(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】メソ多孔質ポリマー性粒子状材料
(51)【国際特許分類】
A61K 47/38 20060101AFI20241009BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20241009BHJP
A61K 31/445 20060101ALN20241009BHJP
A61P 9/12 20060101ALN20241009BHJP
【FI】
A61K47/38
A61K9/14
A61K31/445
A61P9/12
(21)【出願番号】P 2021576175
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2020067686
(87)【国際公開番号】W WO2020260385
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-05-24
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507303181
【氏名又は名称】アストン ユニヴァーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アリ・アル-カッタウィ
(72)【発明者】
【氏名】トゥアン-トゥ・リー
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/123169(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/327
A61K 31/33-31/80
A61K 33/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61P 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質ポリマー性粒子を含む粒子状材料であって、平均細孔径が2~50nmであり、前記多孔質ポリマー性粒子が、100μm未満の体積平均粒径D[4,3]を有し、
前記粒子が、セルロースポリマーを含み、外部及び内部の細孔を含む、前記
粒子状材料。
【請求項2】
前記粒子の体積平均粒径D[4,3]が、50μm未満である、請求項1に記載の粒子状材料。
【請求項3】
前記材料における細孔の容積が、0.10cm
3/g超である、請求項1または2に記載の粒子状材料。
【請求項4】
前記材料の表面積が、10m
2/g超である、請求項1~3のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項5】
前記平均細孔径が10~30nmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項6】
前記セルロースポリマーが、セルロースエステル及びセルロースエーテルのうちの1つ以上から選択される、請求項
1に記載の粒子状材料。
【請求項7】
前記セルロースポリマーが、酢酸酪酸セルロース、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのうちの1つ以上から選択される、請求項
1に記載の粒子状材料。
【請求項8】
前記セルロースポリマーが、酢酸酪酸セルロースである、請求項
7に記載の粒子状材料。
【請求項9】
1つ以上の活性医薬化合物が負荷された請求項1~
8のいずれか一項に記載の粒子状材料を含む医薬組成物。
【請求項10】
治療に使用される、請求項
9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
粒子状材料を製造する方法であって、ポリマー溶液をスプレー乾燥することを含み、前記粒子状材料が多孔質ポリマー性粒子を含んでおり、平均細孔径が、2~50nmであり、前記多孔質ポリマー性粒子が、100μm未満の
体積平均粒径D[4,3]を
有し、前記ポリマー溶液が、セルロースポリマーを含む溶液である、前記方法。
【請求項12】
前記セルロースポリマーが、セルロースエステル及びセルロースエーテルのうちの1つ以上から選択される、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記セルロースポリマーが、酢酸酪酸セルロース、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのうちの1つ以上から選択される、請求項
11に記載の方法。
【請求項14】
前記セルロースポリマーが、酢酸酪酸セルロースである、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマー溶液のスプレー乾燥の際の入り口温度が、前記ポリマー溶液におけるポリマーのガラス転移温度T
gよりも低い、請求項
11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマー溶液におけるポリマーのガラス転移温度T
gが、100℃超である、請求項
11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記溶液が、水及びアセトンを含む溶媒混合物を含む、請求項
11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記溶液が、1つ以上の活性医薬化合物を含む、請求項
11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記スプレー乾燥が、窒素、60~180℃の入り口温度及び100~500KPaの噴霧圧力による密閉形態下でスプレー乾燥機において実施される、請求項
11~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
1つ以上の活性医薬化合物のための溶解性向上担体としての、請求項1~
8のいずれか一項に記載の粒子状材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年6月25日に出願された、英国特許出願第1909137.0号に関し、当該出願の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、多孔質粒子、特に、限定はされないが、薬物化合物の溶解性を向上させ及び/または持続放出性もしくは徐放性の医薬組成物を提供するためにかかる化合物のための担体または吸着剤として使用されるメソ多孔質粒子に関する。
【背景技術】
【0003】
US Food and Drug Administration’s guidance for industry(2017)によると、薬物は、Biopharmaceutics Classification System(BCS)の4つのカテゴリー:高溶解性、高浸透性(BCS I);低溶解性、高浸透性(BCS II);高溶解性、低浸透性(BCS III);及び低溶解性、低浸透性(BCS IV);のうちの1つに分類され得る。薬物物質は、最も高い用量が、37±1℃の温度において、1.0~6.8のpH範囲の250mLの水性媒体、例えば、0.1N HClまたは酵素なしの疑似胃酸;pH4.5緩衝剤;pH6.8緩衝剤または酵素なしの疑似腸液に可溶でないとき、「難溶性薬物」とされる。
【0004】
経口投与後、薬物は、腸粘膜を横断して体循環に吸収されて治療作用を発揮するために、胃腸液に溶解しなければならない。低溶解性薬物(BCS II及びIV)の製剤開発は、これらの薬物が吸収されにくく、通常は、その後に低くかつ可変の経口バイオアベイラビリティを示すため、大きな課題に直面する(Bosselmann & Williams,「Route-Specific Challenges in the Delivery of Poorly Water-Soluble Drugs」,Formulating poorly soluble drugs,2012,pp.1-26)。市場における薬物の40%超は、低溶解性を有するBCSクラスIIまたはIVにある。新規化学物質は、市販品と比較してさらに溶解性が低く、パイプラインにおける薬物候補のうちの予測で最大70~90%が、低溶解性に悩まされている(Ting et al.,「Advances in Polymer Design for Enhancing Oral Drug Solubility and Delivery」,Bioconjugate Chem、2018、29,pp.939-952)。
【0005】
低溶解性の問題は、これまで、固体分散系、サイズ低減、塩形成、より高度に可溶性のプロドラッグの使用、及びリポソームの使用を含めた可溶化技術を使用して対処されてきた。これらの技術の中でも、固体分散系は、難溶性薬物の溶解性の向上のためにますます利用される傾向にある。固体分散系は、いわゆる「アモルファス化」効果に主に基づいているため、結晶性薬物が、固体担体に吸着したときにアモルファス形態に変換され、これが、元の結晶性形態と比較して優れた溶解性を示す。メソ多孔質材料(2~50nmの平均細孔径を有する多孔質材料)は、調整可能な細孔径及び高い表面積に起因して薬物のアモルファス化に高度に有効な担体とされている。さらに、このアプローチは、様々な化学構造を有する既存の難溶性薬物及びパイプラインにおける薬物候補に広く適用可能である(Ibid.Bosselmann & Williams;Choudhari et al.,2014,「Mesoporous Silica Drug Delivery Systems」,Amorphous Solid Dispersions-Theory and Practice,pp.665-693;Laitinen etal.,2014,「Theoretical Considerations in Developing Amorphous Solid Dispersions」,Amorphous Solid Dispersions-Theory and Practice,pp.35-90;Riikonen et al.,2018.「Mesoporous systems for poorly soluble drugs-recent trends」,International Journal of Pharmaceutics,536(1),178-186)。
【0006】
ナノメートルスケールの細孔径内での薬物分子の空間的制限は、薬物の結晶化を防止し、薬物のアモルファス状態を維持する。この結果として、薬物溶解性及び後の溶解の有意な向上が、高度に可溶性のアモルファス形態の達成に起因して達成され得る(Garcia-Bennett A.,Feiler、A.,2014,「Mesoporous ASD: Fundamentals」,Amorphous Solid Dispersions-Theory and Practice,pp.637-663;Shen et al.,2017、「Mesoporous materials and technologies for development of oral medicine」,Nanostructures for Oral Medicine,pp.699-749)。
【0007】
薬物送達目的で使用される現在のメソ多孔質材料は、メソ多孔質シリカをベースとしており、Mobil Corporationで発見されており(Kresge et al.,1992,「Ordered mesoporous molecular sieves synthesized by a liquid-crystal template mechanism」,Nature,359,pp.710-712)、W.R.Grace & Co.によって販売されているSilsol(RTM)及びSyloid(RTM)を含む。メソ多孔質材料の合成は、鋳型剤(細孔形成剤)、例えば、界面活性剤鋳型、結晶鋳型、ポリマー性鋳型またはエマルジョン鋳型を主に利用して、得られる固体材料においてメソ孔を形成する。細孔形成を容易にするために鋳型剤を使用することにより、様々なメソ多孔質材料、例えば、メソ多孔質シリカ及びアルミニウムを生成することに成功したことが証明されている。しかし、鋳型剤を使用するプロセスは、高温の後処理に起因して複雑でありかつ時間がかかるため、重要な問題がある(Nandiyanto & Okuyama、2011,「Progress in developing spray-drying methods for the production of controlled morphology particles: From the nanometre to submicrometer size ranges」,Advanced Powder Technology,22,pp.1-19)。少なくともこの理由で、薬物送達用途のためのメソ多孔質シリカ材料の現在の市場価値は、kg当たり数千ユーロの範囲であり、これは、薬物負荷後の完成した剤形のコストを大幅に増加させる。無機メソ多孔質材料、例えば、メソ多孔質シリカはまた、薬物の安定性の問題を潜在的に引き起こす不純物、例えば、固有の微量金属及び強アルカリ性/酸性残余物の存在にも悩まされる。
