(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜及び合わせガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20241009BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
C03C27/12 D
B32B17/10
(21)【出願番号】P 2019515564
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2019003180
(87)【国際公開番号】W WO2019151327
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-20
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2018017723
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 由貴
(72)【発明者】
【氏名】河田 晋治
(72)【発明者】
【氏名】岩本 達矢
(72)【発明者】
【氏名】松木 信緒
【合議体】
【審判長】深草 祐一
【審判官】宮澤 尚之
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/076339(WO,A1)
【文献】特開平10-177390(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158696(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/023644(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/170259(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C27/00-27/12
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1層の構造又は2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であり、
前記中間膜は、樹脂層を備え、
前記中間膜の周波数1Hz及びせん断モードでの粘弾性測定において、tanδの最大ピークのピーク温度での第1の貯蔵弾性率G’の、tanδの最大ピークのピーク温度よりも100℃高い温度での第2の貯蔵弾性率G’に対する比が、
132以上
474以下であ
り、
前記tanδの最大ピークのピーク温度が、-4℃以上1.1℃以下であり、
前記tanδの最大ピーク値が、2.1以上3.1以下であり、
前記第1の貯蔵弾性率G’が、1.2×10
6
Pa以上7.5×10
6
Pa以下であり、
前記第2の貯蔵弾性率G’が、2.5×10
3
Pa以上5.7×10
4
Pa以下である、合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜である、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
下記の第1,第2及び第3の工程を経て得られる合わせガラスXのISO 16940に準拠した機械インピーダンス測定において、0℃以上40℃以下の温度領域の全体で、一次損失係数が0.15以上である、請求項1
又は2に記載の合わせガラス用中間膜。
第1の工程:幅25mm及び長さ300mmの中間膜を用意する。JIS R3202に準拠した厚み2.0mm、幅25mm及び長さ300mmのクリアフロートガラス2枚を用意する。2枚のクリアフロートガラスの間に中間膜を挟み、積層体Xを得る。
第2の工程:得られた積層体Xをゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体Xを予備圧着する。
第3の工程:オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体Xを20分間圧着し、合わせガラスXを得る。
【請求項4】
前記合わせガラスXのISO 16940に準拠した機械インピーダンス測定において、0℃以上50℃以下の温度領域の全体で、一次損失係数が0.15以上である、請求項
3に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
前記中間膜は、前記樹脂層として、硬化物を含む層を備え、
前記硬化物が、光硬化性化合物又は湿気硬化性化合物を硬化させた硬化物である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
前記硬化物が、光硬化性化合物を硬化させた硬化物である、請求項
5に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
前記中間膜は、前記樹脂層として、硬化物を含む層を備え、
前記硬化物が、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物を硬化させた硬化物である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
前記中間膜は、前記樹脂層として、光硬化性化合物を硬化させた硬化物、湿気硬化性化合物を硬化させた硬化物及び(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物を硬化させた硬化物とはそれぞれ異なる樹脂を含む層を備える、請求項1~
4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
前記中間膜は、第1の樹脂層として、前記硬化物を含む層を備え、
前記中間膜は、第2の樹脂層として、光硬化性化合物を硬化させた硬化物、湿気硬化性化合物を硬化させた硬化物及び(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物を硬化させた硬化物とはそれぞれ異なる樹脂を含む層を備える、請求項
5~
7のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
前記樹脂を含む層に含まれる前記樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂である、請求項
8又は
9に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項11】
下記の第1,第2,第3,第4及び第5の工程を備える音響透過損失測定を行ったときに、下記の第1の構成と下記の第2の構成とを満たす、請求項1~
10のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
第1の構成:500Hz以上1000Hz以下の音響透過損失が、下記式(1)を満たす。
y≧10.1×ln(x)-35・・・式(1)
式(1)中、xは周波数(Hz)を意味し、yは音響透過損失(dB)を意味する。
第2の構成:5000Hz以上10000Hz以下の音響透過損失が、下記式(2)を満たす。
y≧12.8×ln(x)-68・・・式(2)
式(2)中、xは周波数(Hz)を意味し、yは音響透過損失(dB)を意味する。
第1の工程:縦500mm及び横500mmの中間膜を用意する。厚み2mm、縦500mm及び横500mmのグリーンガラス2枚を用意する。2枚のグリーンガラスの間に中間膜を挟み、積層体Yを得る。
第2の工程:得られた積層体Yをゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体Yを予備圧着する。
第3の工程:オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体Yを20分間圧着し、室温23±2℃、湿度25±5%の環境下に84週間保管して合わせガラスYを得る。
第4の工程:音源室である第1の残響室と、受音室である第2の残響室とが連結されたISO 10140-5に準拠した残響室を準備する。得られた合わせガラスYを、第1の残響室と、第2の残響室との間に設置する。
第5の工程:JIS A1441-1に準拠して20℃での音響透過損失をインテンシティ法にて、中心周波数1/3オクターブバンドで測定する。
【請求項12】
第1の合わせガラス部材と、
第2の合わせガラス部材と、
請求項1~
11のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜とを備え、
前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に、前記合わせガラス用中間膜が配置されている、合わせガラス。
【請求項13】
第1の合わせガラス部材と、
第2の合わせガラス部材と、
合わせガラス用中間膜とを備え、
前記中間膜は、1層の構造又は2層以上の構造を有し、
前記中間膜は、樹脂層を備え、
前記中間膜の周波数1Hz及びせん断モードでの粘弾性測定において、tanδの最大ピークのピーク温度での第1の貯蔵弾性率G’の、tanδの最大ピークのピーク温度よりも100℃高い温度での第2の貯蔵弾性率G’に対する比が、
132以上
474以下であり、
前記tanδの最大ピークのピーク温度が、-4℃以上1.1℃以下であり、
前記tanδの最大ピーク値が、2.1以上3.1以下であり、
前記第1の貯蔵弾性率G’が、1.2×10
6
Pa以上7.5×10
6
Pa以下であり、
前記第2の貯蔵弾性率G’が、2.5×10
3
Pa以上5.7×10
4
Pa以下であり、
合わせガラスのISO 16940に準拠した機械インピーダンス測定において、0℃以上40℃以下の温度領域の全体で、一次損失係数が0.15以上である、合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜に関する。また、本発明は、上記合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片の飛散量が少なく、安全性に優れている。このため、上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に広く使用されている。上記合わせガラスは、2つのガラス板の間に合わせガラス用中間膜を挟み込むことにより、製造されている。
【0003】
上記合わせガラス用中間膜の一例として、下記の特許文献1には、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂から選ばれる少なくとも1種類の樹脂(a1)を含む組成物(A)により形成された遮音層を備える中間膜が開示されている。上記組成物を厚さ0.8mmに成形したシートの動的粘弾性を周波数0.3Hz及び引張モードで測定した際に得られるtanδは、温度TA(℃)に極大値を有する。上記動的粘弾性の測定において、TA(℃)は、-50~50℃の範囲内であり、TA(℃)におけるtanδは2.5以上である。
【0004】
特許文献1では、上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリカルボン酸ビニル、オレフィン-カルボン酸ビニル共重合体、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、スチレン-ジエンブロック共重合体、及び塩素化ポリオレフィンが挙げられている。上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン樹脂、及び不飽和ポリエステル系樹脂が挙げられている。
【0005】
また、特許文献1では、上記の中間膜の遮音性が高くなることが記載されている。特許文献1の実施例では、0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃及び40℃の温度での音響透過損失の測定結果として、音響透過損失の平均値が最も大きい温度と、音響透過損失の平均値が最も大きい温度における音響透過損失(複数の周波数での平均値)とが記載されている。
【0006】
また、下記の特許文献2には、粘弾性プラスチックインサート(中間膜)が開示されている。特許文献2には、上記インサートの10℃~50℃のせん断弾性率G’が記載されている。特許文献2では、上記インサートの10℃~50℃の動的損失率tanδが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2017/170259A1
【文献】WO2007/135317A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
中間膜を用いた合わせガラスは、様々な温度環境で用いられる。従来の中間膜を用いた合わせガラスでは、広い温度範囲に渡り、遮音性を高めることができないことがある。特定の1つの温度における遮音性が高い合わせガラスであっても、その温度とは異なる温度で合わせガラスが用いられると、遮音性が低くなることがある。
【0009】
また、特許文献1では、上記の中間膜の遮音性が高くなることが記載されている。しかしながら、特許文献1では、0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃及び40℃の温度での音響透過損失が評価されている一方で、複数の各温度の全てにおける音響透過損失の結果は記載されていない。特許文献1では、広い温度範囲に渡り遮音性が高くなることは実施例により示されていない。
【0010】
特許文献2では、10℃、20℃、30℃、40℃、及び50℃の温度での動的損失率tanδが記載されている。しかし、0℃~10℃を含む広い温度範囲に渡り遮音性が高くなることは実施例により示されていない。
【0011】
本発明の目的は、0℃~40℃の広い温度範囲に渡り、遮音性を高めることができる合わせガラス用中間膜を提供することである。また、本発明は、上記合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することも目的とする。
【0012】
本発明の更なる目的は、0℃~50℃の広い温度範囲に渡り、遮音性を高めることができる合わせガラス用中間膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の広い局面によれば、1層の構造又は2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であり、前記中間膜は、樹脂層を備え、前記中間膜の周波数1Hz及びせん断モードでの粘弾性測定において、tanδの最大ピークのピーク温度での第1の貯蔵弾性率G’の、tanδの最大ピークのピーク温度よりも100℃高い温度での第2の貯蔵弾性率G’に対する比が、50以上500以下である、合わせガラス用中間膜(以下、中間膜と記載することがある)が提供される。
【0014】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜である。
【0015】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記tanδの最大ピーク値が2.0以上である。
【0016】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、下記の第1,第2及び第3の工程を経て得られる合わせガラスXのISO 16940に準拠した機械インピーダンス測定において、0℃以上40℃以下の温度領域の全体で、一次損失係数が0.15以上である。
【0017】
第1の工程:幅25mm及び長さ300mmの中間膜を用意する。JIS R3202に準拠した厚み2.0mm、幅25mm及び長さ300mmのクリアフロートガラス2枚を用意する。2枚のクリアフロートガラスの間に中間膜を挟み、積層体Xを得る。
【0018】
第2の工程:得られた積層体Xをゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体Xを予備圧着する。
【0019】
第3の工程:オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体Xを20分間圧着し、合わせガラスXを得る。
