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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20241009BHJP
   C09J 201/02 20060101ALI20241009BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241009BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20241009BHJP
   C09J 4/00 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/02
C09J11/06
H01L21/78 M
C09J4/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020078637
(22)【出願日】2020-04-27
(65)【公開番号】P2020183524
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2019086258
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】今 智範
(72)【発明者】
【氏名】岡本 允子
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-147987(JP,A)
【文献】特開2020-184612(JP,A)
【文献】特開2017-179370(JP,A)
【文献】特開2019-059931(JP,A)
【文献】特開2008-189857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤と、前記粘着剤と架橋可能な官能基を有する離型剤であるシリコーン化合物と、架橋剤と、無機フィラーとを含有する粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記粘着剤は、アクリル系の硬化型粘着剤であり、
前記粘着剤は、重合性ポリマー及びウレタンアクリレートを含有し、
前記重合性ポリマーは、ラジカル重合性の不飽和結合を有し、
前記シリコーン化合物は、不飽和二重結合を有する官能基をシリコーン骨格の側鎖又は末端に有し、
前記シリコーン化合物の含有量が前記粘着剤100重量部に対して1重量部以上40重量部以下であり、
前記架橋剤の含有量が前記粘着剤100重量部に対して0.1重量部以上20重量部以下であり、
前記無機フィラーの含有量が前記粘着剤100重量部に対して1重量部以上20重量部以下であり、
前記粘着剤層表面に405nmの紫外線を粘着剤層表面への照射量が2500mJ/cmとなるよう照射した後に、TOF-SIMSを用いて前記粘着剤層表面のSiイオン強度比0(Siイオン強度/全体イオン強度)を測定し、
次いで、Siイオン強度比0を測定した粘着剤層の表面部分に、スパッタイオンをアルゴンクラスターイオン(5kV、5nA)とし、スパッタ時間を10sとし、スパッタリング領域を800μm×800μmとするスパッタリング条件にて1回スパッタリングを行った後に、TOF-SIMSを用いてSiイオン強度比1を測定し、
次いで、前記スパッタリング及び測定工程をn回行い、Siイオン強度比0~nを得た時の、
Siイオン強度比1~5の平均値(A)と、Siイオン強度比20~25の平均値(B)との比(A/B)が、1.1以上3.0以下である、粘着テープ。
【請求項2】
前記Siイオン強度比1~5の平均値が0.001以上0.03以下である、請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
基材を有し、前記基材は、23℃におけるTD方向の曲げ剛性が2.38×10-7N・m以上、2.98×10-5N・m以下である、請求項1又は2記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層のゲル分率が44%以上67%以下である、請求項1、2又は3記載の粘着テープ。
【請求項5】
半導体を製造するために用いられる、請求項1、2、3又は4記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージ等の電子部品の製造において、各部材を粘着テープで仮固定することがある。例えば半導体パッケージの製造においては、ウエハ上に作られた多数の個片化される前の半導体パッケージを個片化された半導体パッケージに分割するダイシングが行われる。その際、半導体パッケージの位置ずれや損傷等を防止するために粘着テープ(ダイシングテープ)が用いられている。例えば、特許文献1には光硬化性の粘着剤層を有し、硬化前の粘着剤層の破断伸び率を特定の範囲とすることで、チップとびの抑制と優れたピックアップ性を確保できるダイシングテープが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-149398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、携帯電話等の通信機器は通信の高速化や扱う情報量の増加等によって高周波化が進んでおり、この高周波によるノイズが半導体パッケージの誤作動を引き起こすという問題が生じている。特に、近年の通信機器は小型化によるデバイス密度の増加やデバイスの低電圧化が進んでいるため、半導体パッケージは高周波によるノイズの影響を受けやすくなっており、誤動作の問題が顕著になってきている。
