(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】不安定セルフリーDNAを検出する方法およびそれを使用するデバイス
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/682 20180101AFI20241009BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20241009BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20241009BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20241009BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
C12Q1/682 Z
C12Q1/6806 Z ZNA
C12M1/34 Z
C12M1/00 A
C12M1/26
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023023615
(22)【出願日】2023-02-17
(62)【分割の表示】P 2021517173の分割
【原出願日】2019-05-30
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】10-2018-0063258
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520469619
【氏名又は名称】ジェノプシー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GENOPSY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】チョ・ヨンナム
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03315607(EP,A1)
【文献】国際公開第2016/210158(WO,A1)
【文献】高橋 豊三,DNAプローブの応用技術,2000年03月30日,p. 5-7, 12, 324-326
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12M
G01N
C12N 15/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルから不安定二重螺旋構造を有するセルフリーDNA(cfDNA)を増幅せずに検出する方法であって:
a)cfDNAを含むサンプルと正荷電物質との混合;
b)該cfDNAが結合している正荷電物質の分離;
c)工程b)のcfDNAが結合している正荷電物質とプローブおよびマーカーとの混合;
d)該cfDNAと結合していないプローブおよびマーカーの除去;および
e)マーカーの検出
を含み、不安定二重螺旋構造が正常細胞に存在しない損傷された核酸配列を含む構造であ
り、
プローブが不安定二重螺旋構造を有するcfDNAにおいて相補的結合を形成していない核酸配列に相補的に結合できるように設計された配列を有し、
工程c)の前に、サンプルまたは正荷電物質に結合したcfDNAを、不安定二重螺旋構造を有するcfDNAは変性されるが、安定二重螺旋構造を有するcfDNAは変性されない条件下で変性させることをさらに含み、
不安定二重螺旋構造を有するcfDNAが安定二重螺旋構造を有するcfDNAと比較して熱力学的に不安定である、方法。
【請求項2】
不安定二重螺旋構造を有するcfDNAが:
i)安定な二重螺旋構造を有するcfDNAより低いTm値を有する;または
ii)安定な二重螺旋構造を有するcfDNAが変性されない条件下で変性される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
不安定二重螺旋構造を有するcfDNAが、不安定二重螺旋構造を有するcfDNAと相補的に結合できる15量体~30量体プローブと、次の
i)1~120分間、室温に静置させる条件;
ii)90℃~95℃で1秒間~3分間加熱する条件;
iii)75℃~90℃で1秒間~5分間加熱する条件;
iv)60℃~75℃で30秒間~30分間加熱する条件;
v)25℃~40℃で10~120分間加熱する条件;
vi)プロテアーゼで1~30分間処理する条件;および
vii)DNaseで1~30分間処理する条件、
の何れかの条件下で結合できる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
不安定二重螺旋構造を有するcfDNAが循環腫瘍DNAである、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
不安定二重螺旋構造を有するcfDNAが正常細胞に存在しない損傷された核酸配列を有する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
正常細胞に存在しない損傷された核酸配列が欠失、重複、反転、転座、ミスマッチおよび一塩基変異(SNV)からなる群から選択される何れかの構造異常を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程c)の前に、サンプルまたは正荷電物質に結合したcfDNAを次の条件
i)1~10分間、室温に静置させる条件;
ii)90℃~95℃で1秒間~1分間加熱する条件;
iii)75℃~90℃で10秒間~3分間加熱する条件;
iv)60℃~75℃で1~30分間加熱する条件;
v)25℃~40℃で5~60分間加熱する条件;
vi)プロテアーゼで1~10分間処理する条件;および
vii)DNaseで1~10分間処理する条件
から選択される何れかの条件下で変性させることをさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
プローブが15量体~30量体ヌクレオチドからなる、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
プローブが、ビオチンがそれに結合している形態である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
マーカーがホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)または蛍光タンパク質を含む、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
マーカーがさらにアビジン、ストレプトアビジンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される何れかを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
マーカーが導電性ポリマー;ヒアルロン酸;アビジンまたはストレプトアビジン;およびホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)または蛍光タンパク質を含むナノ粒子である、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
正荷電物質が正荷電ナノワイヤーである、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
ナノワイヤーが導電性ポリマーを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ナノワイヤーがさらにビオチンを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
導電性ポリマーがポリ(アセチレン)、ポリ(ピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(パラ-フェニレン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリ(パラ-フェニレンビニレン)およびポリアニリンからなる群から選択される何れかである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
サンプルが尿、脳脊髄液、血漿、血液、胸水、腹水、唾液、痰および体液からなる群から選択される何れかである、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
損傷された核酸配列がEGFR、KRAS、BRAF、TP53、PIK3CA、ROS1、RET、c-Met、PTEN、RB1、AR、BRCA、KIT、FGFR、IDH、ESR1、HER2、ALK-EML4およびTMPRSS2-ERGからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の変異配列である、請求項5~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
工程e)において、マーカーが色調変化、UV吸光度変化、蛍光応答変化または電気化学的変化により検出される、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
サンプルから不安定二重螺旋構造を有するcfDNAを増幅せずに検出することにより、癌または感染性疾患の診断または予測に関する情報を提供する方法であって、
a)cfDNAを含むサンプルとの正荷電物質の混合;
b)該cfDNAが結合している正荷電物質の分離;
c)工程b)のcfDNAが結合している正荷電物質とプローブおよびマーカーの混合;
d)該cfDNAと結合していないプローブおよびマーカーの除去;
e)マーカーの検出;および
f)マーカーが検出されたとき、不安定二重螺旋構造を有するcfDNAに対応する遺伝子と関連する癌または感染性疾患があることを決定する
ことを含み、不安定二重螺旋構造が正常細胞に存在しない損傷された核酸配列を含む構造であ
り、
プローブが不安定二重螺旋構造を有するcfDNAにおいて相補的結合を形成していない核酸配列に相補的に結合できるように設計された配列を有し、
工程c)の前に、サンプルまたは正荷電物質に結合したcfDNAを、不安定二重螺旋構造を有するcfDNAは変性されるが、安定二重螺旋構造を有するcfDNAは変性されない条件下で変性させることをさらに含み、
不安定二重螺旋構造を有するcfDNAが安定二重螺旋構造を有するcfDNAと比較して熱力学的に不安定である、方法。
【請求項21】
サンプルから室温で不安定である二重螺旋構造を有するcfDNAの存在または非存在を増幅せずに検出するデバイスであって、
a)cfDNAを含むサンプルと正荷電ナノワイヤーとを混合するための混合セクション;
b)cfDNAが結合したナノワイヤー以外のサンプルを除去する取得セクション;
c)cfDNAが結合したナノワイヤーに、該cfDNAが相補的に結合し得るビオチンを結合させたプローブならびにストレプトアビジンおよびマーカーを含むナノ粒子を加えるための、反応セクション;
d)該マーカーの検出のための検出セクション;および
e)マーカーの検出により、該サンプルが、該プローブと相補的配列を有し、室温で不安定である二重螺旋構造を有するcfDNAを含むことを決定するための情報処理セクション
を含み、不安定二重螺旋構造が正常細胞に存在しない損傷された核酸配列を含む構造であ
り、
プローブが不安定二重螺旋構造を有するcfDNAにおいて相補的結合を形成していない核酸配列に相補的に結合できるように設計された配列を有し、
工程c)の前に、サンプルまたは正荷電物質に結合したcfDNAを、不安定二重螺旋構造を有するcfDNAは変性されるが、安定二重螺旋構造を有するcfDNAは変性されない条件下で変性させることをさらに含み、
不安定二重螺旋構造を有するcfDNAが安定二重螺旋構造を有するcfDNAと比較して熱力学的に不安定である、デバイス。
【請求項22】
サンプルから不安定二重螺旋構造を有するcfDNAを増幅せずに検出することにより、癌または感染性疾患の診断または予測のための情報を提供するデバイスであって、
a)cfDNAを含むサンプルと正荷電ナノワイヤーとを混合するための混合セクション;
b)cfDNAが結合したナノワイヤー以外のサンプルを除去する取得セクション;
c)cfDNAが結合したナノワイヤーに、該cfDNAが相補的に結合できるビオチンを結合させたプローブならびにストレプトアビジンおよびマーカーを含むナノ粒子を加えるための、反応セクション;
d)該マーカーの検出のための検出セクション;および
e)マーカーの検出により、該サンプルが、該プローブと相補的配列を有し、室温で不安定である二重螺旋構造を有するcfDNAを含むことを決定するための情報処理セクション
を含み、不安定二重螺旋構造が正常細胞に存在しない損傷された核酸配列を含む構造であ
り、
プローブが不安定二重螺旋構造を有するcfDNAにおいて相補的結合を形成していない核酸配列に相補的に結合できるように設計された配列を有し、
工程c)の前に、サンプルまたは正荷電物質に結合したcfDNAを、不安定二重螺旋構造を有するcfDNAは変性されるが、安定二重螺旋構造を有するcfDNAは変性されない条件下で変性させることをさらに含み、
