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7569157緑色飲食品組成物の製造方法、緑色飲食品組成物及び栄養成分減少抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】緑色飲食品組成物の製造方法、緑色飲食品組成物及び栄養成分減少抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20241009BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20241009BHJP
   A23B 7/005 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
A23L19/00 A
A23L7/10 H
A23B7/005
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020066257
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021159022
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100080953
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 克郎
(74)【代理人】
【識別番号】230103089
【弁護士】
【氏名又は名称】遠山 友寛
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】呉藤 伊織
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 純平
(72)【発明者】
【氏名】大関 菖平
【審査官】長谷川 莉慧霞
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-065227(JP,A)
【文献】特開2004-000153(JP,A)
【文献】特開昭59-213356(JP,A)
【文献】高千穂 釜炒り茶,甲斐製茶園HP[online],2019年01月30日,<URL: https://kai-seichaen.com/kamairicha/index.html>,[検索日:2024/02/02], [WEBアーカイブ使用]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23B
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/
AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大麦若葉250~385℃で30~180秒の条件で加熱する釜炒り工程を備える、
緑色飲食品組成物の製造方法。
【請求項2】
前記釜炒り工程が、回転する円筒状の釜により行われる、
請求項1に記載の緑色飲食品組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の緑色飲食品組成物の製造方法により得られる、
緑色飲食品組成物。
【請求項4】
大麦若葉250~385℃で30~180秒の条件で加熱する釜炒り工程を含む、
緑色飲食品組成物に含まれる糖、遊離アミノ酸及び有機酸類からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む栄養成分の、
減少抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑色飲食品組成物の製造方法、緑色飲食品組成物及び栄養成分減少抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緑色葉物野菜を主成分とする緑色飲料は、簡易に野菜成分を摂取できる健康食品として利用されている。原料となる緑色葉物野菜を生葉のまま市販することは困難であるため、通常、植物の緑葉を主原料とする乾燥粉末に加工し、保管されて流通し、飲用直前に水などに溶解して緑色飲料を調製する。
【0003】
例えば、特許文献1には、緑色野菜全草粉末と緑色野菜搾汁液とを用い造粒して得られた高濃度野菜青汁用粉末が開示されている。また、特許文献2には、大麦の茎及び/又は葉の乾燥粉末を含有する血糖値上昇抑制用青汁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-086311号公報
【文献】特開2017-014187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