【0020】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記合わせガラスXのISO 16940に準拠した機械インピーダンス測定において、0℃以上50℃以下の温度領域の全体で、一次損失係数が0.15以上である
【0021】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記tanδの最大ピークのピーク温度が、-20℃以上20℃以下である。
【0022】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記中間膜は、前記樹脂層として、硬化物を含む層を備え、前記硬化物が、光硬化性化合物又は湿気硬化性化合物を硬化させた硬化物である。
【0023】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記硬化物が、光硬化性化合物を硬化させた硬化物である。
【0024】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記中間膜は、前記樹脂層として、硬化物を含む層を備え、前記硬化物が、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物を硬化させた硬化物である。
【0025】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記中間膜は、前記樹脂層として、光硬化性化合物を硬化させた硬化物、湿気硬化性化合物を硬化させた硬化物及び(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物を硬化させた硬化物とはそれぞれ異なる樹脂を含む層を備える。
【0026】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記中間膜は、第1の樹脂層として、前記硬化物を含む層を備え、前記中間膜は、第2の樹脂層として、光硬化性化合物を硬化させた硬化物、湿気硬化性化合物を硬化させた硬化物及び(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物を硬化させた硬化物とはそれぞれ異なる樹脂を含む層を備える。
【0027】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記樹脂を含む層に含まれる前記樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂である。
【0028】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、下記の第1,第2,第3,第4及び第5の工程を備える音響透過損失測定を行ったときに、下記の第1の構成と下記の第2の構成とを満たす。
【0029】
第1の構成:500Hz以上1000Hz以下の音響透過損失が、下記式(1)を満たす。
【0030】
y≧10.1ln(x)-35・・・式(1)
【0031】
式(1)中、xは周波数(Hz)を意味し、yは音響透過損失(dB)を意味する。
【0032】
第2の構成:5000Hz以上10000Hz以下の音響透過損失が、下記式(2)を満たす。
【0033】
y≧12.8ln(x)-68・・・式(2)
【0034】
式(2)中、xは周波数(Hz)を意味し、yは音響透過損失(dB)を意味する。
【0035】
第1の工程:縦500mm及び横500mmの中間膜を用意する。厚み2mm、縦500mm及び横500mmのグリーンガラス2枚を用意する。2枚のグリーンガラスの間に中間膜を挟み、積層体Yを得る。
【0036】
第2の工程:得られた積層体Yをゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体Yを予備圧着する。
【0037】
第3の工程:オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体Yを20分間圧着し、室温23±2℃、湿度25±5%の環境下に84週間保管して合わせガラスYを得る。
【0038】
第4の工程:音源室である第1の残響室と、受音室である第2の残響室とが連結されたISO 10140-5に準拠した残響室を準備する。得られた合わせガラスYを、第1の残響室と、第2の残響室との間に設置する。
【0039】
第5の工程:JIS A1441-1に準拠して20℃での音響透過損失をインテンシティ法にて、中心周波数1/3オクターブバンドで測定する。
【0040】
本発明の広い局面によれば、1層の構造又は2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であり、前記中間膜は、樹脂層を備え、上記の第1,第2,第3,第4及び第5の工程を備える音響透過損失測定を行ったときに、下記の第1の構成と下記の第2の構成とを満たす、合わせガラス用中間膜(以下、中間膜と記載することがある)が提供される。
【0041】
本発明の広い局面によれば、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、上述した合わせガラス用中間膜とを備え、前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に、前記合わせガラス用中間膜が配置されている、合わせガラスが提供される。
【0042】
本発明の広い局面によれば、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、合わせガラス用中間膜とを備え、前記中間膜は、1層の構造又は2層以上の構造を有し、前記中間膜は、樹脂層を備え、前記中間膜の周波数1Hz及びせん断モードでの粘弾性測定において、tanδの最大ピークのピーク温度での第1の貯蔵弾性率G’の、tanδの最大ピークのピーク温度よりも100℃高い温度での第2の貯蔵弾性率G’に対する比が、50以上500以下であり、合わせガラスのISO 16940に準拠した機械インピーダンス測定において、0℃以上40℃以下の温度領域の全体で、一次損失係数が0.15以上である、合わせガラスが提供される。
【0043】
本発明の広い局面によれば、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、合わせガラス用中間膜とを備え、下記の第1,第2及び第3の工程を備える音響透過損失測定を行ったときに、下記の第1の構成と下記の第2の構成とを満たす、合わせガラスが提供される。
【0044】
第1の構成:500Hz以上1000Hz以下の音響透過損失が、下記式(1)を満たす。
【0045】
y≧10.1ln(x)-35・・・式(1)
【0046】
式(1)中、xは周波数(Hz)を意味し、yは音響透過損失(dB)を意味する。
【0047】
第2の構成:5000Hz以上10000Hz以下の音響透過損失が、下記式(2)を満たす。
【0048】
y≧12.8ln(x)-68・・・式(2)
【0049】
式(2)中、xは周波数(Hz)を意味し、yは音響透過損失(dB)を意味する。
【0050】
第1の工程:縦500mm及び横500mmの合わせガラスを用意する。
【0051】
第2の工程:音源室である第1の残響室と、受音室である第2の残響室とが連結されたISO 10140-5に準拠した残響室を準備する。縦500mm及び横500mmの合わせガラスを、第1の残響室と、第2の残響室との間に設置する。
【0052】
第3の工程:JIS A1441-1に準拠して20℃での音響透過損失をインテンシティ法にて、中心周波数1/3オクターブバンドで測定する。
【発明の効果】
【0053】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、1層の構造又は2層以上の構造を有する。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、樹脂層を備える。本発明に係る合わせガラス用中間膜の周波数1Hz及びせん断モードでの粘弾性測定において、tanδの最大ピークのピーク温度での第1の貯蔵弾性率G’の、tanδの最大ピークのピーク温度よりも100℃高い温度での第2の貯蔵弾性率G’に対する比が、50以上500以下である。本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上記の構成が備えられているので、0℃~40℃の広い温度範囲に渡り、遮音性を高めることができる。本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上記の構成が備えられているので、0℃~50℃の広い温度範囲に渡り、遮音性を高めることもできる。本発明に係る合わせガラス用中間膜を車両等に用いた場合には、本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上記の構成が備えられているので、エンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性を高めることもできる。
【0054】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、1層の構造又は2層以上の構造を有する。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、樹脂層を備える。本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上記の第1,第2,第3,第4及び第5の工程を備える音響透過損失測定を行ったときに、上記の第1の構成と上記の第2の構成とを満たす。本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上記の構成が備えられているので、0℃~40℃の広い温度範囲に渡り、遮音性を高めることができる。本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上記の構成が備えられているので、0℃~50℃の広い温度範囲に渡り、遮音性を高めることもできる。本発明に係る合わせガラス用中間膜を車両等に用いた場合には、本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上記の構成が備えられているので、エンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性を高めることもできる。
【0055】
本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、合わせガラス用中間膜とを備える。本発明に係る合わせガラスでは、上記中間膜は、1層の構造又は2層以上の構造を有する。本発明に係る合わせガラスでは、上記中間膜は、樹脂層を備える。本発明に係る合わせガラスでは、上記中間膜の周波数1Hz及びせん断モードでの粘弾性測定において、tanδの最大ピークのピーク温度での第1の貯蔵弾性率G’の、tanδの最大ピークのピーク温度よりも100℃高い温度での第2の貯蔵弾性率G’に対する比が、50以上500以下である。本発明に係る合わせガラスのISO 16940に準拠した機械インピーダンス測定において、0℃以上40℃以下の温度領域の全体で、一次損失係数が0.15以上である。本発明に係る合わせガラスでは、上記の構成が備えられているので、0℃~40℃の広い温度範囲に渡り、遮音性を高めることができる。本発明に係る合わせガラスでは、上記の構成が備えられているので、0℃~50℃の広い温度範囲に渡り、遮音性を高めることもできる。本発明に係る合わせガラスを車両等に用いた場合には、本発明に係る合わせガラスでは、上記の構成が備えられているので、エンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性を高めることもできる。
【0056】
本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、合わせガラス用中間膜とを備える。本発明に係る合わせガラスでは、上記の第1,第2及び第3の工程を備える音響透過損失測定を行ったときに、上記の第1の構成と上記の第2の構成とを満たす。本発明に係る合わせガラスでは、上記の構成が備えられているので、0℃~40℃の広い温度範囲に渡り、遮音性を高めることができる。本発明に係る合わせガラスでは、上記の構成が備えられているので、0℃~50℃の広い温度範囲に渡り、遮音性を高めることもできる。本発明に係る合わせガラスを車両等に用いた場合には、本発明に係る合わせガラスでは、上記の構成が備えられているので、エンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性を高めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0059】
(合わせガラス用中間膜)
本発明に係る合わせガラス用中間膜(以下、中間膜と記載することがある)は、1層の構造又は2層以上の構造を有する。本発明に係る中間膜は、1層の構造を有していてもよく、2層以上の構造を有していてもよい。本発明に係る中間膜は、樹脂層を備える。本発明に係る中間膜は、上記樹脂層を1層のみ備えていてもよく、2層以上備えていてもよい。本発明に係る中間膜は、少なくとも1層の樹脂層を備える。本発明に係る中間膜は、1層のみの構造を有する単層の中間膜であってもよく、2層以上の構造を有する多層の中間膜であってもよい。
【0060】
本発明に係る中間膜の周波数1Hz及びせん断モードでの粘弾性測定において、tanδの最大ピークのピーク温度での第1の貯蔵弾性率G’の、tanδの最大ピークのピーク温度よりも100℃高い温度での第2の貯蔵弾性率G’に対する比(第1の貯蔵弾性率G’/第2の貯蔵弾性率G’)は、50以上500以下である。
【0061】
本発明に係る中間膜では、上記の構成が備えられているので、0℃~40℃の広い温度範囲に渡り、遮音性を高めることができる。例えば、0℃、10℃、20℃、30℃及び40℃の中の1つの温度ではなく、これらの5つの全ての温度において、遮音性を高めることができる。さらに、本発明に係る中間膜では、上記の構成が備えられているので、0℃~50℃の広い温度範囲に渡り、遮音性を高めることもできる。例えば、0℃、10℃、20℃、30℃、40℃及び50℃の中の1つの温度ではなく、これらの6つの全ての温度において、遮音性を高めることもできる。従って、本発明に係る中間膜では、該中間膜を用いた合わせガラスが様々な温度環境で用いられても、高い遮音性を発揮することができる。
【0062】
広い温度範囲に渡り遮音性をより一層高める観点、並びにエンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性をより一層高める観点からは、上記比(第1の貯蔵弾性率G’/第2の貯蔵弾性率G’)は、好ましくは60以上、好ましくは450以下、より好ましくは400以下、更に好ましくは300以下、特に好ましくは250以下である。上記比(第1の貯蔵弾性率G’/第2の貯蔵弾性率G’)が上記下限以上及び上記上限以下であると、250Hz以上1000Hz以下の低周波数領域の遮音性がより一層高くなり、エンジン音が軽減される。
【0063】
広い温度範囲に渡り遮音性を効果的に高める観点からは、上記第1の貯蔵弾性率G’は、好ましくは1×105Pa以上である。広い温度範囲に渡り遮音性を効果的に高める観点からは、上記第1の貯蔵弾性率G’は、好ましくは1×108Pa以下、より好ましくは1×107Pa以下である。上記tanδの最大ピーク値が2.0以上であり、かつ上記第1の貯蔵弾性率G’が上記下限以上であると、5000Hz~10000Hzの高周波数領域の遮音性がより一層高くなり、ロード音が軽減される。
【0064】
上記粘弾性測定は、具体的には、以下のようにして測定される。試験片を、室温23±2℃、湿度25±5%の環境下に84週間以上保管した直後に、動的粘弾性測定装置を用いて、粘弾性を測定する。せん断モードで3℃/分の昇温速度で-50℃から200℃まで温度を上昇させる条件、並びに周波数1Hz及び歪1%の条件で測定する。
【0065】
上記動的粘弾性測定装置としては、アイティー計測制御社製の粘弾性測定装置「DVA-200」等が挙げられる。
【0066】