不安定二重螺旋構造を有するcfDNAが安定二重螺旋構造を有するcfDNAと比較して熱力学的に不安定である、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、遺伝子増幅過程なく、不安定二重螺旋構造を有するセルフリーDNAを検出するための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
近年、癌疾患の早期診断の重要性が、世界中でますます顕著になってきている。それ故に、癌の早期診断方法についての研究も増えている。しかしながら、今日まで、癌を診断する方法は、組織サンプル取得および内視鏡検査などの侵襲的方法で実施されている。特に、組織学的試験は、疾患が疑われる部位の一部を摘出し、顕微鏡下に観察するような方法で実施される。それ故に、組織サンプルを針、穿孔器、内視鏡または腹腔鏡を使用して採取するために、体を切開する必要があるとの事実により、患者が相当不快に感じるだけでなく、瘢痕も残り、回復に長時間かかる。
【0003】
液体細胞診を使用する分子診断方法は、侵襲的診断および試験方法の代替として、興味が惹かれている。液体細胞診は非侵襲的方法を使用するため、その結果を直ぐに特定することが可能である。さらに、疾患の一部しか分析できない組織サンプルとは異なり、液体細胞診は、疾患の多角的分析を可能とする。特に、液体細胞診は、癌診断に優れた有効性を発揮することが期待される。特に、血液および尿などの体液の試験からだけで、血液中に存在する体の各部分の癌細胞由来DNAを分析することが可能となり、よって、癌進展および転移などの詳細な観察がなされ得ると予測される。
【0004】
分子診断方法は、血液および尿などの遺伝情報を含むサンプルから、多くの数値または像を用いて、DNAまたはRNAの変化を検出および診断する、エクスビボ診断の代表的技術である。精度の高さおよび組織学的試験が不要であるとの利点により、ゲノム分析技術の迅速な開発と共に、その経費削限利点に基づいて、癌診断技術に、分子診断方法を応用する試みがなされている。
【0005】
一方で、セルフリーDNA(以後cfDNAと称する)は、血漿に存在し、細胞由来であるDNAをいう。cfDNAは通常二重螺旋構造を有する。さらに、多くの場合、cfDNAはコイルドコイル構造を有する。cfDNAは腫瘍細胞に由来し得る。さらに、腫瘍細胞由来のcfDNAは、癌患者から得た血液、血漿または尿などの生物学的サンプルに見られ得る。
【0006】
癌患者で見られるcfDNAは壊死性細胞、正常細胞および/または癌細胞に由来し得る。このようなcfDNAは、種々の過程を経て尿、血液などに放出される。故に、血液、血漿または尿などの生物学的サンプルにおけるcfDNAを単離および検出する技術の開発が、液体細胞診を、癌のリスクのある患者のモニタリングのための、より有効かつ信頼できるツールとし得る。特に、尿、血漿、血液または体液は容易に入手可能なサンプルであるため、非侵襲的方法で大量の検体を集めることが可能である。
【0007】
しかしながら、現在の技術レベルを考慮すると、癌の早期診断方法には、血液および尿などの液体サンプル中のcfDNAおよび遺伝子に存在する変異の発見を含む、多くの困難がある。それ故に、cfDNAを容易に検出する方法ならびに検出感受性の改善および正確な癌早期診断の技術の開発が必要である。
【0008】
同時に、韓国特許10-1751962は、cfDNAが検出されるようにプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施することによる、cfDNAの定量が可能な技術を開示する。しかしながら、ポリメラーゼ連鎖反応の実施には別々のポリメラーゼおよび実験装置が必要であるとの問題があり、増幅のために正確なプライマー産生が必要であり、現場での診断が容易にできないとの問題がある。
【0009】
さらに、韓国特許10-1701618は、cfDNAを効率的に単離するために、電場の変化により表面性質を変えることができる、ナノ構造体を記載する。ナノ構造体は電場の変化によりcfDNAと結合したり、解離したりでき、故に、サンプルからcfDNAを容易に単離できる。しかしながら、どのcfDNAが存在するかを同定するためにポリメラーゼ連鎖反応を使用しなければならないとの限界がある。
【0010】
ポリメラーゼ連鎖反応の実施によりcfDNAを増幅するために、種々のタイプのプライマーセットが必要であり、複雑な工程を実施する時間もかかる。それ故に、PCRを行わなければならない限界を克服し、cfDNAを高精度で分析する方法を開発する研究が継続してなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明の記載
技術的課題
慣習的に、cfDNAを検出するために、cfDNAを変性させ、該cfDNAと相補的なプライマーを使用して増幅する過程を実施することが必須であった。しかしながら、本願発明者らは、血液中の不安定cfDNAの存在を同定した。さらに、本願発明者らは、安定cfDNAと異なり、不安定cfDNAが一本鎖プローブと異常な反応を示すことを同定した。特に、本願発明者らは、このような不安定cfDNAが癌または感染性疾患を有する個体の細胞に由来することを同定した。これらの発見に基づき、本願発明者らは本発明を完成させた。
【0012】
従って、本発明の目的は、不安定cfDNAの存在または非存在を同定する方法の提供およびこのような不安定cfDNAの同定により癌または種々の疾患の診断のための情報を提供する方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
課題の解決
上記目的を達成するために、サンプルからの不安定cfDNAを増幅せずに検出する方法が提供される。さらに、サンプルからの不安定cfDNAを増幅せずに検出することにより、癌および感染性疾患の診断または予測のための情報を提供する方法が提供される。さらに、サンプルからの不安定cfDNAを増幅せずに検出するためのデバイスが提供される。
【発明の効果】
【0014】
発明の有利な効果
本実施態様による不安定cfDNAを検出する方法が使用されたとき、不安定cfDNAを増幅する工程が不要となるだけでなく、cfDNAを分析する時間を短縮することも可能である。特に、遺伝子変異部分を含む不安定二本鎖cfDNAを効率的に検出可能であり、それにより遺伝子変異と関連する癌または疾患を効率的に診断または予測することが可能である。さらに、本発明の実施態様による方法が使用されたとき、迅速かつ正確な方法で、尿、脳脊髄液、胸水、腹水、血漿、血液または体液などの小量の生物学的サンプルから、不安定二重螺旋構造を有するcfDNAの存在または非存在を同定することが可能である。さらに、このように検出された不安定cfDNAが種々の癌または疾患と関連することが確認されているため、本発明の実施態様による方法は、癌の診断または処置後の予後の同定のために有効に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】正荷電ナノワイヤー(PEI/Ppy NW)の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0016】
【
図2】正荷電ナノワイヤー(PEI/Ppy NW)の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す。
【0017】
【
図3】カチオン性ポリマーとしてポリリシン(PLL)が結合した、ナノ構造体(PLL/Ppy NW)表面の、走査型電子顕微鏡画像を示す。
【0018】
【
図4】HRP/ストレプトアビジン結合ナノ粒子の走査型電子顕微鏡画像を示す。
【0019】
【
図5】50nmの直径を有するPEI結合ナノ粒子(PEI/Ppy NP)の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0020】
【
図6】ポリエチレンイミン(PEI)が結合した表面を有するナノワイヤー(PEI/Ppy NW)を使用して、患者の体液からcfDNAを得て、次いで、遺伝子変異をプローブおよびHRP/ストレプトアビジンタグ付ナノ粒子(HRP/stタグ付NP)との反応により60分以内に分析する、方法の模式図を示す。
【0021】
【
図7】ナノワイヤー、プローブおよびHRP/ストレプトアビジンタグ付ナノ粒子を使用して、不安定cfDNAを検出する方法を図説する。
【0022】
【
図8】血液、脳脊髄液または胸水などのサンプルにおける不安定cfDNAを検出する方法を、時系列フローで示す。
【0023】
【
図9】尿などのサンプルにおける不安定cfDNAを検出する方法を、時系列フローで示す。
【0024】
【
図10】血液から得たcfDNAの状態による変性条件の差異を模式的に示す。
【0025】
【
図11】尿、唾液および痰から得たcfDNAの状態による変性条件の差異を模式的に示す。
【0026】
【
図12】子宮頸癌患者の尿サンプルおよび正常対象の尿サンプルからcfDNAを得て、次いで、HPV 18またはHPV 16プローブを使用してcfDNAにおける遺伝子変異の存在または非存在を検出した結果を示す。
【0027】
【
図13】HPV陽性子宮頸癌患者(HPV16(+)およびHPV18(+))およびHPV陰性健常対照(HPV-)の尿に存在するcfDNAと、HPV 18またはHPV 16に特異的なプローブの間の結合を、吸光度により同定することにより得た結果を示す。
【0028】
【
図14】子宮頸癌患者の尿から単離したcfDNAを、HPV 16、EGFR19欠失、HPV 18およびEGFR 21 L858Rに特異的なプローブと連続的に反応させ、次いで、cfDNAと各プローブの間の結合を同定することにより得た結果を示す。
【0029】
【
図15】正常対象血漿に、低範囲(10bp~100bp)、中範囲(100bp~2kb)および高範囲(3.5kb~21kb)DNAラダーを加え、次いで、PEI/Ppy NWを使用してDNAラダーを捕捉するときの捕捉効率を評価して得た結果を示す。
【0030】
【
図16】超音波処理せずに得たA549細胞株(レーン1および2)、HCC2279細胞株(レーン3および4)およびH1975細胞株(レーン5および6)の細胞株ゲノムDNA(以後gDNAと称する)ならびに各細胞株のgDNAの超音波処理により得た断片化DNA(以後fDNAと称する)のサイズの同定により得た結果を示す。
【0031】
【
図17】A549細胞株、HCC2279細胞株およびH1975細胞株から超音波処理せずに得たgDNAおよび各細胞株の超音波処理により得たfDNAの、PEI/Ppy NWを使用する捕捉、次いで捕捉効率の評価により得た結果を示す。
【0032】
【
図18】A549細胞株、HCC2279細胞株およびH1975細胞株から超音波処理せずに得たgDNAおよび各細胞株の超音波処理により得たfDNAの、PEI/Ppy NWを使用する捕捉、次いでEGFR 19(19Del)、EGFR 20(T790M)およびEGFR 21(L858R)に特異的なプローブの付加による色調変化の同定により得た結果を示す。fDNAのみが標的プローブに選択的に結合することが同定された。
【0033】
【
図19】A549細胞株、HCC2279細胞株およびH1975細胞株から超音波処理せずに得たgDNAおよび各細胞株の超音波処理により得たfDNAの、PEI/Ppy NWを使用する捕捉、次いでEGFR 19(19Del)、EGFR 20(T790M)およびEGFR 21(L858R)に特異的なプローブの付加によるUV-Visスペクトル変化の同定により得た結果を示す。fDNAのみが標的プローブに選択的に結合することが同定された。
【0034】
【
図20】H1975細胞株、HCC2279細胞株およびA549細胞株のfDNAをPEI/Ppy NWを使用して得て、次いで、蛍光色素が結合したDNAプローブを使用して遺伝子変異を分析して得た結果を示す。
【0035】
【
図21】HCC2279(EGFRエクソン19欠失遺伝子変異)細胞のfDNAおよびEGFRエクソン19欠失に特異的なプローブを使用し、fDNAの濃度に応じた該プローブの該fDNAへの結合をUV吸光度を使用して得た結果を示す。これにより、cfDNAの検出可能濃度が同定された。
【0036】
【
図22】H1975(EGFRエクソン20 T790Mおよびエクソン21 L858R遺伝子変異)のfDNAおよびEGFRエクソン20 T790Mに特異的なプローブを使用し、fDNAの濃度に応じた該プローブの該fDNAへの結合をUV吸光度を使用して得た結果を示す。これにより、cfDNAの検出可能濃度が同定された。
【0037】
【
図23】PEI/Ppy NWを使用して、肺癌患者の200μLの血漿から得たcfDNAのバイオアナライザでの分析により得た結果を示す。文献によると、癌関連cfDNAは、166bpの平均サイズを有することが知られる。バイオアナライザデータに示されるとおり、PEI/Ppy NWを使用して肺癌患者の血漿から得たcfDNAは、169bpにピークを有する。
【0038】
【
