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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20241009BHJP
   A61K 8/20 20060101ALI20241009BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20241009BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20241009BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20241009BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20241009BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20241009BHJP
   A61K 31/195 20060101ALI20241009BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20241009BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241009BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20241009BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241009BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241009BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20241009BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241009BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/20
A61K8/42
A61K8/49
A61K8/63
A61K8/73
A61K9/107
A61K31/195
A61K47/04
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/36
A61P17/16
A61Q19/00
A61Q19/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020056423
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021155355
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2020-12-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000112266
【氏名又は名称】ピアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】四宮 未郷
(72)【発明者】
【氏名】丸山 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】久恒 幸也
(72)【発明者】
【氏名】濱田 和彦
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】齊藤 真由美
【審判官】小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110664655(CN,A)
【文献】特開2019-112388(JP,A)
【文献】国際公開第2019/078370(WO,A1)
【文献】特開2016-193843(JP,A)
【文献】特開平9-286715(JP,A)
【文献】特開2013-155170(JP,A)
【文献】特表2014-527024(JP,A)
【文献】特開2011-231128(JP,A)
【文献】特開2004-51596(JP,A)
【文献】特開2018-193329(JP,A)
【文献】特開2012-21166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99, 9/107, 31/195, 47/04, 47/18, 47/22, 47/26, 47/36, A61Q 1/00-90/00, A61P 17/16
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)0.0001質量%以上10質量%以下の濃度の塩化カルシウム、及び、0.0001質量%以上1質量%以下の濃度の加水分解アルギンのうち少なくとも一方と、
(B)0.1質量%以上10質量%以下の濃度のトラネキサム酸類と、
(C)0.001質量%以上1質量%以下の濃度の加水分解ヒアルロン酸又はその塩、0.001質量%以上1質量%以下の濃度のテアニン、0.001質量%以上0.3質量%以下の濃度のパンテノール、及び、0.001質量%以上1質量%以下の濃度のヘパリン類似物質からなる群より選択される少なくとも1種と、を含み、
前記加水分解ヒアルロン酸又はその塩は、分子量が5万以上40万以下の中分子ヒアルロン酸を含有し、前記加水分解ヒアルロン酸又はその塩において前記中分子ヒアルロン酸の占める割合が40%以上である、皮膚外用剤。
【請求項2】
トラネキサム酸を前記トラネキサム酸類として含む、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラネキサム酸若しくはその誘導体又はその塩(以下、単にトラネキサム酸類ともいう)を含む皮膚外用剤が知られている。
