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特許7569063強化繊維樹脂テープの製法、強化繊維樹脂テープの製造装置及び強化繊維樹脂テープ
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  • 特許-強化繊維樹脂テープの製法、強化繊維樹脂テープの製造装置及び強化繊維樹脂テープ 図1
  • 特許-強化繊維樹脂テープの製法、強化繊維樹脂テープの製造装置及び強化繊維樹脂テープ 図2
  • 特許-強化繊維樹脂テープの製法、強化繊維樹脂テープの製造装置及び強化繊維樹脂テープ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】強化繊維樹脂テープの製法、強化繊維樹脂テープの製造装置及び強化繊維樹脂テープ
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/50 20060101AFI20241009BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20241009BHJP
   B29C 70/68 20060101ALI20241009BHJP
   B29B 11/16 20060101ALI20241009BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20241009BHJP
【FI】
B29C70/50
B29C70/16
B29C70/68
B29B11/16
B29K105:08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020113086
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022022643
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】596039936
【氏名又は名称】株式会社タカイコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100181250
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 信介
(72)【発明者】
【氏名】土田 健司
(72)【発明者】
【氏名】古田 泰浩
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-231176(JP,A)
【文献】国際公開第2015/060299(WO,A1)
【文献】特開2010-228258(JP,A)
【文献】特開昭61-106634(JP,A)
【文献】特開2009-091377(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0239848(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010047406(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/50
B29C 70/16
B29C 70/68
B29B 11/16
B29K 105/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状に成形した強化繊維を長手方向に移動させる移動工程と、
前記移動工程により前記テープ状の強化繊維を長手方向に移動させつつ、前記強化繊維に、揮発成分を含む樹脂を含浸させる含浸工程と、
前記含浸工程により前記揮発成分を含む樹脂を含浸させた前記強化繊維を、前記強化繊維の下面に接する面に、離型剤を塗布した、短手方向の長さが前記強化繊維の短手方向よりも大きな第1樹脂テープと、前記強化繊維の上面に接する面に、離型剤を塗布した、短手方向の長さが前記強化繊維の短手方向よりも大きな第2樹脂テープとで挟んで、前記強化繊維が短手方向の両端部分の内側に位置するように接触させつつ巻き取る巻取り工程と、
により強化繊維樹脂テープを製造する強化繊維樹脂テープの製法。
【請求項2】
テープ状に成形した強化繊維を供給する強化繊維供給部と、
前記強化繊維供給部から供給される前記強化繊維を長手方向に移動させる移動部と、
前記移動部により前記テープ状の強化繊維を長手方向に移動させつつ、前記強化繊維に、揮発成分を含む樹脂を含浸させる含浸部と、
前記含浸部により前記揮発成分を含む樹脂を含浸させた前記強化繊維の下面に接する面に、離型剤を塗布した、短手方向の長さが前記強化繊維の短手方向よりも大きな第1樹脂テープを供給する第1樹脂テープ供給部と、