図24】EGFR遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿から単離したcfDNAを、EGFRエクソン19欠失(Del)またはEGFRエクソン21 L858Rに特異的に結合するプローブと反応させたとき、組織の遺伝子型と同じ色調変化およびUV吸光度が示されることを同定することにより得た結果を示す。
【0039】
【
図25】EGFRエクソン19欠失(Del)、EGFRエクソン20 T790MおよびEGFRエクソン21 L858R遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿から単離したcfDNAを、EGFRエクソン19Del、EGFRエクソン20 T790MまたはEGFRエクソン21 L858Rに特異的なプローブと反応させたとき、組織の遺伝子型と同じ色調変化およびUV吸光度が示されることを同定することにより得た結果を示す。
【0040】
【
図26】KRASエクソン2遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿から、PEI/Ppy NWを使用して、単離したcfDNAを、KRASエクソン2に特異的なプローブと反応させたとき、組織の遺伝子型と同じ色調変化およびUV吸光度が示されることを同定することにより得た結果を示す。
【0041】
【
図27】KRASエクソン2遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿から、PEI/Ppy NWを使用して、単離したcfDNAを、KRASエクソン2に特異的なプローブと反応させたとき、組織の遺伝子型と同じ色調変化およびUV吸光度が示されることを同定することにより得た結果を示す。
【0042】
【
図28】ALK-EML4融合遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿から単離したcfDNAを、ALK-EML4に特異的に結合するプローブと反応させたとき、組織の遺伝子型と同じ色調変化およびUV吸光度が示されることを同定することにより得た結果を示す。
【0043】
【
図29】EGFRエクソン19欠失およびEGFRエクソン20 T790M遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿から単離したcfDNAを、EGFRエクソン19欠失またはEGFRエクソン20 T790Mに特異的に結合する種々のプローブと反応させたとき、組織に一致した色調変化およびUV吸光度が示されることを同定することにより得た結果を示す。しかしながら、この結果によると、3タイプのプローブを使用したにも関わらず、EGFR 21 L858R変異では色調変化が観察されないことが同定された。その結果、遺伝子とプローブの反応は特異的プローブに限定されず、あらゆるプローブが、該プローブが該遺伝子に特異的に結合する限り、変異を有する遺伝子に結合できることが解る。
【0044】
【
図30】EGFR遺伝子変異がない肺癌患者(野生型、WT)の血漿から単離したcfDNAを、それぞれ95℃で1分間および10分間変性させ、次いで、EGFRエクソン19欠失、EGFRエクソン20 T790MまたはEGFRエクソン21 L858Rに対するプローブと反応させて得た結果を示す。EGFR WT患者の血漿から抽出したcfDNAは、95℃で1分間変性させたときどのプローブとも反応を示さず、そして他方で、cfDNAは、95℃で10分間変性させた後全プローブと非特異的に反応することが同定された。
【0045】
【
図31】EGFRエクソン19欠失およびEGFRエクソン20 T790M遺伝子変異を有する肺癌患者および正常対象の血漿から、ナノワイヤーによりcfDNAを補足し、該cfDNAを95℃で0分間変性させ、次いで、EGFR 19欠失、20 T790Mまたは21 L858Rに対するプローブとの反応を同定することにより得た結果を示す。
【0046】
【
図32】EGFRエクソン19欠失およびEGFRエクソン20 T790M遺伝子変異を有する肺癌患者および正常対象の血漿から、ナノワイヤーによりcfDNAを補足し、該cfDNAを95℃で1分間変性させ、次いで、EGFR 19欠失、20 T790Mまたは21 L858Rに対するプローブとの反応を同定することにより得た結果を示す。
【0047】
【
図33】EGFRエクソン19欠失およびEGFRエクソン20 T790M遺伝子変異を有する肺癌患者および正常対象の血漿から、ナノワイヤーによりcfDNAを補足し、該cfDNAを95℃で10分間変性させ、次いで、EGFR 19欠失、20 T790Mまたは21 L858Rに対するプローブとの反応を同定することにより得た結果を示す。
【0048】
【
図34】151名の肺癌患者の血漿からcfDNAを得て、該肺癌患者における遺伝子変異を分析することにより得た表を示す。
【0049】
【
図35】EGFR変異がない(野生型)肺癌患者、EGFRエクソン19欠失を有する肺癌患者およびEGFRエクソン21 L858Rを有する肺癌患者の血漿cfDNAを得て、該cfDNAをEGFRエクソン19 Delに特異的なプローブと混合し、次いでUV分光吸光度(ΔOD、500nm~650nm)値の分析により該肺癌患者における遺伝子変異を同定することにより得た結果を示す。
【0050】
【
図36】EGFRエクソン19欠失を有する肺癌患者の血漿からのcfDNAを得て、該cfDNAをEGFRエクソン19 Delに特異的なプローブと混合し、次いで、遺伝子変異の特異性および感受性を分析することにより得た結果を示す。
【0051】
【
図37】EGFR変異がない(野生型)肺癌患者、EGFRエクソン19欠失を有する肺癌患者およびEGFRエクソン21 L858Rを有する肺癌患者の血漿からcfDNAを得て、それにEGFRエクソン21 L858Rに特異的なプローブを加え、次いで、UV分光吸光度(ΔOD、500nm~650nm)値の分析により患者における遺伝子変異を同定することにより得た結果を示す。
【0052】
【
図38】EGFRエクソン21 L858Rを有する肺癌患者の血漿からcfDNAを得て、それにEGFRエクソン21 L858Rに特異的なプローブを加え、次いで、患者における遺伝子変異の特異性および感受性を分析することにより得た結果を示す。
【0053】
【
図39】EGFRエクソン19欠失遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿から、PEI/Ppy NPを使用して、単離したcfDNAを、EGFRエクソン19 Del(E19)、EGFRエクソン20 T790M(E20)またはEGFRエクソン21 L858R(E21)に特異的なプローブと反応させることにより得た結果を示し、その結果、組織に一致するUV吸光度が観察されることが同定される。
【0054】
【
図40】ポリリシンで修飾したPLL/Ppy NWを使用して、EGFRエクソン20 T790MおよびEGFRエクソン21 L858R遺伝子変異を有するH1975細胞株のfDNAを得て、該fDNAをEGFRエクソン19 Del、EGFRエクソン20 T790MまたはEGFRエクソン21 L858Rに特異的なプローブと反応させ、次いで遺伝子変異を分析することにより得た結果を示す。
【0055】
【
図41】EGFRエクソン19欠失についてCPおよびDPの配列を示す。この試験において、肺癌患者におけるcfDNA遺伝子変異をCP_1およびDPを使用して分析した。ここで、CPは変異部分を含むまたはそれに隣接した配列に特異的に結合するよう設計されたプローブをいい、DPは、変異配列から空間的に離れた部分に特異的に結合するよう設計されたプローブをいう。
【0056】
【
図42】EGFRエクソン20 T790MのCPおよびDPの配列を示す。この試験において、肺癌患者におけるcfDNA遺伝子変異を、CP2およびDPを使用して分析した。
【0057】
【
図43】EGFRエクソン21 L858RのCPおよびDPの配列を示す。この試験において、肺癌患者におけるcfDNA遺伝子変異を、CP2およびDPを使用して分析した。
【0058】
【
図44】EGFRエクソン19欠失遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿からcfDNAを得て、次いで、DPを用いず、
図41~43のEGFRエクソン19 CP_1、エクソン20 CP2およびエクソン21 CP2を使用して遺伝子変異を分析して得た結果を示す。
【0059】
【
図45】EGFRエクソン19欠失を有する肺癌患者の血漿をRNaseおよびDNase処理に付し、PEI/PpyナノワイヤーによりcfDNAを得て、EGFRエクソン19欠失に特異的なプローブを使用して不安定cfDNAを検出することにより得た結果を示す。
【0060】
【
図46】EGFRエクソン20 T790M有する肺癌患者の血漿をRNaseおよびDNase処理に付し、PEI/PpyナノワイヤーによりcfDNAを得て、EGFRエクソン20 T790Mに特異的なプローブを使用して不安定cfDNAを検出することにより得た結果を示す。
【0061】
【
図47】EGFRエクソン19欠失およびEGFRエクソン20 T790M遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿から得たcfDNAをEGFRエクソン19欠失(Del19)、EGFRエクソン20 T790MおよびEGFRエクソン21 L858Rに特異的なプローブと反応させ、HRP/ストレプトアビジンナノ粒子(大量のHRPを含む)をそれに加えて、色調変化およびUV吸光度により検出したcfDNAを同定することにより得た結果を示す。
【0062】
【
図48】
図47と同じEGFRエクソン19欠失およびEGFRエクソン20 T790M遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿から得たcfDNAを、EGFRエクソン19欠失(Del19)、EGFRエクソン20 T790MおよびEGFRエクソン21 L858Rに特異的なプローブと反応させ、次いでHRP/ストレプトアビジン複合体(HRPとストレプトアビジンの1:1での結合により得た複合体)をそれに加え、色調変化およびUV吸光度により検出したcfDNAを同定することにより得た結果を示す。この結果から、HRP/ストレプトアビジンナノ粒子と比較して、HRP/ストレプトアビジン複合体の場合ノイズが生じることが同定される。
【0063】
【
図49】5EGFRエクソン19欠失およびエクソン20 T790M遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿からcfDNAを抽出し、次いで、該cfDNAをEGFRエクソン19 Del、EGFRエクソン20 T790MおよびEGFRエクソン21 L858Rに特異的なプローブおよびHRP/ストレプトアビジンタグ付ナノ粒子(HRP/stタグ付NP)と反応させ、および、EGFRエクソン19 Del、EGFRエクソン20 T790MおよびEGFRエクソン21 L858Rに特異的なプローブおよびHRP/ストレプトアビジン複合体(HRPとストレプトアビジンは互いに1:1で結合している)と反応させることにより得た二つの結果の分析により、癌組織の遺伝子型を同定し、一致を比較することにより得たグラフを示す。
【0064】
【
図50】EGFRエクソン20 T790Mおよび21 L858R遺伝子変異を有する肺癌患者の胸水から得たcfDNAを、HRP/stタグ付NPが既に結合しているEGFRエクソン19欠失(19 Del)、EGFRエクソン20 T790MおよびEGFRエクソン21 L858Rに対するプローブと反応させ、次いで、UV吸光度で遺伝子変異を検出することにより同定することにより得た結果を示す。
【0065】
【
図51】EGFRエクソン20 T790MおよびEGFRエクソン21 L861Q遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿から得たcfDNAを、cfDNAにおける遺伝子変異検出のために、EGFRエクソン19欠失に特異的なプローブ(19 Del)、EGFRエクソン20 T790M、EGFRエクソン21 L858RおよびEGFRエクソンL861QおよびHRP/stタグ付NPと一斉に混合することにより得た結果を示し、その結果、遺伝子変異が癌組織におけると同様EGFRエクソン20 T790MおよびEGFRエクソン21 L861Qにのみ観察されることが、UV吸光度で同定される。
【0066】
【
図52】ALK-EML4融合およびALK点変異(I1171N/T)遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿から得たcfDNAを、cfDNAにおける遺伝子変異検出のために、ALK-EML4融合およびALK点変異(T1151、L1152P、L1152R、C1156Y、I1171N/T)に特異的なプローブおよびHRP/stタグ付NPと一斉に混合することにより得た結果を示し、その結果、癌組織におけると同様ALK-EML4融合およびALK点変異(I1171N/T)遺伝子型が検出されることが同定される。
【0067】
【