この問題に対し、スパッタリングによって半導体パッケージを金属の膜で覆うことで、高周波を遮断する方法が提案されている。このようなスパッタリング工程を有する半導体パッケージの製造方法では、半導体パッケージに保護テープとして粘着テープを貼り付け、ダイシングが行われた後にスパッタリングが行われる。スパッタリングが行われた後はニードルピックアップ等によって粘着テープから剥離される。
【0005】
ダイシングからピックアップまでを粘着テープを貼り付けたまま一連の工程として行う場合、ダイシングにおいては半導体パッケージを確実に固定できる密着性が要求される一方、ピックアップ時には、ピックアップ不良を防ぐために軽剥離であることが求められる。しかしながら、密着性と軽剥離性とはトレードオフの関係であるため、密着性と軽剥離性とを両立した粘着テープを得ることは困難である。
【0006】
本発明は、被着体を充分に固定できる密着性と、軽剥離性とを両立した粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シリコーン化合物を含有する粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層表面に405nmの紫外線を粘着剤層表面への照射量が2500mJ/cmとなるよう照射した後に、TOF-SIMSを用いて前記粘着剤層表面のSiイオン強度比0(Siイオン強度/全体イオン強度)を測定し、次いで、Siイオン強度比0を測定した粘着剤層の表面部分に1回スパッタリングを行った後に、TOF-SIMSを用いてSiイオン強度比1を測定し、次いで、前記スパッタリング及び測定工程をn回行い、Siイオン強度比0~nを得た時の、Siイオン強度比1~5の平均値(A)と、Siイオン強度比20~25の平均値(B)との比(A/B)が、1.1以上3.0以下である、粘着テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の粘着テープは、シリコーン化合物を含有する粘着剤層を有し、上記粘着剤層表面に405nmの紫外線を粘着剤層表面への照射量が2500mJ/cmとなるように照射した後に、TOF-SIMSを用いて上記粘着剤層表面のSiイオン強度比0(Siイオン強度/全体イオン強度)を測定し、次いで、Siイオン強度比0を測定した粘着剤層の表面部分に1回スパッタリングを行った後に、TOF-SIMSを用いてSiイオン強度比1を測定し、次いで、上記スパッタリング及び測定工程をn回行い、Siイオン強度比0~nを得た時の、Siイオン強度比1~5の平均値(A)と、Siイオン強度比20~25の平均値(B)との比(A/B)が、1.1以上3.0以下である。
上記測定においてTOF-SIMSは、粘着剤層の表面に存在するシリコーン離型剤の量をイオン強度比の形で示す役割を果たし、スパッタリングは、粘着剤層の表面を厚み方向へ削る役割を果たす。上記測定を行うことによって、粘着テープの粘着剤層の厚み方向に対する離型剤の分布を得ることができる。上記Siイオン強度比1~5の平均値、つまり、粘着剤層の表面付近における離型剤の量と、Siイオン強度比20~25の平均値、つまり、粘着剤層の内部における離型剤の量との比が上記範囲であることで、被着体を充分に固定できる密着性を発揮しながらも粘着テープが不要となった際には容易に剥離することができる。上記A/Bが1.1未満であると、離型剤が充分に被着体との界面にブリードアウトしていないことから剥離性が低下し、上記A/Bが3.0以上であると、被着体との界面に存在する離型剤の量が多くなりすぎて密着性が低下してしまう。密着性と軽剥離性をより両立する観点から、上記A/Bは1.2以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましく、1.4以上であることが更に好ましく、1.6以上であることが更により好ましく、1.8以上であることが特に好ましい。密着性と軽剥離性をより両立する観点から、上記A/Bは2.9以下であることが好ましく、2.8以下であることがより好ましく、2.6以下であることが更に好ましく、2.4以下であることが更により好ましい。なお、上記A/Bは粘着剤の種類、離型剤の種類及び粘着剤テープの製造方法によって調節することができる。例えば、粘着剤にアクリル系粘着剤を用いた場合はシリコーン化合物が効果的に働くことから上記A/Bを満たしやすくなる。また、製造方法については、粘着剤テープ製造時の攪拌条件、乾燥条件、養生条件などの条件によって上記A/Bを調節可能である。
【0009】
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)は、固体試料にイオンビーム(一次イオン)を照射し、表面から放出されるイオン(二次イオン)を、その飛行時間差(飛行時間は重さの平方根に比例)を利用して質量分離する方法である。TOF-SIMSでは、試料表面から厚み方向に1nmの領域に存在する元素や分子種に関するスペクトル情報を高い検出感度で得ることができる。
【0010】
スパッタリングは、真空中でアルゴン等の高圧ガスを噴出し、形成されたガスクラスター、酸素、セシウム等をイオン化し、高速でターゲットの表面にイオンビームを照射するものであり、ターゲットの表面をナノメートル~マイクロメートルオーダーの深さで切削していくことができる。
【0011】
