(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】レベリング材の施工方法及びレベリング材攪拌槽
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20241009BHJP
B28B 13/00 20060101ALI20241009BHJP
E04F 15/12 20060101ALI20241009BHJP
E04F 21/24 20060101ALI20241009BHJP
E04F 21/02 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
E04G21/02 103Z
B28B13/00 B
E04F15/12 E
E04F21/24 A
E04F21/02 A
(21)【出願番号】P 2020101463
(22)【出願日】2020-06-11
【審査請求日】2023-04-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイト(http://mito-k.net/)への公開,令和2年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】520208052
【氏名又は名称】有限会社三仁興業
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 敬三
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-240870(JP,A)
【文献】特開2002-339375(JP,A)
【文献】特開2017-039246(JP,A)
【文献】特開平08-099725(JP,A)
【文献】特公昭45-015063(JP,B1)
【文献】実開昭61-189932(JP,U)
【文献】特開2006-110809(JP,A)
【文献】実開昭54-161672(JP,U)
【文献】特開昭61-72172(JP,A)
【文献】再公表特許第2019/102850(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
B28B 13/00
E04F 15/12
E04F 21/24
E04F 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地の上面にレベリング材を流し込んで硬化させることで、下地の上側に不陸のない平坦面を形成するレベリング材の施工方法であって、
下地の上面にレベリング材を流し込む際に、
レベリング材を攪拌するためのレベリング材攪拌槽を宙吊りにし、
レベリング材攪拌槽の底部に接続したレベリング材取出管路を目的場所まで引くことによって、
レベリング材攪拌槽の内部のレベリング材が目的箇所まで自然流下するように
するとともに、
レベリング材攪拌槽の内部に配した攪拌羽根を100~1000rpmの回転速度で回転させることによって、レベリング材を攪拌するようにした
ことを特徴とするレベリング材の施工方法。
【請求項2】
レベリング材取出管路が、レベリング材攪拌槽に接続される基端部から、レベリング材が送出される先端部に至るまで、単調な下り傾斜となるようにした請求項1記載のレベリング材の施工方法。
【請求項3】
下地の上面に流し込んで硬化させることで下地の上側に不陸のない平坦面を形成するレベリング材を攪拌するためのレベリング材攪拌槽であって、
攪拌槽本体と、
クレーンで吊り下げるための吊下部と、
レベリング材攪拌槽の底部からレベリング材を取り出すためのレベリング材取出部と
レベリング材を攪拌するための撹拌機と
を備え
、
撹拌機が、
攪拌槽本体の内部に配された攪拌羽根と、
攪拌羽根を100~1000rpmの回転速度で回転させる回転駆動装置と
を有するものとされた
ことを特徴とするレベリング材攪拌槽。
【請求項4】
レベリング材攪拌槽の底部が先細りのテーパー状に形成され、
レベリング材取出部がレベリング材攪拌槽の底部中心に形成された