青汁を調整するために用いられる粉末の製造過程では、生葉を粉末加工するまでにタイムラグが発生する場合があり、その間に植物が自身の酵素により品質を劣化させる。そのため、特許文献1~2では、熱水処理や蒸煮処理、マイクロウェーブ照射処理などのブランチング処理を行うことで、酵素を不活性化させることが開示されている。
【0006】
しかしながら、本発明者らが検討したとこころ、このような従前のブランチング処理では、加熱処理による栄養分の破壊・流出や品質劣化、緑色の褐色化が生じ、原料となる植物の栄養成分が大きく損なわれることが分かってきた。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、緑色葉物野菜の栄養成分の破壊・流出を抑制した緑色飲食品組成物の製造方法、栄養成分の破壊・流出が抑制された緑色飲食品組成物、及び栄養成分減少抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、緑色葉物野菜を収穫後、高温短時間加熱(釜炒り)することにより、上記課題を解決しうることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
緑色葉物生野菜を200~400℃で20~240秒の条件で加熱する釜炒り工程を備える、
緑色飲食品組成物の製造方法。
〔2〕
前記釜炒り工程が、回転する円筒状の釜により行われる、
〔1〕に記載の緑色飲食品組成物の製造方法。
〔3〕
前記緑色葉物生野菜が、大麦若葉、小麦若葉、ケール、及びモロヘイヤからなる群より選ばれる、
〔1〕又は〔2〕に記載の緑色飲食品組成物の製造方法。
〔4〕
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の緑色飲食品組成物の製造方法により得られる、
緑色飲食品組成物。
〔5〕
緑色葉物生野菜を200~400℃で20~240秒の条件で加熱する釜炒り工程を含む、
緑色飲食品組成物の栄養成分減少抑制方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、緑色葉物野菜の栄養成分の破壊・流出を抑制した緑色飲食品組成物の製造方法、栄養成分の破壊・流出が抑制された緑色飲食品組成物、及び栄養成分減少抑制方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例、比較例及び参考例により得られた葉物の糖の含有量を示すグラフである。
図2】実施例、比較例及び参考例により得られた葉物の遊離アミノ酸の含有量を示すグラフである。
図3】実施例、比較例及び参考例により得られた葉物の有機酸類の含有量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0013】
〔緑色飲食品組成物の製造方法〕
本実施形態の緑色飲食品組成物の製造方法は、緑色葉物生野菜を200~400℃で20~240秒の条件で加熱する釜炒り工程を備える。
【0014】
上述のとおり、緑色葉物生野菜の加工品の製造過程では、熱水処理や蒸煮処理、マイクロウェーブ照射処理などのブランチング処理を行い、変色や変質の原因となりうる酵素を不活性化させることにより、加工品の緑色などを維持する操作が行われる。しかしながら、このような従前のブランチング処理では、加熱処理による栄養分の破壊・流出や品質劣化、緑色の褐色化が生じ、原料となる植物の栄養成分が大きく損なわれることが分かってきた。
【0015】
これに対して、本実施形態の緑色飲食品組成物の製造方法は、従前のブランチング処理に代えて又は加えて、収穫後の緑色葉物生野菜を高温短時間加熱(釜炒り)する。これにより、栄養成分の破壊・流出を茹でた場合などよりも進行させることなく、品質の良好な緑色飲食品組成物を製造することができる。
【0016】
本実施形態の緑色飲食品組成物の製造方法は、釜炒り工程を備える方法であれば、特に制限されず、必要に応じて他の工程を行うことができる。例えば、収穫後の緑色葉物生野菜を洗浄する洗浄工程や収穫後の緑色葉物生野菜を切断する切断工程、釜炒り工程後の緑色葉物野菜を微細化する微細化工程や釜炒り工程後の緑色葉物野菜を乾燥させる乾燥工程などを適宜組み合わせてもよい。以下、これら一連の工程について詳説するが、緑色飲食品組成物の製造方法は、これら工程に限定されるものではない。
【0017】
なお、本実施形態において緑色葉物生野菜とは、加熱前の野菜を意味し、緑色葉物野菜とは、加熱後の野菜を意味するものとする。
【0018】
〔洗浄工程〕
本実施形態の製造方法は、収穫後の緑色葉物生野菜を洗浄する洗浄工程を備えていてもよい。洗浄方法としては、特に制限されないが、例えば、洗浄槽内で水中に緑色葉物生野菜を浸漬する浸漬洗浄法や、ベルトコンベアなどの板の上に並べた緑色葉物生野菜に散水する散水洗浄法が挙げられる。洗浄工程を行うことにより、土壌菌や土、その他不純物を洗い流すことができる。特に、浸漬洗浄法及び/又は散水洗浄法を行うことが好ましい。