上記スパッタリングと上記TOF-SIMS測定を交互に繰り返して得られたスペクトル情報から深さ方向プロファイルを得ることが可能である。具体的には、スパッタリング回数を横軸、スパッタリング回数における2次イオンの強度比を縦軸として、測定値をプロットし、スパッタリングの回数と二次イオン強度比との関係をグラフ化することで、デプスプロファイルを得ることができ、粘着剤層表面から深さ方向への各イオンの分布を評価できる。
TOF-SIMSに用いる分析装置としては、アルバック・ファイ社製「PHInanoTOFII」等が挙げられる。また、上記測定において、上記Siイオン強度比は、Bi ++イオンガン(電圧:30KV、電流:0.5μA)を測定用の一次イオン源とし、アルゴンクラスターイオン(電圧:5KV、5nA)をスパッタリング用のスパッタ源(二次イオン源)とするデュアルビーム法を用いて測定を行う。
ここで、アルゴンガスクラスターイオンはアルゴン原子が約数千個集まってクラスターを形成したものを用いる。
【0012】
上記Siイオン強度比1~5の平均値は、0.001以上0.03以下であることが好ましい。
粘着剤層の表面付近のSiイオン強度比の平均値が上記範囲であることで、上記A/Bの範囲に調節しやすくなるとともに、密着性と軽剥離性とをより両立しやすくすることができる。密着性と軽剥離性とを更に両立しやすくする観点から、上記Siイオン強度比1~5の平均値は0.002以上であることがより好ましく、0.003以上であることが更に好ましく、0.006以上であることが更により好ましい。密着性と軽剥離性とを更に両立しやすくする観点から、上記Siイオン強度比1~5の平均値は0.025以下であることがより好ましく、0.02以下であることが更に好ましく、0.015以下であることが更により好ましい。
【0013】
上記粘着剤層を構成する粘着剤(以下、単に粘着剤という)は特に限定されず、非硬化型の粘着剤、硬化型の粘着剤のいずれを含有するものであってもよい。具体的には例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、スチレン・ジエンブロック共重合体系粘着剤等が挙げられる。なかでも、上記A/Bを満たしやすいことからアクリル系粘着剤が好適であり、アクリル系の硬化型粘着剤であることがより好ましい。
【0014】
上記硬化型粘着剤としては、光照射により架橋、硬化する光硬化型粘着剤や加熱により架橋、硬化する熱硬化型粘着剤等が挙げられる。
上記光硬化型粘着剤としては、例えば、重合性ポリマーを主成分として、光重合開始剤を含有する光硬化型粘着剤が挙げられる。
上記熱硬化型粘着剤としては、例えば、重合性ポリマーを主成分として、熱重合開始剤を含有する熱硬化型粘着剤が挙げられる。なかでも、被着体を損傷し難く、容易に硬化を行えることから光硬化型粘着剤が好ましい。
【0015】
上記重合性ポリマーは、例えば、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマー(以下、官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーという)をあらかじめ合成し、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物という)とを反応させることにより得ることができる。
【0016】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル基の炭素数が通常2~18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルと、官能基含有モノマーと、更に必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを共重合させることにより得られるものである。上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常20万~200万程度である。
【0017】
上記官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーや、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマーや、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマーが挙げられる。また、アクリル酸イソシアネートエチル、メタクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマーや、アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等も挙げられる。
【0018】
上記共重合可能な他の改質用モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般の(メタ)アクリル系ポリマーに用いられている各種のモノマーが挙げられる。
【0019】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーに反応させる官能基含有不飽和化合物としては、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基に応じて上述した官能基含有モノマーと同様のものを使用できる。例えば、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がカルボキシル基の場合はエポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが用いられる。同官能基がヒドロキシル基の場合はイソシアネート基含有モノマーが用いられる。同官能基がエポキシ基の場合はカルボキシル基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが用いられる。同官能基がアミノ基の場合はエポキシ基含有モノマーが用いられる。