請求項3記載のレベリング材攪拌槽。
【請求項5】
地面に設置したときのレベリング材攪拌槽が倒れないようにするための脚部を備えた請求項4記載のレベリング材攪拌槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下地の上面にレベリング材を流し込んで硬化させることで、下地の上側に不陸のない平坦面を形成するレベリング材の施工方法と、これに好適に用いることができるレベリング材攪拌槽とに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の基礎は、鉄筋を組んで型枠で囲み、型枠内にコンクリートを打設することによって施工される。ところが、コンクリートは、流動性が低く(粘性が高く)、型枠内に流し込んでもその上面が水平になるとは限らないため、硬化した後のコンクリートの上面には、不陸が形成されやすい。このため、打設されたコンクリートの上面に、コンクリートよりも流動性の高いレベリング材を流し込んで硬化させることが行われている(例えば、特許文献1を参照。)。これにより、コンクリートの上面に不陸があっても、レベリング材の上面(建物の基礎の上面)を不陸のない平坦面とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の施工方法では、レベリング材の原料をバケツに入れて撹拌機で攪拌した後、そのバケツを目的場所まで運び、そのバケツを傾けることで、レベリング材を目的場所に流し込んでいる(例えば、特許文献1の
図6及び
図7を参照。)。このため、レベリング材を攪拌した場所から施工する場所まで移動するのに、多大な労力を要していた。加えて、作業現場は、鉄筋や木材等が転がっていて足場が悪いことも多いところ、レベリング材をバケツで運んでいるときに躓いてしまい、レベリング材をぶちまけてしまうことも少なからずあった。また、レベリング材を型枠内に流し込む際には、レベリング材が型枠から飛び出ないように、重いバケツの傾き角度や位置を調節しながら作業する必要がある等、作業性も悪かった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、レベリング材を人為的に運搬することなく目的場所に容易に流し込むことができ、作業性を向上させることのできるレベリング材の施工方法を提供するものである。また、このレベリング材の施工方法に好適に用いることができるレベリング材攪拌槽を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、
下地の上面にレベリング材を流し込んで硬化させることで、下地の上側に不陸のない平坦面を形成するレベリング材の施工方法であって、
下地の上面にレベリング材を流し込む際に、
レベリング材を攪拌するためのレベリング材攪拌槽を宙吊りにし、
レベリング材攪拌槽の底部に接続したレベリング材取出管路を目的場所まで引くことによって、
レベリング材攪拌槽の内部のレベリング材が目的箇所まで自然流下(重力によって流下)するようにした
ことを特徴とするレベリング材の施工方法
を提供することによって解決される。
【0007】
これにより、攪拌後のレベリング材をバケツ等で運搬する必要がなくなる。このため、作業員の手間や肉体的な負担を軽減することができる。加えて、レベリング材攪拌槽の内部のレベリング材は、レベリング材取出管路の中を重力に従って流下することで目的の場所まで達するので、レベリング材の流し込みに、ポンプ等の動力機器も要しない。また、レベリング材を型枠内に流し込む際には、レベリング材取出管路の先端部(レベリング材攪拌槽に接続されない方の端部のこと。以下同じ。)を操作するだけで、レベリング材を流し込む場所等を調節することができる。このため、作業性を高めることもできる。
【0008】
