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特許7569154通信装置、通信装置の制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】通信装置、通信装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/0457 20230101AFI20241009BHJP
   H04W 8/24 20090101ALI20241009BHJP
   H04W 76/15 20180101ALI20241009BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20241009BHJP
【FI】
H04W72/0457 110
H04W8/24
H04W76/15
H04W84/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020016492
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021125749
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 宣弘
【審査官】伊藤 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】JANG, Insun et al.,Discussion on Multi-link Setup,IEEE 802.11-19/1509r5,Internet<URL:URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/19/11-19-1509-05-00be-discussion-on-multi-link-setup.pptx>,2019年11月13日
【文献】Dmitry Akhmetov (Intel),Performance aspects of Multi-link operations,IEEE 802.11-19/1291r3,Internet<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/19/11-19-1291-03-00be-performance-aspects-of-multi-link-operations.pptx>,2019年09月17日
【文献】LI, Yunbo et al.,Channel Access Design for Synchronized Multi-Links,IEEE 802.11-19/1548r4,Internet<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/19/11-19-1548-04-00be-channel-access-design-for-synchronized-multi-links.pptx>,2020年01月16日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置であって、
IEEE802.11シリーズに準拠した複数のプライマリチャネル(M-PCH)方式に関する能力情報を生成する生成手段と、
前記能力情報を含めたフレームを通信相手装置に送信する送信手段と、
を有し、
前記能力情報は、前記通信装置が前記M-PCH方式をサポートするか否かを示す情報、および、第1のチャネルと、前記第1のチャネルと結合可能な第2のチャネルと、を含む前記複数のプライマリチャネルの夫々の使用可否を示す情報の少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記通信相手装置が前記M-PCH方式をサポートするか否かを示す情報を含むフレームを受信する受信手段と、
前記通信相手装置が前記M-PCH方式をサポートするか否かを示す情報に基づいて、前記M-PCH方式による通信を実行するか否かを決定する決定手段と、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記受信手段が受信するフレームには、前記複数のプライマリチャネルの夫々の使用可否を示す情報が更に含まれることを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記受信手段により受信されたフレームに含まれる前記複数のプライマリチャネルの夫々の使用可否を示す情報と、前記生成手段により生成された前記能力情報とに基づいて、前記複数のプライマリチャネルの中から、データ通信に使用するプライマリチャネルを選択する選択手段を更に有することを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記選択手段は、チャネルボンディングにより確保可能な送信帯域幅、受信電界強度、信号対雑音比(SNR)、帯域幅とSNRから計算されるチャネル伝送容量、および、所定期間のチャネル使用状況、の少なくともいずれかに基づいて、前記データ通信に使用するプライマリチャネルを選択することを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記能力情報は、前記通信装置が前記M-PCH方式をサポートするか否かを示す情報、および、前記複数のプライマリチャネルの夫々の使用可否を示す情報を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記通信装置により形成されるネットワークに参加する他の通信装置の数に基づいて、前記M-PCH方式による通信を実行するか否かを決定する決定手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