【0008】
さらに、既存のメソ多孔質材料は、アモルファス化を通して薬物分子の増加した溶解性を付与するが、当然の結果として、薬物は、組成物が取り込まれた後に体内においてメソ多孔質担体から迅速に放出される。これにより、用途は長い半減期の薬物に限定され、または、短い半減期の薬物が組み込まれるときには頻繁な投与が必要とされ、このことは、患者コンプライアンスの問題につながる。
【0009】
難溶性薬物の溶解性の向上を付与する改良された薬物送達ビヒクル、及び、さらなる利益、例えば、短い半減期の薬物との適合性を提供し得るビヒクルが必要とされている。
【0010】
本発明は、上記の考慮事項の観点から考案されたものである。
【発明の概要】
【0011】
最も一般的には、本発明は、薬物化合物の担体または吸着剤としての使用のための多孔質粒子に関する。
【0012】
本発明の第1態様によると、多孔質ポリマー性粒子を含む粒子状材料であって、平均細孔径が2~50nmであり、多孔質ポリマー性粒子が、100μm未満の体積平均粒径D[4,3]を有し、ポリマー溶液をスプレー乾燥することによって得られるまたは得られ得る上記材料が提供される。
【0013】
いくつかの実施形態において、多孔質ポリマー性粒子を含む粒子状材料であって、多孔質ポリマー性粒子が、2~50nmの平均細孔径を有する複数の細孔を含んでおり、多孔質ポリマー性粒子が、100μm未満の体積平均粒径D[4,3]を有し、ポリマー溶液をスプレー乾燥することによって得られるまたは得られ得る上記材料が提供される。
【0014】
多孔質ポリマー性粒子、より詳細には、2~50nmの平均細孔径を有する細孔を含むメソ多孔質ポリマー性粒子は、スプレー乾燥によって生成される。細孔は、広範な活性医薬化合物(薬物化合物)の吸着及びアモルファス化を容易にするサイズのものであり、これにより、粒子の細孔内に吸着されたときに化合物を溶解しにくい結晶相からより溶解しやすいアモルファス相に変換することによって化合物の溶解性を改良する。
【0015】
本発明は、ゆえに、難溶性薬物化合物に特に適用可能であり、その溶解性は、化合物を本発明のポリマー性粒子に吸着させることによって向上され得る。ある特定の薬物化合物では、粒子状材料が、粒子に負荷された化合物の見かけの溶解性を遊離化合物に対して約10倍増加させ得る。ポリマー性粒子は、鋳型剤、界面活性剤または他の複雑な製造もしくは精製技術を必要とすることなく簡潔なスプレー乾燥手順によって生成され得、これにより、既存の無機メソ多孔質材料、例えば、メソ多孔質シリカに対して低コストな代替を付与する。加えて、本発明のポリマー性粒子は、無機メソ多孔質材料とは異なり、薬物安定性を損ない得るいずれの微量金属または強アルカリ性/酸性残余物も含有しない。
【0016】
本発明の第2態様によると、1つ以上の活性医薬化合物が負荷された第1態様による粒子状材料を含む医薬組成物が提供される。
【0017】
本発明の第3態様は、治療に使用される、第2態様による医薬組成物である。
【0018】
本発明の第4態様は、ヒトまたは動物の体の処置の方法であって、治療有効量の第2態様による医薬組成物を、必要とする患者に投与することを含む、上記方法である。
【0019】
本発明の第5態様は、粒子状材料を製造する方法であって、ポリマー溶液をスプレー乾燥することを含み、粒子状材料が多孔質ポリマー性粒子を含んでおり、平均細孔径が、2~50nmであり、多孔質ポリマー性粒子が100μm未満の体積平均径D[4,3]を有する、上記方法である。
【0020】
本発明の第6態様は、1つ以上の活性医薬化合物のための溶解性向上担体としての、第1態様による粒子状材料の使用である。
【0021】
本発明の別の態様によると、多孔質ポリマー性粒子を含む粒子状材料であって、平均細孔径が2~50nmであり、多孔質ポリマー性粒子が、100μm未満の体積平均粒径D[4,3]を有する、上記材料が提供される。いくつかの実施形態において、上記材料は、ポリマー溶液をスプレー乾燥することによって得られるまたは得られ得る。
【0022】
本明細書において使用されているとき、用語「多孔質」は、粒子の表面に開放細孔を含む粒子を表す。粒子はまた、粒子のバルクを通った細孔のネットワークの部分としてさらなる細孔を含んでいてもよい。用語「メソ多孔質」は、(IUPAC定義により)2~50nmの平均細孔径を有する表面細孔を含有する粒子を表す。
【0023】
本明細書において使用されているとき、用語「平均細孔径」は、例えば、細孔径分析装置、例えば、Quantachrome Nova4200eを使用してBJH(Barrett-Joyner-Halenda)理論の下で気体吸着ポロシメトリーによって測定される平均細孔径を表す(例えば、2006のISO15901-2-「Pore size distribution and porosity of solid materials by mercury porosimetry and gas adsorption-Part 2: Analysis of mesopores and macropores by gas adsorption」における方法に準拠している)。本明細書における平均細孔径は、細孔形状が円筒状であると仮定することにより、合計細孔容積及び比表面積から算出される。合計細孔容積は、全ての細孔が次いで液体窒素で充填されると仮定することにより、0.95の相対圧力P/P0において吸着される窒素量から見積もられ得る。比表面積は、Brunauer-Emmett-Teller(BET)法(Quantachrome instruments,2009,Nova operation manual version 11.02)によって求められ得る。
【0024】
例えば、円筒状の細孔形状として、平均細孔径が
平均細孔径=4V/S
式中、Vは、細孔に含まれる液体窒素の体積であり、Sは、多孔質ポリマー性粒子の比表面積である
として表され得る。
【0025】
本明細書における用語「難溶性」は、用語「控えめに可溶性」、「わずかに可溶性」、「非常にわずかに可溶性」及び「事実上不溶性」を包含するように概して使用されており、これらは-Part III-General Notices of British Pharmacopoeia(BP)2019 and European Pharmacopoeia(EP)9thの溶解性のセクションにおいて以下のように定義されている:
控えめに可溶性:15~25℃の間の温度で1gの物質を溶解するのに30~100mLの水性媒体が必要とされる。
わずかに可溶性:15~25℃の間の温度で1gの物質を溶解するのに100~1000mLの水性媒体が必要とされる。
非常にわずかに可溶性:15~25℃の間の温度で1gの物質を溶解するのに1000~10,000mLの水性媒体が必要とされる。
事実上不溶性:15~25℃の間の温度で1gの物質を溶解するのに>10,000mLの水性媒体が必要とされる。
【0026】
本発明の第1態様は、多孔質ポリマー性粒子を含む粒子状材料、より詳細には、メソ多孔質ポリマー性粒子である。
【0027】
多孔質ポリマー性粒子は、100μm未満の体積平均粒径、D[4,3](D4,3とも表される)を有する。いくつかの実施形態において、D[4,3]は、95μm未満、例えば、90μm未満、85μm未満、80μm未満、75μm未満、70μm未満、65μm未満、60μm未満、55μm未満または50μm未満である。D[4,3]は、例えば、Malvern Mastersizer3000を使用して、2009のISO13320の方法を使用して、当業者に公知の技術、例えば、レーザー回折技術を使用することによって測定されてよい。
【0028】
いくつかの実施形態において、多孔質ポリマー性粒子は、少なくとも5μm、例えば、少なくとも10μm、少なくとも15μm、少なくとも16μm、少なくとも17μm、少なくとも18μm、少なくとも19μmまたは少なくとも20μmのD[4,3]を有する。いくつかの実施形態において、粒子は、5~100μm、例えば、5~90μm、5~80μm、10~80μm、10~70μm、15~70μm、15~60μmまたは20~60μmのD[4,3]を有する。
【0029】
多孔質固体の多孔率特性を説明するのに使用され得る多くの重要なパラメータ、例えば、比表面積、細孔容積、平均細孔径、及び細孔径分布が存在する(Recommendations for the Characterization of Porous Solids,Pure & Appl.Chem.,Vol.66、No.8,pp.1739-1758,1994)。
【0030】
材料の粒子は、例えば、細孔径分析装置、例えばQuantachrome Nova4200eを使用してBJH(Barrett-Joyner-Halenda)理論の下で気体吸着ポロシメトリーによって測定される、2~50nmの平均細孔径(例えば、平均表面細孔径)を有する(例えば、2006のISO15901-2-「Pore size distribution and porosity of solid materials by mercury porosimetry and gas adsorption-Part 2: Analysis of mesopores and macropores by gas adsorption」における方法に準拠している)。
【0031】
上記で説明されているように、円筒状の細孔形状として、平均細孔径が
平均細孔径=4V/S
式中、Vは、細孔に含まれる液体窒素の体積であり、Sは、BET理論によって求められる多孔質ポリマー性粒子の比表面積である
として表され得る。
【0032】
いくつかの実施形態において、平均細孔径は、2~45nm、例えば、2~40nm、2~35nm、2~30nm、5~45nm、5~40nm、5~35nm、5~30nm、10~45nm、10~40nm、10~35nmまたは10~30nmである。
【0033】
材料の粒子における細孔の容積(例えば、表面細孔容積)は、0.10cm3/g超、例えば、0.15cm3/g超、0.20cm3/g超、0.25cm3/g超、または0.30cm3/g超であってよい。いくつかの実施形態において、細孔の容積は、0.10~0.50cm3/g、例えば、0.10~0.45cm3/g、0.10~0.40cm3/g、0.15~0.45cm3/g、0.15~0.40cm3/g、0.20~0.45cm3/g、0.20~0.40cm3/gまたは0.25~0.40cm3/gであってよい。細孔容積は、平均細孔径を測定するのに使用されるのと同じ技術、すなわち、例えば、細孔径分析装置、例えば、Quantachrome Nova4200eを使用してBJH(Barrett-Joyner-Halenda)理論の下で気体吸着ポロシメトリーによって測定されてよい(例えば、2006のISO15901-2-「Pore size distribution and porosity of solid materials by mercury porosimetry and gas adsorption-Part 2: Analysis of mesopores and macropores by gas adsorption」における方法に準拠している)。
【0034】
いくつかの実施形態において、材料は、10m2/g超、例えば、15m2/g超、20m2/g超、25m2/g超、30m2/g超、35m2/g超、または40m2/g超の比表面積を有する。いくつかの実施形態において、材料は、最大70m2/g、例えば、最大65m2/g、最大60m2/g、最大55m2/gまたは最大50m2/gの比表面積を有する。いくつかの実施形態において、材料は、10~70m2/g、例えば、15~70m2/g、15~65m2/g、15~60m2/g、20~60m2/g、20~55m2/g、25~55m2/g、30~55m2/g、35~60m2/g、35~55m2/gまたは40~50m2/gの比表面積を有する。比表面積は、平均細孔径を測定するのに使用されるのと同じ技術、すなわち、例えば、細孔径分析装置、例えば、Quantachrome Nova4200eを使用してBJH(Barrett-Joyner-Halenda)理論の下で気体吸着ポロシメトリーによって測定されてよい(例えば、2010のISO9277における方法に準拠している)。
【0035】
細孔径分布は、細孔径に対する細孔容積の分布である(IUPAC Compendium of Chemical Terminology,2014)。メソ孔径の算出は、ケルビン方程式から始まる細孔充填のケルビンモデルを使用してBarrett、Joyner and Halenda(BJH)の方法を使用して実施される:
【数1】
式中、Rは、一般気体定数であり、Tは、温度であり、r
1及びr
2は、細孔における液体メニスカスの主曲率半径であり、(p/p
