(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/00 20060101AFI20241009BHJP
H01F 27/02 20060101ALI20241009BHJP
H01F 27/12 20060101ALI20241009BHJP
H01F 27/14 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
H01F27/00 H
H01F27/02 150
H01F27/12 A
H01F27/14 A
(21)【出願番号】P 2020101652
(22)【出願日】2020-06-11
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 豪
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-147325(JP,A)
【文献】実開昭54-137824(JP,U)
【文献】特開昭53-096425(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0884767(KR,B1)
【文献】実開昭59-155716(JP,U)
【文献】実開昭58-022711(JP,U)
【文献】実開昭59-098613(JP,U)
【文献】特開2019-056601(JP,A)
【文献】実開平04-018416(JP,U)
【文献】実開昭51-063919(JP,U)
【文献】実開昭62-103219(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/00-27/02、27/12-27/14、27/40
H01F 30/00-30/16、37/00、41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクと、
前記タンクの上方に配置され
、調整用配管によって前記タンクと接続されているコンサベータと、
前記タンクの側方に配置され
、冷却用配管によって前記タンクと接続されている放熱器と、
前記タンク内の状態を検出する複数のセンサ類と、を備え、
前記タンク
と前記コンサベータ
とを前記調整用配管で個別に分離可能な構造とするとともに、前記タンクと前記放熱器
とを
前記冷却用配管で個別に分離可能な構造とし、
複数の前記センサ類は、前記タンクに設けられており、
複数の前記センサ類の配線は、複数の分岐を有する1本のケーブル保護管に集約されており、
変圧器の状態をモニターするための計器類を、前記タンクにおいて、前記コンサベータおよび前記放熱器が配置されていない側面に設けられている端子箱に集約し、
前記ケーブル保護管を、前記タンクの上面と、前記端子箱が設けられている側面とに沿うように配置し、
前記計器類に繋がる配線を、前記ケーブル保護管に集約して前記タンクの表面に沿って配設し
、前記計器類と前記センサ類とを、前記コンサベータおよび前記放熱器が接続されていない前記タンク単品の状態で基本的な動作の確認が可能に接続している変圧器。
【請求項2】
前記放熱器は、前記タンクに取り付けられた状態における上端が、前記タンクの上端よりも上方に位置する大きさに形成されており、
前記タンクから前記放熱器への流路を形成する配管の取り出し口を、前記タンクの上面に配置した請求項1記載の変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、タンク、コンサベータ、および放熱器などを備える変圧器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、変圧器は、大容量が必要になるなどの仕様に応じて大型化することがある。その場合、冷却効率を高めるために放熱器も大型化する必要があることなどから、変圧器の外形が、輸送する際に法令によって定められている大きさを超えることが想定される。以下、法令によって定められている輸送時の大きさの制限を、便宜的に輸送制限と称する。
【0005】
そして、変圧器の大きさが輸送制限を超える場合には、その変圧器は、一旦全体を組み立てた後に工場内試験が行われ、その後、輸送するために輸送制限を超えない大きさに分解されることになる。
【0006】