前記複数のプライマリチャネルのうち、前記通信相手装置にRTS(Request To Send)を送信した後に、当該RTSの応答としてCTS(Clear To Send)が受信されたプライマリチャネルを、使用可能なプライマリチャネルとして判定する判定手段を更に有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項9】
前記送信手段が送信するフレームは、IEEE802.11シリーズに準拠したBeaconフレーム、Probe Requestフレーム、Probe Responseフレーム、Association Requestフレーム、Association Responseフレーム、Reassociation Requestフレーム、Reassociation Responseフレームのいずれかであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の通信装置。
【請求項10】
前記送信手段は、能力情報を含めたBeaconフレームを、複数のチャネルで報知することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項11】
通信装置の制御方法であって、
IEEE802.11シリーズに準拠した複数のプライマリチャネル(M-PCH)方式に関する能力情報を生成する生成工程と、
前記能力情報を含めたフレームを通信相手装置に送信する送信工程と、
を有し、
前記能力情報は、前記通信装置が前記M-PCH方式をサポートするか否かを示す情報、および、第1のチャネルと、前記第1のチャネルと結合可能な第2のチャネルと、を含む前記複数のプライマリチャネルの夫々の使用可否を示す情報の少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
コンピュータを、請求項1から10のいずれか1項に記載された通信装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LANの通信制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信技術の発展とともにインターネット使用量が年々増加しており、需要の増加に応えるべく様々な通信技術の開発が進められている。中でも無線LAN(ローカルエリアネットワーク(以下、WLAN))技術は、公共の場をはじめ、家庭や工場といったプライベートな空間において携帯端末機によるパケットデータ、音声、ビデオなどのインターネット通信におけるスループットの向上を実現している。
【0003】
WLAN技術の発展は、標準化機構であるIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802による数多くの標準化作業が、重要な役割を果たしている。標準WLAN通信規格の一つとしてIEEE802.11が知られており、IEEE802.11a/b/g/n/acまた、最新の標準規格のIEEE802.11axのドラフト規格が公開され、現在も様々な技術開発が盛んに行われている(特許文献1)。
【0004】
2018年にさらなるスループット向上、高信頼、低遅延のためにIEEE802.11axの後継規格として、IEEE802.11be Task Group(TG)が発足した。IEEE802.11beのTGの目標の一つに、高信頼で低遅延(Reliable Low-Latency:RLL)な通信(RLL通信)があり、特に産業用ロボットの遠隔操作や拡張現実/仮想現実、ゲーム、ドローン等のリアルタイム性の高いアプリケーションへの応用が期待されている。このようなユースケースでは、環境によって信頼性と遅延の条件が変化するが、遅延に関するオーダーは、1~10ms、また信頼性(伝送成功率)については、99.9999%を満たす事が要件とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-50133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
RLL通信を実現するために、通信リソースを有効に使用して、無線LANのチャネル・アクセスの遅延を低減させることが必要になる。しかしながら、例えば複数のBSS(Basic Service Set)がオーバーラップするOBSS(Overrapping BSS)の環境下では、チャネルの占有や空きチャネルの確保が容易ではないため、RLL通信の実現が容易ではない。そのため、複数のチャネル/帯域で散在する未使用リソースを活用するための、複数のプライマリチャネル(マルチプライマリチャネル(M-PCH))を利用したチャネル・アクセス技術が、IEEE802.11beにおいて検討されている。
【0007】
しかし、これまでに、マルチプライマリチャネル(M-PCH)を指定する能力情報を通知するための仕組みが提案されていなかった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、マルチプライマリチャネル(M-PCH)を指定する能力情報を通知できる仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための一手段として、本発明の通信装置は、IEEE802.11シリーズに準拠した複数のプライマリチャネル(M-PCH)方式に関する能力情報を生成する生成手段と、前記能力情報を含めたフレームを通信相手装置に送信する送信手段と、を有し、前記能力情報は、前記通信装置が前記M-PCH方式をサポートするか否かを示す情報、および、第1のチャネルと、前記第1のチャネルと結合可能な第2のチャネルと、を含む前記複数のプライマリチャネルの夫々の使用可否を示す情報の少なくともいずれか一方を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マルチプライマリチャネル(M-PCH)を指定する能力情報を通知するための仕組みが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態におけるネットワークの構成例を示す図である。
