(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理装置、情報処理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/30 20230101AFI20241009BHJP
【FI】
G06Q10/30
(21)【出願番号】P 2020071828
(22)【出願日】2020-04-13
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 周知
(72)【発明者】
【氏名】新道 千加子
【審査官】山田 倍司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0295045(US,A1)
【文献】特開2016-059296(JP,A)
【文献】特開2009-157476(JP,A)
【文献】特開2020-042364(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0114168(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0051145(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0052883(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物由来合成ガスから得られた廃棄物由来のエタノールの成分情報を取得し、
前記エタノールを識別するためのエタノール識別情報を取得し、
前記エタノール中の天然放射性炭素C14の含有量を取得し、
取得した前記天然放射性炭素C14の含有量が所定の含有量以上である場合、前記天然放射性炭素C14の含有量を含む前記エタノールの成分情報を前記エタノール識別情報に関連付けてブロックチェーンに出力する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項2】
焼却対象となる廃棄物または廃棄方法の詳細を示す焼却対象情報を取得し、
取得した前記焼却対象情報を、前記エタノール識別情報に関連付けて前記ブロックチェーンに出力する
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
エタノール生成装置へ入力するガス組成データ、ガス資化率及びエタノール生産量を含む前記エタノールの生成時の生成情報を取得し、
取得した前記生成情報を、前記エタノール識別情報に関連付けて前記ブロックチェーンに出力する
請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
生成した前記エタノール中のδ
13Cの値及びエタノール濃度を
取得し、
取得したδ
13Cの値が-35‰未満であり、且つ、エタノール濃度が97%以上である場合、δ
13Cの値及びエタノール濃度を含む前記エタノールの成分情報を、前記エタノール識別情報に関連付けて前記ブロックチェーンに出力する
請求項1から
3のいずれか一つに記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記エタノールを出荷した出荷業者に関する情報、及び前記エタノールの出荷量を含む出荷情報を取得し、
取得した前記出荷情報を、前記エタノール識別情報に関連付けて前記ブロックチェーンに出力する
請求項1から
4までのいずれか一つに記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記エタノールを使用して加工した加工製品における、前記エタノールの使用量、前記エタノールに配合された配合物に関する情報、及び加工内容を含む加工情報を取得し、
取得した前記加工情報を、前記エタノール識別情報に関連付けて前記ブロックチェーンに出力する
請求項1から
5までのいずれか一つに記載の情報処理方法。
【請求項7】
エタノールの生成過程で発生したCO2に基づいて、CO2の削減量を取得し、
取得したCO2の削減量を、前記エタノール識別情報に関連付けて前記ブロックチェーンに出力する
請求項1から
6までのいずれか一つに記載の情報処理方法。
【請求項8】
回収ボックスID、回収日時及び回収場所を含む回収情報を取得し、
取得した前記回収情報を、前記エタノール識別情報に関連付けて前記ブロックチェーンに出力する
請求項1から
7までのいずれか一つに記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記エタノールを識別するためのエタノール識別情報を記述したコードを発行する
請求項1から
8までのいずれか一つに記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記エタノール識別情報を記述したコードから前記エタノール識別情報を読み取り、
読み取った前記エタノール識別情報に基づいて、前記ブロックチェーン上に記録された前記エタノールの成分情報を取得して出力する
請求項1から
9までのいずれか一つに記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記ブロックチェーン上に記録されたエタノールが購入された場合、前記エタノールの販売価格に対応する仮想通貨量を算出し、
前記エタノールを購入した購入者のウォレットアドレス宛から前記エタノールを販売した販売者のウォレットアドレス宛へ、算出した前記仮想通貨量を前記ブロックチェーン経由で支払う
請求項1から
10までのいずれか一つに記載の情報処理方法。
【請求項12】
計測装置で測定することにより得られたエタノールの成分情報が、所定の条件を満たす場合に、認定情報を生成するスマートコントラクトを前記ブロックチェーンのノードに記憶しておき、
エタノールの識別情報及び成分情報を前記ブロックチェーンへ出力した後に、前記スマートコントラクトにより生成された認定情報を、前記エタノールの識別情報及び成分情報に関連付けて前記ブロックチェーンに記憶する
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項13】
前記生成された認定情報に対応する2次元コードを生成する
請求項
12に記載の情報処理方法。
【請求項14】
端末装置で読み取られた認定情報に対応する2次元コードを受信した場合に、前記認定情報に対応する成分情報を前記ブロックチェーンから読み出して前記端末装置へ出力する
請求項
13に記載の情報処理方法。
【請求項15】
制御部を備える情報処理装置であって、
前記制御部は、
廃棄物由来合成ガスから得られた廃棄物由来のエタノールの成分情報を取得
し、
前記エタノールを識別するためのエタノール識別情報を取得
し、
前記エタノール中の天然放射性炭素C14の含有量を取得し、
取得した前記天然放射性炭素C14の含有量が所定の含有量以上である場合、前記天然放射性炭素C14の含有量を含む前記エタノールの成分情報を前記エタノール識別情報に関連付けてブロックチェーンに出力す
る
情報処理装置。
【請求項16】
情報処理装置と、ブロックチェーンノードと、情報処理端末とを備える情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、
廃棄物由来合成ガスから得られた廃棄物由来のエタノールの成分情報を取得する第1取得部と、
前記エタノールを識別するためのエタノール識別情報を取得する第2取得部と、
前記エタノール中の天然放射性炭素C14の含有量を取得する第3取得部と、
前記第3取得部が取得した前記天然放射性炭素C14の含有量が所定の含有量以上である場合、前記第1取得部が取得した
前記天然放射性炭素C14の含有量を含む前記エタノールの成分情報を、前記第2取得部が取得した前記エタノール識別情報に関連付けて、前記ブロックチェーンノードに送信する送信部とを備え、
前記ブロックチェーンノードは、
前記送信部が送信した前記エタノール識別情報及び前記エタノールの成分情報を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記エタノールの成分情報を前記エタノール識別情報に関連付けて記録する記録部とを備え、
前記情報処理装置は、
前記エタノールを識別するためのエタノール識別情報を記述したコードを発行する発行部を備え、
前記情報処理端末は、
前記発行部が発行したコードから前記エタノール識別情報を読み取る読取部と、
前記読取部が読み取った前記エタノール識別情報に基づいて、前記ブロックチェーンノード上に記録された前記エタノールの成分情報を取得する第
4取得部と、
前記第
4取得部が取得した前記エタノールの成分情報を表示する表示部と
を備える情報処理システム。
【請求項17】
廃棄物由来合成ガスから得られた廃棄物由来のエタノールを識別するためのエタノール識別情報を、該エタノール識別情報を記述したコードから読み取り、
読み取った前記エタノール識別情報に基づいて、ブロックチェーン上に記録された前記エタノールの成分情報を取得して表示
し、
前記エタノール識別情報を送信した後に、前記ブロックチェーンに送信されたエタノール識別情報に対応する成分情報が所定条件を満たす場合に、認定情報を生成するスマートコントラクトを通じて生成された認定情報を表示する
処理をコンピュータに実行させる
ためのプログラム。
【請求項18】
廃棄物処理過程、エタノール生成過程、エタノール成分計測過程、加工過程、及び回収過程を含むリサイクル画面を表示し、
表示された過程が選択された場合、
前記ブロックチェー
ンから送信された前記過程の前記エタノール識別情報に対応する詳細情報を表示する
処理を実行させる請求項
17に記載のプログラム。
【請求項19】
前記エタノール成分計測過程が選択された場合、
前記ブロックチェー
ンから送信された前記エタノール識別情報に対応する成分情報を表示する
処理を実行させる請求項
18に記載のプログラム。
【請求項20】
前記廃棄物処理過程が選択された場合、
前記ブロックチェー
ンから送信された前記エタノール識別情報に対応する廃棄物の種類及び廃棄物の由来を含む詳細情報を表示する
処理を実行させる請求項
18又は
19に記載のプログラム。
【請求項21】
前記回収過程が選択された場合
前記ブロックチェー
ンから送信された、前記エタノール識別情報に対応する回収場所及び回収日時を含む詳細情報を表示する
処理を実行させる請求項
18から
20までのいずれかひとつに記載のプログラム。
【請求項22】
前記エタノール識別情報を送信した場合、廃棄物処理過程、エタノール生成過程、エタノール成分計測過程、加工過程、及び回収過程のいずれの段階に到達しているかを示す段階情報を前記リサイクル画面に対応付けて表示する
処理を実行させる請求項
18から
21までのいずれかひとつに記載のプログラム。
【請求項23】
廃棄物由来合成ガスから得られた廃棄物由来のエタノールの成分情報を取得し、
前記エタノールを識別するためのエタノール識別情報を取得し、
前記エタノール中のδ
13
Cの値及びエタノール濃度を取得し、
取得したδ
13
Cの値が-35‰未満であり、且つ、エタノール濃度が97%以上である場合、δ
13
Cの値及びエタノール濃度を含む前記エタノールの成分情報を前記エタノール識別情報に関連付けてブロックチェーンに出力する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項24】
廃棄物由来合成ガスから得られた廃棄物由来のエタノールの成分情報を取得し、
前記エタノールを識別するためのエタノール識別情報を取得し、
取得した前記エタノールの成分情報を前記エタノール識別情報に関連付けてブロックチェーンに出力し、
計測装置で測定することにより得られたエタノールの成分情報が、所定の条件を満たす場合に、認定情報を生成するスマートコントラクトを前記ブロックチェーンのノードに記憶しておき、
エタノールの識別情報及び成分情報を前記ブロックチェーンへ出力した後に、前記スマートコントラクトにより生成された認定情報を、前記エタノールの識別情報及び成分情報に関連付けて前記ブロックチェーンに記憶する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、情報処理装置、情報処理システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本国内で廃棄されている可燃性ごみは約6,000万トン/年にも及ぶ。そのエネルギー量は約200兆キロカロリーに相当し、日本国内のプラスチック原料用ナフサの持つエネルギー量を大きく上回っており、これらのゴミも重量な資源であるといえる。これらごみ資源を石油化学製品に転換できれば、石油資源に依らない究極の資源循環社会を実現することが可能となる。上記観点から、特許文献1には、廃棄物から合成ガス(CO及びH2を主成分とするガス)を製造し、その合成ガスから発酵法によりエタノールを製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係る発明は、廃棄物から合成ガスを経てそれを原料にエタノールを製造することであり、そのエタノールを原料に製造された製品及びその使用後の再資源化の一連のプロセスにおける資源循環のトレーサビリティが十分でないという問題がある。
【0005】
一つの側面では、廃棄物由来のエタノールに対するトレーサビリティを確保することが可能な情報処理方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの側面に係る情報処理方法は、廃棄物由来合成ガスから得られた廃棄物由来のエタノールの成分情報を取得し、前記エタノールを識別するためのエタノール識別情報を取得し、前記エタノール中の天然放射性炭素C14の含有量を取得し、取得した前記天然放射性炭素C14の含有量が所定の含有量以上である場合、前記天然放射性炭素C14の含有量を含む前記エタノールの成分情報を前記エタノール識別情報に関連付けてブロックチェーンに出力する処理をコンピュータが実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
一つの側面では、廃棄物由来のエタノールに対するトレーサビリティを確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】エタノールにおける資源循環システムの概要を示す説明図である。
【