しかしながら、全体を組み立てた変圧器を分解する作業には、多くの人員と作業時間を要するという問題がある。これは、変圧器が大型であることに加えて、例えば放熱器上を通るような状態でケーブルが配設されている場合には、そのケーブルを一旦放熱器から外し、外した配線を輸送の邪魔にならないように取りまとめたりするなどの作業が必要になるためである。また、設置時にも同様の問題が発生すると考えられる。さらに、変圧器の大きさが輸送制限によって制限されるため、変圧器の性能もある程度制限されてしまうという問題もある。
【0007】
そこで、輸送制限に掛かるおそれを低減することができるとともに、輸送や設置の作業効率を改善することができ、さらには、性能改善を図ることもできる変圧器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の変圧器は、タンクと、タンクの上方に配置されるコンサベータと、タンクの側方に配置される放熱器と、を備え、タンク、コンサベータおよび放熱器を、配管部分で個別に分離可能な構造としている。
【0009】
これにより、輸送時には、大きく分けてタンク、コンサベータ、放熱器をそれぞれ個別に輸送することになることから、仮に変圧器として組み立てられた状態において輸送制限に掛かるとしても、タンク単品、コンサベータ単品あるいは放熱器単品としては輸送制限に掛かるおそれを低減することができる。
【0010】
この場合、タンク単品での輸送が可能になることから、輸送作業が輸送時あるいは現場の設置時に放熱器を損傷するおそれを低減することができる。さらには、タンク単品での出荷が可能になるため、基礎の工事を素早く着工することが可能になる。したがって、輸送や設置の作業効率を改善することができる。
【0011】
また、タンクは、輸送制限に掛からない範囲内で大きくすることができ、コンサベータや放熱器を取り付けた状態で輸送する場合と比べて、タンクの容量を大きくすることができる。したがって、変圧器の大容量化つまりは変圧器の性能向上を図ることができる。
【0012】
また、放熱器も単品で輸送することができるため、放熱器も、輸送制限に掛からない範囲内で大きくすることができる。したがって、冷却性能を向上させることができるとともに、上記したような大容量化により更なる冷却性能が求められる場合にも対応することができる。すなわち、タンクと放熱器とを分離可能な構造とする構成には、単に輸送制限に掛かるおそれを低減できるというだけでなく、変圧器の性能向上に伴って必要となる冷却性能の向上をも図ることができるという極めて重要かつ実用的な技術的意義が存在している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に正面図、平面図および側面図の三面図として示すように、本実施形態の変圧器1は、タンク2、コンサベータ3、複数の放熱器4などを備えている。この変圧器1は、周知のように、一次側端子5に入力された電圧を変換して二次側端子6から出力する。
【0015】
この、変圧器1は、輸送時には、その向きが定まった状態で輸送される。また、変圧器1は、基礎7に固定されてその向きが定まった状態で使用される。そのため、以下では、
図1の正面図における図示上下方向の長さを変圧器1の高さ(H)とし、図示左右方向の長さを変圧器1の幅(W)とし、側面図における図示左右方向の長さを変圧器1の奥行(D)として説明する。なお、一例ではあるが、本実施形態の変圧器1は、高さ(H)が約5m程度のものを想定している。
【0016】
タンク2は、概ね箱状に形成されており、その内部に、図示しない鉄心、鉄心に巻回されているコイル、タップ切り替え器などを収容している。またタンク2は、その内部に、絶縁油や窒素ガスなどが封入されている。つまり、本実施形態の変圧器1は、いわゆる油入式のものを想定している。
【0017】
このタンク2には、コンサベータ3および放熱器4が取り付けられる。また、タンク2には、後述するように、タンク2とコンサベータ3および放熱器4との間を接続する配管が設けられている。また、タンク2には、放熱器4が取り付けられる正面側と背面側に、図示しない吊り下げフックがそれぞれ複数個設けられている。
【0018】
コンサベータ3は、支持脚3aを有しており、その支持脚3aがタンク2の上面に固定されることでタンク2の上方に配置されている。このコンサベータ3は、内部が絶縁油で充填されているとともに、図示しない吸湿呼吸器を介して外気に接続されている空気袋3bを収容している。
【0019】