本発明のレベリング材の施工方法において、レベリング材を目的場所に流し込む際には、レベリング材取出管路の基端部(レベリング材攪拌槽に接続される側の端部のこと。以下同じ。)が先端部よりも高くなるようにしておけばよく、レベリング材取出管路の中途部分には、水平な部分や上り傾斜となっている部分が存在していてもよい。ただし、レベリング材取出流路の中途部分に水平な部分や上り傾斜の部分が存在していると、レベリング材に含まれる固形成分がその場所に沈殿して滞留しやすくなる。このため、レベリング材取出管路は、レベリング材攪拌槽に接続される基端部から、レベリング材が送出される先端部に至るまで、単調な下り傾斜とすることが好ましい。
【0009】
また、上記課題は、
下地の上面に流し込んで硬化させることで下地の上側に不陸のない平坦面を形成するレベリング材を攪拌するためのレベリング材攪拌槽であって、
クレーンで吊り下げるための吊下部と、
レベリング材攪拌槽の底部からレベリング材を取り出すためのレベリング材取出部と
を備えたことを特徴とするレベリング材攪拌槽
を提供することによっても解決される。
このレベリング材攪拌槽は、上述した本発明のレベリング材の施工方法における「レベリング材攪拌槽」として好適に用いることができる。
【0010】
本発明のレベリング材攪拌槽においては、その底部を先細りのテーパー状に形成し、レベリング材取出部をその底部中心に形成することが好ましい。これにより、レベリング材攪拌槽の内部のレベリング材がレベリング材取出部からスムーズに流れ出やすくなる。また、レベリング材攪拌槽の内部のレベリング材の略全量を取り出しやすくなり、レベリング材を無駄なく使用することも可能になる。
【0011】
本発明のレベリング材攪拌槽において、その底部をテーパー状に形成する場合には、地面に設置したときのレベリング材攪拌槽が倒れないようにするための脚部を設けることが好ましい。レベリング材の原料をレベリング材攪拌槽に投入したり、使用後のレベリング材を洗浄したりする際のレベリング材攪拌槽は、通常、地面に降ろされた状態とされるところ、レベリング材攪拌槽の底部がテーパー状になっていると、レベリング材攪拌槽を自立させにくい。この点、脚部を設けることで、レベリング材攪拌槽を地面に自立させることが可能になる。
【0012】
本発明のレベリング材攪拌槽においては、その内部のレベリング材を攪拌するための撹拌機を備え付けることが好ましい。レベリング材は、攪拌してもしばらくすると、その固形成分が沈殿するところ、レベリング材攪拌槽自体に撹拌機を設けることで、レベリング材を攪拌しながら目的の場所に流し込むことができるようになる。このため、質の良いレベリング材を施工することが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によって、レベリング材を人為的に運搬することなく目的場所に容易に流し込むことができ、作業性を向上させることのできるレベリング材の施工方法を提供することが可能になる。また、このレベリング材の施工方法に好適に用いることができるレベリング材攪拌槽を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のレベリング材の施工方法の一例を示した図である。
【
図2】本発明のレベリング材攪拌槽の一例を示した斜視図である。
【
図3】本発明のレベリング材攪拌槽の一例を示した図であって、レベリング材攪拌槽を側方から見た状態を示した側面図である。
【
図4】本発明のレベリング材攪拌槽の一例を示した図であって、レベリング材を攪拌しているときのレベリング材攪拌槽を鉛直面で切断した状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のレベリング材の施工方法及びそれに用いるレベリング材攪拌槽の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下で述べる内容は、飽くまで好適な実施形態を説明したものであり、本発明の技術的範囲は、以下で述べる実施形態に限定されない。本発明のレベリング材の施工方法及びレベリング材攪拌槽には、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0016】
1.レベリング材の施工方法
まず、本発明に係るレベリング材の施工方法について説明する。
