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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】セラミック電子部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
H01G4/30 201K
H01G4/30 201F
H01G4/30 311Z
H01G4/30 512
H01G4/30 513
H01G4/30 517
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021016082
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2022119088
(43)【公開日】2022-08-16
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田原 幹夫
【審査官】相澤 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-114097(JP,A)
【文献】特開2019-102766(JP,A)
【文献】特開2001-210545(JP,A)
【文献】特開2006-310700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極層と誘電体層とが交互に積層された積層構造と、前記積層構造の積層方向端の上面に設けられセラミックを主成分とする第1カバー層および前記積層構造の積層方向端の下面に設けられたセラミックを主成分とする第2カバー層とを備え、略直方体形状を有し、積層された複数の前記内部電極層が、対向する第1端面および第2端面に交互に露出するように形成された積層チップと、
前記第1端面に形成された第1外部電極および前記第2端面に形成された第2外部電極と、を備え、
前記第1端面と前記第2端面とが対向する方向をX軸とし、前記積層方向をZ軸とし、前記X軸および前記Z軸と直交する方向をY軸とし、前記積層チップの前記Y軸の中央を通るXZ平面の断面において、曲率半径R1を前記第1カバー層の前記第1外部電極側における角部の形状と同じ大きさの曲率半径とし、前記第1外部電極に接続されていない各内部電極層の前記第1外部電極側の端を結んで得られる直線を直線Lとし、前記直線Lと、前記第1カバー層に最も近い内部電極層との交点を交点N1とし、直線Mを前記積層チップの上面に接するように前記X軸方向に引いた直線とし、直線Nを前記第1端面に接するようにZ軸方向に引いた直線とし、直線Mと直線Nとの交点を交点Oとし、交点N1と直線Mとの最短距離を距離C1とし、交点N1と交点Oとの最短距離を距離P1とした場合に、0.20≦R1/√(P1-C1)≦0.80の関係が成立することを特徴とするセラミック電子部品。
【請求項2】
前記第1外部電極の表面は、変曲点を有しておらず、
前記第1外部電極の前記表面にめっき層を備えることを特徴とする請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記曲率半径R1は、前記積層チップの長手方向の寸法の1%以上、15%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記距離C1は、前記積層チップの高さ方向の寸法の3%以上、35%以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記距離P1は、前記積層チップの高さ方向の寸法の10%以上、45%以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
セラミック含有の誘電体グリーンシート上に内部電極形成用導電ペーストを印刷して得られるパターン形成シートを複数積層し、積層方向端の上面にセラミック含有の第1カバーシートを積層し、前記積層方向端の下面にセラミック含有の第2カバーシートを積層し、積層された複数の内部電極形成用導電ペーストを、対向する第1端面および第2端面に交互に露出させることによって、略直方体形状のセラミック積層体を形成する工程と、
前記セラミック積層体の角部を研磨する工程と、
前記第1端面に第1外部電極形成用導電ペーストを塗布し、前記第2端面に第2外部電極形成用導電ペーストを塗布する工程と、
前記セラミック積層体と前記第1外部電極形成用導電ペーストおよび前記第2外部電極形成用導電ペーストと、を焼成することで、前記誘電体グリーンシートを誘電体層とし、前記内部電極形成用導電ペーストを内部電極層とし、前記第1カバーシートを第1カバー層とし、前記第2カバーシートを第2カバー層とし、前記第1外部電極形成用導電ペーストを第1外部電極とし、前記第2外部電極形成用導電ペーストを第2外部電極とする工程と、を含み、
前記第1端面と前記第2端面とが対向する方向をX軸とし、前記積層方向をZ軸とし、前記X軸および前記Z軸と直交する方向をY軸とし、前記セラミック積層体の焼成によって得られる積層チップの前記Y軸の中央を通るXZ平面の断面において、曲率半径R1を前記第1カバー層の前記第1外部電極側における角部の形状と同じ大きさの曲率半径とし、前記第1外部電極に接続されていない各内部電極層の前記第1外部電極側の端を結んで得られる直線を直線Lとし、前記直線Lと、前記第1カバー層に最も近い内部電極層との交点を交点N1とし、直線Mを前記積層チップの上面に接するように前記X軸方向に引いた直線とし、直線Nを前記第1端面に接するようにZ軸方向に引いた直線とし、直線Mと直線Nとの交点を交点Oとし、交点N1と直線Mとの最短距離を距離C1とし、交点N1と交点Oとの最短距離を距離P1とした場合に、0.20≦R1/√(P1-C1)≦0.80の関係が成立するように、前記セラミック積層体の角部を研磨することを特徴とするセラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサなどのセラミック電子部品は、セラミックを主成分とする複数の誘電体層と、複数の内部電極層とを交互に積層して構成された積層チップを備えている。積層チップの端面に内部電極層が引き出され、その表面を覆うように外部電極が形成されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-102766号公報