図53】BRAF V600E遺伝子変異を有する甲状腺癌患者の血漿から得たcfDNAを、fDNAにおける遺伝子変異検出のために、BRAF V600Eに特異的なプローブおよびHRP/stタグ付NPと一斉に混合することにより得た結果を示し、その結果、患者の遺伝子型と同じBRAF V600E遺伝子変異が検出されることが同定される。
【0068】
【
図54】正常対象の血液から集めたサンプルを種々の温度条件下の変性に付し、次いで、各処理条件の不安定cfDNAを検出することにより得た結果を示す。
【0069】
【
図55】患者の血液から集めたサンプルを種々の温度条件下の変性に付し、次いで、各処理条件の不安定cfDNAを検出することにより得た結果を示す。
【0070】
【
図56】変異体細胞株から得たfDNAを種々の温度条件下の変性に付し、次いで、各処理条件の不安定cfDNAを検出することにより得た結果を示す。
【0071】
【
図57】変異体細胞株から得たfDNAを37℃で30分間DNaseで処理し、次いで、処理条件の不安定cfDNAを検出することにより得た結果を示す。
【0072】
【
図58】変異体細胞株から得たfDNAを37℃で60分間DNaseで処理し、次いで、処理条件の不安定cfDNAを検出することにより得た結果を示す。
【0073】
【
図59】変異体細胞株から得たfDNAを37℃で120分間DNaseで処理し、次いで、処理条件の不安定cfDNAを検出することにより得た結果を示す。
【0074】
【
図60】DNase活性による不安定cfDNAと安定cfDNAの差異を同定するために、不安定cfDNAおよび安定cfDNAを1μlまたは2μlのDNaseで24℃で120分間処理して得た結果を示す。
【0075】
【
図61】DNase活性による不安定cfDNAと安定cfDNAの差異を同定するために、不安定cfDNAおよび安定cfDNAを1μlまたは2μlのDNaseで3℃で120分間処理して得た結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0076】
発明を実施するための最良の形態
<用語の定義>
ここで使用する用語「セルフリーDNA」はcfDNAとも称する。さらに、cfDNAは、癌患者由来の尿、脳脊髄液、血漿、血液または体液などの生物学的サンプルにみられる癌細胞由来DNAである循環腫瘍DNA(ctDNA)でもあり得る。さらに、cfDNAは、尿、脳脊髄液、胸水、腹水、血漿、血液、唾液、痰または体液などの生物学的サンプルに存在し得る。ここで、cfDNAは、80bp~10kbp、100bp~1kbpまたは120bp~500bpのサイズを有し得る。さらに、cfDNAは150bp~200bpのサイズを有し得て、通常165bp~170bpのサイズを有し得る。
【0077】
ここで使用する用語「不安定cfDNA」は、「安定cfDNA」と比較して熱力学的に不安定であるcfDNAをいう。換言すると、不安定cfDNAは、安定cfDNAが変性されるより過酷ではない条件下で変性され得る。不安定cfDNAが産生される理由は、不安定cfDNAが不安定二重螺旋構造を有するからである。
【0078】
ここで使用する用語「不安定二重螺旋構造を有するcfDNA」は、安定な二重螺旋構造を有するcfDNAより低いTm値を有するまたは安定な二重螺旋構造を有するcfDNAが変性しない条件下で変性することにより特徴づけられる。Tmは、二本鎖DNAの50%が一本鎖DNAに変換される融解温度をいう。Tm値は、DNAの長さに比例し、ヌクレオチド配列により異なり得る。ゲノムDNAでは多数のヌクレオチドが互いに水素結合されているため、ゲノムDNAは、92℃~95℃で5分間以上または98℃で2分間以上加熱しなければならない。さらに、ゲノムDNAは、90℃より低温では容易に変性を受けない。安定な二重螺旋構造を有するcfDNAが平均170bpヌクレオチドを有するため、ゲノムDNAに類似するTm値を有し得る。
【0079】
しかしながら、「不安定二重螺旋構造を有するcfDNA」は、安定な二重螺旋構造を有するcfDNAより低いTm値を有する。それ故に、安定な二重螺旋構造を有するcfDNAが、i)1~120分間、室温に静置させる条件;ii)90℃~95℃で1秒間~3分間加熱する条件;iii)75℃~90℃で1秒間~5分間加熱する条件;iv)60℃~75℃で30秒間~60分間加熱する条件;v)25℃~40℃で10~120分間加熱する条件;vi)プロテアーゼで10秒間~30分間処理する条件;およびvii)DNaseで10秒間~30分間処理する条件からなる群から選択される何れかの条件下で変性され、次いで15量体~30量体プローブと結合反応させたとき、安定な二重螺旋構造を有するcfDNAはプローブに結合しない。ここで、「室温」は環境温度をいい、18℃~25℃であり得る。さらに、上記条件に加えて、40℃~65℃で5~80分間加熱する条件がさらに含まれ得る。
【0080】
しかしながら、不安定二重螺旋構造を有するcfDNAを上記i)~vii)の条件の何れかの下での処理に付し、次いで15量体~30量体プローブと結合反応させたとき、該不安定二重螺旋構造を有するcfDNAがプローブと結合することが確認されている。ここで、プローブは15量体~30量体または20量体~25量体であってよく、21量体、22量体、23量体または24量体プローブであってよい。
【0081】
ここで、不安定二重螺旋構造を有するcfDNAは、循環腫瘍DNA(以後ctDNAと称する)であり得る。さらに、不安定二重螺旋構造を有するcfDNAは、正常細胞に存在しない損傷された核酸配列由来のcfDNAであり得る。ここで、正常細胞に存在しない該損傷された核酸配列は、遺伝子の一部の欠失、重複、反転または転座による構造異常を含み得る。さらに、該損傷された核酸配列は、核酸の一部のミスマッチが原因の構造異常を含み得て、核酸の部分配列の変異が原因の一塩基変異(SNV)を有し得る。損傷された核酸配列は、EGFR、KRAS、BRAF、TP53、PIK3CA、ROS1、RET、c-Met、PTEN、RB1、AR、BRCA、KIT、FGFR、IDH、ESR1、HER2、ALK-EML4およびTMPRSS2-ERGからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の変異配列を有し得る。
【0082】
具体的には、正常細胞に存在しない損傷された核酸配列は、1)一本鎖の開裂、2)二本鎖の開裂、3)複製フォーク進行阻害、4)ミスマッチ核酸、5)染色体異常、6)鎖内架橋、7)鎖間架橋、8)外来遺伝子挿入、9)遺伝子の一部の欠失、10)核酸の一部の置換、11)核酸反転、12)チミジン二量体形成、13)脱アミノ化、14)遺伝子重複、15)染色体転座または16)塩基欠乏(AP部位)の何れかにより引き起こされ得る。特に、腫瘍細胞において、二本鎖DNA(dsDNA)はしばしば損傷され、該損傷されたdsDNAは腫瘍細胞に見られる特異的構造を含み得る。特に、損傷された核酸配列は、核酸のミスマッチによるゆらぎ塩基対を含み得る。
【0083】
ここで使用する用語「プローブ」は、標的cfDNAを検出するためのDNAまたはRNAをいう。プローブは、不安定cfDNAに相補的に結合できるように設計された配列を有し得る。ここで使用する用語「cfDNAと相補的配列を有するプローブ」は、標的二重螺旋構造を有し、血漿に存在する、検出するcfDNAと特異的に結合できる核酸配列を有するプローブをいう。
【0084】
ここで、プローブは、2つの方法で産生され得る。一つは、損傷が生じた遺伝子の部分に結合できるように設計された第一プローブ(以後CPと称する)であり、他方は損傷された部分周辺に結合できるように設計された第二プローブ(以後DPと称する)である。DPは、損傷が起きている標的DNA配列または領域から10bp~100bpまたは20bp~50bp離れた位置の配列に特異的に結合するよう設計され得る。
【0085】
本発明において、損傷されたcfDNAが、第一プローブおよび第二プローブを同時に使用したときだけでなく、第一プローブまたは第二プローブを個々に使用したときも効率的に検出され得ることが確認された。さらに、プローブは、マーカーに結合するように、ビオチンなどの物質が結合した形態であり得る。あるいは、プローブは、マーカーに直接またはリンカーを介して、結合し得る。ここで、マーカーはナノ粒子、蛍光色素、蛍光タンパク質または酵素であり得る。さらに、プローブおよびマーカーを同時に加えてよくまたは連続的方法で加えてよい。
【0086】
本発明のある実施態様において、標的cfDNAと相補的に結合できるプローブは、下記癌細胞の各タイプに特異的な配列を含む領域に特異的に結合し得る。例えば、卵巣癌または乳癌に特異的な配列は、BRCA1エクソン7、BRCA1エクソン10、BRCA1エクソン11またはBRCA1エクソン15に存在するSNPであり得る。さらに、胃癌に特異的な配列は、TP53に存在するSNPであり得て、結腸直腸癌に特異的な配列は、MSH2に存在するSNPであり得る。肺癌に特異的な配列は、EGFRに存在するSNPであり得る。さらに、肝臓癌に特異的な配列は、FGFR3に存在するSNPから選択され得る。
【0087】
【0088】
ここで使用する用語「単離生物学的サンプル」は、人体から単離されている、尿、唾液、脳脊髄液、胸水、腹水、血漿、血液、痰または体液のサンプルをいう。単離生物学的サンプルは、人体から単離された液体サンプルをいう。ここで、血漿は、血液から得られ得る。
【0089】
ここで使用する用語「正荷電物質」は、ナノ粒子、ナノワイヤー、網構造またはフィルターの形で使用し得る、物質をいう。しかしながら、正荷電物質の形はそれに限定されない。「正荷電物質」の実施態様は、正荷電ナノワイヤーまたは正荷電膜であり得る。ナノワイヤーは、導電性ポリマーを使用して製造され得る。導電性ポリマーは、ポリ(アセチレン)、ポリ(ピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(パラ-フェニレン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリ(パラ-フェニレンビニレン)およびポリアニリンからなる群から選択される何れかであり得る。製造方法によって、ナノワイヤーの長さおよび直径を適当に調節し得る。ある実施態様において、ナノワイヤーは、200nmの直径および18μmの長さを有し得る。さらに、ナノワイヤーを、製造中ビオチンを含むようにし得る。
【0090】
ナノワイヤーの表面を、カチオン性ポリマーで修飾し得る。カチオン性ポリマーのタイプは限定されない。カチオン性ポリマーの実施態様はポリエチレンイミン(PEI)またはポリリシン(PLL)であり得る。さらに、カチオン性ポリマーは、カチオン性分岐ポリマーポリエチレンイミンであり得る。このようなカチオン性ポリマーで修飾されたナノワイヤーは、正荷電表面を有し得る。
【0091】
ある実施態様において、正荷電ナノワイヤーは、低濃度でもcfDNAを上手くかつ効率的に捕捉し得る。特に、正荷電ナノワイヤーは、DNAを含む標的分子に結合するための大きな表面積およびDNAとの相互作用を促進するための移動性の改善など、その特徴によりcfDNAを効率的に捕捉できる。
【0092】
ここで使用する用語「マーカー」は、不安定二重螺旋構造を有するcfDNAを効率的に検出するための物質をいい、特に量子ドット、ある基質を分解し、発色反応を引き起こす物質および特定波長光で照射したとき発光を引き起こす物質を含み得る。具体的には、マーカーは蛍光タンパク質であり、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)または青緑色蛍光タンパク質(CFP)であり得る。あるいは、マーカーは、ABTS、OPD、AmplexRed、DAB、AEC、TMB、ホモバニリン酸およびルミノールからなる群から選択される何れかの基質を着色物質に変換できる、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)などの物質であり得る。
【0093】
マーカーは、さらに、プローブに結合できる物質を含み得る。具体的には、ビオチンがプローブに結合しているとき、マーカーは、さらに、アビジン、ストレプトアビジンまたはこれらの組み合わせからなる群から選択される何れかを含み得る。ある実施態様において、このようなマーカーを、ストレプトアビジンおよびHRPが結合したナノ粒子の形で使用でき、ナノ粒子は導電性ポリマーおよびヒアルロン酸からなる。ここで、導電性ポリマーは上記のとおりであり、好ましくはポリピロールであり得る。他の実施態様において、マーカーを、ストレプトアビジンおよび蛍光タンパク質が結合したナノ粒子の形で使用でき、ナノ粒子は導電性ポリマーおよびヒアルロン酸からなる。
【0094】
<不安定cfDNAを検出する方法>
本発明のある態様において、不安定cfDNAとマーカーが結合しているプローブを混合する工程を含む、サンプルから不安定セルフリーDNAを増幅せずに検出する方法が提供される。
【0095】
このような不安定cfDNAは腫瘍由来の循環腫瘍DNA(ctDNA)であり得る。ここで、ctDNAは、上記のとおり損傷遺伝子配列を有し得る。さらに、ctDNAは、発現が高度に活性な遺伝子から単離され得る。ここで、サンプルは生物学的サンプルであってよく、人体から単離されたサンプルであり得る。具体的には、サンプルは尿、脳脊髄液、血漿、血液、胸水、腹水、唾液、痰または体液であり得る。