図2】通信装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】通信装置の機能構成例を示す図である。
図4】STA接続時にAPにより実行される処理を示すフローチャートである。
図5】データ通信を開始するためにAPにより実行される処理を示すフローチャートである。
図6】DL通信時のAP-STA間のメッセージシーケンス図である、
図7】UL通信時のAP-STA間のメッセージシーケンス図である。
図8】プライマリチャネルの空き/ビジー判定処理のフローチャートである。
図9】M-PCH方式の能力情報の例を示す図である。
図10】M-PCH方式の能力情報の設定値例を示す図である。
図11】5GHz帯におけるマルチプライマリチャネルの指定例を説明した図である。
図12】M-PCH方式の能力情報の他の例を示す図である。
図13】M-PCH方式の能力情報の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
[ネットワークの構成例]
図1に、本実施形態におけるネットワークの構成例を示す。図1は、通信装置として、2台のアクセスポイント(AP102、AP112)と2台のステーション(STA103、STA113)により構成されるネットワークBSS(Basic Service Set)101、BSS111を示している。図1に示すように、AP102が形成するネットワークは、BSS101で示され、AP112が形成するネットワークはBSS111で示される。本実施形態では、BSS111を構成するSTA113は、AP112とフレームを送受信でき、BSS101を構成するSTA103は、AP102とフレームを送受信できる。また、STA103は、隣接するBSS111のAP112が使用する無線チャネルの干渉を受けるOBSS(Overrapping BSS)の環境下にある。このため、STA103により、BSS101で使用可能なプライマリチャネルがBSS111でも同時に使用されうる。
【0014】
なお、図1に示すネットワークの構成は一例であり、例えばさらに広範な領域に多数の通信装置を含むネットワーク(BSS)に対して、また、様々な無線通信装置の位置関係に対して、以下の議論を適用可能である。
【0015】
[通信装置の構成]
(ハードウェア構成例)
図2に、本実施形態における通信装置(図1のネットワーク構成例におけるAP102、112およびSTA103、113)のハードウェア構成例を示す。通信装置は、そのハードウェア構成の一例として、記憶部201、制御部202、機能部203、入力部204、出力部205、通信部206及びアンテナ207を有する。
【0016】
記憶部201は、ROM、RAMの両方、または、いずれか一方により構成され、後述する各種動作を行うためのプログラムや、無線通信のための通信パラメータ等の各種情報を記憶する。ROMはRead Only Memory、RAMはRandom Access Memoryの略である。なお、記憶部201として、ROM、RAM等のメモリの他に、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVDなどの記憶媒体が用いられてもよい。
【0017】
制御部202は、例えば、CPUやMPU等のプロセッサー、ASIC(特定用途向け集積回路)、DSP(デジタルシグナルプロセッサー)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)等により構成される。ここで、CPUはCentral Processing Unitの、MPUは、Micro Processing Unitの略である。制御部202は、記憶部201に記憶されたプログラムを実行することにより通信装置全体を制御する。なお、制御部202は、記憶部201に記憶されたプログラムとOS(Operating System)との協働により通信装置全体を制御するようにしてもよい。制御部202は、機能部203を制御して、撮像や印刷、投影等の所定の処理を実行する。機能部203は、通信装置が所定の処理を実行するためのハードウェアである。例えば、通信装置がカメラである場合、機能部203は撮像部であり、撮像処理を行う。また、例えば、通信装置がプリンタである場合、機能部203は印刷部であり、印刷処理を行う。また、例えば、通信装置がプロジェクタである場合、機能部203は投影部であり、投影処理を行う。機能部203が処理するデータは、記憶部201に記憶されているデータであってもよいし、後述する通信部206を介して他の通信装置と通信したデータであってもよい。
【0018】
入力部204は、ユーザからの各種操作の受付を行う。出力部205は、ユーザに対して各種出力を行う。ここで、出力部205による出力とは、画面上への表示や、スピーカーによる音声出力、振動出力等の少なくとも1つを含む。なお、タッチパネルのように入力部204と出力部205の両方を1つのモジュールで実現するようにしてもよい。
通信部206は、IEEE802.11規格シリーズに準拠した無線通信の制御や、IP通信の制御を行う。本実施形態では、通信部206は、少なくともIEEE802.11be規格に準拠した処理を実行することができる。また、通信部206はアンテナ207を制御して、無線通信のための無線信号の送受信を行う。通信装置は通信部206を介して、画像データや文書データ、映像データ等のコンテンツを他の通信装置と通信する。