この種の皮膚外用剤は、トラネキサム酸類が、抗炎症作用、荒れ肌改善作用、美白作用などを有するため、化粧品や医薬部外品の用途で広く利用されている。
【0003】
この種の皮膚外用剤としては、例えば、トラネキサム酸類と、還元糖又はその誘導体と、酸性成分とを含むものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載された皮膚外用剤では、トラネキサム酸類と、還元糖又はその誘導体との反応によって経時的に着色が起こり得るものの、この着色が酸性成分によって抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-202963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、トラネキサム酸類を含む皮膚外用剤には、上記のごとく抗炎症作用及び荒れ肌改善作用などが期待できることから、皮膚に対する他の作用も期待できる。例えば、いったん低下した皮膚のバリア機能を回復させる効果などが期待できる。
しかしながら、皮膚のバリア機能を回復できる皮膚外用剤に関しては、あまり検討されておらず、特許文献1に記載されたような皮膚外用剤は、皮膚のバリア機能を必ずしも十分に回復できないという問題を有する。
【0007】
本発明は、上記問題点等に鑑み、皮膚のバリア機能を十分に回復できる皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る皮膚外用剤は、
塩化カルシウム及び加水分解アルギンのうち少なくとも一方と、
トラネキサム酸類、アラントイン、及びグリチルレチン類からなる群より選択される少なくとも1種と、
加水分解ヒアルロン酸、テアニン、パンテノール、及び、ヘパリン類似物質からなる群より選択される少なくとも1種と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る皮膚外用剤は、トラネキサム酸(塩の状態を含む)を前記トラネキサム酸類として含んでもよい。
本発明に係る皮膚外用剤は、グリチルリチン酸及びグリチルレチン酸(いずれも塩の状態を含む)のうち少なくとも一方を前記グリチルレチン類として含んでもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の皮膚外用剤によれば、皮膚のバリア機能を十分に回復できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】皮膚のバリア機能の回復率を表すグラフ。
図2】皮膚のバリア機能の回復率を表すグラフ。
図3】皮膚のバリア機能の回復率を表すグラフ。
図4】皮膚のバリア機能の回復率を表すグラフ。
図5】皮膚のバリア機能の回復率を表すグラフ。
図6】皮膚のバリア機能の回復率を表すグラフ。
図7】皮膚のバリア機能の回復率を表すグラフ。
図8】皮膚のバリア機能の回復率を表すグラフ。
図9】皮膚のバリア機能の回復率を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る皮膚外用剤(皮膚外用組成物)の一実施形態について以下に説明する。
【0013】
本実施形態の皮膚外用剤は、
塩化カルシウム及び加水分解アルギンのうち少なくとも一方と、
トラネキサム酸類、アラントイン、及びグリチルレチン類からなる群より選択される少なくとも1種と、
加水分解ヒアルロン酸、テアニン、パンテノール、及び、ヘパリン類似物質からなる群より選択される少なくとも1種と、を含む。
なお、トラネキサム酸類、及びグリチルレチン類は、塩の状態であってもよい。
本実施形態の皮膚外用剤によって、皮膚のバリア機能を十分に回復できる。
【0014】
以下、塩化カルシウム及び加水分解アルギンのうち少なくとも一方を(A)成分と称し、トラネキサム酸類、アラントイン、及びグリチルレチン類からなる群より選択される少なくとも1種を(B)成分と称し、加水分解ヒアルロン酸、テアニン、パンテノール、及び、ヘパリン類似物質からなる群より選択される少なくとも1種を(C)成分と称する場合がある。
【0015】
(A)成分としての塩化カルシウムは、上記の皮膚外用剤において、溶解した状態であってもよく、分散した状態であってもよい。
【0016】
(A)成分としての加水分解アルギンは、海藻(Paeophyceaeなど)にアルカリ抽出処理等を施すことよって得られるアルギン酸の加水分解物である。加水分解処理は、例えば、酵素、強酸、強アルカリなどによって実施される。加水分解アルギンは、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などであってもよい。加水分解アルギンは、例えば、医薬部外品原料規格(外原規)に収載されたアルギン酸ナトリウムの規格に適合する。
加水分解アルギンの重合度は、5以上100以下である。斯かる重合度は、ソモギーネルソン法によって測定される。
【0017】
加水分解アルギンとして、例えば、化粧品原料用に市販されている製品を使用できる。
【0018】
(B)成分としてのトラネキサム酸類は、トラネキサム酸(塩状態であってもよい)及びトラネキサム酸誘導体(塩状態であってもよい)である。トラネキサム酸類としては、トラネキサム酸(塩の状態を含む)が好ましい。
【0019】
トラネキサム酸は、アミノ酸の1種であり、トランス-4-アミノメチルシクロヘキサン-1-カルボン酸とも称される。
【0020】
トラネキサム酸は、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、塩酸塩などの塩状態であってもよい。
【0021】
トラネキサム酸誘導体は、例えば、トラネキサム酸のカルボキシ基がエステル化されたエステル誘導体、又は、トラネキサム酸のアミノ基がアミド化されたアミド誘導体などである。
【0022】
トラネキサム酸のアミド誘導体としては、例えば、トランス-4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸メチルアミド(塩の状態であってもよい)、トランス-4-(P-メトキシベンゾイル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸(塩の状態であってもよい)などが挙げられる。