【0020】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーを得るには、原料モノマーを、重合開始剤の存在下にてラジカル反応させればよい。上記原料モノマーをラジカル反応させる方法、即ち、重合方法としては、従来公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの得るためのラジカル反応に用いる重合開始剤は特に限定されず、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。上記有機過酸化物として、例えば、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。上記アゾ化合物として、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
上記光硬化型粘着剤が含有する光重合開始剤としては、例えば、250~800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられる。このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物や、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物や、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物や、フォスフィンオキシド誘導体化合物が挙げられる。また、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシメチルフェニルプロパン等も挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0022】
上記熱硬化型粘着剤が含有する熱重合開始剤としては、熱により分解し、重合硬化を開始する活性ラジカルを発生するものが挙げられる。具体的には、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエール、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
これらの熱重合開始剤のうち市販されているものとしては特に限定されないが、例えば、パーブチルD、パーブチルH、パーブチルP、パーペンタH(以上いずれも日油社製)等が好適である。これら熱重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0023】
上記粘着剤層は、更に、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有していてもよい。ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有することにより、光硬化性及び熱硬化性が向上する。
上記多官能オリゴマー又はモノマーは、重量平均分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは加熱又は光の照射による粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、その分子量が5000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2~20個のものである。本発明において、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて決定ことができ、例えばカラムとしてHSPgel HR MB-M 6.0×150 mm、溶出液としてTHFを用い、40℃で測定し、ポリスチレン標準により決定することができる。
【0024】
上記多官能オリゴマー又はモノマーは、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート又は上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。その他、1,4-ブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート、上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。これらの多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0025】
上記粘着剤層は、シリコーン化合物を含有する。
粘着剤層がシリコーン化合物を含有することで、200℃以上の高温環境下に置かれても粘着剤層の焦げ付き等を防止し、剥離時には被着体界面にブリードアウトして、剥離を容易にすることができる。また、上記シリコーン化合物が粘着剤層中で上記A/Bを満たすように分布していることで、被着体に対する充分な密着性を持ちながらも軽剥離性に優れた粘着テープとすることができる。
【0026】
上記シリコーン化合物は、上記粘着剤と架橋可能な官能基を有することが好ましい。
上記シリコーン化合物が上記粘着剤と架橋可能な官能基を有することにより、光照射又は加熱することにより上記粘着剤と化学反応して、上記シリコーン化合物が粘着剤中に取り込まれることから、被着体にシリコーン化合物が付着して汚染してしまうことを抑止できる。