0)は、凝縮が生じる相対圧力であり、σ
lgは、液体凝縮物の表面張力であり、v
1は、そのモル体積である。このアプローチは、細孔が円筒状でありかつメニスカスが半球状である(r
1=r
2)細孔形状のモデルを仮定して、細孔径を求めるのに使用されてよい。
【0036】
ケルビン方程式の再配列及び2/r
kによる主曲率半径項の置き換えにより:
【数2】
式中、t
kは、多くの場合、ケルビン半径と称される
を与える。
【0037】
円筒状細孔の細孔半径がrPであり、細孔壁に既に吸着されている層の厚さについて補正を加えると:
rp=rK+2t
であり、そのため、細孔径Dが:
D=rK+t
によって与えられる。
【0038】
細孔径分布(細孔径に対する細孔容積の分布)は、dV/dD対D、すなわち、y軸における微分細孔容積のプロット対x軸における細孔径として、通常、グラフによって表される。粒径の変動が大きい場合には、y軸の可変値がdV/d(logD)によって置き換えられてよい。dV/dDの単位は(cm3/g)/nmであり、細孔容積密度を表している。dV/dD対Dのプロットでは、任意の2つの細孔径間の曲線下でのピーク面積が、比細孔径間隔についての部分的な比細孔容積に比例する。
【0039】
BJH理論の下での細孔容積、細孔径及び細孔径分布の決定は、2006のISO15901-2-「Pore size distribution and porosity of solid materials by mercury porosimetry and gas adsorption-Part 2: Analysis of mesopores and macropores by gas adsorption」における方法に準拠してなされてよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、材料は、0.5~100nm、例えば、0.5~95nm、0.5~90nm、0.5~85nm、0.5~80nm、1~100nm、1~95nm、1~90nm、1~85nm、1~80nm、1~75nm、1~70nm、2~100nm、2~95nm、2~90nm、2~85nm、2~80nm、2~75nmまたは2~70nmの細孔径分布を有する。すなわち、細孔は、上記範囲のうちの1つの範囲内にある径を有していてよい。
【0041】
本明細書に記載されている粒子の細孔の特性、例えば、細孔容積、平均細孔径及び細孔径分布は、表面細孔(すなわち、材料内の粒子の表面における開放細孔)に関係している。粒子はまた、これにもかかわらず、スプレー乾燥プロセスの際に形成される内部(閉鎖または開放)細孔を含み得るが、当業者は、かかる内部閉鎖細孔が、表面分析技術、例えば、BETまたはBJH分析を使用して測定され得ないことを理解する。
【0042】
いくつかの実施形態において、多孔質ポリマー性粒子は、内部及び外部の両方の細孔を含み、これらは、例えばSEM画像の評価によって確認され得る。理論によって拘束されることを望まないが、外部(表面)細孔は、薬物種が薬物負荷プロセスの際に粒子の内側を通過してこれに移動して、生体液との接触の際に粒子からの薬物の放出を容易にするゲートウェイとして作用するとされている。また、内部メソ多孔質ネットワークの存在は、結晶性薬物化合物が低エネルギーの結晶性形態と比較して優れた溶解性を示す高エネルギーのアモルファス形態に変換される「アモルファス化」効果を向上させるともされている。
【0043】
粒子は、ポリマー性粒子、すなわち、1つ以上のポリマー性材料を含むまたはこれからなる粒子である。いくつかの実施形態において、粒子は、1つ以上の生体適合性ポリマー性材料、すなわち、医学用途に承認されているポリマー性材料を含むまたはこれからなる。いくつかの実施形態において、粒子は、1つ以上のセルロースポリマーを含むまたはこれからなる。セルロースポリマーは、セルロースの誘導体であるポリマー、例えば、セルロースの側鎖の化学的修飾によって得られるポリマーである。いくつかの実施形態において、セルロースポリマーは、セルロースエステル及びセルロースエーテルのうちの1つ以上から選択される。いくつかの実施形態において、セルロースポリマーは、酢酸酪酸セルロース、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのうちの1つ以上から選択される。いくつかの実施形態において、セルロースポリマーは、酢酸酪酸セルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースのうちの1つ以上から選択される。いくつかの実施形態において、粒子は、酢酸酪酸セルロースを含むまたはこれからなる。いくつかの実施形態において、粒子は、エチルセルロースを含むまたはこれからなる。セルロースポリマーは、in vivo投与を安全にするその生体適合性、及び、細孔形成を容易にする高いガラス転移温度に起因して好ましい。
【0044】
いくつかの実施形態において、粒子は、単一タイプのポリマーを含む。いくつかの実施形態において、粒子は、単一タイプのポリマーを含み、当該ポリマーは、セルロースの誘導体である。いくつかの実施形態において、粒子は、単一タイプのポリマーを含み、当該ポリマーは、セルロースエステル及びセルロースエーテルから選択される。いくつかの実施形態において、粒子は、単一タイプのポリマーを含み、当該ポリマーは、酢酸酪酸セルロース、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される。いくつかの実施形態において、粒子は、単一タイプのポリマーを含み、当該ポリマーは、酢酸酪酸セルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースから選択される。
【0045】
他の実施形態において、粒子は、2つ以上の異なるタイプのポリマーを含む。いくつかの実施形態において、粒子は、2つの異なるタイプのポリマーを含む。いくつかの実施形態において、粒子は、セルロースの誘導体からそれぞれ独立して選択される2つ以上の異なるタイプのポリマーを含む。いくつかの実施形態において、粒子は、セルロースエステル及びセルロースエーテルからそれぞれ独立して選択される2つ以上の異なるタイプのポリマーを含む。いくつかの実施形態において、粒子は、酢酸酪酸セルロース、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからそれぞれ独立して選択される2つ以上の異なるタイプのポリマーを含む。いくつかの実施形態において、粒子は、酢酸酪酸セルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースからそれぞれ独立して選択される2つ以上の異なるタイプのポリマーを含む。いくつかの実施形態において、粒子は、第1ポリマーがエチルセルロースであり、第2ポリマーが酢酸酪酸セルロースである、2つの異なるタイプのポリマーを含む。
【0046】
2つ以上の異なるタイプのポリマーが、スプレー乾燥される溶液内、これにより、最終のポリマー性粒子内に含まれることにより、粒子の特性、例えば、細孔形態を、2つ以上のポリマーの相対量を変動することによって適合させることが可能になる。
【0047】
当業者によって理解されるように、スプレー乾燥されて多孔質粒子を作り出す溶液中のポリマーは、多孔質粒子自体を形成する同ポリマーであり、そのため、粒子におけるポリマーの性質の、本明細書におけるいずれの考察も、溶液中のポリマーに等しく適用され、逆もまた然りである。
【0048】
いくつかの実施形態において、粒子は、15~50重量%のブチリル含量、1~30重量%のアセチル含量及び0.5~5重量%のヒドロキシル含量を有する酢酸酪酸セルロースを含むまたはこれからなる。好適な酢酸酪酸セルロースポリマーは、当業者に公知であり、例えば、Eastman Chemicalから市販されている。
【0049】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、少なくとも60℃、または60℃超のガラス転移温度(Tg)を有する。いくつかの実施形態において、ポリマーは、少なくとも65℃、例えば、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも85℃、少なくとも90℃、少なくとも95℃、または少なくとも100℃、例えば、100℃超のガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態において、ポリマーは、60~200℃、例えば、65~200℃、70~200℃、75~200℃、80~200℃、85~200℃、90~200℃、100~200℃、100~195℃、100~190℃、100~185℃、100~180℃、100~175℃、100~170℃または100~165℃のガラス転移温度を有する。かかるガラス転移温度は、高温に耐えることができ、また、内部細孔構造を修飾することなくスプレー乾燥の際のポリマーからの溶媒の拡散を可能にし得る熱的に安定なポリマーを付与するため、好ましい。
【0050】
いくつかの実施形態において、スプレー乾燥の際の入り口温度は、ポリマー溶液におけるポリマーのガラス転移温度Tgよりも低い。このようにして、細孔形成が容易になり、正確なサイズのメソ孔の形成が促進される。入り口温度よりも高いTgを有するポリマーは、良好な熱的安定性を有し、高温に耐えることができ、また、内部細孔構造を修飾することなくポリマーからの溶媒の拡散を可能にし得る。いくつかの実施形態において、ポリマーが、少なくとも100℃、または100℃超のガラス転移温度(Tg)を有するため、入り口温度がポリマーのTg未満のままであることを確実にしながら(すなわち、スプレー乾燥機の入り口温度が少なくとも最大100℃であってよい)、より適応性のあるスプレー乾燥機の入り口温度を付与する。
【0051】
いくつかの実施形態において、ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、10,000~1,000,000g/mol、例えば、20,000~900,000g/mol、25,000~800,000g/mol、30,000~700,000g/mol、40,000~600,000g/molまたは50,000~500,000g/molである。
【0052】
いくつかの実施形態において、ポリマーの数平均分子量(Mn)は、5,000~500,000g/mol、例えば、6,000~450,000g/mol、7,000~400,000g/mol、8,000~300,000g/mol、9,000~200,000g/molまたは10,000~100,000g/molである。
【0053】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、90,000~450,000のMwを有するエチルセルロースである。
【0054】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、30,000~40,000のMnを有する酢酸セルロースである。
【0055】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、30,000~70,000のMnを有する酢酸酪酸セルロースである。
【0056】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、セルロース誘導体ポリマーであり、ASTM D1343(Standard Test Method for Viscosity of Cellulose Derivatives by Ball-Drop)によって測定される0.35~120cpsの粘度を有する。
【0057】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、セルロース誘導体ポリマーであり、ASTM D1343(Standard Test Method for Viscosity of Cellulose Derivatives by Ball-Drop)によって測定される0.35~120cpsの粘度、及び、少なくとも60℃のガラス転移温度を有する。
【0058】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、セルロース誘導体ポリマーであり、ASTM D1343(Standard Test Method for Viscosity of Cellulose Derivatives by Ball-Drop)によって測定される0.35~120cpsの粘度を有し、スプレー乾燥の際の入り口温度は、ポリマーのガラス転移温度Tgよりも低い。
【0059】