図1は、本発明のレベリング材の施工方法の一例を示した図である。この図では、建物の基礎を施工している様子を示している。具体的には、地面Gに鉄筋1を組んで型枠2で囲み、型枠2内にコンクリート3(下地)を打設した後、コンクリート3の上面3aにレベリング材4を流し込んでいる様子を示している。
【0017】
コンクリート3は、硬化前の状態(生コンクリートの状態)でも流動性が低い(粘性が高い)ため、型枠2内に打設されたコンクリート3の上面3aが水平な平坦面になりにくく、コンクリート3の上面3aには、不陸が形成されやすい。この点、コンクリート3の上面3a(不陸面)の上側に、コンクリート3よりも粘性の低い(流動性の高い)レベリング材4を流し込んで硬化させることで、平坦で不陸のない上面4aを得ることが可能となっている。レベリング材4は、型枠2内にコンクリート3を打設した直後に流し込んでもよいが、以下の手順を踏んでから流し込むことが好ましい。
【0018】
すなわち、型枠2内にコンクリート3を打設した後には、そのコンクリート3が硬化するよりも前に、コンクリート3の上面3aをコテ等でできるだけ平坦に均しておくことが好ましい。また、予め、天端釘やマグネット等を用いてレベル出しをしておくことが好ましい。さらに、打設されたコンクリート3の上面3aから水がひいた直後に、その上面3aをブラシ等で目荒らしするとともに、上面3aのゴミや油分等を取り除くことも好ましい。このとき、コンクリート3の上面3aが乾きすぎた場合には、プライマー処理を行うとよい。以上の手順を踏んでから、レベリング材4を流し込むと、より平坦な上面4aを得るだけでなく、硬化後のレベリング材4をコンクリート3により強固に一体化させることができる。コンクリート3及びレベリング材4が完全に硬化すると、型枠2を取り除いて、建物の基礎が完成する。
【0019】
既に述べたように、従来の施工方法では、レベリング材4の流し込みは、バケツを用いて行われていた。ところが、このような作業は、重いバケツを抱えてのものとなるため、作業員の肉体的な負担が大きいだけでなく、手間も要していた。また、作業性も悪かった。これに対し、本発明の施工方法では、
図1に示すように、クレーン5等で宙吊りにしたレベリング材攪拌槽10から、目的場所にレベリング材4を供給することで、上記の問題を解決している。なお、
図1では、クレーン5として、クローラータイプの自走式クレーンを描いているが、クレーン5は、これに限定されない。例えば、トラック車両のシャシーに据え付けられたクレーン(いわゆるユニック車のクレーン)等を用いてもよい。
【0020】
レベリング材攪拌槽10は、レベリング材4の原料を攪拌するためのものである。レベリング材4の原料は、その種類によっても異なるところ、本実施形態の施工方法のように、建物の基礎の上面に施工する場合には、セメントに石膏等を添加した水硬性組成物(セメント系レベリング材)が用いられることが多い。レベリング材攪拌槽10にレベリング材4の原料を投入し(このときのレベリング材攪拌槽10は、通常、地面Gに降ろされた状態とされる。)、所定量の水を加えてから、原料を攪拌する。原料が十分に攪拌され、レベリング材4がスラリー状になると、レベリング材4を施工することが可能になる。レベリング材4を施工する際には、上述したように、レベリング材攪拌槽10を、クレーン5等で宙吊りにする。
【0021】
宙吊りにされたレベリング材攪拌槽10の底部には、レベリング材取出管路6の基端部6a(上端部)が接続されている。レベリング材取出管路6には、通常、樹脂チューブやゴムホース等、可撓性を有する管状部材が用いられる。このレベリング材取出管路6は、レベリング材攪拌槽10の内部からレベリング材4を取り出すためのものとなっており、その先端部6b(下端部)は、作業員7によって、レベリング材4を流し込む目的場所(コンクリート3の上面3a)付近で保持される。
【0022】