【0019】
なお、洗浄工程は、釜炒り工程前に行ってもよいし、後述する切断工程前に行っても後に行ってもよい。なお、洗浄工程において使用する水の温度は、特に制限されないが、常温程度が好ましく、例えば5~35℃が好ましい。
【0020】
〔第1脱水工程〕
本実施形態の製造方法は、上記洗浄工程後、又は、後述する釜炒り工程前に、緑色葉物生野菜の水分を除去する第1脱水工程を備えていてもよい。脱水方法としては、特に制限されないが、例えば、遠心機によって脱水する方法や、圧搾機によって脱水する方法が挙げられる。
【0021】
〔切断工程〕
本実施形態の製造方法は、収穫後の緑色葉物生野菜を切断する切断工程を備えていてもよい。切断方法としては、特に制限されないが、例えば、用いる緑色葉物生野菜の形状や種類、硬さ等に応じて、公知の切断機や破砕機を用いることができる。これにより、下流の工程で各処理器を停滞させることなどを回避することができる。
【0022】
なお、切断工程は、釜炒り工程前に行っても後に行ってもよいし、洗浄工程前に行っても後に行ってもよい。切断工程を、釜炒り工程後に行う場合には、緑色葉物野菜を切断する切断工程と読み替えるものとする。
【0023】
切断工程において、切断後の緑色葉物生野菜の平均長さは、好ましくは1.0~15.0cmであり、より好ましくは1.0~10.0cmであり、さらに好ましくは1.0~7.0cmであり、特に好ましくは1.0~5.0cmである。緑色葉物生野菜を細かく切断するほど、後工程における停滞が抑制され、十分な処理を実施できる傾向にある。一方で、緑色葉物生野菜を粗く切断するほど、切断工程における処理効率がより向上する傾向にある。なお、平均長さは、切断後の緑色葉物生野菜を任意に100本採取し、その平均として求めることができる。
【0024】
〔釜炒り工程〕
釜炒り工程は、緑色葉物生野菜を200~400℃で20~240秒の条件で加熱する工程である。このような加熱処理を行うことにより、緑色葉物生野菜の酵素により促進される劣化を抑制することができ、また、得られる搾汁液が有する緑色葉物生野菜のにおいや甘味がより向上する傾向にある。さらに、高温短時間加熱(釜炒り)することにより、栄養成分の破壊・流出を茹でた場合などよりも進行させることなく、品質の良好な緑色飲食品組成物を製造することができる。
【0025】
釜炒り工程の処理温度は、200~400℃であり、好ましくは220~390℃であり、より好ましくは250~385℃であり、さらに好ましくは300~380℃である。釜炒り工程の温度の温度が200℃以上であることにより、緑色葉物生野菜の劣化を抑制することができる。釜炒り工程の温度の温度が400℃以下であることにより、栄養成分の破壊・流出を抑制することができる。また、高温短時間の加熱処理により、得られる緑色飲食品組成物が有する色調の低下や、緑色葉物生野菜のにおいの低下を抑制することができ、さらには、過加熱によるにおいの発生や緑色葉物生野菜の熱による硬化を抑制することができる。
【0026】
また、釜炒り工程の処理時間は、20~240秒であり、好ましくは30~180秒であり、より好ましくは40~120秒であり、さらに好ましくは60~90秒である。釜炒り工程の処理時間が240秒以下であることにより、栄養成分の破壊・流出を抑制することができる。また、高温短時間の加熱処理により、得られる緑色飲食品組成物が有する色調の低下や、緑色葉物生野菜のにおいの低下を抑制することができ、さらには、過加熱によるにおいの発生や緑色葉物生野菜の熱による硬化を抑制することができる。一方で、釜炒り工程の処理時間が20秒以上であることにより、緑色葉物生野菜の劣化を抑制することができる。なお、上記処理時間は、バッチ式の釜炒り機を用いる場合には、その釜炒り機による処理時間であり、投入口と排出口とを有する連続式の釜炒り機を用いる場合には、その釜炒り機に緑色葉物生野菜を投入してから排出されるまでの平均時間とすることができる。
【0027】
釜炒りの具体的な方法としては、特に制限されないが、回転する円筒状の釜を用いた方法が挙げられる。より具体的には、高温に熱した円筒釜内で緑色葉物生野菜を加熱するとともに、円筒釜を回転させることにより緑色葉物生野菜を撹拌し、緑色葉物生野菜に対してより均一に高温加熱を行うことができる。この際、緑色葉物生野菜は釜からの伝導熱のほか、緑色葉物生野菜自身から気化した水蒸気または外部から送り込んだ水蒸気で加熱されてもよい。このように回転する円筒状の釜を用いることにより、栄養成分の破壊・流出を茹でた場合などよりも進行させることなく、品質の良好な緑色飲食品組成物を製造することができる。
【0028】