【文献】特開2001-210545号公報
【文献】特開2006-310700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層チップの角部では、外部電極とセラミック部分との間の熱膨張係数差に起因する応力が集中しやすくなっている。それにより、積層チップの角部にクラックが発生するおそれがある。そこで、応力を緩和しようとすると、信頼性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、信頼性を維持しつつクラックを抑制することができるセラミック電子部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るセラミック電子部品は、内部電極層と誘電体層とが交互に積層された積層構造と、前記積層構造の積層方向端の上面に設けられたセラミックを主成分とする第1カバー層および前記積層構造の積層方向端の下面に設けられセラミックを主成分とする第2カバー層とを備え、略直方体形状を有し、積層された複数の前記内部電極層が、対向する第1端面および第2端面に交互に露出するように形成された積層チップと、前記第1端面に形成された第1外部電極および前記第2端面に形成された第2外部電極と、を備え、前記第1端面と前記第2端面とが対向する方向をX軸とし、前記積層方向をZ軸とし、前記X軸および前記Z軸と直交する方向をY軸とし、前記積層チップの前記Y軸の中央を通るXZ平面の断面において、曲率半径R1を前記第1カバー層の前記第1外部電極側における角部の形状と同じ大きさの曲率半径とし、前記第1外部電極に接続されていない各内部電極層の前記第1外部電極側の端を結んで得られる直線を直線Lとし、前記直線Lと、前記第1カバー層に最も近い内部電極層との交点を交点N1とし、直線Mを前記積層チップの上面に接するように前記X軸方向に引いた直線とし、直線Nを前記第1端面に接するようにZ軸方向に引いた直線とし、直線Mと直線Nとの交点を交点Oとし、交点N1と直線Mとの最短距離を距離C1とし、交点N1と交点Oとの最短距離を距離P1とした場合に、0.20≦R1/√(P1-C1)≦0.80の関係が成立することを特徴とする。
【0007】
上記セラミック電子部品において、前記第1外部電極の表面は、変曲点を有しておらず、前記第1外部電極の前記表面にめっき層を備えていてもよい。
【0008】
上記セラミック電子部品において、前記曲率半径R1は、前記積層チップの長手方向の寸法の1%以上、15%以下であってもよい。
【0009】
上記セラミック電子部品において、前記距離C1は、前記積層チップの高さ方向の寸法の3%以上、35%以下であってもよい。
【0010】
上記セラミック電子部品において、前記距離P1は、前記積層チップの高さ方向の寸法の10%以上、45%以下であってもよい。
【0011】
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法は、セラミック含有の誘電体グリーンシート上に内部電極形成用導電ペーストを印刷して得られるパターン形成シートを複数積層し、積層方向端の上面にセラミック含有の第1カバーシートを積層し、前記積層方向端の下面にセラミック含有の第2カバーシートを積層し、積層された複数の内部電極形成用導電ペーストを、対向する第1端面および第2端面に交互に露出させることによって、略直方体形状のセラミック積層体を形成する工程と、前記セラミック積層体の角部を研磨する工程と、前記第1端面に第1外部電極形成用導電ペーストを塗布し、前記第2端面に第2外部電極形成用導電ペーストを塗布する工程と、前記セラミック積層体と前記第1外部電極形成用導電ペーストおよび前記第2外部電極形成用導電ペーストと、を焼成することで、前記誘電体グリーンシートを誘電体層とし、前記内部電極形成用導電ペーストを内部電極層とし、前記第1カバーシートを第1カバー層とし、前記第2カバーシートを第2カバー層とし、前記第1外部電極形成用導電ペーストを第1外部電極とし、前記第2外部電極形成用導電ペーストを第2外部電極とする工程と、を含み、前記第1端面と前記第2端面とが対向する方向をX軸とし、前記積層方向をZ軸とし、前記X軸および前記Z軸と直交する方向をY軸とし、前記セラミック積層体の焼成によって得られる積層チップの前記Y軸の中央を通るXZ平面の断面において、曲率半径R1を前記第1カバー層の前記第1外部電極側における角部の形状と同じ大きさの曲率半径とし、前記第1外部電極に接続されていない各内部電極層の前記第1外部電極側の端を結んで得られる直線を直線Lとし、前記直線Lと、前記第1カバー層に最も近い内部電極層との交点を交点N1とし、直線Mを前記積層チップの上面に接するように前記X軸方向に引いた直線とし、直線Nを前記第1端面に接するようにZ軸方向に引いた直線とし、直線Mと直線Nとの交点を交点Oとし、交点N1と直線Mとの最短距離を距離C1とし、交点N1と交点Oとの最短距離を距離P1とした場合に、0.20≦R1/√(P1-C1)≦0.80の関係が成立するように、前記セラミック積層体の角部を研磨することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、信頼性を維持しつつクラックを抑制することができるセラミック電子部品およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】(a)は曲率半径を例示する図であり、(b)は断面の位置を例示する図である。