アンテナ207はそれぞれサブGHz帯、2.4GHz帯、5GHz帯、及び6GHz帯のいずれかを受信可能なアンテナである。アンテナ207はMIMO(Multi-Input and Multi-Output)送受信を実現するために、物理的に一本以上のアンテナで構成されても良い。
【0019】
(機能構成例)
図3に、本実施形態における通信装置(図1のネットワーク構成例におけるAP102、112およびSTA103、113)の機能構成例を示す。通信装置は、その機能構成の一例として、M-PCH方式決定部301、能力情報生成部302、フレーム生成部303、管理フレーム通信部304、データ通信部305、空き/ビジー判定部306、能力管理部307、チャネル構成部308を有する。
【0020】
M-PCH方式決定部301は、相手通信装置との通信に使用するPCH方式を決定する。能力情報生成部302は、送信する管理フレームに含める能力情報を生成する。管理フレームとは、IEEE802.11シリーズの規格で規定されるマネージメント(管理)フレームであり、Beaconフレーム、Probe Requestフレーム、Probe Responseフレーム、Association Requestフレーム、Association Responseフレーム、Reassociation Requestフレーム、Reassociation ResponseフレームなどのMACフレームである。本実施形態では、能力情報生成部302は、図9を用いて後述するM-PCH方式を指定する能力情報(以下、M-PCH方式の能力情報)を生成/更新する。M-PCH方式の能力情報は、PCH方式のサポート状況を示す情報(後述する図9におけるPCHサポートフィールド904)と、各PCHの使用可否を示す情報(図9におけるM-PCH使用可否フィールド905~913)を含むことができる。フレーム生成部303は、フレーム生成に関する制御を行う。
【0021】
管理フレーム通信部304は、上述した管理フレームの送受信を行うための制御を行う。例えば、STAはAPの管理するネットワーク(BSS)へ接続する場合に、Association Requestフレームを送信し、APはその応答としてAssociation Responseフレームを送信する。データ通信部305は、チャネル構成部308により構成されるチャネル(通信帯域)を用いて、データフレームの送受信を行うための制御を行う。空き/ビジー判定部306は、複数のプライマリチャネルに対する空き/ビジーの判定を行う。当該判定は、空き/ビジー判定部306による、IEEE802.11シリーズの規格で制御フレームであるRTS(Request To Send)メッセージやCTS(Clear To Send)メッセージの送受信により行われる。能力管理部307は、能力情報を記憶部201に格納するなどの管理を行う。また、能力管理部307は、任意のタイミングで、自身の通信装置がサポートするPCH方式を確認する。チャネル構成部308は、データ通信部305によりデータフレームの通信に使用されるチャネル(通信帯域)を構成する。例えば、チャネル構成部308は、プライマリチャネルを選択(決定)した上で、当該プライマリチャネルと当該プライマリチャネルに隣接するチャネルであるセカンダリチャネルとを結合した通信帯域を構成する(チャネルボンディング)。この時、チャネル構成部308は、プライマリチャネルを選択(決定)する条件として、例えば、高速データ伝送の為により広帯域な通信チャネルが構成可能なプライマリチャネルを選択するようにしても良い。また、即時レスポンス、時間的な制約のあるネットワークに必須の低遅延・高信頼といった条件を満たすプライマリチャネルを選択するようにしても良い。またチャネル構成部308は、前記所定の条件に応じて、各周波数帯域(2.4GHz、/5GHz/6GHz等)における使用可能な複数のチャネルの中から、プライマリチャネルを選択するように構成されてもよい。
【0022】
ここで、図9を参照してM-PCH方式の能力情報の例を説明する。図9は、M-PCH方式の能力情報(M-PCH capability element)の例を示す図である。M-PCH capability elementはIEEE802.11シリーズの規格で規定される他のInfomation Elementと同様、Element IDフィールド、Lengthフィールド、およびElement固有の情報から構成される。Element IDフィールド901には、Elementを識別する情報が格納される。Lengthフィールド902には、Elementのデータ長を示す情報が格納される。M-PCH capability Infoフィールド903は、Element固有の情報であり、PCH方式のサポート状況を示す情報(フィールド904)とM-PCHチャネルの夫々の使用可否を示す情報(フィールド905~913)を含む。PCHサポートフィールド904は、PCH方式のサポート状況を示す2ビットの情報を含み、M-PCH使用可否フィールド905~913は、M-PCH 1~M-PCH 9の夫々に対応した使用可否を示す1ビットの情報を含む(図10を用いて後述)。M-PCH 1~M-PCH 9は、5GHz帯で使用可能であり、本実施形態で指定することができる例示的な複数のプライマリチャネルであり、図11を用いて後述する。Reserveフィールド914は、将来的な拡張に対応するための5ビットの未使用(予約)部分である。
【0023】
なお、図9では、M-PCH capability Infoフィールド903を2オクテット(16ビット)で説明しているが、フィールドの名称や、ビットの位置・サイズはこの例に限定されない。たとえば、同様の情報が異なるフィールド名や異なる順序やサイズで格納されても良い。
【0024】