【0096】
それ故に、不安定cfDNAは、次の条件の何れかの下でサンプルを処理する工程を介して、プローブとの反応性の点で安定と区別され得る。具体的には、処理は、i)1~120分間、室温に静置させる条件;ii)90℃~95℃で1秒間~3分間加熱する条件;iii)75℃~90℃で1秒間~5分間加熱する条件;iv)60℃~75℃で30秒間~30分間加熱する条件;v)25℃~40℃で10~120分間加熱する条件;vi)プロテアーゼで1~30分間処理する条件;およびvii)DNaseで1~30分間処理する条件から選択される何れかの条件下で実施され得る。プローブは15量体~30量体ヌクレオチドまたは20量体~25量体ヌクレオチドを含み得る。ここで、プローブは、不安定cfDNAの遺伝子配列と相補的に結合できるように設計され得る。
【0097】
安定cfDNAを上記条件の何れかの下で処理したとき、安定cfDNAは、その中で形成された強い二本鎖により変性せず、プローブと相補的に結合しない。しかしながら、不安定cfDNAは、上記条件の何れかの下で処理したとき、プローブに結合し得る。このような不安定性は、cfDNAの一部ヌクレオチドが相補的結合を形成せきず、故に、cfDNAの二重螺旋構造が変わっているとの事実による。
【0098】
本発明の他の態様において、サンプルから不安定二重螺旋構造を有するcfDNAを増幅せずに検出する方法が提供される。ここで、方法は、a)cfDNAを含むサンプルと正荷電物質を混合する工程;b)該cfDNAが結合している正荷電物質を単離する工程;c)該混合物とプローブおよびマーカーを混合する工程;d)該cfDNAと結合していないプローブおよびマーカーの除去;およびe)マーカーの検出を含む。
【0099】
具体的には、方法は、cfDNAを含むサンプルと正荷電物質を混合する工程を含み得る。
【0100】
サンプルは上記のとおり生物学的サンプルであり得る。その実施態様は血漿または尿であり得る。血漿または尿において、正常二重螺旋構造を有するcfDNAおよび不安定二重螺旋構造を有するcfDNAが共に存在し得る。さらに、正荷電物質は、特に正荷電ナノワイヤーであり得る。正荷電ナノワイヤーは上記のとおりである。
【0101】
上記工程は、特に下記順番でかつ下記条件下で実施し得る。まず、患者の血漿、尿、唾液、痰などを受領した直後、4℃で10分間、3,000×gで遠心分離を実施する。その後、患者の血漿、尿、唾液、痰などを、DPBSで一定比率まで希釈する。次いで、血漿の場合、30μlの血漿を120μlの蒸留水(DW)と混合し、スピンカラム(タイプGまたはタイプQ)に入れる。ポリエチレンイミンで表面修飾したポリピロール(PEI/Ppy)ナノワイヤー(20μl)をそれに加え、サーモミキサーを使用して、室温で20分間、1,200rpmの速度で混合を実施する。
【0102】
次に、方法は、該cfDNAが結合している正荷電物質を単離する工程を含み得る。
【0103】
正荷電物質を単離する方法は、遠心分離または真空など陰圧の適用により実施し得る。cfDNAは正荷電物質に結合する。故に、正荷電物質と混合したサンプルをスピンカラムまたは真空カラムに入れ、遠心分離を実施するかまたは陰圧を適用したとき、ナノワイヤーなどの正荷電物質はカラムのフィルターを通過せず、一方、生物学的サンプルの他の成分はフィルターを通過する。それ故に、cfDNAが結合している正荷電物質を、遠心分離または減圧などの方法により単離し得る。さらに、こうして単離したナノワイヤーから不純物を除去するために、洗浄工程を1~3回さらに実施してよい。洗浄について、慣用法が適切に使用され得る。
【0104】
上記工程は、特に下記順番でかつ下記条件下で実施し得る。スピンカラムを、減圧を適用するデバイスにマウントし、次いで550mBarで吸引を実施する。洗浄について、400μlの1×DPBSをそれに加え、再び吸引を実施する。同じ過程をさらに1回繰り返してよい。
【0105】
ある実施態様において、温度処理を実施するとき、吸引が完了したスピンカラムを、95℃に予熱したヒートブロックに入れ、95℃で1分間インキュベートし、次いで直ぐにそこから取り出す。温度変性工程を必要としない条件下のサンプルは、このような過程を経なくてよい。
【0106】
次に、方法は該混合物とプローブおよびマーカーを混合する工程を含み得る。
【0107】
プローブは、上記のとおり、15量体~30量体ヌクレオチドまたは20量体~25量体ヌクレオチドからなり得る。プローブの配列を、不安定二重螺旋構造を有する検出すべきcfDNAと相補的に結合できるように設計し得る。特に、不安定二重螺旋構造を有するcfDNAは腫瘍由来ctDNAであり得る。さらに、不安定二重螺旋構造を有するcfDNAは、癌バイオマーカーとして知られる遺伝子と相補的に結合できるように設計し得る。
【0108】
さらに、マーカーは、特異的条件下で検出できる蛍光タンパク質またはHRPなどの物質であり得る。ここで、マーカーは、プローブに結合できる物質を含み得る。具体的には、ビオチンがマーカーに結合したとき、アビジンまたはストレプトアビジンが該マーカーに結合し得る。ある実施態様において、検出感度を上げるために、マーカーは、数HRP分子と数ストレプトアビジン分子が凝集したナノ粒子を有し得る。
【0109】
上記工程は、特に下記順番でかつ下記条件下で実施し得る。各実験に適するプローブ(200μl)およびHRP/STRナノ粒子の溶液(200μl)をそれぞれスピンカラムに入れる。室温で30分間、850rpm~1,000rpmの速度で混合を実施する。
【0110】
次に、方法は、該cfDNAと結合していないプローブおよびマーカーを除去する工程を含み得る。
【0111】
これは、cfDNAに結合していないプローブを除去する工程である。15量体~30量体プローブも負に帯電しており、正荷電ナノワイヤーに結合し得る。それ故に、混合反応完了後、残存プローブおよびマーカーを反応溶液から除かなければならない。ここで、プローブおよびマーカーを遠心分離または陰圧の使用により除去し得る。ここで、cfDNAは、短鎖プローブより強く正荷電物質、具体的には正荷電ナノワイヤーに結合していなければならない。プローブおよびマーカーを除去する工程において、cfDNAは正荷電物質に結合し、故に、除去されない。
【0112】
上記工程の実施態様は、特に下記順番で実施し得る。上記工程実施後、スピンカラムに陰圧を適用し、吸引を実施する。次いで、400μlの1×DPBSをそれに加え、再び吸引を実施する。同じ過程をさらに1回繰り返してよい。
【0113】
最後に、方法はマーカーを検出する工程を含み得る。
【0114】
マーカーを検出する方法は、使用するマーカーにより種々に実施され得る。マーカーの検出は、色調変化、UV吸光度変化、蛍光応答変化または電気化学的変化により測定され得る。例えば、HRPがマーカーとして使用されるとき、発色反応の観察によりマーカーが検出され得る。さらに、マーカーがGFPなどの蛍光タンパク質であるとき、マーカーの存在または非存在を、特定波長の光でマーカーを照射し、次いで検出された光を観察することにより検出し得る。
【0115】
上記工程の実施態様は、特に下記順番で実施し得る。スピンカラムに200μlの酢酸ナトリウム緩衝液(0.2M、pH7.0)、50μlのTMB(10mM)および50μlのH2O2(0.1M)を逐次的に加える。次いで、3分間インキュベーションを実施する。その後、3,500rpm~5,000rpmの速度で30秒間の遠心分離を実施する。コレクションチューブに集めた溶液を、ウェルあたり200μlで96ウェルに移し、次いで500nm~850nm波長範囲の吸光度をUV/VIS分光光度計を使用して測定する。
【0116】
さらに、方法は、正常二重螺旋構造を有するcfDNAと不安定二重螺旋構造を有するcfDNAのプローブとの反応性の差異を増強するためのさらなる処理過程をさらに含み得る。さらなる処理過程は、サンプルを得た後に行っても、cfDNAを単離した後に行ってもよい。
【0117】
さらに、工程c)の前に、方法は、サンプルまたは正荷電物質に結合したcfDNAを、i)1~10分間、室温に静置させる条件;ii)90℃~95℃で1秒間~1分間加熱する条件;iii)75℃~90℃で10秒間~3分間加熱する条件;iv)60℃~75℃で1~30分間加熱する条件;v)25℃~40℃で5~60分間加熱する条件;vi)プロテアーゼで1~10分間処理する条件;およびvii)DNase Iで1~10分間処理する条件からなる群から選択される何れかの条件下、変性させることをさらに含み得る。このような変性過程は、安定cfDNAを変性させず、不安定cfDNAをより不安定に変性させ、よって、不安定cfDNAがプローブにより容易に結合し得る。上記条件下での変性を、サンプルを得た後実施し得る。さらに、該変性を、正荷電物質に結合したcfDNAを得た後実施し得る。さらに、温度、プロテアーゼおよびDNaseでの処理時間は、安定cfDNAが変性しない限り、適切に調節され得る。
【0118】
本発明のある実施態様において、検出すべき不安定二重螺旋構造を有するcfDNAが、別の変性工程を必要とせず、標的プローブを使用して検出され得ることが同定されている(
図31)。さらに、安定な二重螺旋構造を有するcfDNAおよび不安定二重螺旋構造を有するcfDNAが、このようなcfDNAを温度処理過程に付したときでも、同じプローブになお異なる結合反応を示すことが同定されている(
図32および33)。
【0119】
<不安定cfDNAの検出を用いる診断のための情報を提供する方法>
本発明のさらに他の態様において、サンプルから不安定二重螺旋構造を有するcfDNAを増幅せずに検出することにより癌および感染性疾患の診断または予測のための情報を提供する方法が提供される。ここで、方法は、a)cfDNAを含むサンプルと正荷電物質の混合;b)該cfDNAが結合している正荷電物質の単離;c)該混合物とプローブおよびマーカーの混合;d)該cfDNAと結合していないプローブおよびマーカーの除去;e)該マーカーの検出;およびf)該マーカーが検出されたとき、不安定二重螺旋構造を有するcfDNAに対応する遺伝子と関連する癌または感染性疾患があることを決定する工程を含む。具体的には、不安定cfDNAを検出する方法は上記のとおりである。
【0120】
本発明において使用する癌の実施態様は、膀胱癌、骨癌、血液癌、乳癌、黒色腫、甲状腺癌、副甲状腺癌、骨髄癌、直腸癌、咽頭癌、喉頭癌、肺癌、食道癌、膵臓癌、結腸直腸癌、胃癌、舌癌、皮膚癌、脳腫瘍、子宮癌、頭頸部癌、胆嚢癌、口腔癌、直腸癌、肛門周囲癌、中枢神経系腫瘍、肝臓癌および結腸直腸癌からなる群から選択される何れかであり得る。特に、癌は胃癌、結腸直腸癌、肝臓癌、肺癌または乳癌であり得る。
【0121】
ある実施態様において、上記癌細胞に特異的に存在する配列は、癌細胞に存在するSNPであり得る。胃癌の場合、該癌に特異的に存在する配列の態様は、腫瘍抑制遺伝子として知られるp53およびPTENにおける変異であり得る。さらに、結腸直腸癌の場合、その態様は、APCおよびMSH2遺伝子における変異であり得る。さらに、肝臓癌の場合、B型肝炎ウイルス(HBV)またはC型肝炎ウイルス(HCV)の感染がその主因であるため、HBVまたはHCV核酸が標的であり得る。さらに、肺癌の場合、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)遺伝子の変異が標的であり得る;および乳癌の場合、BRCA1/2遺伝子における変異が腫瘍な標的であり得る。さらに、子宮頸癌の場合、ヒトパピローマウイルスDNA(HPV DNA)由来cfDNAが標的であり得る。
【0122】
不安定dsDNAの他の例示的態様は、EGFR、KRAS、BRAF、TP53、PIK3CA、ROS1、RET、c-Met、PTEN、RB1、AR、BRCA、KIT、FGFR、IDH、ESR1、HER2、ALK-EML4およびTMPRSS2-ERGからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子変異であり得る。
【0123】
<不安定cfDNAを検出するためのデバイス>
本発明のなおさらに他の態様において、a)cfDNAを含むサンプルと正荷電ナノワイヤーの混合のための混合セクション;b)cfDNAが結合したナノワイヤー以外のサンプルを除去する取得セクション;c)cfDNAが結合したナノワイヤーに、該cfDNAが相補的に結合できるビオチンが結合されたプローブならびにストレプトアビジンおよびマーカーを含むナノ粒子を加えるための、反応セクション;d)該マーカーの検出のための検出セクション;およびe)マーカーの検出により、該サンプルが、検出プローブと相補的配列を有し、室温で不安定である二重螺旋構造を有するcfDNAを含むことを決定するための情報処理セクションを含む、室温で不安定である二重螺旋構造を有するcfDNAを検出するためのデバイスが提供される。
【0124】
<不安定cfDNAの検出を使用する診断デバイス>