図4】(a)および(b)は曲率半径を例示する図である。
図5】積層セラミックコンデンサの各部の位置および距離について説明するための図である。
図6】直線Lを例示する図である。
図7】外部電極の変曲点(段差)を例示する図である。
図8】めっき層を例示する図である。
図9】積層セラミックコンデンサの製造方法のフローを例示する図である。
図10】(a)および(b)は積層工程を例示する図である。
図11】積層工程を例示する図である。
図12】積層工程を例示する図である。
図13】実施例および比較例の結果をプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の部分断面斜視図である。図1で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、略直方体形状を有する積層チップ10と、積層チップ10の対向する2端面に設けられた外部電極20a,20bとを備える。なお、積層チップ10の当該2端面以外の4面のうち、積層方向の上面および下面以外の2面を側面と称する。外部電極20a,20bは、積層チップ10の積層方向の上面、下面および2側面に延在している。ただし、外部電極20a(第1外部電極)と外部電極20b(第2外部電極)とは、互いに離間している。
【0016】
なお、図1において、X軸方向は、積層チップ10の長さ方向であって、積層チップ10の2端面が対向する方向であり、外部電極20aと外部電極20bとが対向する方向である。Y軸方向(第2方向)は、内部電極層の幅方向であり、積層チップ10の2側面が対向する方向である。Z軸方向は、積層方向であり、積層チップ10の上面と下面とが対向する方向である。X軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向とは、互いに直交している。
【0017】
積層チップ10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、卑金属材料を含む内部電極層とが、交互に積層された構成を有する。各内部電極層の端縁は、積層チップ10の外部電極20aが設けられた第1端面と、外部電極20bが設けられた第2端面とに、交互に露出している。それにより、各内部電極層は、外部電極20aと外部電極20bとに、交互に導通している。その結果、積層セラミックコンデンサ100は、複数の誘電体層11が内部電極層を介して積層された構成を有する。誘電体層11と内部電極層との積層構造において、積層方向の最外層には内部電極層が配置され、当該積層体の積層方向端の上面は、カバー層13(第1カバー層)によって覆われている。当該積層体の積層方向端の下面は、カバー層13(第2カバー層)によって覆われている。カバー層13は、セラミック材料を主成分とする。例えば、カバー層13の材料は、誘電体層11とセラミック材料の主成分が同じである。
【0018】
積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ0.25mm、幅0.125mm、高さ0.125mmであり、または長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.2mmであり、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであり、または長さ1.6mm、幅0.8mm、高さ0.8mmであり、または長さ2.0mm、幅1.25mm、高さ1.25mmであり、または長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mmであり、または長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2.5mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。
【0019】
内部電極層12は、Ni(ニッケル),Cu(銅),Sn(スズ)等の卑金属を主成分とする。内部電極層12として、Pt(白金),Pd(パラジウム),Ag(銀),Au(金)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。内部電極層12の平均厚みは、例えば、1μm以下である。誘電体層11は、例えば、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主成分とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。例えば、当該セラミック材料として、BaTiO(チタン酸バリウム),CaZrO(ジルコン酸カルシウム),CaTiO(チタン酸カルシウム),SrTiO(チタン酸ストロンチウム),ペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaSrTi1-zZr(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等を用いることができる。誘電体層11の平均厚みは、例えば、1μm以下である。なお、内部電極層の積層数は、例えば、100から800である。
【0020】
図2は、図1のA-A線断面図である。図2においては、ハッチを省略している。外部電極20a,20bと、外部電極20a,20bが接するセラミック部分との間には、熱膨張係数に差が生じる。図2で例示するように、外部電極20a,20bは、角部(コバ部と称することもある)Bにおいて、大矢印の方向に収縮する。この場合、カバー層13の角部Bには、小矢印の方向に応力が集中する。この応力によって、図2の点線で例示するようなクラックが発生するおそれがある。クラックが発生すると、積層セラミックコンデンサ100の外観不良や信頼性悪化の懸念がある。