図3】エタノール情報DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図4】ブロックチェーンのノードの構成例を示すブロック図である。
【
図6】エタノールの成分情報をブロックチェーンのノードに出力する処理を説明する説明図である。
【
図7】エタノールの成分情報をブロックチェーンのノードに出力する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】端末によりエタノールの成分情報を表示する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態2のサーバの構成例を示すブロック図である。
【
図10】焼却対象情報DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図11】生成情報DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図12】出荷情報DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図13】加工情報DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図14】エタノールにおける資源循環プロセスを説明する説明図である。
【
図15】焼却対象情報をブロックチェーンのノードに出力する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図16】端末により資源循環の各段階での情報を表示する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図17】資源循環の詳細情報を表示する画面の一例を示す説明図である。
【
図18】仮想通貨を用いてエタノールを取引する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図19】スマートコントラクトを利用してエタノールの取引処理を行う動作を説明する説明図である。
【
図20】スマートコントラクト処理を自動的に実行させる際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図21】スマートコントラクトによりエタノールの認定情報を生成する処理を説明する説明図である。
【
図22】認定情報を生成するスマートコントラクトをロックチェーンに出力する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図23】認定情報を生成するスマートコントラクト処理を自動で実行させる際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図24】実施形態5の焼却対象情報DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図25】実施形態5のエタノールにおける資源循環処理を説明する説明図である。
【
図26】端末により資源循環のメニューを表示する画面の一例を示す説明図である。
【
図27】端末により資源循環情報を表示する画面の一例を示す説明図である。
【
図28】資源循環の履歴画面の一例を示す説明図である。
【
図29】CO2の削減量をブロックチェーンのノードに出力する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図30】回収情報をブロックチェーンのノードに出力する際の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0010】
(実施形態1)
実施形態1は、廃棄物由来合成ガスから得られた廃棄物由来のエタノールの成分情報をブロックチェーンに出力する形態に関する。エタノールは、様々な有機化合物の製造原料として用いられており、石油化学製品の6割程度を占めるエチレンと同様のC2 構造を有することから、既存の化学プロセスによってエチレンモノマー又はブタジエンモノマーなどに変換され、さらにプラスチック等の有機化学素材に誘導することができる。例えばエタノールは、ブタジエン、エチレン、プロピレン、イソブテン、アセトアルデヒド、酢酸、酢酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、エチル-t-ブチルエーテルエチレングリコール、エステル組成物、ポリエステル、アクリル酸、アミノヘキサン酸、ジエチルカーボネート、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリイソブチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリウレタン(PU)等の製造の原料として用いることができる。
【0011】
図1は、エタノールにおける資源循環システムの概要を示す説明図である。本実施形態のシステムは、情報処理装置1、ブロックチェーン2及び情報処理端末3を含み、各装置はインターネット等のネットワークNを介して情報の送受信を行う。
【0012】
情報処理装置1は、種々の情報に対する処理、記憶及び送受信を行う情報処理装置である。情報処理装置1は、例えばサーバ装置、パーソナルコンピュータまたは汎用のタブレットPC(パソコン)等である。本実施形態において情報処理装置1はサーバ装置であるものとし、以下では簡潔のためサーバ1と読み替える。
【0013】
ブロックチェーン2とは、分散型台帳技術又は分散型ネットワークである。ブロックチェーン2は、コンセンサス処理を実行する複数のノード21により構成される。ノード21の各々は、当該コンセンサス処理の実行を通じて、ブロックチェーンデータのコピーを保持する。ブロックチェーン2は、ブロックと呼ばれるデータの単位を一定時間ごとに生成し、鎖のように連結していくことによりデータを保管する。ブロックチェーン2は、ピアツーピア(Peer to Peer)ネットワークと分散型タイムスタンプサーバの使用により自律的に管理される。鎖状に保存しているため、ブロック内のデータを一度記憶した場合、該データを遡及的に変更することが難しい。なお、ブロックチェーン2は、パブリック型、プライベート型、コンソーシアム型のいずれであっても良い。データの単位はブロックではなく個々のトランザクションであっても良い。また、データの保存は鎖状以外にも有向非巡回グラフ等の保存形式であっても良い。
【0014】
情報処理端末3は、エタノールを識別するためのエタノール識別情報を記述したコードの読取、及びエタノールの成分情報の表示等を行う端末装置である。情報処理端末3は、例えばスマートフォン、携帯電話、タブレット、パーソナルコンピュータ端末等の情報処理機器である。以下では簡潔のため、情報処理端末3を端末3と読み替える。
【0015】
本実施形態に係るサーバ1は、廃棄物由来合成ガスから得られた廃棄物由来のエタノールの成分情報、及び該エタノールを識別するためのエタノール識別情報を取得する。サーバ1は、取得したエタノールの成分情報をエタノール識別情報に関連付けてブロックチェーン2のいずれかのノード21に出力する。ブロックチェーン2のノード21は、サーバ1から送信されたエタノール識別情報及びエタノールの成分情報を受信し、受信したエタノールの成分情報をエタノール識別情報に関連付けて記録する。端末3は、エタノール識別情報を記述したコードからエタノール識別情報を読み取る。端末3は読み取ったエタノール識別情報に基づいて、ブロックチェーン2のノード21上に記録されたエタノールの成分情報を取得する。端末3は、取得したエタノールの成分情報を表示する。
【0016】
図2は、サーバ1の構成例を示すブロック図である。サーバ1は、制御部11、記憶部12、通信部13、入力部14、表示部15、読取部16及び大容量記憶部17を含む。各構成はバスBで接続されている。
【0017】
制御部11はCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置を含み、記憶部12に記憶された制御プログラム1Pを読み出して実行することにより、サーバ1に係る種々の情報処理、制御処理等を行う。また制御プログラム1Pには、例えばイーサリアムのGeth(Go-Ethereum)、Mist Wallet等のスマートコントラクトの生成・実行、仮想通貨の送金、アカウントの作成、マイニング等の処理を実行するプログラムが含まれる。
【0018】
また、制御部11は、ハッシュ値算出部11a及び電子署名作成部11bを含む。ハッシュ値算出部11aは、暗号学的ハッシュ関数を用いて各種情報のハッシュ値を算出する処理を行う。電子署名作成部11bは、偽造又は改ざんを防止するため、公開鍵暗号方式に基づくデジタル認証用の署名を生成する。なお、
図2では制御部11を単一のプロセッサであるものとして説明するが、マルチプロセッサであっても良い。
【0019】
記憶部12はRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ素子を含み、制御部11が処理を実行するために必要な制御プログラム1P又はデータ等を記憶している。また、記憶部12は、制御部11が演算処理を実行するために必要なデータ等を一時的に記憶する。通信部13は通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、ネットワークNを介して、ブロックチェーン2のノード21等との間で情報の送受信を行う。
【0020】
入力部14は、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン等の入力デバイスであり、受け付けた操作情報を制御部11へ出力する。表示部15は、液晶ディスプレイ又は有機EL(electroluminescence)ディスプレイ等であり、制御部11の指示に従い各種情報を表示する。
【0021】
読取部16は、CD(Compact Disc)-ROM又はDVD(Digital Versatile Disc)-ROMを含む可搬型記憶媒体1aを読み取る。制御部11が読取部16を介して、制御プログラム1Pを可搬型記憶媒体1aより読み取り、大容量記憶部17に記憶しても良い。また、ネットワークN等を介して他のコンピュータから制御部11が制御プログラム1Pをダウンロードし、大容量記憶部17に記憶しても良い。さらにまた、半導体メモリ1bから、制御部11が制御プログラム1Pを読み込んでも良い。
【0022】
大容量記憶部17は、例えばHDD(Hard disk drive:ハードディスク)、SSD(Solid State Drive:ソリッドステートドライブ)等の記録媒体を備える。大容量記憶部17は、エタノール情報DB(データベース:database)171を含む。エタノール情報DB171は、エタノールに関する情報を記憶している。
【0023】
なお、本実施形態において記憶部12及び大容量記憶部17は一体の記憶装置として構成されていても良い。また、大容量記憶部17は複数の記憶装置により構成されていても良い。更にまた、大容量記憶部17はサーバ1に接続された外部記憶装置であっても良い。
【0024】
なお、本実施形態では、サーバ1は一台の情報処理装置であるものとして説明するが、複数台により分散して処理させても良く、または仮想マシンにより構成されていても良い。
【0025】
図3は、エタノール情報DB171のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。なお、エタノール情報は、例えば工場の計測装置または制御装置等により計測される。計測されたエタノール情報が工場の計測装置または制御装置からサーバ1に転送される。エタノール情報DB171は、エタノールID列、成分情報列、廃棄物ID列及び生成ID列を含む。エタノールID列は、各エタノールを識別するために、一意に特定されるエタノールのIDを記憶している。
【0026】
成分情報列は、C14含有量列、δ13C列、エタノール濃度列及び有機不純物列を含む。C14含有量列は、エタノール中の天然放射性炭素C14の含有量を記憶している。δ13C列は、エタノール中の炭素同位体比(13C/12C)を記憶している。δ13Cの値が小さいほど、エタノール中の13Cの割合が低い。エタノール濃度列は、エタノールの濃度を記憶している。有機不純物列は、1,1-ジエトキシエタン、エチルベンゼン、m-キシレン及びp-キシレン等の有機不純物、並びに、その他に無機不純物及び水を記憶している。
【0027】
廃棄物ID列は、エタノール生成時に対象となる廃棄物を識別するための廃棄物IDを記憶している。生成ID列は、エタノールの生成時の生成データを識別するための生成IDを記憶している。なお、エタノールの成分情報を計測した計測者、計測日時及び計測機器のIDを記憶しても良い。
【0028】
なお、上述した各DBの記憶形態は一例であり、データ間の関係が維持されていれば、他の記憶形態であっても良い。
【0029】
図4は、ブロックチェーン2のノード21の構成例を示すブロック図である。ブロックチェーン2のノード21は、制御部211、記憶部212、通信部213、受付部214、出力部215、ブロック生成部216、ブロック検証部217及びブロック共有部218を含む。各構成はバスBで接続されている。
【0030】
制御部211は、他ノード21(端末)の制御部と自律分散的に協調して、常に最新のブロックチェーン(台帳:ブロックチェーンデータのコピー)を記憶部212に保持する。記憶部212には、分散型のネットワークへブロードキャストされたトランザクションが含まれたブロックチェーン(台帳)、及びブロック内の情報の検証処理に必要となる情報等が記憶される。
【0031】
通信部213は、通信に関する処理を行うための通信モジュールである。受付部214は、外部ノードから、ブロックチェーン2が管理するブロックチェーンである分散型のネットワークに記録する情報を受け付ける。出力部215は、外部ノードからの要求に応じて、自身が保持するブロックチェーンの情報を出力する。
【0032】
ブロック生成部216は、受付部214が受け付けた情報を基に、ブロックチェーンに追加するブロックを生成する。ブロック生成部216は、前ブロックに基づく情報と受付部214が受け付けた情報とを含むブロックを生成する。また、ブロック生成部216は、自身が生成したブロックまたは後述するブロック共有部218を介して他のブロックチェーンのノード21が生成したブロックに対して、所定のコンセンサス処理として、例えば、ノンスを探索する処理や署名を付与する処理を行った上で、自身が管理するブロックチェーン(台帳)にブロックを追加する。なお、ブロック生成部216が生成したブロックに対して、複数のノード21が所定のコンセンサス処理を行って得られたものが、最終的にブロックチェーン2に追加されるブロックとなる。