例えば、上記中間膜の厚みが0.3mm以上2mm以下であれば、上記中間膜を直接試験片として用いて、粘弾性測定を容易に行うことができる。上記中間膜の厚みが0.3mm未満である場合には、上記中間膜を複数重ねたり、厚みのみを調整した中間膜を別途作製したりして、厚みが0.3mm以上2mm以下の試験片を用いて、粘弾性測定を行ってもよい。上記中間膜の厚みが2mmを超える場合には、上記中間膜をスライス又はプレスしたり、厚みのみを調整した中間膜を別途作製したりして、厚みが0.3mm以上2mm以下の試験片を用いて、粘弾性測定を行ってもよい。
【0067】
合わせガラスの場合は、以下のようにして粘弾性測定用の試験片を得てもよい。2枚のPETフィルムを用意する。液体窒素等で合わせガラスを冷却後に合わせガラス部材と中間膜とを剥離する。2枚のPETフィルムの間に、剥離した中間膜を挟み込み、積層体を得る。得られた積層体をオートクレーブ圧着した後、室温23±2℃、湿度25±5%の環境下に84週間以上保管し、試験片とする。
【0068】
広い温度範囲に渡り遮音性をより一層高める観点、並びにエンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性をより一層高める観点からは、上記tanδの最大ピークのピーク温度は、好ましくは-30℃以上、より好ましくは-25℃以上、更に好ましくは-20℃以上である。広い温度範囲に渡り遮音性をより一層高める観点、並びにエンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性をより一層高める観点からは、上記tanδの最大ピークのピーク温度は、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは0℃以下である。
【0069】
上記tanδの最大ピーク値は、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.2以上、より一層好ましくは2.4以上、更に好ましくは2.5以上、更に一層好ましくは2.6以上、特に好ましくは2.8以上、最も好ましくは3.0以上である。上記tanδの最大ピーク値が上記下限以上であると、広い温度範囲に渡り遮音性を効果的に高めることができ、また、エンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性をより一層高めことができる。上記tanδのピーク温度でのtanδの上限は限定されない。上記tanδの最大ピーク値は6以下であってもよい。
【0070】
広い温度範囲に渡り遮音性をより一層高める観点からは、下記の第1,第2及び第3の工程を経て得られる合わせガラスXのISO 16940に準拠した機械インピーダンス測定において、0℃以上40℃以下の温度領域の全体で、一次損失係数が0.15以上であることが好ましい。
【0071】
広い温度範囲に渡り遮音性をより一層高める観点からは、下記の第1,第2及び第3の工程を経て得られる合わせガラスXのISO 16940に準拠した機械インピーダンス測定において、0℃以上50℃以下の温度領域の全体で、一次損失係数が0.15以上であることが好ましい。
【0072】
第1の工程:幅25mm及び長さ300mmの中間膜を用意する。JIS R3202に準拠した厚み2.0mm、幅25mm及び長さ300mmのクリアフロートガラス2枚を用意する。2枚のクリアフロートガラスの間に中間膜を挟み、積層体Xを得る。
【0073】
第2の工程:得られた積層体Xをゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体Xを予備圧着する。
【0074】
第3の工程:オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体Xを20分間圧着し、合わせガラスXを得る。
【0075】
広い温度範囲に渡り遮音性を効果的に高める観点から、並びにエンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性をより一層高める観点からは、下記の第1,第2,第3,第4及び第5の工程を備える音響透過損失測定を行ったときに、下記の第1の構成と下記の第2の構成とを満たすことが好ましい。
【0076】
第1の構成:500Hz以上1000Hz以下の音響透過損失が、下記式(1)を満たす。
【0077】
y≧10.1ln(x)-35・・・式(1)
【0078】
式(1)中、xは周波数(Hz)を意味し、yは音響透過損失(dB)を意味する。
【0079】
第2の構成:5000Hz以上10000Hz以下の音響透過損失が、下記式(2)を満たす。
【0080】
y≧12.8ln(x)-68・・・式(2)
【0081】
式(2)中、xは周波数(Hz)を意味し、yは音響透過損失(dB)を意味する。
【0082】
第1の工程:縦500mm及び横500mmの中間膜を用意する。厚み2mm、縦500mm及び横500mmのグリーンガラス2枚を用意する。2枚のグリーンガラスの間に中間膜を挟み、積層体Yを得る。
【0083】
第2の工程:得られた積層体Yをゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体Yを予備圧着する。
【0084】
第3の工程:オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体Yを20分間圧着し、室温23±2℃、湿度25±5%の環境下に84週間保管して合わせガラスYを得る。
【0085】
第4の工程:音源室である第1の残響室と、受音室である第2の残響室とが連結されたISO 10140-5に準拠した残響室を準備する。得られた合わせガラスYを、第1の残響室と、第2の残響室との間に設置する。
【0086】
第5の工程:JIS A1441-1に準拠して20℃での音響透過損失をインテンシティ法にて、中心周波数1/3オクターブバンドで測定する。
【0087】
上記第5の工程における20℃での音響透過損失は、例えば、リオン社製音響透過損失測定装置「インテンシティプローブSI-50、マルチチャンネルアナライザーSA-02」等を用いて測定することができる。
【0088】
なお、合わせガラスにおける中間膜を合わせガラス部材から剥離して、上記合わせガラスYを作製してもよい。例えば、合わせガラスを液体窒素等で冷却して中間膜を合わせガラス部材から剥離し、得られた中間膜について、上記の第1,第2及び第3の工程を行い合わせガラスYを得て、得られた合わせガラスYについて上記の第4,第5の工程を行ってもよい。また、例えば、上記合わせガラスの合わせガラス部材の厚みが2mmであり、合わせガラスのサイズが幅500mm以上及び長さ500mm以上の場合は、中心部をカットして幅500mm及び長さ500mmとしてもよい。
【0089】
広い温度範囲に渡り遮音性を効果的に高める観点、並びにエンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性をより一層高める観点からからは、上記中間膜は、上記樹脂層として、硬化物を含む層(第1の樹脂層)を備えることが好ましい。広い温度範囲に渡り遮音性をより一層高める観点、並びにエンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性をより一層高める観点からからは、上記硬化物は、光硬化性化合物又は湿気硬化性化合物を硬化させた硬化物であることが好ましい。広い温度範囲に渡り遮音性をより一層高める観点、並びにエンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性をより一層高める観点からからは、上記硬化物は、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物を硬化させた硬化物であることが好ましい。
【0090】
上記硬化性化合物は、光硬化性化合物又は湿気硬化性化合物であってもよく、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物であってもよい。また、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物は、光硬化性化合物であってもよく、湿気硬化性化合物であってもよく、光硬化性化合物及び湿気硬化性化合物の双方とは異なる硬化性化合物であってもよい。一般的に、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有するので、光の照射により硬化する。
【0091】
上記硬化物を含む層の硬化均一性を高め、広い温度範囲に渡り遮音性をより一層高める観点、並びにエンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性をより一層高める観点からは、上記硬化性化合物は、光硬化性化合物であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物であることが好ましい。上記硬化物を含む層の硬化均一性を高め、広い温度範囲に渡り遮音性をより一層高める観点、並びにエンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性をより一層高める観点からからは、上記硬化物は、(メタ)アクリル重合体であることが好ましい。
【0092】
広い温度範囲に渡り遮音性をより一層高める観点、並びにエンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性をより一層高める観点からからは、上記中間膜は、上記樹脂層として、光硬化性化合物を硬化させた硬化物、湿気硬化性化合物を硬化させた硬化物及び(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物を硬化させた硬化物とはそれぞれ異なる樹脂を含む層(第2の樹脂層)を備えることが好ましい。第2の樹脂層における該樹脂は、光硬化性化合物を硬化させた硬化物とは異なり、湿気硬化性化合物を硬化させた硬化物とは異なり、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物を硬化させた硬化物とは異なる。
【0093】
本発明に係る中間膜は、1層の構造を有していてもよく、2層の構造を有していてもよく、2層以上の構造を有していてもよく、3層の構造を有していてもよく、3層以上の構造を有していてもよく、4層の構造を有していてもよく、4層以上の構造を有していてもよく、5層の構造を有していてもよく、5層以上の構造を有していてもよい。
【0094】
本発明に係る中間膜は、第1の層と、上記第1の層の第1の表面側に配置された第2の層とを備えていてもよい。この場合に、上記第1の層が、上記硬化物を含む層であることが好ましい。
【0095】
遮音性及び各層間の接着性を効果的に高める観点からは、本発明に係る中間膜は、第1の層と、上記第1の層の第1の表面側に配置された第2の層とを備えていてもよく、上記第1の層の上記第1の表面側とは反対の第2の表面側に配置された第3の層をさらに備えていてもよい。この場合に、上記第1の層が、上記硬化物を含む層であることが好ましい。
【0096】
遮音性及び各層間の接着性を効果的に高める観点からは、本発明に係る中間膜は、上記第2の層の上記第1の層側とは反対側に配置された第4の層をさらに備えていてもよく、上記第3の層の上記第1の層側とは反対側に配置された第5の層をさらに備えていてもよい。この場合に、上記第1の層、上記第2の層又は上記第3の層が、上記硬化物を含む層であることが好ましい。上記第1の層が、上記硬化物を含む層であることがより好ましい。
【0097】
遮音性及び中間膜とガラスとの間の接着性を効果的に高める観点からは、上記硬化物を含む層は、中間膜における表面層ではないことが好ましく、中間膜における中間層であることが好ましい。但し、上記硬化物を含む層は、中間膜における表面層であってもよい。
【0098】
合わせガラスの透明性を高める観点からは、上記中間膜の可視光線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上である。
【0099】
上記可視光線透過率は、分光光度計(日立ハイテク社製「U-4100」)を用いて、JIS R3211:1998に準拠して、波長380~780nmにて測定される。
【0100】
上記中間膜の可視光線透過率は、2枚のクリアガラスの間に中間膜を配置して測定されてもよい。上記クリアガラスの厚みは、2.0mmであることが好ましい。
【0101】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0102】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
【0103】
図1に示す中間膜11は、2層以上の構造を有する多層の中間膜である。具体的には、中間膜11は、3層の構造を有する。中間膜11は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜11は、合わせガラス用中間膜である。中間膜11は、第1の層1と、第2の層2と、第3の層3とを備える。第1の層1の第1の表面1a側に、第2の層2が配置されており、積層されている。第1の層1の第1の表面1aとは反対の第2の表面1b側に、第3の層3が配置されており、積層されている。第1の層1は中間層である。第2の層2及び第3の層3はそれぞれ、保護層であり、本実施形態では表面層である。第1の層1は、第2の層2と第3の層3との間に配置されており、挟み込まれている。従って、中間膜11は、第2の層2と第1の層1と第3の層3とがこの順で積層された多層構造(第2の層2/第1の層1/第3の層3)を有する。
【0104】
中間膜11では、第1の層1が、上記硬化物を含む層であることが好ましい。第2の層2が、上記硬化物を含む層であってもよく、第3の層3が、上記硬化物を含む層であってもよい。
【0105】
なお、第2の層2と第1の層1との間、及び、第1の層1と第3の層3との間にはそれぞれ、他の層が配置されていてもよい。第2の層2と第1の層1、及び、第1の層1と第3の層3とはそれぞれ、直接積層されていることが好ましい。他の層として、接着層が挙げられる。
【0106】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
【0107】
図2に示す中間膜11Aは、2層以上の構造を有する多層の中間膜である。具体的には、中間膜11Aは、5層の構造を有する。中間膜11Aは、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜11Aは、合わせガラス用中間膜である。中間膜11Aは、第1の層1Aと、第2の層2Aと、第3の層3Aと、第4の層4Aと、第5の層5Aとを備える。第1の層1Aの第1の表面1a側に、第2の層2Aが配置されており、積層されている。第1の層1Aの第1の表面1aとは反対の第2の表面1b側に、第3の層3Aが配置されており、積層されている。第2の層2Aの第1の層1A側とは反対側に、第4の層4Aが配置されており、積層されている。第3の層3Aの第1の層1A側とは反対側に、第5の層5Aが配置されており、積層されている。第1の層1A、第2の層2A及び第3の層3Aはそれぞれ、中間層である。第4の層4A及び第5の層5Aはそれぞれ、保護層であり、本実施形態では表面層である。第1の層1Aは、第2の層2Aと第3の層3Aとの間に配置されており、挟み込まれている。第1の層1Aと第2の層2Aと第3の層3Aとの積層体は、第4の層4Aと第5の層5Aとの間に配置されており、挟み込まれている。従って、中間膜11Aは、第4の層4Aと第2の層2Aと第1の層1Aと第3の層3Aと第5の層5Aとがこの順で積層された多層構造(第4の層4A/第2の層2A/第1の層1A/第3の層3A/第5の層5A)を有する。
【0108】
中間膜11Aでは、第1の層1A、第2の層2A又は第3の層3Aが、上記硬化物を含む層であることが好ましく、第1の層1Aが、上記硬化物を含む層であることがより好ましい。第4の層4Aが、上記硬化物を含む層であってもよく、第5の層5Aが、上記硬化物を含む層であってもよい。
【0109】
なお、第4の層4Aと第2の層2Aとの間、第2の層2Aと第1の層1Aとの間、第1の層1Aと第3の層3Aとの間、及び第3の層3Aと第5の層5Aとの間にはそれぞれ、他の層が配置されていてもよい。第4の層4Aと第2の層2A、第2の層2Aと第1の層1A、第1の層1Aと第3の層3A、及び第3の層3Aと第5の層5Aとはそれぞれ、直接積層されていることが好ましい。他の層として、接着層が挙げられる。