【0021】
そこで、角部Bにかかる応力を緩和することで、クラックの発生を抑制させることが考えられる。例えば、角部Bにおける外部電極を薄く形成することが考えられる。しかしながら、この場合、耐湿性低下に伴って絶縁性が低下するなど、積層セラミックコンデンサ100の信頼性が低下するおそれがある。
【0022】
そこで、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100は、信頼性を維持しつつクラックを抑制することができる構成を有している。
【0023】
なお、本実施形態における角部とは、積層チップ10の角(カバー層13の角)において曲率を有する領域のことである。図3(a)で例示するように、積層チップ10の2側面のいずれか一方を上にして横埋めにて中央まで研磨することで得られる断面の角部の形状と同じ大きさの曲率半径を、曲率半径R1と定義する。図3(b)で例示するように、当該断面は、積層チップ10において、Y軸方向の中央におけるXZ平面(一転鎖線部分)の断面のことである。なお、図3(a)では、ハッチを省略している。なお、角部Bは、図4(a)または図4(b)のように、必ずしも真円の円弧にならない場合がある。この場合においては、角部BのX軸方向の長さr1と、Z軸方向の長さr2との平均値=(r1+r2)/2を曲率半径R1と定義することができる。
【0024】
本実施形態においては、内部電極層12と角部Bとの距離に着目し、角部Bの形状を規定する。
【0025】
まず、図5において、積層セラミックコンデンサ100の各部の位置および距離について説明する。図5は、積層チップ10において、外部電極20a付近かつ上面付近の断面図である。図5の断面は、図3(b)の断面と同様に、Y軸方向の中央におけるXZ平面の断面のことである。図5においては、ハッチは省略している。
【0026】
図5の断面において、曲率半径R1は、積層チップ10の上面側のカバー層13の外部電極20a側における角部の形状と同じ大きさの曲率半径である。外部電極20aに接続されていない各内部電極層12の外部電極20a側の端を結んで得られる直線を直線Lと定義する。直線Lと、積層チップ10の上面側の最外層の内部電極層12との交点を、交点N1と定義する。図5の断面において、積層チップ10の外形に沿って、直線Mおよび直線Nを引く。直線Mは、積層チップ10の上面に接するようにX軸方向に引いた直線である。直線Nは、積層チップ10の外部電極20a側の端面に接するようにZ軸方向に引いた直線である。直線Mと直線Nとの交点を、交点Oと定義する。交点N1と直線Mとの最短距離を、距離C1と定義する。交点N1と交点Oとの最短距離を、距離P1と定義する。
【0027】
外部電極20aに接続されていない各内部電極層12の外部電極20a側の端がX軸方向において一致している場合には、直線Lは、Z軸方向に平行になる。外部電極20aに接続されていない各内部電極層12の外部電極20a側の端がX軸方向において一致していない場合には、図6で例示するように、露出しない端面からの距離が最大の内部電極層12の端位置と、最小の内部電極層12の端位置との中間地点を通ってZ軸に平行な直線を、直線Lと定義することができる。
【0028】
交点N1は、外部電極20aに接続された各内部電極層12と、外部電極20bに接続された各内部電極層12とが交差する内部電極交差部(容量部)の角に相当する。内部電極交差部では、他の領域と比較して、金属を主成分とする内部電極層の密度が高い領域となる。したがって、内部電極交差部と外部電極との熱膨張係数差は比較的小さくなる。曲率半径R1が小さくなると、角部Bと交点N1との距離が長くなり、外部電極20aと内部電極交差部との距離が長くなる。この場合、焼成の際に、角部において外部電極20aと外部電極20aが接するセラミック部分との間の熱膨張差に起因する応力によってクラックが発生するおそれがある。一方、曲率半径R1が大きくなると、角部Bと交点N1との距離が短くなる。この場合、焼成の際に、角部において外部電極20aと外部電極20aが接するセラミック部分との間の熱膨張差が小さくなり、クラックの発生が抑制される。その一方で、角部Bと交点N1との距離が短くなると、内部電極交差部を保護するセラミック部分が少なくなり、耐湿性低下に伴う絶縁性低下によって、信頼性の問題が生じるおそれがある。
【0029】
そこで、本発明者が行なった鋭意研究の結果、曲率半径R1と、距離C1と、距離P1との関係を適正化し、0.20≦R1/√(P1-C1)≦0.80とすることによって、信頼性を維持しつつクラックの発生を抑制できることがわかった。
【0030】
角部Bと交点N1との距離を短くしてクラック発生を抑制する観点から、R1/√(P1-C1)は、0.20以上であることが好ましく、0.25以上であることがより好ましい。一方、角部Bと交点N1との距離を長くして信頼性を向上させる観点から、R1/√(P1-C1)は、0.80以下であることが好ましく、0.75以下であることがより好ましい。
【0031】
角部の外部電極における不連続部分の発生を抑制する観点から、曲率半径R1は、積層チップ10の長手方向(図1ではX軸方向)の寸法の1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。基板実装時のチップ立ち防止の観点から、曲率半径R1は、積層チップ10の長手方向の寸法の20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
【0032】
距離C1が長すぎると、クラック発生のおそれがある。そこで、距離C1に上限を設けることが好ましい。例えば、距離C1は、積層チップ10の高さ方向(図1ではZ軸方向)の寸法の35%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることがさらに好ましい。