空気袋3bは、絶縁油の温度が上昇して膨張した際には、吸湿呼吸器を通して内部の空気を排出することにより絶縁油の膨張を吸収する一方、絶縁油の温度が低下して収縮した際には、吸湿呼吸器を通して外気を導入することにより絶縁油の収縮を吸収する。これにより、ポンプなどの動力源を設けなくても、絶縁油と空気との接触を防ぎつつ、タンク2内を絶縁油で充填した状態に維持することができる。
【0020】
放熱器4は、絶縁油が流れる図示しないチューブと、ハッチングにて模式的に示しているように、そのチューブの表面に接続されている複数のフィン4aとによって構成されている。つまり、放熱器4は、いわゆるフィンチューブ型の構造となっている。この放熱器4は、タンク2と後述する配管によって接続されている。
【0021】
タンク2内に充填されている絶縁油は、温度が上昇すると、膨張してタンク2内から言わば溢れた状態になり、配管を通って放熱器4に流入する。そして、絶縁油は、放熱器4で熱を放出した後、タンク2内に戻ることにより冷却される。本実施形態では、放熱器4は、側面図に示すように、タンク2に取り付けられた状態における上端位置(P1)が、タンク2の上端位置(P2)よりも上方になる大きさに形成されている。なお、図示は省略するが、放熱器4はボルトによってタンク2に物理的に取り付けられている。
【0022】
これらタンク2、コンサベータ3および放熱器4は、
図2に示すように、配管によって接続され、絶縁油の流路がそれぞれ形成されている。具体的には、タンク2とコンサベータ3との間は、調整用配管8によって接続されている。この調整用配管8は、タンク2に設けられているフランジ構造により分離可能になっている。そして、運転中に絶縁油の温度が上昇および低下すると、矢印F1にて示すように絶縁油がタンク2とコンサベータ3との間を行き来することにより、上記したようにタンク2内の充填状態が維持される。
【0023】
また、調整用配管8の途中には、ブッフホルツ継電器9が設けられている。ブッフホルツ継電器9は、変圧器1の内部で何らかの故障が発生した際に生じるガスや絶縁油の流れを検出することにより変圧器1の異常を検知する。
【0024】
一方、タンク2と放熱器4との間は、冷却用配管10によって接続されている。この冷却用配管10は、変圧器1の幅方向に延びていて、各放熱器4に絶縁油を分岐させる分岐パイプ10aと、変圧器1の高さ方向に延びていて、タンク2の上部に設けられていてタンク2内に連通しており、分岐パイプ10aを支える支柱としても機能する支持パイプ10bとにより構成されている。なお、
図2では説明の簡略化のために絶縁油の流れに関連する部位を抽出して示している。
【0025】
本実施形態の場合、変圧器1の正面側と背面側とにそれぞれ複数の放熱器4が取り付けられている。そのため、冷却用配管10は、正面側用と背面側用の2系統が設けられている。そして、これらの冷却用配管10は、分岐パイプ10aと支持パイプ10bとの間でフランジ構造により分離可能になっている。このうち、支持パイプ10bは、タンク2から放熱器4への流路を形成する配管の取り出し口に相当する。
【0026】
そして、分岐パイプ10aおよび支持パイプ10bは、タンク2の上方に位置している。換言すると、分岐パイプ10aおよび支持パイプ10bは、タンク2の奥行の範囲内に位置している。これにより、分岐パイプ10aおよび支持パイプ10bがタンク2の外側にはみ出さない状態になり、放熱器4の奥行方向の長さやタンク2との距離を制限することがなく、放熱器4の冷却能力を低下させたり制限したりするおそれを抑制できるとともに、放熱器4を取り付けた状態における変圧器1の大きさ、特には設置面積を過度に増加させることもない。
【0027】
この冷却用配管10を通って、絶縁油はタンク2と放熱器4との間を循環する。具体的には、タンク2内の絶縁油は、温度が上昇すると自然対流によって上方に移動し、さらには、膨張することによって言わば溢れるような状態で矢印F2にて示すように冷却用配管10に流入した後、各放熱器4に流入する。そして、絶縁油は、放熱器4で冷却されることで自然対流によって下方に移動し、矢印F3にて示すようにタンク2に戻る。
【0028】
つまり、絶縁油は、運転中に温度が上昇すると、自然対流により自動的に循環する。このとき、絶縁油は、自然対流と温度上昇に伴う体積の膨張とによって、ポンプなどの動力源を設けなくても、タンク2の上端よりも上方に位置する分岐パイプ10aに到達し、放熱器4によって冷却される。また、放熱器4には、正面側と背面側のそれぞれに各3個のファン11が設けられており、放熱性能を高めている。なお、ファン11の数は一例である。