【0110】
以下、本発明に係る中間膜、上記樹脂層(上記硬化物を含む層(第1の樹脂層)、上記樹脂を含む層(第2の樹脂層))、上記第1の層、上記第2の層、上記第3の層、上記第4の層及び上記第5の層の詳細、並びに中間膜に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0111】
(樹脂層)
上記中間膜は、樹脂層を備える。
【0112】
上記樹脂層は、樹脂を含む。上記樹脂としては、例えば、硬化樹脂(硬化物)、及び熱可塑性樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、熱可塑性エラストマーであってもよい。熱可塑性樹脂とは加熱すると軟化して可塑性を示し、室温まで冷却すると固化する樹脂である。熱可塑性エラストマーとは、熱可塑性樹脂の中でも特に、加熱すると軟化して可塑性を示し、室温(25℃)まで冷却すると固化してゴム弾性を示す樹脂を意味する。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂や、これら樹脂を変性した変性樹脂などが挙げられる。上記硬化樹脂は、硬化性化合物を硬化させた硬化物である。上記硬化性化合物としては、光硬化性化合物、湿気硬化性化合物及び熱硬化性化合物等が挙げられる。上記樹脂は、光硬化性化合物もしくは湿気硬化性化合物を硬化させた硬化物であってもよい。上記光硬化性化合物もしくは湿気硬化性化合物を硬化させた硬化物が、熱可塑性樹脂となることもある。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。上記に例示した熱可塑性樹脂は、樹脂の分子構造や重合度等の調整によって熱可塑性エラストマーとなりうる。
【0113】
広い温度範囲に渡り遮音性をより一層高める観点、並びにエンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性をより一層高める観点からからは、上記中間膜は、上記樹脂層として、上記硬化物を含む層(第1の樹脂層)を備えることが好ましい。上記中間膜は、上記樹脂層として、該第1の樹脂層のみを備えていてもよい。上記中間膜は、上記硬化物を含む層(第1の樹脂層)を、1層のみ備えていてもよく、2層以上備えていてもよい。
【0114】
上記中間膜は、光硬化性化合物を硬化させた硬化物、湿気硬化性化合物を硬化させた硬化物及び(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物を硬化させた硬化物とはそれぞれ異なる樹脂を含む層(第2の樹脂層)を備えることが好ましい。上記第2の樹脂層は、上記硬化物を含む層(第1の樹脂層)とは異なる樹脂層である。上記中間膜は、上記樹脂層として、該第2の樹脂層のみを備えていてもよい。上記中間膜は、上記樹脂を含む層(第2の樹脂層)を、1層のみ備えていてもよく、2層以上備えていてもよい。
【0115】
上記中間膜は、上記硬化物を含む層(第1の樹脂層)と、上記樹脂を含む層(第2の樹脂層)とを備えることが好ましい。この場合、上記中間膜は、上記第1の樹脂層及び上記第2の樹脂層をそれぞれ、1層のみ備えていてもよく、2層以上備えていてもよい。
【0116】
上記樹脂層を形成するための組成物100重量%中、上記樹脂の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。上記樹脂の含有量が上記下限以上であると、本発明の効果をより一層発揮することができる。なお、上記樹脂層を形成するための組成物100重量%中の上記樹脂の含有量は、100重量%(全量)であってもよい。
【0117】
<硬化物を含む層(第1の樹脂層)における硬化物を形成するための硬化性化合物及び硬化物)>
広い温度範囲に渡り遮音性をより一層高める観点、並びにエンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性をより一層高める観点からからは、上記中間膜は、上記硬化物を含む層(第1の樹脂層)を備えることが好ましい。上記硬化物を含む層における上記硬化物を形成するための硬化性化合物は、光硬化性化合物もしくは湿気硬化性化合物であることが好ましい。なお、上記中間膜は、上記樹脂層として、上記第1の樹脂層を備えなくてもよい。
【0118】
上記硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物であることが好ましく、(メタ)アクリル重合体であることがより好ましい。上記(メタ)アクリル重合体は、他の樹脂成分を含んでいてもよい。上記樹脂成分は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。
【0119】
上記(メタ)アクリル重合体は、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物を含む重合性組成物の重合体であることが好ましい。上記重合性組成物は、重合成分を含む。上記硬化物を含む層における上記硬化物を効果的に形成するために、上記重合性組成物は、光反応開始剤を含んでいてもよい。上記重合性組成物は、光反応開始剤とともに、硬化反応を促進するための助剤を含んでいてもよい。上記重合性組成物は、ポリビニルアセタール樹脂等の樹脂成分を含んでいてもよい。上記(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物の代表例としては、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。上記(メタ)アクリル重合体は、ポリ(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
【0120】
本発明の効果を効果的に得るために、上記重合成分は、脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、環状エーテル構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル、極性基を有する(メタ)アクリル酸エステル、又は側鎖の炭素数が6以下の非環式(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。これらの好ましい(メタ)アクリル酸エステルの使用により、遮音性と発泡抑制性能との双方をバランスよく高めることができる。
【0121】
上記脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、イソボロニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート等が挙げられる。
【0122】
上記環状エーテル構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートグリシジル、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル;(3-メチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-プロピルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-ブチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)エチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)プロピル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)ブチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)ペンチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)ヘキシル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-シクロヘキシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアルコールアクリル酸多量体エステル;テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル-(メタ)アクリレート、2-{1-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ]-2-メチルプロピル}(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。本発明の効果を効果的に得る観点から、特に、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレートが好ましい。
【0123】
上記芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、ベンジルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート等が挙げられる。
【0124】
上記極性基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、極性基として、水酸基、アミド基、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基等を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0125】
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0126】
アミド基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0127】
アミド基又はアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0128】
イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体等が挙げられる。
【0129】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸、ω-カルボキシーポリカプロラクトンモノアクリレート、2-アクリロイロキシエチルコハク酸等が挙げられる。
【0130】
上記(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリロイル基を有する多価カルボン酸エステルであってもよい。該(メタ)アクリロイル基を有する多価カルボン酸エステルとしては、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート等が挙げられる。
【0131】
本発明の効果を効果的に得る観点から、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、特に、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、又は4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0132】
上記側鎖の炭素数が6以下の非環式(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0133】
本発明の効果を効果的に得るために、上記重合成分100重量%中、側鎖の炭素数が8以上の非環式(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、20重量%未満であることが好ましい。
【0134】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、上記した化合物以外に、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシルプロピルフタレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)クリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)クリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2-アクリロイルオキシエチル)フォスフェート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート及びその誘導体等が挙げられる。
【0135】
上記(メタ)アクリル酸エステルは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記(メタ)アクリル重合体は、上記の(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体であってもよく、上記の(メタ)アクリル酸エステルを含む重合成分の共重合体であってもよい。
【0136】
上記光反応開始剤としては、具体的には、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、トリフェニルメチリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート等が挙げられる。上記光反応開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0137】
上記助剤としては、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等が挙げられる。上記助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0138】
上記助剤は、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイルイソプロピルエーテル、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、又はトリフェニルメチリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートであることが好ましい。
【0139】
上記重合性組成物100重量%中、上記光反応開始剤の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。上記光反応開始剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、光硬化性及び保存安定性がより一層高くなる。
【0140】
上記硬化物を含む層における上記硬化物を形成するための硬化性化合物が(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物等の光硬化性化合物であるとき、該光硬化性化合物を硬化させるために、紫外線照射装置等の光硬化性装置を用いることが好ましい。上記紫外線照射装置としてはボックスタイプやベルトコンベヤタイプ等が挙げられる。また、上記紫外線照射装置に設置させる紫外線ランプとしては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、ケミカルランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ、UV-LED等が挙げられる。上記紫外線ランプは、ケミカルランプ、又はUV-LEDが好ましい。
【0141】
上記硬化物を得るために上記光硬化性化合物に紫外線を照射する場合には、紫外線照射量(積算照射量)は、好ましくは500mJ以上、より好ましくは1000mJ以上、更に好ましくは1500mJ以上、特に好ましくは2000mJ以上である。上記紫外線照射量(積算照射量)は、好ましくは20000mJ以下、より好ましくは10000mJ以下、更に好ましくは8000mJ以下である。上記紫外線照射量(積算照射量)が上記下限以上であると未反応モノマーを減らすことができる。上記紫外線照射量(積算照射量)が上記下限以上であると樹脂の保存安定性が高くなる。また、上記紫外線照射の照射強度は、好ましくは0.1mW以上、より好ましくは0.5mW以上、更に好ましくは1mW以上、特に好ましくは2mW以上である。
