5には、接着層6を介して厚さ15μmのナイロン樹脂層7がさらにドライラミネートにより積層されている。ここで、澱粉樹脂フィルム4の片面側の表面の凹凸はオレフィン系樹脂層5によって平滑化されているため、オレフィン系樹脂層5が積層された澱粉樹脂フィルム4に対してナイロン樹脂層7を面接着により強固に積層することができる。
【0029】
また、オレフィン系樹脂層5に用いられるオレフィン系樹脂として、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)を用いることにより、澱粉樹脂フィルム4とナイロン樹脂層7との接着性をより向上させることができる。すなわち、低密度ポリエチレン樹脂は他のポリエチレン樹脂と比較して溶融時における粘度が高いため、澱粉樹脂フィルム4表面の凹凸が転写されにくく、低密度ポリエチレン樹脂をオレフィン系樹脂層5に用いた場合、澱粉樹脂フィルム4の片面側の表面の凹凸が他のポリエチレン樹脂を用いた場合よりも一層平滑化され、オレフィン系樹脂層5が積層された澱粉樹脂フィルム4に対するナイロン樹脂層7の面接着をより強固にすることができる。
【0030】
この実施例にあっては、澱粉粒子3によって表面が粗面化された澱粉樹脂フィルム4にナイロン樹脂層7が積層されているので、ガスバリア性を備えた食品包装用フィルム8を構成することができる。これにより、食品包装用フィルム8は、食品の品質を保持するための食品包装用フィルムとして用いることができるだけでなく、ガスバリア性が要求される食品包装用袋の資材としても用いることができる。
【0031】
また、食品包装用フィルム8には、耐熱性の高いナイロン樹脂層7が積層されているので、この食品包装用フィルム8の粗面化された表面41側を内側に、ナイロン樹脂層7側を外側に配置して食品包装袋9を形成することにより、内部に食品を収容した後、開口部をヒートシールによって密封する際に高温でシールすることが可能となり、澱粉粒子3によって粗面化された澱粉樹脂フィルム層4の表面同士をヒートシールする場合にも、シール強度を向上させることができる。すなわち、ナイロン樹脂層7が積層されていない場合には、食品包装用袋9の開口部をヒートシールにより密封する際、食品包装用袋9を構成する澱粉樹脂フィルム4の耐熱温度の範囲内でシールしなければならず、この場合、澱粉樹脂の溶融が不十分となってシール強度が弱くならざるを得ない。しかしながら、ナイロン樹脂の融点は澱粉樹脂の耐熱温度(120℃)よりも高い215℃であるため、ナイロン樹脂の融点未満であれば澱粉樹脂の耐熱温度よりも高い温度で加熱してもナイロン樹脂層7自体が破損することはない。したがって、澱粉樹脂の耐熱温度よりも高い温度で澱粉樹脂を十分に溶融させて強固にシールすることが可能となる(図7参照)。
【0032】
さらに、澱粉樹脂フィルム4に積層されたオレフィン樹脂層5に接着層6を介してナイロン樹脂層7を積層することにより、ナイロン樹脂層7が積層されていない場合と比較して、引き裂き強度が大きく低下し、フィルムが引き裂きやすくなる効果が得られることが分かった。
厚さ45μmの食品包装用フィルム(トウモロコシ澱粉が40重量%配合された厚さ30μmの澱粉樹脂フィルム4に厚さ15μmのポリエチレン樹脂層5が積層されたもの)と、この食品包装用フィルムに接着層6を介して厚さ15μmのナイロン樹脂層7が積層された食品包装用フィルム8の引き裂き強度の比較実験データを図4に示す。なお、この実験データはJIS K 7128-3に準拠して行った実験に基づくデータである。
【0033】
上記データが示すように、ナイロン樹脂層7が積層された食品包装用フィルム8にあっては、その引き裂き強度がナイロン樹脂層7の積層されていない食品包装用フィルムの半分程度の強度となっており、引き裂きやすくなっていることが確認できる。
また、多層インフレーション成形時に材料樹脂が流れる方向(MD)における引き裂き強度と、これと直交する方向(TD)における引き裂き強度とでは差があることから、ナイロン樹脂層7が積層された食品包装用フィルム8を食品包装用袋9の資材として用いる場合には、開封時に予定される袋の引き裂き方向が、材料樹脂の流れる方向(MD)と一致するようにすることで、引き裂き方向に方向性が備わった開封しやすい食品包装用袋を形成することができる。図8は食品包装用袋9の切断方向と食品包装用フィルム成形時における材料樹脂の流れる方向(MD)の関係を示す図であり、切断予定線Cにおいて食品包装袋9が引き裂かれる方向と、食品包装用フィルム成形時における材料樹脂の流れる方向(MD)とが一致するように形成してある。
【0034】
図5ないし図8は、この発明の食品包装用フィルム8を用いて形成した食品包装用袋9の概要を示す図である。
食品包装用袋9は、澱粉樹脂フィルム4に積層されたオレフィン系樹脂層5に接着層6を介してさらにナイロン樹脂層7が積層された食品包装用フィルム8のナイロン樹脂層7を外側に、粗面化された澱粉樹脂フィルム4の表面41を内側に配置して形成されている。
また、図8に示すように、食品包装袋9は、開封時の切断予定線Cにおいて食品包装袋9が引き裂かれる方向と、食品包装用フィルム成形時における材料樹脂の流れる方向(MD)とが一致するように、食品包装用フィルム8を用いて形成されている。
図5は、この食品包装用袋9の内部空間にカステラなどの食品Fを収容後、開口部をヒートシール部92によって密封した状態を示している。
【0035】
食品包装用袋9の内面側91は、澱粉樹脂フィルム4中の澱粉粒子3によって粗面化されているので、袋内に収容される食品Fとは点接触により接触することとなり、食品Fから内面91が容易に剥離される。このため、食品包装用袋9を開封して内部から食品Fを取り出す際に、食品Fが袋内面91に付着して型崩れを起こしたり破損したりする心配がない。
したがって、食品Fの包装工程において、食品Fを食品包装用袋8内に直接収容することができるので、食品Fに当て紙や保護フィルムを被せる必要がなくなり、包装工程を簡略化することができる。
【0036】