本発明の別の態様は、第1態様による粒子状材料及び1つ以上の活性医薬化合物を含む医薬組成物である。いくつかの実施形態において、1つ以上の活性医薬化合物は、表面細孔内を含めた、粒子の表面に吸着される。いくつかの実施形態において、1つ以上の活性医薬化合物は、ポリマー及び1つ以上の活性医薬化合物の両方を含むスプレー乾燥用溶液を付与することによって、粒子の内部構造内、例えば、内部細孔内に含まれる。これにより、組成物の取り込み後にin vivoで1つ以上の活性医薬化合物の持続放出(または徐放)を付与する医薬組成物を付与することができるため、当該1つ以上の活性医薬化合物が、即時放出を防止する粒子の構造内に少なくとも部分的に捕捉される。
【0060】
粒子の表面細孔が2~50nmの平均細孔径を有するため、細孔内で粒子の表面に吸着された1つ以上の活性医薬化合物がアモルファス相内にあって(すなわち、これらがアモルファス化されて)、1つ以上の活性医薬化合物の溶解性を増加させる。本発明の材料は、これにより、活性医薬化合物の溶解性を向上させる手段を付与して、例えば、難溶性活性医薬化合物の溶解性を向上させる。
【0061】
いくつかの実施形態において、活性医薬化合物は、表面細孔内のみに位置しており、すなわち、粒子の内部構造内に位置しておらず、これは、ポリマー溶液のスプレー乾燥後に粒子に活性医薬化合物を後負荷することによって達成され得る。例えば、粒子は、1つ以上の活性医薬化合物の溶液または懸濁液に浸漬されていてよい。
【0062】
いくつかの実施形態において、医薬組成物における1つ以上の活性医薬化合物は、本明細書において定義されている1つ以上の難溶性活性医薬化合物から選択される。かかる化合物の溶解性は、スプレー乾燥の際に生成されるメソ多孔質粒子への負荷によって増加する。
【0063】
いくつかの実施形態において、1つ以上の活性医薬化合物は、100g/mol~1000g/mol、例えば、100g/mol~900g/mol、100g/mol~800g/mol、100g/mol~700g/mol、100g/mol~600g/mol、100g/mol~500g/mol、150g/mol~450g/mol、150g/mol~400g/molまたは200g/mol~400g/molの分子量を有する分子種から選択される。
【0064】
組成物に存在していてよい化合物の非限定例として、心臓脈管薬、例えば、フェロジピン、テルミサルタン、バルサルタン、カルベジロール、ニフェジピン、ニモジピン及びカプトプリル;脂質低下薬、例えば、ロバスタチン、フェノフィブラート及びエゼチミブ;抗ウイルス薬、例えば、アタザナビル及びリトナビル;鎮痛薬、例えば、イブプロフェン、メロキシカム、ケトプロフェン、アセクロフェナク、セレコキシブ、インドメタシン、フェニルブタゾン及びフルルビプロフェン;抗真菌薬、例えば、イトラコナゾール、グリセオフルビン及びケトコナゾール;抗てんかん薬、例えば、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン及びルフィナミド;抗がん剤、例えば、カンプトテシン、ダナゾール及びパクリタキセル;ならびに他の難溶性薬物、例えば、グリベンクラミド、シクロスポリン、シンナリジン、フロセミド及びジアゼパムが挙げられる。これらの化合物の1つまたは2つ以上の組み合わせが存在していてよい。いくつかの実施形態において、1つ以上の活性医薬化合物は、フロセミド、イブプロフェン及びフェロジピンのうちの1つ以上から選択される。
【0065】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、第1態様による粒子状材料及び1つ以上の活性医薬化合物からなる。換言すると、組成物は、第1態様による粒子状材料及び1つ以上の活性医薬化合物のみを含有し得る。このことは、活性医薬化合物のアモルファス化または活性を妨げ得るさらなる添加剤が存在しないことを確実にし得る。
【0066】
医薬組成物は、第1態様による粒子状材料を含む粉末を含む粉末形態であってよい。かかる粉末状の医薬組成物は、薬学的剤形、例えば、錠剤(錠剤化プロセスによって調製され得る)または硬質カプセル(カプセル充填プロセスによって調製され得る)の調製において有用な中間体を付与する。
【0067】
医薬組成物は、1%w/w~40%w/w、例えば、1%w/w~30%w/w、2%w/w~40%w/w、2%w/w~35%w/w、2%w/w~30%w/w、2%w/w~29%w/w、2%w/w~28%w/w、2%w/w~27%w/w、2%w/w~26%w/w、2%w/w~25%w/w、5%w/w~40%w/w、5%w/w~35%w/w、5%w/w~30%w/w、5%w/w~25%w/w、10%w/w~30%w/w、10%w/w~25%w/wまたは15重量%~25重量%の薬物負荷で1つ以上の活性医薬化合物を含んでいてよい。本明細書において、「%w/w」は、粒子状材料単独の量に対しての化合物の量を指す。例えば、(105gの合計組成物質量について)100gのポリマー性粒子に負荷された5gの活性医薬化合物を含む組成物は、5%w/wの薬物負荷を有する。
【0068】
本発明の粒子状材料は、ポリマー溶液をスプレー乾燥することによって得られまたは得られ得る。いくつかの実施形態において、本発明の粒子状材料は、ポリマー溶液をスプレー乾燥することによって得られる。
【0069】
ポリマーまたは溶液内のポリマーの選択肢及び優先傾向は、ポリマー性粒子を構成するポリマー(複数可)に関連して上記に記載されている通りである。そのため、例えば、ポリマー溶液は、セルロースポリマーを含んでいてよい。
【0070】
溶液は、溶媒及び1つ以上のポリマーを含む。溶媒は、単一の溶媒または溶媒混合物であってよい。いくつかの実施形態において、溶媒は、溶媒混合物である。いくつかの実施形態において、溶媒は、極性プロトン性溶媒及び極性非プロトン性溶媒の混合物である。いくつかの実施形態において、溶媒は、水及び有機溶媒、例えば、極性有機溶媒の混合物である。
【0071】
いくつかの実施形態において、溶媒は、第1溶媒及び第2溶媒の混合物であり、第1溶媒が、1つ以上のポリマーが可溶性である溶媒であり、第2溶媒が、1つ以上のポリマーが難溶性または不溶性である溶媒であり、ここで、「可溶性」は、25℃において10mLの溶媒中に少なくとも1gの1つ以上のポリマーが可溶性であることを示しており、「難溶性」は、25℃において10mLの溶媒中に1g未満の1つ以上のポリマーが可溶性であることを示しており、「不溶性」は、25℃において10mLの溶媒中に非常に少量の1つ以上のポリマーが可溶性であるまたは1つ以上のポリマーが可溶性でないことを示している。1つ以上のポリマーが可溶性である第1溶媒及び1つ以上のポリマーが難溶性である第2溶媒のかかる混合物は、スプレー乾燥されたメソ多孔質ポリマー性粒子において特に良好な細孔形態を付与し、吸着された化合物のアモルファス化及び溶解性のさらなる改良を与えることが見出された。
【0072】
いくつかの実施形態において、溶媒混合物は、少なくとも10%v/vの第1溶媒及び少なくとも5%v/vの第2溶媒を含む。いくつかの実施形態において、溶媒混合物は、少なくとも20%v/vの第1溶媒及び少なくとも5%v/vの第2溶媒を含む。いくつかの実施形態において、溶媒混合物は、少なくとも50%v/vの第1溶媒及び少なくとも5%v/vの第2溶媒を含む。いくつかの実施形態において、溶媒混合物は、少なくとも60%v/vの第1溶媒及び少なくとも5%v/vの第2溶媒を含む。いくつかの実施形態において、溶媒混合物は、少なくとも60%v/vの第1溶媒及び少なくとも5%v/vの第2溶媒を含む。いくつかの実施形態において、溶媒混合物は、少なくとも80%v/vの第1溶媒及び少なくとも5%v/vの第2溶媒を含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、溶媒混合物は、75~95%v/vの第1溶媒及び5~25%v/vの第2溶媒、例えば、80~90%v/vの第1溶媒及び10~20%v/vの第2溶媒を含む。
【0074】
いくつかの実施形態において、溶媒混合物は、第1及び第2溶媒からなる。いくつかの実施形態において、溶媒混合物は、少なくとも80%v/vの第1溶媒及び少なくとも10%v/vの第2溶媒からなる。いくつかの実施形態において、溶媒混合物は、おおよそ80%v/vの第1溶媒及びおおよそ20%v/vの第2溶媒からなる。いくつかの実施形態において、溶媒混合物は、75~95%v/vの第1溶媒及び5~25%v/vの第2溶媒、例えば、80~90%v/vの第1溶媒及び10~20%v/vの第2溶媒からなる。
【0075】
いくつかの実施形態において、第1溶媒は、アセトンであり、第2溶媒は、水である。いくつかの実施形態において、第1溶媒は、酢酸エチルであり、第2溶媒は、イソプロパノールである。
【0076】
いくつかの実施形態において、溶媒は、50%v/v超、例えば、少なくとも55%v/v、少なくとも60%v/v、少なくとも65%v/v、少なくとも70%v/v、少なくとも75%v/v、または少なくとも80%v/vの量で極性非プロトン性溶媒(例えば、アセトン)を含み、残りが極性プロトン性溶媒(例えば、水)である。
【0077】
いくつかの実施形態において、溶媒混合物は、水及びアセトンを含むまたはこれからなる。この特定の溶媒混合物は、スプレー乾燥されたポリマー性粒子において特に良好な細孔形態を付与することが見出された。
【0078】
いくつかの実施形態において、溶媒混合物は、体積基準で80:20、85:15または90:10の比でアセトン及び水を含むまたはこれからなる。
【0079】
溶液は、1つ以上のポリマーを溶媒または溶媒混合物に溶解することによって調製され得る。いくつかの実施形態において、溶液は、少なくとも1%(w/v)のポリマー、例えば、少なくとも1.5%(w/v)のポリマー、少なくとも2%(w/v)のポリマー、または少なくとも2.5%(w/v)のポリマーを含む。いくつかの実施形態において、溶液の残りは、溶媒である。いくつかの実施形態において、溶液は、1%(w/v)~20%(w/v)のポリマー、例えば、1.1%(w/v)~18%(w/v)のポリマー、1.2%(w/v)~15%(w/v)のポリマー、1.3%(w/v)~12%(w/v)のポリマー、1.4%(w/v)~10%(w/v)のポリマー、1.5%(w/v)~10%(w/v)のポリマー、1.6%(w/v)~8%(w/v)のポリマー、1.7%(w/v)~6%(w/v)のポリマー、1.8%(w/v)~5%(w/v)のポリマーまたは1.9%(w/v)~3%(w/v)のポリマーを含む。いくつかの実施形態において、溶液は、おおよそ2%(w/v)のポリマーを含む。「%(w/v)」は、100mLの溶媒に添加されるポリマーのグラムでの重量を表すことが理解される。そのため、例えば、4gのポリマーが200mLの溶媒に添加されて溶液を付与するとき、溶液は、2%(w/v)のポリマーを含有する。
【0080】
いくつかの実施形態において、溶液は、いずれの添加剤または鋳型剤も含まない。いくつかの実施形態において、溶液は、溶媒及び溶解されたポリマーからなる。鋳型剤(「細孔形成剤」とも呼ばれる)は、多孔質材料を作り出すための方法として常套的に使用されている。しかし、本発明において、多孔質ポリマー性粒子は、鋳型剤を必要とすることなく形成される。このことは、最終生成物が、当該生成物の薬学的許容可能性に影響し得るまたは薬物化合物の吸着もしくは溶解性を妨げ得るいずれの鋳型剤による汚染も含まないことを確実にする。
【0081】
ポリマー溶液は、1つ以上のポリマーを溶媒または溶媒混合物に添加し、穏やかな混合を実施して溶解及び均一性を生じさせることによって調製され得る。いくつかの実施形態において、混合は、蒸発による溶媒損失を最少にするためにカバーのついたチャンバにおいて実施される。いくつかの実施形態において、混合は、最大500rpm、例えば、最大450rpm、最大400rpm、最大350rpm、最大300rpmまたは最大250rpmの混合速度で磁気撹拌されることによって実施される。いくつかの実施形態において、混合は、10℃~30℃、例えば、12℃~28℃、15℃~25℃または18℃~22℃の温度で実施される。いくつかの実施形態において、混合は、15~120分、例えば、20~100分、25~90分または30~60分の期間にわたって実施される。
【0082】
ポリマー溶液は、任意の活性医薬化合物の非存在下にスプレー乾燥されてメソ多孔質ポリマー性粒子を生成し得、これは、次いで、1つ以上の活性医薬化合物と後に接触されて化合物を粒子表面に吸着させ得る。しかし、他の実施形態において、ポリマー溶液は、ポリマーに加えて1つ以上の活性医薬化合物を含む。ポリマー及び1つ以上の活性医薬化合物の両方を含有する溶液は、次いでスプレー乾燥されて、1つ以上の活性医薬化合物が前負荷されたメソ多孔質粒子を生成する。
【0083】
1つ以上の活性医薬化合物へのポリマー溶液のかかる添加は、持続放出性または徐放性の医薬組成物が望まれるときに好ましくあり得る。かかる方法によって生成される粒子は、表面で吸着されるだけでなく、粒子内に埋め込まれる、例えば、粒子ポリマーマトリクス内に密に分散されるもしくは内部細孔の表面に吸着される活性医薬化合物を含有する。in vivoでの粒子からのかかる活性医薬化合物の放出が妨げられることにより、活性医薬化合物が持続放出期間にわたってよりゆっくりと放出される、持続放出性または徐放性の組成物を付与する。