【0142】
上記硬化物を含む層を形成するための組成物100重量%中、上記硬化物の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。上記硬化物の含有量が上記下限以上であると、本発明の効果をより一層発揮することができる。なお、上記硬化物を含む層を形成するための組成物100重量%中の上記硬化物の含有量は、100重量%(全量)であってもよい。
【0143】
<光硬化性化合物を硬化させた硬化物、湿気硬化性化合物を硬化させた硬化物及び(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物を硬化させた硬化物とはそれぞれ異なる樹脂を含む層(第2の樹脂層)における樹脂>
上記中間膜は、光硬化性化合物を硬化させた硬化物、湿気硬化性化合物を硬化させた硬化物及び(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物を硬化させた硬化物とはそれぞれ異なる樹脂を含む層(第2の樹脂層)を備えることが好ましい。上記第2の樹脂層は、上記硬化物を含む層(第1の樹脂層)とは異なる樹脂層である。なお、上記中間膜は、上記樹脂層として、上記第2の樹脂層を備えなくてもよい。
【0144】
上記第2の樹脂層に含まれる樹脂としては、熱硬化性化合物の硬化物、及び熱可塑性樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、熱可塑性エラストマーであってもよい。
【0145】
なお、熱可塑性樹脂とは加熱すると軟化して可塑性を示し、室温まで冷却すると固化する樹脂である。熱可塑性エラストマーとは、熱可塑性樹脂の中でも特に、加熱すると軟化して可塑性を示し、室温(25℃)まで冷却すると固化してゴム弾性を示す樹脂を意味する。
【0146】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、脂肪族ポリオレフィン、ポリスチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリ酢酸ビニル等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0147】
上記に例示した熱可塑性樹脂は、樹脂の分子構造や重合度等の調整によって熱可塑性エラストマーとなりうる。
【0148】
上記中間膜における表面層は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。第2の層/第1の層/第3の層の構造を有する中間膜における第2の層及び第3の層はそれぞれ、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。第4の層/第2の層/第1の層/第3の層/第5の層の構造を有する中間膜における第4の層及び第5の層はそれぞれ、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0149】
また、第4の層/第2の層/第1の層/第3の層/第5の層の構造を有する中間膜における第2の層及び第3の層はそれぞれ、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0150】
耐貫通性を高める観点からは、上記熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂、アイオノマー樹脂又はエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂であることが好ましい。耐貫通性をより一層高める観点からは、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。
【0151】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)をアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールのアセタール化物であることが好ましい。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70~99.9モル%の範囲内である。
【0152】
上記ポリビニルアルコール(PVA)の平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、より一層好ましくは1500以上、更に好ましくは1600以上、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3500以下、特に好ましくは3000以下である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、中間膜の成形が容易になる。
【0153】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0154】
上記ポリビニルアセタール樹脂に含まれるアセタール基の炭素数は特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂を製造する際に用いるアルデヒドは特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は3~5であることが好ましく、3又は4であることがより好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数が3以上であると、中間膜のガラス転移温度が充分に低くなる。
【0155】
上記アルデヒドは特に限定されない。一般には、炭素数が1~10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1~10のアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド又はn-バレルアルデヒドが好ましく、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドがより好ましく、n-ブチルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0156】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは15モル%以上、より好ましくは18モル%以上、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0157】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0158】
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、好ましくは10モル%以下、より好ましくは2モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
【0159】
上記アセチル化度は、アセチル基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセチル基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0160】
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは55モル%以上、より好ましくは60モル%以上、好ましくは75モル%以下、より好ましくは71モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0161】
上記アセタール化度は、以下のようにして求める。先ず、主鎖の全エチレン基量から、水酸基が結合しているエチレン基量と、アセチル基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を求める。得られた値を、主鎖の全エチレン基量で除算してモル分率を求める。このモル分率を百分率で示した値がアセタール化度である。
【0162】
なお、上記水酸基の含有率(水酸基量)、アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することが好ましい。但し、ASTM D1396-92による測定を用いてもよい。ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記水酸基の含有率(水酸基量)、上記アセタール化度(ブチラール化度)及び上記アセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
【0163】
(粘着付与樹脂)
上記中間膜は、粘着付与樹脂を含むことが好ましい。上記硬化物を含む層(第1の樹脂層)は、粘着付与樹脂を含むことが好ましい。上記樹脂を含む層(第2の樹脂層)は、粘着付与樹脂を含むことが好ましい。上記第1の層は、粘着付与樹脂を含むことが好ましい。上記粘着付与樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0164】
上記粘着付与樹脂としては、スチレン樹脂、テルペン樹脂、及びロジン樹脂等が挙げられる。ヘーズを良好に保ちながら、広い温度範囲に渡り遮音性を高める観点からは、上記粘着付与樹脂は、スチレン樹脂であることが好ましい。上記スチレン樹脂は、スチレンのオリゴマーであることが好ましい。上記スチレンのオリゴマーの市販品としては、例えばヤスハラケミカル社製「YSレジンSX100」等が挙げられる。
【0165】
粘着付与樹脂を含む樹脂層において、該樹脂層に含まれる該粘着付与樹脂を除く樹脂100重量部に対する粘着付与樹脂の含有量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上、更に好ましくは30重量部以上、好ましくは150重量部以下、より好ましくは100重量部以下である。上記粘着付与樹脂の含有量が上記下限以上であると、ヘーズを良好に保ちながら、広い温度範囲に渡り遮音性を高めることができる。
【0166】
(可塑剤)
上記中間膜は、可塑剤を含むことが好ましい。遮音性を効果的に高める観点からは、上記硬化物を含む層(第1の樹脂層)は、可塑剤を含むことが好ましい。上記樹脂を含む層(第2の樹脂層)は、可塑剤を含むことが好ましい。上記第1,第2,第3,第4,第5の層はそれぞれ、可塑剤を含むことが好ましい。可塑剤の使用により、各層間の接着力がより一層高くなる傾向がある。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0167】
上記可塑剤としては、パラフィンオイル、安息香酸エステル可塑剤、有機エステル可塑剤、有機リン酸可塑剤等が挙げられる。上記有機エステル可塑剤としては、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等が挙げられる。上記リン酸可塑剤としては、有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤等が挙げられる。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0168】
上記パラフィンオイルとしては、ナフテン系のプロセスオイル、白色鉱油、ミネラルオイル、パラフィンワックス及び流動パラフィン等が挙げられる。
【0169】
上記パラフィンオイルの市販品としては、出光興産社製「ダイアナプロセスオイルPW-90」、出光興産社製「ダイアナプロセスオイルPW-100」及び出光興産社製「ダイアナプロセスオイルPW-32」等が挙げられる。
【0170】
上記有機エステル可塑剤としては、トリエチレングリコールジ-2-エチルプロパノエート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ-n-オクタノエート、トリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,3-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,4-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、マレイン酸ジブチル、アジピン酸ビス(2-ブトキシエチル)、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2,2-ブトキシエトキシエチル、安息香酸グリコールエステル、アジピン酸1,3-ブチレングリコールポリエステル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、炭酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。上述のアジピン酸エステル以外の他のアジピン酸エステルを用いてもよい。
【0171】
構造式で示した場合に、上記有機エステル可塑剤としては、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤が挙げられる。
【0172】
【0173】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数2~10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn-プロピレン基を表し、pは3~10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数5~10の有機基であることが好ましく、炭素数6~10の有機基であることがより好ましい。
【0174】
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート(3GH)又はトリエチレングリコールジ-2-エチルプロパノエートを含むことが好ましい。上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート又はトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレートを含むことがより好ましく、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを含むことが更に好ましい。
【0175】
上記樹脂層において、上記樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量を含有量(0)とする。上記含有量(0)は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、更に好ましくは20重量部以上、好ましくは60重量部以下、より好ましくは50重量部以下である。上記含有量(0)が上記下限以上であると、遮音性を効果的に高めることができる。上記含有量(0)が上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0176】
上記硬化物を含む層(第1の樹脂層)において、上記硬化物100重量部に対する可塑剤の含有量を含有量(1)とする。上記含有量(1)は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、更に好ましくは20重量部以上、好ましくは60重量部以下、より好ましくは50重量部以下である。上記含有量(1)が上記下限以上であると、遮音性を効果的に高めることができる。上記含有量(1)が上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0177】
上記樹脂を含む層(第2の樹脂層)において、上記樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量を含有量(2)とする。上記含有量(2)は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、更に好ましくは20重量部以上、好ましくは60重量部以下、より好ましくは50重量部以下である。上記含有量(2)が上記下限以上であると、遮音性を効果的に高めることができる。上記可塑剤の含有量が上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0178】