図9は、澱粉樹脂フィルム4からなる食品包装用フィルム1の粗面化された一方のフィルム表面に、融点が100℃以下の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)層を積層することによって直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層の表面が粗面化された食品包装用フィルムの実施例(第3の実施例)の概要を示す図である。
【0037】
食品包装用フィルム1は、ポリエチレン樹脂2にトウモロコシの澱粉粒子3が分散された澱粉樹脂を素材とし、表面が澱粉粒子3によって粗面化された厚さ15μmの澱粉樹脂フィルム4の片側の表面41に、融点が100℃以下の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)からなる厚さ10μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層10が積層され、この直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層10に、粗面化された澱粉樹脂フィルム4のフィルム表面41の凹凸が転写されることにより、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層10の表面101が粗面化されている。
【0038】
この実施例において、食品包装用フィルム1は、澱粉樹脂フィルム4に厚さ10μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層10を積層して構成するため、澱粉樹脂フィルム4の厚さは、実施例1の澱粉樹脂フィルム4の厚さよりも薄くしてあるが、実施例1の澱粉樹脂フィルム4と同程度の厚さとすることもできる。
他方、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層10の厚さは、5μmから20μmの範囲で選択される。直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層10の厚さが5μm未満であるとシール性が弱く、20μmを超えると澱粉樹脂フィルム4のフィルム表面41の凹凸が直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層10の表面101に転写されにくくなるためである。
【0039】
この実施例の食品包装用フィルム1における直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層表面101の表面粗さ(最大高さRy)は26.75μm、剥離強度は0.75gfである(澱粉樹脂の澱粉配合量40%時。計測方法は実施例1における表面粗さ及び剥離強度の計測方法と同じ。)。
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層10が積層されていない実施例1の食品包装用フィルム1の表面粗さ(最大高さRy)及び剥離強度(何れもトウモロコシ澱粉40重量%配合時のもの)と比較すると、何れも同程度の数値となっており、澱粉樹脂フィルム4に直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層10が積層された実施例3の食品包装用フィルム1にあっても、実施例1の食品包装用フィルムと同様に、剥離性に優れたものとなっている。
【0040】
そして、澱粉樹脂フィルム4の粗面化された表面41は、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層10に覆われているので、澱粉樹脂フィルム4中の澱粉粒子3がフィルム表面41から分離して食品に混入するおそれはなく、また、粗面化された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層表面101の凹凸は微粒子の転写によるもので目立たないことから、食品の包装にも適した外観を備えている。
さらに、澱粉樹脂フィルム4の片側の表面41に積層された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、融点が100℃以下のものを用いているので、食品包装用袋の素材として用いた場合には、100℃前後の温度でヒートシールすることが可能である。
【0041】
図10は、実施例3の食品包装用フィルム1の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層10が積層されていない側の表面に、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)からなるオレフィン系樹脂層及びナイロン樹脂層を積層して構成した場合の食品包装用フィルムの実施例(第4の実施例)の概要を示す図である。
【0042】
厚さ15μmの澱粉樹脂フィルム4の粗面化された一方の表面41に融点が100℃以下で厚さ10μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)層10を積層することにより直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層表面101が粗面化された食品包装用フィルム1の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層10が積層されていない側の表面に、厚さ15μmの低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)からなるオレフィン系樹脂層5が積層されている。澱粉樹脂フィルム4、直鎖状低密度ポリエチレン層10及びオレフィン系樹脂層5は、多層インフレーション成形によって何れも加熱溶融した状態で成形されているため、澱粉樹脂フィルム4のフィルム表面41に澱粉粒子3の突出による凹凸が形成されても、この凹凸間の隙間がオレフィン系樹脂層5のオレフィン系樹脂で埋められて平滑化され、オレフィン系樹脂層5は澱粉樹脂フィルム4のフィルム表面41と強固に密着した状態で積層されている。特に、オレフィン系樹脂層5のオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)を用いているので、澱粉樹脂フィルム4のフィルム表面41の凹凸は、他のポリエチレン樹脂を用いた場合と比較して一層平滑化されている。