レベリング材4を施工する際のレベリング材攪拌槽10は、レベリング材取出管路6の基端部6a(レベリング材攪拌槽10の底部)が先端部6bよりも高くなる位置まで吊り上げられる。これにより、レベリング材攪拌槽10の内部に貯えられたレベリング材4が、レベリング材取出管路6の内部を重力によって自然流下して、レベリング材取出管路6の先端部6bから流れ出るようになる。固形成分を含むスラリー状のレベリング材4の移送にポンプ等の動力機器を用いると、ポンプが詰まる等、装置(動力機器)にトラブルが生じやすくなるところ、上記のように、レベリング材4を重力によって自然流下させることで、レベリング材4を、ポンプ等の動力機器を使用することなく、目的場所まで移送することが可能となっている。
【0023】
レベリング材4を施工する際における、レベリング材取出管路6の先端部6bから基端部6aまでの高さH1をどの程度に設定するかは重要である。というのも、高さH1を小さくしすぎると、レベリング材取出管路6の先端部6bからレベリング材4が流れ出にくくなる(レベリング材4の吐出流量が小さくなる)からである。このため、高さH1は、50cm以上とすることが好ましい。高さH1は、100cm以上であることがより好ましく、150cm以上とすることがさらに好ましい。
【0024】
一方、レベリング材4を施工する際における、レベリング材取出管路6の先端部6bから基端部6aまでの高さH1を大きくしすぎると、レベリング材取出管路6の先端部6bからレベリング材4が勢いよく出すぎてしまい(レベリング材4の吐出流量が大きくなりすぎてしまい)、レベリング材4が目的場所の周辺に飛散しやすくなる。また、クレーン5として小型のものでは足りず、大型のものを用意する必要も出てくる。このため、高さH1は、5m以下とすることが好ましい。高さH1は、4m以下とすることがより好ましく、3m以下とすることがさらに好ましい。
【0025】
レベリング材4を施工する際において、レベリング材取出管路6の中途部分(基端部6aと先端部6bとの間の区間)には、水平な部分や、レベリング材4の流れる向きに対して上り傾斜となった部分が存在していてもよい。しかし、レベリング材取出管路6の中途部分に水平な部分や上り傾斜の部分が存在していると、レベリング材4に含まれる固形成分(セメントや石灰の粉体等)がその場所に沈殿して滞留し、レベリング材取出管路6が詰まりやすくなるおそれがある。このため、レベリング材取出管路6は、
図1に示すように、基端部6aから先端部6bに至るまで、できるだけ単調な下り傾斜とすることが好ましい。
【0026】
レベリング材取出管路6の長さが余って、水平な部分や上り傾斜の部分ができてしまう場合には、レベリング材攪拌槽10の位置を高くしたり、目的場所(レベリング材4を施工する場所)から遠ざけたりすることで、レベリング材取出管路6の余った部分を小さくし、レベリング材取出管路6を単調な下り傾斜とすることができる。
【0027】
以上のように、本実施形態の施工方法を採用すると、レベリング材4をバケツ等で運搬する必要がなくなる。このため、作業員の手間や肉体的な負担を軽減することができる。また、レベリング材4の流し込み(移送)に、ポンプ等の動力機器も不要である。さらに、作業員7は、手に持ったレベリング材取出管路6の先端部6bの位置を変えるだけで、レベリング材を流し込む場所等を調節することができる。このため、作業性を高めることもできる。
【0028】
レベリング材4の施工の作業性は、レベリング材取出管路6の先端部6bに栓を設けることで、さらに高めることができる。これにより、レベリング材4の供給と停止とを作業員7の手元の操作で行うことができるようになるからである。このとき、栓として、流量調整弁を用いると、レベリング材4の吐出流量も、作業員7の手元の操作で行うこともできるようになる。
【0029】
2.レベリング材攪拌槽
続いて、レベリング材攪拌槽10についてより詳しく説明する。
図2~4は、レベリング材攪拌槽10の一例を示した図である。
図2は、レベリング材攪拌槽10を斜め上方から見た状態(レベリング材攪拌槽10の斜視図)を、
図3は、レベリング材攪拌槽10を側方から見た状態(レベリング材攪拌槽10の側面図)を、
図4は、レベリング材4を攪拌しているときのレベリング材攪拌槽10を鉛直面で切断した状態(レベリング材攪拌槽10の断面図)を、それぞれ示している。本実施形態のレベリング材攪拌槽10は、