トラネキサム酸のエステル誘導体としては、例えば、トラネキサム酸とセタノールとのエステル化反応体(トラネキサム酸セチルエステル等)、トラネキサム酸とハイドロキノンとのエステル化反応体(トランス-4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸4’-ヒドロキシフェニルエステル等)、トラネキサム酸とゲンチシン酸とのエステル化反応体[2-(トランス-4-アミノメチルシクロヘキシルカルボニルオキシ)-5-ヒドロキシ安息香酸及びその塩等]などが挙げられる。
トラネキサム酸誘導体は、トラネキサム酸の二量体[塩酸トランス-4-(トランス-アミノメチルシクロヘキサンカルボニル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等]であってもよい。
【0023】
(B)成分としてのアラントインは、5-ウレイドヒダントインとも称される化合物である。
【0024】
(B)成分としてのグリチルレチン類は、グリチルリチン酸及びその誘導体(塩の状態を含む)、並びに、グリチルレチン酸及びその誘導体(塩の状態を含む)である。
グリチルレチン酸の誘導体としては、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリセリンなどのグリチルレチン酸エステルが例示される。
グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、及びそれらの誘導体は、グリチルレチン酸の分子構造を有することから、抗炎症などの作用をいずれも同様に発揮することが知られている。よって、本実施形態の皮膚外用剤に(A)成分及び(C)成分とともに、上記のグリチルレチン類のうちどの化合物が配合されても、皮膚のバリア機能を十分に回復するという効果を発揮できるといえる。
【0025】
(B)成分としてのグリチルレチン類としては、グリチルリチン酸及びグリチルレチン酸(いずれも塩の状態を含む)のうち少なくとも一方が好ましく、グリチルリチン酸がより好ましい。
グリチルリチン酸としては、水溶性が良好であるという点で、グリチルリチン酸ジカリウムが好ましい。
【0026】
(C)成分としての加水分解ヒアルロン酸は、N-アセチルグルコサミンとグルクロン酸とが結合した二糖単位がつながった鎖状構造を有する、ムコ多糖高分子化合物の加水分解物である。加水分解ヒアルロン酸は、通常、10万以上60万以下の数平均分子量を有する。
加水分解ヒアルロン酸は、塩の状態であってもよい。加水分解ヒアルロン酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩などが挙げられる。水への溶解性がより良好になるという点で、加水分解ヒアルロン酸は、ナトリウム塩又はカリウム塩の状態であることが好ましい。
【0027】
加水分解ヒアルロン酸は、皮膚のバリア機能をより十分に回復できるという点で、10万以上30万以下の数平均分子量を有することが好ましい。加水分解ヒアルロン酸は、分子量が5万以上40万以下の中分子量ヒアルロン酸を含有することがさらに好ましい。
加水分解ヒアルロン酸では、分子量が5万以上40万以下の中分子量ヒアルロン酸が占める割合が、40%以上であってもよい。
加水分解ヒアルロン酸(又はその塩)の分子量、数平均分子量などは、後述するGPC測定によって得られる値である。
【0028】
上記の中分子量ヒアルロン酸又はその塩は、一般的な方法によって得ることができる。例えば、数平均分子量が100万程度の高分子量ヒアルロン酸又はその塩を、酵素や希酸によって加水分解した後に、透析処理することによって得ることができる。具体的には、数平均分子量が100万程度の高分子量ヒアルロン酸(キューピー社、製品名「ヒアルロンサンHA」)を希塩酸によって室温で加水分解処理した後、得られた低分子物を透析処理によって取り除くことで、上記の中分子量ヒアルロン酸を含む加水分解ヒアルロン酸を調製できる。
上記の中分子量ヒアルロン酸の製造方法は、特に限定されず、中分子量ヒアルロン酸を含む原料として市販品を用いることもできる。斯かる市販品としては、例えば、キッコーマンバイオケミファ社製、製品名「ヒアルロン酸 FCH-SU」(ナトリウム塩)が挙げられる。
【0029】
上記の数平均分子量は、10万よりも大きく20万以下であることが好ましい。15万以上であることがより好ましい。これにより、皮膚のバリア機能をより十分に回復できるという利点がある。
【0030】
上記の数平均分子量は、後述するGPC測定において、分子量が5,000以上400万以下の範囲でのヒアルロン酸の数平均分子量である。
【0031】
本実施形態の皮膚外用剤は、分子量が5万未満のヒアルロン酸又はその塩をさらに含んでもよく、また、分子量が40万よりも大きいヒアルロン酸又はその塩をさらに含んでもよい。
【0032】
上記の分子量及び数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。上記の分子量は、標準プルラン・グルコース換算値である。なお、平均分子量の値については、質量平均分子量ではなく、数平均分子量の値を採用する。
【0033】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による分子量の測定方法の詳細は、以下の通りである。
(1)前処理方法
試料を溶離液にて溶解後、0.45μmメンブランフィルターでろ過したものを測定溶液として調製する。
(2)測定条件
測定機器:島津製作所社製 製品名「GPC-HPLC コントローラー SCL-10AVP」
カラム:TSKgel GMPWXL×2+G2500PWXL×1
(7.8mm I.D.×300mm×3本)
溶離液:200mM硝酸ナトリウム水溶液
流量:1.0 mL/min.