【0027】
上記シリコーン化合物のシリコーン骨格は特に限定はされず、D体、DT体のいずれでもよい。
上記シリコーン化合物は、上記粘着剤と架橋可能な官能基をシリコーン骨格の側鎖又は末端に有することが好ましい。
なかでも、D体のシリコーン骨格を有し、かつ、末端に上記粘着剤と架橋可能な官能基を有するシリコーン化合物を用いると、高い密着性を発揮しながら、薬液処理や200℃以上の高温処理後を経ても糊残りなく剥離することができる。
【0028】
上記粘着剤と架橋可能な官能基は、上記粘着剤に応じて適当なものを選択して用いる。例えば、上記粘着剤が上記分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーを主成分とする光硬化型接着剤又は熱硬化型接着剤である場合には、(メタ)アクリル基と架橋可能な官能基を選択する。
上記(メタ)アクリル基と架橋可能な官能基は、不飽和二重結合を有する官能基であり、具体的には例えば、ビニル基、(メタ)アクリル基、アリル基、マレイミド基等が挙げられる。
【0029】
上記シリコーン化合物の官能基当量は特に限定されないが、好ましい下限は1、好ましい上限は20である。上記官能基当量が1以上であると、シリコーン化合物が充分に上記粘着剤に取り込まれ、被着体の汚染を抑制することができ、また、より高い剥離性を発揮できる。上記官能基当量が、20以下であると、充分な粘着力を得ることができる。上記官能基当量のより好ましい上限は10であり、より好ましい下限は2、更に好ましい上限は6である。
【0030】
上記シリコーン化合物の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限は300、好ましい上限は50000である。上記重量平均分子量が300以上であると、耐薬品性、耐熱性が向上し、50000以下であると、上記粘着剤との混合が良好になる。上記重量平均分子量のより好ましい下限は400、より好ましい上限は10000であり、更に好ましい下限は500、更に好ましい上限は5000である。
【0031】
上記シリコーン化合物を合成する方法は特に限定されない。上記粘着剤と架橋可能な官能基を有するシリコーン化合物を合成する方法としては、例えば、SiH基を有するシリコーン樹脂と、上記粘着剤と架橋可能な官能基を有するビニル化合物とをハイドロシリレーション反応により反応させて、シリコーン樹脂に上記粘着剤と架橋可能な官能基を導入する方法が挙げられる。また、シロキサン化合物と、上記粘着剤と架橋可能な官能基を有するシロキサン化合物とを縮合反応させる方法も挙げられる。
【0032】
上記シリコーン化合物のうち市販されているものは、例えば、信越化学工業社製のX-22-164、X-22-164AS、X-22-164A、X-22-164B、X-22-164C、X-22-164E等の両末端にメタクリル基を有するシリコーン化合物が挙げられる。また、信越化学工業社製のX-22-174DX、X-22-2426、X-22-2475等の片末端にメタクリル基を有するシリコーン化合物や、ダイセル・オルネクス社製のEBECRYL350、EBECRYL1360等のアクリル基を有するシリコーン化合物も挙げられる。更に、東亞合成社製のAC-SQ TA-100、AC-SQ SI-20等のアクリル基を有するシリコーン化合物や、東亞合成社製のMAC-SQ TM-100、MAC-SQ SI-20、MAC-SQ HDM等のメタクリル基を有するシリコーン化合物等も挙げられる。
【0033】
なかでも、上記シリコーン化合物は、耐薬品性、耐熱性が特に高く、極性が高いために粘着テープからのブリードアウトが容易であることから、下記一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)で表される、シロキサン骨格に(メタ)アクリル基を有するシリコーン化合物が好適である。
【0034】
【化1】
【0035】
式中、X及びYは、それぞれ独立して、0~1200の整数を表し(但し、X及びYがいずれも0の場合を除く。)、Rは不飽和二重結合を有する官能基を表す。
【0036】
上記一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)で表される、シロキサン骨格に(メタ)アクリル基を有するシリコーン化合物のうち市販されているものは、例えば、ダイセル・オルネクス社製のEBECRYL350、EBECRYL1360(いずれもRがアクリル基)等が挙げられる。
【0037】
上記シリコーン化合物の含有量は、上記粘着剤100重量部に対して1重量部以上40重量部以下であることが好ましい。
シリコーン化合物の含有量が1重量部以上であると、被着体からの剥離がより容易となり、40重量部以下であると、被着体の汚染をより抑制することができる。被着体からの剥離性および汚染性をさらに抑制する観点から、上記シリコーン化合物の含有量は10重量部以上であることがより好ましく、30重量部以下であることがより好ましい。
【0038】
上記粘着剤層は、更に、ヒュームドシリカ等の無機フィラーを含有してもよい。無機フィラーを配合することにより上記粘着剤層の凝集力が上がる。このため、上記粘着剤層がヒュームドシリカ等の無機フィラーを含有する場合、粘着テープが不要となったときに、粘着テープを被着体から糊残りすることなく更に容易に剥離できる。
【0039】