【0084】
理論によって拘束されることを望まないが、ポリマー及び活性医薬化合物が「共スプレー乾燥される」(すなわち、ポリマー及び活性医薬化合物の両方が、スプレー乾燥される溶液に存在する)とき、スプレー乾燥された多孔質ポリマー性粒子は、粒子の内部構造内及び粒子の表面における細孔内の両方に含有されている、より多量の活性医薬化合物を含有するとされている。これは、ポリマーのみがスプレー乾燥され、スプレー乾燥された粒子が後に活性医薬化合物と接触して粒子の表面細孔への活性医薬化合物の負荷を生じさせる「後負荷」技術の代替である。
【0085】
いくつかの実施形態において、ポリマー溶液に存在する1つ以上の活性医薬化合物の量(すなわち、ポリマー溶液の薬物負荷)は、1%w/w~40%w/w、例えば、1%w/w~30%w/w、2%w/w~40%w/w、2%w/w~35%w/w、2%w/w~30%w/w、2%w/w~29%w/w、2%w/w~28%w/w、2%w/w~27%w/w、2%w/w~26%w/w、2%w/w~25%w/w、5%w/w~40%w/w、5%w/w~35%w/w、5%w/w~30%w/w、5%w/w~25%w/w、10%w/w~30%w/w、10%w/w~25%w/wまたは15重量%~25重量%であり、「%w/w」は、ポリマー単独の量に対する1つ以上の活性医薬化合物の量を指す。例えば、(105gの合計質量について)5gの活性医薬化合物及び100gのポリマーを含むポリマー溶液は、5%w/wの薬物負荷を有する。
【0086】
いくつかの実施形態において、溶液における1つ以上の活性医薬化合物は、1つ以上の難溶性活性医薬化合物から選択される。かかる化合物の溶解性は、スプレー乾燥の際に生成されるメソ多孔質粒子への負荷によって増加する。
【0087】
いくつかの実施形態において、1つ以上の活性医薬化合物は、100g/mol~1000g/mol、例えば、100g/mol~900g/mol、100g/mol~800g/mol、100g/mol~700g/mol、100g/mol~600g/mol、100g/mol~500g/mol、150g/mol~450g/mol、150g/mol~400g/molまたは200g/mol~400g/molの分子量を有する分子種から選択される。
【0088】
溶液に添加され得る化合物の非限定例として、心臓脈管薬、例えば、フェロジピン、テルミサルタン、バルサルタン、カルベジロール、ニフェジピン、ニモジピン及びカプトプリル;脂質低下薬、例えば、ロバスタチン、フェノフィブラート及びエゼチミブ;抗ウイルス薬、例えば、アタザナビル及びリトナビル;鎮痛薬、例えば、イブプロフェン、メロキシカム、ケトプロフェン、アセクロフェナク、セレコキシブ、インドメタシン、フェニルブタゾン及びフルルビプロフェン;抗真菌薬、例えば、イトラコナゾール、グリセオフルビン及びケトコナゾール;抗てんかん薬、例えば、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン及びルフィナミド;抗がん剤、例えば、カンプトテシン、ダナゾール及びパクリタキセル;ならびに他の難溶性薬物、例えば、グリベンクラミド、シクロスポリン、シンナリジン、フロセミド及びジアゼパムが挙げられる。これらの化合物の1つまたは2つ以上の組み合わせが、ポリマー溶液に溶解されていてよい。いくつかの実施形態において、1つ以上の活性医薬化合物は、フロセミド、イブプロフェン及びフェロジピンのうちの1つ以上から選択される。
【0089】
本発明の別の態様は、粒子状材料を製造する方法であって、ポリマー溶液をスプレー乾燥することを含み、粒子状材料が多孔質ポリマー性粒子を含んでおり、平均細孔径が、2~50nmであり、多孔質ポリマー性粒子が、100μm未満の体積平均径D[4,3]を有する、上記方法である。
【0090】
粒子状材料を製造する方法において、ポリマー、ポリマー溶液及び粒子状材料自体は、第1態様に関連して上記で考察されている通りである。
【0091】
いくつかの実施形態において、方法は、1つ以上のポリマーを溶媒に溶解させることを含む、ポリマー溶液を調製する予備工程を含む。溶媒及び1つ以上のポリマーは、第1態様に関して上記に記載されている通りであってよい。例えば、溶媒は、アセトン:水混合物であってよく、ポリマーは、セルロースポリマーであってよい。予備工程は、1つ以上の活性医薬化合物をポリマーと併せて溶媒に溶解することも含んでいてよい。他の実施形態において、ポリマー溶液の調製は、ポリマー及び溶媒のみの混合を含み、すなわち、溶液は、ポリマー及び溶媒のみを含有し、さらなる添加剤または賦形剤を含有しない。
【0092】
多孔質ポリマー性粒子を形成するために、上記のポリマー溶液は、スプレー乾燥プロセスに供される。かかるプロセスは当業者に周知である。
【0093】
いずれの好適なスプレー乾燥装置が、本発明の方法において使用されてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態において、入り口温度は、60~175℃、例えば、60~170℃、60~165℃、60~160℃、60~155℃、60~150℃、60~145℃または60~140℃である。いくつかの実施形態において、入り口温度は、約100℃である。
【0095】
いくつかの実施形態において、ポリマー溶液のスプレー乾燥の際の入り口温度は、ポリマー溶液におけるポリマーのガラス転移温度Tgよりも低い。そのため、例えば、ポリマーのガラス転移温度が130℃であるとき、スプレー乾燥の際の入り口温度は130℃未満であってよい。このように、細孔形成が容易になり、正確なサイズのメソ孔の形成が促進される。
【0096】
スプレー乾燥機は、密閉形態で操作されてよい。スプレー乾燥機は、不活性担体ガス、例えば、窒素または二酸化炭素を利用してよい。100~500kPa、例えば、100~450kPa、100~400kPa、100~350kPa、100~300kPa、150~250kPaまたは約200kPaの噴霧圧力が、スプレー乾燥の際に使用されてよい。
【0097】
いくつかの実施形態において、スプレー乾燥は、窒素、60~180℃の入り口温度及び100~500kPaの噴霧圧力による密閉形態下でスプレー乾燥機において実施される。
【0098】
本発明において使用され得る好適なスプレー乾燥装置は、イナートループBuchi B-295を備えたミニスプレー乾燥機Buchi B-290(Flawil,Switzerland)を含む。
【0099】
スプレー乾燥の際に使用される具体的な流量は、スプレー乾燥機の選択及び製造のスケールに依る。上記で言及したイナートループBuchi B-295を備えたミニスプレー乾燥機Buchi B-290では、スプレー乾燥プロセスの際、1mL/分~10mL/分、例えば、2mL/分~8mL/分、3mL/分~6mL/分または約5mL/分の供給流量(ポリマー溶液の流量)が使用されてよい。スプレー乾燥プロセスの際、200L/時間~1000L/時間、例えば、250L/時間~1000L/時間、400L/時間~800L/時間または約600L/時間の不活性ガス流量が使用されてよい。いくつかの実施形態において、不活性ガスは、窒素である。スプレー乾燥プロセスの際、10m3/時間~50m3/時間、例えば、15m3/時間~45m3/時間、20m3/時間~40m3/時間、24m3/時間~35m3/時間または約30m3/時間の乾燥ガス流量が使用されてよい。
【0100】
スプレー乾燥装置の選択は特に限定されず、スプレー乾燥機は、例えば、所要の製造スケールに基づいて選択されてよい。パイロットスケールの製造では、より大きなスプレー乾燥機、例えば、Niro Mobile Minorスプレー乾燥機が用いられてよい。当業者は、上記で言及されている供給流量、不活性ガス(噴霧)流量及び乾燥ガス流量が、スプレー乾燥機のサイズに基づいて適宜変化すること、及び、当業者が、好適な流量を選択することができることを理解する。
【0101】
例えば、Niro Mobile Minorスプレー乾燥機では、供給流量(ポリマー溶液の流量)が1.0kg/時間~6.0kg/時間であってよく、不活性ガス(噴霧)流量が4kg/時間~25kg/時間であってよく、乾燥ガス流量が10kg/時間~80kg/時間であってよい。
【0102】
スプレー乾燥の際の出口温度は、様々なプロセスパラメータ、例えば、入り口温度、供給速度及び流量の関数であるが、概して、40~120℃の範囲内であってよい。
【0103】
いくつかの実施形態において、方法は、スプレー乾燥後に粒子状材料において実施される1つ以上の加工工程を含む。例えば、材料は、任意の残存溶媒を除去する1つ以上の乾燥工程に供されてよい。
【0104】
いくつかの実施形態において、方法は、スプレー乾燥された粒子状材料を1つ以上の活性医薬化合物と接触させる工程を含む。いくつかの実施形態において、方法は、スプレー乾燥された粒子状材料を1つ以上の活性医薬化合物の溶液(「薬物溶液」)と接触させる工程を含む。これは、1つ以上の活性医薬化合物を好適な溶媒に溶解すること、及び溶液を粒子状材料と合わせて懸濁液を作り出すことによって達成され得る。このようにして、活性医薬化合物が、粒子の表面に負荷され、すなわち、メソ孔内を含めた表面に吸着されることになる。懸濁液は、負荷効率を改良するために撹拌されてよい。いくつかの実施形態において、1つ以上の活性医薬化合物が溶解される溶媒はアルコールである。いくつかの実施形態において、溶媒は、エタノールである。
【0105】
いくつかの実施形態において、薬物溶液における1つ以上の活性医薬化合物の量は、少なくとも2mg/mL、例えば、少なくとも2.5mg/mL、少なくとも3mg/mL、少なくとも3.5mg/mL、少なくとも4mg/mL、少なくとも4.5mg/mL、または少なくとも5mg/mLである。いくつかの実施形態において、薬物溶液における1つ以上の活性医薬化合物の量は、最大50mg/mL、例えば、最大45mg/mL、最大40mg/mL、最大35mg/mL、最大30mg/mL、最大25mg/mLまたは最大20mg/mLである。いくつかの実施形態において、薬物溶液における1つ以上の活性医薬化合物の量は、2~50mg/mL、例えば、2~40mg/mL、2~30mg/mL、5~20mg/mL、5~15mg/mLまたは約10mg/mLである。
【0106】
いくつかの実施形態において、薬物溶液における薬物負荷は、1%w/w~40%w/w、例えば、1%w/w~30%w/w、2%w/w~40%w/w、2%w/w~35%w/w、2%w/w~30%w/w、2%w/w~29%w/w、2%w/w~28%w/w、2%w/w~27%w/w、2%w/w~26%w/w、2%w/w~25%w/w、5%w/w~40%w/w、5%w/w~35%w/w、5%w/w~30%w/w、5%w/w~25%w/w、10%w/w~30%w/w、10%w/w~25%w/wまたは15重量%~25重量%であり、「%w/w」は、薬物溶液に添加された粒子状材料単独の量に対する1つ以上の活性医薬化合物の量を指す。例えば、(105gの合計質量について)5gの活性医薬化合物及び100gのポリマー性粒子を含む薬物溶液は、5%w/wの薬物負荷を有する。
【0107】
いくつかの実施形態において、溶液は、1つの活性医薬化合物を含有する。
【0108】
いくつかの実施形態において、薬物溶液中の粒子の懸濁液は、かき混ぜられ、または撹拌される。これにより、懸濁液中の粒子による活性医薬化合物の取り込みが促進される。
【0109】
懸濁液は、任意選択的に撹拌しながら、少なくとも1時間、例えば、少なくとも2時間、少なくとも5時間、または少なくとも10時間の期間にわたって放置されてよい。懸濁液は、任意選択的に撹拌しながら、最大20時間、例えば、最大18時間、最大15時間または最大12時間の期間にわたって放置されてよい。
【0110】
懸濁液が所望の薬物負荷を付与するのに好適な時間量で放置された後、薬物負荷された粒子状材料は、例えば、濾過またはスプレー乾燥によって懸濁液から分離され得る。いくつかの実施形態において、薬物溶液中の多孔質粒子の懸濁液は、スプレー乾燥される。スプレー乾燥の条件は、ポリマー溶液のスプレー乾燥に関連して上記で記載されている通りであってよい。いくつかの実施形態において、濾過またはスプレー乾燥後、材料は、例えば、オーブンまたは他の高い周囲温度環境におけるさらなる乾燥工程に供される。
【0111】
いくつかの実施形態において、薬物負荷された粒子状材料の乾燥は、材料の残存溶媒含量が、粒子状材料、溶媒及び活性医薬化合物の合計重量を基準にして0.5重量%以下、例えば、0.4重量%以下、0.3重量%以下または0.2重量%以下となるまで実施される。これは、例えば、スプレー乾燥機においてより長い滞留時間を付与することによって、または充分な期間にわたってさらなる乾燥工程を実施することによって達成され得る。
【0112】