【0043】
そして、澱粉樹脂フィルム4に積層されたオレフィン系樹脂層5には、接着層6を介して厚さ15μmのナイロン樹脂層7がさらにドライラミネートにより積層されている。ここで、澱粉樹脂フィルム4の片面側の表面の凹凸はオレフィン系樹脂層5によって平滑化されているため、オレフィン系樹脂層5が積層された澱粉樹脂フィルム4に対して、ナイロン樹脂層7を面接着により強固に積層することができる。
特に、オレフィン系樹脂層5に用いられるオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン樹脂を用いているので、澱粉樹脂フィルム4とナイロン樹脂層7との接着性をより向上させることができる。すなわち、他のポリエチレンと比較して溶融時における粘度が高い性質を備えている低密度ポリエチレンをオレフィン系樹脂層5に用いた場合、澱粉樹脂フィルム4の片面側の表面の凹凸が他のポリエチレン樹脂を用いた場合よりも一層平滑化されるので、オレフィン系樹脂層5が積層された澱粉樹脂フィルム4に対するナイロン樹脂層7の面接着をより強固にすることができる。
【0044】
この実施例にあっては、澱粉樹脂フィルム4の粗面側に直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層10を積層し、澱粉樹脂フィルム4中の澱粉粒子3によって直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層表面101が粗面化された食品包装用フィルム1にナイロン樹脂層7が積層されているので、ガスバリア性を備えた食品包装用フィルム8を構成することができる。これにより、食品包装用フィルム8は、食品の品質を保持するための食品包装用フィルムとして用いることができるだけでなく、ガスバリア性が要求される食品包装用袋の資材としても用いることができる。
【0045】
そして、この食品包装用フィルム8の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層10を構成する直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、融点が100℃以下のものを用いているので、粗面化された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層表面101側を内側に、ナイロン樹脂層7側を外側に配置して食品包装袋9(図11参照)を形成することにより、内部に食品を収容した後、開口部をヒートシールによって密封する際、100℃程度でシールすることが可能となる。一般的な製袋機におけるシール温度は125℃程度であるから、この食品包装用フィルム8は、一般的な製袋機を用いてヒートシールすることができる。
【0046】
さらに、澱粉樹脂フィルム4に直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層10を積層してその表面101を粗面化した実施例4の食品包装用フィルム8にあっても、ナイロン樹脂層7を積層することにより、ナイロン樹脂層7が積層されていない場合と比較して引き裂き強度が低下し、引き裂き性が向上することが確認できた。
図14に、厚さ40μmの食品包装用フィルム(トウモロコシ澱粉が40重量%配合された厚さ15μmの澱粉樹脂フィルム4の片面に、厚さ10μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層が、反対側の面に厚さ15μmのポリエチレン樹脂層5が積層されたもの)と、この食品包装用フィルムに接着層6を介して厚さ15μmのナイロン樹脂層7が積層された食品包装用フィルム8の引き裂き強度の比較実験データを示す。なお、この実験データはJIS K 7128-3に準拠して行った実験に基づくデータである。
【0047】
上記データが示すように、ナイロン樹脂層7が積層された食品包装用フィルム8にあっては、その引き裂き強度がナイロン樹脂層7の積層されていない食品包装用フィルムより僅かではあるが小さくなっており、引き裂きやすくなっていることが確認できる。
また、多層インフレーション成形時に材料樹脂が流れる方向(MD)における引き裂き強度と、これと直交する方向(TD)における引き裂き強度とでは差があることから、ナイロン樹脂層7が積層された食品包装用フィルム8を食品包装用袋9の資材として用いる場合には、開封時に予定される袋の引き裂き方向が、材料樹脂の流れる方向(MD)と一致するようにすることで、引き裂き方向に方向性が備わった開封しやすい食品包装用袋を形成することができる。
【0048】
また、この発明の食品包装用フィルムを構成する澱粉樹脂フィルム4は、持続的に再生可能な生物由来の有機性資源(バイオマス材料)である澱粉樹脂を素材としているので、カーボンニュートラルで温室効果ガスの発生を抑えることができ、環境に優しい食品包装用フィルム及び食品包装用袋を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明は、カステラや菓子パン、羊羹などのように水分や糖分を多く含んだ食品を包装する際に使用する食品包装用フィルム及び食品包装用袋に関するものであり、産業上の利用可能性を有するものである。
【符号の説明】
【0050】
1 食品包装用フィルム
2 オレフィン系樹脂
3 澱粉粒子
4 澱粉樹脂フィルム
41 澱粉樹脂フィルム表面
5 オレフィン系樹脂層
6 接着層
7 ナイロン樹脂層
8 食品包装用フィルム
9 食品包装用袋
91 内面
92 ヒートシール部
10 直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層
101 直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14