【0033】
一方、距離C1が短すぎると、信頼性不足のおそれがある。そこで、距離C1に下限を設けることが好ましい。例えば、距離C1は、積層チップ10の高さ方向の寸法の3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。
【0034】
距離P1が長すぎると、クラック発生のおそれがある。そこで、距離P1に上限を設けることが好ましい。例えば、距離P1は、積層チップ10の高さ方向の寸法の45%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、35%以下であることがさらに好ましい。
【0035】
一方、距離P1が短すぎると、信頼性不足のおそれがある。そこで、距離P1に下限を設けることが好ましい。例えば、距離P1は、積層チップ10の高さ方向の寸法の10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。
【0036】
本実施形態に係る構成によれば、角部における外部電極20aを薄くしなくてもよいため、外部電極20a上に、めっき層を均一に形成できるようになる。特に、図7で例示するような段差(変曲点)を外部電極に設けなくすることで、めっき層を均一に形成できるようになる。
【0037】
例えば、積層チップ10の角部Bにおいて、外部電極20aの最小厚みを1μm以上とすることが好ましく、2μm以上とすることがより好ましく、3μm以上とすることがさらに好ましい。ただし、外部電極20aが全体的に厚くなると、積層チップ10が大型化してしまうため、外部電極20aの局所的な最大厚みは、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。
【0038】
積層チップ10において、内部電極層12の積層数は、例えば、積層チップ10の高さ方向の寸法に対する積層数が500層/mm以上1500層/mm以下であり、800層/mm以上1000層/mm以下である。内部電極層12の厚みは、0.1μm以上0.5μm以下である。誘電体層11の厚みは、0.1μm以上0.5μm以下である。
【0039】
図5では、外部電極20a付近かつ積層チップ10の上面付近の断面に着目したが、それに限られない。外部電極20a付近かつ積層チップ10の下面付近の断面に着目する場合には、図5と同じ断面において、曲率半径R1は、積層チップ10の下面側のカバー層13の外部電極20a側における角部の形状と同じ大きさの曲率半径である。交点N1は、直線Lと、積層チップ10の下面側の最外層の内部電極層12との交点である。直線Mは、積層チップ10の下面に接するようにX軸方向に引いた直線である。
【0040】
外部電極20b付近かつ上面付近の断面に着目する場合には、図5と同じ断面において、曲率半径R1は、積層チップ10の上面側のカバー層13の外部電極20b側における角部の形状と同じ大きさの曲率半径である。直線Lは、外部電極20bに接続されていない各内部電極層12の外部電極20b側の端を結んで得られる直線である。交点N1は、直線Lと、積層チップ10の上面側の最外層の内部電極層12との交点である。直線Nは、積層チップ10の外部電極20b側の端面に接するようにZ軸方向に引いた直線である。
【0041】
外部電極20b付近かつ積層チップ10の下面付近の断面に着目する場合には、図5と同じ断面において、曲率半径R1は、積層チップ10の下面側のカバー層13の外部電極20b側における角部の形状と同じ大きさの曲率半径である。直線Lは、外部電極20bに接続されていない各内部電極層12の外部電極20b側の端を結んで得られる直線である。交点N1は、直線Lと、積層チップ10の下面側の最外層の内部電極層12との交点である。直線Mは、積層チップ10の下面に接するようにX軸方向に引いた直線である。
【0042】
図8で例示するように、外部電極20aの表面には、めっき層21が設けられていてもよい。図8では、ハッチを省略している。めっき層21は、Cu,Ni,Al,Zn,Snなどの金属またはこれらの2以上の合金を主成分とする。めっき層21は、単一金属成分のめっき層でもよく、互いに異なる金属成分の複数のめっき層でもよい。例えば、めっき層21は、外部電極20a側から順に、第1めっき層22、第2めっき層23および第3めっき層24が形成された構造を有する。第1めっき層22は、例えば、Cuめっき層である。第2めっき層23は、例えば、Niめっき層である。第3めっき層24は、例えば、Snめっき層である。なお、図8では、外部電極20aについて例示しているが、外部電極20bも同様の構造を有する。
【0043】
続いて、積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。図9は、積層セラミックコンデンサ100の製造方法のフローを例示する図である。
【0044】
(原料粉末作製工程)
まず、誘電体層11を形成するための誘電体材料を用意する。誘電体材料は、誘電体層11の主成分セラミックを含む。誘電体層11に含まれるAサイト元素およびBサイト元素は、通常はABOの粒子の焼結体の形で誘電体層11に含まれる。例えば、BaTiOは、ペロブスカイト構造を有する正方晶化合物であって、高い誘電率を示す。このBaTiOは、一般的に、二酸化チタンなどのチタン原料と炭酸バリウムなどのバリウム原料とを反応させてチタン酸バリウムを合成することで得ることができる。誘電体層11の主成分セラミックの合成方法としては、従来種々の方法が知られており、例えば固相法、ゾル-ゲル法、水熱法等が知られている。本実施形態においては、これらのいずれも採用することができる。
【0045】