粒子状材料に活性薬剤を負荷する代替の方法、例えば、無溶媒方法が使用されてよい。これらは、溶媒を除去するための後の乾燥工程を必要としないという利点を有する。しかし、一般に、溶媒ベースの方法が好ましい、なぜなら、より高い薬物負荷効率が可能であるからである。
【0113】
上記で説明されているように、本発明の多孔質粒子状材料は、1つ以上の活性医薬化合物が負荷されていてよい。いくつかの実施形態において、多孔質粒子状材料の表面は、1つ以上の活性医薬化合物が負荷されている。いくつかの実施形態において、多孔質粒子状材料は、1つの活性医薬化合物(すなわち、単一のタイプ/種の化合物)が負荷されている。
【0114】
本発明の材料に負荷され得る活性医薬化合物(複数可)は、特に限定されない。難溶性の1つ以上の化合物を材料に負荷することは、材料のメソ孔への吸着が溶解性を増加させることにより、化合物の有用性を改良し得るため、特に有用であり得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、1つ以上の活性医薬化合物は、US Food and Drug Administration’s guidanceによるBCSクラスIIまたはBCSクラスIVにおける化合物からそれぞれ独立して選択される。いくつかの実施形態において、1つ以上の活性医薬化合物は、Solubility-Part III-General Notices of British Pharmacopoeia(BP) 2019 及び European Pharmacopoeia(EP) 9th Editionに定義されている控えめに可溶性、わずかに可溶性、非常にわずかに可溶性または事実上不溶性である化合物からそれぞれ独立して選択される。
【0116】
いくつかの実施形態において、1つ以上の活性医薬化合物は、100g/mol~1000g/mol、例えば、100g/mol~900g/mol、100g/mol~800g/mol、100g/mol~700g/mol、100g/mol~600g/mol、100g/mol~500g/mol、150g/mol~450g/mol、150g/mol~400g/molまたは200g/mol~400g/molの分子量を有する分子種から選択される。
【0117】
いくつかの実施形態において、1つ以上の活性医薬化合物は、5以下、例えば、4.5以下、4以下、3.5以下または3以下のlogPを有する化合物から選択され、ここで、Pは、25℃で求められるオクタノール-水分配係数である(「Pow」とも表される)。
【0118】
当業者によってよく理解されているように、分配係数Pは、2つの特定の溶媒(この場合には、オクタノール及び水)間の化合物の濃度の比であり、logPは、当該比の対数である。logPは、したがって、親油性または疎水性の評価基準である。より高いlogP値は、より親油性の化合物を示す。
【0119】
いくつかの実施形態において、1つ以上の活性医薬化合物は、500g/mol以下の分子量及び5以下のlogPを有する化合物から選択され、ここで、Pは、25℃で求められるオクタノール-水分配係数である。
【0120】
いくつかの実施形態において、1つ以上の活性医薬化合物は、Solubility-Part III-General Notices of British Pharmacopoeia(BP) 2019 and European Pharmacopoeia(EP) 9th Editionに定義されている控えめに可溶性、わずかに可溶性、非常にわずかに可溶性または事実上不溶性である化合物から選択され、5以下のlogP(ここで、Pは、25℃で求められるオクタノール-水分配係数である)、及び500g/mol以下の分子量のうちの1つ以上を有する。
【0121】
いくつかの実施形態において、1つ以上の活性医薬化合物は、Solubility-Part III-General Notices of British Pharmacopoeia(BP) 2019 及び European Pharmacopoeia(EP) 9th Editionに定義されている控えめに可溶性、わずかに可溶性、非常にわずかに可溶性または事実上不溶性である化合物から選択され、5以下のlogP(ここで、Pは、25℃で求められるオクタノール-水分配係数である)、及び500g/mol以下の分子量を有する。
【0122】
本発明の材料に負荷されてよい化合物の非限定例として、心臓脈管薬、例えば、フェロジピン、テルミサルタン、バルサルタン、カルベジロール、ニフェジピン、ニモジピン及びカプトプリル;脂質低下薬、例えば、ロバスタチン、フェノフィブラート及びエゼチミブ;抗ウイルス薬、例えば、アタザナビル及びリトナビル;鎮痛薬、例えば、イブプロフェン、メロキシカム、ケトプロフェン、アセクロフェナク、セレコキシブ、インドメタシン、フェニルブタゾン及びフルルビプロフェン;抗真菌薬、例えば、イトラコナゾール、グリセオフルビン及びケトコナゾール;抗てんかん薬、例えば、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン及びルフィナミド;抗がん剤、例えば、カンプトテシン、ダナゾール及びパクリタキセル;ならびに他の難溶性薬物、例えば、グリベンクラミド、シクロスポリン、シンナリジン、フロセミド及びジアゼパムが挙げられる。これらの化合物の1つまたは2つ以上の組み合わせは、溶解性を改良する及び/または持続放出性もしくは徐放性のプロファイルを付与するために本発明の粒子状材料に負荷されてよい。いくつかの実施形態において、1つ以上の活性医薬化合物は、フロセミド、イブプロフェン及びフェロジピンのうちの1つ以上から選択される。
【0123】
そのため、本発明の別の態様は、1つ以上の活性医薬化合物が負荷された第1態様による粒子状材料を含む医薬組成物である。いくつかの実施形態において、粒子状材料には、1つ以上の活性医薬化合物が表面負荷されている。いくつかの実施形態において、1つ以上の活性医薬化合物は、上記に列挙されている化合物のうちの1つ以上から選択される。
【0124】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、第1態様による粒子状材料及び粒子状材料の表面に吸着されたフェロジピンを含む、溶解性が向上したフェロジピン組成物を提供する。本発明のいくつかの態様は、治療に使用される、溶解性が向上したフェロジピン組成物を提供する。本発明のいくつかの態様は、高血圧及び安定狭心症から選択される疾患または障害の処置における使用のための、溶解性が向上したフェロジピン組成物を提供する。本発明のいくつかの態様は、高血圧及び安定狭心症から選択される疾患または障害に罹患している患者を処置する方法であって、患者に、治療的に許容可能な量の、上記に記載されている、溶解性が向上したフェロジピン組成物を投与することを含む、上記方法を提供する。
【0125】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、第1態様による粒子状材料及び粒子状材料の表面に吸着されたフロセミドを含む、溶解性が向上したフロセミド組成物である。本発明のいくつかの態様は、治療に使用される、溶解性が向上したフロセミド組成物を提供する。本発明のいくつかの態様は、浮腫及び高血圧症から選択される疾患または障害の処置における使用のための、溶解性が向上したフロセミド組成物を提供する。本発明のいくつかの態様は、浮腫及び高血圧症から選択される疾患または障害に罹患している患者を処置する方法であって、患者に、治療的に許容可能な量の、上記に記載されている、溶解性が向上したフロセミド組成物を投与することを含む、上記方法を提供する。
【0126】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、第1態様による粒子状材料及び粒子状材料の表面に吸着されたイブプロフェンを含む、溶解性が向上したイブプロフェン組成物である。本発明のいくつかの態様は、治療に使用される、溶解性が向上したイブプロフェン組成物を提供する。本発明のいくつかの態様は、疼痛、発熱及び炎症から選択される疾患または障害の処置における使用のための、溶解性が向上したイブプロフェン組成物を提供する。本発明のいくつかの態様は、疼痛、発熱及び炎症から選択される疾患または障害に罹患している患者を処置する方法であって、患者に、治療的に許容可能な量の、上記に記載されている、溶解性が向上したイブプロフェン組成物を投与することを含む、上記方法を提供する。
【0127】
本発明の一態様は、第2態様の医薬組成物を含む剤形である。いくつかの実施形態において、剤形は、経口剤形である。いくつかの実施形態において、剤形は、錠剤またはカプセルである。
【0128】
剤形は、当業者に周知の1つ以上の薬学的に許容可能なバインダー、担体、希釈剤または賦形剤をさらに含んでいてよい。
【0129】
本発明のいくつかの態様は、治療に使用される、上記で記載されている医薬組成物を提供する。本発明のいくつかの態様は、薬剤の製造における、上記で記載されている医薬組成物の使用を提供する。本発明のいくつかの態様は、ヒトまたは動物の体の処置の方法であって、必要とする患者への、治療有効量の、上記で記載されている医薬組成物の投与を含む、上記方法を提供する。本発明の他の態様は、ヒトまたは動物の体を処置する方法であって、必要とする患者に、治療有効量の、上記で記載されている医薬組成物を投与することを含む、上記方法を提供する。
【0130】
広範な疾患または障害が、粒子状材料に負荷される具体的な活性医薬化合物(複数可)に応じて、これらの態様において処置され得る。
【0131】
本発明のある態様は、活性医薬化合物の溶解性を改良する方法であって、第1態様による粒子状材料に化合物を負荷することを含む、上記方法である。活性医薬化合物は、上記で言及されている化合物のうちの1つであってよい。
【0132】
本発明のある態様は、1つ以上の活性医薬化合物のための溶解性向上担体としての第1態様による粒子状材料の使用である。
【0133】
いくつかの実施形態において、見かけの溶解性が、この方法を通して、少なくとも1.1、例えば、少なくとも1.15、少なくとも1.2、少なくとも1.25、または少なくとも1.3倍増加する。いくつかの場合において、上記溶解性が、最大おおよそ10倍増加する。
【0134】
本発明はまた、活性医薬化合物の持続放出性(または徐放性)組成物を提供する手段にも関する。ポリマー溶液が活性医薬化合物も含有するとき、化合物は、スプレー乾燥後に多孔質ポリマー性粒子内に少なくとも部分的に捕捉されることになる。粒子からの化合物の放出はこれにより制限され、長期間にわたって持続放出性または徐放性となる。
【0135】
そのため、本発明はまた、持続放出性医薬組成物を製造する方法であって、ポリマー及び1つ以上の活性医薬化合物を含む溶液をスプレー乾燥して粒子状材料を形成することを含み、粒子状材料が多孔質ポリマー性粒子を含んでおり、平均細孔径が、2~50nmであり、多孔質ポリマー性粒子が100μm未満の体積平均径D[4,3]を有する、上記方法も提供する。
【0136】
図面の概要
本発明を理解することができるように、また、そのさらなる態様及び特徴を認識することができるように、本発明の原理を示す実施形態を添付の図面を参照してここでさらに詳細に考察する:
【図面の簡単な説明】
【0137】
【
図1】(a)x5000の倍率及び1μmのスケールバーにおけるCAB粒子断面、ならびに(b)x30,000の倍率及び100nmのスケールバーにおける粒子の内部メソ多孔質構造を含めた、スプレー乾燥プロセスによって調製される、本発明によるメソ多孔質酢酸酪酸セルロース粒子のSEM画像を示す。
【
図2】(a)x5000の倍率及び1μmのスケールバーにおけるCAB粒子表面、ならびに(b)x33,000の倍率及び100nmのスケールバーにおけるCAB粒子表面を含めた、スプレー乾燥プロセスによって調製される、本発明によるメソ多孔質酢酸酪酸セルロース粒子のSEM画像を示す。
【
図3】10℃/分の走査速度及び50~250℃の走査範囲の下での、フェロジピン原料(実線)及びフェロジピン負荷されたメソ多孔質CAB粒子(破線)のDSCサーモグラムを示す。
【
図4】10℃/分の走査速度及び40~250℃の走査範囲の下での、イブプロフェン原料(実線)及びイブプロフェン負荷されたメソ多孔質CAB粒子(破線)のDSCサーモグラムを示す。
【
図5】10℃/分の走査速度及び100~300℃の走査範囲の下での、フロセミド原料(実線)及びフロセミド負荷されたメソ多孔質CAB粒子(破線)のDSCサーモグラムを示す。
【
図6】フェロジピン原料(実線)及びフェロジピン負荷されたメソ多孔質CAB粒子(破線)の溶解プロファイルを示す。試験条件:リン酸緩衝液pH6.5+0.25%SLS、500ml、USP装置1(回転バスケット)、50rpm、HPLC法(移動相:pH3リン酸緩衝液:アセトニトリル:メタノール(30:45:25);カラム:C18、15cm×4.6mm、5μm;流量:1mL/分;注入体積:40μL;検出器:UV、362nm)。