M-PCH方式の能力情報の異なる形態の一例として、図12および図13を用いてそれぞれ説明する。はじめに図12において、Element IDフィールド901、Lengthフィールド902は前記図9と同様であるが、情報設定のためにLengthフィールド902にコーディングされるデータ長は3オクテットとなる。また、M-PCH capability Infoフィールド1201は、Element固有の情報であり、M-PCH 1~M-PCH 9の夫々に対応したPCH方式のサポート状況(フィールド1202~1210)を含む。PCHサポートフィールド1202~1210は、PCH方式のサポート状況を示す2ビットの情報であり、図9のPCH方式のサポート状況を示す情報(フィールド904)と同様である(図10を用いて後述)。M-PCH 1~M-PCH 9は、図9と同様であることから説明は割愛する。Reserveフィールド1211は、将来的な拡張に対応するための6ビットの未使用(予約)部分である。
【0025】
図13は、図9および図12と同様にM-PCH方式の能力情報の異なる形態のその他の一例である。図13において、Element IDフィールド901、Lengthフィールド902は、前記図9および図12と同様であるが、情報設定のためにLengthフィールド902にコーディングされるデータ長は6オクテットとなる。また、M-PCH capability Infoフィールド1301は、Element固有の情報であり、使用可能なプライマリチャネルM-PCH 1~4、7、8の個別情報(フィールド1302~1307)を含む。この時、使用可能なプライマリチャネルM-PCH 1~4、7、8については、空き/ビジー判定部306による空き/ビジー判定処理の結果を反映しており、この処理の詳細については、図8を用いて後述する。M-PCH個別情報フィールド1302~1307は、PCH方式のサポート状況を示す1オクテットの情報であり、チャネル番号フィールド1308の6ビットとPCH方式のサポート状況を示す2ビットの情報で構成される。前記、PCH方式のサポート状況を示す2ビットの情報フィールド1309は、図9図12のPCH方式のサポート状況を示す情報(フィールド904および1202~1210)と同様である(図10を用いて後述)。
【0026】
図10は、図9および図12図13におけるPCHサポートフィールド904および1202~1210とM-PCH使用可否フィールド905~913に設定されるビット値の例である。図10において表1001は、PCHサポートフィールド904および1202~1210および1309に設定されるビット値と、当該ビット値に対応するサポート内容の関係を示す。ビット値00は、従来の1つだけ(Single)のプライマリチャネルを使用する方式(S-PCH方式)もマルチプライマリチャネル(M-PCH方式)未サポートであることを示す。ビット値01は、S-PCH方式のみサポートすることを示す。ビット値10は、M-PCH方式のみサポートすることを示す。ビット値11は、両方式をサポートすることを示す。表1002は、M-PCH使用可否フィールド905~913に設定されるビット値と、当該ビット値に対応する使用可否の関係を示す。ビット値1は、プライマリチャネルとして使用可能であることを示し、ビット値0は、使用不可であることを示す。なお、夫々の情報要素に関する設定値はこの例に限定されず、同様の情報が異なるフィールド名や異なる順序やサイズで格納されても良い。
【0027】
図11は、5GHz帯(W52、W53、W56)におけるマルチプライマリチャネルの指定例を説明した図である。M-PCH 1~M-PCH9は、5GHz帯で使用可能な複数のマルチプライマリチャネルであり、夫々のチャネル番号が36、44、52、60、100、108、116、124、132の帯域幅が20MHzの周波数チャネルである。基本的なプライマリチャネルの指定例は、40+40MHzの使用を想定した、9つのM-PCH(M-PCH 1~M-PCH9)を指定する例である。この場合、40+40MHzを結合した周波数帯域が使用される。具体的には、M-PCH 1~M-PCH9のいずれかがプライマリチャネルとして選択(決定)されることに応じて、隣接するチャネルがセカンダリチャネルとして結合されて(40+40MHz)使用される。
【0028】
M-PCHの仕様としては、使用する帯域(80+80MHz、160+160MHz)を明確に指示するために、指定するM-PCHを制限しても良い。一例として、指定例1101は、80+80MHzの使用を想定した、M-PCH 1、M-PCH 3、M-PCH 5、M-PCH 7の4つのマルチプライマリチャネルの指定例である。この時、チャネル構成部308は、隣接するプライマリチャネルの使用状況に応じて、前記4つのプライマリチャネルから使用するプライマリチャネルを選択する。例えば、W52(M-PCH 1)+W53(M-PCH 3)の隣接チャネル(M-PCH 2/M-PCH 4)が使用不可である場合には、W56(M-PCH 5、M-PCH 7)を指定するように構成される。同様に、W56(M-PCH 5、M-PCH 7)のプライマリチャネルが使用不可の場合、W52または、W53のプライマリチャネルを用いて80+80MHzの帯域が構成される。また、指定例1102は、160+160MHzの使用を想定した、M-PCH 1、M-PCH 5の2つのマルチプライマリチャネルの指定例である。
【0029】
[処理の流れ]
続いて、図4図9を参照して、STA103(通信相手装置)とAP102(通信装置)により構成される通信システムにおいて各装置により実行される処理の流れを説明する。図4は、STA103がAP102に接続してきたときにAP102により実行される処理を示すフローチャートである。なお、以下に示すフローチャートは、制御部202が記憶部201に記憶されている制御プログラムを実行し、情報の演算および加工並びに各ハードウェアの制御を実行することにより実現されうる。
【0030】