【0029】
また、変圧器1には、変圧器1の状態を検出するための複数のセンサ類12が設けられている。例えば、変圧器1には、
図3に示すように、タンク2内の絶縁油の量を検出する油面計12a、タップ切り替え器室内の絶縁油の量を検出する油面計12b、絶縁油の温度を検出する温度センサ12c、タンク2内の圧力を検出する圧力センサ12d、異常を検出するブッフホルツ継電器9などがセンサ類12として設けられている。
【0030】
そして、変圧器1には、センサ類12の検出結果をモニターするための複数の計器類13が設けられている。例えば、変圧器1には、温度を表示する表示器や、絶縁油の量をメモリと針とで示すメータのような指示器など、センサ類12の検出値を表示あるいは指示することで変圧器1の状態をユーザが把握できるようにするための計器類13が設けられている。また、変圧器1には、ファン11を制御するための制御装置14なども設けられている。
【0031】
これらの計器類13や制御装置14は、端子箱15に収容されており、その端子箱15は、タンク2において、コンサベータ3および放熱器4が配置されていない側面に設けられている。換言すると、本実施形態では、変圧器1の状態をモニターするための計器類13を、タンク2において、コンサベータ3および放熱器4が配置されていない側面に集約している。
【0032】
このとき、計器類13や制御装置14に繋がる配線16、つまりは、端子箱15とセンサ類12との間を繋ぐ配線16は、タンク2の表面に沿うように配設されている。具体的には、本実施形態では、
図4に示すように、端子箱15とセンサ類12との間には、ケーブル保護管17が設けられている。各配線16は、このケーブル保護管17内に収容された状態で、計器類13と対応するセンサ類12とを接続される。なお、
図3では説明の簡略化のために配線16として示してるが、配線としては、信号線や動力線あるいは配管などを含めることができる。
【0033】
ケーブル保護管17は、フレキシブルケーブル保護管、フレキシブル配線保護管、フレキシブル電線管などとも称されるものであり、例えばポリアミド等で中空に形成されている。そのため、ケーブル保護管17は、頑丈且つ柔軟であって屈曲性に優れているとともに、耐水性などの耐環境性にも優れた構造となっており、自由に屈曲可能であるとともに、任意の箇所で簡易な道具を用いて容易に切断することができる。
【0034】
そのため、分岐が必要な個所でケーブル保護管17を一旦切断し、例えば3方向や4方向への図示しない分岐管を配置し、その分岐管にさらにケーブル保護管17を接続することが可能となり、過度に配線16を冗長としたりすることなく所望の位置まで配線16を配設することができる。また、複数の配線16をまとめた状態で配設できるため、作業性を改善することができるとともに、ケーブル保護管17によって保護されているため、過度にテンションを掛ける必要がなく、また、誤って引っ掛けたりするおそれや、輸送時や設置時に損傷したりするおそれが低減される。
【0035】
本実施形態では、このケーブル保護管17を、タンク2表面、より具体的には、タンク2の上面と、端子箱15が設けられている側面とに沿うようにして配置している。換言すると、計器類13に繋がる配線16を、タンク2の表面に沿うように集約している。ただし、ここでいう集約とは、配線16の主たる配設経路、すなわち、ケーブル保護管17の主たる配設経路を、タンク2の表面に沿うように配置していることを意味しており、配線16の末端部分がタンク2の表面から離間している状態も含んでいる。
【0036】
このとき、端子箱15は、タンク2の側面つまりはタンク2の上面よりも下方に位置して設けられている。これは、ユーザが計器類13を確認しやすくするためであるものの、ケーブル保護管17を伝って雨水などが侵入するおそれがある。そのため、本実施形態では、
図1および
図4に示しているように、ケーブル保護管17は、タンク2の上面に沿って配設される部位よりも端子箱15となる部位が、一旦端子箱15の下方まで延びた状態で配設された後、U字状に折り返されて端子箱15の下方から端子箱15に接続されている。
【0037】
これにより、屋外で雨などが降った場合、ケーブル保護管17を伝った雨水が端子箱15に侵入するおそれが低減されている。また、タンク2の上面や端子箱15が設けられている側の側面は、タンク2を吊り下げる際にワイヤーが通らない位置であるため、輸送時や設置時にケーブル保護管17が損傷するおそれが低減される。