【0033】
ブロック検証部217は、自身が保持するブロックチェーンにブロックを追加する際に、該ブロック内の情報の検証を行う。通常、追加対象とされるブロックは、自ノードを含むノード21群において最も早く規則が満たされたブロックであるが、悪意のあるノード21が含まれていた場合等を考慮して、実際に規則が満たされているか等を検証しても良い。
【0034】
ブロック共有部218は、ブロックチェーン2に属するノード21間で情報交換を行う。ブロック共有部218は、より具体的には、受付部214が受け付けた情報、ブロック生成部216が生成したブロック、及び他のノード21から受け付けたブロック等を、適宜他のノード21に送信する。これにより、可能な限り全てのノード21でこれらの情報および最新のブロックチェーン2を共有する。
【0035】
なお、
図4の構成はあくまで一例であって、ブロックチェーンのノード21は、改ざんが困難なブロックチェーン2を複数のノードが共有して管理するための所定のコンセンサス処理を実行可能であり、外部ノードからの要求に応じて分散型のネットワークへの情報追加、及び分散型のネットワークに記録された情報の参照が可能なノードであれば、具体的な構成は問わない。
【0036】
なお、サーバ1は、ブロックチェーン2のノード21であっても良い。
【0037】
図5は、端末3の構成例を示すブロック図である。端末3は、制御部31、記憶部32、通信部33、入力部34、表示部35及び撮影部36を含む。各構成はバスBで接続されている。
【0038】
制御部31はCPU、MPU等の演算処理装置を含み、記憶部32に記憶された制御プログラム3Pを読み出して実行することにより、端末3に係る種々の情報処理、制御処理等を行う。また、制御部31は、ハッシュ値算出部31a及び電子署名作成部31bを含む。ハッシュ値算出部31aは、暗号学的ハッシュ関数を用いて、ウォレットアドレス等を算出する処理を行う。また制御プログラム3Pには、例えばイーサリアムのGeth、Mist Wallet等のスマートコントラクトの生成・実行、仮想通貨の送金、アカウントの作成、マイニング等の処理を実行するプログラムが含まれる。電子署名作成部31bは、偽造又は改ざんを防止するため、公開鍵暗号方式に基づくデジタル認証用の署名を生成する。
【0039】
なお、
図5では制御部31を単一のプロセッサであるものとして説明するが、マルチプロセッサであっても良い。記憶部32はRAM、ROM等のメモリ素子を含み、制御部31が処理を実行するために必要な制御プログラム3P又はデータ等を記憶している。また、記憶部32は、制御部31が演算処理を実行するために必要なデータ等を一時的に記憶する。通信部33は通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、ネットワークNを介して、サーバ1及びブロックチェーン2等と情報の送受信を行う。
【0040】
入力部34は、キーボード、マウスまたは表示部35と一体化したタッチパネルでも良い。表示部35は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等であり、制御部31の指示に従い各種情報を表示する。撮影部36は、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラ等の撮影装置である。なお、撮影部36は端末3の中に内蔵せず、外部で直接端末3と接続し、撮影可能な構成としても良い。
【0041】
図6は、エタノールの成分情報をブロックチェーン2のノード21に出力する処理を説明する説明図である。なお、本実施形態では、計測されたエタノールの成分情報を予めエタノール情報DB171に記憶している。エタノールの成分情報は、天然放射性炭素C14の含有量、δ
13C(エタノール中の安定同位体比)の値、エタノール濃度及び有機不純物(残部)を含む。有機不純物は、1,1-ジエトキシエタン、エチルベンゼン、m-キシレンおよびp-キシレンのうちの少なくとも1種を含む。
【0042】
エタノール中の天然放射性炭素C14の含有量の計測方法は、放射能計測法(LSC)、質量分析法(AMS)、エタノールの水抽出方法等である。放射能計測法は、液体シンチレーションカウンタ(Liquid Scintillation Counter)を使用し、C14のβ線を数える放射能計測である。質量分析法は、加速器質量分析計(Accelerator Mass Spectrometry)を使用し、C14原子数を直接数える計測技術である。エタノールの水抽出方法は、エタノール濃縮用の水層と妨害物質除去用のガソリン層を分離し、水層で液体シンチレーションカウンタを使用してC14のβ線を数える計測方法である。例えば、エタノールの水抽出技術を採用してエタノール中のC14の含有量を計測しても良い。水分は水分計測定で測定され、イオンはイオンクロマトまたはICP分析で分析される。
【0043】
エタノール中のδ13Cの値は、例えば安定同位体比測定装置により簡便に測定することができる。δ13Cとは、{(13C/12C)サンプル/(13C/12C)標準物質-1}×1000(‰)で計算される値である。標準物質には、国際標準物質として白亜紀PeeDee層のヤイシ類化石VPDB(13C=1.1056%、12C=98.8944%)が用いられる。エタノール濃度は、例えば酵素若しくは微生物等の固定化生体触媒を利用したバイオセンサ、半導体式ガスセンサまたは接触燃焼式ガスセンサを用いて測定することができる。有機不純物は、例えば残部の測定技術を用いて測定することができる。
【0044】
計測機器により計測された成分情報、計測日時及び計測機器のIDがサーバ1に送信される。サーバ1は、送信された各データを上述したエタノール情報DB171に記憶する。
【0045】
サーバ1は、エタノールの成分情報、及び該エタノールを識別するためのエタノール識別情報をエタノール情報DB171から取得する。エタノール識別情報は、例えばエタノールを特定するエタノールIDである。サーバ1は、所定のブロックチェーン2への出力条件に基づいて、取得したエタノールの成分情報をブロックチェーン2に出力(登録)可能か否かを判定する。
【0046】
ブロックチェーン2への出力条件は、例えば「エタノール中のC14の含有量が所定の含有量以上である」、「δ13Cの値が-35‰未満であり、且つ、エタノール濃度が97%以上である」、または、「δ13Cの値が-35‰未満であり、エタノール濃度が97%以上、かつ、有機不純物(残部)は、1,1-ジエトキシエタン、エチルベンゼン、m-キシレンおよびp-キシレンのうちの少なくとも1種を含む」等であっても良い。
【0047】
例えば、ブロックチェーン2への出力条件が「エタノール中のC14の含有量が所定の含有量以上である」である例とし、サーバ1はC14の含有量が所定の含有量以上であると判定した場合、C14の含有量を含むエタノールの成分情報をエタノールIDに関連付けてブロックチェーン2に出力する。または、ブロックチェーン2への出力条件が「δ13Cの値が-35‰未満であり、且つ、エタノール濃度が97%以上である」である例とし、サーバ1はδ13Cの値が-35‰未満であり、且つ、エタノール濃度が97%以上であると判定した場合、δ13Cの値及びエタノール濃度を含むエタノールの成分情報をエタノールIDに関連付けてブロックチェーン2に出力する。
【0048】
なお、上述した処理では、所定のブロックチェーン2への出力条件を満たした場合にエタノールの成分情報をブロックチェーン2に出力可能である例を説明したが、これに限るものではない。例えば、ブロックチェーン2への出力条件を限定せず、エタノールの成分情報をブロックチェーン2に出力しても良い。
【0049】
サーバ1は、所定のブロックチェーン2への出力条件を満たしたと判定した場合、取得したエタノールの成分情報をエタノールIDに関連付けてトランザクションを作成する。サーバ1は、トランザクションデータを分散して管理するブロックチェーン2のいずれかのノード21に、作成したトランザクションを送信する。トランザクションは、ブロックチェーン2における取引記録であり、ブロックチェーン2の参加者間での各種の情報及び価値の移転を記憶している。本実施形態でのトランザクションは、エタノールID及びエタノールの成分情報を含む。ブロックチェーン2のノード21は、サーバ1から送信されたトランザクションを受信する。ノード21は受信したトランザクションに基づいて、エタノールの成分情報をエタノールIDに関連付けて記録する。
【0050】
なお、上述した処理は、エタノールの成分情報そのものをブロックチェーン2に出力した例を説明したが、これに限るものではない。例えばサーバ1は、エタノールID及びエタノールの成分情報のハッシュ値を算出し、算出したハッシュ値をブロックチェーン2に出力しても良い。具体的には、サーバ1のハッシュ値算出部11aは、暗号学的ハッシュ関数を用いてエタノールID及び成分情報のハッシュ値を算出する。
【0051】
暗号学的ハッシュ関数は、デジタル文書の改ざんを検出する一方向の暗号処理方法であり、出力値は常に16進数表記として64桁と固定されている。例えば、SHA(Secure Hash Algorithm)2-256アルゴリズムを用いたハッシュ関数を採用し、エタノールID及び成分情報のハッシュ値を算出しても良い。なお、ハッシュ関数に限らず、他の暗号化方式であっても良い。サーバ1は、算出したエタノールID及び成分情報のハッシュ値をブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する。ブロックチェーン2のノード21は、サーバ1から送信されたエタノールID及び成分情報のハッシュ値を受信して記録する。
【0052】
続いて、ブロックチェーン2に記録されたエタノールの成分情報を端末3上で表示する処理を説明する。エタノールの出荷時に、エタノールIDを記述したコードが生成される。なお、コードに記述された情報は、エタノールIDに限らず、例えばエタノールIDとエタノールの成分情報との両方であっても良い。コードは、1次元コード又は2次元コード含む。1次元コードは、例えば縞模様状の線の太さによって数値または文字を表すバーコード(Barcode)であっても良い。2次元コードは、例えば横方向にしか情報を持たない1次元コードに対し、水平方向と垂直方向に情報を持つ表示方式のQRコード(登録商標)であっても良い。以下では、2次元コードの例を説明する。
【0053】
具体的には、サーバ1は2次元コード生成するライブラリを利用し、エタノールIDを記述した2次元コード生成する。サーバ1は、生成した2次元コード発行する。例えば、発行された2次元コードを、エタノール保存時に使用された容器の表面に貼り付けても良い。端末3は撮影部36を介して、エタノールIDを記述した2次元コードからエタノールIDを読み取る。
【0054】
端末3は、読み取ったエタノールIDをブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する。ブロックチェーン2のノード21は、端末3から送信されたエタノールIDを受信し、受信したエタノールIDに基づいて該当するエタノールの成分情報を取得する。ノード21は、取得したエタノールの成分情報を端末3に送信する。端末3は、ノード21から送信されたエタノールの成分情報を受信して表示する。
【0055】
なお、エタノールID及び成分情報のハッシュ値がブロックチェーン2のノード21に記録された場合、ノード21は、端末3から送信されたエタノールIDに基づいて該当するエタノールID及び成分情報のハッシュ値を取得する。ノード21は、取得したエタノールID及び成分情報のハッシュ値を端末3に送信する。端末3は、ノード21から送信されたエタノールID及び成分情報のハッシュ値を受信する。
【0056】
端末3はエタノールIDに基づいて、エタノールの成分情報をサーバ1のエタノール情報DB171から取得する。端末3は、暗号学的ハッシュ関数を用いて、エタノールIDとサーバ1から取得した成分情報とのハッシュ値を算出する。端末3は、算出したエタノールID及び成分情報のハッシュ値と、ノード21から送信されたエタノールID及び成分情報のハッシュ値とが一致するか否かを判定する。端末3は両者が一致したと判定した場合、エタノールの成分情報を表示する。
【0057】
図7は、エタノールの成分情報をブロックチェーン2のノード21に出力する際の処理手順を示すフローチャートである。なお、
図7では、「エタノール中のC14の含有量が所定の含有量以上であり、δ
13Cの値が-35‰未満であり、エタノール濃度が97%以上、かつ、有機不純物(残部)は、1,1-ジエトキシエタン、エチルベンゼン、m-キシレンおよびp-キシレンのうちの少なくとも1種を含む」であるブロックチェーン2への出力条件を満たした場合、エタノールの成分情報をブロックチェーン2に出力する例を説明するが、これに限るものではない。実際のニーズに応じてブロックチェーン2への出力条件が設定されても良い。例えば、エタノールからの誘導品製造プロセスにおいて、トレース可能な標識物質(ポリマーの可塑剤、蛍光色素、放射性化合物等の物質)を成分情報の一つとして加えても良い。これらの物質は化学構造が分析可能な赤外分光光度計、蛍光光度計またはガイガーカウンター等で測定される。対象となるエタノール中に上述した標識物質が存在する場合に出力条件を満たすと判断しても良い。
【0058】
サーバ1の制御部11は、エタノールの成分情報及びエタノールIDを大容量記憶部17のエタノール情報DB171から取得する(ステップS101)。制御部11は、取得したエタノールの成分情報に基づいて、エタノール中のC14の含有量が閾値(例えば、41%)以上であるか否かを判定する(ステップS102)。制御部11は、C14の含有量が閾値以上でないと判定した場合(ステップS102でNO)、処理を終了する。
【0059】