前記含浸部により前記揮発成分を含む樹脂を含浸させた前記強化繊維の上面に接する面に、離型剤を塗布した、短手方向の長さが前記強化繊維の短手方向よりも大きな第2樹脂テープを供給する第2樹脂テープ供給部と、
前記第1樹脂テープ供給部から供給される前記第1樹脂テープと前記第2樹脂テープ供給部から供給される前記第2樹脂テープとで、前記含浸部により樹脂を含浸させた前記強化繊維を、前記強化繊維が短手方向の両端部分の内側に位置するように接触させつつ挟んで巻き取る巻取り部と、
を備えたことを特徴とする強化繊維樹脂テープ製造装置。
【請求項3】
揮発成分を含む樹脂を含浸させた、テープ状に成形した強化繊維を巻回させた強化繊維層と、
前記揮発成分を含む樹脂を含浸させた強化繊維の下面に接する面に、離型剤を塗布した樹脂テープであって、短手方向の長さが前記強化繊維の短手方向よりも大きく、前記強化繊維が短手方向の両端部分の内側に位置するように接触させた第1樹脂テープ層と、
前記揮発成分を含む樹脂を含浸させた強化繊維の上面に接する面に、離型剤を塗布した樹脂テープであって、短手方向の長さが前記強化繊維の短手方向よりも大きく、前記強化繊維が短手方向の両端部分の内側に位置するように接触させた第2樹脂テープ層と、
が渦巻状に巻き取られて形成されていることを特徴とする強化繊維樹脂テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化繊維樹脂によって成形品を製造する際に便利なテープ状に成形した強化繊維樹脂テープの製法、その製造装置及び強化繊維樹脂テープに関する。
【背景技術】
【0002】

従来、強化繊維複合材などの強化繊維樹脂製品を製造する方法として、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを、繊維配合を二次元ランダムに積層して所定厚さのプリプレグ積層体とし、そのプリプレグ積層体を加熱するとともに加圧することで所定厚さのシート状に成形した後、冷却するという方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】

【文献】特開2019-210417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の強化繊維複合材の製法では、樹脂を強化繊維に含侵させるために、樹脂に配合している揮発性の薬剤が揮発し、樹脂が硬化してしまうため、プリプレグ状態から加熱・加圧するまでの時間を短くする必要があるという問題があり、プリプレグ状態で長期間保管することもできないという問題もあった。
【0005】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、樹脂を含浸させた状態の強化繊維を長時間保管可能とする強化繊維樹脂テープの製法、製造装置及び強化繊維樹脂テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の適用例として実現することが可能である。なお、本欄における括弧内の参照符号や補足説明等は、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0007】
[適用例1]
適用例1に記載の強化繊維樹脂テープ(1)の製法は、
テープ状に成形した強化繊維(10)を長手方向に移動させる移動工程と、
前記移動工程により前記テープ状の強化繊維(10)を長手方向に移動させつつ、前記強化繊維(10)に、揮発成分を含む樹脂(20)を含浸させる含浸工程と、
前記含浸工程により前記揮発成分を含む樹脂(20)を含浸させた前記強化繊維(10)を、前記強化繊維(10)の下面に接する面に、離型剤(31)を塗布した、短手方向の長さが前記強化繊維(10)の短手方向よりも大きな第1樹脂テープ(30)と、前記強化繊維(10)の上面に接する面に、離型剤(31)を塗布した、短手方向の長さが前記強化繊維(10)の短手方向よりも大きな第2樹脂テープ(30)とで挟んで、前記強化繊維(10)が短手方向の両端部分の内側に位置するように接触させつつ巻き取る巻取り工程と、
により強化繊維樹脂テープ(1)を製造することを要旨とする。
【0008】
このような強化繊維樹脂テープ(1)の製法により製造した強化繊維樹脂テープ(1)は、長期間に亘って粘着力を保った状態で保管することができるものとなる。
つまり、従来、強化繊維樹脂テープ(1)を使用する場合、強化繊維樹脂テープ(1)に熱硬化樹脂を含浸させて巻回し、複数層にしたうえで加熱し、硬化させ、所定の形状に形成する方が採られている。
【0009】
この場合、樹脂(20)を強化繊維樹脂テープ(1)に含浸させ易くするため、通常、樹脂(20)に揮発性溶剤を配合する。すると、揮発性溶剤が揮発してしまうため、強化繊維樹脂テープ(1)に樹脂(20)を含浸させた状態で長期間保管しておくことができず、ひいては、強化繊維樹脂テープ(1)の使い勝手が悪いものとなっていた。