【0038】
次に、上記した構成の作用について説明する。
前述のように、比較的大型の変圧器1は、その外形が、輸送する際に法令によって定められている輸送制限を超えることが想定される。その場合、変圧器1は、一旦全体を組み立てた後に工場内試験が行われ、その後、輸送するために輸送制限を超えない大きさに分解されることになる。以下、輸送する際に一纏めにされる部位を、便宜的に輸送単位と称する。
【0039】
しかし、全体を組み立てた変圧器1を分解する作業には、多くの人員と作業時間を要するという問題がある。また、例えば放熱器4上を通るような状態でケーブルが配設されている場合には、そのケーブルを外したり取りまとめたりするなどの作業も必要になる。さらには、変圧器1の大きさが輸送制限によって制限され、変圧器1の性能がある程度制限されてしまうという問題もある。
【0040】
そこで、本実施形態の変圧器1は、
図5に示すように、タンク2、コンサベータ3および放熱器4を、配管部分で個別に分離可能な構造としている。具体的には、タンク2とコンサベータ3とは、上記した調整用配管8のフランジ構造で分離され、タンク2と放熱器4とは、上記した冷却用配管10のフランジ構造で分離される。つまり、変圧器1は、大きく分けて言えば、タンク2、コンサベータ3、放熱器4の輸送単位に分離される。
【0041】
これにより、本実施形態では、タンク2単品を輸送単位としてみた場合の高さ(H1)は、本体部分の高さ(Ht)と、支持パイプ10bの高さ(Hs)との和となる。そして、その高さは(H1)は、変圧器1の高さ(H)よりも小さくなる。そのため、変圧器1の高さ(H)が輸送制限を超えていたとしても、実際の輸送単位となるタンク2単品の高さ(H1)を輸送制限に掛からない状態にすることができる可能性が高くなる。
【0042】
ただし、逆に言えば、輸送するのはタンク2単品であると考えれば、タンク2単品としての高さ(H1)を、輸送制限に掛からないサイズまで大きくすることができる。つまり、変圧器1を大容量化して性能を向上させることができるようになる。すなわち、コンサベータ3および放熱器4を分離可能な構造とすることにより、単に輸送制限に掛からないようになるというだけでなく、変圧器1の性能向上を図ることができる。
【0043】
また、放熱器4は、タンク2に取り付けられた状態においては、その上端がタンク2の上端よりも上方に位置するものの、タンク2から分離可能とすることにより、放熱器4単品での輸送が可能になる。そのため、放熱器4を、輸送制限に掛からない範囲内で大きくすることができ、冷却性能を向上させることができる。すなわち、放熱器4を分離可能な構造とすることにより、単に輸送制限に掛かるおそれを低減できるというだけでなく、変圧器1の性能向上に伴って必要となる冷却性能の向上をも図ることができるという極めて重要かつ実用的な技術的意義が存在している。
【0044】
この場合、放熱器4単品で見た場合の大きさが輸送制限に掛からなければよいことから、本実施形態の変圧器1のように、放熱器4を、その上端がタンク2の上端よりも上方に位置する大きさにすることができる。これにより、平面視における専有面積を小さくすることができる。すなわち、冷却性能を向上させるために必要な表面積が増加した場合であっても、変圧器1を設置する際の専有面積が過度に大きくなることを抑制できる。なお、変圧器1の上方にはクレーンなどで吊り上げるためのスペースがあると考えられることから、放熱器4をタンク2に取り付けた状態における放熱器4の上端位置については、ある程度の高さまで許容されると考えられる。
【0045】
また、放熱器4を分離可能な構造にしたことによって、以下に述べるように、輸送する際および設置する際の作業効率を大きく改善することが可能になる。放熱器4は、上記したようにその表面に多数のフィン4aが設けられているとともに、タンク2の正面側および背面側において概ねその全域渡って複数個が配置されている。そのため、放熱器4がタンク2に取り付けれられたままであると、輸送する際にクレーンで吊り上げてトレーラに移動させる際や、設置現場でトレーラから下ろして所定の設置場所に据え付ける際、ワイヤーの取り付け作業や移送中の接触などによってフィン4aが破損するおそれがある。
【0046】
これに対して、放熱器4を分離可能な構造とした場合には、そのようなおそれがなくなることになる。そのため、放熱器4を分離可能な構造にするという構成は、輸送制限に掛からないようにすることができるというだけでなく、輸送する際および設置する際の作業効率の改善に大きく寄与するものとなっている。さらには、タンク2単品での出荷が可能になるため、基礎7の工事を素早く着工することが可能になる。