検出器:RI検出器(Viscotek LR125 Laser Refractometer)
カラム温度:40℃
注入量:200μL
分子量標準:標準プルラン・グルコース(American Polymer Standards Corp.社製)
(3)分子量及び数平均分子量の測定
分子量:上記の標準プルラン・グルコースの換算値
数平均分子量:付属ソフトウェア データ解析ソフト「マルチステーションGPC-8020」(東ソー社製)
【0034】
上記の中分子量ヒアルロン酸の割合(含有率%)は、GPC測定で得られた結果を基にして、下記のような方法によって決定される。
GPC測定によって得られた分子量分布曲線を基にして、積分分布を示すスライスデータを求める。スライスデータを基にして、5万~40万の指定分子量範囲で分画し、上記の割合(含有率%)を算出する。
なお、本実施形態の皮膚外用剤が上記の中分子量ヒアルロン酸(塩状態も包含する)を含有することは、上記の方法によって確認できる。
【0035】
(C)成分としてのテアニンは、アミノ酸の1種であり、2-アミノ-4-(N-エチルカルバモイル)ブタン酸とも称される。
【0036】
(C)成分としてのパンテノールは、通常D体であり、(2R)-2,4-ジヒドロキシ-N-(3-ヒドロキシプロピル)-3,3-ジメチルブタンアミドとも称される。
【0037】
(C)成分としてのヘパリン類似物質は、ヘパリンに類似する分子構造を有する物質であり、コンドロイチン多硫酸等の多硫酸化ムコ多糖の総称である。換言すると、ヘパリン類似物質は、D-グルクロン酸及びN-アセチル-D-ガラクトサミンの二糖の繰り返し構造のムコ多糖の多硫酸化物である。ヘパリン類似物質としては、日本薬局方外医薬品規格2002にヘパリン類似物質として記載された物質が少なくとも挙げられる。
【0038】
本実施形態の皮膚外用剤において、(A)成分の総量の濃度は、0.0001質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上3.00質量%以下であることがより好ましい。
上記の含有濃度であることによって、皮膚のバリア機能をより十分に回復できるという利点がある。
【0039】
本実施形態の皮膚外用剤において、(A)成分としての塩化カルシウムの濃度は、0.0001質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態の皮膚外用剤において、(A)成分としての加水分解アルギンの濃度は、0.0001質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。
【0040】
本実施形態の皮膚外用剤において、(B)成分の総量の濃度は、0.0001質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上3.00質量%以下であることがより好ましい。
上記の含有濃度であることによって、皮膚のバリア機能をより十分に回復できるという利点がある。
【0041】
本実施形態の皮膚外用剤において、(B)成分としてのトラネキサム酸(塩状態を含む)の濃度は、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上2質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態の皮膚外用剤において、(B)成分としてのアラントインの濃度は、0.01質量%以上0.2質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態の皮膚外用剤において、(B)成分としてのグリチルレチン類(グリチルリチン酸ジカリウムなどの塩状態であってもよい)の濃度は、0.05質量%以上0.5質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましい。
【0042】
本実施形態の皮膚外用剤において、(C)成分の総量の濃度は、0.0001質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上3.00質量%以下であることがより好ましい。
上記の含有濃度であることによって、皮膚のバリア機能をより十分に回復できるという利点がある。
【0043】