制御部11は、C14の含有量が閾値以上であると判定した場合(ステップS102でYES)、取得したエタノールの成分情報に基づいて、エタノール中のδ13Cの値が-35‰未満であるか否かを判定する(ステップS103)。制御部11は、δ13Cの値が-35‰以上であると判定した場合(ステップS103でNO)、処理を終了する。制御部11は、δ13Cの値が-35‰未満であると判定した場合(ステップS103でYES)、取得したエタノールの成分情報に基づいて、エタノール中のエタノール濃度が97%以上であるか否かを判定する(ステップS104)。
【0060】
制御部11は、エタノール濃度が97%未満であると判定した場合(ステップS104でNO)、処理を終了する。制御部11は、エタノール濃度が97%以上であると判定した場合(ステップS104でYES)、取得したエタノールの成分情報に基づいて、エタノール中の有機不純物が所定の有機不純物条件を満たすか否かを判定する(ステップS105)。有機不純物の条件は、例えば「1,1-ジエトキシエタン、エチルベンゼン、m-キシレンおよびp-キシレンのうちの少なくとも1種を含む」である。制御部11は、エタノール中の有機不純物が所定の有機不純物条件を満たさないと判定した場合(ステップS105でNO)、処理を終了する。
【0061】
制御部11は、エタノール中の有機不純物が所定の有機不純物条件を満たしたと判定した場合(ステップS105でYES)、取得したエタノールの成分情報をエタノールIDに関連付けてトランザクションを作成する(ステップS106)。制御部11は、作成したトランザクションを通信部13によりブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する(ステップS107)。ノード21の制御部211は通信部213を介して、サーバ1から送信されたトランザクションを受信する(ステップS201)。制御部211は受信したトランザクションに基づいて、エタノールの成分情報をエタノールIDに関連付けて記憶部212に記録する(ステップS202)。
【0062】
具体的には、トランザクションを受信したノード21の制御部211は、ブロック生成部216を介して、受信したトランザクションに含まれたエタノールID及びエタノールの成分情報と、自身が管理しているブロックチェーン(台帳)の情報とを基に作成した前ブロック管理情報とを少なくとも含むブロックを生成する。そして、ブロックチェーン2のノード21各々の制御部211は、所定のコンセンサス処理をブロック生成部216により実行する。ブロックチェーンは、ブロックとよばれる所定のデータ構造を有するデータ群を時系列に並べたものであり、取引内容を記した台帳としての役割を有する。各ブロックは、取引内容等の当該ブロックに記録したいデータの他に、一つ以上前のブロック(以下、前ブロックという)の情報と、改ざんの有無を検知するための情報(ノンスや署名等)とを含む。ノンスは、あるデータ領域に対して、その領域内のデータを一方向性関数により処理したときに得られる値が予め決められた規則を満たすように設定される、当該データ領域内の値である。
【0063】
ブロックチェーン2には、2台以上のノードが参加する所定のコンセンサスアルゴリズムに従った処理を経て新たなブロックが追加される。例えば、コンセンサスアルゴリズムの一つであるPoW(Proof of Work)では、前ブロックの情報とノンスとを含む各ブロック(データ群)に対して、「ブロックのHash値が閾値以下であること」といった規則が予め決められており、ブロックを追加する際に、そのような規則を満たすようなノンスを複数のノードが同時並列的に探索する処理がブロック検証部217により行われる。なお、PoW以外にもBFT(Byzantine fault tolerance)等のコンセンサスアルゴリズムがある。ブロックチェーン2のノード21各々の制御部211は、所定のコンセンサス処理を実行した後に、ブロック共有部218を介して、ブロック生成部216が生成したブロックを記憶部212に記憶(追加)する。
【0064】
図8は、端末3によりエタノールの成分情報を表示する際の処理手順を示すフローチャートである。端末3の制御部31は、撮影部36を介して、エタノールIDを記述した2次元コードからエタノールIDを読み取る(ステップS301)。制御部31は、読み取ったエタノールIDを通信部33によりブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する(ステップS302)。
【0065】
ノード21の制御部211は通信部213を介して、端末3から送信されたエタノールIDを受信し(ステップS203)、受信したエタノールIDに基づいて該当するエタノールの成分情報を記憶部212から取得する(ステップS204)。制御部211は、取得したエタノールの成分情報を通信部213により端末3に送信する(ステップS205)。端末3の制御部31は、ブロックチェーン2のノード21から送信されたエタノールの成分情報を通信部33により受信し(ステップS303)、受信したエタノールの成分情報を表示部35により表示し(ステップS304)、処理を終了する。
【0066】
本実施形態によると、エタノールの成分情報をブロックチェーン2のノード21に記録することにより、エタノールの成分情報の改ざんが難しく、信頼性を向上することが可能となる。
【0067】
(実施形態2)
実施形態2は、エタノールにおける資源循環の各段階での情報をブロックチェーン2に出力する形態に関する。なお、実施形態1と重複する内容については説明を省略する。
【0068】
図9は、実施形態2のサーバ1の構成例を示すブロック図である。なお、
図1と重複する内容については同一の符号を付して説明を省略する。大容量記憶部17には、焼却対象情報DB172、生成情報DB173、出荷情報DB174及び加工情報DB175が記憶されている。
【0069】
焼却対象情報DB172は、焼却対象となる廃棄物または廃棄方法の詳細を示す焼却対象情報を記憶している。生成情報DB173は、エタノール生成装置に入力するガス組成データ、ガス資化率及びエタノール生産量を含むエタノールの生成時の生成情報を記憶している。出荷情報DB174は、エタノールを出荷した出荷業者に関する情報、及びエタノールの出荷量を含む出荷情報を記憶している。加工情報DB175は、エタノールから誘導された化合物の生産に関する情報、使用量、及び製品加工品内容を含む加工情報を記憶している。
【0070】
図10は、焼却対象情報DB172のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。焼却対象情報DB172は、廃棄物ID列、区分列、種類列、廃棄物由来列、荷姿列、重量列、収集量列、収集日列、輸送距離列、輸送手段列、焼却日列、運搬受託者列、出荷場所列、収集業者列、排出事業者列、中間処理有無列、処理受託者列、産業廃棄物管理票列及び最終処分業者列を含む。
【0071】
廃棄物ID列は、各廃棄物(焼却対象)を識別するために、一意に特定される廃棄物のIDを記憶している。区分列は、廃棄物の分類により分類された廃棄方法を記憶している。廃棄物は、一般廃棄物と産業廃棄物に分類される。また、一般廃棄物は、家庭系廃棄物いわゆる都市固形廃棄物(Municipal solid waste:MSW)と事業系廃棄物いわゆる産業廃棄物(Industrial solid waste:ISW)に分類される。種類列は、廃棄物の種類を記憶している。廃棄物の種類は、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類、紙屑、木屑、繊維屑、動植物性残さ、動物系固形不要物、ゴム屑、金属屑、ガラス屑、コンクリート屑、陶磁器屑、鉱さい、がれき類、家畜のふん尿、家畜の死体及びダスト類等を含む。
【0072】
廃棄物由来列は、廃棄物の由来情報を記憶している。由来情報は、例えば「使用済み製品・部品」、「未使用若しくは期限切れ製品・部品」及び「製造過程で生じた不用物」等を含む。荷姿列は、形状列、梱包列及び容量列を含む。形状列は、廃棄物の形状を記憶している。梱包列は、廃棄物に対する梱包の有無情報を記憶している。容量列は、廃棄物の容量(縦・横・高さ)を記憶している。
【0073】
重量列は、廃棄物の重量を記憶している。収集量列は、収集された廃棄物の量を記憶している。収集日列は、廃棄物を収集した日付情報を記憶している。輸送距離列は、廃棄物を輸送した距離を記憶している。輸送手段列は、廃棄物を輸送した手段(方法)を記憶している。輸送手段は、例えば収集運搬車輸送、船舶輸送、鉄道輸送等を含む。焼却日列は、廃棄物を焼却した日付情報を記憶している。
【0074】
運搬受託者列は、名称列、住所列、電話番号列及び運搬日列を含む。運搬受託者は、排出事業者から排出された廃棄物を、その性状を変えることなく、中間処理施設または最終処分場等へ運ぶ業者である。運搬には、例えば車両、船舶、鉄道等が使用される。名称列は、運搬受託者の氏名または企業名を記憶している。住所列は、運搬受託者の住所を記憶している。電話番号列は、運搬受託者の電話番号を記憶している。運搬日列は、廃棄物を運搬した日付情報を記憶している。
【0075】
出荷場所列は、廃棄物を出荷した場所を記憶している。収集業者列は、名称列、住所列及び電話番号列を含む。名称列は、収集業者の氏名または企業名を記憶している。住所列は、収集業者の住所を記憶している。電話番号列は、収集業者の電話番号を記憶している。排出事業者列は、名称列、住所列、電話番号列及び担当者名列を含む。名称列は、廃棄物を排出した排出事業者の氏名または企業名を記憶している。住所列は、排出事業者の住所を記憶している。電話番号列は、排出事業者の電話番号を記憶している。担当者名列は、排出事業者の担当者の氏名を記憶している。
【0076】
中間処理有無列は、中間処理の有無情報を記憶している。中間処理は、廃棄物を減量・減容化、安定化、無害化、資源化することである。具体的には、廃棄物の性状に応じて焼却、破砕・選別、圧縮・成形、中和、脱水等の操作が行われる。また、中間処理がある場合、処理受託者に関する情報が処理受託者列に記憶される。
【0077】
処理受託者列は、名称列、住所列及び電話番号列を含む。処理受託者は、廃棄物を減量・減容化、安定化、無害化、資源化する業者である。名称列は、処理受託者の氏名または企業名を記憶している。住所列は、処理受託者の住所を記憶している。電話番号列は、処理受託者の電話番号を記憶している。
【0078】
産業廃棄物管理票列は、交付番号列及び整理番号列を含む。交付番号列は、産業廃棄物管理票に記載された交付番号を記憶している。整理番号列は、産業廃棄物管理票を交付した交付者が自らの管理方法により自由に記載された整理番号を記憶している。なお、整理番号列は、整理番号を記載せずに空白であっても良い。
【0079】
最終処分業者列は、名称列、住所列及び電話番号列を含む。最終処分は、廃棄物を埋立処分または海洋投入によって最終的に処分することである。名称列は、最終処分業者の氏名または企業名を記憶している。住所列は、最終処分業者の住所を記憶している。電話番号列は、最終処分業者の電話番号を記憶している。
【0080】
図11は、生成情報DB173のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。生成情報DB173は、生成ID列、ガス組成データ列、ガス資化率列、エタノール生産量列及び廃棄物IDを含む。生成ID列は、各エタノールの生成時の生成データを識別するために、一意に特定される生成データのIDを記憶している。ガス組成データ列は、ガス化炉で発生した合成ガス成分情報(H
2,CO,CO
2,N
2,O
2,NO
x,SO
x等)を記憶している。ガス資化率列は、実際にエタノールへと資化されたガス量を記憶している。エタノール生産量列は、エタノールの生産量を記憶している。廃棄物ID列は、エタノール生成時に対象となる廃棄物を識別するための廃棄物IDを記憶している。なお、エタノールを生成する業者を特定する生成業者ID、及び生成日時が生成情報DB173に記憶されても良い。
【0081】
図12は、出荷情報DB174のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。出荷情報DB174は、出荷ID列、出荷業者列、出荷量列、配送ルート列、配送先ID列、エタノールID列及び配送ステータス列を含む。出荷ID列は、各エタノールの出荷データを識別するために、一意に特定される出荷データのIDを記憶している。出荷業者列は、名称列、住所列及び電話番号列を含む。名称列は、出荷業者の氏名または企業名を記憶している。住所列は、出荷業者の住所を記憶している。
【0082】
電話番号列は、出荷業者の電話番号を記憶している。出荷量列は、エタノールの出荷量を記憶している。配送ルート列は、エタノールを配送したルート情報を記憶している。配送先ID列は、配送先(加工業者)を特定するための配送先IDを記憶している。エタノールID列は、出荷対象となるエタノールを識別するためのエタノールIDを記憶している。配送ステータス列は、エタノールの配送状態を記憶している。配送状態は、例えば「受付」、「配送中」または「受取」等である。
【0083】
図13は、加工情報DB175のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。加工情報DB175は、製品ID列、種類列、名称列、生産情報列、エタノール使用量列、配合物列、配合物使用量列、加工業者ID列、加工内容列及びエタノールID列を含む。製品ID列は、各製品を識別するために、一意に特定される製品のIDを記憶している。種類列は、製品の種類を記憶している。名称列は、製品の名称を記憶している。生産情報列は、エタノールから誘導された化合物の生産に関する情報を記憶している。エタノール使用量列は、製品に使用されたエタノールの量を記憶している。配合物列は、エタノールに配合された配合物(複数可)を記憶している。配合物使用量列は、エタノールに配合された配合物の量を記憶している。加工業者ID列は、製品を加工した加工業者を特定するための加工業者IDを記憶している。加工内容列は、製品に対する加工内容を記憶している。エタノールID列は、エタノールを識別するためのエタノールIDを記憶している。
【0084】
なお、上述した各DBの記憶形態は一例であり、データ間の関係が維持されていれば、他の記憶形態であっても良い。
【0085】