【0010】
これに対し、適用例1に記載の強化繊維樹脂テープ(1)の製法により製造された強化繊維樹脂テープ(1)では、揮発成分を含む樹脂(20)を含浸させた強化繊維(10)が巻き取られる際に、強化繊維(10)の表裏面が、離型剤(31)が塗布された樹脂テープ(30)によって表裏両目が覆われた状態となって巻き取られる。
【0011】
したがって、巻き取られた状態の強化繊維樹脂テープ(1)から樹脂(20)の揮発性溶剤が蒸発しなくなるため、長期間に亘って巻取り時の状態を保つことができる。換言すれば、強化繊維樹脂テープ(1)に樹脂(20)を含浸させた状態で長期間保管しておくことが可能となり、その結果、強化繊維樹脂テープ(1)の使い勝手がよいものとなる。
【0012】
[適用例2]
適用例2に記載の強化繊維樹脂テープ製造装置()は、
テープ状に成形した強化繊維(10)を供給する強化繊維供給部(40)と、
前記強化繊維供給部(40)から供給される前記強化繊維(10)を長手方向に移動させる移動部(70)と、
前記移動部(70)により前記テープ状の強化繊維(10)を長手方向に移動させつつ、前記強化繊維(70)に、揮発成分を含む樹脂(20)を含浸させる含浸部(60)と、
前記含浸部(60)により前記揮発成分を含む樹脂(20)を含浸させた前記強化繊維(10)の下面に接する面に、離型剤(31)を塗布した、短手方向の長さが前記強化繊維(10)の短手方向よりも大きな第1樹脂テープ(30)を供給する第1樹脂テープ供給部(50)と、
前記含浸部(60)により前記揮発成分を含む樹脂(20)を含浸させた前記強化繊維(10)の上面に接する面に、離型剤(31)を塗布した、短手方向の長さが前記強化繊維(10)の短手方向よりも大きな第2樹脂テープ(30)を供給する第2樹脂テープ供給部(90)と、
前記第1樹脂テープ供給部(50)から供給される前記第1樹脂テープ(30)と前記第2樹脂テープ供給部(90)から供給される前記第2樹脂テープ(30)とで、前記含浸部(60)により樹脂を含浸させた前記強化繊維(10)を、前記強化繊維(10)が短手方向の両端部分の内側に位置するように接触させつつ挟んで巻き取る巻取り部(70)と、
を備えたことを要旨とする。
【0013】
このような強化繊維樹脂テープ製造装置()は、適用例1に記載の製法により製造される特徴を有する強化繊維樹脂テープ(1)を製造することが可能となる。
【0014】
[適用例3]
適用例3に記載の強化繊維樹脂テープ(1)は、
揮発成分を含む樹脂(20)を含浸させた、テープ状に成形した強化繊維(10)を巻回させた強化繊維層(10a)と、
前記揮発成分を含む樹脂(20)を含浸させた強化繊維(10)の下面に接する面に、離型剤(31)を塗布した樹脂テープであって、短手方向の長さが前記強化繊維(10)の短手方向よりも大きく、前記強化繊維が短手方向の両端部分の内側に位置するように接触させた第1樹脂テープ層(30a)と、
前記揮発成分を含む樹脂(20)を含浸させた強化繊維の上面に接する面に、離型剤(31)を塗布した樹脂テープであって、短手方向の長さが前記強化繊維の短手方向よりも大きく、前記強化繊維(10)が短手方向の両端部分の内側に位置するように接触させた第2樹脂テープ層(30a)と、
が渦巻状に巻き取られて形成されていることを要旨とする。
【0015】
このような強化繊維樹脂テープ(1)は、適用例1に記載の製法で製造された強化繊維樹脂テープ(1)と同様に、強化繊維樹脂テープ(1)に樹脂(20)を含浸させた状態で長期間保管しておくことが可能となり、その結果、強化繊維樹脂テープ(1)の使い勝手がよいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】強化繊維樹脂テープの概略の製造装置及び製法を示す概念図である。
図2】強化繊維樹脂テープの概略の構成を示す外観図である。
図3】第2実施形態における強化繊維樹脂テープの概略の製造装置及び製法を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0018】
[第1実施形態]
図1に基づき、強化繊維樹脂テープ1の製造装置5及び製造方法について説明する。図1は、強化繊維樹脂テープの概略の製造装置5及び製法を示す概念図である。なお、本実施形態では、強化繊維10として、炭素繊維強化プラスチック(以下、「CFRP10」とも呼ぶ)を用いる。また、強化繊維樹脂テープ1を単にCFRPテープ1、製造装置をCFRPテープ製造装置5とも呼ぶ。
【0019】
(強化繊維樹脂テープ製造装置)
図1に示すように、CFRPテープ製造装置5は、CFRP供給部40、第1PET樹脂テープ供給部50、熱硬化性樹脂含浸部60、巻取部70及び制御部80を備えている。
【0020】