図2に示すように、攪拌槽本体11と、蓋体12と、脚13と、吊下部14とを備えている。
【0030】
2.1 攪拌槽本体
攪拌槽本体11は、
図4に示すように、その内部でレベリング材4を攪拌(同図における矢印A
1を参照。)するため部分となっている。攪拌槽本体11の底部には、攪拌槽本体11の内部からレベリング材4を取り出すためのレベリング材取出部11aが設けられている。上述したレベリング材取出管路6の基端部6a(上端部)は、このレベリング材取出部11aに接続される。攪拌槽本体11の底部付近には、予備のレベリング材取出部11bも設けられている。レベリング材取出部11a,11bには、通常、図示省略の開閉栓が設けられる。
【0031】
攪拌槽本体11の形態は、四角筒状等、角部を有する形態としてもよい。しかし、攪拌槽本体11を角部のある形態とすると、攪拌槽本体11の内部で攪拌されているレベリング材4の固形成分が、攪拌槽本体11の角部付近に滞留しやすくなり、レベリング材4の攪拌が不十分になるおそれがある。このため、攪拌槽本体11は、円筒状等、できるだけ角部のない形態とすることが好ましい。本実施形態のレベリング材攪拌槽10においても、
図2に示すように、攪拌槽本体11を円筒状としている。
【0032】
また、本実施形態のレベリング材攪拌槽10においては、
図4に示すように、攪拌槽本体11の底部11dを、先細り(下細り)のテーパー状に形成している。上記のレベリング材取出部11aは、テーパー状に形成された底部11dの中心(最も低くなる箇所)に設けている。このため、攪拌槽本体11の内部のレベリング材4の略全量を攪拌槽本体11内に残すことなく、底部11dの中心に集めてレベリング材取出部22aからスムーズに取り出すことができるようになっている。
【0033】
攪拌槽本体11の底部11dの傾斜角度θ(
図4)は、特に限定されない。しかし、傾斜角度θを小さくしすぎる(0°に近づけすぎる)と、攪拌槽本体11内のレベリング材4が攪拌槽本体11の底部11dの中心(レベリング材取出部11aが設けられた箇所)にスムーズに集まりにくくなる。このため、傾斜角度θは、5°以上とすることが好ましく、10°以上とすることが好ましい。
【0034】
ただし、傾斜角度θを大きくしすぎる(90°に近づけすぎる)と、攪拌羽根21の直径を小さくしなければ、攪拌羽根21をレベリング材取出部11aの近くに配置できなくなり、レベリング材4を効率的に攪拌しにくくなるおそれがある。このため、傾斜角度θは、45°以下とすることが好ましく、30°以下とすることがより好ましい。本実施形態のレベリング材攪拌槽10においては、傾斜角度θを14~15°程度に設定している。
【0035】
2.2 蓋体
蓋体12は、攪拌槽本体11の内部にゴミ等が混入しないようにするために、攪拌槽本体11の上側開口を覆うためのものとなっている。本実施形態のレベリング材攪拌槽10においては、
図2に示すように、攪拌槽本体11の上側開口を略半分ずつ覆う一対の開閉板12aによって蓋体12を構成している。それぞれの開閉板12aの基端部には、図示省略のヒンジが取り付けられている。このため、それぞれの開閉板12aは、攪拌槽本体11に対して回動(
図2の矢印A
2を参照。)させることで、開閉できるようになっている。
【0036】
2.3 脚
脚13は、地面G(
図1)に設置したときのレベリング材攪拌槽10(レベリング材4を目的場所に流し込む際のレベリング材攪拌槽10は、宙吊りの状態とされるものの、レベリング材4の原料を攪拌槽本体11に投入する際等のレベリング材攪拌槽10は、地面Gに降ろされた状態とされる。)が倒れないように、攪拌槽本体11を支えるための部分となっている。本実施形態のレベリング材攪拌槽10においては、
図2に示すように、攪拌槽本体11の外周部に、4本の脚13をバランスよく(攪拌槽本体11の中心線に対して回転対称に)配している。
【0037】
2.4 吊下部
吊下部14は、レベリング材攪拌槽10を宙吊りにする際に、クレーン5(