図14は、エタノールにおける資源循環プロセスを説明する説明図である。先に、エタノールにおける資源循環の処理の流れを説明する。まず、焼却対象となる廃棄物が廃棄物の焼却場に運搬されて焼却される。具体的には、家庭系廃棄物の場合、廃棄物の収集者が廃棄物の集荷場所に廃棄物を集荷し、廃棄物の焼却場に運搬する。事業系廃棄物の場合、運搬受託者は排出事業者から排出された廃棄物を廃棄物の焼却場に運搬する。産業廃棄物の場合、運搬受託者は排出事業者から排出された廃棄物を最終処分場所に運搬し、最終処分を行ってから廃棄物の焼却場に運搬する。なお、中間処理がある場合、処理受託者は廃棄物に対し、焼却、破砕・選別、圧縮・成形、中和、脱水等の中間処理を行う。
【0086】
焼却場では、図示しないガス化炉及びガス精製装置を有する。ガス化炉は、廃棄物を低酸素状態で部分燃焼して、分子レベル(例えば、一酸化炭素ガス及び水素ガスを含む)にまで分解することができる炉である。ガス精製装置は、ガス化炉が変換したガスに含まれる不純物ガスを除去・精製して、所要のガス(例えば、一酸化炭素ガス及び水素ガス)を取り出すことができる。ガス精製装置から取り出されたガスがエタノール生成装置4に取り込まれる。
【0087】
この段階では、サーバ1は、廃棄物または廃棄方法の詳細を示す焼却対象情報を焼却場の管理装置から取得する。サーバ1は廃棄物IDを割り振って、割り振った廃棄物IDに対応付けて焼却対象情報を焼却対象情報DB172に記憶する。焼却対象情報は、廃棄物の区分、種類、廃棄物由来、荷姿(形状、梱包、容量)、重量、収集量、収集日、輸送距離、輸送手段、焼却日、運搬受託者に関する情報(名称、住所、電話番号、運搬日)、出荷場所、収集業者に関する情報(名称、住所、電話番号)、排出事業者に関する情報(名称、住所、電話番号、担当者名)、中間処理の有無情報、処理受託者に関する情報(名称、住所、電話番号)、産業廃棄物管理票に関する情報(交付番号、整理番号)、収集業者に関する情報(名称、住所、電話番号)等を含む。
【0088】
次に、エタノール生成装置4によりエタノールが生成される。エタノール生成装置4は、ガス精製装置が取り出した所要のガスを用いて、触媒によりエタノールを生成することができる。触媒は、例えば金属触媒、微生物触媒等である。金属触媒は、例えば酸素化物合成用の触媒であっても良い。酸素化物合成用の触媒は、A成分(ロジウム)と、B成分(マンガン)と、C成分(アルカリ金属)と、D成分とを含むものである。D成分は、D1成分、D2成分またはD3成分である。D1成分は、チタン、バナジウム及びクロムからなる群から選択される1種以上である。D2成分は、周期表の第13族に属する元素である。D3成分は、マグネシウム及びランタノイドからなる群から選択される1種以上である。A~D成分、A~D1成分、A~D2成分、またはA~D3成分を含むことで、酸素化物を効率的に合成することができる。
【0089】
微生物には、Butyribacterium methylotrophicum(Grethlein et al.,1990;Jain et al.,1994b)、Clostridium ragsdalei(Huhnke et al.,2008)、Clostridium carboxidivorans(Liou,et al.,2005)、Moorella species HUC22-1(Inokuma,et al.,2007)、Clostridium autoethanogenum(Abrini et al.,1994)、ならびにClostridium ljungdahlii(Arora et al,1995;Barik et al.,1988;Barik et al.1990;及びTanner et al.,1993)が含まれる。これらの代表のうち、3種類のClostridium ljungdahlii、Clostridium ragsdalei及びClostridium autoethanogenumだけが、CO、もしくはCOの混合物ならびに/またはH2およびCO2を酢酸とエタノールに変換(生成)することできる。
【0090】
この段階では、サーバ1は、エタノール生成装置4に入力するガス組成データ、ガス資化率及びエタノール生産量を含むエタノールの生成時の生成情報をエタノール生成装置4または工場の管理装置から取得する。サーバ1は生成IDを割り振って、割り振った生成IDと廃棄物IDとに対応付けて生成情報を生成情報DB173に記憶する。
【0091】
そして、エタノールの出荷業者は専用の保存容器を用いて、エタノール生成装置4が生成したエタノールを加工業者に出荷する。エタノールの出荷時に、サーバ1は出荷したエタノールに対し、エタノールを識別するためのエタノールIDを割り振る。サーバ1は、実施形態1と同様の手段で計測された該エタノールの成分情報を取得する。サーバ1は、エタノール生成時に対象となる廃棄物を特定するための廃棄物IDを焼却対象情報DB172から取得する。サーバ1は、該エタノールの生成時の生成データを識別するための生成IDを生成情報DB173から取得する。サーバ1は、割り振ったエタノールIDと、取得した廃棄物ID及び生成IDとに関連付けて、取得したエタノールの成分情報を一つのレコードとしてエタノール情報DB171に記憶する。
【0092】
なお、上述した処理は、焼却対象情報、エタノールの生成時の生成情報及びエタノールの成分情報それぞれをデータベースに記憶したが、これに限るものではない。例えば、エタノールの成分情報の記憶時に、焼却対象情報及び生成情報を取りまとめて一つのデータとして記憶しても良い。
【0093】
出荷段階では、サーバ1は、エタノールを出荷した出荷業者の名称、住所、電話番号、エタノールの出荷量、エタノールの配送ルート、配送先(加工業者)及び配送ステータスを含む出荷情報を出荷者の管理装置から取得する。サーバ1は出荷IDを割り振って、割り振った出荷IDとエタノールIDとに対応付けて出荷情報を出荷情報DB174に記憶する。
【0094】
エタノールの出荷業者から出荷されたエタノールはエチレン、プロピレン、エチレングリコール等の基礎化学品の製造の原料として使用され、化学反応によりポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンなどのプラスチック製品の原料が製造される。最終的に、これらの化学品から加工業者によってプラスチック製品、例えば、インクカートリッジ、ペットボトル、ビニール袋、タイヤ、衣類、化粧品容器及び歯ブラシ等へと加工される。この段階では、サーバ1は、製品の種類、製品の名称、エタノールから誘導された化合物の生産に関する情報、製品に使用されたエタノールの量、エタノールに配合された配合物の名称、該配合物の量、加工業者ID及び加工内容を含む加工情報を加工業者の管理装置から取得する。サーバ1は製品IDを割り振って、割り振った製品IDとエタノールIDとに対応付けて加工情報を加工情報DB175に記憶する。
【0095】
なお、本実施形態では、サーバ1がエタノールIDを割り振った例を説明したが、これに限るものではない。例えば、外部装置がエタノールIDを割り振っても良い。この場合、サーバ1は、割り振られたエタノールIDを外部装置から取得する。
【0096】
続いて、エタノールIDに関連付けて、資源循環の各段階での情報をブロックチェーン2に出力(記録)する処理を説明する。エタノールの由来であることを示す焼却対象情報をブロックチェーン2に出力する場合、サーバ1は、該エタノールの由来であることを示す焼却対象情報を焼却対象情報DB172から取得する。サーバ1は、取得した焼却対象情報をエタノールIDに関連付けてトランザクションを作成し、作成したトランザクションをブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する。トランザクションは、エタノールID及びエタノールの由来であることを示す焼却対象情報を含む。ブロックチェーン2のノード21は、サーバ1から送信されたトランザクションを受信する。ノード21は受信したトランザクションに基づいて、焼却対象情報をエタノールIDに関連付けて記録する。
【0097】
エタノールの生成時の生成情報をブロックチェーン2に出力する場合、サーバ1は、エタノールの生成時の生成情報を生成情報DB173から取得する。サーバ1は、取得した生成情報をエタノールIDに関連付けてトランザクションを作成し、作成したトランザクションをブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する。トランザクションは、エタノールID及びエタノールの生成時の生成情報を含む。ブロックチェーン2のノード21は、サーバ1から送信されたトランザクションを受信する。ノード21は受信したトランザクションに基づいて、エタノールの生成時の生成情報をエタノールIDに関連付けて記録する。
【0098】
生成されたエタノールの成分情報をブロックチェーン2に出力する処理に関しては、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0099】
エタノールの出荷情報をブロックチェーン2に出力する場合、サーバ1は、エタノールの出荷情報を出荷情報DB174から取得する。サーバ1は、取得した出荷情報をエタノールIDに関連付けてトランザクションを作成し、作成したトランザクションをブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する。トランザクションは、エタノールID及びエタノールの出荷情報を含む。ブロックチェーン2のノード21は、サーバ1から送信されたトランザクションを受信する。ノード21は受信したトランザクションに基づいて、エタノールの出荷情報をエタノールIDに関連付けて記録する。
【0100】
エタノールを使用して加工した製品の加工情報をブロックチェーン2に出力する場合、サーバ1は、製品の加工情報を加工情報DB175から取得する。サーバ1は、取得した加工情報をエタノールIDに関連付けてトランザクションを作成し、作成したトランザクションをブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する。トランザクションは、エタノールID及びエタノールを使用して加工した製品の加工情報を含む。ブロックチェーン2のノード21は、サーバ1から送信されたトランザクションを受信する。ノード21は受信したトランザクションに基づいて、製品の加工情報をエタノールIDに関連付けて記録する。
【0101】
なお、上述した処理は、資源循環の各段階での情報それぞれをブロックチェーン2のノード21に出力した例を説明したが、これに限るものではない。例えば、エタノールIDに関連付けて、焼却対象情報、生成情報及び成分情報を取りまとめてブロックチェーン2のノード21に出力しても良い。または、エタノールIDに関連付けて、すべての段階での情報を取りまとめてブロックチェーン2のノード21に出力しても良い。
【0102】
続いて、エタノールIDを記述した2次元コード用いて、ブロックチェーン2に記録された資源循環の各段階での情報を取得する処理を説明する。サーバ1は、エタノールIDをエタノール情報DB171から取得する。サーバ1は、2次元コード生成ライブラリ等を用いて、取得したエタノールIDを記述した2次元コード生成(発行)する。2次元コード生成ライブラリは、例えばQRコードを出力するjQueryライブラリ「jquery.qrcode.js」である。なお、サーバ1は2次元コード生成ライブラリを利用せず、2次元コードの生成アルゴリズムに基づいて2次元コード生成しても良い。生成された2次元コードが、例えばエタノール保存時に使用された容器の表面に貼り付けられても良い。
【0103】
端末3は撮影部36を介して、エタノールIDを記述した2次元コードからエタノールIDを読み取る。端末3は、読み取ったエタノールIDをブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する。ブロックチェーン2のノード21は、端末3から送信されたエタノールIDを受信し、受信したエタノールIDに基づいて該当するエタノールの各段階での情報を取得する。ノード21は、取得したエタノールの各段階での情報を端末3に送信する。端末3は、ノード21から送信されたエタノールの各段階での情報を受信して表示する。なお、端末3はサーバ1を介して、読み取ったエタノールIDをブロックチェーン2のノード21に送信するようにしても良い。
【0104】
図15は、焼却対象情報をブロックチェーン2のノード21に出力する際の処理手順を示すフローチャートである。なお、
図15で焼却対象情報の出力処理の例を説明するが、資源循環における他の段階での情報(生成情報、出荷情報及び加工情報)の出力処理にも同様に適用される。
【0105】
サーバ1の制御部11は、エタノールIDを大容量記憶部17のエタノール情報DB171から取得する(ステップS111)。制御部11は、エタノールの由来であることを示す焼却対象情報を焼却対象情報DB172から取得する(ステップS112)。制御部11は、取得した焼却対象情報をエタノールIDに関連付けてトランザクションを作成し(ステップS113)、作成したトランザクションを通信部13によりブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する(ステップS114)。ノード21の制御部211は通信部213を介して、サーバ1から送信されたトランザクションを受信する(ステップS211)。制御部211は受信したトランザクションに基づいて、焼却対象情報をエタノールIDに関連付けて記憶部212に記録する(ステップS212)。
【0106】
図16は、端末3により資源循環の各段階での情報を表示する際の処理手順を示すフローチャートである。端末3の制御部31は、撮影部36を介して、エタノールIDを記述した2次元コードからエタノールIDを読み取る(ステップS321)。制御部31は、読み取ったエタノールIDを通信部33によりブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する(ステップS322)。ノード21の制御部211は通信部213を介して、端末3から送信されたエタノールIDを受信する(ステップS221)。制御部211は、受信したエタノールIDに基づいて該当する資源循環の各段階での情報を記憶部212から取得する(ステップS222)。なお、ノード21は、廃棄物情報については、エタノールIDに対応する廃棄物IDを参照し、生成情報については、エタノールIDに対応する生成IDを参照して対応する各情報を読み出す。
【0107】