上記無機フィラーの含有量は特に限定されないが、上記粘着剤100重量部に対して1重量部以上20重量部以下であることが好ましい。上記無機フィラーの含有量が1重量部以上であると、剥離性がより向上し、半導体パッケージのピックアップ性をより向上させることができる。上記無機フィラーの含有量が20重量部以下であると、塗液中に上記無機フィラーを安定して分散することができる。半導体パッケージのピックアップ性を向上する観点から、上記無機フィラーの含有量は3重量部以上であることがより好ましく、15重量部以下であることがより好ましい。
【0040】
上記粘着剤層は架橋剤を含有することが好ましい。
架橋剤を含有することで、粘着剤層の凝集力が高まり、粘着力を高めることができる。
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。なかでも、より粘着力が高まることからイソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0041】
上記粘着剤層中における上記架橋剤の含有量は、上記粘着剤100重量部に対して0.1重量部以上20重量部以下であることが好ましい。
架橋剤が上記範囲で含有されていることで、上記粘着剤を適度に架橋して、粘着力をより高めることができる。粘着力をより高める観点から、上記架橋剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、更に好ましい下限は1.0重量部、より好ましい上限は15重量部、更に好ましい上限は10重量部である。
【0042】
上記粘着剤層は、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等の公知の添加剤を含有してもよい。上記添加剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0043】
上記粘着剤層は、ゲル分率が44%以上67%以下であることが好ましい。
粘着剤層のゲル分率が上記範囲であることで、充分な粘着力で被着体に貼付でき、被着体をより充分に固定できる。粘着力を良好にする観点から、上記粘着剤層のゲル分率は47%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましく、64%以下であることがより好ましく、60%以下であることが更に好ましい。なお、上記粘着剤が硬化型粘着剤である場合、上記ゲル分率は、硬化前のものを指す。
【0044】
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は500μmである。上記粘着剤層の厚みがこの範囲内にあることで、充分な粘着力で被着体に貼付でき、被着体を充分に固定できる。粘着力を良好にする観点から、上記粘着剤層の厚みのより好ましい下限は10μm、更に好ましい下限は15μm、より好ましい上限は300μm、更に好ましい上限は250μm、更により好ましい上限は200μmである。
【0045】
本発明の粘着テープは基材を有するサポートタイプであってもよく、基材を有さないノンサポートタイプであってもよい。本発明の粘着テープが基材を有するサポートタイプである場合、上記基材は特に制限されないが、耐熱性を持つ基材であることが好ましい。このような耐熱性の基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。なかでも、耐熱性に優れることからポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0046】
上記基材は23℃におけるTD方向の曲げ剛性が2.38×10-7N・m以上、2.98×10-5N・m以下であることが好ましい。
基材の23℃におけるTD方向の曲げ剛性が上記範囲であることで、被着体をより確実に保護できるとともに取り扱い性に優れた粘着テープとすることができる。上記基材の23℃におけるTD方向の曲げ剛性は4.12×10-7N・m以上であることがより好ましく、9.76×10-7N・m以上であることが更に好ましく、2.03×10-5N・m以下であることがより好ましく、1.53×10-5N・m以下であることが更に好ましい。ここで、TD(Transverse Direction)方向とは、基材をシート状に押出加工する際の押出方向に対して垂直な方向をいう。
なお、上記曲げ剛性は引張弾性率Eと断面二次モーメントIの積で表される。上記引張弾性率は、粘弾性スペクトロメーター(例えば、DVA-200、アイティー計測制御社製等)を用いて、定速昇温引張モード、昇温速度10℃/分、周波数10Hzの条件で測定することができる。また、断面二次モーメントIは以下の式で表される。
I=(テープ基材の厚み)/12(m
【0047】
上記基材の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は200μmである。上記基材の厚さがこの範囲内であると、適度なコシがあって、取り扱い性に優れる粘着テープとすることができる。上記基材の厚さのより好ましい下限は10μm、より好ましい上限は150μmである。
【0048】
本発明の粘着テープを製造する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、溶媒に上記粘着剤と、上記シリコーン化合物と、必要に応じて架橋剤等の添加剤を配合した粘着剤溶液を、離型処理を施したフィルム上に塗工、乾燥させて粘着剤層を形成し、基材と貼り合わせることで製造することができる。
【0049】