本実施形態で用いる緑色葉物生野菜としては、特に制限されないが、例えば、大麦若葉その他のイネ科植物、ほうれん草、ケール、小松菜その他のアブラナ科野菜、パセリ、小麦若葉、明日葉、クワ若葉、モロヘイヤ、メキャベツなどのクロロフィルを含む葉物類が挙げられる。
【0029】
このなかでも、大麦若葉、小麦若葉、ケール、及びモロヘイヤからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、大麦若葉がより好ましい。本実施形態によれば、このような高栄養価の緑色葉物生野菜の栄養成分を破壊・流出させることなく、緑色飲食品組成物を製造することができる。
【0030】
〔第2脱水工程〕
本実施形態の製造方法は、上記釜炒り工程後に、緑色葉物生野菜の水分を除去する第2脱水工程を備えていてもよい。脱水方法としては、特に制限されないが、例えば、遠心機によって脱水する方法や、圧搾機によって脱水する方法が挙げられる。
【0031】
〔微細化工程〕
本実施形態の製造方法は、釜炒り工程後に、緑色葉物野菜を微細化する微細化工程を備えていてもよい。微細化工程は、緑色葉物野菜を微細化し粉末にするか、緑色葉物野菜を微細化し搾汁に供するために行われるものであり、最終的に得られる緑色飲食品組成物の形態に応じてその具体的操作は異なる。また、例えば、粉末にする場合、通常は一段階の微細化では粉末にすることは容易ではなく、そのような場合には、大きさに応じて多段階の微細化工程を行うことができる。なお、微細化工程は、後述する乾燥工程前に行っても後に行ってもよく、乾燥工程の前後でそれぞれ行ってもよい。
【0032】
微細化の具体的な操作としては、特に制限されないが、例えば、緑色葉物野菜を細断あるいはすりつぶすことが挙げられる。目安として、緑色葉物野菜の大きさが、微細化工程で使用する装置で規定される最大原料サイズ以下となるまで破砕することが考えられる。
【0033】
〔乾燥工程〕
本実施形態の製造方法は、釜炒り工程後に、緑色葉物野菜を乾燥させる乾燥工程を備えていてもよい。乾燥工程と粉砕工程を行うことにより、緑色葉物野菜を粉砕し粉末にすることができる。
【0034】
また、乾燥工程は、加熱して水分を蒸発させるものに限られず、凍結した状態で水分を蒸発させる凍結乾燥も含まれる。例えば、緑色葉物野菜の微細化をある程度形が残る程度、例えば一口サイズまでにし、それを凍結乾燥することにより、フリーズドライ野菜を得ることができる。
【0035】
〔粉砕工程〕
本実施形態の製造方法は、微細化工程後に、微細化された緑色葉物野菜を粉砕し粉末にする粉砕工程を備えていてもよい。粉砕方法としては、ジェットミル、ボールミル、ハンマーミル等が挙げられる。なお、粉砕工程は、微細化工程後であれば、後述する乾燥工程前に行っても後に行ってもよい。
【0036】
〔搾汁工程〕
さらに、上記乾燥工程に代えて又は加えて、本実施形態の製造方法は、釜炒り工程後に、緑色葉物野菜から搾汁液を得る搾汁工程を有していてもよい。この搾汁工程では、釜炒り工程後の緑色葉物野菜を直接搾汁するほか、緑色葉物野菜に一度加水して緑色葉物野菜内の栄養成分を抽出しつつ搾汁する方法や、微細化した緑色葉物野菜に一度加水して緑色葉物野菜内の栄養成分を抽出しつつ搾汁することができる。
【0037】
搾汁方法としては、特に制限されないが、例えば、デカンタ遠心搾汁、スクリュープレス搾汁、ベルト搾汁、濾過搾汁などが挙げられる。また、搾汁工程により得られた搾汁液は、濃縮工程により所望の濃度まで濃縮してもよい。濃縮方法としては、特に制限されないが、例えば、減圧下で水分を揮発させる方法が挙げられる。
【0038】
また、緑色飲食品組成物の製造過程で粉末を得る場合、上記のように微細化工程と乾燥工程と行って緑色葉物野菜を微細化し粉末を得る方法の他、搾汁工程により一度搾汁液を得て、それを乾燥させることで粉末を得てもよい。
【0039】
〔緑色飲食品組成物〕
本実施形態の緑色飲食品組成物は、上記緑色飲食品組成物の製造方法により得られるものである。緑色飲食品組成物の形態としては、特に制限されないが、例えば、緑色葉物野菜を粉末、液状、ペースト状、その他の固体又は液体状としたもの、あるいはこれら状態の緑色葉物野菜を原材料として含む食品が挙げられる。一例として、粉末状の緑色飲食品組成物は、加水して飲料としてもよいし、他の容器詰飲料の原料として用いることもできる。
【0040】
本実施形態の緑色飲食品組成物は、釜炒り工程を経ることにより、栄養成分の破壊・流出を茹でた場合などよりも進行させることなく、品質に優れるものとなる。
【0041】
〔緑色飲食品組成物の栄養成分減少抑制方法〕
本実施形態の緑色飲食品組成物の栄養成分減少抑制方法は、緑色葉物生野菜を200~400℃で20~240秒の条件で加熱する釜炒り工程を含む。栄養成分減少抑制方法の各工程は、上述の製造方法と同様にすることができる。
【実施例