各段階での情報は、エタノールの由来であることを示す焼却対象情報、エタノールの生成時の生成情報、エタノールの成分情報、エタノールの出荷情報、及びエタノールを使用して加工した製品の加工情報を含む。制御部211は、取得した資源循環の各段階での情報を通信部213により端末3に送信する(ステップS223)。端末3の制御部31は、ノード21から送信された資源循環の各段階での情報を通信部33により受信し(ステップS323)、受信した各段階での情報を表示部35により表示し(ステップS324)、処理を終了する。
【0108】
図17は、資源循環の詳細情報を表示する画面の一例を示す説明図である。端末3は、エタノールIDを記述した2次元コードからエタノールIDを読み取る。端末3は、読み取ったエタノールIDをブロックチェーン2のノード21に問い合わせて、ノード21に記録されたエタノールの資源循環の各段階での情報を取得する。端末3は、取得した資源循環の各段階での情報を画面に表示する。
【0109】
図示のように、エタノールの由来であることを示す焼却対象情報、エタノールの生成時の生成情報、エタノールの成分情報、エタノールの出荷情報、及びエタノールを使用して加工した製品の加工情報が順次に画面上で表示される。なお、上述した順次に限らず、任意の順次であっても良い。なお、焼却対象情報、生成情報、成分情報、出荷情報及び加工情報が1ページに収められない場合、ドラッグにより表示ページが切り替えられても良い。
【0110】
本実施形態によると、エタノールIDに関連付けて、エタノールの資源循環の各段階での情報をブロックチェーン2のノード21に記録することが可能となる。
【0111】
本実施形態によると、エタノールIDを記述したコードを用いて一回の問い合わせで、ブロックチェーン2のノード21に記録されたエタノールの由来であることを示す焼却対象情報から、該エタノールを使用して加工した製品の加工情報までの一連の情報を閲覧することが可能となる。
【0112】
本実施形態によると、排出された廃棄物が最終的にエタノールとして再生するプロセスを可視化することが可能となる。
【0113】
(実施形態3)
実施形態3は、ブロックチェーン2のノード21に記録されたエタノールを取引する形態に関する。なお、実施形態1~2と重複する内容については説明を省略する。通常、エタノールの購入者は、法定通貨によりエタノールの販売者と直接エタノールを取引する。本実施形態では、仮想通貨(暗号資産)を用いてエタノールを取引することができる。例えば、LCAまたはCO2排出削減量に基づく、いわゆるカーボンクレジットまたはグリーンボンドなどが含まれる。
【0114】
エタノールの購入者がブロックチェーン2のノード21に記録されたエタノールを購入した場合、サーバ1は、エタノールの販売価格に対応する仮想通貨量を算出する。仮想通貨の算出方法については、仮想通貨量を法定通貨と等価により算出しても良く、または市場の変動価格により算出しても良い。法定通貨と等価の算出方法を利用する場合、1仮想通貨は1法定通貨に相当する。市場の変動価格の算出方法を利用する場合、所定の市場レートに基づき算出する。例えば、仮想通貨/法定通貨の市場レートが2の場合、1仮想通貨は2法定通貨に相当する。
【0115】
サーバ1は、エタノールを購入した購入者のウォレットアドレス、及びエタノールを販売した販売者のウォレットアドレスを取得する。ウォレットアドレスは、取引ごとに作成された仮想通貨用の口座番号であり、文字列又はQRコードとして表示する。ウォレットアドレスは、ブロックチェーン2で利用されている公開鍵暗号を基にして、数学的に導出されたアドレスである。また、送信元と送信先のウォレットアドレスは、ブロックチェーン2のノード21に記録され、ブロックチェーン2のシステムが維持し続ける限り改ざんされない。ウォレットアドレスは計算で生成されるため、オンライン又はオフラインでも作成することが可能となる。
【0116】
例えば、サーバ1は、ハッシュ値算出部11a及び電子署名作成部11bによりウォレットアドレスを作成しても良い。または、サーバ1は、購入者及び販売者によるウォレットアドレスの入力を受け付けても良い。更にまた、サーバ1は外部で直接サーバ1と接続している撮影装置(図示せず)を介して、購入者及び販売者のウォレットアドレスのQRコードを読み取り、ウォレットアドレスを抽出しても良い。
【0117】
サーバ1は、取得した購入者のウォレットアドレス宛から販売者のウォレットアドレス宛へ、エタノールの販売価格に対応する仮想通貨量を含むトランザクションをブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する。ブロックチェーン2のノード21は、サーバ1から送信されたトランザクションを受信し、受信したトランザクションに含まれた仮想通貨量を購入者のウォレットアドレス宛から販売者のウォレットアドレス宛へ支払う。
【0118】
図18は、仮想通貨を用いてエタノールを取引する際の処理手順を示すフローチャートである。サーバ1の制御部11は、エタノールの販売価格を取得する(ステップS131)。例えば、制御部11は、エタノールの販売価格を入力部14により受け付けても良く、または予め記憶部12に記憶された販売価格を取得しても良い。制御部11は、取得した販売価格に基づいて、例えば法定通貨と等価により仮想通貨量を算出する(ステップS132)。制御部11は、エタノールを購入した購入者のウォレットアドレス、及びエタノールを販売した販売者のウォレットアドレスを取得する(ステップS133)。例えば制御部11は、購入者及び販売者のウォレットアドレスを入力部14により受け付ける。
【0119】
制御部11は、取得した購入者のウォレットアドレス宛から販売者のウォレットアドレス宛へ、エタノールの販売価格に対応する仮想通貨量を含むトランザクションを作成する(ステップS134)。制御部11は、作成したトランザクションを通信部13によりブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する(ステップS135)。ノード21の制御部211は通信部213を介して、サーバ1から送信されたトランザクションを受信する(ステップS231)。制御部211は、受信したトランザクションに含まれた仮想通貨量を購入者のウォレットアドレス宛から販売者のウォレットアドレス宛へ支払う処理を実行する(ステップS232)。
【0120】
なお、上述したエタノールの取引処理に限るものではない。以下では、スマートコントラクトを利用してエタノールを取引する処理を説明する。スマートコントラクトは、事前に執行条件及び契約内容の定義がプログラム化されてトランザクションに組み込まれ、執行条件及び契約内容に合致した取引が発生した場合、自動的に契約が履行される仕組みである。
【0121】
図19は、スマートコントラクトを利用してエタノールの取引処理を行う動作を説明する説明図である。
図19Aは、スマートコントラクトをブロックチェーン2のいずれかのノード21に出力する動作を説明する説明図である。サーバ1は、エタノールの取引処理を行うための必要な執行条件、購入者及び販売者のウォレットアドレス等が記述されたスマートコントラクトのコードを生成する。サーバ1は、生成したスマートコントラクトのコードを含むトランザクションをブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する。ブロックチェーン2のノード21は、受信したスマートコントラクトを含むトランザクションを記録する。
【0122】
スマートコントラクトのコードの内容は、本実施形態では、エタノールが購入される場合、購入者のウォレットアドレス宛から販売者のウォレットアドレス宛に仮想通貨を支払う契約をコードで定義している。なお、本実施形態では、単一のスマートコントラクトが単一のトランザクションに含まれたが、これに限るものではない。例えば、連携された複数のスマートコントラクトが単一又は複数のトランザクションに含まれても良い。
【0123】
図19Bは、スマートコントラクトのコードを含むトランザクションの一例を示す説明図である。トランザクションは、スマートコントラクトのコード、エタノールID、エタノールの購入量、購入者及び販売者の電子署名を含む。ブロックチェーン2のノード21は、エタノールの購入に関する執行条件に合致した場合、契約内容上で決められた仮想通貨量を購入者のウォレットアドレス宛から販売者のウォレットアドレス宛に支払う。なお、スマートコントラクト内に購入者の仮想通貨を予めデポジットしておいても良い。この場合、デポジットされた仮想通貨から対応する額の仮想通貨が販売者のウォレットアドレス宛に支払われる。
【0124】
図19Cは、エタノールを購入する際に仮想通貨を自動で支払う動作を説明する説明図である。サーバ1は、エタノールの購入指示を受け付けた場合、予め定義された契約履行の条件に合致するトリガーをブロックチェーン2のノード21に送信する。スマートコントラクトは、ブロックチェーン2に契約及び合意の内容が取引中に変更されない仕組みであるため、ブロックチェーン2の外部情報をトリガーにしてスマートコントラクトを発動させる。これにより、予め定義された契約履行の条件に合致するか否かとの判断処理は、ブロックチェーン2の外部情報を参照することが必要である。トリガーは、外部情報をブロックチェーン2内部に提供するサービス又はサーバ等により実現される。例えば、サーバ1は信頼できる情報を提供するオラクルシステム(Oracle System)と連携しても良く、またはサーバ1で類似の機能を実装しても良い。
【0125】
本実施形態では、エタノールが購入された場合、購入に関連する情報をブロックチェーン2のノード21に取り込んで、予め定義された契約履行の条件に合意形成する。ノード21は、形成した合意に応じて、自動的に仮想通貨量を購入者のウォレットアドレス宛から販売者のウォレットアドレス宛に支払う契約を履行する。具体的には、サーバ1はエタノールID及び出荷IDに基づいて、エタノールの配送ステータスを出荷情報DB174から取得する。サーバ1は、取得した配送ステータスが「受取」であると判定した場合、配送ステータス、加工業者ID及びエタノールの購入量等を含む購入に関する情報をトリガーにしてブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する。
【0126】
ノード21は、サーバ1から送信されたエタノールの配送ステータスに基づいて、予め定義された契約履行の条件に合意したか否かを判定する。契約履行の条件は、例えば「エタノールの受取済み」が定義される。ノード21は、エタノールの配送ステータスが「受取」であると判定した場合、契約履行の条件に合意したと判定する。ノード21は、契約履行の条件に合意したと判定した場合、予め定義された契約内容に基づき、エタノールの購入量に対応する支払仮想通貨量を算出する。ノード21はスマートコントラクトを実行させて、算出した仮想通貨量を購入者のウォレットアドレス宛から販売者のウォレットアドレス宛に支払う。
【0127】
このように、ブロックチェーン2のノード21は、スマートコントラクトを発動させるトリガーを受け付け、予め定義された契約履行の条件に基づき、スマートコントラクト処理を自動的に実行させる。ノード21は、スマートコントラクトコードに記述された購入者のウォレットアドレス宛から販売者のウォレットアドレス宛とし事前に定義された支払仮想通貨量を送信する。販売者はブロックチェーン2のノード21経由で仮想通貨量を受け取る。
【0128】
図20は、スマートコントラクト処理を自動的に実行させる際の処理手順を示すフローチャートである。ブロックチェーン2のノード21の制御部211は、通信部213を介して、エタノールの購入条件、購入者及び販売者のウォレットアドレス等が記述されたスマートコントラクトをサーバ1または外部の工場サーバから受信する(ステップS241)。制御部211は、受信したスマートコントラクトを記憶部212に記憶する(ステップS242)。
【0129】
サーバ1の制御部11はエタノールID及び出荷IDに基づいて、エタノールの配送ステータスを出荷情報DB174から取得し、取得した配送ステータスが「受取」であるか否かを判定する(ステップS141)。制御部11は、配送ステータスが「受取」でないと判定した場合(ステップS141でNO)、エタノールの配送ステータスを続けて監視する。制御部11は、配送ステータスが「受取」であると判定した場合(ステップS141でYES)、配送ステータス、加工業者ID及びエタノールの購入量等を含む購入に関する情報をトリガーにしてブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する(ステップS142)。
【0130】
ノード21の制御部211は、サーバ1から送信されたトリガーを通信部213により受信する(ステップS243)。予め定義された契約履行の条件が「エタノールの受取済み」である場合、制御部211はエタノールの配送ステータスに基づいて、契約履行の条件に合意したか否かを判定する(ステップS244)。制御部211は、契約履行の条件に合意していないと判定した場合(ステップS244でNO)、制御部211はステップS243処理に戻る。制御部211は、契約履行の条件に合意したと判定した場合(ステップS244でYES)、予め定義された契約内容に基づき、エタノールの購入量に対応する支払仮想通貨量を算出する(ステップS245)。制御部211は、スマートコントラクトを実行させて、算出した仮想通貨量を購入者のウォレットアドレス宛から販売者のウォレットアドレス宛に支払う(ステップS246)。
【0131】
本実施形態によると、仮想通貨を用いてエタノールを取引することにより、取引情報は過去の取引履歴と連鎖して保存されているため、取引情報の改ざんが難しく、信頼性の高い取引を実現することが可能となる。
【0132】
本実施形態によると、スマートコントラクトを活用することにより、契約履行の条件に合致する場合、契約が自動的に履行されるため、不正な取引を防ぐことができる。また、取引に第三者が介入しないため、決済期間を短縮することが可能となる。
【0133】
(実施形態4)
実施形態4は、スマートコントラクトによりエタノールの認定情報を生成する形態に関する。なお、実施形態1~3と重複する内容については説明を省略する。
【0134】