(遮熱性物質)
上記中間膜は、遮熱性物質を含んでいてもよい。上記樹脂層は、遮熱性物質を含んでいてもよい。上記樹脂を含む層は、遮熱性物質を含んでいてもよい。上記第1,第2,第3,第4,第5の層はそれぞれ、遮熱性物質を含んでいてもよい。上記遮熱性物質は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0179】
上記遮熱性物質は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含むか、又は遮熱粒子を含んでいてもよい。この場合に、上記遮熱性物質は、上記成分Xと上記遮熱粒子との双方を含んでいてもよい。
【0180】
上記中間膜は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含んでいてもよい。上記硬化物を含む層は、上記成分Xを含んでいてもよい。上記樹脂を含む層は、上記成分Xを含んでいてもよい。上記第1,第2,第3,第4,第5の層はそれぞれ、上記成分Xを含んでいてもよい。上記成分Xは遮熱性物質である。上記成分Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0181】
上記成分Xは特に限定されない。成分Xとして、従来公知のフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物を用いることができる。
【0182】
上記成分Xとしては、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン、ナフタロシアニンの誘導体、アントラシアニン及びアントラシアニンの誘導体等が挙げられる。上記フタロシアニン化合物及び上記フタロシアニンの誘導体はそれぞれ、フタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記ナフタロシアニン化合物及び上記ナフタロシアニンの誘導体はそれぞれ、ナフタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記アントラシアニン化合物及び上記アントラシアニンの誘導体はそれぞれ、アントラシアニン骨格を有することが好ましい。
【0183】
上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有していてもよい。上記成分Xは、バナジウム原子を含有していてもよく、銅原子を含有していてもよい。上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニン及びバナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であってもよい。
【0184】
上記中間膜は、遮熱粒子を含んでいてもよい。上記硬化物を含む層は、遮熱粒子を含んでいてもよい。上記樹脂を含む層は、遮熱粒子を含んでいてもよい。上記第1の層は、上記遮熱粒子を含んでいてもよい。上記第2の層は、上記遮熱粒子を含んでいてもよい。上記第3の層は、上記遮熱粒子を含んでいてもよい。上記遮熱粒子は遮熱性物質である。遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。上記遮熱粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0185】
上記遮熱粒子として、金属酸化物粒子を用いることができる。上記遮熱粒子として、金属の酸化物により形成された粒子(金属酸化物粒子)を用いることができる。
【0186】
可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質に吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。上記遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。なお、遮熱粒子とは、赤外線を吸収可能な粒子を意味する。
【0187】
上記遮熱粒子の具体例としては、アルミニウムドープ酸化錫粒子、インジウムドープ酸化錫粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO粒子)、ガリウムドープ酸化亜鉛粒子(GZO粒子)、インジウムドープ酸化亜鉛粒子(IZO粒子)、アルミニウムドープ酸化亜鉛粒子(AZO粒子)、ニオブドープ酸化チタン粒子、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子、ルビジウムドープ酸化タングステン粒子、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子等の金属酸化物粒子や、六ホウ化ランタン(LaB6)粒子等が挙げられる。これら以外の遮熱粒子を用いてもよい。
【0188】
(金属塩)
上記中間膜は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びマグネシウム塩の内の少なくとも1種の金属塩(以下、金属塩Mと記載することがある)を含んでいてもよい。上記硬化物を含む層は、上記金属塩Mを含んでいてもよい。上記樹脂を含む層は、上記金属塩Mを含んでいてもよい。上記第1,第2,第3,第4,第5の層はそれぞれ、上記金属塩Mを含んでいてもよい。上記金属塩Mの使用により、中間膜とガラス板などの合わせガラス部材との接着性又は中間膜における各層間の接着性を制御することが容易になる。上記金属塩Mは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0189】
上記金属塩Mは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含んでいてもよい。
【0190】
また、上記金属塩Mとして、炭素数2~16の有機酸のアルカリ金属塩、炭素数2~16の有機酸のアルカリ土類金属塩又は炭素数2~16の有機酸のマグネシウム塩を用いることができる。
【0191】
上記炭素数2~16のカルボン酸マグネシウム塩及び上記炭素数2~16のカルボン酸カリウム塩としては、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2-エチル酪酸マグネシウム、2-エチルブタン酸カリウム、2-エチルヘキサン酸マグネシウム及び2-エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。
【0192】
(紫外線遮蔽剤)
上記中間膜は、紫外線遮蔽剤を含んでいてもよい。上記硬化物を含む層は、紫外線遮蔽剤を含んでいてもよい。上記樹脂を含む層は、紫外線遮蔽剤を含んでいてもよい。上記第1,第2,第3,第4,第5の層はそれぞれ、紫外線遮蔽剤を含んでいてもよい。紫外線遮蔽剤の使用により、中間膜及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率がより一層低下し難くなる。上記紫外線遮蔽剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0193】
上記紫外線遮蔽剤には、紫外線吸収剤が含まれる。上記紫外線遮蔽剤は、紫外線吸収剤であることが好ましい。
【0194】
上記紫外線遮蔽剤としては、例えば、金属原子を含む紫外線遮蔽剤、金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤、ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾトリアゾール化合物)、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾフェノン化合物)、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤(トリアジン化合物)、マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤(マロン酸エステル化合物)、シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤(シュウ酸アニリド化合物)及びベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾエート化合物)等が挙げられる。
【0195】
上記金属原子を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、白金粒子、白金粒子の表面をシリカで被覆した粒子、パラジウム粒子及びパラジウム粒子の表面をシリカで被覆した粒子等が挙げられる。紫外線遮蔽剤は、遮熱粒子ではないことが好ましい。
【0196】
上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウム等が挙げられる。さらに、上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤に関して、表面が被覆されていてもよい。上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤の表面の被覆材料としては、絶縁性金属酸化物、加水分解性有機ケイ素化合物及びシリコーン化合物等が挙げられる。
【0197】
上記絶縁性金属酸化物としては、シリカ、アルミナ及びジルコニア等が挙げられる。上記絶縁性金属酸化物は、例えば5.0eV以上のバンドギャップエネルギーを有する。
【0198】
上記ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「TinuvinP」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin320」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin326」)、及び2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin328」)等が挙げられる。
【0199】
上記ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、オクタベンゾン(BASF社製「Chimassorb81」)等が挙げられる。
【0200】
上記トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、ADEKA社製「LA-F70」及び2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(BASF社製「Tinuvin1577FF」)等が挙げられる。
【0201】
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤としては、2-(p-メトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル、テトラエチル-2,2-(1,4-フェニレンジメチリデン)ビスマロネート、2-(p-メトキシベンジリデン)-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル4-ピペリジニル)マロネート等が挙げられる。
【0202】
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤の市販品としては、Hostavin B-CAP、Hostavin PR-25、Hostavin PR-31(いずれもクラリアント社製)が挙げられる。
【0203】
上記シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤としては、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-5-t-ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-フェニル)シュウ酸ジアミド、2-エチル-2’-エトキシ-オキシアニリド(クラリアント社製「SanduvorVSU」)などの窒素原子上に置換されたアリール基などを有するシュウ酸ジアミド類が挙げられる。
【0204】
上記ベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(BASF社製「Tinuvin120」)等が挙げられる。
【0205】
(酸化防止剤)
上記中間膜は、酸化防止剤を含んでいてもよい。上記硬化物を含む層は、酸化防止剤を含んでいてもよい。上記樹脂を含む層は、酸化防止剤を含んでいてもよい。上記第1,第2,第3,第4,第5の層はそれぞれ、酸化防止剤を含んでいてもよい。上記酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0206】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。上記フェノール系酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記硫黄系酸化防止剤は硫黄原子を含有する酸化防止剤である。上記リン系酸化防止剤はリン原子を含有する酸化防止剤である。
【0207】
上記フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス-(4-メチル-6-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェノール)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,3’-t-ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル及びビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0208】
上記リン系酸化防止剤としては、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、及び2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0209】
上記酸化防止剤の市販品としては、例えばBASF社製「IRGANOX 245」、BASF社製「IRGAFOS 168」、BASF社製「IRGAFOS 38」、住友化学工業社製「スミライザーBHT」、堺化学工業社製「H-BHT」、並びにBASF社製「IRGANOX 1010」等が挙げられる。
【0210】
(他の成分)
上記中間膜、上記硬化物を含む層、上記樹脂を含む層、上記第1,第2,第3,第4,第5の層はそれぞれ、必要に応じて、カップリング剤、分散剤、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、金属塩以外の接着力調整剤、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0211】
(合わせガラス用中間膜の他の詳細)
上記中間膜の厚みは特に限定されない。実用面の観点、並びに合わせガラスの耐貫通性及び曲げ剛性を充分に高める観点からは、中間膜の厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上、好ましくは3mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。中間膜の厚みが上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性及び曲げ剛性がより一層高くなる。中間膜の厚みが上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層良好になる。
【0212】
中間膜の厚みをTとする。上記硬化物を含む層の厚み(1層当たりの厚み)は、好ましくは0.005T以上、より好ましくは0.010T以上、更に好ましくは0.020T以上、好ましくは0.180T以下、より好ましくは0.120T以下である。上記硬化物を含む層の厚み(1層当たりの厚み)が上記下限以上及び上記上限以下であると、広い温度範囲に渡り遮音性をより一層高めることができ、また、エンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性をより一層高めることができる。