得られたセラミック粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、Zr(ジルコニウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Mg(マグネシウム)、Mn(マンガン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、希土類元素の酸化物、並びに、Co(コバルト)、Ni、Li(リチウム)、B(ホウ素)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)およびSi(ケイ素)の酸化物もしくはガラスが挙げられる。
【0046】
(積層工程)
次に、原料粉末作製工程で得られた誘電体材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリーを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に誘電体グリーンシート51を塗工して乾燥させる。
【0047】
次に、図10(a)で例示するように、誘電体グリーンシート51の表面に、有機バインダを含む内部電極形成用の金属導電ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等により印刷することで、内部電極層用の第1パターン52を配置する。金属導電ペーストには、共材としてセラミック粒子を添加する。セラミック粒子の主成分は、特に限定するものではないが、誘電体層11の主成分セラミックと同じであることが好ましい。
【0048】
次に、図10(a)で例示するように、誘電体グリーンシート51上において、第1パターン52が印刷されていない周辺領域に逆パターンペーストを印刷することで第2パターン53を配置し、第1パターン52との段差を埋める。逆パターンペーストは、誘電体グリーンシート51と同じ成分であってもよく、添加化合物が異なっていてもよい。
【0049】
その後、図10(b)で例示するように、内部電極層12と誘電体層11とが互い違いになるように、かつ内部電極層12が誘電体層11の長さ方向の両端面に端縁が交互に露出して極性の異なる一対の外部電極20a,20bに交互に引き出されるように、誘電体グリーンシート51、第1パターン52および第2パターン53を積層していく。
【0050】
次に、図11で例示するように、積層された誘電体グリーンシート51の上にカバーシート54(第1カバーシート)を所定数(例えば2~10層)だけ積層し、積層された誘電体グリーンシート51の下にカバーシート54(第2カバーシート)を所定数(例えば2~10層)だけ積層し、熱圧着させ、所定チップ寸法(例えば1.0mm×0.5mm)にカットする。カバーシート54は、誘電体グリーンシート51と同じ成分であってもよく、添加化合物が異なっていてもよい。その後に、外部電極20a,20bとなる金属導電ペーストを、カットした積層体の両側面にディップ法等で塗布して乾燥させる。これにより、セラミック積層体が得られる。なお、所定数のカバーシート54を積層して圧着してから、積層された誘電体グリーンシート51の上下に貼り付けてもよい。
【0051】
誘電体グリーンシート51上において、逆パターンとしての第2パターン53を形成しなくてもよい。
【0052】
第2パターン53の積層部分は、積層後に貼り付けてもよい。具体的には、図12で例示するように、誘電体グリーンシート51と、当該誘電体グリーンシート51と同じ幅の第1パターン52とを交互に積層することで、積層部分を得る。次に、積層部分の側面に、サイドマージンシート55を貼り付ける。サイドマージンシート55は、誘電体グリーンシート51と同じ成分であってもよく、添加化合物が異なっていてもよい。
【0053】
(角部調整工程)
このようにして得られたセラミック積層体に対してバレル研磨を行なうことによって、セラミック積層体の角部を丸め、曲率半径を形成する。このバレル研磨を行なう時間の長さを調整するなどして、所望の曲率半径R1を得るための曲率半径を形成することができる。
【0054】
(焼成工程)
バレル研磨後のセラミック積層体を、N雰囲気で脱バインダ処理した後に外部電極20aとなる第1外部電極形成用導電ペーストをディップ法で塗布し、外部電極20bとなる第2外部電極形成用導電ペーストをディップ法で塗布し、酸素分圧10-5~10-8atmの還元雰囲気中で1100~1300℃で10分~2時間焼成する。このようにして、積層セラミックコンデンサ100が得られる。
【0055】
(再酸化処理工程)
その後、Nガス雰囲気中で600℃~1000℃で再酸化処理を行ってもよい。
【0056】
(めっき処理工程)
その後、めっき処理により、外部電極20a,20bに、Cu,Ni,Sn等の金属コーティングを行ってもよい。
【0057】
なお、上記各実施形態においては、セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、それに限られない。例えば、バリスタやサーミスタなどの、他の電子部品を用いてもよい。
【実施例
【0058】
続いて、実施形態に係る積層セラミックコンデンサを作製し、特性について調べた。
【0059】
(実施例1~16および比較例1~16)