本実施形態では、計測装置で測定することにより得られたエタノールの成分情報が、所定の条件を満たす場合に認定情報を生成するスマートコントラクトをブロックチェーン2のノード21に記録しておく。認定情報は、例えば出荷時にエタノール対し、数字・英数字が一定の規則・体系に基づき付与されたユニークなID、シリアル番号、製造番号等の情報またはその情報のハッシュ値であっても良い。また、認定情報は、エタノールIDのハッシュ値、またはエタノールの成分情報のハッシュ値であっても良い。更にまた、認定情報は、エタノールID及びエタノールの成分情報のハッシュ値であっても良い。また、認定情報には、これらのデータに加えて、認定されたことを示すロゴマークも含んでも良い。
【0135】
エタノールの識別情報(エタノールID)及び成分情報がブロックチェーン2のノード21へ出力された場合、ブロックチェーン2のノード21は、予め記録されたスマートコントラクトを実行させて認定情報を生成する。ノード21は、生成した認定情報をエタノールID及び成分情報に関連付けて記録する。
【0136】
図21は、スマートコントラクトによりエタノールの認定情報を生成する処理を説明する説明図である。
図21は、エタノールの成分情報を計測する計測装置(計測センサ)5、工場で各種の情報の処理を行う工場サーバ6を含む。
【0137】
先ず、エタノールの認定情報を生成するスマートコントラクトが予めでブロックチェーン2に記録される。具体的には、エタノール生成装置4により生成されたエタノールが専用の保存容器に入れられる。計測装置5は、保存容器に入れられたエタノールに対して成分情報を計測し、計測した成分情報(計測データ)を工場サーバ6に出力する。工場サーバ6は、計測装置5により計測された成分情報が所定の条件を満たす場合に認定情報を生成するスマートコントラクトのコードを生成する。該スマートコントラクトには、エタノールの認定情報を生成するための必要な執行(契約)条件、契約内容、エタノールID及びエタノールの成分情報等が記述される。
【0138】
契約条件は、例えば実施形態1で記述されたブロックチェーン2への出力条件であっても良い。例えば「δ13Cの値が-35‰未満であり、且つ、エタノール濃度が97%以上である」、または、「δ13Cの値が-35‰未満であり、エタノール濃度が97%以上、かつ、有機不純物(残部)は、1,1-ジエトキシエタン、エチルベンゼン、m-キシレンおよびp-キシレンのうちの少なくとも1種を含む」等を契約条件としてスマートコントラクトに定義されても良い。
【0139】
工場サーバ6は、生成したスマートコントラクトのコードを含むトランザクションを作成してブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する。ブロックチェーン2のノード21は、工場サーバ6から送信されたトランザクションを受信して記録する。上述した処理を実行することにより、エタノールの認定情報を生成するスマートコントラクトは、事前にブロックチェーン2のノード21に記録される。
【0140】
なお、本実施形態では、工場サーバ6がスマートコントラクトを作成した例を説明したが、これに限るものではない。例えば、サーバ1は工場サーバ6からエタノールの成分情報を取得した場合、上述したスマートコントラクトを作成してブロックチェーン2のノード21に送信しても良い。
【0141】
続いて、スマートコントラクトにより生成された認定情報が、エタノールID及び成分情報に関連付けてブロックチェーン2のノード21に記録される。具体的には、サーバ1は、エタノールID及びエタノールの成分情報をエタノール情報DB171から取得し、取得したエタノールID及び成分情報をブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する。ブロックチェーン2のノード21は、サーバ1から送信されたエタノールID及び成分情報に基づき、認定情報を生成するスマートコントラクトの契約条件に合致したか否かを判定する。
【0142】
ノード21は、契約条件に合致したと判定した場合、契約内容上で決められたエタノールの認定情報を生成する。ノード21は、生成したエタノールの認定情報をエタノールID及び成分情報に関連付けて記録する。ノード21は、生成したエタノールの認定情報をサーバ1に送信する。サーバ1は、ノード21から送信されたエタノールの認定情報を受信する。サーバ1は、2次元コード生成するライブラリを利用し、受信したエタノールの認定情報を記述した2次元コード生成して発行する。
【0143】
端末3は、撮影部36を介して、エタノールの認定情報を記述した2次元コードから認定情報を読み取った場合、読み取った認定情報をブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する。ブロックチェーン2のノード21は、端末3から送信された認定情報を受信し、受信した認定情報に基づいて該当するエタノールの成分情報を取得する。ノード21は、取得したエタノールの成分情報を端末3に送信する。端末3は、ノード21から送信されたエタノールの成分情報を受信して表示する。
【0144】
図22は、認定情報を生成するスマートコントラクトをブロックチェーン2に出力する際の処理手順を示すフローチャートである。工場サーバ6は、計測装置5により計測されたエタノールの成分情報を取得し(ステップS651)、取得した成分情報が所定の条件を満たすか否かを判定する(ステップS652)。所定の条件は、例えば「δ
13Cの値が-35‰未満であり、且つ、エタノール濃度が97%以上である」である。工場サーバ6は、取得した成分情報が所定の条件を満たしていないと判定した場合(ステップS652でNO)、処理を終了する。
【0145】
工場サーバ6は、取得した成分情報が所定の条件を満たしたと判定した場合(ステップS652でYES)、エタノールの認定情報を生成するための必要な契約条件、契約内容及びエタノールの成分情報等が記述されたスマートコントラクトのコードを生成する(ステップS653)。工場サーバ6、生成したスマートコントラクトのコードを含むトランザクションを作成し(ステップS654)、作成したトランザクションをブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する(ステップS655)。ノード21の制御部211は通信部213を介して、工場サーバ6から送信されたトランザクションを受信する(ステップS251)。制御部211は、受信したトランザクションに基づいて、スマートコントラクトのコード及びエタノールの成分情報を記憶部212に記録する(ステップS252)。
【0146】
図23は、認定情報を生成するスマートコントラクト処理を自動で実行させる際の処理手順を示すフローチャートである。サーバ1の制御部11は、エタノールID及びエタノールの成分情報を大容量記憶部17のエタノール情報DB171から取得する(ステップS161)。制御部11は、取得したエタノールID及びエタノールの成分情報を通信部13によりブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する(ステップS162)。ノード21の制御部211は通信部213を介して、サーバ1から送信されたエタノールID及び成分情報を受信する(ステップS261)。制御部211は、受信したエタノールID及び成分情報に基づき、認定情報を生成するスマートコントラクトの契約条件に合致したか否かを判定する(ステップS262)。なお、
図23のステップS261では、サーバ1から成分情報を受信する例を示したが、計測装置5または工場サーバ6から成分情報を受信するようにしても良い。
【0147】
制御部211は、契約条件に合致していないと判定した場合(ステップS262でNO)、ステップS261処理に戻る。制御部211は、契約条件に合致したと判定した場合(ステップS262でYES)、認定情報を生成するスマートコントラクト処理を実行する(ステップS263)。制御部211は、生成したエタノールの認定情報をエタノールID及び成分情報に関連付けて記録する(ステップS264)。具体的には、ノード21の制御部211は、ブロック生成部216を介して、エタノールの認定情報、エタノールID及びエタノールの成分情報と、自身が管理しているブロックチェーン(台帳)の情報とを基に作成した前ブロック管理情報とを少なくとも含むブロックを生成する。そして、ブロックチェーン2のノード21各々の制御部211は、所定のコンセンサス処理を実行した後に、ブロック共有部218を介して、ブロック生成部216が生成したブロックを記憶部212に記憶する。
【0148】
ノード21の制御部211は、生成したエタノールの認定情報を通信部213によりサーバ1に送信する(ステップS265)。サーバ1の制御部11は、ノード21から送信されたエタノールの認定情報を通信部13により受信する(ステップS163)。制御部11は2次元コード生成するライブラリを利用し、受信したエタノールの認定情報を記述した2次元コード生成し(ステップS164)、生成した2次元コードを発行する(ステップS165)。
【0149】
本実施形態によると、スマートコントラクトにより認定情報を生成することができるため、認定情報の改ざんが難しく、信頼性の高い契約の自動化を実現することが可能となる。
【0150】
(実施形態5)
実施形態5は、回収された製品を再利用する形態に関する。なお、実施形態1~4と重複する内容については説明を省略する。
【0151】
図24は、実施形態5の焼却対象情報DB172のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。なお、
図10と重複する内容については同一の符号を付して説明を省略する。焼却対象情報DB172は、CO2削減量列を含む。CO2削減量列は、エタノールの生産により削減されたCO2量(LCA効果)を記憶している。
【0152】
図25は、実施形態5のエタノールにおける資源循環処理を説明する説明図である。なお、
図14と重複する内容については説明を省略する。なお、
図25は、タイヤ製品を例として説明するが、インクカートリッジ、化粧品容器、歯ブラシ等の他の種類の製品にも同様に適用される。
【0153】
まず、焼却対象となるタイヤが回収ボックス7または回収業者により回収される。回収ボックス7は、資源の有効活用と廃棄物の減量化のため、市民センター、公民館または会社の製品回収センター等の施設に設置されたボックスである。タイヤが回収された後に、焼却場に運搬して焼却される。焼却場でのガス化炉により製品が低酸素状態で部分燃焼され、分子レベルにまで分解される。ガス化炉が変換したガスに含まれる不純物ガスを焼却場でのガス精製装置により除去・精製することでガスが取り出される。取り出されたガスがエタノール生成装置4に取り込まれ、エタノールが生成される。
【0154】
なお、焼却対象情報、エタノール生成時の生成情報及びエタノールの成分情報をブロックチェーン2のノード21に出力する処理に関しては、実施形態2と同様であるため、説明を省略する。
【0155】
また、エタノールの生成過程で発生したCO2に基づいて、CO2の削減量を算出することができる。一般廃棄物焼却施設における焼却発電のCO2排出量は、一般的な廃棄物1トン当たりの排出CO2量(882kg-CO2/t)である。廃棄物由来CO2からエタノール製造の場合、エタノールのCO2排出量は以下の式(1)で表される。
【0156】
廃棄物1トン当たりのCO2排出量 = 廃棄物由来CO2 + エタノール生産過程で発生するCO2 - エタノールCO2換算分 …(1)
タイヤが焼却された場合、上述した式(1)を用いて、タイヤ1本当たり約15kgのCO2削減量を算出することができる。例えば焼却場の管理装置は、式(1)によりCO2の削減量を算出する。サーバ1は、算出されたCO2の削減量を焼却場の管理装置から取得し、廃棄物IDに対応付けて焼却対象情報DB172に記憶する。
【0157】
そして、生成されたエタノールを再びタイヤの原材料製造へ利用することができる。具体的には、エタノールの出荷業者は、生成されたエタノールを専用の保存容器に入れて、タイヤを加工する加工業者に出荷する。加工業者は、エタノールの出荷業者から出荷されたエタノールを使用してタイヤを加工する。なお、タイヤに限らず、タイヤ以外の製品が加工されても良い。このようなリサイクルで、回収されたタイヤを利用してエタノールを合成し、再びタイヤの原材料製造へ利用することが実現できる。
【0158】
なお、エタノールの出荷情報、及びエタノールを使用して加工した製品の加工情報をブロックチェーン2のノード21に出力する処理に関しては、実施形態2と同様であるため、説明を省略する。
【0159】
回収ボックス7には、2次元コードを読み取る可能な2次元コードリーダが取り付けられる。タイヤが回収ボックス7により回収された場合、回収ボックス7は2次元コードリーダを介して、タイヤの表面に貼り付けられた2次元コードからエタノールIDを読み取る。回収ボックス7は、2次元コードからエタノールIDを読み取った場合、回収ボックスID、回収日時及び回収場所等を含む回収情報を該エタノールIDに関連付けてトランザクションを作成する。
【0160】
回収ボックス7は、作成したトランザクションをブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する。ブロックチェーン2のノード21は、回収ボックス7から送信されたトランザクションを受信する。ノード21は受信したトランザクションに基づいて、回収情報をエタノールIDに関連付けて記録する。なお、回収ボックス7の利用の代わりに、回収業者が直接タイヤを回収した場合、回収業者の端末は、回収情報をエタノールIDに関連付けてブロックチェーン2のノード21に出力しても良い。
【0161】
なお、上述した処理は、回収ボックス7が2次元コードを読み取る例を説明したが、これに限るものではない。例えば、RFID(Radio Frequency Identification)等の近距離無線通信を利用しても良い。RFIDは、無線交信が可能な微小なRFIDチップを用いて人または物を識別し管理する自動認識技術である。RFIDでは、ID情報(例えば、エタノールID)を埋め込んだRFIDチップから、電磁界や電波等を用いた近距離(周波数帯によって数cm~数m)の無線通信によって情報を送受信する。なお、RFIDチップのほかに、IC(Integrated Circuit)チップ、ICタグまたはRFIDタグを利用することができる。
【0162】