本発明の粘着テープの製造において、粘着剤溶液を調製する際に行う攪拌速度と、粘着剤層を乾燥させる際の加熱量と、粘着テープとした後の養生条件とを調節することで、上記A/Bを満たしやすくすることができる。例えば、上記攪拌速度を速くすると粘着剤層内のシリコーン化合物がより均一に分散し、上記A/Bの値を小さくすることができる。一方、上記攪拌速度を遅くするとシリコーン化合物が分散しにくくなり、上記A/Bの値を大きくすることができる。上記加熱量を多くすると粘着剤層内のシリコーン化合物がブリードしにくくなり、上記A/Bの値を小さくすることができる。一方、上記加熱量を小さくするとシリコーン化合物のブリードが促進され、上記A/Bの値を大きくすることができる。上記養生条件を高温、長期間とすると粘着剤層内のシリコーン化合物のブリードが促進され、上記A/Bの値を大きくすることができる。一方、上記養生条件を低温、短時間とするとシリコーン化合物がブリードしにくくなり、上記A/Bの値を小さくすることができる。これらの条件を組み合わせることで、上記A/Bを調節することができる。
【0050】
本発明の粘着テープは、密着性と軽剥離性に優れることから、電子部品を仮固定するために有利に用いることができる。特に、半導体を製造する際の部材の仮固定のための粘着テープ(半導体製造用仮固定粘着テープ)として有利に用いることができ、具体的には、半導体パッケージの製造においてダイシングとスパッタリングとピックアップを一連の工程として行う際に半導体パッケージを保護するための保護テープとして好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、被着体を充分に固定できる密着性と、軽剥離性とを両立した粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0053】
(メインポリマーの調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器を用意し、この反応器内に、2-エチルヘキシルアクリレート94重量部、アクリル酸1重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5重量部、ラウリルメルカプカプタン0.01重量部と、酢酸エチル180重量部を加えた後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤として1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.01重量部を添加し、還流下で重合を開始させた。次に、重合開始から1時間後及び2時間後にも、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを0.01重量部ずつ添加し、更に、重合開始から4時間後にt-ヘキシルパーオキシピバレートを0.05重量部添加して重合反応を継続させた。そして、重合開始から8時間後に、固形分55重量%、重量平均分子量60万の官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。
得られた官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、官能基含有不飽和化合物として2-イソシアナトエチルメタクリレート3.5重量部を加えて反応させて粘着剤層を構成する粘着剤であるメインポリマーの酢酸エチル溶液を得た。
【0054】
(実施例1)
得られたメインポリマーの酢酸エチル溶液の固形分100重量部に対してシリコーン化合物1重量部、フィラー3重量部、ウレタンアクリレート10重量部、架橋剤0.2重量部、光重合開始剤1重量部を加え、100rpmの攪拌速度で5分間混合し、粘着剤溶液を得た。次いで、粘着剤溶液を表面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面上に乾燥皮膜の厚さが40μmとなるようにドクターナイフで塗工し105℃、5分間加熱乾燥させて粘着剤層を得た。得られた粘着剤層と片面にコロナ処理を施した基材aのコロナ処理面とを貼り合わせて、40℃で6日間養生することで粘着テープを得た。なお、基材a、シリコーン化合物、フィラー、ウレタンアクリレート、架橋剤、光重合開始剤は以下のものを用いた。
基材a:ポリエチレンナフタレート、Q83-50、帝人社製、厚み50μm、23℃におけるTD方向の曲げ剛性1.91×10-6N・m
シリコーン化合物:シリコンジアクリレート、EBECRYL 350、ダイセル・オルネクス社製、重量平均分子量1000
フィラー:シリカフィラー、レオロシール MT-10、トクヤマ社製
ウレタンアクリレート:UN-5500、根上工業社製
架橋剤:イソシアネート系架橋剤、コロネートL、日本ウレタン工業社製
光重合開始剤:イルガキュア369、BASF社製
【0055】
(実施例2~19、比較例1~3)
離型剤の配合量、粘着剤溶液調製時の攪拌速度、粘着剤層形成時の加熱量及び養生条件を表1、2の通りとした以外は実施例1と同様にして粘着テープを得た。ただし、実施例4については実施例3と比べて架橋剤の含有量を変え、ゲル分率を調整した。なお、基材b、cは具体的には以下のものを用いた。また、実施例2については基材を用いず、粘着剤層をそのまま粘着テープとした。
基材b:ポリエチレンテレフタレート、ルミラー#125-X6K7、東レ社製、厚み125μm、23℃におけるTD方向の曲げ剛性2.98×10-5N・m
基材c:ポリエチレンナフタレート、Q83-25、帝人社製、厚み25μm、23℃におけるTD方向の曲げ剛性1.22×10-7N・m
【0056】
<物性>