【0047】
ところで、コンサベータ3や放熱器4をタンク2から分離可能な構造としても、工場内試験のために全体を組み立てたり輸送のために分解したりすると、その作業に要する手間は大きくは改善されないことになってしまう。
【0048】
そのため、本実施形態の変圧器1は、コンサベータ3や放熱器4をタンク2から分離可能な構造とした上で、変圧器1の状態をモニターするための計器類13を、タンク2において、コンサベータ3および放熱器4が配置されていない側面に集約し、計器類13に繋がる配線16を、タンク2の表面に沿うように集約している。換言すると、本実施形態では、変圧器1の基本的な動作の確認に必要となる配線16を、主としてタンク2に配設している。
【0049】
コンサベータ3は、実運転時には必要になるものの、変圧器1の基本的な動作を確認する際には、例えば底面に開口部を有する容器を取り付けることにより、変圧器1を動作させた際の絶縁油の膨張を吸収できるため、工場内試験においては必ずしもタンク2に取り付けておかなくてもよいと考えられる。
【0050】
これは、コンサベータ3自体は動力源を持っておらず、上記したように絶縁油の状態に応じて受動的にその機能を提供するものであることにも関連している。ただし、コンサベータ3を接続しての試験が不要という意味ではなく、あくまでも、変圧器1の基本的な動作の確認のためには必須ではないという意味である。コンサベータ3は、単品での試験は勿論行われるし、設置後にはコンサベータ3を取り付けた状態での試験も行われる。
【0051】
また、放熱器4は、実運転時には必要になるものの、変圧器1の基本的な動作を確認する際には、絶縁油の温度がそれほど上昇しないと考えられることから、工場内試験においては必ずしもタンク2に取り付けておかなくてもよいと考えられる。つまり、変圧器1が仕様通りに動作するかを行ういわゆるヒートラン試験をしなければ、放熱器4を取り付けなくても変圧器1を動作させることができると考えられる。
【0052】
これは、放熱器4自体は動力源を持っておらず、上記したように自然対流によって絶縁油が循環する構成であり、絶縁油の状態に応じて受動的にその機能を提供するものであることにも関連している。ただし放熱器4を接続しての試験が不要という意味ではなく、あくまでも、変圧器1の基本的な動作の確認のためには必須ではないという意味である。放熱器4は、単品での試験は勿論行われるし、設置後には放熱器4を取り付けた状態での試験も行われる。
【0053】
そして、上記したように変圧器1の基本的な動作の確認に必要となる配線16類をタンク2に設けたことにより、コンサベータ3および放熱器4を取り付けていない状態であっても、タンク2単品で、ヒートラン試験を除いて、変圧器1の基本的な動作を確認するための工場内試験を行うことができる。また、ファン11については、例えば作業台に載置して制御装置14と接続すれば、放熱器4を取り付けなくても試験を行うことができる。
【0054】
このように、変圧器1は、コンサベータ3および放熱器4を取り付けなくても、換言すると、輸送単位のままで、基本的な動作を確認するための工場内試験を行うことができる。これにより、従来のような全体を組み立てたり輸送のために分解したりする作業が基本的に不要となり、作業効率を大きく改善することができる。また、例えばタンク2を製造する工場と放熱器4やコンサベータ3を製造する工場とが異なるような場合であっても、単品でそれぞれの工場で試験を行うことが可能となるなど、生産効率の改善も期待できる。
【0055】
以上説明した変圧器1によれば、次のような効果を得ることができる。
変圧器1は、タンク2と、タンク2の上方に配置されるコンサベータ3と、タンク2の側方に配置される放熱器4と、を備え、タンク2、コンサベータ3および放熱器4を、配管部分で個別に分離可能な構造としている。
【0056】
この場合、輸送時に一纏めにされる輸送単位は、大きく分けてタンク2、コンサベータ3、放熱器4となる。そして、それらの輸送単位を単独で輸送することになることから、仮に変圧器1として輸送制限に掛かる大きさであったとしても、各輸送単位が輸送制限に掛からなければ、それらを輸送することが可能になる。したがって、輸送制限に掛かるおそれを低減することができる。
【0057】