具体的には、例えば回収ボックス7の近傍にRFIDリーダが取り付けられ、エタノールIDが埋められたRFIDチップがタイヤに取り付けられる。RFIDリーダは、電磁界または電波を利用して、RFIDチップとの間で、非接触でデータを読み取る装置である。タイヤが回収ボックス7に回収された場合、RFIDリーダは、タイヤのRFIDチップに記憶されたエタノールIDを読み取る。RFIDリーダは、回収ボックスID、回収日時及び回収場所等を含む回収情報を、読み取ったエタノールIDに関連付けてトランザクションを作成し、作成したトランザクションをブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する。なお、上述した他の実施形態においても同様にRFIDタグを利用しても良い。
【0163】
なお、回収ボックス7により読み取ったエタノールID及び回収情報がサーバ1に送信されても良い。この場合に、サーバ1は、回収ボックス7から送信されたエタノールID及び回収情報に基づいてトランザクションを作成し、作成したトランザクションをブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する。
【0164】
図26は、端末3により資源循環のメニューを表示する画面の一例を示す説明図である。メニュー画面は、2次元コード読取ボタン12a及び履歴表示ボタン12bを含む。2次元コード読取ボタン12aは、エタノールIDを記述した2次元コードを読み取るためのボタンである。履歴表示ボタン12bは、ブロックチェーン2のノード21に記録された過去の資源循環データを表示するためのボタンである。
【0165】
端末3は、2次元コード読取ボタン12aのタッチ操作を受け付けた場合、撮影部36を介して、エタノールIDを記述した2次元コードからエタノールIDを読み取る。端末3は、読み取ったエタノールIDを資源循環情報の表示画面(
図27)に引き渡し、資源循環情報の表示画面を表示する。端末3は、履歴表示ボタン12bのタッチ操作を受け付けた場合、資源循環の履歴を表示する履歴画面(
図28)を表示する。
【0166】
図27は、端末3により資源循環情報を表示する画面(リサイクル画面)の一例を示す説明図である。該画面は、詳細ボタン13a、情報表示欄13b、廃棄物処理過程アイコン13c、エタノール生成過程アイコン13d、エタノール成分計測過程アイコン13e、出荷過程アイコン13f、加工過程アイコン13g、回収過程アイコン13h、資源循環ルート表示矢印13i、段階情報表示矢印13j及び認定情報表示アイコン13kを含む。詳細ボタン13aは、エタノールにおける資源循環の詳細画面(
図17)を表示するためのボタンである。情報表示欄13bは、エタノールにおける資源循環の各段階での情報を表示する表示欄である。
【0167】
廃棄物処理過程アイコン13cは、廃棄物処理過程に対応する焼却対象情報を表示するためのアイコンである。エタノール生成過程アイコン13dは、エタノール生成過程に対応する生成情報を表示するためのアイコンである。エタノール成分計測過程アイコン13eは、エタノール成分計測過程に対応する成分情報を表示するためのアイコンである。出荷過程アイコン13fは、出荷過程に対応する出荷情報を表示するためのアイコンである。加工過程アイコン13gは、加工過程に対応する加工情報を表示するためのアイコンである。回収過程アイコン13hは、回収過程に対応する回収情報を表示するためのアイコンである。
【0168】
資源循環ルート表示矢印13iは、エタノールにおける資源循環のルートを示す点線の矢印である。段階情報表示矢印13jは、廃棄物処理過程、エタノール生成過程、エタノール成分計測過程、出荷過程、加工過程及び回収過程のいずれの段階に到達しているかを示す段階情報を表示する実線の矢印である。
【0169】
認定情報表示アイコン13kは、対象となるエタノールの成分情報が、実施の形態4で述べたスマートコントラクトに規定された所定条件を満たす場合に、表示されるアイコンである。端末3は、エタノールIDをブロックチェーン2のノード21に送信する。ノード21は、エタノールIDに対応する認定情報を読み出し、端末3に送信する。端末3は認定情報を受信し、表示部35に受信した認定情報に対応する認定情報表示アイコン13kを表示する。なお、ノード21にエタノールIDに対応する認定情報が記憶されていない場合、表示部35には、認定情報表示アイコン13kには表示されない。
【0170】
端末3は、エタノールIDをノード21に問い合わせて、ノード21に記録されたエタノールにおける資源循環の各段階での情報を取得する。資源循環の段階は、廃棄物処理過程段階、エタノール生成過程段階、エタノール成分計測過程段階、出荷過程段階、加工過程段階及び回収過程段階を含む。
【0171】
端末3は、ノード21から取得した資源循環の各段階での情報に基づいて、段階情報表示矢印13jを、表示部35に表示する。具体的には、ノード21から取得した情報が焼却対象情報、生成情報及び成分情報を含む場合、廃棄物処理過程アイコン13c、エタノール生成過程アイコン13d、及び、エタノール成分計測過程アイコン13eを結ぶ段階情報表示矢印13jを、表示部35に表示する。また、ノード21から取得した情報が焼却対象情報、生成情報、成分情報、出荷情報及び加工情報を含む場合、廃棄物処理過程アイコン13c、エタノール生成過程アイコン13d、エタノール成分計測過程アイコン13e、出荷過程アイコン13f、及び、加工過程アイコン13gを結ぶ段階情報表示矢印13jを、表示部35に表示する。さらに、ノード21から取得した情報が焼却対象情報、生成情報、成分情報、出荷情報、加工情報及び回収情報を含む場合、廃棄物処理過程アイコン13c、エタノール生成過程アイコン13d、エタノール成分計測過程アイコン13e、出荷過程アイコン13f、加工過程アイコン13g、回収過程アイコン13h、及び、廃棄物処理過程アイコン13cを結ぶ一連のリサイクルが達成されたことを示す段階情報表示矢印13jを、表示部35に表示する。これにより、対象とするエタノールが、リサイクルプロセスにおいてどの段階にあるのかを容易に視認することができる。なお、本実施形態では実線矢印でどの段階に進んでいるかを示す例を示したが、これに限るものではない。例えば、進んでいる段階に対応するアイコンを特定の色に着色する、進んでいない段階に対応するアイコンを半透明にする、または、進んでいる段階に対応するアイコンに特定のマークを付する等すれば良い。
【0172】
端末3は、廃棄物処理過程アイコン13cのタッチ操作を受け付けた場合、ブロックチェーン2のノード21から送信された廃棄物処理過程のエタノールIDに対応する廃棄物の種類及び廃棄物の由来を含む焼却対象情報を情報表示欄13bに表示する。端末3は、エタノール生成過程アイコン13dのタッチ操作を受け付けた場合、ブロックチェーン2のノード21から送信されたエタノール生成過程のエタノールIDに対応する生成情報を情報表示欄13bに表示する。端末3は、エタノール成分計測過程アイコン13eのタッチ操作を受け付けた場合、ブロックチェーン2のノード21から送信されたエタノール成分計測過程のエタノールIDに対応する成分情報を情報表示欄13bに表示する。
【0173】
端末3は、出荷過程アイコン13fのタッチ操作を受け付けた場合、ブロックチェーン2のノード21から送信された出荷過程のエタノールIDに対応する出荷情報を情報表示欄13bに表示する。端末3は、加工過程アイコン13gのタッチ操作を受け付けた場合、ブロックチェーン2のノード21から送信された加工過程のエタノールIDに対応する加工情報を情報表示欄13bに表示する。端末3は、回収過程アイコン13hのタッチ操作を受け付けた場合、ブロックチェーン2のノード21から送信された回収過程のエタノールIDに対応する回収場所及び回収日時を含む回収情報を情報表示欄13bに表示する。
【0174】
端末3は、詳細ボタン13aのタッチ操作を受け付けた場合、エタノールIDを資源循環の詳細画面(
図17)に引き渡し、資源循環の詳細画面を表示する。端末3は、エタノールIDをブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する。ブロックチェーン2のノード21は、端末3から送信された該エタノールIDに対応する成分情報が所定の条件を満たすか否かを判定する。所定の条件は、例えば「δ
13Cの値が-35‰未満であり、且つ、エタノール濃度が97%以上である」である。
【0175】
ノード21は、成分情報が所定の条件を満たしたと判定した場合、認定情報を生成するスマートコントラクトを通じて生成された認定情報を端末3に送信する。端末3は、ノード21から送信された認定情報を受信して情報表示欄13bに表示する。なお、認定情報を生成するスマートコントラクトに関しては、実施形態4と同様であるため、説明を省略する。
【0176】
図28は、資源循環の履歴画面の一例を示す説明図である。廃棄物が回収された後に、エタノールIDを記述した2次元コードが該廃棄物と共に処分される。この場合、2次元コードの読取を通じて資源循環情報を確認することできないが、履歴画面を利用して過去の資源循環情報を閲覧することができる。履歴画面は、履歴表示欄14a及び詳細リンク14bを含む。履歴表示欄14aは、履歴データを表示する表示欄である。詳細リンク14bは、エタノールにおける資源循環の詳細画面(
図17)を表示するためのリンクである。
【0177】
端末3は、記憶部32に記憶されたエタノールID(過去の問い合わせデータ)に基づいて、ブロックチェーン2のノード21に問い合わせて、ノード21に記録された該当するエタノールにおける資源循環情報を取得する。資源循環情報は、エタノールID及び記録日時等を含む。端末3は、取得した資源循環情報を履歴表示欄14aに表示する。端末3は、詳細リンク14bのタッチ操作を受け付けた場合、タッチされた詳細リンク14bに対応するエタノールIDを資源循環の詳細画面に引き渡し、資源循環の詳細画面(
図17)を表示する。
【0178】
図29は、CO2の削減量をブロックチェーン2のノード21に出力する際の処理手順を示すフローチャートである。サーバ1の制御部11は、エタノールIDを大容量記憶部17のエタノール情報DB171から取得する(ステップS171)。制御部11は、CO2の削減量を焼却対象情報DB172から取得する(ステップS172)。制御部11は、取得したCO2の削減量をエタノールIDに関連付けてトランザクションを作成し(ステップS173)、作成したトランザクションを通信部13によりブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する(ステップS174)。
【0179】
ノード21の制御部211は通信部213を介して、サーバ1から送信されたトランザクションを受信する(ステップS271)。制御部211は受信したトランザクションに基づいて、CO2の削減量をエタノールIDに関連付けて記憶部212に記録する(ステップS272)。なお、
図29は、CO2の削減量を直接ブロックチェーン2のノード21に出力した例を説明したが、これに限るものではない。例えば、CO2の削減量が焼却対象情報に含まれた場合、焼却対象情報をブロックチェーン2のノード21に出力しても良い(
図15)。
【0180】
図30は、回収情報をブロックチェーン2のノード21に出力する際の処理手順を示すフローチャートである。回収ボックス7は、廃棄物に貼り付けられた2次元コードを2次元コードリーダにより読み取る(ステップS181)。回収ボックス7は、読み取った2次元コードからエタノールIDを取得する(ステップS182)。回収ボックス7は、回収ボックスID、回収日時及び回収場所等を含む回収情報を取得する(ステップS183)。回収日時は、例えば回収ボックス7により2次元コードを読み取った日時である。回収場所は、例えば予め回収ボックス7の記憶部に記憶された場所である。
【0181】
回収ボックス7は、取得した回収情報をエタノールIDに関連付けてトランザクションを作成し(ステップS184)、作成したトランザクションをブロックチェーン2のいずれかのノード21に送信する(ステップS185)。ノード21の制御部211は通信部213を介して、回収ボックス7から送信されたトランザクションを受信する(ステップS281)。制御部211は受信したトランザクションに基づいて、回収情報をエタノールIDに関連付けて記憶部212に記録する(ステップS282)。
【0182】
なお、
図30は、回収情報を回収ボックス7から直接ブロックチェーン2のノード21に出力した例を説明したが、これに限るものではない。例えば、サーバ1は回収ボックス7から回収情報を取得し、取得した回収情報をエタノールIDに関連付けてブロックチェーン2のノード21に出力しても良い。
【0183】
なお、本実施形態では、エタノールにおける資源循環処理の例を説明したが、イソプロパノールにおける資源循環処理にも同様に適用される。イソプロパノールは、化学構造的に3個の炭素鎖の2個目に水酸基(ヒドロキシ基:-OH)を結合したプロパノールの構造異性体であり、分子量60.1の一価アルコールかつ低級アルコールである。イソプロパノールは、工業原料、溶剤、化粧品または医薬品の合成原料として用いる。
【0184】
本実施形態によると、回収ボックス7を利用して使用済みの製品を回収した後に、エタノールを合成して再び製品の原材料製造へ利用することにより、高効率な資源循環システムを実現することが可能となる。
【0185】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0186】
1 情報処理装置(サーバ)
11 制御部
11a ハッシュ値算出部
11b 電子署名作成部
12 記憶部
13 通信部
14 入力部
15 表示部
16 読取部
17 大容量記憶部
171 エタノール情報DB
172 焼却対象情報DB
173 生成情報DB
174 出荷情報DB
175 加工情報DB
1a 可搬型記憶媒体
1b 半導体メモリ
1P 制御プログラム
2 ブロックチェーン
21 ノード
211 制御部
212 記憶部
213 通信部
214 受付部
215 出力部
216 ブロック生成部
217 ブロック検証部
218 ブロック共有部
3 情報処理端末(端末)
31 制御部
31a ハッシュ値算出部
31b 電子署名作成部
32 記憶部
33 通信部
34 入力部
35 表示部
36 撮影部
3P 制御プログラム
4 エタノール生成装置
5 計測装置(計測センサ)
6 工場サーバ
7 回収ボックス