【0213】
上記樹脂を含む層の厚み(1層当たりの厚み)は、好ましくは0.300T以上、より好ましくは0.350T以上、更に好ましくは0.400T以上、好ましくは0.950T以下、より好ましくは0.900T以下である。上記樹脂を含む層の厚み(1層当たりの厚み)が上記下限以上及び上記上限以下であると、広い温度範囲に渡り遮音性をより一層高めることができ、また、エンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性をより一層高めることができる。
【0214】
上記硬化物を含む層の厚み(1層当たりの厚み)は、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上、好ましくは600μm以下、より好ましくは300μm以下、更に好ましくは150μm以下、特に好ましくは100μm以下である。上記硬化物を含む層の厚み(1層当たりの厚み)が上記下限以上及び上記上限以下であると、広い温度範囲に渡り遮音性をより一層高めることができ、また、エンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性をより一層高めることができる。
【0215】
上記樹脂を含む層の厚み(1層当たりの厚み)は、好ましくは200μm以上、より好ましくは300μm以上、更に好ましくは350μm以上、好ましくは1000μm以下、より好ましくは850μm以下である。上記樹脂を含む層の厚み(1層当たりの厚み)が上記下限以上及び上記上限以下であると、広い温度範囲に渡り遮音性をより一層高めることができ、また、エンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性をより一層高めることができる。
【0216】
上記中間膜は、厚みが均一な中間膜であってもよく、厚みが変化している中間膜であってもよい。上記中間膜の断面形状は矩形であってもよく、楔形であってもよい。
【0217】
本発明に係る中間膜の製造方法は特に限定されない。本発明に係る中間膜の製造方法としては、例えば、各層を形成するための各樹脂組成物を用いて各層をそれぞれ形成した後に、得られた各層を積層する方法、並びに各層を形成するための各樹脂組成物を押出機を用いて共押出することにより、各層を積層する方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。
【0218】
中間膜の製造効率が優れることから、2つの表面層がある場合に、2つの表面層に同一のポリビニルアセタール樹脂が含まれていることが好ましく、2つの表面層に、同一のポリビニルアセタール樹脂及び同一の可塑剤が含まれていることがより好ましい。中間膜の製造効率が優れることから、2つの表面層が同一の樹脂組成物により形成されていることが更に好ましい。
【0219】
上記中間膜は、両側の表面の内の少なくとも一方の表面に凹凸形状を有することが好ましい。上記中間膜は、両側の表面に凹凸形状を有することがより好ましい。上記の凹凸形状を形成する方法としては特に限定されず、例えば、リップエンボス法、エンボスロール法、カレンダーロール法、及び異形押出法等が挙げられる。定量的に一定の凹凸模様である多数の凹凸形状のエンボスを形成することができることから、エンボスロール法が好ましい。
【0220】
(合わせガラス)
本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、上述した合わせガラス用中間膜とを備える。本発明に係る合わせガラスでは、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、上記合わせガラス用中間膜が配置されている。
【0221】
本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、上記第1の合わせガラス部材と、上記第2の合わせガラス部材との間に挟み込まれた合わせガラス用中間膜とを備える。本発明に係る合わせガラスでは、上記中間膜は、1層の構造又は2層以上の構造を有し、樹脂層を備える。
【0222】
本発明に係る合わせガラスでは、上記中間膜の周波数1Hz及びせん断モードでの粘弾性測定において、tanδの最大ピークのピーク温度での第1の貯蔵弾性率G’の、tanδの最大ピークのピーク温度よりも100℃高い温度での第2の貯蔵弾性率G’に対する比が、50以上500以下であることが好ましい。
【0223】
広い温度範囲に渡り遮音性をより一層高める観点からは、本発明に係る合わせガラスのISO 16940に準拠した機械インピーダンス測定において、0℃以上40℃以下の温度領域の全体で、一次損失係数が0.15以上であることが好ましい。
【0224】
広い温度範囲に渡り遮音性をより一層高める観点からは、本発明に係る合わせガラスのISO 16940に準拠した機械インピーダンス測定において、0℃以上50℃以下の温度領域の全体で、一次損失係数が0.15以上であることが好ましい。
【0225】
広い温度範囲に渡り遮音性をより一層高める観点、並びにエンジンノイズ及びロードノイズ等の走行音の遮音性をより一層高める観点からは、本発明に係る合わせガラスでは、下記の第1,第2及び第3の工程を備える音響透過損失測定を行ったときに、下記の第1の構成と下記の第2の構成とを満たすことが好ましい。
【0226】
第1の構成:500Hz以上1000Hz以下の音響透過損失が、下記式(1)を満たす。
【0227】
y≧10.1ln(x)-35・・・式(1)
【0228】
式(1)中、xは周波数(Hz)を意味し、yは音響透過損失(dB)を意味する。
【0229】
第2の構成:5000Hz以上10000Hz以下の音響透過損失が、下記式(2)を満たす。
【0230】
y≧12.8ln(x)-68・・・式(2)
【0231】
式(2)中、xは周波数(Hz)を意味し、yは音響透過損失(dB)を意味する。
【0232】
第1の工程:縦500mm及び横500mmの合わせガラスを用意する。
【0233】
第2の工程:音源室である第1の残響室と、受音室である第2の残響室とが連結されたISO 10140-5に準拠した残響室を準備する。縦500mm及び横500mmの合わせガラスを、第1の残響室と、第2の残響室との間に設置する。
【0234】
第3の工程:JIS A1441-1に準拠して20℃での音響透過損失をインテンシティ法にて、中心周波数1/3オクターブバンドで測定する。
【0235】
上記第1の工程において、縦500mm及び横500mmの合わせガラスは、音響透過損失を測定するために作成される。上記縦500mm及び横500mmの合わせガラスは、例えば、合わせガラスを切断等することにより得ることができる。例えば、上記合わせガラスの合わせガラス部材の厚みが2mmであり、合わせガラスのサイズが幅500mm以上及び長さ500mm以上の場合は、中心部をカットして幅500mm及び長さ500mmとしてもよい。
【0236】
図3は、
図1に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【0237】
図3に示す合わせガラス31は、第1の合わせガラス部材21と、第2の合わせガラス部材22と、中間膜11とを備える。中間膜11は、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。
【0238】
中間膜11の第1の表面11aに、第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜11の第1の表面11aとは反対の第2の表面11bに、第2の合わせガラス部材22が積層されている。第2の層2の外側の表面2aに第1の合わせガラス部材21が積層されている。第3の層3の外側の表面3aに第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0239】
図4は、
図2に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【0240】
図4に示す合わせガラス31Aは、第1の合わせガラス部材21と、第2の合わせガラス部材22と、中間膜11Aとを備える。中間膜11Aは、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。
【0241】
中間膜11Aの第1の表面11aに、第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜11Aの第1の表面11aとは反対の第2の表面11bに、第2の合わせガラス部材22が積層されている。第4の層4の外側の表面4aに第1の合わせガラス部材21が積層されている。第5の層5Aの外側の表面5aに第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0242】
このように、本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、中間膜とを備えており、該中間膜が、本発明に係る合わせガラス用中間膜である。本発明に係る合わせガラスでは、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、上記中間膜が配置されている。
【0243】
上記第1の合わせガラス部材は、第1のガラス板であることが好ましい。上記第2の合わせガラス部材は、第2のガラス板であることが好ましい。
【0244】
上記第1,第2の合わせガラス部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。上記合わせガラスには、2枚のガラス板の間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。上記合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材がそれぞれ、ガラス板又はPETフィルムであり、かつ上記合わせガラスは、上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材の内の少なくとも一方として、ガラス板を備えることが好ましい。上記第1,第2の合わせガラス部材の双方がガラス板であることが特に好ましい。
【0245】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、及び線入り板ガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代わる合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0246】
上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材の各厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。また、上記合わせガラス部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。上記合わせガラス部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、好ましくは0.03mm以上、好ましくは0.5mm以下である。
【0247】
上記合わせガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、中間膜を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバッグに入れて減圧吸引したりして、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材と中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70~110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120~150℃及び1~1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。上記合わせガラスの製造時に、中間膜における各層を積層してもよい。
【0248】
上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、車両用又は建築物用の中間膜及び合わせガラスであることが好ましく、車両用の中間膜及び合わせガラスであることがより好ましい。上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車に好適に用いられる。上記中間膜は、自動車の合わせガラスを得るために用いられる。
【0249】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0250】
以下の材料を用意した。
【0251】
なお、ポリビニルアセタール樹脂に関しては、アセタール化度(ブチラール化度)、アセチル化度及び水酸基の含有率はJIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定した。なお、ASTM D1396-92により測定した場合も、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法と同様の数値を示した。また、アセタールの種類がアセトアセタール等である場合には、アセタール化度は、同様に、アセチル化度、水酸基の含有率を測定し、得られた測定結果からモル分率を算出し、次いで、100モル%からアセチル化度及び水酸基の含有率を引くことにより、算出される。
【0252】
(樹脂)
ポリビニルアセタール樹脂(1)(n-ブチルアルデヒドを使用、重合度1700、水酸基の含有率33モル%、アセチル化度1モル%、アセタール化度66モル%)
ポリビニルアセタール樹脂(2)(n-ブチルアルデヒドを使用、重合度800、水酸基の含有率31モル%、アセチル化度1.5モル%、アセタール化度67.5モル%)
ポリビニルアセタール樹脂(X)(分布の広いPVB)(ポリビニルアセタール樹脂(XA)50重量%とポリビニルアセタール樹脂(XB)50重量%との混合物)
(ポリビニルアセタール樹脂(XA):n-ブチルアルデヒドを使用、重合度1700、水酸基の含有率9.6モル%、アセチル化度1モル%、アセタール化度89.4モル%,ポリビニルアセタール樹脂(XB):n-ブチルアルデヒドを使用、重合度1700、水酸基の含有率13モル%、アセチル化度1モル%、アセタール化度86モル%)
ポリビニルアセタール樹脂(Y)(n-ブチルアルデヒドを使用、重合度1700、水酸基の含有率18モル%、アセチル化度8モル%、アセタール化度74モル%)
【0253】
(硬化物)
(メタ)アクリル重合体(1):
以下の成分を含む重合性組成物を用意した。
【0254】
エチルアクリレート34重量部
ベンジルアクリレート38重量部
ヒドロキシプロピルアクリレート28重量部
IRGACURE 184(BASF社製)0.2重量部
【0255】
この重合性組成物を、2枚の片面離型処理されたPETシート(ニッパ社製、厚み50μm)に挟み込んで、厚み100μmとなるように重合性組成物層を形成した。なお、2枚のPETシートの周囲にスペーサを配置した。高圧水銀UVランプを用いて、照射量3000mJ/cm2で紫外線を重合性組成物層に照射することにより、重合性組成物を反応により硬化させて、(メタ)アクリル重合体(1)(硬化物の層、厚み100μm)を形成した。IRGACURE 184は、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンである。
【0256】
(メタ)アクリル重合体(2):
以下の成分を含む重合性組成物を用意した。
【0257】
イソボルニルアクリレート60重量部
環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート40重量部
IRGACURE 184(BASF社製)0.2重量部
【0258】