図1)のフック等に固定したワイヤ等を吊り下げるための部分となっている。本実施形態のレベリング材攪拌槽10においては、
図2に示すように、攪拌槽本体11の上端部に一体的に形成したフランジ部11cに、4つの吊下部14をバランスよく(攪拌槽本体11の中心線に対して回転対称に)配している。このため、レベリング材攪拌槽10を真っすぐな状態で吊り下げることができるようになっている。
【0038】
2.5 その他(撹拌機)
ところで、従来の施工方法においては、レベリング材4の原料と水をバケツに入れ、そのバケツにハンドミキサ(手持ち型の攪拌装置)を入れて原料と水を攪拌した後、そのバケツを目的場所まで運んでその中身(攪拌後のレベリング材4)をその場所に移すことで、レベリング材4を目的場所に流し込んでいる。すなわち、レベリング材4の攪拌を終えてから、レベリング材4を目的場所に流し込んでいる。これと同様に、本発明のレベリング材攪拌槽10においても、レベリング材4の攪拌を終えてから、レベリング材4を目的場所に流し込む(レベリング材攪拌槽10を地面G(
図1)に降ろした状態で、攪拌槽本体11にレベリング材4の原料と水を投入して攪拌した後、レベリング材攪拌槽10を宙吊りにして、攪拌槽本体11の内部のレベリング材4を目的場所に供給する)ようにしてもよい。
【0039】
しかし、レベリング材4の攪拌を終えてからレベリング材4を目的場所に流し込むようにすると、レベリング材4を目的場所に流し込んでいるときに、攪拌槽本体11の内部でレベリング材4が固形成分と液体成分に分離して、固形成分が攪拌槽本体11の底部付近に沈殿するおそれがある。このため、レベリング材取出管路6によって取り出されるレベリング材4が水っぽくなったり、逆に固形っぽくなったりするおそれがある。このような問題は、レベリング材4を攪拌してから時間が経過すればするほど、より生じやすくなる。したがって、攪拌を終えてからレベリング材4を目的場所に流し込む場合には、作業ができるだけ短時間で終わるように、作業を中断することなく一気にやりきってしまう必要がある。
【0040】
この点、本実施形態のレベリング材攪拌槽10には、
図4に示すように、攪拌槽本体11の内部のレベリング材4を攪拌するための撹拌機20を据え付けている。この撹拌機20は、攪拌槽本体11の内部に配された攪拌羽根21と、攪拌羽根21から上方に延びるシャフト22と、シャフト22の上端部に連結された回転駆動装置23(モーター等)とで構成されており、回転駆動装置23が発生した回転力を、シャフト22を介して攪拌羽根21に伝達し、攪拌羽根21を回転させることで、レベリング材4の攪拌を行うものとなっている。
【0041】
このように、レベリング材攪拌槽10自体に撹拌機20を設けたことによって、レベリング材4を目的場所に流し込んでいるとき(レベリング材攪拌槽10を宙吊りにしているとき)にも、攪拌槽本体11の内部のレベリング材4を攪拌することが可能になる。したがって、レベリング材4を流し込む作業を中断する等、その作業に長時間を要した場合であっても、十分に攪拌された均質なレベリング材4を目的場所に流し込みつづけることが可能となっている。
【0042】
攪拌槽本体11内における攪拌羽根21の高さは、重要である。というのも、攪拌槽本体11の内部における高い箇所に攪拌羽根21を配すると、攪拌槽本体11に溜まっているレベリング材4の上層付近しか攪拌できなくなるだけでなく、レベリング材取出部11aからレベリング材4が取り出されてレベリング材4の水位が低下したときに、攪拌羽根21が水面よりも上側になり、レベリング材4の攪拌自体を行うことができなくなるからである。このため、攪拌羽根21は、攪拌槽本体11の底部11d(レベリング材取出部11aが設けられた箇所)に近い箇所に設けることが好ましい。
【0043】
ただし、攪拌羽根21を、攪拌槽本体11の底部11dに近づけすぎると、攪拌羽根21の先端が底部11dに当たって(
図4における部分αで攪拌羽根21が底部11dに当たって)、攪拌羽根21が破損するおそれがある。このため、部分αにおける、攪拌羽根21と底部11dとのクリアランス(上下方向のクリアランスのこと。以下同じ。)は、10mm以上確保することが好ましく、20mm以上確保することがより好ましい。