本発明のなおさらに他の態様において、サンプルから不安定二重螺旋構造を有するセルフリーDNAを増幅せずに検出することによる癌または感染性疾患を診断または予測する情報を提供するためのデバイスが提供される。ここで、デバイスは、a)cfDNAを含むサンプルと正荷電ナノワイヤーの混合のための混合セクション;b)cfDNAが結合したナノワイヤー以外のサンプルを除去する取得セクション;c)cfDNAが結合したナノワイヤーに、該cfDNAが相補的に結合できるビオチンが結合されたプローブならびにストレプトアビジンおよびマーカーを含むナノ粒子を加えるための、反応セクション;d)該マーカーの検出のための検出セクション;およびe)マーカーの検出により、該サンプルが、検出プローブと相補的配列を有し、室温で不安定である二重螺旋構造を有するcfDNAを含むことを決定するための情報処理セクションを含む。
【0125】
本発明は、安定cfDNAと不安定cfDNAの、その熱力学的安定性の差異によるプローブとの反応性の差異に基づく。ここで、正荷電ナノワイヤーはゲノムDNAおよびcfDNAに結合し得る。しかしながら、ゲノムDNAは、結合力およびサイズの差異により、洗浄によって正荷電ナノワイヤーから分離される。さらに、ある実施態様において、ナノワイヤーは、修飾されるときビオチンを含むように製造され得る。しかしながら、カチオン性ポリマーであるポリエチレンイミンでナノワイヤーの表面を修飾する過程において、ナノワイヤーに含まれ、ナノワイヤーの表面に露出されるビオチンはカチオン性ポリマーと結合する。さらに、ナノワイヤーはカチオン性ポリマーで被覆され、故に、ストレプトアビジンを含むマーカーはナノワイヤーに結合しない。さらに、プローブもまた負に帯電しているため、正に荷電されたナノワイヤーに結合し得る。しかしながら、プローブはcfDNAより結合力が弱いため、洗浄過程中に除去されることが判明した。
【0126】
さらに、安定cfDNAおよび不安定cfDNAを、損傷されたDNA配列を含む領域に特異的に結合できるプローブ(CP)および損傷されたDNA配列を含まない周辺領域に特異的に結合できるプローブ(DP)で処理した。その結果、不安定二重螺旋構造を有するcfDNAと安定な二重螺旋構造を有するcfDNAの間の、プローブへの結合反応の差を同定することができた。これらの結果から、不安定二重螺旋構造を有するcfDNAが損傷されたDNA配列に特異的なプローブだけでなく、その周辺DNA配列に特異的に結合できるプローブとも結合できることが判明した。さらに、不安定cfDNAがこれらプローブの一つのみで検出できることが確認された。
【0127】
次に、本発明は、以下の実施例により、より詳細に説明される。しかしながら、以下の実施例は単に本発明を説明することを意図し、本発明の範囲はそれのみによって制限されるものではない。
【実施例】
【0128】
I. 実施方法ならびにナノワイヤー、マーカーおよびプローブを製造する方法
実施方法1. 不安定cfDNAを検出する方法
工程1:サンプルの調製およびナノワイヤーの付加
患者の血漿、尿、唾液、痰などを受領直後、4℃で10分間、3,000×gでの遠心分離を実施した。患者の血漿、尿、唾液、痰などを、DPBSで一定比に希釈した。血漿の場合、30μlの血漿を120μlのDWと混合し、スピンカラム(タイプGまたはタイプQ)に入れた。PEI/Ppyナノワイヤー(20μl)をそれに加え、室温で20分間、1,200rpmの速度でサーモミキサーを使用して、混合を実施した。
【0129】
工程2:真空/洗浄/温度変性
スピンカラムを真空吸引デバイスにマウントし、次いで550mBarで吸引を実施した。400μlの1×DPBSをそれに加え、吸引を再び実施した。同じ過程をもう1回繰り返した。本2工程過程により獲得されたナノワイヤー-DNA複合体のみをスピンカラムにトラップした。温度変性が必要であるならば、吸引が完了しているスピンカラムを95℃に予熱した加熱ブロックに入れ、95℃で1分間インキュベートし、次いで直ぐにそこから取り出した。温度変性工程を必要としないサンプルは、本過程を経なかった。
【0130】
工程3:プローブおよびHRP/STR NPの付加
各実験に適するプローブ(200μl)およびHRP/STR NPの溶液(200μl)を、それぞれスピンカラムに入れた。室温で30分間、850rpm~1,000rpmの速度でサーモミキサーを使用して、混合を実施した。スピンカラムを真空デバイスにマウントし、次いで吸引を実施した。400μlの1×DPBSをそれに加え、吸引を再び実施した。同じ過程をもう1回繰り返した。
【0131】
工程4:遺伝子変異を検出するためのTMB応答
コレクションチューブを新しいものに代えた後、200μlの酢酸ナトリウム緩衝液(0.2M、pH7.0)および50μlのH2O2(0.1M)を、シリンジポンプを使用してスピンカラムに連続的に加えた。次いで、3分間インキュベーションを実施した。インキュベーションの最後に、スピンカラムを、3,500rpm~5,000rpmの速度で30秒間遠心分離した。コレクションチューブに集めた溶液をウェルあたり200μlで96ウェルに移し、次いで500nm~850nm波長範囲の吸光度をUV/VIS分光光度計を使用して測定した。
【0132】
製造例1. 正荷電ナノワイヤーの製造
図1に示すとおり、カチオン性ポリマーとしてポリエチレンイミン(PEI)がコンジュゲートした表面を有するナノワイヤーを製造した。陽極酸化アルミニウム(AAO)の片側を金(Au)層(約150nmの厚さを有する)で、5×10
-3mbarおよび50mAで600秒間、Q150Tモジュールコーティングシステム(Quorum Technologies, UK)を使用して被覆した。全電気化学的操作において、白金ワイヤ対電極およびAg/AgCl(3.0M NaClタイプ)基準電極を備えたポテンショスタット/ガルバノスタット(BioLogic SP-150)を使用して、金(Au)被覆AAO鋳型で測定を実施した。
表面がカチオン性ポリマーで処理されたナノワイヤー(PEI/Ppy NW)の製造のために、電気化学的沈着を、AAO鋳型の孔にクロノアンペロメトリーを7分間、1.0V(対Ag/AgCl)で、0.01M ポリ(4-スチレンスルホン酸)および1mg/mlのビオチンを含む0.01M ピロール溶液と共に適用することにより実施した。
得られたAAO鋳型を蒸留水で数回洗浄し、2M 水酸化ナトリウム(NaOH)溶液に3時間浸し、次いで超音波処理のためにBioruptor UCD-200(Diagenode)に入れ、ビオチン分子をドープした自立型Ppy NWを得た。次いで、得られたナノワイヤーに、30mM N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N-エチルカルボジイミドヒドロクロライド(EDC)および6mM N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を加え、カルボン酸(-COOH)基を活性化した。続いて、PEI溶液を加えた後、室温で1時間反応させ、水での洗浄を実施した。ポリエチレンイミンがコンジュゲートした表面を有するナノ構造体(PEI/Ppy NW)を脱イオン水に分散させ、使用するまで室温に維持した。
この製造方法で、AAO鋳型の選択的溶解後、各ポリピロール(Ppy)ナノワイヤーはAAO鋳型から遊離され、カチオン性分岐ポリエチレンイミン(PEI)(25kDa)をビオチン-ストレプトアビジン相互作用によりナノワイヤーにさらにコンジュゲートさせた。
【0133】
製造例2. 表面がカチオン性ポリマーで処理されたナノ粒子(PEI/Ppy NP)の製造
ポリエチレンイミンがコンジュゲートした表面を有するナノ粒子(PEI/Ppy NP)を製造するために、0.2gのポリビニルピロリドン(PVP)を、12.5mlの3回蒸留の蒸留水に加え、30分間撹拌した。次いで、65μlのピロールをそれに加え、次いで得られた溶液を10分間さらに撹拌した。次いで、0.75g/ml濃度の0.5mlのFeCl
3溶液をそれに加え、10分間反応させた。その後、20mlの水性ヒアルロン酸溶液(400mg/20ml)をそれに加え、得られた溶液を3時間撹拌した。
50,000MWCO孔径を有する膜を使用する透析を、3回蒸留の蒸留水に対して2日間実施した。1,200rpmで3分間遠心分離を実施して、大型粒子凝集物を除き、次いで残存液を凍結乾燥した。200μgのPpy-HA-NPを、1mlの3回蒸留の蒸留水に加えた。次いで、100mM EDC/50mM NHS溶液をそれに加え、45分間反応させて、ヒアルロン酸のカルボキシル基を活性化させた。15,000rpmで10分間遠心分離を実施して上清を除去し、その間、洗浄を2回実施した。
続いて、100mg/mlのPEI溶液(溶媒:0.2M 重炭酸ナトリウム)をそれに加え、一夜、4℃で反応させた。次いで、15,000rpmで10分間遠心分離を実施して上清を除去し、次いで沈殿物を3回蒸留の蒸留水に維持した。ポリエチレンイミンがコンジュゲートした表面を有するナノ粒子(PEI/Ppy NP)の形を、走査型電子顕微鏡を使用して観察した。
図6Aに示すとおり、PEIがコンジュゲートした平均50nmのナノ粒子(NP)の形状を、走査型電子顕微鏡画像(200μmのスケールバー)で確認した。
【0134】
製造例3. HRPおよびストレプトアビジンで標識したポリピロールナノ粒子の製造
HRPおよびストレプトアビジンを含むナノ粒子の製造のために、0.5gのポリビニルピロリドン(PVP)を12.5mlの3回蒸留の蒸留水に加え、30分間撹拌した。次いで、65μlのピロールをそれに加え、それを10分間さらに撹拌した。その後、0.75g/ml濃度の0.5mlのFeCl
3溶液をそれに加え、3時間反応させた。次いで、20mlの水性ヒアルロン酸溶液(400mg/20ml)をそれに加え、それを3時間撹拌した。
50,000MWCO孔径を有する膜を使用する透析を、3回蒸留の蒸留水に対して2日間実施した。1,200rpmで3分間遠心分離を実施して、大型粒子凝集物を除き、次いでそれを凍結乾燥した。ポリピロールおよびヒアルロン酸を含む200μgのPpy-HA-NPを1mlの3回蒸留の蒸留水に加えた。次いで、100mM EDC/50mM NHS溶液をそれに加え、45分間反応させて、ヒアルロン酸のカルボキシル基を活性化した。15,000rpmで10分間遠心分離を実施して上清を除去し、その間洗浄を2回実施した。1mgのHRPおよび1mgのストレプトアビジンをPpy-HA-NPに加え、4℃の温度で混合した。続いて、15,000rpmで10分間遠心分離を実施して上清を除去し、次いでそれを3回蒸留の蒸留水に維持した。HRPおよびストレプトアビジンがコンジュゲートした表面を有するナノ粒子(HRP/stタグ付NP)の形を、走査型電子顕微鏡を使用して観察した(
図4)。
【0135】
製造例4. プローブの製造
不安定二重螺旋構造を有するcfDNAを検出するためにプローブを製造した。プローブを、検出するcfDNAに応じて種々に製造した。ここで、プローブを、ビオチンが結合した形で製造した。プローブを2種類、すなわち、不安定二重螺旋構造を引き起こす損傷されたDNAを含む領域と相補的に結合する第一プローブ(以後CPと称する)および損傷されたDNAの周辺領域と相補的に結合する第二プローブ(以後DPと称する)を製造した。
【0136】
II. 2つのプローブを使用するcfDNAの検出
実施例1. 尿に存在するHPV由来cfDNAの分析
セルフリーHPV DNAを尿サンプルから単離するために、製造例1で製造した表面がカチオン性ポリマーで処理されたナノワイヤー(PEI/Ppy NW)10μg/mlを、HPV陽性患者からの尿200μlに加え、室温で30分間混合を実施した。単離cfDNAを95℃で1分間変性させた。次いで、ビオチンが末端に結合した第一プローブ(CP)および第二プローブ(DP)を、1pMでそれに加え、37℃で1時間反応させた。次いで、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)およびストレプトアビジンタグ付ポリピロールナノ粒子(以後HRP/stタグ付NPと称する)をサンプルに加え、37℃で30分間インキュベーションを実施した。
続いて、HPV由来cfDNAに、25μlの10mM 3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)、25μlの0.1M H
2O
2および200μlの0.2M 酢酸ナトリウム三水和物緩衝液(pH5.0)を加えた。DNAサンプルと共に、暗所で室温で3分間反応させた。HPV DNA濃度と吸光度の相関を同定するために、UV-Vis検出をDU 730 UV-Vis分光光度計(Beckman Coulter, USA)を使用して、652nm波長で実施した。
その結果、比色シグナルが目視できるような程度に比色シグナルを増幅することにより、結果を同定することが可能であった。HPV検出用プローブ配列を下表2に示す。
【表2】
【0137】
さらに、HPV陽性子宮頸癌患者(HPV16(+)およびHPV18(+))およびHPV陰性健常対照(HPV-)の尿サンプルを評価するため、無PCR比色アッセイを実施した。陰性対照として、PBSを使用した。その結果、
図12に示すとおり、ナノワイヤーを使用して単離した標的HPV DNAをCPおよびDPと混合し、HRP/stタグ付NPをそれに加えた。次いで、色調の変化を観察した。単離cfDNAの分析のために、変性を95℃で1分間実施した。