本実施形態の皮膚外用剤において、(C)成分としての加水分解ヒアルロン酸(塩状態であってもよい)の濃度は、0.001質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態の皮膚外用剤において、(C)成分としてのテアニンの濃度は、0.001質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態の皮膚外用剤において、(C)成分としてのパンテノールの濃度は、0.001質量%以上0.3質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態の皮膚外用剤において、(C)成分としてのヘパリン類似物質の濃度は、0.001質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。
【0044】
(A)成分、(B)成分、及び(C)成分としては、市販されている製品を用いることができる。
【0045】
上記の皮膚外用剤は、通常、水を含み、上記の成分の他に、界面活性剤、防腐剤などをさらに含んでもよい。
【0046】
本実施形態の皮膚外用剤の性状は、特に限定されないが、例えば液状である。本実施形態の皮膚外用剤は、固形状であってもよい。
【0047】
本実施形態の皮膚外用剤は、一般的な方法によって製造できる。
例えば、配合する各成分を混合し、撹拌することによって上記皮膚外用剤を製造できる。撹拌するための装置としては、一般的なものを使用できる。必要に応じて、加温しつつ撹拌してもよい。
【0048】
上記の皮膚外用剤は、通常、皮膚に塗布されて使用される。上記の皮膚外用剤は、例えば、顔の皮膚、首の皮膚、四肢の皮膚、頭皮、毛髪、また、鼻孔・唇・耳・生殖器・肛門などにおける粘膜に塗布されて使用されてもよい。また、上記の皮膚外用剤は、入浴剤の用途で使用されてもよく、皮膚貼付剤の用途で使用されてもよい。上記の皮膚外用剤は、薬機法上の化粧料、医薬部外品、医薬品等の分類には特に拘束されない。
【0049】
本発明の皮膚外用剤は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の実施形態に限定されるものではない。また、本発明では、一般の皮膚外用剤等において採用される種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲で採用することができる。
【実施例
【0050】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
(試験例1~25)
以下に示す各成分を水に溶解させることによって、各試験例の皮膚外用剤(以下、単に組成物と称する)を製造した。
(A)
(A-1)塩化カルシウム[略称Ca]
(A-2)加水分解アルギン[略称KA](市販製品)
アルギン酸の加水分解物のナトリウム塩 重合度100以下
(B)
(B-1)トラネキサム酸(塩状態ではない)[略称TA]
(B-2)アラントイン[略称AL]
(B-3)グリチルリチン酸ジカリウム[略称GK2]
(C)
(C-1)加水分解ヒアルロン酸ナトリウム塩
製品名「ヒアルロン酸 FCH-SU」 キッコーマンバイオケミファ社製
(上述した中分子量ヒアルロン酸を40%以上含む)
(C-2)テアニン
(C-3)パンテノール
(C-4)ヘパリン類似物質
【0052】
以下の評価試験において使用した組成物の各配合処方を表1~表5に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
<皮膚バリア機能の回復に関わる評価>
被験者10名で評価試験を実施した。各被験者の上腕内側部をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の10質量%水溶液による30分間の処理を3日間にわたって1日1回行うことによって、皮膚のバリア機能をいったん破壊した。
各試験例の組成物の0.1mLを3cmの範囲に1日2回塗布し、この操作を2日間継続した。24時間ごとに経皮水分蒸散量(TEWL)を測定し、SDS処理前のTEWL値を100%として、下記式によって回復率を算出した。なお、何も塗布しなかった部位、及び、プラセボを塗布した部位も設けた。

SDS処理後のTEWL値― 組成物塗布後のTEWL値
回復率[%]= ―――――――――――――――――――――――― ×100
SDS処理後のTEWL値― SDS処理前のTEWL値
【0055】
上記の評価結果を図1に示す。表1及び図1から把握されるように、塩化カルシウム及びトラネキサム酸の両方を含む組成物は、いずれか一方のみを含む組成物と比べて、回復率をより高くすることができた。
【0056】
次に、表2に示す各配合組成の組成物を調製し、上記と同様の方法によって評価を実施した。評価結果を図2及び図3に示す。なお、以下の各表において示す(A)成分、(B)成分、(C)成分の各配合量は、その成分自体の量(固形分量)である。