実施例及び比較例で得られた粘着テープについて、以下の測定を行った。
結果を表1、2に示した。
【0057】
(粘着剤層のゲル分率の測定)
得られた粘着テープの粘着剤層を0.1gこそぎ取って酢酸エチル50ml中に浸漬し、振とう機で温度23度、120rpmの条件で24時間振とうした(以下、こそぎ取った非粘着剤層のことを粘着剤組成物という)。振とう後、金属メッシュ(目開き#200メッシュ)を用いて、酢酸エチルと酢酸エチルを吸収し膨潤した粘着剤組成物を分離した。分離後の粘着剤組成物を110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤組成物の重量を測定し、下記式を用いて粘着剤層のゲル分率を算出した。
ゲル分率(重量%)=100×(W-W)/W
(W:初期粘着剤組成物重量、W:乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤組成物重量、W:金属メッシュの初期重量)
【0058】
(A/Bの測定)
得られた粘着テープの粘着剤層表面に対して、高圧水銀紫外線照射機を用いて、405nmの紫外線を、粘着剤層表面への照射量が2500mJ/cmとなるように照射した。その後、粘着剤層表面に対してアルバック・ファイ社製「PHInanoTOFII」を用いて、Bi ++イオンガンを測定用の一次イオン源としてTOF-SIMSの測定を行った。得られた測定結果から、シリコーン化合物由来の質量数28のピークを基に、Siイオン強度比0(Siイオン強度/全体イオン強度)を得た。
次いで、Siイオン強度比0を測定した粘着剤層の表面部分に、アルゴンクラスターイオン(電圧:5KV、5nA)をスパッタリング用のスパッタ源(二次イオン源)として1回イオンスパッタリングを行い、上記Siイオン強度比0と同様にして、TOF-SIMSを用いてSiイオン強度比1を得た。その後、スパッタリング及びTOF-SIMS測定を繰り返し、Siイオン強度比0~25を得た。
得られたSiイオン強度比0~25から、Siイオン強度比1~5の平均値(A)とSiイオン強度比20~25の平均値(B)を算出し、これを基にA/Bを算出した。なお、TOF-SIMSの測定条件及びスパッタリングの条件は以下の通りである。
【0059】
(TOF-SIMSの測定条件)
装置:アルバック・ファイ社製、PHI nanoTOFII
一次イオン:30KV、Bi ++、0.5μA(電流値)
一次イオンスキャン範囲(測定領域):200μm×200μm
二次イオン検出モード:negative
スキャン数:3scan/回
チャージ補正:E-Neut+I-Neut
【0060】
(スパッタリングの条件)
スパッタイオン:アルゴンクラスターイオン(5KV、5nA)
スパッタ時間:10s/回
スパッタリング領域:800μm×800μm
【0061】
<評価>
実施例及び比較例で得られた粘着テープについて、以下の方法により評価を行った。
結果を表1、2に示した。
【0062】
(半導体パッケージの製造)
70×150mmのすでにモールド樹脂で封止されている半導体パッケージに、得られた粘着テープを貼り合わせた。次いで、高圧水銀紫外線照射機を用いて、405nmの紫外線を粘着剤層表面への照射量が2500mJ/cmとなるよう照射して、粘着剤層を架橋、硬化させた。次いで、15×8mmとなるように粘着テープとパッケージをダイシングカットした。次いで、通常のスパッタリング条件で半導体パッケージをスパッタリングし、Cuの膜を形成した。その後半導体パッケージをニードルピックアップにより粘着剤層から剥離した。
【0063】
(ダイシング性の評価)
上記半導体パッケージの製造において、ダイシング終了後の半導体パッケージを無作為に50個選び出した。選び出した半導体パッケージを光学顕微鏡にて観察して、端部の剥離の有無を観察し、下記基準でダイシング剥がれを評価した。
S:50個のサンプルの内、300μm以上剥離したサンプルがなかった
A:50個のサンプルの内、300μm以上剥離したサンプル数が5%未満であった
B:50個のサンプルの内、300μm以上剥離したサンプル数が5%以上、10%未満だった
C:50個のサンプルの内、300μm以上剥離したサンプル数が10%以上だった
【0064】
(ピックアップ性の評価)
上記半導体パッケージの製造で得られた半導体パッケージ100個の内ピックアップ不良が生じた半導体パッケージの数を計測し、下記基準でピックアップ性を評価した。
S:ピックアップ不良が生じたパッケージが1つもない
A:ピックアップ不良が生じたパッケージが1~2個ある
B:ピックアップ不良が生じたパッケージが3~10個ある
C:ピックアップ不良が生じたパッケージが11~30個ある
D:ピックアップ不良が生じたパッケージが31個以上ある
【0065】
(汚染性の評価)
上記半導体パッケージの製造において、ニードルピックアップ後の半導体パッケージを観察し、下記基準で汚染性を評価した。
S:半導体パッケージにテープからの残渣が全く見られない。
A:半導体パッケージ(全体の1%未満)にテープからの残渣が顕微鏡等の観察により見られる
B:目視により一部半導体パッケージ(全体の1%未満)でテープからの残渣が見られる
C:目視により1%以上90%未満の半導体パッケージでテープからの残渣が見られる
D:目視により90%以上の半導体パッケージがテープからの残渣が見られる
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、被着体を充分に固定できる密着性と、軽剥離性とを両立した粘着テープを提供することができる。