CFRP供給部40は、金属や樹脂製の円筒にテープ状のCFRP10を巻き付けたものを回転軸41にさし込んで、回転軸周りに回転できるようにしたものである。また、CFRP10に適度な張力を与えるため、バネ力で張力を印加しながら上下に移動することが可能なローラ状のテンショナ42,43が設けられている。このテンショナ42,43は、CFRP10を熱硬化性樹脂含浸部60や巻取部70に導入するためのガイドともなっている。
【0021】
第1PET樹脂テープ供給部50は、金属や樹脂製の円筒に、表裏面に離型剤31を塗布したPET樹脂テープ30を巻き付けたものを回転軸51にさし込んで、回転軸周りに回転できるようにしたものである。
【0022】
また、PET樹脂テープ30に適度な張力を与えるため、バネ力で張力を印加しながら上下に移動することが可能なローラ状のテンショナ52,53が設けられている。このテンショナ52,53は、PET樹脂テープ30を熱硬化性樹脂含浸部60巻取部70に導入するためのガイドともなっている。
【0023】
熱硬化性樹脂含浸部60は、樹脂製の容器(以下、樹脂容器61と呼ぶ)であり、内部に、熱硬化性樹脂20であるビニルエステルに揮発性溶剤であるスチレンを混合したものを満たしてある。
【0024】
また、熱硬化性樹脂含浸部60は、CFRP10を樹脂容器61に内部に導くためのガイドローラ62,63を備えている。CFRP10をこのガイドローラ62,63により樹脂容器61の内側に導くことによりCFRP10に熱硬化性樹脂20を含浸させるようになっている。
【0025】
巻取部70は、回転軸71に、回転軸71から取り外し可能な巻取用のリール72を装着したものである。また、回転軸71は、モータ73により一定速度で回転し、熱硬化性樹脂含浸部60で熱硬化性樹脂20を含浸させたCFRP10とPET樹脂テープ30を重ねたものをリール72に巻き取る。
【0026】
また、巻取部70は、回転軸71の前段に、搬送されてくるCFRP10とPET樹脂テープ30を重ねた状態で上下方向から押さえつける押圧ローラ74,75を備えている。
【0027】
制御部80は、巻取部70を制御するための制御装置であり、図示しない操作スイッチ、回転速度調整スイッチや巻取部70のモータ73に供給する電源を備えている。制御部80では、操作スイッチによりモータ73のオン・オフを行うとともに、回転速度調整スイッチによりモータ73回転速度の設定と回転速度の制御を行う。
【0028】
(強化繊維樹脂テープの製法)
次に、図1に基づき、CFRPテープ1の製法について説明する。CFRPテープ1は、下記の(ア)~(キ)に示す製法によって製造される。
【0029】
(ア)テープ状のCFRP10樹脂を巻き付けた円筒をCFRP供給部40の回転軸41に差し込む。
(イ)PET樹脂テープ30を巻き付けた円筒を第1PET樹脂テープ供給部50の回転軸51に差し込む。
【0030】
(ウ)CFRP供給部40の円筒からCFRP10を繰り出し、テンショナ42,43を通した後、ガイドローラ62,63を通して、CFRP10を熱硬化性樹脂含浸部60に浸す。
【0031】
(エ)第1PET樹脂テープ供給部50の円筒からPET樹脂テープ30を繰り出し、テンショナ52,53を通す。
(オ)熱硬化性樹脂含浸部60に浸したCFRP10にテンショナ52,53を通したPET樹脂テープ30を重ねた状態で、巻取部70の押圧ローラ74,75の間を通して、回転軸71に装着したリール72に巻き付ける。
【0032】
このとき、PET樹脂テープ30の幅(短手方向の長さ)の方がCFRP10の幅(単手方向の長さ)よりも広いので、CFRP10の幅方向が、PET樹脂テープ30の幅の内側に収まるように重ねる。
【0033】
(カ)制御部80の操作スイッチによりモータ73をオンし、巻取りを開始する。この際、モータ73の回転速度の調整が必要であれば制御部80の速度調整スイッチにより速度調整を行う。
【0034】
(キ)所定量の巻取りが終了したら、巻取部70の回転軸71からCFRPテープ1を取り外す。
【0035】
以上の(ア)~(キ)に示す製法により、テープ状のCFRP10が長手方向に移動し、熱硬化性樹脂含浸部60においてCFRP10に熱硬化性樹脂20が含浸され、PET樹脂テープ30と重ねられてリール72に巻き取られてCFRPテープ1となる。
【0036】
(強化繊維樹脂テープの構成)
次に、図2により強化繊維樹脂テープ1(CFRPテープ1)の構成について説明する。図2は、CFRPテープ1の概略の構成を示す外観図であり、図2(a)は、全体外観図、図2(b)は、巻き取られる前の外観図(図2(a)中にAで示す部分)であり、図2(c)は、巻き取られて、渦巻状になったCFRPテープ1の一部(図2(a)中にBで示す部分)の外観図である。
【0037】