【0057】
【表2】
【0058】
表2、図2図3から把握されるように、塩化カルシウム又はトラネキサム酸のいずれか一方のみを含む組成物は、少なくとも1質量%まで、濃度依存的に回復率を高めた。
【0059】
続いて、表3に示す各配合組成の組成物を調製し、上記と同様の方法によって評価を実施した。評価結果を図4に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
表3及び図4から把握されるように、加水分解アルギンを含む組成物は、比較的高い回復率を示した。(C)成分を含む組成物は、あまり高い回復率を示さなかった。
【0062】
続いて、表4に示す各配合組成の組成物を調製し、上記と同様の方法によって評価を実施した。評価結果を図5に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
表4及び図5から把握されるように、単に(A)成分と(B)成分とを組み合わせた組成物(試験例16)よりも、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を組み合わせた組成物の方が、高い回復率を示し、相乗的に回復率を高めた。試験例12~15のように(C)成分だけでは回復率をほとんど高めなかったことから、(A)成分、及び(B)成分に対して(C)成分を加えると相乗的に回復率を高めると考えられる。
【0065】
同様に、表5に示す各配合組成の組成物を調製し、上記と同様の方法によって評価を実施した。評価結果を図6に示す。
【0066】
【表5】
【0067】
表5及び図6から把握されるように、単に(A)成分と(B)成分とを組み合わせた組成物(試験例21)よりも、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を組み合わせた組成物の方が、高い回復率を示し、相乗的に回復率を高めた。上述したように(C)成分だけでは回復率をほとんど高めなかったことから、(A)成分、及び(B)成分に対して(C)成分を加えると相乗的に回復率を高めると考えられる。
【0068】
同様に、表6に示す各配合組成の組成物を調製し、上記と同様の方法によって評価を実施した。評価結果を図7に示す。
【0069】
【表6】
【0070】
表6及び図7から把握されるように、単に(A)成分と(B)成分とを組み合わせた組成物(試験例27)よりも、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を組み合わせた組成物の方が、高い回復率を示し、相乗的に回復率を高めた。(B)成分だけでは試験例26のように回復率をほとんど高めなかったことから、(A)成分、及び(B)成分に対して(C)成分を加えると相乗的に回復率を高めると考えられる。
【0071】
同様に、表7に示す各配合組成の組成物を調製し、上記と同様の方法によって評価を実施した。評価結果を図8に示す。
【0072】
【表7】
【0073】
表7及び図8から把握されるように、単に(A)成分と(B)成分とを組み合わせた組成物(試験例32)よりも、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を組み合わせた組成物の方が、高い回復率を示し、相乗的に回復率を高めた。
【0074】
同様に、表8に示す各配合組成の組成物を調製し、上記と同様の方法によって評価を実施した。評価結果を図9に示す。
【0075】
【表8】
【0076】
表8及び図9から把握されるように、単に(A)成分と(B)成分とを組み合わせた組成物(試験例38)よりも、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を組み合わせた組成物の方が、高い回復率を示し、相乗的に回復率を高めた。
【0077】
以上のように、本実施形態の皮膚外用剤は、皮膚のバリア機能を十分に回復できる。この皮膚バリア回復性能は、(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分を組み合わせることによって、相乗的に発揮されるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の皮膚外用剤は、例えば、敏感肌(アトピー性皮膚炎を含む)の症状を緩和するため、乾燥肌を予防軽減するため、炎症性の肌荒れを予防軽減するために、皮膚に適用されて使用される。本発明の皮膚外用剤は、例えば直接角質層に塗布され、化粧料等の用途で好適に使用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9