また、タンク2単品での輸送が可能になることから、輸送作業が輸送時あるいは現場の設置時に放熱器4を損傷するおそれを低減することができる。さらには、タンク2単品での出荷が可能になるため、基礎7の工事を素早く着工することが可能になる。したがって、輸送や設置の作業効率を改善することができる。
【0058】
また、タンク2は、輸送制限に掛からない範囲内で大きくすることができ、コンサベータ3や放熱器4を取り付けた状態で輸送する場合と比べて、タンク2の容量を大きくすることができる。したがって、変圧器1の大容量化つまりは変圧器1の性能向上を図ることができる。
【0059】
また、放熱器4も単品で輸送することができるため、放熱器4も、輸送制限に掛からない範囲内で大きくすることができる。したがって、冷却性能を向上させることができるとともに、上記したような大容量化により更なる冷却性能が求められる場合にも対応することができる。タンク2と放熱器4とを分離可能な構造とする構成には、単に輸送制限に掛かるおそれを低減できるというだけでなく、変圧器1の性能向上に伴って必要となる冷却性能の向上をも図ることができるという極めて重要かつ実用的な技術的意義が存在している。
【0060】
また、変圧器1は、変圧器1の状態をモニターするための計器類13を、タンク2において、コンサベータ3および放熱器4が配置されていない側面に集約し、計器類13に繋がる配線16を、タンク2の表面に沿うように集約している。すなわち、変圧器1は、基本的な動作の確認に必要となる計器類13や配線16を、タンク2に設けている。
【0061】
これにより、コンサベータ3および放熱器4を取り付けていない状態であっても、タンク2単品で、変圧器1の基本的な動作を確認するための工場内試験を行うことができる。換言すると、輸送単位のままで、基本的な動作を確認するための工場内試験を行うことができる。
【0062】
したがって、従来のような全体を組み立てたり輸送のために分解したりする作業が基本的に不要となり、作業効率を大きく改善することができる。また、例えばタンク2を製造する工場と放熱器4やコンサベータ3を製造する工場とが異なるような場合であっても、単品でそれぞれの工場で試験を行うことが可能となるなど、生産効率の改善も期待できる。
【0063】
また、変圧器1では、放熱器4は、タンク2に取り付けられた状態における上端が、タンク2の上端よりも上方に位置する大きさに形成されており、タンク2から放熱器4への流路を形成する冷却用配管10の取り出し口を、タンク2の上面に配置している。なお、取り出し口は、実施形態で言えば支持パイプ10bに相当する。
【0064】
これにより、冷却用配管10がタンク2の外側にはみ出さない状態になり、放熱器4の奥行方向の長さやタンク2との距離を制限することがなく、放熱器4の冷却能力を低下させたり制限したりするおそれを抑制できるとともに、放熱器4を取り付けた状態における変圧器1の大きさを過度に増加させることもない。
【0065】
実施形態では変圧器1を例示したが、タンク2、コンサベータ3および放熱器4を分離可能な構成とすることは、いわゆる静止誘導機器の全般に適用することができる。
【0066】
実施形態で例示した分離位置は一例であり、これに限定されない。例えば、実施形態では分岐パイプ10aと支持パイプ10bとの間で分離する構成を例示したが、支持パイプ10bをタンク2から分離可能な構造とすることができる。その場合、タンク2をさらに大容量化することができるなど変圧器1の性能を向上させることができる。
【0067】
また、支持パイプ10bを設けずに、単に分岐パイプ10aを支持する支持部材を設け、配管部材によって分岐パイプ10aとタンク2とを接続する構成とすることができる。その場合、取り出し口としては、配管部材がタンク2に取り付けられるフランジ部分になる。
【0068】
また、変圧器1には、例えばタンク2の上部に上るためのはしごやタップ切り替え器のハンドル、絶縁油の配管に設けられているバルブ、非常用の放圧装置や保護継電器、さらには、例示した以外の計器類13やセンサ類12など、実施形態では説明を省略しているものの一般的な変圧器1に必要とされる周知の部材を備える構成とすることができる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
図面中、1は変圧器、2はタンク、3はコンサベータ、4は放熱器、8は調整用配管(配管)、10は冷却用配管(配管)、13は計器類、16は配線、10bは支持パイプ(取り出し口)を示す。