【0044】
ただし、部分αにおける、攪拌羽根21と底部11dとのクリアランスを広くしすぎると、攪拌槽本体11の底部11dと側壁部との間の部分β(
図4)に、レベリング材4が滞留する滞留域が形成されやすくなる。このため、部分αにおける、攪拌羽根21と底部11dとのクリアランスは、50mm以下に抑えることが好ましく、30mm以下に抑えることがより好ましい。本実施形態のレベリング材攪拌槽10において、部分αにおける、攪拌羽根21と底部11dとのクリアランスは、約25mmに設定している。
【0045】
攪拌羽根21の回転速度は、レベリング材4の種類等に応じて適宜決定される。しかし、攪拌羽根21の回転速度が遅すぎると、レベリング材4の攪拌が不十分になるおそれがある。このため、攪拌羽根21の回転速度は、100rpm以上とすることが好ましく、200rpm以上とすることがより好ましい。
【0046】
ただし、攪拌羽根21の回転速度を速くしすぎると、攪拌槽本体11の内部に、レベリング材4が攪拌されにくい領域が形成されやすくなる。この場合にも、レベリング材4の攪拌が不十分になるおそれがある。この点、バケツを地面に置いてハンドミキサで攪拌する従来の施工方法では、バケツの中のレベリング材4に気泡が形成される等して、攪拌が不十分な箇所を視認することができ、その攪拌が不十分な箇所にハンドミキサを移動して攪拌するといったことも可能であるところ、レベリング材攪拌槽10を宙吊りにしてレベリング材4の攪拌を行う本実施形態のレベリング材攪拌槽10では、レベリング材4の状態を確認しながら攪拌することが難しい。このため、本実施形態のレベリング材攪拌槽10においては、攪拌羽根21の回転速度を、従来のハンドミキサによる値(通常、1200rpm程度)よりも遅くすることが好ましい。具体的には、攪拌羽根21の回転速度を、1000rpm以下とすることが好ましく、800rpm以下とすることがさらに好ましい。攪拌羽根21の回転速度は、インバーター等を備えたスピードコントローラにより、調節できるようにしておくとよい。
【0047】
攪拌羽根21の寸法(外径)も、特に限定されない。しかし、攪拌羽根21の外径が小さすぎると、攪拌槽本体11の内部のレベリング材4を十分に攪拌しにくくなるおそれがある。このため、攪拌羽根21の外径(以下、「外径D1」と表記する。)は、攪拌槽本体11の内径(以下、「内径D2」と表記する。)に対する外径D1の比D1/D2を0.2以上確保できる範囲で設定することが好ましく、0.3以上確保できる範囲で設定することがより好ましい。
【0048】
ただし、攪拌羽根21の外径を大きくしすぎると、攪拌羽根21の先端部が攪拌槽本体11の周壁等にぶつかりやすくなり、攪拌羽根21が破損するおそれがある。また、攪拌羽根21がレベリング材4から大きな回転抵抗を受けるようになり、回転駆動装置23として能力が大きなものを使用する必要がでてくる。このため、攪拌槽本体11の内径D2に対する攪拌羽根21の外径D1の比D1/D2は、0.8以下に抑えることが好ましく、0.5以下に抑えることがより好ましい。本実施形態のレベリング材攪拌槽10においては、攪拌羽根21の外径D1が約25cmで、攪拌槽本体11の内径D2が約80cmとなっており、比D1/D2が0.3強となっている。
【符号の説明】
【0049】
1 鉄筋
2 型枠
3 コンクリート(下地)
3a コンクリート(下地)の上面(不陸面)
4 レベリング材
4a レベリング材の上面(平坦面)
5 クレーン
6 レベリング材取出管路
6a レベリング材取出管路の基端部(上端部)
6b レベリング材取出管路の先端部(下端部)
7 作業員
10 レベリング材攪拌槽
11 攪拌槽本体
11a レベリング材取出部
11b 予備のレベリング材取出部
11c フランジ部
11d 攪拌槽本体の底部
12 蓋体
12a 開閉板
13 脚
14 吊下部
15 フレーム
20 撹拌機
21 攪拌羽根
22 シャフト
23 回転駆動装置
G 地面
H1 レベリング材取出管路の先端部から基端部までの高さ