【
図7】イブプロフェン原料(実線)及びイブプロフェン負荷されたメソ多孔質CAB粒子(破線)の溶解プロファイルを示す。試験条件:HCL-NaCl媒体pH3+0.25%SLS、900mL、USP装置1(回転バスケット)、100rpm、HPLC法(移動相:pH3リン酸緩衝液:アセトニトリル(60:40);カラム:C18、15cm×4.6mm、5μm;流量:2mL/分;注入体積:20μL;検出器:UV、254nm)。
【
図8】フロセミド原料(実線)及びフロセミド負荷されたメソ多孔質CAB粒子(破線)の溶解プロファイルを示す。試験条件:HCL-NaCl媒体pH3+0.25%SLS、900mL、USP装置1(回転バスケット)、100rpm、HPLC法(移動相:pH3リン酸緩衝液アセトニトリル(60:40);カラム:C18、15cm×4.6mm、5μm;流量:1mL/分;注入体積:10μL;検出器:UV、234nm)。
【
図9】フェロジピン原料(三角マーカー付き破線)、スプレー乾燥された原料フェロジピン(四角マーカー付き破線)、ならびに、CAB及び3つの異なるレベルのフェロジピン:5重量%、15重量%及び25重量%(実線);を含有する溶液を共スプレー乾燥することによって調製されたフェロジピン負荷されたメソ多孔質CAB粒子の溶解プロファイルを示す。試験条件:リン酸緩衝液pH6.5+0.25%SLS、500mL、USP装置1(回転バスケット)、50rpm、HPLC法(移動相:pH3リン酸緩衝液:アセトニトリル:メタノール(30:45:25);カラム:C18、15cm×4.6mm、5μm;流量:1mL/分;注入体積:40μL;検出器:UV、362nm)。
【
図10A】5重量%の薬物負荷を含めた、CAB及びフェロジピンの溶液を共スプレー乾燥することによって調製された、本発明によるメソ多孔質酢酸酪酸セルロース粒子のSEM画像を示す。SEM画像を100nmのスケールバーで30,000xの倍率において撮影した。
【
図10B】10重量%の薬物負荷を含めた、CAB及びフェロジピンの溶液を共スプレー乾燥することによって調製された、本発明によるメソ多孔質酢酸酪酸セルロース粒子のSEM画像を示す。SEM画像を100nmのスケールバーで30,000xの倍率において撮影した。
【
図10C】25重量%の薬物負荷を含めた、CAB及びフェロジピンの溶液を共スプレー乾燥することによって調製された、本発明によるメソ多孔質酢酸酪酸セルロース粒子のSEM画像を示す。SEM画像を100nmのスケールバーで30,000xの倍率において撮影した。
【
図11】2つの異なる方法(a)フルオレセインの後負荷、及び(b)フルオレセインとの共スプレー乾燥によって、フルオレセインが負荷されたメソ多孔質酢酸酪酸セルロース粒子のCLSM画像を示す。
【
図12】(a)サンプル8の粒子の細孔容積の蓄積分布及び(b)BJH法によって求められるサンプル8の粒子の細孔径分布曲線のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0138】
本発明の態様及び実施形態を以下の例においてここで考察する。さらなる態様及び実施形態は、当業者に明らかである。本文において言及されている全ての文献が、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0139】
粒子の特性の特徴付け
以下の例において、ポリマー性メソ多孔質粒子の細孔径、細孔容積及び比表面積を、細孔径分析装置Quantachrome Nova4200eを使用して気体吸着ポロシメトリーによって分析した。各サンプルを100℃で24時間、真空下で脱気した後、窒素吸着-脱着の測定結果を得た。
【0140】
メソ多孔質粒子の形態を、高真空下1kVで操作するJEOL JSM-7800Fにおける走査電子顕微鏡(SEM)によって検査した。サンプルは、金コーティングせず、サンプルの完全性、すなわち、元の表面特徴を保持した。おおよそ1mgの各サンプルをサンプルホルダ上の両面接着剤ストリップに置いた。
【0141】
サンプルの粒度を、粒度分析装置Sympatec HELOS/BR及び乾燥分散器RODOSをフィーダVIBRIと共に使用してレーザー回折によって求めた。測定範囲は、0~195μmであった。およそ0.2gの各サンプルをフィーダトレイに置いた。各測定の時間は、300kPaの粉末調剤圧力で、10秒であった。結果を体積平均径(VMD;D[4,3])として得、各サンプルにつき3つの分析の平均として与えた。
【0142】
粒子の薬物負荷のレベルを評価するために、既知の量の薬物負荷されたメソ多孔質粒子を25mlのアセトンに溶解し、500mlの対応する溶解媒体で希釈し、次いで30分間超音波処理した。
【0143】
溶解した薬物の濃度を次いでAgilent1200HPLCシステムにおけるC18カラム(15cm×4.6mm、5μm)及び362nmでのUV検出器においてHPLCを使用して求めた。
【0144】
実施例1-セルロースのメソ多孔質粒子の調製
4gの酢酸酪酸セルロース(CAB)または酢酸セルロース(CA)またはエチルセルロース(EC)を90:10の体積比のアセトン:水または酢酸エチル:イソプロパノールのいずれかの200mLの混合物に溶解した。得られるポリマー溶液を次いで2流体ノズルによってスプレー乾燥した。イナートループBuchi B-295(Flawil,Switzerland)における窒素による密閉形態でのミニスプレー乾燥機BuchiB-290を、5mL/分の供給速度、600L/時間の窒素流量、200KPaの噴霧圧力、及び30m3/時間の乾燥ガス流量で使用した。スプレー乾燥プロセスを100℃の入り口温度で操作した。全ての材料及び溶媒が医薬品グレードであった。
【0145】
以下の表1は、スプレー乾燥において生成された粒子状材料において採取された測定の結果を示す。
【表1】
【0146】
図1は、サンプル2の粒子のSEM画像を示す。
図1(a)は、破壊された粒子の断面であり、x5000の倍率で多孔質内部構造を示している。
図1(b)は、x30,000の倍率での同粒子断面を示し、メソ多孔質内部構造をより詳細に示している。
【0147】
図2は、サンプル2の粒子のSEM画像を示す。
図2(a)は、粒子の外面であり、x5000の倍率で多孔質内部構造を示している。
図2(b)は、x33,000の倍率での同粒子表面を示し、メソ多孔質表面構造をより詳細に示している。
【0148】
実施例2-CABポリマー性メソ多孔質粒子の調製
ポリマー性メソ多孔質粒子を、約15%~約60%の範囲のブチリル含量、約1%~約30%の範囲のアセチル含量、及び約0.5%~約5%の範囲のヒドロキシル含量を有する様々なタイプのCAB(例えば、Eastman Chemical)から製造した。アセトン:水の溶媒混合物を80:20、85:15及び90:10の体積比で調製した。4gのCABを200mLの溶媒混合物に溶解した。ポリマー溶液を次いで2流体ノズルによってスプレー乾燥した。イナートループBuchi B-295における窒素による密閉形態でのミニスプレー乾燥機Buchi B-290(Flawil,Switzerland)を、5mL/分の供給速度、600L/時間の窒素流量、200kPaの噴霧圧力、及び30m3/時間の乾燥ガス流量で使用した。スプレー乾燥プロセスを60~140℃の範囲の入り口温度で操作した。全ての材料及び溶媒が医薬品グレードであった。
【0149】
以下の表2は、生成した様々なサンプルの詳細を示す:
【表2】
【0150】
実施例3-フェロジピン負荷されたメソ多孔質粒子の調製
表2におけるサンプル8のメソ多孔質CAB粒子をフェロジピン(FELO、USP36に適合する、純度>98%)のエタノール(10mg/mL)溶液に添加して、15%(w/w)の初期薬物負荷で懸濁液を形成した。懸濁液を12時間穏やかに撹拌し、次いで、600L/分の窒素流量、5mL/分の供給速度、及び30m3/時間の乾燥ガス流量で密閉形態においてミニスプレー乾燥機Buchi B-290及びイナートループBuchi B-295を使用して100℃の入り口温度でスプレー乾燥した。全ての材料及び溶媒が医薬品グレードであった。
【0151】
実施例4-イブプロフェン負荷されたメソ多孔質粒子の調製
表2におけるサンプル8のメソ多孔質CAB粒子をイブプロフェン(IBU、純度>98%)のエタノール(10mg/mL)溶液に添加して、20%(w/w)の初期薬物負荷で懸濁液を形成した。懸濁液を12時間穏やかに撹拌し、次いで、実施例3と同じプロセスパラメータの下でミニスプレー乾燥機Buchi B-290及びイナートループBuchi B-295を使用して80℃の入り口温度でスプレー乾燥した。全ての材料及び溶媒が医薬品グレードであった。
【0152】
実施例5-フロセミド負荷されたメソ多孔質粒子の調製
表2におけるサンプル8のメソ多孔質CAB粒子をフロセミド(FURO、USP38と適合する、純度>99%)のエタノール(10mg/mL)溶液に添加して、21%(w/w)の初期薬物負荷で懸濁液を形成した。懸濁液を12時間穏やかに撹拌し、次いで、実施例3と同じ装置を使用して同じプロセスパラメータの下でスプレー乾燥した。全ての材料及び溶媒が医薬品グレードであった。
【0153】
実施例6-持続放出のための共スプレー乾燥したフェロジピン-CABポリマー性粒子
4.0gのCABを、それぞれ、0.2g、0.6g及び1.0gのフェロジピンと混合して、5、15及び25%の薬物負荷(w/w)(すなわち、本明細書における%w/wでの薬物負荷は、溶液に添加した薬物化合物の質量を溶液に添加したポリマー性粒子の質量で除算し、次いで100を乗算することによって算出する)でポリマー及び薬物の混合物を生成した。これらの混合物を次いでそれぞれ85:15(v/v)の比の200mLのアセトン:水に溶解し、100℃の入り口温度、600L/分の窒素流量、5mL/分の供給速度、及び30m3/時間の乾燥ガス流量で、イナートループBuchi B-295(Flawil,Switzerland)において窒素による密閉形態でミニスプレー乾燥機Buchi B-290を使用して共スプレー乾燥した。全ての材料及び溶媒が医薬品グレードであった。
【0154】
以下の表3は、共スプレー乾燥されたフェロジピン-CAB多孔質粒子の特性を記載する(n=3;平均±標準偏差)。
【表3】
【0155】
異なるレベルの薬物負荷を有する粒子のSEM画像を
図10に示す。
【0156】
実施例7-薬物負荷されたメソ多孔質粒子の熱分析
実施例3~5において作製した薬物負荷されたメソ多孔質粒子の熱的特性をDSC機器TA Q200によって特徴付けした。サンプルをTzeroアルミニウムパンにおいて正確に秤量し(およそ3~5mg)、窒素下、10℃/分の走査速度で50~300℃の温度範囲において加熱した。TA universal分析2000ソフトウェア(バージョン4.5)を用いて、得られたDSCグラフを分析した。
【0157】
図3~5は、それぞれ、実施例3~5の各々についてのDSCサーモグラムを、原料についてのサーモグラムと併せて示す。
【0158】
図3は、フェロジピン原料(実線)及びフェロジピン負荷されたメソ多孔質粒子(破線)についてのDSC曲線を示す。強い吸熱の相転移が原料について146.3℃で起こり、このことは、その結晶性の性質を実証している。メソ多孔質粒子に吸着されたフェロジピンについては相当する相転位が明白でなく、これは、後述する向上した溶解性を説明するアモルファス形態にあることを示している。
【0159】
図4は、イブプロフェン原料(実線)及びイブプロフェン負荷されたメソ多孔質粒子(破線)についてのDSC曲線を示す。強い吸熱の相転移が原料について75.24℃で起こり、このことは、その結晶性の性質を実証している。メソ多孔質粒子に吸着されたイブプロフェンについては非常に弱い相当する相転位のみが明白であり、これは、材料の大部分が、後述する向上した溶解性を説明するアモルファス形態にあることを示している。
【0160】
図5は、フロセミド原料(実線)及びフロセミド負荷されたメソ多孔質粒子(破線)についてのDSC曲線を示す。相転位が原料についておおよそ220℃及び265℃で起こり、このことは、その結晶性の性質を実証している。メソ多孔質粒子に吸着されたフロセミドについては相当する相転位が明白でなく、これは、後述する向上した溶解性を説明するアモルファス形態にあることを示している。
【0161】
実施例8-FELO負荷されたメソ多孔質粒子の溶解プロファイル
溶解試験を、Erweka DT126溶解試験機においてUSP I装置(回転バスケット、50rpm)を使用して実施した。20mgのFELOを含有する、実施例3において調製した材料のサンプルを、HPMC硬質シェルカプセルに負荷し、37℃で0.25%ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)によって500mLのUSP pH6.5媒体中で試験した(USP36モノグラフから出典、SLS濃度が1.0~0.25%低減している)。サンプルを以下の時点:15、30、60、90、及び120分;において120分の期間にわたって取り出した。溶解したFELOの濃度を、Agilent1200HPLCシステムにおいて、USP pH3リン酸緩衝液:アセトニトリル:メタノール(30:45:25)の移動相、C18カラム(15cm×4.6mm、5μm)、1mL/分の流量、40μLの注入体積、及び362nmでのUV検出器で、United States Pharmacopoeia(USPバージョン36)に記載されているHPLC法に準拠して求めた。