【0042】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0043】
〔参考例(冷蔵生葉)〕
収穫直後から4℃で1日半冷蔵した大麦若葉の生葉600gを平均長さが5.0cmになるように裁断後、生葉の10倍量の水が入った槽に入れて洗浄した。洗浄後の葉を遠心式の脱水機にて1,350rpmで1分間脱水処理した後、ディープフリーザー(日本フリーザー製、CLN-52UW)(-85℃)にて凍結させ、真空凍結乾燥装置(TAITEC製、VD-800R)を用いて一晩凍結乾燥させた。乾燥後の葉をフードプロッセッサー(Iwatani製、Silent MILLSER)にて30秒粉砕した後、さらにボールミル(Restch製、MM400(粉砕セット:ステンレス))で25Hz30秒粉砕した。
【0044】
〔実施例(釜炒り葉)〕
収穫直後から4℃で1日半冷蔵した大麦若葉の生葉600gを平均長さが5.0cmになるように裁断後、生葉の10倍量の水が入った槽に入れて洗浄した。洗浄後の葉を遠心式の脱水機にて1,350rpmで1分間脱水処理した後、製茶用円筒釜を用いて300℃で120秒間加熱した(釜炒り処理)。釜から取り出した葉を遠心式の脱水機にて1,350rpmで1分間脱水処理した後、家庭用棚式食品乾燥機に入れて70℃で2時間乾燥させた。乾燥後の葉をフードプロッセッサーにて30秒粉砕した後、さらにボールミルで25Hz30秒粉砕した。
【0045】
〔比較例1(蒸し葉)〕
収穫直後から4℃で1日半冷蔵した大麦若葉の生葉600gを平均長さが5.0cmになるように裁断後、生葉の10倍量の水が入った槽に入れて洗浄した。洗浄後の葉を遠心式の脱水機にて1,350rpmで1分間脱水処理した後、蒸し器を用いて100℃で180秒間加熱した。釜から取り出した葉を遠心式の脱水機にて1,350rpmで1分間脱水処理した後、家庭用棚式食品乾燥機に入れて70℃で2時間乾燥させた。乾燥後の葉をフードプロッセッサーにて30秒粉砕した後、さらにボールミルで25Hz30秒粉砕した。
【0046】
〔比較例2(茹で葉)〕
収穫直後から4℃で1日半冷蔵した大麦若葉の生葉600gを平均長さが5.0cmになるように裁断後、生葉の10倍量の水が入った槽に入れて洗浄した。洗浄後の葉を遠心式の脱水機にて1,350rpmで1分間脱水処理した後、生葉の10倍量の沸騰水が入った鍋で、100℃で180秒間加熱した。釜から取り出した葉を遠心式の脱水機にて1,350rpmで1分間脱水処理した後、家庭用棚式食品乾燥機に入れて70℃で2時間乾燥させた。乾燥後の葉をフードプロッセッサーにて30秒粉砕した後、さらにボールミルで25Hz30秒粉砕した。
【0047】
上記のようにして得られた冷蔵生葉、釜炒り葉、蒸し葉及び茹で葉の4種類の葉について、下記方法により、乾燥重量当たりの糖、遊離アミノ酸及び有機酸類の含有量を測定した。その結果を図1~3に示す。その結果、釜炒り葉は冷蔵生葉に続いて遊離アミノ酸及び有機酸類の含有量が高いことが分かった。
【0048】
1.糖の測定方法
各粉砕試料50mgを水50mLに懸濁させて水溶液を調製し、その水溶液を80℃の温浴に30分間保持して、粉砕試料の成分を水中に抽出した。得られた抽出物をイオンクロマトグラフィー機器DionexICS-5000+(ThermoFisher SCIENTIFIC社)で測定した。ここで、測定対象となる「糖」は、グルコース、フルクトース、スタキオース、セロビオース、ラフィノース及びマルトースである。
【0049】
2.遊離アミノ酸の測定方法
各粉砕試料50mgを水50mLに懸濁させて水溶液を調製し、その水溶液を80℃の温浴に30分間保持して、粉砕試料の成分を水中に抽出した。得られた抽出物を、HPLCを用いた自動プレカラム誘導化法で測定した。ここで、測定対象となる「遊離アミノ酸」は、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、アラニン、アルギニン、メチオニン、トリプトファン及びGABAである。
カラム:CAPCELLPAK C18 TYPE AQ(3.0mm i.d.×150mm)(大阪ソーダ社製)
装置:Waters HPLC
【0050】
3.有機酸類の測定方法
各粉砕試料50mgを水50mLに懸濁させて水溶液を調製し、その水溶液を80℃の温浴に30分間保持して、粉砕試料の成分を水中に抽出した。得られた抽出物を、Prominence有機酸分析システム(島津製作所社製)で測定した。ここで、測定対象となる「有機酸類」は、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、乳酸、ギ酸及びリン酸である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、緑色飲食品組成物の製造方法として、産業上の利用可能性を有する。
図1
図2
図3