計24のHPV陽性およびHPV陰性尿サンプルを採取し、試験した。その結果、HPV陽性子宮頸癌患者(HPV16(+)およびHPV18(+))およびHPV陰性健常対照(HPV-)の尿から単離したcfDNAの間で、吸光度値が異なることが確認された(
図13)。ここで、HPV16またはHPV18に特異的に結合するプローブを使用し、単離cfDNAの分析のために、変性を95℃で1分間実施した。
さらに、EGFR 19およびEGFR 21などの非HPVプローブを使用したとき反応は観察されず、色調変化およびUV吸光度変化が標的HPVとその相補的プローブの間のタイプ特異的結合の結果として生じることが判明した(
図14)。ここで、単離cfDNAの分析のために、変性を95℃で1分間実施した。
【0138】
実施例2. 肺癌細胞株のDNA分析によるEGFR遺伝子変異の確認
実施例2.1. ナノワイヤーを用いて得ることができるcfDNAのサイズの確認
低範囲(10bp~100bp)、中範囲(100bp~2kb)および高範囲(3.5kb~21kb)DNAラダーを正常対象の血漿に加え、次いで捕捉効率をナノワイヤー(PEI/Ppy NW)を使用して確認した。ナノ構造体が小型DNA捕捉に効率的であることが確認された(
図15)。
ナノワイヤーを使用して、H1975(EGFRエクソン20 T790M、21 L858R遺伝子変異を有する細胞株)、HCC2279(EGFRエクソン19欠失遺伝子変異を有する細胞株)およびA549細胞株(EGFRエクソン遺伝子変異がない細胞株)から遺伝子を得た。次いで、超音波処理に付されていないゲノムDNA(gDNA)および超音波処理に付された断片化DNA(fDNA)を使用して、ナノ構造体捕捉効率を比較した。その結果、ナノ構造体を使用したとき、gDNAよりfDNAで高い捕捉効率が観察されることが確認された(
図16および17)。
【0139】
実施例2.2. 不安定cfDNAの分析を用いるEGFR変異の検出
無PCR比色アッセイを実施して、EGFRエクソン20、21陽性H1975細胞株、EGFRエクソン19陽性HCC2279細胞株およびEGFR遺伝子変異がないA549細胞株からナノ構造体を使用してgDNAおよびfDNAを単離した。その後、EGFRエクソン19、20および21に対するプローブをそれに加え、混合を実施した。次いで、HRP/stタグ付NPをそれに加え、色調変化を観察した。その結果、gDNAと比較して、ナノ構造体、すなわち、fDNAが小型DNA捕捉にはるかに有効であり、明確な色調変化およびUV-Visスペクトル変化があることを確認することが可能であった(
図18および19)。
【0140】
実施例2.3. 蛍光色素を使用するcfFNAの検出
遺伝子変異が標的プローブを使用して肺癌患者の血漿サンプルから検出され得るかを調べるるために、このような可能性を蛍光色素を使用して試験した。H1975(EGFRエクソン20 T790M、21 L858R遺伝子変異を有する細胞株)、HCC2279(EGFRエクソン19欠失遺伝子変異を有する細胞株)およびA549細胞株(EGFRエクソン遺伝子変異を有しない細胞株)を超音波処理に付し、次いで獲得したDNA(fDNA)をナノワイヤーを用いて捕捉した。次いで、fDNAを95℃で1分間変性させ、次いでEGFR19、20および21に特異的なプローブと混合した。細胞株の遺伝子変異を、該プローブに結合する蛍光色素(Alexa488)を使用して確認した。
その結果、A549細胞株で、EGFR 19および21に対するプローブと反応させたとき、蛍光は観察されなかった。しかしながら、H1975およびHCC2279において、EGFR 19および20に対するプローブに関して蛍光が検出可能であった(
図20)。
【0141】
実施例2.4. インビトロでのcfDNAの分析を用いるEGFR遺伝子変異の検出限界(LOD)の同定
H1975(EGFRエクソン20 T790M、21 L858R遺伝子変異を有する細胞株)およびHCC2279(EGFRエクソン19欠失遺伝子変異を有する細胞株)を超音波処理に付し、次いで種々の濃度(fDNA;1ag/ml~100ng/ml)の獲得した断片化DNAを健常ヒト血漿(200μl)に加えた。次いで、fDNAをナノワイヤーを用いて捕捉した。その後、変性を95℃で1分間実施し、次いで検出限界(LOD)をEGFRエクソン19 DelおよびEGFRエクソン20 T790MおよびHRP/stタグ付NPに特異的なプローブを使用して確認した。その結果、3倍のシグナル対ノイズ比を適用したとき、HCC2279細胞株のfDNAは10ag/mlまで検出可能であり、H1975細胞株のfDNAは100ag/mlまで検出可能であった(
図21および22)。
【0142】
実施例3. 血漿または脳脊髄液サンプルに存在するcfDNAの分析を用いるEGFR、KRASおよびALK-EML4遺伝子の変異の確認:肺癌患者
実施例3.1. 不安定cfDNAの分析を用いるEGFR遺伝子の変異の確認
ある態様において、ナノ構造体を使用して癌患者の体液サンプルからcfDNAを単離し、プローブへのハイブリダイゼーションおよびその後のHRP/stタグ付ナノ粒子への結合を用いて遺伝子変異を検出するのに、計60分かかった(
図6)。
血漿または脳脊髄液サンプルからcfDNAを単離するために、EGFR陽性患者の血漿200μlと5μg/mlのPEI/Ppy NWを室温で30分間混合して、患者の血漿からcfDNAを抽出した。200μlの肺癌患者の血漿からPEI/Ppy NWを使用して抽出したcfDNAのサイズをバイオアナライザーにより分析した(
図23)。一般に、癌関連cfDNAが1ー実験でPEI/Ppy NWを使用して肺癌患者の血漿からcfDNAを抽出した結果、169bpでピークが観察されることが確認された。
続いて、ナノ構造体に捕捉されたDNAを95℃で1分間変性させ、ビオチン結合CPおよびビオチン結合DPを1pMでそれに加え、37℃で1時間反応させた。次いで、HRPおよびストレプトアビジンタグ付ポリピロールナノ粒子(HRP/stタグ付NP)をサンプルに加え、37℃で30分間反応させた。
その後、反応溶液に25μlの10mM TMB、25μlの0.1M H
2O
2および200μlの0.2M 酢酸ナトリウム三水和物緩衝液(pH5.0)を加えた。次いで、光を遮断し、室温で3分間反応させた。その後、UV-Vis検出を、DU 730 UV-Vis分光光度計(Beckman Coulter, USA)を使用する652nmの波長で実施した。
【0143】
TMBの酸化反応による色調の差異が目視により観察された。EGFRエクソン19欠失、20 T790Mおよび21 L858Rを有する変異cfDNAの捕捉および検出のためのプローブの配列を下表3に示す。
【表3】
【0144】
この試験において、特に断らない限り、EGFRエクソン19欠失-プローブ1(標的特異的)、EGFRエクソン20 T790M-プローブ2(標的特異的)およびEGFRエクソン21 L858R-プローブ2(標的特異的)をCPおよびDPとして使用した。その結果、単離したEGFR変異cfDNAが検出プローブに依存して特異的に検出されたことが判明した(
図24および25)。EGFRエクソン19欠失、20 T790Mまたは21 L858R遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿から捕捉したcfDNAをそれぞれEGFRエクソン19欠失、20 T790Mまたは21 L858RおよびHRP/ストレプトアビジン結合ナノ粒子(NP)を標的とするプローブと反応させたとき、患者の組織と同じ遺伝子変異を標的とするプローブを使用したとき、色調変化およびUV-Visスペクトル変化が示されたことが判明した(
図24)。
さらに、他のEGFR変異を有する肺癌患者から捕捉したcfDNAをEGFR 19、20および21を標的とする同じプローブと反応させた。その結果、患者の組織同じ遺伝子変異を標的とするプローブを使用したとき、色調変化およびUV-Visスペクトル変化が示されたことが判明した(
図25)。
【0145】
実施例3.2. cfDNAの分析を用いるKRASおよびALK-EML4遺伝子における変異の確認
さらに、EGFRに類似して、KRASおよびALK-EML4遺伝子における変異を分析するために、cfDNAを血漿または脳脊髄液サンプルから単離し、次いで捕捉DNAを95℃で1分間変性させた。ビオチン結合CPおよびビオチン結合DPを1pMでそれに加え、37℃で1時間反応させた。次いで、HRPおよびストレプトアビジンタグ付きポリピロールナノ粒子をサンプルに加え、37℃で30分間反応させた。
その結果、KRASエクソン2遺伝子変異およびALK-EML4融合遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿から単離したcfDNAは、KRASエクソン2に対するプローブおよびALK-EML4に対するプローブに応答し、故に、患者の組織と一致した色調変化およびUV吸光度を示すことが確認できた(
図26~28)。KRASエクソン2変異(
図26および27)およびALK-EML4変異1および3(
図28)を有するcfDNA検出のためのプローブ(CPおよびDP)の配列を下表4に示す。
【表4】
【0146】
実施例3.3. 温度変性による非特異的反応の確認
表3における3種類のプローブ(すなわち、標的特異的または標的非特異的プローブを含む)の各々をEGFRエクソン19欠失および20 T790M遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿に加え、混合した。その結果、95℃で1分間DNA変性後、使用した全プローブ(すなわち、プローブが標的特異的であるか標的非特異的であるかにかかわらず)が、組織に類似したEGFRエクソン19欠失および20 T790Mに対してのみ色調およびUV吸光度の変化を示し、これにより、特異的遺伝子変異の同定が可能であった(
図29)。しかしながら、EGFRエクソン21について、色調およびUV吸光度の変化は、プローブのタイプにかかわらず観察されなかった。これは、不安定cfDNAが、EGFRエクソン19およびEGFRエクソン20における変異に特異的なプローブに応答することを示唆し、これにより遺伝子変異分析が可能となる。
さらに、cfDNAを、EGFR遺伝子に変異がない肺癌患者の血漿から得た。それぞれ95℃で1分間および10分間変性後、EGFR 19、20および21の変異に特異的なプローブと不安定cfDNAの結合を確認した。その結果、95℃で1分間変性させたとき、色調変化およびUV吸光度変化はEGFR遺伝子に変異がない肺癌患者で観察されなかった。しかしながら、95℃で10分間変性させたとき、非特異的ハイブリダイゼーションによる色調変化およびUV吸光度変化が全てのEGFRエクソン19、20および21に対するプローブで観察可能であった(
図30)。
さらに、cfDNAを他のEGFR 19欠失および20 T790M遺伝子変異を有する肺癌患者および正常対象の血漿から、ナノワイヤーを用いて捕捉した。次いで、それぞれ95℃で0分間、1分間および10分間の変性により、EGFR 19、20および21に対するプローブとのそのハイブリダイゼーション反応性を確認した。その結果、
図31~33に示すとおり、EGFR遺伝子に変異がない正常対象の場合、色調変化およびUV吸光度変化は95℃で0分間(
図31)および1分間(
図32)の変性で観察されなかった。しかしながら、95℃で10分間の変性を用いて(
図33)、非特異的ハイブリダイゼーションを用いる色調変化およびUV吸光度変化が全てのEGFRエクソン19、20および21に対するプローブで観察された。それ故に、cfDNAにおける遺伝子変異は変性させずに分析できることが確認された。
【0147】
実施例4. 肺癌患者のサンプルの分析を用いる不安定cfDNAを検出する方法の精度の同定
本発明のある実施態様において、151名の肺癌患者の血漿から得たcfDNAにおける遺伝子変異の特異性および感受性の分析により得られた結果が、患者の癌組織における遺伝子変異結果と一致することが確認された(
図34)。EGFRエクソン19 Delに特異的なプローブをEGFRに変異がない肺癌患者(EGFR野生型)、EGFRエクソン19欠失を有する肺癌患者(Del)およびEGFRエクソン21 L858Rを有する肺癌患者のcfDNAに加え、生じた遺伝子変異をUVスペクトルの吸光度値(ΔOD、500nm~650nm)の分析を用いて確認した。その結果、得られた結果が、患者の癌組織の遺伝子変異結果と、98.4%一致を示したことが確認された(
図35および36)。
さらに、EGFRエクソン21 L858Rのプローブを、EGFRに変異がない肺癌患者、EGFRエクソン19欠失を有する肺癌患者(Del)およびEGFRエクソン21 L858Rを有する肺癌患者のcfDNAに加え、生じた遺伝子変異をUVスペクトルの吸光度値(ΔOD、500nm~650nm)の分析を用いて確認した。その結果、得られた結果が、患者の癌組織における遺伝子変異結果と98.0%一致を示したことが確認された(
図37および38)。
【0148】
実施例5. 正荷電ナノ粒子を使用するcfDNAの検出