チタン酸バリウムを主成分とする耐還元性を有するセラミック粉末を有機バインダと混練してスラリーを形成し、ドクターブレード等でシート状に形成し、誘電体グリーンシートを作製した。この誘電体グリーンシートに、スクリーン印刷によって、Niを主成分金属とする金属導電ペースト所定のパターンで塗布することで、内部電極パターンを形成した。内部電極層12と誘電体層11とが互い違いになるように、かつ内部電極層12が誘電体層11の長さ方向の両端面に端縁が交互に露出して極性の異なる一対の外部電極20a,20bに交互に引き出されるように、誘電体グリーンシートを積層した。その後、積層された誘電体グリーンシートの上下にカバーシートを所定数だけ積層して熱圧着させ、所定チップ寸法にカットした。この場合において、焼成後の距離P1および距離C1が目標値となるように、誘電体グリーンシートの積層数、カバーシートの積層数などを調整した。その後、焼成後の曲率半径R1が目標値となるように、バレル研磨の時間を調整した。バレル研磨後、脱バインダ処理行なった後、内部電極露出面に、所定の寸法になるように、共材を含む導電ペーストを塗布した。なお、周面厚みは、導電ペーストを希釈することで調整した。その後、1250℃の窒素-水素雰囲気で焼成を行ない、所定の熱処理を行なった。その後、外部電極を下地層として、めっき処理を行なった。
【0060】
実施例1~4および比較例1~4の形状は、1005形状(長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mm)であった。実施例5~8および比較例5~8の形状は、1608形状(長さ1.6mm、幅0.8mm、高さ0.8mm)であった。実施例9~12および比較例9~12の形状は、2012形状(長さ2.0mm、幅1.25mm、高さ1.25mm)であった。実施例13~16および比較例13~16は、3216形状(長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mm)であった。
【0061】
実施例1~16および比較例1~16のそれぞれについて、距離C1、距離P1および曲率半径R1を測定した。各サンプルの2側面のいずれか一方を上にして横埋めにて中央まで研磨することで断面を取り出した。距離C1、距離P1および曲率半径R1については、10サンプルずつの平均値とした。
【0062】
実施例1では、距離C1は24.2μmであり、距離P1は55.1μmであり、曲率半径R1は11.8μmであり、R1/√(P1-C1)は0.24であった。実施例2では、距離C1は25.0μmであり、距離P1は56.1μmであり、曲率半径R1は37.8μmであり、R1/√(P1-C1)は0.75であった。実施例3では、距離C1は148.0μmであり、距離P1は211.0μmであり、曲率半径R1は34.2μmであり、R1/√(P1-C1)は0.23であった。実施例4では、距離C1は149.2μmであり、距離P1は212.5μmであり、曲率半径R1は114.2μmであり、R1/√(P1-C1)は0.76であった。実施例5では、距離C1は40.5μmであり、距離P1は108.0μmであり、曲率半径R1は24.0μmであり、R1/√(P1-C1)は0.24であった。実施例6では、距離C1は38.0μmであり、距離P1は105.9μmであり、曲率半径R1は74.8μmであり、R1/√(P1-C1)は0.76であった。実施例7では、距離C1は247.2μmであり、距離P1は349.0μmであり、曲率半径R1は57.2μmであり、R1/√(P1-C1)は0.23であった。実施例8では、距離C1は247.9μmであり、距離P1は349.7μmであり、曲率半径R1は185.0μmであり、R1/√(P1-C1)は0.75であった。
【0063】
実施例9では、距離C1は79.3μmであり、距離P1は260.2μmであり、曲率半径R1は61.8μmであり、R1/√(P1-C1)は0.25であった。実施例10では、距離C1は79.9μmであり、距離P1は262.0μmであり、曲率半径R1は190.0μmであり、R1/√(P1-C1)は0.76であった。実施例11では、距離C1は394.2μmであり、距離P1は553.7μmであり、曲率半径R1は96.8μmであり、R1/√(P1-C1)は0.25であった。実施例12は、距離C1は398.5μmであり、距離P1は557.0μmであり、曲率半径R1は305.1μmであり、R1/√(P1-C1)は0.78であった。実施例13では、距離C1は97.6μmであり、距離P1は313.0μmであり、曲率半径R1は74.0μmであり、R1/√(P1-C1)は0.25であった。実施例14では、距離C1は98.0μmであり、距離P1は313.8μmであり、曲率半径R1は234.3μmであり、R1/√(P1-C1)は0.79であった。実施例15では、距離C1は488.5μmであり、距離P1は700.0μmであり、曲率半径R1は124.8μmであり、R1/√(P1-C1)は0.25であった。実施例16では、距離C1は491.1μmであり、距離P1は705.4μmであり、曲率半径R1は395.8μmであり、R1/√(P1-C1)は0.78であった。
【0064】
比較例1では、距離C1は26.3μmであり、距離P1は56.8μmであり、曲率半径R1は8.1μmであり、R1/√(P1-C1)は0.16であった。比較例2では、距離C1は25.6μmであり、距離P1は56.4μmであり、曲率半径R1は44.3μmであり、R1/√(P1-C1)は0.88であった。比較例3では、距離C1は150.3μmであり、距離P1は213.4μmであり、曲率半径R1は20.4μmであり、R1/√(P1-C1)は0.14であった。比較例4では、距離C1は148.7μmであり、距離P1は211.3μmであり、曲率半径R1は129.5μmであり、R1/√(P1-C1)は0.86であった。比較例5では、距離C1は39.4μmであり、距離P1は106.5μmであり、曲率半径R1は15.3μmであり、R1/√(P1-C1)は0.16であった。比較例6では、距離C1は39.7μmであり、距離P1は107.5μmであり、曲率半径R1は87.4μmであり、R1/√(P1-C1)は0.88であった。比較例7では、距離C1は250.2μmであり、距離P1は350.1μmであり、曲率半径R1は35.3μmであり、R1/√(P1-C1)は0.14であった。比較例8では、距離C1は248.9μmであり、距離P1は349.8μmであり、曲率半径R1は211.4μmであり、R1/√(P1-C1)は0.86であった。