【0162】
結果を、実施例3のFELO負荷された粒子について、FELO原料の溶解についての結果と併せて
図6に示す。プロットから明らかに分かるように、フェロジピンの溶解は、化合物をメソ多孔質粒子状材料に吸着させることによって大幅に向上する。120分後、フェロジピンの溶解は、原料(すなわち、いずれの担体にも吸着されていない化合物)についての同期間後に見られるものの10xである。実際、120分後、同期間後の原料ではおおよそ10%のみであったことと比較して、メソ多孔質粒子状材料に吸着されたフェロジピンの全てが完全に溶解している。
【0163】
実施例9-IBU負荷されたメソ多孔質粒子の溶解プロファイル
実施例4において調製したIBU負荷されたメソ多孔質粒子の溶解試験を、Erweka DT126溶解試験機においてUSP I装置(回転バスケット、100rpm)を使用して実施した。50mgのIBUを含有するサンプルを、HPMC硬質シェルカプセルに負荷し、37℃で0.25%SLSによって900mLのpH3.0媒体において試験した。pH3媒体を、2gの塩化ナトリウムおよび2.5gのSLSを400mLの脱イオン水に溶解し、次いで、0.1mLの37%塩酸を添加し、脱イオン水で1000.0mLに希釈することによって調製した。溶解したIBUの濃度を、Agilent1200HPLCシステムにおいて、リン酸緩衝液pH3:アセトニトリル(60:40)の移動相、C18カラム(15cm×4.6mm、5μm)、2mL/分の流量、20μLの注入体積、及び254nmでのUV検出器で、HPLC法を使用して求めた。
【0164】
結果を、実施例4のIBU負荷された粒子について、IBU原料の溶解についての結果と併せて
図7に示す。120分後、イブプロフェン原料では73.4%のみであったことと比較して、メソ多孔質粒子状材料に吸着されたイブプロフェンの全てが溶解した。さらに、比較的短期間の後(60分)、吸着したイブプロフェンについて高い溶解率(97.4%)が達成される。
【0165】
実施例10-FURO負荷されたメソ多孔質粒子の溶解プロファイル
実施例5において調製したFURO負荷されたメソ多孔質粒子の溶解試験を、Erweka DT126溶解試験機においてUSP I装置(回転バスケット、100rpm)を使用して実施した。40mgのFUROを含有するサンプルを、HPMC硬質シェルカプセルに負荷し、37℃において0.25%SLSによって900mLのHCl-NaCl pH3.0媒体において試験した。溶解したFUROの濃度を、Agilent1200HPLCシステムにおいて、リン酸緩衝液pH3:アセトニトリル(60:40)の移動相、C18カラム(15cm×4.6mm、5μm)、35℃のカラム温度、1mL/分の流量、10μLの注入体積、及び234nmでのUV検出器で、HPLC法を使用して求めた。
【0166】
結果を、実施例5のFURO負荷された粒子について、FURO原料の溶解についての結果と併せて
図8に示す。120分後、フロセミド原料については65.3%のみであったことと比較して、フロセミドについて、本発明のメソ多孔質粒子状材料に吸着されたときに、有意により高い溶解率(87.6%)が達成される。
【0167】
実施例11-共スプレー乾燥されたフェロジピン-CABポリマー性粒子の溶解プロファイル
ポリマー及びフェロジピンを共スプレー乾燥することによって実施例6において調製したFELO負荷されたメソ多孔質粒子の溶解試験を、Erweka DT126溶解試験機においてUSP I装置(回転バスケット、50rpm)を使用して実施した。20mgのFELOを含有する、実施例6において調製した材料のサンプルを、HPMC硬質シェルカプセルに負荷し、37℃で0.25%ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)によって500mLのUSP pH6.5媒体中で試験した(USP36モノグラフから出典、SLS濃度が1.0~0.25%低減している)。サンプルを以下の時点:0.5、1,2、6、及び10時間;において10時間の期間にわたって取り出した。溶解したFELOの濃度を、Agilent1200HPLCシステムにおいて、USP pH3リン酸緩衝液:アセトニトリル:メタノール(30:45:25)の移動相、C18カラム(15cm×4.6mm、5μm)、1mL/分の流量、40μLの注入体積、及び362nmでのUV検出器で、United States Pharmacopoeia(USPバージョン36)に記載されているHPLC法に準拠して求めた。
【0168】
結果を
図9に示す。溶解プロットから、フェロジピン原料及びスプレー乾燥された原料フェロジピンの両方(破線)が、
図6においても証明されているように、難溶解を示すことが明白である。対照的に、フェロジピン及びCABの溶液を共スプレー乾燥することによって生成したメソ多孔質ポリマー性粒子は、薬物負荷の範囲にわたって(5%、15%及び25%)、所与の期間後に、より一層高い溶解率を示す。そのため、化合物の溶解性が、メソ多孔質粒子へのその負荷によって向上することが明白である。
【0169】
加えて、
図9を
図6と比較することにより、実施例6のフェロジピン負荷された粒子(
図9)において、実施例3のもの(
図6)と比較して、徐放性の放出特性が付与されることを明らかにしている。フェロジピンがポリマーと共スプレー乾燥されると、薬物は、持続放出期間にわたって粒子からよりゆっくりと放出される。より詳細には、5%、15%及び25%負荷された粒子では、2時間後に、負荷されたフェロジピンのおおよそ44%、64%及び66%がそれぞれ溶解し、10時間後には、それぞれ、59%、81%及び87%に上昇した。これは、実施例3の後負荷されたフェロジピンを含有する粒子(
図6)についての2時間後のおおよそ100%の溶解に匹敵する。
【0170】
実施例12-フルオレセインが負荷されたメソ多孔質粒子の共焦点レーザー走査顕微鏡法(CLSM)
CLSMを、モデル難溶性化合物、フルオレセインを負荷したメソ多孔質粒子のいくつかにおいて実施して、モデル化合物の分布を実証した。
【0171】
サンプル8のメソ多孔質CAB粒子(表2)に、実施例3と等価の手順に従ってフルオレセインを後負荷したが、フェロジピンをフルオレセインに置き換えた。表2におけるサンプル8のメソ多孔質CAB粒子をフルオレセイン(Sigma-Aldrich、分析試薬)のエタノール(2mg/mL)溶液に添加して、20%(w/w)の初期薬物負荷で懸濁液を形成した。懸濁液を12時間穏やかに撹拌し、次いで、600L/分の窒素流量、5mL/分の供給速度、及び30m3/時間の乾燥ガス流量で、密閉形態においてミニスプレー乾燥機Buchi B-290及びイナートループBuchi B-295を使用して、100℃の入り口温度でスプレー乾燥した。フルオレセインが後負荷されたこれらの粒子をサンプル17で表した。
【0172】
フルオレセイン負荷されたメソ多孔質粒子も共スプレー乾燥によって調製した。4.0gのCABを0.8gのフルオレセインと混合した。これらの混合物を次いでそれぞれ85:15(v/v)の比の200mLのアセトン:水に溶解し、イナートループBuchi B-295(Flawil,Switzerland)、100℃の入り口温度、600L/分の窒素流量、5mL/分の供給速度、及び30m3/時間の乾燥ガス流量において、窒素による密閉形態においてミニスプレー乾燥機Buchi B-290を使用して共スプレー乾燥した。スプレー乾燥された粒子をサンプル18で表した。
【0173】
サンプル17及び18におけるフルオレセインの分布を、10X及び20Xの乾燥対物レンズを有するLeica共焦点顕微鏡TCS SP5II(Wetzlar,Germany)を使用することによって定量的に評価した。フルオレセインサンプルについての励起及び発光波長はそれぞれ488及び525nmであった。フルオレセインサンプルの共焦点画像を515~535nmで得た。両方のサンプルについての走査深度は2μmであり、走査速度は200Hzであった。
【0174】
CLSMから得られた画像を
図11に示す。
図11(a)は、サンプル17の粒子を示し、
図11(b)は、サンプル18の粒子を示す。サンプル18のCLSM画像は、難溶性化合物との共スプレー乾燥が、粒子内に捕捉されかつ粒子表面で吸着された両方の化合物の分布につながることを示す。対照的に、粒子の後負荷は、表面細孔内のみの難溶性化合物の堆積につながり、合計薬物負荷はより低い。
【0175】
実施例13-細孔径分布の決定
サンプル8のポリマー性メソ多孔質粒子の細孔容積及び細孔径分布を、2006のISO15901-2に記載されている方法に準拠してBJH理論の下で細孔径分析装置Quantachrome Nova4200eを使用して気体吸着ポロシメトリーによって分析した。各サンプルを100℃で24時間、真空下で脱気した後、窒素吸着-脱着の測定結果を得た。
【0176】
【0177】
細孔容積の蓄積分布図を12aにプロットする。dV/dD対細孔径のプロットとしてグラフに提示されている細孔径分布を
図12bに示す。
【0178】
特定の形態でもしくは開示されている機能を実施するための手段の観点で表されている、以上の詳細な説明において、もしくは以下の特許請求の範囲において、もしくは添付の図面において開示されている特徴、または、開示されている結果を得るための方法もしくはプロセスは、適切な場合には、別個に、または、かかる特徴の任意の組み合わせにおいて、様々な形態で本発明を実現するために利用されてよい。
【0179】
本発明を上記で記載されている例示的な実施形態と併せて説明したが、この開示を付与するとき、多くの等価の変更及び変形が当業者に明らかである。したがって、上記に記載されている本発明の例示的な実施形態は、説明的であるとされ、限定的ではない。記載されている実施形態に対しての様々な変更が本発明の精神及び範囲から逸脱することなくなされ得る。
【0180】
いずれの誤解も避けるために、本明細書において提供されているいずれの理論的説明も、読み手の理解を改良する目的で提供されている。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれによっても拘束されることを望んでいない。
【0181】
本明細書において使用されているいずれのセクションの表題も、組織上の目的のためのみであって、記載されている主題を限定すると解釈されるべきではない。
【0182】
後に続く特許請求の範囲を含めたこの明細書全体を通して、文脈が別途必要としない限り、語「有する(have)」、「含む(comprise)」、及び「含む(include)」、ならびに変形、例えば、「有する(having)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、及び「含む(including)」は、記述されている整数もしくは工程または整数群もしくは工程群を包含するが、いずれの他の整数もしくは工程または整数もしくは工程群も排除しないことを示唆することが理解される。
【0183】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されているとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が別途明らかに示さない限り、複数の指示対象を含むことに注意されなければならない。範囲は、「約」1つの特定の値から、及び/または「約」別の特定の値までとして本明細書において表記され得る。かかる範囲が表記されているとき、別の実施形態は、当該1つの特定の値から、及び/または当該他の特定の値までを含む。同様に、値が、先行詞「約」を使用して近似値として表記されているとき、かかる特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。数値に関しての用語「約」は、任意選択的であり、例えば、±10%を意味する。
【0184】
語「好ましい」及び「好ましくは」は、いくつかの状況下である特定の利益を付与し得る本発明の実施形態を指すのに本明細書において使用される。しかし、他の実施形態はまた、同じまたは異なる状況下においても好ましくあり得ることが認識されるべきである。ゆえに、1つ以上の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを意味または示唆しておらず、他の実施形態を、開示の範囲から、または特許請求の範囲の範囲から排除することは意図していない。