まずAP102の管理フレーム通信部304は、STA103のM-PCH方式の能力情報(図11を参照)を取得する(S401)。M-PCH方式の能力情報は、STA103が接続前に送信するProbe Requestフレームや、接続時に送信するAssociation Requestフレームにより取得できる。この時、AP102は、Probe RequestフレームやAssociation Requestフレームの受信前に、AP102のM-PCH方式の能力情報を含むBeaconフレームを複数のプライマリチャネルで報知するようにしても良い。
【0031】
次にAP102のM-PCH方式決定部301は、S401で取得したSTA103のM-PCH方式の能力情報に基づいて、使用するPCH方式を決定する(S402)。本実施形態では、M-PCH方式決定部301は、受信した管理フレームに含まれるM-PCH方式の能力情報におけるPCHサポートフィールド904に設定されるビット値(図10)に基づいて当該決定を行う。M-PCH方式決定部301は例えば、STA103がM-PCHしか使用できない場合にはM-PCH方式を、またSTAが、S-PCH方式しか使用できない場合にはS-PCH方式を使用することを決定することができる。また、STA103がM-PCH方式とS-PCH方式の両方を使用可能な場合には、M-PCH方式決定部301は、STA103と送受信するデータの特性(アプリケーション特性)に応じて、使用するPCH方式を決定するようにしても良い。例えば、送受信するデータが、センサーデータのように、定期的に送信される少量のデータである場合には、RLL通信のような時間に制約のある通信とは異なるのでS-PCH方式を選ぶようにしても良い。また、送受信されるデータのアプリケーションが、ゲームや産業ロボットのようなリアルタイム動作を必要とする、すなわち、時間に制約のあるアプリケーションである場合にはM-PCH方式を選ぶようにしても良い。STAと送受信するデータの特性(アプリケーション特性)に関する情報はIEEE802.11の管理フレームで通知することが可能である。また、ユーザ数が多い場合に、RLL通信におけるオーバーヘッドが大きくなるので、受信する能力情報が示す情報に関わらず、APが形成するネットワークに参加するSTAの数が所定の閾値を超える場合に、M-PCH方式を選択するようにしても良い。
【0032】
使用するPCH方式の決定後、AP102の能力情報生成部302は、決定したPCH方式がM-PCH方式かどうかを判定する。決定したPCH方式がM-PCH方式でない(S-PCH方式の)場合(S403でNO)、処理を終了する。一方、決定したPCH方式がM-PCH方式の場合(S403でYES)、能力情報生成部302は、M-PCH指定方式の能力情報を生成する(S404)。S404で生成される能力情報を、第1能力情報と称する。第1能力情報には、S403で決定したPCH方式の情報をPCHサポートフィールド904に含める。続いて、能力情報生成部302は、第1能力情報を含めた管理フレームを生成し、管理フレーム通信部304は当該管理フレームを送信する(第1能力情報をSTA103に通知する)(S405)。その後、AP102の能力管理部307は第1能力情報を記憶部201に格納する(S406)。
【0033】
図5は、AP102がSTA103へ第1能力情報を通知後(図4のS405)に、データ通信を開始するために実行する処理のフローチャートである。能力管理部307は、記憶部201に格納されている第1能力情報を取得し、決定したPCH方式の情報、すなわち、PCHサポートフィールド904におけるPCHビット値を確認する。決定したPCH方式がM-PCH方式の場合(S501でYES)、S504の処理へ分岐する。決定したPCH方式がM-PCH方式でない場合(S501でNO)、能力管理部307は、AP102がS-PCH方式をサポートしているかをチェックする(S502)。S-PCH方式をサポートする場合(S502でYES)、プライマリチャネルとしてS-PCH方式を選択(S503)し、S507に分岐する。例えばS-PCH方式に対してプライマリチャネルに36chが指定されている場合を想定する。この場合、S507では、チャネル構成部308は、隣接する40chのチャネルをセカンダリチャネルとしてチャネルを結合して20MHz+20MHzの合計40MHzの通信帯域をデータ通信のために構成する。また、S-PCH方式が未サポートの場合(S502でNO)、処理を終了する。
【0034】
S504では、空き/ビジー判定部306は、記憶部201に格納されている第1能力情報で指定されている複数のプライマリチャネル(図11のM-PCH使用可否フィールド905~913(の数)を参照)のうちの1つのプライマリチャネル(以下、対象チャネル)において空き/ビジーの判定を行う。当該判定のために、空き/ビジー判定部306は、制御フレームであるRTS(Request To Send)メッセージを送信する。STA103は、対象チャネルにおいてRTSを受信すると、対象チャネルのキャリアセンスを実施する。その結果、対象チャネルがビジー状態で無ければ、SIFS(Short Inter Frame Space)期間の経過後、STA103は、制御フレームであるCTS(Clear To Send)メッセージをAP102に送信する。AP102の空き/ビジー判定部306は、RTSを送信した対象チャネルにおいて当該RTSの応答であるCTSの受信を確認し、受信確認された場合に、使用可能なプライマリチャネルと判定する。この時、空き/ビジー判定部306は、対象チャネルにおいてCTSの受信確認が出来なかった場合は、当該対象チャネルはチャネル・アクセスに使用不可と判定する。次に、能力情報生成部302は、M-PCH指定方式の能力情報を生成する。S504で生成される能力情報を、第2能力情報と称する。第2能力情報には、対象チャネルに対応するM-PCH使用可否フィールド905~913に、空き/ビジーに対応するビット値が含まれる。空き/ビジー判定部306は、指定されているプライマリチャネルの全てに対して、空き/ビジー判定を行い(S504でNO、S504)、当該判定の終了後(S505)、処理はS506へ進む。なお、上記説明では、1つのプライマリチャネルの空き/ビジー判定の結果を第2能力情報に反映後、別の対象チャネルに対して同様の処理を行ったが、全てのプライマリチャネルに対する空き/ビジー判定を行った後に、第2能力情報を生成するように構成しても良い。