この重合性組成物を、2枚の片面離型処理されたPETシート(ニッパ社製、厚み50μm)に挟み込んで、厚み100μmとなるように重合性組成物層を形成した。なお、2枚のPETシートの周囲にスペーサを配置した。ケミカルランプ(FL20SBL、東芝社製)を用いて、照射量3000mJ/cm2で紫外線を重合性組成物層に照射することにより、重合性組成物を反応により硬化させて、(メタ)アクリル重合体(2)(硬化物の層、厚み100μm)を形成した。IRGACURE184は、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンである。
【0259】
(メタ)アクリル重合体(3):
以下の成分を含む重合性組成物を用意した。
【0260】
イソボルニルアクリレート70重量部
環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート25重量部
4-ヒドロキシブチルアクリレート5重量部
IRGACURE 184(BASF社製)0.2重量部
【0261】
この重合性組成物を、2枚の片面離型処理されたPETシート(ニッパ社製、厚み50μm)に挟み込んで、厚み100μmとなるように重合性組成物層を形成した。なお、2枚のPETシートの周囲にスペーサを配置した。ケミカルランプ(FL20SBL、東芝社製)を用いて、照射量3000mJ/cm2で紫外線を重合性組成物層に照射することにより、重合性組成物を反応により硬化させて、(メタ)アクリル重合体(3)(硬化物の層、厚み100μm)を形成した。IRGACURE184は、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンである。
【0262】
(メタ)アクリル重合体(4):
以下の成分を含む重合性組成物を用意した。
【0263】
ベンジルアクリレート9.1重量部
環状トリメチロールプロパントリアクリレート38.2重量部
ブチルアクリレート43.6重量部
ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)0.23重量部
ポリビニルアセタール樹脂(2)9.1重量部
IRGACURE 184(BASF社製)1.8重量部
【0264】
この重合性組成物を用いて、(メタ)アクリル重合体(1)と同様の方法で、(メタ)アクリル重合体(4)(硬化物の層、厚み860μm)を形成した。
【0265】
(メタ)アクリル重合体(A):
以下の成分を含む重合性組成物を用意した。
【0266】
ジメチルアミノエチルアクリレート50重量部
ヒドロキシプロピルアクリレート50重量部
IRGACURE 184(BASF社製)0.2重量部
【0267】
この重合性組成物を用いて、(メタ)アクリル重合体(1)と同様の方法で、(メタ)アクリル重合体(A)(硬化物の層、厚み100μm)を形成した。
【0268】
(メタ)アクリル重合体(B):
以下の成分を含む重合性組成物を用意した。
【0269】
ベンジルアクリレート7.6重量部
環状トリメチロールプロパントリアクリレー31.8重量部
ブチルアクリレート36.4重量部
ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)0.19重量部
ポリビニルアセタール樹脂(2)24.2重量部
IRGACURE 184(BASF社製)1.5重量部
【0270】
この重合性組成物を用いて、(メタ)アクリル重合体(1)と同様の方法で、(メタ)アクリル重合体(B)(硬化物の層、厚み860μm)を形成した。
【0271】
(可塑剤)
トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)
【0272】
(添加剤)
添加剤(1):9,9-Bis-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン
【0273】
(金属塩M)
Mg混合物(2-エチル酪酸マグネシウムと酢酸マグネシウムとの50:50(重量比)混合物)
【0274】
(紫外線遮蔽剤)
Tinuvin326(2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、BASF社製「Tinuvin326」)
【0275】
(酸化防止剤)
BHT(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)
【0276】
(実施例1)
第1の層の作製:
アクリル重合体(1)(硬化物を含む層、厚み100μm)を用意した。
【0277】
第2,第3の層の作製:
以下の配合成分を混合し、ミキシングロールで充分に混練し、第2,第3の層を形成するための組成物を得た。
【0278】
ポリビニルアセタール樹脂(1)100重量部
可塑剤(3GO)35重量部
得られる第2,第3の層中で70ppmとなる量の金属塩M(Mg混合物)
得られる第2,第3の層中で0.2重量%となる量の紫外線遮蔽剤(Tinuvin326)
得られる第2,第3の層中で0.2重量%となる量の酸化防止剤(BHT)
【0279】
得られた第2,第3の層を形成するための組成物を、押出機を用いて押出して、第2,第3の層(各厚み380μm)を得た。
【0280】
中間膜の作製:
第1の層に積層された離型処理されたPETシートを剥離し、第2の層にロールラミネーターを用いて貼り合わせ、第1の層と第2の層とを圧着させ、2層積層体を得た。続いて第1の層に積層されたもう一方の離型処理されたPETシートを剥離し、上記同様に第1の層と第3の層とを圧着させることにより、第2の層/第1の層/第3の層の構造を有する中間膜を得た。
【0281】
粘弾性測定用試験片の作製:
得られた中間膜を幅25mm及び長さ300mmの大きさに切断した。第1のPETフィルム及び第2のPETフィルムを用意し、2枚のPETフィルムの間に、切断した中間膜を挟み込み、積層体を得た。この積層体をゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体を予備圧着した。オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体を20分間圧着した後、室温23±2℃、湿度25±5%の環境下に84週間以上保管し、試験片を得た。
【0282】
遮音性評価用の合わせガラスの作製:
得られた中間膜を幅25mm及び長さ300mmの大きさに切断した。第1の合わせガラス部材及び第2の合わせガラス部材として、2つのガラス板(クリアフロートガラス、幅25mm、長さ300mm及び厚さ2mm)を用意した。2枚のガラス板の間に、中間膜を挟み込み、積層体を得た。この積層体をゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体を予備圧着した。オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体を20分間圧着し、合わせガラスを得た。
【0283】
(実施例2)
第1の層の作製:
以下の配合成分を混合し、ミキシングロールで充分に混練し、第1の層を形成するための組成物を得た後、厚み100μmにプレス成型し、硬化物を含む層を得た。
【0284】
(メタ)アクリル重合体(2)100重量部
可塑剤(3GO)20重量部
【0285】
第2,第3の層の作製:
実施例1と同様の第2,第3の層を用意した。
【0286】
中間膜の作製:
得られた第1の層と得られた第2,第3の層とを用いたこと以外は実施例1と同様にして、中間膜を得た。
【0287】
粘弾性測定用試験片の作製:
得られた中間膜を用いたこと以外は実施例1と同様にして、試験片を得た。
【0288】
遮音性評価用の合わせガラスの作製:
得られた中間膜を用いたこと以外は実施例1と同様にして、合わせガラスを得た。
【0289】
(実施例3)
第1の層の作製:
以下の配合成分を混合し、ミキシングロールで充分に混練し、第1の層を形成するための組成物を得た後、厚み100μmにプレス成型し、硬化物を含む層を得た。
【0290】
(メタ)アクリル重合体(3)100重量部
可塑剤(3GO)20重量部
【0291】
第2,第3の層の作製:
実施例1と同様の第2,第3の層を用意した。
【0292】
中間膜の作製:
得られた第1の層と得られた第2,第3の層とを用いたこと以外は実施例1と同様にして、中間膜を得た。
【0293】
粘弾性測定用試験片の作製:
得られた中間膜を用いたこと以外は実施例1と同様にして、試験片を得た。
【0294】
遮音性評価用の合わせガラスの作製:
得られた中間膜を用いたこと以外は実施例1と同様にして、合わせガラスを得た。
【0295】
音響透過損失測定用の合わせガラスの作製:
得られた中間膜を縦500mm及び横500mmの大きさに切断した。第1の合わせガラス部材及び第2の合わせガラス部材として、2つのガラス板(グリーンガラス、幅500mm、長さ500mm及び厚さ2mm)を用意した。2枚のガラス板の間に、中間膜を挟み込み、積層体を得た。この積層体をゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体を予備圧着した。オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体を20分間圧着し、合わせガラスを得た後、室温23±2℃、湿度25±5%の環境下に84週間保管し、音響透過損失測定用の合わせガラスを得た。
【0296】
(実施例4)
中間膜の作製:
(メタ)アクリル重合体(4)(硬化物を含む層、厚み860μm)を用意し、中間膜とした。
【0297】
粘弾性測定用試験片の作製:
得られた中間膜を用いたこと以外は実施例1と同様にして、試験片を得た。
【0298】
遮音性評価用の合わせガラスの作製:
得られた中間膜を用いたこと以外は実施例1と同様にして、合わせガラスを得た。
【0299】
(比較例1)
第1の層の作製:
以下の配合成分を混合し、ミキシングロールで充分に混練し、第1の層を形成するための組成物を得た後、厚み250μmにプレス成型し、ポリビニルアセタール樹脂(X)を含む層を得た。
【0300】
ポリビニルアセタール樹脂(X)100重量部
可塑剤(3GO)70重量部
【0301】
第2,第3の層の作製:
実施例1と同様の第2,第3の層を用意した。
【0302】
中間膜の作製:
得られた第1の層と得られた第2,第3の層とを用いたこと以外は実施例1と同様にして、中間膜を得た。
【0303】
粘弾性測定用試験片の作製:
得られた中間膜を用いたこと以外は実施例1と同様にして、試験片を得た。
【0304】
遮音性評価用の合わせガラスの作製:
得られた中間膜を用いたこと以外は実施例1と同様にして、合わせガラスを得た。
【0305】
音響透過損失測定用の合わせガラスの作製:
得られた中間膜を用いたこと以外は実施例3と同様にして、合わせガラスを得た。
【0306】
(比較例2)
第1の層の作製:
(メタ)アクリル重合体(A)(硬化物を含む層、厚み100μm)を用意した。
【0307】
第2,第3の層の作製:
実施例1と同様の第2,第3の層を用意した。
【0308】
中間膜の作製:
得られた第1の層と得られた第2,第3の層とを用いたこと以外は実施例1と同様にして、中間膜を得た。
【0309】
粘弾性測定用試験片の作製:
得られた中間膜を用いたこと以外は実施例1と同様にして、試験片を得た。
【0310】
遮音性評価用の合わせガラスの作製:
得られた中間膜を用いたこと以外は実施例1と同様にして、合わせガラスを得た。
【0311】
(比較例3)
第1の層の作製:
以下の配合成分を混合し、ミキシングロールで充分に混練し、第1の層を形成するための組成物を得た後、厚み100μmにプレス成型し、ポリビニルアセタール樹脂(Y)を含む層を得た。
【0312】
ポリビニルアセタール樹脂(Y)100重量部
トリエチレングリコール 60重量部
添加剤(1)150重量部
【0313】
第2,第3の層の作製:
実施例1と同様の第2,第3の層を用意した。
【0314】
中間膜の作製:
得られた第1の層と得られた第2,第3の層とを用いたこと以外は実施例1と同様にして、中間膜を得た。
【0315】
粘弾性測定用試験片の作製:
得られた中間膜を用いたこと以外は実施例1と同様にして、試験片を得た。
【0316】
遮音性評価用の合わせガラスの作製:
得られた中間膜を用いたこと以外は実施例1と同様にして、合わせガラスを得た。
【0317】
(比較例4)
中間膜の作製:
アクリル重合体(B)(硬化物を含む層、厚み860μm)を用意し、中間膜とした。
【0318】
粘弾性測定用試験片の作製:
得られた中間膜を用いたこと以外は実施例1と同様にして、試験片を得た。
【0319】
遮音性評価用の合わせガラスの作製:
得られた中間膜を用いたこと以外は実施例1と同様にして、合わせガラスを得た。
【0320】
(評価)
(1)動的粘弾性測定
得られた粘弾性測定用試験片について、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製、DVA-200)を用いて、せん断モード、3℃/分の昇温速度で-50℃から200℃まで温度を昇温させる条件かつ周波数1Hz及び歪1%の条件にて動的粘弾性を測定することにより、以下の項目について評価を実施した。
【0321】
tanδの最大ピークのピーク温度
tanδの最大ピーク値
tanδの最大ピークのピーク温度での第1の貯蔵弾性率G’
tanδの最大ピークのピーク温度よりも100℃高い温度での第2の貯蔵弾性率G’
比(第1の貯蔵弾性率G’/第2の貯蔵弾性率G’)
【0322】
(2)一次損失係数(遮音性)
得られた遮音性評価用の合わせガラスについて、ISO 16940に準拠した機械インピーダンス測定を行った。具体的には、得られた遮音性評価用の合わせガラスをダンピング試験用の振動発生機(振研社製「加振機G21-005D」)により加振した。そこから得られた振動特性を機械インピーダンス測定装置(リオン社製「XG-81」)にて増幅し、振動スペクトルをFFTスペクトラムアナライザー(リオン社製「FFTアナライザー SA-01A2」)により解析した。
【0323】
上記一次損失係数から、遮音性を以下の基準で判定した。
【0324】
[遮音性の判定基準]
○:一次損失係数が0.15以上
×:一次損失係数が0.15未満
【0325】
(3)音響透過損失
音源室である第1の残響室と、受音室である第2の残響室とが連結されたISO 10140-5に準拠した残響室において、ISO10140-5に準拠した連結させた2つの残響室(音源室、受音室)の間に、実施例3及び比較例1で得られた音響透過損失測定用の合わせガラスを、第1の残響室と、第2の残響室との間に設置した。リオン社の音響透過損失測定装置「インテンシティプローブSI-50、マルチチャンネルアナライザーSA-02」を用いて、20℃での音響透過損失測定を測定した。具体的には、JIS A1441-1に準拠した音響透過損失(dB)をインテンシティ法で測定した。中心周波数は1/3オクターブバンドで測定した。
【0326】
得られた測定値から、下記式(1)及び下記式(2)を満たすか確認した。表3において、下記式(1)及び下記式(2)をそれぞれ満たす場合に「〇」を記載し、満たさない場合に「×」を記載した。
【0327】
y≧10.1×ln(x)-35・・・式(1)
【0328】
y≧12.8×ln(x)-68・・・式(2)
【0329】
式(1)中及び式(2)中、xは周波数(Hz)を意味し、yは音響透過損失(dB)を意味する。
【0330】
また、時速60kmで自動車を走行した際に、車内側での感じる騒音の感覚を確認した。表3において、車内側での感じる騒音が不快に感じない場合に「〇」を記載し、不快に感じる場合に「×」を記載した。なお、エンジン音やロード音が気にならない程度である場合に、騒音が不快に感じないとした。
【0331】
詳細及び結果を下記の表1~3に示す。なお、下記の表1,2では、金属塩M、紫外線遮蔽剤及び酸化防止剤の記載は省略した。なお、表1,2中、「E+03」は「×103」を意味し、「E+04」は「×104」を意味し、「E+05」は「×105」を意味し、「E+06」は「×106」を意味し、「E+07」は「×107」を意味する。
【0332】
【0333】
【0334】
【符号の説明】
【0335】
1,1A…第1の層
1a…第1の表面
1b…第2の表面
2,2A…第2の層
2a…外側の表面
3,3A…第3の層
3a…外側の表面
4A…第4の層
4a…外側の表面
5A…第5の層
5a…外側の表面
11,11A…中間膜
11a…第1の表面
11b…第2の表面
21…第1の合わせガラス部材
22…第2の合わせガラス部材
31,31A…合わせガラス