【0065】
比較例9では、距離C1は78.5μmであり、距離P1は259.0μmであり、曲率半径R1は39.5μmであり、R1/√(P1-C1)は0.16であった。比較例10では、距離C1は78.3μmであり、距離P1は258.1μmであり、曲率半径R1は213.4μmであり、R1/√(P1-C1)は0.87であった。比較例11では、距離C1は396.5μmであり、距離P1は555.5μmであり、曲率半径R1は60.6μmであり、R1/√(P1-C1)は0.16であった。比較例12では、距離C1は396.9μmであり、距離P1は556.6μmであり、曲率半径R1は339.7μmであり、R1/√(P1-C1)は0.87であった。比較例13では、距離C1は98.5μmであり、距離P1は313.4μmであり、曲率半径R1は50.7μmであり、R1/√(P1-C1)は0.17であった。比較例14では、距離C1は98.8μmであり、距離P1は314.4μmであり、曲率半径R1は270.3μmであり、R1/√(P1-C1)は0.91であった。比較例15では、距離C1は489.6μmであり、距離P1は702.4μmであり、曲率半径R1は78.7μmであり、R1/√(P1-C1)は0.16であった。比較例16では、距離C1は489.2μmであり、距離P1は703.4μmであり、曲率半径R1は464.4μmであり、R1/√(P1-C1)は0.92であった。
【0066】
(クラック判定)
実施例1~16および比較例1~16のそれぞれについて、100サンプルにクラックが発生しているか否かを調べた。クラックが発生しているサンプル数を数えることで、クラック発生率を測定した。結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1~16のいずれにおいても、クラック発生率は0/100となった。一方、比較例1,3,5,7,9,11,13,15では、クラックが発生しているサンプルが見られた。すなわち、クラック発生率が1/100以上となった。これらの結果を図13のようにプロットした。図13のプロットの結果から、R1/√(P1-C1)が0.20以上であることで、クラック発生率が0/100となったものと考えられる。これは、角部Bと交点N1との距離が短くなったからであると考えられる。一方、R1/√(P1-C1)が0.20未満となったことで、クラック発生率が1/100以上となったものと考えられる。これは、角部Bと交点N1との距離が長くなったからであると考えられる。
【0067】
(信頼性判定)
実施例1~16および比較例1~16のそれぞれについて、200サンプルの信頼性を調べた。具体的には、耐湿槽において、外部電極間に定格電圧を印加した状態で1000h維持し、IR値が規定値未満になっていれば信頼性不良と判定し、IRが規定値以上になっていれば信頼性に不良が生じていないと判定した。信頼性不良が発生しているサンプル数を数えることで、信頼性不良率を測定した。結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1~16のいずれにおいても、信頼性不良率が0/200となった。一方、比較例2,4,6,8,10,12,14,16では、信頼性不良が生じているサンプルが見られた。すなわち、信頼性不良率が1/200以上となった。これらの結果を図13のようにプロットした。図13のプロットの結果から、R1/√(P1-C1)が0.80以下であることで、信頼性不良率が0/200となったものと考えられる。これは、角部Bと交点N1との距離が確保され、耐湿性が向上したからであると考えられる。一方、R1/√(P1-C1)が0.80を上回ったことで、信頼性不良率が1/200以上となったものと考えられる。これは、角部Bと交点N1との距離が十分に確保されなかったからであると考えられる。
【0068】
(総合判定)
クラック不良率が0/100かつ信頼性不良率が0/200であれば総合判定を良とした。クラック不良率=1/100以上、信頼性不良率=1/200以上の少なくともいずれかになれば、総合判定不良とした。結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1~16では、総合判定が良と判定された。これは、0.20≦R1/√(P1-C1)≦0.80の関係を満たしたからであると考えられる。比較例1~16では、総合判定が不良と判定された。これは、0.20≦R1/√(P1-C1)≦0.80の関係を満たさなかったからであると考えられる。
【0069】
(めっき性判定)
実施例1~16および比較例1~16について、めっき性を判定した。光学顕微鏡で100倍の倍率で観察し、角部Bが欠落なくめっき層に覆われていれば、めっき性が良好であると判定し、角部Bにおけるめっき層に欠落した不連続な部分があればめっき性が不良であると判定した。結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1~16および比較例1~16のいずれにおいても、めっき性が良好であると判定された。これは、外部電極に変曲点(段差)などを設けず、角部における外部電極の厚みが十分に得られたからであると考えられる。
【表1】
【0070】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 積層チップ
11 誘電体層
12 内部電極層
13 カバー層
20a,20b 外部電極
51 誘電体グリーンシート
52 第1パターン
53 第2パターン
54 カバーシート
55 サイドマージンシート
100 積層セラミックコンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13