【0035】
ここで、図8を参照して、空き/ビジー判定部306による空き/ビジー判定処理について説明する。図8は、空き/ビジー判定処理のフローチャートである。AP102からSTA103への下りリンク(DL)通信を考えた場合、AP102はTxとなり、STA103はRxとなる。反対にSTA103からAP102への上りリンク(UL)通信を考えた場合、STA103はTxとなり、AP102はRxとなる。RTSは、送信側から受信側にデータ送信の問い合わせのために送る制御フレームのメッセージであり、CTSは、RTSへの応答として送信側に対して返信する制御フレームで送信許可を示す。BUSYは、Txから送信されるRTSのチャネルが、Rxにより使用中であることを示したものである。SIFSは、RTS受信後、CTSを返信する際のキャリアセンスの待ち時間である。ここでは、40+40MHz以上(80+80MHz、160+160MHz)の結合(チャネルボンディング)を目的とした9つのマルチプライマリチャネルに対して、空き(使用可能)チャネルの判定を実施した例を示す。図8では、判定結果として、RTSを送信した際に、M-PCH 5、M-PCH 6、M-PCH 9においてBUSY状態となりそれらのチャネルでCTSが確認できないことを示している。
【0036】
図5に戻り、S506では、能力管理部307は、生成した第2能力情報を記憶部201格納する。また、S506では、能力情報生成部302は、第2能力情報を含めた管理フレームを生成し、管理フレーム通信部304は当該管理フレームを送信する(第2能力情報をSTA103に通知する)。S506からS507へ進んだ場合、チャネル構成部308は、第2能力情報に基づいて、STA103に対してM-PCH方式によるチャネル・アクセスを実施する。そして、AP102は、STA103との間でM-PCH1~9の中からデータフレームの送受信に使用するプライマリチャネルを選択(決定)する。その後、チャネル構成部308は、選択したプライマリチャネルと、当該プライマリチャネルに隣接するチャネルをセカンダリチャネルとして結合して、データ通信に用いる通信帯域として構成する。例えば、M-PCH 1が選択されると、隣接するM-PCH 2のチャネルをセカンダリチャネルとしてチャネルが結合され、40+40MHzの通信帯域として構成される。これに応じて、STA103は、AP102が送信するデータフレームを上記の40+40MHzの通信帯域で受信するデータ通信中状態に遷移する。
【0037】
S506からS507へ進んだ場合の、チャネル構成部308によるプライマリチャネルの選択は、任意の条件に基づいて行われうる。例えば、チャネル構成部308は、チャネルボンディングにより確保可能な送信帯域幅、受信電界強度、信号対雑音比(SNR)、帯域幅とSNRから計算されるチャネル伝送容量、および、ある所定期間のチャネル使用状況から推測される使用頻度、の少なくともいずれかに基づいて、プライマリチャネルを選択しうる。すなわち、例えばチャネル構成部308は、チャネルの結合(チャネルボンディング)により、確保可能な送信帯域幅が最大となるチャネルを選択するようにできる。また、チャネル構成部308は、受信電界強度が最も強いチャネル、または信号対雑音比(SNR)が最も良好なチャネルを選択しても良い。更に、チャネル構成部308は、帯域幅とSNRから計算されるチャネル伝送容量が大きいチャネル、または、ある所定期間のチャネル使用状況から推測された、空きチャネル情報をもとに、チャネルを選択しても良い。これらのプライマリチャネルの選択条件については、上記の条件のいずれか1つ、または複数の条件の組み合わせで使用されてもよい。
【0038】
なお、図5は、AP102により実行される処理のフローチャートであるが、STA103により実行される処理も、AP102とSTA103を読み替えて説明することで同様に実現可能であることから、説明を省略する。
【0039】
次に、図6図7を参照して、DL通信時およびUL通信時のAP102とSTA103間の通信シーケンスを説明する。図6は、DL通信時のAP102とSTA103間のシーケンス図である。M601~M603はSTA103がAP102のネットワーク情報を取得するためのスキャン処理である。M601では、AP102が、AP102のネットワーク情報を含むBeaconフレームをBSS101のネットワーク内にあるSTA103へ報知する。M602では、STA103が、AP102のネットワーク情報を問い合わせるProbe Requestフレームを送信し、M603では、AP102がその応答であるProbe Resoponseフレームを送信する。STA103はAP102の送信するBeaconフレーム(M601)を受信することでAP102のネットワーク情報を取得しても良いし、能動的にProbe Requestフレームを送信し(M602)、AP102からProbe Responseフレームを受信する(M603)ことでAP102のネットワーク情報を取得しても良い。Beaconフレーム、Probe ResponseフレームにはAP102のM-PCH方式の能力情報(図11を参照)を含めることができる。特に、M-PCH方式の能力情報を含むBeaconフレームは、複数のプライマリチャネルで報知するようにしても良い。また、Probe RequestにはSTA103のM-PCH方式の能力情報(図11を参照)を含めることができる。これらの処理によってSTA103とAP102は、自身のM-PCH方式の能力情報を交換することが可能となる。