上記EGFR実験に類似して、EGFR 19欠失(Del)遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿サンプルからcfDNAを単離するために、製造例において産生したPEI結合ナノ粒子(PEI-Ppy NP、5μg/ml)をEGFR陽性患者の200μlの血漿に加え、室温で30分間混合した。その後、捕捉されたDNAを変性させないかまたは95℃で1分間変性させた。次いで、ビオチンが結合しているビオチン結合CPおよびDPをそれに1pMで加え、37℃で30分間インキュベーションを実施した。その後、HRP/stタグ付NPをサンプルに加え、37℃で15分間反応させた。UV-Visスペクトルでの吸光度変化がEGFR 19に特異的なプローブでのみTMBの酸化反応を用いて観察されることが確認された(
図39)。
【0149】
実施例6. 血漿に存在するcfDNAの分析を用いるEGFR遺伝子における変異の同定
H1975細胞株(EGFRエクソン20 T790Mおよび21 L858R遺伝子変異を有する)を使用して、超音波処理によりfDNAを調製した。その後、製造例における方法により製造したポリリシンがコンジュゲートした表面を有するナノ構造体(PLL/Ppy NW)をそれに加え、次いで無PCR比色アッセイを実施した(
図40)。EGFRエクソン20、21陽性H1975細胞株のfDNAをナノワイヤーを使用して単離した。次いで、EGFRエクソン19、20および21に対するプローブをそれに加え、反応させた。その後、HRP/stタグ付NPをそれに加え、次いで色調変化を観察した。
図40に示すとおり、EGFR 20およびEGFR 21においてのみ明確な色調変化およびUV-Visスペクトル変化の化認ができた。
【0150】
III. 単一プローブを使用する不安定cfDNAの検出
実施例7. 損傷された部分のみに結合できるプローブのみを使用した不安定cfDNAの検出
cfDNAを肺癌患者の血漿サンプルから単離した。次いで、遺伝子変異を検出するために、2タイプのプローブ、すなわち、CPおよびDPを混合物で使用した。
図41~43に示すとおり、EGFRエクソン19欠失、エクソン20 T790Mおよびエクソン21 L858R遺伝子変異を検出するために、CP_1(EGFRエクソン19欠失)、CP2(EGFRエクソン20 T790M)およびCP2(EGFRエクソン21 L858R)を、これらは上記領域を含むcfDNAに特異的なプローブであるが、DPとの混合物で使用した。
しかしながら、
図44に示すとおり、患者の癌組織での結果(EGFRエクソン19欠失)と同じEGFRエクソン19欠失遺伝子変異結果を、DPを用いずにCPのみ加えて、確認することができた。
【0151】
IV. サンプル処理方法による不安定cfDNAの検出能の同定
実施例8. DNaseまたはRNaseでの処理による不安定cfDNAの検出能の同定
肺癌患者の血漿サンプルをまずDNaseまたはRNaseで処理し、次いでcfDNAをナノ構造体を使用してそこから単離して、遺伝子変異を同定した。
図45に示すとおり、EGFRエクソン19欠失遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿をRNase Aで前処理した後、cfDNAをそこからナノワイヤーにより得て、次いでEGFRエクソン19 delに対するプローブと反応させた。その結果、患者の癌組織と同じEGFRエクソン19欠失遺伝子変異に対するUV-visピークが対照(対照cfDNA)と同様に得られた。しかしながら、DNase Iで前処理後、おそらくcfDNAが分解したため、UV吸光度が観察されなかった(
図45)。
同様に、
図46に示すとおり、EGFRエクソン20 T790M遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿をRNase Aで前処理した後、cfDNAをナノワイヤーを用いてそこから得て、次いでEGFRエクソン20 T790Mに対するプローブと反応させた。その結果、患者の癌組織における結果と同じEGFRエクソン20 T790M遺伝子変異に対するUV吸光度が確認された。しかしながら、DNase Iでの処理後、UV吸光度が観察されないことを確認することができた(
図46);そして、これは、おそらく患者の血漿にDNase Iを加えたことにより、cfDNAが分解された可能性によるものとされた。
【0152】
V. マーカーによるcfDNAの検出能の同定
実施例9. HRP/ストレプトアビジン複合体を使用するcfDNAの検出能の同定
図47に示すとおり、cfDNAをEGFRエクソン19欠失およびエクソン20 T790M遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿から抽出し、EGFRエクソン19 Del、20 T790Mおよび21 L858RおよびHRP/stタグ付NPに対するプローブと反応させ、次いで患者の癌組織における結果と同じEGFRエクソン19欠失およびエクソン20 T790M遺伝子変異結果がUV吸光度および色調の変化により確認された。
しかしながら、
図48に示すとおり、cfDNAを同じ患者の血漿から抽出しEGFRエクソン19 Del、20 T790M、21 L858Rおよび、次いでHRP/stタグ付NPの代わりにHRP-ストレプトアビジン複合体(HRPとストレプトアビジンは互いに1:1で結合している)に対するプローブと反応させたとき、患者の癌組織結果と完全に異なる遺伝子変異結果が観察された。HRP/ストレプトアビジン複合体をHRP/ストレプトアビジンタグ付ナノ粒子(NP)の代わりに使用したとき、非特異的結合の増加により、不正確な遺伝子変異結果が観察されたことが判明した。
図49に示すとおり、5EGFRエクソン19欠失およびエクソン20 T790M遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿からcfDNAを抽出し、次いで該cfDNAをEGFRエクソン19 Del、20 T790Mおよび21 L858RおよびHRP/stタグ付NPに対するプローブならびにEGFRエクソン19 Del、20 T790Mおよび21 L858RおよびHRP/stタグ付NPの代わりにHRP/ストレプトアビジン複合体(HRPとストレプトアビジンは互いに1:1で結合している)に対するプローブと反応させることにより得た結果の分析を実施した。その結果、ナノワイヤーを用いて得たcfDNAは、プローブおよびそれに対するHRP/stタグ付NPの結合によりもたらされる反応特異性増加により、癌組織に一致するUV吸光度を示したことが確認された。さらに、5EGFRエクソン20 T790Mおよび21 L858R遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿においても、HRP/stタグ付NPが遺伝子変異決定に重要な役割を有することが確認された。
【0153】
VI. プローブおよびマーカーが互いに結合した複合体を使用するcfDNAの検出
実施例10. HRP/stタグ付NPが結合したプローブを使用する遺伝子変異の検出
図50に示すとおり、cfDNAをそれぞれプローブおよびHRP/stタグ付NPとの連続反応に付す代わりに、HRP/stタグ付NPをまずEGFRエクソン19 Del、20 T790Mおよび21 L858Rに特異的なプローブと結合させ、プローブ-HRPマーカーの形の結産物を産生し、cfDNAをこのような結合物と反応させた;そしてその結果、癌組織と同じ遺伝子型が、EGFRエクソン20 T790Mおよび21 L858R遺伝子変異を有する肺癌患者の胸水で検出されたことが確認された。
【0154】
VII. 配列混合によるcfDNAの検出
実施例11. プローブおよびマーカーの同時混合を用いる不安定cfDNAの検出の同定
図51に示すとおり、cfDNAをそれぞれCPおよびDPプローブおよびHRP/stタグ付NPとの連続反応に付す代わりに、cfDNAを、一斉に、プローブおよびHRP/stタグ付NPと混合し、反応させた;そしてその結果、EGFRエクソン20 T790Mおよび21 L858R遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿において癌組織と同じ遺伝子型が検出されたことが確認された。さらに、
図52に示すとおり、cfDNAを、一斉に、CPおよびDPプローブおよびHRP/stタグ付NPと混合し、反応させた;そしてその結果、ALK-EML4融合およびALK点変異(I1171N/T)遺伝子変異を有する肺癌患者の血漿において癌組織と同じ遺伝子型が検出されたことが確認された。
【0155】
VIII. サンプル変性条件による不安定cfDNAの検出
実施例12. 温度条件によるサンプル変性後のcfDNAの検出
不安定cfDNAおよび安定cfDNAを、サンプル変性条件によって互い区別できるか否かを確認するために実験を行った。具体的には、EGFR 19欠失の検出が可能なプローブを使用して、正常対象および肺癌患者(0208-343、20190311_LC#1、由来組織:E19del)から集めた血漿を種々の変性条件に付し、次いで不安定cfDNAおよび安定cfDNAを互いに区別できるか否かを試験した。
プローブについては、EGFRエクソン19欠失の検出が可能であるプローブであるggaattaaga gaagcaacat ctcc(配列番号9)を使用した。ここで、ビオチン結合プローブを使用した。PEI/Ppyナノワイヤーを使用し、HRP/ストレプトアビジンが凝集したナノ粒子をマーカーとして使用した。
具体的には、ナノワイヤーでcfDNAを単離する前に、サンプルを下記の種々の条件下処理した。サンプルをそれぞれ30℃で15分間および0分間加熱した。さらに、サンプルをそれぞれ60℃で5分間および0分間加熱した。さらに、サンプルを95℃で1分間および0分間加熱した。他の工程は、
図8に模式化した方法で実施した。
その結果、EGFR 19欠失変異がない正常対象において、不安定cfDNAはどの変性条件下でも検出されなかった(
図54)。しかしながら、E19del患者において、不安定cfDNAが全ての異なる変性条件下で検出されたことが同定された(
図55)。これらの結果から、不安定cfDNAの存在または非存在によって、肺癌患者がE19del変異を有するとの情報を提供することが可能であった。
【0156】
実施例13. 温度条件による細胞株由来不安定cfDNAの検出
人体から得たサンプルにおけると同様、細胞株に存在する変異位置を確認するための実験を実施した。具体的には、cfDNAに類するサイズを有するfDNAを、HCC2279(エクソン19Del)、HCC827(エクソン19Del)、H1975(T790M、L858R)およびA549(EGFR野生型)の各々から得た。具体的には、fDNAを実施例2の方法で得た。
その結果、それぞれ95℃で1分間および0分間加熱する変性条件下で、不安定cfDNAのみがプローブに特異的に結合し、マーカーに結合した状態で検出されたことが確認された(
図56)。これらの結果から、不安定cfDNAの存在または非存在を細胞株から得たサンプルでも確認できた。
【0157】
実施例14. DNaseでの処理による不安定cfDNAの検出
不安定cfDNAおよび安定cfDNAが、温度条件だけでなく、DNA分解酵素によっても異なるかを同定するために、不安定cfDNAおよび安定cfDNAをDNaseでの処理に付し、次いでそのプローブとの反応性を確認した。ここで、サンプルは高温での変性はさせなかった。
具体的には、HCC2279(エクソン19Del)、HCC827(エクソン19Del)、H1975(T790M、L858R)およびA549(EGFR野生型)の各々からPEI/Ppyナノワイヤーを使用して得たfDNAをPBSに懸濁し、次いで1μlのDNaseで処理した。37℃で30分間の処理の結果、不安定cfDNAおよび安定cfDNAがプローブとの反応性の観点で異なったことが確認された(
図57)。さらに、DNaseでの処理を37℃で60分間実施したとき同じ効果が示されたことが確認された(
図58)。これらの結果に基づき、安定cfDNAがDNase酵素により容易に分解されないことを確認することができた。
しかしながら、37℃で120分間の1μlまたは2μlのDNaseでの処理の結果、安定cfDNAも、DNaseでの処理時間が長くなるかまたは使用するDNase量を増やしたとき、プローブと応答することが確認された(
図59)。これらの結果から、不安定cfDNAと安定cfDNAの安定性の差異を確認することができた。
さらに、DNaseの活性により、不安定cfDNAと安定cfDNAの差を確認するために、1μlまたは2μlのDNaseで24℃で120分間処理により得た結果を
図60に示す。その結果、酵素の活性が24℃で減少したが、不安定cfDNAと安定cfDNAが、プローブとの反応性で異なることが確認された(
図60)。
さらに、DNaseの活性により不安定cfDNAと安定cfDNAの差異を確認するために、1μlまたは2μlのDNaseで3℃で120分間処理により得た結果を
図58に示す。その結果、酵素の活性が3℃で減少したが、不安定cfDNAと安定cfDNAが、プローブとの反応性で異なることが確認された(
図61)。
【配列表】