図2(b)及び図2(c)に示すように、CFRPテープ1は、強化繊維層10a(以下、CFRP層10aとも呼ぶ)、樹脂テープ層30a(以下、PET樹脂テープ層30aとも呼ぶ)からなる。
【0038】
CFRP層10aは、上述のように、ビニルエステルなどの熱硬化性樹脂20であって、スチレンなどの揮発性溶剤を混合したものを、CFRP10に含浸させて形成された層である。
【0039】
PET樹脂テープ層30aは、シリコーンなどの離型剤31が表裏面に塗布されたPET樹脂30で形成された層である。
CFRPテープ1は、これらCFRP層10aとPET樹脂テープ層30aとが巻き取られて渦巻き形状となっている。
【0040】
(強化繊維樹脂テープの特徴)
以上に説明したCFRPテープ1では、揮発成分を含む熱硬化性樹脂20を含浸させたCFRPテープ1が巻き取られる際に、離型剤31が塗布されたPET樹脂テープ30に表裏面が覆われた状態となって巻き取られる。
【0041】
したがって、巻き取られた状態のCFRPテープ1から熱硬化性樹脂20の揮発性溶剤が蒸発しなくなるため、長期間に亘って巻取り時の状態を保つことができる。換言すれば、CFRPテープ1に熱硬化性樹脂20を含浸させた状態で長期間保管しておくことが可能となり、その結果、強化繊維樹脂テープ1の使い勝手がよいものとなる。
【0042】
[第2実施形態]
次に、図3に基づき、第2実施形態における強化繊維樹脂テープ1の製造装置6について説明する。
【0043】
図3は、第2実施形態における強化繊維樹脂テープ製造装置6及び製法を示す概念図である。なお、強化繊維樹脂テープ製造装置6をCFRPテープ製造装置6とも呼ぶ。また、CFRPテープ製造装置6は、第1実施形態におけるCFRPテープ製造装置5と類似の構造であるため、同じ構成要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
図3に示すように、CFRPテープ製造装置6は、CFRPテープ製造装置5に、第2PET樹脂テープ供給部90を備えている。
第2PET樹脂テープ供給部90は、第1PET樹脂テープ供給部50と同様の構成であり、金属や樹脂製の円筒に、表裏面に離型剤31を塗布したPET樹脂テープ30を巻き付けたものを回転軸91にさし込んで、回転軸周りに回転できるようにしたものである。
【0045】
また、PET樹脂テープ30に適度な張力を与えるため、バネ力で張力を印加しながら上下に移動することが可能なローラ状のテンショナ92,93が設けられている。このテンショナ92,93は、PET樹脂テープ30を熱硬化性樹脂含浸部60巻取部70に導入するためのガイドともなっている。
【0046】
CFRPテープ製造装置6では、熱硬化性樹脂含浸部60で熱硬化性樹脂20を含浸させたCFRP10を、第1PET樹脂テープ供給部50から供給されるPET樹脂テープ30と第2PET樹脂テープ供給部90から供給されるPET樹脂テープ30とで表裏面から挟み、巻取部70のリール72で巻き取るようになっている。
【0047】
このような構成のCFRPテープ製造装置6では、巻取部70で巻き取られるCFRP10が、離型剤31を含浸させたPET樹脂テープ30で表裏面から挟まれている。したがって、CFRP10に含浸させた揮発性溶剤がより蒸発しにくくなり、CFRPテープ1に熱硬化性樹脂20を含浸させた状態でより長期間保管しておくことが可能となる。その結果、強化繊維樹脂テープ1の使い勝手がよりよいものとなる。
【0048】
[その他の実施形態]
(1)上記実施形態では、強化繊維樹脂10としてCFRPテープ30としてPET樹脂テープ、熱硬化性樹脂20としてビニルエステル、揮発性溶剤としてスチレン、離型剤31としてシリコーンを用いたが他の材料を例えば、揮発性溶剤としてアセトンなど用いてもよい。
【0049】
(2)上記実施形態では、CFRP10に含浸させる物質として揮発成分を含む熱硬化性樹脂20を用いていたが、揮発成分(揮発性溶剤)を含む樹脂であれば、熱可塑性樹脂など他の性質を有する樹脂であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…強化繊維樹脂テープ(CFRPテープ) 5,6…強化繊維樹脂テープ製造装置(CFRPテープ製造装置) 10…強化繊維(CFRP) 10a…強化繊維層(CFRP層) 20…熱硬化性樹脂 30…樹脂テープ(PET樹脂テープ) 30a…樹脂テープ層(PET樹脂テープ層) 40…CFRP供給部 41…回転軸 42,43…テンショナ 50…第1PET樹脂テープ供給部 51,91…回転軸 52,53,92,93…テンショナ 60…熱硬化性樹脂含浸部 61…樹脂容器 62,63…ガイドローラ 70…巻取部 71…回転軸 72…リール 73…モータ 74,75…押圧ローラ 80…制御部 90…第2PET樹脂テープ供給部。
図1
図2
図3