【0040】
M604では、STA103が、BSS101のネットワークに接続するためにAssociation Requestフレームを送信し、M605では、AP102が、接続結果を示すAssociation Responseフレームを送信する。Association Requestフレーム、Association ResponseフレームにもM-PCH方式の能力情報を含めることができる。STA103はスキャン処理で取得したAP102のM-PCH方式の能力情報に基づいて、Association Requestフレームに含めるM-PCH方式の能力情報を決定するようにしても良い。例えば、STA103がS-PCH方式とM-PCH方式を使用可能であっても、AP102がM-PCH方式のみ使用可能な場合は、Association Requestフレームに含める自身のM-PCH方式の能力情報でM-PCH方式のみ使用可能であることを示すようにしても良い。また同様にして、AP102は、Association Requestフレームに含まれるSTA103のM-PCH方式の能力情報に基づいて、Association Responseフレームに含めるM-PCH方式の能力情報を決定するようにしても良い。この例では図4に示したように、AP102がM-PCH方式を採用することを決めて第1能力情報を生成し(S404)、M606において管理フレームで第1能力情報をSTA103へ通知する(S405)。
【0041】
ユーザ等によるデータの送信要請後のM607は、マルチプライマリチャネルの空き空き/ビジー判定処理に関するメッセージシーケンスである。M607で行われる処理は、図5のS504~S506で説明した処理内容と同様であることから、説明は省略する。なお、RTSとCTSを用いたプライマリチャネルの空き/ビジー判定処理に関するメッセージシーケンスについては、図8に記載される。M608では、AP102はM607の処理に基づいて生成した第2能力情報を含む管理フレーム2をSTA103へ送信する。M609では、図5のS507で説明されているように、AP102が、プライマリチャネルとセカンダリチャネルが結合された通信帯域を用いてDL通信のデータフレームをSTA103へ送信する。この時、AP102は、事前に接続シーケンス(M601~M605)が完了しているので、前記チャネル結合に使用するプライマリチャネルで、前記Beaconフレーム(M601)を送信しなくても良い。
【0042】
図7は、UL通信時のSTA103とAP102間のシーケンス図である。M601~M603のスキャン処理と、M604~M605のSTA103の接続処理ならびにM606の管理フレームの送信に関する送受信処理については、図6の場合と同様のため、説明を省略する。ユーザ等によるデータの送信要請後のM701は、STA103におけるマルチプライマリチャネルの空き空き/ビジー判定処理に関するメッセージシーケンスである。STA103は、M606で受信した第1能力情報を元に、使用可能な複数のプライマリチャネルの夫々に対して空き/ビジーの判定のために制御フレームであるRTSメッセージを送信する。次に、AP102は、夫々のプライマリチャネルからRTSを受信すると、該当するチャネルのキャリアセンスを実施する。その結果、該当チャネルがビジー状態で無ければ、SIFS期間の経過後、制御フレームであるCTSメッセージをSTA103に送信する。STA103は、RTSを送信したプライマリチャネルの夫々においてRTSの応答であるCTSの受信を確認し、受信確認されたチャネルを使用可能なプライマリチャネルと判定する。また、STA103は、CTSの受信確認が出来なかったプライマリチャネルについては、チャネル・アクセスには使用不可と判定する。STA103は判定の結果から、第2能力情報を生成する。M701におけるSTA103とAP102間におけるプライマリチャネルの空き/ビジーの判定処理に関するメッセージシーケンスについては、図8に記載される。
【0043】
STA103は、使用可能な複数のプライマリチャネルすべてに対して空き/ビジーの判定が完了すると(S505でYES)、第2能力情報を記憶部201に格納する。M702では、STA103は、M701の処理で得られ、記憶部201に格納されている第2の能力情報を含む管理フレーム2をAP102へ送信する。M703では、図5のS507で説明されたように、STA103が、決定したプライマリチャネルとセカンダリチャネルが結合された通信帯域を用いてUL通信のデータフレームをAP102へ送信する。この時、AP102は、事前に接続シーケンス(M601~M605)が完了しているので、前記チャネル結合に使用するプライマリチャネルで、前記Beaconフレーム(M601)を送信しなくても良い。
【0044】
以上のように、本実施形態によれば、マルチプライマリチャネル方式の能力情報をSTA及びAP間で交換することができる。これにより、チャネルの占有や空きチャネルの確保が容易でない環境下であっても、チャネル・アクセスの遅延が低減され、高信頼で低遅延な要件を満たすアプリケーションに適したIEEE802.11準拠の無線環境が提供できる。
【0045】
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0046】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0047】
101、111 ネットワークBSS、103、113 STA、102、112 AP
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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